説明

半導体装置および半導体装置の作製方法

【課題】酸化物半導体を用いた好適な構造のnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを提供することを目的の一とする。
【解決手段】第1の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第1の導電層と第2の材料を含む第2の導電層の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極と、第2の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第3の導電層と第2の材料を含む第4の導電層の積層構造でなる第2のソース電極またはドレイン電極と、を有し、第1の酸化物半導体層には、第1のソース電極またはドレイン電極の第1の導電層が接触し、第2の酸化物半導体層には、第2のソース電極またはドレイン電極の第3の導電層および第4の導電層が接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明の技術分野は、半導体装置および半導体装置の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は多様に存在し、さまざまな用途に用いられている。酸化インジウムはよく知られた材料であり、液晶ディスプレイなどで必要とされる透明電極材料として用いられている。
【0003】
金属酸化物の中には半導体特性を示すものがある。半導体特性を示す金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、このような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域とする薄膜トランジスタが既に知られている(例えば、特許文献1乃至特許文献4、非特許文献1等参照)。
【0004】
ところで、金属酸化物は一元系のもの(一元系酸化物)のみならず、多元系のもの(多元系酸化物)も知られている。例えば、ホモロガス相を有するInGaO(ZnO)(m:自然数)は、In、Ga及びZnを有する多元系酸化物半導体として知られている(例えば、非特許文献2乃至非特許文献4等参照)。
【0005】
そして、上記のようなIn−Ga−Zn系酸化物で構成される酸化物半導体を薄膜トランジスタのチャネル層として適用可能であることが確認されている(例えば、特許文献5、非特許文献5および非特許文献6等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−198861号公報
【特許文献2】特開平8−264794号公報
【特許文献3】特表平11−505377号公報
【特許文献4】特開2000−150900号公報
【特許文献5】特開2004−103957号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. W. Prins, K. O. Grosse−Holz, G. Muller, J. F. M. Cillessen, J. B. Giesbers, R. P. Weening, and R. M. Wolf、「A ferroelectric transparent thin−film transistor」、 Appl. Phys. Lett.、17 June 1996、 Vol.68 p.3650−3652
【非特許文献2】M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In2O3−Ga2ZnO4−ZnO System at 1350℃」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, p.298−315
【非特許文献3】N. Kimizuka, M. Isobe, and M. Nakamura、「Syntheses and Single−Crystal Data of Homologous Compounds, In2O3(ZnO)m(m=3,4, and 5), InGaO3(ZnO)3, and Ga2O3(ZnO)m(m=7,8,9, and 16) in the In2O3−ZnGa2O4−ZnO System」、 J. Solid State Chem.、1995、Vol.116, p.170−178
【非特許文献4】中村真佐樹、君塚昇、毛利尚彦、磯部光正、「ホモロガス相、InFeO3(ZnO)m(m:自然数)とその同型化合物の合成および結晶構造」、固体物理、1993年、Vol.28、No.5、p.317−327
【非特許文献5】K. Nomura, H. Ohta, K. Ueda, T. Kamiya, M. Hirano, and H. Hosono、「Thin−film transistor fabricated in single−crystalline transparent oxide semiconductor」、SCIENCE、2003、Vol.300、p.1269−1272
【非特許文献6】K. Nomura, H. Ohta, A. Takagi, T. Kamiya, M. Hirano, and H. Hosono、「Room−temperature fabrication of transparent flexible thin−film transistors using amorphous oxide semiconductors」、NATURE、2004、Vol.432 p.488−492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなIn−Ga−Zn系酸化物で構成される薄膜トランジスタは、通常、電子をキャリアとするnチャネル型トランジスタとなる。一方で、集積回路の高速動作、消費電力低減などの観点からは、論理回路の基本構成として、CMOS回路が必要とされる。つまり、正孔をキャリアとするpチャネル型トランジスタを、nチャネル型トランジスタと同一基板上に形成することが必要になる。
【0009】
いわゆる酸化物半導体は、これまでに用いられてきたシリコンとは伝導機構が異なることから、同一材料を用いてnチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを作り分けることは困難である。このため、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを同一基板上に作り分ける場合には、これまでに想定し得なかった様々な問題が生じ得る。
【0010】
上述の問題点に鑑み、本明細書等(少なくとも明細書、特許請求の範囲、図面を含む)において開示する発明の一態様は、酸化物半導体を用いた好適な構造のnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを提供することを目的の一とする。または、酸化物半導体を用いたnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの好適な作製方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書等において開示する発明の一態様は、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタの構造を異ならせることを特徴とする。これにより、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタとを同一基板上に好適に作製することができるため、半導体装置の生産性が向上する。または、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタとでソース電極またはドレイン電極の材質を異ならせる。これにより、良好な特性のnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを得ることができる。
【0012】
例えば、本明細書等において開示する発明の一態様である半導体装置の構成は、基板上の第1のゲート電極および第2のゲート電極と、第1のゲート電極および第2のゲート電極を覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に設けられ、第1のゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体層と、ゲート絶縁層上に設けられ、第2のゲート電極と重畳する第2の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第1の導電層と第2の材料を含む第2の導電層の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極と、第2の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第3の導電層と第2の材料を含む第4の導電層の積層構造でなる第2のソース電極またはドレイン電極と、を有し、第1の酸化物半導体層には、第1のソース電極またはドレイン電極の第1の導電層が接触し、かつ、第1のソース電極またはドレイン電極の一部は、第1の酸化物半導体層の上方に存在し、第2の酸化物半導体層には、第2のソース電極またはドレイン電極の第3の導電層および第4の導電層が接触し、かつ、第2の酸化物半導体層の一部は、第2のソース電極またはドレイン電極の上方に存在することを特徴とする。
【0013】
また、本明細書等において開示する発明の別の一態様である半導体装置の構成は、基板上の第1のゲート電極および第2のゲート電極と、第1のゲート電極および第2のゲート電極を覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に設けられ、第1のゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体層と、ゲート絶縁層上に設けられ、第2のゲート電極と重畳する第2の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第1の導電層と第2の材料を含む第2の導電層の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極と、第2の酸化物半導体層と電気的に接続し、第2の材料を含む第3の導電層でなる第2のソース電極またはドレイン電極と、を有し、第1の酸化物半導体層には、第1のソース電極またはドレイン電極の第1の導電層が接触し、かつ、第1のソース電極またはドレイン電極の一部は、第1の酸化物半導体層の上方に存在し、第2の酸化物半導体層には、第2のソース電極またはドレイン電極の第3の導電層が接触し、かつ、第2の酸化物半導体層の一部は、第2のソース電極またはドレイン電極の上方に存在することを特徴とする。
【0014】
なお、上記において、第1の酸化物半導体層の一部は、pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能し、第2の酸化物半導体層の一部は、nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能することが望ましい。ここで、第1の酸化物半導体層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ニッケル、銅アルミ酸化物、酸化ストロンチウム銅などを含む材料を用いて形成すると好適である。
【0015】
また、上記において、第1の材料は第1の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料であり、第2の材料は第2の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料であることが望ましい。また、第1の材料は仕事関数が5.0eVより大きい材料であり、第2の材料は仕事関数が4.8eVより小さい材料であることが望ましい。
【0016】
また、上記の半導体装置はCMOS回路を構成していても良い。すなわち、第1のゲート電極と第2のゲート電極とが電気的に接続され、第1のソース電極またはドレイン電極と、第2のソース電極またはドレイン電極とが電気的に接続された構成としても良い。
【0017】
また、本明細書等において開示する発明の別の一態様である半導体装置の作製方法は、基板上に第1のゲート電極および第2のゲート電極を形成し、第1のゲート電極および第2のゲート電極を覆うようにゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上の第1のゲート電極と重畳する領域に第1の酸化物半導体層を形成し、第1の酸化物半導体層を覆うように、基板の全面に第1の導電層を形成し、第1の導電層を覆うように、基板の全面に第2の導電層を形成し、第1の導電層と第2の導電層とを選択的にエッチングして、第1の酸化物半導体層と電気的に接続する第1のソース電極またはドレイン電極を形成すると共に、その一部が第2のゲート電極と重畳する第2のソース電極またはドレイン電極を形成し、ゲート絶縁層上の第2のゲート電極と重畳する領域に、第2のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続する第2の酸化物半導体層を形成することを特徴とする。
【0018】
また、本明細書等において開示する発明の別の一態様である半導体装置の作製方法は、基板上に第1のゲート電極および第2のゲート電極を形成し、第1のゲート電極および第2のゲート電極を覆うようにゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上の第1のゲート電極と重畳する領域に第1の酸化物半導体層を形成し、第1の酸化物半導体層を覆うように、基板の全面に第1の導電層を形成し、第2のゲート電極と重畳する領域およびその周辺に存在する第1の導電層を選択的に除去し、第1の導電層を覆うように、基板上の全面に第2の導電層を形成し、第1の導電層と第2の導電層とを選択的にエッチングして、第1の導電層および第2の導電層の積層構造から第1の酸化物半導体層と電気的に接続する第1のソース電極またはドレイン電極を形成すると共に、第2の導電層からその一部が第2のゲート電極と重畳する第2のソース電極またはドレイン電極を形成し、ゲート絶縁層上の第2のゲート電極と重畳する領域に、第2のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続する第2の酸化物半導体層を形成することを特徴とする。
【0019】
なお、上記において、第1の酸化物半導体層として、pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能する酸化物半導体層を形成し、第2の酸化物半導体層として、nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能する酸化物半導体層を形成することが望ましい。ここで、第1の酸化物半導体層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ニッケル、銅アルミ酸化物、酸化ストロンチウム銅などを含む材料を用いて形成すると好適である。
【0020】
また、上記において、第1の導電層は第1の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を含み、第2の導電層は第2の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を含むことが望ましい。また、第1の導電層は仕事関数が5.0eVより大きい材料を含み、第2の導電層は仕事関数が4.8eVより小さい材料を含むことが望ましい。
【0021】
また、上記の半導体装置はCMOS回路を構成するように形成しても良い。すなわち、第1のゲート電極と第2のゲート電極とが電気的に接続されるように、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを形成し、第1のソース電極またはドレイン電極と、第2のソース電極またはドレイン電極とが電気的に接続されるように、第1のソース電極またはドレイン電極と第2のソース電極またはドレイン電極とを形成しても良い。
【0022】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、表示装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置に含まれる。
【発明の効果】
【0023】
開示する発明の一態様では、電極の材料および構造を工夫することにより、nチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの特性を十分に引き出した半導体装置を提供することができる。つまり、半導体装置の特性を向上させることが可能である。または、このような構成を採用することにより、マスクの使用枚数増加を抑制し、半導体装置の製造コストを低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0024】
このように、開示する発明の一態様では、酸化物半導体を用いた好適な構造のnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを提供し、または、酸化物半導体を用いたnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの好適な作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】半導体装置を説明する断面図および平面図である。
【図2】半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図3】半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図4】半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図5】半導体装置を説明する断面図および平面図である。
【図6】半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図7】半導体装置を説明する断面図および平面図である。
【図8】半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図9】半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図10】nチャネル型トランジスタのゲート電圧(Vg)−ドレイン電流(Id)曲線を示す図である。
【図11】pチャネル型トランジスタのゲート電圧(Vg)−ドレイン電流(Id)曲線を示す図である。
【図12】リングオシレータの発振の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の構成例について、図1を用いて説明し、半導体装置の作製方法の例について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0028】
<半導体装置の構成例>
図1には、本実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す。図1(A)は断面図であり、図1(B)は平面図である。図1(A)は、図1(B)のA−Bにおける断面を表すものである。なお、平面図においては、簡単のため、一部の構成を省略している。
【0029】
図1に示す半導体装置は、酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ154および第2のトランジスタ156に係るものであり、基板100(例えば、絶縁表面を有する基板)と、基板100上の第1のゲート電極108および第2のゲート電極110と、第1のゲート電極108および第2のゲート電極110を覆うゲート絶縁層112と、ゲート絶縁層112上に設けられ、第1のゲート電極108と重畳する第1の酸化物半導体層118と、ゲート絶縁層112上に設けられ、第2のゲート電極110と重畳する第2の酸化物半導体層150と、第1の酸化物半導体層118と電気的に接続し、また、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極138(および第1のソース電極またはドレイン電極140)と、第2の酸化物半導体層150と電気的に接続し、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造でなる第2のソース電極またはドレイン電極142(および第2のソース電極またはドレイン電極144)と、を有する(図1(A)、図1(B)参照)。
【0030】
なお、第1の酸化物半導体層118には、第1の導電層126と第2の導電層128のうち、第1の導電層126のみが接触しており、かつ、第1のソース電極またはドレイン電極138(第1のソース電極またはドレイン電極140)の一部は、第1の酸化物半導体層118の上方に存在している。また、第2の酸化物半導体層150には、第1の導電層126と第2の導電層128が接触し、かつ、第2の酸化物半導体層150の一部は、第2のソース電極またはドレイン電極142(第2のソース電極またはドレイン電極144)の上方に存在する。
【0031】
第1の酸化物半導体層118上には、第1の導電層126と第2の導電層128のエッチングの際のエッチングストッパーとして機能する保護層124が形成されている。また、第1のトランジスタ154および第2のトランジスタ156を覆うように、絶縁層152が形成されている。
【0032】
上記において、各トランジスタにおけるソース電極やドレイン電極は、キャリアの流れる方向によってその機能が入れ替わるため、ソース電極およびドレイン電極の称呼は便宜的なものに過ぎない。つまり、各電極の機能は、その称呼に限定して解釈されるものではない。また、各電極は、配線としての機能を有していても良い。
【0033】
ここで、第1のトランジスタはpチャネル型トランジスタであり、第2のトランジスタはnチャネル型トランジスタであることが望ましい。この場合、第1の酸化物半導体層の一部は、pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能し、第2の酸化物半導体層の一部は、nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能することになる。なお、第1の酸化物半導体層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ニッケル、銅アルミ酸化物、酸化ストロンチウム銅などを含む材料を用いて形成すると好適である。
【0034】
なお、トランジスタ154およびトランジスタ156においては、第1のソース電極またはドレイン電極138(第1のソース電極またはドレイン電極140)と第2のソース電極またはドレイン電極142(第2のソース電極またはドレイン電極144)を異なる材料による積層構造としている。そして、第1の酸化物半導体層118と第1のソース電極またはドレイン電極138(第1のソース電極またはドレイン電極140)との接続関係を、第2の酸化物半導体層150と第2のソース電極またはドレイン電極142(第2のソース電極またはドレイン電極144)との接続関係とは異なるものにしている。より具体的には、第2の酸化物半導体層150には、第1の導電層126と第2の導電層128が接触するが、第1の酸化物半導体層118には、第1の導電層126と第2の導電層128のうち、第1の導電層126のみが接触する構成となっている。
【0035】
これにより、電極に起因する特性劣化の問題がnチャネル型トランジスタと比較して深刻なpチャネル型トランジスタの特性を十分に発揮させることが可能になる。なお、当該効果を十分に発揮させるためには、第1の導電層126に用いられる第1の材料および第2の導電層128に用いられる第2の材料として、仕事関数が所定の条件を満たすものを用いることが望ましい。例えば、pチャネル型トランジスタである第1のトランジスタ154において、第1の酸化物半導体層118と接触する第1の導電層126に用いる材料(第1の材料)は、第1の酸化物半導体層118の価電子帯との関係で決定することができる。具体的には、第1の酸化物半導体層118の価電子帯との間に形成されるショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を用いることが望ましい。また、例えば、nチャネル型トランジスタである第2のトランジスタ156において、第2の酸化物半導体層150と主として接触する第2の導電層128に用いる材料(第2の材料)は、第2の酸化物半導体層150の伝導帯との関係で決定することができる。具体的には、第2の酸化物半導体層150の伝導帯との間に形成されるショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を用いることが望ましい。より具体的には、例えば、第1の導電層126に用いられる第1の材料を仕事関数が5.0eV(好ましくは5.2eV)より大きい材料とし、第2の導電層128に用いられる第2の材料を仕事関数が4.8eV(好ましくは4.5eV)より小さい材料とすると良い。
【0036】
このような材料を用いて第1の導電層126および第2の導電層128を形成することにより、pチャネル型トランジスタにおける正孔の注入性を十分に確保することができる。これにより、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタとを同一基板上に形成する場合(同一工程で形成する場合を含む)であっても、pチャネル型トランジスタの特性劣化を防止することができる。つまり、半導体装置の特性を向上させることが可能である。
【0037】
また、上述の如き構成を採用する場合には、トランジスタ毎に異なる電極を形成する必要がないため、マスクの使用枚数増加を抑制し、半導体装置の製造コストを低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0038】
なお、上記のトランジスタを用いてCMOS回路を構成することもできる。この場合、第1のゲート電極108と第2のゲート電極110とが電気的に接続され、第1のソース電極またはドレイン電極138(または、第1のソース電極またはドレイン電極140)と、第2のソース電極またはドレイン電極142(または、第2のソース電極またはドレイン電極144)とが電気的に接続された構成を一部に用いれば良い。
【0039】
<半導体装置の作製方法例>
次に、上述の半導体装置の作製方法の一例について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0040】
はじめに、基板100(例えば、絶縁表面を有する基板)上に導電層102を形成する(図2(A)参照)。
【0041】
基板100は、絶縁表面を有する基板であればよく、例えば、ガラス基板とすることができる。ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等のガラス材料が用いられる。他にも、基板100として、セラミック基板、石英基板やサファイア基板等の絶縁体でなる絶縁体基板、シリコン等の半導体材料でなる半導体基板の表面を絶縁材料で被覆したもの、金属やステンレス等の導電体でなる導電体基板の表面を絶縁材料で被覆したものを用いることができる。また、作製工程の熱処理に耐えられるのであれば、プラスチック基板などを用いることもできる。
【0042】
導電層102は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)等の導電性材料で形成することが望ましい。形成方法としては、スパッタリング法や真空蒸着法などがある。なお、導電層102にアルミニウム(または銅)を用いる場合、アルミニウム単体(または銅単体)では耐熱性が低く、腐蝕しやすい等の問題点があるため、耐熱性導電性材料と組み合わせて形成することが好ましい。
【0043】
耐熱性導電性材料としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、Nd(ネオジム)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を含む金属、上述した元素を成分とする合金、上述した元素を組み合わせた合金、または上述した元素を成分とする窒化物などを用いることができる。これらの耐熱性導電性材料とアルミニウム(または銅)を積層させて、導電層102を形成すればよい。
【0044】
図示しないが、基板100上には下地層を設けても良い。下地層は、基板100からの不純物の拡散を防止する機能を有する。つまり、下地層を設けることより、半導体装置の信頼性向上という課題を解決することができる。下地層は、窒化シリコン、酸化シリコンなどの各種絶縁材料を用いて、単層構造または積層構造で形成すればよい。具体的には、例えば、基板100側から窒化シリコンと酸化シリコンを順に積層した構成とするのが好適である。なお、窒化シリコンは、不純物に対するブロッキング効果が極めて高いという特徴を有している。
【0045】
次に、導電層102上に選択的にレジストマスク104およびレジストマスク106を形成し、これらを用いて導電層102を選択的にエッチングすることで、ゲート電極108およびゲート電極110を形成する(図2(B)参照)。
【0046】
レジストマスク104およびレジストマスク106は、レジスト材料の塗布、フォトマスクを用いた露光、現像等の工程を経ることにより形成される。レジスト材料の塗布には、スピンコート法などの方法を適用することができる。なお、レジストマスク104およびレジストマスク106は、液滴吐出法やスクリーン印刷法などを用いて選択的に形成しても良い。この場合、フォトマスクを用いる工程が不要になるため、生産性向上という課題を解決することが可能である。なお、レジストマスク104およびレジストマスク106は、導電層102のエッチングによりゲート電極108およびゲート電極110が形成された後には除去される。
【0047】
上述のエッチングには、ドライエッチングを用いても良いし、ウエットエッチングを用いても良い。また、後に形成されるゲート絶縁層等の被覆性を向上し、段切れを防止するために、ゲート電極108およびゲート電極110がテーパー形状となるようエッチングしても良い。この場合、例えば、テーパー角が20°以上90°未満となるような形状とすることが好ましい。ここで、「テーパー角」とは、テーパー形状を有する層の側面と底面とがなす角をいう。
【0048】
次に、ゲート電極108およびゲート電極110を覆うように、ゲート絶縁層112を形成する(図2(C)参照)。ゲート絶縁層112は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の材料を用いて形成することができる。また、これらの材料からなる膜を積層させて形成しても良い。これらの膜は、スパッタ法をはじめとする各種の成膜法を用いて厚さが5nm以上250nm以下となるように形成すると好ましい。例えば、ゲート絶縁層112として、スパッタ法を用いて、酸化シリコン膜を100nmの厚さで形成することができる。もちろん、CVD法などの他の方法を用いてゲート絶縁層112を形成しても良い。
【0049】
また、スパッタ法とCVD法(プラズマCVD法など)とを組み合わせて、積層構造のゲート絶縁層112を形成しても良い。例えば、ゲート絶縁層112の下層(ゲート電極108およびゲート電極110と接する部位)をプラズマCVD法により形成し、ゲート絶縁層112の上層をスパッタ法により形成することができる。プラズマCVD法は、段差被覆性の良い膜を形成することが容易であるため、ゲート電極108およびゲート電極110の直上の膜を形成する方法として適している。また、スパッタ法では、プラズマCVD法と比較して、膜中の水素濃度を低減することが容易であるため、スパッタ法による膜を半導体層と接する領域に設けることで、ゲート絶縁層112中の水素が半導体層中へ拡散することを防止できる。特に、酸化物半導体材料を用いて半導体層を形成する場合には、水素が特性に与える影響は極めて大きいため、このような構成を採用することは効果的である。
【0050】
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、酸化窒化シリコンとは、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化物とは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、窒化酸化シリコンとは、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率の合計は100原子%を超えない。
【0051】
次に、ゲート絶縁層112を覆うように酸化物半導体層114を形成する(図2(D)参照)。本実施の形態においては、酸化物半導体層114として、pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として用いることができる酸化物半導体層を形成する。具体的には、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ニッケル、銅アルミ酸化物、酸化ストロンチウム銅のいずれかを含むように酸化物半導体層114を形成する。作製方法の一例としては、上記材料を含有するターゲットを用いたスパッタ法などがある。上記のスパッタ法としては、スパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタ法や、直流電源を用いるDCスパッタ法、パルス的に直流バイアスを加えるパルスDCスパッタ法などを用いることができる。なお、pチャネル型トランジスタを実現できるのであれば、上記材料、方法を用いて酸化物半導体層114を形成することに限定する必要はない。また、酸化物半導体層114の膜厚は、5nm〜200nm程度とすればよい。
【0052】
本実施の形態においては、酸化物半導体層114を単層で形成する場合について示しているが、酸化物半導体層114は積層構造としても良い。例えば、後の第1のソース電極またはドレイン電極138(第1のソース電極またはドレイン電極140)と第1の酸化物半導体層118とが接触する領域のみに導電性を高めた酸化物半導体層を形成しても良い。導電性を高めた酸化物半導体層は、構成元素の比率を異ならせることで実現することができる。このような構成を採用することにより、ソース電極またはドレイン電極と酸化物半導体層との電気的な接続を良好なものにして、素子特性を向上させることができる。
【0053】
次に、酸化物半導体層114上に選択的にレジストマスク116を形成し、該レジストマスク116を用いて酸化物半導体層114を選択的にエッチングすることで、島状の第1の酸化物半導体層118を形成する(図3(A)参照)。ここで、レジストマスク116は、レジストマスク104およびレジストマスク106と同様の方法で形成することができる。また、レジストマスク116は、酸化物半導体層114のエッチングにより第1の酸化物半導体層118が形成された後には除去される。
【0054】
酸化物半導体層114のエッチングの方法としては、ウエットエッチングまたはドライエッチングを用いることができる。ウエットエッチングに用いるエッチャント(エッチング液)やドライエッチングに用いるエッチングガスは、酸化物半導体層114をエッチングできるものであれば特に限定されない。例えば、ウエットエッチングを用いる場合には、酢酸と硝酸と燐酸との混合液を用いることができる。また、ドライエッチングを行う場合には、例えば、塩素を含有するガスや、塩素を含有するガスに酸素が添加されたガスを用いると良い。
【0055】
なお、ドライエッチングには、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いたエッチング装置や、ECR(Electron Cyclotron Resonance)やICP(Inductively Coupled Plasma)などの高密度プラズマ源を用いたドライエッチング装置を用いることができる。また、ICPエッチング装置と比べて広い面積に渡って一様な放電が得られるECCP(Enhanced Capacitively Coupled Plasma)モードのエッチング装置を用いても良い。ECCPモードのエッチング装置であれば、基板として第10世代以降の基板を用いるような場合においても対応が容易である。
【0056】
次に、第1の酸化物半導体層118を覆うように、絶縁層120を形成する(図3(B)参照)。絶縁層120は、後のエッチングストップ層の元になる絶縁層であるから、後に形成される導電層と選択比が取れる材料を用いて形成することが望ましい。絶縁層120は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の材料を用いて形成することができる。また、絶縁層120は、スパッタ法やCVD法をはじめとする各種の成膜法を用いて形成することができる。なお、エッチングストップ層を設けない構成とする場合には、当該絶縁層120は形成しなくとも良い。
【0057】
次に、絶縁層120上に選択的にレジストマスク122を形成し、該レジストマスク122を用いて絶縁層120を選択的にエッチングすることで、保護層124を形成する(図3(C)参照)。ここで、レジストマスク122は、レジストマスク104等と同様の方法で形成することができる。また、レジストマスク122は、絶縁層120のエッチングにより保護層124が形成された後には除去される。
【0058】
次に、第1の酸化物半導体層118、保護層124およびゲート絶縁層112を覆うように、第1の導電層126および第2の導電層128を形成する(図3(D)参照)。ここで、第1の導電層および第2の導電層は、異なる材料を用いて形成することが望ましい。具体的には、pチャネル型トランジスタのソース電極またはドレイン電極として適当な材料を用いて第1の導電層126を形成し、nチャネル型トランジスタのソース電極またはドレイン電極として適当な材料を用いて第2の導電層128を形成する。これにより、形成されるトランジスタの特性を十分に確保することが可能になる。
【0059】
例えば、第1の導電層126に用いられる第1の材料を仕事関数が5.0eV(好ましくは5.2eV)より大きい材料とし、第2の導電層128に用いられる第2の材料を仕事関数が4.8eV(好ましくは4.5eV)より小さい材料とすると良い。これは、第1の材料として第1の酸化物半導体層の価電子帯との間に形成されるショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を用い、第2の材料として第2の酸化物半導体層の伝導帯との間に形成されるショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を用いる、と言い換えても良い。このような材料を選択することにより、第1の酸化物半導体層118と第1の導電層126との間のショットキー障壁によって第1の酸化物半導体層へのホールの注入性が低下することを抑制できる。また、同様に、後のnチャネル型トランジスタを構成する第2の酸化物半導体層150への電子の注入性が低下することを抑制できる。
【0060】
第1の導電層126に用いられる第1の材料としては、例えば、金、白金、ニッケル、銅、コバルト、インジウム錫酸化物などがある。また、第2の導電層128に用いられる第2の材料としては、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステンなどがある。これらの材料からなる第1の導電層126および第2の導電層128をスパッタリング法や真空蒸着法などの成膜方法を用いて形成すればよい。
【0061】
なお、p型酸化物半導体材料の価電子帯のエネルギーの詳細は不明であるが、酸化錫においては仕事関数が5.0eV(好ましくは5.2eV)より大きい電極材料を用いることで良好なトランジスタ特性が得られることを確認しており、これは他のp型酸化物半導体材料に関しても同様であるといえる。一方で、n型酸化物半導体材料の伝導帯のエネルギーは、例えば、In−Ga−Zn系酸化物において約4.3eVであり、仕事関数が4.8eV(好ましくは4.5eV)より小さい電極材料を用いる場合には、良好なトランジスタ特性が得られることを確認している。なお、n型酸化物半導体材料において、伝導帯のエネルギーは3〜5eV程度であることが知られている。
【0062】
次に、第2の導電層128上に選択的にレジストマスク130、レジストマスク132、レジストマスク134およびレジストマスク136を形成し、該レジストマスクを用いて第1の導電層126および第2の導電層128を選択的にエッチングすることで、第1の酸化物半導体層に接続する第1のソース電極またはドレイン電極138、第1のソース電極またはドレイン電極140、および、後にnチャネル型トランジスタの酸化物半導体層と接続する第2のソース電極またはドレイン電極142、第2のソース電極またはドレイン電極144を形成する(図4(A)参照)。上記レジストマスクは、レジストマスク104等と同様の方法で形成することができる。また、上記レジストマスクは、第1の導電層126および第2の導電層128がエッチングされた後には除去される。
【0063】
次に、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造でなる第2のソース電極またはドレイン電極142、および第2のソース電極またはドレイン電極144を覆うように、酸化物半導体層146を形成する(図4(B)参照)。本実施の形態においては、酸化物半導体層146として、nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として用いることができる酸化物半導体層を形成する。具体的には、例えば、InMO(ZnO)(m>0)で表記されるものを用いて酸化物半導体層146を形成すると良い。ここで、Mは、ガリウム(Ga)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)などから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。例えばMとしてGaが選択される場合には、Gaのみの場合の他に、GaとNiや、GaとFeなど、Ga以外の上記金属元素が選択される場合を含む。また、上記酸化物半導体において、Mとして含まれる金属元素の他に、不純物元素としてFe、Niその他の遷移金属元素、または該遷移金属の酸化物が含まれているものがある。もちろん、酸化物半導体材料は上記の材料に限定されず、酸化亜鉛や酸化インジウムをはじめとする各種酸化物半導体材料を用いることができる。作製方法は酸化物半導体層114の場合と同様であるから、詳細については酸化物半導体層114の作製方法を参酌すればよい。
【0064】
なお、本実施の形態においては、酸化物半導体層146を単層で形成する場合について示しているが、酸化物半導体層146は積層構造としても良い。例えば、第2のソース電極またはドレイン電極142(第2のソース電極またはドレイン電極144)と第2の酸化物半導体層150とが接触する領域のみに導電性を高めた酸化物半導体層を形成しても良い。導電性を高めた酸化物半導体層は、構成元素の比率を異ならせることで実現することができる。このような構成を採用することにより、ソース電極またはドレイン電極と酸化物半導体層との電気的な接続を良好なものにして、素子特性を向上させることができる。
【0065】
次に、酸化物半導体層146上に選択的にレジストマスク148を形成し、該レジストマスク148を用いて酸化物半導体層146を選択的にエッチングすることで、島状の第2の酸化物半導体層150を形成する(図4(C)参照)。ここで、レジストマスク148は、レジストマスク104等と同様の方法で形成することができる。また、レジストマスク148は、酸化物半導体層146のエッチングにより第2の酸化物半導体層150が形成された後には除去される。なお、当該エッチングの詳細は、酸化物半導体層114のエッチングの詳細を参酌すればよい。
【0066】
次に、第1のソース電極またはドレイン電極138、第1のソース電極またはドレイン電極140、第2のソース電極またはドレイン電極142、第2のソース電極またはドレイン電極144、第1の酸化物半導体層118、第2の酸化物半導体層150などを覆うように絶縁層152を形成する(図4(D)参照)。これにより、第1のトランジスタ154および第2のトランジスタ156を有する半導体装置が完成する。ここで、絶縁層152は、いわゆる層間絶縁層にあたる。絶縁層152は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の材料を用いて形成することができる。また、これらの材料からなる膜を積層させて形成しても良い。
【0067】
本実施の形態において開示する構成において、ソース電極またはドレイン電極は、いずれも第1の導電層126と第2の導電層128との積層構造で形成されている。このため、pチャネル型トランジスタとnチャネル型トランジスタでは異なる構造を有することになる。つまり、pチャネル型トランジスタにおいては、第1の酸化物半導体層118の上方(または側面)に接するように、第1のソース電極またはドレイン電極138、および第1のソース電極またはドレイン電極140が形成されるのに対して、nチャネル型トランジスタにおいては、第2の酸化物半導体層150の下方(または側面)に接するように、第2のソース電極またはドレイン電極142、および第2のソース電極またはドレイン電極144が形成される。
【0068】
ここで、第1の導電層126に第2の材料を用い、第2の導電層128に第1の材料を用いる場合には、pチャネル型トランジスタとnチャネル型トランジスタの構造を入れ替えることが可能である(この場合、第1の酸化物半導体層118に第2の材料を用いてnチャネル型トランジスタを形成し、第2の酸化物半導体層150に第1の材料を用いてpチャネル型トランジスタを形成することになる)。しかし、この場合には、第1の導電層126と第2の導電層128が共に接することになり、半導体装置の特性に与える影響の大きいpチャネル型トランジスタの特性が悪化するおそれもあるため、可能な限り上述の構成を採用することが望ましい。
【0069】
なお、第1の酸化物半導体層118や第2の酸化物半導体層150を形成した後には、100℃〜500℃、代表的には200℃〜400℃の熱処理を行うことが望ましい。当該熱処理によって、半導体素子の特性を向上させるとともに、特性ばらつきを低減させることができる。熱処理の雰囲気は、例えば、大気雰囲気や窒素雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気等とすることができる。また、熱処理時間は、0.1時間〜5時間程度とすればよい。熱処理のタイミングは、第1の酸化物半導体層118の元になる酸化物半導体層114の形成後や、第2の酸化物半導体層150の元になる酸化物半導体層146の形成後であれば特に限定されない。
【0070】
また、本実施の形態において用いたレジストマスクは、いずれも、多階調マスクを用いて形成することができる。ここで、多階調マスクとは、多段階の光量で露光を行うことが可能なマスクをいう。これを用いることで、一度の露光および現像工程によって、複数(代表的には2種類)の厚さを有するレジストマスクを形成することができる。つまり、多階調マスクを用いることで、工程数の増加を抑制することができる。
【0071】
以上、本実施の形態において示した電極の材料および構造を採用することにより、nチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの特性を十分に発揮させることができる。これにより、半導体装置の特性を向上させることが可能である。または、このような構成を採用することにより、マスクの使用枚数増加を抑制し、半導体装置の製造コストを低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0072】
このように、開示する発明の一態様は、酸化物半導体を用いた好適な構造のnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを提供し、または、酸化物半導体を用いたnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの好適な作製方法を提供することができるという点で極めて有用である。
【0073】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置の別の構成例について、図5を用いて説明し、半導体装置の作製方法の別の例について、図6を用いて説明する。なお、本実施の形態において説明する半導体装置の構成は、多くの点で、先の実施の形態において説明した半導体装置の構成と共通している。このため、以下では、主として異なる部分について説明することとする。
【0074】
<半導体装置の構成例>
図5には、本実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す。図5(A)は断面図であり、図5(B)は平面図である。図5(A)は、図5(B)のA−Bにおける断面を表すものである。なお、平面図においては、簡単のため、一部の構成を省略している。
【0075】
図5に示す半導体装置は、酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ228および第2のトランジスタ230に係るものであり、基板100(例えば、絶縁表面を有する基板)と、基板100上の第1のゲート電極108および第2のゲート電極110と、第1のゲート電極108および第2のゲート電極110を覆うゲート絶縁層112と、ゲート絶縁層112上に設けられ、第1のゲート電極108と重畳する第1の酸化物半導体層212と、ゲート絶縁層112上に設けられ、第2のゲート電極110と重畳する第2の酸化物半導体層222と、第1の酸化物半導体層212と電気的に接続し、また、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極214(および第1のソース電極またはドレイン電極216)と、第2の酸化物半導体層222と電気的に接続し、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造でなる第2のソース電極またはドレイン電極218(および第2のソース電極またはドレイン電極220)と、を有する(図5(A)、図5(B)参照)。
【0076】
ここで、上記半導体装置と、先の実施の形態において説明した半導体装置との相違の一は、エッチングストッパーとして機能する保護層124の有無にある。すなわち、本実施の形態において説明する半導体装置においては、保護層124が存在しない。また、これに伴い、第1の酸化物半導体層118の一部がエッチング除去されることにより、第1の酸化物半導体層212が形成されている。そして、第2の酸化物半導体層222、第1のソース電極またはドレイン電極214(第1のソース電極またはドレイン電極216)、および第2のソース電極またはドレイン電極218(第2のソース電極またはドレイン電極220)の形成工程の関係から、第1のソース電極またはドレイン電極214(第1のソース電極またはドレイン電極216)上には酸化物半導体層224および酸化物半導体層226が存在し、第2の酸化物半導体層の形状も、先の実施の形態とは大きく異なるものになっている。
【0077】
本実施の形態に示すように、エッチングストッパーとして機能する保護層124を形成しない場合には、半導体装置の製造コストを一層低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0078】
<半導体装置の作製方法例>
次に、上述の半導体装置の作製方法の一例について、図6を用いて説明する。なお、第1の酸化物半導体層118の形成までは、先の実施の形態と同様であるため、詳細については先の実施の形態を参酌すればよい(図2(A)〜図2(D)、および図3(A)参照)。
【0079】
第1の酸化物半導体層118を形成した後には、第1の酸化物半導体層118およびゲート絶縁層112を覆うように、第1の導電層126および第2の導電層128を形成する(図6(A)参照)。第1の導電層126および第2の導電層128の詳細については先の実施の形態を参酌することができる。
【0080】
次に、第2の導電層128上に選択的にレジストマスク200、レジストマスク202およびレジストマスク204を形成し、該レジストマスクを用いて第1の導電層126および第2の導電層128を選択的にエッチングする(図6(B)参照)。これにより、ゲート電極110と重畳する領域のゲート絶縁層112の一部が露出する。レジストマスクおよびエッチングの詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。
【0081】
次に、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造およびゲート絶縁層112を覆うように、酸化物半導体層146を形成する(図6(C)参照)。酸化物半導体層146の詳細についても、先の実施の形態を参酌できる。
【0082】
次に、酸化物半導体層146上に選択的にレジストマスク206、レジストマスク208およびレジストマスク210を形成し、該レジストマスクを用いて、第1の導電層126、第2の導電層128および酸化物半導体層146を選択的にエッチングすることで、第1の酸化物半導体層118の一部がエッチングされた第1の酸化物半導体層212、これに接続する第1のソース電極またはドレイン電極214および第1のソース電極またはドレイン電極216、第2のソース電極またはドレイン電極218および第2のソース電極またはドレイン電極220、これに接続する第2の酸化物半導体層222を形成する(図6(D)参照)。レジストマスクおよびエッチングの詳細については先の実施の形態を参酌できる。
【0083】
なお、第1のソース電極またはドレイン電極214および第1のソース電極またはドレイン電極216の上方には、酸化物半導体層146のエッチングによって酸化物半導体層224および酸化物半導体層226が残存することになるが、これによってトランジスタ特性に大きな変動が生じることはない。
【0084】
その後、第1のソース電極またはドレイン電極214、第1のソース電極またはドレイン電極216、第2のソース電極またはドレイン電極218、第2のソース電極またはドレイン電極220、第1の酸化物半導体層212、第2の酸化物半導体層222などを覆うように絶縁層152を形成する(図6(E)参照)。これにより、第1のトランジスタ228および第2のトランジスタ230を有する半導体装置が完成する。ここで、絶縁層152は、いわゆる層間絶縁層にあたる。詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。
【0085】
以上、本実施の形態において示した電極の材料および構造を採用することにより、nチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの特性を十分に発揮させることができる。これにより、半導体装置の特性を向上させることが可能である。または、このような構成を採用することにより、マスクの使用枚数増加を抑制し、半導体装置の製造コストを低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0086】
さらに、本実施の形態においてはエッチングストッパーとして機能する保護層を形成しないため、半導体装置の製造コストを一層低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0087】
なお、本実施の形態は、先の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0088】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の別の構成例について、図7を用いて説明し、半導体装置の作製方法の別の例について、図8および図9を用いて説明する。なお、本実施の形態において説明する半導体装置の構成は、多くの点で、先の実施の形態において説明した半導体装置の構成と共通している。このため、以下では、主として異なる部分について説明することとする。
【0089】
<半導体装置の構成例>
図7には、本実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す。図7(A)は断面図であり、図7(B)は平面図である。図7(A)は、図7(B)のA−Bにおける断面を表すものである。なお、平面図においては、簡単のため、一部の構成を省略している。
【0090】
図7に示す半導体装置は、酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ322および第2のトランジスタ324に係るものであり、基板100(例えば、絶縁表面を有する基板)と、基板100上の第1のゲート電極108および第2のゲート電極110と、第1のゲート電極108および第2のゲート電極110を覆うゲート絶縁層112と、ゲート絶縁層112上に設けられ、第1のゲート電極108と重畳する第1の酸化物半導体層118と、ゲート絶縁層112上に設けられ、第2のゲート電極110と重畳する第2の酸化物半導体層150と、第1の酸化物半導体層118と電気的に接続し、また、第1の導電層126と第2の導電層128の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極312(第1のソース電極またはドレイン電極314)と、第2の酸化物半導体層150と電気的に接続し、第2の導電層128でなる第2のソース電極またはドレイン電極316(第2のソース電極またはドレイン電極318)と、を有する(図7(A)、図7(B)参照)。
【0091】
ここで、上記半導体装置と、先の実施の形態において説明した半導体装置との相違の一は、第2のソース電極またはドレイン電極の構造にある。すなわち、本実施の形態において説明する半導体装置においては、第2のソース電極またはドレイン電極が第2の導電層128のみで形成されている。このため、第2の酸化物半導体層150に第1の導電層126が接することはない。
【0092】
本実施の形態に示すように、第2のソース電極またはドレイン電極を第2の導電層128のみで形成することにより、nチャネル型トランジスタの電極に適した材料(第2の材料)を用いた導電層のみを第2の酸化物半導体層150に接触させることができるようになる。これにより、第1の導電層126が第2の酸化物半導体層150に接触する場合と比較して、トランジスタ特性の向上が可能である。
【0093】
<半導体装置の作製方法例>
次に、上述の半導体装置の作製方法の一例について、図8および図9を用いて説明する。なお、保護層124の形成までは、先の実施の形態と同様であるため、詳細については先の実施の形態を参酌すればよい(図2(A)〜図2(D)、および図3(A)〜図3(C)参照)。
【0094】
保護層124を形成した後には、保護層124、第1の酸化物半導体層118およびゲート絶縁層112を覆うように、第1の導電層126を形成する(図8(A)参照)。第1の導電層126の詳細については、先の実施の形態を参酌することができる。
【0095】
次に、第1の導電層126上に選択的にレジストマスク300を形成し、該レジストマスク300を用いて第1の導電層126を選択的にエッチングして、第1の導電層302を形成する(図8(B)参照)。これにより、ゲート電極110と重畳する領域、およびその周辺の領域における第1の導電層126が除去される。レジストマスクおよびエッチングの詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。
【0096】
次に、第1の導電層302およびゲート絶縁層112を覆うように、第2の導電層128を形成する(図8(C)参照)。これにより、ゲート電極110と重畳する領域、およびその周辺の領域において、ゲート絶縁層112上には第2の導電層128が形成されることになる。第2の導電層128の詳細についても、先の実施の形態を参酌することができる。
【0097】
次に、第2の導電層128上に選択的にレジストマスク304、レジストマスク306、レジストマスク308およびレジストマスク310を形成し、該レジストマスクを用いて第1の導電層302および第2の導電層128を選択的にエッチングして、第1のソース電極またはドレイン電極312および第1のソース電極またはドレイン電極314、第2のソース電極またはドレイン電極316および第2のソース電極またはドレイン電極318を形成する(図8(D)参照)。レジストマスクおよびエッチングの詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0098】
次に、第2の導電層128でなる第2のソース電極またはドレイン電極316、および第2のソース電極またはドレイン電極318を覆うように、酸化物半導体層146を形成する(図9(A)参照)。酸化物半導体層146の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
【0099】
次に、酸化物半導体層146上に選択的にレジストマスク320を形成し、該レジストマスクを用いて、酸化物半導体層146を選択的にエッチングすることで、第2の酸化物半導体層150を形成する(図9(B)参照)。レジストマスクおよびエッチングの詳細については先の実施の形態を参酌できる。
【0100】
その後、第1のソース電極またはドレイン電極312、第1のソース電極またはドレイン電極314、第2のソース電極またはドレイン電極316、第2のソース電極またはドレイン電極318、第1の酸化物半導体層118、第2の酸化物半導体層150などを覆うように絶縁層152を形成する(図9(C)参照)。これにより、第1のトランジスタ322および第2のトランジスタ324を有する半導体装置が完成する。ここで、絶縁層152は、いわゆる層間絶縁層にあたる。詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。
【0101】
以上、本実施の形態において示した電極の材料および構造を採用することにより、nチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタの特性を十分に発揮させることができる。これにより、半導体装置の特性を向上させることが可能である。または、このような構成を採用することにより、マスクの使用枚数増加を抑制し、半導体装置の製造コストを低減することができる。または、工程数を削減し、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0102】
さらに、第2のソース電極またはドレイン電極を第2の導電層のみで形成することにより、nチャネル型トランジスタの電極に適した材料(第2の材料)を用いた導電層のみを第2の酸化物半導体層に接触させることができる。これにより、第1の導電層が第2の酸化物半導体層に接触する場合と比較して、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0103】
なお、本実施の形態は、先の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0104】
(実施の形態4)
先の実施の形態において説明したトランジスタを用いてCMOS回路を構成した場合の回路特性について、計算機シミュレーションを用いて確認を行った。本実施の形態では、その結果について説明する。
【0105】
計算機シミュレーションは、シルバコ社製デバイスシミュレータATLASを用いて行った。なお、本実施の形態においては、CMOS回路の特性を調査するために、CMOS回路を用いたリングオシレータに関して計算機シミュレーションを行った。なお、リングオシレータはCMOSインバータ回路を奇数段直列に接続させることにより構成される。つまり、リングオシレータを構成するnチャネル型トランジスタの数とpチャネル型トランジスタの数は等しい。また、リングオシレータの発振周波数は、デバイス性能の目安とすることができる。
【0106】
図10に酸化物半導体を用いたnチャネル型トランジスタのゲート電圧(Vg)−ドレイン電流(Id)曲線を示す。また、図11に酸化物半導体を用いたpチャネル型トランジスタのゲート電圧(Vg)−ドレイン電流(Id)曲線を示す。共に、横軸はゲート電圧(Vg)を表し、縦軸はドレイン電流(Id)を表す。また、実線はドレイン電圧が0.25(V)の場合、破線はドレイン電圧が10(V)の場合の曲線である。ここで、nチャネル型トランジスタのチャネル長(L)を10μm、チャネル幅(W)を10μmとし、pチャネル型トランジスタのチャネル長(L)を10μm、チャネル幅(W)を20μmとした。また、ゲート絶縁層の膜厚を100nm、誘電率を4.1、半導体層の膜厚を50nmとした。
【0107】
nチャネル型トランジスタの半導体層については、バンドギャップを3.05eV、電子親和力を4.3eV、仕事関数を4.3eV、電子移動度を15cm/V・s、ホール移動度を0.1 cm/V・sとし、pチャネル型トランジスタの半導体層については、バンドギャップを3.0eV、電子親和力を2.8eV、仕事関数を5.5eV、電子移動度を0.1cm/V・s、ホール移動度を1.0cm/V・sとして計算を行った。また、オフ電流を計算する際は、バンド間トンネルによるリーク電流を仮定した。なお、上記pチャネル型トランジスタにおいて、オンオフ比は約2桁であった。
【0108】
上述のnチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを用いたCMOSインバータ回路を3段直列に接続した構成のリングオシレータにつき、発振の様子を確認した。図12にその結果を示す。横軸は時間(s)を表し、縦軸は電圧(V)を表す。ここで、電源電圧は15(V)としている。図12から、一周期が約5nsであり、発振周波数は約200MHzであることが分かる。
【0109】
以上の通り、開示する発明の一態様である酸化物半導体トランジスタを用いて構成されたCMOS回路の動作が確認された。本実施の形態において用いたpチャネル型トランジスタのオンオフ比は約2桁であり、十分な特性とはいいがたいものであるが、CMOS回路としての動作に大きな問題はない。pチャネル型酸化物半導体材料の改良・発展によって、CMOS回路のさらなる特性向上が可能である。
【0110】
なお、このようなCMOS回路の実現には、開示する発明の一態様であるトランジスタの構成は極めて有効である。
【符号の説明】
【0111】
100 基板
102 導電層
104 レジストマスク
106 レジストマスク
108 ゲート電極
110 ゲート電極
112 ゲート絶縁層
114 酸化物半導体層
116 レジストマスク
118 酸化物半導体層
120 絶縁層
122 レジストマスク
124 保護層
126 導電層
128 導電層
130 レジストマスク
132 レジストマスク
134 レジストマスク
136 レジストマスク
138 第1のソース電極またはドレイン電極
140 第1のソース電極またはドレイン電極
142 第2のソース電極またはドレイン電極
144 第2のソース電極またはドレイン電極
146 酸化物半導体層
148 レジストマスク
150 酸化物半導体層
152 絶縁層
154 トランジスタ
156 トランジスタ
200 レジストマスク
202 レジストマスク
204 レジストマスク
206 レジストマスク
208 レジストマスク
210 レジストマスク
212 酸化物半導体層
214 第1のソース電極またはドレイン電極
216 第1のソース電極またはドレイン電極
218 第2のソース電極またはドレイン電極
220 第2のソース電極またはドレイン電極
222 酸化物半導体層
224 酸化物半導体層
226 酸化物半導体層
228 トランジスタ
230 トランジスタ
300 レジストマスク
302 導電層
304 レジストマスク
306 レジストマスク
308 レジストマスク
310 レジストマスク
312 第1のソース電極またはドレイン電極
314 第1のソース電極またはドレイン電極
316 第2のソース電極またはドレイン電極
318 第2のソース電極またはドレイン電極
320 レジストマスク
322 トランジスタ
324 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1のゲート電極および第2のゲート電極と、
前記第1のゲート電極および前記第2のゲート電極を覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に設けられ、前記第1のゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体層と、
前記ゲート絶縁層上に設けられ、前記第2のゲート電極と重畳する第2の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第1の導電層と第2の材料を含む第2の導電層の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極と、
前記第2の酸化物半導体層と電気的に接続し、前記第1の材料を含む第3の導電層と前記第2の材料を含む第4の導電層の積層構造でなる第2のソース電極またはドレイン電極と、を有し、
前記第1の酸化物半導体層には、前記第1のソース電極またはドレイン電極の前記第1の導電層が接触し、かつ、前記第1のソース電極またはドレイン電極の一部は、前記第1の酸化物半導体層の上方に存在し、
前記第2の酸化物半導体層には、前記第2のソース電極またはドレイン電極の前記第3の導電層および前記第4の導電層が接触し、かつ、前記第2の酸化物半導体層の一部は、前記第2のソース電極またはドレイン電極の上方に存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板上の第1のゲート電極および第2のゲート電極と、
前記第1のゲート電極および前記第2のゲート電極を覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に設けられ、前記第1のゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体層と、
前記ゲート絶縁層上に設けられ、前記第2のゲート電極と重畳する第2の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層と電気的に接続し、第1の材料を含む第1の導電層と第2の材料を含む第2の導電層の積層構造でなる第1のソース電極またはドレイン電極と、
前記第2の酸化物半導体層と電気的に接続し、前記第2の材料を含む第3の導電層でなる第2のソース電極またはドレイン電極と、を有し、
前記第1の酸化物半導体層には、前記第1のソース電極またはドレイン電極の前記第1の導電層が接触し、かつ、前記第1のソース電極またはドレイン電極の一部は、前記第1の酸化物半導体層の上方に存在し、
前記第2の酸化物半導体層には、前記第2のソース電極またはドレイン電極の前記第3の導電層が接触し、かつ、前記第2の酸化物半導体層の一部は、前記第2のソース電極またはドレイン電極の上方に存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の酸化物半導体層の一部は、pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能し、
前記第2の酸化物半導体層の一部は、nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1の材料は前記第1の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料であり、
前記第2の材料は前記第2の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第1の材料は仕事関数が5.0eVより大きい材料であり、
前記第2の材料は仕事関数が4.8eVより小さい材料であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極とが電気的に接続され、
前記第1のソース電極またはドレイン電極と、前記第2のソース電極またはドレイン電極とが電気的に接続されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
基板上に第1のゲート電極および第2のゲート電極を形成し、
前記第1のゲート電極および前記第2のゲート電極を覆うようにゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上の前記第1のゲート電極と重畳する領域に第1の酸化物半導体層を形成し、
前記第1の酸化物半導体層を覆うように、前記基板の全面に第1の導電層を形成し、
前記第1の導電層を覆うように、前記基板の全面に第2の導電層を形成し、
前記第1の導電層と前記第2の導電層とを選択的にエッチングして、前記第1の酸化物半導体層と電気的に接続する第1のソース電極またはドレイン電極を形成すると共に、その一部が前記第2のゲート電極と重畳する第2のソース電極またはドレイン電極を形成し、
前記ゲート絶縁層上の前記第2のゲート電極と重畳する領域に、前記第2のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続する第2の酸化物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
基板上に第1のゲート電極および第2のゲート電極を形成し、
前記第1のゲート電極および前記第2のゲート電極を覆うようにゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上の前記第1のゲート電極と重畳する領域に第1の酸化物半導体層を形成し、
前記第1の酸化物半導体層を覆うように、前記基板の全面に第1の導電層を形成し、
前記第2のゲート電極と重畳する領域およびその周辺に存在する前記第1の導電層を選択的に除去し、
前記第1の導電層を覆うように、前記基板上の全面に第2の導電層を形成し、
前記第1の導電層と前記第2の導電層とを選択的にエッチングして、前記第1の導電層および前記第2の導電層の積層構造から前記第1の酸化物半導体層と電気的に接続する第1のソース電極またはドレイン電極を形成すると共に、前記第2の導電層からその一部が前記第2のゲート電極と重畳する第2のソース電極またはドレイン電極を形成し、
前記ゲート絶縁層上の前記第2のゲート電極と重畳する領域に、前記第2のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続する第2の酸化物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記第1の酸化物半導体層として、pチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能する酸化物半導体層を形成し、
前記第2の酸化物半導体層として、nチャネル型トランジスタのチャネル形成領域として機能する酸化物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか一において、
前記第1の導電層は前記第1の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を含み、
前記第2の導電層は前記第2の酸化物半導体層との間のショットキー障壁が0.5eV以下となる材料を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10のいずれか一において、
前記第1の導電層は仕事関数が5.0eVより大きい材料を含み、
前記第2の導電層は仕事関数が4.8eVより小さい材料を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれか一において、
前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極とが電気的に接続されるように、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極とを形成し、
前記第1のソース電極またはドレイン電極と、前記第2のソース電極またはドレイン電極とが電気的に接続されるように、前記第1のソース電極またはドレイン電極と前記第2のソース電極またはドレイン電極とを形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−263195(P2010−263195A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86822(P2010−86822)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】