説明

位置姿勢計測装置、およびワーク搬送組立装置

【課題】
計測対象物の色や光沢に左右されることなく、計測対象物を撮像した画像における計測対象物と背景とのコントラストの差を簡易な構成で確実に大きくし、計測対象物の位置および姿勢を高精度に計測すること。
【解決手段】
計測対象物を撮像するカメラと、カメラ側から計測対象物に向けて発光する第1照明と、前記計測対象物を挟んで前記第1照明と反対側に設けられた第2照明と、計測対象物の輪郭より大きな開口部を備え、遮光部材によって第2照明を覆うカバーと、第1照明の点灯および消灯を制御する第1照明制御部と前記第2照明の点灯および消灯を制御する第2照明制御部と撮像画像に基づいて画像処理により、計測対象物の位置および姿勢を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持された計測対象物の位置および姿勢を画像処理により計測する位置計測装置および、その位置計測装置を用いたワーク搬送組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化された組立工場では急速な市場の変化に対応するため、大量生産方式から変種変量生産方式への移行が進み、マニピュレータによるセル生産システムも拡大しつつある。マニピュレータによるセル生産システムでは1台のマニピュレータで多品種のワークを組み立てる事になり、ワークの色や形状・サイズ等が大きく異なる場合がある。例えば、金属光沢のあるメッキ部品や艶消しのモールド部品、単純な形状の球体やブロック等から複雑な形状まで多種多様なワークを取扱う事になる。また、マニピュレータによるワークの組立作業ではワークの形状や位置・姿勢等をマニピュレータに認識させる必要があり、その認識方法として視覚装置の採用が進んでいる。
視覚装置はカメラ、レンズ、照明装置、画像処理装置等で構成され、カメラで撮像した画像からワーク部分の画像を抽出して認識している。ワーク部分の画像を抽出する方法として、濃淡画像処理があり、濃淡レベルに閾値を設けてワークと背景とを分離している。このため、ワークと背景との濃淡レベルの差を大きくできれば精度良くワークを抽出する事が可能になる。この濃淡レベルの差が最大になるのは白色と黒色との組合せであり、256階調では黒色=0、白色=255になる。
【0003】
視覚装置の従来技術として、特許文献1には電子部品自動装着装置が開示されている。図8は、特許文献1に記載されている電子部品自動装着装置における視覚装置部の構成図である。
図8において、5は部品、14は吸着ノズル、16は吸着ノズル14に対する部品5の位置ずれが認識される部品認識装置、15は吸着ノズル14が吸着保持している部品5を図示しないプリント基板に装着するために装着ヘッドであり、図示しないXYテーブルの移動により所定の位置に停止したプリント基板に部品5は装着される。
装着ヘッド15には前記部品認識装置16により部品5の吸着ノズル14に対する位置ずれを認識する場合にカメラに撮像された画面の背景となる拡散板22が形成されている。
【0004】
該拡散板22は内側に塗布された白色塗装層24、その上に貼り付けられた明度変更手段としての液晶層25及びその上に貼り付けられた透明に近い乳白色の樹脂板26により形成されている。液晶層25はガラス板で液晶を挾み封止したパネル状の構造であり、上下両側のガラス板夫々の全面にわたって設けられた電極間に電圧が加えられるとガラス板に垂直な方向に透明となり、電位差が無くなると光を通さないようになるものである。
白色塗装層24は光を拡散反射する層であり、液晶層25が透明な場合には光源23からの光が反射され液晶層25及び樹脂板26を通って部品5に拡散光が照射され透過照明方式の認識がなされるものであり、また液晶層25が遮光状態では光源23からの光は液晶層25に遮られ殆ど反射せず、拡散板22は暗い状態となる。
液晶層25の液晶を透明にすると、光源23から照射された光は、樹脂板26及び透明な状態の液晶層25を透過して白色塗装層24に当り、反射拡散され、再度液晶層25及び樹脂板26を透過して部品5に照射され部品認識装置16のカメラにこの像が撮像される。この撮像された画像は、部品5の部分が黒くそして背景である拡散板22の部分は十分明るく部品5の像が明瞭に写し出されたものとなっている。
【0005】
また、液晶層25の液晶を黒色の遮光状態にすると、光源23から拡散板22に当った光は樹脂板26を透過するが液晶層25を透過することはできず、該液晶層25の表面で少量反射されるとしても白色塗装層24で反射される光量よりは圧倒的に少ない量であり、拡散板22により反射され部品認識装置16に入る光の量は少量に抑えられ暗くされ、部品認識装置16により撮像される部品5の画像は、部品5の像が明るく背景となる拡散板22の部分は部品5の像のコントラストが取れるよう十分に暗いものとなる。
つまり、拡散板に設けた液晶層等の明度変更手段により拡散板の明るさを変えることができるので、部品認識時に最適な明度を背景とした像で部品認識処理を行うことができ、部品認識の精度を上げることができる。
しかし、液晶層25の液晶の状態を切り替えても、部品5の色や光沢によっては部品認識装置16により撮像される部品5の画像は、背景と部品とのコントラストの差が十分に得られず、部品5の認識精度が低下するとの問題がある。例えば、液晶層25の液晶を透明にして拡散板22にて光源23から照射された光を反射拡散させ、部品5を部品認識装置16のカメラにて撮像する場合について検討する。部品認識装置16のカメラにて撮像された画像の部品5と背景とのコントラストの差を大きくするには、拡散板22による反射光を多くし、部品5による反射光を少なくする必要がある。しかし、光源23は部品5を隔てて拡散板22に対向配置されているため、光源23の光量を変化させても拡散板22による反射光と部品5による反射光とが同じ傾向で変化するため、部品5と背景とのコントラストの差を十分に大きくできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−326894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、計測対象物の色や光沢に左右されることなく、計測対象物を撮像した画像における計測対象物と背景とのコントラストの差を簡易な構成で確実に大きくし、計測対象物の位置および姿勢を高精度に計測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置姿勢計測装置は、計測対象物を撮像した画像に基づき、当該計測対象物の位置および姿勢を計測する位置姿勢計測装置であって、前記計測対象物を撮像するカメラと、前記カメラ側から前記計測対象物に向けて発光する第1照明と、前記計測対象物を挟んで前記第1照明と反対側に設けられた第2照明と、前記計測対象物の輪郭より大きな開口部を備え、遮光部材によって前記第2照明を覆う遮光カバーと、前記第1照明の点灯および消灯を制御する第1照明制御部と前記第2照明の点灯および消灯を制御する第2照明制御部と前記カメラで撮像された画像に基づいて前記計測対象物の位置および姿勢を計測する画像処理部と、により構成されている。
本発明に係る位置姿勢計測装置において、前記第1照明を、任意の発光色に変更可能な照明とし、前記第1照明制御部は、発光色を変更する第1の発光色変更手段を備えることができる。
【0009】
本発明に係る位置姿勢計測装置において、前記第2照明制御部により第2照明を点灯させた場合には、前記第1照明制御部の発光色変更手段にて前記第1の照明の発光色を前記前記計測対象物の補色とし、前記第2照明制御部により第2照明を消灯させた場合には、前記第1照明制御部の発光色変更手段にて前記第1の照明の発光色を前記計測対象物と同色とし、前記カメラにて前記計測対象物と背景とのコントラストを大きくした画像を撮像することができる。
本発明に係る位置姿勢計測装置において、前記第2照明は、任意の発光色に変更可能な照明であり、前記第2照明制御部は、発光色を変更する第2の発光色変更手段を備えていることを特徴とする位置姿勢計測装置。
本発明に係る位置姿勢計測装置において、前記第1照明制御部および前記第2照明制御部は、光量を調整する光量調整手段を備えることができる。
【0010】
本発明に係るワーク搬送組立装置は、ワーク供給部と、ワーク組立部と、マニピュレータと、マニピュレータ制御装置と、請求項1乃至5の何れか1項に記載の位置姿勢計測装置と、から構成され、前記マニピュレータには、前記位置姿勢計測装置における第2照明および遮光カバーが取り付けられ、前記前記位置姿勢計測装置におけるカメラが、ワークの搬送経路に設けられ、前記マニピュレータに保持されたワークの位置および姿勢を前記カメラで撮像された画像に基づいて前記位置姿勢計測装置にて計測し、マニピュレータ制御装置は、前記位置姿勢計測装置にて計測した結果に基づいて、マニピュレータを制御してワーク組立部にて組立を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、計測対象物の色や光沢に左右されることなく、計測対象物を撮像した画像における計測対象物と背景とのコントラストの差を簡易な構成で確実に大きくし、計測対象物の位置および姿勢を高精度に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態における概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフローチャートである。
【図4】黒色のワークにおける撮像画像である。
【図5】白色のワークにおける撮像画像である。
【図6】橙色のワークにおける撮像画像である。
【図7】水色のワークにおける撮像画像である。
【図8】特許文献1に記載されている電子部品自動装着装置における視覚装置部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施形態について、図を用いて説明する。
図1は本発明に係る実施形態における概略構成図である。400は計測対象物となるワーク、220はワーク400を搬送するマニピュレータ、221はワーク400を吸着保持する保持装置、132は第2照明、133は遮光カバー、120はマニピュレータ220に保持されたワーク400を撮像するカメラ、131はマニピュレータ220に保持されたワーク400を照明する第1照明である。
第2照明132は、遮光カバー133の内部であってワーク400を挟んで第1照明131と反対側に設けられ、カメラ120に向けて光を発光している。図1において第2照明132はリング照明を用いているが、リング照明に限定されることはない。第2照明132は、通常は白色照明を用いるが、照明の発光色を変えることができるカラー照明としても良い。
【0014】
遮光カバー133は、遮光部材によって形成され、ワーク400の輪郭より大きな開口部が設けられている。つまり、カメラ120の画像においては開口部がワーク400の輪郭外周を囲むようになる。遮光カバー133は、前記開口部以外から外部の光が入らない構造となっている。ワーク400が保持装置221に保持されている状態では、遮光カバー133の開口部とワーク400の輪郭との間に隙間が生じる。なお、第1照明または外部の光がその隙間から遮光カバー内部に入って反射して外部へ出てくるが、その隙間を小さくすることで遮光カバー133から外部へ出てくる光の量を少なくすることができる。さらに、遮光カバー内部表面を光の反射量が少ないものとすれば、遮光カバー133から外部へ出てくる光の量を減らすこともできる。よって、第1照明または外部の光が、遮光カバー133の内部で反射して外部へ出てくる光の量は少なくなる。一方、遮光カバー内部にある第2照明132による光は、遮光カバー133の開口部とワーク400の輪郭との間の隙間を、大量に通過することとなる。つまり、第2照明132の点灯または消灯によって、その隙間を通過するからの光の量を容易に調整することが可能となる。なお、遮光カバー133はマニピュレータ220に保持装置221と共に固定されており、マニピュレータ220を動作させると一体となって移動する。
【0015】
カメラ120は、マニピュレータ220に保持されたワーク400の搬送経路上に固定され、ワーク400を撮像する。カメラ120はモノクロカメラが用いられる。もちろんカラーカメラを用いても良い。カメラ120に撮像される画像は、第1照明131の照明光および外部からの光によるワーク400および遮光カバー133の反射光および遮光カバー133の開口部とワーク400の隙間を通過した光による画像となる。
第1照明131は、カメラ120側に設けられ、ワーク400に向けて光を発光している。図1において第1照明131はリング照明を用いているが、リング照明に限定されることはない。第1照明131は、照明の発光色を変えることができるカラー照明を用いる。ただし、取り扱うワーク400の色によって、照明の発光色をワーク400に対応して変更する必要が無い場合には、白色照明とすることができる。
【0016】
次に図2の本発明の実施形態に係るブロック図に基づいて説明する。
100は位置姿勢計測装置、200はマニピュレータ制御装置、300はワーク搬送組立装置である。
位置姿勢計測装置100は、位置姿勢計測部110、カメラ120、第1照明131、第2照明132、を備えている。なお、位置姿勢計測装置100には、図1に図示されている遮光カバー133も含まれている。位置姿勢計測部110は、図示しない記憶装置(ハードディスクやメモリ等)やCPU(中央処理演算装置)等を備えたコンピュータで実現されている。画像処理部111、第1照明制御部112、第2照明制御部113は、位置姿勢計測部110に予め記憶されたプログラムを実行することにより実現されている。なお、画像処理部111は画像処理装置として別の独立した装置とすることもできる。
【0017】
マニピュレータ制御装置200は、マニピュレータ制御部210、マニピュレータ220、マニピュレータ220に取り付けられた保持装置221から構成されている。マニピュレータ制御部210は、図示しない記憶装置(ハードディスクやメモリ等)やCPU(中央処理演算装置)等を備えたコンピュータで実現されている。マニピュレータ制御部210は、予めプログラム定められた動作に基づいてマニピュレータ220および保持装置221を制御し、所望の動きを実現する。
ワーク搬送組立装置300は、ワーク搬送組立制御部310、位置姿勢計測装置100、マニピュレータ制御装置200と、入力装置311と、出力装置312と、ワーク供給部320と、ワーク組立部330とから構成されている。ワーク搬送組立制御部310は、図示しない記憶装置(ハードディスクやメモリ等)やCPU(中央処理演算装置)等を備えたコンピュータで実現されている。図2において、位置姿勢計測部110、マニピュレータ制御部210、ワーク搬送組立制御部310は、相互に必要なデータの授受を行っている。
【0018】
入力装置311は、キーボードやマウス等が該当し、使用者がワーク搬送組立装置に必要な情報を入力するために用いられる装置である。勿論、入力装置311で入力された必要なデータは、位置姿勢計測部110およびマニピュレータ制御部210にも引き渡される。出力装置312は、ディスプレイ、タッチパネル、プリンタ等が該当し、使用者にワーク搬送組立装置から必要な情報を表示等するために用いられる装置である。
ワーク供給部320は、組立を行うワークを供給する。例えば、パーツフィーダー等が該当する。ワーク組立部330は、搬送ワークが組み付けられるワークを固定し、必要に応じて組み付けられるワークをマニピュレータによるワーク組立作業に適した姿勢等に移動させる。
次に図3の本発明の実施形態に係るフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
ステップ1(S1)では、ワーク搬送組立制御部310にて搬送するワークを決定する。具体的には、ワーク搬送組立制御部310に搬送して組み立てるワークの順番を予め記憶しておき、順番に基づき対応するワークの供給位置等のワーク情報を読み出し、搬送するワークを決定する。
ステップ2(S2)では、ステップ1で決定されたワークのワーク情報を位置姿勢計測部110が受け取り、そのワーク情報に対応する発光色を第1照明制御部112により第1照明131に設定する。発光色の設定は、第1照明131におけるRGB各素子の光量設定値(例えば、0から255の整数で、大きい数ほど光量が多い。)を設定することなる。なお、第1照明131が白色照明である場合には、白色照明の光量設定値を設定することとなる。
【0020】
ステップ3(S3)では、ステップ1で決定されたワークのワーク情報をマニピュレータ制御部210が受け取り、マニピュレータ220の動作軌跡を決定し、動作を開始する。マニピュレータ制御部210は、マニピュレータ220を制御してワーク供給部320に移動させ、ステップ1で決定されたワークを保持装置221にて保持する。
ステップ4(S4)で、マニピュレータ220によるワークのワーク組立部320へ移動を開始し、ステップ5(S5)にてカメラ120の撮像範囲内にワークがあるかを確認する。
ステップ5(S5)にてカメラ120の撮像範囲内にワークがあることを確認できたら、ステップ6(S6)にて、第1照明131を発光させるか否かを確認する。第1照明を発光させるか否かは、予めワークごとに記憶されている。例えば、ワーク搬送組立制御部310にてワークの組立順番ごとに、ワーク情報、第1照明の発光の有無、第1照明の発光色の設定、第2照明の発光の有無、を記憶しておき、ワーク搬送組立制御部310から位置姿勢計測部110へ第1照明131の発光の有無についてのデータを受け渡し、位置姿勢計測部110にて第1照明の発光の有無を確認する。また、ワーク搬送組立制御部310はワークの組立順番ごとのワーク情報のみを記憶し、位置姿勢計測部110はワークごとの、第1照明の発光の有無、第1照明の発光色の設定、第2照明の発光の有無、を記憶し、ワーク搬送組立制御部310から位置姿勢計測部110へワーク情報を受け渡し、そのワーク情報に基づいて位置姿勢計測部110にて第1照明の発光の有無を確認しても良い。
【0021】
第1照明を発光させない場合には、ステップ7(S7)に進み、第2照明のみを発光させてワークをカメラ120で撮像する。一方、第1照明を発光させる場合には、ステップ8(S8)に進む。
ステップ8(S8)にて、第2照明132を発光させるか否かを確認する。第2照明を発光させるか否かは、予めワークごとに記憶されている。例えば、ワーク搬送組立制御部110にてワークの組立順番ごとに、ワーク情報、第1証明の発光の有無、第1照明の発光色の設定、第2照明の発光の有無、を記憶しておき、ワーク搬送組立制御部310から位置姿勢計測部110へ第2照明の発光の有無についてのデータを受け渡し、位置姿勢計測部110にて第2照明132の発光の有無を確認する。また、ワーク搬送組立制御部310はワークの組立順番ごとのワーク情報のみを記憶し、位置姿勢計測部110はワークごとの第1照明の発光色の設定、第2照明の発光の有無、を記憶し、ワーク搬送組立制御部310から位置姿勢計測部110へワーク情報を受け渡し、そのワーク情報に基づいて位置姿勢計測部110にて第2照明の発光の有無を確認しても良い。
【0022】
第2照明を発光させる場合には、ステップ9(S9)に進み、第1および第2照明を発光させてワークをカメラ120で撮像する。一方、第2照明を発光させない場合には、ステップ10(S10)に進み、第1照明のみを発光させてワークをカメラ120で撮像する。
ステップ11(S11)では、ステップ7(S7)、ステップ9(S9)またはステップ10(S10)で撮像された画像を、位置姿勢計測部110の画像処理部111にて画像処理によりマニピュレータに保持されたワークの位置および姿勢を計測する。例えば、撮像された画像を二値化してワークを認識し、ワークの位置および姿勢を計測する。ワークの位置および姿勢の計測に際しては、遮光カバー133に基準マーカを設けておくことで、基準マーカに基づいてマニピュレータに保持されたワークの位置および姿勢を求めることができる。また、基準マーカの代替として、遮光カバー133の開口部輪郭を用いることもできる。
【0023】
ステップ12(S12)では、ステップ11(S11)での位置姿勢計測結果に基づいて、ワーク組立部330にワークを搬送してワークを正確に組み立てができるようにマニピュレータ220の軌道やワークの姿勢を補正する。例えば、マニピュレータ制御部210にマニピュレータ220が保持するワークの基準位置および基準姿勢を設定しておき、位置姿勢計測部110から引き渡されるワークの位置姿勢計測結果とワークの基準位置および基準姿勢を比較して差を求め、その差を用いてマニピュレータの軌道およびワークの姿勢を修正する。
ステップ13(S13)では、ステップ12(S12)で修正された軌道および姿勢にてマニピュレータ220を動作させ、ワークをワーク組立部330にて組み立てる。
次に、位置姿勢計測装置100によって、撮像される画像について図を用いて詳細に説明する。なお、遮光カバー133は外面が黒色とする。ただし、遮光カバー133の外面は黒色に限定されるものではなく、取り扱うワークの色に合わせて変更しても良い。
【0024】
図4は、黒色のワーク400を、第1照明131を消灯し、第2照明132を点灯してカメラ120で撮像した画像である。撮像された画像においては、遮光カバー133とワーク400とにより生ずる隙間部分の画像511は、第2照明132による通過光により白色となり、一方、ワーク部分の画像501とカバー部分の画像521は黒色となる。よって、ワーク部分の画像501と隙間部分の画像511との濃淡レベルの差が大きくなり、ワーク部分の画像501を容易に抽出する事が可能になる。なお、外乱光の状態、ワークの表面状態等によっては、第1照明131を適切な光量に調節して点灯させても良い。
図5は、白色のワーク400を、第1照明131を点灯し、第2照明132を消灯してカメラ120で撮像した画像である。撮像された画像においては、ワーク部分の画像502は白色、カバー部分の画像521は黒色となり、遮光カバー133とワーク400とにより生ずる隙間部分の画像512は光がほとんど通過していないため濃灰色となる。よって、ワーク部分の画像502と隙間部分の画像512との濃淡レベルの差が大きくなり、ワーク部分の画像502を容易に抽出する事が可能になる。
【0025】
図6は、橙色のワーク400を、第1照明131の発光色を緑色に設定し、第1照明131及び第2照明132を点灯し、カメラ120で撮像した画像である。撮像された画像においては、遮光カバー133とワーク400とにより生ずる隙間部分の画像511は、第2照明132による透過光により白色となり、ワーク部分の画像503は緑色と橙色は補色の関係にあるために濃灰色となる。なお、カバー部の画像521は黒色となる。よって、ワーク部分の画像503と隙間部分の画像511との濃淡レベルの差が大きくなり、ワーク部分の画像503を容易に抽出する事が可能になる。この様に、中間色に対しては補色を利用することで濃淡レベルの差を大きくする事が出来る。なお、ワーク400が赤色や青色などの場合には、各々の補色である緑色や橙色の照明で照らすとワーク部分の画像503は濃灰色となる。
【0026】
図7の場合、水色のワーク400を、第1照明131の発光色を水色に設定し、第1照明131を点灯し、第2照明132を消灯し、カメラ120で撮像した画像である。撮像された画像においては、遮光カバー133とワーク400との隙間部分の画像512は光がほとんど透過していないため濃灰色となり、一方、ワーク部分の画像504は同色の光であるため反射光の量が多くなり白色となる。よって、ワーク部分の画像504と隙間部分の画像512との濃淡レベルの差が大きくなり、ワーク部分の画像504を容易に抽出する事が可能になる。この様に、中間色に対しては同色の照明光を用いることで濃淡レベルの差を大きくする事も出来る。
つまり、遮光カバー133によって、第1照明131の反射光および外部の照明光によるワーク背後からカメラ120に入光する光を遮断し、第2照明132を消灯した際にはワーク400とカバー133との隙間部分の画像を安定した濃灰色に、第2照明132を点灯した際にはワーク400とカバー133との隙間部分の画像を安定した白色に保つ事が出来る。さらに、第2照明132の点灯・消灯によってワーク400とカバー133との隙間部分の画像を安定した色に変更できることで、ワーク400の色に合わせて第1照明131を調整し、ワーク部分と隙間部分との濃淡レベルの差が大きい画像を得られることとなる。
【0027】
なお、第1照明制御部112および第2照明制御部113には、光量調節機能を有しており、予め作成したテーブル(ワークに応じて光量を決めた一覧表)から 光量を選択して点灯する事も出来るようにしてもよい。
遮光カバー133の開口部は、ワークの大きさに応じて開口面積を可変可能とすることができる。例えば、開口部が四角形であれば、一辺ごとにモーター等で可動するプレートを備え、位置姿勢計測部110からの指示に基づいてプレートを所定の位置に移動させるようにすれば良い。なお、開口部面積が可変可能であれば、その方法は特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0028】
100 位置姿勢計測装置
110 位置姿勢計測部
120 カメラ
131 第1照明
132 第2照明
133 遮光カバー
200 マニピュレータ制御装置
210 マニピュレータ制御部
220 マニピュレータ
221 保持装置
300 ワーク搬送組立装置
310 ワーク搬送組立制御部
320 ワーク供給部
330 ワーク組立部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物を撮像した画像に基づき、当該計測対象物の位置および姿勢を計測する位置姿勢計測装置であって、
前記計測対象物を撮像するカメラと、
前記カメラ側から前記計測対象物に向けて発光する第1照明と、
前記計測対象物を挟んで前記第1照明と反対側に設けられた第2照明と、
前記計測対象物の輪郭より大きな開口部を備え、遮光部材によって前記第2照明を覆う遮光カバーと、
前記第1照明の点灯および消灯を制御する第1照明制御部と
前記第2照明の点灯および消灯を制御する第2照明制御部と
前記カメラで撮像された画像に基づいて前記計測対象物の位置および姿勢を計測する画像処理部と、
により構成されたことを特徴とする位置姿勢計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置姿勢計測装置において、
前記第1照明は、任意の発光色に変更可能な照明であり、
前記第1照明制御部は、発光色を変更する第1の発光色変更手段を備えていることを特徴とする位置姿勢計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位置姿勢計測装置において、
前記第2照明制御部により第2照明を点灯させた場合には、前記第1照明制御部の発光色変更手段にて前記第1の照明の発光色を前記前記計測対象物の補色とし、
前記第2照明制御部により第2照明を消灯させた場合には、前記第1照明制御部の発光色変更手段にて前記第1の照明の発光色を前記計測対象物と同色とし、
前記カメラにて前記計測対象物と背景とのコントラストを大きくした画像を撮像することを特徴する位置姿勢計測装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の位置姿勢計測装置において、
前記第2照明は、任意の発光色に変更可能な照明であり、
前記第2照明制御部は、発光色を変更する第2の発光色変更手段を備えていることを特徴とする位置姿勢計測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の位置姿勢計測装置において、
前記第1照明制御部および前記第2照明制御部は、光量を調整する光量調整手段を備えていることを特徴とする位置姿勢計測装置。
【請求項6】
ワーク供給部と、ワーク組立部と、マニピュレータと、マニピュレータ制御装置と、請求項1乃至5の何れか1項に記載の位置姿勢計測装置と、から構成されたワーク搬送組立装置において、
前記マニピュレータには、前記位置姿勢計測装置における第2照明および遮光カバーが取り付けられ、
前記前記位置姿勢計測装置におけるカメラが、ワークの搬送経路に設けられ、
前記マニピュレータに保持されたワークの位置および姿勢を前記カメラで撮像された画像に基づいて前記位置姿勢計測装置にて計測し、
マニピュレータ制御装置は、前記位置姿勢計測装置にて計測した結果に基づいて、マニピュレータを制御してワーク組立部にて組立を行うこと、
を特徴とするワーク搬送組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−281774(P2010−281774A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137069(P2009−137069)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】