説明

タイヤ検査装置及びタイヤ検査方法

【課題】径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能なタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法を提供する。
【解決手段】タイヤ検査装置1は、タイヤTの検査面Taを撮像する第1撮像部10と、検査面Taを撮像する第2撮像部20と、画像データ補正部103とを備える。第1撮像部10は、タイヤの回転軸方向視において、第1撮像部10の光軸Ax10が法線N1に一致するとともに検査面Taを撮像するように配置されており、第2撮像部20は、第2撮像部20の光軸Ax20が法線N1に平行に検査面Taを撮像するように配置されている。画像データ補正部103は、第2撮像部20によって取得された画像と第1撮像部10によって取得された画像とを一致させるように第2撮像部20によって取得された画像を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの画像を取得し、取得した画像を用いてタイヤの外観及びタイヤの形状などを検査するタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラによってタイヤの画像を取得し、取得した画像と予め記憶された基準となる基準画像とを比較することにより、タイヤの形状及び外観の良否を判定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたタイヤ検査装置は、いわゆる、光切断法によってタイヤの形状を検出する。すなわち、タイヤの検査面に対してレーザスリット光を所定角度で照射しながら、撮像素子がマトリクス状に配置されたエリアカメラでレーザスリット光の照射領域を撮像することにより、検査面の凹凸を検出している。
【0004】
エリアカメラを用い、このように取得された画像だけでは、色彩を判断することが難しいため、このタイヤ検査装置では、色彩を判断するための画像をラインカメラを用いて取得している。色彩の判定と形状の判定とにそれぞれ異なる画像を用いることにより、良否判定の精度を向上させている。
【0005】
このタイヤ検査装置では、検査対象のタイヤは、タイヤの回転中心を回転テーブルの回転軸に一致させた状態で回転テーブルの上に設置されており、回転テーブルが回転させられると、エリアカメラ及びラインカメラが走査されてタイヤの検査面の全周分の画像が取得されるようになっている。
【0006】
エリアカメラの光軸は、トレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面を含む平面に一致するように検査面に向けられた状態で固定されている。ラインカメラの光軸もまた、トレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面を含む平面に一致するように検査面に向けられた状態で固定されている。このようにして撮像されたエリアカメラによって撮像された画像と、ラインカメラによって撮像された画像とは、容易に一致させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−249012号公報 図3など
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来のタイヤ検査装置には、以下のように改善の余地があった。すなわち、特許文献1に記載されたタイヤ検査装置では、検査対象であるタイヤの径サイズが変わると、焦点距離、撮像領域などの複数の数値をエリアカメラとラインカメラのそれぞれに対して調整し直さねばならなず、調整作業が煩雑であった。また、一つ一つの数値に対しては許容される誤差であっても、調整すべき項目が増えると誤差が累積することにより、良否判定の正確性が低下することにも繋がっていた。
【0009】
そこで、本発明は、径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能なタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明の第1の特徴は、検査対象であるタイヤの検査面を撮像する第1撮像部(第1撮像部10)と、前記タイヤ(タイヤT)の前記検査面(検査面Ta)を撮像する第2撮像部(第2撮像部20)と、前記第1撮像部及び前記第2撮像部と前記タイヤの前記検査面とを前記タイヤの周方向に相対的に回転させることによって取得した前記タイヤの前記検査面の全周分の画像に基づいて前記タイヤの状態を検査するタイヤ検査装置(タイヤ検査装置1)であって、前記第1撮像部は、前記タイヤの回転軸方向視(矢印A方向視)において、前記第1撮像部の光軸(Ax10)が所定の法線(法線N1)に一致するとともに前記検査面を撮像するように配置されており、前記第2撮像部は、前記タイヤの回転軸方向視において、前記第2撮像部の光軸(Ax20)が前記所定の法線(法線N1)に平行に前記検査面を撮像するように配置されており、前記第2撮像部によって取得された画像と前記第1撮像部によって取得された画像とを一致させるように前記第2撮像部によって取得された画像を補正する画像補正部(画像データ補正部103)とを有することを要旨とする。
【0011】
第1の特徴によれば、タイヤの回転軸方向視において、第1撮像部の光軸が所定の法線に一致するとともに検査面を撮像するように配置されており、第2撮像部の光軸が第1撮像部の光軸に平行に検査面を撮像するように配置されている。また、画像補正部が第2撮像部によって取得された画像と第1撮像部によって取得された画像とを一致させるように第2撮像部によって取得された画像を補正する。このため、本発明に係るタイヤ検査装置では、第1撮像部と検査面との位置関係を調整すればよい。第2撮像部によって取得された画像は、画像補正部により補正され、第2撮像部によって取得された画像と第1撮像部によって取得された画像とを一致させることができる。これにより、径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能である。
【0012】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴に係り、前記第1撮像部は、撮像素子がマトリクス状に配列されたエリアカメラであり、前記第2撮像部は、撮像素子が直線状に配列されたラインカメラであることを要旨とする。
【0013】
第2の特徴によれば、形状を判定するための画像と色彩を判定するための画像とを別々のカメラによって取得することができるため、精度を向上させることができる。
【0014】
本発明の第3の特徴は、第1の特徴に係り、前記第1撮像部と前記第2撮像部とをともに支持するとともに、前記第1撮像部と前記検査面との撮像距離、及び前記第2撮像部と前記検査面との撮像距離を変更する支持機構(支持機構30、フレーム31、ガイド部32)を備えることを要旨とする。
【0015】
第3の特徴によれば、検査面との撮像距離を変更する支持機構により、第1撮像部と第2撮像部とがともに支持されるため、支持機構により撮像距離を変更するだけで、第1撮像部によって撮像される撮像領域と、第2撮像部によって撮像される撮影領域とを変更できる。従って、径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能である。
【0016】
本発明の第4の特徴は、第3の特徴に係り、前記支持機構は、複数の前記撮像距離が設定可能とされており、前記第1撮像部によって取得された画像に、前記第2撮像部によって取得された後に補正された補正画像を対応させるための変換テーブル(ルックアップテーブル)を複数の前記撮像距離毎に有し、前記画像補正部は、前記変換テーブルに基づいて前記第1撮像部によって取得された画像と、前記補正画像とを一致させることを要旨とする。
【0017】
第4の特徴によれば、第1撮像部によって取得された画像と、第2撮像部によって取得された後に補正された補正画像とは、タイヤの径サイズ毎に予め用意された変換テーブルに基づいて、3次元座標に展開できるため、演算処理を簡便にできる。
【0018】
本発明の第5の特徴は、検査対象であるタイヤの検査面を撮像する第1撮像部と、前記タイヤの前記検査面を撮像する第2撮像部と、前記第1撮像部及び前記第2撮像部と前記タイヤの前記検査面とを前記タイヤの周方向に相対的に回転させることによって取得した前記タイヤの前記検査面の全周分の画像に基づいて前記タイヤの状態を検査するタイヤ検査方法であって、前記タイヤの回転軸方向視において、前記第1撮像部の光軸を所定の法線に一致させた状態で前記検査面を撮像する工程と、前記タイヤの回転軸視において、前記第2撮像部の光軸を前記所定の法線に平行にした状態で前記検査面を撮像する工程と、前記第2撮像部によって取得された画像と前記第1撮像部によって取得された画像とを一致させるように前記第2撮像部によって取得された画像を補正する工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、径方向のサイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能なタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態に係るタイヤ検査装置の外部構成を説明する模式図である。
【図2】図2は、タイヤ検査装置を図1に示す矢印A方向からみた平面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るタイヤ検査装置の内部構成を説明するブロック図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るタイヤ検査方法を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態に係るタイヤ検査方法において、画像補正部において実行される画像の補正を説明するフローチャートである。
【図6】図6(a)は、第1撮像部10(エリアカメラ)によって取得された全周分の画像の一部を説明する図であり、第2撮像部20(ラインカメラ)によって取得された全周分の画像の一部を説明する図である。
【図7】図7は、第2撮像部20(ラインカメラ)によって取得された画像の画素を、第1撮像部10(エリアカメラ)によって取得された画像の画素に対応付ける処理を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。具体的には、(1)タイヤ検査装置の外部構成、(2)タイヤ検査装置の内部構成、(3)タイヤ検査方法、(4)画像の補正方法、(5)作用・効果、(6)その他の実施形態について説明する。
【0022】
以下の図面の記載において、同一の部分には、同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0023】
(1)タイヤ検査装置の外部構成
図1は、タイヤ検査装置の外部構成を説明する模式図である。図2は、タイヤ検査装置を図1に示す矢印A方向からみた平面図である。タイヤ検査装置1は、検査対象であるタイヤTの画像を取得し、取得した画像を用いてタイヤTの状態を検査する。タイヤ検査装置1は、タイヤTの検査面Taを撮像する第1撮像部10及び第2撮像部20を有する。検査対象であるタイヤTは、タイヤTの中心軸と回転テーブルBの回転中心とが合致した状態で回転テーブルBの上に設置されている。タイヤTの中央部には、第1撮像部10と第2撮像部20とが取り付けられた支持機構30が配置されており、タイヤTの検査面Taが第1撮像部10及び第2撮像部20に対して相対的に回転される。図1には図示しないが、タイヤ検査装置1は、第1撮像部10及び第2撮像部20によって取得された画像に基づいてタイヤTの良否判定を行う制御系を有する。制御系の詳細は後述する。
【0024】
実施形態において、第1撮像部10は、エリアカメラである。エリアカメラは、撮像素子がマトリクス状に配置されたCCDカメラであり、波長分離フィルターを備え、エリア投光器11から照射された波長660nmのレーザスリット光を選択的に捉えて撮像することができる。エリアカメラによって撮像された画像は、傷、変形などを含むタイヤ表面の凹凸を判断するのに適している。タイヤ検査装置1は、いわゆる光切断法によって、第1撮像部10によって検査対象である検査面Taの凹凸を検出する。
【0025】
実施形態において、第2撮像部20は、カラーラインカメラである。ラインカメラは、撮像素子がライン状に配置されたCCDカメラ又はCMOSセンサであり、LEDなどの光源(ライン投光器21)から照射された光を捉えて撮像することができる。第2撮像部20は、1秒当たり1000〜4000フレームの撮像を行う。ラインカメラによって撮像された画像は、色、汚れなどを含むタイヤ表面の色彩を判断するのに適している。
【0026】
第1撮像部10は、検査対象であるタイヤTの検査面Taに対向して配置され、第1撮像部10の対物レンズの光軸Ax10(図2参照)は、検査面Taにおけるトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面を含む仮想平面Sに一致するように配置されている。図1においては、検査対象であるタイヤTのサイドウォール上の検査面Taにおけるライン部分L1が第1撮像部10の撮像領域である。
【0027】
第2撮像部20は、第1撮像部10に対して、検査面Taにおけるトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面を含む平面Sに直交する方向に所定の距離L0だけ平行移動した位置に配置される。図1においては、検査対象であるタイヤTのサイドウォール上の検査面Taにおけるライン部分L2が第2撮像部20の撮像領域に相当する。なお、ライン部分L3は、従来のタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法におけるラインカメラの撮像領域であり、タイヤTの法線に一致する。
【0028】
タイヤTの図1に示す矢印A方向(回転軸方向視)において、第1撮像部10は、第1撮像部10の光軸Ax10が法線N1に一致するとともに検査面Taを撮像するように配置されている。また、第2撮像部20は、タイヤTの回転軸方向視において、第2撮像部20の光軸Ax20が法線N1に平行に検査面Taを撮像するように配置されている。
【0029】
第1撮像部10と第2撮像部20とは、検査対称のタイヤTに対する相対位置及び角度を維持するために共通のフレーム31に固定されている。第1撮像部10は、仮想平面Sから検査面Taの少なくとも一部を撮像するようにフレーム31(後述する)に取り付けられる。
【0030】
第2撮像部20は、検査面Taにおいて第1撮像部10によって撮像される位置から所定間隔Lを隔てた位置を撮像するようにフレーム31に取り付けられる。すなわち、第1撮像部10と第2撮像部20とは、所定間隔(図1において間隔L0)を隔ててフレーム31に固定される。実施形態では、L=L0である。第1撮像部10の対物レンズの光軸、及び第2撮像部20のラインの中央に配置されたCCDカメラの対物レンズの光軸は、検査面Taに対して所定角度(例えば45度)に設定されている。
【0031】
支持機構30は、フレーム31とガイド部32とを有し、フレーム31は、ガイド部32に対して可動自在に取り付けられている。フレーム31には、第1撮像部10と第2撮像部20のほかに、エリアカメラ用のエリア投光器11、ラインカメラ用のライン投光器21が所定の位置関係で取り付けられている。
【0032】
エリア投光器11は、波長660nmのレーザスリット光を投光するレーザ投光器であり、レーザ光をスリット状に投光する。エリア投光器11より出射したレーザスリット光(第1スリット光という)は、検査面Taのタイヤ径方向に沿ってライン状に照射される。第1撮像部10(エリアカメラ)は、ライン部分L1を所定角度(例えば、45度)から撮像する。これにより、タイヤ表面の凹凸が撮像できる。
【0033】
ライン投光器21は、LED投光器である。ライン投光器12には、複数のLEDが配列されている。ライン投光器12のLEDから照射された白色光は、検査面Taのライン部分L1に照射された第1スリット光に平行かつ間隔L隔てたライン部分L2の周囲に照射される。
【0034】
タイヤTが回転テーブルBによって回転されることにより、ライン部分L1,L2は、検査面Ta上を連続的に移動する。すなわち、第1撮像部10及び第2撮像部20は、タイヤTの検査面Taの全周分の画像を取得することができる。
【0035】
(2)タイヤ検査装置の内部構成
次に、タイヤ検査装置1の制御系について説明する。タイヤTの外観画像と形状画像に基づくタイヤTの良否の判定は、コンピュータ100により処理される。図3は、タイヤ検査装置1の内部構成を説明するブロック図である。
【0036】
コンピュータ100は、第1画像入力部101と、第2画像入力部102と、画像データ補正部103と、判定部104と、記憶部105とを有する。
【0037】
第1画像入力部101は、第1撮像部10において撮像された画像の画像データを入力する。第2画像入力部102は、第2撮像部20において撮像された画像の画像データを入力する。
【0038】
画像データ補正部103は、第2撮像部20によって取得された画像と第1撮像部10によって取得された画像とを一致させるように第2撮像部20によって取得された画像を補正する。例えば、第1撮像部10と検査面Taとの距離、及び検査面Taと第1撮像部10の対物レンズの光軸との角度とを含む情報に基づいて、第2撮像部20によって取得された画像を補正する。画像データ補正部103は、第2撮像部20によって取得された画像と第1撮像部10によって取得された画像とを、後述するルックアップテーブルに基づいて、画素における座標系から実際の物理座標系に一旦変換した後、実際の物理座標系において、第2撮像部20によって取得された画像を第1撮像部10によって取得された画像補正に一致させる変換を行う。変換後の画像をルックアップテーブルを用いて再び画素座標に割当てる。
【0039】
画像データ補正部103によって実行されるルックアップテーブルを用いた画像の補正方法は、国際公開番号WO2006/054775に開示されている方法に従うことができる。
【0040】
判定部104は、第1撮像部10によって取得された画像と、第2撮像部20によって取得された後に補正された画像とを、予め決められた基準となる基準画像と比較することによりタイヤの良否を判定する。
【0041】
記憶部105には、ルックアップテーブルが格納される。また、タイヤTの良否を判定する基準となる基準画像が格納される。ルックアップテーブルは、第1撮像部10(エリアカメラ)によって撮像された画像、及び第2撮像部20(ラインカメラ)によって撮像された画像の任意の点の画素座標と実座標とが対応付けられたテーブルである。
【0042】
記憶部105には、少なくとも、検査対象であるタイヤTの検査面Taと第1撮像部10との距離、検査面Taと第1撮像部10の対物レンズの光軸とのなす角度などの情報が格納されている。
【0043】
タイヤ検査装置1は、このほかに、エリアカメラ用のエリア投光器11、及びラインカメラ用のライン投光器21における投光を制御する投光制御部106、回転テーブルBを制御するモータ制御部108、画像をモニター120に表示するための処理を実行するとともにモニターに出力する画像処理部107などを有する。ライン投光器12に設けられた複数のLEDは、光量が個別に制御可能とされており、第2撮像部20(ラインカメラ)で撮像された画像の光量が適切な一定値になるように、投光制御部106によってフィードバック制御されている。モータ制御部108は、回転テーブルBを回転させる図示しないモータを制御する。モータは、モータ制御部108により駆動制御され、撮像されるタイヤが載置される回転テーブル(図3に図示せず)を回転させる。モニター120には、検査対象であるタイヤTの検査結果が表示される。
【0044】
(3)タイヤ検査方法
次に、上述した構成を備えるタイヤ検査装置1によるタイヤ検査方法について説明する。図4は、本実施形態に係るタイヤ検査方法を説明するフローチャートである。
【0045】
ステップS1において、タイヤTがタイヤ検査装置1にセットされる。ステップS2において、コンピュータ100は、回転テーブルBを回転させることによって、第1撮像部10及び第2撮像部20に対してタイヤTを回転させる。
【0046】
ステップS3において、コンピュータ100は、タイヤTの検査面Taのライン部分L1に、エリア投光器11とライン投光器21とから測定用の光を照射するとともに、ライン部分L1を第1撮像部10により、ライン部分L2を第2撮像部20により、それぞれ撮像する。
【0047】
図4に示すタイヤ検査方法では、ステップS4において、コンピュータ100は、タイヤTの検査面Taの全周に亘って撮像したか否かを判別し、全周に亘って撮像し終えていない間はステップS3、S4を繰り返す。すなわち、コンピュータ100は、タイヤTを回転させることにより、検査面Taに対して撮像するライン部分L1、L2を移動させて撮像を続ける。全周に亘って撮像を終了すると、ステップS5に進む。すなわち、コンピュータ100は、回転テーブルを停止する。
【0048】
ステップS6において、コンピュータ100は、第1撮像部10と検査面Taとの距離、及び検査面Taと第1撮像部10の対物レンズの光軸との角度などの情報に基づいて、第2撮像部20によって取得された画像を補正する。その後、コンピュータ100は、第1撮像部10によって取得された画像と、第2撮像部20によって取得された後に補正された画像とを合成する。
【0049】
ステップS7において、コンピュータ100は、合成した画像を、予め決められた基準となる画像と比較することによりタイヤの良否を判定する。図4に示すタイヤ検査方法において、良否の判定とは、画像の濃淡の程度が許容範囲内にあれば良とし、許容範囲を超えていれば不良と判定する。また、画像に基づいて、タイヤの形状上の良否を判定する。コンピュータ100は、画像の不良部分にマークを設定してもよい。モニター120は、検査対象であるタイヤTについての判定の結果を表示する。
【0050】
(4)画像の補正方法
次に、タイヤ検査方法のステップS6において実行される画像の補正について詳細に説明する。図5は、画像の補正を説明する図である。図6(a)は、第1撮像部10によって撮像された全周分の画像の一部を説明する模式図であり、図6(b)は、第2撮像部20によって撮像された全周分の画像の一部を説明する模式図である。
【0051】
エリアカメラの光軸とラインカメラの光軸が、それぞれ検査面Taにおけるトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面を含む仮想平面Sに一致するように配置した状態でタイヤを定速で回転させながら撮影した画像(例えば、図5のライン部分L1とL3において撮像された画像)同士は、回転方向にずらすことにより、同じ被写体を捉えた画素同士を対応させることができる。
【0052】
一方、本実施形態のタイヤ検査装置1では、第1撮像部10は、仮想平面Sから検査面Taの(ライン部分L1)を撮像するようにフレーム31に取り付けられており、第2撮像部20は、検査面Taにおいて第1撮像部10による撮像位置(ライン部分L1)から所定間隔Lを隔てたライン部分L2を撮像するようにフレーム31に取り付けられる。すなわち、検査面Taにおいて、撮影領域であるライン部分L1とライン部分L2とが平行になるように設定されている。このため、第2撮像部20によって取得される画像には、タイヤ径方向とライン部分L2とのなす角θラジアン分の回転歪みが含まれる(図6(b)参照)。そこで、本実施形態では、第2撮像部20によって撮像されたライン部分L2がトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面を含む仮想平面Sに一致するように配置した状態で取得された場合と同じ画像になるように、第2撮像部20によって取得された画像を補正する。
【0053】
画像の補正の方法について、以下に説明する。この補正は、第2撮像部20(ラインカメラ)によって取得された画像202の画素を、第1撮像部10(エリアカメラ)によって取得された画像201の画素に対応付ける処理である。図7は、補正処理を説明する模式図である。この補正では、図7に示すように、画素(X01,Y01)を画素(X11,Y11)に対応付ける。すなわち、画素(X11,Y11)に、被写体を捉えた画素(X01,Y01)の色調や階調などの色情報を割当てる。同様に、画素(X02,Y02)を画素(X12,Y12)に対応付ける。
【0054】
(4−1)第2撮像部20によって取得された画像の径方向補正
径方向の補正について、図5を用いて説明する。ライン部分L1の径方向内側の端を点aとし、ライン部分L2の径方向内側の端を点A’とする。タイヤTの回転中心から点aまでの回転半径を半径Rとする。また、点aを通過しライン部分L1と直交する仮想線l1と、ライン部分L2との交点を点Aとする。点aと点Aとの距離はLで表される。図5に平面座標系を設定し、点Aの位置が実座標(I,J)で表され、点A’の位置が実座標(I’,J’)で表されるものとする。
【0055】
第2撮像部20(ラインカメラ)によって取得される全周分の画像は、第1撮像部10(エリアカメラ)によって取得された画像よりも、W方向に誤差dr分だけ長い。タイヤTの回転中心Oと点aを結ぶ直線と、中心Oと点A’とを結ぶ直線とのなす角度θとするとき、角度θは、以下の式(1)により算出される。
【数1】

【0056】
したがって、誤差drは、以下の式により算出される。
【数2】

【0057】
続いて、このW方向の誤差drに基づいて、第2撮像部20(ラインカメラ)によって取得される全周分の画像の径方向の誤差drを補正する。続いて、実際の3次元空間における座標(物理座標)を計算する。点Aと点A’の物理座標は、以下の式(3)及び(4)により算出される。
【数3】

【0058】
次に、ルックアップテーブルを用いて、点Aの画素座標(I,J)から点Aの物理座標(X,Y)を求める。また、点A’の物理座標(X’,Y’)は、式(5),(6)により算出される。
【数4】

【0059】
次に、ルックアップテーブルを用いて、点A’の物理座標(X’,Y’)から点A’の画素座標(I’,J’)を求める。このように、算出した直線距離drに基づいて、点A’の物理座標(X’,Y’)を点Aの物理座標(X,Y)に変換する補正を行うことができる。
【0060】
(4−1)第2撮像部20によって取得された画像の周方向補正
周方向の補正について、図5を用いて説明する。周方向には、回転中心OからタイヤTの径方向外側に向かうに連れて回転方向(D方向)へのずれが大きくなるような補正を施す。ライン部分L2上の任意の点をライン部分L3に対応する補正を行う。すなわち、ライン部分L2上にある任意の点pにおける補正量mを求める。補正量mは、以下の式(7)により算出される。
【数5】

【0061】
式(1)より、θの値を上式に代入する。
【数6】

【0062】
次に、以下の式(9)において、点pの画素をライン部分L3の対応する点qにシフトする量(すなわち、点pの画素の情報の変換後の移動先の画素までの数)であるシフト量Kを算出する。全周分の画像データを得るために第2撮像部20によって撮影する撮影数Sとするとき、シフト量Kは、以下の式(9)で表される。
【数7】

【0063】
従って、周方向には、以上のように算出されたシフト量Kだけ、画素を移動することにより、第2撮像部20(ラインカメラ)によって取得された画像202の画素を、第1撮像部10(エリアカメラ)によって取得された画像201の画素に対応付けることができる。
【0064】
(5)作用・効果
実施形態のタイヤ検査装置1によれば、タイヤTの回転軸方向視(矢印A方向視)において、第1撮像部10の光軸Ax10が所定の法線N1に一致するとともに検査面Taを撮像するように配置されており、第2撮像部20の光軸Ax20が第1撮像部10の光軸Ax10に平行に検査面Taを撮像するように配置されている。また、画像データ補正部103が第2撮像部20によって取得された画像と第1撮像部10によって取得された画像とを一致させるように第2撮像部20によって取得された画像を補正する。
【0065】
このため、タイヤ検査装置1では、第1撮像部10と検査面Taとの位置関係だけを調整すればよい。第2撮像部20によって取得された画像は、画像データ補正部103により補正されることにより、第2撮像部20によって取得された画像と第1撮像部10によって取得された画像とを一致させることができる。これにより、径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能である。
【0066】
タイヤ検査装置1では、第1撮像部10は、撮像素子がマトリクス状に配列されたエリアカメラであり、第2撮像部20は、撮像素子が直線状に配列されたラインカメラである。すなわち、形状を判定するための画像と色彩を判定するための画像とを別々のカメラによって取得することができるため、精度を向上させることができる。
【0067】
タイヤ検査装置1は、第1撮像部10と第2撮像部20とをともに支持するとともに、第1撮像部10と検査面Taとの撮像距離、及び第2撮像部20と検査面Taとの撮像距離を変更する支持機構30、フレーム31、ガイド部32を備える。タイヤ検査装置1では、支持機構30によって第1撮像部10と第2撮像部20とが稼動可能にともに支持されるため、支持機構30により、撮像距離を変更するだけで、第1撮像部10によって撮像される撮像領域(ライン部分L1)の広さと、第2撮像部20によって撮像される撮影領域(ライン部分L2)の広さとを変更できる。従って、径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能である。
【0068】
タイヤ検査装置1では、支持機構30は、複数の撮像距離が設定可能とされており、第1撮像部10によって取得された画像に第2撮像部20によって取得された後に補正された補正画像を対応させるためのルックアップテーブルを有する。画像データ補正部103は、ルックアップテーブルに基づいて第1撮像部10によって取得された画像と、補正画像とを3次元座標に変換し、3次元座標系において、両方の画像を一致させる補正を行った後、画素座標系に再度変換する。このように、第1撮像部10によって取得された画像と、第2撮像部20によって取得された後に補正された補正画像とをルックアップテーブルに基づいて、3次元座標に展開できるため、演算処理を簡便にできる。
【0069】
タイヤ検査装置1では、画像データ補正部103により画像を変換することにより、検査対象であるタイヤのタイヤサイズの変更に対して、支持機構30の撮像距離のみを設定することにより対応可能である。従来のタイヤ検査装置では、検査対象であるタイヤの径サイズが変わると、焦点距離、撮像領域などの複数の数値をエリアカメラとラインカメラのそれぞれに対して調整し直さねばならなず、調整作業が煩雑であったが、タイヤ検査装置1では、径サイズの異なるタイヤの検査に容易に適用可能である。
【0070】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0071】
上述した実施形態では、形状画像データと外観画像データとの対応付けを補正した後に、外観画像データ取得部104によって取得された画像データを形状画像データ取得部102によって取得された画像データに合成する。しかしながら、形状画像データと外観画像データとの対応付けを補正した後に、形状画像データ取得部102によって取得された画像データを外観画像データ取得部104によって取得された画像データに合成してもよい。
【0072】
タイヤTが回転中心Oを回転軸として、タイヤTが回転しながら検査面Taを撮像する場合について説明した。しかし、相対的に回転するものれあればよく、例えば、タイヤTが固定されており、タイヤ検査装置1が検査面Taを撮像しながら周回するものであってもよい。
【0073】
ラインカメラとしては、カラーラインカメラを用いることができる。カラーラインカメラを適用することにより、被検体の外観データをカラー画像で入手できる。従って、タイヤTの良否判定がし易くなる。
【0074】
また、ラインカメラとして3板式ラインカメラも用いることができる。3板式ラインカメラは、色の3原色であるR,G,Bごとに別々のCCDカメラが撮像を行うカメラである。各原色の外観データが入手でき、タイヤTの良否をより正確に判定することができる。
【0075】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0076】
1…タイヤ検査装置、 10…第1撮像部、 11…エリア投光器、 12…ライン投光器、 20…第2撮像部、 21…ライン投光器、 30…支持機構、 31…フレーム、 32…ガイド部、 100…コンピュータ、 101…第1画像入力部、 102…形状画像データ取得部、 102…第2画像入力部、 103…画像補正部、 104…判定部、 104…外観画像データ取得部、 105…記憶部、 106…投光制御部、 107…画像処理部、108…モータ制御部、 120…モニター、 201…画像、 202…画像、 Ax10,20…光軸、 B…回転テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるタイヤの検査面を撮像する第1撮像部と、
前記タイヤの前記検査面を撮像する第2撮像部と、
前記第1撮像部及び前記第2撮像部と前記タイヤの前記検査面とを前記タイヤの周方向に相対的に回転させることによって取得した前記タイヤの前記検査面の全周分の画像に基づいて前記タイヤの状態を検査するタイヤ検査装置であって、
前記第1撮像部は、
前記タイヤの回転軸方向視において、前記第1撮像部の光軸が所定の法線に一致するとともに前記検査面を撮像するように配置されており、
前記第2撮像部は、
前記タイヤの回転軸方向視において、前記第2撮像部の光軸が前記所定の法線に平行に前記検査面を撮像するように配置されており、
前記第2撮像部によって取得された画像と前記第1撮像部によって取得された画像とを一致させるように前記第2撮像部によって取得された画像を補正する画像補正部と
を有するタイヤ検査装置。
【請求項2】
前記第1撮像部は、撮像素子がマトリクス状に配列されたエリアカメラであり、
前記第2撮像部は、撮像素子が直線状に配列されたラインカメラである請求項1に記載のタイヤ検査装置。
【請求項3】
前記第1撮像部と前記第2撮像部とをともに支持するとともに、前記第1撮像部と前記検査面との撮像距離、及び前記第2撮像部と前記検査面との撮像距離を変更する支持機構を備える請求項1に記載のタイヤ検査装置。
【請求項4】
前記支持機構は、複数の前記撮像距離が設定可能とされており、
前記第1撮像部によって取得された画像に、前記第2撮像部によって取得された後に補正された補正画像を対応させる変換テーブルを有し、
前記画像補正部は、
前記変換テーブルに基づいて前記第1撮像部によって取得された画像と、前記補正画像とを一致させる請求項3に記載のタイヤ検査装置。
【請求項5】
検査対象であるタイヤの検査面を撮像する第1撮像部と、
前記タイヤの前記検査面を撮像する第2撮像部と、
前記第1撮像部及び前記第2撮像部と前記タイヤの前記検査面とを前記タイヤの周方向に相対的に回転させることによって取得した前記タイヤの前記検査面の全周分の画像に基づいて前記タイヤの状態を検査するタイヤ検査方法であって、
前記タイヤの回転軸方向視において、前記第1撮像部の光軸を所定の法線に一致させた状態で前記検査面を撮像する工程と、
前記タイヤの回転軸視において、前記第2撮像部の光軸を前記所定の法線に平行にした状態で前記検査面を撮像する工程と、
前記第2撮像部によって取得された画像と前記第1撮像部によって取得された画像とを一致させるように前記第2撮像部によって取得された画像を補正する工程と
を有するタイヤ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−247639(P2011−247639A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118422(P2010−118422)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】