説明

内燃機関

【課題】別途加熱手段や昇温手段を設ける必要なく、ある程度以上暖かいガスを、排気系へ供給可能にする。
【解決手段】本発明の内燃機関は、内燃機関10の気筒より排出された排気系のガスを内燃機関10の排気系より蓄圧容器78に回収するガス回収手段と、排気系に可燃物を供給する可燃物供給手段と、該可燃物供給手段によって供給された可燃物の排気系での酸化反応を可能にするように、前記ガス回収手段によって回収された前記蓄圧容器78内のガスを排気系に供給するガス供給手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを内燃機関の排気系から蓄圧容器に回収し、そして排気系の可燃物あるいは該可燃物に由来する可燃成分の反応環境を調整するべく、回収したガスを排気系に供給するように構成された内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス浄化用触媒として、還元剤存在下で窒素酸化物(NOx)を還元する触媒が知られていて、その種々の利用態様が提案されている。例えば、特許文献1に記載の排気浄化装置は、NOx吸蔵還元型触媒を排気通路に有し、該触媒でのNOx還元時に、エアタンク内に貯留された圧縮空気を空気供給管からケーシング内に導き、他方でその空気供給管に軽油を添加し、前記ケーシング内の昇温手段により添加された軽油を昇温してから同様にケーシング内に設けられた改質触媒で昇温された軽油をHとCOに分解して、それらを還元剤としてNOx吸蔵還元型触媒の入側に供給するように構成されている。そして、その昇温手段は、バッテリから電流コントローラを介して通電が行われるヒータ触媒によって構成されている。
【0003】
これに対して、内燃機関の電気負荷を低減するように、内燃機関の排気ガスを熱源とする加熱手段により生成される高温下で、空気(エアポンプにより圧縮供給された空気)中に添加された燃料軽油の部分酸化を促進し、それをNOx触媒に供給することでNOx触媒でのNOx浄化を促すようにしたNOx還元装置が特許文献2に開示されている。このNOx還元装置の上記加熱手段は、燃料軽油が添加された空気が流れる空気供給通路を区画形成する管部材の内、排気通路に延出配置された下流端部により形成されている。
【0004】
また、特許文献3には、酸化機能を有する触媒に流入する排気ガスの空燃比を適正値に維持するべく創案された内燃機関の排気浄化装置が開示されている。この排気浄化装置では、排気通路に上流側から順にNOx吸蔵還元型触媒と酸化触媒とが並べて配置され、NOx吸蔵還元型触媒でのNOx還元時あるいはそれの硫黄被毒回復時に、NOx吸蔵還元型触媒に還元剤が添加され、この結果、そのNOx吸蔵還元型触媒から流出することになるCO、HC、HS等を下流側の酸化触媒で酸化するように、該酸化触媒へエアポンプを作動させて空気が供給されるようにされている。
【0005】
他方、蓄圧容器内の高い圧力を有するガスを用いて、種々の部材を作動させる、あるいはその作動を補助することが提案されている。その一例として、リザーバタンク内の圧縮空気を用いて、内燃機関に搭載されたターボ過給機の過渡応答性を向上させるようにしたターボ過給機の加速装置が特許文献4に開示されている。この装置は、機関運転状態に応じて圧縮空気を排気ポートとタービンとの間に供給可能な空気供給機構を備えていて、この空気供給機構は、ポンプから吐出された圧縮空気を蓄圧して保持可能なリザーバタンクと、該リザーバタンク内の圧縮空気を排気ポートとタービンとの間に供給する弁機構とを備えている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−242020号公報
【特許文献2】特開2000−240441号公報
【特許文献3】特開2007−162499号公報
【特許文献4】特開昭62−276221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように特許文献1から4に記載の全装置は、燃料の添加が伴われる場合もあるが、いずれも、排気系に空気を供給するようにしている。上記したように排気系へ供給される空気は、ポンプにより外部から吸引されたものであるので、そもそも、外気と同じ程度あるいはポンプによる圧縮によりそれよりもわずかに高い程度の温度を有するに過ぎない。したがって、その空気をそのまま排気系に供給することは好ましくない。これは、1つには、上記のように還元剤がNOx触媒に添加される場合、還元剤等を取り巻くガスの温度が低いと、その還元剤等の反応性が低下することになるからである。それ故、そのような空気が排気通路に供給される場合には、毎回、例えば、上記特許文献1、2に開示されている設備を用いて、それらを昇温することが望まれる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の装置のようにして空気等を昇温する場合には、内燃機関の電気負荷が大きくなり、内燃機関の省エネルギーの点から問題がある。また、上記特許文献2の装置のようにして空気等を昇温する場合には、内燃機関の排気通路に管部材が設けられることになるので、例えば排気ガスの流れに悪影響を与えないようにそれを設計する必要があり、内燃機関の設計の自由度が狭められる虞がある。
【0009】
そこで、本発明はかかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、別途加熱手段や昇温手段を設ける必要なく、ある程度以上暖かいガスを、排気系へ供給可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関は、内燃機関の気筒より排出されたガスを該内燃機関の排気系より蓄圧容器に回収するガス回収手段と、排気系に可燃物を供給する可燃物供給手段と、該可燃物供給手段によって供給された可燃物の排気系での酸化反応を可能にするように、前記ガス回収手段によって回収された前記蓄圧容器内のガスを排気系に供給するガス供給手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ガス回収手段が内燃機関の気筒より排出された排気系のガスを内燃機関の排気系より蓄圧容器に回収し、ガス供給手段がガス回収手段によって回収された蓄圧容器内のガスを排気系に供給するので、排気系に供給されるガスは、ある程度以上暖かいあるいは熱いガスであり得る。このように、別途加熱手段や昇温手段を設ける必要なく、ある程度以上暖かいガスを排気系へ供給することが可能になる。
【0012】
また、前記ガス回収手段により前記蓄圧容器に回収されるガスは、空気を含むことが望ましい。つまり、この場合、蓄圧容器内のガスは空気を含む。好ましくは、上記ガス回収手段は、内燃機関が燃料カット状態か否かを判定する燃料カット状態判定手段と、該燃料カット状態判定手段により肯定判定されたとき排気系のガスを前記蓄圧容器に回収する排気系ガス回収手段とを備えるとよい。この場合、前記蓄圧容器に回収されるガスは、より多くの空気を含むことができる。蓄圧容器内のガスが空気を含むことにより、蓄圧容器内のガスを、可燃物供給手段によって供給された可燃物の排気系での酸化反応を可能にするように、すなわち可燃物供給手段によって排気系へ供給された可燃物の反応環境を調整するように、排気系へ供給することが可能になる。これにより、例えば、排気系の可燃物あるいは該可燃物由来の可燃成分を触媒上で適切に酸化反応させることも、また排気系でのそのような可燃物等の酸化反応を促して排気系のガスの有するエネルギーを高めることも可能になる。
【0013】
好ましくは、前記排気系ガス回収手段は、内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁と、前記燃料カット状態判定手段により肯定判定されたとき、前記排気絞り弁上流側の排気通路から前記蓄圧容器へガスを回収するように前記排気絞り弁を閉弁制御する排気絞り弁制御手段とを備えるとよい。こうすることで、排気絞り弁上流側の排気通路のガスの圧力を高めて、該高められた圧力を有するガスを蓄圧容器へ回収することが可能になる。
【0014】
また、上記可燃物供給手段は、排気系に設けられた供給弁を備えるとよく、これにより該供給弁を用いて燃料を排気系へ直接的に供給することが可能になる。また、上記可燃物供給手段は、燃料のメイン噴射に遅れて内燃機関の気筒内に燃料のポスト噴射を実行するポスト噴射実行手段を備えるとよく、これにより排気系の内の排気通路には気筒を経たガスを介して可燃物である燃料を間接的に供給することが可能になる。
【0015】
また、排気通路に設けられたタービンホイールを有するタービンを含むターボ過給機と、内燃機関への要求過給量が増加したか否かを判定する要求過給量判定手段とをさらに備え、前記可燃物供給手段による可燃物の排気系への供給位置および前記ガス供給手段による排気系へのガスの供給位置は、前記タービンホイール上流側にあり、前記要求過給量判定手段により肯定判定されたとき、前記可燃物供給手段は可燃物を供給し、他方、前記ガス供給手段はガスを供給するとよい。この場合、内燃機関への要求過給量が増加したとき、タービンホイール上流側の排気系で可燃物の酸化反応を促して、タービンホイールへのガスのエネルギーを高めることが可能になり、これによりタービン回転数の上昇率増加をより積極的に促すことが可能になる。より好ましくは、前記可燃物供給手段および前記ガス供給手段の両供給位置と前記タービンホイールとの間に、酸化機能を有する触媒が配置されているとよく、こうすることで、タービンホイール上流側の排気通路で可燃物の酸化反応をより適切に生じさせることが可能になる。また、前記タービンホイール上流側の排気通路から延出した延出通路が設けられ、該延出通路に、前記可燃物供給手段および前記ガス供給手段の両供給位置が位置付けられているとよく、この場合、延出通路で、蓄圧容器からのガスと可燃物とを適切に混合させることが可能になる。なお、前記延出通路に前記酸化機能を有する触媒が設けられているとよく、こうすることで、この酸化機能を有する触媒により排気通路でのガスの流れが影響を受けることを低減することが可能になる。なお、上記内燃機関において、前記可燃成分供給手段による可燃物の供給量は、内燃機関の気筒を経て排気通路に至るガス中の空気量と、前記ガス供給手段により排気系に供給されるガス中の空気量との合計の空気量中の酸素で酸化反応可能な量以下であるとよく、こうすることで、排気系に供給された可燃物を排気系で適切に酸化させることが可能になる。
【0016】
さらに、前記可燃物供給手段による可燃物の供給位置下流側かつ前記ガス供給手段によるガスの供給位置下流側の排気通路に酸化機能を有する触媒が設けられ、該酸化機能を有する触媒下流側の排気通路に前記可燃物供給手段により供給された可燃物あるいは該可燃物に由来する可燃成分が流れないように、前記ガス供給手段はガスを供給するとよい。こうすることで、可燃物供給手段により供給された可燃物あるいは該可燃物に由来する可燃成分が排気通路の酸化機能を有する触媒で浄化処理され得るようになり、いわゆるテールパイプエミッションを改善することが可能になる。そして、さらに、前記可燃物供給手段による可燃物の供給位置は、前記ガス供給手段によるガスの供給位置よりも上流側にあり、両供給位置間に、前記可燃物供給手段による可燃物を還元剤として該還元剤の存在下でNOxを還元するNOx触媒が配置されているとよい。こうすることで、排気ガス中のNOxを適切に還元浄化することが可能になる。そして、前記蓄圧容器内のガス量が所定量以上か否かを判定するガス量判定手段をさらに備え、前記可燃物供給手段は、前記ガス量判定手段により肯定判定されたとき、該ガス量判定手段により否定判定されたときの可燃物供給量よりも多い量の可燃物を供給するとしてもよい。この場合、NOx触媒でより適切にNOx浄化を行いつつ、NOx触媒下流側の触媒で可燃物等を適切に処理することができる。また、前記蓄圧容器内のガスが排気通路の熱を用いて加熱されるように熱交換手段が備えられているとよく、こうすることで排気通路にある程度以上暖かいあるいは熱いガスを供給することがより多くのときに可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
ただし、以下で説明される実施形態は、内燃機関が燃料カット状態のときに内燃機関の排気系から容器(タンク)にガスを回収し、その容器に回収したガスを排気系に供給することを具体化したものである。しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、内燃機関が燃料カット状態以外のときに内燃機関の排気系から容器にガスを回収し、その容器に回収したガスを排気系に供給することを具体化したものも、例えば、本発明では許容される。例えば、内燃機関あるいはそれが搭載された車両が、定常状態であるとき、通常運転時の非加速(非過渡)状態であるときに、内燃機関の排気系から容器にガスが回収されてもよい。そして、排気系から容器へのガス回収は、種々の手段や機構等を用いて、例えば、以下に説明される実施形態のように種々の弁を制御することなどにより、実行され得る。ただし、容器に回収されるガスは空気、例えば所定割合以上の空気を含むことが望ましい。排気系から容器へのガス回収実行時期は、例えばそのガス回収実行時期を内燃機関の運転状態に基づいて判断する場合にはその運転状態が排気系のガスが所定割合以上の空気を含み得る運転状態か否かの判定に基づいて判断されることができる。なお、以下では、原則的に、内燃機関の気筒つまり筒内より排出されて排気系に至ったガスを全て排気ガスと称するが、この「排気ガス」の用語には、内燃機関が燃料カット状態であるときに気筒より排出される主として空気より構成されるガスが含まれ得る。
【0019】
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概略構成を図1に示す。内燃機関10は、燃料である軽油を燃料噴射弁12から圧縮状態にある燃焼室内に直接噴射することにより自然着火させる型式の内燃機関、すなわちディーゼル機関である。なお、内燃機関10は、燃料噴射システムとして、コモンレール式燃料噴射システムを採用する。したがって、内燃機関10では、燃料タンク14内の燃料(軽油)をポンプ16により高圧にしてレール18に送って、レール18に溜めておき、燃料噴射弁12を電子制御することで、高圧で燃料を気筒20の燃焼室に噴射可能にされている。
【0020】
気筒20の燃焼室に臨むと共に吸気通路22の一部を区画形成する吸気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、吸気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、吸気通路22の一部を区画形成する吸気マニホールド24が接続され、さらにその上流側には同じく吸気通路22の一部を区画形成する吸気管26が接続されている。吸気管26の上流端側には、吸気通路22に導かれる空気中の塵埃などを除去するべくエアクリーナ28が設けられている。また、スロットルアクチュエータ30によって開度が調整されるスロットル弁32が、吸気通路22の途中に設けられている。
【0021】
他方、気筒20の燃焼室に臨むと共に排気通路34の一部を区画形成する排気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、排気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、排気通路34の一部を区画形成する排気マニホールド36が接続され、さらにその下流側には同じく排気通路34の一部を区画形成する排気管38が接続されている。なお、排気ガス浄化触媒が充填された触媒コンバータ40が排気通路34の途中に設けられている。
【0022】
さらに、排気通路34を流れる排気ガスの一部を吸気通路22に導くために排気ガス還流(EGR)装置42が設けられている。EGR装置42は、排気通路34と吸気通路22とをつなぐEGR通路44を区画形成するEGR管46と、EGR通路44の連通状態調節用のEGR弁48と、還流される排気ガス(EGRガス)冷却用のEGRクーラ50とを有している。ここでは、EGR管46上流側の一端は排気マニホールド36に接続され、その下流側の他端は吸気マニホールド24に接続されている。EGR弁48はEGRクーラ50下流側に設けられていて、その開度はアクチュエータ52により調節される。ここではEGR弁48はポペット式弁である。
【0023】
さらに、排気通路34に設けられて排気ガスにより回転駆動されるタービンホイール54を含むタービン56が排気管38の途中に設けられている。これに対応して、タービンホイール54に回転軸58を介して同軸で連結され、タービンホイール54の回転力で回転するようにしたコンプレッサホイール60を含むコンプレッサ62が吸気管26の途中に設けられている。すなわち、内燃機関10は、排気エネルギーを取り出すタービン56と、タービン56により取り出された排気エネルギーによって内燃機関10に過給するコンプレッサ62とを有するターボ過給機64が設けられた、ターボ過給機付き内燃機関である。そして、コンプレッサ62により圧縮された空気を冷却すべく、インタークーラ66がコンプレッサ62下流側の吸気通路に設けられている。
【0024】
さらに、排気通路34には、排気絞り弁70が設けられている。排気絞り弁70は、ここでは端部に位置する1つの気筒20にのみ関連する1つの排気枝管36bを他の気筒20に関連する排気枝管36bと隔てることができるかのように排気マニホールド36に設けられている。ただし、排気絞り弁70は、排気通路34の他の箇所に設けられてもよい。ここでは排気絞り弁70はバタフライ式弁であり、電動モータであるアクチュエータ72により駆動される。排気絞り弁70は、その閉弁時には排気通路34を流れる1つの気筒20のみからの排気ガス、すなわち既燃ガス(燃焼ガスを含む。)や空気である流体を効果的にせき止め、そのような流体の排気絞り弁70下流側への流れを概ね遮断する遮断弁として機能する。なお、排気絞り弁70は、閉弁時に、その箇所を完全に閉塞するような構成を有する弁であってもよい。
【0025】
また、排気絞り弁70上流側の排気通路Jには、連通管74によって区画形成された連通路76がつなげられている。この連通路76は、排気通路Jから延出した延出通路であり、ここではこの連通路76も内燃機関10の排気系に含まれる。この連通路76によって、排気絞り弁70上流側の排気通路Jと蓄圧容器78内との連通が可能にされている。蓄圧容器78は、加圧されたガスを貯留することができる容器である。なお、ここでは、蓄圧容器78は、相対的に小さな内容積を有する容器である。
【0026】
蓄圧容器78内と排気通路34との連通状態の調節用に、連通路76に流量制御弁80が設けられている。なお、アクチュエータ82によって流量制御弁80は作動される。流量制御弁80が開弁することで排気絞り弁70上流側の排気通路Jと蓄圧容器78内とは連通し、流量制御弁80が閉弁することで連通路76は遮断され、蓄圧容器78内は密閉状態になる。なお、図1から明らかなように、連通路76はタービンホイール54上流側の排気通路Kにもつなげられているので、流量制御弁80が開弁することで蓄圧容器78内はタービンホイール54上流側の排気通路Kに連通する。
【0027】
さらに、タービンホイール54上流側の排気通路Kに、酸化機能を有する触媒、具体的にはアルミナ製構造体に白金(Pt)を担持させた酸化触媒84が設けられている。そして、この酸化触媒84の設置箇所よりも上流側の排気通路Lに可燃物である燃料を噴射供給可能にするべく、該燃料の供給位置に燃料供給弁86が設けられ、該燃料供給弁86には燃料通路88を区画形成する管部材89が接続されている。なお、燃料供給弁86は、図示しないが、供給弁と、該供給弁を開閉駆動するべく制御信号により作動されるアクチュエータとを備える。ただし、触媒コンバータ40の排気ガス浄化触媒がNOx吸蔵還元型触媒を含む場合、触媒コンバータ40上流側の排気通路に設けられる還元剤添加弁の機能を燃料供給弁86は兼ねることができる。管部材89の上流側端部は、メイン燃料通路90を区画形成する管部材91の内のポンプ16よりも下流側の位置につなげられている。なお、上記連通路76の排気通路への連通箇所は、この酸化触媒84上流側の排気通路Lでもある。
【0028】
さらに、内燃機関10は、電子制御ユニット(ECU)94に、各種値を求める(検出するあるいは推定する)ための信号を電気的に出力する各種センサ類を備えている。ここで、その内のいくつかを具体的に述べる。吸入空気量を検出するためのエアフローメーター96が吸気管26に備えられている。また、エアフローメーター96近傍に吸入空気の温度を検出するための吸気温度センサ98が、そしてインタークーラ66下流側にも温度を検出するための吸気温度センサ100が備えられている。また、吸気圧すなわち過給圧を検出するための圧力センサ102が吸気管26の途中に設けられている。また運転者によって操作されるアクセルペダル104の踏み込み量に対応する位置、すなわちアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ106が備えられている。また、スロットル弁32の開度を検出するためのスロットルポジションセンサ108も備えられている。さらに、EGR弁48の開度(EGR開度)を検出するため、ここではそのリフト量を検出するためのバルブリフトセンサ110も備えられている。また、ピストンが往復動する、シリンダブロック(あるいはその近傍)には、連接棒を介してピストンが連結されているクランクシャフトのクランク回転信号を検出するためのクランクポジションセンサ112が取り付けられている。ここでは、このクランクポジションセンサ112は機関回転数(機関回転速度)を求めるための機関回転数センサとしても利用される。さらに、排気絞り弁70上流側の排気通路Jの圧力を検出するための圧力センサ114が備えられている。また、蓄圧容器78内の圧力を検出するための圧力センサ116および蓄圧容器78内の温度を検出するための温度センサ118も備えられている。さらに、内燃機関10の冷却水温を検出するための温度センサ120が備えられている。また、内燃機関10が搭載された車両の速度(車速)を検出するための車速センサ122も備えられている。
【0029】
ECU94は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、上記各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラム(データを含む。)にしたがって円滑な内燃機関10等の運転ないし作動がなされるように、ECU94は出力インタフェースから電気的に作動信号(駆動信号)を出力する。こうして、燃料噴射弁12の作動、ポンプ16の作動、スロットル弁32、EGR弁48、排気絞り弁70および流量制御弁80の各開度、燃料供給弁86の作動などが制御される。ただし、ECU94は、スロットル弁32、EGR弁48、排気絞り弁70、流量制御弁80の各開度を制御するため、各アクチュエータ30、52、72、82に作動信号を出力する。
【0030】
なお、後の記載から理解できるように、本第1実施形態では、燃料カット状態判定手段はECU94の一部を含んで構成される。また、排気系ガス回収手段は、排気絞り弁70と、ECU94の一部およびアクチュエータ72を含む排気絞り弁制御手段とを含んで構成される。なお、ここでは、排気系ガス回収手段は、さらに、流量制御弁80と、ECU94の一部およびアクチュエータ82を含む流量制御弁制御手段とを含んで構成される。また、排気系に可燃物を供給する可燃物供給手段は、燃料供給弁86と、ECU94の一部とを含んで構成される。すなわち、可燃物供給手段は、燃料供給弁86の供給弁と、ECU94の一部および燃料供給弁86のアクチュエータを含む供給弁制御手段とを含んで構成される。ガス供給手段は、流量制御弁80と、ECU94の一部およびアクチュエータ82を含む流量制御弁制御手段とを含んで構成される。また、要求負荷判定手段は、アクセル開度センサ106と、ECU94の一部とを含んで構成される。
【0031】
内燃機関10では、エアフローメーター96からの出力信号に基づいて求められる吸入空気量、クランクポジションセンサ112からの出力信号に基づいて求められる機関回転数など、すなわち機関負荷および機関回転数で表される機関運転状態に基づいて、通常は、燃料噴射量(燃料量)、燃料噴射時期が設定される。そして、それら燃料噴射量、燃料噴射時期に基づいて、燃料噴射弁12からの燃料の噴射が行われる。
【0032】
ただし、内燃機関10では、クランクポジションセンサ112からの出力信号に基づいて求められる機関回転数が所定回転数(燃料カット回転数)以上であり、且つ、アクセル開度センサ106からの出力信号に基づいて求められるアクセル開度が0%、すなわちアクセルペダル104が踏まれていないときに、燃料噴射弁12からの燃料噴射が停止(燃料カット)されるように設定されている。すなわち、車両の走行中に機関回転数が予め設定された所定回転数領域にあり且つアクセル開度全閉状態にあるときに、燃料カットが行われる。ただし、このような燃料カット状態が続いて、機関回転数が低下して別の所定回転数(燃料カット復帰回転数)に達すると、燃料噴射は再開される。また、上記の条件を満たすが故に内燃機関10が燃料カット状態にあるときに、アクセルペダル104が踏まれてアクセル開度が開き側に大きくなって0%を超えるようになった場合にも、燃料噴射は再開される。なお、内燃機関10が燃料カット状態にあるときは、概ね減速時に対応する。
【0033】
そして、このように燃料カット状態のとき、上記スロットル弁32が閉じ側に制御されるように、予め上記プログラムは設定されている。ただし、後述する排気ガス回収のときには、強制的にスロットル弁32は排気ガス回収用の所定開度(回収開度)になるように制御される。なお、スロットル弁32は内燃機関10の始動時は全開に制御され、他方、内燃機関10の停止時は全閉に制御される。そして、通常走行時には、機関状態および冷却水温などに応じて、スロットル弁32の開度は適切な開度(通常開度)になるように制御される。
【0034】
また、上記各種センサ類からの出力信号に基づいて定まる内燃機関10の機関運転状態に基づいて、EGR弁48の開度は適切な開度(通常開度)になるように制御される。ここでは、機関運転状態の属する領域が高負荷側にあるほどEGR量が減少するように構築された、予め実験により定められたデータがROMに記憶されている。また、アクセルペダル104が踏まれて内燃機関10すなわち車両が加速される過渡期には、EGR弁48が一旦閉弁するように、機関運転状態に基づいて導き出されたEGR開度は補正される。ただし、後述する排気ガス回収のときには、排気ガス回収用の開度(回収開度)になるようにEGR弁48は制御される。
【0035】
ところで、通常走行時、排気絞り弁70は全開の開状態に保持制御されているので、排気通路34を流れる排気ガスは全て触媒コンバータ40を通過して外気に放出される。これに対して、排気ガス回収の所定条件が満たされたとき、排気絞り弁70は閉状態になるように制御され、排気通路34を流れる1つの気筒20からの排気ガスは概ねせき止められる。そして、このようにしてせき止めた排気ガスを有効に活用して排気ガス回収(圧力エネルギー回収)すなわち蓄圧容器78へのガス充填が行われる。
【0036】
以下、排気ガス回収について、図2のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図2のフローチャートは、所定時間毎に、例えばおよそ8ms毎に繰り返されるものである。なお、以下の記載から明らかになるように、蓄圧容器78内に回収される排気ガスは主に空気から構成される。
【0037】
ただし、以下で図2に基づいて説明される制御は、燃料カット中に、排気通路34の排気絞り弁70を閉弁制御して、排気絞り弁70上流側の排気通路Jの圧力が蓄圧容器78内の圧力以上になったときに、流量制御弁80を介して、内燃機関10の排気系の一部である排気通路Jから蓄圧容器78へ排気ガスすなわちこの排気ガスの有する圧力エネルギーを回収することを具体化した例である。
【0038】
内燃機関10が起動されると、まずECU94は、ステップS201において、回収フラグが「1」、すなわちONであるか否かを判定する。ここで、回収フラグが「1」ということは、排気ガス回収の所定条件が満たされていることを表す。これに対してそれが「0」ということは、排気ガス回収の所定条件が満たされていないことを表す。初期状態では同回収フラグはリセットされているためここでは否定判定される。なお、本第1実施形態において、排気ガス回収の所定条件が満たされるとは、以下の記載から明らかなように、内燃機関10が燃料カット状態であること(燃料カット中であること)、蓄圧容器78内の圧力が所定圧以下であること、および、内燃機関10の燃料カット状態が所定時間継続したことの3つの要件が満たされることである。
【0039】
ステップS201で否定判定されると、次ぐステップS203で、燃料カット中か否かが判定される。ここでは、具体的には、燃料カット中か否かは、燃料噴射量が「0」とされているか否かで判定される。ただし、上記した燃料カット実行条件が満たされているか否かの判定で代替されてもよい。なお、通常走行時には、概して、内燃機関10により所定出力を生み出すべく、「0」より大きな燃料噴射量が上述の如く導かれて燃料噴射が行われている。それ故、そのようなときには、ステップS203において否定判定される。
【0040】
上記ステップS203で燃料カット中として肯定判定されると、次ぐステップS205で、蓄圧容器78内の圧力(図2では容器内圧)が、蓄圧容器78に許容される圧力であって、所定圧である予め決められてROMに記憶されている上限圧以下か否かが判定される。これは1つには、蓄圧容器78内に十分な量の圧力すなわち排気ガスが蓄えられているときに、さらに排気ガス回収が行われることを防ぐためである。蓄圧容器78内の圧力は圧力センサ116からの出力信号に基づいて求められる。ただし、ここでは、上限圧として、ゲージ圧で400kPaという値が設定されている。
【0041】
ステップS205で肯定判定されると、次ぐステップS207で、内燃機関10の燃料カット状態の継続時間(燃料カット時間)が所定時間経過したか否かが判定される。判定対象となる時間は、ステップS207での判定までの継続した燃料カット時間であり、具体的には連続するルーチンにおいてステップS203で連続して肯定判定された内の、最初のステップS203で肯定判定されたときからの時間がECU94が内蔵するタイマ手段で計測されて、この時間が燃料カット時間と擬制されて採用される。また、判定基準となる所定時間は、後述するステップでの排気絞り弁70の閉弁制御により排気絞り弁70上流側の排気通路Jに回収可能にせき止められる排気ガスが所定割合以上の空気を含む排気ガスになるように予め実験により定められて、予めROMに記憶されている。ただし、この所定割合は任意に定められ得る。なお、燃料カット時間の計測は、ステップS203で否定判定されたり、あるいはステップS207で肯定判定されたりすると終了され、その後タイマ手段はリセットされる。なお、本発明は、ステップS207での所定時間が「0」であること、すなわち排気ガス回収の所定条件から、内燃機関10の燃料カット状態が所定時間継続したことが除かれることを許容する。
【0042】
そして、ステップS207で肯定判定されるようになると、排気ガス回収条件が満たされているとして、ステップS209で回収フラグが「1」にされる。これにより、上記通常時の制御よりも、排気ガス回収用の制御が優先して行われるようになる。
【0043】
次ぐステップS211では、スロットル弁32が回収開度になるように、ここでは全開にまで開くようにアクチュエータ30へ作動信号が出力され、EGR弁48が回収開度になるように、ここでは閉弁するようにアクチュエータ52へ作動信号が出力され、流量制御弁80が閉弁するようにアクチュエータ82へ作動信号が出力され、そして排気絞り弁70が閉弁するようにアクチュエータ72へ作動信号が出力される。こうして、該ルーチンは終了する。なお、EGR弁48の閉弁速度あるいはその時々の開度は、車両に意図しない減速ショックが生じないように定められてもよい。ただし、スロットル弁32は、回収フラグが「1」にされてからに限定されず、回収フラグが「1」にされる前から、例えば内燃機関10が燃料カット状態にある間ずっと全開などの所定開度にまで開かれてもよい。こうすることで排気通路34へ空気からなる排気ガスをより早くから多く導くことが可能になり、したがって排気通路Jの排気ガスにおける空気の割合をより速くに高めることが可能になる。
【0044】
ステップS209で回収フラグが「1」にされた後のルーチンのステップS201では、回収フラグが「1」であるので肯定判定される。ステップS201で肯定判定されると、次ぐステップS213で、上記ステップS203と同様に燃料カット中か否かが判定される。ここで肯定判定されると次ぐステップS215で、上記ステップS205と同様に蓄圧容器78内の圧力が上記上限圧以下か否かが判定される。なお、ステップS213、S215での判定が行われるのは、ステップS209で回収フラグが「1」にされた後、排気ガス回収の所定条件が満たされなくなったときに、排気ガス回収を終了するための制御をするためである。
【0045】
さてステップS215で肯定判定されると次ぐステップS217で、蓄圧容器78内の圧力が、排気絞り弁70上流側の排気通路Jの圧力(図2中の「背圧」)以下か否かが判定される。このとき既に、排気絞り弁70が閉弁制御されているので、時間の経過につれて、排気絞り弁70によってせき止められた排気ガスの圧力(圧力エネルギー)は高くなる。そして、その圧力が排気ガス回収が可能な程度にまで高まっているのかを調べるために、ステップS217での判定が行われる。ステップS217で否定判定される場合には次ぐステップS219で、流量制御弁80が閉弁するようにアクチュエータ82に作動信号が出力される。これは、既に流量制御弁80が閉じられている場合には、流量制御弁80がそのまま閉弁状態に維持されることを意味している。他方、ステップS217で肯定判定される場合には次ぐステップS221で、流量制御弁80が開弁するようにアクチュエータ82に作動信号が出力される(開弁制御される)。これにより、排気絞り弁70上流側の排気通路Jの高められた圧力を有する排気ガスは、連通路76を介して、蓄圧容器78内に回収されるようになる。この排気ガスの回収は、上記ステップS213あるいはステップS215で否定判定されない限りは概ね続けて行われる。
【0046】
この排気ガス回収は燃料カット中に行われるので、このときに蓄圧容器78内に回収される排気ガスの空気あるいは酸素含有割合は徐々に高くなり得る。また、このような排気ガスの回収は、概して、内燃機関10が燃料カット状態になってから、わずか数秒の内に遅くても始められ、その後数秒の内に終了される。したがって、排気ガス回収の間は排気絞り弁70上流側の排気通路Jの温度が十分に高いので、蓄圧容器78へ回収される排気ガスは十分に高い温度を有する。
【0047】
排気ガス回収中に、ステップS213あるいはステップS215のいずれかで否定判定されると、排気ガス回収を終了するための制御が行われる。それらのいずれかで否定判定されると次ぐステップS223で、スロットル弁32が通常時の開度になるように制御されるようになる。また、EGR弁48も通常時の開度になるように制御されるようになる。また、流量制御弁80が閉弁するように、アクチュエータ82へ作動信号が出力される。さらに、排気絞り弁70が開弁するようにアクチュエータ72へ作動信号が出力される。そして、次ぐステップS225で回収フラグが「0」にされて、該ルーチンは終了する。この結果、内燃機関10は排気ガス回収を行わない通常の制御状態に復帰される。
【0048】
ところで、一般的なターボ過給機において、機関回転数が低回転域に属するときには、排気ガスの流量が少ないためにターボ過給機の回転が低いので、そのときにアクセルペダル104が踏まれると、アクセルペダル104が踏み込まれてから吸入空気の過給効果が現れるまでに時間的な遅れすなわちタイムラグが生じる。そこで、アクセルペダル104が踏み込まれて車両が加速される過渡期に、速やかに過給圧を高めるべく、ターボ過給機64の作動アシストが行われる。このターボ過給機64の作動アシストに関して図3のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図3のフローチャートは、所定時間毎、例えばおよそ8ms毎に繰り返されるものである。
【0049】
ただし、以下で図3に基づいて説明される制御は、加速要求があったとき、タービン回転数の上昇率を上げてターボ過給機64の応答性向上を図るべく、タービン56のタービンホイール54へ向けて蓄圧容器78内から排気ガスを供給すると共に、そこに燃料を供給してその燃焼を酸化触媒84で生じさせることを具体化した例である。
【0050】
まず、ECU94は、ステップS301において、上記回収フラグが「0」、すなわちOFFであるか否かを判定する。初期状態では同フラグはリセットされているためここでは肯定判定される。なお、ステップS301で否定判定されると、当該ルーチンは終了する。
【0051】
ステップS301で肯定判定されると、次ぐステップS303では、アシストフラグが「1」、すなわちONであるか否かが判定される。ここで、アシストフラグが「1」であるということは、ターボ過給器64の作動アシスト条件が満たされていることを表し、これに対してそれが「0」であるということは、そのターボ過給機64の作動アシスト条件が満たされていないことを表す。初期状態では同アシストフラグはリセットされているためここでは否定判定される。
【0052】
ステップS303で否定判定されると、次ぐステップS305では、機関回転数が所定回転数以下か否かが判定される。機関回転数が所定回転数より高いときには、過給器64の作動に関してアシストの必要がないので、機関回転数が上記所定回転数を越えているときにはステップS305で否定判定されて、当該ルーチンは終了する。他方、ステップS305で機関回転数が所定回転数以下であるとして肯定判定されると、ステップS307へ進む。例えば、ステップS305の判定での所定回転数は3000rpmである。
【0053】
ステップS307では、加速か否かすなわち加速要求の有無が判定される。この判定は、内燃機関10への要求過給量が増加したか否かの判定に含まれる。加速か否かの判定は、加速開始時期を求めることに等しく、アクセル開度に基づいて行われる。アクセル開度が所定値以上であり、且つ、アクセル開度が大きくなる方へ変化したときであって単位所定時間におけるその変化量すなわちその開き速度(アクセル開度開き速度)が所定速度を超えたときに、ECU94は加速、すなわち加速要求有りと判断する。より具体的には、ECU94は、アクセル開度センサ106からの出力信号に基づいてアクセル開度を求め、そのアクセル開度が例えば20%開度以上であり、且つ、それのアクセル開度開き速度が、予め設定されてROMに記憶されている基準速度である上記所定速度を超えたとき、加速と判断する。ステップS307で肯定判定されると、次いでステップS309での判定が行われる。なお、ステップS307で否定判定されると、当該ルーチンは終了する。
【0054】
ステップS309では、蓄圧容器78内の圧力が所定圧以上か否かが判定される。この所定圧とは、ターボ過給機64の作動アシストを行うのに最低限必要とされる排気ガス量に相当する圧力のことであり、予め実験により求められてROMに記憶されている。そして、ステップS309で否定判定されると、該ルーチンは終了する。
【0055】
他方、ステップS309で肯定判定されると、次ぐステップS311でターボ過給機64の作動アシスト条件が満たされているとしてアシストフラグが「1」にされる。そして次ぐステップS313で流量制御弁80が開弁するように、アクチュエータ82へ作動信号が出力され(流量制御弁80が開弁制御され)、さらに燃料供給弁86が開弁するようにそのアクチュエータに作動信号が出力される。このようにして、ターボ過給機64の作動アシストが開始される。
【0056】
なお、本第1実施形態では、アシストフラグが「1」にされている間、基本的に、燃料供給弁86が開けられて、可燃物である燃料が排気通路K、Lに供給される。しかしながら、このときの燃料供給弁86からの燃料供給量は、所定量になるように精密に制御されるのがより好ましく、連続的にあるいは間欠的に供給され得るが、この燃料供給弁86からの燃料供給に関しては後述する。
【0057】
こうして蓄圧容器78内から酸化触媒84上流側の排気通路Lに供給された排気ガスは、所定割合以上の空気を含み、他方で、排気通路Lには上記の如くして燃料が供給される。こうして供給された排気ガスと燃料とは混ざりつつ、そして気筒20からの排気ガスとも混ざりつつ、酸化触媒84に至り、酸化触媒84の酸化機能を利用して燃料の酸化すなわち燃焼が生じるようになる。特に、こうして蓄圧容器78から供給される排気ガスは、所定量以上の酸素を含むと共に、概して所定温度(例えば100℃)以上の温度を有し得る。したがって、酸化触媒84での燃料の酸化反応性はよく、その燃料の燃焼をより適切に生じさせることが可能になる。こうした燃料の燃焼はタービンホイール54上流側の排気通路Kで生じるので、タービンホイール54には高い圧力を有すると共に高い膨張エネルギーを有する排気ガスが供給される。したがって、タービンホイール54の回転数を急激に上昇させることが可能になり、ターボラグを低減することが可能になる。
【0058】
他方、次回以降のルーチンでは、回収フラグが「0」であり、且つ、アシストフラグが「1」であるので、上記ステップS301およびステップS303でそれぞれ肯定判定される。次ぐステップS315では、上記ステップS305と同様に、機関回転数が所定回転数以下か否かが判定される。
【0059】
そして、ステップS315で肯定判定されると、次ぐステップS317で、アシスト時間が経過していないか否かが判定される。ここで、判定対象となる時間は、流量制御弁80が開かれて連通路76が開通したときからの経過時間であると共に、燃料供給弁86が開弁したときからの時間でもある。ここではECU94は、内蔵するタイマ手段で、ステップS311に至ったときからの時間を計測し、この時間を判定対象の時間と擬制して採用する。また、判定基準となるアシスト時間は、予め実験により求められて設定された所定時間であり、ここでは変数ではなく固定値とされて、ROMに記憶されている。ただし、ステップS317での判定に用いられるアシスト時間は可変とされてもよく、加速要求があったときの機関運転状態や、タービンホイール54上流側の排気通路Kの圧力などに基づいて定められ得る。
【0060】
ステップS317でアシスト時間が経過していないとして肯定判定されると、次ぐステップS319で、上記ステップS309と同様に、蓄圧容器78内の圧力が上記所定圧以上か否かが判定される。そして、ここで肯定判定されると、当該ルーチンは終了する。
【0061】
上記ステップS315から上記ステップS319のいずれかで否定判定されることで、ターボ過給器64の作動アシストを終了するための制御が行われる。ステップS315からステップS319のいずれかで否定判定されると、ステップS321で流量制御弁80が閉弁するようにアクチュエータ82へ作動信号が出力され、他方で燃料供給弁86が閉弁するようにそのアクチュエータに作動信号が出力される。そして、次ぐステップS323でアシストフラグが「0」にされる。これにより、該ルーチンは終了する。なお、これにより、タイマ手段はリセットされる。
【0062】
ただし、一旦、ターボ過給機64の作動アシストが開始された後、それを終了するか否かの判定には、上記ステップS315からステップS319の判定の他、さらに、加速(要求)が継続されているか否かの判定が加えられてもよい。加速が継続されていないときには、もはやターボ過給機64の作動アシストを行う必要はないからである。具体的には、アクセル開度が加速要求有りと判定されたときのアクセル開度から所定量分閉じ側に変化したり、あるいはアクセル開度開き速度が負になってその大きさが所定量以上になったりしたとき、加速が継続されていないとして、作動アシストを終了するための上記制御(ステップS321およびステップS323)が行われ得る。
【0063】
上記説明では、アシストフラグが「1」にされている間は、基本的に、燃料供給弁86が開弁され、その間継続して燃料が酸化触媒84上流側の排気通路Lに供給され続けるとしたが、燃料供給弁86からの燃料の供給量や供給時期は厳密に制御されるのが好ましい。具体的には、燃料供給弁86からの燃料供給量は、内燃機関10の気筒20を経て排気通路34に至る排気ガス中の空気量と、蓄圧容器78から供給される排気ガス中の空気量との合計の空気量中の酸素で酸化反応可能な量以下に制限されるのが好ましい。こうすることで、排気系の排気通路K、Lに供給された燃料を適切に酸化触媒84で酸化すなわち燃焼させることが可能になる。また、こうすることで燃料を適切に酸化触媒84で酸化させることが可能であるので、燃費を向上させることが可能になる。さらにより好ましくは、それら燃料と排気ガス中の酸素との割合は、いわゆるストイキにされるのがよい。こうすることで、最も効率よく、ターボ過給機64の作動アシストを達成することが可能になる。
【0064】
このように燃料供給弁86から排気通路へ供給された燃料の酸化反応をより適切に生じさせるために、蓄圧容器78内の排気ガス中の空気割合すなわち酸素割合が、蓄圧容器78に設けた酸素センサ等のセンサを用いて検出されるか、あるいは排気ガス回収中の機関回転数、排気ガス回収時間等から推定されるとよい。また、気筒20を経て排気通路34に至った排気ガス中の空気割合が機関運転状態により推定されるか、あるいは排気通路34の内の排気通路Lに設けられた酸素センサあるいは空燃比センサ等のセンサを用いて検出されるとよい。
【0065】
なお、このような蓄圧容器78からの排気ガスの供給時期と、燃料供給弁86からの燃料の供給時期は、それぞれ、燃料を適切に排気ガスと混合させて反応させるように実験により定められ得る。ただし、このような蓄圧容器78からの排気ガスの供給と、燃料供給弁86からの燃料の供給とは、それら各々の供給位置と酸化触媒84までの距離、それらの間の排気通路の形状等を考慮して制御されるとなおよい。こうすることで、燃料供給弁86から供給された燃料の反応をより適切に排気通路で生じさせることが可能になる。
【0066】
また、蓄圧容器78内の排気ガスの温度を考慮して、蓄圧容器78からの排気ガスの供給量と、燃料供給弁86からの燃料の供給量とはそれぞれ調節されるとよい。蓄圧容器78から供給される排気ガスの温度に応じて、燃料供給弁86から供給された燃料の反応性が異なるからである。なお、燃料供給弁86からの燃料の供給量や供給時期は、その反応に伴って上昇するタービン56入口部での排気ガスの温度がタービン56の耐熱温度内におさまるように、定められるとよい。
【0067】
なお、上記第1実施形態では、燃料供給弁86から燃料が排気通路Lへ供給されたが、いわゆるポスト噴射により、排気通路Lへの燃料の供給が行われてもよい。ポスト噴射とは、燃料噴射弁12から、燃料のメイン噴射に遅れて内燃機関10の気筒20内に燃料を噴射することであり、ECU94によってポスト噴射実行は制御される。このポスト噴射による燃料は、気筒20内で燃焼されずに、概ねそのまま排気通路Lへ排出されるので、適切に酸化触媒84に燃料を供給することができる。なお、この場合、ポスト噴射実行手段は、ECU94の一部を含んで構成される。
【0068】
また、上記第1実施形態では、加速するときに、タービンホイール上流側の排気通路Kに蓄圧容器78内の排気ガスや燃料が供給されるとしたが、加速するときに限らず、要求過給量が増加するときにそのような排気ガス供給および燃料供給がなされてもよい。要求過給量が増加するときには、加速するとき、および、車両が上り坂に面して負荷が上昇した場合などの内燃機関への要求負荷が増加するときが含まれる。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概略構成を図4に示す。図4と図1とを比較して明らかなように、本第2実施形態では酸化触媒84が連通路76に設けられるので、上記第1実施形態と第2実施形態との間にこれに関連して幾つかの相違点が存在するが、それ以外の点では第2実施形態の内燃機関10bは上記第1実施形態の内燃機関10と概ね同じ構成を有する。それ故、これらの相違点について以下説明して、既に上で説明した構成要素に対応する構成要素には同じ符合を付してそれらの説明を省略する。ただし、本実施形態では、酸化触媒84上流側の通路を符号「L´」で指し示す。なお、第2実施形態における排気ガス回収およびターボ過給機64の作動アシストに関しては、第1実施形態で図2および図3のフローチャートに基づいて説明されたのと同じであるので、これらの説明は省略される。また、本第2実施形態でも、上記第1実施形態に関して述べた変更や修正が許容される。
【0070】
本第2実施形態では酸化触媒84は、タービンホイール54上流側の排気通路Kに設けられるのではなく、タービンホイール54上流側の排気通路Kから延出した延出通路である、連通路76に設けられる。そして、連通路76の内、この酸化触媒84上流側(蓄圧容器側)には、燃料供給弁86が設けられて、それによる燃料の供給位置が位置付けられている。なお、蓄圧容器78からの排気ガスの供給位置は、酸化触媒84上流側に位置付けられている。
【0071】
図4から明らかなように、酸化触媒84の配置位置は、連通路76の内、排気通路34に最も近い位置である。したがって、酸化触媒84は熱に関しては実質的に排気マニホールド36によって区画形成された排気通路に設けられていることに等しい。なお、酸化触媒84の一部が排気マニホールド36内に突出されて配置されることや、酸化触媒84が排気通路34からある程度離れた位置に配置されることを、本発明は排除しない。
【0072】
そして、これに関連して、上記のように、燃料通路88は連通路76の内の酸化触媒84配置箇所よりも蓄圧容器78側の位置につなげられる。この結果、ターボ過給機64の作動アシストを行うとき、蓄圧容器78内からの排気ガスと、燃料供給弁86から噴射された燃料とを、共に、酸化触媒84に供給して、酸化触媒84でその燃料の酸化反応を生じさせることが可能になる。
【0073】
このように酸化触媒84を連通路76に設けることで、酸化触媒84により排気ガスの流れが影響を受けることを防ぐことが可能になる。したがって、酸化触媒84を原因とする内燃機関10bの出力低下が生じることはない。また、上記の如く、酸化触媒84は排気通路34に近い位置に設けられるので、気筒20を経て排気通路34に至った排気ガスによって酸化触媒84を十分に加熱することが可能になる。したがって、ターボ過給機64の作動アシスト時、酸化触媒84の機能を十分に発揮させることが可能になる。
【0074】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、蓄圧容器78内の排気ガスを、気筒20を経て排気通路34に至った排気ガスの浄化処理に利用する点で、上記第1および第2実施形態と相違する。以下、図面に基づいて、上記第1実施形態や上記第2実施形態との異なる点や第3実施形態の特徴的な構成に関して説明するが、以下の説明では上で説明した構成要素に対応する要素には同じ符号を付してその説明を省略する。なお、本第3実施形態でも、上記第1実施形態の如くターボ過給機64の作動アシストを、蓄圧容器78内の排気ガスを排気通路に供給する(流量制御弁80を開弁制御する)と共に同排気通路に燃料を供給して(燃料供給弁86を制御して)行うことができるが、この点に関するさらなる説明は省略される。
【0075】
本第3実施形態では、触媒コンバータ40は2つに分けられていて、直列的に排気通路34に配列された第1触媒コンバータ40aと第2触媒コンバータ40bとで構成されている。相対的に上流側に位置付けられた第1触媒コンバータ40aは、還元剤の存在下でNOxを還元浄化するNOx吸蔵還元型触媒(NOx触媒)を有し、このNOx触媒でのNOxの浄化を可能にするように上記燃料供給弁86から還元剤としての燃料が供給可能にされている。他方、第1触媒コンバータ40a下流側に設けられた第2触媒コンバータ40bは酸化触媒を有し、該酸化触媒での酸化能力を適切に発揮させるように酸素供給機構150がさらに設けられている。
【0076】
第1触媒コンバータ40aには、パティキュレートフィルタ(フィルタ)が設けられ、このフィルタに担持されることでNOx触媒が充填されている。フィルタは、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集する。また、NOx触媒は、流入する排気ガスの酸素濃度が高いときは排気ガス中のNOxを吸蔵し、流入する排気ガスの酸素濃度が低下しかつ還元剤が存在するときは吸蔵していたNOxを還元する機能を有する。具体的には、NOx触媒は、プラチナ/ロジウム系触媒であり、そこにNOx吸蔵機能を高めるためにバリウム(Ba)を含むものであるが、他の構成を有してもよい。
【0077】
また、第1触媒コンバータ40aのNOx触媒には、燃料に含まれる硫黄分が燃焼して生成される硫黄酸化物(SOx)もNOxと同じメカニズムで吸蔵される。このように吸蔵されたSOxはNOxよりも放出されにくく、NOx触媒内に蓄積される。このことは一般に硫黄被毒と称される。この硫黄被毒によりNOx触媒におけるNOx浄化率が低下するため、適宜の時期に硫黄被毒から回復させる硫黄被毒回復処理を施す必要がある。この処理は、NOx触媒を高温にし、かつ、酸素濃度を低下させた排気ガスをNOx触媒に流通させることを必要とする。そして、この処理では、ECU94は、第1触媒コンバータ40aに流入する排気ガス中の酸素濃度を比較的短い周期でスパイク的に低くする、いわゆるリッチスパイク制御を実行する。
【0078】
第1触媒コンバータ40aのNOx触媒でのNOx還元浄化や硫黄被毒回復を行うか否かの判断は、それぞれ個別に実行され、各々は車両すなわち内燃機関10cの運転履歴に基づいて行われる。この判断方法等としては種々の方法等が既知であり、ここではそれらを利用できるが、この判断方法等の一例を概略的に簡単に述べて、他の説明は省略される。例えば、内燃機関10cの使用開始時あるいは、直近のNOx還元浄化実行や硫黄被毒回復実行終了後からの内燃機関10cの運転履歴から、NOx触媒に吸蔵された総NOx量あるいは総SOx量を推定し、それらが所定値を超えたか否かで、NOx触媒でのNOx還元浄化や硫黄被毒回復を行うか否かの判断が行われる。なお、このような総SOx量の推定では、用いられた燃料中の硫黄成分量に基づく補正が行われるとよい。
【0079】
そして、NOx触媒でのNOx還元浄化実行時やその硫黄被毒回復実行時の燃料供給弁86からの燃料の供給は、触媒コンバータ40aに流入する排気ガスの空燃比が所定のリッチ空燃比となるようにECU94により制御される。
【0080】
これに対して第2触媒コンバータ40bには、酸化機能を有する触媒として酸化触媒が充填されている。具体的には、第2触媒コンバータ40b内にはプラチナ(Pt)が担持されたハニカム構造体が配置されている。
【0081】
この第2触媒コンバータ40bの酸化触媒での酸化反応を適切に生じさせるために利用される上記酸素供給機構150は、蓄圧容器78と、蓄圧容器78内の排気ガスを第2触媒コンバータ40bに供給可能にする供給管152で区画形成された供給通路154と、該供給通路154に設けられたガス供給弁156とを含んで構成されている。ガス供給弁156はECU94からの作動信号により作動されるアクチュエータ158によって開閉駆動される。なお、ここではガス供給手段は酸素供給機構150を含んで構成される。
【0082】
上記のように、NOx触媒でのNOx還元浄化実行時やその硫黄被毒回復実行時に第1触媒コンバータ40aのNOx触媒へ燃料が供給されると、その燃料添加量が過多である場合には、特に、HC、CO等の還元成分すなわち可燃成分が第1触媒コンバータ40a下流側に流れることになる。また、硫黄被毒回復実行時には、NOx触媒からSOxが放出され得るが、この放出されたSOxはリッチ雰囲気ではHSになり易い。このように第1触媒コンバータ40bから流出し得る成分を、NOx還元浄化実行時や硫黄被毒回復実行時の還元雰囲気下でも浄化可能にするため、すなわち下流側の第2触媒コンバータ40bの酸化触媒で酸化させて浄化することを可能にするべく、上記酸素供給機構150が用いられる。つまり、第2触媒コンバータ40bの酸化触媒下流側の排気通路に、燃料供給弁86から供給された燃料やこれに由来する可燃成分が流れないように、蓄圧容器78内の排気ガスは供給される。
【0083】
第1触媒コンバータ40aのNOx触媒でのNOx還元浄化実行時やその硫黄被毒回復実行時、第2触媒コンバータ40bへ流入する排気ガスの空燃比が目標の空燃比になるように、具体的には第2触媒コンバータ40bへ流入するHC、CO等を酸化して浄化させるのに十分な量の酸素を含み得る空燃比になるように、ガス供給弁156は制御される。このガス供給弁156は、ここでは、第1触媒コンバータ40aと第2触媒コンバータ40bとの間の排気通路に設けられた空燃比センサ160からの出力信号に基づいて求められる排気ガスの空燃比が上記目標の空燃比になるようにフィードバック制御される。
【0084】
そして、本第3実施形態では、第1触媒コンバータ40aのNOx触媒に対するNOx還元浄化実行時やその硫黄被毒回復実行時、燃料供給弁86からの燃料供給量は、蓄圧容器78内の排気ガス量に基づいて制御される。具体的には、ECU94は、圧力センサ116からの出力信号に基づいて求められる蓄圧容器78内の排気ガスの圧力からその排気ガス量を推定し、その排気ガス量が所定量以上あるか否かをまず判定する。そしてその排気ガス量が所定量以上あるとして肯定判定されたとき、燃料供給弁86からの燃料供給量を第1燃料供給量にし、蓄圧容器78からの排気ガスの供給量をこれに対応した第1排気ガス供給量に定める。これに対して、ECU94は、蓄圧容器78内の排気ガス量が所定量未満であるとして否定判定されたとき、燃料供給弁86からの燃料供給量を第2燃料供給量にし、蓄圧容器78からの排気ガスの供給量をこれに対応した第2排気ガス供給量に定める。第1燃料供給量は第2燃料供給量よりも多く、また、第1排気ガス供給量は第2排気ガス供給量よりも多い。つまり、蓄圧容器78内の排気ガス量が所定量以上あるとき、その排気ガス量が所定量未満のときの燃料供給量よりも多い量の燃料を供給するように、燃料供給弁86は制御される。このようにするのは、燃料供給量が多い方がNOx触媒でのNOx浄化を生じさせ易いが、その場合には第1触媒コンバータ下流側にHC、CO等の流出量が多く、これらの浄化処理のためには、それに相当する量の空気を第2触媒コンバータ40bの酸化触媒で必要とするからである。具体的には、第1燃料供給量は第1触媒コンバータ40a入口側の排気ガスの空燃比が14未満になるように定められ、第2燃料供給量は第1触媒コンバータ40a入口側の排気ガスの空燃比が14以上になるように定められる。また、第2排気ガス供給量は「0」であり得る。
【0085】
なお、第1触媒コンバータ40aのNOx触媒でのNOx還元浄化実行時やその硫黄被毒回復実行時に、第2触媒コンバータ40bに向けて蓄圧容器78内の排気ガスが供給されるので、蓄圧容器78内へ回収される排気ガスはより高い空気割合の排気ガスであるとよい。そのために、上記ステップS207での燃料カット時間が所定時間経過したか否かの判定での所定時間は、排気絞り弁70の閉弁中、排気絞り弁70上流側の排気通路Jが概ね空気からなる排気ガスで満たされるように、予め実験により求められて設定されるのがよい。それ故に、本第3実施形態では排気絞り弁70はタービン56下流側かつ第1触媒コンバータ40a上流側の排気通路に設けられているが、排気ガス回収時間をより短くするべく、排気絞り弁70配置箇所は、上記第1実施形態の如き箇所でもよい。
【0086】
以上、上記したように第2触媒コンバータ40bの酸化触媒には、NOx還元浄化実行時や硫黄被毒回復実行時に目標の空燃比の排気ガスが供給されるので、第1触媒コンバータ40a下流側から第2触媒コンバータ40bに至ったHC、CO等を適切に処理することが可能になる。したがって、それらが第2触媒コンバータ40bを通過して外気に放出されるのを適切に防ぐことが可能になる。
【0087】
このようにNOx還元浄化実行時や硫黄被毒回復実行時に酸素供給機構150から第2触媒コンバータ40bへ供給される排気ガスは、かなり高い割合の酸素を含むばかりでなく、上記の如くある程度以上の温度を有するので、第2触媒コンバータ40b内の触媒を冷やし難い。すなわち、そのような蓄圧容器78からの排気ガスの供給によっても第2触媒コンバータ40bの触媒床温が過度に下がることはなく、その触媒の酸化機能を適切に発揮させ続けることが可能になる。なお、蓄圧容器78内に回収された排気ガスの温度を所定温度以上に上げるあるいは保つために、蓄圧容器78と第1あるいは第2触媒コンバータ40a、40bとは隣接してあるいは当接して設けられ得、それらの間に熱交換手段が設けられるとよい。あるいは、蓄圧容器78内の排気ガスと排気通路34を流れる排気ガスとの間での熱交換を促すように、それらの間に熱交換手段が設けられるとよい。なお、このような熱交換手段による蓄圧容器78内の排気ガスの加熱は上記第1および第2実施形態にも適用され得る。
【0088】
なお、例えば温度センサ120からの出力信号に基づいて検出される機関冷却水温が例えば65℃未満である、および/あるいは、機関始動後60秒以内である、機関冷間始動時には、蓄圧容器78内の排気ガスを連通路76から流量制御弁80を所定時間開弁させて流すことで、第1および第2触媒コンバータの触媒の暖機が行われてもよい。あるいはそのような機関冷間始動時に、ガス供給弁156を開弁して、蓄圧容器78内の所定割合以上の空気を含む排気ガスを触媒コンバータ40bに流すことで、触媒でのHC、COといった成分の浄化を促すことも可能である。
【0089】
ただし、上記第3実施形態では、燃料供給弁86から燃料を排気通路へ直接的に供給したが、NOx還元浄化実行時や硫黄被毒回復実行時に第1触媒コンバータ40aのNOx触媒に還元剤として燃料を添加するように、いわゆるポスト噴射が行われてもよい。このポスト噴射による燃料は、気筒20内で燃焼されずに、そのまま排気通路へ排出されるので、適切に第1触媒コンバータ40へ燃料を供給することができる。なお、この場合、ポスト噴射実行手段は、ECU94の一部を含んで構成される。
【0090】
以上、本発明を3つの実施形態およびそれらの変形例等に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、本発明は、上記第1から第3実施形態およびその変形例等の相互組み合わせやそれらの部分的な他の組み合わせ等を許容する。
【0091】
また、蓄圧容器78内には、蓄圧容器78内への排気ガスの回収量を増やすべく、活性炭、ゼオライト、アルミナ、カーボンモレキュラーシーブの内の少なくとも1つを含んで構成され得る、ガスを吸着可能な吸着材が配置されるとよい。ただし、このような吸着材は耐熱性に劣ることがあるので、採用される吸着材の種類に応じた許容温度を超えないように、蓄圧容器78内に回収および保持される排気ガスの温度は調節されるとよい。
【0092】
また、上記3つの実施形態では、排気絞り弁70はバタフライ式弁であったが、それ以外の形式の弁であってもよい。排気絞り弁70は、例えば、ポペット式弁、シャッター式弁であり得る。なお、排気絞り弁70として、排気ブレーキ用に設けられた弁が用いられてもよい。また、他の弁も、上記した形式の弁に限定されず、他の形式の弁であり得る。例えば、流量制御弁(流量調整弁)80は、蓄圧容器78内へのガス回収のためだけに設けられる場合、逆止弁であってもよい。なお、上記した種々の弁を駆動するアクチュエータは、上記した形式のものに限定されず、電動モータや負圧式アクチュエータなど種々の形式のアクチュエータであり得る。
【0093】
また、上記3つの実施形態では、蓄圧容器78を1つ設けることにしたが、それは複数個設けられてもよい。そして蓄圧容器78を2つ以上複数個設ける場合には、それら蓄圧容器7は車両に分散して配置され得る。
【0094】
なお、上記3つの実施形態では、本発明をディーゼル機関に適用して説明したが、これに限定されず、本発明は、ポート噴射型式のガソリン機関、筒内噴射形式のガソリン機関等の各種の内燃機関に適用可能である。また、用いられる燃料は、軽油やガソリンに限らず、アルコール燃料、LPG(液化天然ガス)等でもよい。また、本発明が適用される内燃機関の気筒数などはいくつであってもよい。
【0095】
なお、上記3つの実施形態およびその変形例等では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概念図である。
【図2】第1実施形態の排気ガス回収用のフローチャートである。
【図3】第1実施形態のターボ過給機の作動アシスト用のフローチャートである。
【図4】第2実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概念図である。
【図5】第3実施形態が適用された車両の内燃機関システムの概念図である。
【符号の説明】
【0097】
10 内燃機関
14 燃料タンク
34 排気通路
54 タービンホイール
56 タービン
64 ターボ過給機
70 排気絞り弁
78 蓄圧容器
84 酸化触媒
86 燃料供給弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒より排出されたガスを該内燃機関の排気系より蓄圧容器に回収するガス回収手段と、
排気系に可燃物を供給する可燃物供給手段と、
該可燃物供給手段によって供給された可燃物の排気系での酸化反応を可能にするように、前記ガス回収手段によって回収された前記蓄圧容器内のガスを排気系に供給するガス供給手段と
を備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記ガス回収手段は、
内燃機関が燃料カット状態か否かを判定する燃料カット状態判定手段と、
該燃料カット状態判定手段により肯定判定されたとき排気系のガスを前記蓄圧容器に回収する排気系ガス回収手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記排気系ガス回収手段は、
内燃機関の排気通路に設けられた排気絞り弁と、
前記燃料カット状態判定手段により肯定判定されたとき、前記排気絞り弁上流側の排気通路から前記蓄圧容器へガスを回収するように前記排気絞り弁を閉弁制御する排気絞り弁制御手段と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記可燃物供給手段は、排気系に設けられた供給弁を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項5】
前記可燃物供給手段は、燃料のメイン噴射に遅れて内燃機関の気筒内に燃料のポスト噴射を実行するポスト噴射実行手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項6】
排気通路に設けられたタービンホイールを有するタービンを含むターボ過給機と、
内燃機関への要求過給量が増加したか否かを判定する要求過給量判定手段と
をさらに備え、
前記可燃物供給手段による可燃物の排気系への供給位置および前記ガス供給手段による排気系へのガスの供給位置は、前記タービンホイール上流側にあり、
前記要求過給量判定手段により肯定判定されたとき、前記可燃物供給手段は可燃物を供給し、他方、前記ガス供給手段はガスを供給することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項7】
前記可燃物供給手段および前記ガス供給手段の両供給位置と前記タービンホイールとの間に、酸化機能を有する触媒が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記タービンホイール上流側の排気通路から延出した延出通路が設けられ、
該延出通路に、前記可燃物供給手段および前記ガス供給手段の両供給位置が位置付けられていることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記延出通路に前記酸化機能を有する触媒が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記可燃物供給手段による可燃物の供給位置下流側かつ前記ガス供給手段によるガスの供給位置下流側の排気通路に酸化機能を有する触媒が設けられ、
該酸化機能を有する触媒下流側の排気通路に前記可燃物供給手段により供給された可燃物あるいは該可燃物に由来する可燃成分が流れないように、前記ガス供給手段はガスを供給することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項11】
前記可燃物供給手段による可燃物の供給位置は、前記ガス供給手段によるガスの供給位置よりも上流側にあり、両供給位置間に、前記可燃物供給手段による可燃物を還元剤として該還元剤の存在下でNOxを還元するNOx触媒が配置されていることを特徴とする請求項10に記載の内燃機関。
【請求項12】
前記蓄圧容器内のガス量が所定量以上か否かを判定するガス量判定手段をさらに備え、
前記可燃物供給手段は、前記ガス量判定手段により肯定判定されたとき、該ガス量判定手段により否定判定されたときの可燃物供給量よりも多い量の可燃物を供給することを特徴とする請求項11に記載の内燃機関。
【請求項13】
前記蓄圧容器内のガスが排気通路の熱を用いて加熱されるように熱交換手段が備えられていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の内燃機関。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−24890(P2010−24890A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185180(P2008−185180)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】