説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラム

【課題】低温領域において、フッ化水素に対する耐性の高い窒化膜を形成する。
【解決手段】基板に対して原料ガスを供給する工程と、基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化膜を形成する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法、基板処理方法及びその工程で好適に用いられる基板処理装置およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI,SRAM,DRAM等の半導体装置の製造工程の一工程として、基板上にシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する工程が行われることがある。シリコン窒化膜は、処理室内の基板に対して例えばシリコン含有ガスを供給する工程と、処理室内の基板に対してプラズマ励起させた窒素含有ガスを供給する工程と、を交互に繰り返すことにより形成することができる。シリコン窒化膜は、半導体装置の製造工程において、例えばフッ化水素(HF)含有液を用いてシリコン酸化膜(SiO膜)等をエッチングする際のエッチングストッパ層として使用されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、半導体装置を製造する際の要求から、シリコン窒化膜の成膜温度の低温化が求められている。しかしながら、シリコン窒化膜の成膜温度を低温化させた場合、膜質が低下して、フッ化水素含有液に対するエッチングレートが増大してしまうことがあった。
【0004】
本発明の目的は、低温領域において、フッ化水素に対する耐性の高い窒化膜を形成することが可能な半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する基板処理方法が提供される。
【0007】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒化ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して水素含有ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒素ガスおよび希ガスのうち少なくともいずれかを供給する第4ガス供給系と、
ガスをプラズマ励起または熱励起させる励起部と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成するように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、前記第4ガス供給系および前記励起部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温領域において、フッ化水素に対する耐性の高い窒化膜を形成することが可能な半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図2】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例に係る概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図4】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る成膜フローを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る成膜フローを示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る成膜フローを示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る成膜フローを示す図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る成膜フローを示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図15】(a)は本発明の実施例1及び比較例に係るシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを示す図であり、(b)は本発明の実施例1及び比較例に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートの測定結果を示す図である。
【図16】(a)は本発明の実施例1に係るシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを示す図であり、(b)は本発明の実施例1に係るシリコン窒化膜のエッチングレートの測定結果を示す図である。
【図17】(a)は本発明の実施例1に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートのウエハ面内レンジの測定結果を示す図であり、(b)は本発明の実施例1に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートのウエハ面内分布の測定結果を示す図である。
【図18】(a)は本発明の実施例2及び比較例に係るシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを示す図であり、(b)は本発明の実施例2に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートの測定結果を示す図である。
【図19】(a)は本発明の実施例2及び比較例に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートのウエハ面内レンジの測定結果を示す図であり、(b)は本発明の実施例2に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートのウエハ面内分布の測定結果を示す図である。
【図20】本発明の実施例2に係るシリコン窒化膜の面内膜厚均一性と改質工程で用いるガス種との関係を示す図である。
【図21】(a)は本発明の実施例3に係るシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを示す図であり、(b)は本発明の実施例3に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートのウエハ面内レンジの測定結果を示す図であり、(c)は本発明の実施例3に係るシリコン窒化膜の面内膜厚均一性の測定結果を示す図である。
【図22】(a)は本発明の実施例4に係るシリコン窒化膜のウエットエッチングレートと成膜温度との関係を示す図であり、(b)はその部分拡大図である。
【図23】シリコン窒化膜のウエットエッチングレートと成膜温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したように、シリコン窒化膜の成膜温度を低温化させた場合、膜質が低下して、フッ化水素含有液に対するエッチングレートが増大してしまうことがあった。図23は、シリコン窒化膜のウエットエッチングレートと成膜温度との関係を示す図である。図23の横軸はシリコン窒化膜形成時の成膜温度を、縦軸は形成したシリコン窒化膜をフッ化水素含有液でエッチングしたときのウエットエッチングレート(Å/min)を示している。図23に示すように、成膜温度を低下させるほど、シリコン窒化膜のウエットエッチングレートが大きく上昇してしまうことが分かる。
【0012】
発明者等は、低温領域における窒化膜の形成方法について鋭意研究を行った。その結果、処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する工程と、処理室内の基板に対してプラズマ励起させた窒素含有ガスを供給する工程と、を交互に繰り返すことで、基板上に窒化膜を形成するに際し、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前、および/または、窒素含有ガスを供給した後であって原料ガスを供給する前に、処理室内の基板に対して、水素、窒素およびアルゴンのうち少なくともいずれか1つの元素を含む改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を実施することで、低温領域において、フッ化水素に対する耐性の高い窒化膜を形成することが可能であるとの知見を得た。
【0013】
なお、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程は、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前においてのみ行うようにしてもよく、窒素含有ガスを供給した後であって原料ガスを供給する前においてのみ行うようにしてもよく、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前および窒素含有ガスを供給した後であって原料ガ
スを供給する前の両方において行うようにしてもよい。
【0014】
本発明は、発明者等が得たかかる知見に基づいてなされたものである。以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
<本発明の第1実施形態>
(1)基板処理装置の構成
図1は、本実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。また、図2は本実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線断面図で示している。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0016】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
【0017】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0018】
処理室201内には、第1ガス導入部としての第1ノズル233aと、第2ガス導入部としての第2ノズル233bと、第3ガス導入部としての第3ノズル233cとが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。第1ノズル233aには、第1ガス供給管232aが接続されている。第2ノズル233bには、第2ガス供給管232b、第4ガス供給管232d、第6ガス供給管232f、第8ガス供給管232hがそれぞれ接続されている。第3ノズル233cには、第3ガス供給管232c、第5ガス供給管232e、第7ガス供給管232g、第9ガス供給管232iがそれぞれ接続されている。このように、反応管203には3本のノズル233a,233b,233cと、9本のガス供給管232a,232b,232c,232d,232e,232f,232g,232h,232iが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは5種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0019】
なお、反応管203の下方に、反応管203を支持する金属製のマニホールドを設け、各ノズルを、この金属製のマニホールドの側壁を貫通するように設けるようにしてもよい。この場合、この金属製のマニホールドに、さらに後述する排気管231を設けるようにしてもよい。なお、この場合であっても、排気管231を金属製のマニホールドではなく、反応管203の下部に設けるようにしてもよい。このように、処理炉202の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けるようにしてもよい。
【0020】
第1ガス供給管232aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232jが接続されている。この第1不活性ガス供給管232jには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241j、及び開
閉弁であるバルブ243jが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル233aが接続されている。第1ノズル233aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル233aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第1ノズル233aはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル233aの側面にはガスを供給するガス供給孔248aが設けられている。ガス供給孔248aは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0021】
第2ガス供給管232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232kが接続されている。この第2不活性ガス供給管232kには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241k、及び開閉弁であるバルブ243kが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル233bが接続されている。第2ノズル233bは、ガス分散空間であるバッファ室237b内に設けられている。
【0022】
バッファ室237bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、また、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237bは、ウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。バッファ室237bのウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔238bが設けられている。ガス供給孔238bは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔238bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0023】
第2ノズル233bは、バッファ室237bのガス供給孔238bが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第2ノズル233bは、ウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第2ノズル233bはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル233bの側面にはガスを供給するガス供給孔248bが設けられている。ガス供給孔248bはバッファ室237bの中心を向くように開口している。このガス供給孔248bは、バッファ室237bのガス供給孔238bと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔248bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237b内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0024】
本実施形態においては、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔248bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔248bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237b内に導入し、バッファ室237b内においてガスの流速差の均一化を行うこととしている。すなわち、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237b内に噴出したガスはバッファ室237b内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237bのガス供給孔238bより処理室201内に噴出する。これにより、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237b内に噴出したガスは、バッファ室237bのガス供給孔238bのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0025】
第3ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232lが接続されている。この第3不活性ガス供給管232lには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241l、及び開閉弁であるバルブ243lが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル233cが接続されている。第3ノズル233cは、ガス分散空間であるバッファ室237c内に設けられている。
【0026】
バッファ室237cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、また、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237cは、ウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。バッファ室237cのウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔238cが設けられている。ガス供給孔238cは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔238cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0027】
第3ノズル233cは、バッファ室237cのガス供給孔238cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第3ノズル233cは、ウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第3ノズル233cはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル233cの側面にはガスを供給するガス供給孔248cが設けられている。ガス供給孔248cはバッファ室237cの中心を向くように開口している。このガス供給孔248cは、バッファ室237cのガス供給孔238cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔248cのそれぞれの開口面積は、バッファ室237c内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0028】
本実施形態においては、第3ノズル233cのガス供給孔248cのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔248cのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴
出させる。そしてこのガス供給孔248cのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237c内に導入し、バッファ室237c内においてガスの流速差の均一化を行うこととしている。すなわち、第3ノズル233cのガス供給孔248cのそれぞれよりバッファ室237c内に噴出したガスはバッファ室237c内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237cのガス供給孔238cより処理室201内に噴出する。これにより、第3ノズル233cのガス供給孔248cのそれぞれよりバッファ室237c内に噴出したガスは、バッファ室237cのガス供給孔238cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0029】
第4ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232mが接続されている。この第4不活性ガス供給管232mには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241m、及び開閉弁であるバルブ243mが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0030】
第5ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第5ガス供給管232eのバルブ243eよりも下流側には、第5不活性ガス供給管232nが接続されている。この第5不活性ガス供給管232nには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241n、及び開閉弁であるバルブ243nが設けられている。また、第5ガス供給管232eの先端部は、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側に接続されている。
【0031】
第6ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第6ガス供給管232fのバルブ243fよりも下流側には、第6不活性ガス供給管232oが接続されている。この第6不活性ガス供給管232oには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241o、及び開閉弁であるバルブ243oが設けられている。また、第6ガス供給管232fの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0032】
第7ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第7ガス供給管232gのバルブ243gよりも下流側には、第7不活性ガス供給管232pが接続されている。この第7不活性ガス供給管232pには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241p、及び開閉弁であるバルブ243pが設けられている。また、第7ガス供給管232gの先端部は、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側に接続されている。
【0033】
第8ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第8ガス供給管232hの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0034】
第9ガス供給管232iには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241i、及び開閉弁であるバルブ243iが設けられている。また、第9ガス供給管232iの先端部は、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側に接続されている。
【0035】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円弧状の縦長の空間内に配置したノズル233a,233b,233cおよびバッファ室237b,237cを経由してガスを搬送し、ノズル233a,233b,233cおよびバッファ室237b,237cにそれぞれ開口されたガス供給孔248a,248b,248c,238b,238cからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0036】
なお、2つのバッファ室237b,237cは、ウエハ200の中心(すなわち反応管203の中心)を挟んで対向するように配置されている。具体的には、2つのバッファ室237b,237cは、図2に示すように平面視において、ウエハ200の中心と、反応管203側壁に設けられた後述する排気口231aの中心とを結ぶ直線を対象軸として、線対称となるように配置されている。そして、バッファ室237bのガス供給孔238b、バッファ室237cのガス供給孔238c、排気口231aの各中心を結ぶ直線が二等辺三角形を構成するように配置されている。これにより、2つのバッファ室237b,237cからウエハ200に対して流れるガス流が均一になる。すなわち、2つのバッファ室237b,237cからウエハ200に対して流れるガス流が、ウエハ200の中心と排気口231aの中心とを結ぶ直線を対象軸として線対称となる。
【0037】
第1ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガス、すなわち、所定元素としてのシリコン(Si)を含む原料ガス(シリコン含有ガス)として、例えばクロロシラン原料の一種であるジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第1不活性ガス供給管232jから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241j、バルブ243jを介して第1ガス供給管232a内に供給されるようにしてもよい。
【0038】
第2ガス供給管232bからは、窒素を含むガス(窒素含有ガス)、すなわち、窒化ガスとして、例えばアンモニア(NH)ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル233b、バッファ室237bを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第2不活性ガス供給管232kから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241k、バルブ243kを介して第2ガス供給管232b内に供給されるようにしてもよい。
【0039】
第3ガス供給管232cからは、窒素を含むガス(窒素含有ガス)、すなわち、窒化ガスとして、例えばアンモニア(NH)ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル233c、バッファ室237cを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第3不活性ガス供給管232lから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241l、バルブ243lを介して第3ガス供給管232c内に供給されるようにしてもよい。
【0040】
第4ガス供給管232dからは、改質ガスである水素を含むガス(水素含有ガス)、すなわち、還元ガスとして、例えば水素(H)ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237bを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第4不活性ガス供給管232m
から、不活性ガスが、マスフローコントローラ241m、バルブ243mを介して第4ガス供給管232d内に供給されるようにしてもよい。
【0041】
第5ガス供給管232eからは、改質ガスである水素を含むガス(水素含有ガス)、すなわち、還元ガスとして、例えば水素(H)ガスが、マスフローコントローラ241e、バルブ243e、第3ガス供給管232c、第3ノズル233c、バッファ室237cを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第5不活性ガス供給管232nから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241n、バルブ243nを介して第5ガス供給管232e内に供給されるようにしてもよい。
【0042】
第6ガス供給管232fからは、改質ガスである希ガスとして、例えばアルゴン(Ar)ガスが、マスフローコントローラ241f、バルブ243f、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237bを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第6不活性ガス供給管232oから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241o、バルブ243oを介して第6ガス供給管232f内に供給されるようにしてもよい。
【0043】
第7ガス供給管232gからは、改質ガスである希ガスとして、例えばアルゴン(Ar)ガスが、マスフローコントローラ241g、バルブ243g、第3ガス供給管232c、第3ノズル233c、バッファ室237cを介して処理室201内に供給される。このとき同時に、第7不活性ガス供給管232pから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241p、バルブ243pを介して第7ガス供給管232g内に供給されるようにしてもよい。
【0044】
第8ガス供給管232hからは、改質ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、マスフローコントローラ241h、バルブ243h、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237bを介して処理室201内に供給される。
【0045】
第9ガス供給管232iからは、改質ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、マスフローコントローラ241i、バルブ243i、第3ガス供給管232c、第3ノズル233c、バッファ室237cを介して処理室201内に供給される。
【0046】
第1ガス供給管232aから上述のようにガスを流す場合、主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243aにより、処理室201内のウエハ200に対して原料ガス(DCSガス)を供給する第1ガス供給系(原料ガス供給系)、すなわち、シリコン含有ガス供給系(DCSガス供給系)が構成される。なお、第1ノズル233aを第1ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第1不活性ガス供給管232j、マスフローコントローラ241j、バルブ243jにより、第1不活性ガス供給系が構成される。第1不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0047】
第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232cから上述のようにガスを流す場合、主に、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241b,241c、バルブ243b,243cにより、処理室201内のウエハ200に対して窒化ガス(NHガス)を供給する第2ガス供給系(窒化ガス供給系)、すなわち、窒素含有ガス供給系(NHガス供給系)が構成される。なお、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを第2ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第2不活性ガス供給管232k、第3不活性ガス供給管232l、マスフローコントローラ241k,241l、バルブ243k,243lにより第2不活性ガス供給系が構成される。第2不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0048】
第4ガス供給管232d、第5ガス供給管232eから上述のようにガスを流す場合、主に、第4ガス供給管232d、第5ガス供給管232e、マスフローコントローラ241d,241e、バルブ243d,243eにより、処理室201内のウエハ200に対して水素含有ガス(Hガス)を供給する第3ガス供給系(還元ガス供給系)、すなわち、水素含有ガス供給系(Hガス供給系)が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第4ガス供給管232dとの接続部よりも下流側、第3ガス供給管232cの第5ガス供給管232eとの接続部よりも下流側、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを第3ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第4不活性ガス供給管232m、第5不活性ガス供給管232n、マスフローコントローラ241m,241n、バルブ243m,243nにより第3不活性ガス供給系が構成される。第3不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0049】
第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232gから上述のようにガスを供給する場合、主に、第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232g、マスフローコントローラ241f,241g、バルブ243f,243gにより、処理室201内のウエハ200に対して希ガス(Arガス)を供給する希ガス供給系(Arガス供給系)が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第6ガス供給管232fとの接続部よりも下流側、第3ガス供給管232cの第7ガス供給管232gとの接続部よりも下流側、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを希ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第6不活性ガス供給管232o、第7不活性ガス供給管232p、マスフローコントローラ241o,241p、バルブ243o,243pにより第4不活性ガス供給系が構成される。第4不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0050】
第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232iから上述のようにガスを流す場合、主に、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i、マスフローコントローラ241h,241i、バルブ243h,243iにより、処理室201内のウエハ200に対して窒素ガス(Nガス)を供給する窒素ガス供給系(Nガス供給系)が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第8ガス供給管232hとの接続部よりも下流側、第3ガス供給管232cの第9ガス供給管232iとの接続部よりも下流側、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを窒素ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0051】
そして主に、上述の希ガス供給系および窒素ガス供給系により、処理室201内のウエハ200に対して窒素ガス(Nガス)および希ガス(Arガス)のうち少なくともいずれかを供給する第4ガス供給系が構成される。第4ガス供給系はパージガス供給系として機能させることもできる。
【0052】
なお、本実施形態において、還元ガス(Hガス)、窒素ガス(Nガス)、希ガス(Arガス)はそれぞれ改質ガスとして作用することから、第3ガス供給系(還元ガス供給系)、第4ガス供給系(窒素ガス供給系および希ガス供給系)をそれぞれ改質ガス供給系と称することもできる。また、窒化ガス(NH)は反応ガスとして作用することから、第2ガス供給系(窒化ガス供給系)を反応ガス供給系と称することもできる。
【0053】
図2に示すように、バッファ室237b内には、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269b及び第2の電極である第2の棒状電極270bが、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿ってそれぞれ配設されている。第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270bのそれぞれは、第2ノズル233bと平行に設けられている。第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270bのそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275bにより覆わ
れることで保護されている。この第1の棒状電極269b又は第2の棒状電極270bのいずれか一方は、整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。整合器272を介して高周波電源273から第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270b間に高周波電力を印加することで、第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270b間のプラズマ生成領域224bにプラズマが生成される。
【0054】
同様に、バッファ室237c内には、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269c及び第2の電極である第2の棒状電極270cが、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿ってそれぞれ配設されている。第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270cのそれぞれは、第3ノズル233cと平行に設けられている。第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270cのそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275cにより覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269c又は第2の棒状電極270cのいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。整合器272を介して高周波電源273から第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270c間に高周波電力を印加することで、第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270c間のプラズマ生成領域224cにプラズマが生成される。
【0055】
主に、第1の棒状電極269b、第2の棒状電極270b、電極保護管275bにより、プラズマ発生器(プラズマ発生部)としての第1プラズマ源が構成される。なお、整合器272、高周波電源273を第1プラズマ源に含めて考えてもよい。また、主に、第1の棒状電極269c、第2の棒状電極270c、電極保護管275cにより、プラズマ発生器(プラズマ発生部)としての第2プラズマ源が構成される。なお、整合器272、高周波電源273を第2プラズマ源に含めて考えてもよい。第1プラズマ源及び第2プラズマ源は、それぞれ、後述するようにガスをプラズマで活性化(励起)させる活性化機構(励起部)として機能する。このように、本実施形態の基板処理装置には、複数、ここでは2つの励起部が設けられている。そして、これら複数の励起部はバッファ室237b,237cと同様に分散配置されている。
【0056】
電極保護管275b,275cは、第1の棒状電極269b,269c及び第2の棒状電極270b,270cのそれぞれを、バッファ室237b,237c内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237b,237c内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275b,275cの内部の酸素濃度が外気(大気)の酸素濃度と同程度であると、電極保護管275b,275c内にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269b,269c及び第2の棒状電極270b,270cは、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275b,275cの内部を窒素ガスなどの不活性ガスで充填しておくか、電極保護管275b,275cの内部を不活性ガスパージ機構を用いて窒素ガスなどの不活性ガスでパージすることで、電極保護管275b,275cの内部の酸素濃度を低減させ、第1の棒状電極269b,269c又は第2の棒状電極270b,270cの酸化を防止することができるように構成されている。
【0057】
反応管203には、上述の排気口231aが設けられている。排気口231aには、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整
することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気系は、真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0058】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板保持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成される。
【0059】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるように構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0060】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、第1ノズル233aと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0061】
図4に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random
Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0062】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合
わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0063】
I/Oポート121dは、上述のマスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241h,241i,241j,241k,241l,241m,241n,241o,241p、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243h,243i,243j,243k,243l,243m,243n,243o,243p、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。
【0064】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241h,241i,241j,241k,241l,241m,241n,241o,241pによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243h,243i,243j,243k,243l,243m,243n,243o,243pの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、高周波電源273の電力供給、整合器272によるインピーダンス調整動作等を制御するように構成されている。
【0065】
なお、コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0066】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜としての窒化膜を成膜する方法の例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0067】
本実施形態では、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガス(窒素含有ガス)を供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化膜を形成する。以下、本実施形態における成膜シーケンスについて具体的に説明する。
【0068】
図5に本実施形態における成膜フロー図を、図10に本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図を示す。本実施形態の成膜シーケンスでは、原料ガスとしてDCSガスを、窒素含有ガスとしてNHガスを用い、処理室201内に収容されたウエハ200に対してDCSガスを供給する工程(DCSガス供給工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程(NHガス供給工程)と、を交互に繰り返すことで、ウエハ200上に、絶縁膜としてシリコン窒化膜(Si膜、以下、単にSiN膜ともいう)を形成する。このときパージガスとしてNガスを用い、DCSガスを供給した後に処理室201内をNガスでパージする工程(第1のパージ工程)を行い、NHガスを供給した後に処理室201内をNガスでパージする工程(第2のパージ工程)を行う。
【0069】
そして、このとき、改質ガスとしてHガスを用い、DCSガスを供給した後であってNHガスを供給する前、およびNHガスを供給した後であってDCSガスを供給する前の両方において、処理室201内のウエハ200に対して、Hガスをプラズマ励起させて供給する工程(第1の改質工程、第2の改質工程)をそれぞれ実施する。
【0070】
すなわち、本実施形態の成膜シーケンスでは、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する工程(DCSガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第1のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたHガスを供給する工程(第1の改質工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程(NHガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第2のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたHガスを供給する工程(第2の改質工程)と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にシリコン窒化膜を形成する。以下、本実施形態の成膜シーケンスについてより具体的に説明する。
【0071】
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0072】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面
の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0073】
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0074】
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0075】
(圧力調整及び温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。なお、真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。なお、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。続いて、回転機構267によりボート217及びウエハ200の回転を開始する(ウエハ回転)。なお、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。その後、後述する6つのステップを順次実行する。
【0076】
[ステップ1a]
第1ガス供給管232aのバルブ243a、第1不活性ガス供給管232jのバルブ243jを開き、第1ガス供給管232aにDCSガス、第1不活性ガス供給管232jにNガスを流す。DCSガスは、第1ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。Nガスは、第1不活性ガス供給管232jから流れ、マスフローコントローラ241jにより流量調整される。流量調整されたDCSガスは、流量調整されたNガスと第1ガス供給管232a内で混合されて、第1ノズル233aのガス供給孔248aから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給されることとなる(DCSガス供給工程)。
【0077】
このとき、バッファ室237b,237c内や、第2ノズル233b、第3ノズル233c内へのDCSガスの侵入を防止するため、バルブ243k,243l,243m,243n,243o,243p,243h,243iを開き、第2不活性ガス供給管232k、第3不活性ガス供給管232l、第4不活性ガス供給管232m、第5不活性ガス供給管232n、第6不活性ガス供給管232o、第7不活性ガス供給管232p、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i内にNガスを流す。Nガスは、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、第4ガス供給管232d、第5ガス供給管232e、第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232g、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0078】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するDCSガスの供給流量は、例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241j,241k,241l,241m,241n,241o,241p,241h,241iで制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。DCSガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、上述の圧力帯において処理室201内で化学的蒸着反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300〜550℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。
【0079】
なお、ウエハ200の温度が300℃未満となると、ウエハ200上においてDCSが分解、吸着しにくくなり、成膜速度が低下することがある。また、ウエハ200の温度が300℃未満となると、ウエハ200上においてDCSが分解、吸着したとしても、ウエハ200面内の部位やウエハ200のポジションにより、分解量、吸着量に差が生じ、ウエハ200面内やウエハ200間において、DCSが均一に分解、吸着しなくなる。ウエハ200の温度を300℃以上とすることで、これらを解消することができる。
【0080】
また、ウエハ200の温度が600℃を超えると気相反応が支配的になり、特に650℃を超えると膜厚均一性が悪化しやすくなり、その制御が困難となってしまう。ウエハ200の温度を650℃以下とすることで、膜厚均一性の悪化を抑制でき、その制御が可能となり、600℃以下とすることで気相反応が支配的になる状態を避けることができる。特に550℃以下とすることで、表面反応が支配的になり、膜厚均一性を確保しやすくなり、その制御が容易となる。
【0081】
以上のことから、ウエハ200の温度は300℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下、より好ましくは300℃以上550℃以下とするのがよい。
【0082】
上述の条件、すなわち化学的蒸着反応が生じる条件下でDCSガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのシリコン含有層が形成される。シリコン含有層はDCSガスの吸着層であってもよいし、シリコン層(Si層)であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。ただし、シリコン含有層は、シリコン(Si)及び塩素(Cl)を含む層であることが好ましい。
【0083】
ここでシリコン層とは、シリコン(Si)により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む総称である。なお、Siにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。なお、シリコン層を構成するSiは、ClやHとの結合が完全に切れていないものも含む。
【0084】
また、DCSガスの吸着層は、DCSガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。すなわち、DCSガスの吸着層は、DCS分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの化学吸着層を含む。なお、DCSガスの吸着層を構成するDCS(SiHCl)分子は、SiとClとの結合やSiとHとの結合が一部切れたもの(SiHCl分子)も含む。すなわち、DCSの吸着層は、SiHCl分子および/またはSiHCl分子の連続的な化学吸着層や不連続な化学吸着層を含む。なお、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。また、1
分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。
【0085】
DCSガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、DCSの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでシリコン層が形成される。DCSガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、DCSの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にDCSガスが吸着することでDCSガスの吸着層が形成される。なお、ウエハ200上にDCSガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0086】
ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3aでの塩素脱離作用がシリコン含有層の全体に届きにくくなり、また、後述するステップ4aでの窒化の作用や塩素脱離作用がシリコン含有層の全体に届きにくくなり、さらには、後述するステップ6aでの塩素脱離作用がシリコン窒化層の全体に届きにくくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお、シリコン含有層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、ステップ3a,4a,6aでの窒化の作用や塩素脱離作用を相対的に高めることができ、ステップ3a,4a,6aでの窒化反応や塩素脱離反応に要する時間を短縮することができる。ステップ1aのシリコン含有層形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、シリコン含有層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることが可能となる。
【0087】
シリコンを含む原料、すなわちシラン系原料としては、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)の他、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCD)、テトラクロロシラン、すなわちシリコンテトラクロライド(SiCl、略称:STC)、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)、等のクロロシラン系や、トリシラン(Si、略称:TS)、ジシラン(Si、略称:DS)、モノシラン(SiH、略称:MS)等の無機原料や、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C、略称:2DEAS)、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)などの有機原料を用いることができる。ただし、塩素(Cl)を含むクロロシラン系原料を用いる場合は、組成式中におけるCl数の少ない原料を用いるのが好ましく、例えばDCSやMCSを用いるのが好ましい。不活性ガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0088】
[ステップ2a]
ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する。また、バルブ243j,243k,243l,243m,243n,243o,243p,243h,243iは開いたままとして、不活性ガスとしてのNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(第1のパージ
工程)。
【0089】
なお、このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ3aにおいて悪影響が生じることはない。このとき処理室201内に供給するNガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ3aにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、Nガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0090】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がDCSガスの供給時と同じく300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300〜550℃の範囲内の一定の温度となるように設定する。各不活性ガス供給系から供給するパージガスとしてのNガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。パージガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0091】
[ステップ3a]
処理室201内の残留ガスを除去した後、2つのプラズマ発生部(励起部)でHガスを同時にプラズマで励起させ、プラズマ励起させたHガスを2つのプラズマ発生部(励起部)から処理室201内に同時に供給して、シリコン含有層の改質処理を行う(第1の改質工程)。
【0092】
すなわち、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232d内にHガスを流す。第4ガス供給管232d内を流れたHガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたHガスは、第2ガス供給管232bを経由して、第2ノズル233bのガス供給孔248bからバッファ室237b内に供給される。このとき、第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270b間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237b内に供給されたHガスはプラズマ励起され、励起種、すなわち活性種(H)としてガス供給孔238bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたHガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243mを開き、第4不活性ガス供給管232m内にNガスを流す。NガスはHガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0093】
また同時に、第5ガス供給管232eのバルブ243eを開き、第5ガス供給管232e内にHガスを流す。第5ガス供給管232e内を流れたHガスは、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。流量調整されたHガスは、第3ガス供給管232cを経由して、第3ノズル233cのガス供給孔248cからバッファ室237c内に供給される。このとき、第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270c間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237c内に供給されたHガスはプラズマ励起され、励起種(H)としてガス供給孔238cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたHガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243nを開き、第5不活性ガス供給管232n内にNガスを流す。NガスはHガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0094】
このとき、第1ノズル233a内や、第2ガス供給管232bの上流側、第3ガス供給管232cの上流側、第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232g、第8ガス供給
管232h、第9ガス供給管232i内へのHガスの侵入を防止するため、バルブ243j,243k,243l,243o,243p,243h,243iを開き、第1不活性ガス供給管232j、第2不活性ガス供給管232k、第3不活性ガス供給管232l、第6不活性ガス供給管232o、第7不活性ガス供給管232p、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i内にNガスを流す。Nガスは、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232g、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i、第1ノズル233a、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0095】
ガスをプラズマ励起することにより励起種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241d,241eで制御するHガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241m,241n,241j,241k,241l,241o,241p,241h,241iで制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。Hガスをプラズマ励起することにより得られた励起種をウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、スループットを考慮すると、ステップ1aのDCSガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1a〜ステップ3aで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するように設定することが好ましい。この場合、ステップ1a〜ステップ3aでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300〜550℃の範囲内の一定の温度となるように、ヒータ207の温度を設定するのが好ましい。さらには、ステップ1a〜ステップ6a(後述)にかけて処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するように、ヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。高周波電源273から第1の棒状電極269b,269c及び第2の棒状電極270b,270c間に印加する高周波電力は、それぞれ例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。
【0096】
上述の条件にてHガスを処理室201内に供給することで、プラズマ励起されることにより励起種となったHガスは、ステップ1aでウエハ200上に形成されたシリコン含有層の少なくとも一部と反応する。これにより、シリコン含有層に含まれる水素(H)や塩素(Cl)等の不純物を効率的に脱離させることができる。そして、不純物濃度が極めて低いシリコン含有層を形成することができる。また、塩素を効率的に脱離させることで、後述するステップ4aで行う窒化処理の効率を向上させることができるようになる。すなわち、窒化を阻害させる要因となる塩素をシリコン含有層から効率的に脱離させることで、後述するステップ4aで行う窒化処理の効率を向上させることができるようになる。このようにしてシリコン含有層の改質処理が行われる。なお、シリコン含有層から脱離した水素や塩素等の不純物は、排気管231から処理室201外へと排気される。
【0097】
ステップ3aでは、複数のプラズマ発生部を用いることで、各プラズマ発生部(励起部)に印加する高周波電力をそれぞれ小さくして各プラズマ発生部(励起部)におけるプラズマ出力を低出力としつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができる。これにより、ウエハ200やシリコン含有層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことが可能となる。
【0098】
そしてこれにより、ウエハ200やシリコン含有層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができ、上述の不純物除去の効率を高め、シリコン含有層の不純物濃度を低減させることができる。その結果として処理時間を短
縮させることが可能となる。また、不純物濃度のウエハ面内均一性を向上させることができる。すなわち、ウエハ200面内全域に対して励起種をより均一に供給することが可能となり、例えばウエハ200の外周付近とウエハ200の中心側との間で不純物濃度に顕著な違いが起こらないようにできる。
【0099】
[ステップ4a]
シリコン含有層の改質処理を行った後、2つのプラズマ発生部(励起部)でNHガスを同時にプラズマで励起させ、プラズマ励起させたNHガスを2つのプラズマ発生部(励起部)から処理室201内に同時に供給して、改質処理後のシリコン含有層の窒化処理を行う(NHガス供給工程)。
【0100】
すなわち、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232b内にNHガスを流す。第2ガス供給管232b内を流れたNHガスは、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたNHガスは第2ノズル233bのガス供給孔248bからバッファ室237b内に供給される。このとき、第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270b間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237b内に供給されたNHガスはプラズマ励起され、励起種(NH)としてガス供給孔238bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたNHガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243kを開き、第2不活性ガス供給管232k内にNガスを流す。NガスはNHガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0101】
また同時に、第3ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第3ガス供給管232c内にNHガスを流す。第3ガス供給管232c内を流れたNHガスは、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたNHガスは第3ノズル233cのガス供給孔248cからバッファ室237c内に供給される。このとき、第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270c間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237c内に供給されたNHガスはプラズマ励起され、励起種(NH)としてガス供給孔238cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたNHガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243lを開き、第3不活性ガス供給管232l内にNガスを流す。NガスはNHガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0102】
このとき、第1ノズル233a内や、第4ガス供給管232d、第5ガス供給管232e、第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232g、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i内へのNHガスの侵入を防止するため、バルブ243j,243m,243n,243o,243p,243h,243iを開き、第1不活性ガス供給管232j、第4不活性ガス供給管232m、第5不活性ガス供給管232n、第6不活性ガス供給管232o、第7不活性ガス供給管232p、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i内にNガスを流す。Nガスは、第1ガス供給管232a、第4ガス供給管232d、第5ガス供給管232e、第6ガス供給管232f、第7ガス供給管232g、第8ガス供給管232h、第9ガス供給管232i、第1ノズル233a、第2ノズル233b、第3ノズル233c、バッファ室237b,237cを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0103】
NHガスをプラズマ励起することにより励起種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241b,241cで制御するNHガスの供給流量
は、それぞれ例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241k,241l,241j,241m,241n,241o,241p,241h,241iで制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。NHガスをプラズマ励起することにより得られた励起種をウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、スループットを考慮すると、シリコン含有層が窒化される温度であって、ステップ1aのDCSガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1a〜ステップ4aで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するように設定することが好ましい。この場合、ステップ1a〜ステップ4aでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300〜550℃の範囲内の一定の温度となるように、ヒータ207の温度を設定するのが好ましい。さらには、ステップ1a〜ステップ6a(後述)にかけて処理室201の温度を同様な温度帯に保持するように、ヒータ207の温度を設定するのがより好ましいのは上述の通りである。高周波電源273から第1の棒状電極269b,269c及び第2の棒状電極270b,270c間に印加する高周波電力は、それぞれ例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。このとき、NHガスを熱励起、すなわち熱で活性化させて供給することもできる。しかしながら、減圧雰囲気下でNHガスを熱的に活性化させて流す場合に十分な窒化力を得るには、処理室201内の圧力を比較的高い圧力帯、例えば10〜3000Paの範囲内の圧力とし、またウエハ200の温度を550℃以上とする必要がある。これに対し、NHガスをプラズマ励起して流す場合は、処理室201内の温度を例えば300℃以上としても、十分な窒化力が得られる。なお、NHガスをプラズマ励起して流す場合は、処理室201内の温度を常温としても十分な窒化力が得られる。ただし、処理室201内の温度を150℃未満とすると処理室201内やウエハ200等に塩化アンモニウム(NHCl)等の反応副生成物が付着する。よって、処理室201内の温度は150℃以上とするのが好ましく、本実施形態では300℃以上としている。
【0104】
上述の条件にてNHガスを処理室201内に供給することで、プラズマ励起されることにより励起種となったNHガスは、ステップ1aでウエハ200上に形成され、ステップ3aで不純物が除去されたシリコン含有層の少なくとも一部と反応する。これにより、シリコン含有層に対して窒化処理が行われ、この窒化処理により、シリコン含有層はシリコン窒化層(Si層、以下、単にSiN層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。
【0105】
ステップ4aでは、複数のプラズマ発生部を用いることで、各プラズマ発生部(励起部)に印加する高周波電力をそれぞれ小さくして各プラズマ発生部(励起部)におけるプラズマ出力を低出力としつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができる。これにより、ウエハ200やシリコン含有層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことが可能となる。
【0106】
そしてこれにより、ウエハ200やシリコン含有層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができ、窒化力を高め、シリコン含有層の窒化を促進させることができる。すなわち、窒化効率を高めることが可能となる。そして、シリコン含有層の窒化が飽和してセルフリミットがかかる状態(窒化されきった状態)まで素早く遷移させることが可能となり、窒化時間を短縮させることができる。その結果として処理時間を短縮させることが可能となる。また、窒化処理のウエハ面内均一性を向上させることができる。すなわち、ウエハ200面内全域に対して励起種をより均一に供給することが可能となり、例えばウエハ200の外周付近とウエハ200の中心側との間で窒化の度合いに顕著な違いが起こらないようにできる。
【0107】
また、複数のプラズマ発生部を用いることで、ウエハ200やシリコン含有層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができ、ステップ1aにおいて形成され、ステップ3aで不純物が除去された塩素濃度の低いシリコン含有層に含まれる塩素を、さらに効率的に脱離させることができる。これにより、塩素濃度が極めて低いシリコン窒化層を形成することができる。また、塩素を効率的に脱離させることで、窒化効率をさらに向上させることができる。すなわち、窒化を阻害させる要因となる塩素をシリコン含有層から効率的に脱離させることで、窒化効率をさらに向上させることができる。なお、シリコン含有層から脱離した塩素は、排気管231から処理室201外へと排気される。
【0108】
窒素含有ガスとしては、アンモニア(NH)ガス以外に、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等を用いてもよく、また、エチルアミン、メチルアミン等の窒素元素を含むアミン系のガスを用いてもよい。
【0109】
[ステップ5a]
シリコン含有層をシリコン窒化層へと変化させた後、第2ガス供給管232bのバルブ243b及び第3ガス供給管232cのバルブ243cをそれぞれ閉じ、NHガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン窒化層形成に寄与した後のNHガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。また、バルブ243k,243l,243j,243m,243n,243o,243p,243h,243iは開いたままとして、不活性ガスとしてのNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン窒化層形成に寄与した後のNHガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(第2のパージ工程)。
【0110】
なお、このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ6aにおいて悪影響が生じることはない。このとき処理室201内に供給するNガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ6aにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、Nガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0111】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がNHガスの供給時と同じく300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300〜550℃の範囲内の一定の温度となるように設定する。各不活性ガス供給系から供給するパージガスとしてのNガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。パージガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0112】
[ステップ6a]
処理室201内の残留ガスを除去した後、上述のステップ3a(第1の改質工程)と同様の手順、及び同様の条件により、2つのプラズマ発生部(励起部)でHガスを同時にプラズマで励起させ、プラズマ励起させたHガスを2つのプラズマ発生部(励起部)から処理室201内に同時に供給して、シリコン窒化層の改質処理を行う(第2の改質工程)。
【0113】
プラズマ励起させたHガスを処理室201内に供給することで、プラズマ励起されることにより励起種となったHガスは、ステップ4aでウエハ200上に形成されたシリコン窒化層の少なくとも一部と反応する。これにより、シリコン窒化層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させることができる。すなわち、ステップ3aおよびステップ4aで不純物を脱離させて形成した、水素濃度や塩素濃度の低いシリコン窒化層に含まれる水素や塩素を、さらに効率的に脱離させることができる。これにより、不純物濃度が極めて低いシリコン窒化層を形成することができる。このようにしてシリコン窒化層の改質処理が行われる。なお、シリコン窒化層から脱離した水素や塩素等の不純物は、排気管231から処理室201外へと排気される。
【0114】
ステップ6aでは、複数のプラズマ発生部を用いることで、各プラズマ発生部(励起部)に印加する高周波電力をそれぞれ小さくして各プラズマ発生部(励起部)におけるプラズマ出力を低出力としつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができる。これにより、ウエハ200やシリコン窒化層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことが可能となる。
【0115】
そしてこれにより、ウエハ200やシリコン窒化層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができ、上述の不純物除去の効率を高め、シリコン窒化層の不純物濃度を低減させることができる。その結果として処理時間を短縮させることが可能となる。また、不純物濃度のウエハ面内均一性を向上させることができる。すなわち、ウエハ200面内全域に対して励起種をより均一に供給することが可能となり、例えばウエハ200の外周付近とウエハ200の中心側との間で不純物濃度に顕著な違いが起こらないようにできる。
【0116】
上述したステップ1a〜6aを1サイクルとして、このサイクルを所定回数、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン窒化膜(Si膜、以下、単にSiN膜ともいう。)を成膜することが出来る。
【0117】
なお、上述のサイクルを繰り返す際の少なくとも2サイクル目以降の各ステップにおいて、「ウエハ200に対して所定のガスを供給する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層に対して、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味し、「ウエハ200上に所定の層を形成する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層の上、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面の上に所定の層を形成する」ことを意味している。この点は上述の通りである。またこの点は、後述する他の実施形態においても同様である。
【0118】
(パージ及び大気圧復帰)
所定膜厚のシリコン窒化膜が成膜されると、バルブ243j,243k,243l,243m,243n,243o,243p,243h,243iを開き、各不活性ガス供給系から不活性ガスとしてのNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスが処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0119】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。そ
の後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0120】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0121】
(a)本実施形態に係るステップ4aでは、プラズマ励起されることにより励起種となったNHガスをシリコン含有層に対して供給することにより、低温領域において、シリコン含有層を効率的に窒化させることができる。これにより、低温領域において、シリコン窒化膜を形成することができる。また、シリコン含有層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させることができる。その結果、不純物濃度が低いシリコン窒化膜、すなわち膜密度が高いシリコン窒化膜を形成できるようになり、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性を向上させることが可能となる。また、シリコン窒化膜の絶縁性を向上させることも可能となる。
【0122】
(b)本実施形態に係るステップ3aでは、プラズマ励起されることにより励起種となったHガスをシリコン含有層に対して供給することにより、シリコン含有層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させることができる。その結果、低温領域において、不純物濃度がさらに低いシリコン窒化膜、すなわち膜密度がさらに高いシリコン窒化膜を形成できるようになり、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性をさらに向上させることが可能となる。また、シリコン窒化膜の絶縁性をさらに向上させることも可能となる。
【0123】
(c)本実施形態に係るステップ6aでは、プラズマ励起されることにより励起種となったHガスをシリコン窒化層に対して供給することにより、シリコン窒化層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させることができる。その結果、低温領域において、不純物濃度がさらに低いシリコン窒化膜、すなわち膜密度がさらに高いシリコン窒化膜を形成できるようになり、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性をさらに向上させることが可能となる。また、シリコン窒化膜の絶縁性をさらに向上させることも可能となる。
【0124】
(d)本実施形態に係るステップ3a、ステップ4aでは、シリコン含有層やシリコン窒化層から塩素を効率的に脱離させることで、ステップ4aで行う窒化処理の効率を向上させることができる。すなわち、窒化を阻害させる要因となる塩素をシリコン含有層やシリコン窒化層から効率的に脱離させることで、ステップ4aで行う窒化処理の効率を向上させることができる。これにより、シリコン窒化膜の成膜時間を短縮させることができ、生産性を向上させることができる。
【0125】
(e)本実施形態に係るステップ3a、ステップ4a、ステップ6aでは、複数のプラズマ発生部を用いることで、各プラズマ発生部(励起部)に印加する高周波電力をそれぞれ小さくして各プラズマ発生部(励起部)におけるプラズマ出力を低出力としつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができる。これにより、ウエハ200やシリコン含有層やシリコン窒化層へのプラズマダメージを抑制しつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことが可能となる。
【0126】
そしてこれにより、ステップ4aでは、窒化力を高め、シリコン含有層の窒化を促進させることができる。すなわち、窒化効率を高めることが可能となる。そして、シリコン含有層の窒化が飽和してセルフリミットがかかる状態(窒化されきった状態)まで素早く遷移させることが可能となり、窒化時間を短縮させることができる。その結果として処理時間を短縮させることが可能となる。また、窒化処理のウエハ面内均一性を向上させることができる。すなわち、複数のプラズマ発生部を用いることで、ウエハ200面内全域に対して励起種をより均一に供給することが可能となり、例えばウエハ200の外周付近とウ
エハ200の中心側との間で窒化の度合いに顕著な違いが起こらないようにできる。また、ステップ4aでは、ステップ1aにおいて形成され、ステップ3aで不純物が除去された塩素濃度の低いシリコン含有層に含まれる塩素を、さらに効率的に脱離させることができる。これにより、塩素濃度が極めて低いシリコン窒化層を形成することができる。また、塩素を効率的に脱離させることで、窒化効率をさらに向上させることができる。すなわち、窒化を阻害させる要因となる塩素をシリコン含有層から効率的に脱離させることで、窒化効率をさらに向上させることができる。
【0127】
また、ステップ3a、ステップ6aでは、シリコン含有層やシリコン窒化層からの不純物除去の効率をさらに高め、シリコン窒化膜の不純物濃度をさらに低減させることができる。また、シリコン窒化膜中の不純物濃度のウエハ面内均一性を向上させることができる。すなわち、複数のプラズマ発生部を用いることで、ウエハ200面内全域に対して励起種をより均一に供給することが可能となり、例えばウエハ200の外周付近とウエハ200の中心側との間で、シリコン窒化膜中の不純物濃度に顕著な違いが起こらないようにできる。
【0128】
なお、プラズマ発生部を1つしか設けない場合、ウエハ200への励起種の供給量を増加させるには、プラズマ出力を大きくする必要がある。しかしながら、係る場合には、プラズマ化される範囲が大きくなり過ぎてしまい、ウエハ200までもがプラズマに晒されてしまうことがある。そして、ウエハ200やウエハ200上に形成するシリコン窒化膜に大きなダメージ(プラズマダメージ)が加わってしまうことがある。また、ウエハ200やその周辺がプラズマによりスパッタリングされることでパーティクルが発生したり、シリコン窒化膜の膜質を低下させてしまうことがある。また、ウエハ200上に形成するシリコン窒化膜の膜質が、プラズマに晒されるウエハ200の外周付近とプラズマに晒されないウエハ200の中心側との間で、顕著に異なってしまうことがある。
【0129】
これに対して本実施形態のように複数のプラズマ発生部を用いる場合、各プラズマ発生部におけるプラズマ出力を低出力としつつ、ウエハ200への励起種の供給量を増やすことができ、これらの問題を生じさせないようにすることができる。
【0130】
(f)本実施形態では、複数のプラズマ発生部を用いることで、成膜中におけるウエハ200の回転数を高めた(回転速度を速くした)場合と同等の効果を得ることができ、シリコン窒化膜のウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。すなわち、本実施形態の成膜シーケンスでは、ウエハ200を回転させながらDCSガスやNHガスやHガスの間欠供給を行うが、係るシーケンスでは、ウエハ200の回転数とシリコン窒化膜のウエハ面内膜厚均一性との間に一定の相関関係が存在する。具体的には、回転数が高いほど(回転速度が速いほど)、1回のガス供給でカバーされるウエハ200の領域が増加するため、シリコン窒化膜のウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。しかしながら、ウエハ200の振動防止等のため、ウエハ200の回転数には上限があり、例えば3rpmより大きくすることが困難な場合がある。これに対し本実施形態では、2つのプラズマ発生部を用いることで、回転数を実質的に2倍に増加させることと同等の効果を得ることができ、シリコン窒化膜のウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。係る効果は、シリコン窒化膜を例えば50Å以下の厚さの薄膜とする場合に特に有効である。
【0131】
(g)以上述べたとおり、本実施形態の成膜シーケンスによれば、例えば550℃以下の低温領域において、水素や塩素等の不純物濃度が極めて低いシリコン窒化膜、すなわち膜密度が極めて高いシリコン窒化膜を形成することができる。これにより、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性及び絶縁性を向上させ、膜質を向上させることが可能となる。また、ウエハ200やシリコン含有層やシリコン窒化層へのプラズマダメージを抑制しつつ、シリコン含有層の窒化効率を高め、窒化時間を短縮させ、処理時間を短縮させ、スル
ープットを向上させることが可能となる。また、不純物除去や窒化処理のウエハ面内均一性を向上させ、シリコン窒化膜のウエハ面内膜質均一性及びウエハ面内膜厚均一性をそれぞれ向上させることが可能となる。また、成膜時における立体障害による未結合手の発生を低減させることが可能となる。また、膜中の塩素濃度が低いことから、ボートアンロード時等のウエハ200搬送中におけるシリコン窒化膜の自然酸化を抑制することが可能となる。
【0132】
なお、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン窒化膜を形成すれば、シリコン窒化膜の密度は、一般的なDCSとNHとの交互供給によりシリコン窒化膜を形成する場合よりも高密度となり、膜密度の面内均一性も極めて高くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン窒化膜を形成すれば、シリコン窒化膜中の塩素等の不純物の濃度は、一般的なDCSとNHとの交互供給によりシリコン窒化膜を形成する場合よりもきわめて低くなり、不純物濃度の面内均一性も極めて高くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、塩素原子を含まないシリコン原料を用いた場合であっても、フッ化水素に対するエッチングレートを低くできることを確認した。
【0133】
<本発明の第2実施形態>
上述の第1実施形態では、第1の改質工程および第2の改質工程の両方で改質ガスとしてHガス等の水素含有ガスを用いていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、第1の改質工程では改質ガスとしてHガス等の水素含有ガスを用い、第2の改質工程では改質ガスとしてArガスやHeガス等の希ガスおよびNガスのうち少なくともいずれかを用いるようにしてもよい。
【0134】
すなわち、本実施形態では、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガス(窒素含有ガス)を供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化膜を形成する。
【0135】
具体的には、本実施形態の成膜シーケンスでは、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する工程(DCSガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第1のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたHガスを供給する工程(第1の改質工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程(NHガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第2のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNガスおよびプラズマ励起させたArガスのうち少なくともいずれかを供給する工程(第2の改質工程)と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にシリコン窒化膜を形成する。以下、本実施形態における成膜シーケンスについてより具体的に説明する。
【0136】
図6は、本発明の第2実施形態に係る成膜フローを示す図である。図11は、本発明の第2実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。これらの図は、第1の改質工程では改質ガスとしてHガスを用い、第2の改質工程では改質ガスとしてArガスまたはNガスを用いる例を示している。なお、この成膜シーケンスが第1実施形態と異なるのは、第2の改質工程において改質ガスとしてArガスまたはNガスを用いる点だけであり、その他は第1実施形態と同様である。以下、第1実施形
態と異なる第2の改質工程(ステップ6b)について説明する。
【0137】
(改質ガスとしてArガスを用いる場合)
第2の改質工程において改質ガスとしてArガスを用いる場合、第1実施形態のステップ1a〜5aと同様のステップ1b〜5bを行い、ウエハ200上にシリコン窒化層を形成し、処理室201内の残留ガスを除去する。その後、2つのプラズマ発生部(励起部)でArガスを同時にプラズマで励起させ、プラズマ励起させたArガスを2つのプラズマ発生部(励起部)から処理室201内に同時に供給して、シリコン窒化層の改質処理を行う(第2の改質工程)。
【0138】
すなわち、第6ガス供給管232fのバルブ243fを開き、第6ガス供給管232f内にArガスを流す。第6ガス供給管232f内を流れたArガスは、マスフローコントローラ241fにより流量調整される。流量調整されたArガスは、第2ガス供給管232bを経由して、第2ノズル233bのガス供給孔248bからバッファ室237b内に供給される。このとき、第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270b間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237b内に供給されたArガスはプラズマ励起され、励起種(Ar)としてガス供給孔238bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたArガスが供給されることとなる。
【0139】
また同時に、第7ガス供給管232gのバルブ243gを開き、第7ガス供給管232g内にArガスを流す。第7ガス供給管232g内を流れたArガスは、マスフローコントローラ241gにより流量調整される。流量調整されたArガスは、第3ガス供給管232cを経由して、第3ノズル233cのガス供給孔248cからバッファ室237c内に供給される。このとき、第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270c間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237c内に供給されたArガスはプラズマ励起され、励起種(Ar)としてガス供給孔238cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたArガスが供給されることとなる。
【0140】
このとき、第1ノズル233a内へのプラズマ励起されたArガスの侵入を防止するため、バルブ243jを開き、第1不活性ガス供給管232j内にNガスを流す。Nガスは、第1ガス供給管232a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0141】
Arガスをプラズマ励起することにより励起種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241f,241gで制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241jで制御するNガスの供給流量は、例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。Arガスをプラズマ励起することにより得られた励起種をウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、スループットを考慮すると、ステップ1bのDCSガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1b〜ステップ6bでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300〜550℃の範囲内の一定の温度となるように、ヒータ207の温度を設定するのが好ましいのは、第1実施形態と同様である。高周波電源273から第1の棒状電極269b,269c及び第2の棒状電極270b,270c間に印加する高周波電力は、それぞれ例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。
【0142】
改質ガスとして用いる希ガスとしては、アルゴン(Ar)ガス以外に、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等を用いてもよい。その中でも、ArガスおよびHeガスのうち少なくともいずれかを用いるのが好ましく、Arガスを用いるのがより好ましい。
【0143】
(改質ガスとしてNガスを用いる場合)
第2の改質工程において改質ガスとしてNガスを用いる場合、第1実施形態のステップ1a〜5aと同様のステップ1b〜5bを行い、ウエハ200上にシリコン窒化層を形成し、処理室201内の残留ガスを除去する。その後、2つのプラズマ発生部(励起部)でNガスを同時にプラズマで励起させ、プラズマ励起させたNガスを2つのプラズマ発生部(励起部)から処理室201内に同時に供給して、シリコン窒化層の改質処理を行う(第2の改質工程)。
【0144】
すなわち、第8ガス供給管232hのバルブ243hを開き、第8ガス供給管232h内にNガスを流す。第8ガス供給管232h内を流れたNガスは、マスフローコントローラ241hにより流量調整される。流量調整されたNガスは、第2ガス供給管232bを経由して、第2ノズル233bのガス供給孔248bからバッファ室237b内に供給される。このとき、第1の棒状電極269b及び第2の棒状電極270b間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237b内に供給されたNガスはプラズマ励起され、励起種(N)としてガス供給孔238bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたNガスが供給されることとなる。
【0145】
また同時に、第9ガス供給管232iのバルブ243iを開き、第9ガス供給管232i内にNガスを流す。第9ガス供給管232i内を流れたNガスは、マスフローコントローラ241iにより流量調整される。流量調整されたNガスは、第3ガス供給管232cを経由して、第3ノズル233cのガス供給孔248cからバッファ室237c内に供給される。このとき、第1の棒状電極269c及び第2の棒状電極270c間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237c内に供給されたNガスはプラズマ励起され、励起種(N)としてガス供給孔238cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマ励起されたNガスが供給されることとなる。
【0146】
なお、このとき、第1ノズル233a内へのプラズマ励起されたNガスの侵入を防止するため、バルブ243jを開き、第1不活性ガス供給管232j内にNガスを流す。Nガスは、第1ガス供給管232a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0147】
ガスをプラズマ励起することにより励起種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241h,241iで制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241jで制御するNガスの供給流量は、例えば100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とする。Nガスをプラズマ励起することにより得られた励起種をウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、スループットを考慮すると、ステップ1bのDCSガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1b〜ステップ6bでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が300〜650℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは300
〜550℃の範囲内の一定の温度となるように、ヒータ207の温度を設定するのが好ましいのは、第1実施形態と同様である。高周波電源273から第1の棒状電極269b,269c及び第2の棒状電極270b,270c間に印加する高周波電力は、それぞれ例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。
【0148】
改質ガスとしてArガスやNガスを用い、上述の第2の改質工程(ステップ6b)を行うことで、シリコン窒化層から不純物を除去することができる。その後、ステップ1b〜6bを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することが出来る。
【0149】
本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0150】
なお、改質ガスとしてArガスやNガスを用いた場合には、改質ガスとしてHガスを用いた場合に比べ、シリコン窒化膜のウエハ200面内における膜厚均一性をより向上させることが可能となる。これは、ArガスやNガスをプラズマ励起することで生成される励起種の方が、Hガスをプラズマ励起することで生成される励起種よりも重いため、改質ガスとしてArガスやNガスを用いた場合には、シリコン窒化膜の膜厚が厚くなり易いウエハ200周縁部において、シリコン窒化膜の構成成分の分解反応や脱離反応を生じさせることができるためと考えられる。
【0151】
また、改質ガスとしてHガスを用いた場合には、改質ガスとしてArガスやNガスを用いた場合に比べ、シリコン窒化膜のウエハ200面内におけるエッチングレートの均一性、すなわち膜質均一性をより向上させることが可能となる。これは、Hガスをプラズマ励起することで生成される励起種の方が、ArガスやNガスをプラズマ励起することで生成される励起種よりも寿命が長いため、改質ガスとしてHガスを用いた場合には、ウエハ200中心部への励起種の供給をより効率的に行うことができ、これにより、ウエハ200中心部でのシリコン含有層やシリコン窒化層からの不純物の脱離をより促進できるためと考えられる。
【0152】
なお、上述の成膜シーケンスでは、改質ガスとして、第1の改質工程でHガスを用い、第2の改質工程でArガスやNガスを用いる場合について説明したが、これとは逆に、第1の改質工程でArガスやNガスを用い、第2の改質工程でHガスを用いるようにしてもよい。また、第1の改質工程および第2の改質工程では、それぞれ、改質ガスとしてHガス、Nガス、Arガスを単体で用いる場合に限らず、これらを任意の組み合わせで混合させたガスを用いてもよい。
【0153】
<本発明の第3実施形態>
上述の第1実施形態では、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前、および窒素含有ガスを供給した後であって原料ガスを供給する前の両方において行うようにしていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前においてのみ行うようにしてもよい。すなわち、第1実施形態では第1の改質工程および第2の改質工程の両方を行うようにしていたが、本発明は係る形態に限定されず、第1の改質工程だけを行い、第2の改質工程を省略するようにしてもよい。
【0154】
すなわち、本実施形態では、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガス(窒素含有ガス)を供給する工
程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化膜を形成する。
【0155】
具体的には、本実施形態の成膜シーケンスでは、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する工程(DCSガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第1のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたHガスを供給する工程(第1の改質工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程(NHガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第2のパージ工程)と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にシリコン窒化膜を形成する。以下、本実施形態における成膜シーケンスについてより具体的に説明する。
【0156】
図7は、本実施形態に係る成膜フローを示す図であり、図12は、本実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。なお、本実施形態が第1実施形態と異なるのは、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前においてのみ行う点(すなわち、第2の改質工程を省略した点)だけであり、その他は第1実施形態と同様である。これらの図に示すように、本実施形態では、第1実施形態のステップ1a〜5aと同様のステップ1c〜5cを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することが出来る。
【0157】
本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2の改質工程を省略していることから、第1実施形態に比べ、1サイクルあたりの所要時間を短縮させることができ、成膜レートを向上させることができる。
【0158】
<本発明の第4実施形態>
上述の第1実施形態では、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を、原料ガスを供給した後であって窒素含有ガスを供給する前、および窒素含有ガスを供給した後であって原料ガスを供給する前の両方において行うようにしていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を、窒素含有ガスを供給した後であって原料ガスを供給する前においてのみ行うようにしてもよい。すなわち、第1実施形態では第1の改質工程および第2の改質工程の両方を行うようにしていたが、本発明は係る形態に限定されず、第1の改質工程を省略し、第2の改質工程だけを行うにしてもよい。
【0159】
すなわち、本実施形態では、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガス(窒素含有ガス)を供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化膜を形成する。
【0160】
具体的には、本実施形態の成膜シーケンスでは、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する工程(DCSガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第1のパージ工程)と処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程(NHガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第2のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたHガスを供給する工程(第2の改質工程)と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にシリコン窒化膜を形成する。以下、本実施形態における成膜シーケンスについてより具体的に説明する。
【0161】
図8は、本実施形態に係る成膜フローを示す図であり、図13は、本実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。なお、本実施形態が第1実施形態と異なるのは、改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程を、窒素含有ガスを供給した後であって原料ガスを供給する前においてのみ行う点(すなわち、第1の改質工程を省略した点)だけであり、その他は第1実施形態と同様である。これらの図に示すように、本実施形態では、第1実施形態のステップ1a,2a,4a〜6aと同様のステップ1d〜5dを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することが出来る。
【0162】
本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第1の改質工程を省略していることから、第1実施形態に比べ、1サイクルあたりの所要時間を短縮させることができ、成膜レートを向上させることができる。
【0163】
<本発明の第5実施形態>
上述の第2実施形態では、窒素含有ガスを供給する工程(NHガス供給工程)と改質ガスをプラズマ励起させて供給する工程(第2の改質工程)との間に、処理室内をパージする工程(第2のパージ工程)を設けるようにしていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、第2のパージ工程を省略し、NHガス供給工程と第2の改質工程とを連続して行うようにしてもよい。
【0164】
すなわち、本実施形態では、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガス(窒素含有ガス)を供給する工程と、
基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化膜を形成する。
【0165】
具体的には、本実施形態の成膜シーケンスでは、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する工程(DCSガス供給工程)と、処理室201内をパージする工程(第1のパージ工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたHガスを供給する工程(第1の改質工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程(NHガス供給工程)と、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させたNガスおよびプラズマ励起させたArガスのうち少なくともいずれかを供給する工程(第2の改質工程)と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にシリコン窒化膜を形成する。以下、本実施形態における成膜シーケンスについてより具体的に説明する。
【0166】
図9は、本実施形態に係る成膜フローを示す図であり、図14は、本実施形態に係るガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。なお、本実施形態が第2実施形態と異なるのは、第2のパージ工程を省略し、NHガス供給工程と第2の改質工程とを連続して行う点だけであり、その他は第2実施形態と同様である。これらの図に示すように、本実施形態では、第2実施形態のステップ1b〜4b,6bと同様のステップ1e〜5eを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することが出来る。
【0167】
本実施形態においても、上述の第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2のパージ工程を省略していることから、第2実施形態に比べ、1サイクルあたりの
所要時間を短縮させることができ、成膜レートを向上させることができる。
【0168】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0169】
例えば、上述の実施形態では原料ガスとしてDCSガスを用いる場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、原料ガスとしてMCSガスを用いる場合であっても、本発明は好適に適用可能である。原料ガスとして、DCSガスよりも塩素(Cl)含有率が低く、表面吸着力の高いガスであるMCSガスを用いることにより、処理室201内に供給される塩素の量を低減させることができる。これにより、シリコン含有層と結合する塩素の割合、すなわちSi−Cl結合を減少させることができ、塩素濃度の低いシリコン含有層を形成することができる。その結果、ステップ4aにおいて、塩素濃度の低いシリコン窒化層を形成できるようになる。その結果、不純物濃度が低いシリコン窒化膜、すなわち膜密度が高いシリコン窒化膜を形成できるようになり、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性を向上させることが可能となる。また、シリコン窒化膜の絶縁性を向上させることも可能となる。
【0170】
また、原料ガスとしてMCSガスを用い、シリコン含有層中のSi−Cl結合を減少させることにより、シリコン含有層中のSi−H結合を増加させることができる。Si−Cl結合は、Si−H結合よりも結合エネルギーが大きく、ステップ4aでのSi−N結合の形成、すなわちシリコン含有層の窒化を阻害させるように作用する。逆にSi−H結合は、Si−Cl結合よりも結合エネルギーが小さく、ステップ4aでのSi−N結合の形成、すなわちシリコン含有層の窒化を促進させるように作用する。すなわち、原料ガスとしてMCSガスを用い、Si−Cl結合が少なく塩素濃度の低いシリコン含有層を形成することで、シリコン含有層の窒化を阻害させる要因を減らすことができ、ステップ4aでのシリコン含有層の窒化を促進させることができる。また、Si−H結合をシリコン含有層中に増加させることで、シリコン含有層の窒化を促す要因を増やすことができ、ステップ4aでのシリコン含有層の窒化をさらに促進させることができる。これにより、ステップ4aでのシリコン含有層の窒化効率を高めることが可能となり、窒化時間を短縮させ、処理時間を短縮させることができることとなる。その結果、シリコン窒化膜の成膜時間を短縮させることができ、生産性を向上させることができる。
【0171】
なお、原料ガスとしてMCSガスを用いる場合には、第1ガス供給管232a内にMCSガスを供給するMCSガス供給源や第1ガス供給管232aの上流側等(すなわち、ガス保管庫やシリンダーキャビネット等)に、MCSガスの保管温度を例えば30℃程度に維持する温度調整機構を設けてもよい。MCSガスは分解性が高く、一般的な特殊高圧ガスの保管温度では分解してしまうことがある。MCSガスの分解によりモノシラン(SiH)が生成されると、シリコン窒化膜の膜厚均一性が低下したり、生産性が悪化したりすることがある。また、MCSガスの保管温度を低温にしすぎると、MCSが気化し難くなり、処理室201内へのMCSガスの供給流量が減少してしまう懸念がある。温度調整機構を設けることで、これらの課題を解決できる。
【0172】
また例えば、上述の実施形態では、処理室201内に原料ガスを供給する際(ステップ1a)、APCバルブ244を開いた状態で処理室201内を連続的に排気しながら原料ガスを供給するようにしていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、図3に示すように、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側にガス溜め部(タンク)250aを設け、ガス溜め部250a内に溜めた高圧の原料ガスを、APCバルブ244を閉じた状態で減圧された処理室201内へ一気に(パルス的に)供給し、その後、原料ガスの供給によって昇圧状態となった処理室201内を所定時間維持するようにしても
よい。
【0173】
ガス溜め部250aを用いて原料ガスを一気に供給するには、まず、第1ガス供給管232aのガス溜め部250aよりも下流側に設けられたバルブ243a’を閉じ、ガス溜め部250aの上流側に設けられたバルブ243aを開くことで、ガス溜め部250a内へ原料ガスを溜める。そして、ガス溜め部250a内に所定圧、所定量の原料ガスが溜まったら、上流側のバルブ243aを閉じる。ガス溜め部250a内には、ガス溜め部250a内の圧力が例えば20000Pa以上になるように原料ガスを溜める。ガス溜め部250a内に溜める原料ガス量は例えば100〜1000ccとする。また、ガス溜め部250aと処理室201との間のコンダクタンスが1.5×10−3/s以上になるように装置を構成する。また、処理室201の容積とこれに対する必要なガス溜め部250aの容積との比として考えると、処理室201の容積が例えば100l(リットル)の場合においては、ガス溜め部250aの容積は100〜300ccであることが好ましく、処理室201の容積の1/1000〜3/1000倍とすることが好ましい。
【0174】
ガス溜め部250a内に原料ガスを充填する間、真空ポンプ246により処理室201内を処理室201内の圧力が20Pa以下の圧力となるように排気しておく。ガス溜め部250a内への原料ガスの充填及び処理室201内の排気が完了したら、APCバルブ244を閉じて処理室201内の排気を停止し、その後、第1ガス供給管232aのバルブ243a’を開く。これにより、ガス溜め部250a内に溜められた高圧の原料ガスが処理室201内へ一気に(パルス的に)供給される。このとき、排気管231のAPCバルブ244が閉じられているので、処理室201内の圧力は急激に上昇し、例えば931Pa(7Torr)まで昇圧される。その後、処理室201内の昇圧状態を所定時間(例えば1〜10秒)維持し、高圧のDCSガス雰囲気中にウエハ200を晒すことで、ウエハ200上にシリコン含有層を形成する。
【0175】
このように、ガス溜め部250aを用いて原料ガスを一気に供給すると、ガス溜め部250a内と処理室201内との圧力差により、第1ノズル233aから処理室201内に噴出される原料ガスは例えば音速(340m/sec)程度にまで加速され、ウエハ200上の原料ガスの速度も数十m/sec程度と早くなる。その結果、原料ガスがウエハ200の中央部まで効率的に供給されるようになる。その結果、シリコン窒化膜のウエハ200面内の膜厚均一性や膜質均一性を向上させることができる。以下、この供給方法をフラッシュフローと称することとする。
【0176】
また例えば、上述の実施形態では、プラズマ発生部(励起部)が2つ設けられている場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、プラズマ発生部(励起部)が1つ設けられている場合であっても本発明は好適に適用可能である。但し、プラズマ発生部(励起部)を複数設けることにより、上述したように、窒化処理や改質処理のウエハ面内均一性をさらに向上させ、シリコン窒化膜のウエハ面内膜質均一性及びウエハ面内膜厚均一性をそれぞれさらに向上させることが可能となる。すなわち、プラズマ発生部を複数設けるようにした方が、窒化処理、第1の改質処理、第2の改質処理の効果を高めることができる。また、本発明は、プラズマ発生部(励起部)が3つ以上設けられている場合であっても、好適に適用可能である。
【0177】
また例えば、上述の第2実施形態および第5実施形態では、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を、原料ガスを供給する工程後の所定期間、すなわち、原料ガスを供給する工程後のプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間に行い、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間、すなわち、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の原料ガスの供給
停止期間に行う例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。
【0178】
例えば、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を、原料ガスを供給する工程後の所定期間、すなわち、原料ガスを供給する工程後のプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間に行い、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間、すなわち、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の原料ガスの供給停止期間に行うようにしてもよい。
【0179】
すなわち、原料ガスを供給する工程後の所定期間、および、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間のうち一方の期間において、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、原料ガスを供給する工程後の所定期間、および、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行うようにすればよい。
【0180】
具体的には、原料ガスを供給する工程後のプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間、および、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の原料ガスの供給停止期間のうち一方の期間において、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、原料ガスを供給する工程後のプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間、および、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の原料ガスの供給停止期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行うようにすればよい。
【0181】
より具体的には、原料ガスを供給する工程後であってプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程前の期間、および、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後であって原料ガスを供給する工程前の期間のうち一方の期間において、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、原料ガスを供給する工程後であってプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程前の期間、および、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後であって原料ガスを供給する工程前の期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行うようにすればよい。
【0182】
これらの場合、原料ガスを供給する工程では、基板上に層(シリコン含有層)を形成し、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、その層に対して第1の改質処理を行い、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、第1の改質処理がなされた層を窒化層に変化させ、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、窒化層に対して第2の改質処理を行うこととなる。
【0183】
もしくは、原料ガスを供給する工程では、基板上に層を形成し、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、その層に対して第1の改質処理を行い、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、第1の改質処理がなされた層を窒化層に変化させ、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、窒化層に対して第2の改質処理を行うこととなる。
【0184】
また例えば、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程およびプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程の
両方を、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間、すなわち、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の原料ガスの供給停止期間、つまり、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後であって原料ガスを供給する工程前の期間に行うようにしてもよい。
【0185】
また例えば、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程およびプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程の両方を、原料ガスを供給する工程後の所定期間、すなわち、原料ガスを供給する工程後のプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間、つまり、原料ガスを供給する工程後であってプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程前の期間に行うことも可能である。
【0186】
これらの場合、原料ガスを供給する工程では、基板上に層(シリコン含有層)を形成し、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、その層を窒化層に変化させ、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、窒化層に対して第1の改質処理を行い、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、窒化層に対して第2の改質処理を行うこととなる。
【0187】
もしくは、原料ガスを供給する工程では、基板上に層を形成し、プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、その層に対して第1の改質処理を行い、プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、その層に対して第2の改質処理を行い、プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、第1の改質処理および第2の改質処理がなされた層を窒化層に変化させることとなる。
【0188】
なお、これらのうち、上述の第2実施形態および第5実施形態の成膜シーケンスにより成膜する場合に、第1の改質処理および第2の改質処理の効果を最も高めることが可能となる。
【0189】
なお、上述の実施形態で形成したシリコン窒化膜は、膜中の塩素濃度が低く、膜密度が高く、フッ化水素に対する高い耐性を有している。そのため、上述の実施形態で形成したシリコン窒化膜は、ゲート絶縁膜や容量絶縁膜だけでなく、サイドウォールスペーサやエッチングストッパ層として好適に用いることができる。また、例えばSTI形成工程におけるハードマスクとしても好適に用いることができる。
【0190】
また例えば、上述の実施形態では、窒化膜として、半導体元素であるシリコンを含むシリコン窒化膜を形成する例について説明したが、本発明は係る場合に限定されない。例えば、本発明は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属窒化膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0191】
例えば、本発明は、チタン窒化膜(TiN膜)を形成する場合や、ジルコニウム窒化膜(ZrN膜)を形成する場合や、ハフニウム窒化膜(HfN膜)を形成する場合や、タンタル窒化膜(TaN膜)を形成する場合や、アルミニウム窒化膜(AlN膜)を形成する場合や、モリブデン窒化膜(MoN膜)を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0192】
この場合、原料ガスとして金属元素を含む原料を用い、上述の実施形態と同様の成膜シーケンスにより成膜を行うことができる。なお、常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガスと
して供給することとなる。窒素含有ガスおよび改質ガスは、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。処理条件も、上述の実施形態と同様な処理条件を用いることができる。
【0193】
例えば、TiN膜を形成する場合は、原料として、チタニウムテトラクロライド(TiCl)、テトラキスエチルメチルアミノチタニウム(Ti[N(C)(CH)]、略称:TEMAT)、テトラキスジメチルアミノチタニウム(Ti[N(CH、略称:TDMAT)、テトラキスジエチルアミノチタニウム(Ti[N(C、略称:TDEAT)等を用いることができる。
【0194】
また例えば、ZrN膜を形成する場合は、原料として、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr[N(C)(CH)]、略称:TEMAZ)、テトラキスジメチルアミノジルコニウム(Zr[N(CH、略称:TDMAZ)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(Zr[N(C、略称:TDEAZ)等を用いることができる。
【0195】
また例えば、HfN膜を形成する場合は、原料として、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(C)(CH)]、略称:TEMAH)、テトラキスジメチルアミノハフニウム(Hf[N(CH、略称:TDMAH)、テトラキスジエチルアミノハフニウム(Hf[N(C、略称:TDEAH)等を用いることができる。
【0196】
また例えば、TaN膜を形成する場合は、原料として、タンタルペンタクロライド(TaCl)、タンタルペンタフルオライド(TaF)、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC、略称:PET)、トリスジエチルアミノターシャリーブチルイミノタンタル(Ta(NC(CH)(N(C、略称:TBTDET)等を用いることができる。
【0197】
また例えば、AlN膜を形成する場合は、原料として、アルミニウムトリクロライド(AlCl)、アルミニウムトリフルオライド(AlF)、トリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)等を用いることができる。
【0198】
また例えば、MoN膜を形成する場合は、原料として、モリブデンペンタクロライド(MoCl)、モリブデンペンタフルオライド(MoF)等を用いることができる。
【0199】
このように、本発明は、シリコン窒化膜だけでなく、金属窒化膜の成膜にも適用することができ、この場合であっても、上述の実施形態と同様な作用効果が得られる。すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素等の所定元素を含む窒化膜を形成する場合に好適に適用することができる。
【0200】
また、上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて薄膜を成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて薄膜を成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0201】
また、上述の各実施形態や各変形例や各応用例等は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0202】
また、本発明は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回
線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更することも可能である。
【実施例】
【0203】
(第1実施例)
<改質工程による膜質への影響>
本発明の実施例として、第3実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程だけを行い、第2の改質工程を省略した成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル1を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてArガスを用いた。
【0204】
さらに、本発明の実施例として、第4実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程を省略し、第2の改質工程だけを行った成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル2を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第2の改質工程では改質ガスとしてArガスを用いた。
【0205】
また、比較例として、処理室内に収容された直径300mmのウエハに対してDCSガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、処理室内のウエハに対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す通常の成膜シーケンスにより、ウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル3を作成した。
【0206】
図15(a)は、サンプル1〜3のシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを、便宜的に1サイクル分だけ抜き出してそれぞれ示している。いずれのサンプルも、図4に示したプラズマ発生部が2つ設けられた基板処理装置を用いて作成し、その際、処理室内へのDCSガスの供給は、フラッシュフローにて行うようにした。また、成膜時のウエハの温度は550℃とした。それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0207】
そして、各サンプルにおける、シリコン窒化膜のウエットエッチングレート(WER)を測定した。なお、シリコン窒化膜をウエットエッチングする際には、濃度1%のフッ化水素含有液を用いた。
【0208】
図15(b)は、各サンプルのシリコン窒化膜のWERの測定結果を示している。図15(b)の横軸は各サンプルを、縦軸はWER(Å/min)をそれぞれ示している。なお、ここでいうWERとは、ウエハ面内における平均値を意味している。
【0209】
図15(b)によれば、シリコン含有層やシリコン窒化層に対してArガスをプラズマ励起させて供給する改質工程を行ったサンプル1及びサンプル2(実施例)は、改質工程を行わなかったサンプル3(比較例)と比較して、いずれも、シリコン窒化膜のWERが小さくなっており、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。これは、改質工程を行うことで、Arガスをプラズマ励起させることで生成される励起種が、シリコン含有層やシリコン窒化層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させ、これにより、シリコン窒化膜の膜質が向上したためと考えられる。
【0210】
また、第1の改質工程だけを行い、第2の改質工程を省略したサンプル1の方が、第1の改質工程を省略し、第2の改質工程だけを行ったサンプル2よりも、WERがより小さ
くなっており、フッ化水素に対する耐性がさらに向上していることが分かる。これは、DCSガスの吸着反応等によりシリコン含有層に含まれることとなった水素や塩素等の不純物が、シリコン含有層をシリコン窒化層へ改質させた後に行われる第2の改質工程よりも、シリコン含有層の形成直後に行われる第1の改質工程によって、より効率的に脱離するためと考えられる。
【0211】
<改質工程での圧力による影響>
続いて、本発明の実施例として、第3実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程だけを行い、第2の改質工程を省略した成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル4〜7を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてはArガスを用いた。なお、サンプル4〜7を作成する際の第1の改質工程での処理室内の圧力は、順に、85Pa、44.5Pa、21.5Pa、12Paとした。
【0212】
図16(a)は、サンプル4〜7のシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを、便宜的に1サイクル分だけ抜き出して示している。いずれのサンプルも、図4に示したプラズマ発生部が2つ設けられた基板処理装置を用いて作成し、その際、処理室内へのDCSガスの供給は、フラッシュフローにて行うようにした。また、成膜時のウエハの温度は550℃とした。それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0213】
そして、各サンプルにおける、シリコン窒化膜のWER、WERのウエハ面内レンジ、及びWERのウエハ面内分布をそれぞれ測定した。なお、シリコン窒化膜をウエットエッチングする際には、濃度1%のフッ化水素含有液を用いた。
【0214】
図16(b)は、サンプル4〜7のシリコン窒化膜のWERの測定結果をそれぞれ示している。図16(b)の横軸は各サンプルを、縦軸はWER(Å/min)をそれぞれ示している。なお、ここでいうWERとは、ウエハ面内における平均値を意味している。
【0215】
図17(a)は、サンプル4〜7のシリコン窒化膜のWERのウエハ面内レンジの測定結果をそれぞれ示している。図17(a)の横軸は各サンプルを、縦軸はWERのウエハ面内レンジ(Å/min)をそれぞれ示している。なお、WERのウエハ面内レンジとは、面内の最大値と最小値との差をいう。
【0216】
図17(b)は、サンプル4〜7のシリコン窒化膜のWERのウエハ面内分布の測定結果をそれぞれ示している。図17(b)の横軸は各サンプルにおける測定位置を、縦軸はWER(Å/min)をそれぞれ示している。なお、WERはウエハの直径に沿って測定しており、横軸の値が0mmとはウエハの中心部で測定したことを示し、±150mmとはウエハの周縁部で測定したことを示している。
【0217】
図16(b)によれば、第1の改質工程での処理室の圧力を低下させるほど、シリコン窒化膜のWERが小さくなっており、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。これは、第1の改質工程での処理室内の圧力を低下させることにより、Arガスをプラズマ励起させることで生成される励起種の寿命が延び、ウエハに対して励起種がより効率的に供給されるようになり、これにより、シリコン窒化膜の膜質が向上したためと考えられる。
【0218】
また、図17(a)及び(b)によれば、第1の改質工程での処理室内の圧力を低下させるほど、WERのウエハ面内レンジが小さくなっており、WERのウエハ面内分布が均
一化されていることが分かる。これは、第1の改質工程での処理室内の圧力を低下させることにより、Arガスをプラズマ励起させることで生成される励起種の寿命が延び、ウエハの中心部に対して励起種がより効率的に供給されるようになり、これにより、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜質均一性が向上したためと考えられる。
【0219】
(第2実施例)
<改質ガスのガス種による影響>
本発明の実施例として、第3実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程だけを行い、第2の改質工程を省略した成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル1を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてArガスを用いた。
【0220】
また、本発明の実施例として、第1実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程および第2の改質工程を、共に同じ種類の改質ガスを用いて行う成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル2〜4を作成した。いずれのサンプルを作成する際も、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用いた。また、サンプル2では、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれArガスを用いた。また、サンプル3では、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれHガスを用いた。また、サンプル4では、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれNガスを用いた。
【0221】
また、本発明の実施例として、第2実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程および第2の改質工程を、改質ガスの種類を切り替えて行う成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル5を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてHガスを、第2の改質工程では改質ガスとしてNガスを用いた。
【0222】
さらに、比較例として、処理室内に収容された直径300mmのウエハに対してDCSガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、処理室内のウエハに対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す通常の成膜シーケンスにより、ウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル6を作成した。
【0223】
図18(a)は、サンプル1〜6のシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを、便宜的に1サイクル分だけ抜き出してそれぞれ示している。なお、いずれのサンプルも、図4に示したプラズマ発生部が2つ設けられた基板処理装置を用いて作成し、その際、処理室内へのDCSガスの供給は、フラッシュフローにて行うようにした。また、成膜時のウエハの温度は550℃とした。それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0224】
そして、各サンプルにおける、シリコン窒化膜のWER、WERのウエハ面内レンジ、WERのウエハ面内分布、及びウエハ面内における膜厚分布をそれぞれ測定した。なお、シリコン窒化膜をウエットエッチングする際には、濃度1%のフッ化水素含有液を用いた。
【0225】
図18(b)は、サンプル1〜5のシリコン窒化膜のWERの測定結果をそれぞれ示している。図18(b)の横軸は各サンプルを、縦軸はWER(Å/min)をそれぞれ示
している。なお、ここでいうWERとは、ウエハ面内における平均値を意味している。なお、サンプル6のシリコン窒化膜のWERは、実施例1のサンプル3と同様であるため、図示を省略している。
【0226】
図19(a)は、サンプル1〜6のシリコン窒化膜のWERのウエハ面内レンジの測定結果をそれぞれ示している。図19(a)の横軸は各サンプルを、縦軸はWERのウエハ面内レンジ(Å/min)をそれぞれ示している。
【0227】
図19(b)は、サンプル2〜5のシリコン窒化膜のWERのウエハ面内分布の測定結果をそれぞれ示している。図19(b)の横軸は各サンプルにおける測定位置を、縦軸はWER(Å/min)をそれぞれ示している。なお、WERはウエハの直径に沿って測定しており、横軸の値が0mmとはウエハの中心部で測定したことを意味し、±150mmとはウエハの周縁部で測定したことを意味している。
【0228】
図20は、サンプル1〜6のシリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性の測定結果を示している。図20の横軸は各サンプルを、縦軸はウエハ面内における膜厚均一性(±%)をそれぞれ示している。なお図20では、縦軸の数値が小さいほど、シリコン窒化膜の膜厚均一性が高いことを示している。
【0229】
図18(b)によれば、改質工程を行ったサンプル1〜5は、改質工程を行わなかったサンプル6(比較例)と比較して、いずれも、シリコン窒化膜のWERが小さくなっており、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。すなわち、改質ガスとしてArガスを用いた場合(サンプル1,2)、改質ガスとしてHガスを用いた場合(サンプル3)、改質ガスとしてNガスを用いた場合(サンプル4)のいずれにおいても、シリコン窒化膜の膜質が向上し、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。また、第1の改質工程と第2の改質工程とで改質ガスの種類を切り替えた場合(サンプル5)においても、上記と同様に、シリコン窒化膜の膜質が向上し、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。すなわち、改質ガスとしてArガス、Hガス、Nガスをどのような組み合わせで用いても、シリコン含有層やシリコン窒化層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させることができ、これにより、シリコン窒化膜の膜質を改善できることが分かる。
【0230】
なお、図19(a)及び(b)によれば、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれHガスを用いて作成したサンプル3は、シリコン窒化膜のWERのウエハ面内レンジが最も小さく、WERのウエハ面内均一性が最も高いことが分かる。また、第1の改質工程において改質ガスとしてHガスを、第2の改質工程において改質ガスとしてNガスを用いて作成したサンプル5については、WERのウエハ面内レンジが2番目に小さく、WERのウエハ面内均一性が2番目に高いことが分かる。これは、Hガスをプラズマ励起することで生成される励起種の方が、NガスやArガスをプラズマ励起することで生成される励起種よりも寿命が長いため、改質ガスとしてHガスを用いた場合には、ウエハ中心部への励起種の供給をより効率的に行うことができ、これにより、ウエハ中心部でのシリコン窒化膜からの不純物の脱離をより促進できるためと考えられる。
【0231】
また、図20によれば、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれArガスを用いて作成したサンプル2や、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれNガスを用いて作成したサンプル4は、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性が高いことが分かる。これに対し、第1の改質工程および第2の改質工程において改質ガスとしてそれぞれHガスを用いて作成したサンプル3については、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性が低いことが分かる。こ
れは、NガスやArガスをプラズマ励起することで生成される励起種の方が、Hガスをプラズマ励起することで生成される励起種よりも重いため、改質ガスとしてNガスやArガスを用いた場合には、シリコン窒化膜の膜厚が厚くなり易いウエハ周縁部において、シリコン窒化膜の構成成分の分解反応や脱離反応を生じさせることができるためと考えられる。なお、Hガスをプラズマ励起することで生成される励起種のように相対的に軽い励起種では、ウエハ周縁部においてシリコン窒化膜の構成成分の分解反応や脱離反応を進めるのが難しいことが考えられる。しかしながら、第1の改質工程において改質ガスとしてHガスを用い、第2の改質工程において改質ガスとしてNガスを用いて作成したサンプル5では、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性は良好な状態となることが分かる。これらのことから、一方の改質工程において改質ガスとしてHガスを用いた場合であっても、他方の改質工程において改質ガスとしてNガスまたはArガスを用いることで、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性を良好な状態にできることが分かる。
【0232】
これらの結果から、例えばサンプル5のように、第1の改質工程において改質ガスとしてHガスを用い、第2の改質工程において改質ガスとしてNガスを用いてシリコン窒化膜を形成することにより、すなわち、一方の改質工程において改質ガスとしてHガスを用い、他方の改質工程において改質ガスとしてNガスまたはArガスを用いることにより、シリコン窒化膜のウエハ面内におけるWERの均一性(つまり膜質均一性)及び膜厚均一性をそれぞれ改善できることが分かる。
【0233】
(第3実施例)
<パージ時間の長短による影響>
本発明の実施例として、第2実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第1の改質工程および第2の改質工程を、改質ガスの種類を切り替えて行う成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル1〜4を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてHガスを、第2の改質工程では改質ガスとしてNガスを用いた。また、各サンプルを形成する際には、1サイクルあたりのパージ工程の実施時間を変化させた。すなわち、サンプル1においては、1サイクルあたりの第1のパージ工程及び第2のパージ工程の実施時間をそれぞれ4秒とした。また、サンプル2においては、1サイクルあたりの第1のパージ工程及び第2のパージ工程の実施時間をそれぞれ2秒とした。また、サンプル3においては、1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間を4秒とし、第2のパージ工程の実施時間を2秒とした。また、サンプル4においては、1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間を2秒とし、第2のパージ工程の実施時間を4秒とした。
【0234】
さらに、本発明の実施例として、第5実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第2のパージ工程を省略し、窒素含有ガス供給工程と第2の改質工程とを連続して行う成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル5を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてHガスを、第2の改質工程では改質ガスとしてNガスを用いた。また、1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間を4秒とした。
【0235】
図21(a)は、サンプル1〜5のシリコン窒化膜形成時におけるガス供給シーケンスを、便宜的に1サイクル分だけ抜き出してそれぞれ示している。なお、図中の網掛け部分は各パージ工程を示しており、網掛け部分内の数字は各パージ工程の実施時間を示している。また、いずれのサンプルも、図4に示したプラズマ発生部が2つ設けられた基板処理装置を用いて作成し、その際、処理室内へのDCSガスの供給は、フラッシュフローにて
行うようにした。また、成膜時のウエハの温度は550℃とした。それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0236】
そして、各サンプルにおける、シリコン窒化膜のWERのウエハ面内レンジ、及びウエハ面内における膜厚分布をそれぞれ測定した。なお、シリコン窒化膜をウエットエッチングする際には、濃度1%のフッ化水素含有液を用いた。
【0237】
図21(b)は、サンプル1〜5のシリコン窒化膜のWERのウエハ面内レンジの測定結果をそれぞれ示している。図21(b)の横軸は各サンプルを、縦軸はWERのウエハ面内レンジ(Å/min)をそれぞれ示している。
【0238】
図21(c)は、サンプル1〜5のシリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性の測定結果を示している。図21(c)の横軸は各サンプルを、縦軸はウエハ面内における膜厚均一性(±%)をそれぞれ示している。なお図21(c)では、縦軸の数値が小さいほど、シリコン窒化膜の膜厚均一性が高いことを示している。
【0239】
図21(b)によれば、サンプル1〜5間では、シリコン窒化膜のWERのウエハ面内レンジにはあまり変化がない(すなわち、ウエハ面内における膜質均一性に大きな変化はない)ことが分かる。
【0240】
但し、図21(c)によれば、サンプル1〜5間には、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性に大きな差が生じていることが分かる。すなわち、1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間を2秒と短くしたサンプル2,4では、第2のパージ工程の実施時間によらず、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性が大きく低下していることが分かる。これに対し、1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間を4秒としたサンプル1,3,5では、第2のパージ工程の実施時間や実施の有無によらず、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性は良好な状態となることが分かる。つまり、第1のパージ工程の実施時間が不足すると、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性が低下することが分かる。また、第2のパージ工程の実施時間が不足しても、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性には殆ど影響を及ぼさないことが分かる。
【0241】
第1のパージ工程の実施時間が不足すると、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性が低下するのは、第1のパージ工程の実施時間が不足すると、処理室内にDCSガスが残留した状態で第1の改質工程が開始されてしまうためと考えられる。つまり、第1の改質工程において、Hガスをプラズマ励起することで生成される励起種により、ウエハ周縁部において、処理室内に残留したDCSガスの分解や吸着反応が生じてしまったり、促進されてしまったりするためと考えられる。
【0242】
また、第2のパージ工程の実施時間が不足しても、シリコン窒化膜のウエハ面内における膜厚均一性に殆ど影響を及ぼさないのは、処理室内にNHガスが残留した状態で第2の改質工程が開始されたとしても、吸着が生じにくいためと考えられる。つまり、第2の改質工程において、Nガスをプラズマ励起することで生成される励起種により、NHガスの分解反応が生じたとしても、吸着反応よりも脱離反応の方が優勢になるためと考えられる。
【0243】
(第4実施例)
本発明の実施例として、第5実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第2のパージ工程を省略し、窒素含有ガス供給工程と第2の改質工程とを連続して行う成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル1〜5を作成した。なお、原料ガスとしてはDCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い
、第1の改質工程では改質ガスとしてHガスを、第2の改質工程では改質ガスとしてNガスを用いた。また、サンプル1〜5を作成する際のウエハの温度(成膜温度)は、順に、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃とした。1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間はそれぞれ4秒とした。
【0244】
また、比較例として、処理室内に収容された直径300mmのウエハに対してDCSガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、処理室内のウエハに対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す通常の成膜シーケンスにより、ウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル6〜10を形成した。なお、サンプル6〜10を作成する際のウエハの温度(成膜温度)は、順に、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃とした。
【0245】
また、本発明の実施例として、第5実施形態と同様の成膜シーケンス(すなわち、第2のパージ工程を省略し、窒素含有ガス供給工程と第2の改質工程とを連続して行う成膜シーケンス)により、直径300mmのウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル11〜13を作成した。なお、原料ガスとしてはMCSガスを、窒素含有ガスとしてはNHガスを用い、第1の改質工程では改質ガスとしてHガスを、第2の改質工程では改質ガスとしてNガスを用いた。また、サンプル11〜13を作成する際のウエハの温度(成膜温度)は、順に、400℃、450℃、500℃とした。1サイクルあたりの第1のパージ工程の実施時間はそれぞれ4秒とした。
【0246】
また、参考例として、処理室内に収容された直径300mmのウエハに対してMCSガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、処理室内のウエハに対してプラズマ励起させたNHガスを供給する工程と、処理室内をパージする工程と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す通常の成膜シーケンスにより、ウエハ上にシリコン窒化膜を形成してサンプル14〜16を形成した。なお、サンプル14〜16を作成する際のウエハの温度(成膜温度)は、順に、400℃、450℃、500℃とした。
【0247】
なお、いずれのサンプルも、図4に示したプラズマ発生部が2つ設けられた基板処理装置を用いて作成し、その際、処理室内への原料ガス(DCSガス或いはMCSガス)の供給は、フラッシュフローにて行うようにした。それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0248】
そして、各サンプルにおける、シリコン窒化膜のWERをそれぞれ測定した。なお、シリコン窒化膜をウエットエッチングする際には、濃度1%のフッ化水素含有液を用いた。
【0249】
図22(a)は、シリコン窒化膜のWERと成膜温度との関係を示す図である。図22(a)の横軸はシリコン窒化膜形成時の成膜温度を、縦軸はWER(Å/min)をそれぞれ示している。なお、ここでいうWERとは、ウエハ面内における平均値を意味している。図中の■印は、左から順にサンプル1〜5(実施例)を、◆印は、左から順にサンプル6〜10(比較例)を、●印は、左から順にサンプル11〜13(実施例)を、▲印は、左から順にサンプル14〜16(参考例)をそれぞれ示している。また、図22(b)は、図22(a)の部分拡大図、つまりWERが350(Å/min)以下の範囲を抜粋して拡大した図である。
【0250】
図22(a)及び(b)によれば、550℃以下の低温領域において、サンプル1〜5(実施例)のシリコン窒化膜は、サンプル6〜10(比較例)のシリコン窒化膜と比較して、それぞれ、WERが小さくなっており、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。これは、第1の改質工程や第2の改質工程を行うことで、HガスやNガス
をプラズマ励起させることで生成される励起種が、シリコン含有層やシリコン窒化層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させ、これにより、シリコン窒化膜の膜質が向上したためと考えられる。なお、サンプル1〜5(実施例)のシリコン窒化膜は、面内におけるWER均一性、すなわち面内における膜質均一性が良好となり、また、面内における膜厚均一性も良好となることを確認した。
【0251】
また、図22(a)及び(b)によれば、550℃以下の低温領域において、サンプル14〜16(参考例)のシリコン窒化膜は、サンプル6〜10(比較例)のシリコン窒化膜と比較して、それぞれ、WERが小さくなっており、フッ化水素に対する耐性が向上していることが分かる。これは、原料ガスとして、DCSよりも塩素含有率が低いMCSガスを用いたことにより、シリコン窒化膜中の塩素濃度を低減させることができ、これにより、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性が向上したためと考えられる。
【0252】
また、図22(a)及び(b)によれば、550℃以下の低温領域において、サンプル11〜13(実施例)のシリコン窒化膜は、サンプル1〜5(実施例)のシリコン窒化膜と比較して、それぞれ、WERがさらに小さくなっており、フッ化水素に対する耐性がさらに向上していることが分かる。これは、DCSガスよりも塩素含有率が低いMCSガスを用いることによる上述の効果の他、MCSガスを用いる場合においても第1の改質工程および第2の改質工程を行うことで、HガスやNガスをプラズマ励起させることで生成される活性種(励起種)が、シリコン含有層やシリコン窒化層に含まれる水素や塩素等の不純物を効率的に脱離させ、これにより、シリコン窒化膜の膜質が向上したためと考えられる。なお、サンプル11〜13(実施例)のシリコン窒化膜は、面内におけるWER均一性、すなわち面内における膜質均一性が良好となり、また、面内における膜厚均一性も良好となることを確認した。
【0253】
これらの結果から、原料ガスとしてMCSガスを用い、MCSガス供給工程の後であってNHガス供給工程の前、および/または、NHガス供給工程の後であってMCSガス供給工程の前に上述の改質工程を行うことによって、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性(すなわち膜質)を更に向上させることができることが分かる。また、原料ガスとしてMCSガスを用いることによって、改質工程の実施時間を短縮させても良好な膜質のシリコン窒化膜を成膜できるようになるため、成膜時の生産性をさらに向上できることも分かる。
【0254】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0255】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0256】
(付記2)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程後の所定期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間のうち一方の期間において、前記プラズマ励起
させた水素含有ガスを供給する工程を行い、
前記原料ガスを供給する工程後の所定期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行う。
【0257】
(付記3)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程後の前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の前記原料ガスの供給停止期間のうち一方の期間において、前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、
前記原料ガスを供給する工程後の前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスの供給停止期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の前記原料ガスの供給停止期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行う。
【0258】
(付記4)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程後であって前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程前の期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後であって前記原料ガスを供給する工程前の期間のうち一方の期間において、前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、
前記原料ガスを供給する工程後であって前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程前の期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後であって前記原料ガスを供給する工程前の期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行う。
【0259】
(付記5)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程後の所定期間において、前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間において、前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行う。
【0260】
(付記6)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程では、前記基板上に層を形成し、
前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、前記層に対して第1の改質処理を行い、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、前記第1の改質処理がなされた前記層を窒化層に変化させ、
前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、前記窒化層に対して第2の改質処理を行う。
【0261】
(付記7)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程では、前記基板上に層を形成し、
前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、前記層に対して第1の改質処理を行い、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、前記第1の改質処理がなされた前記層を窒化層に変化させ、
前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、前記窒化層に対して第2の改質処理を行う。
【0262】
(付記8)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスを供給する工程では、前記基板上に層を形成し、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、前記層を窒化層に変化させ、
前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、前記窒化層に対して第1の改質処理を行い、
前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、前記窒化層に対して第2の改質処理を行う。
【0263】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各工程は前記基板を処理室内に収容した状態で行われ、
前記原料ガスを供給する工程の後に前記処理室内をパージする第1のパージ工程と、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程の後に前記処理室内をパージする第2のパージ工程と、
を更に有する。
【0264】
(付記10)
付記9の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記第1のパージ工程におけるパージ時間を前記第2のパージ工程におけるパージ時間よりも長くする。
【0265】
(付記11)
付記9の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記第2のパージ工程を省略する。
【0266】
(付記12)
付記1乃至11のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を連続的に行う。
【0267】
(付記13)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各工程は前記基板を処理室内に収容した状態で行われ、
前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を間に前記処理室内をパージする工程を行うことなく連続的に行う。
【0268】
(付記14)
付記1乃至13のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記窒化ガスを供給する工程では、前記基板に対してプラズマ励起させた窒化ガスを供給する。
【0269】
(付記15)
本発明の他の態様によれば、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0270】
(付記16)
付記1乃至15のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程では、複数の励起部においてプラズマ励起させた水素含有ガスを、前記各励起部より前記基板に対して供給する。
【0271】
(付記17)
付記1乃至16のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程では、複数の励起部においてプラズマ励起させた窒素ガスおよび複数の励起部においてプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを、前記各励起部より前記基板に対して供給する。
【0272】
(付記18)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程では、複数の励起部においてプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを、前記各励起部より前記基板に対して供給する。
【0273】
(付記19)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
複数の励起部においてプラズマ励起させた水素含有ガスを、前記各励起部より前記基板に対して供給する工程と、
複数の励起部においてプラズマ励起させた窒化ガスを、前記各励起部より前記基板に対して供給する工程と、
複数の励起部においてプラズマ励起させた窒素ガスおよび複数の励起部においてプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを、前記各励起部より前記基板に対して供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0274】
(付記20)
付記16乃至19のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記複数の励起部は、前記基板の中心と前記処理室内に供給されたガスを排気する排気口の中心とを結ぶ直線を対象軸として線対称となるように配置される。
【0275】
(付記21)
付記16乃至19のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記複数の励起部は、前記基板の中心を挟んで対向するように配置される。
【0276】
(付記22)
付記16乃至19のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記励起部は2つ設けられ、各励起部と前記処理室内に供給されたガスを排気する排気口とを結ぶ直線が二等辺三角形を構成するように配置される。
【0277】
(付記23)
付記1乃至22のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記窒化膜を形成する工程では、前記基板を回転させる。
【0278】
(付記24)
付記1乃至23のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記窒化膜を形成する工程では、前記基板の温度を300℃以上650℃以下とする。
【0279】
(付記25)
付記1乃至24のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記窒化膜を形成する工程では、前記基板の温度を300℃以上600℃以下とする。
【0280】
(付記26)
付記1乃至25のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記窒化ガスはアンモニアガスを含み、
前記水素含有ガスは水素ガスを含み、
前記希ガスはアルゴンガスおよびヘリウムガスのうち少なくともいずれかを含む。
【0281】
(付記27)
付記1乃至26のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスはシラン系原料ガスを含む。
【0282】
(付記28)
付記1乃至21のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスはクロロシラン系原料ガスを含む。
【0283】
(付記29)
付記1乃至22のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記原料ガスはジクロロシランガスおよびモノクロロシランガスのうち少なくともいずれかを含む。
【0284】
(付記30)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する基板処理方法が提供される。
【0285】
(付記31)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒化ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して水素含有ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒素ガスおよび希ガスのうち少なくともいずれかを供給する第4ガス供給系と、
ガスをプラズマ励起または熱励起させる励起部と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成するように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、前記第4ガス供給系および前記励起部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0286】
(付記32)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【0287】
(付記33)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0288】
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉(処理容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記原料ガスを供給する工程後の所定期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間のうち一方の期間において、前記プラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程を行い、
前記原料ガスを供給する工程後の所定期間、および、前記プラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程後の所定期間のうち前記一方の期間とは異なる他方の期間において、前記プラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程を行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する工程と、
前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する工程を有する基板処理方法。
【請求項4】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒化ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して水素含有ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒素ガスおよび希ガスのうち少なくともいずれかを供給する第4ガス供給系と、
ガスをプラズマ励起または熱励起させる励起部と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成するように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、前記第4ガス供給系および前記励起部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室内の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた水素含有ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起または熱励起させた窒化ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマ励起させた窒素ガスおよびプラズマ励起させた希ガスのうち少なくともいずれかを供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に窒化膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−93551(P2013−93551A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181859(P2012−181859)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】