説明

プラズマ処理装置およびこのプラズマ処理装置を用いた半導体製造方法

【課題】 メートル級の大面積基板を処理するプラズマ処理装置において、真空槽内外の圧力差で押されることによって真空容器の開口部に設置されたプラズマ電極が変形することを防ぎ、プラズマ処理の均一性を向上する。
【解決手段】第一の真空槽5の外部でプラズマ電極4を取り囲むように第二の真空槽11を設置し、内部を真空排気する。プラズマ電極4のシャワープレート19側と背面板18側での圧力差を減らすことができ、圧力差で押されることによるプラズマ電極4の変形を防ぐことができる。これにより、プラズマ処理の均一性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマを用いた薄膜形成プロセス、エッチングプロセスなどに係るプラズマ処理装置およびこのプラズマ処理装置を用いた半導体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマ処理装置では、開口部を有する容器にプラズマ電極が設置され、真空槽が形成されている。真空槽内には、プラズマ電極と略平行に基板ステージが設置され、プラズマ電極には、高周波電源から高周波電圧が印加される。プロセスガスは、プラズマ電極に設けられたシャワープレートから真空槽内に導入され、導入されたガスは、高周波電圧でプラズマ化されて、化学的に活性なラジカルが生成される。プロセスガスとして、例えばSiHといった材料ガスを用いるとSi薄膜が形成され、例えばCFといったエッチングガスを用いると基板表面をエッチング処理することができる。(例えば特許文献1)
【0003】
近年、このようなプラズマ処理装置を用いて、プラズマエッチング処理や、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法による液晶ディスプレイや薄膜シリコン太陽電池の製造が盛んに行われている。例えば薄膜シリコン太陽電池に用いられる微結晶シリコン薄膜の堆積では、高品質膜の形成にはプラズマ電極と基板との間の距離を、アモルファスシリコンの成膜時と比較して非常に狭くする必要があり、具体的には10mm以下とされることが多い。(例えば特許文献2)
【0004】
さらに、薄膜シリコン太陽電池の量産においては、生産コスト低減の観点から、基板サイズが1m×1m以上の大面積基板が用いられるようになってきている。そして、大面積基板上に堆積するシリコン薄膜が面内において±10%以内の膜質・膜厚分布となるような技術が開発されている。また、大面積基板を処理するプラズマエッチングプロセスについても同様に面内均一性が求められている。(例えば特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−223130号公報(第3−6頁、図1)
【特許文献2】特開2006−216921号公報(第5−8頁、図5)
【特許文献3】特開2002−16006号公報(第6−10頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなメートル級の大面積基板を処理する大面積プラズマ処理装置にあっては、開口部を有する容器の開口部に設置されたプラズマ電極が、大気圧によって真空槽内部の方向に力を受けて変形してプラズマ電極と基板との距離が一様でなくなり、基板上に堆積する薄膜の膜質や膜厚の面内均一性が悪くなるという問題点があった。
【0007】
例えば、サイズ1.3m×1.6mで厚さ60mmのAl製プラズマ電極を考えると、真空槽内の圧力を10Torr以下とした時、プラズマ電極周縁部では影響はほとんど無いが、プラズマ電極中央部では真空槽内部の方向へ約1mm撓むこととなる。
【0008】
例えば、薄膜シリコン太陽電池に用いる微結晶シリコンの成膜時には、プラズマ電極と基板との距離を10mm以内にすることが多いため、1mmの変化は堆積する膜に大きな影響を与える。
【0009】
例として、プラズマ電極と基板との距離を6mmに設定して、そこからプラズマ電極と基板との距離を変化させた時の成膜速度の変化を調べた結果を図7に示す。プラズマ電極と基板との距離が1mm変わっただけで成膜速度が最大で約35%変化した。
【0010】
薄膜シリコン太陽電池では、膜質・膜厚の面内分布±10%が望ましいが、これを達成するためには、プラズマ電極と基板との距離は面内で0.1mm程度の精度が求められる。プラズマ電極の厚さをより厚くしてプラズマ電極自体の強度を上げることは、プラズマ電極の変形を防ぐために有効な手段ではあるが、プラズマ電極の厚さを厚くすることだけによってプラズマ電極の変形を0.1mm程度に抑えることは現実的ではない。
【0011】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、真空槽内外の圧力差によるプラズマ電極の変形を防ぐことによって成膜やエッチングなどのプラズマ処理の均一性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るプラズマ処理装置は、第一の真空槽の外部でプラズマ電極を取り囲み、第二の真空槽を形成したものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、第一の真空槽の外部でプラズマ電極を取り囲み、第二の真空槽を形成し、内部を真空排気したことによって、プラズマ電極のシャワープレート側と背面板側での圧力差を減らすことができ、圧力差で押されることによるプラズマ電極の変形を防ぐことができる。これにより、プラズマ処理の均一性が向上するという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1によるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図2】火花電圧とpd積の関係を示すグラフ(パッシェン曲線)である。
【図3】本発明の実施の形態2によるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3によるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4によるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5によるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図7】成膜速度とプラズマ電極−基板間距離との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるプラズマ処理装置を示す断面図である。まず、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略について説明する。
【0016】
図1に示すように、第一の容器部1aの開口部2aに、例えばアルミナやポリテトラフルオロエチレンなどの絶縁体3aを介して、プラズマ電極4が気密に設置される。これら第一の容器部1aとプラズマ電極4によって第一の真空槽5が形成されている。第一の真空槽5の内部には上下動可能な基板保持部である基板ステージ6がプラズマ電極4と対向する面が互いに略平行となるように設置されている。第一の真空槽5の内部は、第一の容器部1aの側壁7aに接続された第一の真空排気部8によって排気され、所定の真空度に設定される。また、第一の真空槽5の外部でプラズマ電極4を取り囲む、開口部9を有する第二の容器部10が、第一の容器部1aの開口部2aに気密に載置され、第二の真空槽11が形成される。その内部は第二の容器部10の側壁12に接続された第二の真空排気部13によって排気され、所定の真空度に設定される。
【0017】
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の各構成について説明する。基板ステージ6は、電気的に接地されており、その上面に基板15が載置される構造となっている。基板ステージ6のサイズは、メートル級の大面積基板を載置できる大きさに設定される。また、基板ステージ6には、図示しない加熱ヒーターが内蔵されており、基板15を所定の温度に保つことができる。
【0018】
プラズマ電極4は、第一の容器部1aの開口部2aの端面16aに載置された絶縁体3aを介して第一の容器部1aに気密に設置される。端面16aは基板15の処理対象面17と略平行であり、第一の容器部1aの外側方向に拡大されている。このプラズマ電極4は、高周波電圧が印加される背面板18と、多数の貫通孔が形成されたシャワープレート19と側壁20を備え、背面板18、シャワープレート19及び側壁20との間にガス室21が形成されている。
【0019】
第二の真空槽11の外部に設置されたプロセスガス供給部25aが、第二の容器部10の底壁26に設けられた例えばアルミナやポリテトラフルオロエチレンなどの絶縁体27aを介して背面板18と接続されている。
【0020】
背面板18には、第二の真空槽11の外部に設置されたインピーダンス整合器30aを介して、同じく第二の真空槽11の外部に設置された高周波電源31aが接続されている。インピーダンス整合器30aと背面板18とは第二の容器部10の底壁26に設けられた例えばアルミナやポリテトラフルオロエチレンなどの絶縁体32aを介して接続されている。高周波電源31aの発振周波数は、13.56MHzや27.12MHzなどのRF帯が一般的であるが、30〜150MHzといったVHF(Very High Frequency)帯が用いられることもある。
【0021】
第二の容器部10は、第一の真空槽5の外部で背面板18を取り囲むように、第一の容器部1aの外側に拡大された開口部2aの端面16aに気密に載置される。これらによって第二の真空槽11が形成されている。第二の容器部10の材質としては、例えばステンレスやAlなどが用いられる。
【0022】
また、第二の容器部10は、プロセスガス供給部25aや高周波電源31aの存する第二の真空槽11の外部から大気圧で押されて少々内側に変形しても、第二の容器部10の内壁35がプラズマ電極4に接触しなければプロセスの均一性には影響を与えない。よって、真空封止でき、かつ、内部の真空と大気圧との差圧によって受ける力で変形してプラズマ電極4に接触しないだけの強度を持っていれば、特に強い強度を必要とはしない。
【0023】
プロセスガス供給部25aとプラズマ電極4、インピーダンス整合器30aとプラズマ電極4とは、それぞれ第二の容器部10の底壁26に設けられた絶縁体27a、絶縁体32aを介して接続されている。そのため、第二の容器部10は第一の容器部1aと同電位で接地されている。これらの絶縁体27a、絶縁体32aは真空封止機能も持ち合せているため、第二の真空槽11内は真空保持が可能である。
【0024】
次に、第二の真空槽11内の圧力設定等について説明する。第二の真空槽11内を第一の真空槽5内の圧力に近づけると、圧力差によるプラズマ電極4の変形を防ぐことができる。第二の真空槽11内を適切な圧力に設定することで、プラズマ電極4と基板15との距離の面内精度を0.1mm以内にすることもできる。第二の真空槽11内は所定の圧力であれば常時排気し続ける必要は無く、所定の圧力で真空封止してもよい。第二の真空槽11内の圧力としては、大気圧以下であれば効果があるが、例えば100Torr以下、より好ましくは第一の真空槽5内の圧力と同程度の圧力であるのが望ましい。
【0025】
また、第二の真空槽11内の圧力設定においては、プロセス中に第二の真空槽11内に放電が生じないように設定することが好ましい。ここで、第二の真空槽11内での放電防止について図2を用いて説明する。図2は、放電が生じる電圧(火花電圧)と、ガスの圧力pと電極間距離dの積pdの関係を示したものでパッシェン曲線と呼ばれる。火花電圧は、あるpd積の値で最小値をとり、そこからpd積を小さくすれば単調増加し、pd積を大きくしても同様に単調増加する。つまり、火花電圧の最小値を取るpd積の値から、pd積を小さくすればするほど、また、大きくすればするほど放電は生じにくくなる。ただし、火花電圧の最小値や曲線の形状はガスの種類によって変わる。よって第二の真空槽11内での放電を防ぐためには、第二の真空槽11内の圧力pと、第二の容器部10の内壁35とプラズマ電極4との間の最短距離dの積pを以下に説明するような適切な値に設定すればよい。
【0026】
即ち、第一の真空槽5内の圧力pと、プラズマ電極4と基板15との間の最短距離dの積pは、通常、パッシェン曲線の最小値近傍の値に設定されるので、pと比べてpを充分小さく、または充分大きくなるように設定すれば第二の真空槽11内での放電を防止できる。具体的には、pを充分小さくする場合であれば、p≧10p、より好ましくはp≧100p、pを充分大きくする場合であれば、10p≦p、より好ましくは100p≦p、となるように設定すればよい。
【0027】
次に、このような構成のプラズマ処理装置を用いた半導体製造方法について、微結晶シリコン薄膜の形成方法を例にとって説明する。まず、第一の真空槽5内の基板ステージ6上に基板15を設置する。次に、第一の真空槽5内を第一の真空排気部8によって真空排気し、所定の真空度にする。基板ステージ6に内蔵された図示しない加熱ヒーターによって、基板15は所定の温度に保たれる。この状態で、プロセスガス供給部25aの図示しないガスバルブを開き、SiHガスとHガスを供給する。供給されたガスはガス室21内で混合され、シャワープレート19を通して第一の真空槽5内へと均一に噴出される。第一の真空槽5内は所定の圧力、例えば1〜20Torrで一定に保たれる。
【0028】
一方、第二の真空槽11内は、第二の真空排気部13によって真空排気され、所定の圧力で保たれる。
【0029】
この時、第一の真空槽5内と第二の真空槽11内の真空排気を同時に始め、圧力差があまり生じないようにしながら排気を行うことが好ましい。
【0030】
この状態で、背面板18に高周波電圧を印加すると、第一の真空槽5内にSiH/H混合プラズマが生じ、基板15上に均一に微結晶シリコン薄膜が形成される。
【0031】
所定の厚さの微結晶シリコン薄膜が形成された後、高周波電源31aからの電力供給を止め、図示しないガスバルブを閉じ、第一の真空槽5内を充分に排気して、基板ステージ6から基板15を第一の真空槽5外に搬送して、薄膜形成処理が終了する。
【0032】
提案される具体的な装置としては以下のようなものが想定される。第一の真空槽5内に設けられた1.1m×1.4mのガラス基板15を載置できる基板ステージ6と、サイズ1.3m×1.6mで厚さ20mmのAl製のプラズマ電極4が対向して設置される。そして、プラズマ電極4の背面板18を取り囲む厚さ50mmのステンレス製の第二の容器部10を設ける。第二の容器部10の内壁35とプラズマ電極4との最短距離は10mmとする。
【0033】
また、具体的な成膜条件としては以下の条件が挙げられる。第一の真空槽5内に供給するSiHガス流量:200sccm、Hガス流量:9800sccm(SiH流量比=2%)、第一の真空槽5内の圧力:10Torr、印加高周波周波数:27.12MHz、印加高周波電力密度:1.5W/cm、プラズマ電極4と基板15との距離:10mm、基板ステージ6の温度:200℃、第二の真空槽11内の圧力:10−2Torr、成膜時間:12分。
【0034】
この時、p=10−1Torr・m、p=10−4Torr・mであり、p≧100pを満たしている。
【0035】
本実施の形態では、以上のような構成としたことで、プラズマ電極4のシャワープレート19側と背面板18側での圧力差を減らすことができ、圧力差で押されることによるプラズマ電極4の変形を防ぐことができる。これにより、膜質・膜厚の均一性が向上するという効果がある。
【0036】
また、プラズマ電極4を、第一の容器部1aの開口部2aの端面16aに載置された絶縁体3aを介して載置することで、プラズマ電極を安定させることができる。
【0037】
さらに、第二の真空槽11内の圧力を適切に設定することで、プラズマ電極4と基板15との距離の面内精度が0.1mm以内とすることもできる。
【0038】
また、第二の真空槽11を設けることによって、プラズマ電極4にかかる力は小さくなるため、プラズマ電極4の厚さをより薄くすることができる。そのため、第二の真空槽11を設けることによるコスト増はあるものの、あまり大きなものではない。
【0039】
ここでは、10p≦p又はp≧10pとしたので、プロセス中に第二の真空槽11内で放電が生じることを防止する効果が得られる。
【0040】
また、本実施の形態では、微結晶シリコン薄膜の形成を例にとって説明したが、プロセスガスに例えばCF、NFといったエッチングガスを用いれば、基板15の表面に所定のエッチングを上記同様、面内均一に行うことができ、大面積基板を処理するプラズマ処理プロセス一般に適用しても同様の効果が得られる。
【0041】
本実施の形態では、ガス流量、圧力、電力、等の成膜パラメータ、プラズマ電極4のサイズ、厚さ、第二の容器部10の厚さ等を固定しているが、これらの値に限ることはない。
【0042】
尚、本実施の形態では、第一の容器部1aの開口部2aの端面16aは、第一の容器部1aの外側方向に拡大されている。しかし、第二の容器部10の内壁35とプラズマ電極4との距離を充分広くとれるならば、他の構成でもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、第一の真空排気部8と第二の真空排気部13は、それぞれ第一の容器部1aの側壁7a、第二の容器部10の側壁12に接続した。しかし、第一の真空排気部8は、第一の容器部1aの底壁36aに接続してもよい。同様に、第二の真空排気部13に関しても、第二の容器部10の底壁26に接続してもよい。また、第二の真空排気部13は、第一の真空排気部8と共通としてもよい。共通とすることで真空排気部を新たに設ける必要が無くなりコストを抑えることができる。
【0044】
加えて、プロセスガス供給部25aは背面板18と接続し、インピーダンス整合器30aも背面板18に接続した。しかし、これらは、プラズマ電極4の側壁20に接続してもよい。そして、プロセスガス供給部25aとプラズマ電極4、インピーダンス整合器30aと背面板18とは、それぞれ第二の容器部10の底壁26に絶縁体27a、絶縁体32aを設けて接続した。しかし、これらはそれぞれ第二の容器部10の側壁12に絶縁体27a、絶縁体32aを設けて接続してもよい。プロセスガス供給部25aとインピーダンス整合器30aを第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20に接続することで、装置の高さを低くすることができる。また、第二の容器部10の壁に絶縁体27a、絶縁体32aを設ける代わりに、それぞれ、ガス配管の材質に絶縁体を用いたり、インピーダンス整合器30aと背面板18との接続の導線に絶縁被覆を施したりしてもよい。
【0045】
さらに、本実施の形態では、第一の真空槽5内と第二の真空槽11内を大気から真空排気を始める時、真空排気を同時に始め、圧力差があまり生じないようにしながら排気を行った。しかし、第一の真空槽5内を先に真空排気したり、第二の真空槽11内を先に真空排気したりしてもよい。これにより、各真空槽内の圧力を制御しながら排気をする必要が無くなり、排気が容易となる。
【0046】
尚、本実施の形態では、第一の容器部1aの開口部2aに絶縁体3aを設け、この絶縁体3aを介して開口部2aにプラズマ電極4を設置する構成とした。しかし、プラズマ電極4と第一の容器部1aとが電気的に絶縁される構成であれば、必ずしも絶縁体3aを用いる必要はなく、別の構成でもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、開口部2aを有する第一の容器部1aとプラズマ電極4によって第一の真空槽5を形成した。しかし、第一の真空槽5は、開口部を有さない容器で形成されてもよい。
【0048】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2によるプラズマ処理装置を示す断面図である。図3において、図1と同じ符号を付けたものは、同一または相当のものを示しており、その説明を省略する。図1からの変更点は、第二の真空槽11内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部40を設け、第二の容器部10の底壁26に接続した点である。
【0049】
第二の真空槽11内に、空気よりも放電しにくい例えばSFのような不活性ガスを充填し、所定の圧力とする。こうすると、第二の真空槽11内が空気の場合よりも、第二の真空槽11内での放電を防止するためのpd積の条件が緩和される。より放電しにくいガスを用いることで、pd積の条件がより緩和される。
【0050】
例えば、第二の真空槽11内が空気の時で、dとdを同等とした時は、第二の真空槽11内での放電を防止するためには、pをpの10倍以上、または、10分の1以下にする必要があった。しかし、第二の真空槽11内に不活性ガスを充填することで、この条件が緩和され、pをpにより近づけることができる。
【0051】
さらに、第二の真空槽11内の圧力を適切に設定することで、プラズマ電極4と基板15との距離の面内精度が0.1mm以内とすることもできる。
【0052】
また、第二の真空槽11内が空気の時は、pとpを同等とする場合、dをdの10倍以上、または、10分の1以下にする必要があった。しかし、10倍以上とする場合は、装置が大きくなってしまうという問題があり、10分の1以下とする場合はプラズマ電極4との距離が近すぎて作製が困難であった。第二の真空槽11内に不活性ガスを充填することで、この条件が緩和され、装置作製がより容易になる。
【0053】
このような構成のプラズマ処理装置を用いた半導体製造方法の一例として、第二の真空槽11内に充填する不活性ガスとしてSFを用いて微結晶シリコン薄膜の成膜を行う場合について説明する。
【0054】
第二の真空槽11内にSFを充填して第二の真空槽11内の圧力を10Torrとし、装置サイズや他の成膜条件は実施の形態1の場合と同じとする。この時、p=pであるが、第二の真空槽11内にSFを充填したため、第二の真空槽11内に放電は生じない。
【0055】
この条件で微結晶シリコン薄膜の成膜を行うと、プロセス中に第二の真空槽11内で放電が生じることを防止でき、実施の形態1の場合よりもプラズマ電極4の変形を低減することができ、膜質・膜厚の均一性もさらに向上する。
【0056】
また、本実施の形態では、微結晶シリコン薄膜の形成を例にとって説明したが、大面積基板を処理するプラズマ処理プロセス一般に適用しても同様の効果が得られる。
【0057】
本実施の形態では、ガス流量、圧力、電力、等の成膜パラメータ、プラズマ電極4のサイズ、厚さ、第二の容器部10の厚さ等を固定しているが、これらの値に限ることはない。また、第二の真空槽11内に充填する不活性ガスについても、空気よりも放電しにくいガスであればSFに限らず同様の効果が得られる。
【0058】
尚、本実施の形態では、不活性ガス供給部40は、第二の容器部10の底壁26に接続された。しかし、これは第二の容器部10の側壁12に接続してもよい。
【0059】
実施の形態3.
図4は本発明の実施の形態3によるプラズマ処理装置を示す断面図である。図4において、図1と同じ符号を付けたものは、同一または相当のものを示しており、その説明を省略する。図1からの変更点は、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に絶縁体41を充填し、プロセスガス供給部25bとインピーダンス整合器30bをそれぞれ第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20に接続した点である。またその際に、絶縁体27bと絶縁体32bはそれぞれ第二の容器部10の側壁12に取り付けられている。
【0060】
第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に絶縁体41を充填することで、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間で放電が生じにくくなるため、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との距離を狭くすることができる。つまり、第二の容器部10をより小さくすることができる。
【0061】
また、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に絶縁体41を充填したことで、第二の容器部10の側壁12は、第二の容器部10の底壁26よりも変形しにくくなる。このため、プロセスガス供給部25bとインピーダンス整合器30bをそれぞれ第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20に接続すると、接続が容易となる。
【0062】
さらに、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との距離を狭くすることができるため、第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20にインピーダンス整合器30bと高周波電源31bを接続することで、導線を短くすることができる。このため、供給する高周波の損失を減らすことができる。
【0063】
尚、本実施の形態では、絶縁体41を新たに設けた。しかし、絶縁体41は、絶縁体3aと一体成形としてもよい。
【0064】
実施の形態4.
図5は本発明の実施の形態4によるプラズマ処理装置を示す断面図である。図5において、図1と同じ符号を付けたものは、同一または相当のものを示しており、その説明を省略する。図1からの変更点は、プラズマ電極4のサイズを第一の容器部1bの開口部2bのサイズより小さくし、絶縁体3bを第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に設置し、これを介してプラズマ電極4を第二の容器部10の側壁12で挟持している点である。また、プロセスガス供給部25bとインピーダンス整合器30bをそれぞれ第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20に接続した。
【0065】
プラズマ電極4のサイズを第一の容器部1bの開口部2bのサイズより小さくし、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に絶縁体3bを設置することで、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との距離を狭くすることができる。つまり、第二の容器部10をより小さくすることができる。
【0066】
また、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に絶縁体3bを設置したことで、第二の容器部10の側壁12は、第二の容器部10の底壁26よりも変形しにくくなる。このため、プロセスガス供給部25bとインピーダンス整合器30bをそれぞれ第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20に接続すると、接続が容易となる。
【0067】
さらに、第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との距離を狭くすることができるため、第二の容器部10の側壁12を介してプラズマ電極4の側壁20にインピーダンス整合器30bと高周波電源31bを接続することで、導線を短くすることができる。このため、供給する高周波の損失を減らすことができる。
【0068】
尚、本実施の形態では、絶縁体3bを第二の容器部10の側壁12とプラズマ電極4の側壁20との間に設置し、これを介してプラズマ電極4を第二の容器部10の側壁12で挟持した。しかし、絶縁体3bを第一の容器部1bの側壁7bとプラズマ電極4の側壁20との間に設置し、これを介してプラズマ電極4を第一の容器部1bの側壁7bで挟持し、これに伴い、プロセスガス供給部25bとインピーダンス整合器30bをそれぞれ第一の容器部1bの側壁7bを介してプラズマ電極4の側壁20に接続してもよい。
【0069】
実施の形態5.
図6は本発明の実施の形態5によるプラズマ処理装置を示す断面図である。図6において、図1と同じ符号を付けたものは、同一または相当のものを示しており、その説明を省略する。図1からの変更点は、絶縁体42を第二の容器部10の内壁35と、プラズマ電極4の第二の容器部10の内壁35と対向する面43とに設置した点である。
【0070】
このような構成とすることで、実施の形態1の場合よりも、第二の真空槽11内での放電を防止するためのpd積の条件が緩和される。絶縁体42を厚くすることで、pd積の条件がより緩和される。
【0071】
例えば、実施の形態1では、dとdを同等とした時は、第二の真空槽11内での放電を防止するためには、pをpの10倍以上、または、10分の1以下にする必要があった。しかし、本実施の形態では、この条件が緩和され、pをpにより近づけることができる。
【0072】
さらに、第二の真空槽11内の圧力を適切に設定することで、プラズマ電極4と基板15との距離の面内精度が0.1mm以内とすることもできる。
【0073】
また、実施の形態1では、pとpを同等とする場合、dをdの10倍以上、または、10分の1以下にする必要があった。しかし、10倍以上とする場合は、装置が大きくなってしまうという問題があり、10分の1以下とする場合はプラズマ電極4との距離が近すぎて作製が困難であった。本実施の形態では、絶縁体42を設置することで、この条件が緩和され、装置作製がより容易になる。
【0074】
尚、本実施の形態では、絶縁体42を第二の容器部10の内壁35と、プラズマ電極4の第二の容器部10の内壁35と対向する面43とに設置した。しかし、絶縁体42は、第二の容器部10の内壁35のみ、または、プラズマ電極4の第二の容器部10の内壁35と対向する面43のみに設置してもよい。また、第二の容器部10の内壁35や、プラズマ電極4の第二の容器部10の内壁35と対向する面43の全面に設置せずとも、放電が生じやすい一部分だけに設置してもよい。
【0075】
以上、5つの実施の形態について説明した。これら実施の形態で説明した構成は、互いに組合せることができる。
【符号の説明】
【0076】
1a、1b 第一の容器部
2a、2b 第一の容器部の開口部
3a、3b 絶縁体
4 プラズマ電極
5 第一の真空槽
6 基板ステージ
7a、7b 第一の容器部の側壁
8 第一の真空排気部
9 第二の容器部の開口部
10 第二の容器部
11 第二の真空槽
12 第二の容器部の側壁
13 第二の真空排気部
15 基板
16a、16b 第一の容器部の開口部の端面
17 基板の処理対象面
18 背面板
19 シャワープレート
20 プラズマ電極の側壁
21 ガス室
25a、25b プロセスガス供給部
31a、31b 高周波電源
35 第二の容器部の内壁
40 不活性ガス供給部
41 絶縁体
42 絶縁体
43 プラズマ電極の第二の容器部の内壁と対向する面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する第一の容器部および、前記開口部に設けられた絶縁体を介して前記開口部に設置されたプラズマ電極を備えた第一の真空槽と、
前記第一の真空槽に接続された第一の真空排気部と、
前記第一の真空槽の内部に設置された基板を保持するための基板保持部と、
を備えたプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ電極は、前記基板側に面するシャワープレート、このシャワープレートとの間に前記基板にプロセスガスを供給するガス室を成すとともに前記第一の真空槽の外部に面する背面板を有し、
前記プラズマ処理装置は、開口部を有する第二の容器部を備え、前記第一の真空槽の外部で、前記背面板を取り囲んで形成された第二の真空槽と、
前記第二の真空槽に接続された第二の真空排気部と、
をさらに備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
空気よりも放電しにくい不活性ガスを第二の真空槽内に供給するための不活性ガス供給部を備えたことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
第一の真空槽内の圧力pと、プラズマ電極と基板との最短距離dの積pと、
第二の真空槽内の圧力pと、前記プラズマ電極と前記第二の容器部との最短距離dの積pとは、
≧10pを満たすことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
第一の真空槽内の圧力pと、プラズマ電極と基板との最短距離dの積pと、
第二の真空槽内の圧力pと、前記プラズマ電極と前記第二の容器部との最短距離dの積pとは、
10p≦pを満たすことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
第一の容器部は開口部に、基板の処理対象面と略平行な端面を備え、
プラズマ電極は、前記端面に設けられた絶縁体を介して載置されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
第二の容器部とプラズマ電極はそれぞれ側壁を持ち、
第二の真空槽は、その内部に前記プラズマ電極の側壁を含むように形成され、
前記第二の容器部の側壁と前記プラズマ電極の側壁との間に絶縁体を充填したことを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
第一の容器部と第二の容器部はそれぞれ側壁を持ち、
プラズマ電極のサイズは、前記第一の容器部の開口部のサイズよりも小さく、
前記プラズマ電極は、前記第一の容器部又は前記第二の容器部の側壁に絶縁体を介して挟持されたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
プラズマ電極に高周波電圧を印加するための高周波電源と、
プロセスガスを供給するためのプロセスガス供給部と、
を備え、
前記高周波電源と前記プロセスガス供給部は、前記プラズマ電極に第二の容器部の側壁を介して接続されたことを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
第二の容器部の内壁の少なくとも一部を絶縁体で覆ったことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
プラズマ電極の第二の容器部の内壁と対向する面の少なくとも一部を絶縁体で覆ったことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
第二の真空槽内の圧力は、プラズマ電極と基板との距離の面内精度が0.1mm以内となるような圧力に設定されたことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
第一の真空槽と、
前記第一の真空槽に接続された第一の真空排気部と、
前記第一の真空槽の内部に設置された基板を保持するための基板保持部と、
前記基板側に面するシャワープレート、このシャワープレートとの間に前記基板にプロセスガスを供給するガス室を成すとともに前記第一の真空槽の外部に面する背面板を有するプラズマ電極と、
前記第一の真空槽の外部で、前記背面板を取り囲んで形成された第二の真空槽と、
前記第二の真空槽に接続された第二の真空排気部と、
を備えたプラズマ処理装置。
【請求項13】
開口部を有する第一の容器部および、前記開口部に設けられた絶縁体を介して前記開口部に設置されたプラズマ電極を備えた第一の真空槽と、
前記第一の真空槽に接続された第一の真空排気部と、
前記第一の真空槽の内部に設置された基板を保持するための基板保持部と、
前記第一の真空槽の開口部に設けられた絶縁体と、
を備えたプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ電極は、前記基板側に面するシャワープレート、このシャワープレートとの間に前記基板にプロセスガスを供給するガス室を成すとともに前記第一の真空槽の外部に面する背面板を有し、
前記プラズマ処理装置は、開口部を有する第二の容器部を備え、前記第一の真空槽の外部で、前記背面板を取り囲んで形成された第二の真空槽と、
前記第二の真空槽に接続された第二の真空排気部と、
をさらに備えたプラズマ処理装置、
を用いた半導体の製造方法であって、
前記第一の真空槽を前記第一の真空排気部を用いて真空排気するステップと、
前記第二の真空槽を前記第二の真空排気部を用いて真空排気するステップと、
前記プラズマ電極に、プロセスガス供給部からプロセスガスを供給し、高周波電源から高周波を印加するステップと、
を備えたことを特徴とする半導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−287833(P2010−287833A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142238(P2009−142238)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】