説明

光半導体装置用封止剤及びそれを用いた光半導体装置

【課題】過酷な環境下で使用されてもクラック又は剥離が生じ難い光半導体装置用封止剤を提供する。
【解決手段】本発明の光半導体装置用封止剤は、環状エーテル含有基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂と、単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分と、上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含む。上記シリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂を含み、かつフェニル基の含有比率が15〜60モル%である。
【化1】


一般式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.5〜0.9、及びc/(a+b+c)=0.1〜0.4を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が環状エーテル含有基又はフェニル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光半導体装置において光半導体素子としての発光素子を封止するために用いられる光半導体装置用封止剤、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)装置などの光半導体装置は、消費電力が低く、かつ寿命が長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、自動車用ランプ、照明器具又は看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置に用いられている光半導体素子としての発光素子、例えばLEDが大気と直接触れると、大気中の水分又は浮遊するゴミ等により、LEDの発光特性が急速に低下する。このため、上記発光素子は、通常、光半導体装置用封止剤で封止されている。
【0004】
下記の特許文献1には、光半導体装置用封止剤として、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルと、脂環式エポキシモノマーと、潜在性触媒とを含むエポキシ樹脂材料が開示されている。このエポキシ樹脂材料は、熱カチオン重合により硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−73452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような従来の光半導体装置用封止剤が、加熱と冷却とを繰り返し受ける過酷な環境で使用されると、封止剤にクラックが生じたり、封止剤がハウジング材等から剥離したりすることがある。
【0007】
また、発光素子の背面側に達した光を反射させるために、発光素子の背面に、銀めっきされた電極が形成されていることがある。封止剤にクラックが生じたり、封止剤がハウジング材から剥離したりすると、銀めっきされた電極が大気に晒される。この場合には、大気中に存在する硫化水素ガス又は亜硫酸ガス等の腐食性ガスによって、銀めっきが変色することがある。電極が変色すると反射率が低下するため、発光素子が発する光の明るさが低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、過酷な環境下で使用されてもクラック又は剥離が生じ難い光半導体装置用封止剤、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、環状エーテル含有基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂と、単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分と、上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含有し、上記シリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂を含み、かつ下記式(a)より求められるフェニル基の含有比率が15〜60モル%である、光半導体装置用封止剤が提供される。
【0010】
【化1】

【0011】
上記式(1)中、a、b及びcはそれぞれ、a/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.5〜0.9、及びc/(a+b+c)=0.1〜0.4を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が環状エーテル含有基又はフェニル基を表し、該環状エーテル含有基及びフェニル基以外のR1〜R6は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基のフッ化物基を表す。
【0012】
フェニル基の含有比率(モル%)=(平均組成式が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成式が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
上記環状エーテル含有基は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられており、かつ本発明に従って構成された光半導体装置用封止剤とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、環状エーテル含有基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂と、単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分と、上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含有するので、光半導体装置用封止剤の耐熱衝撃性に優れている。
【0015】
従って、本発明に係る光半導体装置用封止剤の使用により、例えば発光ダイオード等の光半導体装置の発光素子を封止した際に、硬化した封止剤がハウジング材等から剥離し難くなり、硬化した封止剤にクラックが生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0018】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、環状エーテル含有基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂(A)と、単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分(B)と、上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤(C)とを含有する。
【0019】
(シリコーン樹脂(A))
上記シリコーン樹脂(A)は、平均組成式が下記式(1)で表される樹脂を含む。上記シリコーン樹脂(A)は、平均組成式が下記式(1)で表される樹脂であることが好ましい。 シリコーン樹脂(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。下記式(1)で表される樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
上記式(1)中、a、b及びcはそれぞれ、a/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.5〜0.9、及びc/(a+b+c)=0.1〜0.4を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が環状エーテル含有基又はフェニル基を表し、上記環状エーテル含有基及びフェニル基以外のR1〜R6は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基のフッ化物基を表す。上記式(1)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
上記式(1)で表される樹脂が同一分子中に環状エーテル含有基とフェニル基とを有する場合には、上記式(1)中、R1〜R6は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、かつ少なくとも1個がフェニル基を表し、上記環状エーテル含有基及びフェニル基以外のR1〜R6は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基のフッ化物基を表す。
【0023】
平均組成式が上記式(1)で表される樹脂において、下記式(a)より求められるフェニル基の含有比率は15〜60モル%である。該フェニル基の含有比率の好ましい下限は20モル%、好ましい上限は55モル%である。フェニル基の含有比率が上記好ましい下限を満たすと、封止剤のガスバリア性をより一層高めることができる。フェニル基の含有比率が上記好ましい上限を満たすと、封止剤の剥離が生じ難くなる。
【0024】
フェニル基の含有比率(モル%)=(平均組成式が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成式が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
上記炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0025】
シリコーン樹脂(A)は環状エーテル含有基を有する。該環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基又はオキセタン含有基等の環状エーテル含有基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0026】
上記環状エーテル含有基は、骨格の一部に環状エーテル基を含む官能基である。上記環状エーテル含有基は、例えば、環状エーテル基を骨格に含み、アルキル基又はアルキルエーテル基等の他の骨格も含む官能基であってもよい。
【0027】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基又は4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0028】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、又は3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0029】
封止剤の耐熱衝撃性をより一層高める観点からは、上記環状エーテル含有基は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基であることが好ましい。
【0030】
平均組成式が式(1)で表される樹脂中の上記環状エーテル含有基の含有比率の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は1モル%、好ましい上限は50モル%、より好ましい上限は30モル%である。上記環状エーテル含有基の含有比率が上記好ましい下限を満たすと、シリコーン樹脂(A)と熱硬化剤(B)との反応性が充分に高くなり、封止剤の硬化性をより一層高めることができる。上記環状エーテル含有基の含有比率が上記好ましい上限を満たすと、シリコーン樹脂(A)と熱硬化剤(C)との反応に関与しない環状エーテル含有基が少なくなるため、封止剤の耐熱性が高くなる。
【0031】
上記環状エーテル含有基の含有比率とは、平均組成式が式(1)で表される樹脂中に含まれる上記環状エーテル含有基の比率である。具体的には、下記式(b)に基づいて求めた比率である。
【0032】
環状エーテル含有基の含有比率(モル%)=(平均組成式が上記式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれる環状エーテル含有基の平均個数×環状エーテル含有基の分子量/平均組成式が上記式(1)で表される樹脂の平均分子量)×100 ・・・式(b)
上記式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0033】
(R4R5SiXO1/2) …式(1−2)
上記式(1−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−2)中のR4及びR5は、式(1)中のR4及びR5と同様の基である。
【0034】
上記式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基もしくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基もしくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0035】
(R6SiX1/2) …式(1−3)
(R6SiXO2/2) …式(1−4)
上記式(1−3)及び式(1−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−3)及び(1−4)中のR6は、式(1)中のR6と同様の基である。
【0036】
上記式(1−2)〜(1−4)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基又はt−ブトキシ基が挙げられる。
【0037】
上記式(1)中、a/(a+b+c)の下限は0、上限は0.3である。a/(a+b+c)が上記上限を満たすと、封止剤の耐熱性をより一層高めることができ、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。より好ましい上限は0.25であり、さらに好ましくは0.2である。なお、aが0である場合、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2の構造単位は存在しない。
【0038】
上記式(1)中、b/(a+b+c)の下限は0.5、上限は0.9である。b/(a+b+c)が上記下限を満たすと、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。b/(a+b+c)が上記上限を満たすと、封止剤のガスバリア性がより一層高くなる。より好ましい下限は0.6であり、より好ましい上限は0.85である。
【0039】
上記式(1)中、c/(a+b+c)の下限は0.1、上限は0.4である。c/(a+b+c)が上記上限を満たすと、封止剤としての適正な粘度を維持することが容易であり、密着性をより一層高めることができる。より好ましい上限は0.35であり、さらに好ましい上限は0.3である。
【0040】
上記式(1)で表されるシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜0ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R6SiO3/2、並びに(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0041】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0042】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMR及び19F−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0043】
平均組成式が式(1)で表される樹脂中のアルコキシ基の含有量の好ましい下限は0.5モル%、より好ましい下限は1モル%、好ましい上限は10モル%、より好ましい上限は5モル%である。アルコキシル基の含有量が上記好ましい範囲内であると、封止剤の耐熱性及び耐光性が飛躍的に向上する。これはシリコーン樹脂(A)中にアルコキシ基が含有されていることにより、硬化速度を飛躍的に向上させることができるため、硬化時での熱劣化が防止されるためであると考えられる。また、硬化速度が飛躍的に高くなると、硬化促進剤を添加する場合に、比較的少ない添加量でも充分な硬化性が得られる。
【0044】
アルコキシ基の含有量が上記好ましい下限を満たすと、封止剤の硬化速度が充分に速くなり、封止剤の耐熱性が良好になる。アルコキシル基の含有量が上記好ましい上限を満たすと、シリコーン樹脂(A)及び封止剤の貯蔵安定性が高くなり、封止剤の耐熱性がより一層高くなる。
【0045】
上記アルコキシ基の含有量は、平均組成式が式(1)で表される樹脂中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0046】
シリコーン樹脂(A)はシラノール基を含有しないほうが好ましい。シリコーン樹脂(A)がシラノール基を含有しないと、シリコーン樹脂(A)及び封止剤の貯蔵安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
【0047】
シリコーン樹脂(A)の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1000、より好ましい下限は1500、好ましい上限は50000、より好ましい上限は15000である。シリコーン樹脂(A)の数平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、硬化による膜減りが少なくなる。シリコーン樹脂(A)の数平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、粘度調節が容易である。
【0048】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0049】
シリコーン樹脂(A)を合成する方法としては特に限定されず、例えば、SiH基を有するシリコーン樹脂と、環状エーテル含有基を有するビニル化合物とのハイドロシリレーション反応により置換基を導入する第1の方法、並びに有機珪素化合物と環状エーテル含有基を有する有機珪素化合物とを縮合反応させる第2の方法等が挙げられる。
【0050】
上記第1の方法において、上記ハイドロシリレーション反応は、必要に応じて触媒の存在下、SiH基とビニル基とを反応させる方法である。
【0051】
上記SiH基を有するシリコーン樹脂としては、分子内にSiH基を含有するものであって、上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物を反応させた後に、シリコーン樹脂(A)となるようなものを使用すればよい。
【0052】
上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物としては、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有するビニル化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート又はビニルシクロヘキセンオキシドなどのエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0053】
上記第2の方法において、環状エーテル骨格を有さない有機珪素化合物と環状エーテル含有基を有する有機珪素化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、環状エーテル含有基を有さない有機珪素化合物と環状エーテル含有基を有する有機珪素化合物とを、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0054】
シリコーン樹脂(A)を得る際に用いられ、環状エーテル含有基を有さない有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン又はフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
さらに、シリコーン樹脂(A)を得る際に用いられ、環状エーテル含有基を有する有機珪素化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピル(ジメチル)メチルメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(ジメチル)メトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0056】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物又は誘導体、有機酸の酸無水物又は誘導体が挙げられる。
【0057】
上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸又は炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸又はオレイン酸が挙げられる。
【0058】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド又はアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0059】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド又はセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0060】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物又はセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒及びセシウム系触媒が好適である。
【0061】
(成分(B))
成分(B)は、単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種である。成分(B)は、環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂(A)と容易に反応する。具体的には、環状エーテル含有基と容易に反応する。
【0062】
上記単官能のカルボン酸は、1つのカルボキシル基を有するカルボン酸であれば特に限定されない。上記単官能のカルボン酸は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。封止剤の耐熱衝撃性をより一層高める観点からは、上記単官能のカルボン酸は、下記式(21)で表されるカルボン酸であることが好ましい。
【0063】
RCOOH ・・・式(21)
上記式(21)中、Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。
【0064】
上記単官能のカルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸及びデカン酸が上げられる。
【0065】
上記モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミノ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、本明細書におけるモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミノ化合物は、アルキルアミン化合物のほかアミノシラン化合物を包含する 。
【0066】
上記モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等が挙げられる。
【0067】
封止剤の耐熱衝撃性をより一層高める観点からは、成分(B)は、単官能のカルボン酸、モノアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物、又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0068】
シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、成分(B)の含有量の好ましい下限は0.05重量部、より好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5重量部、より好ましい上限は2重量部である。成分(B)の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、封止剤の耐熱衝撃性をより一層高めることができる。
【0069】
(熱硬化剤(C))
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤(C)を含有する。本発明に係る光半導体装置用封止剤は、熱硬化剤(C)を含むため、光半導体装置用熱硬化性組成物である。
【0070】
熱硬化剤(C)としては、シリコーン樹脂(A)の環状エーテル含有基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、メルカプト化合物、フェノール樹脂、フェノール樹脂の芳香環を水素化したポリオール、酸無水物、イミダゾール、アミンアダクト、ヒドラジン、第3級アミン、有機ホスフィン、並びにジシアンジアミドが挙げられる。熱硬化剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
上記脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン及びイソホロンジアミン等が挙げられる。上記芳香族アミンとしては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン及び4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等が挙げられる。上記メルカプト化合物としては、メルカプトプロピオン酸エステル及びエポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等が挙げられる。
【0072】
上記フェノール樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック及び臭素化ビスフェノールAノボラック等が挙げられる。
【0073】
上記酸無水物としては、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2−無水物、及びシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物等の脂環式酸無水物、アルキル置換グルタル酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、並びに無水ピロメリット酸等が挙げられる。上記アルキル置換グルタル酸無水物としては、3−メチルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキルグルタル酸無水物、2−エチル−3−プロピルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,3−ジアルキルグルタル酸無水物、並びに2,4−ジエチルグルタル酸無水物及び2,4−ジメチルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,4−ジアルキルグルタル酸無水物等が挙げられる。
【0074】
上記イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、及び2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール並びに該イミダゾールの塩類等が挙げられる。上記アミンアダクトとしては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、及びイミダゾールからなる群から選択された少なくとも1種とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト等が挙げられる。上記ヒドラジンとしては、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。上記第3級アミンとしては、ジメチルベンジルアミン、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等が挙げられる。上記有機ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0075】
封止剤の耐熱性をより一層高める観点からは、上記熱硬化剤は、酸無水物であることが好ましく、脂環式酸無水物又はアルキル置換グルタル酸無水物であることがより好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物又は2,4−ジエチルグルタル酸無水物であることがさらに好ましい。
【0076】
熱硬化剤(C)の含有量は特に限定されない。シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、熱硬化剤(C)の含有量の好ましい下限は1重量部、より好ましい下限は5重量部、好ましい上限は200重量部、より好ましい上限は120重量部である。熱硬化剤(C)の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、封止剤の架橋反応が充分に進行し、耐熱性及び耐光性が高くなるとともに、透湿度が充分に低くなる。
【0077】
(硬化促進剤)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、硬化促進剤をさらに含有することが好ましい。
【0078】
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾール類、第3級アミン類及び該第3級アミン類の塩類、ホスホニウム塩類、アミノトリアゾール類、金属触媒類等が挙げられる。硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
上記イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。上記第3級アミン類としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。上記ホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。上記ホスホニウム塩類としては、トリフェニルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。上記金属触媒類としては、オクチル酸錫及びジブチル錫ジラウレートなどの錫系金属触媒類、オクチル酸亜鉛などの亜鉛系金属触媒類、並びにアルミニウム、クロム、コバルト及びジルコニウムなどのアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0080】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限5重量部、より好ましい上限は1.5重量部である。硬化促進剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、硬化促進剤の添加効果を充分に得ることができる。上記効果促進剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、封止剤の硬化物が着色し難くなり、更に耐熱性及び耐光性が低下し難くなる。
【0081】
(カップリング剤)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含有してもよい。
【0082】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、カップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5重量部である。カップリング剤の含有量が0.1重量部以上であると、カップリング剤の添加効果が充分に発揮される。カップリング剤の含有量が5重量部以下であると、余剰のカップリング剤が揮発し難くなり、封止剤を硬化させたときに、高温環境下で硬化物の厚みがより一層減少し難くなる。
【0084】
(他の成分)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、シリコーン樹脂(A)及びシリコーン樹脂(A)と成分(B)とが反応したシリコーン樹脂以外の硬化性化合物を含有してもよい。該硬化性化合物としては例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基又はエポキシ基を有する化合物が挙げられる。中でも、エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物は従来公知のエポキシ化合物を用いることができ、特に限定されない。
【0085】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、酸化ケイ素粒子をさらに含有することが好ましい。
【0086】
上記酸化ケイ素粒子の使用により、光半導体装置用封止剤の透明性、耐熱性及び耐光性を損なうことなく粘度特性を好適な範囲に制御でき、更にガスバリア性をより一層高めることができる。
【0087】
上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径の好ましい下限は5nm、より好ましい下限は8nm、好ましい上限は200nm、より好ましい上限は150nmである。上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径が上記好ましい下限を満たすと、酸化ケイ素粒子の分散性がより一層高くなり、封止剤の硬化物の透明性がより一層高くなる。上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径が上記好ましい上限を満たすと、酸化ケイ素微粒子に起因した光散乱が発生し難くなり、封止剤の硬化物の透明性がより一層高くなり、更に25℃における粘度の上昇効果を充分に得ることができ、かつ温度上昇における粘度の低下を抑制できる。
【0088】
上記酸化ケイ素粒子としては特に限定されず、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ、並びにコロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、高い透明性が得られるフュームドシリカが好適に用いられる。
【0089】
上記酸化ケイ素粒子は、有機ケイ素系化合物によって表面処理されていることが好ましい。この表面処理により、酸化ケイ素粒子の分散性が非常に高くなり、封止剤の透明性を損なうこともなく、更に温度上昇による粘度の低下をより抑制できる。
【0090】
上記有機ケイ素系化合物としては特に限定されず、例えば、アルキル基を有するシラン系化合物、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格を有するケイ素系化合物、アミノ基を有するケイ素系化合物、(メタ)アクリル基を有するケイ素系化合物、エポキシ基を有するケイ素系化合物等が挙げられる。なかでも、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素系化合物、又はポリジメチルシロキサン基を有する有機ケイ素系化合物が好ましい。
【0091】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、蛍光体をさらに含有してもよい。上記蛍光体は、本発明の光半導体装置用封止剤を用いて封止する発光素子が発する光を吸収し、蛍光を発生することによって、最終的に所望の色の光を得ることができるように作用する。上記蛍光体は、発光素子が発する光によって励起され蛍光を発し、発光素子が発する光と蛍光体が発する蛍光との組み合わせによって、所望の色の光を得ることができる。
【0092】
例えば、発光素子として紫外線LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、青色蛍光体、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。発光素子として青色LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせて用いるか、又は、黄色蛍光体を用いることが好ましい。上記蛍光体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記青色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu、(Ba、Sr)MgAl1017:Eu、(Sr、Ba)MgSi:Eu等が挙げられる。
【0094】
上記赤色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca)S:Eu、(Ca、Sr)SI:Eu、CaSiN:Eu、CaAlSiN:Eu、YS:Eu、LaS:Eu、LiW:(Eu、Sm)、(Sr、Ca、Bs、Mg)10(POCl:(Eu、Mn)、BaMgSi:(Eu、Mn)等が挙げられる。
【0095】
上記緑色蛍光体としては特に限定されず、例えば、Y(Al、Ga)12:Ce、SrGa:Eu、CaScSi12:Ce、SrSiON:Eu、ZnS:(Cu、Al)、BaMgAl1017(Eu、Mn)、SrAl:Eu等が挙げられる。
【0096】
上記黄色蛍光体としては特に限定されず、例えば、YAl12:Ce、(Y、Gd)Al12:Ce、TbAl12:Ce、CaGa:Eu、SrSiO:Eu等が挙げられる。
【0097】
さらに、上記蛍光体としては、有機蛍光体であるペリレン系化合物等が挙げられる。
【0098】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー、難燃剤等の添加剤をさらに含有してもよい。
【0099】
なお、光半導体装置用封止剤は、上記環状エーテル含有基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂を主成分とするA液と上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤を主成分とするB液を別々に調整しておき、使用直前にA液とB液を混合して調整してもよい。この場合には単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分は上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤を主成分とするB液に添加しておくことが保存安定性の観点から好ましい。
【0100】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用封止剤の硬化温度の好ましい下限は80℃、より好ましい下限は100℃、好ましい上限は180℃、より好ましい上限は150℃である。硬化温度が上記好ましい下限を満たすと、封止剤の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記好ましい上限を満たすと、パッケージの熱劣化が起こり難い。
【0101】
硬化には特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、封止剤の硬化収縮を抑えることができる。
【0102】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上述したシリコーン樹脂、熱硬化剤、及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0103】
上記発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
【0104】
上記基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料の間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層としては、例えば、GaN、AlN等が挙げられる。
【0105】
本発明に係る光半導体装置は、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置、フォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト又はスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0106】
(光半導体装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0107】
本実施形態の光半導体装置1は、ハウジング2を有する。ハウジング2の内にLEDからなる光半導体素子3が実装されている。ハウジング2の光反射性を有する内面2aがこの光半導体素子3の周囲を取り囲んでいる。内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発した光のうち、内面2aに到達した光が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。光半導体素子3を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、光半導体装置用封止剤4が充填されている。
【0108】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体素子3の実装構造等には適宜変形され得る。
【0109】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0110】
(合成例1)
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン(23g)ジメチルジメトキシシラン(180g)、フェニルトリメトキシシラン(100g)、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(100g)を入れ、50℃で攪拌した。次に、水酸化カリウム0.7gを水107gに溶かした水溶液をゆっくりと滴下した後、50℃で6時間攪拌して反応させた。次に、反応液に酢酸(0.8g)を加え、減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを除去して、ポリマーAを得た。ポリマーAの数平均分子量(Mn)は2200であり、29Si−NMRより同定した化学構造は、
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.58(PhSiO3/20.19(EpSiO3/20.15
であった。上記化学構造におけるEpは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を示す。ポリマーAにおいて、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の含有比率は19モル%、フェニル基の含有比率は15モル%であり、エポキシ当量は691g/eq.であった。
【0111】
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いてGPC測定により測定した。また、エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して求めた。
【0112】
(合成例2)
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン(25g)、ジメチルジメトキシシラン(208g)、ジフェニルジメトキシシシラン(71g)、フェニルトリメトキシシラン(58g)、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(111g)を入れ、50℃で攪拌した。次に、水酸化カリウム0.8gを水117gに溶かした水溶液をゆっくりと滴下した後、50℃で6時間攪拌して反応させた。次に、反応液に酢酸(0.9g)を加え、減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを除去して、ポリマーBを得た。ポリマーBの数平均分子量(Mn)は1800であり、29Si−NMRより同定した化学構造は、
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.57(PhSiO2/20.10(PhSiO3/20.10(EpSiO3/20.15
であった。上記化学構造におけるEpは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を示す。ポリマーBにおいて、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の含有比率は17モル%、フェニル基の含有比率は21モル%であり、エポキシ当量は723g/eq.であった。
【0113】
なお、分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0114】
(合成例3)
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(254g)、ジフェニルジメトキシシシラン(106g)、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(111g)を入れ、50℃で攪拌した。次に、水酸化カリウム0.8gを水116gに溶かした水溶液をゆっくりと滴下した後、50℃で6時間攪拌して反応させた。次に、反応液に酢酸(0.9g)を加え、減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを除去して、ポリマーCを得た。ポリマーCの数平均分子量(Mn)は1600であり、29Si−NMRより同定した化学構造は、
(MeSiO2/20.70(PhSiO2/20.15(EpSiO3/20.15
であった。上記化学構造におけるEpは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を示す。ポリマーCにおいて、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の含有比率は17モル%、フェニル基の含有比率は21モル%であり、エポキシ当量は742g/eq.であった。
【0115】
なお、分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0116】
(合成例4)
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン(23g)、ジメチルジメトキシシラン(115g)、フェニルトリメトキシシラン(71g)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(133g)、ジフェニルジメトキシシラン(88g)、及びシクロヘキシルジメトキシメチルシラン(51g)を入れ、50℃で攪拌した。次に、水酸化カリウム0.8gを水117gに溶かした水溶液をゆっくりと滴下した後、50℃で6時間攪拌して反応させた。次に、反応液に酢酸(0.8g)を加え、減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを除去して、ポリマーDを得た。ポリマーDの数平均分子量(Mn)は1500であり、29Si−NMRより同定した化学構造は、
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.41(PhSiO3/20.13(EpSiO3/20.15(PhSiO2/20.13(Me(C11)SiO2/20.10
であった。上記化学構造におけるEpは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を示す。ポリマーDにおいて、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の含有比率は16モル%、フェニル基の含有比率は25モル%であり、シクロヘキシル基の含有比率は7モル%であり、エポキシ当量は810g/eq.であった。
【0117】
なお、分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0118】
(実施例1)
合成例1で得られたポリマーA100gと、単官能のカルボン酸としての酢酸0.4gと、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製)25gと、U−CATSA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製)0.3gと、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製)0.1gとを混合した後、脱泡し、光半導体装置用封止剤を得た。
【0119】
(実施例2)
単官能のカルボン酸である酢酸0.4gを、単官能のカルボン酸であるオクタン酸0.4gに変更したこと以外は実施例1と同様にして封止剤を得た。
【0120】
(実施例3)
単官能のカルボン酸である酢酸0.4gを、フェノール0.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして封止剤を得た。
【0121】
(実施例4)
単官能のカルボン酸である酢酸0.4gを、リン酸0.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして封止剤を得た。
【0122】
(実施例5)
単官能のカルボン酸である酢酸0.4gを、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして封止剤を得た。
【0123】
(実施例6)
合成例1で得られたポリマーAを合成例2で得られたポリマーBに変更したこと以外は実施例1と同様にして、封止剤を得た。
【0124】
(実施例7)
合成例1で得られたポリマーAを合成例2で得られたポリマーCに変更したこと以外は実施例1と同様にして、封止剤を得た。
【0125】
(実施例8)
合成例1で得られたポリマーAを合成例2で得られたポリマーDに変更したこと以外は実施例1と同様にして、封止剤を得た。
【0126】
(比較例1)
単官能のカルボン酸である酢酸を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、封止剤を得た。
【0127】
(比較例2)
単官能のカルボン酸である酢酸を用いなかったこと以外は実施例6と同様にして、封止剤を得た。
【0128】
(評価)
(光半導体装置の作製)
銀めっきされたリード電極が付いたポリフタルアミド製ハウジング材に、ダイボンド材によって主発光ピークが460nmの発光素子が実装されており、発光素子とリード電極とが金ワイヤーで接続されている構造において、得られた封止剤を注入し、100℃で3時間、130℃で3時間加熱して硬化させ、光半導体装置を作製した。この光半導体装置を用いて、下記の熱衝撃試験を実施した。
【0129】
(熱衝撃試験)
得られた光半導体装置を、液槽式熱衝撃試験機(TSB−51、ESPEC社製)を用いて−50℃で5分間保持した後125℃まで昇温し、125℃で5分間保持した後−50℃まで降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。2000サイクル後にそれぞれ20個のサンプルを取り出した。実体顕微鏡(「SMZ−10」、ニコン社製)にてサンプルを観察した。20個のサンプルのうち光半導体装置用封止剤にクラックが生じているか否か、又は光半導体装置用封止剤がパッケージや電極から剥離しているか否かを観察し、クラック又は剥離が生じたサンプルの数(NG数)を数えた。
【0130】
結果を下記の表1に示す。
【0131】
【表1】

【符号の説明】
【0132】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…光半導体装置用封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテル含有基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂と、
単官能のカルボン酸、フェノール、リン酸及びモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を1つ有するアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分と、
前記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含有し、
前記シリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂を含み、かつ下記式(a)より求められるフェニル基の含有比率が15〜60モル%である、光半導体装
置用封止剤。
【化1】


一般式(1)中、a、b及びcは、それぞれa/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.5〜0.9、及びc/(a+b+c)=0.1〜0.4を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が環状エーテル含有基又はフェニル基を表し、前記環状エーテル含有基及びフェニル基以外のR1〜R6は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基のフッ化物基を表す。
フェニル基の含有比率(モル%)=(平均組成式が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成式が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
【請求項2】
前記環状エーテル含有基が、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基である、請求項1に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項3】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた請求項1又は2に記載の光半導体装置用封止剤とを備える、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−127011(P2011−127011A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287386(P2009−287386)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】