説明

化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法

【課題】互いに異なる流動ガスを交互に注入して工程温度を変化させる化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法は、第1工程温度で、サテライトディスクに載置された基板上に量子ウェル層を形成する段階と、第2工程温度で、量子ウェル層上に量子障壁層を形成する段階と、を有し、量子ウェル層と量子障壁層とを形成する段階を少なくとも一回遂行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法に係り、より詳細には、互いに異なる流動ガスを交互に注入して工程温度を変化させる化学気相蒸着方法を使用した発光素子の活性層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposition)装置は、化学反応を利用して、被蒸着体(一般的には、半導体ウェーハなどの基板を含む)に薄膜を形成する装置であり、真空にして、チャンバ内で加熱された基板に蒸気圧が高い反応ガスを送り、その反応ガスの膜を基板に成長させる装置である。
【0003】
最近は、半導体素子の微細化、及び高効率、高出力LED(light emitting diode)などの開発により、有機金属化学気相蒸着方法(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)のようなCVDが脚光を浴びており、一回に多数の被蒸着体に蒸着を起こすように、チャンバとサセプタとのサイズを大きくすることによって、多数の被蒸着体に薄膜を均一に成長させることが核心技術になっている。このとき、被蒸着体は、サテライト(satellite)ディスク上に置かれ、サテライトディスクは、サセプタ上に設けられた多数のポケット(pocket)にそれぞれ収容される。被蒸着体に対する薄膜の均一な成長のためには、サセプタ自体が回転するだけではなく、被蒸着体が置かれるサテライトディスクも回転するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法を提供することにある。
また、本発明は、互いに異なる流動ガスを交互に注入して工程温度を変化させる化学気相蒸着方法を使用した発光素子の多重量子ウェル層の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による化学気相蒸着方法は、第1工程温度で、サテライトディスクに載置された基板上に第1半導体層を形成する段階と、第2工程温度で、前記第1半導体層上に第2半導体層を形成する段階と、を有し、前記第1半導体層及び前記第2半導体層を形成する段階を少なくとも一回遂行することができる。
【0006】
前記第1工程温度及び第2工程温度は、それぞれ第1流動ガス及び第2流動ガスによって制御される。
前記第1流動ガスの熱伝導度は、前記第2流動ガスの熱伝導度と互いに異なってもよい。
前記第1流動ガス及び第2流動ガスは、それぞれAr、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか一つを含み得る。
前記第1工程温度及び第2工程温度の差は、50度〜150度であってもよい。
サセプタに第3流動ガスを流れるようにし、第3工程温度で、前記第2半導体層上に第3半導体層を形成する段階を更に含んでもよい。
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一特徴による化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法は、第1工程温度で、サテライトディスクに載置された基板上に量子ウェル層を形成する段階と、第2工程温度で、前記量子ウェル層上に量子障壁層を形成する段階と、を有し、前記量子ウェル層と前記量子障壁層とを形成する段階を少なくとも一回遂行する。
【0008】
前記第1工程温度及び第2工程温度は、それぞれサセプタに供給される第1流動ガス及び第2流動ガスによって制御される。
前記第1流動ガスの熱伝導度は、前記第2流動ガスの熱伝導度と互いに異なってもよい。
前記第1流動ガスの熱伝導度は、前記第2流動ガスの熱伝導度より低くてもよい。
前記第1流動ガス及び第2流動ガスは、それぞれAr、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか一つを含み得る。
前記第1工程温度は、900℃〜1,200℃であってもよい。
前記第2工程温度は、900℃〜1,200℃であってもよい。
前記第1工程温度と第2工程温度との差は、50℃〜150℃であってもよい。
前記第1流動ガスはArであり、前記第2流動ガスはHであってもよい。
前記第1流動ガスはNであり、前記第2流動ガスはHであってもよい。
前記量子ウェル層及び前記量子障壁層は、それぞれGaN、GaInN、AlGaN、及びAlGaInNのうちから選択された少なくともいずれか一つを含み得る。
前記量子ウェル層は、InGa1−xN(0≦x≦1)を含み得る。
前記量子障壁層は、InGa1−xN(0≦x≦0.4)を含み得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化学気相蒸着方法によれば、工程温度を迅速に変化させることができ、半導体層の結晶成長時間を短縮させることが可能であり、工程温度変化時にも、結晶成長を続けて進めることができる。また、本発明の化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法によれば、量子ウェル層と量子障壁層との界面特性を向上させ、発光素子の発光効率を改善させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による化学気相装置の概略的な断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による発光素子の概略的な断面図である。
【図3】従来の発光素子の製造方法における工程温度と基板温度との変化を示した図面である。
【図4】本発明の一実施形態による発光素子の製造方法における工程温度と基板温度との変化を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の図面で、同じ参照符号は、同じ構成要素を指し、図面上で各構成要素のサイズは、説明の明瞭さ及び便宜さのために誇張していることもある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法に使用する化学気相装置100の断面図を概略的に示したものである。一方、該装置は、有機金属化学気相装置100であり得る。
【0013】
図1を参照すると、化学気相装置100は、複数個のポケット25が設けられたサセプタ20、ポケット25に載置されたサテライトディスク40、サセプタ20とサテライトディスク40との間に流動ガスGを供給する流動ガス注入部31、反応ガスGを供給する反応ガス注入部50、サセプタ20と反応ガス注入部50のノズル51とを収容するチャンバ10、チャンバ10内の流動ガスGと反応ガスGとを排出させるガス排出部60を含む。ここで、流動ガスGは、サセプタガスを意味する。
【0014】
サセプタ20は、中空が設けられたディスク形状を有し、その上面には、複数のポケット25が設けられる。そして、サセプタ20は、グラファイト(graphite)やタングステンなどから形成され、耐久性強化のために、硬度強化コーティングがなされている。例えば、サセプタ20は、グラファイトにシリコンカーバイド(SiC)がコーティングされて形成される。
【0015】
ポケット25は、サセプタ20の上面で、所定の深さにくぼんで入り込んでいる溝部(recess)である。ポケット25には、円板型のサテライトディスク40が収容される。ポケット25の中心部には、サテライトディスク40が回転時に離脱しないように、基準になる突出部(図示せず)が設けられる。
【0016】
サセプタ20内部には、複数のポケット25に流動ガスGを供給するサセプタ流路33が形成される。流動ガスGが、サセプタ流路33を介して流動ガス排気部35から排出される。このように排出される流動ガスGによって、サテライトディスク40が浮遊し、ポケット25に形成された浮遊ガイドグルーブ(図示せず)に沿って回転する。
【0017】
流動ガス注入部31は、流動ガス供給ライン30と連結され、流動ガスGをサセプタ流路33に注入する。流動ガス供給ライン30に供給される流動ガスGの流量を調節し、サテライトディスク40の回転を制御する。ヒータ70は、サセプタ20を所定温度に加熱する。ヒータ70は、例えば、GaN系半導体層を成長させる場合、約700℃〜約1,300℃程度にサセプタ20を加熱する。
【0018】
反応ガス注入部50は、被蒸着体である基板45に蒸着しようとするソースガス(source gas)とキャリアガス(carrier gas)とを含む反応ガスGを供給する。反応ガス注入部50のノズル51は、チャンバ10に露出し、ノズル51のノズル孔53を介して反応ガスGをチャンバ10に供給する。
【0019】
サテライトディスク40上には、ウェーハのような基板45が設けられる。基板45が動かないように、サテライトディスク40の外郭には、リム(図示せず)が設けられてもよい。高温に加熱されたサセプタ20によって、基板45は高温を維持し、基板45の上部面は、反応ガスGと接して化学的蒸着反応を起こす。このような化学的蒸着反応によって、ウェーハのような基板45には、GaN系化合物半導体のような所定の物質が結晶成長する。
【0020】
チャンバ10は、サセプタ20と、反応ガス注入部50のノズル51とを収容し、蒸着工程時には密閉され、基板45を交換するために開かれる。そして、ガス排出部60は、チャンバ10内の流動ガスG及び反応ガスGを排出させる。
【0021】
本実施形態の化学気相蒸着方法によると、サセプタ20とサテライトディスク40との間に第1流動ガスG11を流し、第1工程温度Tで、第1半導体材料を含む反応ガスGをチャンバ10に流し、基板45上に第1半導体層を形成する。即ち、流動ガス供給ライン30を介して流動ガス注入部31に第1流動ガスG11を供給し、反応ガス注入部50に反応ガスGを供給する。そして、第1流動ガスG11と反応ガスGは、サセプタ流路33を介してポケット25下部の流動ガス排気部35を通じて排出される。ここで、第1流動ガスG11は、Ar、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか一つのガスを含み得る。
【0022】
ポケット25に載置されたサテライトディスク40は、第1流動ガスG11によって浮遊し、また回転する。ここで、第1工程温度Tは、ヒータ70と第1流動ガスG11とによって制御される。即ち、ヒータ70は、サセプタ20を所定温度に加熱し、第1流動ガスG11は、加熱されたサセプタ20上のサテライトディスク40及び被蒸着体である基板45の温度を制御する。第1流動ガスG11として、熱伝導度の小さいガスを使用し、サテライトディスク40と基板45との温度を大きく下げることができる。即ち、熱伝導度の小さい第1流動ガスG11は、サセプタ20からサテライトディスク40に熱が伝えられることを遅延したり防止したりすることができる。
【0023】
そして、サセプタ20とサテライトディスク40との間に、第2流動ガスG12を流し、第2工程温度Tで、第2半導体材料を含む反応ガスGをチャンバ10に流し、第2半導体層を形成する。即ち、流動ガス供給ライン30を介して第2流動ガスG12を流動ガス注入部31に供給し、反応ガス注入部50に反応ガスGを供給する。そして、第2流動ガスG12と反応ガスGは、サセプタ流路33を介してポケット25下部の流動ガス排気部35を通じて排出される。ここで、第2流動ガスG12は、Ar、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか一つのガスを含み得る。
【0024】
ポケット25に載置されたサテライトディスク40は、第2流動ガスG12によって浮遊し、また回転する。ここで、第2工程温度Tは、ヒータ70と第2流動ガスG12とによって制御される。即ち、ヒータ70は、サセプタ20を所定温度に加熱し、第2流動ガスG12は、加熱されたサセプタ20上のサテライトディスク40及び被蒸着体である基板45の温度を制御する。第2流動ガスG12として、熱伝導度の大きいガスを使用し、サテライトディスク40と基板45との温度を大きく高めることができる。即ち、熱伝導度の大きい第2流動ガスG12は、サセプタ20からサテライトディスク40に速く熱を伝達することができる。第1工程温度T及び第2工程温度Tのそれぞれは、約900℃〜1,200℃である。
【0025】
例えば、サセプタ20とサテライトディスク40との間に、第1流動ガスG11であるAr又はNを流し、約900℃の第1工程温度Tで、InGa1−xN(0≦x≦1)を含む第1反応ガスG21をチャンバ10に流し、量子ウェル層160a(図2参照)を形成する。そして、サセプタ20とサテライトディスク40との間に、第2流動ガスG12であるHを流し、約1,000℃の第2工程温度Tで、GaN又はInGa1−xN(0≦x≦0.4)を含む第2反応ガスG22をチャンバ10に流し、量子障壁層160b(図2参照)を形成する。
【0026】
一方、第1流動ガスG11として、熱伝導度の大きいガスを使用し、第2流動ガスG12として熱伝導度の小さいガスを使用することもできる。即ち、第1流動ガスG11及び第2流動ガスG12として、熱伝導度が互いに異なるガスを使用することができる。半導体層を成長させるのに必要な工程温度により、適切な熱伝導度を有する流動ガスGを選択的に供給することができる。熱伝導度が相対的に小さい流動ガスGをチャンバ10に供給すると、基板45の温度を、ヒータによって制御される工程温度に比べて低くすることができる。一方、熱伝導度が相対的に大きい流動ガスGをチャンバ10に供給すると、基板45の温度を、ヒータによって制御される工程温度に比べて高めることができる。併せて、本実施形態の化学気相蒸着方法は、ヒータの出力と流動ガスGとを同時に変化させ、短時間内に工程温度をより大きく変化させることができる。
【0027】
本実施形態の化学気相蒸着方法によると、サセプタ20に第1流動ガスG11を供給し、順次にサセプタ20に第2流動ガスG12を供給する。そして、第1半導体層及び第2半導体層を形成する段階を少なくとも一回以上反復して遂行する。ここで、第1半導体層を形成する第1工程温度Tと、第2半導体層を形成する第2工程温度Tとの差は、約50度〜約150度であり、例えば、約100度である。
【0028】
また、本実施形態の化学気相蒸着方法は、サセプタ20とサテライトディスク40との間に第3流動ガスG13を流し、第3工程温度Tで、第2半導体層上に第3半導体層を形成する段階を更に含み得る。第3流動ガスG13は、Ar、H、N、He、O、CO及び、NHのうちから選択されたいずれか1つのガスを含み、第3流動ガスG13の熱伝導度は、第1流動ガスG11及び第2流動ガスG12の熱伝導度とそれぞれ異なってもよい。併せて、第3工程温度Tは、第1工程温度T及び第2工程温度Tと異なることがある。一方、本実施形態の化学気相蒸着方法は、有機金属化学気相蒸着方法(MOCVD)であり得る。
【0029】
本実施形態では、サセプタ20に流動ガスを流し、サセプタ20を加熱して工程温度を調節するとしたが、これに限定されるものではない。工程温度は、他の方法、例えば、抵抗熱装置、ランプ、RF(radio frequency)ヒータのような装置を使用して調節し得る。また、サセプタの流動ガス及びこのような装置の組み合わせでも、温度調節が可能である。以下、説明の便宜を図るために、サセプタ20内の流動ガスG11、G12、G13を使用して工程温度を調節する方法について説明する。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態による発光素子の製造方法を使用して製造された発光素子200の概略的な断面図である。
【0031】
図2を参照すると、発光素子200は、基板110、基板110上に設けられた第1導電型半導体層150、第1導電型半導体層150上に設けられた活性層160、及び活性層160上に設けられた第2導電型半導体層170を含む。そして、発光素子200は、基板110と第1導電型半導体層150との間に順に設けられたバッファ層120、低温化合物半導体層130、アンドーピング化合物半導体層140を更に含む。
【0032】
第1導電型半導体層150は、第1導電型不純物でドーピングされた化合物半導体である。即ち、第1導電型半導体層150は、AlInyGa(1−x−y)N組成式(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1である)を有する半導体材料を第1導電型不純物でドーピングして形成される。第1導電型半導体層150を形成する化合物半導体は、窒化物系化合物半導体であり、例えばGaN、AlGaN、InGaN、AlGaInNなどを含む。第1導電型不純物はn型不純物であり、n型不純物は、例えばSi、Ge、Se、Teなどを含む。
【0033】
活性層160は、電子と正孔との再結合によって、所定のエネルギーを有する光を放出し、インジウム含有量によってバンドギャップエネルギーが調節されるように、InGa1−xN(0≦x≦1)などの半導体材料から形成される。また、活性層160は、量子ウェル層160aと量子障壁層160bとが互いに交互に積層された多重量子ウェル(MQW:multi−quantum well)層である。量子ウェル層160aは、InGa1−xN(0≦x≦1)などの半導体材料を含み、量子障壁層160bは、GaNやInGa1−xN(0≦x≦0.4)などの半導体材料を含む。
【0034】
第2導電型半導体層170は、第2導電型不純物でドーピングされた化合物半導体である。即ち、第2導電型半導体層170は、AlInyGa(1−x−y)N組成式(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1である)を有する半導体材料を第2導電型不純物でドーピングして形成される。第2導電型半導体層170を形成する化合物半導体は、窒化物系化合物半導体であり、例えばGaN、AlGaN、InGaN、AlGaInNなどを含む。第2導電型不純物はp型不純物であり、p型不純物は、例えばMg、Zn、Beなどを含む。
【0035】
図3は、従来の発光素子の製造方法における工程温度と基板温度との変化を示したものである。
【0036】
図3を参照すると、従来の発光素子の製造方法は、約900℃〜約1,000℃で、活性層160を形成する。即ち、n型半導体層150上に、量子ウェル層160aと量子障壁層160bとを交互に積層して形成する。量子ウェル層160aは、高いIn組成を有するために、約900℃以下の温度、即ち第1工程温度Tで成長させ、量子障壁層160bは、それを構成するGaNの結晶性を向上させるために、約900℃以上の温度、即ち第2工程温度Tで成長させる。
【0037】
このように、第1工程温度T及び第2工程温度Tの差が約50度〜約150度以上、例えば約100度である場合、ヒータ70の出力を変化させて工程温度を制御するのに必要な工程温度に達するのに時間が長くかかる。また、工程温度が変わる間には、半導体層の成長を止めなければならず、この過程で、不純物などが混入して量子ウェル層160aと量子障壁層160bとの界面特性が低下し得る。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態による発光素子の製造方法における工程温度と基板温度との変化を示したものである。
【0039】
図1、図2、及び図4を参照すると、本実施形態の発光素子の製造方法は、先ず、基板110上に、約900℃以上の高温でバッファ層120を形成する。ここで、図2の基板110は、図1の基板45と同じである。ヒータ70で、サセプタ20を約900℃以上に加熱し、基板110の温度を900℃以上に維持する。そして、約500℃〜約800℃の低温で、バッファ層120上に低温化合物半導体層130を形成する。低温化合物半導体層130は、例えば、LT(low temperature)GaN層である。
【0040】
次に、低温化合物半導体層130上に、約1,000℃〜約1,200℃の高温で、アンドーピング化合物半導体層140とn型半導体層150とを順に形成する。アンドーピング化合物半導体層140及びn型半導体層150は、それぞれドーピングされていないGaN層及びn型GaN層である
【0041】
そして、n型半導体層150上に、約900℃〜約1,000℃で、活性層160を形成する。n型半導体層150上に、量子ウェル層160aと量子障壁層160bとを交互に積層して活性層160を形成する。量子ウェル層160aは、高いIn組成を有するために、約900℃以下の温度、即ち第1工程温度Tで成長させる。そして、量子障壁層160bは、それを構成するGaNの結晶性を向上させるために、約900℃以上の温度、即ち第2工程温度Tで成長させる。
【0042】
本実施形態の発光素子の製造方法によると、サセプタ20とサテライトディスク40との間に第1流動ガスG11を流し、約900℃の第1工程温度Tで、InGa1−xN(0≦x≦1)を含む反応ガスGをチャンバ10に流し、n型半導体層150上に量子ウェル層160aを形成する。即ち、流動ガス供給ライン30を介して第1流動ガスG11を流動ガス注入部31に供給し、反応ガス注入部50に反応ガスGを供給する。そして、第1流動ガスG11は、サセプタ流路33を介してポケット25下部の流動ガス排気部35を通じて排出される。ここで、第1流動ガスG11は、Ar、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか1つのガスを含み得る。
【0043】
ポケット25に載置されたサテライトディスク40は、第1流動ガスG11によって浮遊し、また回転する。ここで、第1工程温度Tは、ヒータ70と第1流動ガスG11とによって制御される。即ち、ヒータ70は、サセプタ20を所定温度に加熱し、第1流動ガスG11は、加熱されたサセプタ20上のサテライトディスク40及び被蒸着体である基板45の温度、即ち第1工程温度Tを制御する。第1流動ガスG11として、熱伝導度の小さいガス、例えばArを使用し、サテライトディスク40と基板45との温度を大きく下げることができる。即ち、熱伝導度の小さい第1流動ガスG11は、サセプタ20からサテライトディスク40に熱が伝えられることを遅延したり防止したりすることができる。
【0044】
そして、サセプタ20とサテライトディスク40との間に、第2流動ガスG12を流し、約1,000℃の第2工程温度Tで、GaN又はInGa1−xN(0≦x≦0.4)を含む第2反応ガスG22をチャンバ10に流し、量子障壁層160bを形成する。即ち、流動ガス供給ライン30を介して第2流動ガスG12を流動ガス注入部31に供給し、反応ガス注入部50に反応ガスGを供給する。そして、第2流動ガスG12は、サセプタ流路33を介してポケット25下部の流動ガス排気部35を通じて排出される。ここで、第2流動ガスG12は、Ar、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか1つのガスを含み得る。
【0045】
ポケット25に載置されたサテライトディスク40は、第2流動ガスG12によって浮遊し、また回転する。ここで、第2工程温度Tは、ヒータ70と第2流動ガスG12とによって制御される。即ち、ヒータ70は、サセプタ20を所定温度に加熱し、第2流動ガスG12は、加熱されたサセプタ20上のサテライトディスク40及び被蒸着体である基板45の温度、即ち第2工程温度Tを制御する。第2流動ガスG12として、熱伝導度が大きいガス、例えばHを使用し、サテライトディスク40と基板45との温度を大きく高めることができる。即ち、熱伝導度が大きい第2流動ガスG12は、サセプタ20からサテライトディスク40に速く熱を伝達することができる。
【0046】
本実施形態の発光素子の製造方法において、第1流動ガスG11の熱伝導度は、第2流動ガスG12の熱伝導度と互いに異なる。即ち、半導体層を成長させるのに必要な工程温度により、特定熱伝導度を有する流動ガスGを選択的に供給する。熱伝導度が相対的に小さい流動ガスGをサセプタ20に供給すると、基板45の温度を、ヒータ70によって制御される工程温度に比べて下げることができる。一方、熱伝導度が相対的に大きい流動ガスGをサセプタ20に供給すると、基板45の温度を、ヒータ70によって制御される工程温度に比べて高めることができる。併せて、本実施形態の発光素子の製造方法は、ヒータ70の出力と流動ガスGとを同時に変化させ、短時間内に工程温度をより大きく変化させることができる。
【0047】
また、本実施形態の発光素子の製造方法によると、量子ウェル層160aと量子障壁層160bとを形成する段階を少なくとも一回以上反復して遂行する。ここで、量子ウェル層を形成する第1工程温度Tと、量子障壁層を形成する第2工程温度Tとの差は、約50度〜約150度であり、例えば、約100度である。
【0048】
次に、活性層160上に、約1,000℃〜約1,200℃の高温で、p型半導体層170を形成する。そして、メサエッチングを介してn型半導体層150上にn型電極180を形成し、p型半導体層170上にp型電極185を更に形成する。一方、本実施形態の発光素子の製造方法は、有機金属化学気相蒸着方法(MOCVD)を使用することができる。
【0049】
本実施形態の発光素子の製造方法によると、約900℃の第1工程温度Tで量子ウェル層160aを形成し、遅滞なく第1工程温度T1より約100度高い約1,000℃の第2工程温度Tで、量子障壁層160bを形成する。従って、本実施形態の発光素子の製造方法は、様々な半導体層を互いに異なる温度で結晶成長させる場合、流動ガスGを変えることで、早く工程温度を変化させることができる。従って、半導体層の結晶成長時間を短縮することができ、工程温度変化時にも、結晶成長を続けて進めることができる。また、本実施形態の発光素子の製造方法は、量子ウェル層160aと量子障壁層160bとの界面特性を向上させ、発光素子の発光効率を改善することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の化学気相蒸着方法を使用した発光素子の製造方法は、発光素子関連分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 チャンバ
20 サセプタ
25 ポケット
30 流動ガス供給ライン
31 流動ガス注入部
33 サセプタ流路
35 流動ガス排気部
40 サテライトディスク
45 基板
50 反応ガス注入部
51 ノズル
53 ノズル孔
60 ガス排出部
70 ヒータ
100 化学気相装置
110 基板
120 バッファ層
130 低温化合物半導体層
140 アンドーピング化合物半導体層
150 第1導電型半導体層(n型半導体層)
160 活性層
160a 量子ウェル層
160b 量子障壁層
170 第2導電型半導体層(p型半導体層)
180 n型電極
185 p型電極
200 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相蒸着方法を使用して発光素子を製造する方法であって、
第1工程温度で、サテライトディスクに載置された基板上に量子ウェル層を形成する段階と、
第2工程温度で、前記量子ウェル層上に量子障壁層を形成する段階と、を有し、
前記量子ウェル層と前記量子障壁層とを形成する段階を少なくとも一回遂行することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程温度及び第2工程温度は、それぞれサセプタに供給される第1流動ガス及び第2流動ガスによって制御されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1流動ガスの熱伝導度は、前記第2流動ガスの熱伝導度と互いに異なることを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1流動ガスの熱伝導度は、前記第2流動ガスの熱伝導度より小さいことを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1流動ガス及び第2流動ガスは、それぞれAr、H、N、He、O、CO、及びNHのうちから選択されたいずれか一つを含むことを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1流動ガスはArであり、前記第2流動ガスはHであることを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1流動ガスはNであり、前記第2流動ガスはHであることを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記量子ウェル層及び前記量子障壁層は、それぞれGaN、GaInN、AlGaN、及びAlGaInNのうちから選択された少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記量子ウェル層は、InGa1−xN(0≦x≦1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記量子障壁層は、InGa1−xN(0≦x≦0.4)を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26626(P2013−26626A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161404(P2012−161404)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】