ナノ構造表面の医療装置応用
本発明は新規ナノファイバー増大表面積基板及び前記基板を含む各種医療装置用構造、並びに前記基板と医療装置の方法及び使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国仮特許出願第60/549,711号(出願日2004年3月2日)及び米国特許出願第10/902,700号(出願日2004年7月29日)の優先権を主張する。本願は更に各々その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許出願第10/828,100号(出願日2004年4月19日)の一部継続出願、米国特許出願第10/833,944号(出願日2004年4月27日)の一部継続出願、及び米国特許出願第10/792,402号(出願日2004年3月2日)の一部継続出願である米国特許出願第10/840,794号(出願日2004年5月5日)の一部継続出願としての優先権も主張する。
(発明の技術分野)
【0002】
本発明は主にナノ構造の分野に関する。より詳細には、本発明はナノファイバーを含む医療装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば体内又は体外装置(例えばカテーテル)、一時的又は永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、及び埋込型装置(例えば整形外科用インプラント)等の医療装置は日和見細菌や他の感染性微生物に感染し易く、場合によっては埋込型装置を取り外すことが必要になる。このような感染の結果、疾患、長期入院、又は死に至ることもある。従って、留置カテーテル、整形外科用インプラント、ペースメーカー、コンタクトレンズ、ステント、血管グラフト、塞栓装置、動脈瘤修復装置及び他の医療装置のバイオフィルム形成及び感染を防止することは非常に望ましい。
【0004】
生体材料の細菌増殖抵抗性の強化と生体材料表面の迅速な組織組込み及びグラフトの促進はいずれも研究分野である。しかし、滅菌及び無菌法の進歩と生体材料の進歩にも拘わらず、細菌及び他の微生物感染は依然として医療インプラントの使用における深刻な問題である。例えば、全院内感染の半数以上が移植医療装置に起因する。これらの感染は医療インプラントの挿入部位に形成されるバイオフィルムに起因することが多い。残念ながら、このような感染は生得免疫系応答と従来の抗生物質治療に耐性であることが多い。当然のことながら、このような感染は人体治療のみならず、多数の他の生物の治療でも問題になる。
【特許文献1】米国特許第4,739,768号
【特許文献2】米国特許第4,884,575号
【非特許文献1】Parodiら,Ann.Vase.Surg.1991;5:491−499
【非特許文献2】Whiteら,J.Endovasc.Surg.1994;1:16−24
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増大表面積をもつ医療装置及び前記表面積を含む構造/装置、並びに医療装置における増大表面積の使用方法が開発されるならば望ましい。本発明はこれらの利点及び以下の記載から自明となる他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の各種態様はナノファイバー増大表面を含むクランプ、弁、体内又は体外装置(例えばカテーテル)、一時的又は永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、及び埋込型装置(例えば整形外科用インプラント)等の各種医療装置を含む。このような増大表面はこのような表面を使用する医療装置の多くの属性を強化し、例えば生物汚染を防止/低減し、疎水性により流動性を増加し、接着性、バイオインテグレーション等を増加する。
【0007】
本発明の第1の側面では、複数のナノ構造コンポーネントを結合した1個以上の表面をもつ本体構造を含む医療装置が開示される。医療装置としては体内もしくは体外装置、一時的もしくは永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、埋込型装置、カテーテル、弁又は本発明の教示によるナノ構造表面の恩恵を受ける他の装置が挙げられる。複数のナノ構造コンポーネントとしては例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーが挙げられる。複数のナノ構造コンポーネントは装置の特定用途に応じて患者の身体の1個以上の組織表面に対する装置の接着性、非接着性、摩擦性、開存性、又はバイオインテグレーションの1種以上を強化することができる。医療装置の表面のナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)は場合によりナノファイバー表面をより頑丈にするために溶解速度の遅い生体適合性ポリマー(又は他の)マトリックスに埋込むことができる。ポリマーマトリックスは各ナノファイバーの長さの殆どを保護することができ、末端のみが損傷を受け易い。水溶性ポリマーの作製は多数の異なる方法で実施することができる。例えば、モノマーと酸化剤から主に構成される希水溶液中でポリマー鎖をin situ形成することができる。この場合には、ポリマーは実際に溶液中で形成された後に約10〜250オングストロームを越える厚さ、より好ましくは10〜100オングストロームの厚さの均一な超薄膜としてナノファイバー表面に自然吸着される。
【0008】
複数のナノファイバー又はナノワイヤーは例えば約1ミクロン〜少なくとも約500ミクロン、約5ミクロン〜少なくとも約150ミクロン、約10ミクロン〜少なくとも約125ミクロン、又は約50ミクロン〜少なくとも約100ミクロンとの平均長とすることができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーは例えば約5nm〜少なくとも約1ミクロン、約5nm〜少なくとも約500nm、約20nm〜少なくとも約250nm、約20nm〜少なくとも約200nm、約40nm〜少なくとも約200nm、約50nm〜少なくとも約150nm、又は約75nm〜少なくとも約100nmの平均直径とすることができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーは医療装置の1個以上の表面の平均密度を例えば約0.11本/平方ミクロン〜少なくとも約1000本/平方ミクロン、約1本/平方ミクロン〜少なくとも約500本/平方ミクロン、約10本/平方ミクロン〜少なくとも約250本/平方ミクロン、又は約50本/平方ミクロン〜少なくとも約100本/平方ミクロンとすることができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーはシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。
【0009】
ナノファイバー又はナノワイヤーは医療装置の本体構造の1個以上の表面にナノファイバー又はナノワイヤーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着させてもよいし、ナノファイバー又はナノワイヤーは例えば1個以上の機能的部分を使用して本体構造の1個以上の表面にナノファイバー又はナノワイヤーを(例えば共有結合により)結合することにより前記1個以上の表面に付着させてもよい。医療装置の本体構造は各種材料から構成することができ、場合により複数のナノ構造コンポーネントを本体構造の材料に組込んでもよい。ナノファイバー(又は他のナノ材料)は剛性と強度を強化するために本体構造の材料にナノファイバーを組込む前にナノファイバーを焼結(又は例えば化学的手段により架橋)することにより補強することができる。医療装置は更に1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含むことができ、及び/又はナノファイバー又はナノワイヤーはナノファイバー又はナノワイヤーの耐久性を増加するためにマトリックス材料(例えばポリマー材料)に組込むことができる。
【0010】
本発明の別の側面では、ステントの1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む血管ステントが開示される。複数のナノ構造コンポーネントとしては例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーが挙げられる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーは例えばシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーはステントの1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させるか、あるいは例えば1個以上の機能的部分又は結合化学を使用することによりナノファイバー又はナノワイヤーを1個以上の表面に別個に共有結合することにより前記1個以上の表面に付着させることができる。ステントはNitinol、ニッケル合金、錫合金、ステンレス鋼、コバルト、クロム、金、ポリマー、又はセラミックから選択される各種材料から作製することができる。ステントはナノ構造表面に直接吸着させるかあるいは1個以上のシラン基又は他の結合化学の使用により(例えば共有、イオン、ファン・デル・ワールス等の結合により)ナノ構造表面と結合した薬剤化合物を含むことができる。
【0011】
本発明の別の態様では、患者の体内で動脈瘤の領域に配置されるように構成されたグラフト部材を含む動脈瘤修復装置が開示され、グラフト部材はグラフト部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。複数のナノファイバーは例えばシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属又は金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーはグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着させてもよいし、あるいはナノファイバー又はナノワイヤーは例えば共有、イオン、又は他の結合メカニズムによりグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバー又はナノワイヤーを結合することにより前記1個以上の表面に付着させてもよい。グラフト部材は処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製することができ、前記ポリマー繊維としては限定されないが、Dacron、Teflon、金属もしくは合金メッシュ、セラミック又はガラス繊維から選択される合成ポリマーが挙げられる。グラフト部材はグラフト部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性コーティングを含むことができる。1態様では、グラフト部材は患者の大動脈内の動脈瘤の領域に配置されるように構成される。グラフト部材は脳の動脈瘤の領域に血液を供給するか又は前記領域から血液を供給する血管の側壁に近接して配置されるように構成することもできる。
【0012】
本発明の別の態様では、端端又は端側吻合で第1の血管を第2の血管と結合することにより患者に吻合を形成するための医療装置が提供され、前記装置は管状部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む管状部材を含む。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーはシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーは管状部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させるか、あるいは例えば共有、イオン又は他の結合手段を使用して1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着させることができる。管状部材は処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製することができる。1態様では、管状部材は端側吻合を実施するためのTチューブ又は端端吻合を実施するためのストレートチューブを含むことができる。管状部材は管状部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含むことができる。管状部材は例えば円形、半円形、楕円形、及び多角形から選択される横断面形状をもつことができる。
【0013】
本発明の別の態様では本体構造の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む本体構造を含む埋込型整形外科用装置が開示される。埋込型整形外科用装置は人工膝関節、人工股関節、軟骨を置換又は補強するものを含む足関節、肘関節、手関節、及び肩関節インプラント、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、及び尺骨の骨折修復及び外部固定用等の長骨インプラント、固定装置を含む脊髄インプラント、頭蓋骨固定装置を含む顎顔面インプラント、人工骨置換、歯科用インプラント、ポリマー、樹脂、金属、合金、プラスチック及びその組合せから構成される整形外科用セメント及び接着剤、釘、ネジ、プレート、固定装置、ワイヤー及びピンの少なくとも1種から選択することができる。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーはシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーは本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させるか、あるいは(例えば共有的、イオン的等により)ナノファイバーを1個以上の表面に別個に結合することにより前記1個以上の表面に付着させることができる。装置の本体構造は処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製することができる。本体構造は本体構造の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含むことができる。
【0014】
本発明の別の態様では、複数のナノ構造コンポーネントを結合したベースメンブレン又はマトリックスを含む神経再生用スカフォールドを提供するためのバイオエンジニアドスカフォールド装置が開示される。メンブレン又はマトリックスは天然もしくは合成ポリマー、導電性ポリマー、金属、合金、セラミック、グラスファイバー、又はシリコーンの1種以上から作製することができる。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。メンブレン又はマトリックスのナノ構造表面は軸索伸長と機能的神経活動を助長するために1種以上の薬剤、細胞、繊維芽細胞、神経増殖因子(NGF)、細胞播種用化合物、神経栄養増殖因子もしくは前記因子を産生する遺伝子組換え細胞、VEGF、ラミニン又は他の薬剤を含浸させるか又はこれらと結合することができる。
【0015】
本発明の別の側面では、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む子宮又は卵管内植込み用医療装置が開示される。
【0016】
本発明の別の側面では、1個以上の表面が体液の結晶化を防ぐように構成された医療装置が開示され、前記装置は表面と前記表面に結合した複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む。
【0017】
本発明の別の態様では、装置の1個以上の表面が血栓形成を防ぐように構成された医療装置が開示され、前記装置は表面と複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む。
【0018】
本発明の別の態様では、1個以上の表面が組織浸潤を防ぐように構成された医療装置が開示され、前記装置は、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含み、前記ナノファイバー又はナノワイヤーは疎水性に構成されている。
【0019】
本明細書に開示する医療装置の任意1種以上で患者を治療するための方法も開示され、例えば、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む医療装置と患者を接触させる段階を含む患者の治療方法が挙げられる。患者の身体に薬剤化合物を投与するための方法も開示され、例えば少なくとも1個の表面と、前記表面に結合した複数のナノファイバーと、前記複数のナノファイバーに結合した薬剤化合物を含む薬剤溶出装置を提供する段階と;前記薬剤溶出装置を患者の体内に導入する段階と;患者の体内に薬剤化合物を送達する段階を含む。1態様における薬剤溶出装置は冠動脈ステントを含むが、疾患(例えば病変)部位への局所薬剤送達の恩恵を受ける任意装置を本発明の方法では使用することができる。冠動脈ステントを薬剤溶出装置として使用する場合には、薬剤化合物は例えばパクリタキセル又はシロリムス、又は他の各種薬剤を含むことができ、限定されないが、抗炎症性免疫調節剤(例えばデキサメタゾン、M−プレドニソロン、インターフェロン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、スタチン、シクロスポリン、トラニラスト、及びバイオレスト);抗増殖性化合物(例えばタキソール、メトトレキセート、アクチノマイシン、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、RestenASE、及びPCNAリボザイム);遊走抑制剤(例えばバチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフギノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコール);及び治癒と再内皮細胞化を促進する化合物(例えばVEGF、エストラジオール、抗体、NO供与剤、及びBCP671)の1種以上が挙げられる。薬剤化合物は薬剤溶出装置のナノファイバー表面に直接吸着させてもよいし、1個以上のシラン基、リンカー分子又は他の共有、イオン、ファン・デル・ワールス等の結合手段の使用により結合してもよい。ナノファイバー表面は薬剤化合物が時間をかけてゆっくりと溶出するように構成してもよい。複数のナノファイバーは場合によりナノファイバーの耐久性を強化するように生体適合性非血栓形成性ポリマーコーティングに埋込まれる。
【0020】
本発明の上記及び他の目的と特徴は添付図面と併せて以下の詳細な記載を読むと、より十分に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
当然のことながら、ナノファイバー増大表面積を含む使用又は装置等の本発明の特定態様及び例証は限定的であるとみなすべきではない。換言するならば、本明細書の記載により本発明を例証するが、特に指定しない限り、本発明は個々の細かい記載に拘束されない。これらの態様は増大表面積ナノファイバー表面とその構造体の各種使用/適用を例証するものである。この場合も、本明細書に列挙する特定態様は本発明の増大表面積ナノファイバー構造を含む他の使用/適用を制限するとみなすべきではない。
【0022】
図1に示すように、ナノファイバーは場合によりナノファイバーを付設する医療装置表面に複雑な三次元パターンを形成する。この場合も、当然のことながら本発明の他の態様ではナノファイバーは高さ、形状等がより均一である。このような複雑さの程度は例えばナノファイバーの長さ、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ:直径アスペクト比、(使用する場合には)ナノファイバーに付着した部分、及びナノファイバーの成長条件等に部分的に依存する。二次表面との緊密接触度を変化させるのに有用なナノファイバーの屈曲、絡み合い等は場合により例えば単位面積当たりのナノファイバー数の調節や、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ及び組成等により操作される。従って、当然のことながら、本発明のナノファイバー基板の生体有用性は場合により上記及び他のパラメーターを操作することにより調節される。ナノファイバー(又は他のナノ材料)はナノファイバーを本体構造の材料中又は材料上に組込む前又は組込んだ後にファイバーを焼結(又は例えば化学的手段によりファイバーを架橋)して剛性と強度を強化することにより補強することができる。
【0023】
同様に当然のことながら、ナノファイバーは選択態様では湾曲又はカール等することにより、ナノファイバーと該当基質表面の接触表面積を増加することができる。ナノファイバーと第2の表面を複数点で接触させることにより緊密接触度が増すので、ナノファイバーと第2の基質の間のファン・デル・ワールス引力、摩擦力、又は他の同様の接着/相互作用力が増加する。例えば、カールした1本のナノファイバーは場合により第2の基質と多数回緊密接触することができる。当然のことながら、所定の選択態様では、ナノファイバーは第2の表面から第1の表面側に再びカール/湾曲する場合には第1の表面と再接触することもできる。単一ナノファイバーと第2の基質/表面の間に複数の接触点(又は例えば湾曲したナノファイバーがその先端直径よりも大きな緊密接触面積をもつ場合、例えばナノファイバーの側長が基質表面と接触する場合には更に大きな接触点)を介在させることが可能になるので、カール/湾曲ナノファイバーからの緊密接触面積はナノファイバーがカール又は湾曲しない傾向にある場合(即ち一般に第2の表面に対して「直線状」の外観をもつ場合)よりも大きくなる場合がある。従って、本発明の全態様ではないが、所定態様では、本発明のナノファイバーは屈曲、湾曲又はカール形状を含む。当然のことながら、単一ナノファイバーが表面全体に蛇行又は螺旋状の場合(但し、第1の表面に結合している単位面積当たりのファイバーが1本である場合)にも、ファイバーは二次表面と場合により各々比較的大きな接触面積で接触する複数の緊密接触点を提供することができる。
I)静菌性疎水性抗血栓性カテーテル内腔としてのナノファイバー表面
【0024】
カテーテルは例えば静脈内、動脈、腹腔、胸膜、髄腔内、硬膜下、泌尿器、滑膜、婦人科、経皮、胃腸、膿瘍ドレン、及び皮下用途等の医療用途に広く使用されている。静脈内注入は体液、栄養、血液又は血液製剤、及び薬剤を患者に導入するために使用される。これらのカテーテルは短期、中期、及び長期用として配置される。カテーテルの種類としては標準IV、末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)/ミッドライン、中心静脈カテーテル(CVC)、血管造影用カテーテル、ガイドカテーテル、栄養管、内視鏡カテーテル、Foleyカテーテル、導尿カテーテル、及びニードルが挙げられる。カテーテル合併症としては静脈炎、局所感染及び血栓症が挙げられる。
【0025】
静脈内療法は患者治療における重要な要素である。米国では年間8人に1人が何らかの静脈内療法を受ける。今日では輸液療法がほぼ日常的である。病院では、外科患者の90%と非外科入院患者の3分の1が何らかの静脈内療法を受ける。米国の医療装置製造業者はカテーテル産業を席巻しており、世界中で使用されているカテーテルの70〜80%を生産している。1997年の全世界のカテーテル製品の総売上高は約73億ドルであり、毎年10.4%ずつ堅調に増加している。しかし、最大部門は尿カテーテルと透析カテーテルから主に構成される腎臓市場である。現在は40億ドルの部門であるが、ほどなく71億ドルに達すると予想される。
【0026】
最もよく知られている泌尿器カテーテルはFoleyカテーテルであり、1930年代から市販されている。Foleyカテーテルや他の体内留置及び外部コンドーム型カテーテルは失禁、瀕死患者、及び多くの場合には外科手術後又は怪我もしくは疾病で能力を奪われた後の膀胱導尿用に使用されている。これらの比較的使いやすいカテーテルは世界中の病院、老人ホーム、及び在宅看護環境で使用されている。透析カテーテルには血液透析と腹膜透析の2種類がある。このカテーテル部門の末端消費者は血管外科医とインターベンショナルラジオロジストであるが、一旦長期カテーテルポートを設置すると、腎臓医が挿入部位とカテーテル診断治療をモニターすることになる。
【0027】
従って、本発明の各種態様では、カテーテル及び関連医療装置を作製するために材料表面内、表面上又は表面下でナノファイバー増大表面を使用する。本発明のナノファイバー表面カテーテルの静菌性は場合により感染を減らすことができ、他方、疎水性は場合により液体流動性を増すことができる。このような装置の抗血栓性は場合によりカテーテルを閉塞させる血栓症と塞栓を減らすことができる。カテーテル製造業者は生体適合性を増し、より良好な感染防除を提供するようなカテーテル材料とカテーテルデザインの改良を望んでいる。しかし、進歩したとは言え、現時点で感染は依然として大きな問題である。しかし、カテーテルの作製にナノファイバー増大表面を使用すると、場合によりこのような問題を改善することができる。
【0028】
ナノファイバー増大表面の使用により感染を減らし、流動性を増し、血栓形成を減らしたカテーテル内腔の性能利点が本発明の特徴である。このような特徴は場合により(ナノファイバーをコーティングしたカテーテル内腔を使用する結果として)カテーテル合併症を減らし、カテーテルを交換するまでに留置可能な時間を延ばすことができる。
【0029】
カテーテルは場合により体内の任意場所に設置され(即ちカテーテルの分類はIVに止まらない)、一般に例えば静脈内に設置するために十分な強度をもち且つ患者の体内で屈曲するために十分な弾性をもつプラスチック製である。カテーテル管理(例えば交換時間)を減らし、例えば皮膚「接触」、生物汚染等によるカテーテル汚染を減らすことが一般に望ましい。静脈炎や、血栓を例えば下流に押し流すために「フラッシュ」を使用することに起因し得る流動性を低下させる任意問題を避けることも望ましい。本発明の態様は本質的に静菌性、疎水性及び抗血栓性であるため、このような問題がない。
【0030】
本発明の付着防止の側面は場合により創傷ドレナージ用カテーテルでも有用である。このようなカテーテルは一般に細菌汚染等の問題がある。従って、本発明の態様を使用すると、薬剤使用(例えば抗生物質)を減らし、苦痛を減らし、付加操作の必要を減らし、感染率を減らすことができる。本明細書に説明するように、本発明のカテーテルは場合により感染低下等を更に助長することが可能な化合物(例えば銀化合物、酸化チタン、抗生物質等)をコーティングする。
II)使い捨て外科用リトラクター、歯科用リトラクター及び配置装置におけるナノファイバー増大表面
【0031】
外科では露出、外科的アプローチ、及びインプラント配置の目的で臓器や組織を位置決め又は移動(例えば操作)するのにリトラクターと鉗子が一般に使用されている。歯科では小型の歯修復物(例えばクラウン、インレー、オンレー、ベニア、インプラント/インプラントアバットメント等)を配置するためや、各種歯周、口腔外科及び歯内処置で歯肉組織を位置決めするために一般に鉗子を使用している。この市場部門における既存歯科装置は末端が粘着性のプローブ(Grabits(登録商標))であるが、非滅菌性であり、生体組織に接着することができず、接着したインプラントから取り外しにくいため、歯科医に嫌われている。
【0032】
ナノファイバー増大表面により最低圧で発生される強い牽引力は場合により外科臓器移動及び後退における組織損傷を最小にすることができる。弱い点負荷で発生される強い牽引力は場合により歯科修復物の歯科外科的調節及び配置を改善することができる。生体組織と不活性インプラントに付着する滅菌可能なプローブの利点は既存技術に対して顕著な利点を提供すると考えられる。
【0033】
歯付きの破砕用(鋸歯付き)鉗子に勝る性能利点、外科処置速度の増加及び組織損傷の低下は特に本発明の大きな利点である。ナノファイバーをコーティングした本発明のリトラクターを使用すると、使用し易く、歯科外科処置速度が増し、インプラントの操作が安全であるため、外科手術後の組織外傷とそれに伴う炎症が減ると共に治癒率が増加すると予想される。
【0034】
本発明の所定態様はナノファイバー増大表面をもつ使い捨てリトラクターを含む。更に、他の態様は例えば逆ピラミッド型(例えば高さ1cm)を含む。このようなピラミッドの頂点を使用して神経等に接触することができる。また、大型の対象には平坦面を使用することができ、更に他の異なる寸法の対象には稜部を使用することができる。本発明のリトラクターは場合により特定用途に応じて各種寸法と形状にすることができる。この場合も、例えば歯科でクラウン等を操作及び配置するために本発明のリトラクターを使用することができる。
III)ナノファイバー増大表面の使用による腹腔鏡クリップにおける牽引増加
【0035】
胆嚢手術中には閉鎖用クリップが腹腔鏡で利用される。60ドルの使い捨てカートリッジに約10個のクリップが組込まれている。胆嚢手術中に動脈、静脈及び導管を密閉するために一般に5個又は6個のクリップが使用される。ほぼホッチキスの針の寸法の小さなU字形クリップはチタンから製造され、適所でかしめられる。クリップは牽引面をもたず、適所に配置するのにかしめ力に依存する。クリップにより生じた外傷が癒着したり、血管に傷がつく恐れがある。
【0036】
本発明のナノファイバー表面により最低圧で発生される強い牽引力により、このようなクリップは腹腔鏡手術や他の外科手術に理想的になると思われる。
【0037】
本発明のナノファイバー増大装置による有意に広い牽引面(〜2倍)の性能利点は非常に望ましい。この点は、特に米国だけでも年間約600,000件の胆嚢摘出が行われていることから明らかである。虫垂切除等の他の腹腔鏡手術も加えると、この数は1,000,000件を越える。1回の手術で1個60ドルのカートリッジが使用されるならば、売上高は少なくとも60,000,00ドルである。
【0038】
このようなクリップ又はクランプの他の用途としては、例えば大動脈を挟んだり締め付けるためや、非外傷性クランプとしての使用等が考えられる。このようなクランプは心臓運動の安定化を助けるための心拍動下手術にも有用であると予想される。このような製品は場合により(ナノファイバー等を付着した)パッド付きアームを含む。眼及び/又は瞼手術にも眼を固定するためにこのようなクランプが必要である。更に他の一般外科用途としては、例えば頭皮を切開するために硬膜を後退させたり、心臓手術で心膜を保持したり、皮膚移植片を固定したり、臓器/組織を固定する等の用途が挙げられる。更に他の態様は基質が溶解性のもの(例えば肝袋等)を含む。
【0039】
外科手術ではドロドロしたり、ヌルヌルしたり、傷つきやすい等の臓器等を処置することが多い。また、管状又は層状の解剖学的要素は縫合器等でつかむことができるが、より不規則な形状の臓器(例えば肝臓、心臓等)は問題である。従って、ナノファイバー表面を含む無数のクランプ型用のリトラクター、使い捨てスリーブ、及び汎用接触面がいずれも必要である。これらは医療装置を常時再配置する必要をなくすことができる(例えば点リトラクターは組織と接触し、解放が必要になるまで保持することができる)。本発明の装置は腹腔鏡装置及び安定化パッドに配置することもできる。
IV)創外固定具インプラント静菌性表面材
【0040】
創外固定具は骨折治癒の目的で皮膚を通して骨に挿入されるピンとワイヤーである。これらのピンとワイヤーはその後、骨折した骨が治癒できるように剛性と安定性を提供するために外部のロッド及びクランプに連結される。内部に配置するプレート、スクリュー、ピン及びワイヤーにまさるこれらの外部装置の利点は内部インプラントの外科的配置に比較して組織及び血管破壊量が少ないことである。このように外科的侵襲性が低いため、骨折を著しく速く治癒することができ、筋肉及び皮下瘢痕、インプラントに関連する骨肉腫、骨関節変形、又は苦痛を伴う低温感覚合併症が少なく、後日にインプラントを外科的に除去する必要がなくなる。最近十年間では内部インプラントよりもこの「生物学的」整形外科治癒方法に向かう傾向がある。組織損傷が最少になるので、骨治癒に最も重要な治癒時間が短縮する。創外固定具の使用に起因する合併症は皮膚からの細菌感染と、連結装置が十分安定でない場合のピンの過剰な移動である。ナノファイバー静菌性表面材の使用はこれらの2つの問題の主要部分と認められるものを軽減又は解消すると期待される。
【0041】
ナノファイバーをコーティングした創外固定具の静菌性ステンレス表面は皮膚表面が細菌と接触し、ネジ付きピン挿入部と骨の界面が汚染し、ピンが緩んで骨折を治癒できなくなる程度を軽減する。外部に配置した静菌性ピンの性能利点は特に手術後感染とピンが緩む問題を軽減するために明らかに望ましいと思われる。各種態様では、全移植材料にナノファイバーをコーティングする。他の態様では、ネジ山、ピン、及び/又は結合材にナノファイバーをコーティングする。他の態様はプレートの底面とネジ山の頂点、弾性ワイヤー(例えばkワイヤー、kピン等)、ストレートピン等のナノファイバーコーティングを含む。当然のことながら、本発明のこのような創外固定具は場合により四肢伸長法でも使用される。
V)バタフライ型皮膚バンデージ/パッチ
【0042】
多くの皮膚裂傷はスパッと切れた傷口であり、縫合できない場合やその必要がない場合には単純な表面閉鎖が必要である。現在市販されているバタフライ型皮膚バンデージは良好に機能するが、皮膚の運動とバンデージ部位の加湿と共に接着が弱まるので急速に機能低下する。ナノファイバー表面を含む疎水性接着性バタフライ型バンデージはこの欠点のエレガントな解決方法である。
【0043】
角膜擦過傷は眼瞼痙攣、毛様体筋痙攣及び疼痛を誘発する一般眼科傷害である。これらの傷害の大半は治癒するのに24〜72時間を要する。角膜潰瘍は治癒するのに3〜5日間を要する。毛様体筋痙攣を抑える散瞳薬を投与すると、毛様体疼痛は緩和するが、光恐怖症が増す。従って、患者は暗環境のほうが安心感を得られる。眼瞼を閉鎖するためにナノファイバー表面を含む皮膚接着性疎水性バタフライ型パッチを使用すると、光恐怖症の問題を解決し、眼瞼を閉鎖した状態での涙分泌により角膜の水濡れ性が増すため、角膜治癒速度が増す。
【0044】
最低圧で発生される強い牽引力と疎水性により、ナノファイバーをコーティングした弾性バタフライ型皮膚パッチは皮膚創傷と眼瞼を閉鎖するのに理想的になる。このようなバタフライ型装置の性能利点は非常に望ましいと期待される。所定態様では、接着装置は肌色であるか、又は患者が装置を外さずに入浴することができる。このような装置は患者が外科処置を受けるのを避けると共に、縫合後の「ひだ」を避けるのに役立つ(形成外科に特に重要)。このような装置の他の利点としては、例えば接着剤を硬化させる必要がなく、良好な副木材であり、プラスターを水で浸す等の必要がなく、例えばナノファイバーをメッシュ材料に付着すると装置を「通気性」にできる等の点が挙げられる。このような装置は更に場合により(持続的、温度上昇に伴う等の方法で)経皮放出すべき薬剤等を含むことができる。このような装置は場合により静脈硬化症状況下の褥瘡性潰瘍にも使用される(糖尿病患者では、皮膚と骨に圧力がかかると、糜爛と潰瘍を生じる)。更に、このような創傷被覆装置は創傷治癒(例えば細胞増殖)を増進できるような部分と結合することができる。バンデージ上のナノファイバー寸法は細胞を補足するように設計することができる。
VI)心臓外科用高牽引クランプ装置
【0045】
心臓外科では血流を一時的に停止するためにクランプが広く使用されている。この十年間では従来のスチール製ジョー付きクランプに比較して動脈損傷の少ない使い捨てゴム製非外傷性クランプインサートに向かう傾向がある。損傷が最少になると、回復時間が短縮し、瘢痕に起因する合併症が減る。ゴム製インサートは市場に進出しているが、牽引力が限られているため、多数の動脈を損傷してしまうほど強いクランプ力がまだ必要である。本発明の装置により最低圧で発生される強い牽引力により、ナノファイバーをコーティングしたクランプインサートは心臓外科に理想的になる。有意に広い牽引面(〜2倍)の性能利点は例えば手術後合併症を減らすために明らかに望ましい。
VII)接着性疎水性耳栓
【0046】
鼓膜穿孔、裂傷又は破裂はシャワー時や水泳時に一般に患者に問題となる。機械的な耳栓は不快であり、漏れやすく、前庭炎(バランス低下)や中耳炎(内耳感染)を生じることが多い。接着性と疎水性を兼備するナノファイバー表面を使用した改良型耳栓は数百万人の鼓膜裂孔患者に著しい改善をもたらすと期待される。最低圧で発生される強い牽引力により、ナノファイバーをコーティングした疎水性耳栓はより快適であり、既存技術よりも良好に水の侵入から密閉することができる。有意に広い牽引面(〜2倍)の性能利点は特に中耳炎後合併症と前庭炎を減らすために望ましい。
【0047】
ナノファイバーの疎水性作用と牽引力は安全な耳栓を形成すると期待される。各種態様では耳栓は耳道内に嵌め込まれるが、他の態様では耳又は耳道に被せるためのキャップ又はディスクを含む。場合により(例えば鼻血を抑える等のために)他の道又は孔に同様の態様が使用される。所定態様では、ナノファイバーは例えば痂皮や血塊を剥がさないようにするために、例えば患者側に残るようにその基板から剥離される。他の態様は場合により生物汚染防止特性及び/又は抗微生物性をもつことができる。下記参照。所定態様は場合により尿道栓等に使用することが期待される。例えば、所定態様は場合により避妊のために卵管を遮断するために使用することができる。
VIII)外科用癒着防止材
【0048】
手術後癒着は一般的な外科合併症である。現在及び従来、手術後癒着の防止方法を開発するために多大な労力が払われている。このようなアプローチには興味深いアプローチがあり、例えば鉄粉を混入したオートミールを摂取させた後に磁石を腹部に当て、腸に沿って進行させ、癒着を防ぐ方法がある。癒着は例えば開胸心臓手術後の心膜と胸骨の間、腸処置後の腹腔内、特に婦人科再建に関連する後腹膜腔内等の各種位置で特に問題となる。主に2つのアプローチが検討されている。第1のアプローチは例えばヒアルロン酸又は水素酸又は酸化セルロースから製造した移植可能なバリヤーフィルムであるが、癒着を防止するためにフィルムを配置すべき位置が確定できないので成功していない。第2のアプローチは癒着が予想される一般領域を浸すように例えばN,O−アセチルキトサンの溶液ボーラスを点滴注入する。これは優れた治療方法であると思われるが、この方法による満足な製品は市販されていない。折り紙付きの適切な製品が市販されるようになれば、実際に全外科処置で予防的に使用できよう。なお、手術後癒着は通常手術後の最初の1週間の間に形成され、この期間に形成されない場合には一般に発生しない。従って、最初の1週間の間に細胞付着がなければ癒着は形成されないので、(コラーゲン線維の癒着を生じる)繊維芽細胞が局所組織表面に付着しないようにする必要がある。本発明の癒着防止方法はこのような細胞付着を防止すると期待される。本発明の癒着防止態様は場合により種々の形態をとる(例えば液体適用形態、フィルム適用形態等)。癒着の形成は特に受精手術に問題となる。比較的急速に癒着が形成されるので、手術後5日間は繊維芽細胞を付着させないことが望ましい。
【0049】
吸収性天然(例えばコラーゲン)又は合成(例えばポリグリコール酸)ポリマーから製造され、高い潤滑性を提供するようにナノファイバー表面をコーティングした水性マイクロカプセル又は粒子懸濁液が本発明の特徴である。この懸濁液約200mlを適当な体腔内に注入すると、繊維芽細胞付着とその後の癒着形成を受けにくい表面で組織を覆うことができる。材料は数週間後に無害に吸収される。所定態様は場合により体腔壁を直接覆うナノファイバー又はナノワイヤーをコーティングしたメッシュ(例えば合成、金属、繊維)とすることができる。
IX)内視鏡及びカテーテル
【0050】
内視鏡(例えば結腸内視鏡)の困難な側面の1つは管状臓器(例えば腸、尿道、食道、気管、血管等)を通過する装置の摩擦抵抗である。内視鏡又はカテーテルを移動しにくいことに加え、摩擦は患者に大きな不快感を与える。通過し易くするために例えばポリビニルピロリドンを被覆した滑りやすいカテーテルが設計されているが、これらの装置は市場に広く受け入れられていない。本発明のナノファイバー表面を含む潤滑性内視鏡又はカテーテルは患者の使用感を著しく改善し、医師が移動し易いと期待される。
X)腔内カメラ
【0051】
最新診断革新の1つは内蔵を観察するための超小型ワイヤレスカメラの使用である。ピルサイズのこのようなカメラを飲み込むか又は注射して流下させ、医療観察者に画像を送る。本発明のナノファイバー表面による潤滑性の改善はこのような装置の性能を強化すると期待される。適切なナノファイバーコーティングはカメラを飲み込み易くすると共に、その経路に沿って操作し易くすると期待される。他の同様の態様は例えばカメラ等の装置に疎水性シールド(例えば窓)を形成するためや、装置にコーティング層(例えばヒアルロン酸等)を保持するためや、コンタクトレンズに透明コーティングを形成するため(場合により蛋白質蓄積を防ぐのにも役立つ)等の目的で装置にナノファイバーコーティングを含む。
XI)心臓機械弁
【0052】
大動脈弁及び僧帽弁の置換に使用されている心臓弁プロテーゼは2種類ある。機械弁は一般に収縮期に血液を流すために開き、拡張期に逆流を防ぐために閉じるディスクを備える金属ケージである。これらの弁は永久に使用できるが、血栓性合併症を防ぐために抗凝血剤を毎日投与する必要がある。用量は血栓形成と内出血を防ぐように注意深く調節しなければならない。他方の型の弁は組織弁であり、ブタ心臓から一括して分離する場合や、ウシ心膜組織から作製する場合がある。これらの弁尖は天然弁によく似ており、通常は抗凝血剤を投与する必要がない。しかし、劣化し易く、機械弁よりも寿命が短い。幸いにも、組織弁は機能低下が遅いので、外科的置換に十分な時間がある。耐用期間の長い機械弁が抗凝血剤を投与せずに良好に機能できるならば計り知れない医療上の利益となろう。このように使用される本発明のナノファイバー増大表面も本発明の一部である。更に、左室補助装置(LVAD)の血行性能の改善にもナノファイバー表面を使用することができる。
【0053】
ナノファイバーを特別に組込んだ心臓機械弁を使用すると、層流により血行が改善され、収縮期当たりの血流量が改善され、凝血防止の必要がなくなるか又は著しく減り、血栓症が発生しなくなるか又は著しく減り、溶血レベルが低下するか又はゼロになると期待される。
XII)小径血管グラフト
【0054】
現在、直径約6mmを上回る各種血管プロテーゼは腸骨/大腿部を通して胸大動脈から移植した場合に十分に機能している。直径約6mmを下回ると、このようなグラフトは完全な内腔血栓形成後に挿入又はバイパスグラフトとして移植した場合に機能できない。同様に、静脈再建に利用できるグラフト材料もない。多年来、研究者らは下肢から伏在静脈を採取する必要をなくすように、特に冠動脈バイパス処置用の小径血管グラフトを開発しようと努力してきた。一般に、厚さ0.5〜1.0mmの蛋白質層が内腔表面に迅速に堆積して内腔直径が更に減少し、壁在血栓の形成を誘発するため、2〜5mmの小径グラフトは利用できない。ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))やポリウレタン等の従来の非濡れ性表面でも蛋白質の内膜積層を阻むことができない。
【0055】
ナノファイバー増大表面の超非濡れ性は2つの非常に重要な要因になると思われる。第1に、内腔表面に血漿蛋白質が堆積しなくなるので、元のグラフト直径が維持される。同じく重要な点として、ナノファイバー表面は理想に近い層流血流を提供することができるので、内腔血栓形成を減らすか又は完全になくすと期待される。これは場合によりグラフト血栓形成を防ぎ、及び/又は特に縫合吻合部における乱流に付随するグラフト障害の周知原因である吻合部内膜過形成を最小にするのに非常に重要である。
【0056】
具体的には、ナノファイバー表面は以下のグラフト:大腿/膝窩(及び下膝窩)血行再建;冠動脈バイパスグラフト(場合により伏在静脈置換とIMA処置);A−Vシャント(血液透析アクセス);微小血管再建(例えば手の手術);及び静脈再建に有益に利用することができる。特に糖尿病患者集団でA−Cバイパスグラフトや末梢血管再建にナノファイバー表面を使用することも考えられる。微小血管、A−Vシャント及び静脈用途も考えられる。無縫合吻合法におけるナノファイバー増大表面の使用に関する詳細な記載については後述する。
XIII)美容用充填剤
【0057】
コラーゲン充填ビジネスは美容分野で急増しており、2003年には〜800,000件が実施されたと考えられる。材料供給業者の年間収益は5億ドルに迫っている。コラーゲンを美容用(例えば唇や深い皺等)に使用する際の主要な問題は持続性である。典型的なコラーゲン充填は〜3〜4カ月持続した後に効果が低下し、再注入が必要になる。従って、持続性のある美容効果を生じるためには非吸収性でありながら生体適合性のマイクロスフェアが望ましい。
【0058】
この分野では標準ゲージ針で注入可能であり、バイオバーデンを排除したマイクロスフェアを作製できることが非常に望ましく、特にこれらのマイクロスフェアが注入し易く、注射可能であり、配置し易いように十分に潤滑性であり;持続性の結果が得られ;生体適合性の問題がなく;時間と共に移動しないことが望ましい。マイクロスフェアキャリヤーで(例えばナノファイバーによる疎水性と親水性のバランスにより)最適化された潤滑性をバイオバーデン排除技術と組み合わせることができるならば十分に競争に勝てると考えられる。他の態様としては、瘢痕組織の減少が可能な態様と、場合により機能化されたナノファイバースカフォールドを腐食性ポリマーに付けた態様が挙げられる。
XIV)高流動性低血栓形成性心臓機械弁
【0059】
置換弁移植は10億ドルの売上高に迫る貴重な大市場である。第1に、寿命、血栓形成性及び流動性に関して現実に認められている相違により機械弁移植と組織弁移植の間で揺れ動きつつある。第2に、法的/臨床的要件がますます厳しくなっているために新製品開発サイクルが長引き、製品競争が硬直化している。主要な弁基準の2つ(血栓形成性と流動性)を潜在的に改善するように既存製品を改造する(その結果、法規制に対応する過程を著しく短縮する)可能性があるため、ナノファイバーは機械弁市場内に加え、機械弁製品と組織弁製品の間の市場占有率にも潜在的に劇的な効果があると思われる。
【0060】
完全には解明されていないが、血栓形成と流動性は相関する問題である。実際に、最もよく知られている2枚弁デザインのヒンジシートの下流に形成された乱流はこのような製品の血栓形成効果の要因であるとされている。ナノファイバー増大表面により得られるような疎水性表面コーティングはこのような問題を緩和するのに劇的な効果があると思われる。
【0061】
本発明の本態様は現行製品に追加することによりサイクル時間を劇的に短縮する利点と同時に、製品自体の差別的利点がある。
XV)埋込型センサー及びペーシングリードの高持続性機能
【0062】
埋込型センサー市場は未成熟期にあり、各種初期用途としてはグルコースセンサー、心機能センサー(リード有又は無)及び各種ストリップスの神経インプラントが挙げられる。これらの企業の多くは経時的生物汚染と持続性試薬ベッドの形成しにくさに関連する同様の問題を抱えている。高疎水性構造と組み合わせて配置された試薬ドーピングパッドを併用すると、全種センサーの持続機能時間が著しく延びると考えられる。現行技術はこの欠点(例えばグルコースセンサーは3日間しか機能しない)を容認しているか、又は機械的パッケージング及び/又は大規模な平行処理を伴う高価で実施しにくい方法でこの問題に対処している。
【0063】
本発明のナノファイバーの別の関連用途は組織との良好な電気接点と非汚染性のシャフトを提供するためのペーシングリードのコーティングである。これらの市場で利用されているセンサー/試薬技術の多くは従来の非インプラント診断の成熟期が長いために工業所有権が消滅しており、パッケージングは実際に工業所有権を主張できる技術として参入の余地のある重要な技術であると思われる。人体の高腐食性で被包形成のさかんな環境で長期間耐えられるようにセンサー(試薬又は電気センサーを問わず)を如何にパッケージングするかが問題である。これは留置型に携わる全企業に大きな課題である。本発明のナノファイバーによるユニークな非汚染性アプローチは非汚染性表面の下流又は近傍に痕跡を残さないという付加的特徴もある。このため、試薬/センサーの独創的なパッケージングで正確な読取りが得られる。更に、試薬持続性に関しては、薬剤溶出ステントの概説で以下に記載する薬剤ドープパッドとほぼ同様にナノファイバーを含む試薬ドープパッドを作成することが可能であると思われる。
【0064】
ペースメーカーリードの分野では、臨床医を悩ませる問題が2つある。誤ってリードが外れたり、きちんと配置されていないと組織への電流が不十分になり、時間と共にリードの周囲の組織が過増殖し、長期にわたって複数のリードを配置している所定の患者では、実際に流動抵抗を生じることがある。その結果、後続処置/手術が更に複雑になりかねない。更に、遺棄されたリードが合併症の原因となることもある。本発明のナノファイバーを含むこのような装置はセンサーヘッドを覆うナノファイバーとシャフトに沿って取り付けられた生物汚染防止コーティングによりこれらの問題を2つとも解決できると思われる。
【0065】
グルコースセンサー:〜20億ドルの世界中のグルコースセンサー市場の聖杯はフィンガースティック装置を離れ、真に非侵襲性のアプローチ又は留置アプローチによる持続的グルコース装置に移りつつある。どちらのアプローチも商品化又は商品化までの時間に関して他方よりも明白な優勢を示すには至っておらず、基本的な技術的競合状態に至っていない。今日開発中の埋込型グルコースセンサー技術はいずれも実質的な制約があるため、広く市場に受け入れられると思われない。この点は非侵襲性アプローチについては当てはまらないが、非侵襲性アプローチにしても実用可能な装置を求める市場リーダーたちを15年間にわたって阻んできた開発の障害に直面している。このようなセンサーにナノファイバーを加えると、上記のいくつかの問題を防止/改善できると思われる。
【0066】
心臓センサー:この市場は最初期にあるが、(恐らく警報として継続的に)インターベンショナルカーディオロジー法の必要なしに完全な心臓出力測定を提供すること及び/又は活動中の心臓装置(例えばBV−ペーサー、左室補助装置(LVAD))の優れたリアルタイム制御を提供することが見込まれる。この場合も、このような装置にナノファイバーを加えると、上記の多くの問題を防止/改善できると思われる。
【0067】
神経センサー/エミッター:この分野も初期参入余地があるが、この場合にはセンサーよりも刺激に重点がおかれている。神経調節及び神経刺激は神経組織との一貫した連続的接触に依存している。リードの組織接触端にナノファイバーを配置すると、リードを保護することができ、瘢痕形成(例えばグリア瘢痕)を防ぎ、導電を改善することができる。更に、ナノファイバーはリードのシャフトで導電材料として使用することができる。
【0068】
ICD及びペースメーカーリード:複合市場における単位生産高は非常に大きく、年間〜1,000,000件の移植が行われている。両室ペーシングがあらゆる安易で楽観的な予測を越えて急速に普及し始めているので、この市場は一層成長しつつある。リードの問題は一時は価値連鎖の非常に大きなシェアを占めたが、その統一小売価格がじわじわと低下していることである。
XVI)血管ステント及び次世代薬剤溶出冠動脈ステント
【0069】
血管ステントはバルーン血管形成術後に血管を開いておくために使用される小型金属装置である。冠動脈ステントの開発は例えばこの10年間にわたってインターベンショナルカーディオロジーの実地に変革をもたらしている。70件を越える冠動脈ステントがヨーロッパで認可され、Guidant Corporation(Indianapolis,IN)から市販されているMulti−Link Vision(登録商標)Coronary Stent Systemや、Medtronic,Inc.(Minneapolis,MN)から市販されているDriver(登録商標)Coronary Stent System又はBeStent2(登録商標)をはじめとして20件を越えるステントが米国で市販されている。
【0070】
市販ステントは種々の形態のものがある。例えば1例として、例えば図2A〜Bに示すようなステント210はステンレス鋼ワイヤー製であり、バルーンを膨らませることにより拡張する。ステント210は血管216(例えば冠動脈)の患部214に送達するために図2Aに示すようにバルーン212にクリンプすることができる。分かりやすくするために、血管壁216の多重層を単層として示すが、当業者に自明の通り、病変部は一般に血管216の内膜内のプラーク沈着である。
【0071】
ステント210の送達に適したバルーンの1例はBoston Scientific Corporation(Natick,MA)から市販されているMaverick(登録商標)PTCAバルーンである。次に、ステントを搭載したバルーン212をガイドワイヤーとガイドカテーテル205の使用等により、従来通りに患部に進行させ、病変部214の両端間に配置する。適切なガイドワイヤーはBoston Scientific Corp.製0.014”Forte(登録商標)であり、適切なガイドカテーテルはET 0.76内腔ガイドカテーテルである。
【0072】
バルーン212が図2Aに示すように病変部214の両端間に配置されたら、同様に実質的に従来通りにバルーン212を膨らませる。バルーンの選択に当たっては、ステント210がピークの各々に沿って均等に拡がるようにバルーンが径方向に均一に膨らむようにするとよい。バルーン212が膨らむと、ステント210はそのクリンプ形状から図2Bに示す拡張位置に拡がる。膨らませる量とこれに見合ったステント210の拡張量は病変部自体に応じて変えることができる。
【0073】
血管216の内側でバルーン212を膨らませてステント210を拡げた後、バルーンをしぼめて取り出す。血管216の外壁は弾性収縮により元の形状に戻る。しかし、ステント210は血管内で拡張形状に維持され、血管のその後の再狭窄を防ぐ。再狭窄傾向がステント210の機械的強度以下である限り、ステントは図2Bに示すように血管内に開放通路を維持する。
【0074】
別の形態のステントはNitinol製品のような自己拡張型ステント装置である。ステントを移植部位で露出させ、自己拡張させる。
【0075】
従来技術のステントにはいずれも大きな問題があった。いずれも血栓症、再狭窄及び組織浸潤の可能性があり、程度は異なるが、配置しにくいという問題もあった。従来技術のステントの少なくとも一部には血管形状に合致しにくいという問題もあった。従来は、設置後少なくとも最初の3カ月間は抗凝血剤が必要であった。
【0076】
従って、有意血栓症を生じずに血管を開いておくのに有効であり、患部に送達し易く、患部血管に合致し易いがステントがかねてより切望されてきた。
【0077】
本発明の本態様は一般に既存通路、チャネル、導管等、特に動物、特に哺乳動物又はヒト内腔、例えば血管又は他の導管臓器を拡げ、支持するために使用される血管内支持装置(例えば「ステント」と通称されるもの)に関する。特に、本発明の本態様はステントとこれを使用する通路との相互作用を強化するために、例えば図1及び図2Dに示すようなナノ構造コンポーネントを利用するこのようなステント装置を提供する。一般に、このようなナノ構造表面は対象通路内の装置の開存性を強化するように装置の接着、摩擦、バイオインテグレーション又は他の特性を改善するために使用される。このような相互作用の強化は一般に通路の表面(例えば内壁又は外壁表面)と相互作用してこの表面との結合又は付着を助長するナノ構造表面を提供することにより得られる。ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)は例えばステントの外面及び/又は内面にナノファイバーを直接成長させるか、又はナノファイバーをステント表面に別個に共有的もしくはイオン的に結合することにより、ステントの外面又は内面に付着させることができる。更に、ステントを挿入する血管内におけるステントの剛性と強度を強化するために、ナノファイバー又は他のナノ構造をステント材料自体に埋込むこともできる。ナノファイバーの形状と寸法及びグラフト表面上のその密度はステントの接着性(又は他の性質)を所望レベルにするように変えることができる。特に好ましい側面では、アスペクト比の大きいナノファイバーがナノ構造として使用される。このようなナノファイバーの例としては従来記載されているようなポリマーナノファイバー、金属ナノファイバー及び半導体ナノファイバーが挙げられる。
【0078】
本発明のステントはその生体有用性を更に強化するために内面及び/又は外面に他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、(下記に記載するような)薬剤溶出コーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。ステントに設けた上記ナノファイバーコーティングはステントがこれらのコーティングを保持し易くする広い表面積を提供することができる。コーティングはステントのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
【0079】
冠動脈ステント市場は巨大であり、最大手装置製造企業により激しい競争が繰り広げられている。現在、薬剤溶出冠動脈ステントという最新部門で製品開発/獲得により利益を得るために参入企業間でゴールドラッシュが進行中であり、例えば、米国FDAに認可されたCordis Cypher(登録商標)シロリムス溶出用ステントや、Boston Scientific Taxus(登録商標)パクリタキセル溶出用ステントシステムが上市されている。薬剤溶出ステントは急速に市場シェアを獲得しつつあり、2005年までに冠動脈血管再生治療の標準になると思われる。この新規治療は冠動脈インターベンション部位における瘢痕組織の形成を防ぐことができる薬剤を添加したポリマー薄層を標準冠動脈ステントの外面にコーティングするものである。現在市販されているステントで使用されている薬剤の例はシロリムスとパクリタキセルに加え、抗炎症性免疫調節剤(例えばデキサメタゾン、M−プレドニソロン、インターフェロン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、スタチン、シクロスポリン、トラニラスト、及びバイオレスト);抗増殖性化合物(タキソール、メトトレキセート、アクチノマイシン、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、RestenASE、及びPCNAリボザイム);遊走抑制剤(例えばバチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフギノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコール);及び治癒と再内皮細胞化を促進する化合物(例えばVEGF、エストラジオール、抗体、NO供与剤、BCP671等)である。例えば、シロリムスは従来は臓器移植後の拒絶反応を予防するために使用されていた。残念ながら、ステントにポリマーコーティングを使用すると血栓症や他の合併症を誘発する可能性があり、これらの問題を部分的に緩和するためには、一般に設置後少なくとも最初の3カ月間は抗凝血剤が必要である。
【0080】
しかし、本発明の教示に従ってこれらの新型ステントにナノ構造表面を付けると、このようなポリマーコーティングの必要をなくし、従って、これらの合併症のいくつかを最小限にすることができる。(例えばばねコイル、マイクロポケット等により)ナノファイバー間の表面積を増すことが極めて望ましい。従って、より持続的な効果と良好な薬剤放出が得られるように場合によりナノファイバーを組織に埋込む。ナノファイバー表面は表面積を著しく増加し、溶出時間を延ばし、濃度を増加する。薬剤はナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)に直接吸着させてもよいし、上記のような適切な結合化学により(例えばシラン基又は他のリンカー分子を介して共有的に)ナノファイバーに結合してもよい。結合化学はカスタマイズされた薬剤溶出プロフィルを提供すると共に薬剤化合物を経時的に制御放出するように選択することができる。あるいは、アルブミン等の第1の分子をナノファイバー表面に吸着させ、薬剤をアルブミンに吸着させる。
【0081】
薬剤溶出ステントの製造業者はコーティングした金属と動脈壁の間の接触表面積の増加;コーティングの深さ/耐久性の増加と溶出時間の延長;及び新規溶出プロフィルに合わせた異なる薬剤の複数の層という魅力的な可能性といったこの新技術のいくつかの面に大きな関心を寄せている。基本的なステント構造(形状合致性、配置し易さ、分岐利用等)も他の製品との競争から医師を獲得するのに極めて重要である。
【0082】
接触表面積と「用量密度」を増加することができ、全既存ステントに付設できると思われるコーティングを開発することにより、本発明のナノファイバー装置は例えば内側の疎水性表面コーティングによる流動性の改善、薬剤溶出の改善等により、種々の市場戦略を進めることができる。ステントの外面にナノファイバーコーティングを付けることにより、ナノファイバー技術の不在下で得られるよりも厚く耐久性に優れた薬剤コーティングをステントに備えることが可能になると思われる。更に、ナノファイバー技術に固有の広い表面積接触により、付着薬剤に対する組織応答が改善されると思われる。更に、特に小動脈内の流動性を改善するためにステントの内面に疎水性コーティングを付けてもよい。
【0083】
冠動脈ステント以外に、ナノ構造表面は患者の身体の他の部分で使用される他のステント(例えば尿道ステントや胆管ステント)にも有益に適用することができる。これらの体内腔では、ステントのストラットに結晶しないようにすることが望ましい。例えば、胆管系では、縫合糸や永久又は一時的ステント等の外来表面にビリルビン結晶が析出する。このような析出は一般にステントの有効寿命を縮め、治療を成功させるには患者を複数回処置することが必要になる。尿道でも同様の状況が存在する。ステントに尿酸が析出し、「ステントインクラステーション」を生じ、最終的に装置が機能できなくなる。この欠点がなければ、ステントは前立腺肥大症(BPH)等の疾患にも有望な治療法であると思われる。水相はステントを「認識」せず、結晶誘導成分が析出する可能性がなくなるので、超疎水性ナノファイバーコーティングを付けたステントは結晶形成を防ぐと思われる。
XVII)小径血管グラフト
【0084】
現在、直径約6mmを上回る各種血管プロテーゼは腸骨/大腿部を通して胸大動脈から移植した場合に十分に機能している。直径約6mmを下回ると、このようなグラフトは完全な内腔血栓形成後に挿入又はバイパスグラフトとして移植した場合に機能できない。同様に、静脈再建に利用できるグラフト材料もない。多年来、研究者らは下肢から伏在静脈を採取する必要をなくすように、特に冠動脈バイパス処置用の小径血管グラフトを開発しようと努力してきた。一般に、厚さ0.5〜1.0mmの蛋白質層が内腔表面に迅速に堆積して内腔直径が更に減少し、壁在血栓の形成を誘発するため、2〜5mmの小径グラフトは利用できない。ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))やポリウレタン等の従来の非濡れ性表面でも蛋白質の内膜積層を阻むことができない。末梢血管市場は小径グラフトの制約により比較的未開発の巨大市場である。本発明のナノファイバー表面は生物汚染を減らし、疎水性を増すことができる。
【0085】
ナノファイバー表面の超非濡れ性(疎水性)は2つの非常に重要な要因になると考えられる。第1に、内腔表面に血漿蛋白質が堆積しなくなるので、元のグラフト直径が維持される。同じく重要な点として、ナノファイバー表面は理想に近い層流血流を提供することができるので、内腔血栓形成を減らすか又は完全になくすと期待される。これはグラフト血栓形成を防ぎ、及び/又は特に縫合吻合部における乱流に付随するグラフト障害の周知原因である吻合部内膜過形成を最小にするのに非常に重要であると思われる。
【0086】
ナノファイバー表面は以下のグラフト:大腿/膝窩(及び下膝窩)血行再建;冠動脈バイパスグラフト(場合により伏在静脈置換とIMA処置);A−Vシャント(血液透析アクセス);脳(浅側頭動脈/中大脳動脈[STA/MCA]);微小血管再建(例えば手の手術);静脈再建に有益に利用することができる。冠動脈バイパスグラフトが圧倒的に医療商品価値があり、大腿血行再建がこれに続く。所定態様では、グラフト材料に単に本発明のナノファイバーをコーティングし、他の態様はナノファイバーコーティング用に特別に設計された完全に新規な基板を含む。特に胸骨骨折を避けるために最新の最低侵襲性外科処置を使用して移植できる場合には、ナノファイバーA−Cバイパスグラフトが非常に望ましい。特に糖尿病患者集団では、末梢血管再建に大市場が存在する。微小血管、A−Vシャント及び静脈市場は比較的小さいが、総合するとかなりのビジネスになる。血管グラフトビジネスは全く新しい業績レベルになる可能性がある。
【0087】
小血管の現行グラフトには問題がある。現行選択肢としては、例えばDacron繊維、PTTFE(ゴアテックスに類似)等がある。小径と蛋白質層の堆積の問題がある(特に直径6mm未満)。理想的なグラフトは血管が血管構造への侵入を遮断するために湿ったヌードル様であり、膜形成しないことが必要である。従って、血管内の蛋白質蓄積の防止と完全な層流に達することが望ましい。また、低侵襲性の処置であることも望ましい。本発明のナノファイバー装置は場合によりこれらの要件を満足することができ、例えばプレロードすることができ、例えば血管内にステープルで固定することができるので、低侵襲性にすることができる。本発明の各種態様の疎水性は典型的用途で極めて有用である。本発明のグラフトは場合により患者の体内に一時的又は永久的に留置される。他の態様では、ナノファイバーグラフトは更に薬剤コーティング等(例えばヘパリン等)を含む。
【0088】
他の態様は例えばコラーゲンを紡糸した血管グラフトの取扱いの問題に対処する。また、グラフトに縫合した宿主血管は縫合糸との界面にひだが寄り、界面に乱流が生じる可能性がある。界面に血栓が形成され、内膜過形成の結果、吻合部の血管が狭窄する可能性がある。その結果、血管が閉鎖する前に血管の狭窄が生じる可能性がある。これは通常、大血管では問題とならないが、小血管では相当な問題になる場合がある。従って、本発明のナノファイバー表面をこのような界面でグラフトに組込むことができる。場合により除去されるコーティング付き螺旋構造も本発明に含まれる。縫合糸、ステープル等も場合によりナノファイバーで強化される。
【0089】
他の態様としては、例えば血管治療、左室補助装置(LVAD)治療レジメン(例えば血栓症予防)、卵円孔開存(PFO)、心房中隔欠損症(ASD)、左心房動脈瘤の治療、糖尿病性小血管障害の治療(即ち切断の代替治療)、静脈血栓症の治療(例えば長期等)におけるナノファイバー強化が挙げられる。本発明のナノファイバー表面は一般に寿命が長く、フレキシビリティがあり、ステープル/縫合糸を保持する強度を提供することができる。ナノファイバー表面は骨増殖を生じさせるため等のスカフォールドとして例えば創傷治癒のために特定細胞を増殖させるのに使用することができる。例えば、心房中隔欠損症では、右心房と左心房の間に大きな孔があると、酸素濃度の高い血液は心臓の右側に逆流してしまう。その結果、肺高血圧となる可能性がある。心房中隔欠損症は開心術により外科的に治療することが多い。開胸手術に伴う死亡率を考慮すると、永久的に孔に近接するように経皮的に配置することができる装置が望ましい。ナノファイバーを組込んだ装置はカテーテルにより心房系内に配置することができ、欠損を覆うパッチ又は欠損を塞ぐプラグとして機能することができる。
XVIII)時限放出ナノワイヤーボール
【0090】
最近20年間には経口送達標的デリバリードラッグビヒクルを対象とした多くの研究が行われている。特に、制御放出と低毒性は解決しにくい問題であり、これらの研究の大半がまだ研究段階に止まっている。ポリマー、デンドリマー、リポソーム及び抗体は4種のよく研究されている薬剤キャリヤーである。これらの構造はミクロンサイズから数ナノメートルに至る。粒子が大きいと所望組織に粘着する傾向があり、その後、薬剤が溶出するが、構造が小さいと数個しか薬剤分子を輸送せず、接触してから機能するか又は結合が切断されてキャリヤー構造となるときに機能することが多い(デンドリマー)。ナノ構造は小ドット(3〜10nm)からナノワイヤー束(20〜500nm)までのこのサイズ範囲をとることができる。これらの構造は薬剤分子に容易に共役させることができ、水溶液に分散させることができる。
【0091】
薬剤容量が大きく、機能化し易いことは本発明の典型的な利点である。典型的態様は例えば患者用毒性試験や、ナノファイバー蓄積に基づいて選択される。所定態様は腸溶コート錠を含み、例えば酵素又は適正pHの認識により時限放出するように胃内pHに依存することができる。他の態様は例えば超音波造影剤等として空気充填ナノファイバーボールを含む。RES(網膜内皮系)により吸収されないPEG化リポソームも含む。
XIX)外科用針
【0092】
本発明の所定態様はナノファイバーをコーティングした外科用針を含む。角針は鋸歯付きのほうがよい。針を組織に通す際に、見掛け鋭角度は通しにくさに基づく(鈍角度に相関)。このような針の表面に蛋白質が付着すると見掛け鈍角になる。従って、蛋白質付着を防ぎ、鈍角度を小さくする(例えばナノファイバーによる)コーティングは針の「鋭角度」よりも重要であると思われる。このような概念は外科用メス等にも当てはまる。
XX)創傷包帯
【0093】
創傷包帯は外傷、カテーテルの皮膚挿入部位及び手術後用途に広く使用されている。これは競争の激しい分野であり、過剰のOTC及び医療用備品が出回っている。感染が最小限であること、通気性、接着性、撥水性、装着し易さ、外し易さはいずれも医師、看護士及び患者が製品を選択する際の基準となる重要な特徴である。これらの特徴はいずれも個別の創傷包帯には認められるが、「オールインワン」パッケージには認められない。片面が弾性、通気性、疎水性、静菌性であると共に裏面が接着性、静菌性である包帯が得られるならば、医療分野の革新となるであろう。本発明のナノファイバー表面は場合によりこのような特徴の多く又は全てを提供することができる。この包帯は医療市場とOTC市場に参入することができよう。
【0094】
ナノワイヤーコーティングの特徴の組合せにより、患者はシャワー又は入浴することができ、感染を避け、治癒すると共に、苦痛を伴う包帯交換の必要がなくなる。各種態様は静菌性包帯及び/又は殺菌性包帯を含むことができる。各種態様は酸化銀及び/又は酸化亜鉛及び/又は酸化チタンを含むことができる。このような包帯は特に例えば火傷被害者等に使用することが考えられる。
【0095】
本発明はナノファイバー増大表面積基板と(例えば医療装置/用途における)その使用に関する多数の各種態様を含む。本明細書と特許請求の範囲を検討すると明らかなように、このような増大表面積をもつ基板は広範な医療用途で有益なユニークで改善された側面をもつ。当然のことながら、本発明の増大表面積は「ナノファイバー増大表面積」又は「NFS」と言う場合があり、あるいは状況によっては「ナノワイヤー増大表面積」又は「NWS」と言う場合もある。
【0096】
本発明の態様の共通の要素は場合により1種以上の部分で機能化されたナノファイバー表面の特殊な形態(本発明では一般に酸化ケイ素ナノワイヤーであるが、他の組成及び形態も含む)である。
XXI)腹部(又は胸部)大動脈瘤(AAA)医療処置
【0097】
ナノ構造表面増大コーティングに関連して本明細書に記載する組成物、装置、システム及び方法は例えば胸部又は腹部大動脈瘤の修復中にプロテーゼの機能と配置を装置において補助するために使用することができる。
【0098】
大動脈瘤は一般に身体の主要臓器に血液を送る心臓からの大動脈である胸部又は腹部大動脈の異常拡張、伸長又は肥大である。胸部及び腹部大動脈瘤とは夫々上部の弓状部分と下部の腹部部分の大動脈を意味する。動脈瘤の正確な原因は不明であるが、アテローム性動脈硬化症や高血圧の危険がある。共通の合併症は動脈瘤が破れて大量出血する医学的緊急事態である大動脈瘤破裂である。動脈の内壁が裂けて血液が動脈壁内に漏れると、大動脈解離が起こる。動脈瘤解離により破裂の危険が更に増す。米国だけで60歳以上の約5〜7%に大動脈瘤が発生している。動脈瘤破裂による年間死亡者は15,000人を上回り、米国における死亡原因の13位に位置する。
【0099】
一般に、胸部又は腹部大動脈瘤は約5cmに達すると、外科的インターベンションが必要である。胸部又は腹部大動脈瘤を術中処置により修復するためには、開胸法の場合には正中もしくは後腹膜切開、又は最低侵襲性エンドグラフト法では経皮的進入により胸腔に進入し、自家又は人工グラフトを使用して血流と血圧から動脈瘤を分離し、動脈瘤拡大を防ぐと共に破裂の危険を最小限にする。一般に、置換の第1の選択は一般に自家伏在静脈(ASV)であるが、移植に利用できない場合には、人工グラフトを使用してもよい。一般に、人工グラフトは大動脈瘤修復等の大径血管に使用されるが、最近では中径や小径血管修復にも適した方法の開発が研究されている。
【0100】
大動脈プロテーゼが正確に配置されないと動脈瘤が十分に密閉されず、グラフトの周囲の血流により動脈瘤が更に拡大したり、及び/又は動脈により供給される側副血管(例えば腎動脈)が偶発的に遮断される可能性がある。大動脈プロテーゼの位置がずれる可能性もある。今日まで、以下に記載するように、少なくとも2種類のステントグラフトが危険率の高さにより市場から撤収され、その他も失敗が続いている。接着性を増すようにグラフトの材料を改善し、漏出及び/又はプロテーゼ装置の配置不良もしくはずれ等の問題に起因する従来装置の欠陥を最小限にするか又は解消することにより、大動脈瘤修復の結果を改善する必要がある。
【0101】
本明細書に開示する方法及び組成物を使用すると、大動脈プロテーゼを動脈瘤の部位に正しく配置した場合に、組織表面に固着し、従来装置よりも長期間にわたってその開存性を維持するように、開胸法と最低侵襲法の両者の血管内修復処置を実施することができる。グラフトの表面にナノファイバーを直接成長させるか、又は別個に成長させて回収したナノファイバーをグラフトにコーティングし、グラフトに乾燥接着性表面を付与することにより、ナノファイバー(又はナノテトラポッド、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノドット等の他のナノ構造材料)をグラフトプロテーゼの外(及び/又は内)径にコーティングする。本明細書に開示する本発明の上記方法は動脈瘤又は他の疾患もしくは損傷症状をもつ患者の大動脈領域内にプロテーゼを配置する際に例えば位置と方向に関して確度を増すことができる。
【0102】
本発明の技術は開胸法と最低侵襲法の両者の胸部又は腹部大動脈瘤処置(又は大動脈もしくは他の身体領域における他の任意動脈瘤処置)を容易にするために使用することができるが、以下の例証では開胸法よりも患者に外傷の少ない最低侵襲法による血管内修復処置のみについて記載する。しかし、当業者に自明の通り、本明細書に開示する技術は開胸法にも容易に適用することができ、その場合には、例えば部分もしくは正中胸骨切開、小開胸、又は後腹膜切開により胸腔に進入する。
【0103】
図3A〜Bを参照し、本発明の方法及び組成物を使用して閉胸下の胸部又は腹部大動脈瘤修復処置中にプロテーゼグラフトを配置するためのシステムを模式的に例証する。1態様では、患者を麻酔し、一般に従来通りに外科処置の準備をする。次に、ステントグラフト配置メカニズムとステントグラフト372(図3B)を動脈瘤370の部位の腹部大動脈354(又は胸部大動脈356)内に配置する。大動脈瘤修復に使用することができる血管内装置としては例えばバルーン拡張型又は自己拡張型装置が挙げられる。バルーン拡張型ステントデザインは例えばその開示内容を参考資料として本明細書に組込むParodiら,Ann.Vase.Surg.1991;5:491−499及びWhiteら,J.Endovasc.Surg.1994;1:16−24に記載されている。以下の装置は腹部大動脈用としてFDA認可を受けており、本発明の実施に使用することができるシステムの例である。
・(1)Ancure(登録商標)Endograft(登録商標)System(Guidant Corporation)。1999年に認可されたこのシステムでは、エンドグラフトを大動脈内に配置し、バルーンを膨らまして拡げる。グラフトは無縫合フックを使用して上端と下端を血管壁に固定する。2001年3月16日にGuidantはこのシステムの生産を中止し、全在庫のリコールを発表した。同社は多数の装置故障と有害イベント(装置の配置の問題に伴う重症血管損傷を含む)の報告を怠ったことをFDAに報告した。FDAに正しく報告されていない製造変更もあった。FDAはこの装置とAneuRx装置に関して「公衆衛生通知:腹部大動脈瘤の治療用血管内グラフトの問題(Public Health Notification:Problems with Endovascular Grafts for Treatment of Abdominal Aortic Aneurysm(AAA))」を発表した。
・(2)Ancure(登録商標)Aortoiliac System(Guidant Corporation)。この新バージョンは2002年に認可され、大動脈回腸動脈用Ancure(登録商標)グラフトでは上下アタッチメントシステムに縫合ループを設けたが、それ以外は先のGuidant Endovascular Grafting Systemと同じである。この装置は解剖学的に単管又は二股エンドグラフト装置の使用に適さない患者での使用を目的としている。
・(3)AneuRx(登録商標)Stent Graft System(Medtronic AVE)。AneuRxシステムは1999に認可され、ポリエステル織布内面と自己拡張型Nitinol外骨格から構成される。拡張中のステントの径方向力により外骨格が動脈瘤壁に埋込まれ、アタッチメントメカニズムを構成する。この装置も上記FDA公衆衛生通知の対象となった。2003年12月にFDAは上市前調査からの長期追跡データの分析に基づき、AneuRx(登録商標)Stent Graft Systemに伴う死亡危険に関する更新情報を発表した。調査結果に基づき、FDAは「妥当なリスク便益プロフィルを満たし、使用上の注意に従って治療できる患者のみに」AneuRx(登録商標)Stent Graftを使用するように通告した。
・(4)EXCLUDER(登録商標)Bifurcated Endoprosthesis(W.L.Gore and Associates,Inc.)。この装置は2002年に認可され、大動脈の内側で大動脈及び腸骨動脈の直径まで自己拡張し、動脈瘤を密閉し、動脈壁を再び覆う。
・(5)Zenith(登録商標)AAA Endovascular Graft and H&L−B One−Shot(登録商標)Introduction System(Cook,Inc.)。この装置は2003年に認可され、自己拡張型であり、突起を介して血管壁に付着する。
【0104】
これらの装置はいずれも動脈瘤を血流循環から有効に「排除」した後に正常血流を復元するように動脈瘤の両端間に配置される。上記システムは一般にエンドグラフトプロテーゼ372(図3B)と対応するデリバリーカテーテル330から構成される。プロテーゼは動脈瘤370を血流と血圧から分離して動脈瘤拡大を防ぐと共に破裂の危険を最小限にする血管グラフトである。デリバリーカテーテル330は開腹又は経皮的方法(例えばSeldinger法)等の公知技術を使用して鼠蹊部の大腿又は腸骨動脈350,352に皮下挿入されるワイヤー輸送システムである。デリバリーカテーテル330は画像(例えば蛍光透視、心エコー、MRI、又はCTスキャン)案内下に大動脈354内を動脈瘤370の部位まで進行し、プレロードされたプロテーゼを大動脈に輸送するように設計されている。圧縮されたプロテーゼは特殊なデリバリーシース内にプレロードされる。所定プロテーゼはデリバリーが主プロテーゼと1又は2個の「ドッキングリム」から構成されるようにモジュラーコンポーネントから構成される。デリバリーシースの寸法が大きいため、一方又は両方の鼠蹊部を外科的に切開して血管に進入する必要がある。動脈系に進入後、蛍光透視法により腸骨動脈内を動脈瘤部位までプロテーゼを案内した後、規格に準拠した低圧バルーンを使用してプロテーゼを配置する。
【0105】
人工グラフトとしては例えば処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維が挙げられる。Dacron(登録商標)やTeflon(登録商標)(即ち発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE))等の合成ポリマーが最も一般的に使用されている合成グラフトである。例えば、その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む“Tissue Engineering of Vascular Prosthetic Grafts,”P.P.Zilla,H.P.Griesler,and P.Zilla,Landes Bioscience発行(May 1999)参照。ポリ(α−ヒドロキシエステル)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン等の他の合成材料や、チロシン由来ポリカーボネート及びポリアクリレート、ラクチド系ポリデプシペプチドポリマー、ポリ(L−乳酸−コ−L−アスパラギン酸)、及びラクチド系ポリ(エチレングリコール)等の合成材料も使用することができる。ステンレス鋼、チタン、又はNitinol金属メッシュ等の金属や、ガラス繊維(例えばニットガラス又はスパンガラス)又はセラミック等他の合金も合成グラフト材料として使用することができる。本発明の本態様は例えば図1に示すようにその使用場所である通路とグラフトの相互作用を強化するためにナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー又はナノワイヤー)を更に使用する。一般に、このようなナノ構造表面は対象通路内の装置の開存性を強化するように装置の接着性、摩擦、バイオインテグレーション又は他の特性を改善するために使用される。このような相互作用の強化は一般に通路の表面(例えば内壁又は外壁表面)と相互作用してその結合又は付着を助長するナノ構造表面により提供される。
【0106】
上述したように、ナノ構造コンポーネントは用途に応じてナノファイバーや他のナノ構造コンポーネント(例えばナノワイヤー、ナノロッド、ナノテトラポッド、ナノドット等)等の種々の形態及び形状をとることができ、接着性等のその特性を改善するために合成グラフト内又は合成グラフト上に組込まれる。ナノファイバーは例えばグラフトの外面及び/又は内面にナノファイバーを直接成長させるか、又はナノファイバーをグラフト表面に別個に共有的に(又は他の方法で)結合することにより、合成グラフトの外面又は内面に付着させることができる。更に、大動脈内における剛性と強度の改善等の特性を強化するために、ナノファイバー又は他のナノ構造をグラフト材料自体に埋込むこともできる。ナノファイバーの形状と寸法及びグラフト表面上のその密度はグラフトの接着性を所望レベルにするように変えることができる。
【0107】
本発明の人工グラフトはその生体有用性を更に強化するために(管状グラフトの場合には内面及び/又は外面に)他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。グラフトに設けた上記ナノファイバーコーティングはグラフトがこれらのコーティングを保持し易くする高い表面積対体積比を提供する。例えば、グラフトの血栓形成性を最小限にするように他の生体適合性材料を人工グラフトにコーティングすることができる。自家血管、ポリマー、多糖類等に存在する内皮細胞ライニング等のコーティングは内皮細胞増殖を増すために非血栓形成表面を提供することができる。グラフトは細胞接着、成長、及び増殖を増加するように更に1種以上の蛋白質又は成長因子(例えばVEGF、FGF−2及び他のHBGF(ヘパリン結合性成長因子))で修飾することができる。
【0108】
コーティングを使用する場合には、グラフトのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
XXII)脳及び他の身体臓器における血管閉塞
【0109】
ナノ構造表面コーティングに関連して本明細書に記載する組成物、装置、システム及び方法は更に血管閉塞により有効に治療される循環系及び他の身体臓器の各種疾患及び病態の治療に使用することができる。例えば、ナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)で処理された血管内コイル、ビーズ、合成グラフト又は他の液体塞栓剤を使用して関連血管を遮断することにより治療することができる多数の疾患の例としては、動静脈(AV)瘻孔、AV奇形、動脈瘤及び偽性動脈瘤、動脈管開存症、卵円孔開存、胃腸出血、腎及び骨盤出血、並びに腫瘍が挙げられる。
【0110】
血管内に各種物質(例えばイソブチルシアノアクリレート(IBCA)等の液体接着剤)を配置する方法は血栓(血塊)の形成を促進し、血管を完全に閉塞する方法の1つである。血管を閉塞するために閉塞コイルも使用されてきた。コイルの目的はコイルの周囲に迅速な血栓形成を促進することである。
【0111】
塞栓コイルで治療することができる多くの疾患のうちでは、脳動脈瘤が特に重要である。破裂したものとしていないものを含めた脳動脈瘤は場合により、動脈瘤を直接可視化した後に外科的にクリップすることにより動脈瘤への血流を遮断する外科的アプローチによって治療することができる。動脈瘤が血流から排除されると、出血の危険はなくなる。脳動脈瘤治療の別の低侵襲性アプローチは血管内アプローチであり、大腿動脈等の末梢挿入点から脳血管系にカテーテルを導入し、体内の動脈瘤に進行させる。その後、カテーテルを使用してバルーンやコイル等の塞栓装置を動脈瘤の部位に送り、動脈瘤への血流を遮断する。しかし、塞栓コイルは時間と共に収縮し、動脈瘤が再び拡大し、破裂の危険があるため、塞栓コイルの使用には問題がある。
【0112】
本発明の本態様は例えば、脳又は動脈血管構造の他の場所における側壁動脈瘤を修復するために内腔内パッチを使用する。特に脳側壁動脈瘤の治療に関して本方法を説明するが、当然のことながら、本発明のシステム及び方法はその内側にコイルや塞栓パッチ材料等の塞栓装置を配置することができる各種血管及び身体臓器における他の各種塞栓療法でも使用することができる。
【0113】
本明細書に開示するシステム及び方法は図4A〜Cに模式的に示すように、動脈瘤部位等の患者の脳血管系内で塞栓装置及び/又は材料を正確に配置し易くするために使用することができる。例えば金属メッシュ、合金、処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維又は他のポリマー材料等の任意の適切な生体適合性材料のパッチの外面(及び/又は内面)の全部又は選択部分にナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー、ナノワイヤー、ナノテトラポッド、ナノドット等)をコーティングし、接着性にする。ナノファイバーの寸法、形状及び密度は上記態様に関して上述したようにパッチの接着性を改変及び制御するように変化させることができる。例えばナノファイバーはパッチの外面(及び/又は内面)に直接成長させてもよいし、別個に成長させて回収後にパッチ材料に付設してもよい。ナノファイバーをパッチ材料自体に組込み、その剛性を更に強化してもよい。
【0114】
本発明の人工パッチはその生体有用性を更に強化するために他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。パッチに設けた上記ナノファイバーコーティングはパッチがこれらのコーティングを保持し易くする。例えば、パッチの血栓形成性を最小限にするように他の生体適合性材料をパッチにコーティングすることができる。自家血管、ポリマー、多糖類等に存在する内皮細胞ライニング等のコーティングは内皮細胞増殖を増すために非血栓形成表面を提供することができる。パッチは細胞接着、成長、及び増殖を増加するように更に1種以上の蛋白質又は成長因子(例えばVEGF、FGF−2及び他のHBGF(ヘパリン結合性成長因子))で修飾することができる。
【0115】
コーティングはパッチのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
【0116】
内腔パッチ490(図4C)はその開示内容を参考資料として本明細書に組込む米国特許第4,739,768号及び第4,884,575号に示されているような規格に準拠した低圧バルーンカテーテルに搭載されている。これらの方法は体内の動脈瘤に接近するために末梢挿入点(例えば大腿動脈)から脳血管系に導入されたカテーテルを使用する。カテーテルはパッチ490を動脈瘤480の部位に送り、動脈瘤への血流を遮断するために使用することができる。塞栓剤送達カテーテル440は側壁動脈瘤又は他の病態をもつ脳の血管に導入される。患部としては、図4Aに示すような動脈瘤480、又は瘻孔、AV奇形、又は病変部もしくはその近傍に配置すると異常領域への血流が低下又は停止する他の疾患が挙げられる。これを実施するために、図4A〜Cは動脈瘤に流入する血液を遮断するためにデリバリーカテーテル440により動脈瘤頸部に塞栓装置(この場合はパッチ490)を配置する1使用例を示す。カテーテル440は一般に大腿動脈等の末梢挿入点から患者の脳血管系に導入され、大動脈456と頸(又は椎骨)動脈467の1本を通して蛍光透視法により脳に案内される。挿入カテーテル440とパッチが血管系を通して脳内の動脈瘤480部位に送られると、パッチはX線透視案内下に動脈瘤頸部492と整列される。パッチはパッチを血管壁にプレスフィットするようにバルーンカテーテル440を膨らませることにより血管壁に押し付けられる。
【0117】
更に別の態様では、例えば図4Dに示すCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標)等の動脈瘤コイル又はビーズ等の塞栓装置上にナノ構造(例えばナノファイバー)を成長させ、形成中の粘着性血栓からの親水性天然血小板により塞栓装置の血栓形成性を強化することができる。
XXIII)無縫合グラフトプロテーゼ
【0118】
上記に概説した本発明の方法、装置及びシステムは、血管、管路、内腔又は他の管状臓器の吻合の実施、例えば縫合を使用せずにある血管を別の血管につなぐ無縫合吻合法に使用することもできる。
【0119】
動脈バイパス手術は閉塞性血管疾患の一般的な治療方法である。このような手術は一般に閉塞した血管を切開して露出させた後にグラフト、例えば哺乳動物動脈、伏在静脈、又は合成グラフト(以下、「バイパスグラフト」と総称する)を閉塞の(下流の)遠位の閉塞血管(以下、「天然血管」と言う)に結合する。バイパスグラフトの上流ないし近端は閉塞の上流の適切な血管(例えば大動脈)に固定し、遮断部の周囲に血流を迂回させる。頸動脈等の他の閉塞又は疾患血管も同様に治療することができる。更に、透析患者の動脈と静脈の間にグラフトを配置するためにも同様の方法を実施する。
【0120】
吻合を形成するために利用可能な現行方法としては、血管を手で縫合する方法がある。吻合部の縫合は時間がかかり、リークフリーシールを得られないことが多く、閉塞部に血流乱流部位を生じる可能性がある。従って、血管吻合形成の問題を減らし、グラフト血管と動脈の確実な吻合を行う迅速な方法を提供することが望ましい。
【0121】
現在利用可能な1つの方法はステープル装置を使用する。これらの装置は血管吻合用に応用しにくい。血管の側壁に誤って穴を明けることなしにこれらの装置を血管内で操作するのは困難なことが多い。操作しにくいことに加え、これらの装置は確実なリークフリーシールを得られないことが多い。
【0122】
有効な無縫合吻合技術を開発しようとする他の無数の試みは例えば米国特許第3,221,746号、3,357,432号、3,648,295号、3,683,926号及び4,267,842号に記載されている。これらはいずれも吻合しようとする血管の内側に配置される体内管状装置に関する。血管もしくは他の導管、管路、内腔又は他の管状臓器の吻合を実施するための他の種々の装置及び使用方法も開示されている。このような装置及び方法の例は例えばその開示内容を参考資料として本明細書に組込む米国特許第3,221,746号、3,357,432号、3,648,295号、4,366,819号、4,470,415号、4,553,542号、5,591,226号、5,586,987号、5,591,226号、及び6,402,767号に記載されている。
【0123】
本発明の本態様は血管吻合を実施するための従来の装置及び方法を改善するものである。本発明はある血管を別の血管の流路に配置して両者の流量結合を増加し易くする。本発明は好ましくは縫合を使用せずに血管、卵管、腸管、尿管、輸精管及び神経外鞘等の解剖学的構造を吻合する人工グラフト管を提供する。新規管は(例えば図5Aに示すような)単純な管又は例えば図5Bに示すようなTチューブ、又は適切な他の任意管形状もしくは構造の人工グラフト管とすることができる。あるいは、新規管は人工管と天然管の組み合わせ(例えば人工管の内側に実質的に同心円状に配置した天然管)でもよい。
【0124】
人工管は任意の適切な生体適合性材料から作製することができ、このような材料としては例えば弾性半多孔質メッシュ(例えばNitinolメッシュ、ステンレス鋼メッシュ、チタンメッシュ等)、処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維又は他のポリマー材料(例えばDacron(登録商標)、PTFE、ポリイミドメッシュ)、セラミック、ガラス繊維等が挙げられる。
【0125】
本発明の本態様は例えば図1に示すようにその使用場所である通路と管の相互作用を強化するためにナノ構造コンポーネントを更に使用する。一般に、このようなナノ構造表面は対象通路内の装置の開存性を強化するように装置の接着性、摩擦、バイオインテグレーション又は他の特性を改善するために使用される。このような相互作用の強化は一般に通路の表面(例えば内壁又は外壁表面)と相互作用してその結合又は付着を助長するナノ構造表面により提供される。
【0126】
無縫合吻合用新規管はその外面(及び/又は内面)の全部又は選択部分にナノファイバーや他のナノ構造コンポーネント(例えばナノワイヤー、ナノテトラポッド、ナノドット等)をコーティングして接着性にする。ナノファイバーを管材料自体に組込み、剛性と強度を強化した複合材料を形成してもよい。ナノファイバーの寸法、形状及び密度は上記態様に関して上述したように管の接着性を改変及び制御するように変化させることができる。ナノファイバーは管の外面(及び/又は内面)に直接成長させてもよいし、別個に成長させて回収後に管材料に付設してもよい。
【0127】
本発明の人工グラフトはその生体有用性を更に強化するために(管状グラフトの場合には内面及び/又は外面に)他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。グラフトに設けた上記ナノファイバーコーティングはグラフトがこれらのコーティングを保持し易くする。例えば、管の血栓形成性を最小限にするように他の生体適合性材料をグラフト管にコーティングすることができる。自家血管、ポリマー、多糖類等に存在する内皮細胞ライニング等のコーティングは内皮細胞増殖を増すために非血栓形成表面を提供することができる。ナノファイバー又は管材料は細胞接着、成長、及び増殖を増加するように更に1種以上の蛋白質又は成長因子(例えばVEGF、FGF−2及び他のHBGF(ヘパリン結合性成長因子))で修飾することができる。コーティングは管のナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
【0128】
管の内径及び/又は外径に設けたナノファイバーは天然宿主血管の内径(又は外径)に緊密にプレスフィットできるように又は他の合成グラフト血管を接続できるように実質的な乾燥接着性をもつ。
【0129】
人工管の代表的な1形態としては第1の高弾性材料(例えばNitinol)の管フレームを第2の高弾性材料(例えばシリコンラバー)で被覆してフレームのアパーチャーを実質的に充填するようにしたものが挙げられる。この組み合わせにより、天然動脈等の天然身体臓器管と同様に膨張性の人工グラフトが作製される。本発明の人工グラフトには(上記)弾性と膨張性があり、小径管内に配置することができ(その後、自動的にその最大径に戻る)、モジュラー構成にすることができ、天然身体臓器管をその内側に同心円状に受容することができ、内皮層の成長に対応することができ、MRI法に適合可能であり、蛍光透視法により目視可能である等の利点もある。
【0130】
本発明の第1の方法は第1の血管502と第2の血管504を端端吻合(例えば図5A)で結合する方法であり、一般にナノファイバーコーティングを付けた上記のような人工管状グラフト506をバイパスグラフト血管(天然グラフト血管でも合成グラフト血管でもよい)と接続しようとする天然血管の開口に挿入する段階と、好ましくは(例えばバルーンカテーテルの使用により)管状グラフトの少なくとも一部を径方向に拡張し、管状グラフトを血管の内壁に気密にプレスフィットして固定する段階を含む。管状グラフト部材は管状部材を径方向に拡張した後に管状部材をその予め形成された形状に実質的に維持するために十分に剛性であることが好ましい。管状グラフト部材は(例えば管用形状記憶合金(例えばNitinol)の使用により)予め形成された形状まで径方向に自己拡張可能であるため、バルーンカテーテル等の挿入装置を使用せずに気密結合するように血管内でプレスフィット形状をとることができる。本発明の別の側面では、管状部材は端側吻合用Tチューブ508の形態であり、図5Bに示すように天然血管512の側壁の開口511にバイパスグラフト血管510を固定する。以上、管状グラフトについて記載したが、本発明の所定側面は所望用途に応じて他のグラフト法や例えば円形、楕円形、多角形(例えば正方形、長方形、五角形、六角形、八角形、台形、菱形等)等のほぼ任意の横断面形状をもつグラフトにも同様に適用可能である。更に、当然のことながら、グラフトの本体構造の横断面形状は例えばグラフトを作製するために使用する方法、及び/又はその所望用途等の多数の因子に応じて、グラフトを挿入する血管の横断面形状と同一でも異なっていてもよい。
XXIV)整形外科用インプラント
【0131】
ナノ構造(例えばナノワイヤー、ナノロッド、ナノテトラポッド、ナノドット及び他の類似構造)を整形外科用インプラント中又はインプラント上に組込むと、生体適合性、感染抵抗、骨統合、望ましくない細胞増殖の防止、並びに骨、靭帯、筋肉等の整形外科的組織内及びその周囲で使用する場合のインプラントの耐久性を改善することができる。ナノファイバー増大表面積の恩恵を受けることができる整形外科用インプラントの例としては限定されないが、人工膝関節、人工股関節、軟骨を置換又は補強するものを含む足関節、肘関節、手関節、及び肩関節インプラント、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、及び尺骨の骨折修復及び外部固定用等の長骨インプラント、固定装置を含む脊髄インプラント、頭蓋骨固定装置を含む顎顔面インプラント、人工骨置換、歯科用インプラント、ポリマー、樹脂、金属、合金、プラスチック及びその組合せから構成される整形外科用セメント及び接着剤、このようなインプラントで使用される釘、ネジ、プレート、固定装置、ワイヤー及びピン等、並びに当業者に公知の他の整形外科用インプラント構造が挙げられる。例えば図6Aに示すように、股関節ステム612の形態の整形外科用インプラント610は基板611と多孔質層614を含む。多孔質層614はビーズ、繊維、ワイヤーメッシュ並びに多孔質層614を形成されるために使用される他の公知材料及び形状を含むことができる。本明細書に記載する任意方法によりナノ構造コンポーネントを基板611に付設し、例えば図1に示すようなナノ構造表面を形成することができる。
【0132】
特に、本発明の本態様はこのような埋込型整形外科用装置が移植部位で接触する組織、関節、軟骨、骨及び他の身体構造と装置の相互作用を強化するようにナノ構造コンポーネントを取付けた装置を提供する。ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)は例えば埋込型装置の外面及び/又は内面にナノファイバーを直接成長させるか、又はナノファイバーを装置表面に別個に共有結合することにより、装置の外面又は内面に付着させることができる。インプラント表面に設けたナノ構造は繊維芽細胞や他の望ましくない細胞に対して骨芽細胞の増殖を促進及び強化することによりインプラント部位における骨増殖反応を強化することができる。骨増殖活性の強化により、時間と共にインプラントの良好な固定が促進され、繊維芽細胞応答による緩みが防止される。更に、整形外科用インプラントに設けたナノ構造表面は、例えば細菌及び他の感染性生物(例えばウイルスや真菌)の増殖を防ぐことにより、インプラント部位の感染を防ぐことができる。ナノファイバーの形状及び寸法とインプラント表面上のその密度は細胞型の変動に応じて変化させることができる。
【0133】
代替又は付加態様として、耐久性と負荷を受ける移植部位に生じる摩耗に対する耐性を強化することにより、微視的分解とその結果として関節に破片がたまるのを防ぐために、ナノファイバー又は他のナノ構造をインプラント材料に埋込むこともできる。
【0134】
本発明のインプラントはその生体有用性を更に強化するために内面及び/又は外面に他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、薬剤溶出コーティング、薬剤又は他の化合物、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。例えば、整形外科用インプラントに設けたナノ構造表面は薬剤又は他の化合物を移植部位に送達することができる。例えば溶出、結合、溶解、及び/又はナノワイヤー自体の溶解によりナノワイヤーから送達される薬剤は感染を防止し、骨成長を増進し、瘢痕組織、過増殖を防ぎ、インプラントの拒絶を防止することができる。インプラントに設けた上記ナノファイバーコーティングはインプラントがこれらのコーティングを保持し易くする広い表面積を提供することができる。コーティングはインプラントのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
XXV)バイオエンジニアド神経スカフォールド
【0135】
外傷、他の外科処置、及び怪我では末梢神経と中枢神経の損傷が生じる。一般に、損傷した神経の間隙を埋め、神経再生の足場を提供するためには患者自身の神経片(例えば自家移植片)が使用されている。これらの自家移植片の効果は50%未満である。一般には神経増殖を強化するための化合物を含浸させた人工基質上に新しい末梢神経を増殖させる試みが行われてきた。特に脊髄損傷と脳損傷については、間隙を埋めて神経修復を誘導するための新規マイクロ装置が有用であると思われる。
【0136】
本発明は神経細胞増殖を刺激及び促進するために、スカフォールド内及び/又はスカフォールド上に組込んだナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)の表面積が大きいことにより実質的に三次元となり得るナノスケールバイオエンジニアドスカフォールドを想定する。更に、三次元形状のナノ構造は神経再生を促進できると思われる。バイオエンジニアドスカフォールドはその上及び/又はその中にナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)を組込むベースメンブレン又はマトリックスを含むことができる。ベースメンブレン又はマトリックスは天然もしくは合成ポリマー(導電性ポリマーを含む)、金属、合金、セラミック又はグラスファイバー、シリコーン等の各種材料から作製することができる。本発明で有用であり得る方法として、例えば導電性ポリマーから適切なメンブレン又はマトリックスを製造するための有用な方法はその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許第6,095,148号及び6,696,575号に開示されている。
【0137】
スカフォールド材料はポリマーフィルム又はポリマービーズ等の適切な支持体にブレンド又はコーティングすることができる。その開示内容を参考資料として本明細書に組込むLangerら,J.Ped.Surg.23(1),3−9(1988)、WO88/03785及びEPA 88900726.6(Massachusetts Institute of Technology)に記載されているように、新しい組織を形成するための移植用マトリックスは柔軟で非毒性の血管浸潤用多孔質鋳型とすべきである。細孔は細胞又は患者を損傷せずに血管浸潤と細胞播種を可能にするように選択すべきである。細孔は一般に約100〜300ミクロンの連続細孔である。マトリックスは表面積を最大にし、細胞への栄養と成長因子の十分な拡散を可能にするような形状とすべきである。代表的な1態様では、マトリックスはポリ酸無水物、ポリオルトエステル、又はポリヒドロキシ酸(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸)、及びそのコポリマー又はブレンド等の生体吸収性又は生分解性合成ポリマーから形成される。非分解性材料を使用してマトリックスを形成することもできる。適切な材料の例としてはエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール誘導体、テフロン、ナイロン、ポリメタクリレート及びシリコンポリマーが挙げられる。
【0138】
あるいは、限定されないが、上記及び下記に記載するような有機及び無機ナノ結晶等のナノ構造(例えばナノワイヤー、ナノドット、ナノテトラポッド及びナノスケールの他の形状)のみからスカフォールドを作製することもできる。薬剤、細胞(例えばシュワン細胞等の神経細胞、幹細胞又は胚性細胞)、繊維芽細胞、又は他の特定化合物(例えば神経増殖因子(NGF)、細胞播種用化合物、神経栄養増殖因子(又は前記因子を産生する遺伝子組換え細胞)、VEGF、ラミニン又は他の同等化合物)が移植時に軸索伸長及び機能的神経活動を促進するようにこれらの化合物をバイオエンジニアドスカフォールドに含浸させるか又は結合することができる。in vivo移植のために神経外植片をin vitroで培養及び再生させてもよい。例えば、一次座骨神経外植片を哺乳動物組織から単離し、例えばグルコース、胎仔ウシ血清(FBS)、ピルビン酸ナトリウム及びNGFを補充した高グルコースDMEMで培養することができる。16日齢ニワトリ胚から座骨神経を単離する方法はY.−W.Hu and C.Mezei,Can.J.Biochem.,49:320(1971)に記載されている。神経細胞の増殖と再生を強化するように培養対象の特定神経細胞に合わせて最適化された血清、代用血清、増殖因子(例えば神経増殖因子)、ホルモン、及び/又は薬剤等の各種組成物を培地で使用することができる。
【0139】
コーティングはスカフォールドのナノ構造表面に直接吸着させることができる。ナノ構造コンポーネントの広い表面積は化合物コーティングをスカフォールドに保持するのに役立つ。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、上述したように、例えばシラン基を介して所望化合物を添加したコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよい。
【0140】
スカフォールド表面上のナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)は場合によりナノファイバー表面をより頑丈にするために低速溶解性生体適合性ポリマー(又は他の)マトリックスに埋込むことができる。ポリマーマトリックスは各ナノファイバーの長さの殆どを保護することができ、末端のみが損傷を受け易い。水溶性ポリマーの作製は多様な方法で実施することができる。例えば、モノマーと酸化剤から主に構成される希水溶液中でポリマー鎖をin situ形成することができる。この場合には、ポリマーは実際に溶液中で形成された後、厚さ約10〜250オングストローム以上、より好ましくは10〜100オングストロームの均一な超薄膜としてナノファイバー表面に自然吸着される。
【0141】
このようなスカフォールドで治療する神経間隙は約5mm〜約50mm、例えば約10〜約30mm、例えば約20mm〜30mmの寸法範囲とすることができる。スカフォールド装置は用途に適合するような各種寸法と形状で作製することができ、ナノ構造は必要に応じて神経電気シグナルを神経線維に伝達するために導電性を強化するようにドーピングすることができる。スカフォールド装置は損傷細胞又は組織(例えば神経系組織)を修復又は置換するための治療を必要とする患者にin vivo移植することができる。移植に使用することができる材料としては、縫合糸、チューブ、シート、接着防止装置(一般にフィルム、in situ重合される液体として塗布されるポリマーコーティング、又は他の物理的バリヤー)、及び創傷治癒物質(治癒すべき創傷に応じてフィルムやコーティングから支持構造まで多様)が挙げられる。
【0142】
治療効力を増すために、蛋白質、抗体、神経増殖因子、ホルモン、及び接着分子等の神経組織治癒を更に促進する組成物をスカフォールドと併用し、上述したように、場合によりナノファイバー及び/又はスカフォールド支持材料に共有結合することができる。当業者は過度の実験なしにこれらの材料と必要な条件の正確な使用方法を容易に決定することができる。スカフォールドは処置すべき細胞に隣接するように移植してもよいし、処置すべき細胞を播種してもよい。スカフォールド装置は場合により電圧又は電流源に電気的に接続される。電気接続は例えばスカフォールドと接触するように挿入された針、又は適当な電力源に外部接続することが可能なナノ構造表面もしくはスカフォールドメンブレンに付着した電極とすることができる。細胞を損傷せずに細胞に所望効果を誘導する範囲の電圧又は電流をナノ構造及び/又はスカフォールドメンブレンに印加することができる。
XXVI)ナノファイバー表面基板の特徴
【0143】
上述したように、表面積の増加は多くの分野(例えばアッセイ用基板又は分離用カラムマトリックス)で追求されている特性である。例えば、トライボロジー等の分野や分離と吸着を伴う分野は表面積を最大にすることに深い関係がある。本発明は表面積を増加ないし増大(即ちナノファイバーをもたない構造又は表面に比較して増加ないし増大)した表面と応用を提案する。
【0144】
本発明の「ナノファイバー増大表面積」は基板の所定「フットプリント」内の表面積がナノファイバーをもたない同一フットプリント内の表面積に比較して増加するように基板に付着した複数のナノファイバー(例えばナノワイヤー、ナノチューブ等)を含む基板に対応する。本発明の典型的態様では、ナノファイバー(及び多くの場合には基板)は酸化ケイ素から構成される。当然のことながら、このような組成は本発明の所定態様では多数の利点がある。また、本発明の多くの好ましい態様では、複数のナノファイバーの1本以上を1個以上の部分で機能化する。下記参照。しかし、同様に当然のことながら、本発明は特に指定しない限り、ナノファイバー又は基板の組成により特に限定されない。
【0145】
本発明の各種態様は多数の異なる用途に適応可能であり、有用である。例えば、以下に詳述するように、例えば結合用途(例えばマイクロアレー等)、分離(例えば、(例えば場合によりバイオフィルム等の形成を阻止する細胞培養及び/又は医療用インプラントのベースとしての)バイオスカフォールド)、及び制御放出マトリックス等で本発明の各種変形を使用することができる。本明細書では他の用途及び態様も検討する。
【0146】
本発明の種々の態様の他の有益な用途について以下に詳細に検討する。例えば、本発明のナノファイバー表面の独特の形態は(in vitro及びin vivo両者の)細胞培養増殖用スカフォールド等の多数の生体医療用途で利用することができる。in vivo用途としては例えば骨形成の補助等が挙げられる。更に、所定の態様の表面形態はバイオフィルム形成及び/又は細菌/微生物定着を妨げる表面を提供する。本発明の他の可能な生体医療用途としては例えば薬剤の制御放出マトリックス等が挙げられる。上記参照。
【0147】
当業者に自明の通り、本発明の多くの側面は場合により変更可能である(例えばナノファイバー上の表面化学種、ナノファイバーの任意末端又は基板表面上の表面化学種等)。従って、本発明の各種変形等の特定例証は本発明を限定するものではない。また、当然のことながら、以下に詳述するように、本発明のナノファイバーの長さと厚さの比は場合により例えばナノファイバーの組成と同様に変動する。更に、ファイバーを表面と接触させるためには種々の方法を利用することができる。更に、本発明の多数の態様は例えば部分又は官能基とナノファイバーの付着により1種以上の方法で特に機能化されたナノファイバーを含むが、他の態様は非機能化ナノファイバーを含む。
XVII)ナノファイバー及びナノファイバー作製
【0148】
本発明の典型的態様では、表面(即ちナノファイバー増大面積表面)とナノファイバー自体は場合により任意数の材料を含むことができる。表面とナノファイバーの実際の組成は多数の可能な因子に依存する。このような因子としては例えば増大面積表面の所期用途、表面を使用する条件(例えば温度、pH、光(例えばUV)の存在、雰囲気等)、(例えば患者の体内等で)表面を使用する反応、表面の耐久性及びコスト等が挙げられる。ナノワイヤーの延性と破壊強度は例えばその組成により異なる。例えば、セラミックZnOワイヤーはシリコン又はガラスナノワイヤーよりも脆性であり、カーボンナノチューブは引張強さが高いと考えられる。
【0149】
以下に詳述するように、本発明のナノファイバー及びナノファイバー増大表面を作製するために使用される所定の可能な材料としては例えばシリコン、ZnO、TiO、カーボン、カーボンナノチューブ、ガラス、石英が挙げられる。下記参照。本発明のナノファイバーは更に場合により例えば特定性質を強化又は付加するためにコーティング又は機能化される。例えば、ポリマー、セラミック又は小分子を場合によりコーティング材料として使用することができる。場合により使用するコーティングは耐水性、機械的もしくは電気的性質の改善又は所定検体に対する特異性等の特性を付与することができる。更に、特定部分又は官能基を本発明のナノファイバーに付着又は結合することもできる。
【0150】
当然のことながら、本発明は特定ナノファイバー及び/又は基板組成の記載に限定されず、特に指定しない限り、多数の他の材料の任意のものを本発明の各種態様で場合により使用することが理解されよう。更に、ナノファイバーを構成するために使用される材料は場合により基板表面を構成するために使用される材料と同一でもよいし、基板表面を作製するために使用される材料と異なっていてもよい。
【0151】
本発明の更に他の態様では、該当ナノファイバーは場合により例えばナノチューブル(例えば中空コア構造)等の各種物理的構造を含むことができる。本発明では場合によりカーボンナノチューブ、金属ナノチューブ、金属及びセラミック等の種々のナノファイバーが使用される。
【0152】
本発明は特定構成に限定されず、当然のことながら変更可能であると理解すべきである(例えば場合により種々の長さ、密度等で存在するナノファイバーと基板と選択部分等の各種組み合わせ)。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみを記載する目的であり、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが前後関係から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「ナノファイバー」と言う場合には場合により複数のこのようなナノファイバーを含み、他の用語についても同様である。特に定義しない限り、全科学技術用語はそれらの用語が属する分野で一般に使用されていると同一の意味をもつ。本発明の目的で、他の特定用語については明細書の各所で定義する。
A)ナノファイバー
【0153】
本明細書で使用する「ナノファイバー」なる用語は一般に約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約25nm未満、更には約10nm又は5nm未満の少なくとも1個の物理的寸法を特徴とするナノ構造を意味する。多くの場合には、領域又は特徴的寸法は構造の最短軸方向の寸法である。
【0154】
本発明のナノファイバーは一般に1本の主軸が他の2本の主軸よりも長く、従って、1を上回るアスペクト比、2以上のアスペクト比、約10を上回るアスペクト比、約20を上回るアスペクト比、又は約100、200、もしくは500を上回るアスペクト比をもつ。所定態様では、本発明のナノファイバーは実質的に均一直径をもつ。所定態様では、直径は最大変動領域と少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm、又は少なくとも50nmの直線寸法にわたって約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満の分散を示す。例えば、コストの問題及び/又はよりランダムな表面を形成するために、広い範囲の直径が望ましいと思われる。一般に直径はナノファイバーの両端から(例えばナノファイバーの中心20%、40%、50%、又は80%にわたって)測定される。更に他の態様では、本発明のナノファイバーは不均一直径をもつ(即ちその長さ方向に直径が変動する)。更に所定態様では、本発明のナノファイバーは実質的に結晶質及び/又は実質的に単結晶質である。
【0155】
当然のことながら、ナノファイバーなる用語は場合により例えばナノワイヤー、ナノウィスカー、半導体ナノファイバー、カーボンナノチューブ又はナノチューブル等の構造を含むことができる。
【0156】
本発明のナノファイバーは材料性質が実質的に均一でもよいが、所定態様では不均一(例えばナノファイバーヘテロ構造)であり、1又は複数の適当なほぼ任意材料から作製することができる。ナノファイバーは「純粋」材料、実質的に純粋な材料、ドープ材料等から構成することができ、絶縁体、導体及び半導体を含むことができる。更に、本発明のナノファイバーの所定の例は上述のようにシリコン(又は酸化ケイ素)から構成されるが、特に指定しない限り、場合により多種多様の材料の任意のものから構成することができる。ナノファイバーの組成は多数の因子、例えば(使用する場合には)ナノファイバーに結合又は付着させる特定官能基、耐久性、コスト、使用条件等により変えることができる。ナノファイバーの組成は当業者に非常によく知られている。従って、当業者に自明の通り、本発明のナノファイバーは無数の可能な物質(又はその組み合わせ)の任意のものから構成することができる。本発明の所定態様は1種以上の有機又は無機化合物又は材料から構成されるナノファイバーを含む。本明細書中の特定ナノファイバー組成の記載は限定的ではない。
【0157】
更に、本発明のナノファイバーは場合により多種多様の方法の任意のものにより作製され、本明細書に記載する例は限定的ではない。従って、本明細書に特に記載しないが、本明細書に記載するパラメーターに該当する手段により作製されたナノファイバーも本発明のナノファイバーであり、及び/又は本発明の方法で使用される。
【0158】
一般的な意味では、本発明のナノファイバーは(必ずしもそうでなくてもよいが)多くの場合には固体で場合により平坦な基板から成長させた細長い突起(例えばファイバー、ナノワイヤー、ナノチューブル等)を含む。当然のことながら、本発明の所定態様ではナノファイバーをその最終基板上に堆積し、例えばファイバーを成長させた基板から分離し、第2の基板に付着させる。第2の基板は平坦である必要はなく、実際にナノファイバーを最初に成長させた基板と同様に無数の三次元構造を含むことができる。本発明の所定態様では、基板は弾性である。同様に、以下に詳述するように、本発明のナノファイバーは種々の構造の表面内又は表面上、例えばキャピラリーチューブ、シャント内等に成長/作製することができる。下記参照。
【0159】
本発明の各種態様では、該当ナノファイバーを場合により第1の基板上に成長させた後に表面積を増大させようとする第2の基板に移送する。このような態様は所望基板を弾性にする必要がある場合や、ナノファイバーを直接付加もしくは成長させにくい特定三次元形状に合致させる必要がある場合に特に有用である。例えば、ナノファイバーは例えばシリコンウェーハや他の同様の基板等の剛性表面上に成長させることができる。こうして成長させたナノファイバーをその後、場合により例えばゴム等の弾性支持体に移送することができる。この場合も当然のことながら、本発明は特定ナノファイバー又は基板組成に限定されない。例えば、場合により例えばアルミニウム等の弾性箔を含む各種表面の任意のものの上にナノファイバーを成長させる。更に、高温成長法には、本発明のナノファイバーを成長させる基板として任意金属、セラミック又は他の熱安定材料を場合により使用する。更に、ナノファイバーを成長させる多種多様な基板と組み合わせて溶液相法等の低温合成法を利用することもできる。例えば、弾性ポリマー基板及び他の同様の基板を場合によりナノファイバー成長/付着用基板として使用する。
【0160】
1例として、金触媒を使用して表面にナノファイバーを成長させる方法が文献に記載されている。このようなファイバーに関する適用例はファイバーを基板から回収した後に装置に組込むことを基本とする。しかし、本発明の多くの他の態様では増大表面積に加わるナノファイバーをその場で成長させる。従って、表面に堆積した金コロイドからナノファイバーを成長させる等の利用可能な方法が本発明では場合により使用される。得られる最終製品はファイバーを成長させた基板(即ちナノファイバーにより表面積が増大した基板)である。当然のことながら、本発明の特定態様及び使用は、特に指定しない限り、場合によりその使用場所で成長させるか及び/又は他の場所で成長させたナノファイバーを回収してその使用場所に移送したナノファイバーを含むことができる。例えば、本発明の多くの態様はファイバーを成長基板上で無傷にしておき、ファイバーが基板に付与するユニークな性質を利用するものである。他の態様はファイバーを第1の基板で成長させ、ファイバーを第2の基板に移送し、ファイバーが第2の基板に付与するユニークな性質を利用するものである。
【0161】
例えば、本発明のナノファイバーを例えば非弾性基板(例えば所定種のシリコンウェーハ)上に成長させた場合には、このような非弾性基板から弾性基板(例えばゴム又は織布層材料)に移送することができる。この場合も、当業者に自明の通り、本発明のナノファイバーは場合により最初から弾性基板上に成長させてもよいが、このような決定は種々の所望パラメーターによると思われる。
【0162】
ナノファイバーを作製した表面から別の表面に移送するには種々の方法を利用することができる。例えば、ナノファイバーを液体懸濁液(例えばエタノール)中に回収した後に、別の表面にコーティングすることができる。更に、第1の表面からのナノファイバー(例えば第1の表面上で成長させるか又は第1の表面に移送したナノファイバー)は場合によりナノファイバーに粘着性コーティング又は材料を付与した後にこのようなコーティング/材料を第1の表面から剥離することにより「回収」することができる。粘着性コーティング/材料をその後、場合によりナノファイバーを堆積する第2の表面に配置する。このような移送に場合により使用される粘着性コーティング/材料の例としては限定されないが、例えばテープ(例えば3M Scotch(登録商標)テーブ)、磁気ストリップ、硬化性接着剤(例えばエポキシ、ラバーセメント等)等が挙げられる。ナノファイバーを成長基板から取り出し、プラスチックと混合した後に、このようなプラスチックの表面をアブレーション又はエッチングしてファイバーを露出させることができる。
【0163】
本発明の実際のナノファイバー構造は場合により複雑である。ナノファイバーは複雑な三次元パターンを形成することができる。種々の高さ、カーブ、屈曲部等が絡み合い、(例えばナノファイバーをもたない表面に比較して)単位基板当たりの表面積が著しく増加した表面を形成する。当然のことながら、本発明の他の態様ではナノファイバーは複雑である必要はない。即ち、本発明の多くの態様では、ナノファイバーは「直線状」であり、屈曲、湾曲、又はカールする傾向がない。しかし、このような直線状ナノファイバーも本発明に含まれる。いずれの場合も、ナノファイバーは非蛇行性で著しく増大した表面積をもつ。
B)機能化
【0164】
本発明の所定態様はファイバーに1個以上の機能部分(例えば化学反応基)を付着又は結合したナノファイバー及びナノファイバー増大面積表面を含む。機能化ナノファイバーは場合により例えば分離やバイオアッセイ等の反応で所望検体に特異性を付与するために多くの各種態様で使用される。本発明の増大表面積の典型的態様は多様な部分で適切に修飾した酸化ケイ素から構成すると有利である。当然のことながら、本発明の他の態様は場合により同様に特定目的のために機能化した他のナノファイバー組成(例えばポリマー、セラミック、CVD又はゾル−ゲルスパッタリングによりコーティングされた金属等)から構成される。場合により本発明で使用される多数の機能化と機能化技術は当業者に自明である。
【0165】
例えば、関連部分及び他の化学種とその作製/使用方法に関する詳細は例えばHermanson Bioconjugate Techniques Academic Press(1996),Kirk−Othmer Concise Encyclopedia of Chemical Technology(1999)Fourth Edition,Graysonら(ed.)John Wiley & Sons,Inc.,New York及びKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology Fourth Edition(1998及び2000),Graysonら(ed.)Wiley Interscience(印刷版)/John Wiley & Sons,Inc.(電子版)に記載されている。その他の関連情報はCRC Handbook of Chemistry and Physics(2003)83rd edition,CRC Pressに記載されている。更に本発明のナノファイバーにプラズマ法等により組込むことができる導体及び他のコーティングに関する詳細はH.S.Nalwa(ed.),Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers,John Wiley & Sons 1997に記載されている。更に、ORGANIC SPECIES THAT FACILITATE CHARGE TRANSFER TO/FROM NANOCRYSTALS USSN 60/452,232(出願日2003年3月4日,Whitefordら)も参照されたい。例えば付加部分をナノファイバーの機能化表面に結合するための関連有機化学に関する詳細は例えばGreene(1981)Protective Groups in Organic Synthesis,John Wile and Sons,New York;Schmidt(1996)Organic Chemistry Mosby,St Louis,MO;及びMarch’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure,Fifth Edition(2000)Smith and March,Wiley Interscience New York ISBN 0−471−58589−0に記載されている。本発明のNFSの機能化に利用可能な他の多くの関連文献及び技術は当業者に自明である。
【0166】
従って、この場合も当然のことながら、該当基板、(例えば基板に付着又は堆積された)該当ナノファイバー、及び場合により実施されるナノファイバー及び/又は基板の任意機能化等は変更することができる。例えば、ファイバーの長さ、直径、構造及び密度は、ファイバーの組成及びその表面化学種と同様に変更することができる。
C)密度及び関連事項
【0167】
密度については、当然のことながら、表面から突出するナノファイバーを多くすることにより、基礎となる下位の基板から拡大する表面積の量も自動的に増加する。その結果、表面とナノファイバー表面に接触する任意検体等との間の緊密接触面積が増加する。以下に詳述するように、本発明の態様は場合により表面上のナノファイバーの密度が基板表面μm2当たりナノファイバー約0.1〜約1000本以上である。この場合も当然のことながら、このような密度は個々のナノファイバーの直径等の因子により異なる。下記参照。ナノファイバーの数が多いほど表面の総面積が増加する傾向があるので、ナノワイヤー密度は増大表面積に影響する。従って、本発明のナノファイバーの密度は表面の総面積の因子であるので、一般に増大表面積材料の所期用途に関係がある。
【0168】
例えば、典型的な平坦基板の1例(例えば酸化ケイ素チップ又はガラススライド)は1平方ミクロン当たり(即ち1平方ミクロンフットプリント内に)検体との可能な結合部位を10,000個又は可能な機能化部位等を10,000個含むことができる。しかし、このような基板表面にナノファイバーをコーティングしたならば、利用可能な表面積は著しく増加する。本発明の所定態様では表面上の各ナノファイバーは表面積約1平方ミクロンである(即ち各ナノファイバーの側面と先端は著しく大きな表面積をもつ)。同等の基板1平方ミクロンにナノファイバー10〜約100本/平方ミクロンが含まれるならば、利用可能な表面積は平坦表面の10〜100倍となる。従って、この例では、増大表面積は1平方ミクロンフットプリント当たり可能な結合部位、機能化部位等を100,000〜10,000,000個もつことになる。当然のことながら、基板上のナノファイバーの密度は例えばナノファイバーの直径やナノファイバーの機能化等により変動する。
【0169】
本発明の各種態様はこのような種々の密度(即ちナノファイバーを付着する基板の単位面積当たりのナノファイバー数)を含む。単位面積当たりのナノファイバー数は場合により約1本/10μm2〜約200本以上/μm2;約1本/μm2〜約150本以上/μm2;約10本/μm2〜約100本以上/μm2;又は約25本/μm2〜約75本以上/μm2とすることができる。更に他の態様では、密度は場合により約1〜3本/平方ミクロン〜約2,500本以上/平方ミクロンとすることができる。
【0170】
個々のファイバー寸法については、当然のことながら、各ファイバーの厚さ又は直径を増加することによりファイバーの総面積は自動的に増加し、従って基板の総面積も増加する。本発明のナノファイバーの直径は例えばナノファイバーの組成と成長条件、部分の付加、コーティング等の選択により調節することができる。好ましいファイバー厚みは場合により約5nm〜約1ミクロン以上(例えば5ミクロン);約10nm〜約750nm以上;約25nm〜約500nm以上;約50nm〜約250nm以上、又は約75nm〜約100nm以上である。所定態様では、ナノファイバーは直径約40nmである。
【0171】
直径に加え、ナノファイバーの表面積(従って、ナノファイバーを付着する基板の表面積)はナノファイバーの長さによっても異なる。当然のことながら、ファイバー材料によっては長さを増すと脆性が増すものもある。従って、好ましいファイバー長は一般に約2ミクロン(例えば0.5ミクロン)〜約1mm以上;約10ミクロン〜約500ミクロン以上;約25ミクロン〜約250ミクロン以上;又は約50ミクロン〜約100ミクロン以上である。所定態様は長さ約50ミクロンのナノファイバーを含む。本発明の所定態様は直径約40nm及び長さ約50ミクロンのナノファイバーを含む。
【0172】
本発明のナノファイバーは種々のアスペクト比をもつことができる。即ち、ナノファイバー直径は例えば約5nm〜約1ミクロン以上(例えば5ミクロン);約10nm〜約750nm以上;約25nm〜約500nm以上;約50nm〜約250nm以上,又は約75nm〜約100nm以上とすることができ、前記ナノファイバーの長さは例えば約2ミクロン(例えば0.5ミクロン)〜約1mm以上;約10ミクロン〜約500ミクロン以上;約25ミクロン〜約250ミクロン以上;又は約50ミクロン〜約100ミクロン以上とすることができる。
【0173】
少なくとも一部を表面から高くしたファイバーが多くの場合は好ましく、例えば検体等と接触させるために利用可能な増大表面積を提供するためには、例えばファイバー表面のファイバーの少なくとも一部を表面から少なくとも10nm、又は少なくとも100nm高くする。
【0174】
ナノファイバーは場合により複雑な三次元構造を形成する。このような複雑さの程度は例えばナノファイバーの長さ、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ:直径アスペクト比、(使用する場合には)ナノファイバーに付着した部分、及びナノファイバーの成長条件等に部分的に依存する。利用可能な増大表面積の程度を変化させるのに有用なナノファイバーの屈曲、絡み合い等は場合により例えば単位面積当たりのナノファイバー数の調節や、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ及び組成等により操作される。従って、当然のことながら、本発明のナノファイバー基板の増大表面積は場合により上記及び他のパラメーターを操作することにより調節される。
【0175】
同様に、本発明の全態様ではないが所定の態様では、本発明のナノファイバーは屈曲、湾曲、又はカール形状を含む。当然のことながら、1本のナノファイバーが表面上で蛇行又はコイル状になっている(但し単位面積当たり1本のファイバーしか第1の表面に結合していない)場合にも、ファイバーはその長さ等により増大表面積を提供することができる。
D)ナノファイバー作製
【0176】
当然のことながら、本発明は本発明のナノファイバーの作製手段により限定されない。例えば、本発明の所定のナノファイバーはシリコンから構成されるが、シリコンの使用は限定的ではない。ナノファイバーの形成は当業者に周知の多数の異なるアプローチにより可能であり、いずれも本発明の態様に利用可能である。
【0177】
本発明の典型的態様は当業者に自明の既存のナノ構造作製方法及び本明細書に言及又は記載する方法で使用することができる。全態様ではないが、本発明の典型的な態様は医療環境で無害(例えば非反応性、非アレルギー誘発性等)となるように選択された物質を含む。換言するならば、ナノファイバー及びナノファイバーを含む構造の各種作製方法が記載されており、本発明の各種方法、システム及び装置で使用するように応用することができる。
【0178】
ナノファイバーは適当なほぼ任意材料(例えば半導体材料、強誘電性材料、金属、セラミック、ポリマー等)から作製することができ、本質的に単一材料から構成することもできるし、ヘテロ構造でもよい。例えば、ナノファイバーは半導体材料から構成することができ、例えば周期表の2族又は12族から選択される第1の元素と、16族から選択される第2の元素を含む材料(例えばZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe等の材料);13族から選択される第1の元素と15族から選択される第2の元素を含む材料(例えばGaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の材料);14族の元素を含む材料(Ge、Si等の材料);PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、及びAlSb等の材料;又はその合金もしくは混合物が挙げられる。
【0179】
本発明の所定態様では、ナノファイバーは場合によりシリコン又は酸化ケイ素から構成される。当業者に自明の通り、本明細書で使用する「酸化ケイ素」なる用語は任意酸化度のケイ素を意味する。即ち、酸化ケイ素なる用語は化学構造SiOxを意味し、式中、xは0以上2以下である。他の態様では、ナノファイバーは例えばシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、又は脂肪族ポリマーから構成することができる。
【0180】
当然のことながら、所定態様では、ナノファイバーは1個以上の基板表面(例えばナノファイバーを付着又は結合する表面)と同一材料から構成することができ、他の態様では、ナノファイバーは基板表面と異なる材料から構成される。更に、基板表面は場合によりナノファイバーと同一材料又は同一種の材料(例えば本明細書に例示する材料)の任意1種以上から構成することもできる。
【0181】
上述のように、本発明の全態様ではないが、所定の態様はシリコンナノファイバーを含む。シリコンナノファイバーの一般的作製方法としては、気相−液相−固相成長(VLS)、レーザーアブレーション(レーザー触媒成長)及び熱蒸着が挙げられる。例えば、Moralesら(1998)“A Laser Ablation Method for the Synthesis of Crystalline Semiconductor Nanowires”Science 279,208−211(1998)参照。アプローチの1例では、長手方向序列ヘテロ構造をもつ半導体ナノファイバーの合成用ハイブリッドパルスレーザーアブレーション/化学蒸着(PLA−CVD)法とその変形を使用することができる。Wuら(2002)“Block−by−Block Growth of Single−Crystalline Si/SiGe Superlattice Nanowires,”Nano Letters Vol.0,No.0参照。
【0182】
一般に、多数のナノファイバー作製方法が記載されており、本発明の方法、システム及び装置で適用することができる。Moralesら及びWuら(前出)の文献に加え、例えば、Lieberら(2001)“Carbide Nanomaterials”USPN 6,190,634 B1;Lieberら(2000)“Nanometer Scale Microscopy Probes”USPN 6,159,742;Lieberら(2000)“Method of Producing Metal Oxide Nanorods”USPN 6,036,774;Lieberら(1999)“Metal Oxide Nanorods” USPN 5,897,945;Lieberら(1999)“Preparation of Carbide Nanorods”USPN 5,997,832;Lieberら(1998)“Covalent Carbon Nitride Material Comprising C2N and Formation Method”USPN 5,840,435;Thessら(1996)“Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes”Science 273:483−486;Lieberら(1993)“Method of Making a Superconducting Fullerene Composition By Reacting a Fullerene with an Alloy Containing Alkali Metal”USPN 5,196,396;及びLieberら(1993)“Machining Oxide Thin Films with an Atomic Force Microscope:Pattern and Object Formation on the Nanometer Scale”USPN5,252,835参照。最近では、一次元半導体ヘテロ構造ナノ結晶が記載されている。例えばBjorkら(2002)“One−dimensional Steeplechase for Electrons Realized”Nano Letters Vol.0,Vol.0参照。
【0183】
なお、本明細書に引用する文献にはナノファイバーに特定した文献ではないが、場合により本発明に適用可能なものもある。例えば、作製条件等のバックグラウンド事項はナノファイバーと他のナノ構造(例えばナノ結晶等)間で適用可能である。
【0184】
本発明のナノファイバーを作製するために場合により使用される別のアプローチでは、個々のナノファイバーを表面上にバルク作製するための合成法が例えばKongら(1998)“Synthesis of Individual Single−Walled Carbon Nanotubes on Patterned Silicon Wafers,”Nature 395:878−881、及びKongら(1998)“Chemical Vapor Deposition of Methane for Single−Walled Carbon Nanotubes,” Chem.Phys.Lett.292:567−574に記載されている。
【0185】
更に別のアプローチでは、例えばSchon,Meng,and Bao,“Self−assembled monolayer organic field−effect transistors,”Nature 413:713(2001);Zhouら(1997)“Nanoscale Metal/Self−Assembled Monolayer/Metal Heterostructures,”Applied Physics Letters71:611;及びWO96/29629(Whitesidesら,公開日1996年6月26日)に記載されているもの等のマイクロコンタクトプリント法により、基板と自己結合単層(SAM)形成材料を使用してナノファイバーを作製することができる。
【0186】
本発明の所定態様では、金属触媒を使用してナノファイバー(例えばナノワイヤー)を合成することができる。このような態様の利点の1つは性質を強化するために表面修飾に適したユニークな材料を使用できる点である。このようなナノファイバーのユニークな性質とは、触媒、一般に金で一端がキャップされていることである。この触媒末端は場合によりワイヤーの残余を変化させずに例えばチオール化学種を使用して機能化することができるので、適切な表面に結合することができる。このような態様では、このような機能化等の結果としてナノファイバーを末端結合した表面が作製される。従って、その結果として得られる「ファジー」な表面は(ナノファイバーをもたない表面に比較して)表面積が増加すると共に他のユニークな性質をもつ。所定のこのような態様では、多くの用途で有用な広範な性質を与えるために(必ずしもそうでない場合もあるが、一般には金先端を変化させずに)ナノワイヤーの表面及び/又はターゲット基板表面を場合により化学修飾する。
【0187】
他の態様では、表面積を僅かに増加又は増大するために、ナノファイバーを基板と末端結合するのでなく表面上の化学的又は静電的相互作用によりナノファイバーを場合により「平坦」に(例えば基板表面と実質的に平行に)延在させる。本発明の更に他の態様では、ファイバーが表面に延在するのでなく末端結合するようにナノファイバー上の極性に反発する官能基を基板表面にコーティングする。
【0188】
各種組成のナノ構造(例えばナノ結晶)の合成は例えばPengら(2000)“Shape control of CdSe nanocrystals”Nature 404:59−61;Puntesら(2001)“Colloidal nanocrystal shape and size control:The case of cobalt”Science 291:2115−2117;USPN 6,306,736,Alivisatosら(2001年10月23日)発明の名称“Process for forming shaped group III−V semiconductor nanocrystals,and product formed using process”;USPN 6,225,198,Alivisatosら(2001年5月1日)発明の名称“Process for forming shaped group II−VI semiconductor nanocrystals,and product formed using process”;USPN 5,505,928,Alivisatosら(1996年4月9日)発明の名称“Preparation of III−V semiconductor nanocrystals”;USPN 5,751,018,Alivisatosら(1998年5月12日)発明の名称“Semiconductor nanocrystals covalently bound to solid inorganic surfaces using self−assembled monolayers”;USPN 6,048,616,Gallagherら(2000年4月11日)発明の名称“Encapsulated quantum sized doped semiconductor particles and method of manufacturing same”;及びUSPN 5,990,479,Weissら(1999年11月23日)発明の名称“Organo luminescent semiconductor nanocrystal probes for biological applications and process for making and using such probes”に記載されている。
【0189】
制御された直径をもつナノファイバー等の各種アスペクト比をもつナノワイヤー等のナノファイバーの成長に関するその他の情報は例えばGudiksenら(2000)“Diameter−selective synthesis of semiconductor nanowires”J.Am.Chem.Soc.122:8801−8802;Cuiら(2001)“Diameter−controlled synthesis of single−crystal silicon nanowires”Appl.Phys.Lett.78:2214−2216;Gudiksenら(2001)“Synthetic control of the diameter and length of single crystal semiconductor nanowires”J.Phys.Chem.B 105:4062−4064;Moralesら(1998)“A laser ablation method for the synthesis of crystalline semiconductor nanowires”Science 279:208−211;Duanら(2000)“General synthesis of compound semiconductor nanowires”Adv.Mater.12:298−302;Cuiら(2000)“Doping and electrical transport in silicon nanowires”J.Phys.Chem.B 104:5213−5216;Pengら(2000),前出;Puntesら(2001),前出;USPN6,225,198,Alivisatosら,前出;USPN6,036,774,Lieberら(2000年3月14日)発明の名称“Method of producing metal oxide nanorods”;USPN5,897,945,Lieberら(1999年4月27日)発明の名称“Metal oxide nanorods”;USPN5,997,832,Lieberら(1999年12月7日)発明の名称“Preparation of carbide nanorods”;Urbauら(2002)“Synthesis of single−crystalline perovskite nanowires composed of barium titanate and strontium titanate”J.Am.Chem.Soc.,124:1186;Yunら(2002)“Ferroelectric Properties of Individual Barium Titanate Nanowires Investigated by Scanned Probe Microscopy”Nano Letters 2,447;並びに公開PCT出願WO02/17362号及びWO02/080280号に記載されている。
【0190】
分岐ナノファイバー(例えばナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド及び分岐テトラポッド)の成長は例えばJunら(2001)“Controlled synthesis of multi−armed CdS nanorod architectures using monosurfactant system”J.Am.Chem.Soc.123:5150−5151;及びMannaら(2001)“Synthesis of Soluble and Processable Rod−,Arrow−,Teardrop−,and Tetrapod−Shaped CdSe Nanocrystals”J.Am.Chem.Soc.122:12700−12706に記載されている。ナノ粒子の合成は例えばUSPN5,690,807,Clark Jr.ら(1997年11月25日)発明の名称“Method for producing semiconductor particles”;USPN6,136,156,El−Shallら(2000年10月24日)発明の名称“Nanoparticles of silicon oxide alloys”;USPN6,413,489,Yingら(2002年7月2日)発明の名称“Synthesis of nanometer−sized particles by reverse micelle mediated techniques”;及びLiuら(2001)“Sol−Gel Synthesis of Free−Standing Ferroelectric Lead Zirconate Titanate Nanoparticles”J.Am.Chem.Soc.123:4344に記載されている。ナノ粒子の合成はナノ結晶とナノファイバー(例えばナノワイヤー、分岐ナノワイヤー等)の成長に関する上記文献に記載されている。
【0191】
コア−シェルナノファイバー(例えばナノ構造ヘテロ構造)の合成は例えばPengら(1997)“Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS core/shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility”J.Am.Chem.Soc.119:7019−7029;Dabbousiら(1997)“(CdSe)ZnS core−shell quantum dots:Synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrystallites”J.Phys.Chem.B 101:9463−9475;Mannaら(2002)“Epitaxial growth and photochemical annealing of graded CdS/ZnS shells on colloidal CdSe nanorods”J.Am.Chem.Soc.124:7136−7145;及びCaoら(2000)“Growth and properties of semiconductor core/shell nanocrystals with InAs cores”J.Am.Chem.Soc.122:9692−9702に記載されている。他のコア−シェルナノ構造の成長にも同様のアプローチを適用することができる。例えば、USPN6,207,229(2001年3月27日)及びUSPN6,322,901(2001年11月27日)Bawendiら,発明の名称“Highly luminescent color−selective materials”参照。
【0192】
異なる材料がナノファイバーの長軸に沿って異なる位置に分布されたナノファイバーヘテロ構造を含むナノファイバーの均一集団の成長は例えば公開PCT出願WO02/17362号及びWO02/080280号;Gudiksenら(2002)“Growth of nanowire superlattice structures for nanoscale photonics and electronics”Nature 415:617−620;Bjorkら(2002)“One−dimensional steeplechase for electrons realized”Nano Letters 2:86−90;Wuら(2002)“Block−by−block growth of single−crystalline Si/SiGe superlattice nanowires”Nano Letters 2,83−86;並びに米国特許出願60−370,095(2002年4月2日)Empedocles,発明の名称“Nanowire heterostructures for encoding information”に記載されている。同様のアプローチを他のヘテロ構造の成長と本発明の各種方法及びシステムにも適用することができる。
【0193】
所定態様では、高い強度と耐久性をもつナノファイバーを作製するために、増大表面積を形成するために使用されるナノファイバーは窒化物(例えばAlN、GaN、SiN、BN)又は炭化物(例えばSiC、TiC、炭化タングステン、炭化ホウ素)から構成することができる。あるいは、低強度(例えばシリコン又はZnO)ナノファイバー上の硬質コーティングとして前記窒化物/炭化物を使用する。シリコンナノファイバーの寸法は増大表面積を必要とする多くの用途に優れている(例えば“Structures,Systems and Methods for Joining Articles and Materials and Uses Therefore,”出願日2003年4月17日,USSN60/463,766等参照)が、用途によっては低脆性で破壊しにくいナノファイバーが必要である。従って、本発明の所定態様は例えばSi、SiO2又はZnOよりも高い結合強度をもつ窒化物及び炭化物等の材料を利用する。窒化物と炭化物は場合により低強度ナノファイバーを強化するためのコーティングとして又はナノファイバー自体として使用される。
【0194】
炭化物と窒化物はスパッタリングやプラズマ法等の堆積技術により低強度ファイバーにコーティングとして付設することができる。所定態様では、炭化物及び窒化物コーティングの高強度ナノコーティングを得るために、亀裂伝播を避けるようにランダム粒子配向及び/又は非晶質相を成長させる。ファイバーが基板表面に垂直に成長しているならば場合によりナノファイバーの最適コンフォーマルコーティングを達成することができる。このような配向のファイバーの硬質コーティングはファイバーの基板接着を強化する機能もある。ランダム配向ファイバーでは、コーティングはファイバー上層に優先する。
【0195】
シリコンナノファイバーを作製するための低温法は金触媒の存在下に約400℃でシランを分解させることにより実施される。しかし、上述のように、シリコンナノファイバーは用途によっては脆弱過ぎ、耐久性ナノファイバーマトリックス(例えば増大表面積)を形成することができない。従って、本発明の所定態様では場合により例えばSiNの形成と使用を利用する。これらの態様では、約300℃で分解するNH3をシランと併用し、(同様に金触媒を使用することにより)SiNナノファイバーを形成する。このようなナノファイバーを形成するための他の触媒表面としては例えばTi、Fe等が挙げられる。
【0196】
溶融液から炭化物及び窒化物ナノファイバーを直接形成するのは液相の温度が一般に1000℃よりも高いので困難な場合がある。しかし、金属成分を気相と併用することによりナノファイバーを成長させることができる。例えば、(GaNの場合は)Ga溶融液をNH3に暴露し、(SiCの場合は)グラファイトをシランと併用することによりGaN及びSiCナノファイバーを成長させている(例えばPeidong,Lieber,前出参照)。金属−有機蒸気種(例えばタングステンカルボニル[W(CO)6]を炭素表面上で化合させて炭化タングステン(WC)を形成するか、又は炭素表面上でジメトキシジネオデカン酸チタンを化合させてTiCを形成することにより、他の型の炭化物及び窒化物ナノファイバーを形成するために場合により同様の概念が使用される。当然のことながら、このような態様では、スパッタリング及びCVD法の温度、圧力、出力はいずれも場合により例えば最終ナノファイバーに所望される特定パラメーターに応じて変化させる。更に、ナノファイバーを形成するために使用される数種の金属有機前駆体及び触媒表面、ナノファイバーのコア材料(例えばSi、ZnO等)並びにナノファイバーを含む基板も例えば作製しようとする特定増大ナノファイバー表面積に応じていずれも態様毎に変更することができる。
【0197】
本発明は典型的なナノ構造の寸法範囲に該当しないような構造で使用することができる。例えば、Haraguchiら(USPN 5,332,910)は場合により本発明で使用されるナノウィスカーを記載している。半導体ウィスカーはHaraguchiら(1994)“Polarization Dependence of Light Emitted from GaAs p−n junctions in quantum wire crystals”J.Appl.Phys.75(8):4220−4225;Hirumaら(1993)“GaAs Free Standing Quantum Sized Wires,”J.Appl.Phys.74(5):3162−3171;Haraguchiら(1996)“Self Organized Fabrication of Planar GaAs Nanowhisker Arrays”;及びYazawa(1993)“Semiconductor Nanowhiskers”Adv.Mater.5(78):577−579にも記載されている。このようなナノウィスカーは場合により本発明のナノファイバーである。上記文献(及び本明細書に引用する他の文献)は場合により本発明のナノファイバーの作製とパラメーター決定に使用されるが、同様に本発明の方法と装置に利用することができる他のナノファイバー作製/設計方法等も当業者に自明である。
【0198】
本発明の所定態様はナノワイヤー合成と金膜堆積の反復サイクリングにより「ナノ−ツリー」を作製し、共晶シリコンを形成しない材料の同時蒸着により核形成を妨害し、より小型のワイヤーを形成することを含む。
【0199】
このような方法はナノファイバー成長技術による超大容量表面構造の作製で例えば表面間の接着促進、非汚染性表面等のために使用される。ナノファイバーの作製に単段階金属膜型の方法を使用すると、出発金属膜厚、表面粗面度等を制御する能力が制限され、従って表面からの核形成を制御する能力が制限される。本発明はこれらの問題に対処する。
【0200】
ナノファイバー増大表面の所定態様では、多分岐ナノファイバーを作製することが望ましい場合がある。このような多分岐ナノファイバーは非分岐ナノファイバー表面よりも表面積を更に増加することができる。多分岐ナノファイバーを作製するためには、ナノファイバー表面(即ち既にナノファイバーを成長させた表面)に場合により金膜を堆積する。炉に入れると、元の成長方向に垂直なファイバーが得られ、こうして元のナノファイバーに分岐を形成することができる。核形成と分岐形成をより厳密に制御できるようにするために場合により金膜の代わりにコロイド金属粒子を使用することができる。例えば異なる膜厚、異なるコロイド粒度、又は異なる合成時間で分岐サイクルを場合により多数回反復し、寸法を変化させた付加分岐を作製することができる。最後に、隣接ナノファイバー間の分岐を場合により接合し、連続した網目構造を形成することができる。場合により焼結を使用して微細分岐の結合を改善する。
【0201】
更に他の態様では、より微細なナノファイバー(例えばナノワイヤー)を形成することが望ましい。これを達成するために、本発明の所定態様は場合により金又は他の合金形成金属蒸着中に非合金形成材料を使用する。このような材料を低百分率で導入すると、場合により金属膜を破壊し、成長中により小さい液滴を形成し、従って、相応により細いワイヤーを形成することができる。
【0202】
このようなアプローチはナノファイバー形成の制御を改善し、多少厚い初期金属膜層からより細くより多くのナノファイバーを作製することができる。ナノアレー等の用途では、制御の改善は場合によりナノファイバーから平坦表面へのシグナル比を改善したり、又は単に制御の程度を増すことができる。より細いナノファイバー作製に使用することができる材料としては例えばTi、Al2O3及びSiO2が挙げられる。
【0203】
更に他の態様では、ガラスの蒸着等の後処理段階によりナノファイバー間のより強い固定又は機械的接着と相互結合が得られ、従って、付加強度を必要とする用途における機械的堅牢性を改善すると共にナノ構造表面の総表面積対体積比を増加することができる。
E)生体材料とナノファイバー増大表面積基板の相互作用
【0204】
典型的態様では、本発明のナノファイバー増大表面積基板は各種医療製品用途で使用される。例えば、薬剤放出、潤滑、細胞接着、低い生物吸着性、電気接点等のために医療製品にコーティングを施す。上記参照。例えば、(例えば本発明のような)表面繊維をポリマーインプラントの表面に付設すると、細胞付着が著しく増加することが示されている。例えばZhangら“Nanostructured Hydroxyapatite Coatings for Improved Adhesion and Corrosion Resistance for Medical Implants”Symposium V:Nanophase and Nanocomposite Materials IV,Kormareniら(eds.)2001,MRS Proceedings,vol.703参照。本態様の他の医療用途としては例えば遅延放出薬剤送達が挙げられる。例えば、生理的環境(例えば患者の体内)に時間をかけてゆっくりと放出することが可能な種々の医薬的に許容可能なキャリヤーに薬剤を組込むことができる。このようなキャリヤー(例えばポリマー層等)に組込んだ薬剤は(例えばナノファイバー間の間隙に存在する)キャリヤー層に取り込まれるため、体液との直接接触から少なくとも部分的に保護される。体液と(ナノファイバー層の上部の)キャリヤー層の間の界面にある薬剤等はかなり迅速に拡散するが、キャリヤー層の深部の薬剤はゆっくりと拡散する(例えば体液はキャリヤー層内に拡散してから薬剤と共に外部に拡散する)。このようなキャリヤーは当業者に周知であり、ナノファイバー基板の表面(即ちナノファイバー間)に堆積又はウィッキングすることができる。
【0205】
留置カテーテル、整形外科用インプラント、ペースメーカー及び他の医療装置のバイオフィルム形成及び感染は患者の健康を常に脅かす。従って、本発明の所定態様はその有利な形態により細菌定着を最小限にする新規表面を含む。他方、本発明の更に他の態様は所望条件下又は所望位置における細胞増殖を助長するためにナノファイバー増大表面積基板のユニークな表面形態を利用する。本発明の大表面積/非蛇行性の側面は(所定態様では)栄養素/流体等に対する付着面積と接近性を増すと共に、増殖等が(細胞が増殖する細孔内の表面積とスペースの意味での)スペースにより制限される多孔質表面にまさる初期付着効果を生じることができる。
【0206】
本発明の基板は表面積が大きく、易接近性(例えば非蛇行性)であるため、例えば細胞培養、移植、及び制御薬剤又は薬品放出用途でバイオスカフォールドとして極めて有用である。特に、本発明の材料の大表面積は例えば細胞培養で所望生体細胞と付着するため又はインプラントと付着するための非常に大きな面積を提供する。更に、栄養素はこれらの細胞に容易に接近することができるので、本発明はこれらの用途の良好なスカフォールド又はマトリックスを提供する。この最後の点は組織付着を確保するために一般に多孔質又は粗面表面を利用する移植材料で特に重要である。特に、このような小さな進入しにくい細孔は初期付着できるが、付着した細胞を容易に持続維持することができず、細胞はその後劣化して死滅するため、付着の効果が減る。本発明の材料の別の利点は本質的に非生物汚染性であり、例えば一般にインプラント等の汚染の原因となる細菌種からバイオフィルムを形成しにくいという点である。
【0207】
特定理論又は作用方法に結び付けるものではないが、ナノファイバー表面のユニークな形態は例えばS.epidermidis等の細菌種の定着率を約10分の1に低下することができる。例えば、化学蒸着法により平坦酸化ケイ素基板の表面から成長させた直径約60nm及び長さ約50〜100ミクロンのシリコンナノワイヤーを含むもの等の態様は細菌定着の低下を示す。下記参照。当然のことながら、本発明の実施例には特定細菌種を例証するが、その態様の有用性は必ずしもこれらの種に対する使用に止まらない。換言するならば、他の細菌種も場合により本発明のナノファイバー表面により定着を阻止される。更に、本発明の実施例は同様の基板で酸化ケイ素ナノワイヤーを使用するが、当然のことながら、他の態様も場合により同様に利用される(例えばナノファイバーの他の構造;プラスチック等の非シリコン基板上のナノファイバー;基板上のナノファイバーの他のパターン等)。
【0208】
当然のことながら、高密度のナノファイバー(例えばシリコンナノワイヤー)で被覆された本発明の基板は細菌定着と哺乳動物細胞増殖を阻止する。例えば、ナノワイヤーで被覆された基板で生じる細菌増殖は同一平坦表面に比較して約10分の1(又はそれ以下)になる。本発明の各種態様では、細菌定着に対する抵抗性を最適化及び特徴付けるようにナノファイバー増大表面積基板の物理的及び化学的性質を変化させる。
【0209】
細菌定着の防止とは対照的に、本発明の他の態様は細胞外結合蛋白質等又は他の部分で機能化することによりナノファイバー表面への哺乳動物細胞の付着を誘導する基板を含み、こうして、高い効率の組織組込み性をもつ新規表面を達成する。
【0210】
例えば無菌等を必要とする環境でNFS基板を使用する本発明の所定態様では、場合によりナノファイバーを二酸化チタンでコーティングするか又は二酸化チタンから構成する。このような二酸化チタンはこのようなナノファイバーに自己滅菌性又は酸化性を付与する。従って、二酸化チタンを含むナノファイバーは表面への迅速な拡散を維持しながら従来の平坦TiO2表面に比較して迅速な滅菌と酸化を可能にする。
【0211】
酸化チタンを含むナノワイヤー(例えばコーティング付きナノワイヤー等)を含む本発明の態様では、これは場合により多数の方法の任意のものにより達成することができる。例えば、本発明の所定態様では、コーティングによる(SiO4)x(TiO4)yナノワイヤーの分析モニターを含むアプローチと分子前駆体アプローチによりナノワイヤーを設計及び作製することができる。層厚と空隙率は場合により試薬濃度、浸漬速度、及び/又はテトラエトキシチタネート又はテトラブトキシチタネート等の浸漬コーティング用前駆体の選択、空気中のゲル化、風乾及び焼成により制御される。M[(OSi(OtBu)3]4(式中、M=Ti、Zi、又は他の金属酸化物)等の分子前駆体を分解してイソブチレン12当量と水6当量を遊離し、メソ多孔質材料又はナノワイヤーを形成することができる。これらの前駆体をナノ結晶合成(湿式化学)でCVD又は界面活性剤と共に使用し、所望粒度分布のジメタルナノ結晶を生成することもできる。材料は湿式化学標準無機化学技術により作製することができ、酸化性はアルケン基質を使用するエポキシ化反応の単純な速度モニター(GC又はGCMS)により測定することができる。空隙率は標準BET空隙率分析によりモニターすることができる。コポリマーポリエーテル鋳型を使用して湿式化学法の一部として空隙率を制御することもできる。
【0212】
酸化チタン材料は周知酸化触媒である。酸化チタン材料の鍵となる点の1つは空隙率と粒度又は形状の均質性の制御である。表面積が増加すると、一般に酸化プロセスにおける材料の触媒回転率は良好になる。酸化物形成速度(材料形態)は溶液中で制御しにくいと思われるので、従来ではこれは困難であった。
【0213】
周知の通り、最近では酸化触媒表面(自浄表面)としてのTiO2に関心が寄せられており、「環境に優しい化学」洗剤の商品化が期待されている。しかし、この材料の自浄効率は例えば表面積と空隙率に依存する。ナノワイヤーは自浄材料として現在使用されているバルク材料(例えばナノファイバー増大表面をもつ材料)よりも著しく表面積が大きい。従って、シリコンナノワイヤー技術をTiO2コーティング又はTiO2ナノワイヤー又は分子前駆体と併用してワイヤーを形成すると、場合により自浄性、滅菌性及び/又は非生物汚染性表面で有用な従来未知の材料を獲得することができる。
【0214】
所定態様では、このような滅菌作用はUV光照射又は他の同様の励起と連携して生じる。このような因子は場合により例えば医療環境や食品加工環境における滅菌表面等の用途で重要である。従って、本発明のNFSによる表面積の増加(例えば100〜1000倍等の面積増加)はこのような表面の消毒率/能力を著しく増加すると考えられる。
i)医療装置の細菌汚染の現行防止手段
【0215】
細菌及び他の微生物による生体医療用インプラントの表面定着とその結果として形成されるバイオフィルムを防ぐために各種方法が使用されている。従来の方法は装置で使用される基本的生体材料を変更したり、親水性、疎水性又は生体活性コーティングを施したり、生物活性剤を含む装置に多孔質又はゲル表面を形成する方法であった。汎用生体材料表面を作製する作業は特定材料に対する種の特異性により複雑になる。例えば、S.epidermidisは親水性表面よりも疎水性表面に結合し易いことが報告されている。S.aureusはポリマーよりも金属に強い親和性をもつが、S.epidermidisは金属よりもポリマー上に迅速に膜を形成する。
【0216】
多孔質生体材料に組込まれた抗生物質やポリクローナル抗体等の抗微生物剤はインプラント部位における微生物接着を積極的に防止することが示されている。しかし、このような局所放出療法の有効性は抗生物質治療に対する細菌の耐性増加と抗体に関連する特異性により損なわれることが多い。最近のin vitro研究はインプラント表面の細菌を非特異的に除去するために亜酸化窒素等の小分子を放出する生体材料の使用を検討している。しかし、亜酸化窒素放出は毒性を制限するように局限しなければならない。
ii)ナノファイバー増大表面積によるバイオフィルム形成の防止
【0217】
本発明の結果、シリコンナノワイヤー表面は細菌S.epidermidisによる定着とCHO、MDCK及びNIH 3T3細胞株の増殖を積極的に阻止することが判明した。これは細菌又は細胞を天然親水性ナノワイヤー表面又はフッ素化疎水性ナノワイヤー表面と接触培養した場合に実際に認められる。酸化ケイ素平坦対照表面とポリスチレン平坦対照表面はS.epidermidisと前記3種の細胞株の大量増殖を生じたので、ナノワイヤー形態は表面を細胞忌避性にすると推察される。当然のことながら、この場合も本発明の有用性は特定理論又は作用方式により限定されない。しかし、表面形態は抗微生物作用の基礎であると考えられる。前記基板上のナノファイバーは細菌が下位の固体表面に物理的に侵入しないように十分緊密に配置される。付着に利用可能な提示可能な表面積の量は一般に下位平坦表面の1.0%未満である。典型的な態様では、ナノファイバーは直径約40nmであり、固体表面から上方に約20uMの高さまで立ち上がっている。従って、医療装置に見られる典型的な膜表面と異なり、本発明のナノワイヤー表面は不連続であり、スパイクされており、細胞付着を助長する規則的構造をもたない。実際に、本発明の表面は従来の膜とほとんど正反対であり、有孔固体表面ではなく、開放スパイク表面である。このユニークな形態により、該当ナノファイバーが疎水性であるか親水性であるかに関係なく通常のバイオフィルム付着を阻止すると考えられる。
【0218】
本明細書の各所に詳述するように、ナノファイバー成長法は平坦又は複雑な形状をもつ多様な基板上で実施することができる。即ち、本発明の各種基板は完全に被覆することもできるし、パターニングすることもできるし、特定位置にナノファイバーをもつこともできる。しかし、本発明の焦点を絞り易くするために、酸化ケイ素又は金属基板上のシリコンナノファイバーについて最も詳細に記載する。しかし、この場合も、各種材料からのナノファイバーと、プラスチック、金属及びセラミック基板上のその成長も予想される。ナノファイバー作製方法の汎用性により、ナノファイバー表面をもつ多様な製品を最終的に生体医療分野用に大規模商品化し易い。
【0219】
ナノファイバーを成長させる基板上の絶対表面積は増加するが、ファイバーは実表面積対体積比が低く、不連続であり、ナノスケールであるため、細胞が付着しにくいと考えられる。本発明のこれらの例証で使用するナノファイバー表面はエレクトロニクス用に作製し、この使用に最適化していないが、当然のことながら、このような表面はバイオフィルム蓄積も低下した。使用したシリコンワイヤーは直径〜40nm及び長さ50〜100umであり、4インチシリコン基板上に成長させた。ナノワイヤー作製方法を以下に記載する。本実施例では、この実験で使用したナノワイヤー断片は約0.25cm2とした。培地に導入する直前に100%エタノールに浸漬し、窒素流でブロー乾燥した。シリコンウェーハ対照(即ちナノワイヤーなし)もエタノールに浸漬し、ブロー乾燥した。S.epidermidisを35mmペトリ皿でLBブロスに入れ、6時間37℃で温和に振盪しながら増殖させた。次にウェーハ切片を培養液に入れ、24時間37℃で元の培地に放置した。24時間インキュベーション後にウェーハスライスを取り出し、新鮮な培地で短時間洗浄し、迅速に水に浸漬した後、30秒間熱固定した後に0.2%クリスタルバイオレット溶液で染色した。ウェーハセグメントを水で十分に濯いだ。ウェーハに付着した微生物を従来の明視野顕微鏡により可視化した。画像をデジタルカメラで撮影した。その結果、ナノワイヤー基板上の細菌はシリコンウェーハ対照に比較して約10分の1に減少した。ナノワイヤー層の厚さは顕微鏡の視野深度よりも大きいので、ナノワイヤー内に焦点を合わせることにより顕微鏡で定量を行った。
【0220】
ナノファイバー表面が哺乳動物細胞を排斥することを例証するために、CHO細胞を5%CO2雰囲気下に37℃の完全培地(Hams F12培地に10%胎仔ウシ血清を補充)で培養した。細胞培養液を加えた35mmペトリ皿にウェーハセグメントを入れた。コンフルエント培養液からトリプシン処理後にCHO細胞を完全培地中106個/mlの密度でペトリ皿に播種した。細胞を一晩接着させた後に24時間おきに顕微鏡で観察した。35mmペトリ皿の表面は最初の観察を行った48時間後にコンフルエントであった。ナノワイヤー表面に細胞増殖は直接観察されなかった。表面をナイフでスクラッチすることによりナノワイヤーを除去しておいた場合には細胞が接着し、増殖した。シリコンウェーハ対照は細胞でコンフルエントになった。これらの実験では、哺乳動物細胞増殖の完全な遅延と細菌増殖の約10分の1の低下が観察された。対照表面はナノワイヤーと化学的に一致していたので、細胞及び細菌増殖の低下はナノファイバー増大表面積基板のユニークな表面形態によると考えられる。
【0221】
S.epidermidisは医療装置の感染に関与する代表的細菌であるので本明細書の例証で使用した。更に、S.epidermidisは生体材料の評価に広く使用されており、生体材料を中心とする感染の主要種として認められている。S.aureus、Pseudomonas aeruginosa及びB群溶血性連鎖球菌等の生体材料関連感染に関与する他の細菌も本発明の態様の使用により防止できると考えられる。本明細書に例証するCHO細胞以外に、例えばMDCK、L−929及びHL60細胞等の他の一般的な組織培養株も本発明の態様の使用により防止できると考えられる。このような細胞株は広いダイバーシティの細胞型を表す。CHO細胞とMDCK細胞は上皮細胞の代表的なものであり、L−929細胞は結合組織の形成に関与しており、HL60株は免疫監視細胞である。従って、本発明のナノファイバー増大表面積はこれらの細胞型及び他の一般的なin vivo細胞型を防止できると考えられる。本明細書のin vitro例証で使用するナノファイバーはシリコンから作製され、本明細書の各所に詳述するように、シリコンナノワイヤーの合成については数種の方法が文献に報告されている。例えば、金属含有シリコンターゲットのレーザーアブレーション、Si/SiO2混合物の高温蒸着、及び金を触媒として使用する気相−液相−固相(VLS)成長が挙げられる。上記参照。場合により任意作製方法が使用されるが、半導体ナノワイヤー成長に広く使用されていることからナノワイヤー合成アプローチは一般にVLS成長である。このような方法については本明細書の他の箇所に記載している。
【0222】
上述したように、本発明のナノファイバー表面による主要なバイオフィルム防止手段は基板のユニークな形態によると考えられるが、このような基板が本質的な細胞忌避活性をもつようにすることも可能である。
【0223】
本発明のナノファイバー基板では種々の状況におけるバイオフィルム防止に個々に適応するように増殖に及ぼす表面親水性又は疎水性の影響も場合により変化させる。このような機能化はワイヤー長、直径及び基板上の密度の変動に従う。典型的なナノファイバー基板の酸化ケイ素表面層はその天然状態では極めて親水性である。水が表面を濡らし易く、均一に広がる。これは表面のウィッキング性が一因である。表面の機能化はワイヤーの表面に形成される天然酸化物層により助長される。このSiO2層はワイヤーの外側に官能基をもつように標準シラン化学を使用して修飾することができる。例えば、表面をヘキサメチルジシラン(BIDS)ガスで処理し、超疎水性にすることができる。上記参照。
iii)ナノファイバー表面への細胞外蛋白質の付着
【0224】
本明細書に記載するように、ナノファイバー表面は哺乳動物細胞又は細菌を増殖させにくい。しかし、哺乳動物細胞株を表面で増殖させると有利な場合もある。従って、本発明の態様は細胞外蛋白質又は他の部分をナノファイバーに付着することにより、このような細胞増殖を助長する。蛋白質をナノファイバーに堆積するには単純な非特異的吸着を利用することができる。他の態様はナノファイバー表面への細胞/蛋白質の共有結合を想定する。コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びラミニン等の公知細胞外結合機能をもつ蛋白質の使用が予想される。ナノファイバー基板と例えば骨等の生物材料や金属骨ピン等の医療装置のグラフト及び/又は結合を行う態様では、各種態様は基板上に異なるパターンのナノファイバーをもつことができる。従って、例えば、ナノファイバーは場合によりグラフト又は結合が行われる医療インプラントの領域のみに存在することができる。この場合も、標準蛋白質付着法を使用してナノファイバーと共有結合させることができる。
【0225】
更に、生体適合性及び/又は生体組込み用途を助長するために本発明のナノファイバー表面に各種ゾル−ゲルコーティングを堆積することができる。骨統合に関連する装置に関する従来の研究は骨成長を助長するためにチタンインプラント上に多孔質材料を使用していた。本発明の所定態様において、本発明は本発明のナノファイバー表面と共に同様の材料の付加を利用する。例えば、一般的なカルシウム系鉱物であるヒドロキシアパタイトを場合によりナノファイバー表面に堆積し、ナノファイバー表面との骨統合を助長することができる。ヒドロキシアパタイト堆積を行うには場合により通常のゾル−ゲル法を使用することができる。このようなヒドロキシアパタイトをコーティングしたナノファイバー表面は場合により骨統合を促進すると共に生物汚染防止性を示すという両面で有益であり、従って、適正な骨成長/治癒が行われる可能性が高まる。
【0226】
代替態様では、ナノワイヤーは実際に結晶質であるため、ナノワイヤーの直近にヒドロキシアパタイトの結晶化を誘導又は促進することができる。生体活性ガラスが整形外科用材料の成分として多年来使用され、骨統合が優れていることが示されているという事実に鑑みると、このような結果は意外なことではない。本発明によると、整形外科用インプラントの表面に大表面積生体活性ガラスを本質的に成長させ、表面形態を制御すると共に表面の生化学的性質を改変するために化学結合、吸着、及び本発明に詳細に記載する他の技術によりインプラントにプラットフォームを形成することができる。
【0227】
当業者に自明の通り、本発明は(ヒドロキシアパタイト及び骨成長に関する応用に加えて)広範な例えば適合性応用を実現するためにゾル−ゲル法によるセラミック型材料等の堆積の使用も含む。
XVIII)キット/システム
【0228】
所定態様では、本発明は本明細書に記載する方法を実施するためのキットを提供し、前記キットは場合により本発明の基板を含む。各種態様において、前記キットは1個以上のナノファイバー増大表面積基板(例えば1個以上のカテーテル、熱交換器、超疎水性表面又はナノファイバー増大表面積基板を含む1個以上の他の装置等)を含む。
【0229】
前記キットは更にナノファイバー増大表面積基板又は前記基板を含む任意装置を作製及び/又は使用するために付加的に使用される必要な任意試薬、装置、設備、及び材料を含むことができる。
【0230】
更に、キットは場合によりナノファイバー増大表面積基板の合成及び/又は前記ナノファイバーへの部分の付加及び/又は前記ナノファイバー構造の使用のための指示(即ちプロトコール)を含む説明書も含むことができる。好ましい説明書はキット内容物を利用するためのプロトコールを提供する。
【0231】
所定態様では、説明書は1種以上の装置(例えば医療装置等)の作製における本発明のナノファイバー基板の使用方法を教示する。説明書は場合により本発明のナノファイバー増大表面の作製及び/又は利用のための指示書(例えば紙、コンピューター読み取り可能なディスケット、CDもしくはDVD等の電子媒体、又は前記指示を与えるインターネットウェブサイトへのアクセス)を含む。
【0232】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細目に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記全技術及び装置は種々に組合せて使用することができる。本明細書に引用した全公報、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各公報、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の代表的付着性ナノファイバー構造の顕微鏡写真を示す。
【図2A】従来技術のステントとステントデリバリーカテーテルを示す。
【図2B】冠動脈等の患者の血管内の病変部位における図8Aのステントの配置を示す。
【図2C】ナノ構造表面をステントに配置する前の血管ステントの顕微鏡写真を示す。
【図2D】ステントの露出表面上の複数のナノファイバーの成長後の血管ステントの顕微鏡写真を示す。
【図3A】患者の体内の大動脈瘤の部位へナノ構造表面をもつ大動脈瘤グラフトを送達するための血管内大動脈人工デリバリーシステムを模式的に示す。
【図3B】患者の体内の大動脈で動脈瘤に隣接して配置したナノ構造表面をもつ血管内大動脈グラフトを示す。
【図4A】本発明による患者の大脳血管の側壁における動脈瘤の治療用神経血管カテーテルデリバリーシステムの進行を示す患者の頭部の詳細図を示す。
【図4B】患者の大脳血管における側壁動脈瘤を示す。
【図4C】図4Bの側壁動脈瘤の部位におけるナノ構造表面をもつパッチの配置を示す。
【図4D】頭蓋内動脈瘤とAV奇形の治療を強化するために本発明の教示に従ってナノ構造表面を付加することができる市販塞栓装置の1例(即ちCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標))である。
【図4E】頭蓋内動脈瘤とAV奇形の治療を強化するために本発明の教示に従ってナノ構造表面を付加することができる市販塞栓装置の1例(即ちCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標))である。
【図4F】頭蓋内動脈瘤とAV奇形の治療を強化するために本発明の教示に従ってナノ構造表面を付加することができる市販塞栓装置の1例(即ちCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標))である。
【図5】図5Aは端端吻合の実施用のナノ構造表面をもつ管状装置を示す。図5Bは端側吻合の実施用のナノ構造表面をもつTチューブ装置を示す。
【図6】図6Aは例証態様に従ってナノファイバーを付着した代表的整形外科用インプラント(この場合は股関節ステム)の斜視図である。図6Bは図6Aの6A−6A線における横断面図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国仮特許出願第60/549,711号(出願日2004年3月2日)及び米国特許出願第10/902,700号(出願日2004年7月29日)の優先権を主張する。本願は更に各々その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許出願第10/828,100号(出願日2004年4月19日)の一部継続出願、米国特許出願第10/833,944号(出願日2004年4月27日)の一部継続出願、及び米国特許出願第10/792,402号(出願日2004年3月2日)の一部継続出願である米国特許出願第10/840,794号(出願日2004年5月5日)の一部継続出願としての優先権も主張する。
(発明の技術分野)
【0002】
本発明は主にナノ構造の分野に関する。より詳細には、本発明はナノファイバーを含む医療装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば体内又は体外装置(例えばカテーテル)、一時的又は永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、及び埋込型装置(例えば整形外科用インプラント)等の医療装置は日和見細菌や他の感染性微生物に感染し易く、場合によっては埋込型装置を取り外すことが必要になる。このような感染の結果、疾患、長期入院、又は死に至ることもある。従って、留置カテーテル、整形外科用インプラント、ペースメーカー、コンタクトレンズ、ステント、血管グラフト、塞栓装置、動脈瘤修復装置及び他の医療装置のバイオフィルム形成及び感染を防止することは非常に望ましい。
【0004】
生体材料の細菌増殖抵抗性の強化と生体材料表面の迅速な組織組込み及びグラフトの促進はいずれも研究分野である。しかし、滅菌及び無菌法の進歩と生体材料の進歩にも拘わらず、細菌及び他の微生物感染は依然として医療インプラントの使用における深刻な問題である。例えば、全院内感染の半数以上が移植医療装置に起因する。これらの感染は医療インプラントの挿入部位に形成されるバイオフィルムに起因することが多い。残念ながら、このような感染は生得免疫系応答と従来の抗生物質治療に耐性であることが多い。当然のことながら、このような感染は人体治療のみならず、多数の他の生物の治療でも問題になる。
【特許文献1】米国特許第4,739,768号
【特許文献2】米国特許第4,884,575号
【非特許文献1】Parodiら,Ann.Vase.Surg.1991;5:491−499
【非特許文献2】Whiteら,J.Endovasc.Surg.1994;1:16−24
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増大表面積をもつ医療装置及び前記表面積を含む構造/装置、並びに医療装置における増大表面積の使用方法が開発されるならば望ましい。本発明はこれらの利点及び以下の記載から自明となる他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の各種態様はナノファイバー増大表面を含むクランプ、弁、体内又は体外装置(例えばカテーテル)、一時的又は永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、及び埋込型装置(例えば整形外科用インプラント)等の各種医療装置を含む。このような増大表面はこのような表面を使用する医療装置の多くの属性を強化し、例えば生物汚染を防止/低減し、疎水性により流動性を増加し、接着性、バイオインテグレーション等を増加する。
【0007】
本発明の第1の側面では、複数のナノ構造コンポーネントを結合した1個以上の表面をもつ本体構造を含む医療装置が開示される。医療装置としては体内もしくは体外装置、一時的もしくは永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、埋込型装置、カテーテル、弁又は本発明の教示によるナノ構造表面の恩恵を受ける他の装置が挙げられる。複数のナノ構造コンポーネントとしては例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーが挙げられる。複数のナノ構造コンポーネントは装置の特定用途に応じて患者の身体の1個以上の組織表面に対する装置の接着性、非接着性、摩擦性、開存性、又はバイオインテグレーションの1種以上を強化することができる。医療装置の表面のナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)は場合によりナノファイバー表面をより頑丈にするために溶解速度の遅い生体適合性ポリマー(又は他の)マトリックスに埋込むことができる。ポリマーマトリックスは各ナノファイバーの長さの殆どを保護することができ、末端のみが損傷を受け易い。水溶性ポリマーの作製は多数の異なる方法で実施することができる。例えば、モノマーと酸化剤から主に構成される希水溶液中でポリマー鎖をin situ形成することができる。この場合には、ポリマーは実際に溶液中で形成された後に約10〜250オングストロームを越える厚さ、より好ましくは10〜100オングストロームの厚さの均一な超薄膜としてナノファイバー表面に自然吸着される。
【0008】
複数のナノファイバー又はナノワイヤーは例えば約1ミクロン〜少なくとも約500ミクロン、約5ミクロン〜少なくとも約150ミクロン、約10ミクロン〜少なくとも約125ミクロン、又は約50ミクロン〜少なくとも約100ミクロンとの平均長とすることができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーは例えば約5nm〜少なくとも約1ミクロン、約5nm〜少なくとも約500nm、約20nm〜少なくとも約250nm、約20nm〜少なくとも約200nm、約40nm〜少なくとも約200nm、約50nm〜少なくとも約150nm、又は約75nm〜少なくとも約100nmの平均直径とすることができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーは医療装置の1個以上の表面の平均密度を例えば約0.11本/平方ミクロン〜少なくとも約1000本/平方ミクロン、約1本/平方ミクロン〜少なくとも約500本/平方ミクロン、約10本/平方ミクロン〜少なくとも約250本/平方ミクロン、又は約50本/平方ミクロン〜少なくとも約100本/平方ミクロンとすることができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーはシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。
【0009】
ナノファイバー又はナノワイヤーは医療装置の本体構造の1個以上の表面にナノファイバー又はナノワイヤーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着させてもよいし、ナノファイバー又はナノワイヤーは例えば1個以上の機能的部分を使用して本体構造の1個以上の表面にナノファイバー又はナノワイヤーを(例えば共有結合により)結合することにより前記1個以上の表面に付着させてもよい。医療装置の本体構造は各種材料から構成することができ、場合により複数のナノ構造コンポーネントを本体構造の材料に組込んでもよい。ナノファイバー(又は他のナノ材料)は剛性と強度を強化するために本体構造の材料にナノファイバーを組込む前にナノファイバーを焼結(又は例えば化学的手段により架橋)することにより補強することができる。医療装置は更に1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含むことができ、及び/又はナノファイバー又はナノワイヤーはナノファイバー又はナノワイヤーの耐久性を増加するためにマトリックス材料(例えばポリマー材料)に組込むことができる。
【0010】
本発明の別の側面では、ステントの1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む血管ステントが開示される。複数のナノ構造コンポーネントとしては例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーが挙げられる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーは例えばシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーはステントの1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させるか、あるいは例えば1個以上の機能的部分又は結合化学を使用することによりナノファイバー又はナノワイヤーを1個以上の表面に別個に共有結合することにより前記1個以上の表面に付着させることができる。ステントはNitinol、ニッケル合金、錫合金、ステンレス鋼、コバルト、クロム、金、ポリマー、又はセラミックから選択される各種材料から作製することができる。ステントはナノ構造表面に直接吸着させるかあるいは1個以上のシラン基又は他の結合化学の使用により(例えば共有、イオン、ファン・デル・ワールス等の結合により)ナノ構造表面と結合した薬剤化合物を含むことができる。
【0011】
本発明の別の態様では、患者の体内で動脈瘤の領域に配置されるように構成されたグラフト部材を含む動脈瘤修復装置が開示され、グラフト部材はグラフト部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。複数のナノファイバーは例えばシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属又は金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーはグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着させてもよいし、あるいはナノファイバー又はナノワイヤーは例えば共有、イオン、又は他の結合メカニズムによりグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバー又はナノワイヤーを結合することにより前記1個以上の表面に付着させてもよい。グラフト部材は処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製することができ、前記ポリマー繊維としては限定されないが、Dacron、Teflon、金属もしくは合金メッシュ、セラミック又はガラス繊維から選択される合成ポリマーが挙げられる。グラフト部材はグラフト部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性コーティングを含むことができる。1態様では、グラフト部材は患者の大動脈内の動脈瘤の領域に配置されるように構成される。グラフト部材は脳の動脈瘤の領域に血液を供給するか又は前記領域から血液を供給する血管の側壁に近接して配置されるように構成することもできる。
【0012】
本発明の別の態様では、端端又は端側吻合で第1の血管を第2の血管と結合することにより患者に吻合を形成するための医療装置が提供され、前記装置は管状部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む管状部材を含む。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーはシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーは管状部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させるか、あるいは例えば共有、イオン又は他の結合手段を使用して1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着させることができる。管状部材は処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製することができる。1態様では、管状部材は端側吻合を実施するためのTチューブ又は端端吻合を実施するためのストレートチューブを含むことができる。管状部材は管状部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含むことができる。管状部材は例えば円形、半円形、楕円形、及び多角形から選択される横断面形状をもつことができる。
【0013】
本発明の別の態様では本体構造の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む本体構造を含む埋込型整形外科用装置が開示される。埋込型整形外科用装置は人工膝関節、人工股関節、軟骨を置換又は補強するものを含む足関節、肘関節、手関節、及び肩関節インプラント、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、及び尺骨の骨折修復及び外部固定用等の長骨インプラント、固定装置を含む脊髄インプラント、頭蓋骨固定装置を含む顎顔面インプラント、人工骨置換、歯科用インプラント、ポリマー、樹脂、金属、合金、プラスチック及びその組合せから構成される整形外科用セメント及び接着剤、釘、ネジ、プレート、固定装置、ワイヤー及びピンの少なくとも1種から選択することができる。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。複数のナノファイバー又はナノワイヤーはシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含むことができる。ナノファイバー又はナノワイヤーは本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させるか、あるいは(例えば共有的、イオン的等により)ナノファイバーを1個以上の表面に別個に結合することにより前記1個以上の表面に付着させることができる。装置の本体構造は処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製することができる。本体構造は本体構造の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含むことができる。
【0014】
本発明の別の態様では、複数のナノ構造コンポーネントを結合したベースメンブレン又はマトリックスを含む神経再生用スカフォールドを提供するためのバイオエンジニアドスカフォールド装置が開示される。メンブレン又はマトリックスは天然もしくは合成ポリマー、導電性ポリマー、金属、合金、セラミック、グラスファイバー、又はシリコーンの1種以上から作製することができる。複数のナノ構造コンポーネントは例えば複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含むことができる。メンブレン又はマトリックスのナノ構造表面は軸索伸長と機能的神経活動を助長するために1種以上の薬剤、細胞、繊維芽細胞、神経増殖因子(NGF)、細胞播種用化合物、神経栄養増殖因子もしくは前記因子を産生する遺伝子組換え細胞、VEGF、ラミニン又は他の薬剤を含浸させるか又はこれらと結合することができる。
【0015】
本発明の別の側面では、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む子宮又は卵管内植込み用医療装置が開示される。
【0016】
本発明の別の側面では、1個以上の表面が体液の結晶化を防ぐように構成された医療装置が開示され、前記装置は表面と前記表面に結合した複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む。
【0017】
本発明の別の態様では、装置の1個以上の表面が血栓形成を防ぐように構成された医療装置が開示され、前記装置は表面と複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む。
【0018】
本発明の別の態様では、1個以上の表面が組織浸潤を防ぐように構成された医療装置が開示され、前記装置は、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含み、前記ナノファイバー又はナノワイヤーは疎水性に構成されている。
【0019】
本明細書に開示する医療装置の任意1種以上で患者を治療するための方法も開示され、例えば、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む医療装置と患者を接触させる段階を含む患者の治療方法が挙げられる。患者の身体に薬剤化合物を投与するための方法も開示され、例えば少なくとも1個の表面と、前記表面に結合した複数のナノファイバーと、前記複数のナノファイバーに結合した薬剤化合物を含む薬剤溶出装置を提供する段階と;前記薬剤溶出装置を患者の体内に導入する段階と;患者の体内に薬剤化合物を送達する段階を含む。1態様における薬剤溶出装置は冠動脈ステントを含むが、疾患(例えば病変)部位への局所薬剤送達の恩恵を受ける任意装置を本発明の方法では使用することができる。冠動脈ステントを薬剤溶出装置として使用する場合には、薬剤化合物は例えばパクリタキセル又はシロリムス、又は他の各種薬剤を含むことができ、限定されないが、抗炎症性免疫調節剤(例えばデキサメタゾン、M−プレドニソロン、インターフェロン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、スタチン、シクロスポリン、トラニラスト、及びバイオレスト);抗増殖性化合物(例えばタキソール、メトトレキセート、アクチノマイシン、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、RestenASE、及びPCNAリボザイム);遊走抑制剤(例えばバチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフギノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコール);及び治癒と再内皮細胞化を促進する化合物(例えばVEGF、エストラジオール、抗体、NO供与剤、及びBCP671)の1種以上が挙げられる。薬剤化合物は薬剤溶出装置のナノファイバー表面に直接吸着させてもよいし、1個以上のシラン基、リンカー分子又は他の共有、イオン、ファン・デル・ワールス等の結合手段の使用により結合してもよい。ナノファイバー表面は薬剤化合物が時間をかけてゆっくりと溶出するように構成してもよい。複数のナノファイバーは場合によりナノファイバーの耐久性を強化するように生体適合性非血栓形成性ポリマーコーティングに埋込まれる。
【0020】
本発明の上記及び他の目的と特徴は添付図面と併せて以下の詳細な記載を読むと、より十分に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
当然のことながら、ナノファイバー増大表面積を含む使用又は装置等の本発明の特定態様及び例証は限定的であるとみなすべきではない。換言するならば、本明細書の記載により本発明を例証するが、特に指定しない限り、本発明は個々の細かい記載に拘束されない。これらの態様は増大表面積ナノファイバー表面とその構造体の各種使用/適用を例証するものである。この場合も、本明細書に列挙する特定態様は本発明の増大表面積ナノファイバー構造を含む他の使用/適用を制限するとみなすべきではない。
【0022】
図1に示すように、ナノファイバーは場合によりナノファイバーを付設する医療装置表面に複雑な三次元パターンを形成する。この場合も、当然のことながら本発明の他の態様ではナノファイバーは高さ、形状等がより均一である。このような複雑さの程度は例えばナノファイバーの長さ、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ:直径アスペクト比、(使用する場合には)ナノファイバーに付着した部分、及びナノファイバーの成長条件等に部分的に依存する。二次表面との緊密接触度を変化させるのに有用なナノファイバーの屈曲、絡み合い等は場合により例えば単位面積当たりのナノファイバー数の調節や、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ及び組成等により操作される。従って、当然のことながら、本発明のナノファイバー基板の生体有用性は場合により上記及び他のパラメーターを操作することにより調節される。ナノファイバー(又は他のナノ材料)はナノファイバーを本体構造の材料中又は材料上に組込む前又は組込んだ後にファイバーを焼結(又は例えば化学的手段によりファイバーを架橋)して剛性と強度を強化することにより補強することができる。
【0023】
同様に当然のことながら、ナノファイバーは選択態様では湾曲又はカール等することにより、ナノファイバーと該当基質表面の接触表面積を増加することができる。ナノファイバーと第2の表面を複数点で接触させることにより緊密接触度が増すので、ナノファイバーと第2の基質の間のファン・デル・ワールス引力、摩擦力、又は他の同様の接着/相互作用力が増加する。例えば、カールした1本のナノファイバーは場合により第2の基質と多数回緊密接触することができる。当然のことながら、所定の選択態様では、ナノファイバーは第2の表面から第1の表面側に再びカール/湾曲する場合には第1の表面と再接触することもできる。単一ナノファイバーと第2の基質/表面の間に複数の接触点(又は例えば湾曲したナノファイバーがその先端直径よりも大きな緊密接触面積をもつ場合、例えばナノファイバーの側長が基質表面と接触する場合には更に大きな接触点)を介在させることが可能になるので、カール/湾曲ナノファイバーからの緊密接触面積はナノファイバーがカール又は湾曲しない傾向にある場合(即ち一般に第2の表面に対して「直線状」の外観をもつ場合)よりも大きくなる場合がある。従って、本発明の全態様ではないが、所定態様では、本発明のナノファイバーは屈曲、湾曲又はカール形状を含む。当然のことながら、単一ナノファイバーが表面全体に蛇行又は螺旋状の場合(但し、第1の表面に結合している単位面積当たりのファイバーが1本である場合)にも、ファイバーは二次表面と場合により各々比較的大きな接触面積で接触する複数の緊密接触点を提供することができる。
I)静菌性疎水性抗血栓性カテーテル内腔としてのナノファイバー表面
【0024】
カテーテルは例えば静脈内、動脈、腹腔、胸膜、髄腔内、硬膜下、泌尿器、滑膜、婦人科、経皮、胃腸、膿瘍ドレン、及び皮下用途等の医療用途に広く使用されている。静脈内注入は体液、栄養、血液又は血液製剤、及び薬剤を患者に導入するために使用される。これらのカテーテルは短期、中期、及び長期用として配置される。カテーテルの種類としては標準IV、末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)/ミッドライン、中心静脈カテーテル(CVC)、血管造影用カテーテル、ガイドカテーテル、栄養管、内視鏡カテーテル、Foleyカテーテル、導尿カテーテル、及びニードルが挙げられる。カテーテル合併症としては静脈炎、局所感染及び血栓症が挙げられる。
【0025】
静脈内療法は患者治療における重要な要素である。米国では年間8人に1人が何らかの静脈内療法を受ける。今日では輸液療法がほぼ日常的である。病院では、外科患者の90%と非外科入院患者の3分の1が何らかの静脈内療法を受ける。米国の医療装置製造業者はカテーテル産業を席巻しており、世界中で使用されているカテーテルの70〜80%を生産している。1997年の全世界のカテーテル製品の総売上高は約73億ドルであり、毎年10.4%ずつ堅調に増加している。しかし、最大部門は尿カテーテルと透析カテーテルから主に構成される腎臓市場である。現在は40億ドルの部門であるが、ほどなく71億ドルに達すると予想される。
【0026】
最もよく知られている泌尿器カテーテルはFoleyカテーテルであり、1930年代から市販されている。Foleyカテーテルや他の体内留置及び外部コンドーム型カテーテルは失禁、瀕死患者、及び多くの場合には外科手術後又は怪我もしくは疾病で能力を奪われた後の膀胱導尿用に使用されている。これらの比較的使いやすいカテーテルは世界中の病院、老人ホーム、及び在宅看護環境で使用されている。透析カテーテルには血液透析と腹膜透析の2種類がある。このカテーテル部門の末端消費者は血管外科医とインターベンショナルラジオロジストであるが、一旦長期カテーテルポートを設置すると、腎臓医が挿入部位とカテーテル診断治療をモニターすることになる。
【0027】
従って、本発明の各種態様では、カテーテル及び関連医療装置を作製するために材料表面内、表面上又は表面下でナノファイバー増大表面を使用する。本発明のナノファイバー表面カテーテルの静菌性は場合により感染を減らすことができ、他方、疎水性は場合により液体流動性を増すことができる。このような装置の抗血栓性は場合によりカテーテルを閉塞させる血栓症と塞栓を減らすことができる。カテーテル製造業者は生体適合性を増し、より良好な感染防除を提供するようなカテーテル材料とカテーテルデザインの改良を望んでいる。しかし、進歩したとは言え、現時点で感染は依然として大きな問題である。しかし、カテーテルの作製にナノファイバー増大表面を使用すると、場合によりこのような問題を改善することができる。
【0028】
ナノファイバー増大表面の使用により感染を減らし、流動性を増し、血栓形成を減らしたカテーテル内腔の性能利点が本発明の特徴である。このような特徴は場合により(ナノファイバーをコーティングしたカテーテル内腔を使用する結果として)カテーテル合併症を減らし、カテーテルを交換するまでに留置可能な時間を延ばすことができる。
【0029】
カテーテルは場合により体内の任意場所に設置され(即ちカテーテルの分類はIVに止まらない)、一般に例えば静脈内に設置するために十分な強度をもち且つ患者の体内で屈曲するために十分な弾性をもつプラスチック製である。カテーテル管理(例えば交換時間)を減らし、例えば皮膚「接触」、生物汚染等によるカテーテル汚染を減らすことが一般に望ましい。静脈炎や、血栓を例えば下流に押し流すために「フラッシュ」を使用することに起因し得る流動性を低下させる任意問題を避けることも望ましい。本発明の態様は本質的に静菌性、疎水性及び抗血栓性であるため、このような問題がない。
【0030】
本発明の付着防止の側面は場合により創傷ドレナージ用カテーテルでも有用である。このようなカテーテルは一般に細菌汚染等の問題がある。従って、本発明の態様を使用すると、薬剤使用(例えば抗生物質)を減らし、苦痛を減らし、付加操作の必要を減らし、感染率を減らすことができる。本明細書に説明するように、本発明のカテーテルは場合により感染低下等を更に助長することが可能な化合物(例えば銀化合物、酸化チタン、抗生物質等)をコーティングする。
II)使い捨て外科用リトラクター、歯科用リトラクター及び配置装置におけるナノファイバー増大表面
【0031】
外科では露出、外科的アプローチ、及びインプラント配置の目的で臓器や組織を位置決め又は移動(例えば操作)するのにリトラクターと鉗子が一般に使用されている。歯科では小型の歯修復物(例えばクラウン、インレー、オンレー、ベニア、インプラント/インプラントアバットメント等)を配置するためや、各種歯周、口腔外科及び歯内処置で歯肉組織を位置決めするために一般に鉗子を使用している。この市場部門における既存歯科装置は末端が粘着性のプローブ(Grabits(登録商標))であるが、非滅菌性であり、生体組織に接着することができず、接着したインプラントから取り外しにくいため、歯科医に嫌われている。
【0032】
ナノファイバー増大表面により最低圧で発生される強い牽引力は場合により外科臓器移動及び後退における組織損傷を最小にすることができる。弱い点負荷で発生される強い牽引力は場合により歯科修復物の歯科外科的調節及び配置を改善することができる。生体組織と不活性インプラントに付着する滅菌可能なプローブの利点は既存技術に対して顕著な利点を提供すると考えられる。
【0033】
歯付きの破砕用(鋸歯付き)鉗子に勝る性能利点、外科処置速度の増加及び組織損傷の低下は特に本発明の大きな利点である。ナノファイバーをコーティングした本発明のリトラクターを使用すると、使用し易く、歯科外科処置速度が増し、インプラントの操作が安全であるため、外科手術後の組織外傷とそれに伴う炎症が減ると共に治癒率が増加すると予想される。
【0034】
本発明の所定態様はナノファイバー増大表面をもつ使い捨てリトラクターを含む。更に、他の態様は例えば逆ピラミッド型(例えば高さ1cm)を含む。このようなピラミッドの頂点を使用して神経等に接触することができる。また、大型の対象には平坦面を使用することができ、更に他の異なる寸法の対象には稜部を使用することができる。本発明のリトラクターは場合により特定用途に応じて各種寸法と形状にすることができる。この場合も、例えば歯科でクラウン等を操作及び配置するために本発明のリトラクターを使用することができる。
III)ナノファイバー増大表面の使用による腹腔鏡クリップにおける牽引増加
【0035】
胆嚢手術中には閉鎖用クリップが腹腔鏡で利用される。60ドルの使い捨てカートリッジに約10個のクリップが組込まれている。胆嚢手術中に動脈、静脈及び導管を密閉するために一般に5個又は6個のクリップが使用される。ほぼホッチキスの針の寸法の小さなU字形クリップはチタンから製造され、適所でかしめられる。クリップは牽引面をもたず、適所に配置するのにかしめ力に依存する。クリップにより生じた外傷が癒着したり、血管に傷がつく恐れがある。
【0036】
本発明のナノファイバー表面により最低圧で発生される強い牽引力により、このようなクリップは腹腔鏡手術や他の外科手術に理想的になると思われる。
【0037】
本発明のナノファイバー増大装置による有意に広い牽引面(〜2倍)の性能利点は非常に望ましい。この点は、特に米国だけでも年間約600,000件の胆嚢摘出が行われていることから明らかである。虫垂切除等の他の腹腔鏡手術も加えると、この数は1,000,000件を越える。1回の手術で1個60ドルのカートリッジが使用されるならば、売上高は少なくとも60,000,00ドルである。
【0038】
このようなクリップ又はクランプの他の用途としては、例えば大動脈を挟んだり締め付けるためや、非外傷性クランプとしての使用等が考えられる。このようなクランプは心臓運動の安定化を助けるための心拍動下手術にも有用であると予想される。このような製品は場合により(ナノファイバー等を付着した)パッド付きアームを含む。眼及び/又は瞼手術にも眼を固定するためにこのようなクランプが必要である。更に他の一般外科用途としては、例えば頭皮を切開するために硬膜を後退させたり、心臓手術で心膜を保持したり、皮膚移植片を固定したり、臓器/組織を固定する等の用途が挙げられる。更に他の態様は基質が溶解性のもの(例えば肝袋等)を含む。
【0039】
外科手術ではドロドロしたり、ヌルヌルしたり、傷つきやすい等の臓器等を処置することが多い。また、管状又は層状の解剖学的要素は縫合器等でつかむことができるが、より不規則な形状の臓器(例えば肝臓、心臓等)は問題である。従って、ナノファイバー表面を含む無数のクランプ型用のリトラクター、使い捨てスリーブ、及び汎用接触面がいずれも必要である。これらは医療装置を常時再配置する必要をなくすことができる(例えば点リトラクターは組織と接触し、解放が必要になるまで保持することができる)。本発明の装置は腹腔鏡装置及び安定化パッドに配置することもできる。
IV)創外固定具インプラント静菌性表面材
【0040】
創外固定具は骨折治癒の目的で皮膚を通して骨に挿入されるピンとワイヤーである。これらのピンとワイヤーはその後、骨折した骨が治癒できるように剛性と安定性を提供するために外部のロッド及びクランプに連結される。内部に配置するプレート、スクリュー、ピン及びワイヤーにまさるこれらの外部装置の利点は内部インプラントの外科的配置に比較して組織及び血管破壊量が少ないことである。このように外科的侵襲性が低いため、骨折を著しく速く治癒することができ、筋肉及び皮下瘢痕、インプラントに関連する骨肉腫、骨関節変形、又は苦痛を伴う低温感覚合併症が少なく、後日にインプラントを外科的に除去する必要がなくなる。最近十年間では内部インプラントよりもこの「生物学的」整形外科治癒方法に向かう傾向がある。組織損傷が最少になるので、骨治癒に最も重要な治癒時間が短縮する。創外固定具の使用に起因する合併症は皮膚からの細菌感染と、連結装置が十分安定でない場合のピンの過剰な移動である。ナノファイバー静菌性表面材の使用はこれらの2つの問題の主要部分と認められるものを軽減又は解消すると期待される。
【0041】
ナノファイバーをコーティングした創外固定具の静菌性ステンレス表面は皮膚表面が細菌と接触し、ネジ付きピン挿入部と骨の界面が汚染し、ピンが緩んで骨折を治癒できなくなる程度を軽減する。外部に配置した静菌性ピンの性能利点は特に手術後感染とピンが緩む問題を軽減するために明らかに望ましいと思われる。各種態様では、全移植材料にナノファイバーをコーティングする。他の態様では、ネジ山、ピン、及び/又は結合材にナノファイバーをコーティングする。他の態様はプレートの底面とネジ山の頂点、弾性ワイヤー(例えばkワイヤー、kピン等)、ストレートピン等のナノファイバーコーティングを含む。当然のことながら、本発明のこのような創外固定具は場合により四肢伸長法でも使用される。
V)バタフライ型皮膚バンデージ/パッチ
【0042】
多くの皮膚裂傷はスパッと切れた傷口であり、縫合できない場合やその必要がない場合には単純な表面閉鎖が必要である。現在市販されているバタフライ型皮膚バンデージは良好に機能するが、皮膚の運動とバンデージ部位の加湿と共に接着が弱まるので急速に機能低下する。ナノファイバー表面を含む疎水性接着性バタフライ型バンデージはこの欠点のエレガントな解決方法である。
【0043】
角膜擦過傷は眼瞼痙攣、毛様体筋痙攣及び疼痛を誘発する一般眼科傷害である。これらの傷害の大半は治癒するのに24〜72時間を要する。角膜潰瘍は治癒するのに3〜5日間を要する。毛様体筋痙攣を抑える散瞳薬を投与すると、毛様体疼痛は緩和するが、光恐怖症が増す。従って、患者は暗環境のほうが安心感を得られる。眼瞼を閉鎖するためにナノファイバー表面を含む皮膚接着性疎水性バタフライ型パッチを使用すると、光恐怖症の問題を解決し、眼瞼を閉鎖した状態での涙分泌により角膜の水濡れ性が増すため、角膜治癒速度が増す。
【0044】
最低圧で発生される強い牽引力と疎水性により、ナノファイバーをコーティングした弾性バタフライ型皮膚パッチは皮膚創傷と眼瞼を閉鎖するのに理想的になる。このようなバタフライ型装置の性能利点は非常に望ましいと期待される。所定態様では、接着装置は肌色であるか、又は患者が装置を外さずに入浴することができる。このような装置は患者が外科処置を受けるのを避けると共に、縫合後の「ひだ」を避けるのに役立つ(形成外科に特に重要)。このような装置の他の利点としては、例えば接着剤を硬化させる必要がなく、良好な副木材であり、プラスターを水で浸す等の必要がなく、例えばナノファイバーをメッシュ材料に付着すると装置を「通気性」にできる等の点が挙げられる。このような装置は更に場合により(持続的、温度上昇に伴う等の方法で)経皮放出すべき薬剤等を含むことができる。このような装置は場合により静脈硬化症状況下の褥瘡性潰瘍にも使用される(糖尿病患者では、皮膚と骨に圧力がかかると、糜爛と潰瘍を生じる)。更に、このような創傷被覆装置は創傷治癒(例えば細胞増殖)を増進できるような部分と結合することができる。バンデージ上のナノファイバー寸法は細胞を補足するように設計することができる。
VI)心臓外科用高牽引クランプ装置
【0045】
心臓外科では血流を一時的に停止するためにクランプが広く使用されている。この十年間では従来のスチール製ジョー付きクランプに比較して動脈損傷の少ない使い捨てゴム製非外傷性クランプインサートに向かう傾向がある。損傷が最少になると、回復時間が短縮し、瘢痕に起因する合併症が減る。ゴム製インサートは市場に進出しているが、牽引力が限られているため、多数の動脈を損傷してしまうほど強いクランプ力がまだ必要である。本発明の装置により最低圧で発生される強い牽引力により、ナノファイバーをコーティングしたクランプインサートは心臓外科に理想的になる。有意に広い牽引面(〜2倍)の性能利点は例えば手術後合併症を減らすために明らかに望ましい。
VII)接着性疎水性耳栓
【0046】
鼓膜穿孔、裂傷又は破裂はシャワー時や水泳時に一般に患者に問題となる。機械的な耳栓は不快であり、漏れやすく、前庭炎(バランス低下)や中耳炎(内耳感染)を生じることが多い。接着性と疎水性を兼備するナノファイバー表面を使用した改良型耳栓は数百万人の鼓膜裂孔患者に著しい改善をもたらすと期待される。最低圧で発生される強い牽引力により、ナノファイバーをコーティングした疎水性耳栓はより快適であり、既存技術よりも良好に水の侵入から密閉することができる。有意に広い牽引面(〜2倍)の性能利点は特に中耳炎後合併症と前庭炎を減らすために望ましい。
【0047】
ナノファイバーの疎水性作用と牽引力は安全な耳栓を形成すると期待される。各種態様では耳栓は耳道内に嵌め込まれるが、他の態様では耳又は耳道に被せるためのキャップ又はディスクを含む。場合により(例えば鼻血を抑える等のために)他の道又は孔に同様の態様が使用される。所定態様では、ナノファイバーは例えば痂皮や血塊を剥がさないようにするために、例えば患者側に残るようにその基板から剥離される。他の態様は場合により生物汚染防止特性及び/又は抗微生物性をもつことができる。下記参照。所定態様は場合により尿道栓等に使用することが期待される。例えば、所定態様は場合により避妊のために卵管を遮断するために使用することができる。
VIII)外科用癒着防止材
【0048】
手術後癒着は一般的な外科合併症である。現在及び従来、手術後癒着の防止方法を開発するために多大な労力が払われている。このようなアプローチには興味深いアプローチがあり、例えば鉄粉を混入したオートミールを摂取させた後に磁石を腹部に当て、腸に沿って進行させ、癒着を防ぐ方法がある。癒着は例えば開胸心臓手術後の心膜と胸骨の間、腸処置後の腹腔内、特に婦人科再建に関連する後腹膜腔内等の各種位置で特に問題となる。主に2つのアプローチが検討されている。第1のアプローチは例えばヒアルロン酸又は水素酸又は酸化セルロースから製造した移植可能なバリヤーフィルムであるが、癒着を防止するためにフィルムを配置すべき位置が確定できないので成功していない。第2のアプローチは癒着が予想される一般領域を浸すように例えばN,O−アセチルキトサンの溶液ボーラスを点滴注入する。これは優れた治療方法であると思われるが、この方法による満足な製品は市販されていない。折り紙付きの適切な製品が市販されるようになれば、実際に全外科処置で予防的に使用できよう。なお、手術後癒着は通常手術後の最初の1週間の間に形成され、この期間に形成されない場合には一般に発生しない。従って、最初の1週間の間に細胞付着がなければ癒着は形成されないので、(コラーゲン線維の癒着を生じる)繊維芽細胞が局所組織表面に付着しないようにする必要がある。本発明の癒着防止方法はこのような細胞付着を防止すると期待される。本発明の癒着防止態様は場合により種々の形態をとる(例えば液体適用形態、フィルム適用形態等)。癒着の形成は特に受精手術に問題となる。比較的急速に癒着が形成されるので、手術後5日間は繊維芽細胞を付着させないことが望ましい。
【0049】
吸収性天然(例えばコラーゲン)又は合成(例えばポリグリコール酸)ポリマーから製造され、高い潤滑性を提供するようにナノファイバー表面をコーティングした水性マイクロカプセル又は粒子懸濁液が本発明の特徴である。この懸濁液約200mlを適当な体腔内に注入すると、繊維芽細胞付着とその後の癒着形成を受けにくい表面で組織を覆うことができる。材料は数週間後に無害に吸収される。所定態様は場合により体腔壁を直接覆うナノファイバー又はナノワイヤーをコーティングしたメッシュ(例えば合成、金属、繊維)とすることができる。
IX)内視鏡及びカテーテル
【0050】
内視鏡(例えば結腸内視鏡)の困難な側面の1つは管状臓器(例えば腸、尿道、食道、気管、血管等)を通過する装置の摩擦抵抗である。内視鏡又はカテーテルを移動しにくいことに加え、摩擦は患者に大きな不快感を与える。通過し易くするために例えばポリビニルピロリドンを被覆した滑りやすいカテーテルが設計されているが、これらの装置は市場に広く受け入れられていない。本発明のナノファイバー表面を含む潤滑性内視鏡又はカテーテルは患者の使用感を著しく改善し、医師が移動し易いと期待される。
X)腔内カメラ
【0051】
最新診断革新の1つは内蔵を観察するための超小型ワイヤレスカメラの使用である。ピルサイズのこのようなカメラを飲み込むか又は注射して流下させ、医療観察者に画像を送る。本発明のナノファイバー表面による潤滑性の改善はこのような装置の性能を強化すると期待される。適切なナノファイバーコーティングはカメラを飲み込み易くすると共に、その経路に沿って操作し易くすると期待される。他の同様の態様は例えばカメラ等の装置に疎水性シールド(例えば窓)を形成するためや、装置にコーティング層(例えばヒアルロン酸等)を保持するためや、コンタクトレンズに透明コーティングを形成するため(場合により蛋白質蓄積を防ぐのにも役立つ)等の目的で装置にナノファイバーコーティングを含む。
XI)心臓機械弁
【0052】
大動脈弁及び僧帽弁の置換に使用されている心臓弁プロテーゼは2種類ある。機械弁は一般に収縮期に血液を流すために開き、拡張期に逆流を防ぐために閉じるディスクを備える金属ケージである。これらの弁は永久に使用できるが、血栓性合併症を防ぐために抗凝血剤を毎日投与する必要がある。用量は血栓形成と内出血を防ぐように注意深く調節しなければならない。他方の型の弁は組織弁であり、ブタ心臓から一括して分離する場合や、ウシ心膜組織から作製する場合がある。これらの弁尖は天然弁によく似ており、通常は抗凝血剤を投与する必要がない。しかし、劣化し易く、機械弁よりも寿命が短い。幸いにも、組織弁は機能低下が遅いので、外科的置換に十分な時間がある。耐用期間の長い機械弁が抗凝血剤を投与せずに良好に機能できるならば計り知れない医療上の利益となろう。このように使用される本発明のナノファイバー増大表面も本発明の一部である。更に、左室補助装置(LVAD)の血行性能の改善にもナノファイバー表面を使用することができる。
【0053】
ナノファイバーを特別に組込んだ心臓機械弁を使用すると、層流により血行が改善され、収縮期当たりの血流量が改善され、凝血防止の必要がなくなるか又は著しく減り、血栓症が発生しなくなるか又は著しく減り、溶血レベルが低下するか又はゼロになると期待される。
XII)小径血管グラフト
【0054】
現在、直径約6mmを上回る各種血管プロテーゼは腸骨/大腿部を通して胸大動脈から移植した場合に十分に機能している。直径約6mmを下回ると、このようなグラフトは完全な内腔血栓形成後に挿入又はバイパスグラフトとして移植した場合に機能できない。同様に、静脈再建に利用できるグラフト材料もない。多年来、研究者らは下肢から伏在静脈を採取する必要をなくすように、特に冠動脈バイパス処置用の小径血管グラフトを開発しようと努力してきた。一般に、厚さ0.5〜1.0mmの蛋白質層が内腔表面に迅速に堆積して内腔直径が更に減少し、壁在血栓の形成を誘発するため、2〜5mmの小径グラフトは利用できない。ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))やポリウレタン等の従来の非濡れ性表面でも蛋白質の内膜積層を阻むことができない。
【0055】
ナノファイバー増大表面の超非濡れ性は2つの非常に重要な要因になると思われる。第1に、内腔表面に血漿蛋白質が堆積しなくなるので、元のグラフト直径が維持される。同じく重要な点として、ナノファイバー表面は理想に近い層流血流を提供することができるので、内腔血栓形成を減らすか又は完全になくすと期待される。これは場合によりグラフト血栓形成を防ぎ、及び/又は特に縫合吻合部における乱流に付随するグラフト障害の周知原因である吻合部内膜過形成を最小にするのに非常に重要である。
【0056】
具体的には、ナノファイバー表面は以下のグラフト:大腿/膝窩(及び下膝窩)血行再建;冠動脈バイパスグラフト(場合により伏在静脈置換とIMA処置);A−Vシャント(血液透析アクセス);微小血管再建(例えば手の手術);及び静脈再建に有益に利用することができる。特に糖尿病患者集団でA−Cバイパスグラフトや末梢血管再建にナノファイバー表面を使用することも考えられる。微小血管、A−Vシャント及び静脈用途も考えられる。無縫合吻合法におけるナノファイバー増大表面の使用に関する詳細な記載については後述する。
XIII)美容用充填剤
【0057】
コラーゲン充填ビジネスは美容分野で急増しており、2003年には〜800,000件が実施されたと考えられる。材料供給業者の年間収益は5億ドルに迫っている。コラーゲンを美容用(例えば唇や深い皺等)に使用する際の主要な問題は持続性である。典型的なコラーゲン充填は〜3〜4カ月持続した後に効果が低下し、再注入が必要になる。従って、持続性のある美容効果を生じるためには非吸収性でありながら生体適合性のマイクロスフェアが望ましい。
【0058】
この分野では標準ゲージ針で注入可能であり、バイオバーデンを排除したマイクロスフェアを作製できることが非常に望ましく、特にこれらのマイクロスフェアが注入し易く、注射可能であり、配置し易いように十分に潤滑性であり;持続性の結果が得られ;生体適合性の問題がなく;時間と共に移動しないことが望ましい。マイクロスフェアキャリヤーで(例えばナノファイバーによる疎水性と親水性のバランスにより)最適化された潤滑性をバイオバーデン排除技術と組み合わせることができるならば十分に競争に勝てると考えられる。他の態様としては、瘢痕組織の減少が可能な態様と、場合により機能化されたナノファイバースカフォールドを腐食性ポリマーに付けた態様が挙げられる。
XIV)高流動性低血栓形成性心臓機械弁
【0059】
置換弁移植は10億ドルの売上高に迫る貴重な大市場である。第1に、寿命、血栓形成性及び流動性に関して現実に認められている相違により機械弁移植と組織弁移植の間で揺れ動きつつある。第2に、法的/臨床的要件がますます厳しくなっているために新製品開発サイクルが長引き、製品競争が硬直化している。主要な弁基準の2つ(血栓形成性と流動性)を潜在的に改善するように既存製品を改造する(その結果、法規制に対応する過程を著しく短縮する)可能性があるため、ナノファイバーは機械弁市場内に加え、機械弁製品と組織弁製品の間の市場占有率にも潜在的に劇的な効果があると思われる。
【0060】
完全には解明されていないが、血栓形成と流動性は相関する問題である。実際に、最もよく知られている2枚弁デザインのヒンジシートの下流に形成された乱流はこのような製品の血栓形成効果の要因であるとされている。ナノファイバー増大表面により得られるような疎水性表面コーティングはこのような問題を緩和するのに劇的な効果があると思われる。
【0061】
本発明の本態様は現行製品に追加することによりサイクル時間を劇的に短縮する利点と同時に、製品自体の差別的利点がある。
XV)埋込型センサー及びペーシングリードの高持続性機能
【0062】
埋込型センサー市場は未成熟期にあり、各種初期用途としてはグルコースセンサー、心機能センサー(リード有又は無)及び各種ストリップスの神経インプラントが挙げられる。これらの企業の多くは経時的生物汚染と持続性試薬ベッドの形成しにくさに関連する同様の問題を抱えている。高疎水性構造と組み合わせて配置された試薬ドーピングパッドを併用すると、全種センサーの持続機能時間が著しく延びると考えられる。現行技術はこの欠点(例えばグルコースセンサーは3日間しか機能しない)を容認しているか、又は機械的パッケージング及び/又は大規模な平行処理を伴う高価で実施しにくい方法でこの問題に対処している。
【0063】
本発明のナノファイバーの別の関連用途は組織との良好な電気接点と非汚染性のシャフトを提供するためのペーシングリードのコーティングである。これらの市場で利用されているセンサー/試薬技術の多くは従来の非インプラント診断の成熟期が長いために工業所有権が消滅しており、パッケージングは実際に工業所有権を主張できる技術として参入の余地のある重要な技術であると思われる。人体の高腐食性で被包形成のさかんな環境で長期間耐えられるようにセンサー(試薬又は電気センサーを問わず)を如何にパッケージングするかが問題である。これは留置型に携わる全企業に大きな課題である。本発明のナノファイバーによるユニークな非汚染性アプローチは非汚染性表面の下流又は近傍に痕跡を残さないという付加的特徴もある。このため、試薬/センサーの独創的なパッケージングで正確な読取りが得られる。更に、試薬持続性に関しては、薬剤溶出ステントの概説で以下に記載する薬剤ドープパッドとほぼ同様にナノファイバーを含む試薬ドープパッドを作成することが可能であると思われる。
【0064】
ペースメーカーリードの分野では、臨床医を悩ませる問題が2つある。誤ってリードが外れたり、きちんと配置されていないと組織への電流が不十分になり、時間と共にリードの周囲の組織が過増殖し、長期にわたって複数のリードを配置している所定の患者では、実際に流動抵抗を生じることがある。その結果、後続処置/手術が更に複雑になりかねない。更に、遺棄されたリードが合併症の原因となることもある。本発明のナノファイバーを含むこのような装置はセンサーヘッドを覆うナノファイバーとシャフトに沿って取り付けられた生物汚染防止コーティングによりこれらの問題を2つとも解決できると思われる。
【0065】
グルコースセンサー:〜20億ドルの世界中のグルコースセンサー市場の聖杯はフィンガースティック装置を離れ、真に非侵襲性のアプローチ又は留置アプローチによる持続的グルコース装置に移りつつある。どちらのアプローチも商品化又は商品化までの時間に関して他方よりも明白な優勢を示すには至っておらず、基本的な技術的競合状態に至っていない。今日開発中の埋込型グルコースセンサー技術はいずれも実質的な制約があるため、広く市場に受け入れられると思われない。この点は非侵襲性アプローチについては当てはまらないが、非侵襲性アプローチにしても実用可能な装置を求める市場リーダーたちを15年間にわたって阻んできた開発の障害に直面している。このようなセンサーにナノファイバーを加えると、上記のいくつかの問題を防止/改善できると思われる。
【0066】
心臓センサー:この市場は最初期にあるが、(恐らく警報として継続的に)インターベンショナルカーディオロジー法の必要なしに完全な心臓出力測定を提供すること及び/又は活動中の心臓装置(例えばBV−ペーサー、左室補助装置(LVAD))の優れたリアルタイム制御を提供することが見込まれる。この場合も、このような装置にナノファイバーを加えると、上記の多くの問題を防止/改善できると思われる。
【0067】
神経センサー/エミッター:この分野も初期参入余地があるが、この場合にはセンサーよりも刺激に重点がおかれている。神経調節及び神経刺激は神経組織との一貫した連続的接触に依存している。リードの組織接触端にナノファイバーを配置すると、リードを保護することができ、瘢痕形成(例えばグリア瘢痕)を防ぎ、導電を改善することができる。更に、ナノファイバーはリードのシャフトで導電材料として使用することができる。
【0068】
ICD及びペースメーカーリード:複合市場における単位生産高は非常に大きく、年間〜1,000,000件の移植が行われている。両室ペーシングがあらゆる安易で楽観的な予測を越えて急速に普及し始めているので、この市場は一層成長しつつある。リードの問題は一時は価値連鎖の非常に大きなシェアを占めたが、その統一小売価格がじわじわと低下していることである。
XVI)血管ステント及び次世代薬剤溶出冠動脈ステント
【0069】
血管ステントはバルーン血管形成術後に血管を開いておくために使用される小型金属装置である。冠動脈ステントの開発は例えばこの10年間にわたってインターベンショナルカーディオロジーの実地に変革をもたらしている。70件を越える冠動脈ステントがヨーロッパで認可され、Guidant Corporation(Indianapolis,IN)から市販されているMulti−Link Vision(登録商標)Coronary Stent Systemや、Medtronic,Inc.(Minneapolis,MN)から市販されているDriver(登録商標)Coronary Stent System又はBeStent2(登録商標)をはじめとして20件を越えるステントが米国で市販されている。
【0070】
市販ステントは種々の形態のものがある。例えば1例として、例えば図2A〜Bに示すようなステント210はステンレス鋼ワイヤー製であり、バルーンを膨らませることにより拡張する。ステント210は血管216(例えば冠動脈)の患部214に送達するために図2Aに示すようにバルーン212にクリンプすることができる。分かりやすくするために、血管壁216の多重層を単層として示すが、当業者に自明の通り、病変部は一般に血管216の内膜内のプラーク沈着である。
【0071】
ステント210の送達に適したバルーンの1例はBoston Scientific Corporation(Natick,MA)から市販されているMaverick(登録商標)PTCAバルーンである。次に、ステントを搭載したバルーン212をガイドワイヤーとガイドカテーテル205の使用等により、従来通りに患部に進行させ、病変部214の両端間に配置する。適切なガイドワイヤーはBoston Scientific Corp.製0.014”Forte(登録商標)であり、適切なガイドカテーテルはET 0.76内腔ガイドカテーテルである。
【0072】
バルーン212が図2Aに示すように病変部214の両端間に配置されたら、同様に実質的に従来通りにバルーン212を膨らませる。バルーンの選択に当たっては、ステント210がピークの各々に沿って均等に拡がるようにバルーンが径方向に均一に膨らむようにするとよい。バルーン212が膨らむと、ステント210はそのクリンプ形状から図2Bに示す拡張位置に拡がる。膨らませる量とこれに見合ったステント210の拡張量は病変部自体に応じて変えることができる。
【0073】
血管216の内側でバルーン212を膨らませてステント210を拡げた後、バルーンをしぼめて取り出す。血管216の外壁は弾性収縮により元の形状に戻る。しかし、ステント210は血管内で拡張形状に維持され、血管のその後の再狭窄を防ぐ。再狭窄傾向がステント210の機械的強度以下である限り、ステントは図2Bに示すように血管内に開放通路を維持する。
【0074】
別の形態のステントはNitinol製品のような自己拡張型ステント装置である。ステントを移植部位で露出させ、自己拡張させる。
【0075】
従来技術のステントにはいずれも大きな問題があった。いずれも血栓症、再狭窄及び組織浸潤の可能性があり、程度は異なるが、配置しにくいという問題もあった。従来技術のステントの少なくとも一部には血管形状に合致しにくいという問題もあった。従来は、設置後少なくとも最初の3カ月間は抗凝血剤が必要であった。
【0076】
従って、有意血栓症を生じずに血管を開いておくのに有効であり、患部に送達し易く、患部血管に合致し易いがステントがかねてより切望されてきた。
【0077】
本発明の本態様は一般に既存通路、チャネル、導管等、特に動物、特に哺乳動物又はヒト内腔、例えば血管又は他の導管臓器を拡げ、支持するために使用される血管内支持装置(例えば「ステント」と通称されるもの)に関する。特に、本発明の本態様はステントとこれを使用する通路との相互作用を強化するために、例えば図1及び図2Dに示すようなナノ構造コンポーネントを利用するこのようなステント装置を提供する。一般に、このようなナノ構造表面は対象通路内の装置の開存性を強化するように装置の接着、摩擦、バイオインテグレーション又は他の特性を改善するために使用される。このような相互作用の強化は一般に通路の表面(例えば内壁又は外壁表面)と相互作用してこの表面との結合又は付着を助長するナノ構造表面を提供することにより得られる。ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)は例えばステントの外面及び/又は内面にナノファイバーを直接成長させるか、又はナノファイバーをステント表面に別個に共有的もしくはイオン的に結合することにより、ステントの外面又は内面に付着させることができる。更に、ステントを挿入する血管内におけるステントの剛性と強度を強化するために、ナノファイバー又は他のナノ構造をステント材料自体に埋込むこともできる。ナノファイバーの形状と寸法及びグラフト表面上のその密度はステントの接着性(又は他の性質)を所望レベルにするように変えることができる。特に好ましい側面では、アスペクト比の大きいナノファイバーがナノ構造として使用される。このようなナノファイバーの例としては従来記載されているようなポリマーナノファイバー、金属ナノファイバー及び半導体ナノファイバーが挙げられる。
【0078】
本発明のステントはその生体有用性を更に強化するために内面及び/又は外面に他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、(下記に記載するような)薬剤溶出コーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。ステントに設けた上記ナノファイバーコーティングはステントがこれらのコーティングを保持し易くする広い表面積を提供することができる。コーティングはステントのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
【0079】
冠動脈ステント市場は巨大であり、最大手装置製造企業により激しい競争が繰り広げられている。現在、薬剤溶出冠動脈ステントという最新部門で製品開発/獲得により利益を得るために参入企業間でゴールドラッシュが進行中であり、例えば、米国FDAに認可されたCordis Cypher(登録商標)シロリムス溶出用ステントや、Boston Scientific Taxus(登録商標)パクリタキセル溶出用ステントシステムが上市されている。薬剤溶出ステントは急速に市場シェアを獲得しつつあり、2005年までに冠動脈血管再生治療の標準になると思われる。この新規治療は冠動脈インターベンション部位における瘢痕組織の形成を防ぐことができる薬剤を添加したポリマー薄層を標準冠動脈ステントの外面にコーティングするものである。現在市販されているステントで使用されている薬剤の例はシロリムスとパクリタキセルに加え、抗炎症性免疫調節剤(例えばデキサメタゾン、M−プレドニソロン、インターフェロン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、スタチン、シクロスポリン、トラニラスト、及びバイオレスト);抗増殖性化合物(タキソール、メトトレキセート、アクチノマイシン、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、RestenASE、及びPCNAリボザイム);遊走抑制剤(例えばバチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフギノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコール);及び治癒と再内皮細胞化を促進する化合物(例えばVEGF、エストラジオール、抗体、NO供与剤、BCP671等)である。例えば、シロリムスは従来は臓器移植後の拒絶反応を予防するために使用されていた。残念ながら、ステントにポリマーコーティングを使用すると血栓症や他の合併症を誘発する可能性があり、これらの問題を部分的に緩和するためには、一般に設置後少なくとも最初の3カ月間は抗凝血剤が必要である。
【0080】
しかし、本発明の教示に従ってこれらの新型ステントにナノ構造表面を付けると、このようなポリマーコーティングの必要をなくし、従って、これらの合併症のいくつかを最小限にすることができる。(例えばばねコイル、マイクロポケット等により)ナノファイバー間の表面積を増すことが極めて望ましい。従って、より持続的な効果と良好な薬剤放出が得られるように場合によりナノファイバーを組織に埋込む。ナノファイバー表面は表面積を著しく増加し、溶出時間を延ばし、濃度を増加する。薬剤はナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)に直接吸着させてもよいし、上記のような適切な結合化学により(例えばシラン基又は他のリンカー分子を介して共有的に)ナノファイバーに結合してもよい。結合化学はカスタマイズされた薬剤溶出プロフィルを提供すると共に薬剤化合物を経時的に制御放出するように選択することができる。あるいは、アルブミン等の第1の分子をナノファイバー表面に吸着させ、薬剤をアルブミンに吸着させる。
【0081】
薬剤溶出ステントの製造業者はコーティングした金属と動脈壁の間の接触表面積の増加;コーティングの深さ/耐久性の増加と溶出時間の延長;及び新規溶出プロフィルに合わせた異なる薬剤の複数の層という魅力的な可能性といったこの新技術のいくつかの面に大きな関心を寄せている。基本的なステント構造(形状合致性、配置し易さ、分岐利用等)も他の製品との競争から医師を獲得するのに極めて重要である。
【0082】
接触表面積と「用量密度」を増加することができ、全既存ステントに付設できると思われるコーティングを開発することにより、本発明のナノファイバー装置は例えば内側の疎水性表面コーティングによる流動性の改善、薬剤溶出の改善等により、種々の市場戦略を進めることができる。ステントの外面にナノファイバーコーティングを付けることにより、ナノファイバー技術の不在下で得られるよりも厚く耐久性に優れた薬剤コーティングをステントに備えることが可能になると思われる。更に、ナノファイバー技術に固有の広い表面積接触により、付着薬剤に対する組織応答が改善されると思われる。更に、特に小動脈内の流動性を改善するためにステントの内面に疎水性コーティングを付けてもよい。
【0083】
冠動脈ステント以外に、ナノ構造表面は患者の身体の他の部分で使用される他のステント(例えば尿道ステントや胆管ステント)にも有益に適用することができる。これらの体内腔では、ステントのストラットに結晶しないようにすることが望ましい。例えば、胆管系では、縫合糸や永久又は一時的ステント等の外来表面にビリルビン結晶が析出する。このような析出は一般にステントの有効寿命を縮め、治療を成功させるには患者を複数回処置することが必要になる。尿道でも同様の状況が存在する。ステントに尿酸が析出し、「ステントインクラステーション」を生じ、最終的に装置が機能できなくなる。この欠点がなければ、ステントは前立腺肥大症(BPH)等の疾患にも有望な治療法であると思われる。水相はステントを「認識」せず、結晶誘導成分が析出する可能性がなくなるので、超疎水性ナノファイバーコーティングを付けたステントは結晶形成を防ぐと思われる。
XVII)小径血管グラフト
【0084】
現在、直径約6mmを上回る各種血管プロテーゼは腸骨/大腿部を通して胸大動脈から移植した場合に十分に機能している。直径約6mmを下回ると、このようなグラフトは完全な内腔血栓形成後に挿入又はバイパスグラフトとして移植した場合に機能できない。同様に、静脈再建に利用できるグラフト材料もない。多年来、研究者らは下肢から伏在静脈を採取する必要をなくすように、特に冠動脈バイパス処置用の小径血管グラフトを開発しようと努力してきた。一般に、厚さ0.5〜1.0mmの蛋白質層が内腔表面に迅速に堆積して内腔直径が更に減少し、壁在血栓の形成を誘発するため、2〜5mmの小径グラフトは利用できない。ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))やポリウレタン等の従来の非濡れ性表面でも蛋白質の内膜積層を阻むことができない。末梢血管市場は小径グラフトの制約により比較的未開発の巨大市場である。本発明のナノファイバー表面は生物汚染を減らし、疎水性を増すことができる。
【0085】
ナノファイバー表面の超非濡れ性(疎水性)は2つの非常に重要な要因になると考えられる。第1に、内腔表面に血漿蛋白質が堆積しなくなるので、元のグラフト直径が維持される。同じく重要な点として、ナノファイバー表面は理想に近い層流血流を提供することができるので、内腔血栓形成を減らすか又は完全になくすと期待される。これはグラフト血栓形成を防ぎ、及び/又は特に縫合吻合部における乱流に付随するグラフト障害の周知原因である吻合部内膜過形成を最小にするのに非常に重要であると思われる。
【0086】
ナノファイバー表面は以下のグラフト:大腿/膝窩(及び下膝窩)血行再建;冠動脈バイパスグラフト(場合により伏在静脈置換とIMA処置);A−Vシャント(血液透析アクセス);脳(浅側頭動脈/中大脳動脈[STA/MCA]);微小血管再建(例えば手の手術);静脈再建に有益に利用することができる。冠動脈バイパスグラフトが圧倒的に医療商品価値があり、大腿血行再建がこれに続く。所定態様では、グラフト材料に単に本発明のナノファイバーをコーティングし、他の態様はナノファイバーコーティング用に特別に設計された完全に新規な基板を含む。特に胸骨骨折を避けるために最新の最低侵襲性外科処置を使用して移植できる場合には、ナノファイバーA−Cバイパスグラフトが非常に望ましい。特に糖尿病患者集団では、末梢血管再建に大市場が存在する。微小血管、A−Vシャント及び静脈市場は比較的小さいが、総合するとかなりのビジネスになる。血管グラフトビジネスは全く新しい業績レベルになる可能性がある。
【0087】
小血管の現行グラフトには問題がある。現行選択肢としては、例えばDacron繊維、PTTFE(ゴアテックスに類似)等がある。小径と蛋白質層の堆積の問題がある(特に直径6mm未満)。理想的なグラフトは血管が血管構造への侵入を遮断するために湿ったヌードル様であり、膜形成しないことが必要である。従って、血管内の蛋白質蓄積の防止と完全な層流に達することが望ましい。また、低侵襲性の処置であることも望ましい。本発明のナノファイバー装置は場合によりこれらの要件を満足することができ、例えばプレロードすることができ、例えば血管内にステープルで固定することができるので、低侵襲性にすることができる。本発明の各種態様の疎水性は典型的用途で極めて有用である。本発明のグラフトは場合により患者の体内に一時的又は永久的に留置される。他の態様では、ナノファイバーグラフトは更に薬剤コーティング等(例えばヘパリン等)を含む。
【0088】
他の態様は例えばコラーゲンを紡糸した血管グラフトの取扱いの問題に対処する。また、グラフトに縫合した宿主血管は縫合糸との界面にひだが寄り、界面に乱流が生じる可能性がある。界面に血栓が形成され、内膜過形成の結果、吻合部の血管が狭窄する可能性がある。その結果、血管が閉鎖する前に血管の狭窄が生じる可能性がある。これは通常、大血管では問題とならないが、小血管では相当な問題になる場合がある。従って、本発明のナノファイバー表面をこのような界面でグラフトに組込むことができる。場合により除去されるコーティング付き螺旋構造も本発明に含まれる。縫合糸、ステープル等も場合によりナノファイバーで強化される。
【0089】
他の態様としては、例えば血管治療、左室補助装置(LVAD)治療レジメン(例えば血栓症予防)、卵円孔開存(PFO)、心房中隔欠損症(ASD)、左心房動脈瘤の治療、糖尿病性小血管障害の治療(即ち切断の代替治療)、静脈血栓症の治療(例えば長期等)におけるナノファイバー強化が挙げられる。本発明のナノファイバー表面は一般に寿命が長く、フレキシビリティがあり、ステープル/縫合糸を保持する強度を提供することができる。ナノファイバー表面は骨増殖を生じさせるため等のスカフォールドとして例えば創傷治癒のために特定細胞を増殖させるのに使用することができる。例えば、心房中隔欠損症では、右心房と左心房の間に大きな孔があると、酸素濃度の高い血液は心臓の右側に逆流してしまう。その結果、肺高血圧となる可能性がある。心房中隔欠損症は開心術により外科的に治療することが多い。開胸手術に伴う死亡率を考慮すると、永久的に孔に近接するように経皮的に配置することができる装置が望ましい。ナノファイバーを組込んだ装置はカテーテルにより心房系内に配置することができ、欠損を覆うパッチ又は欠損を塞ぐプラグとして機能することができる。
XVIII)時限放出ナノワイヤーボール
【0090】
最近20年間には経口送達標的デリバリードラッグビヒクルを対象とした多くの研究が行われている。特に、制御放出と低毒性は解決しにくい問題であり、これらの研究の大半がまだ研究段階に止まっている。ポリマー、デンドリマー、リポソーム及び抗体は4種のよく研究されている薬剤キャリヤーである。これらの構造はミクロンサイズから数ナノメートルに至る。粒子が大きいと所望組織に粘着する傾向があり、その後、薬剤が溶出するが、構造が小さいと数個しか薬剤分子を輸送せず、接触してから機能するか又は結合が切断されてキャリヤー構造となるときに機能することが多い(デンドリマー)。ナノ構造は小ドット(3〜10nm)からナノワイヤー束(20〜500nm)までのこのサイズ範囲をとることができる。これらの構造は薬剤分子に容易に共役させることができ、水溶液に分散させることができる。
【0091】
薬剤容量が大きく、機能化し易いことは本発明の典型的な利点である。典型的態様は例えば患者用毒性試験や、ナノファイバー蓄積に基づいて選択される。所定態様は腸溶コート錠を含み、例えば酵素又は適正pHの認識により時限放出するように胃内pHに依存することができる。他の態様は例えば超音波造影剤等として空気充填ナノファイバーボールを含む。RES(網膜内皮系)により吸収されないPEG化リポソームも含む。
XIX)外科用針
【0092】
本発明の所定態様はナノファイバーをコーティングした外科用針を含む。角針は鋸歯付きのほうがよい。針を組織に通す際に、見掛け鋭角度は通しにくさに基づく(鈍角度に相関)。このような針の表面に蛋白質が付着すると見掛け鈍角になる。従って、蛋白質付着を防ぎ、鈍角度を小さくする(例えばナノファイバーによる)コーティングは針の「鋭角度」よりも重要であると思われる。このような概念は外科用メス等にも当てはまる。
XX)創傷包帯
【0093】
創傷包帯は外傷、カテーテルの皮膚挿入部位及び手術後用途に広く使用されている。これは競争の激しい分野であり、過剰のOTC及び医療用備品が出回っている。感染が最小限であること、通気性、接着性、撥水性、装着し易さ、外し易さはいずれも医師、看護士及び患者が製品を選択する際の基準となる重要な特徴である。これらの特徴はいずれも個別の創傷包帯には認められるが、「オールインワン」パッケージには認められない。片面が弾性、通気性、疎水性、静菌性であると共に裏面が接着性、静菌性である包帯が得られるならば、医療分野の革新となるであろう。本発明のナノファイバー表面は場合によりこのような特徴の多く又は全てを提供することができる。この包帯は医療市場とOTC市場に参入することができよう。
【0094】
ナノワイヤーコーティングの特徴の組合せにより、患者はシャワー又は入浴することができ、感染を避け、治癒すると共に、苦痛を伴う包帯交換の必要がなくなる。各種態様は静菌性包帯及び/又は殺菌性包帯を含むことができる。各種態様は酸化銀及び/又は酸化亜鉛及び/又は酸化チタンを含むことができる。このような包帯は特に例えば火傷被害者等に使用することが考えられる。
【0095】
本発明はナノファイバー増大表面積基板と(例えば医療装置/用途における)その使用に関する多数の各種態様を含む。本明細書と特許請求の範囲を検討すると明らかなように、このような増大表面積をもつ基板は広範な医療用途で有益なユニークで改善された側面をもつ。当然のことながら、本発明の増大表面積は「ナノファイバー増大表面積」又は「NFS」と言う場合があり、あるいは状況によっては「ナノワイヤー増大表面積」又は「NWS」と言う場合もある。
【0096】
本発明の態様の共通の要素は場合により1種以上の部分で機能化されたナノファイバー表面の特殊な形態(本発明では一般に酸化ケイ素ナノワイヤーであるが、他の組成及び形態も含む)である。
XXI)腹部(又は胸部)大動脈瘤(AAA)医療処置
【0097】
ナノ構造表面増大コーティングに関連して本明細書に記載する組成物、装置、システム及び方法は例えば胸部又は腹部大動脈瘤の修復中にプロテーゼの機能と配置を装置において補助するために使用することができる。
【0098】
大動脈瘤は一般に身体の主要臓器に血液を送る心臓からの大動脈である胸部又は腹部大動脈の異常拡張、伸長又は肥大である。胸部及び腹部大動脈瘤とは夫々上部の弓状部分と下部の腹部部分の大動脈を意味する。動脈瘤の正確な原因は不明であるが、アテローム性動脈硬化症や高血圧の危険がある。共通の合併症は動脈瘤が破れて大量出血する医学的緊急事態である大動脈瘤破裂である。動脈の内壁が裂けて血液が動脈壁内に漏れると、大動脈解離が起こる。動脈瘤解離により破裂の危険が更に増す。米国だけで60歳以上の約5〜7%に大動脈瘤が発生している。動脈瘤破裂による年間死亡者は15,000人を上回り、米国における死亡原因の13位に位置する。
【0099】
一般に、胸部又は腹部大動脈瘤は約5cmに達すると、外科的インターベンションが必要である。胸部又は腹部大動脈瘤を術中処置により修復するためには、開胸法の場合には正中もしくは後腹膜切開、又は最低侵襲性エンドグラフト法では経皮的進入により胸腔に進入し、自家又は人工グラフトを使用して血流と血圧から動脈瘤を分離し、動脈瘤拡大を防ぐと共に破裂の危険を最小限にする。一般に、置換の第1の選択は一般に自家伏在静脈(ASV)であるが、移植に利用できない場合には、人工グラフトを使用してもよい。一般に、人工グラフトは大動脈瘤修復等の大径血管に使用されるが、最近では中径や小径血管修復にも適した方法の開発が研究されている。
【0100】
大動脈プロテーゼが正確に配置されないと動脈瘤が十分に密閉されず、グラフトの周囲の血流により動脈瘤が更に拡大したり、及び/又は動脈により供給される側副血管(例えば腎動脈)が偶発的に遮断される可能性がある。大動脈プロテーゼの位置がずれる可能性もある。今日まで、以下に記載するように、少なくとも2種類のステントグラフトが危険率の高さにより市場から撤収され、その他も失敗が続いている。接着性を増すようにグラフトの材料を改善し、漏出及び/又はプロテーゼ装置の配置不良もしくはずれ等の問題に起因する従来装置の欠陥を最小限にするか又は解消することにより、大動脈瘤修復の結果を改善する必要がある。
【0101】
本明細書に開示する方法及び組成物を使用すると、大動脈プロテーゼを動脈瘤の部位に正しく配置した場合に、組織表面に固着し、従来装置よりも長期間にわたってその開存性を維持するように、開胸法と最低侵襲法の両者の血管内修復処置を実施することができる。グラフトの表面にナノファイバーを直接成長させるか、又は別個に成長させて回収したナノファイバーをグラフトにコーティングし、グラフトに乾燥接着性表面を付与することにより、ナノファイバー(又はナノテトラポッド、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノドット等の他のナノ構造材料)をグラフトプロテーゼの外(及び/又は内)径にコーティングする。本明細書に開示する本発明の上記方法は動脈瘤又は他の疾患もしくは損傷症状をもつ患者の大動脈領域内にプロテーゼを配置する際に例えば位置と方向に関して確度を増すことができる。
【0102】
本発明の技術は開胸法と最低侵襲法の両者の胸部又は腹部大動脈瘤処置(又は大動脈もしくは他の身体領域における他の任意動脈瘤処置)を容易にするために使用することができるが、以下の例証では開胸法よりも患者に外傷の少ない最低侵襲法による血管内修復処置のみについて記載する。しかし、当業者に自明の通り、本明細書に開示する技術は開胸法にも容易に適用することができ、その場合には、例えば部分もしくは正中胸骨切開、小開胸、又は後腹膜切開により胸腔に進入する。
【0103】
図3A〜Bを参照し、本発明の方法及び組成物を使用して閉胸下の胸部又は腹部大動脈瘤修復処置中にプロテーゼグラフトを配置するためのシステムを模式的に例証する。1態様では、患者を麻酔し、一般に従来通りに外科処置の準備をする。次に、ステントグラフト配置メカニズムとステントグラフト372(図3B)を動脈瘤370の部位の腹部大動脈354(又は胸部大動脈356)内に配置する。大動脈瘤修復に使用することができる血管内装置としては例えばバルーン拡張型又は自己拡張型装置が挙げられる。バルーン拡張型ステントデザインは例えばその開示内容を参考資料として本明細書に組込むParodiら,Ann.Vase.Surg.1991;5:491−499及びWhiteら,J.Endovasc.Surg.1994;1:16−24に記載されている。以下の装置は腹部大動脈用としてFDA認可を受けており、本発明の実施に使用することができるシステムの例である。
・(1)Ancure(登録商標)Endograft(登録商標)System(Guidant Corporation)。1999年に認可されたこのシステムでは、エンドグラフトを大動脈内に配置し、バルーンを膨らまして拡げる。グラフトは無縫合フックを使用して上端と下端を血管壁に固定する。2001年3月16日にGuidantはこのシステムの生産を中止し、全在庫のリコールを発表した。同社は多数の装置故障と有害イベント(装置の配置の問題に伴う重症血管損傷を含む)の報告を怠ったことをFDAに報告した。FDAに正しく報告されていない製造変更もあった。FDAはこの装置とAneuRx装置に関して「公衆衛生通知:腹部大動脈瘤の治療用血管内グラフトの問題(Public Health Notification:Problems with Endovascular Grafts for Treatment of Abdominal Aortic Aneurysm(AAA))」を発表した。
・(2)Ancure(登録商標)Aortoiliac System(Guidant Corporation)。この新バージョンは2002年に認可され、大動脈回腸動脈用Ancure(登録商標)グラフトでは上下アタッチメントシステムに縫合ループを設けたが、それ以外は先のGuidant Endovascular Grafting Systemと同じである。この装置は解剖学的に単管又は二股エンドグラフト装置の使用に適さない患者での使用を目的としている。
・(3)AneuRx(登録商標)Stent Graft System(Medtronic AVE)。AneuRxシステムは1999に認可され、ポリエステル織布内面と自己拡張型Nitinol外骨格から構成される。拡張中のステントの径方向力により外骨格が動脈瘤壁に埋込まれ、アタッチメントメカニズムを構成する。この装置も上記FDA公衆衛生通知の対象となった。2003年12月にFDAは上市前調査からの長期追跡データの分析に基づき、AneuRx(登録商標)Stent Graft Systemに伴う死亡危険に関する更新情報を発表した。調査結果に基づき、FDAは「妥当なリスク便益プロフィルを満たし、使用上の注意に従って治療できる患者のみに」AneuRx(登録商標)Stent Graftを使用するように通告した。
・(4)EXCLUDER(登録商標)Bifurcated Endoprosthesis(W.L.Gore and Associates,Inc.)。この装置は2002年に認可され、大動脈の内側で大動脈及び腸骨動脈の直径まで自己拡張し、動脈瘤を密閉し、動脈壁を再び覆う。
・(5)Zenith(登録商標)AAA Endovascular Graft and H&L−B One−Shot(登録商標)Introduction System(Cook,Inc.)。この装置は2003年に認可され、自己拡張型であり、突起を介して血管壁に付着する。
【0104】
これらの装置はいずれも動脈瘤を血流循環から有効に「排除」した後に正常血流を復元するように動脈瘤の両端間に配置される。上記システムは一般にエンドグラフトプロテーゼ372(図3B)と対応するデリバリーカテーテル330から構成される。プロテーゼは動脈瘤370を血流と血圧から分離して動脈瘤拡大を防ぐと共に破裂の危険を最小限にする血管グラフトである。デリバリーカテーテル330は開腹又は経皮的方法(例えばSeldinger法)等の公知技術を使用して鼠蹊部の大腿又は腸骨動脈350,352に皮下挿入されるワイヤー輸送システムである。デリバリーカテーテル330は画像(例えば蛍光透視、心エコー、MRI、又はCTスキャン)案内下に大動脈354内を動脈瘤370の部位まで進行し、プレロードされたプロテーゼを大動脈に輸送するように設計されている。圧縮されたプロテーゼは特殊なデリバリーシース内にプレロードされる。所定プロテーゼはデリバリーが主プロテーゼと1又は2個の「ドッキングリム」から構成されるようにモジュラーコンポーネントから構成される。デリバリーシースの寸法が大きいため、一方又は両方の鼠蹊部を外科的に切開して血管に進入する必要がある。動脈系に進入後、蛍光透視法により腸骨動脈内を動脈瘤部位までプロテーゼを案内した後、規格に準拠した低圧バルーンを使用してプロテーゼを配置する。
【0105】
人工グラフトとしては例えば処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維が挙げられる。Dacron(登録商標)やTeflon(登録商標)(即ち発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE))等の合成ポリマーが最も一般的に使用されている合成グラフトである。例えば、その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む“Tissue Engineering of Vascular Prosthetic Grafts,”P.P.Zilla,H.P.Griesler,and P.Zilla,Landes Bioscience発行(May 1999)参照。ポリ(α−ヒドロキシエステル)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン等の他の合成材料や、チロシン由来ポリカーボネート及びポリアクリレート、ラクチド系ポリデプシペプチドポリマー、ポリ(L−乳酸−コ−L−アスパラギン酸)、及びラクチド系ポリ(エチレングリコール)等の合成材料も使用することができる。ステンレス鋼、チタン、又はNitinol金属メッシュ等の金属や、ガラス繊維(例えばニットガラス又はスパンガラス)又はセラミック等他の合金も合成グラフト材料として使用することができる。本発明の本態様は例えば図1に示すようにその使用場所である通路とグラフトの相互作用を強化するためにナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー又はナノワイヤー)を更に使用する。一般に、このようなナノ構造表面は対象通路内の装置の開存性を強化するように装置の接着性、摩擦、バイオインテグレーション又は他の特性を改善するために使用される。このような相互作用の強化は一般に通路の表面(例えば内壁又は外壁表面)と相互作用してその結合又は付着を助長するナノ構造表面により提供される。
【0106】
上述したように、ナノ構造コンポーネントは用途に応じてナノファイバーや他のナノ構造コンポーネント(例えばナノワイヤー、ナノロッド、ナノテトラポッド、ナノドット等)等の種々の形態及び形状をとることができ、接着性等のその特性を改善するために合成グラフト内又は合成グラフト上に組込まれる。ナノファイバーは例えばグラフトの外面及び/又は内面にナノファイバーを直接成長させるか、又はナノファイバーをグラフト表面に別個に共有的に(又は他の方法で)結合することにより、合成グラフトの外面又は内面に付着させることができる。更に、大動脈内における剛性と強度の改善等の特性を強化するために、ナノファイバー又は他のナノ構造をグラフト材料自体に埋込むこともできる。ナノファイバーの形状と寸法及びグラフト表面上のその密度はグラフトの接着性を所望レベルにするように変えることができる。
【0107】
本発明の人工グラフトはその生体有用性を更に強化するために(管状グラフトの場合には内面及び/又は外面に)他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。グラフトに設けた上記ナノファイバーコーティングはグラフトがこれらのコーティングを保持し易くする高い表面積対体積比を提供する。例えば、グラフトの血栓形成性を最小限にするように他の生体適合性材料を人工グラフトにコーティングすることができる。自家血管、ポリマー、多糖類等に存在する内皮細胞ライニング等のコーティングは内皮細胞増殖を増すために非血栓形成表面を提供することができる。グラフトは細胞接着、成長、及び増殖を増加するように更に1種以上の蛋白質又は成長因子(例えばVEGF、FGF−2及び他のHBGF(ヘパリン結合性成長因子))で修飾することができる。
【0108】
コーティングを使用する場合には、グラフトのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
XXII)脳及び他の身体臓器における血管閉塞
【0109】
ナノ構造表面コーティングに関連して本明細書に記載する組成物、装置、システム及び方法は更に血管閉塞により有効に治療される循環系及び他の身体臓器の各種疾患及び病態の治療に使用することができる。例えば、ナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)で処理された血管内コイル、ビーズ、合成グラフト又は他の液体塞栓剤を使用して関連血管を遮断することにより治療することができる多数の疾患の例としては、動静脈(AV)瘻孔、AV奇形、動脈瘤及び偽性動脈瘤、動脈管開存症、卵円孔開存、胃腸出血、腎及び骨盤出血、並びに腫瘍が挙げられる。
【0110】
血管内に各種物質(例えばイソブチルシアノアクリレート(IBCA)等の液体接着剤)を配置する方法は血栓(血塊)の形成を促進し、血管を完全に閉塞する方法の1つである。血管を閉塞するために閉塞コイルも使用されてきた。コイルの目的はコイルの周囲に迅速な血栓形成を促進することである。
【0111】
塞栓コイルで治療することができる多くの疾患のうちでは、脳動脈瘤が特に重要である。破裂したものとしていないものを含めた脳動脈瘤は場合により、動脈瘤を直接可視化した後に外科的にクリップすることにより動脈瘤への血流を遮断する外科的アプローチによって治療することができる。動脈瘤が血流から排除されると、出血の危険はなくなる。脳動脈瘤治療の別の低侵襲性アプローチは血管内アプローチであり、大腿動脈等の末梢挿入点から脳血管系にカテーテルを導入し、体内の動脈瘤に進行させる。その後、カテーテルを使用してバルーンやコイル等の塞栓装置を動脈瘤の部位に送り、動脈瘤への血流を遮断する。しかし、塞栓コイルは時間と共に収縮し、動脈瘤が再び拡大し、破裂の危険があるため、塞栓コイルの使用には問題がある。
【0112】
本発明の本態様は例えば、脳又は動脈血管構造の他の場所における側壁動脈瘤を修復するために内腔内パッチを使用する。特に脳側壁動脈瘤の治療に関して本方法を説明するが、当然のことながら、本発明のシステム及び方法はその内側にコイルや塞栓パッチ材料等の塞栓装置を配置することができる各種血管及び身体臓器における他の各種塞栓療法でも使用することができる。
【0113】
本明細書に開示するシステム及び方法は図4A〜Cに模式的に示すように、動脈瘤部位等の患者の脳血管系内で塞栓装置及び/又は材料を正確に配置し易くするために使用することができる。例えば金属メッシュ、合金、処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維又は他のポリマー材料等の任意の適切な生体適合性材料のパッチの外面(及び/又は内面)の全部又は選択部分にナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー、ナノワイヤー、ナノテトラポッド、ナノドット等)をコーティングし、接着性にする。ナノファイバーの寸法、形状及び密度は上記態様に関して上述したようにパッチの接着性を改変及び制御するように変化させることができる。例えばナノファイバーはパッチの外面(及び/又は内面)に直接成長させてもよいし、別個に成長させて回収後にパッチ材料に付設してもよい。ナノファイバーをパッチ材料自体に組込み、その剛性を更に強化してもよい。
【0114】
本発明の人工パッチはその生体有用性を更に強化するために他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。パッチに設けた上記ナノファイバーコーティングはパッチがこれらのコーティングを保持し易くする。例えば、パッチの血栓形成性を最小限にするように他の生体適合性材料をパッチにコーティングすることができる。自家血管、ポリマー、多糖類等に存在する内皮細胞ライニング等のコーティングは内皮細胞増殖を増すために非血栓形成表面を提供することができる。パッチは細胞接着、成長、及び増殖を増加するように更に1種以上の蛋白質又は成長因子(例えばVEGF、FGF−2及び他のHBGF(ヘパリン結合性成長因子))で修飾することができる。
【0115】
コーティングはパッチのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
【0116】
内腔パッチ490(図4C)はその開示内容を参考資料として本明細書に組込む米国特許第4,739,768号及び第4,884,575号に示されているような規格に準拠した低圧バルーンカテーテルに搭載されている。これらの方法は体内の動脈瘤に接近するために末梢挿入点(例えば大腿動脈)から脳血管系に導入されたカテーテルを使用する。カテーテルはパッチ490を動脈瘤480の部位に送り、動脈瘤への血流を遮断するために使用することができる。塞栓剤送達カテーテル440は側壁動脈瘤又は他の病態をもつ脳の血管に導入される。患部としては、図4Aに示すような動脈瘤480、又は瘻孔、AV奇形、又は病変部もしくはその近傍に配置すると異常領域への血流が低下又は停止する他の疾患が挙げられる。これを実施するために、図4A〜Cは動脈瘤に流入する血液を遮断するためにデリバリーカテーテル440により動脈瘤頸部に塞栓装置(この場合はパッチ490)を配置する1使用例を示す。カテーテル440は一般に大腿動脈等の末梢挿入点から患者の脳血管系に導入され、大動脈456と頸(又は椎骨)動脈467の1本を通して蛍光透視法により脳に案内される。挿入カテーテル440とパッチが血管系を通して脳内の動脈瘤480部位に送られると、パッチはX線透視案内下に動脈瘤頸部492と整列される。パッチはパッチを血管壁にプレスフィットするようにバルーンカテーテル440を膨らませることにより血管壁に押し付けられる。
【0117】
更に別の態様では、例えば図4Dに示すCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標)等の動脈瘤コイル又はビーズ等の塞栓装置上にナノ構造(例えばナノファイバー)を成長させ、形成中の粘着性血栓からの親水性天然血小板により塞栓装置の血栓形成性を強化することができる。
XXIII)無縫合グラフトプロテーゼ
【0118】
上記に概説した本発明の方法、装置及びシステムは、血管、管路、内腔又は他の管状臓器の吻合の実施、例えば縫合を使用せずにある血管を別の血管につなぐ無縫合吻合法に使用することもできる。
【0119】
動脈バイパス手術は閉塞性血管疾患の一般的な治療方法である。このような手術は一般に閉塞した血管を切開して露出させた後にグラフト、例えば哺乳動物動脈、伏在静脈、又は合成グラフト(以下、「バイパスグラフト」と総称する)を閉塞の(下流の)遠位の閉塞血管(以下、「天然血管」と言う)に結合する。バイパスグラフトの上流ないし近端は閉塞の上流の適切な血管(例えば大動脈)に固定し、遮断部の周囲に血流を迂回させる。頸動脈等の他の閉塞又は疾患血管も同様に治療することができる。更に、透析患者の動脈と静脈の間にグラフトを配置するためにも同様の方法を実施する。
【0120】
吻合を形成するために利用可能な現行方法としては、血管を手で縫合する方法がある。吻合部の縫合は時間がかかり、リークフリーシールを得られないことが多く、閉塞部に血流乱流部位を生じる可能性がある。従って、血管吻合形成の問題を減らし、グラフト血管と動脈の確実な吻合を行う迅速な方法を提供することが望ましい。
【0121】
現在利用可能な1つの方法はステープル装置を使用する。これらの装置は血管吻合用に応用しにくい。血管の側壁に誤って穴を明けることなしにこれらの装置を血管内で操作するのは困難なことが多い。操作しにくいことに加え、これらの装置は確実なリークフリーシールを得られないことが多い。
【0122】
有効な無縫合吻合技術を開発しようとする他の無数の試みは例えば米国特許第3,221,746号、3,357,432号、3,648,295号、3,683,926号及び4,267,842号に記載されている。これらはいずれも吻合しようとする血管の内側に配置される体内管状装置に関する。血管もしくは他の導管、管路、内腔又は他の管状臓器の吻合を実施するための他の種々の装置及び使用方法も開示されている。このような装置及び方法の例は例えばその開示内容を参考資料として本明細書に組込む米国特許第3,221,746号、3,357,432号、3,648,295号、4,366,819号、4,470,415号、4,553,542号、5,591,226号、5,586,987号、5,591,226号、及び6,402,767号に記載されている。
【0123】
本発明の本態様は血管吻合を実施するための従来の装置及び方法を改善するものである。本発明はある血管を別の血管の流路に配置して両者の流量結合を増加し易くする。本発明は好ましくは縫合を使用せずに血管、卵管、腸管、尿管、輸精管及び神経外鞘等の解剖学的構造を吻合する人工グラフト管を提供する。新規管は(例えば図5Aに示すような)単純な管又は例えば図5Bに示すようなTチューブ、又は適切な他の任意管形状もしくは構造の人工グラフト管とすることができる。あるいは、新規管は人工管と天然管の組み合わせ(例えば人工管の内側に実質的に同心円状に配置した天然管)でもよい。
【0124】
人工管は任意の適切な生体適合性材料から作製することができ、このような材料としては例えば弾性半多孔質メッシュ(例えばNitinolメッシュ、ステンレス鋼メッシュ、チタンメッシュ等)、処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維又は他のポリマー材料(例えばDacron(登録商標)、PTFE、ポリイミドメッシュ)、セラミック、ガラス繊維等が挙げられる。
【0125】
本発明の本態様は例えば図1に示すようにその使用場所である通路と管の相互作用を強化するためにナノ構造コンポーネントを更に使用する。一般に、このようなナノ構造表面は対象通路内の装置の開存性を強化するように装置の接着性、摩擦、バイオインテグレーション又は他の特性を改善するために使用される。このような相互作用の強化は一般に通路の表面(例えば内壁又は外壁表面)と相互作用してその結合又は付着を助長するナノ構造表面により提供される。
【0126】
無縫合吻合用新規管はその外面(及び/又は内面)の全部又は選択部分にナノファイバーや他のナノ構造コンポーネント(例えばナノワイヤー、ナノテトラポッド、ナノドット等)をコーティングして接着性にする。ナノファイバーを管材料自体に組込み、剛性と強度を強化した複合材料を形成してもよい。ナノファイバーの寸法、形状及び密度は上記態様に関して上述したように管の接着性を改変及び制御するように変化させることができる。ナノファイバーは管の外面(及び/又は内面)に直接成長させてもよいし、別個に成長させて回収後に管材料に付設してもよい。
【0127】
本発明の人工グラフトはその生体有用性を更に強化するために(管状グラフトの場合には内面及び/又は外面に)他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。グラフトに設けた上記ナノファイバーコーティングはグラフトがこれらのコーティングを保持し易くする。例えば、管の血栓形成性を最小限にするように他の生体適合性材料をグラフト管にコーティングすることができる。自家血管、ポリマー、多糖類等に存在する内皮細胞ライニング等のコーティングは内皮細胞増殖を増すために非血栓形成表面を提供することができる。ナノファイバー又は管材料は細胞接着、成長、及び増殖を増加するように更に1種以上の蛋白質又は成長因子(例えばVEGF、FGF−2及び他のHBGF(ヘパリン結合性成長因子))で修飾することができる。コーティングは管のナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
【0128】
管の内径及び/又は外径に設けたナノファイバーは天然宿主血管の内径(又は外径)に緊密にプレスフィットできるように又は他の合成グラフト血管を接続できるように実質的な乾燥接着性をもつ。
【0129】
人工管の代表的な1形態としては第1の高弾性材料(例えばNitinol)の管フレームを第2の高弾性材料(例えばシリコンラバー)で被覆してフレームのアパーチャーを実質的に充填するようにしたものが挙げられる。この組み合わせにより、天然動脈等の天然身体臓器管と同様に膨張性の人工グラフトが作製される。本発明の人工グラフトには(上記)弾性と膨張性があり、小径管内に配置することができ(その後、自動的にその最大径に戻る)、モジュラー構成にすることができ、天然身体臓器管をその内側に同心円状に受容することができ、内皮層の成長に対応することができ、MRI法に適合可能であり、蛍光透視法により目視可能である等の利点もある。
【0130】
本発明の第1の方法は第1の血管502と第2の血管504を端端吻合(例えば図5A)で結合する方法であり、一般にナノファイバーコーティングを付けた上記のような人工管状グラフト506をバイパスグラフト血管(天然グラフト血管でも合成グラフト血管でもよい)と接続しようとする天然血管の開口に挿入する段階と、好ましくは(例えばバルーンカテーテルの使用により)管状グラフトの少なくとも一部を径方向に拡張し、管状グラフトを血管の内壁に気密にプレスフィットして固定する段階を含む。管状グラフト部材は管状部材を径方向に拡張した後に管状部材をその予め形成された形状に実質的に維持するために十分に剛性であることが好ましい。管状グラフト部材は(例えば管用形状記憶合金(例えばNitinol)の使用により)予め形成された形状まで径方向に自己拡張可能であるため、バルーンカテーテル等の挿入装置を使用せずに気密結合するように血管内でプレスフィット形状をとることができる。本発明の別の側面では、管状部材は端側吻合用Tチューブ508の形態であり、図5Bに示すように天然血管512の側壁の開口511にバイパスグラフト血管510を固定する。以上、管状グラフトについて記載したが、本発明の所定側面は所望用途に応じて他のグラフト法や例えば円形、楕円形、多角形(例えば正方形、長方形、五角形、六角形、八角形、台形、菱形等)等のほぼ任意の横断面形状をもつグラフトにも同様に適用可能である。更に、当然のことながら、グラフトの本体構造の横断面形状は例えばグラフトを作製するために使用する方法、及び/又はその所望用途等の多数の因子に応じて、グラフトを挿入する血管の横断面形状と同一でも異なっていてもよい。
XXIV)整形外科用インプラント
【0131】
ナノ構造(例えばナノワイヤー、ナノロッド、ナノテトラポッド、ナノドット及び他の類似構造)を整形外科用インプラント中又はインプラント上に組込むと、生体適合性、感染抵抗、骨統合、望ましくない細胞増殖の防止、並びに骨、靭帯、筋肉等の整形外科的組織内及びその周囲で使用する場合のインプラントの耐久性を改善することができる。ナノファイバー増大表面積の恩恵を受けることができる整形外科用インプラントの例としては限定されないが、人工膝関節、人工股関節、軟骨を置換又は補強するものを含む足関節、肘関節、手関節、及び肩関節インプラント、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、及び尺骨の骨折修復及び外部固定用等の長骨インプラント、固定装置を含む脊髄インプラント、頭蓋骨固定装置を含む顎顔面インプラント、人工骨置換、歯科用インプラント、ポリマー、樹脂、金属、合金、プラスチック及びその組合せから構成される整形外科用セメント及び接着剤、このようなインプラントで使用される釘、ネジ、プレート、固定装置、ワイヤー及びピン等、並びに当業者に公知の他の整形外科用インプラント構造が挙げられる。例えば図6Aに示すように、股関節ステム612の形態の整形外科用インプラント610は基板611と多孔質層614を含む。多孔質層614はビーズ、繊維、ワイヤーメッシュ並びに多孔質層614を形成されるために使用される他の公知材料及び形状を含むことができる。本明細書に記載する任意方法によりナノ構造コンポーネントを基板611に付設し、例えば図1に示すようなナノ構造表面を形成することができる。
【0132】
特に、本発明の本態様はこのような埋込型整形外科用装置が移植部位で接触する組織、関節、軟骨、骨及び他の身体構造と装置の相互作用を強化するようにナノ構造コンポーネントを取付けた装置を提供する。ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)は例えば埋込型装置の外面及び/又は内面にナノファイバーを直接成長させるか、又はナノファイバーを装置表面に別個に共有結合することにより、装置の外面又は内面に付着させることができる。インプラント表面に設けたナノ構造は繊維芽細胞や他の望ましくない細胞に対して骨芽細胞の増殖を促進及び強化することによりインプラント部位における骨増殖反応を強化することができる。骨増殖活性の強化により、時間と共にインプラントの良好な固定が促進され、繊維芽細胞応答による緩みが防止される。更に、整形外科用インプラントに設けたナノ構造表面は、例えば細菌及び他の感染性生物(例えばウイルスや真菌)の増殖を防ぐことにより、インプラント部位の感染を防ぐことができる。ナノファイバーの形状及び寸法とインプラント表面上のその密度は細胞型の変動に応じて変化させることができる。
【0133】
代替又は付加態様として、耐久性と負荷を受ける移植部位に生じる摩耗に対する耐性を強化することにより、微視的分解とその結果として関節に破片がたまるのを防ぐために、ナノファイバー又は他のナノ構造をインプラント材料に埋込むこともできる。
【0134】
本発明のインプラントはその生体有用性を更に強化するために内面及び/又は外面に他の材料をコーティングしてもよい。適切なコーティングの例は薬剤入りコーティング、薬剤溶出コーティング、薬剤又は他の化合物、親水性コーティング、スムージングコーティング、コラーゲンコーティング、ヒト細胞播種用コーティング等である。例えば、整形外科用インプラントに設けたナノ構造表面は薬剤又は他の化合物を移植部位に送達することができる。例えば溶出、結合、溶解、及び/又はナノワイヤー自体の溶解によりナノワイヤーから送達される薬剤は感染を防止し、骨成長を増進し、瘢痕組織、過増殖を防ぎ、インプラントの拒絶を防止することができる。インプラントに設けた上記ナノファイバーコーティングはインプラントがこれらのコーティングを保持し易くする広い表面積を提供することができる。コーティングはインプラントのナノ構造表面に直接吸着させることができる。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、例えばシラン基を介してコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよく、このような基としては例えば置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、及び/又は同等物が挙げられる。
XXV)バイオエンジニアド神経スカフォールド
【0135】
外傷、他の外科処置、及び怪我では末梢神経と中枢神経の損傷が生じる。一般に、損傷した神経の間隙を埋め、神経再生の足場を提供するためには患者自身の神経片(例えば自家移植片)が使用されている。これらの自家移植片の効果は50%未満である。一般には神経増殖を強化するための化合物を含浸させた人工基質上に新しい末梢神経を増殖させる試みが行われてきた。特に脊髄損傷と脳損傷については、間隙を埋めて神経修復を誘導するための新規マイクロ装置が有用であると思われる。
【0136】
本発明は神経細胞増殖を刺激及び促進するために、スカフォールド内及び/又はスカフォールド上に組込んだナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)の表面積が大きいことにより実質的に三次元となり得るナノスケールバイオエンジニアドスカフォールドを想定する。更に、三次元形状のナノ構造は神経再生を促進できると思われる。バイオエンジニアドスカフォールドはその上及び/又はその中にナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)を組込むベースメンブレン又はマトリックスを含むことができる。ベースメンブレン又はマトリックスは天然もしくは合成ポリマー(導電性ポリマーを含む)、金属、合金、セラミック又はグラスファイバー、シリコーン等の各種材料から作製することができる。本発明で有用であり得る方法として、例えば導電性ポリマーから適切なメンブレン又はマトリックスを製造するための有用な方法はその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許第6,095,148号及び6,696,575号に開示されている。
【0137】
スカフォールド材料はポリマーフィルム又はポリマービーズ等の適切な支持体にブレンド又はコーティングすることができる。その開示内容を参考資料として本明細書に組込むLangerら,J.Ped.Surg.23(1),3−9(1988)、WO88/03785及びEPA 88900726.6(Massachusetts Institute of Technology)に記載されているように、新しい組織を形成するための移植用マトリックスは柔軟で非毒性の血管浸潤用多孔質鋳型とすべきである。細孔は細胞又は患者を損傷せずに血管浸潤と細胞播種を可能にするように選択すべきである。細孔は一般に約100〜300ミクロンの連続細孔である。マトリックスは表面積を最大にし、細胞への栄養と成長因子の十分な拡散を可能にするような形状とすべきである。代表的な1態様では、マトリックスはポリ酸無水物、ポリオルトエステル、又はポリヒドロキシ酸(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸)、及びそのコポリマー又はブレンド等の生体吸収性又は生分解性合成ポリマーから形成される。非分解性材料を使用してマトリックスを形成することもできる。適切な材料の例としてはエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール誘導体、テフロン、ナイロン、ポリメタクリレート及びシリコンポリマーが挙げられる。
【0138】
あるいは、限定されないが、上記及び下記に記載するような有機及び無機ナノ結晶等のナノ構造(例えばナノワイヤー、ナノドット、ナノテトラポッド及びナノスケールの他の形状)のみからスカフォールドを作製することもできる。薬剤、細胞(例えばシュワン細胞等の神経細胞、幹細胞又は胚性細胞)、繊維芽細胞、又は他の特定化合物(例えば神経増殖因子(NGF)、細胞播種用化合物、神経栄養増殖因子(又は前記因子を産生する遺伝子組換え細胞)、VEGF、ラミニン又は他の同等化合物)が移植時に軸索伸長及び機能的神経活動を促進するようにこれらの化合物をバイオエンジニアドスカフォールドに含浸させるか又は結合することができる。in vivo移植のために神経外植片をin vitroで培養及び再生させてもよい。例えば、一次座骨神経外植片を哺乳動物組織から単離し、例えばグルコース、胎仔ウシ血清(FBS)、ピルビン酸ナトリウム及びNGFを補充した高グルコースDMEMで培養することができる。16日齢ニワトリ胚から座骨神経を単離する方法はY.−W.Hu and C.Mezei,Can.J.Biochem.,49:320(1971)に記載されている。神経細胞の増殖と再生を強化するように培養対象の特定神経細胞に合わせて最適化された血清、代用血清、増殖因子(例えば神経増殖因子)、ホルモン、及び/又は薬剤等の各種組成物を培地で使用することができる。
【0139】
コーティングはスカフォールドのナノ構造表面に直接吸着させることができる。ナノ構造コンポーネントの広い表面積は化合物コーティングをスカフォールドに保持するのに役立つ。あるいは、ナノ構造コンポーネント(例えばナノファイバー)及びこれに付けるコーティング材料と結合を形成することが可能な結合剤をナノ構造表面に加えてもよい。このような場合には、上述したように、例えばシラン基を介して所望化合物を添加したコーティングをナノ構造表面に直接結合してもよいし、リンカー結合基又は結合剤との結合化学(誘導体化)に加わるのに適した他の化学反応基を介して結合してもよい。
【0140】
スカフォールド表面上のナノファイバー(又は他のナノ構造コンポーネント)は場合によりナノファイバー表面をより頑丈にするために低速溶解性生体適合性ポリマー(又は他の)マトリックスに埋込むことができる。ポリマーマトリックスは各ナノファイバーの長さの殆どを保護することができ、末端のみが損傷を受け易い。水溶性ポリマーの作製は多様な方法で実施することができる。例えば、モノマーと酸化剤から主に構成される希水溶液中でポリマー鎖をin situ形成することができる。この場合には、ポリマーは実際に溶液中で形成された後、厚さ約10〜250オングストローム以上、より好ましくは10〜100オングストロームの均一な超薄膜としてナノファイバー表面に自然吸着される。
【0141】
このようなスカフォールドで治療する神経間隙は約5mm〜約50mm、例えば約10〜約30mm、例えば約20mm〜30mmの寸法範囲とすることができる。スカフォールド装置は用途に適合するような各種寸法と形状で作製することができ、ナノ構造は必要に応じて神経電気シグナルを神経線維に伝達するために導電性を強化するようにドーピングすることができる。スカフォールド装置は損傷細胞又は組織(例えば神経系組織)を修復又は置換するための治療を必要とする患者にin vivo移植することができる。移植に使用することができる材料としては、縫合糸、チューブ、シート、接着防止装置(一般にフィルム、in situ重合される液体として塗布されるポリマーコーティング、又は他の物理的バリヤー)、及び創傷治癒物質(治癒すべき創傷に応じてフィルムやコーティングから支持構造まで多様)が挙げられる。
【0142】
治療効力を増すために、蛋白質、抗体、神経増殖因子、ホルモン、及び接着分子等の神経組織治癒を更に促進する組成物をスカフォールドと併用し、上述したように、場合によりナノファイバー及び/又はスカフォールド支持材料に共有結合することができる。当業者は過度の実験なしにこれらの材料と必要な条件の正確な使用方法を容易に決定することができる。スカフォールドは処置すべき細胞に隣接するように移植してもよいし、処置すべき細胞を播種してもよい。スカフォールド装置は場合により電圧又は電流源に電気的に接続される。電気接続は例えばスカフォールドと接触するように挿入された針、又は適当な電力源に外部接続することが可能なナノ構造表面もしくはスカフォールドメンブレンに付着した電極とすることができる。細胞を損傷せずに細胞に所望効果を誘導する範囲の電圧又は電流をナノ構造及び/又はスカフォールドメンブレンに印加することができる。
XXVI)ナノファイバー表面基板の特徴
【0143】
上述したように、表面積の増加は多くの分野(例えばアッセイ用基板又は分離用カラムマトリックス)で追求されている特性である。例えば、トライボロジー等の分野や分離と吸着を伴う分野は表面積を最大にすることに深い関係がある。本発明は表面積を増加ないし増大(即ちナノファイバーをもたない構造又は表面に比較して増加ないし増大)した表面と応用を提案する。
【0144】
本発明の「ナノファイバー増大表面積」は基板の所定「フットプリント」内の表面積がナノファイバーをもたない同一フットプリント内の表面積に比較して増加するように基板に付着した複数のナノファイバー(例えばナノワイヤー、ナノチューブ等)を含む基板に対応する。本発明の典型的態様では、ナノファイバー(及び多くの場合には基板)は酸化ケイ素から構成される。当然のことながら、このような組成は本発明の所定態様では多数の利点がある。また、本発明の多くの好ましい態様では、複数のナノファイバーの1本以上を1個以上の部分で機能化する。下記参照。しかし、同様に当然のことながら、本発明は特に指定しない限り、ナノファイバー又は基板の組成により特に限定されない。
【0145】
本発明の各種態様は多数の異なる用途に適応可能であり、有用である。例えば、以下に詳述するように、例えば結合用途(例えばマイクロアレー等)、分離(例えば、(例えば場合によりバイオフィルム等の形成を阻止する細胞培養及び/又は医療用インプラントのベースとしての)バイオスカフォールド)、及び制御放出マトリックス等で本発明の各種変形を使用することができる。本明細書では他の用途及び態様も検討する。
【0146】
本発明の種々の態様の他の有益な用途について以下に詳細に検討する。例えば、本発明のナノファイバー表面の独特の形態は(in vitro及びin vivo両者の)細胞培養増殖用スカフォールド等の多数の生体医療用途で利用することができる。in vivo用途としては例えば骨形成の補助等が挙げられる。更に、所定の態様の表面形態はバイオフィルム形成及び/又は細菌/微生物定着を妨げる表面を提供する。本発明の他の可能な生体医療用途としては例えば薬剤の制御放出マトリックス等が挙げられる。上記参照。
【0147】
当業者に自明の通り、本発明の多くの側面は場合により変更可能である(例えばナノファイバー上の表面化学種、ナノファイバーの任意末端又は基板表面上の表面化学種等)。従って、本発明の各種変形等の特定例証は本発明を限定するものではない。また、当然のことながら、以下に詳述するように、本発明のナノファイバーの長さと厚さの比は場合により例えばナノファイバーの組成と同様に変動する。更に、ファイバーを表面と接触させるためには種々の方法を利用することができる。更に、本発明の多数の態様は例えば部分又は官能基とナノファイバーの付着により1種以上の方法で特に機能化されたナノファイバーを含むが、他の態様は非機能化ナノファイバーを含む。
XVII)ナノファイバー及びナノファイバー作製
【0148】
本発明の典型的態様では、表面(即ちナノファイバー増大面積表面)とナノファイバー自体は場合により任意数の材料を含むことができる。表面とナノファイバーの実際の組成は多数の可能な因子に依存する。このような因子としては例えば増大面積表面の所期用途、表面を使用する条件(例えば温度、pH、光(例えばUV)の存在、雰囲気等)、(例えば患者の体内等で)表面を使用する反応、表面の耐久性及びコスト等が挙げられる。ナノワイヤーの延性と破壊強度は例えばその組成により異なる。例えば、セラミックZnOワイヤーはシリコン又はガラスナノワイヤーよりも脆性であり、カーボンナノチューブは引張強さが高いと考えられる。
【0149】
以下に詳述するように、本発明のナノファイバー及びナノファイバー増大表面を作製するために使用される所定の可能な材料としては例えばシリコン、ZnO、TiO、カーボン、カーボンナノチューブ、ガラス、石英が挙げられる。下記参照。本発明のナノファイバーは更に場合により例えば特定性質を強化又は付加するためにコーティング又は機能化される。例えば、ポリマー、セラミック又は小分子を場合によりコーティング材料として使用することができる。場合により使用するコーティングは耐水性、機械的もしくは電気的性質の改善又は所定検体に対する特異性等の特性を付与することができる。更に、特定部分又は官能基を本発明のナノファイバーに付着又は結合することもできる。
【0150】
当然のことながら、本発明は特定ナノファイバー及び/又は基板組成の記載に限定されず、特に指定しない限り、多数の他の材料の任意のものを本発明の各種態様で場合により使用することが理解されよう。更に、ナノファイバーを構成するために使用される材料は場合により基板表面を構成するために使用される材料と同一でもよいし、基板表面を作製するために使用される材料と異なっていてもよい。
【0151】
本発明の更に他の態様では、該当ナノファイバーは場合により例えばナノチューブル(例えば中空コア構造)等の各種物理的構造を含むことができる。本発明では場合によりカーボンナノチューブ、金属ナノチューブ、金属及びセラミック等の種々のナノファイバーが使用される。
【0152】
本発明は特定構成に限定されず、当然のことながら変更可能であると理解すべきである(例えば場合により種々の長さ、密度等で存在するナノファイバーと基板と選択部分等の各種組み合わせ)。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみを記載する目的であり、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが前後関係から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「ナノファイバー」と言う場合には場合により複数のこのようなナノファイバーを含み、他の用語についても同様である。特に定義しない限り、全科学技術用語はそれらの用語が属する分野で一般に使用されていると同一の意味をもつ。本発明の目的で、他の特定用語については明細書の各所で定義する。
A)ナノファイバー
【0153】
本明細書で使用する「ナノファイバー」なる用語は一般に約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約25nm未満、更には約10nm又は5nm未満の少なくとも1個の物理的寸法を特徴とするナノ構造を意味する。多くの場合には、領域又は特徴的寸法は構造の最短軸方向の寸法である。
【0154】
本発明のナノファイバーは一般に1本の主軸が他の2本の主軸よりも長く、従って、1を上回るアスペクト比、2以上のアスペクト比、約10を上回るアスペクト比、約20を上回るアスペクト比、又は約100、200、もしくは500を上回るアスペクト比をもつ。所定態様では、本発明のナノファイバーは実質的に均一直径をもつ。所定態様では、直径は最大変動領域と少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm、又は少なくとも50nmの直線寸法にわたって約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満の分散を示す。例えば、コストの問題及び/又はよりランダムな表面を形成するために、広い範囲の直径が望ましいと思われる。一般に直径はナノファイバーの両端から(例えばナノファイバーの中心20%、40%、50%、又は80%にわたって)測定される。更に他の態様では、本発明のナノファイバーは不均一直径をもつ(即ちその長さ方向に直径が変動する)。更に所定態様では、本発明のナノファイバーは実質的に結晶質及び/又は実質的に単結晶質である。
【0155】
当然のことながら、ナノファイバーなる用語は場合により例えばナノワイヤー、ナノウィスカー、半導体ナノファイバー、カーボンナノチューブ又はナノチューブル等の構造を含むことができる。
【0156】
本発明のナノファイバーは材料性質が実質的に均一でもよいが、所定態様では不均一(例えばナノファイバーヘテロ構造)であり、1又は複数の適当なほぼ任意材料から作製することができる。ナノファイバーは「純粋」材料、実質的に純粋な材料、ドープ材料等から構成することができ、絶縁体、導体及び半導体を含むことができる。更に、本発明のナノファイバーの所定の例は上述のようにシリコン(又は酸化ケイ素)から構成されるが、特に指定しない限り、場合により多種多様の材料の任意のものから構成することができる。ナノファイバーの組成は多数の因子、例えば(使用する場合には)ナノファイバーに結合又は付着させる特定官能基、耐久性、コスト、使用条件等により変えることができる。ナノファイバーの組成は当業者に非常によく知られている。従って、当業者に自明の通り、本発明のナノファイバーは無数の可能な物質(又はその組み合わせ)の任意のものから構成することができる。本発明の所定態様は1種以上の有機又は無機化合物又は材料から構成されるナノファイバーを含む。本明細書中の特定ナノファイバー組成の記載は限定的ではない。
【0157】
更に、本発明のナノファイバーは場合により多種多様の方法の任意のものにより作製され、本明細書に記載する例は限定的ではない。従って、本明細書に特に記載しないが、本明細書に記載するパラメーターに該当する手段により作製されたナノファイバーも本発明のナノファイバーであり、及び/又は本発明の方法で使用される。
【0158】
一般的な意味では、本発明のナノファイバーは(必ずしもそうでなくてもよいが)多くの場合には固体で場合により平坦な基板から成長させた細長い突起(例えばファイバー、ナノワイヤー、ナノチューブル等)を含む。当然のことながら、本発明の所定態様ではナノファイバーをその最終基板上に堆積し、例えばファイバーを成長させた基板から分離し、第2の基板に付着させる。第2の基板は平坦である必要はなく、実際にナノファイバーを最初に成長させた基板と同様に無数の三次元構造を含むことができる。本発明の所定態様では、基板は弾性である。同様に、以下に詳述するように、本発明のナノファイバーは種々の構造の表面内又は表面上、例えばキャピラリーチューブ、シャント内等に成長/作製することができる。下記参照。
【0159】
本発明の各種態様では、該当ナノファイバーを場合により第1の基板上に成長させた後に表面積を増大させようとする第2の基板に移送する。このような態様は所望基板を弾性にする必要がある場合や、ナノファイバーを直接付加もしくは成長させにくい特定三次元形状に合致させる必要がある場合に特に有用である。例えば、ナノファイバーは例えばシリコンウェーハや他の同様の基板等の剛性表面上に成長させることができる。こうして成長させたナノファイバーをその後、場合により例えばゴム等の弾性支持体に移送することができる。この場合も当然のことながら、本発明は特定ナノファイバー又は基板組成に限定されない。例えば、場合により例えばアルミニウム等の弾性箔を含む各種表面の任意のものの上にナノファイバーを成長させる。更に、高温成長法には、本発明のナノファイバーを成長させる基板として任意金属、セラミック又は他の熱安定材料を場合により使用する。更に、ナノファイバーを成長させる多種多様な基板と組み合わせて溶液相法等の低温合成法を利用することもできる。例えば、弾性ポリマー基板及び他の同様の基板を場合によりナノファイバー成長/付着用基板として使用する。
【0160】
1例として、金触媒を使用して表面にナノファイバーを成長させる方法が文献に記載されている。このようなファイバーに関する適用例はファイバーを基板から回収した後に装置に組込むことを基本とする。しかし、本発明の多くの他の態様では増大表面積に加わるナノファイバーをその場で成長させる。従って、表面に堆積した金コロイドからナノファイバーを成長させる等の利用可能な方法が本発明では場合により使用される。得られる最終製品はファイバーを成長させた基板(即ちナノファイバーにより表面積が増大した基板)である。当然のことながら、本発明の特定態様及び使用は、特に指定しない限り、場合によりその使用場所で成長させるか及び/又は他の場所で成長させたナノファイバーを回収してその使用場所に移送したナノファイバーを含むことができる。例えば、本発明の多くの態様はファイバーを成長基板上で無傷にしておき、ファイバーが基板に付与するユニークな性質を利用するものである。他の態様はファイバーを第1の基板で成長させ、ファイバーを第2の基板に移送し、ファイバーが第2の基板に付与するユニークな性質を利用するものである。
【0161】
例えば、本発明のナノファイバーを例えば非弾性基板(例えば所定種のシリコンウェーハ)上に成長させた場合には、このような非弾性基板から弾性基板(例えばゴム又は織布層材料)に移送することができる。この場合も、当業者に自明の通り、本発明のナノファイバーは場合により最初から弾性基板上に成長させてもよいが、このような決定は種々の所望パラメーターによると思われる。
【0162】
ナノファイバーを作製した表面から別の表面に移送するには種々の方法を利用することができる。例えば、ナノファイバーを液体懸濁液(例えばエタノール)中に回収した後に、別の表面にコーティングすることができる。更に、第1の表面からのナノファイバー(例えば第1の表面上で成長させるか又は第1の表面に移送したナノファイバー)は場合によりナノファイバーに粘着性コーティング又は材料を付与した後にこのようなコーティング/材料を第1の表面から剥離することにより「回収」することができる。粘着性コーティング/材料をその後、場合によりナノファイバーを堆積する第2の表面に配置する。このような移送に場合により使用される粘着性コーティング/材料の例としては限定されないが、例えばテープ(例えば3M Scotch(登録商標)テーブ)、磁気ストリップ、硬化性接着剤(例えばエポキシ、ラバーセメント等)等が挙げられる。ナノファイバーを成長基板から取り出し、プラスチックと混合した後に、このようなプラスチックの表面をアブレーション又はエッチングしてファイバーを露出させることができる。
【0163】
本発明の実際のナノファイバー構造は場合により複雑である。ナノファイバーは複雑な三次元パターンを形成することができる。種々の高さ、カーブ、屈曲部等が絡み合い、(例えばナノファイバーをもたない表面に比較して)単位基板当たりの表面積が著しく増加した表面を形成する。当然のことながら、本発明の他の態様ではナノファイバーは複雑である必要はない。即ち、本発明の多くの態様では、ナノファイバーは「直線状」であり、屈曲、湾曲、又はカールする傾向がない。しかし、このような直線状ナノファイバーも本発明に含まれる。いずれの場合も、ナノファイバーは非蛇行性で著しく増大した表面積をもつ。
B)機能化
【0164】
本発明の所定態様はファイバーに1個以上の機能部分(例えば化学反応基)を付着又は結合したナノファイバー及びナノファイバー増大面積表面を含む。機能化ナノファイバーは場合により例えば分離やバイオアッセイ等の反応で所望検体に特異性を付与するために多くの各種態様で使用される。本発明の増大表面積の典型的態様は多様な部分で適切に修飾した酸化ケイ素から構成すると有利である。当然のことながら、本発明の他の態様は場合により同様に特定目的のために機能化した他のナノファイバー組成(例えばポリマー、セラミック、CVD又はゾル−ゲルスパッタリングによりコーティングされた金属等)から構成される。場合により本発明で使用される多数の機能化と機能化技術は当業者に自明である。
【0165】
例えば、関連部分及び他の化学種とその作製/使用方法に関する詳細は例えばHermanson Bioconjugate Techniques Academic Press(1996),Kirk−Othmer Concise Encyclopedia of Chemical Technology(1999)Fourth Edition,Graysonら(ed.)John Wiley & Sons,Inc.,New York及びKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology Fourth Edition(1998及び2000),Graysonら(ed.)Wiley Interscience(印刷版)/John Wiley & Sons,Inc.(電子版)に記載されている。その他の関連情報はCRC Handbook of Chemistry and Physics(2003)83rd edition,CRC Pressに記載されている。更に本発明のナノファイバーにプラズマ法等により組込むことができる導体及び他のコーティングに関する詳細はH.S.Nalwa(ed.),Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers,John Wiley & Sons 1997に記載されている。更に、ORGANIC SPECIES THAT FACILITATE CHARGE TRANSFER TO/FROM NANOCRYSTALS USSN 60/452,232(出願日2003年3月4日,Whitefordら)も参照されたい。例えば付加部分をナノファイバーの機能化表面に結合するための関連有機化学に関する詳細は例えばGreene(1981)Protective Groups in Organic Synthesis,John Wile and Sons,New York;Schmidt(1996)Organic Chemistry Mosby,St Louis,MO;及びMarch’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure,Fifth Edition(2000)Smith and March,Wiley Interscience New York ISBN 0−471−58589−0に記載されている。本発明のNFSの機能化に利用可能な他の多くの関連文献及び技術は当業者に自明である。
【0166】
従って、この場合も当然のことながら、該当基板、(例えば基板に付着又は堆積された)該当ナノファイバー、及び場合により実施されるナノファイバー及び/又は基板の任意機能化等は変更することができる。例えば、ファイバーの長さ、直径、構造及び密度は、ファイバーの組成及びその表面化学種と同様に変更することができる。
C)密度及び関連事項
【0167】
密度については、当然のことながら、表面から突出するナノファイバーを多くすることにより、基礎となる下位の基板から拡大する表面積の量も自動的に増加する。その結果、表面とナノファイバー表面に接触する任意検体等との間の緊密接触面積が増加する。以下に詳述するように、本発明の態様は場合により表面上のナノファイバーの密度が基板表面μm2当たりナノファイバー約0.1〜約1000本以上である。この場合も当然のことながら、このような密度は個々のナノファイバーの直径等の因子により異なる。下記参照。ナノファイバーの数が多いほど表面の総面積が増加する傾向があるので、ナノワイヤー密度は増大表面積に影響する。従って、本発明のナノファイバーの密度は表面の総面積の因子であるので、一般に増大表面積材料の所期用途に関係がある。
【0168】
例えば、典型的な平坦基板の1例(例えば酸化ケイ素チップ又はガラススライド)は1平方ミクロン当たり(即ち1平方ミクロンフットプリント内に)検体との可能な結合部位を10,000個又は可能な機能化部位等を10,000個含むことができる。しかし、このような基板表面にナノファイバーをコーティングしたならば、利用可能な表面積は著しく増加する。本発明の所定態様では表面上の各ナノファイバーは表面積約1平方ミクロンである(即ち各ナノファイバーの側面と先端は著しく大きな表面積をもつ)。同等の基板1平方ミクロンにナノファイバー10〜約100本/平方ミクロンが含まれるならば、利用可能な表面積は平坦表面の10〜100倍となる。従って、この例では、増大表面積は1平方ミクロンフットプリント当たり可能な結合部位、機能化部位等を100,000〜10,000,000個もつことになる。当然のことながら、基板上のナノファイバーの密度は例えばナノファイバーの直径やナノファイバーの機能化等により変動する。
【0169】
本発明の各種態様はこのような種々の密度(即ちナノファイバーを付着する基板の単位面積当たりのナノファイバー数)を含む。単位面積当たりのナノファイバー数は場合により約1本/10μm2〜約200本以上/μm2;約1本/μm2〜約150本以上/μm2;約10本/μm2〜約100本以上/μm2;又は約25本/μm2〜約75本以上/μm2とすることができる。更に他の態様では、密度は場合により約1〜3本/平方ミクロン〜約2,500本以上/平方ミクロンとすることができる。
【0170】
個々のファイバー寸法については、当然のことながら、各ファイバーの厚さ又は直径を増加することによりファイバーの総面積は自動的に増加し、従って基板の総面積も増加する。本発明のナノファイバーの直径は例えばナノファイバーの組成と成長条件、部分の付加、コーティング等の選択により調節することができる。好ましいファイバー厚みは場合により約5nm〜約1ミクロン以上(例えば5ミクロン);約10nm〜約750nm以上;約25nm〜約500nm以上;約50nm〜約250nm以上、又は約75nm〜約100nm以上である。所定態様では、ナノファイバーは直径約40nmである。
【0171】
直径に加え、ナノファイバーの表面積(従って、ナノファイバーを付着する基板の表面積)はナノファイバーの長さによっても異なる。当然のことながら、ファイバー材料によっては長さを増すと脆性が増すものもある。従って、好ましいファイバー長は一般に約2ミクロン(例えば0.5ミクロン)〜約1mm以上;約10ミクロン〜約500ミクロン以上;約25ミクロン〜約250ミクロン以上;又は約50ミクロン〜約100ミクロン以上である。所定態様は長さ約50ミクロンのナノファイバーを含む。本発明の所定態様は直径約40nm及び長さ約50ミクロンのナノファイバーを含む。
【0172】
本発明のナノファイバーは種々のアスペクト比をもつことができる。即ち、ナノファイバー直径は例えば約5nm〜約1ミクロン以上(例えば5ミクロン);約10nm〜約750nm以上;約25nm〜約500nm以上;約50nm〜約250nm以上,又は約75nm〜約100nm以上とすることができ、前記ナノファイバーの長さは例えば約2ミクロン(例えば0.5ミクロン)〜約1mm以上;約10ミクロン〜約500ミクロン以上;約25ミクロン〜約250ミクロン以上;又は約50ミクロン〜約100ミクロン以上とすることができる。
【0173】
少なくとも一部を表面から高くしたファイバーが多くの場合は好ましく、例えば検体等と接触させるために利用可能な増大表面積を提供するためには、例えばファイバー表面のファイバーの少なくとも一部を表面から少なくとも10nm、又は少なくとも100nm高くする。
【0174】
ナノファイバーは場合により複雑な三次元構造を形成する。このような複雑さの程度は例えばナノファイバーの長さ、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ:直径アスペクト比、(使用する場合には)ナノファイバーに付着した部分、及びナノファイバーの成長条件等に部分的に依存する。利用可能な増大表面積の程度を変化させるのに有用なナノファイバーの屈曲、絡み合い等は場合により例えば単位面積当たりのナノファイバー数の調節や、ナノファイバーの直径、ナノファイバーの長さ及び組成等により操作される。従って、当然のことながら、本発明のナノファイバー基板の増大表面積は場合により上記及び他のパラメーターを操作することにより調節される。
【0175】
同様に、本発明の全態様ではないが所定の態様では、本発明のナノファイバーは屈曲、湾曲、又はカール形状を含む。当然のことながら、1本のナノファイバーが表面上で蛇行又はコイル状になっている(但し単位面積当たり1本のファイバーしか第1の表面に結合していない)場合にも、ファイバーはその長さ等により増大表面積を提供することができる。
D)ナノファイバー作製
【0176】
当然のことながら、本発明は本発明のナノファイバーの作製手段により限定されない。例えば、本発明の所定のナノファイバーはシリコンから構成されるが、シリコンの使用は限定的ではない。ナノファイバーの形成は当業者に周知の多数の異なるアプローチにより可能であり、いずれも本発明の態様に利用可能である。
【0177】
本発明の典型的態様は当業者に自明の既存のナノ構造作製方法及び本明細書に言及又は記載する方法で使用することができる。全態様ではないが、本発明の典型的な態様は医療環境で無害(例えば非反応性、非アレルギー誘発性等)となるように選択された物質を含む。換言するならば、ナノファイバー及びナノファイバーを含む構造の各種作製方法が記載されており、本発明の各種方法、システム及び装置で使用するように応用することができる。
【0178】
ナノファイバーは適当なほぼ任意材料(例えば半導体材料、強誘電性材料、金属、セラミック、ポリマー等)から作製することができ、本質的に単一材料から構成することもできるし、ヘテロ構造でもよい。例えば、ナノファイバーは半導体材料から構成することができ、例えば周期表の2族又は12族から選択される第1の元素と、16族から選択される第2の元素を含む材料(例えばZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe等の材料);13族から選択される第1の元素と15族から選択される第2の元素を含む材料(例えばGaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の材料);14族の元素を含む材料(Ge、Si等の材料);PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、及びAlSb等の材料;又はその合金もしくは混合物が挙げられる。
【0179】
本発明の所定態様では、ナノファイバーは場合によりシリコン又は酸化ケイ素から構成される。当業者に自明の通り、本明細書で使用する「酸化ケイ素」なる用語は任意酸化度のケイ素を意味する。即ち、酸化ケイ素なる用語は化学構造SiOxを意味し、式中、xは0以上2以下である。他の態様では、ナノファイバーは例えばシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、又は脂肪族ポリマーから構成することができる。
【0180】
当然のことながら、所定態様では、ナノファイバーは1個以上の基板表面(例えばナノファイバーを付着又は結合する表面)と同一材料から構成することができ、他の態様では、ナノファイバーは基板表面と異なる材料から構成される。更に、基板表面は場合によりナノファイバーと同一材料又は同一種の材料(例えば本明細書に例示する材料)の任意1種以上から構成することもできる。
【0181】
上述のように、本発明の全態様ではないが、所定の態様はシリコンナノファイバーを含む。シリコンナノファイバーの一般的作製方法としては、気相−液相−固相成長(VLS)、レーザーアブレーション(レーザー触媒成長)及び熱蒸着が挙げられる。例えば、Moralesら(1998)“A Laser Ablation Method for the Synthesis of Crystalline Semiconductor Nanowires”Science 279,208−211(1998)参照。アプローチの1例では、長手方向序列ヘテロ構造をもつ半導体ナノファイバーの合成用ハイブリッドパルスレーザーアブレーション/化学蒸着(PLA−CVD)法とその変形を使用することができる。Wuら(2002)“Block−by−Block Growth of Single−Crystalline Si/SiGe Superlattice Nanowires,”Nano Letters Vol.0,No.0参照。
【0182】
一般に、多数のナノファイバー作製方法が記載されており、本発明の方法、システム及び装置で適用することができる。Moralesら及びWuら(前出)の文献に加え、例えば、Lieberら(2001)“Carbide Nanomaterials”USPN 6,190,634 B1;Lieberら(2000)“Nanometer Scale Microscopy Probes”USPN 6,159,742;Lieberら(2000)“Method of Producing Metal Oxide Nanorods”USPN 6,036,774;Lieberら(1999)“Metal Oxide Nanorods” USPN 5,897,945;Lieberら(1999)“Preparation of Carbide Nanorods”USPN 5,997,832;Lieberら(1998)“Covalent Carbon Nitride Material Comprising C2N and Formation Method”USPN 5,840,435;Thessら(1996)“Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes”Science 273:483−486;Lieberら(1993)“Method of Making a Superconducting Fullerene Composition By Reacting a Fullerene with an Alloy Containing Alkali Metal”USPN 5,196,396;及びLieberら(1993)“Machining Oxide Thin Films with an Atomic Force Microscope:Pattern and Object Formation on the Nanometer Scale”USPN5,252,835参照。最近では、一次元半導体ヘテロ構造ナノ結晶が記載されている。例えばBjorkら(2002)“One−dimensional Steeplechase for Electrons Realized”Nano Letters Vol.0,Vol.0参照。
【0183】
なお、本明細書に引用する文献にはナノファイバーに特定した文献ではないが、場合により本発明に適用可能なものもある。例えば、作製条件等のバックグラウンド事項はナノファイバーと他のナノ構造(例えばナノ結晶等)間で適用可能である。
【0184】
本発明のナノファイバーを作製するために場合により使用される別のアプローチでは、個々のナノファイバーを表面上にバルク作製するための合成法が例えばKongら(1998)“Synthesis of Individual Single−Walled Carbon Nanotubes on Patterned Silicon Wafers,”Nature 395:878−881、及びKongら(1998)“Chemical Vapor Deposition of Methane for Single−Walled Carbon Nanotubes,” Chem.Phys.Lett.292:567−574に記載されている。
【0185】
更に別のアプローチでは、例えばSchon,Meng,and Bao,“Self−assembled monolayer organic field−effect transistors,”Nature 413:713(2001);Zhouら(1997)“Nanoscale Metal/Self−Assembled Monolayer/Metal Heterostructures,”Applied Physics Letters71:611;及びWO96/29629(Whitesidesら,公開日1996年6月26日)に記載されているもの等のマイクロコンタクトプリント法により、基板と自己結合単層(SAM)形成材料を使用してナノファイバーを作製することができる。
【0186】
本発明の所定態様では、金属触媒を使用してナノファイバー(例えばナノワイヤー)を合成することができる。このような態様の利点の1つは性質を強化するために表面修飾に適したユニークな材料を使用できる点である。このようなナノファイバーのユニークな性質とは、触媒、一般に金で一端がキャップされていることである。この触媒末端は場合によりワイヤーの残余を変化させずに例えばチオール化学種を使用して機能化することができるので、適切な表面に結合することができる。このような態様では、このような機能化等の結果としてナノファイバーを末端結合した表面が作製される。従って、その結果として得られる「ファジー」な表面は(ナノファイバーをもたない表面に比較して)表面積が増加すると共に他のユニークな性質をもつ。所定のこのような態様では、多くの用途で有用な広範な性質を与えるために(必ずしもそうでない場合もあるが、一般には金先端を変化させずに)ナノワイヤーの表面及び/又はターゲット基板表面を場合により化学修飾する。
【0187】
他の態様では、表面積を僅かに増加又は増大するために、ナノファイバーを基板と末端結合するのでなく表面上の化学的又は静電的相互作用によりナノファイバーを場合により「平坦」に(例えば基板表面と実質的に平行に)延在させる。本発明の更に他の態様では、ファイバーが表面に延在するのでなく末端結合するようにナノファイバー上の極性に反発する官能基を基板表面にコーティングする。
【0188】
各種組成のナノ構造(例えばナノ結晶)の合成は例えばPengら(2000)“Shape control of CdSe nanocrystals”Nature 404:59−61;Puntesら(2001)“Colloidal nanocrystal shape and size control:The case of cobalt”Science 291:2115−2117;USPN 6,306,736,Alivisatosら(2001年10月23日)発明の名称“Process for forming shaped group III−V semiconductor nanocrystals,and product formed using process”;USPN 6,225,198,Alivisatosら(2001年5月1日)発明の名称“Process for forming shaped group II−VI semiconductor nanocrystals,and product formed using process”;USPN 5,505,928,Alivisatosら(1996年4月9日)発明の名称“Preparation of III−V semiconductor nanocrystals”;USPN 5,751,018,Alivisatosら(1998年5月12日)発明の名称“Semiconductor nanocrystals covalently bound to solid inorganic surfaces using self−assembled monolayers”;USPN 6,048,616,Gallagherら(2000年4月11日)発明の名称“Encapsulated quantum sized doped semiconductor particles and method of manufacturing same”;及びUSPN 5,990,479,Weissら(1999年11月23日)発明の名称“Organo luminescent semiconductor nanocrystal probes for biological applications and process for making and using such probes”に記載されている。
【0189】
制御された直径をもつナノファイバー等の各種アスペクト比をもつナノワイヤー等のナノファイバーの成長に関するその他の情報は例えばGudiksenら(2000)“Diameter−selective synthesis of semiconductor nanowires”J.Am.Chem.Soc.122:8801−8802;Cuiら(2001)“Diameter−controlled synthesis of single−crystal silicon nanowires”Appl.Phys.Lett.78:2214−2216;Gudiksenら(2001)“Synthetic control of the diameter and length of single crystal semiconductor nanowires”J.Phys.Chem.B 105:4062−4064;Moralesら(1998)“A laser ablation method for the synthesis of crystalline semiconductor nanowires”Science 279:208−211;Duanら(2000)“General synthesis of compound semiconductor nanowires”Adv.Mater.12:298−302;Cuiら(2000)“Doping and electrical transport in silicon nanowires”J.Phys.Chem.B 104:5213−5216;Pengら(2000),前出;Puntesら(2001),前出;USPN6,225,198,Alivisatosら,前出;USPN6,036,774,Lieberら(2000年3月14日)発明の名称“Method of producing metal oxide nanorods”;USPN5,897,945,Lieberら(1999年4月27日)発明の名称“Metal oxide nanorods”;USPN5,997,832,Lieberら(1999年12月7日)発明の名称“Preparation of carbide nanorods”;Urbauら(2002)“Synthesis of single−crystalline perovskite nanowires composed of barium titanate and strontium titanate”J.Am.Chem.Soc.,124:1186;Yunら(2002)“Ferroelectric Properties of Individual Barium Titanate Nanowires Investigated by Scanned Probe Microscopy”Nano Letters 2,447;並びに公開PCT出願WO02/17362号及びWO02/080280号に記載されている。
【0190】
分岐ナノファイバー(例えばナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド及び分岐テトラポッド)の成長は例えばJunら(2001)“Controlled synthesis of multi−armed CdS nanorod architectures using monosurfactant system”J.Am.Chem.Soc.123:5150−5151;及びMannaら(2001)“Synthesis of Soluble and Processable Rod−,Arrow−,Teardrop−,and Tetrapod−Shaped CdSe Nanocrystals”J.Am.Chem.Soc.122:12700−12706に記載されている。ナノ粒子の合成は例えばUSPN5,690,807,Clark Jr.ら(1997年11月25日)発明の名称“Method for producing semiconductor particles”;USPN6,136,156,El−Shallら(2000年10月24日)発明の名称“Nanoparticles of silicon oxide alloys”;USPN6,413,489,Yingら(2002年7月2日)発明の名称“Synthesis of nanometer−sized particles by reverse micelle mediated techniques”;及びLiuら(2001)“Sol−Gel Synthesis of Free−Standing Ferroelectric Lead Zirconate Titanate Nanoparticles”J.Am.Chem.Soc.123:4344に記載されている。ナノ粒子の合成はナノ結晶とナノファイバー(例えばナノワイヤー、分岐ナノワイヤー等)の成長に関する上記文献に記載されている。
【0191】
コア−シェルナノファイバー(例えばナノ構造ヘテロ構造)の合成は例えばPengら(1997)“Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS core/shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility”J.Am.Chem.Soc.119:7019−7029;Dabbousiら(1997)“(CdSe)ZnS core−shell quantum dots:Synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrystallites”J.Phys.Chem.B 101:9463−9475;Mannaら(2002)“Epitaxial growth and photochemical annealing of graded CdS/ZnS shells on colloidal CdSe nanorods”J.Am.Chem.Soc.124:7136−7145;及びCaoら(2000)“Growth and properties of semiconductor core/shell nanocrystals with InAs cores”J.Am.Chem.Soc.122:9692−9702に記載されている。他のコア−シェルナノ構造の成長にも同様のアプローチを適用することができる。例えば、USPN6,207,229(2001年3月27日)及びUSPN6,322,901(2001年11月27日)Bawendiら,発明の名称“Highly luminescent color−selective materials”参照。
【0192】
異なる材料がナノファイバーの長軸に沿って異なる位置に分布されたナノファイバーヘテロ構造を含むナノファイバーの均一集団の成長は例えば公開PCT出願WO02/17362号及びWO02/080280号;Gudiksenら(2002)“Growth of nanowire superlattice structures for nanoscale photonics and electronics”Nature 415:617−620;Bjorkら(2002)“One−dimensional steeplechase for electrons realized”Nano Letters 2:86−90;Wuら(2002)“Block−by−block growth of single−crystalline Si/SiGe superlattice nanowires”Nano Letters 2,83−86;並びに米国特許出願60−370,095(2002年4月2日)Empedocles,発明の名称“Nanowire heterostructures for encoding information”に記載されている。同様のアプローチを他のヘテロ構造の成長と本発明の各種方法及びシステムにも適用することができる。
【0193】
所定態様では、高い強度と耐久性をもつナノファイバーを作製するために、増大表面積を形成するために使用されるナノファイバーは窒化物(例えばAlN、GaN、SiN、BN)又は炭化物(例えばSiC、TiC、炭化タングステン、炭化ホウ素)から構成することができる。あるいは、低強度(例えばシリコン又はZnO)ナノファイバー上の硬質コーティングとして前記窒化物/炭化物を使用する。シリコンナノファイバーの寸法は増大表面積を必要とする多くの用途に優れている(例えば“Structures,Systems and Methods for Joining Articles and Materials and Uses Therefore,”出願日2003年4月17日,USSN60/463,766等参照)が、用途によっては低脆性で破壊しにくいナノファイバーが必要である。従って、本発明の所定態様は例えばSi、SiO2又はZnOよりも高い結合強度をもつ窒化物及び炭化物等の材料を利用する。窒化物と炭化物は場合により低強度ナノファイバーを強化するためのコーティングとして又はナノファイバー自体として使用される。
【0194】
炭化物と窒化物はスパッタリングやプラズマ法等の堆積技術により低強度ファイバーにコーティングとして付設することができる。所定態様では、炭化物及び窒化物コーティングの高強度ナノコーティングを得るために、亀裂伝播を避けるようにランダム粒子配向及び/又は非晶質相を成長させる。ファイバーが基板表面に垂直に成長しているならば場合によりナノファイバーの最適コンフォーマルコーティングを達成することができる。このような配向のファイバーの硬質コーティングはファイバーの基板接着を強化する機能もある。ランダム配向ファイバーでは、コーティングはファイバー上層に優先する。
【0195】
シリコンナノファイバーを作製するための低温法は金触媒の存在下に約400℃でシランを分解させることにより実施される。しかし、上述のように、シリコンナノファイバーは用途によっては脆弱過ぎ、耐久性ナノファイバーマトリックス(例えば増大表面積)を形成することができない。従って、本発明の所定態様では場合により例えばSiNの形成と使用を利用する。これらの態様では、約300℃で分解するNH3をシランと併用し、(同様に金触媒を使用することにより)SiNナノファイバーを形成する。このようなナノファイバーを形成するための他の触媒表面としては例えばTi、Fe等が挙げられる。
【0196】
溶融液から炭化物及び窒化物ナノファイバーを直接形成するのは液相の温度が一般に1000℃よりも高いので困難な場合がある。しかし、金属成分を気相と併用することによりナノファイバーを成長させることができる。例えば、(GaNの場合は)Ga溶融液をNH3に暴露し、(SiCの場合は)グラファイトをシランと併用することによりGaN及びSiCナノファイバーを成長させている(例えばPeidong,Lieber,前出参照)。金属−有機蒸気種(例えばタングステンカルボニル[W(CO)6]を炭素表面上で化合させて炭化タングステン(WC)を形成するか、又は炭素表面上でジメトキシジネオデカン酸チタンを化合させてTiCを形成することにより、他の型の炭化物及び窒化物ナノファイバーを形成するために場合により同様の概念が使用される。当然のことながら、このような態様では、スパッタリング及びCVD法の温度、圧力、出力はいずれも場合により例えば最終ナノファイバーに所望される特定パラメーターに応じて変化させる。更に、ナノファイバーを形成するために使用される数種の金属有機前駆体及び触媒表面、ナノファイバーのコア材料(例えばSi、ZnO等)並びにナノファイバーを含む基板も例えば作製しようとする特定増大ナノファイバー表面積に応じていずれも態様毎に変更することができる。
【0197】
本発明は典型的なナノ構造の寸法範囲に該当しないような構造で使用することができる。例えば、Haraguchiら(USPN 5,332,910)は場合により本発明で使用されるナノウィスカーを記載している。半導体ウィスカーはHaraguchiら(1994)“Polarization Dependence of Light Emitted from GaAs p−n junctions in quantum wire crystals”J.Appl.Phys.75(8):4220−4225;Hirumaら(1993)“GaAs Free Standing Quantum Sized Wires,”J.Appl.Phys.74(5):3162−3171;Haraguchiら(1996)“Self Organized Fabrication of Planar GaAs Nanowhisker Arrays”;及びYazawa(1993)“Semiconductor Nanowhiskers”Adv.Mater.5(78):577−579にも記載されている。このようなナノウィスカーは場合により本発明のナノファイバーである。上記文献(及び本明細書に引用する他の文献)は場合により本発明のナノファイバーの作製とパラメーター決定に使用されるが、同様に本発明の方法と装置に利用することができる他のナノファイバー作製/設計方法等も当業者に自明である。
【0198】
本発明の所定態様はナノワイヤー合成と金膜堆積の反復サイクリングにより「ナノ−ツリー」を作製し、共晶シリコンを形成しない材料の同時蒸着により核形成を妨害し、より小型のワイヤーを形成することを含む。
【0199】
このような方法はナノファイバー成長技術による超大容量表面構造の作製で例えば表面間の接着促進、非汚染性表面等のために使用される。ナノファイバーの作製に単段階金属膜型の方法を使用すると、出発金属膜厚、表面粗面度等を制御する能力が制限され、従って表面からの核形成を制御する能力が制限される。本発明はこれらの問題に対処する。
【0200】
ナノファイバー増大表面の所定態様では、多分岐ナノファイバーを作製することが望ましい場合がある。このような多分岐ナノファイバーは非分岐ナノファイバー表面よりも表面積を更に増加することができる。多分岐ナノファイバーを作製するためには、ナノファイバー表面(即ち既にナノファイバーを成長させた表面)に場合により金膜を堆積する。炉に入れると、元の成長方向に垂直なファイバーが得られ、こうして元のナノファイバーに分岐を形成することができる。核形成と分岐形成をより厳密に制御できるようにするために場合により金膜の代わりにコロイド金属粒子を使用することができる。例えば異なる膜厚、異なるコロイド粒度、又は異なる合成時間で分岐サイクルを場合により多数回反復し、寸法を変化させた付加分岐を作製することができる。最後に、隣接ナノファイバー間の分岐を場合により接合し、連続した網目構造を形成することができる。場合により焼結を使用して微細分岐の結合を改善する。
【0201】
更に他の態様では、より微細なナノファイバー(例えばナノワイヤー)を形成することが望ましい。これを達成するために、本発明の所定態様は場合により金又は他の合金形成金属蒸着中に非合金形成材料を使用する。このような材料を低百分率で導入すると、場合により金属膜を破壊し、成長中により小さい液滴を形成し、従って、相応により細いワイヤーを形成することができる。
【0202】
このようなアプローチはナノファイバー形成の制御を改善し、多少厚い初期金属膜層からより細くより多くのナノファイバーを作製することができる。ナノアレー等の用途では、制御の改善は場合によりナノファイバーから平坦表面へのシグナル比を改善したり、又は単に制御の程度を増すことができる。より細いナノファイバー作製に使用することができる材料としては例えばTi、Al2O3及びSiO2が挙げられる。
【0203】
更に他の態様では、ガラスの蒸着等の後処理段階によりナノファイバー間のより強い固定又は機械的接着と相互結合が得られ、従って、付加強度を必要とする用途における機械的堅牢性を改善すると共にナノ構造表面の総表面積対体積比を増加することができる。
E)生体材料とナノファイバー増大表面積基板の相互作用
【0204】
典型的態様では、本発明のナノファイバー増大表面積基板は各種医療製品用途で使用される。例えば、薬剤放出、潤滑、細胞接着、低い生物吸着性、電気接点等のために医療製品にコーティングを施す。上記参照。例えば、(例えば本発明のような)表面繊維をポリマーインプラントの表面に付設すると、細胞付着が著しく増加することが示されている。例えばZhangら“Nanostructured Hydroxyapatite Coatings for Improved Adhesion and Corrosion Resistance for Medical Implants”Symposium V:Nanophase and Nanocomposite Materials IV,Kormareniら(eds.)2001,MRS Proceedings,vol.703参照。本態様の他の医療用途としては例えば遅延放出薬剤送達が挙げられる。例えば、生理的環境(例えば患者の体内)に時間をかけてゆっくりと放出することが可能な種々の医薬的に許容可能なキャリヤーに薬剤を組込むことができる。このようなキャリヤー(例えばポリマー層等)に組込んだ薬剤は(例えばナノファイバー間の間隙に存在する)キャリヤー層に取り込まれるため、体液との直接接触から少なくとも部分的に保護される。体液と(ナノファイバー層の上部の)キャリヤー層の間の界面にある薬剤等はかなり迅速に拡散するが、キャリヤー層の深部の薬剤はゆっくりと拡散する(例えば体液はキャリヤー層内に拡散してから薬剤と共に外部に拡散する)。このようなキャリヤーは当業者に周知であり、ナノファイバー基板の表面(即ちナノファイバー間)に堆積又はウィッキングすることができる。
【0205】
留置カテーテル、整形外科用インプラント、ペースメーカー及び他の医療装置のバイオフィルム形成及び感染は患者の健康を常に脅かす。従って、本発明の所定態様はその有利な形態により細菌定着を最小限にする新規表面を含む。他方、本発明の更に他の態様は所望条件下又は所望位置における細胞増殖を助長するためにナノファイバー増大表面積基板のユニークな表面形態を利用する。本発明の大表面積/非蛇行性の側面は(所定態様では)栄養素/流体等に対する付着面積と接近性を増すと共に、増殖等が(細胞が増殖する細孔内の表面積とスペースの意味での)スペースにより制限される多孔質表面にまさる初期付着効果を生じることができる。
【0206】
本発明の基板は表面積が大きく、易接近性(例えば非蛇行性)であるため、例えば細胞培養、移植、及び制御薬剤又は薬品放出用途でバイオスカフォールドとして極めて有用である。特に、本発明の材料の大表面積は例えば細胞培養で所望生体細胞と付着するため又はインプラントと付着するための非常に大きな面積を提供する。更に、栄養素はこれらの細胞に容易に接近することができるので、本発明はこれらの用途の良好なスカフォールド又はマトリックスを提供する。この最後の点は組織付着を確保するために一般に多孔質又は粗面表面を利用する移植材料で特に重要である。特に、このような小さな進入しにくい細孔は初期付着できるが、付着した細胞を容易に持続維持することができず、細胞はその後劣化して死滅するため、付着の効果が減る。本発明の材料の別の利点は本質的に非生物汚染性であり、例えば一般にインプラント等の汚染の原因となる細菌種からバイオフィルムを形成しにくいという点である。
【0207】
特定理論又は作用方法に結び付けるものではないが、ナノファイバー表面のユニークな形態は例えばS.epidermidis等の細菌種の定着率を約10分の1に低下することができる。例えば、化学蒸着法により平坦酸化ケイ素基板の表面から成長させた直径約60nm及び長さ約50〜100ミクロンのシリコンナノワイヤーを含むもの等の態様は細菌定着の低下を示す。下記参照。当然のことながら、本発明の実施例には特定細菌種を例証するが、その態様の有用性は必ずしもこれらの種に対する使用に止まらない。換言するならば、他の細菌種も場合により本発明のナノファイバー表面により定着を阻止される。更に、本発明の実施例は同様の基板で酸化ケイ素ナノワイヤーを使用するが、当然のことながら、他の態様も場合により同様に利用される(例えばナノファイバーの他の構造;プラスチック等の非シリコン基板上のナノファイバー;基板上のナノファイバーの他のパターン等)。
【0208】
当然のことながら、高密度のナノファイバー(例えばシリコンナノワイヤー)で被覆された本発明の基板は細菌定着と哺乳動物細胞増殖を阻止する。例えば、ナノワイヤーで被覆された基板で生じる細菌増殖は同一平坦表面に比較して約10分の1(又はそれ以下)になる。本発明の各種態様では、細菌定着に対する抵抗性を最適化及び特徴付けるようにナノファイバー増大表面積基板の物理的及び化学的性質を変化させる。
【0209】
細菌定着の防止とは対照的に、本発明の他の態様は細胞外結合蛋白質等又は他の部分で機能化することによりナノファイバー表面への哺乳動物細胞の付着を誘導する基板を含み、こうして、高い効率の組織組込み性をもつ新規表面を達成する。
【0210】
例えば無菌等を必要とする環境でNFS基板を使用する本発明の所定態様では、場合によりナノファイバーを二酸化チタンでコーティングするか又は二酸化チタンから構成する。このような二酸化チタンはこのようなナノファイバーに自己滅菌性又は酸化性を付与する。従って、二酸化チタンを含むナノファイバーは表面への迅速な拡散を維持しながら従来の平坦TiO2表面に比較して迅速な滅菌と酸化を可能にする。
【0211】
酸化チタンを含むナノワイヤー(例えばコーティング付きナノワイヤー等)を含む本発明の態様では、これは場合により多数の方法の任意のものにより達成することができる。例えば、本発明の所定態様では、コーティングによる(SiO4)x(TiO4)yナノワイヤーの分析モニターを含むアプローチと分子前駆体アプローチによりナノワイヤーを設計及び作製することができる。層厚と空隙率は場合により試薬濃度、浸漬速度、及び/又はテトラエトキシチタネート又はテトラブトキシチタネート等の浸漬コーティング用前駆体の選択、空気中のゲル化、風乾及び焼成により制御される。M[(OSi(OtBu)3]4(式中、M=Ti、Zi、又は他の金属酸化物)等の分子前駆体を分解してイソブチレン12当量と水6当量を遊離し、メソ多孔質材料又はナノワイヤーを形成することができる。これらの前駆体をナノ結晶合成(湿式化学)でCVD又は界面活性剤と共に使用し、所望粒度分布のジメタルナノ結晶を生成することもできる。材料は湿式化学標準無機化学技術により作製することができ、酸化性はアルケン基質を使用するエポキシ化反応の単純な速度モニター(GC又はGCMS)により測定することができる。空隙率は標準BET空隙率分析によりモニターすることができる。コポリマーポリエーテル鋳型を使用して湿式化学法の一部として空隙率を制御することもできる。
【0212】
酸化チタン材料は周知酸化触媒である。酸化チタン材料の鍵となる点の1つは空隙率と粒度又は形状の均質性の制御である。表面積が増加すると、一般に酸化プロセスにおける材料の触媒回転率は良好になる。酸化物形成速度(材料形態)は溶液中で制御しにくいと思われるので、従来ではこれは困難であった。
【0213】
周知の通り、最近では酸化触媒表面(自浄表面)としてのTiO2に関心が寄せられており、「環境に優しい化学」洗剤の商品化が期待されている。しかし、この材料の自浄効率は例えば表面積と空隙率に依存する。ナノワイヤーは自浄材料として現在使用されているバルク材料(例えばナノファイバー増大表面をもつ材料)よりも著しく表面積が大きい。従って、シリコンナノワイヤー技術をTiO2コーティング又はTiO2ナノワイヤー又は分子前駆体と併用してワイヤーを形成すると、場合により自浄性、滅菌性及び/又は非生物汚染性表面で有用な従来未知の材料を獲得することができる。
【0214】
所定態様では、このような滅菌作用はUV光照射又は他の同様の励起と連携して生じる。このような因子は場合により例えば医療環境や食品加工環境における滅菌表面等の用途で重要である。従って、本発明のNFSによる表面積の増加(例えば100〜1000倍等の面積増加)はこのような表面の消毒率/能力を著しく増加すると考えられる。
i)医療装置の細菌汚染の現行防止手段
【0215】
細菌及び他の微生物による生体医療用インプラントの表面定着とその結果として形成されるバイオフィルムを防ぐために各種方法が使用されている。従来の方法は装置で使用される基本的生体材料を変更したり、親水性、疎水性又は生体活性コーティングを施したり、生物活性剤を含む装置に多孔質又はゲル表面を形成する方法であった。汎用生体材料表面を作製する作業は特定材料に対する種の特異性により複雑になる。例えば、S.epidermidisは親水性表面よりも疎水性表面に結合し易いことが報告されている。S.aureusはポリマーよりも金属に強い親和性をもつが、S.epidermidisは金属よりもポリマー上に迅速に膜を形成する。
【0216】
多孔質生体材料に組込まれた抗生物質やポリクローナル抗体等の抗微生物剤はインプラント部位における微生物接着を積極的に防止することが示されている。しかし、このような局所放出療法の有効性は抗生物質治療に対する細菌の耐性増加と抗体に関連する特異性により損なわれることが多い。最近のin vitro研究はインプラント表面の細菌を非特異的に除去するために亜酸化窒素等の小分子を放出する生体材料の使用を検討している。しかし、亜酸化窒素放出は毒性を制限するように局限しなければならない。
ii)ナノファイバー増大表面積によるバイオフィルム形成の防止
【0217】
本発明の結果、シリコンナノワイヤー表面は細菌S.epidermidisによる定着とCHO、MDCK及びNIH 3T3細胞株の増殖を積極的に阻止することが判明した。これは細菌又は細胞を天然親水性ナノワイヤー表面又はフッ素化疎水性ナノワイヤー表面と接触培養した場合に実際に認められる。酸化ケイ素平坦対照表面とポリスチレン平坦対照表面はS.epidermidisと前記3種の細胞株の大量増殖を生じたので、ナノワイヤー形態は表面を細胞忌避性にすると推察される。当然のことながら、この場合も本発明の有用性は特定理論又は作用方式により限定されない。しかし、表面形態は抗微生物作用の基礎であると考えられる。前記基板上のナノファイバーは細菌が下位の固体表面に物理的に侵入しないように十分緊密に配置される。付着に利用可能な提示可能な表面積の量は一般に下位平坦表面の1.0%未満である。典型的な態様では、ナノファイバーは直径約40nmであり、固体表面から上方に約20uMの高さまで立ち上がっている。従って、医療装置に見られる典型的な膜表面と異なり、本発明のナノワイヤー表面は不連続であり、スパイクされており、細胞付着を助長する規則的構造をもたない。実際に、本発明の表面は従来の膜とほとんど正反対であり、有孔固体表面ではなく、開放スパイク表面である。このユニークな形態により、該当ナノファイバーが疎水性であるか親水性であるかに関係なく通常のバイオフィルム付着を阻止すると考えられる。
【0218】
本明細書の各所に詳述するように、ナノファイバー成長法は平坦又は複雑な形状をもつ多様な基板上で実施することができる。即ち、本発明の各種基板は完全に被覆することもできるし、パターニングすることもできるし、特定位置にナノファイバーをもつこともできる。しかし、本発明の焦点を絞り易くするために、酸化ケイ素又は金属基板上のシリコンナノファイバーについて最も詳細に記載する。しかし、この場合も、各種材料からのナノファイバーと、プラスチック、金属及びセラミック基板上のその成長も予想される。ナノファイバー作製方法の汎用性により、ナノファイバー表面をもつ多様な製品を最終的に生体医療分野用に大規模商品化し易い。
【0219】
ナノファイバーを成長させる基板上の絶対表面積は増加するが、ファイバーは実表面積対体積比が低く、不連続であり、ナノスケールであるため、細胞が付着しにくいと考えられる。本発明のこれらの例証で使用するナノファイバー表面はエレクトロニクス用に作製し、この使用に最適化していないが、当然のことながら、このような表面はバイオフィルム蓄積も低下した。使用したシリコンワイヤーは直径〜40nm及び長さ50〜100umであり、4インチシリコン基板上に成長させた。ナノワイヤー作製方法を以下に記載する。本実施例では、この実験で使用したナノワイヤー断片は約0.25cm2とした。培地に導入する直前に100%エタノールに浸漬し、窒素流でブロー乾燥した。シリコンウェーハ対照(即ちナノワイヤーなし)もエタノールに浸漬し、ブロー乾燥した。S.epidermidisを35mmペトリ皿でLBブロスに入れ、6時間37℃で温和に振盪しながら増殖させた。次にウェーハ切片を培養液に入れ、24時間37℃で元の培地に放置した。24時間インキュベーション後にウェーハスライスを取り出し、新鮮な培地で短時間洗浄し、迅速に水に浸漬した後、30秒間熱固定した後に0.2%クリスタルバイオレット溶液で染色した。ウェーハセグメントを水で十分に濯いだ。ウェーハに付着した微生物を従来の明視野顕微鏡により可視化した。画像をデジタルカメラで撮影した。その結果、ナノワイヤー基板上の細菌はシリコンウェーハ対照に比較して約10分の1に減少した。ナノワイヤー層の厚さは顕微鏡の視野深度よりも大きいので、ナノワイヤー内に焦点を合わせることにより顕微鏡で定量を行った。
【0220】
ナノファイバー表面が哺乳動物細胞を排斥することを例証するために、CHO細胞を5%CO2雰囲気下に37℃の完全培地(Hams F12培地に10%胎仔ウシ血清を補充)で培養した。細胞培養液を加えた35mmペトリ皿にウェーハセグメントを入れた。コンフルエント培養液からトリプシン処理後にCHO細胞を完全培地中106個/mlの密度でペトリ皿に播種した。細胞を一晩接着させた後に24時間おきに顕微鏡で観察した。35mmペトリ皿の表面は最初の観察を行った48時間後にコンフルエントであった。ナノワイヤー表面に細胞増殖は直接観察されなかった。表面をナイフでスクラッチすることによりナノワイヤーを除去しておいた場合には細胞が接着し、増殖した。シリコンウェーハ対照は細胞でコンフルエントになった。これらの実験では、哺乳動物細胞増殖の完全な遅延と細菌増殖の約10分の1の低下が観察された。対照表面はナノワイヤーと化学的に一致していたので、細胞及び細菌増殖の低下はナノファイバー増大表面積基板のユニークな表面形態によると考えられる。
【0221】
S.epidermidisは医療装置の感染に関与する代表的細菌であるので本明細書の例証で使用した。更に、S.epidermidisは生体材料の評価に広く使用されており、生体材料を中心とする感染の主要種として認められている。S.aureus、Pseudomonas aeruginosa及びB群溶血性連鎖球菌等の生体材料関連感染に関与する他の細菌も本発明の態様の使用により防止できると考えられる。本明細書に例証するCHO細胞以外に、例えばMDCK、L−929及びHL60細胞等の他の一般的な組織培養株も本発明の態様の使用により防止できると考えられる。このような細胞株は広いダイバーシティの細胞型を表す。CHO細胞とMDCK細胞は上皮細胞の代表的なものであり、L−929細胞は結合組織の形成に関与しており、HL60株は免疫監視細胞である。従って、本発明のナノファイバー増大表面積はこれらの細胞型及び他の一般的なin vivo細胞型を防止できると考えられる。本明細書のin vitro例証で使用するナノファイバーはシリコンから作製され、本明細書の各所に詳述するように、シリコンナノワイヤーの合成については数種の方法が文献に報告されている。例えば、金属含有シリコンターゲットのレーザーアブレーション、Si/SiO2混合物の高温蒸着、及び金を触媒として使用する気相−液相−固相(VLS)成長が挙げられる。上記参照。場合により任意作製方法が使用されるが、半導体ナノワイヤー成長に広く使用されていることからナノワイヤー合成アプローチは一般にVLS成長である。このような方法については本明細書の他の箇所に記載している。
【0222】
上述したように、本発明のナノファイバー表面による主要なバイオフィルム防止手段は基板のユニークな形態によると考えられるが、このような基板が本質的な細胞忌避活性をもつようにすることも可能である。
【0223】
本発明のナノファイバー基板では種々の状況におけるバイオフィルム防止に個々に適応するように増殖に及ぼす表面親水性又は疎水性の影響も場合により変化させる。このような機能化はワイヤー長、直径及び基板上の密度の変動に従う。典型的なナノファイバー基板の酸化ケイ素表面層はその天然状態では極めて親水性である。水が表面を濡らし易く、均一に広がる。これは表面のウィッキング性が一因である。表面の機能化はワイヤーの表面に形成される天然酸化物層により助長される。このSiO2層はワイヤーの外側に官能基をもつように標準シラン化学を使用して修飾することができる。例えば、表面をヘキサメチルジシラン(BIDS)ガスで処理し、超疎水性にすることができる。上記参照。
iii)ナノファイバー表面への細胞外蛋白質の付着
【0224】
本明細書に記載するように、ナノファイバー表面は哺乳動物細胞又は細菌を増殖させにくい。しかし、哺乳動物細胞株を表面で増殖させると有利な場合もある。従って、本発明の態様は細胞外蛋白質又は他の部分をナノファイバーに付着することにより、このような細胞増殖を助長する。蛋白質をナノファイバーに堆積するには単純な非特異的吸着を利用することができる。他の態様はナノファイバー表面への細胞/蛋白質の共有結合を想定する。コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びラミニン等の公知細胞外結合機能をもつ蛋白質の使用が予想される。ナノファイバー基板と例えば骨等の生物材料や金属骨ピン等の医療装置のグラフト及び/又は結合を行う態様では、各種態様は基板上に異なるパターンのナノファイバーをもつことができる。従って、例えば、ナノファイバーは場合によりグラフト又は結合が行われる医療インプラントの領域のみに存在することができる。この場合も、標準蛋白質付着法を使用してナノファイバーと共有結合させることができる。
【0225】
更に、生体適合性及び/又は生体組込み用途を助長するために本発明のナノファイバー表面に各種ゾル−ゲルコーティングを堆積することができる。骨統合に関連する装置に関する従来の研究は骨成長を助長するためにチタンインプラント上に多孔質材料を使用していた。本発明の所定態様において、本発明は本発明のナノファイバー表面と共に同様の材料の付加を利用する。例えば、一般的なカルシウム系鉱物であるヒドロキシアパタイトを場合によりナノファイバー表面に堆積し、ナノファイバー表面との骨統合を助長することができる。ヒドロキシアパタイト堆積を行うには場合により通常のゾル−ゲル法を使用することができる。このようなヒドロキシアパタイトをコーティングしたナノファイバー表面は場合により骨統合を促進すると共に生物汚染防止性を示すという両面で有益であり、従って、適正な骨成長/治癒が行われる可能性が高まる。
【0226】
代替態様では、ナノワイヤーは実際に結晶質であるため、ナノワイヤーの直近にヒドロキシアパタイトの結晶化を誘導又は促進することができる。生体活性ガラスが整形外科用材料の成分として多年来使用され、骨統合が優れていることが示されているという事実に鑑みると、このような結果は意外なことではない。本発明によると、整形外科用インプラントの表面に大表面積生体活性ガラスを本質的に成長させ、表面形態を制御すると共に表面の生化学的性質を改変するために化学結合、吸着、及び本発明に詳細に記載する他の技術によりインプラントにプラットフォームを形成することができる。
【0227】
当業者に自明の通り、本発明は(ヒドロキシアパタイト及び骨成長に関する応用に加えて)広範な例えば適合性応用を実現するためにゾル−ゲル法によるセラミック型材料等の堆積の使用も含む。
XVIII)キット/システム
【0228】
所定態様では、本発明は本明細書に記載する方法を実施するためのキットを提供し、前記キットは場合により本発明の基板を含む。各種態様において、前記キットは1個以上のナノファイバー増大表面積基板(例えば1個以上のカテーテル、熱交換器、超疎水性表面又はナノファイバー増大表面積基板を含む1個以上の他の装置等)を含む。
【0229】
前記キットは更にナノファイバー増大表面積基板又は前記基板を含む任意装置を作製及び/又は使用するために付加的に使用される必要な任意試薬、装置、設備、及び材料を含むことができる。
【0230】
更に、キットは場合によりナノファイバー増大表面積基板の合成及び/又は前記ナノファイバーへの部分の付加及び/又は前記ナノファイバー構造の使用のための指示(即ちプロトコール)を含む説明書も含むことができる。好ましい説明書はキット内容物を利用するためのプロトコールを提供する。
【0231】
所定態様では、説明書は1種以上の装置(例えば医療装置等)の作製における本発明のナノファイバー基板の使用方法を教示する。説明書は場合により本発明のナノファイバー増大表面の作製及び/又は利用のための指示書(例えば紙、コンピューター読み取り可能なディスケット、CDもしくはDVD等の電子媒体、又は前記指示を与えるインターネットウェブサイトへのアクセス)を含む。
【0232】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細目に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記全技術及び装置は種々に組合せて使用することができる。本明細書に引用した全公報、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各公報、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の代表的付着性ナノファイバー構造の顕微鏡写真を示す。
【図2A】従来技術のステントとステントデリバリーカテーテルを示す。
【図2B】冠動脈等の患者の血管内の病変部位における図8Aのステントの配置を示す。
【図2C】ナノ構造表面をステントに配置する前の血管ステントの顕微鏡写真を示す。
【図2D】ステントの露出表面上の複数のナノファイバーの成長後の血管ステントの顕微鏡写真を示す。
【図3A】患者の体内の大動脈瘤の部位へナノ構造表面をもつ大動脈瘤グラフトを送達するための血管内大動脈人工デリバリーシステムを模式的に示す。
【図3B】患者の体内の大動脈で動脈瘤に隣接して配置したナノ構造表面をもつ血管内大動脈グラフトを示す。
【図4A】本発明による患者の大脳血管の側壁における動脈瘤の治療用神経血管カテーテルデリバリーシステムの進行を示す患者の頭部の詳細図を示す。
【図4B】患者の大脳血管における側壁動脈瘤を示す。
【図4C】図4Bの側壁動脈瘤の部位におけるナノ構造表面をもつパッチの配置を示す。
【図4D】頭蓋内動脈瘤とAV奇形の治療を強化するために本発明の教示に従ってナノ構造表面を付加することができる市販塞栓装置の1例(即ちCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標))である。
【図4E】頭蓋内動脈瘤とAV奇形の治療を強化するために本発明の教示に従ってナノ構造表面を付加することができる市販塞栓装置の1例(即ちCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標))である。
【図4F】頭蓋内動脈瘤とAV奇形の治療を強化するために本発明の教示に従ってナノ構造表面を付加することができる市販塞栓装置の1例(即ちCook,Inc.(Bloomington,IN)から市販されているHilal Embolization Microcoils(登録商標))である。
【図5】図5Aは端端吻合の実施用のナノ構造表面をもつ管状装置を示す。図5Bは端側吻合の実施用のナノ構造表面をもつTチューブ装置を示す。
【図6】図6Aは例証態様に従ってナノファイバーを付着した代表的整形外科用インプラント(この場合は股関節ステム)の斜視図である。図6Bは図6Aの6A−6A線における横断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノ構造コンポーネントを結合した1個以上の表面をもつ本体構造を含む医療装置。
【請求項2】
医療装置が体内もしくは体外装置、一時的もしくは永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、又は埋込型装置である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
複数のナノファイバーが平均長約1ミクロン〜少なくとも約500ミクロン、約5ミクロン〜少なくとも約150ミクロン、約10ミクロン〜少なくとも約125ミクロン、又は約50ミクロン〜少なくとも約100ミクロンである請求項3に記載の装置。
【請求項5】
複数のナノファイバーが平均直径約5nm〜少なくとも約1ミクロン、約5nm〜少なくとも約500nm、約20nm〜少なくとも約250nm、約20nm〜少なくとも約200nm、約40nm〜少なくとも約200nm、約50nm〜少なくとも約150nm、又は約75nm〜少なくとも約100nmである請求項3に記載の装置。
【請求項6】
複数のナノファイバーが平均密度約0.11本/平方ミクロン〜少なくとも約1000本/平方ミクロン、約1本/平方ミクロン〜少なくとも約500本/平方ミクロン、約10本/平方ミクロン〜少なくとも約250本/平方ミクロン、又は約50本/平方ミクロン〜少なくとも約100本/平方ミクロンである請求項3に記載の装置。
【請求項7】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項3に記載の装置。
【請求項8】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項3に記載の装置。
【請求項11】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを共有結合することにより前記1個以上の表面に付着又は他の方法で結合している請求項3に記載の装置。
【請求項12】
本体構造が少なくとも第1の材料から構成され、複数のナノ構造コンポーネントが少なくとも第1の材料に組込まれている請求項1に記載の装置。
【請求項13】
ナノ構造コンポーネントが本体構造の1個以上の表面に付着しており、医療装置が更に1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含む請求項1に記載の装置。
【請求項14】
複数のナノ構造コンポーネントが患者の身体の1個以上の組織表面に対する装置の接着性、非接着性、摩擦性、開存性、又は生物汚染防止の1種以上を強化する請求項1に記載の装置。
【請求項15】
ステントの1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む血管ステント。
【請求項16】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項15に記載のステント。
【請求項17】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項16に記載のステント。
【請求項18】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項15に記載のステント。
【請求項19】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項15に記載のステント。
【請求項20】
ナノファイバーがステントの1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項16に記載のステント。
【請求項21】
ナノファイバーがステントの1個以上の表面にナノファイバーを別個に共有結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項16に記載のステント。
【請求項22】
ステントがNitinol、ニッケル合金、錫合金、ステンレス鋼、コバルト、クロム、金、ポリマー、又はセラミックから選択される1種以上の材料から作製される請求項15に記載のステント。
【請求項23】
ステントがナノ構造表面に直接吸着させるか又は1個以上のシラン基の使用により結合した薬剤化合物を含む請求項15に記載のステント。
【請求項24】
ステントがナノ構造表面に吸着させるか又は1個以上のリンカー分子の使用により結合した薬剤化合物を含む請求項15に記載のステント。
【請求項25】
患者の体内で動脈瘤の領域に配置されるように構成されたグラフト部材を含み、前記グラフト部材がグラフト部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む動脈瘤修復装置。
【請求項26】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属又は金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項26に記載の装置。
【請求項28】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項25に記載の装置。
【請求項29】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項25に記載の装置。
【請求項30】
ナノファイバーがグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項26に記載の装置。
【請求項31】
ナノファイバーがグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項26に記載の装置。
【請求項32】
グラフト部材が処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製される請求項25に記載の装置。
【請求項33】
グラフト部材がDacron、Teflon、金属もしくは合金メッシュ、セラミック又はガラス繊維から選択される合成ポリマーから作製される請求項25に記載の装置。
【請求項34】
グラフト部材がグラフト部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性コーティングを含む請求項25に記載の装置。
【請求項35】
グラフト部材が患者の大動脈内の動脈瘤の領域に配置されるように構成されている請求項25に記載の装置。
【請求項36】
グラフト部材が脳の動脈瘤の領域に血液を供給するか又は前記領域から血液を供給する血管の側壁に近接して配置されるように構成されている請求項25に記載の装置。
【請求項37】
端端又は端側吻合で第1の血管を第2の血管と結合することにより患者に吻合を形成するための装置であって、管状部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む管状部材を含む前記装置。
【請求項38】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項37に記載の装置。
【請求項39】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項38に記載の装置。
【請求項40】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項37に記載の装置。
【請求項41】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項37に記載の装置。
【請求項42】
ナノファイバーが管状部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項38に記載の装置。
【請求項43】
ナノファイバーが管状部材の1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項38に記載の装置。
【請求項44】
管状部材が処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製される請求項37に記載の装置。
【請求項45】
管状部材が端側吻合を実施するためのTチューブを含む請求項37に記載の装置。
【請求項46】
管状部材が管状部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含む請求項37に記載の装置。
【請求項47】
管状部材が円形、半円形、楕円形、及び多角形から選択される横断面形状をもつ請求項37に記載の装置。
【請求項48】
第1の血管と第2の血管の一方が合成バイパスグラフト血管を含む請求項37に記載の装置。
【請求項49】
管状部材がストレートチューブを含む請求項37に記載の装置。
【請求項50】
本体構造の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む本体構造を含む埋込型整形外科用装置。
【請求項51】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項50に記載の装置。
【請求項52】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項51に記載の装置。
【請求項53】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項50に記載の装置。
【請求項54】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項50に記載の装置。
【請求項55】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項51に記載の装置。
【請求項56】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項51に記載の装置。
【請求項57】
本体構造が処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製される請求項50に記載の装置。
【請求項58】
本体構造が本体構造の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含む請求項50に記載の装置。
【請求項59】
埋込型整形外科用装置が人工膝関節、人工股関節、軟骨を置換又は補強するものを含む足関節、肘関節、手関節、及び肩関節インプラント、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、及び尺骨の骨折修復及び外部固定用等の長骨インプラント、固定装置を含む脊髄インプラント、頭蓋骨固定装置を含む顎顔面インプラント、人工骨置換、歯科用インプラント、ポリマー、樹脂、金属、合金、プラスチック及びその組合せから構成される整形外科用セメント及び接着剤、釘、ネジ、プレート、固定装置、ワイヤー及びピンの少なくとも1種から選択される請求項50に記載の装置。
【請求項60】
複数のナノ構造コンポーネントを結合したベースメンブレン又はマトリックスを含む神経再生用スカフォールドを提供するためのバイオエンジニアドスカフォールド装置。
【請求項61】
メンブレン又はマトリックスが天然もしくは合成ポリマー、導電性ポリマー、金属、合金、セラミック、グラスファイバー、又はシリコーンの1種以上から作製される請求項60に記載のスカフォールド装置。
【請求項62】
メンブレン又はマトリックスが導電性ポリマーから作製される請求項61に記載のスカフォールド装置。
【請求項63】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む請求項60に記載の装置。
【請求項64】
メンブレン又はマトリックスのナノ構造表面が軸索伸長と機能的神経活動を助長するために1種以上の薬剤、細胞、繊維芽細胞、神経増殖因子(NGF)、細胞播種用化合物、神経栄養増殖因子もしくは前記因子を産生する遺伝子組換え細胞、VEGF、又はラミニンを含浸させるか又は結合している請求項60に記載の装置。
【請求項65】
複数のナノ構造コンポーネントが生体適合性ポリマーに埋込まれている請求項60に記載の装置。
【請求項66】
表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む子宮又は卵管内植込み用医療装置。
【請求項67】
1個以上の表面が体液の結晶化を防ぐように構成された医療装置であって、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む前記装置。
【請求項68】
1個以上の表面が血栓形成を防ぐように構成された医療装置であって、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む前記装置。
【請求項69】
1個以上の表面が組織浸潤を防ぐように構成された医療装置であって、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含み、前記ナノファイバーが疎水性に構成されている前記装置。
【請求項70】
表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む医療装置と患者を接触させる段階を含む患者の治療方法。
【請求項71】
患者の身体に薬剤化合物を投与する方法であって、
少なくとも1個の表面と、複前記表面に結合した複数のナノファイバーと、前記複数のナノファイバーに結合した薬剤化合物を含む薬剤溶出装置を提供する段階と;
前記薬剤溶出装置を患者の体内に導入する段階と;
患者の体内に薬剤化合物を送達する段階を含む前記方法。
【請求項72】
薬剤溶出装置が冠動脈ステントを含む請求項71に記載の方法。
【請求項73】
薬剤化合物がパクリタキセル又はシロリムスを含む請求項72に記載の方法。
【請求項74】
薬剤化合物が薬剤溶出装置のナノファイバー表面に吸着されている請求項71に記載の方法。
【請求項75】
薬剤化合物が1個以上のシラン基の使用によりナノファイバー表面に結合している請求項71に記載の方法。
【請求項76】
薬剤化合物が1個以上のリンカー分子の使用によりナノファイバー表面に結合している請求項71に記載の方法。
【請求項77】
薬剤化合物が薬剤溶出装置のナノファイバー表面に共有又はイオン結合している請求項71に記載の方法。
【請求項78】
薬剤溶出装置が冠動脈ステントを含み、薬剤化合物の送達が冠動脈内の病変部位で薬剤化合物を溶出させることを含む請求項71に記載の方法。
【請求項79】
薬剤化合物が冠動脈ステントの拡張後に病変部位で冠動脈内に溶出する請求項78に記載の方法。
【請求項80】
薬剤化合物が時間をかけてゆっくりと溶出するようにナノファイバー表面が構成されている請求項79に記載の方法。
【請求項81】
ナノファイバーの耐久性を強化するように複数のナノファイバーがポリマーコーティングに埋込まれている請求項71に記載の方法。
【請求項82】
薬剤化合物がデキサメタゾン、M−プレドニソロン、インターフェロン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、スタチン、シクロスポリン、トラニラスト、及びバイオレスト等の抗炎症性免疫調節剤;タキソール、メトトレキセート、アクチノマイシン、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、RestenASE、及びPCNAリボザイム等の抗増殖性化合物;バチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフギノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコール等の遊走抑制剤;並びにVEGF、エストラジオール、抗体、NO供与剤、及びBCP671等の治癒と再内皮細胞化を促進する化合物の1種以上から選択される請求項71に記載の方法。
【請求項1】
複数のナノ構造コンポーネントを結合した1個以上の表面をもつ本体構造を含む医療装置。
【請求項2】
医療装置が体内もしくは体外装置、一時的もしくは永久的インプラント、ステント、血管グラフト、吻合装置、動脈瘤修復装置、塞栓装置、又は埋込型装置である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
複数のナノファイバーが平均長約1ミクロン〜少なくとも約500ミクロン、約5ミクロン〜少なくとも約150ミクロン、約10ミクロン〜少なくとも約125ミクロン、又は約50ミクロン〜少なくとも約100ミクロンである請求項3に記載の装置。
【請求項5】
複数のナノファイバーが平均直径約5nm〜少なくとも約1ミクロン、約5nm〜少なくとも約500nm、約20nm〜少なくとも約250nm、約20nm〜少なくとも約200nm、約40nm〜少なくとも約200nm、約50nm〜少なくとも約150nm、又は約75nm〜少なくとも約100nmである請求項3に記載の装置。
【請求項6】
複数のナノファイバーが平均密度約0.11本/平方ミクロン〜少なくとも約1000本/平方ミクロン、約1本/平方ミクロン〜少なくとも約500本/平方ミクロン、約10本/平方ミクロン〜少なくとも約250本/平方ミクロン、又は約50本/平方ミクロン〜少なくとも約100本/平方ミクロンである請求項3に記載の装置。
【請求項7】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項3に記載の装置。
【請求項8】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項3に記載の装置。
【請求項11】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを共有結合することにより前記1個以上の表面に付着又は他の方法で結合している請求項3に記載の装置。
【請求項12】
本体構造が少なくとも第1の材料から構成され、複数のナノ構造コンポーネントが少なくとも第1の材料に組込まれている請求項1に記載の装置。
【請求項13】
ナノ構造コンポーネントが本体構造の1個以上の表面に付着しており、医療装置が更に1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含む請求項1に記載の装置。
【請求項14】
複数のナノ構造コンポーネントが患者の身体の1個以上の組織表面に対する装置の接着性、非接着性、摩擦性、開存性、又は生物汚染防止の1種以上を強化する請求項1に記載の装置。
【請求項15】
ステントの1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む血管ステント。
【請求項16】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項15に記載のステント。
【請求項17】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属及び金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、並びに脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項16に記載のステント。
【請求項18】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項15に記載のステント。
【請求項19】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項15に記載のステント。
【請求項20】
ナノファイバーがステントの1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項16に記載のステント。
【請求項21】
ナノファイバーがステントの1個以上の表面にナノファイバーを別個に共有結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項16に記載のステント。
【請求項22】
ステントがNitinol、ニッケル合金、錫合金、ステンレス鋼、コバルト、クロム、金、ポリマー、又はセラミックから選択される1種以上の材料から作製される請求項15に記載のステント。
【請求項23】
ステントがナノ構造表面に直接吸着させるか又は1個以上のシラン基の使用により結合した薬剤化合物を含む請求項15に記載のステント。
【請求項24】
ステントがナノ構造表面に吸着させるか又は1個以上のリンカー分子の使用により結合した薬剤化合物を含む請求項15に記載のステント。
【請求項25】
患者の体内で動脈瘤の領域に配置されるように構成されたグラフト部材を含み、前記グラフト部材がグラフト部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む動脈瘤修復装置。
【請求項26】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属又は金属合金、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項26に記載の装置。
【請求項28】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項25に記載の装置。
【請求項29】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項25に記載の装置。
【請求項30】
ナノファイバーがグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項26に記載の装置。
【請求項31】
ナノファイバーがグラフト部材の1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項26に記載の装置。
【請求項32】
グラフト部材が処理済み天然組織、実験室で作製した組織、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製される請求項25に記載の装置。
【請求項33】
グラフト部材がDacron、Teflon、金属もしくは合金メッシュ、セラミック又はガラス繊維から選択される合成ポリマーから作製される請求項25に記載の装置。
【請求項34】
グラフト部材がグラフト部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性コーティングを含む請求項25に記載の装置。
【請求項35】
グラフト部材が患者の大動脈内の動脈瘤の領域に配置されるように構成されている請求項25に記載の装置。
【請求項36】
グラフト部材が脳の動脈瘤の領域に血液を供給するか又は前記領域から血液を供給する血管の側壁に近接して配置されるように構成されている請求項25に記載の装置。
【請求項37】
端端又は端側吻合で第1の血管を第2の血管と結合することにより患者に吻合を形成するための装置であって、管状部材の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む管状部材を含む前記装置。
【請求項38】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項37に記載の装置。
【請求項39】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項38に記載の装置。
【請求項40】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項37に記載の装置。
【請求項41】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項37に記載の装置。
【請求項42】
ナノファイバーが管状部材の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項38に記載の装置。
【請求項43】
ナノファイバーが管状部材の1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項38に記載の装置。
【請求項44】
管状部材が処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製される請求項37に記載の装置。
【請求項45】
管状部材が端側吻合を実施するためのTチューブを含む請求項37に記載の装置。
【請求項46】
管状部材が管状部材の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含む請求項37に記載の装置。
【請求項47】
管状部材が円形、半円形、楕円形、及び多角形から選択される横断面形状をもつ請求項37に記載の装置。
【請求項48】
第1の血管と第2の血管の一方が合成バイパスグラフト血管を含む請求項37に記載の装置。
【請求項49】
管状部材がストレートチューブを含む請求項37に記載の装置。
【請求項50】
本体構造の1個以上の表面と結合した複数のナノ構造コンポーネントを含む本体構造を含む埋込型整形外科用装置。
【請求項51】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバーを含む請求項50に記載の装置。
【請求項52】
複数のナノファイバーがシリコン、ガラス、石英、プラスチック、金属、ポリマー、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO1、SiO2、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリマー、及び脂肪族ポリマーから構成される群から独立して選択される材料を含む請求項51に記載の装置。
【請求項53】
ナノ構造コンポーネントが中空ナノチューブ構造を含む請求項50に記載の装置。
【請求項54】
ナノ構造コンポーネントがナノワイヤーを含む請求項50に記載の装置。
【請求項55】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを直接成長させることにより前記1個以上の表面に付着している請求項51に記載の装置。
【請求項56】
ナノファイバーが本体構造の1個以上の表面にナノファイバーを結合することにより前記1個以上の表面に付着している請求項51に記載の装置。
【請求項57】
本体構造が処理済み天然組織、実験室で作製した組織、変性動物組織、ステンレス鋼、金属、合金、セラミック又はガラス繊維、ポリマー、プラスチック、シリコーン、及び合成ポリマー繊維の1種以上から作製される請求項50に記載の装置。
【請求項58】
本体構造が本体構造の1個以上のナノ構造表面に付設された1個以上の生体適合性又は生体活性コーティングを含む請求項50に記載の装置。
【請求項59】
埋込型整形外科用装置が人工膝関節、人工股関節、軟骨を置換又は補強するものを含む足関節、肘関節、手関節、及び肩関節インプラント、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、及び尺骨の骨折修復及び外部固定用等の長骨インプラント、固定装置を含む脊髄インプラント、頭蓋骨固定装置を含む顎顔面インプラント、人工骨置換、歯科用インプラント、ポリマー、樹脂、金属、合金、プラスチック及びその組合せから構成される整形外科用セメント及び接着剤、釘、ネジ、プレート、固定装置、ワイヤー及びピンの少なくとも1種から選択される請求項50に記載の装置。
【請求項60】
複数のナノ構造コンポーネントを結合したベースメンブレン又はマトリックスを含む神経再生用スカフォールドを提供するためのバイオエンジニアドスカフォールド装置。
【請求項61】
メンブレン又はマトリックスが天然もしくは合成ポリマー、導電性ポリマー、金属、合金、セラミック、グラスファイバー、又はシリコーンの1種以上から作製される請求項60に記載のスカフォールド装置。
【請求項62】
メンブレン又はマトリックスが導電性ポリマーから作製される請求項61に記載のスカフォールド装置。
【請求項63】
複数のナノ構造コンポーネントが複数のナノファイバー又はナノワイヤーを含む請求項60に記載の装置。
【請求項64】
メンブレン又はマトリックスのナノ構造表面が軸索伸長と機能的神経活動を助長するために1種以上の薬剤、細胞、繊維芽細胞、神経増殖因子(NGF)、細胞播種用化合物、神経栄養増殖因子もしくは前記因子を産生する遺伝子組換え細胞、VEGF、又はラミニンを含浸させるか又は結合している請求項60に記載の装置。
【請求項65】
複数のナノ構造コンポーネントが生体適合性ポリマーに埋込まれている請求項60に記載の装置。
【請求項66】
表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む子宮又は卵管内植込み用医療装置。
【請求項67】
1個以上の表面が体液の結晶化を防ぐように構成された医療装置であって、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む前記装置。
【請求項68】
1個以上の表面が血栓形成を防ぐように構成された医療装置であって、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む前記装置。
【請求項69】
1個以上の表面が組織浸潤を防ぐように構成された医療装置であって、表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含み、前記ナノファイバーが疎水性に構成されている前記装置。
【請求項70】
表面と前記表面に結合した複数のナノファイバーを含む医療装置と患者を接触させる段階を含む患者の治療方法。
【請求項71】
患者の身体に薬剤化合物を投与する方法であって、
少なくとも1個の表面と、複前記表面に結合した複数のナノファイバーと、前記複数のナノファイバーに結合した薬剤化合物を含む薬剤溶出装置を提供する段階と;
前記薬剤溶出装置を患者の体内に導入する段階と;
患者の体内に薬剤化合物を送達する段階を含む前記方法。
【請求項72】
薬剤溶出装置が冠動脈ステントを含む請求項71に記載の方法。
【請求項73】
薬剤化合物がパクリタキセル又はシロリムスを含む請求項72に記載の方法。
【請求項74】
薬剤化合物が薬剤溶出装置のナノファイバー表面に吸着されている請求項71に記載の方法。
【請求項75】
薬剤化合物が1個以上のシラン基の使用によりナノファイバー表面に結合している請求項71に記載の方法。
【請求項76】
薬剤化合物が1個以上のリンカー分子の使用によりナノファイバー表面に結合している請求項71に記載の方法。
【請求項77】
薬剤化合物が薬剤溶出装置のナノファイバー表面に共有又はイオン結合している請求項71に記載の方法。
【請求項78】
薬剤溶出装置が冠動脈ステントを含み、薬剤化合物の送達が冠動脈内の病変部位で薬剤化合物を溶出させることを含む請求項71に記載の方法。
【請求項79】
薬剤化合物が冠動脈ステントの拡張後に病変部位で冠動脈内に溶出する請求項78に記載の方法。
【請求項80】
薬剤化合物が時間をかけてゆっくりと溶出するようにナノファイバー表面が構成されている請求項79に記載の方法。
【請求項81】
ナノファイバーの耐久性を強化するように複数のナノファイバーがポリマーコーティングに埋込まれている請求項71に記載の方法。
【請求項82】
薬剤化合物がデキサメタゾン、M−プレドニソロン、インターフェロン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、スタチン、シクロスポリン、トラニラスト、及びバイオレスト等の抗炎症性免疫調節剤;タキソール、メトトレキセート、アクチノマイシン、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、RestenASE、及びPCNAリボザイム等の抗増殖性化合物;バチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフギノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコール等の遊走抑制剤;並びにVEGF、エストラジオール、抗体、NO供与剤、及びBCP671等の治癒と再内皮細胞化を促進する化合物の1種以上から選択される請求項71に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2007−533371(P2007−533371A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501953(P2007−501953)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/006807
【国際公開番号】WO2005/084582
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/006807
【国際公開番号】WO2005/084582
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】
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