説明

リソグラフィ装置及びデバイス製造方法

【課題】リソグラフィ装置の処理能力を大きく損なうことなく、重ね合わせ精度を向上させる方法及び装置を提供する。
【解決手段】露光条件を最適化するために基板の露光時に基板上の位置合わせ標識を検査する。基板10が露光及び位置合わせユニット15の真下で走査を受けるとき、基板のそれぞれの部分が最初に検出器ユニット16の下方を通過し、次いで露光ユニット17の下方を通過する。したがって、基板10のそれぞれの部分に関して検査器ユニット16によって測定された、直線位置、配向、及び膨張に関する情報が露光ユニット17に伝達可能であり、基板が露光ユニット17の真下を通過しながら基板が露光されるとき、基板の当該部分に関する露光条件を最適化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、基板の標的部分に望ましいパターンを施す機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)、平面パネル・ディスプレイ、及び微細構造を含む他のデバイスの製造に適用可能である。通常のリソグラフィ装置では、パターン化手段(マスク又はレチクルとも呼ばれる)を使用してIC(又は他のデバイス)の個々の層に対応する回路パターンを作成することが可能であり、放射感光性材料(レジスト)の層を有する基板(例えば、シリコン・ウェハ又はガラス板)上の標的部分(例えば、1つ又はいくつかのダイの一部を含む)上に、このようなパターンを描画する。マスクの代わりに、パターン化手段は、回路パターンを作成する役割を果たす個別制御可能要素アレイを含むことができる。
【0003】
一般に、単一の基板は連続的に露光される隣接標的部分の回路網を含む。知られたリソグラフィ装置には、1回の試みでパターン全体を標的部分上に露光することによって各標的部分を照射する、いわゆるステッパ、及び投影ビームによって所与の方向(「走査」方向)にパターンを走査し、他方で同期して基板をこの方向に平行に又は逆平行に走査することによって各標的部分を照射する、いわゆるスキャナが含まれる。
【0004】
リソグラフィ技術を用いてデバイスを製造するために、典型的にはいくつかの層からデバイスを形成することが必要である。このようなデバイスをいくつかの層から作成するとき、それぞれの層を作成する際、確実にそれを先行する層に位置合わせすることが必要である。したがって、基板上に位置合わせ標識を設けることが知られている。それぞれの層を基板上に露光する前に、それを位置合わせ標識が配置されている位置合わせ測定中心に移し、位置合わせセンサに対して基板の位置を正確に決定することができる。基板を制御された態様で露光位置に移動することによって、位置補正を施して基板上の適正な位置に後続の層を正確に作成することができる。このようなシステムは、臨界形状構成サイズに比べて重ね合わせ誤差が小さい事を確実にするのに使用可能である。
【0005】
しかし、臨界形状構成サイズは縮小し続けているので、重ね合わせ精度のさらなる向上が必要である。しかも、位置合わせ要求基準が高まると、位置合わせ標識の検出及び検査に要する時間が増加し、装置の処理能力が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、装置の処理能力を大きく損なうことなく、重ね合わせ精度を向上させる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、リソグラフィ装置であって、
放射の投影ビームを供給するための照射システムと、
投影ビームの断面にパターンを与える役割を果たすパターン化手段と、
基板を支持するための基板テーブルと、
パターン化したビームを基板の標的部分の上に投影するための投影システムと、
投影システムがパターン化したビームを基板上に投影するための位置に基板がある間に、基板を検査するための検出器と、
検出器からの情報に応答して、基板上に投影されたパターンの基板に対する位置、基板上に投影されたパターンの倍率、及び最適焦点像平面の少なくとも1つを調整するための制御器とを備え、
検出器が基板の複数の部分を基板の全幅にわたって同時に検査するための複数のセンサを有し、さらにパターン化手段及び投影システムが基板の全幅を露光するように配置され、それによって本装置に対する基板の1回の通過で基板を検査しかつ露光することができる、リソグラフィ装置が提供される。
【0008】
したがって、基板を本装置に対して、1回の通過において、走査することによって、検出器が基板全体又は基板全体を代表する基板の部分を検査しかつ基板上に必要なパターンを露光するので、本装置の処理能力が向上する。これは、例えば、処理されているガラス基板のサイズが縦横2m以上になり得る平面パネル・ディスプレイの製造において特に有益である。
【0009】
このような装置はまた、基板のそれぞれの部分に対する重ね合わせ精度が向上可能であるので有益である。さらには、基板が露光位置にある間に基板の部分を検査できるので、基板を位置合わせ測定位置から露光位置に移動させる際に誤差が発生しない。したがって、有益なことに、重ね合わせでは、先行する処理工程時に基板中に発生する不具合を考慮に入れることができるばかりでなく、当該層の露光時に生じる変化も考慮に入れることができる。例えば、本システムは、露光時に、それぞれの層を露光するために使用される放射による基板の加熱によって引き起こされる基板の膨張/収縮を補償することができる。したがって、基板の各部分の重ね合わせ精度が向上する。さらには、基板を別個の位置合わせ測定中心に移動させる必要がないので、基板の処理時間がそれほど大きく増加することはない。
【0010】
好ましくは、検出器が、基板の部分を検査することによって、基板の当該部分の位置及び/又は配向を測定し、かつ/又は基板の当該部分が基板の基準状態に対して膨張/収縮した量を測定することが可能である。このような情報を使用して、基板上に投影されたパターンの位置、基板上に投影されたパターンの倍率、及び最適焦点像平面を調整することができる。
【0011】
投影システムに対する検出器の位置を実質的に固定しかつ知ることができるか、又は投影システムに対する検出器の位置を監視するために位置センサを設けることもできる。したがって、検出器に対する基板の部分の位置に関する情報は、投影システムに対するこの基板部分の位置に関する情報に容易にかつ正確に変換可能である。
【0012】
好ましい一実施例では、連続的な露光の間に又は連続的な露光の進行にしたがって、基板が投影システム及び検出器に対して移動され、さらに検出器によって検査される基板の部分が引き続いて、露光を受ける基板の標的部分となるように検出器が配置されている。基板が検出器及び投影システムに対して移動しなければならない距離は、検出器と投影システムの相対位置から知られる。したがって、基板の所与の部分は、この基板部分が露光される直前に検出器によって検査可能であり、それにしたがって露光条件を調整し、基板の当該部分が露光されているときに重ね合わせ精度を最適化することができる。
【0013】
都合のよいことに、複数の露光過程にわたって又は連続的な露光時に、基板が投影システム及び検出器に対してほぼ一定の速度で移動可能である。これによって、投影システム及び検出器に対して基板を繰り返し加速する必要性が低減し、よって加えねばならない力が低減する。したがって、露光のタイミングを変更することによって及び/又はパターンを個別制御可能要素アレイ上に設定するタイミングを変更することによって、基板上に投影されるパターンの位置を、基板が投影システム及び検出器に対して移動する方向に平行な方向で調整することも可能である。
【0014】
投影システム、個別制御可能要素アレイであるパターン化手段、基板、又はこれらの組合せを物理的に移動させることによって、及び/又は個別制御可能要素アレイ上に作成されたパターンの位置を変位させることによって、基板上に投影されるパターンの位置を追加的に又は別法として調整可能である。
【0015】
本発明はまた、相互に離間して設定される複数の個別制御可能要素アレイから構成されている装置に応用可能である。この場合には、個別制御可能要素アレイによって作成されたパターンの1つ又は複数に関して、制御器が、基板上に投影されたパターンの位置、パターンの倍率、及び/又は最適焦点像平面を個々に調整することが可能である。これによって、個々の個別制御可能要素アレイ間の動きをいずれも補償することが可能になり、さらに、例えば、個別制御可能要素アレイのそれぞれのアレイからのパターンが投影される、基板の異なる領域間における基板の歪みの変化を補償することも可能になる。
【0016】
これを容易にするために、検出器が基板上の複数の箇所で位置合わせ標識を同時に検査することが可能であり、それぞれの箇所が、複数のプログラム可能なパターン化領域によって同時に露光されることになる基板上の領域に対応する。
【0017】
本発明の他の一態様によると、リソグラフィ装置であって、
放射の投影ビームを供給するための照射システムと、
投影ビームの断面にパターンを与える役割を果たすパターン化手段と、
基板を支持するための基板テーブルと、
パターン化したビームを基板の標的部分の上に投影するための投影システムと、
投影システムがパターン化したビームを基板上に投影するための位置に基板がある間に、基板の部分を検査するための検出器と、
検出器からの情報に応答して、基板上に投影されたパターンの基板に対する位置、基板上に投影されたパターンの倍率、及び最適焦点像平面の少なくとも1つを調整するための制御器とを備え、
検出器が、先行する処理工程によって作成された、基板上に形成されているデバイスの機能形状構成を検査する、リソグラフィ装置が提供される。
【0018】
したがって、検出器が基板上に形成されているデバイスの機能形状構成を検査するので、専用の位置合わせ標識を基板上に形成する必要がほとんどないか、又はそれらに対する必要性を完全に排除することができる。したがって、基板のより大きな領域部分が、能動素子を基板上に形成するために使用可能である。
【0019】
本発明の他の一態様によると、リソグラフィ装置であって、
放射の投影ビームを供給するための照射システムと、
投影ビームの断面にパターンを与える役割を果たすパターン化手段と、
基板を支持するための基板テーブルと、
パターン化したビームを基板の標的部分の上に投影するための投影システムと、
投影システムがパターン化したビームを基板上に投影するための位置に基板がある間に、基板の部分を検査するための検出器とを備え、
検出器からの情報に応答して基板上に投影されたパターンの倍率を調整するための制御器をさらに備える、リソグラフィ装置が提供される。
【0020】
したがって、基板上に投影されているパターンを調整して、例えば、基板の局部的な熱膨張を補償することができる。好ましくは、制御器が、基板上に投影されたパターンの位置及び/又は最適焦点像平面をさらに調整することが可能である。
【0021】
以上に論じた構成の組合せも使用可能であることが理解されよう。
【0022】
本発明の他の一態様によると、デバイスを製造する方法であって、
基板を提供する工程と、
照射システムを使用して放射の投影ビームを供給する工程と、
投影ビームの断面にパターンを与えるためにパターン化手段を使用する工程と、
放射のパターン化したビームを基板の標的部分上に投影する工程と、
投影システムがパターン化したビームを基板上に投影するための位置に基板がある間に、基板の部分を検査するために検出器を使用する工程と、
検出器からの情報に応答して、基板上に投影されたパターンの基板に対する位置、基板上に投影されたパターンの倍率、及び最適焦点像平面の少なくとも1つを調整する工程とを含み、
検出器が基板の複数の部分を基板の全幅にわたって同時に検査するための複数のセンサを有し、さらにパターン化手段及び投影システムが基板の全幅を露光するように配置され、さらに
本装置に対する基板の1回の通過において、基板を検査しかつ基板上にパターンを露光する工程をさらに含む、方法が提供される。
【0023】
本発明の他の一態様によると、デバイスを製造する方法であって、
基板を提供する工程と、
照射システムを使用して放射の投影ビームを供給する工程と、
投影ビームの断面にパターンを与えるためにパターン化手段を使用する工程と、
放射のパターン化したビームを基板の標的部分上に投影する工程と、
−影システムがパターン化したビームを基板上に投影するための位置に基板がある間に、基板の部分を検査するために検出器を使用する工程と、
検出器からの情報に応答して、基板上に投影されたパターンの基板に対する位置、基板上に投影されたパターンの倍率、及び最適焦点像平面の少なくとも1つを調整する工程とを含み、
検出器が、先行する処理工程によって作成された、基板上に形成されているデバイスの機能形状構成を検査する、方法が提供される。
【0024】
本発明の他の一態様によると、デバイスを製造する方法であって、
基板を提供する工程と、
照射システムを使用して放射の投影ビームを供給する工程と、
投影ビームの断面にパターンを与えるためにパターン化手段を使用する工程と、
放射のパターン化したビームを基板の標的部分上に投影する工程と、
投影システムがパターン化したビームを基板上に投影するための位置に基板がある間に、基板の部分を検査するために検出器を使用する工程と、
検出器からの情報に応答して、基板上に投影されたパターンの倍率を調整する工程とを含む方法が提供される。
【0025】
本明細書で使用する「個別制御可能要素アレイ」という用語は、望ましいパターンを基板の標的部分中に作成できるように、入射する放射ビームにパターン化した断面を与えるために使用可能な任意の手段を指すものと広義に解釈されたい。「光弁」及び「空間光変調器」(SLM)もこのような文脈で使用可能である。このようなパターン化手段の実施例には、次のものが含まれる。すなわち、
プログラマブル・ミラー・アレイ。これは、粘弾性制御層及び反射表面を有するマトリックス駆動可能表面を備える。このような装置の背後にある基本原理は、(例えば、)反射表面のアドレス指定領域が、入射光を回折光として反射するのに対して、非アドレス指定領域は入射光を非回折光として反射するというものである。適切な空間フィルタを使用すると、前記の非回折光を反射ビームから取り除き、回折光のみを基板に達するように残すことが可能であり、このような方式では、ビームがマトリックス駆動可能表面のアドレス指定パターンにしたがってパターン化される。別法として、フィルタが回折光を取り除いて非回折光を基板に達するように残すことも可能であることが理解されよう。回折光学MEMS装置のアレイを対応する方式で使用することも可能である。それぞれの回折光学MEMS装置は、入射光を回折光として反射する格子を形成するために相互に対して変形可能な複数の反射リボンから構成される。プログラマブル・ミラー・アレイの別法による他の一実施例は微小ミラーのマトリックス配置を用いるものであり、それぞれの微小ミラーを、適切な局部電界の印加によって又は圧電駆動手段の使用によって、軸回りに個々に傾斜させることができる。この場合も、アドレス指定ミラーが入射する放射ビームを非アドレス指定ミラーとは異なる方向に反射するように、ミラーをマトリックス駆動可能であり、このような方式では、反射ビームをマトリックス駆動可能ミラーのアドレス指定パターンにしたがってパターン化する。必要なマトリックス駆動は適切な電子的手段を使用して実行可能である。以上に説明した両状況では、個別制御可能要素アレイが、1つ又は複数のプログラマブル・ミラー・アレイを含むことができる。本明細書で言及されるミラー・アレイに関するさらなる情報は、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第5,296,891号及び同第5,523,193号、並びにPCT特許出願国際公開第98/38597号及び同第98/33096号から収集可能である。
プログラマブルLCDアレイ。このような構造の一実施例が、参照により本明細書に援用される米国特許第5,229,872号に見られる。
【0026】
例えば、形状構成のプリ・バイアシング、光学的近位補正による形状構成、相変化技法、及び多重露光技法を用いる場合は、個別制御可能要素アレイ上に「表示される」パターンは、基板の層に又は基板上に最終的に転写されるパターンとは実質的に異なり得ることを理解されたい。同様に、最終的に基板上に作成されるパターンは、個別制御可能要素アレイ上に一瞬に形成されたパターンに対応しない場合もある。これは、基板のそれぞれの部分上に形成される最終的なパターンが、個別制御可能要素アレイ上のパターン及び/又は基板の相対位置が変化する所与の時間の間又は所与の露光回数にわたって形成される配置における場合にそうである。
【0027】
本文では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特定的に言及するが、本明細書に説明するリソグラフィ装置には、集積光学系、磁気ドメイン記憶装置用の誘導及び検出パターン、平面パネル・ディスプレイ、薄膜磁気ヘッド等々のような他の応用例もあり得る。このような別法による応用例の文脈では、本明細書の「ウェハ」又は「ダイ」という用語の使用はいずれも、「基板」又は「標的部分」というより一般的な用語とそれぞれ同義であると見なし得ることは当業者には理解されよう。本明細書で言及する基板は、露光の前又は後で、例えば、トラック(典型的にレジスト層を基板に塗布しかつ露光済みのレジストを現像する手段)又は計測若しくは検査手段において処理可能である。応用可能な場合、本発明の開示をこのような及び他の基板処理手段に応用することができる。さらには、本明細書に使用する基板という用語を使って複数回処理した層を既に含んでいる基板を指すように、例えば、多層ICを作成するために基板を2回以上処理することも可能である。
【0028】
本明細書に使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(例えば、408、355、365、248、193、157、又は126ナノメートルの波長を有する)及び極紫外線(EUV)放射(例えば、5から20ナノメートルまでの範囲内の波長を有する)ばかりでなく、イオン・ビーム又は電子ビームなどの粒子ビームも含めて電磁放射のすべての種類を包含する。
【0029】
本明細書で使用する「投影システム」という用語は、屈折光学系、反射光学系、及び反射屈折光学系を含め、例えば、使用されている露光放射に又は浸漬液の使用若しくは真空の使用などの他の要素に適切な様々な種類の投影システムを包含するものと広義に解釈されたい。本明細書の「レンズ」という用語の使用はいずれも、より一般的な用語である「投影システム」と同義であると見なし得る。
【0030】
照射システムも、屈折光学系、反射光学系、及び反射屈折構成要素を含めて、放射の投影ビームを誘導、成形、又は制御するための様々な種類の光学構成要素を包含するものと広義に解釈されるべきであり、このような光学構成要素を以下では集合的又は単独に「レンズ」と呼ぶこともできる。
【0031】
リソグラフィ装置は、2つ(2連ステージ)以上の基板テーブルを有する種類であり得る。このような「多連ステージ」装置では、追加的なテーブルを並行して、すなわち、1つ又は複数のテーブル上で予備工程を実行し、他方で1つ又は複数の他のテーブルを露光に使用することができる。
【0032】
リソグラフィ装置はまた、投影システムの最終要素と基板の間の空間を充填するために、基板を相対的に大きな屈折率を有する液体、例えば、水の中に浸漬する種類であり得る。浸漬液は、リソグラフィ装置内の他の空間、例えば、個別制御可能要素アレイと投影システムの最初の要素との間に適用することも可能である。浸漬技法は、投影システムの開口数を増やすために当業ではよく知られている。
【0033】
ここで、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の模式的な図面を参照して例示としてのみ本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例によるリソグラフィ装置を示す図である。
【図2a】基板上の層が露光されているときの基板を示す図である。
【図2b】基板上の層が露光されているときの基板を示す図である。
【図2c】基板上の層が露光されているときの基板を示す図である。
【図3】本発明の装置で使用する露光ユニットの配置を示す図である。
【図4】図3に示した露光ユニットの一部を示す図である。
【図5】図3に示した露光システムによって作成可能な露光領域を示す図である。
【図6】基板上に形成された形状構成の反復ユニットの配置の一実施例を示す図である。
【図7】本発明の装置で使用する検出器ユニットの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図では、対応する参照符号は対応する部分を指す。
【0036】
図1は、本発明の特定の一実施例にしたがうリソグラフィ投影装置を模式的に示す。本装置は次のものを備える。すなわち、
放射(例えば、紫外線放射)の投影ビームPBを供給するための照射システム(照射器)IL。
投影ビームにパターンを与えるための個別制御可能要素アレイPPM(例えば、プログラマブル・ミラー・アレイ)。一般に個別制御可能要素アレイの位置を要素PLに対して固定するが、このアレイは、その代わりに、アレイを要素PLに対して正確に位置決めするための位置決め手段に連結可能である。
基板(例えば、レジストが塗布されているウェハ)Wを支持し、かつ基板を要素PLに対して正確に位置決めするための位置決め手段PWに連結された基板テーブル(例えば、ウェハ・テーブル)WT。
個別制御可能要素アレイPPMによって投影ビームPBに与えられたパターンを基板Wの標的部分C(例えば、1つ又は複数のダイを含む)の上に描画するための投影システム(「レンズ」)PL。この投影システムは個別制御可能要素アレイを基板上に描画可能である。別法として、投影システムは2次放射源を描画することも可能であり、その放射源のために個別制御可能要素アレイの要素がシャッタとしての役目をする。投影システムはまた、例えば、2次放射源を形成しかつ微小スポットを基板上に描画するために、微小レンズ・アレイ(MLAとして知られる)又はフレネル・レンズ・アレイなどの合焦要素のアレイを含むことができる。
【0037】
図に示すように、本装置は反射型(すなわち、反射型の個別制御可能要素アレイを有する)である。しかし、一般にはそれが、例えば、透過型(すなわち、透過型の個別制御可能要素アレイを有する)でもよい。
【0038】
照射器ILは、放射源SOから放射のビームを受け取る。この放射源及びリソグラフィ装置は、例えば、放射源がエキシマ・レーザであるとき、別体の独立要素であり得る。このような場合には、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成するものと見なされず、放射ビームは、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビーム拡大器を備えるビーム送出システムBDの補助によって放射源SOから照射器ILに送られる。他の場合では、例えば、放射源が水銀灯であるとき、放射源は装置の一体部分であり得る。放射源SO及び照射器ILを、必要ならばビーム送出システムBDと共に、放射システムと呼ぶこともできる。
【0039】
照射器ILは、ビームの角強度分布を調整するための調整手段AMを含むことができる。一般に、照射器のひとみ平面内における強度分布の少なくとも外半径範囲及び/又は内半径範囲(通常はそれぞれσ−アウター及びσ−インナーと呼ぶ)を調整することができる。さらに、照射器ILは、積分器IN及び集光器COなどの様々な他の構成要素を一般に含む。照射器は、投影ビームPBと呼ばれ、その断面に望ましい均一性及び強度分布を有する放射の条件ビームを供給する。
【0040】
ビームPBは、次に個別制御可能要素アレイPPMと交差する。個別制御可能要素アレイPPMによって反射された後、ビームPBは、このビームPBを基板Wの標的部分Cの上に合焦する投影システムPLを通過する。位置決め手段PW(及び干渉型測定手段IF)の補助によって、例えば、ビームPBの経路中に異なる標的部分Cを位置決めするために、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。使用する場合は、個別制御可能要素アレイのための位置決め手段を用いて、例えば、走査時に、ビームPBの経路に対して個別制御可能要素アレイPPMの位置を正確に補正することができる。一般に、物体テーブルWTの移動は、図1に明示しないが、長行程モジュール(粗い位置決め)及び短行程モジュール(微細な位置決め)の補助によって実現する。同様のシステムを使用して個別制御可能要素アレイを位置決めすることもできる。必要な相対的動作を与えるために、投影ビームを別様に/追加的に移動可能にし、他方で物体テーブル及び/又は個別制御可能要素アレイが固定位置を有し得ることが理解されよう。他に別法として、それは平面パネル・ディスプレイの製造において特に応用可能であるが、基板テーブルと投影システムの位置を固定し、基板を基板テーブルに対して移動するように配置可能である。例えば、基板テーブルに、実質的に一定の速度で基板をその全体にわたって走査するためのシステムを設けることもできる。
【0041】
本明細書では、レジストを基板上に露光するためのものとして本発明によるリソグラフィ装置を説明するが、本発明は、このような用途に限定されるものではなく、本装置を使用してレジストレス・リソグラフィにおいて用いるためのパターン化した投影ビームも投影できることが理解されよう。
【0042】
図示の装置は4つの好ましい方式で使用可能である。すなわち、
1.ステップ方式。個別制御可能要素アレイがパターン全体を投影ビームに与えるが、この投影ビームは1回の試み(すなわち、単一の静的露光)で標的部分Cの上に投影される。次いで、異なる標的部分Cを露光できるように、基板テーブルWTをX方向及び/又はY方向に移動する。ステップ方式では、露光範囲の最大サイズが単一静的露光で描画される標的部分Cのサイズを限定する。
2.走査方式。投影ビームPBに個別制御可能要素アレイ上を走査させるように、個別制御可能要素アレイは、速度vで所与の方向(いわゆる「走査方向」、例えば、Y方向)に移動可能であり、同時に並行して、基板テーブルWTを速度V=Mv(MはレンズPLの倍率)で同方向又は逆方向に移動させる。走査方式では、露光範囲の最大サイズが単一動的露光における標的部分の幅(非走査方向における)を限定するのに対して、走査の移動長さが標的部分の高さ(走査方向における)を決定する。
3.パルス方式。個別制御可能要素アレイを基本的に静止状態に保ち、パルス放射源を使用してパターン全体を基板の標的部分Cの上に投影する。投影ビームPBに基板Wを横切る線を走査させるように、基板テーブルWTを基本的に一定の速度で移動させる。個別制御可能要素アレイ上のパターンは、必要に応じて放射システムのパルスとパルスの合間に更新され、これらのパルスは、連続的な標的部分Cを基板上の必要な箇所に露光するようにタイミングを合わせる。したがって、投影ビームは、基板の細い帯ごとに露光してパターン全体を露光するために基板W上を横切って走査することができる。この過程は、線を1本1本露光して基板全体を露光し終えるまで反復される。
4.連続走査方式。実質的に一定の放射源を使用し、また投影ビームが基板を横切って走査しかつそれを露光するときに個別制御可能要素アレイ上のパターンを更新する以外は、パルス方式と基本的に同じである。
【0043】
上述の使用方式の組合せ及び/若しくはその変形、又は全く異なる使用方式も同様に用いることができる。
【0044】
図2a、図2b、及び図2cは、本発明による装置を例示する。露光及び位置合わせモジュール15が固定位置に設けてあり、その真下で基板10が走査される。図2aは、基板が露光及び位置合わせモジュール15に達する直前の状況を示す。図2bは、基板が露光及び位置合わせモジュールの真下で走査を受け始めるときの状況を示す。図2cは基板が露光及び位置合わせモジュール15の真下で走査を受け続けているときの状況を示す。
【0045】
露光及び位置合わせモジュール15は、検出器ユニット16と露光ユニット17から構成されている。検出器ユニット16及び露光ユニット17は、検出器ユニット16に対する露光ユニット17の相対位置を確実に固定する基準枠18によって連結されている。基準枠18は、確実に相対位置が安定するように非常に小さい熱膨張を有する材料から形成可能である。次いで、相対位置を事前較正によって正確に決定する。基板が露光及び位置合わせモジュールの真下で走査されるとき、検出器ユニット16が基板10上の位置合わせ標識を検査する。位置合わせ標識の検査から得られた情報を使用して、走査方向、横断方向(すなわち、基板平面内にあって走査方向に直交する)、及び基板に対して垂直方向に、正確に基板の位置を決定する。さらには、位置合わせ標識を使用して、基板の配向を3つの回転自由度すべてにおいて確定することができる。検出器ユニット16はまた、位置合わせ標識を検査して基板の熱膨張/収縮のいずれの程度も測定する。
【0046】
基板10が露光及び位置合わせユニット15の真下で走査を受けるとき、基板のそれぞれの部分が最初に検出器ユニット16の下方を通過し、次いで露光ユニット17の下方を通過する。したがって、基板10のそれぞれの部分に関して検査器ユニット16によって測定された、直線位置、配向、及び膨張に関する情報が露光ユニット17に伝達可能であり、基板が露光ユニット17の真下を通過しながら基板が露光されるとき、基板の当該部分に関する露光条件を最適化することができる。特に、走査及び横断方向における基板部分の位置誤差に関して、基板部分上に投影されるパターンの位置を調整することが可能であり、基板平面に対して垂直方向における基板の当該部分の位置誤差に関して、最適焦点像平面を調整することが可能であり、さらに基板の当該部分の熱膨張/収縮のいずれに関しても、倍率補正を行って補正することが可能である。例えば、平面パネル・ディスプレイを製造するための装置では、検出器ユニット16を露光ユニット17の30cm手前(前進する基板の視点から)に位置決めすることができる。検出器ユニット及び露光ユニットに対する基板の走査速度は毎秒50mmであり得る。したがって、本装置は、検出器ユニットを使用して基板部分を検査する工程と露光ユニットを使って同部分を照射する行程の間に6秒を有する。これは、露光ユニットにおいて、必要に応じて露光設定を調整するために検出器ユニットからのデータを使用するには十分な時間である。
【0047】
基板の各部分上の位置合わせ標識を検査して連続的な補正を行うことができる。したがって、たとえ基板の局部的な変形が存在するときでも重ね合わせ誤差を小さくすることができる。さらには、位置合わせ標識及び基板の検査工程と基板の当該部分のパターンの露光行程との間の時間差は、検出器ユニット16と露光ユニット17の離隔距離及び基板の走査速度によってのみ限定される。これは、最初に基板が位置合わせ標識に関してその全体が走査され、次いでパターンを露光するためにその全体が走査される、現時点で知られている装置と対照をなす。そのような装置では、基板の所与の部分が位置合わせ標識に関して検査される工程と当該部分が露光される工程との間に大きな時間差が生じることになる。その時間の間に、重ね合わせ誤差をもたらすことになる追加的な変化が発生する恐れがある。例えば、基板が露光されるとき、基板上に投影される放射によって基板の温度が上昇する。このような温度上昇は基板の熱膨張をもたらす。知られているシステムでは、露光とは別個の工程における位置合わせ標識の検査では、露光時のこのような熱膨張に対処することができない。しかし、本発明では、露光が行われるときに位置合わせ標識を検査するので、このような膨張に対処する。それは、2mの長さにまで達するソーダ石灰ガラス板に描画するために使用可能な平面パネル・ディスプレイ・リソグラフィでは特に重要である。このような板では、1℃の温度変化ごとに約8μm膨張する。したがって、露光時に位置合わせ検査をしないで、0.35μmの要求重ね合わせ精度を備えるためには、基板の温度を板全体にわたって±0.05℃に制御する必要がある。これには複雑な熱制御が必要となろう。
【0048】
さらには、本発明は、基板上の位置合わせ標識を検査する別個の工程を必要としないので、それぞれの基板に対する処理時間が大幅に低減する。
【0049】
基板上の位置合わせ標識は、走査方向と横断方向の両方に平行な位置合わせ格子、ここで使用するシェブロン位置合わせ標識、又はテレビ画像法による画像認識があり得る。一連の位置合わせ標識は、基板を検出器ユニット16に対して走査する方向に対して平行な1つ又は複数の列に配置可能であり、さらに基板の長さにわたって分布可能である。好ましくは、少なくとも2つのこのような位置合わせ標識の列を基板上に設ける。それぞれの場合に、使用されている位置合わせ標識に適切な知られた検出光学システムを検出ユニット16に設ける。
【0050】
好ましい1つの配置では、専用の位置合わせ標識が基板上に設けられていない。その代わりに、先行する処理工程で基板上に形成された形状構成のパターンを検出できる1個又は複数のセンサを検出ユニットに設ける。このようなセンサは、パターン認識アルゴリズムを走らせる制御器に接続されているカメラでよい。このような配置は、専用の位置合わせ標識が、基板上に形成されているデバイスの形状構成のために使用できない基板部分となるので有益である。したがって、デバイス自体の形状構成を利用することによって、基板のより大きな部分がデバイスの機能素子のために使用可能である。これは、例えば、位置合わせ標識が、形成されているディスプレイの画素とほぼ同じサイズであり得るので、平面パネル・ディスプレイの製作では特に有用である。したがって、位置合わせ標識がディスプレイ内に必要であれば、それは完成したデバイスの当該箇所に画素を欠くことになり、それは明らかに許容できないことになる。先行する層中に形成された形状構成を利用することはまた、新たな層を基板上のデバイスの上に形成しているとき、それが形成済みのデバイスの先行層と確実に正確に重ね合わせることが必須であるので有利である。基板上に形成されている先行層の形状構成の位置を直接測定することによって、確実に次の層を正確に重ね合わせることができる。説明したように、検出器ユニットが、専用の位置合わせ標識の代わりに、形成中のデバイスの機能形状構成を検査する場合、このデバイスの縁部に機能形状構成を形成するとき、確実に正確な位置合わせを行うために、形成中のデバイスの縁部周りにはダミー形状構成(すなわち、機能形状構成と同様に見えるもの)を備えることが必要になり得る。
【0051】
図6は、平面パネル・ディスプレイの製造時に基板上に形成可能な形状構成パターンの一部を模式的に表す。図示のように、パターン全体が、制御線41、薄膜トランジスタ42、及び画素自体43を備える複数の反復ユニット40から作製されている。したがって、画像認識システムを使用して反復ユニットを識別し、かつ形状構成の位置を正確に測定することができる。有利なことに、自己学習画像認識システムが使用可能である。留意したように、これらのパターンは高度に反復可能である。したがって、画像認識検出器を使用して基板上の形状構成の位置を微細に測定可能であり、さらに基板の異なる部分上の反復ユニット間に識別可能な差異が存在し得ないので別体のシステムを使用して大まかな位置測定が可能である。例えば、ルーラ、すなわち、基板の長さに沿って位置を示すための一連の標識を基板上に設けることができる。ルーラは、基板上に形成したデバイスの形状構成の位置を大まかに測定するためのみに使用されているので、例えば、ルーラを基板の縁部沿いのみに設けるだけでよい。換言すれば、ルーラは、基板上に形成すべきデバイスの形状構成を作成することが望ましい基板上の位置に設ける必要がない。別法として、又は追加的に、画像認識センサは、基板が検出器ユニットに対して走査を受けるときに情報を格納することによって粗い位置測定を実行することができる。例えば、検出器ユニットは、既に検出器ユニットを通過した基板の上に形成された先行層のパターンの反復ユニット数を計数することができる。したがって、このような計数データを使用してパターン認識検出器が次に識別する反復ユニットを決定することができる。
【0052】
基板上に投影されるパターンの位置は、いくつかの手段によって移動可能である。最初に、基板が露光及び位置合わせユニット15の真下で走査を受けるときに、基板10の位置を補正することができる。例えば、基板テーブルは、走査動作を与える長行程モジュール上に取付け可能であり、短行程モジュールは、補正動作を与えるために、長行程モジュールと基板テーブルの間に取り付けられている。別法として、露光及び位置合わせユニット15、又は少なくとも露光ユニット17(又はその一部)を駆動部上に取り付けて、パターンを基板の正確な位置に投影するために補正動作を行うことができる。他に随意選択として、個別制御可能要素アレイ上に形成したパターンを電子的に移動させる(すなわち、パターンが個別制御可能要素アレイ上で移動されたように見えるように個別制御可能要素アレイに供給されるデータを調整する)。基板上に投影されるパターンの、走査方向に平行な方向における位置はまた、基板が露光ユニット17の真下で走査されるときにパターンの露光タイミングを制御することによって、又は、例えば、本装置を連続走査方式で使用する場合は、個別制御可能要素アレイ上においてパターンを設定するタイミングの調整によって、調整することが可能である。当然のことであるが、上に説明した技法の組合せも使用可能である。
【0053】
図3は、本発明で使用可能な露光ユニット17の細部を示す。この露光ユニットは、それぞれが放射のパターン化されたビームを生成し、かつそれを基板10上に投影できる複数の光エンジン21から構成されている。図3に示すように、この光エンジン21は、基板の走査方向に直交する2つのアレイ22、23に配置されている。図4は、光エンジン21の細部を示す。光エンジンは、個別制御可能要素アレイ25、投影光学系26、及び微小レンズ・アレイ27から構成されている。2つ以上の光エンジン21が、共通の放射源を共有するか、又はそれぞれに個別の放射源を設けてもよい。図示のように、光エンジンは微小レンズ・アレイを使用するが、個別制御可能要素アレイ25を基板10の上に全体的に描画することもできることをさらに理解されたい。
【0054】
図5に示すように、光エンジン21のアレイ22、23は、基板10上のパターン描画31の対応するアレイ32、33を作成する。光エンジン21のそれぞれのアレイ22、23には、光エンジン間に空間が設けてある。このような空間を使用して、冷却などの光エンジンのための付随的な機能を設けたり、又は放射源のための空間を設けたりすることができる。したがって、基板上に投影されたパターン描画31のアレイ32、33中に間隙が存在する。光エンジンのアレイ22、23は、光エンジンの第2アレイ22によって基板上に投影されたパターン描画31の第2アレイ32が、基板を所与の距離だけ移動させた後で、光エンジンの第1アレイ23によって基板上に投影されたパターン描画の第1アレイ33中の間隙と一致するように配置される。したがって、光エンジン21間の間隙にもかかわらず、横断方向を横切る基板の細い帯全体を露光することができる。図3及び図5に示すように、光エンジン21の2つのアレイが存在する。しかし、例えば、光エンジン21間のさらに大きな間隙を可能にするために、又はそれぞれの基板部分が1度の走査のうちに2回以上の露光が受けられるように、追加的なアレイを露光ユニット17に設け得ることが理解されよう。
【0055】
好ましい一実施例では、検出器ユニット16からの情報に応答して、それぞれの光エンジンが、基板上に投影されたパターンに対して行われる調整をそれぞれ個々に実行することができる。これは、光エンジン21のそれぞれの位置を制御するために個々の駆動部を設けることによって、投影光学系26及び/又は光エンジン21のそれぞれの微小レンズ・アレイにおいて倍率制御並びに最適焦点像平面制御を行うことによって、及び/又は、個別に電子的補正を施すことができるように、それぞれの光エンジンに対して別個のデータ制御を行うことによって実行可能である。このような手段によって、基板全体にわたって局部的な歪み及び変形を補正することができる。しかし、例えば、基板の位置誤差を全体的に補償するために包括補償手段(すなわち、光エンジンのすべてによって作成されたパターンに有効な補償手段)を設けることも望ましい場合がある。
【0056】
光エンジンを別体の駆動部に取り付けない場合は、すべての光エンジンの微小レンズ・アレイを、好ましくは熱膨張が非常に小さい単一の基準枠上に取り付けることができる。しかし、必要であれば、基準枠に対するそれぞれの微小レンズ・アレイの位置を調整することが可能である。同様に、すべての光エンジンの個別制御可能要素アレイを別体の基準枠に取り付けることが可能であり、さらに基準枠に対するそれぞれの位置を調整することが可能である。したがって、光エンジンによって作成されたパターンの相対位置を測定及び較正することが可能である。
【0057】
それぞれの光エンジンの倍率は、基板の膨張/収縮のいずれも補償するために個別制御可能要素アレイの位置を変更することによって、又は他の任意適切な光学的方法によって調整可能である。別法として又は追加的に、基板上に投影されるパターンの倍率は、個別制御可能要素アレイに与えたパターンを電子的に変更することによって調整可能である。先程と同様に、これもそれぞれの光エンジンに対して個別に、及び/又は光エンジンのすべてに対して包括的に(例えば、個別制御可能要素アレイのすべてが搭載されている基準枠の位置を調整することによって)実行可能である。好ましくは、倍率制御範囲が±15ppmである。
【0058】
上に説明した実施例の一変形では、検出器ユニット16及び露光ユニット17が、相互に剛的に連結されなくてもよいし、又は熱膨張/収縮を受ける架台によって連結されてもよい。このような場合には、検出器ユニット16に対する露光ユニット17の位置を監視するために位置センサを設けねばならない。したがって、たとえ相対位置が一定でなくても、それを常に知ることができる。
【0059】
図7に示すように、検出器ユニット16は、位置合わせ標識及び/又は基板上に先行して形成された層の形状構成を基板の幅全体にわたって検査できるように複数のセンサ16a、16bから構成されていることが好ましい。したがって、露光ユニット17で露光条件を設定するときに、基板の変形及び/又は既に基板上に形成された形状構成の位置合わせにおける基板の幅にわたる変化を考慮に入れることができる。図7に示すように、検出器ユニット16中のセンサ16a、16bの配置は、露光ユニット17中の光エンジンの配置に対応する態様で行うことができる。例えば、これらのセンサは、センサ16aの第1アレイとセンサ16bの第2アレイとして配置可能であり、それぞれのアレイは、1組の離間された複数のセンサを含む。したがって、基板10の全幅を検査するが、制御線、諸機能等々のためにセンサ16a、16bのそれぞれの周りに間隔を設けることができる。
【0060】
上に説明した配置では、それぞれのセンサ16a、16bは、それが光エンジン21の所与の1つに結合されるように配置可能であること、すなわち、所与のセンサによって検査される基板のそれぞれの部分が、付随する光エンジンを使用して引き続き露光されるように配置可能であることが理解されよう。このような配置を図7に示す2列の複数のセンサに限定する必要はなく、適宜に任意の列数で構成可能であることも理解されよう。さらに、検出器ユニット16は、それによって基板10の各部分ごとに検査するように配置されていなくてもよい。例えば、センサの列を検出ユニット16の幅全体にわたって配置するが、相互に離間して設定することができる。このような場合には、相互に離間して設定されている複数の箇所で、基板及び/又は基板上に形成した形状構成の位置及び/又は配向を測定するようにセンサを配置する。したがって、基板上の当該領域に関しては、露光条件をセンサによる測定から直接設定することが可能である。センサによって検査されなかった中間領域に関しては、基板の周囲部分を検査した2個以上のセンサからのデータを補間することによって露光条件を設定することができる。
【0061】
本発明は、主としてパルス方式(上に説明)を用いる装置に関連して(この方式では基板を基本的に一定の速度で移動させ、かつ露光がパルス化されている)以上に説明してきたが、本発明は、理解されるように、ステップ方式(上に説明)で動作する装置ばかりでなく、走査方式(上に説明)で動作する装置にも等しく応用可能であることをさらに理解されたい。さらには、本発明は、放射ビームをパターン化するために個別制御可能要素アレイを使用することに言及するが、本発明は通常の固定マスクを使用して投影ビームをパターン化する装置にも等しく応用可能であることが理解されよう。その場合には、本発明は、例えば、走査方式で動作する装置で使用可能であり、検出器は、マスクと基板の間に配置され、さらに、パターン化した投影ビームが基板を横切って走査するとき、そのビームに先行するように配置可能である。最後に、基板を露光及び位置合わせユニットの下方で移動させる観点から本発明を説明してきたが、説明した絶対位置は本発明にとって本質的ではなく、また本装置の所与の部分が固定されていることも本質的ではないこと、すなわち、基板が露光及び位置合わせユニットに対して相対移動することのみが必要であることが容易に理解されよう。
【0062】
以上に本発明の特定の実施例を説明してきたが、本発明は説明したものとは別様に実施可能であることが理解されよう。本明細書は本発明を限定しようとするものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を第1方向に移動させるための基板テーブルと、
複数の光エンジンを備える露光ユニットであって、各光エンジンはパターン化された放射ビームを基板に投影するための投影光学系を含み、前記複数の光エンジンは前記第1方向に直交する第2方向に配列されている露光ユニットと、
前記露光ユニットから前記第1方向に離れて配置されており基板を検査するための検出器ユニットであって、前記複数の光エンジンの配列に対応して前記第2方向に配列されている複数のセンサを備える検出器ユニットと、を備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項2】
前記基板の経路上方に前記検出器ユニット及び前記露光ユニットを保持し、前記検出器ユニットに対する前記露光ユニットの前記第1方向の相対位置を確実に固定する基準枠をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記基準枠は、確実に相対位置が安定するように非常に小さい熱膨張を有する材料から形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記検出器ユニットは、露光のために前記基板が移動されているときに前記パターン化された放射ビームで基板の一部分が露光される前に当該一部分を検査することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記複数のセンサは、前記基板の全幅にわたって基板の複数の部分を同時に検査するよう構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記検出器ユニットの検査結果に基づいて露光条件を調整する制御器をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記複数の光エンジンの各々は、前記パターン化された放射ビームを与えるための個別制御可能要素アレイを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
露光ユニットと該露光ユニットから第1方向に離れて配置されている検出器ユニットとに対し基板を前記第1方向に移動させ、
前記第1方向に直交する第2方向に配列されている複数のセンサを備える前記検出器ユニットを使用して前記基板を検査し、
パターン化された放射ビームを前記基板に投影するための投影光学系を各々が含む複数の光エンジンを備え、該複数の光エンジンは前記複数のセンサの配列に対応して前記第2方向に配列されている前記露光ユニットを使用して前記基板を露光することを含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項9】
基板を移動させているときに前記検査及び露光を行うことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
連続する複数回の露光の合間に前記露光ユニット及び前記検出器ユニットに対して基板を移動させることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
露光中において前記露光ユニット及び前記検出器ユニットに対して基板を移動させることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
検査された基板の一部分が検査に引き続いて露光されることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記露光中に、前記検査に従って露光条件が重ね合わせ精度を最適化するよう調整されることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記露光ユニット及び前記検出器ユニットに対して実質的に一定の速度で基板を移動させることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記露光ユニットに対する前記検出器ユニットの相対位置は実質的に固定され既知であることを特徴とする請求項8から14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77540(P2011−77540A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−273585(P2010−273585)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【分割の表示】特願2008−298002(P2008−298002)の分割
【原出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】