説明

半導体センサー装置およびその製造方法

【課題】 MEMS組立体が受けるモールド樹脂で発生する応力を少なくし半導体センサ
ー装置の特性を安定化させ、キャップクラックや樹脂クラックが入り難く、また、孔付キ
ャップチップの孔詰まりが起こり難い、小型軽量な半導体センサー装置およびその製造方
法を提供する。
【解決手段】 MEMS組立体の上キャップチップ上面を露出させて樹脂面と同一にする
か凹ませることで、MEMS組立体が受けるモールド樹脂で発生する応力を少なくし半導
体センサー装置の特性を安定化させ、キャップクラックや樹脂クラックが入り難く、また
、孔付キャップチップの孔詰まりが起こり難い、小型軽量な半導体センサー装置を提供す
ることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro−Electro−Mechanical Syst
ems)チップを有する半導体センサー装置およびその製造技術に関し、特に可動部を有
するMEMSチップを備えた半導体センサ−装置およびその製造に適用して有効な技術に
関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス技術に機械加工技術や材料技術などを組み合わせることによって、
半導体基板上に三次元的な微細構造を有するシステムを実現するMEMS技術は、極めて
広汎な分野に応用可能である。特に、自動車や航空機、携帯端末機器、玩具などに用いら
れるこれら半導体センサー装置は、加速度や角速度、圧力等の物理量検出分野への適用が
注目されている。
【0003】
これらの半導体センサー装置は、MEMS技術で形成された可動部を有しているのが特
徴である。可動部の動き量をピエゾ抵抗素子の抵抗変化や静電容量変化で検知し、データ
処理することで、加速度や角速度、圧力等の物理量値を得るものである。特許文献1から
3に加速度センサー装置、特許文献4から6に角速度センサー装置、特許文献7から8に
圧力センサー装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−133123
【特許文献2】特開平8−233851
【特許文献3】特開平11−160348
【特許文献4】特開2006−175554
【特許文献5】特開2003−194545
【特許文献6】特表2005−524077
【特許文献7】特開2004―132947
【特許文献8】特開平10−098201
【0005】
特許文献1の加速度センサーの構造に付いて、図3を用いて簡単に述べる。半導体セン
サー装置は特に断りの無い限り、加速度センサー装置を用いて説明する。また、半導体セ
ンサー装置に用いる半導体センサーチップの構造や構成等は、特許文献1から8に準じて
いるので詳細説明は省くことがある。図3a)に3軸加速度センサーの分解斜視図を示す
。3軸加速度センサー30は、ケース32にセンサーチップ20とIC規制板25が樹脂
などの接着剤で所定の間隔を持って固着されている。センサーチップ20のチップ端子2
1はワイヤー34でIC規制板端子38に、IC規制板端子38はワイヤー34’でケー
ス端子35に接続され、センサーの信号は外部端子36から取り出す。ケース32にはケ
ース蓋33を接着剤で固着し密封されている。図3b)は、図3a)のk−k’断面であ
る。図3c)は、センサーチップ20をセンサー上面から見た平面図である。センサーチ
ップ20は、方形の支持枠部24と錘部23と対を成す梁部22で構成され、錘部23が
2対の梁部22で支持枠部24の中央に保持されている。梁部22にはピエゾ抵抗素子が
形成されており、一対の梁にはX軸ピエゾ26とZ軸ピエゾ28が、他の一対の梁にはY
軸ピエゾ27が形成されている。支持枠部24にはセンサーチップ端子21が形成されて
いる。センサーチップ端子21と各軸のピエゾ抵抗素子間の配線の図示は省いている。
【0006】
図3に示した3軸加速度センサー30は、ケース32とケース蓋33がアルミナ等のセ
ラミックで形成されている。セラミック製のためケース32とケース蓋33の肉厚を薄く
するには限度があり、小型化が難しいだけでなく軽量化も難しかった。セラミック製ケー
ス32に金属のケース端子35と外部端子36を形成し、これらをセラミック内で接続す
るためケース32は高価となり、セラミック製ケースを使用する限り安価な加速度センサ
ーの実現は難しかった。ケース32とケース蓋33は接着樹脂39で接着し封止している
。樹脂を用いるため周囲環境変化で気密度が低下してしまうと言う問題があった。
【0007】
気密性を上げる方法が特許文献9に記載されている。図4a)に示す様に、MEMSチ
ップが多数形成されたMEMS基板81と、キャップチップが多数形成されたキャップ基
板82とを接合し、MEMSチップの可動部分を上下のキャップチップで密封したMEM
S組立体基板88を得る。基板の時点でパッケージを行うので、WLP(Wafer L
evel Package)と称されている。MEMS組立体基板88の一点鎖線で示す
分離部90をダイヤモンド砥石で切断して、図4b)に示すMEMS組立体80を得る。
密封する部分はMEMSチップの可動部分に限定すること、言い替えると接合総長さを短
くすることで、気密性が確保し易くするものである。図4c)に示す様に、MEMS組立
体80をケース83の内底部に接着し、ケース83の上辺部にケース蓋84を接着し半導
体センサー装置85を得る。しかし、図4c)の様にMEMS組立体80をケースに入れ
るのでは、小型化や低価格化を図ることが難しかった。特許文献10に開示されているよ
うな、半導体の樹脂封止技術を応用し、MEMS組立体80を樹脂87で覆った半導体セ
ンサー装置86が実用化され始めている。図4d)に、樹脂封止した例を示す。MEMS
組立体80や配線89等が外気に直接触れない程度に、モールド樹脂87を薄くすること
で小型化と軽量化が実現できる。また、図4c)の半導体センサー装置85の様に、ケー
スの接着作業等が不要となるため製造コストの低減が可能となる。
【0008】
【特許文献9】特開平3−2535号公報
【特許文献10】特開平10−170380号公報
【0009】
WLPを用いた加速度センサーの製造工程を図5を示して簡単に説明する。上キャップ
基板41とMEMS基板42、下キャップ基板43を接合部61で固着しMEMS組立体
基板44を得る[図5a)]。固着作業は真空中で行うので、MEMS基板42の可動部
は真空雰囲気となる。上キャップ基板41と下キャップ基板43を分離部90まで研削等
で除去して、上キャップチップ45と下キャップチップ46を形成する[図5b)]。M
EMS基板42を分離部90で切削等で分離し、MEMS組立体47を得る[図5c)]
。回路基板48と配線基板49を接合し[図5d)]、回路基板48上にMEMS組立体
47の下キャップチップ46を接着固定する[図5e)]。MEMS組立体47と回路基
板48、回路基板48と配線基板49を配線50で電気的に接続する[図5f)]。配線
基板49上の回路基板48と配線50、MEMS組立体47を樹脂51でモールドし加速
度センサー40を得る[図5g)]。
【0010】
WLPを用いた圧力センサーの製造工程を図6を示して簡単に説明する。穴付上キャッ
プ基板52とMEMS基板53、下キャップ基板54を接合部61で固着しMEMS組立
体基板55を得る[図6a)]。固着作業は窒素ガス雰囲気中で行うので、MEMS基板
42の可動部は窒素ガス雰囲気となる。穴付上キャップ基板52と下キャップ基板54を
分離部90まで研削等で除去して、貫通孔56を有する上キャップチップ57と下キャッ
プチップ58を形成する[図6b)]。MEMS基板53を分離部90で切削等で分離し
、MEMS組立体59を得る[図6c)]。回路基板48と配線基板49を接合し[図6
d)]、回路基板48上にMEMS組立体59の下キャップチップ58を接着固定する[
図6e)]。MEMS組立体59と回路基板48、回路基板48と配線基板49を配線5
0で電気的に接続する[図6f)]。配線基板49上の回路基板48と配線50、MEM
S組立体59を樹脂51でモールドし圧力センサー60を得る[図6g)]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
数多くの加速度センサー40と圧力センサー60を製造、検査すると次に示す様な不具
合点が発生することが判ってきた。加速度センサー40では、図7a)から図7c)に示
す不具合である。図7a)は、樹脂モールドすると矢印で示す様な応力63がMEMS組
立体47に加わり加速度センサーの特性が変化してしまうものである。応力は樹脂51や
MEMS組立体47、回路基板48、配線基板49の熱膨張率の違いによって発生すると
考えられる。例えば図5f)の樹脂モールドの無い加速度センサーの特性に比べ、図5g
)の樹脂モールドを行ったものでは、X軸とY軸の感度(単位加速度当りの出力mV/g
)が3〜5倍に上昇してしまい3軸のバランスが取れず不良品となってしまう。3軸のバ
ランスには問題が無い加速度センサー40を分解して調査すると、図7b)に示す様に上
キャップチップ45に破線で示す様なクラック64が入っているものが見られた。キャッ
プクラック64が入っているもの上キャップチップ45が薄いという傾向が見られた。キ
ャップクラック64が入るとキャップクラックで応力が緩和されて3軸のバランスは取れ
る可能性はあるが、MEMS組立体47の気密が破れるため、ピエゾ抵抗素子の変質等が
起こり易くなり信頼性が低下することになる。逆に、キャップチップ45が厚いとキャッ
プチップ上の樹脂51が薄くなり、図7c)に示す様な樹脂クラック65が入るものが出
てくる。樹脂クラック65の起点の大多数は上キャップチップ45の角部であった。樹脂
クラック65はMEMS組立体47の気密破損を起さないが、外観的な面で不良品とせざ
るを得ない。圧力センサー60は一方向の変位を検知するだけであるので、加速度センサ
ーのような3軸のバランスが取れないと言う不具合はないが、孔付上キャップチップ57
に樹脂が入り込んで孔詰まり66の不良が発生する。
【0012】
本願発明は、MEMS組立体が受けるモールド樹脂で発生する応力を少なくし半導体セ
ンサー装置の特性を安定化させ、キャップクラックや樹脂クラックが入り難く、また、孔
付キャップチップの孔詰まりが起こり難い、小型軽量な半導体センサー装置およびその製
造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の半導体センサー装置は、可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップ
の少なくとも可動部を密封する上下キャップチップで形成されたMEMS組立体を、配線
基板上に固着された回路基板上にMEMS組立体の下キャップチップを固着し、MEMS
チップと回路基板、回路基板と配線基板は配線で接続され、配線基板上の回路基板と配線
、MEMS組立体を樹脂部材で封止した半導体センサー装置であって、上キャップチップ
の上面が封止樹脂部材より露出していることが好ましい。
【0014】
加速度センサーやジャイロセンサー等のMEMSチップの可動部を上下キャップチップ
で気密封止することで、雰囲気や圧力によって出力値が影響を受け難い構造とすることが
できる。例えば、静電容量を検出する静電容量素子の静電容量Cは、C=εεS/dで
表される。ここで、εは真空の誘電率、εはMEMS組立体内の気体の誘電率、Sは電
極面積、dは電極間隔である。MEMS組立体内の誘電率すなわち雰囲気(ガス)や圧力
(真空度)により静電容量が変化してしまうため、MEMS組立体内を気密封止すること
が好ましい。また、電流や電圧として出力する抵抗素子では、抵抗素子の抵抗値が大気中
の水分や温度の影響を受けやすい。そのため、MEMS組立体内に水分等が混入して測定
値に与える影響を低減するため気密封止することが好ましい。
【0015】
圧力センサーは、外界の圧力変化によるMEMSチップの可動部の変形を検出するため
、MEMSチップと下キャップチップとを気密封止する必要がある。例えば、MEMSチ
ップの可動部をダイアフラム状に形成し、MEMSチップと下キャップチップと空間部を
真空もしくは大気圧の不活性ガスで気密封止しておく。外界の圧力変化に伴い、ダイアフ
ラムが変形しダイアフラムに形成されたピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化し、抵抗値の変化
を電流や電圧に変換することで圧力の値を検知することができる。MEMSチップと下キ
ャップチップが気密封止されてないと、空間部の圧力も外界の圧力変化に応じて変化する
ため、ダイアフラムの変形が起こらず圧力を検知できないものである。
【0016】
MEMS組立体の上キャップチップの上面にモールドの樹脂を形成せず、上キャップチ
ップ上面を露出させる事で、樹脂の応力による半導体センサー装置の特性を安定化させる
ことができる。上キャップチップ上面とは、上キャップチップのMEMS基板と接合して
いる面の背面を言う。上キャップチップの上面を露出させる事で樹脂による応力を大幅に
低減させることができ、特性の安定化が図れる。上キャップチップ全体を露出させても同
様の効果は得られるが、取扱い時に引っ掛けたりして上キャップチップが外力によって損
傷する危険性が高くなるため、上面のみ露出させるのが好ましい。上キャップチップの上
面の樹脂を無くす事で、樹脂厚分だけ半導体センサー装置の厚みを薄くできる。もしくは
、樹脂厚分だけ上キャップチップの厚みを厚くし、機械的強度を向上させることもできる
。上キャップチップの厚みを厚くできることで、上キャップ基板から上キャップチップに
する研削工数が削減できることにもなるし、上キャップチップ厚みの研削加工公差を緩め
る事もできる。
【0017】
上下キャップ基板にはシリコンを用いることが好ましく、特に微細加工がし易い単結晶
シリコンが好ましい。MEMS基板は、単結晶シリコンに製膜やエッチング、パターニン
グ等の半導体技術を適用して作製されている。MEMS基板と同じ材質でキャップチップ
を作製することで、線熱膨張係数を合わせることができる。線熱膨張係数を合わせること
でMEMS基板とキャップ基板の接合工程や、他の製造工程で加わる温度変化に対しても
、MEMS基板とキャップ基板の接合部が壊れ難くなる。キャップチップが平板の様な単
純な形状であれば、MEMS基板の線熱膨張係数と略同じガラスや多結晶シリコン、セラ
ミック等を用いる事もできる。MEMS基板を上下方向から挟む様に設けられるキャップ
基板で、上下のキャップ基板の材質を変えることもできる。例えば、上側のキャップ基板
は単結晶シリコンで、下側のキャップ基板はセラミックとすることもできる。
【0018】
MEMS基板とキャップ基板の接合は、MEMS基板上の検出素子や配線、電極パッド
等が耐高温特性ではないため、比較的低温で作業できる陽極接合や低融点材料接合(低融
点金属接合や共晶接合、低融点ガラス接合、樹脂接合等を含む)、拡散接合、表面活性化
接合のいずれかの方法を用いることが好ましい。MEMS基板とキャップ基板との接合は
、低融点材料接合がより好ましい。MEMS基板とキャップ基板を位置合わせした後、加
圧と加熱を行い接合する。MEMS基板とキャップ基板のうねり等により発生する隙間を
、低融点材料が流れることで隙間を埋め気密性を向上させることができる。このため、大
きな圧力を加えて基板のうねりを強制する必要がないので、キャップ基板等を破損する危
険性が低くなる。MEMS組立基板内の空間部を真空(減圧下)に保つ、もしくは乾燥窒
素や不活性ガス等を充填気密するため、真空(減圧)雰囲気下や乾燥窒素、不活性ガス雰
囲気下で接合できることが好ましい。
【0019】
MEMS組立基板のキャップ基板の薄肉化と個片化は、ダイヤモンド砥石を用いた研削
加工もしくはウェットエッチング加工を用いることができる。ウェットエッチング加工を
行う場合は、MEMS基板の配線部や電極部をエッチング液から保護するための処理を行
うことが必要となる。MEMS基板を切断するのは、ダイヤモンド砥石で切削することが
好ましい。レーザーを用いて切断加工することもできる。
【0020】
配線基板上に回路基板を、回路基板上にMEMS組立体を樹脂接着剤や樹脂フィルム等
を用いて接着する。MEMS組立体と回路基板、回路基板と配線基板の電極を、金属細線
(ワイヤー)を用いて超音波溶接や半田溶接で行うことができる。金属細線による接続の
代わりに、半田ボールやボールボンドによる接続を用いることもできるが、半田は鉛フリ
ーの物を用いることが、環境の面から好ましいものでる。
【0021】
MEMS組立体に外部から加速度や角速度、圧力等の力が加わると、可動部上に形成し
たピエゾ抵抗素子や静電容量素子等で、電流や電圧、静電容量等の物理量に変換して出力
する。出力される物理量の変化は微小であるため、回路基板には出力を増幅する素子(増
幅回路等)を形成する。また、前記素子が温度の影響を受ける場合、温度補正回路等を搭
載することが好ましい。配線基板はプリント回路やリードフレーム等である。本願では、
回路基板と配線基板を個別に作製して組立てることで説明しているが、これに限るもので
はない。回路基板と配線基板を一体で形成しても良いし、回路基板と配線基板の積層順を
逆にする事も可能である。
【0022】
MEMS組立体と回路基板、配線基板、ワイヤーの樹脂封止には、エポキシ樹脂やシリ
コーン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。成型方法は、液状
樹脂を用いたポッティング法もしくは粉体樹脂を用いたトランスファーモールド法を用い
ることができる。MEMS組立体と回路基板、配線基板、ワイヤーが一体化されたものを
金型内にセットし、金型内に熱硬化性樹脂材料を注入した後、加熱と加圧を行い、樹脂を
硬化させて樹脂封止された半導体センサー装置を得ることができる。
【0023】
本願発明の半導体センサー装置は、可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップ
の少なくとも可動部の下側を密封する下キャップチップと、可動部の上側を覆う上キャッ
プチップで形成されたMEMS組立体を、配線基板上に固着された回路基板上にMEMS
組立体の下キャップチップを固着し、MEMSチップと回路基板、回路基板と配線基板は
配線で接続され、配線基板上の回路基板と配線、MEMS組立体を樹脂部材で封止した半
導体センサー装置であって、上キャップチップは上キャップチップの厚み方向に少なくと
も1つ以上の貫通孔を有し、上キャップチップの上面が封止樹脂部材より露出しているこ
とが好ましい。
【0024】
圧力センサーの様に、外界の圧力変化をMEMSチップの可動部の変形量として検出す
るため、MEMSチップと下キャップチップは気密封止する必要がある。MEMSチップ
と上キャップチップ間は外界の圧力変化が可動部(ダイアフラム)に伝わるように、上キ
ャップには貫通孔を設けておく必要がある。測定原理の点からは上キャップチップは無く
ても良いが、圧力センサー製造時に破損し易い可動部を保護する保護カバーとしての役目
がある。また、貫通孔が形成された上キャップは、外界の急激な圧力の変化があったとき
圧力波を減衰させることで力を分散させて、ダイアフラムの破損を防ぐ役目も果たしてい
る。
【0025】
MEMS組立体、回路基板、配線基板、ワイヤーを設置したものを樹脂モールドしたと
きに上キャップチップ上面を露出させることで、上キャップチップが樹脂の温度変形の影
響を受け難い構造とすることができる。上キャップチップが変形するとMEMSチップに
応力が掛かり、センサーの可動部の動きに影響を与える。
【0026】
貫通孔が形成された上キャップ基板を用いるか、貫通していない穴を設けた上キャップ
基板を用い、上キャップ基板を研削して薄肉化するときに貫通孔を形成することもできる
。貫通孔は円柱形状や円錐台形状、多角柱形状、多角錐台形状でも良いし不定形な形状で
構わないものである。貫通孔大きさや数、配置も選択することができる。
【0027】
本願発明の半導体センサー装置は、MEMSチップが、加速度、角速度、圧力の少なく
とも1つ以上の物理量検出ができることが好ましい。
【0028】
MEMSチップは、加速度や角速度、圧力等の物理量を検出する加速度センサーやジャ
イロセンサー、圧力センサー等である。MEMSチップに外部から加速度や角速度、圧力
等が加わると、MEMSチップの可動部上に形成された抵抗素子や容量素子等で、電流や
電圧、静電容量等の物理量に変換して出力する。
【0029】
貫通孔を有する上キャップチップ側にMEMSチップの素子や配線形成された構造の場
合は、空気中の水分やガスで腐蝕が発生する危険性が有るため、素子や配線を保護膜で被
覆しておくことが好ましい。保護膜の材料としては、半導体プロセス、MEMSプロセス
で使用される酸化シリコン、窒化シリコンを用いることができる。酸化シリコンと窒化シ
リコンを単独で使用しても良いが、窒化シリコンを用いる時は窒化シリコンの下地に酸化
シリコンを形成することが好ましい。配線上に窒化シリコンを直接形成すると配線の膜中
に電荷の注入が起こり、MEMSチップの特性に影響を及ぼす危険性が考えられ。配線と
窒化シリコンとの間に電荷が注入され難い酸化シリコン膜を挿入しておくことが好ましい
ものである。
【0030】
本願発明の半導体センサー装置は、上キャップチップの露出面は、上キャップチップ側
に形成された封止樹脂部材の面と同一か凹んでいることが好ましい。
【0031】
上キャップチップ上面が封止樹脂部材の面より凸であると、半導体センサー装置の取扱
い時に上キャップチップを引っ掛けて破損させる危険性がある。引っ掛けて破損させるこ
とを避けるためにも、封止樹脂部材の面より上キャップチップ上面は同一か凹んでいるこ
とが好ましい。配線の一部が上キャップチップ上面より出る場合は、上キャップチップ上
面は露出させて、周りの樹脂面を凸にすることで配線を確実に樹脂モールドすることがで
きる。
【0032】
MEMS組立体と回路基板、配線基板、配線の組立品をモールド型に設置するときに、
金型と上キャップチップ上面とを接触させておき、トランスファーモールドすることで、
上キャップチップ上面が樹脂から露出した形状に樹脂モールドできる。金型に直接押し当
てるのではなく、金型と上キャップチップ間に樹脂部材付着防止治具を挿入しても良いも
のである。金型や樹脂部材付着防止治具を替える事で、上キャップチップ上面を樹脂面と
同一にするか凹ませることができる。同一面にする場合は、樹脂モールドした後に、砥石
で樹脂を研削して上キャップチップの上面を露出させることができる。貫通孔を有する上
キャップチップ上面を露出させる場合は、有効な方法である。貫通していない穴を持った
上キャップチップを、樹脂と同時に研削して貫通孔を形成することで、貫通孔にモールド
樹脂が入り込む孔詰まり不良をなくすことができる。
【0033】
本願発明の半導体センサー装置の製造方法は、MEMS基板およびキャップ基板を形成
する工程、MEMS基板の少なくとも可動部に上下キャップ基板を固着する工程、キャッ
プ基板をキャップチップ化する工程、MEMS基板を切断してチップ化してMEMS組立
体を形成する工程、配線基板上に回路基板を固着する工程、回路基板上にMEMS組立体
の下キャップチップ面を固着する工程、配線基板と回路基板、回路基板とMEMS組立体
を配線する工程、配線基板上の回路基板と配線、MEMS組立体を樹脂部材で封止する工
程、MEMS組立体の上キャップ側を研削して封止樹脂部材の面と上キャップチップ面の
上面を同一面とし、上キャップチップの上面を露出させる工程を有することが好ましい。
【0034】
本願発明の半導体センサー装置の製造方法は、MEMS基板およびキャップ基板を形成
する工程、MEMS基板の少なくとも可動部に上下キャップ基板を固着する工程、キャッ
プ基板をキャップチップ化する工程、MEMS基板を切断してチップ化してMEMS組立
体を形成する工程、配線基板上に回路基板を固着する工程、回路基板上にMEMS組立体
の下キャップチップ面を固着する工程、配線基板と回路基板、回路基板とMEMS組立体
を配線する工程、配線基板上の回路基板と配線、上キャップチップの上面に樹脂部材付着
防止治具を押し当てたMEMS組立体を樹脂部材で封止する工程を有することが好ましい

【発明の効果】
【0035】
上キャップチップ上面を露出させて樹脂面と同一にするか凹ませることで、MEMS組
立体が受けるモールド樹脂で発生する応力を少なくし半導体センサー装置の特性を安定化
させ、キャップクラックや樹脂クラックが入り難く、また、孔付キャップチップの孔詰ま
りが起こり難い、小型軽量な半導体センサー装置提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下本発明を図面を参照しながら実施例に基づいて詳細に説明する。説明を判り易くす
るため、同一の部品、部位には同じ符号を用いている。
【実施例1】
【0037】
本願発明の第一の実施例について、図1を用いて半導体センサー装置を説明する。本願
の半導体センサー装置の説明は、加速度センサーと圧力センサーを用いており、半導体セ
ンサー装置と加速度センサー及び圧力センサーは同義で使用している。図1の加速度セン
サーの、MEMS組立体基板の製造からMEMS組立体と回路基板、配線基板の配線まで
の工程は、図5a)から図5g)に示した製造工程、方法と同じで、樹脂モールド後に上
キャップチップの上面の樹脂を除去する工程が異なる。図1に至る実施した工程の詳細説
明を図3と図5を用いて行う。
【0038】
図3に示すMEMS基板42の製作には、約400μm厚のシリコン板に数μmのシリ
コン酸化層と約6μmのシリコン層を有するSOI(Silicon On Insul
ator)ウェファーを使用した。図3に示す様に、シリコン層側の面にピエゾ抵抗素子
26〜28の形状にフォトレジストのパターンを形成した。シリコン層にボロンを1〜3
x1018原子/cm打ち込み、ピエゾ抵抗素子26〜28を形成し、ピエゾ抵抗素子
26〜28に接続する配線(図示せず)とセンサーチップ端子21を、金属スパッターと
ドライエッチング装置を用いて形成した。シリコン層とシリコン板をフォトリソとドライ
エッチング装置を用いて加工し、シリコン層に形成される梁部22、およびシリコン層か
らシリコン板に渡って形成される錘部23と支持枠部24を形成した。シリコン酸化層は
シリコンのドライエッチングの際にエッチングストッパーとして機能する。ドライエッチ
ングされるのはシリコンのみであるので、シリコン板はドライエッチングされるがシリコ
ン酸化層は残っている。ドライエッチング後、弗酸、弗化アンモニム水溶液に漬けシリコ
ン酸化層をウェットエッチングで除去した。ドライエッチングはSF6、酸素混合ガスと
ガスとを交互に導入するプラズマ内で行った。1枚のウェファー上に多数の加速
度センサーチップ20が形成されたMEMS基板42を作製した。MEMS基板42の上
下面には、キャップ基板と接合する接合材が形成された接合部61を設けた。接合部61
には接合材としてAu−Sn合金の積層膜を5μm厚に電気めっきで形成した。接合部6
1の幅は気密封止できるように60μmとした。
【0039】
ピエゾ抵抗素子26〜28や配線、センサーチップ端子21を形成した後、それらの上
に窒化シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)で0
.2μm積層した後、センサーチップ端子21上の窒化シリコンをフォトリソ、エッチン
グで除去した。次にフォトレジストでセンサーチップ端子21および接合部61を開口し
た後、金属スパッターで、Cr0.1μm−Ni0.4μm−Au0.5μmの順で積層
膜を形成した。次にセンサーチップ端子21と接合部61以外のフォトレジストと金属膜
を除去し、研削液に晒される部位を保護膜で保護した。本実施例では、キャップチップの
個片化を研削で行ったので、保護膜の作製は省いても良いが、個片化をウェットエッチン
グで行うときやピエゾ抵抗素子が大気に曝される構造の圧力センサー等では、省かない方
が良いものである。
【0040】
上キャップ基板41と下キャップ基板43は400μm厚のシリコンを用いた。キャッ
プ基板は一点鎖線で示す分離部90まで研削して個片化してキャップチップ45,46を
得る。個片化するための深溝を250μm、MEMSチップの可動部を覆う浅溝を20μ
mウェットエッチングで形成した。
【0041】
約410μm厚のMEMS基板42と約400μm厚の上下キャップ基板41,43を
所定の位置に合わせながら減圧して保持した。上下キャップ基板に約10kNの圧力を加
え、約300℃×約1分加熱してMEMS組立体基板44を得た。MEMS基板とキャッ
プ基板は約400μmの厚みであるので、十分な機械的強度を有しており、加圧接合時に
割れたりクラックが入ったりするような問題は起きなかった。
【0042】
2000番のダイヤモンド砥石を用いて、上下キャップ基板41,42を一点鎖線で示
す分離部90まで研削した。上キャップ基板は約200μm研削し約200μm厚の上キ
ャップチップ45とした。下キャップ基板46は約300μm研削し約100μm厚の下
キャップチップ46とした。上キャップチップの厚みを下キャップチップより100μm
厚くすることで、上キャップチップの上面を樹脂部材から露出させても機械的強度を確保
することができた。研削時、ダイヤモンド砥石とMEMS組立基板に、3〜5(L/分)
の量の研削液をかけた。キャップチップの表面粗さは、Ra≦200nmであった。表面
粗さRaの測定は、JISB0601に従った。研削と同じ様にダイヤモンド砥石を使い
、MEMS基板を一点鎖線で示す分離部90で切断してMEMS組立体47を得た。
【0043】
厚さ100μmの配線基板49上に加速度センサーチップからの信号の増幅や温度補正
等を行う回路基板48を、ダイアタッチフィルムで固定した。回路基板48の上にMEM
S組立体47の下キャップチップ46をダイアタッチフィルムで固着した。MEMS組立
体47と回路基板48、配線基板49間を、直径25μmの金の裸ワイヤー50を超音波
ボンダーで接続した。
【0044】
MEMS組立体47と回路基板44、配線基板49が組立てられた構造体を、トランス
ファーモールド法を用いエポキシ系の樹脂51を成型した。175℃で成型することで、
構造体をエポキシ系の樹脂51中に完全に封止し、上キャップチップ上面に樹脂51のあ
る加速度センサー40を得た。此処までの工程は、図5a)から図5g)の工程に準じて
いる。その後、配線基板49の反対面のエポキシ系の樹脂51を上キャップチップ45が
露出するまでGC600番の砥石を用いて研削し、図1に示す加速度センサー1を得た。
研削加工を行ったので、上キャップチップ側の樹脂51と上キャップチップの露出面は同
一面となっている。
【実施例2】
【0045】
図2a)と図2b)に、本願発明の半導体センサー装置の他の実施例の断面図を示す。
半導体センサー装置は、実施例1と同じ加速度センサーであり、図5a)から図5f)ま
では同じである。実施例1では、MEMS組立体47と回路基板44、配線基板49が組
立てられた構造体をエポキシ系の樹脂51中に完全にモールドしたが、本実施例ではモー
ルド時に樹脂部材付着防止治具を用い、上キャップチップの上面にエポキシ系の樹脂51
がモールドされないようにしたものである。図2a)の上キャップチップ45上に樹脂部
材付着防止治具(図示せず)を押し当てた状態で、トランスファーモールド法を用いエポ
キシ系の樹脂51を成型した。モールド後、樹脂部材付着防止治具を取外して、上キャッ
プチップ45の上面を露出させた。上キャップチップの上面より配線50の一部が上に位
置するときは有効な構造となる。実施例1の様にモールド後に研削して上キャップチップ
を露出させる方法では、配線も研削してしまうので上キャップチップの上面より配線は下
に位置していることが必須であった。図2b)は、モールド樹脂の一部の面が上キャップ
チップの上面と同じものである。図2a)と図2b)の上キャップチップの上面は樹脂面
より凹んでいるので、上キャップチップに他の物をぶつけて破損する危険性を下げる事こ
とができた。
【実施例3】
【0046】
図2c)に、本願発明の半導体センサー装置の他の実施例の断面図を示す。半導体セン
サー装置は圧力センサー2である。図2c)の圧力センサーの、MEMS組立体基板の製
造からMEMS組立体と回路基板、配線基板の配線までの工程は、図6a)から図6g)
に示した製造工程、方法と同じで、樹脂モールド後に上キャップチップの上面の樹脂を除
去する工程が異なる。図2c)に至る実施した工程の詳細説明を図6を用いて行う。
【0047】
図6に示すMEMS基板53の製作には、約400μm厚のシリコン板に数μmのシリ
コン酸化層と約6μmのシリコン層を有するSOIウェファーを使用した。図6に示す様
に、シリコン層側の面にピエゾ抵抗素子68の形状にフォトレジストのパターンを形成し
た。シリコン層にボロンを1〜3x1018原子/cm打ち込み、ピエゾ抵抗素子68
を形成し、ピエゾ抵抗素子68に接続する配線(図示せず)とセンサーチップ端子を、金
属スパッターとドライエッチング装置を用いて形成した。シリコン層とシリコン板をフォ
トリソとドライエッチング装置を用いて加工し、ダイヤフラム67を形成した。シリコン
酸化層はシリコンのドライエッチングの際にエッチングストッパーとして機能する。ドラ
イエッチングされるのはシリコンのみであるので、シリコン板はドライエッチングされる
がシリコン酸化層は残っている。ドライエッチング後、弗酸、弗化アンモニム水溶液に漬
けシリコン酸化層をウェットエッチングで除去した。ドライエッチングはSF、酸素混
合ガスとCガスとを交互に導入するプラズマ内で行った。1枚のウェファー上に多
数の圧力センサーチップが形成されたMEMS基板53を作製した。MEMS基板53の
上下面には、キャップ基板と接合する接合材が形成された接合部61を設けた。接合部6
1には接合材としてAu−Sn合金の積層膜を5μm厚に電気めっきで形成した。接合部
61の幅は気密封止できるように60μmとした。
【0048】
穴付上キャップ基板52と下キャップ基板54は400μm厚のシリコンを用いた。キ
ャップ基板は一点鎖線で示す分離部90まで研削して個片化してキャップチップ57,5
8を得る。個片化するための深溝を250μm、MEMSチップの可動部を覆う浅溝の深
さ20μmとし、浅溝部に約200μm深さの穴をウェットエッチングで形成した。穴付
上キャップ基板52を一点鎖線で示した分離部90まで研削すると、浅溝部に設けた穴は
貫通して貫通孔56となる。
【0049】
穴付上キャップ基板52とMEMS基板53、下キャップ基板54を接合部61で固着
しMEMS組立体基板55を得る。固着作業は1気圧の窒素ガス雰囲気中で行い、上下キ
ャップ基板に約10kNの圧力を加え、約300℃×約1分加熱してMEMS組立体基板
55を得た。MEMS基板とキャップ基板は約400μmの厚みであるので、十分な機械
的強度を有しており、加圧接合時に割れたりクラックが入ったりするような問題は起きな
かった。
【0050】
2000番のダイヤモンド砥石を用いて、穴付上キャップ基板52と下キャップ基板5
3を一点鎖線で示す分離部90まで研削した。穴付上キャップ基板52を約200μmと
下キャップ基板54を約300μm研削して上下キャップチップ57,58を得た。研削
時、ダイヤモンド砥石とMEMS組立基板に、3〜5(L/分)の量の研削液をかけた。
キャップチップの表面粗さは、Ra≦200nmであった。表面粗さRaの測定は、JI
SB0601に従った。研削と同じ様にダイヤモンド砥石を使い、MEMS基板53を一
点鎖線で示す分離部90で切断してMEMS組立体59を得た。MEMS組立体のMEM
Sチップと下キャップチップ間は一気圧の窒素が封入されて密封されているが、MEMS
チップと穴付上キャップ間は大気圧となっている。穴付上キャップチップ57の厚みを下
キャップチップより約100μm厚くしているのは、機械的強度の確保と貫通孔の深さを
得ることで、急激な圧力変化時に圧力緩和を行い可動部の破損を防ぐためである。
【0051】
厚さ約100μmの配線基板49上に圧力センサーチップからの信号の増幅や温度補正
等を行う回路基板48を、ダイアタッチフィルムで固定した。回路基板48の上にMEM
S組立体59の下キャップチップ58をダイアタッチフィルムで固着した。MEMS組立
体59と回路基板48、配線基板49間を、直径25μmの金の裸ワイヤー50を超音波
ボンダーで接続した。
【0052】
MEMS組立体59と回路基板48、配線基板49が組立てられた構造体を、トランス
ファーモールド法を用いエポキシ系の樹脂51を成型した。175℃で成型することで、
構造体をエポキシ系の樹脂51中に完全に封止し、貫通孔56部を除いて穴付上キャップ
チップ57の上面に樹脂51のある圧力センサー60を得た。此処までの工程は、図6a
)から図6g)の工程に準じている。その後、配線基板49の反対面のエポキシ系の樹脂
51を穴付上キャップチップ57が露出するまでGC600番の砥石を用いて研削し、図
2c)に示す圧力センサーを得た。研削加工を行ったので、穴付上キャップチップ側の樹
脂51と穴付上キャップチップの露出面は同一面となっている。
【実施例4】
【0053】
図2d)に、本願発明の半導体センサー装置の他の実施例の断面図を示す。半導体セン
サー装置は圧力センサー2である。実施例3では、MEMS組立体59と回路基板48、
配線基板49が組立てられた構造体をエポキシ系の樹脂51中に完全にモールドしたが、
本実施例ではモールド時に樹脂部材付着防止治具を用い、穴付上キャップチップ57の上
面にエポキシ系の樹脂51がモールドされないようにしたものである。図6)の穴付上キ
ャップチップ57上に樹脂部材付着防止治具(図示せず)を押し当てた状態で、トランス
ファーモールド法を用いエポキシ系の樹脂51を成型した。モールド後、樹脂部材付着防
止治具を取外して、上キャップチップ57の上面を露出させた。
【実施例5】
【0054】
実施例1と2で製作した上キャップチップの上面が露出した加速度センサー1の各軸の
感度を測定した。比較のため従来の上キャップチップの上面にもモールド樹脂を形成した
加速度センサー40を供試した。Z軸の感度(単位加速度当りの出力mV/g)を1とし
てX軸とY軸の感度を比率で求めた。各軸の感度は、各試料500個の上下限の範囲値と
平均値である。実施例1のX軸は0.9〜1.2で平均1.05、Y軸は0.95〜1.
15で平均1.03である。実施例2のX軸は0.95〜1.2で平均1.08、Y軸は
0.98〜1.10で平均1.01である。従来品のX軸は3.5〜5.1で平均4.3
。Y軸は2.5〜3.2で平均2.8であった。実施例1および2の様に、上キャップチ
ップの上面を露出させることで、X軸からZ軸間の感度の差を殆んど無くすことができ、
3軸のバランス崩れに起因する不良をなくす事ができた。
【0055】
キャップチップのクラックの有無は、実施例1および2の加速度センサーは供試した各
500個を実態顕微鏡で外観検査、比較の従来品は無差別に選んだ200個の加速度セン
サーの樹脂を薬品で除去して検査した。実施例1および2の加速度センサーで上キャップ
チップにクラックが入っていたものは0個であった。従来品は27個の加速度センサーに
クラックが入っており、不良率は13.5%と高いものであった。上キャップチップの端
部を起点とした樹脂クラックは、実施例1および2では観察されず不良率は0%であった
。実施例1の上キャップチップの上面の樹脂を研削したものも樹脂クラックは0個であっ
たことから、上キャップチップの厚みを厚くした効果とも考えられる。厚くすることで、
樹脂モールド時に上キャップチップの変形が抑えられ、樹脂クラックが入り難くなった。
上キャップチップの厚みを厚くできるのも、上キャップチップの上面を露出させて加速度
センサーの厚みを薄くすることができたためである。比較の従来品では、500個中1個
に樹脂クラックが確認され、不良率は0.2%であった。上キャップチップの上面を露出
させることで、感度のバランスが取れるだけでなく、上キャップチップのクラックと樹脂
クラックの発生を抑えることができた。
【実施例6】
【0056】
実施例3と4で製作した上キャップチップの上面が露出した圧力センサー2の上キャッ
プチップの孔詰まりに付いて評価した。比較のため従来の上キャップチップの上面にもモ
ールド樹脂を形成した圧力センサー60を供試した。各1000個の圧力センサーを実体
顕微鏡下で孔詰まりを検査した。実施例3と4の圧力センサーの孔詰まりは0個で、不良
率は0%であった。従来品の32個に1ヶ所以上の貫通孔で孔詰まりが見られ、不良率は
3.2%であった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本願発明の第一の実施例の断面図である。
【図2】本願発明の他の実施例の断面図である。
【図3】従来の加速度センサーの分解斜視図と断面図、素子の平面図である。
【図4】従来のMEMS組立体基板を用いた加速度センサーの断面図である。
【図5】従来のWLPを用いた加速度センサーの製造工程を説明する図である。
【図6】従来のWLPを用いた圧力センサーの製造工程を説明する図である。
【図7】従来のWLPを用いた半導体センサー装置の不具合点を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
1 加速度センサー、
2 圧力センサー、
20 加速度センサーチップ、
21 センサーチップ端子、
22 梁部、
23 錘部、
24 支持枠部、
25 ICチップ、
26 X軸ピエゾ、
27 Y軸ピエゾ、
28 Z軸ピエゾ、
30 3軸加速度センサー、
32 ケース、
33 蓋、
34 ワイヤー、
35 ケース端子、
36 外部端子、
37 接着剤、
38 IC規制板端子、
39 接着樹脂、
40 加速度センサー、
41 上キャップ基板、
42 MEMS基板、
43 下キャップ基板、
44 MEMS組立体基板、
45 上キャップチップ、
46 下キャップチップ、
47 MEMS組立体、
48 回路基板、
49 配線基板、
50 配線、
51 樹脂、
52 穴付上キャップ基板、
53 MEMS基板、
54 下キャップ基板、
55 MEMS組立体基板、
56 貫通孔、
57 上キャップチップ、
58 下キャップチップ、
59 MEMS組立体、
60 圧力センサー、
61 接合部、
63 応力、
64 キャップクラック、
65 樹脂クラック、
66 孔詰まり、
67 ダイアフラム、
68 ピエゾ抵抗素子、
69 センサーチップ端子、
80 MEMS組立体、
81 MEMS基板、
82 キャップ基板、
83 ケース、
84 ケース蓋、
85,86 半導体センサー装置、
87 樹脂、
88 MEMS組立体基板
89 配線、
90 分離部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップの少なくとも可動部を密封する上下
キャップチップで形成されたMEMS組立体を、配線基板上に固着された回路基板上にM
EMS組立体の下キャップチップを固着し、MEMSチップと回路基板、回路基板と配線
基板は配線で接続され、配線基板上の回路基板と配線、MEMS組立体を樹脂部材で封止
した半導体センサー装置であって、上キャップチップの上面が封止樹脂部材より露出して
いることを特徴とする半導体センサー装置。
【請求項2】
可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップの少なくとも可動部の下側を密封す
る下キャップチップと、可動部の上側を覆う上キャップチップで形成されたMEMS組立
体を、配線基板上に固着された回路基板上にMEMS組立体の下キャップチップを固着し
、MEMSチップと回路基板、回路基板と配線基板は配線で接続され、配線基板上の回路
基板と配線、MEMS組立体を樹脂部材で封止した半導体センサー装置であって、上キャ
ップチップは上キャップチップの厚み方向に少なくとも1つ以上の貫通孔を有し、上キャ
ップチップの上面が封止樹脂部材より露出していることを特徴とする半導体センサー装置

【請求項3】
MEMSチップが、加速度、角速度、圧力の少なくとも1つ以上の物理量検出ができる
ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の半導体センサー装置。
【請求項4】
上キャップチップの露出面は、上キャップチップ側に形成された封止樹脂部材の面と同
一か凹んでいることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の半導体センサー装置。
【請求項5】
MEMS基板およびキャップ基板を形成する工程、MEMS基板の少なくとも可動部に
上下キャップ基板を固着する工程、キャップ基板をキャップチップ化する工程、MEMS
基板を切断してチップ化してMEMS組立体を形成する工程、配線基板上に回路基板を固
着する工程、回路基板上にMEMS組立体の下キャップチップ面を固着する工程、配線基
板と回路基板、回路基板とMEMS組立体を配線する工程、配線基板上の回路基板と配線
、MEMS組立体を樹脂部材で封止する工程、MEMS組立体の上キャップ側を研削して
封止樹脂部材の面と上キャップチップ面の上面を同一面とし、上キャップチップの上面を
露出させる工程を有することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の半導体センサー装
置の製造方法。
【請求項6】
MEMS基板およびキャップ基板を形成する工程、MEMS基板の少なくとも可動部に
上下キャップ基板を固着する工程、キャップ基板をキャップチップ化する工程、MEMS
基板を切断してチップ化してMEMS組立体を形成する工程、配線基板上に回路基板を固
着する工程、回路基板上にMEMS組立体の下キャップチップ面を固着する工程、配線基
板と回路基板、回路基板とMEMS組立体を配線する工程、配線基板上の回路基板と配線
、上キャップチップの上面に樹脂部材付着防止具を押し当てたMEMS組立体を樹脂部材
で封止する工程を有することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の半導体センサー装
置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−241164(P2009−241164A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87513(P2008−87513)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(506334171)トレックス・セミコンダクター株式会社 (19)
【Fターム(参考)】