説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【課題】プラズマ発生に起因する被処理体へのダメージを抑制しつつ,好適なプラズマ処理を行う。
【解決手段】半導体ウエハWにプラズマ処理を行うためのプラズマ処理室101と,半導体ウエハWを,プラズマ処理室101内に配置するための載置台102と,該プラズマ処理室101内にプラズマを発生させるためのマイクロ波発生装置108とを少なくとも含むプラズマ処理装置100において,マイクロ波発生装置108に,断続的なエネルギー供給可能なもの使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子デバイス等を製造するために,被処理体に対して種々のプラズマ処理を行う際に好適に使用可能なプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のプラズマ処理装置は,半導体ないし半導体デバイス,液晶デバイス等の電子デバイス材料の製造を始めとするプラズマ処理一般に広く適用可能であるが,ここでは説明の便宜のために,半導体デバイスの背景技術を例にとって説明する。
【0003】
一般に,半導体デバイスの製造工程においては,被処理体たる半導体デバイス用の基材(ウエハ)に対して,CVD(化学気相堆積)処理,エッチング処理,スパッタ処理等の種々の処理を施すことが行われる。
【0004】
従来より,このような各種の処理のためにプラズマ処理装置が用いられる場合が多い。これは,プラズマ処理装置を用いた場合には,非平衡の低温プラズマを用いることで従来は高温でしか起らなかった化学反応を低温で行うことができるという長所があるからである。
【0005】
近年の半導体装置の微細化に伴い,更に薄膜化したデバイス構造が強く望まれて来ている。例えば,半導体デバイスの構成として最もポピュラーなMOS型半導体デバイス構造においては,いわゆるスケーリングルールに従って,極めて薄く(例えば2nm以下程度),しかも良質のゲート絶縁膜に対するニーズが極めて高くなっている。
【0006】
従来から,このようなゲート絶縁膜の形成ないし処理(酸化処理,窒化処理,等)は,主に,プラズマ(例えば誘導結合プラズマ(ICP),マイクロ波プラズマ,等)を用いて行われて来た。
【0007】
しかしながら,上述したデバイス構造の薄膜化に伴い,従来では実質的に問題とならなかったようなレベルのダメージ,特に,プラズマによって発生する電子,イオン,および/又は紫外光に基づく被処理体のダメージが問題となる場合が多くなって来ている。
【0008】
このような被処理体のダメージが生じた場合,ゲート絶縁膜の耐電圧不良,リーク電流増加,トランジスタ駆動電流の低下等という新たな問題が発生し易くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は,上記した従来技術の欠点を解消したプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は,プラズマ発生に起因する被処理体へのダメージを抑制しつつ,好適なプラズマ処理を行うことを可能としたプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意研究の結果,従来におけるように連続的に(ないし連続波で)供給したエネルギーに基づくプラズマを被処理体に対して与えるのではなく,むしろ断続的に(すなわち,所定のインターバルをおいて)供給したエネルギーに基づくプラズマを被処理体に対して与えることが,上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は上記知見に基づくものであり,より詳しくは,本発明のプラズマ処理装置は,プラズマ処理室と,前記プラズマ処理室内で前記被処理体を載置する載置台と,前記載置台内に設けられ,前記被処理体を加熱するヒータと,前記プラズマ処理室内にマイクロ波を透過させて導入する絶縁板と,前記プラズマ処理室内に希ガスと,酸素ガス又は窒素ガスを含む処理ガスを供給するガス供給手段と,前記プラズマ処理室内に前記処理ガスのプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段と,前記絶縁板の上面に設けられた複数のスロットを有する平面アンテナ(RLSA)部材と,前記プラズマ処理室の側壁に配置された石英ガラス製のライナーと,前記プラズマ発生手段から断続的にエネルギーを供給するよう前記プラズマ発生手段をON/OFFが10〜100KHz,Dutyが20%〜80%でON−OFF制御し,断続的なエネルギーを前記プラズマ処理室に供給することにより,前記処理ガスのプラズマの電子温度が0.5〜1.0eVを有するように制御する制御装置と,を有することを特徴としている。
【0013】
また本発明のプラズマ処理方法は,プラズマ処理室と,前記プラズマ処理室内で前記被処理体を載置する載置台と,前記載置台内に設けられ,前記被処理体を加熱するヒータと,前記プラズマ処理室内にマイクロ波を透過させて導入する絶縁板と,前記プラズマ処理室内に希ガスと,酸素ガス又は窒素ガスを含む処理ガスを供給するガス供給手段と,前記プラズマ処理室内に前記処理ガスのプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段と,前記絶縁板の上面に設けられた複数のスロットを有する平面アンテナ(RLSA)部材と,前記平面アンテナの上面に配置される遅波材と,前記遅波材を冷却する冷却プレートと,前記プラズマ処理室の側壁に配置された石英ガラス製のライナーと,前記プラズマ発生手段から断続的にエネルギーを供給するよう前記プラズマ発生手段をON−OFF制御する制御装置と,を少なくとも含むプラズマ処理装置を用い,前記プラズマ処理室内に前記ガス供給手段により前記希ガスと酸素ガス又は窒素ガスと含む処理ガスを供給する工程と,前記プラズマ処理室内に前記プラズマ発生手段により断続的なエネルギーを供給して,前記処理ガスのプラズマを生成する工程と,を具備し
前記断続的なエネルギーは,前記制御装置により,前記プラズマ発生手段を,ON/OFFが10〜100KHz,Dutyが20%〜80%でON−OFF制御することで供給され,当該断続的なエネルギーにより電子温度が0.5〜1.0eVのプラズマを発生させて,前記被処理体をプラズマ処理することを特徴としている。
【0014】
上記構成を有する本発明においては,前記プラズマ発生手段から断続的に供給されたエネルギー(マイクロ波,RF等)に基づくプラズマ発生により,効率的に発生したラジカルが被処理体に供給されるため,プラズマ処理の効率を実質的に低下させることなく,プラズマ処理の電子温度を実質的に低減することが可能となる。
【0015】
加えて,本発明においては,イオン衝撃の低減,チャージアップダメージの低減という理由で,断続的なエネルギー供給に基づくプラズマからのイオンおよび/又は紫外光に起因する被処理体のダメージも実質的に低減することができる。したがって,本発明によれば,プラズマ処理の効率を実質的に低下させることなく,所定のプラズマ処理(例えば,プラズマ窒化および/又はプラズマ酸化処理)を行うことができる。
【0016】
これに対して,従来のプラズマ処理においては,比較的電子温度が低いプラズマ(例えば,ECRプラズマ等)を使用した場合であっても,該プラズマの電子温度は2〜4eV程度であるため,連続的なエネルギー供給に基づくプラズマを被処理体に与えた場合には,該被処理体にダメージが生ずる可能性が高かった。したがって本発明によれば,被処理体に対するダメージを従来よりも低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように,本発明によれば,プラズマ発生に起因する被処理体へのダメージを抑制しつつ,好適なプラズマ処理を行うことを可能としたプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することができる。したがって,例えば絶縁膜の成膜処理に用いた場合,ダメージに起因する絶縁膜の耐電圧不良,リーク電流増加,トランジスタ駆動電流の低下等の問題の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の好適な一態様を示す模式断面図である。
【図2】図1のプラズマ処理装置の詳細な構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】パルスによる電子温度の低下を示すグラフ等のデータである。
【図4】パルスによる電子温度の低下を示すグラフ等のデータである。
【図5】パルスによる電子温度の低下を示すグラフ等のデータである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は,特に断らない限り質量基準とする。
【0020】
(プラズマ処理装置)
本発明のプラズマ処理装置は,被処理体にプラズマ処理を行うためのプラズマ処理室と;前記被処理体を,前記プラズマ処理室内に配置するための被処理体保持手段と;該プラズマ処理室内にプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段とを少なくとも含む。このプラズマ処理装置において,前記プラズマ発生手段は,断続的なエネルギー供給に基づくプラズマを発生させることが可能である。
【0021】
(断続的なエネルギー供給)
本発明において「断続的なエネルギー供給」とは,所定の時間範囲(例えば,1ミリ秒)において,プラズマ発生のために供されるエネルギー供給がゼロになる瞬間が,少なくとも1回あることをいう。本発明においては,「断続的なエネルギー供給」がなされる限り,その「断続的」な態様は特に制限されない。すなわち,エネルギー供給の波形は,矩形波状,三角波状,曲線波(例えば,サインカーブ)状,等の公知の波形のいずれであってもよい。「断続的なエネルギー供給」は矩形波と高周波が組み合わされた形でなされることが好ましい。
【0022】
本発明においては,プラズマ発生の効率と被処理体のダメージ低減とのバランスの点からは,1000ミリ秒間のうち,プラズマ発生のために供されるエネルギー供給がゼロになる時間の合計が,20〜200μ秒であることが好ましく,更には50〜100μ秒であることが好ましい。
【0023】
(変調)
本発明においては,必要に応じて,上記した「断続的なエネルギー供給」が時変調(time-modulation)形式で与えられてもよい。
【0024】
(プラズマ処理装置の一態様)
図1は,本発明に係るプラズマ処理装置の他の例を示す模式断面図である。この態様においては,プラズマ処理装置をプラズマCVD(化学気相堆積,Chemical
Vapor Deposition)処理に適用した場合について説明する。この図1の態様の装置を,他のプラズマ処理(例えば,プラズマ酸化および/又はプラズマ窒化処理)に用いる場合には,例えば,後述する処理ガス供給用ノズル103から,処理ガスを供給しないようにすればよい。なお,図1の態様においては,アンテナ部材として,平面アンテナ部材105が用いられている。
【0025】
図1に示すように,このプラズマ処理装置100は,例えば側壁101aや底部101bがアルミニウム等の導体により構成されて,全体が筒体状に成形されたプラズマ処理室101を有しており,プラズマ処理室101の内部は密閉された処理空間Sとして構成されている。
【0026】
このプラズマ処理室101内には,その上面に被処理体(例えば半導体ウエハW)を載置するための載置台102が収容される。この載置台102は,例えばアルマイト処理したアルミニウム等により凸状に平坦になされた略円柱状に形成されている。
【0027】
上記した載置台102の上面には,ここにウエハWを保持するための静電チャックまたはクランプ機構(図示せず)が設けられる。更に,この載置台102は給電線(図示せず)を介してマッチングボックス(図示せず)およびバイアス用高周波電源(例えば13.56MHz用;図示せず)に接続されている。なお,CVDの場合(すなわち,バイアスを印加しない場合)には,このバイアス用高周波電源を設けなくてもよい。
【0028】
他方,上記プラズマ処理室101の側壁には,ガス供給手段として,容器内に前述した水蒸気含有ガスを導入するためのガス供給ノズル103が設けられる。
【0029】
プラズマ処理室101の天井部は開口されて,ここに例えば石英,Al等のセラミック材からなり,マイクロ波に対しては透過性を有する絶縁板104(例えば厚さが20mm程度)が,O−リング等のシール部材(図示せず)を介して気密に設けられている。
【0030】
この絶縁板104の上面に,円板状の平面アンテナ部材105と高誘電率特性を有する遅波材106(石英,Al,AiN等からなる)とが設けられる。この平面アンテナ部材105に対しては,同軸導波管107からマイクロ波が伝播される。マイクロ波の周波数は2.45GHzに限定されず,他の周波数,例えば8.35GHzを用いてもよい。
【0031】
マイクロ波は,例えばマイクロ波発生装置108によって発生される。そしてマイクロ波発生装置108は,例えばON−OFFを制御する制御装置120の制御によって,例えばパルス形式で,断続的にマイクロ波が出力されて,同軸導波管107に供給される。なおそのようなON−OFF制御に代えて,変調装置121によって,マイクロ波発生装置108からのマイクロ波を時間変調して,同軸導波管107に対して断続的にマイクロ波のエネルギーを供給するようにしてもよい。
【0032】
図2は,図1の構成をさらに詳細に示した例を示す模式断面図である。図2に示すように,このプラズマ処理装置100aは,例えば側壁101aや底部101bがアルミニウム等の導体により構成されて,全体が筒体状に成形されたプラズマ処理室101を有しており,プラズマ処理室101の内部は密閉された処理空間として構成されている。
【0033】
このプラズマ処理室101内には,その上面に被処理体(例えば半導体ウエハW)を載置するための載置台(ステージ)102が収容される。この載置台102は,ウエハWを必要に応じて加熱するためのヒータ(図示せず)を内蔵している。
【0034】
他方,上記プラズマ処理室101の側壁には,ガス供給手段として,容器内に前述した水蒸気含有ガスを導入するためのガス供給ノズル103が設けられている。この図2においては,ガスを均一に排気するために,側壁101aとほぼ垂直にガスバッフル板109が配置されている。さらに側壁101aおよびガスバッフル板109の内側には,壁からのパーティクル発生を防ぐための,例えば石英ガラス製のライナー110が配置されている。
【0035】
プラズマ処理室101の天井部の開口には,例えば石英,Al等のセラミック材からなり,マイクロ波に対しては透過性を有する絶縁板104(例えば厚さが20mm程度)がO−リング等のシール部材(図示せず)を介して気密に設けられる。
【0036】
この絶縁板104の上面に,円板状の平面アンテナ部材105と高誘電率特性を有する遅波材106(例えば石英,Al,AiN等からなる)とが設けられる。平面アンテナ部材105には,複数のスロット105aが,例えば環状や渦巻状に形成されている,RLSA(Radial Line Slot Antenna)が使用されている。また高誘電率特性を有する遅波材106の波長短縮効果により,マイクロ波の管内波長を短くすることができる。
【0037】
この図2においては,遅波材106上に,遅波材106等を冷却するための冷却プレート112が配置され,その冷却プレート112内部,および側壁101a内部には,これらの部材を冷却するための冷媒通路113が設けられている。上記の平面アンテナ部材105に対しては,上述したように,同軸導波管107からマイクロ波(周波数2.45GHz等)が伝播される。
【0038】
次に,以上のように構成されたプラズマ処理装置を用いて行なわれる処理方法の一例について説明する。
【0039】
図2を参照して,まず,図示しないゲートバルブ68を介して,半導体ウエハWを搬送アーム(図示せず)によってプラズマ処理室101内に収容し,リフタピン(図示せず)を上下動させることによりウエハWを載置台102の上面の載置面に載置する。プラズマ処理室101内を所定のプロセス圧力,例えば0.01〜数Paの範囲内に維持して,プラズマガス供給ノズル(図示せず)から例えばアルゴンガスを流量制御しつつ供給すると共に処理ガス供給ノズル103から例えばSiH,O,N等のデポジションガスを,流量制御しつつ供給する。同時にマイクロ波発生装置108からのマイクロ波を,断続的に同軸導波管107を介して平面アンテナ部材105に供給して,遅波材106によって波長が短くされたマイクロ波を処理空間Sに導入し,これによってプラズマを発生させて所定のプラズマ処理,例えばプラズマCVDによる成膜処理を行う。
【0040】
(各部の構成)
以下,図1〜2に示す各部の構成および図1〜2の装置において使用可能な材料等について説明する。
【0041】
(電子デバイス用基材)
本発明において使用可能な上記の電子デバイス用基材は特に制限されず,公知の電子デバイス用基材の1種または2種以上の組合せから適宜選択して使用することが可能である。このような電子デバイス用基材の例としては,例えば,半導体材料,液晶デバイス材料等が挙げられる。半導体材料の例としては,例えば,単結晶シリコンを主成分とする材料,シリコンゲルマニウムを主成分とする材料,液晶デバイス材料としてはガラス基板上に成膜されたポリシリコン,アモルファスシリコン等が挙げられる。
【0042】
(処理ガス)
本発明において使用可能な処理ガスは,特に制限されない。すなわち,本発明において電子デバイス基材の酸化処理を行う場合には,該処理ガスとして,少なくとも酸素ガス,ないし酸素原子を含むガスを特に制限なく使用することができる。他方,本発明において電子デバイス基材の窒化処理を行う場合には,該処理ガスとして,少なくとも窒素ガス,ないし窒素原子を含むガスを特に制限なく使用することができる。さらには,本発明においてCVD処理を行う場合には,公知のデポジションガスを特に制限なく使用することができる。
【0043】
(好適な処理ガスの例)
本発明において好適に使用可能な処理ガス及びその流量比を以下に例示する。
(1)酸化処理
Ar/O=1000/10〜1000/100 sccm
(2)窒化処理
Ar/N=1000/10〜1000/200 sccm
(3)CVD
Ar/C=1000/20〜1000/400 sccm
【0044】
(希ガス)
本発明においてプラズマを発生さるために使用可能な希ガスは特に制限されず,電子デバイス製造に使用可能な公知の希ガスの1種または2種以上の組合せから適宜選択して使用することが可能である。このような処理ガスの例としては,例えば,クリプトン(Kr),キセノン(Xe),ヘリウム(He),又はアルゴン(Ar)を挙げることができる。
【0045】
(処理ガス条件)
本発明によって酸窒化膜を作成する場合においては,形成されるべき膜の特性の点からは,下記の条件が好適に使用できる。
(1)希ガス(例えば,Kr,Ar,HeまたはXe)の流量:200〜1000sccm,より好ましくは500〜1000sccm,
(2)処理ガスの流量:10〜100sccm,より好ましくは20〜50sccm,
(3)温度:室温(25℃)〜500℃,より好ましくは250〜400℃,
(4)処理室内の圧力:5〜300Pa,より好ましくは6〜150Pa,
(5)マイクロ波:0.5〜3W/cm,より好ましくは0.7〜1.5W/cm(マイクロ波のON/OFFは10〜100KHzで,Dutyeeは20%〜80%であることが好ましい。)
【0046】
(好適なプラズマ)
本発明において好適に使用可能なプラズマの特性は,以下の通りである。
(1)電子温度:0.5〜1.0eV
(2)密度:1〜20×1011/cm
(3)プラズマ密度の均一性:±10%
【0047】
図3〜5に,連続波(CW)による連続的なエネルギー供給によるプラズマ処理と,パルスによる断続的なエネルギー供給によるプラズマ処理の場合の,ウエハの中心からエッジまでの,電子温度と電子密度の結果を示す。これらのデータの条件等は図中に記載した通りである。なお図3〜図5における処理の条件はいずれも,Ar/Nの流量:1000/40sccm,処理室内圧力:50mTorr,であり,プラズマパワーを,各々1000W(図3の例),1500W,(図4の例),2000W(図5の例)に変化させた。なおいずれの場合も,パルスの周波数/Dutyは,10[kHz]/50[%],12.5[kHz]/37.5[%],6.7[kHz]/66.7[%],6.7[kHz]/33.3[%]の4通りについて調べた。
【0048】
これらの結果からもわかるように,本発明に従って断続的にエネルギー供給して発生させたプラズマによる処理の方が連続波による連続的なエネルギー強供給の場合と比べて,電子温度を低くすることができる。しかも電子密度については,連続波の場合よりもより高い密度を実現している。したがって,被処理体に与えるダメージを抑えつつ,しかも高品質なプラズマ処理を行うことができる。
【0049】
(他のプラズマ)
上記した態様では,マイクロ波を用いるプラズマ発生について説明したが,エネルギー供給が断続的に行われる限り,プラズマ発生手段(プラズマソース)は特に制限されない。すなわちマイクロ波以外に,ICP(誘導結合プラズマ)を使用することもできる。
【0050】
(他の応用)
上記した態様では,半導体ウエハに成膜処理する場合を例にとって説明したが,これに限定されず,本発明は,プラズマエッチング処理,プラズマアッシング処理等の他のプラズマ処理にも適用することができる。また,被処理体としても半導体ウエハに限定されず,ガラス基板,LCD(液晶デバイス)基板等に対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は,半導体デバイスやフラットディスプレイ基板の製造工程における,例えばエッチング処理,アッシング処理,成膜処理等のプラズマ処理にとって有用である。
【符号の説明】
【0052】
100 プラズマ処理装置
101 プラズマ処理室
102 載置台
104 絶縁板
105 平面アンテナ部材
105a スロット
106 遅波材
107 同軸導波管
108 マイクロ波発生装置
120 制御装置
121 変調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体にプラズマ窒化処理および/又はプラズマ酸化処理を行うプラズマ処理装置であって,
プラズマ処理室と,
前記プラズマ処理室内で前記被処理体を載置する載置台と,
前記載置台内に設けられ,前記被処理体を加熱するヒータと,
前記プラズマ処理室内にマイクロ波を透過させて導入する絶縁板と,
前記プラズマ処理室内に希ガスと,酸素ガス又は窒素ガスを含む処理ガスを供給するガス供給手段と,
前記プラズマ処理室内に前記処理ガスのプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段と,
前記絶縁板の上面に設けられた複数のスロットを有する平面アンテナ(RLSA)部材と,
前記プラズマ処理室の側壁に配置された石英ガラス製のライナーと,
前記プラズマ発生手段から断続的にエネルギーを供給するよう前記プラズマ発生手段をON/OFFが10〜100KHz,Dutyが20%〜80%でON−OFF制御し,断続的なエネルギーを前記プラズマ処理室に供給することにより,前記処理ガスのプラズマの電子温度が0.5〜1.0eVを有するように制御する制御装置と,を有する。
【請求項2】
被処理体にプラズマ窒化処理および/又はプラズマ酸化処理を行うプラズマ処理方法であって,
プラズマ処理室と,
前記プラズマ処理室内で前記被処理体を載置する載置台と,
前記載置台内に設けられ,前記被処理体を加熱するヒータと,
前記プラズマ処理室内にマイクロ波を透過させて導入する絶縁板と,
前記プラズマ処理室内に希ガスと,酸素ガス又は窒素ガスを含む処理ガスを供給するガス供給手段と,
前記プラズマ処理室内に前記処理ガスのプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段と,
前記絶縁板の上面に設けられた複数のスロットを有する平面アンテナ(RLSA)部材と,
前記平面アンテナの上面に配置される遅波材と,
前記遅波材を冷却する冷却プレートと,
前記プラズマ処理室の側壁に配置された石英ガラス製のライナーと,前記プラズマ発生手段から断続的にエネルギーを供給するよう前記プラズマ発生手段をON−OFF制御する制御装置と,を少なくとも含むプラズマ処理装置を用い,
前記プラズマ処理室内に前記ガス供給手段により前記希ガスと酸素ガス又は窒素ガスと含む処理ガスを供給する工程と,
前記プラズマ処理室内に前記プラズマ発生手段により断続的なエネルギーを供給して,前記処理ガスのプラズマを生成する工程と,
を具備し,
前記断続的なエネルギーは,前記制御装置により,前記プラズマ発生手段を,ON/OFFが10〜100KHz,Dutyが20%〜80%でON−OFF制御することで供給され,当該断続的なエネルギーにより電子温度が0.5〜1.0eVのプラズマを発生させて,前記被処理体をプラズマ処理する。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−192934(P2010−192934A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108624(P2010−108624)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2005−506525(P2005−506525)の分割
【原出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】