説明

半導体装置の製造方法および基板処理装置

【課題】高誘電率を有する薄膜を改質する半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】高誘電体膜が形成された基板を処理室へ搬入する工程と、基板にマイクロ波を照射することにより、高誘電体膜を加熱して改質する工程と、基板を前記処理室から搬出する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にIC(Integrated Circuit)等の半導体装置を製造する基板処理技術に係り、特に、半導体ウェハ(以下、ウェハという。)等の基板を処理し、半導体装置を製造する半導体製造装置や、基板を処理する基板処理装置、あるいは、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に膜を形成する成膜法の一例として、PVD(Physical Vapor DeposiTion)、CVD
(Chemical Vapor DeposiTion)法、ALD(Atomic Layer DeposiTion)法が挙げられる。
PVD法は、イオン衝撃や熱エネルギーによって固体原料から物理的に気相中に放出され
た原料原子を利用して、原料に含まれる元素を構成要素とする膜を基板上に成膜する方法
である。CVD法とは、気相中もしくは基板表面における2種以上の原料の反応を利用して、原料分子に含まれる元素を構成要素とする膜を基板上に成膜する方法である。CVD法は、気相中もしくは基板表面における反応を利用するため、PVD法と比較してステップカバレージ(段差被覆性)に優れる。ALD法は、ある成膜条件(温度や時間等)下で、成膜に用いる2種以上の原料について、1種類ずつ交互に基板上に供給して原子層単位で基板に吸着させ、表面反応を利用して原子層レベルで制御して成膜する方法である。例えば特許文献1のように、ALD法は、CVD法と比較してより低い基板温度(処理温度)において処理が可能であり、また、成膜サイクルの回数によって形成する膜厚の制御が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/02874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、基板上に形成される絶縁性膜としては、例えば、比誘電率の高いHigh−k(高誘電体)膜であるハフニウム(Hf)やジルコニウム(Zr)やアルミニウム(Al)の酸化物および窒化物などが挙げられる。特にHigh−k膜であるハフニウム酸化膜(HfOx)、ジルコニウム酸化膜(ZrOx)などは、HfやZrを組成に含む有機あるいは無機材料と、酸素(O)やオゾン(O)などの酸化性ガスを反応させることによって形成されている。
【0005】
これらの技術を用いて、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)のキャパシタ等のキャパシタ電極やトランジスタゲート構造等が形成される。キャパシタは、電極に絶縁膜が挟まれた積層構造を有する。チタン窒化膜(TiN膜)、High−k膜、チタン窒化膜を交互に成膜することにより、上下電極としてのチタン窒化膜で、容量絶縁膜としてのHigh−k膜が挟まれた積層構造の形態を有するキャパシタが形成される。チタン窒化膜は、四塩化チタン(TiCl)等のチタン(Ti)含有ガスとアンモニア(NH)等の窒素剤(窒素(N)含有ガス)を用いて成膜され、High−k膜として例えばジルコニウム酸化膜(ZrO膜)はテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ:Zr[N(CH)CHCH)とオゾン(O)等の酸化剤(酸素(O)含有ガス)を用いて成膜される。また、High−k膜成膜後に、比誘電率の向上を目的として結晶化アニールを実施する場合もある。これはHigh−k膜の比誘電率がその結晶構造に依存するためである。
【0006】
例えばDRAMのキャパシタの場合、下部電極であるチタン窒化膜の上にHigh−k膜を成膜することになるが、酸化剤の酸化能力不足やプロセス条件の不完全性、低温化要求などによってHigh−k膜を構成する全ての原料を完全に酸化ができないこと、及びHigh−k膜の比誘電率を向上させるために結晶化アニールを行う際に酸素が遊離してしまうことなどの理由により、High−k膜中に酸素が欠損したり、炭素(C)が残留してしまうなど膜中欠陥が発生してしまう場合がある。このような膜中欠陥を経路として電流が流れることによりキャパシタのリーク電流を増大させてしまったり、キャパシタが劣化するなどの不良現象が発生する。また、結晶化アニールの最適化が不十分でHigh−k膜の結晶構造が十分に制御されていない場合、比較的低誘電率を持つ結晶相が支配的になることにより要求される比誘電率が実現できない、大きな結晶粒が発生することによるリーク電流の増大などの不具合が発生する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述した課題を解決し、High−k膜が存在する半導体装置の製造工程の途中で、結晶構造の最適化や結晶化促進、酸素欠損の低減、残留不純物の低減などを可能とし、絶縁性膜に好適な改質処理を行うことが可能な半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴とするところは、高誘電体膜が形成された基板を処理室へ搬入する工程と、基板にマイクロ波を照射することにより、高誘電体膜を加熱して改質する工程と、基板を前記処理室から搬出する工程と、を有する半導体装置の製造方法にある。
【0009】
本発明の第2の特徴とするところは、処理室と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波を処理室に供給する導波口と、高誘電体膜が形成された基板が収容された処理室へ導波口からマイクロ波を供給するマイクロ波発生装置を制御する基板処理装置にある。
【0010】
本発明の第3の特徴とするところは、高誘電体膜が形成された基板を複数枚収容可能な反応管と、反応管内で基板を積層して支持する基板支持部材と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波を反応管内に供給する導波口と、を有し、基板は、基板の上面に反応管内に供給するマイクロ波の半波長以上の空間を設けるよう基板支持部材に載置され、導波口は反応管の側壁に設けられることを特徴とする基板処理装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高誘電率を有する絶縁性薄膜が形成された形態の基板に対して、結晶粒成長や結晶配向性の改善等の、いわゆる改質処理を行う工程を有する半導体装置の製造方法および基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる成膜処理装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる処理炉及びその周辺構造の概略図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる改質処理装置の垂直断面図である。
【図5】マイクロ波パワーと基板温度の相関の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる成膜処理装置の成膜動作のフローチャートである。
【図7】成膜動作におけるガスの供給タイミングである。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかる改質処理装置の改質動作のフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる改質処理装置の垂直断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態にかかる改質処理装置の垂直断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態にかかる改質処理装置の他の例を説明する概略図である。
【図12】本発明の第4の実施形態にかかる改質処理装置の例を説明する概略図である。
【図13】本発明の第5の実施形態にかかる改質処理装置の例を説明する概略図である。
【図14】本発明の第5の実施形態にかかる改質処理装置の改質動作のフローチャートである。
【図15】本発明の第5の実施形態にかかる改質処理装置の他の例を説明する概略図である。
【図16】本発明の第5の実施形態にかかる改質処理装置の他の例を説明する概略図である。
【図17】本発明の第5の実施形態にかかる改質処理装置の他の例を説明する概略図である。
【図18】本発明の第6の実施形態にかかる改質処理装置の他の例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態において、基板処理装置システムは、一例として、半導体装置(IC:Integrated Circuit)の製造方法における基板処理工程である成膜工程及び改質工程を実施する半導体製造装置システムとして構成されている。
基板処理装置システムは、成膜処理装置10と改質処理装置200とにより構成される。
【0014】
<成膜処理装置構成>
まず、成膜処理装置10について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる成膜処理装置10の斜視図を示す。なお、以下の説明では、成膜処理装置10としてバッチ式縦型装置を用いた場合について述べる。
【0015】
成膜処理装置10では、シリコン等から構成される基板としてのウエハ2を収納するウエハキャリアとしてカセット4が使用される。
成膜処理装置10は、筐体12を備える。筐体12の正面壁12aの下方には、メンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口18が開設されている。正面メンテナンス口18には、開閉自在な正面メンテナンス扉20が建て付けられている。
【0016】
正面メンテナンス扉20には、カセット搬入搬出口22が筐体12内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口22は、フロントシャッタ24によって開閉されるようになっている。
【0017】
カセット搬入搬出口22の筐体12内側には、カセットステージ26が設置されている。カセット4は、工場内搬送装置(非図示)によって、カセットステージ26上に搬入されたり、カセットステージ26上から搬出されたりするようになっている。
【0018】
カセットステージ26には、工場内搬送装置によって、カセット4内でウエハ2が垂直姿勢を保持し、このカセット4のウエハ出し入れ口が上方向を向くようにしてカセット4が載置される。カセットステージ26は、カセット4を筐体12後方に右回り縦方向90°回転し、カセット4内のウエハ2が水平姿勢となり、カセット4のウエハ出し入れ口が筐体12後方を向くように動作可能に構成されている。
【0019】
筐体12内の前後方向の略中央下部には、カセット棚28が設置されている。カセット棚28は、複数段複数列にわたり複数個のカセット4を保管するように構成されている。カセット棚28には、後述するウエハ移載機構36の搬送対象となるカセット4が収納される移載棚30が設けられている。
カセットステージ26の上方には、予備カセット棚32が設置されており、予備のカセット4を保管するように構成されている。
【0020】
カセットステージ26とカセット棚28との間には、カセット搬送装置34が設置されている。カセット搬送装置34は、カセット4を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ34aと、搬送機構としてのカセット搬送機構34bとで構成されている。カセット搬送装置34は、カセットエレベータ34aとカセット搬送機構34bとの連続動作により、カセット4をカセットステージ26、カセット棚28、及び予備カセット棚32の間で搬送する。
【0021】
カセット棚28の後方には、ウエハ移載機構36が設置されている。ウエハ移載機構36は、ウエハ2を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置36aと、このウエハ移載装置36aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ36bとで構成されている。
【0022】
ウエハ移載装置エレベータ36bは、筐体12の右側端部に設置されている。ウエハ移載機構36は、ウエハ移載装置36aとウエハ移載装置エレベータ36bとの連続動作により、ウエハ移載装置36aのツイーザ36cでウエハ2をピックアップしてそのウエハ2をボート38に装填(チャージング)したり、ボート38から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0023】
筐体12の後部上方には、処理炉40が設けられている。処理炉40の下端部は炉口シャッタ42により開閉されるように構成されている。
【0024】
処理炉40の下方には、ボート38を処理炉40に昇降させるボートエレベータ44が設置されている。ボートエレベータ44には、連結具としてのアーム46が連結されており、このアーム46には、蓋体としてのシールキャップ48が水平に据え付けられている。
【0025】
ボート38は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ2をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0026】
シールキャップ48は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ48はボート38を垂直に支持するもので、処理炉40の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0027】
カセット棚28の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給する第1のクリーンユニット50aが設置されている。第1のクリーンユニット50aは、供給ファン及び防塵フィルタで構成されており、クリーンエアを筐体12の内部に流通させるように構成されている。
【0028】
ウエハ移載装置エレベータ36b及びボートエレベータ44側と反対側である筐体12の左側端部には、クリーンエアを供給する第2のクリーンユニット50bが設置されている。第2のクリーンユニット50bは、第1のクリーンユニット50aと同様に供給ファン及び防塵フィルタから構成されている。第2のクリーンユニット50bから供給されたクリーンエアは、ウエハ移載装置36a、ボート38等の近傍を流通し、その後、排気装置(非図示)から筐体12の外部に排気される。
【0029】
次に、成膜処理装置10の動作について説明する。
【0030】
カセット4がカセットステージ26に供給されるのに先立って、カセット搬入搬出口22がフロントシャッタ24によって開放される。その後、カセット4は、カセット搬入搬出口22からカセットステージ26上に搬入される。このとき、カセット4内のウエハ2は垂直姿勢に保持され、カセット4のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。
【0031】
その後、カセット4は、カセットステージ26によって、カセット4内のウエハ2が水平姿勢となり、カセット4のウエハ出し入れ口が筐体12の後方を向くように、右周り縦方向90°回転される。
【0032】
次に、カセット4は、カセット棚28ないし予備カセット棚32の指定された棚位置へカセット搬送装置34によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚28ないし予備カセット棚32からカセット搬送装置34によって移載棚30に移載されるか、もしくは直接移載棚30に搬送される。
【0033】
カセット4が移載棚30に移載されると、ウエハ2はカセット4からウエハ移載装置36aのツイーザ36cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ボート38に装填(チャージング)される。ボート38にウエハ2を受け渡したウエハ移載装置36aはカセット4に戻り、次のウエハ2をボート38に装填する。
【0034】
予め指定された枚数のウエハ2がボート38に装填されると、炉口シャッタ42が開かれ、処理炉40の下端部が開放される。続いて、ウエハ2群を保持したボート38は、シールキャップ48がボートエレベータ44によって上昇されることで、処理炉40内へ搬入(ローディング)される。
【0035】
ローディング後は、処理炉40にてウエハ2に処理が実施される。処理後は、上記と逆の手順で、カセット4及びウエハ2が筐体12の外部に搬出される。
【0036】
次に、処理炉40の周辺構造について説明する。
図2は、処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。図3は、図2のA−A線断面図を示す。
【0037】
処理炉40は、加熱手段(加熱機構)としてのヒータ72を有する。
ヒータ72は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(非図示)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ72の内側には、このヒータ72と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管74が設けられている。
【0038】
反応管74の下方に、この反応管74の下端開口を気密に閉塞可能なシールキャップ48が配置される。シールキャップ48は、反応管74の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ48の上面には、反応管74の下端と当接するシール部材としてのOリング76が設けられている。
処理炉40では、少なくとも、反応管74及びシールキャップ48によりウエハ2を成膜処理する処理室(成膜室)80が形成されている。
【0039】
シールキャップ48の処理室80と反対側には、ボート38を回転させる回転機構82が設けられている。回転機構82の回転軸84は、シールキャップ48を貫通してボート38に接続されており、このボート38を回転させることでウエハ2を回転させるように構成されている。
シールキャップ48がボートエレベータ44によって垂直方向に昇降されることで、ボート38は処理室80に対し搬入搬出される構成となっている。
【0040】
シールキャップ48には、断熱部材としての石英キャップ86を介してボート38が立設される。石英キャップ86は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され、断熱部として機能するとともにボート38を保持する保持体となっている。
【0041】
反応管74には、処理室80内の雰囲気を排気する排気管90が設けられている。排気管90には、処理室80内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ92及び圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ94を介して、真空排気装置としての真空ポンプ96が接続されている。真空ポンプ96は、処理室80内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気するように構成されている。
なお、APCバルブ94は弁を開閉して処理室80内の真空排気・真空排気停止ができ、さらに弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。
主に、排気管90、圧力センサ92、APCバルブ94、真空ポンプ96により排気系が構成される。
【0042】
反応管74内には、温度検出器としての温度センサ98が設置されており、この温度センサ98により検出された温度情報に基いてヒータ72への通電具合を調整することで、処理室80内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ98は、L字型に構成されており、反応管74の内壁に沿って設けられている。
【0043】
処理室80内であって反応管74の下部には、4本のノズル(ノズル100a、ノズル100b、ノズル100c、ノズル100d)が反応管74を貫通するように設けられている。
ノズル100a、ノズル100b、ノズル100c、及びノズル100dにはそれぞれ、ガス供給管102a、ガス供給管102b、ガス供給管102c、及びガス供給管102dが接続されている。
このように、反応管74には、4本のノズル100a−100dと、4本のガス供給管102a−102dが設けられており、処理室80は、その内部へ複数種類のガスを供給されることが可能ように構成されている。
【0044】
ガス供給管102aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)104a、気化装置(気化手段)であり液体原料を気化して原料ガスとしての気化ガスを生成する気化器106a、及び開閉弁であるバルブ108aが設けられている。
バルブ108aを開けることにより、気化器106a内で生成された気化ガスが、ノズル100aを介して処理室80内へ供給されるように構成されている。
【0045】
ガス供給管102aの気化器106aとバルブ108aの間には、排気管90に接続されたベントライン110aが接続されている。ベントライン110aには、開閉弁であるバルブ118aが設けられており、原料ガスを処理室80に供給しない場合は、バルブ118aを介して原料ガスをベントライン110aへ供給できるように構成されている。
このため、バルブ108aを閉めバルブ118aを開けることにより、気化器106aにおける気化ガスの生成を継続したまま、処理室80内への気化ガスの供給を停止することが可能となっている。
気化ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、本実施形態においては、バルブ108aとバルブ118aの切り替え動作によって、処理室80内への気化ガスの供給・停止を短時間で切り替えることが可能な構成となっている。
【0046】
ガス供給管102aには、バルブ108aの下流側(反応管74に近い側)に不活性ガス供給管122aが接続されている。不活性ガス供給管122aには、上流方向から順に、MFC124a、及び開閉弁であるバルブ128aが設けられている。
【0047】
ガス供給管102aの先端部に、ノズル100aが接続されている。ノズル100aは、反応管74の内壁とウエハ2との間における円弧状の空間に、反応管74の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ2の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。
【0048】
ノズル100aは、L字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル100aの側面には、ガスを供給するガス供給孔130aが設けられており、このガス供給孔130aは、反応管74の中心を向くように開口している。
ガス供給孔130aは、反応管74の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0049】
主に、ガス供給管102a、ベントライン110a、MFC104a、気化器106a、バルブ108a、118a、ノズル100aにより第1のガス供給系が構成される。
また,主に、不活性ガス供給管122a、MFC124a、バルブ128aにより第1の不活性ガス供給系が構成される。
【0050】
ガス供給管102bには、上流方向から順に、MFC104b、及び開閉弁であるバルブ108bが設けられている。
【0051】
ガス供給管102bには、バルブ108bの下流側(反応管74に近い側)に不活性ガス供給管122bが接続されている。不活性ガス供給管122bには、上流方向から順に、MFC124b、及び開閉弁であるバルブ128bが設けられている。
【0052】
ガス供給管102bの先端部に、ノズル100bが接続されている。ノズル100bは、反応管74の内壁とウエハ2との間における円弧状の空間に、反応管74の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ2の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。
【0053】
ノズル100bは、L字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル100bの側面には、ガスを供給するガス供給孔130bが設けられており、このガス供給孔130bは、反応管74の中心を向くように開口している。
ガス供給孔130bは、反応管74の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0054】
主に、ガス供給管102b、MFC104b、バルブ108b、ノズル100bにより第2のガス供給系が構成される。
また、主に、不活性ガス供給管122b、MFC124b、バルブ128bにより第2の不活性ガス供給系が構成される。
【0055】
ガス供給管102cには、上流方向から順に、MFC104c、気化器106c、及び開閉弁であるバルブ108cが設けられている。
バルブ108cを開けることにより、気化器106c内にて生成された気化ガスがノズル100cを介して処理室80内へ供給されるように構成されている。
【0056】
ガス供給管102cの気化器106cとバルブ108cの間には、排気管90に接続されたベントライン110cが接続されている。ベントライン110cには、開閉弁であるバルブ118cが設けられており、原料ガスを処理室80に供給しない場合は、バルブ118cを介して原料ガスをベントライン110cへ供給できるように構成されている。
このため、バルブ108cを閉めバルブ118cを開けることにより、気化器106cにおける気化ガスの生成を継続したまま、処理室80内への気化ガスの供給を停止することが可能となっている。
気化ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、本実施形態においては、バルブ108cとバルブ118cの切り替え動作によって、処理室80内への気化ガスの供給・停止を短時間で切り替えることが可能な構成となっている。
【0057】
ガス供給管102cには、バルブ108cの下流側に不活性ガス供給管122cが接続されている。不活性ガス供給管122cには、上流方向から順に、MFC124c、及び開閉弁であるバルブ128cが設けられている。
【0058】
ガス供給管102cの先端部に、ノズル100cが接続されている。ノズル100cは、反応管74の内壁とウエハ2との間における円弧状の空間に、反応管74の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ2の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。
【0059】
ノズル100cは、L字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル100cの側面には、ガスを供給するガス供給孔130cが設けられており、このガス供給孔130cは反応管74の中心を向くように開口している。
ガス供給孔130cは、反応管74の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0060】
主に、ガス供給管102c、ベントライン110c、MFC104c、気化器106c、バルブ108c、118c、ノズル100cにより第3のガス供給系が構成される。
また、主に、不活性ガス供給管122c、MFC124c、バルブ128cにより第3の不活性ガス供給系が構成される。
【0061】
ガス供給管102dには、上流方向から順に、オゾン(O3)ガスを生成する装置であるオゾナイザ132、バルブ134d、MFC104d、気化器106d、及び開閉弁であるバルブ108dが設けられている。
【0062】
ガス供給管102dの上流側は、酸素(O2)ガスを供給する酸素ガス供給源(非図示)に接続されている。オゾナイザ132に供給されたO2ガスは、このオゾナイザ132にてO3ガスとなり、処理室80内に供給されるように構成されている。
【0063】
ガス供給管102dのオゾナイザ132とバルブ134dの間には、排気管90に接続されたベントライン110dが接続されている。ベントライン110dには、開閉弁であるバルブ118dが設けられており、O3ガスを処理室80に供給しない場合は、バルブ118dを介してO3ガスをベントライン110dへ供給できるように構成されている。
このため、バルブ108dを閉めバルブ134dを開けることにより、オゾナイザ132によるO3ガスの生成を継続したまま、処理室80内へのO3ガスの供給を停止することが可能となっている。
O3ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、本実施形態においては、バルブ108d、バルブ134d、及びバルブ118dの切り替え動作によって、処理室80内へのO3ガスの供給・停止を短時間で切り替えることが可能な構成となっている。
【0064】
ガス供給管102dには、バルブ108dの下流側に不活性ガス供給管122dが接続されている。不活性ガス供給管122dには、上流方向から順に、MFC124d、及び開閉弁であるバルブ128dが設けられている。
【0065】
ガス供給管102dの先端部に、ノズル100dが接続されている。ノズル100dは、反応管74の内壁とウエハ2との間における円弧状の空間に、反応管74の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ2の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。
【0066】
ノズル100dは、L字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル100dの側面には、ガスを供給するガス供給孔130dが設けられており、このガス供給孔130dは、反応管74の中心を向くように開口している。
ガス供給孔130dは、反応管74の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0067】
主に、ガス供給管102d、ベントライン110d、MFC104d、オゾナイザ132、バルブ108d、134d、118d、ノズル100dにより第4のガス供給系が構成される。
また、主に、不活性ガス供給管122d、MFC124d、バルブ128dにより第4の不活性ガス供給系が構成される。
【0068】
ガス供給管102aからは、第1の原料ガス(処理ガス)として、例えばチタン原料ガス、すなわちチタン(Ti)を含むガス(チタン含有ガス)が、MFC104a、気化器106a、バルブ108a、ノズル100aを介して処理室80内に供給される。
チタン含有ガスとしては、例えば四塩化チタン(TiCl)を用いることができる。
【0069】
第1の原料ガス(第1の原料)は、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであってもよいが、本実施形態においては液体である場合について説明する。第1の原料が常温常圧で気体の場合は、気化器106aを省略することができる。
【0070】
ガス供給管102bからは、窒化ガス(窒化剤)として、窒素(N)を含む処理ガス(窒素含有ガス)が、MFC104b、バルブ108b、ノズル100bを介して処理室80内に供給される。
窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガス、窒素(N)ガス、三フッ化窒素(NF)ガス、Nガスを用いることができる。
【0071】
ガス供給管102cからは、第2の原料ガス(処理ガス)として、例えばジルコニウム原料ガス、すなわちジルコニウム(Zr)を含むガス(ジルコニウム含有ガス)が、MFC104c、気化器106c、バルブ108c、ノズル100cを介して処理室80内へ供給される。
ジルコニウム含有ガスとしては、例えばテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ:Zr(N(CH)C)を用いることができる。
【0072】
第2の原料ガス(第2の原料)は、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであってもよいが、本実施形態においては液体である場合について説明する。第2の原料が常温常圧で気体の場合は、気化器106cを省略することができる。
【0073】
ガス供給管102dからは、酸化ガス(酸化剤)として、例えばOガスが、バルブ134d、MFC104d、バルブ108dを介して処理室80内へ供給される。Oガスは、酸素(O)を含む処理ガス(酸素含有ガス)がオゾナイザ132に供給されることで生成される。酸素含有ガスとしては、例えばOガスを用いることができる。
【0074】
また、オゾナイザ132にてOガスを生成せずに、酸化ガスとしてOガスを処理室80内へ供給することも可能である。
【0075】
不活性ガス供給管122a−122dからは、不活性ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、それぞれ対応するMFC124a−124d、バルブ128a−128d、ガス供給管102a−102d、ノズル100a−100dを介して処理室80内に供給される。
不活性ガスとしては、Nガスの他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0076】
<改質処理装置構成>
次に、改質処理装置200について説明する。
図4は、本発明の一実施形態にかかる改質処理装置200の垂直断面図を示す。改質処理装置200は、処理室(改質室)210と搬送室(不図示)とマイクロ波供給部(マイクロ波発生装置、マイクロ波発振器)とを備える。処理室210は、ウェハ2を改質処理する。マイクロ波供給部は、マイクロ波発生部220と導波路(導波管)221と導波口222とを備える。
【0077】
マイクロ波発生部220は、例えば、固定周波数マイクロ波又は可変周波数マイクロ波を発生する。マイクロ波発生部220としては、例えばマグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン等が用いられる。マイクロ波発生部220で発生したマイクロ波は、導波路221を介して、処理室210と連通している導波口222から処理室210内に導入される。なお、図4ではマイクロ波は横方向からウエハ2に水平に導入しているが、これに限らず、例えば処理室210の上部からウエハ2に対して垂直方向にマイクロ波を導入してもよい。また、導波路221を複数設け、複数の導波路221から処理室20.1内にマイクロ波を導入してもよい。
処理室210内に導入されたマイクロ波は、処理室210壁面に対して反射を繰り返す。マイクロ波は処理室210内でいろいろな方向へ反射し、処理室210内はマイクロ波で満たされる。処理室210内のウェハ2に当たったマイクロ波はウェハ2に吸収され、ウェハ2はマイクロ波により誘電加熱される。
【0078】
なお、ここでマイクロ波とは周波数帯域が約300MHzから約300GHzの電磁波を総称する。真空中の波長でいうと約1mから1mm程度の電磁波である。このマイクロ波には約30GHzから300GHz程度のミリ波を含む。
【0079】
ウェハ2の温度は、マイクロ波のパワーが小さければ温度が低く、パワーが大きければ温度が高くなる。図5に、シリコンウェハにマイクロ波を照射したときのマイクロ波パワーとウェハ温度の相関データを示す。図5は、マイクロ波パワーと基板温度の相関の一例を示す図である。図5に示すように、マイクロ波のパワーが大きくなるほど、ウェハ温度が上昇している。
なお、ウェハ温度は、処理室の大きさや形状、マイクロ波の導波口の位置、ウェハの位置によって変わるものであり、ここにあげるデータのウェハ温度値は一例である。しかし、マイクロ波パワーを大きくすると、ウェハ温度が高くなるという相関関係は崩れない。
【0080】
処理室210を形成する処理容器218は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されており、処理室210と外部とをマイクロ波的に遮蔽する構造となっている。
処理室210内には、ウェハ2を支持する基板支持部としての基板支持ピン213が設けられている。基板支持ピン213は、支持したウェハ2の中心と処理室210の中心とが垂直方向で略一致するように設けられている。基板支持ピン213は、例えば石英又はテフロン(登録商標)等からなる複数(本実施形態においては3本)で構成され、その上端でウェハ2を支持する。
基板支持ピン213の下部であってウェハ2の下方には、基板温度制御部(温度制御機構を有する)である導電性の基板支持台(基板保持台)212が設けられている。基板支持台212は、例えばアルミニウム(Al)などの導体である金属材料により構成されている。基板支持台212は、上面から見た形がウェハ2の外径よりも大きい円形で、円盤状又は円柱状に形成されている。
【0081】
基板支持台212は金属製であるため、基板支持台212においてはマイクロ波の電位がゼロとなる。したがって、仮にウェハ2を基板支持台212の表面に直接置いた場合、マイクロ波の電界強度が弱い状態となる。そこで、本実施形態では、基板支持台212からマイクロ波の1/4波長(λ/4)の位置、もしくはλ/4の奇数倍の位置にウェハ2を載置するようにする。λ/4の奇数倍の位置では電界が強いため、ウェハ2を効率よくマイクロ波で加熱することができる。
本実施形態では、たとえば5.8GHzのマイクロ波を使用し、マイクロ波の波長が51.7mmであるので、基板支持台212からウェハ2までの高さを12.9mmとしている。
【0082】
基板支持台212内には、ウェハ2を冷却するための冷媒を流す冷媒流路231が設けられている。本実施形態では、冷媒として水が使用されるが、この冷媒は冷却チラーなど他の冷媒を用いても良い。冷媒流路231は、処理室210の外部において、冷媒流路231へ冷媒を供給する冷媒供給管232と、冷媒流路231から冷媒を排出する冷媒排出管236に接続される。冷媒供給管232には、下流から順に、冷媒供給管232を開閉する開閉バルブ233、冷媒流量を制御する流量制御装置234、冷媒源35が設けられている。開閉バルブ233と流量制御装置234は、後述するコントローラ300と電気的に接続されており、コントローラ300により制御される。
【0083】
処理室210内のウェハ2の上方には、ウェハ2の温度を検出する温度検出器214および温度制御機構(図示せず)が設けられている。温度検出器214には、例えば、赤外線センサを用いることができる。温度検出器214は、コントローラ300に電気的に接続されている。温度検出器214によって検出されたウェハ2の温度が、所定の温度よりも高い場合、コントローラ300は、ウェハ2の温度が所定の温度となるように、開閉バルブ233と流量制御装置234を制御して、冷媒流路231へ流す冷却水の流量を調節する。逆に、ウエハ2の温度が所定の温度より低い場合は改質処理の効果を高めるために温度制御機構によりウエハ2を加熱することも可能である。
【0084】
処理容器218の上部であって処理室210の上壁には、例えば窒素(N2)等のガスを導入するガス供給管252が設けられている。ガス供給管252には、上流から順に、ガス供給源255、ガス流量を調整する流量制御装置254、ガス流路を開閉するバルブ253が設けられており、このバルブ253を開閉することで、処理室210内にガス供給管252からガスが導入、又は導入停止される。ガス供給管252から導入される導入ガスは、ウェハ2を冷却したり、パージガスとして処理室210内のガスを押し出したりするのに用いられる。ガス供給管252には、ガスを均一に拡散する拡散器を設けるようにしてもよい。
ガス供給源255とガス供給管252と流量制御装置254とバルブ253から、ガス供給部が構成される。流量制御装置254とバルブ253は、コントローラ300と電気的に接続されており、コントローラ300により制御される。
【0085】
図4に示すように、例えば直方体である処理容器218の下部であって処理室210の側壁には、処理室210内のガスを排気するガス排出管262が設けられている。ガス排出管262には、上流から順に、圧力調整バルブ263と、排気装置としての真空ポンプ264が設けられており、この圧力調整バルブ263の開度を調整することで、処理室210内の圧力が所定の値に調整される。
ガス排出管262と圧力調整バルブ263と真空ポンプ264から、ガス排出部が構成される。圧力調整バルブ263と真空ポンプ264は、コントローラ300と電気的に接続されており、コントローラ300により圧力調整制御される。
【0086】
図4に示すように、処理容器218の一側面には、処理室210の内外にウェハ2を搬送するためのウェハ搬送口271が設けられている。ウェハ搬送口271には、ゲートバルブ272が設けられており、ゲートバルブ駆動部273によりゲートバルブ272を開けることにより、処理室210内と搬送室内とが連通するように構成されている。
搬送室内には、ウェハ2を搬送する搬送ロボット(不図示)が設けられている。搬送ロボットには、ウェハ2を搬送する際にウェハ2を支持する搬送アームが備えられている。ゲートバルブ272を開くことによって、搬送ロボットにより処理室210内と搬送室内との間で、ウェハ2を搬送することが可能なように構成されている。
【0087】
<コントローラ構成>
基板処理装置システムには、制御部(制御手段)であるコントローラ300が設けられており、このコントローラ300は、成膜処理装置10及び改質処理装置200の各構成要素の動作を制御する。
【0088】
具体的には、成膜処理装置10について、コントローラ300は、MFC104a−104d、124a−124d、バルブ108a−108d、128a−128d、118a、118c、118d、134d、気化器106a、106c、106d、オゾナイザ132、圧力センサ92、APCバルブ94、ヒータ72、温度センサ98、真空ポンプ96、回転機構82、ボートエレベータ44等に接続されている。
コントローラ300により、MFC104a−104d、124a−124dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ108a−108d、128a−128d、118a、118c、118d、134dの開閉動作、気化器106a、106c、106d、及びオゾナイザ132の制御、圧力センサ92及びAPCバルブ94の開閉に基づく圧力調整動作、温度センサ98に基づくヒータ72の温度調整動作、真空ポンプ96の起動・停止、回転機構82の回転速度調節動作、ボートエレベータ44の昇降動作の制御等が行われる。
【0089】
改質処理装置200について、コントローラ300は、マイクロ波発生部220、ゲートバルブ駆動部273、搬送ロボット、流量制御装置254,234、バルブ253,233、圧力調整バルブ263等の各構成部の動作を制御する。
【0090】
成膜処理装置10及び改質処理装置200それぞれに、装置を構成する各部を制御するコントローラを設けるようにしてもよい。
【0091】
<処理動作>
次に、基板処理装置システムを用いて、半導体装置(半導体デバイス)を製造する複数の工程の中の一工程として、ウエハ2に成膜工程及び改質工程を行う処理動作について説明する。
【0092】
処理動作の概略について説明する。
従来の成膜法において、CVD(Chemical Vapor DeposiTion)法では、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを同時に供給し、また、ALD(Atomic Layer DeposiTion)法では、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを交互に供給する。
そして、ガス供給時のガス供給流量、ガス供給時間、プラズマパワーなどの供給条件を制御することによりシリコン窒化膜(SiN膜)やシリコン酸化膜(SiO膜)を形成する。
【0093】
これらの成膜法では、例えばSiN膜を形成する場合は、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si ≒1.33となるようにすることを目的とし、SiO膜を形成する場合は、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si
≒ 2となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。
【0094】
一方、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、供給条件を制御することも可能である。つまり、形成する膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御することもできる。
このように、形成する膜を構成する複数の元素の比率(膜の組成比)を制御しつつ成膜を行うことも可能である。
【0095】
なお、「金属膜」という用語は、金属原子を含む導電性の物質で構成される膜を意味しており、これには金属単体で構成される導電性の金属単体膜の他、導電性の金属窒化膜、導電性の金属酸化膜、導電性の金属酸窒化膜、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜、導電性の金属シリサイド膜等も含まれる。
例えば、チタン窒化膜は導電性の金属窒化膜である。
【0096】
以下、まず、異なる種類の元素を含む複数種類のガスを交互に供給して化学両論組成を有する膜を2種類積層して形成し、その後、形成された積層膜を改質するシーケンス例について説明する。
【0097】
本実施形態では、成膜処理装置10において、基板上に金属窒化膜であるチタン窒化膜(TiN膜)を形成(金属膜形成工程)した後、絶縁膜であるジルコニウム酸化膜(ZrO膜)を形成(絶縁膜形成工程)することで金属窒化膜と絶縁膜の積層膜を形成する。基板上には下部電極となるチタン窒化膜の上部にキャパシタ絶縁膜であるジルコニウム酸化膜が積層された構造を有することとなる。そして、積層膜が形成された基板を改質処理装置200に導入し、マイクロ波を用いて積層膜を改質(改質工程)して薄膜の結晶成長を行う例について説明する。
以下の説明において、基板処理装置システムを構成する各部の動作は、コントローラ300により制御される。
【0098】
<成膜処理>
まず、基板処理装置システムの成膜処理装置10による成膜動作(S10)について説明する。
図6は、成膜処理装置10による成膜動作(S10)のフローチャートである。
図7は、成膜動作(S10)におけるガスの供給タイミングを示す。
【0099】
本実施形態においては、第1の原料ガスとしてチタン(Ti)含有ガスであるTiCl4ガスを、窒化ガスとして窒素含有ガスであるNH3ガスを、第2の原料ガスとしてジルコニウム(Zr)含有ガスであって有機金属原料ガスであるTEMAZガスを、酸化ガスとして酸素(O)含有ガスであるO3ガスを用いる。
また、不活性ガスとしてN2ガスを用いる。
【0100】
(搬入工程)
(ステップ102)
まず、複数枚のウエハ2がボート38に装填(ウエハチャージ)される。
【0101】
(ステップ104)
複数枚のウエハ2を支持したボート38が、ボートエレベータ44によって持ち上げられて処理室80内に搬入(ボートロード)される。
この状態で、シールキャップ48はOリング76を介して反応管74の下端をシールした状態となる。
【0102】
(ステップ106)
処理室80内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ96によって真空排気される。この際、処理室80内の圧力が圧力センサ92で測定され、この測定された圧力に基づいてAPCバルブ94がフィードバック制御される(圧力調整)。
【0103】
また、処理室80内が所望の温度となるようにヒータ72によって加熱される。この際、処理室80内が所望の温度分布となるように、温度センサ98が検出した温度情報に基づきヒータ72への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。
【0104】
続いて、回転機構82により、ボート38が回転されることでウエハ2が回転される。
【0105】
(金属膜形成工程)
次に、TiClガスとNHガスを処理室80内に供給することにより金属膜であるチタン窒化膜を成膜する金属膜形成工程を行う。金属膜形成工程では次の4つのステップを順次実行する。
【0106】
(ステップ110)
ステップ110では、第1の原料ガスとしてTiClガスを処理室80に供給する(第1の工程)。
ガス供給管102aのバルブ108aを開き、ベントライン110aのバルブ118aを閉じることで、気化器106aを介してガス供給管102a内にTiClガスを流す。 ガス供給管102a内を流れたTiClガスは、MFC104aにより流量調整される。
流量調整されたTiClガスはノズル100aのガス供給孔130aから処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0107】
このとき、バルブ128aを開き、不活性ガス供給管122a内にNガスを流す。不活性ガス供給管122a内を流れたNガスは、MFC124aにより流量調整される。流量調整されたNガスは、TiClガスと合流し、処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0108】
この際、APCバルブ94を適正に調整して処理室80内の圧力を、例えば40 〜 900 Paの範囲の圧力とする。
MFC104aで制御するTiClガスの供給流量は、例えば0.0.5 〜 0.3 g/min.の範囲の流量とする。
TiClガスにウエハ2を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば15 〜 120秒間の範囲の時間とする。
ヒータ72の温度は、ウエハ2の温度(成膜処理温度)が、例えば300 〜 550 ℃の範囲の温度となるように設定する。
【0109】
TiClガスの供給により、ウエハ2表面の下地膜上にチタンを含む第1の層が形成される。すなわち、ウエハ2上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のチタン含有層としてのチタン層(Ti層)が形成される。チタン含有層は、TiClの化学吸着(表面吸着)層であってもよい。なお、チタンは、それ単独で固体となる元素である。
【0110】
チタン層とは、チタンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。チタンにより構成される連続的な層を、「薄膜」と称する場合がある。
また、TiClの化学吸着層とは、TiCl分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。
【0111】
ウエハ2上に形成されるチタン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ114における窒化の作用がチタン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ2上に形成可能なチタン含有層の最小値は1原子層未満である。
よって、チタン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。
【0112】
成膜処理温度及び処理室80内の圧力等の条件を調整することにより、ウエハ2上に形成される層の状態を調整することができる。
具体的には、TiClガスが自己分解する条件とすると、ウエハ2上にチタンが堆積してチタン層が形成される。一方、TiClガスが自己分解しない条件とすると、ウエハ2上にTiClが化学吸着してTiClガスの化学吸着層が形成される。
【0113】
ウエハ2上にチタン層を形成する場合、ウエハ2上にTiClの化学吸着層を形成する場合と比較して、成膜レート(成膜速度)を高くすることができる。
また、ウエハ2上にチタン層を形成する場合、ウエハ2上にTiClの化学吸着層を形成する場合と比較して、より緻密な層を形成することができる。
【0114】
(ステップ112)
ステップ12では、処理室80内に残留するガスを除去する(第2の工程)。
チタン含有層が形成された後、バルブ108aを閉じバルブ118aを開けて、処理室内へのTiClガスの供給を停止し、TiClガスをベントライン110aへ流す。
【0115】
このとき、排気管90のAPCバルブ94は開いたままとして、真空ポンプ96により処理室80内を真空排気し、処理室80内に残留する未反応又はチタン含有層形成に寄与した後のTiClガスを処理室80内から排除する。この際、バルブ128aは開いたままとして、Nガスの処理室80内への供給を維持する。
これにより、処理室80内に残留する未反応又はチタン含有層形成に寄与した後のTiClガスを処理室80内から排除する効果が高まる。
【0116】
(ステップ114)
ステップ114では、窒化ガスとしてNH3ガスを処理室80に供給する(第3の工程) 処理室80内の残留ガスを除去した後、ガス供給管102bのバルブ108bを開き、ガス供給管102b内にNH3ガスを流す。
ガス供給管102b内を流れたNHガスは、MFC104bにより流量調整される。流量調整されたNHガスは、ノズル100bのガス供給孔130bから処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0117】
このとき、バルブ128bを開き、不活性ガス供給管122b内にNガスを流す。不活性ガス供給管122b内を流れたNガスは、MFC124bにより流量調整される。流量調整されたNガスは、NHガスと合流し、処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0118】
NHガスを流すときは、処理室80内の圧力を、例えば40 〜 900 Paの範囲の圧力とする。
MFC104bで制御するNHガスの供給流量は、例えば6 〜 15 slmの範囲の流量とする。
NHガスにウエハ2を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば15 〜 120秒間の範囲の時間とする。
ヒータ72の温度は、ステップ110と同様に、ウエハ2の温度が300 〜 550 ℃の範囲の温度となるように設定する。
【0119】
このとき、処理室80内に供給されているガスはNHガスであり、処理室80内にTiClガスは供給されていない。したがってNHガスは、気相反応を起こすことはなく、ステップ110でウエハ2上に形成された第1の層としてのチタン含有層の一部と反応する。
これにより、チタン含有層は窒化されて、チタン及び窒素を含む第2の層、すなわち、チタン窒化層(TiN層)が形成される。
【0120】
(ステップ116)
ステップ116では、処理室80内に残留するガスを除去する(第4の工程)。
ガス供給管102bのバルブ108bを閉じて、NHガスの供給を停止する。
【0121】
このとき、排気管90のAPCバルブ94は開いたままとして、真空ポンプ96により処理室80内を真空排気し、処理室80内に残留する未反応又は窒化に寄与した後のNHガスを処理室80内から排除する。この際、バルブ128bは開いたままとして、Nガスの処理室80内への供給を維持する。
これにより、処理室80内に残留する未反応又は窒化に寄与した後のNHガスを処理室80内から排除する効果が高まる。
【0122】
(ステップ118)
ステップ118では、ステップ110〜116を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行ったかを判定する。所定回数行っている場合は、ステップ120の処理に進み、所定回数行っていない場合は、ステップ110の処理に進む。
【0123】
このように、ステップ110〜116のサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ2上に所定膜厚のチタンおよび窒素を含むチタン窒化膜を形成することができる。
ステップ110〜116のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0124】
(絶縁膜形成工程)
次に、TEMAZガスとOガスを処理室80内に供給することにより絶縁膜であるジルコニウム酸化膜を成膜する絶縁膜形成工程を行う。絶縁膜形成工程では次の4つのステップを順次実行する。
【0125】
(ステップ120)
ステップ120では、第2の原料としてTEMAZガスを処理室80に供給する(第5の工程)。
ガス供給管102cのバルブ108cを開き、ベントライン110cのバルブ108cを閉じることで、気化器106cを介してガス供給管102c内にTEMAZガスを流す。
ガス供給管102c内を流れたTEMAZガスは、MFC104cにより流量調整される。流量調整されたTEMAZガスはノズル100cのガス供給孔130cから処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0126】
このとき、バルブ128cを開き、不活性ガス供給管122c内にNガスを流す。不活性ガス供給管122g内を流れたNガスは、MFC124cにより流量調整される。流量調整されたNガスは、TEMAZガスと合流し、処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0127】
TEMAZガスを流すときは、処理室80内の圧力を、例えば50 〜 400 Paの範囲の圧力とする。
MFC104cで制御するTEMAZガスの供給流量は、例えば0.1 〜 0.5 g/min.の範囲の流量とする。
TEMAZガスにウエハ2を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば30 〜 240秒間の範囲内の時間とする。
ヒータ72の温度は、ウエハ2の温度(成膜処理温度)が、例えば150 〜 250 ℃の範囲内の温度となるように設定する。
【0128】
TEMAZガスの供給により、ウエハ2表面の下地膜上にジルコニウムを含む第3の層が形成される。すなわち、ウエハ2上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のジルコニウム含有層としてのジルコニウム層(Zr層)が形成される。ジルコニウム含有層はTEMAZの化学吸着(表面吸着)層であってもよい。なお、ジルコニウムは、それ単独で固体となる元素である。
【0129】
ジルコニウム層とは、ジルコニウムにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。ジルコニウムにより構成される連続的な層を、「薄膜」と称する場合がある。
また、TEMAZの化学吸着層とはTEMAZ分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。
【0130】
ウエハ2上に形成されるジルコニウム含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ124での酸化の作用がジルコニウム含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ2上に形成可能なジルコニウム含有層の最小値は1原子層未満である。
よって、ジルコニウム含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。
【0131】
成膜処理温度及び処理室80内の圧力等の条件を調整することにより、ウエハ2上に形成される層の状態を調整することができる。
具体的には、TEMAZガスが自己分解する条件とすると、ウエハ2上にジルコニウムが堆積してジルコニウム層が形成される。一方、TEMAZガスが自己分解しない条件とすると、ウエハ2上にTEMAZが化学吸着してTEMAZガスの化学吸着層が形成される。
【0132】
ウエハ2上にジルコニウム層を形成する場合、ウエハ2上にTEMAZの化学吸着層を形成する場合と比較して、成膜レートを高くすることができる。
また、ウエハ2上にジルコニウム層を形成する場合、ウエハ2上にTEMAZの化学吸着層を形成する場合と比較して、より緻密な層を形成することができる。
【0133】
(ステップ122)
ステップ122では、処理室80内に残留するガスを除去する(第6の工程)。
ジルコニウム含有層が形成された後、バルブ108cを閉じバルブ118cを開けて、処理室内へのTEMAZガスの供給を停止し、TEMAZガスをベントライン110cへ流す。
【0134】
このとき、排気管90のAPCバルブ94は開いたままとして、真空ポンプ96により処理室80内を真空排気し、処理室80内に残留する未反応又はジルコニウム含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを処理室80内から排除する。この際、バルブ128cは開いたままとして、Nガスの処理室80内への供給を維持する。
これにより、処理室80内に残留する未反応又はジルコニウム含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを処理室80内から排除する効果が高まる。
【0135】
(ステップ124)
ステップ124では、酸化ガスとしてOガスを処理室80に供給する(第7の工程)。
処理室80内の残留ガスを除去した後、ガス供給管102d内にOガスを流す。ガス供給管102d内を流れたOガスは、オゾナイザ132によりO3ガスとなる。
【0136】
ガス供給管102dのバルブ134d及びバルブ108dを開き、ベントライン110dのバルブ118dを閉めることで、オゾナイザ132で生成されたOガスは、MFC106dにより流量調整される。流量調整されたOガスは、ノズル100dのガス供給孔130dから処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0137】
このとき、バルブ128dを開き、不活性ガス供給管122d内にNガスを流す。不活性ガス供給管122b内を流れたNガスは、MFC124dにより流量調整される。流量調整されたNガスは、Oガスと合流し、処理室80内に供給されつつ排気管90から排気される。
【0138】
ガスを流すときは、処理室80内の圧力を、例えば50 〜 400Paの範囲の圧力とする。
MFC104dで制御するOガスの供給流量は、例えば10 〜 20 slmの範囲の流量とする。
ガスにウエハ2を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば60 〜 300秒間の範囲の時間とする。
ヒータ72の温度は、ステップ120と同様、ウエハ2の温度が150 〜 250
℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0139】
このとき、処理室80内に供給されているガスはOガスであり、処理室80内にTEMAZガスは供給されていない。したがってOガスは、気相反応を起こすことはなく、ステップ120でウエハ2上に形成された第3の層としてのジルコニウム含有層の一部と反応する。
これによりジルコニウム含有層は酸化されて、ジルコニウム及び酸素を含む第4の層、すなわち、ジルコニウム酸化層(ZrO層)が形成される。
【0140】
(ステップ126)
ステップ126では、処理室80内に残留するガスを除去する(第8の工程)。
ガス供給管102dのバルブ108dを閉じバルブ118dを開けて、処理室80内へのOガスの供給を停止し、Oガスをベントライン110dへ流す。
【0141】
このとき、排気管90のAPCバルブ94は開いたままとして、真空ポンプ96により処理室80内を真空排気し、処理室80内に残留する未反応又は酸化に寄与した後のOガスを処理室80内から排除する。この際、バルブ128dは開いたままとして、Nガスの処理室80内への供給を維持する。
ガスはパージガスとして作用し、処理室80内に残留するガスが処理室80内から除去される(パージ)。
これにより、処理室80内に残留する未反応又は酸化に寄与した後のOガスを処理室80内から排除する効果が高まる。
【0142】
(ステップ128)
ステップ128では、ステップ120〜126を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行ったかを判定する。所定回数行っている場合は、ステップ132の処理に進み、所定回数行っていない場合は、ステップ120の処理に進む。
【0143】
このように、ステップ120〜126のサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ2上に所定膜厚のジルコニウムおよび酸素を含むジルコニウム酸化膜を形成することができる。
ステップ110〜116のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0144】
(搬出工程)
(ステップ132)
絶縁膜形成工程が終了すると、内部の雰囲気がN2ガスに置換された処理室80内は、圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0145】
(ステップ134)
その後、ボートエレベータ44によりシールキャップ48が下降されて、反応管74の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ2がボート38に保持された状態で反応管74の下端から外部に搬出(ボートアンロード)される。
【0146】
(ステップ136)
続いて、処理済みのウエハ2は、ウエハ移載装置36aによってボート38から取り出される(ウエハディスチャージ)。
なお、ここでは同一の基板処理装置システムの成膜処理装置10を用いてチタン窒化膜およびジルコニア酸化膜の成膜を行ったが、成膜処理装置10に準ずる構成の別々のチタン窒化膜成膜装置およびジルコニア酸化膜成膜装置を用いて積層膜の成膜を行う事も出来る。
【0147】
<改質処理>
次に、基板処理装置システムの改質処理装置200による改質動作(S20)について説明する。
図8は、改質処理装置200による改質動作(S20)のフローチャートである。
【0148】
(基板搬入工程)
(ステップ202)
ジルコニウム酸化膜が形成されたウェハ2を処理室210に搬入する基板搬入工程において、まず、ゲートバルブ272を開き、処理室210と搬送室とを連通させる。次に、処理対象のウェハ2を、搬送ロボットにより、搬送室内から処理室210内へ搬入する(ウエハチャージ)。
【0149】
(ステップ204)
処理室210内に搬入されたウェハ2は、搬送ロボットにより基板支持ピン213の上端に載置され、基板支持ピン213に支持される。次に、搬送ロボットが処理室210内から搬送室内へ戻ると、ゲートバルブ272が閉じられる(ウエハ載置)。
【0150】
(ステップ206)
処理室216内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ(非図示)によって真空排気される。基板を搬入すると処理室の外の大気雰囲気が巻き込まれる。この大気雰囲気中の水分や酸素がプロセスに影響しないように処理室内を十分に排気する。この際、処理室216内の圧力が圧力センサ(非図示)で測定され、この測定された圧力に基づいて圧力調整バルブ263がフィードバック制御される(圧力調整)。
【0151】
(ステップ208)
次に、処理室210内を窒素(N2)雰囲気に置換する。好適には100%のNガスとする。ガス排出管262から、真空ポンプ264により処理室210内のガス(雰囲気)を排出するとともに、ガス供給管252から、N2ガスを処理室210内に導入する(置換)。このとき、圧力調整バルブ263により処理室210内の圧力を200Pa〜200,000Paの中の所定の値であって、例えば大気圧に調整する。
【0152】
(改質工程)
(ステップ210)
次に、マイクロ波発生部220で発生させたマイクロ波を、導波口222から処理室210内に導入し、ウェハ2の表面側から照射する。このマイクロ波照射により、ウェハ2表面上のジルコニウム酸化膜を100〜450℃であって、例えば400℃に加熱し、ジルコニウム酸化膜の改質処理、つまり、ジルコニウム酸化膜からCやH等の不純物を離脱させて、緻密化し安定した絶縁体薄膜に改質する処理を行う。なお、ウエハ2の最適な加熱温度は、ウエハ2の表面上に形成された膜腫によって異なる。また、下地、配線構造などによっても異なる。
ジルコニウム酸化膜を含むHigh−k膜等の誘電体は、誘電率に応じてマイクロ波の吸収率が異なる。誘電率が高いほどマイクロ波を吸収しやすい。我々の研究によれば、ハイパワーのマイクロ波をウェハに照射し処理すると、ウェハ上の誘電体膜が加熱され改質されることがわかった。また、マイクロ波による加熱の特徴は、誘電率εと誘電正接tanδによる誘電加熱で、この物性値が異なる物質を同時に加熱すると、加熱されやすい物質、すなわち、誘電率が高い方の物質だけ選択的により高温に加熱できることが分かった。
【0153】
High−k膜のアニールについて説明すると、ウェハの基板材料であるシリコンに比べ、High−k膜は誘電率εが高い。例えば、シリコンの比誘電率εrは3.9であるが、High−k膜であるHfO膜の比誘電率εrは25、ZrO膜の比誘電率εrは35である。よって、High−k膜を成膜したウェハにマイクロ波を照射すると、High−k膜が選択的により高温に加熱される。なお、シリコンとHigh-k膜の温度差は熱伝達により緩和させる事は言うまでも無い。
我々の研究によると、ハイパワーのマイクロ波を照射する方が膜の改質効果が大きい。ハイパワーのマイクロ波を照射すると、急速にHigh−k膜の温度を上昇させることができる。しかし、ハイパワーの比較的低パワーのマイクロ波をでも長時間照射すると、改質プロセス中にウェハ全体の温度が高くなってしまう。時間が経過すると、シリコン自身がマイクロ波により誘電加熱されることと、High−k膜からシリコンへの熱伝導により、シリコンの温度も上昇してしまうからである。これはハイパワーのマイクロ波を照射することにより、ウェハが温度上昇し上限温度に達するまでの時間に、誘電体を誘電加熱により高い温度まで加熱することができるためと考えられる。例えば、HfO膜の場合、改質時のウエハ温度を約400℃としたとしても、下地の温度はさらに上昇してしまうため、冷却して温度上昇を抑える必要がある。
【0154】
そこで、本実施形態では、マイクロ波を照射中に、冷却流路13に冷却水を供給しておくことで、ウェハ2の温度上昇を抑制する。好ましくは、ウェハ2の温度が所定の温度となるように、開閉バルブ233と流量制御装置234を制御して、冷媒流路231へ流す冷却水の流量を調節する。このように、ウェハ2の処理温度を一定とすることにより、複数のウェハを処理した際のプロセス結果の再現性を向上することができる。
【0155】
また、加熱処理工程において、制御部300はバルブ253を開いて、処理室210内にガス供給管252からN2ガスを導入するとともに、圧力調整バルブ263により処理室210内の圧力を所定の値、本実施形態では大気圧に調整しつつ、ガス排出管262から処理室210内のN2ガスを排出する。このようにして、改質工程において、処理室210内を所定の圧力値に維持する。本例では、周波数0.5〜300GHzのマイクロ波であって、好ましくは1.0〜50GHz、より好ましくは5.8〜7.0GHzであって例えば5.8GHzのマイクロ波を、100W〜2,000Wのパワーであって例えば1600Wのパワーで、ウェハ2の温度400℃、処理室210内の圧力を大気圧として5分間、加熱処理を行った。なお、処理室210内に導入するN2ガスの流量を制御することで、ウェハ2の冷却を助長することもできる。
積極的にNガスの冷却効果を使う場合は、ガス供給管252を基板冷却台に設け、基板と基板冷却台の間にガスを流すことにより、ガスによる冷却効果向上を期待することもできる。このガスの流量を制御することにより基板の温度制御を行うこともできる。
また本実施例ではNガスを使用しているが、プロセス的な問題または安全性等に支障がなければ、熱伝達率の高い他のガス、たとえば希釈Heガスなどを追加することにより、基板の冷却効果を向上させることも可能である。
【0156】
このようにして、ウエハ2上に形成されたジルコニウム酸化膜について、このジルコニウム酸化膜を構成する双極子を振動又は回転によって励起することにより、結晶成長及び酸素欠損これらの修復や含有する不純物(有機物等)の除去等の改質がなされる。
【0157】
なお、ジルコニウム酸化膜のようなHigh−k膜の場合、マイクロ波領域に効率的にエネルギーを吸収し、加熱に利用できる周波数帯域が存在する。これは、マイクロ波による電界を受けた際に発生し、高い誘電率の原因ともなっている分極現象のうち、配向分極による誘電分散のピークが存在する事、および結晶化によってイオン分極の共鳴型のピークが通常の赤外領域ではなくより低い周波数帯域に変化するためである。上記の理由により、特にHigh−k膜においてはマイクロ波の周波数を好適に選択する事により、効率よく加熱を行う事が可能となる。
【0158】
例えば、配向分極による誘電分散のピークは比較的ブロードな分散を示すため、数GHzのマイクロ波を使用すれば、High−k膜のように配向分極が容易な(すなわち分極が大きな)材料を、比較的容易に選択的に加熱することが可能となる。また、特にいわゆるミリ波近傍以上の、より高いマイクロ波領域を用いた場合には、High−k膜のイオン分極の共鳴による加熱効果を有効に活用する事も期待できる。
【0159】
更に、より効率的にHigh−k膜の加熱を実現しようとした場合は、以下の指針に従って好適な周波数帯を決定する事が有効である。すなわち、事前に当該High−k膜の誘電緩和の周波数特性を測定することである。まずHigh−k膜の交流電場・電磁場における誘電緩和の虚数項を測定する。すると対象となるHigh−k膜に特有のピークが得られる。このピークの周波数の1/2以上の周波数のマイクロ波を用いる事が本応用には有効である。
【0160】
ここで、マイクロ波の吸収率は、例えば、分布が急峻なDebye型緩和を仮定した場合、上記ピークの位置で飽和値の約半分、1/2の周波数でさらにその約半分となる事から、効率の良い加熱を考えた場合はピークの周波数の1/2以上の周波数のマイクロ波を用いる事が妥当であるといえる。また、High−k膜の緩和のピークは温度上昇とともに高周波側にシフトする傾向があるので、加熱時に温度上昇後の効率を高くとりたい場合は、少なくとも室温でのピーク周波数以上、望ましくは10倍程度以上を選択するのが有効である。また、高温での過加熱を防止したい場合は、逆にピーク周波数より低い周波数を選択し、温度上昇後の加熱効率を上昇前よりも低くするのが有効である。なお、上記にはDebye型緩和を前提に説明したが、本指針はDebye型緩和に限らず、他の型の誘電緩和や共鳴型のあるいは振動子型の分散現象にも有効である事は言うまでも無い。
【0161】
以上のようにして、所定時間、マイクロ波を導入して改質処理を行った後、マイクロ波の導入を停止する(マイクロ波導入)。
なお、本実施形態では、ウェハ2を水平方向に回転させることなく加熱処理を行っているが、ウェハ2を回転させながら加熱処理を行ってもよい。
【0162】
(搬出工程)
(ステップ212)
改質工程の終了後、処理室210内の圧力を大気圧に復帰する(大気圧復帰)。
【0163】
(ステップ218)
ゲートバルブ272を開き、処理室210と搬送室とを連通させる。そして、搬送ロボットにより処理室210内の基板支持台212から搬送室270へ処理済みのウエハ2を搬出する(ウエハディスチャージ)。
【0164】
なお、本実施形態では改質処理中の圧力を大気圧に設定したが、改質処理を減圧下で行う場合は、処理室210に例えばN2ガス等を導入して処理室210内の圧力を大気圧に戻した後、ウエハ2を搬出する。また、処理室に隣接して隔壁を介してロードロック室を設置することにより、大気圧に戻すことなくウエハを交換し、連続的に処理を実施することも可能である。さらに、減圧下での処理でない場合も処理室に隣接して隔壁を介してロードロック室を設置することにより、外部からの大気成分や不純物の混入を抑制することができる。その際には搬送時の処理室内の圧力をロードロック室よりも高く設定すると効果的である。
【0165】
また、本実施形態では、処理環境が1気圧以下の場合には真空ポンプを使用して処理室210内を減圧に保持することを想定しているが、処理環境が1気圧以上の場合は、特にポンプは必須ではない。また、処理前の排気においても、ポンプを使用した強制的な排気のほかに、例えば窒素ガスでパージすることなど、様々な方法が適用可能である。
【0166】
また、本実施形態では、一度に1枚の基板を処理する枚葉装置を例に説明したが、これに限らず、複数の基板を1度に処理するバッチ式装置や複数の基板を積層して1度に処理するバッチ式縦型装置等にも適用可能である。バッチ式装置においては、マイクロ波のパワー(電力)は、1枚の基板を処理する場合と比較して、ウエハ枚数を乗じたパワーを供給してもよい。
【0167】
また、本実施形態では、改質処理中にウエハ2を冷却する例について記載したが、改質処理後にウエハ2を冷却してもよい。冷却する理由は、膜の結晶性を制御するためである。ウエハ温度を下げている間も結晶の成長は進んでいるため、できるだけ急速に冷却することにより、結晶成長を抑制して結晶状態をクエンチし、所望の結晶構造を得ることが可能となる。従って、例えばウエハ2が所定の温度となるまで冷却するとよい。
【0168】
ウエハ2の冷却は、ウエハ2を処理室210から搬出(縦型装置の場合はボートダウンを含む)してから不活性ガスにより冷却を行ってもよい。また、処理室210内にウエハ2を収容したままマイクロ波を停止し、所定時間だけ不活性ガスを処理室210内、望ましくはウエハ裏面へ供給することによってウエハ2を冷却し、ウエハ2が所定温度となったら搬出してもよい。
【0169】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置システムについて、図9を用いて説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置システムに含まれる改質処理装置の垂直断面図である。
第2の実施形態においては、改質処理装置により、マイクロ波発生部220にてマイクロ波の周波数を可変(時間と共に変化)させて改質処理を行う。その他の点については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0170】
薄膜の励起に好適な周波数を選択した場合、その周波数が一意に決定された場合、壁面との干渉効果によって定在波が発生し、場所によって局所的な有効電力に差が発生する。周波数が二周波あるいは三周波といった離散的な複数の値を取った場合には、定在波による有効電力のばらつきは多少緩和される。しかし、本質的には同様の問題が発生する。一方で周波数をある幅を持って可変させる場合であって、可変させる周波数帯をかつ対象となる分極膜の双極子が感応する周波数帯域に設定した場合には、分極膜の共振周波数が比較的広域でゆるやかな分布を持つ場合には、定在波の位置が異なる広い周波数帯域でマイクロ波のエネルギーが対象となる分極膜に吸収されるため、有効電力の位置依存性とそれによる改質効果のばらつきは大幅に軽減されることとなる。
【0171】
尚、マイクロ波の周波数を可変させて用いる場合、基板冷却台212からウェハ2までの高さは、変化する周波数帯の代表周波数の波長から求めれば良い。たとえば5.8GHz〜7.0GHzまで変化する場合、代表周波数を変化する周波数帯のセンタ周波数とし、代表周波数6.4GHzの波長46mmより、基板支持台212の表面からウェハ2までの高さを115mmとすればよい。
【0172】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置システムについて、図10を用いて説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置システムに含まれる改質処理装置の垂直断面図である。
第3の実施形態においては、改質処理装置には、基板と処理室内壁との相対的な位置関係が変更できるような機構が搭載されている。その他の点については第1の実施形態もしくは第2の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0173】
薄膜の励起に好適な周波数を選択した場合、その周波数が一意に決定されたとき、壁面との干渉効果によって定在波が発生し、場所によって局所的な有効電力に差が発生する。この効果は対象となる分極膜の双極子が感応する共振周波数が急峻な分布を持つ場合には特に顕著であり、マイクロ波の周波数を可変としても十分な効果が得られない場合がある。これを改善するため、本実施形態においてはウエハと壁の相対的な位置関係が変更できるような機構が搭載されている。
【0174】
また、導波口222から発射されたマイクロ波は処理室210の壁面に当たる毎にエネルギーが減衰する。基板を処理する場合、高いエネルギーのマイクロ波を基板に当てることで、急速加熱することができる。我々の研究では、反射波が支配的な状態でウェハを処理した場合と、ウェハに直接マイクロ波を照射した場合とでは、後者の方が基板の改質効果が高いと言う結果が出ている。
【0175】
しかしウェハに直接マイクロ波を照射する場合、ウェハの面積に比べ、導波口の大きさは小さく、またマイクロ波は導波口から発射された後あまり広がらないため、ウェハの表面に照射されるマイクロ波のエネルギーを均一にすることは容易でない。またウェハにマイクロ波を直接照射すると言っても、その全てのエネルギーがウェハに吸収されるわけではなく、一部がウェハ表面で反射したり、一部がウェハを透過したりする。これが反射波となり処理室内に定在波が発生する。処理室内で定在波が発生すると、ウェハ面内においてよく加熱される部分と、あまり加熱されない部分が生じる。これがウェハの加熱ムラとなり、膜質のウェハ面内均一性を悪くする原因となる。
【0176】
そこで、本実施形態においては、導波口222を処理室210の上壁に設け、導波口222と基板支持ピン213で支持されたウェハ2の表面との間の距離を、供給されるマイクロ波の1波長よりも短い距離としている。本例では、使用するマイクロ波の周波数を5.8GHzとし、そのマイクロ波の波長51.7mmよりも短い距離としている。導波口から1波長分の距離の範囲では、導波口から発射された直接波が支配的であると考えられる。上記のようにすると、基板に照射されるマイクロ波は、導波口222から直接発射された直接波が支配的となり、処理室内の定在波の影響を小さくすることができ、導波口222の近辺のウェハを急速加熱することができる。
しかしこの方法だけでは導波口222の付近のウェハ2の一部だけが加熱されることになり、ウェハ面内均一性は悪くなる。
【0177】
そこで、本実施形態においては、導波口222の中心位置は、基板支持ピン213で支持されたウェハ2の中心位置から偏心し、導波口222が基板支持ピン213で支持されたウェハ2の表面に対向している。本例では、ウェハ2の直径は300mm、導波口222の中心位置とウェハ2の中心位置までの距離を90mmとしている。このように、導波口222をウェハ2の中心位置から偏心させ、さらに後述の回転駆動部332によりウェハ2を回転させることで、ウェハ面を導波口222が走査するようにする。これにより、ウェハ2をより均一に加熱することができる。
【0178】
基板支持台212は、ステンレス(SUS)等の金属製の回転軸331で支えられ、回転軸331は、回転駆動部332により、水平方向に回転する。したがって、回転駆動部332により、回転軸331、基板支持台212、ウェハ2を、水平方向に回転することができる。回転駆動部332は、制御部300と電気的に接続されており、制御部300により制御される。
【0179】
これはウェハ面からみると、導波口222付近に滞在する時間はマイクロ波によって急速に加熱されるが、導波口22付近から離れると、加熱されにくくウェハ温度は下がる。このようにウエハ2を回転することで、ウェハ全体の温度上昇を抑えることができる。さらに好ましくは、マイクロ波を照射中に、ウェハ2を冷却することで、ウェハ2の温度上昇を抑制するのがよい。ウェハ2を冷却するには、例えば、処理室210内を通過するNガス量を増加させる、あるいは、基板支持台212内に冷媒を循環させる冷却流路を設けるようにすればよい。
【0180】
また、図10は導波口222をウエハ2の中心位置から偏芯させているが、図11(a)のように、導波口222をウエハ2の中心位置と対向する位置に設け、回転軸331を基板支持台212の中心位置から離れた位置に設けてもよい。
あるいは、図11(b)のように、導波口222を基板支持台212の中心位置と対向する位置に設けると共に、ウエハ2の中心位置と基板支持台212の中心位置が一致しないようウエハ2を基板支持台の端の位置に載置するようにしてもよい。
図11(a)および図11(b)のような形態では、ウエハ2を回転させることにより、図11(c)のように導波口222をウエハ2の回転中心から偏芯させることができる。
【0181】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る基板処理装置システムについて、図12を用いて説明する。図12は、本発明の第4の実施形態に係る基板処理装置システムに含まれる改質処理装置の垂直断面図である。
第3の実施形態では、基板と処理室内壁との相対的な位置関係が変更可能である機構を搭載することにより、処理室内での定在波の発生による基板面内におけるマイクロ波の励起位置依存性を低減する発明が記載されている。一方、第4の実施形態においては、改質処理装置の処理室内に、反射機構(拡散機構)を設置し、マイクロ波を反射させて処理室内に拡散させることにより、基板面内におけるマイクロ波の励起位置依存性を低減する。その他の点については第3の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0182】
図12(a)では、反射機構は、回転機構411及び可動反射板(可動拡散板)421を備えており、例えば処理容器218の上壁であって処理室210の上部であり側壁に近い位置もしくは処理容器218の上壁及び側壁の境界に、回転機構411を有する可動反射板421が設けられる。処理室210内で定在波が発生すると、振幅が最大のホットスポット、振幅がゼロのコールドスポットが存在してしまい、ウエハ2面内で均一に励起することが困難となるが、反射機構を設けることにより、マイクロ波を反射させて処理室210内で拡散させ、位置依存性を低減させることが可能となる。また、回転機構411により反射機構を回転させることで、よりマイクロ波の拡散効果を向上させることができる。
【0183】
また、図12(b)のように、回転機構412及び可動反射板(可動拡散板)422を有する反射機構を、例えば処理容器218の上壁であって処理室210の上部でありウエハ2の中心位置から外れた位置に対応する位置に設けてもよい。このように導波路221とウエハ2との間に可動反射板422を設けた場合であっても、マイクロ波を反射させて処理室210内で拡散させ、位置依存性を低減させることが可能となる。また、回転機構412により反射機構を回転させることで、よりマイクロ波の拡散効果を向上させることができる。
【0184】
さらに、図12(c)のように、回転機構413及び可動反射板(可動拡散板)423を有する反射機構を、例えば処理容器218の上壁であって処理室210の上部でありウエハ2の中心位置に対応する位置に設けてもよい。このように導波路221とウエハ2との間に可動反射板422を設けた場合であっても、マイクロ波を反射させて処理室210内で拡散させ、位置依存性を低減させることが可能となる。また、回転機構413により反射機構を回転させることで、よりマイクロ波の拡散効果を向上させることができる。
また、図12(a)、(b)、(c)以外の形態であっても、マイクロ波を反射させて処理室210内で拡散させ、マイクロ波の励起位置依存性を低減させる形態であれば適用可能である。
【0185】
可動反射板421、422、423の材質は、低抵抗である金属が好適であり、例えば銅、SUS、アルミニウム等を使用することができる。
【0186】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る基板処理装置システムについて、図13を用いて説明する。本発明は第1、2の実施形態のいずれに対しても適用可能である。本実施形態では、基板処理装置システムは、改質処理装置としてバッチ式縦型装置を有する。成膜処理装置は第1、2の実施形態と同様である。また、改質処理工程も第1〜5の実施形態と同様である。本発明の改質処理装置は、成膜処理装置とは処理炉の構成が異なるが、その他の点は同様であるので、説明を省略する。
【0187】
本発明の処理炉635の構成について、図13を用いて説明する。処理炉635はシールド636を備えている。シールド636は電磁波の外部への漏洩を効果的に防止可能な導電性材料によって形成されている。例えば、このような導電性材料としては、銅、アルミニウム、ステンレス、白金、銀等を挙げることができる。
但し、シールド636は導電性材料のみによって形成するに限らない。シールド636は多層シールド材料によって形成してもよい。例えば、多層シールド材料は、導電性材料からなる基材の内側表面に、電磁波を反射する反射面および電磁波を吸収する吸収層を形成することにより、構築することができる。
【0188】
シールド636は一端開口で他端閉塞の円筒形状に形成されており、シールド636は中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。
シールド636の筒中空部は複数枚のウエハ2が収容される処理室637を形成しており、シールド636の内径は取り扱うウエハ2の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
【0189】
シールド636の下端部には炉口フランジ638が設置されている。炉口フランジ638は処理炉635の炉口639を形成している。炉口フランジ638がサブ筐体624に支持された状態で、シールド636は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0190】
図13に示されているように、ボートエレベータ630は処理炉635の真下近傍に設置されている。ボートエレベータ630のアーム631に支持されたシールキャップ632は炉口639を閉塞する。すなわち、シールキャップ632は炉口フランジ638の外径と略等しい円盤形状に形成されており、ボートエレベータ630によって上昇されることにより、炉口639を気密シールする。
シールド636の下端部の側壁には排気管640の一端が接続されており、排気管640は他端を排気装置(図示せず)に接続されている。排気装置は排気管640を介して処理室637を排気する。
【0191】
シールド636の排気管640と異なる位置には、処理室637へガスを供給するためのガス供給管641の一端が接続されている。
【0192】
シールキャップ632上にはウエハ2を支持するボート(基板支持部、基板支持部材)642が垂直に立脚されて支持されている。ボート642は複数枚のウエハ2を保持して、処理室637内に搬入(ボートローディング)したり、処理室637外へ搬出(ボートアンローディング)したりする。ボート642は石英等の誘電体が使用されて形成されている。
ボート642は上下で一対の端板643、644と、3本の保持柱645、645、645とを備えている。3本の保持柱645、645、645は両端板643、644間に垂直に架橋されている。3本の保持柱645、645、645には複数の保持溝646が、上下方向に等間隔に配置されてそれぞれ形成されており、同一段の保持溝646、46、46は同一平面を構成している。すなわち、ボート642は同一段の保持溝646、646、646によってウエハ2の外周縁部を保持することにより、複数枚のウエハ2を中心を揃えて整列させた状態で保持する。
ボート642の下部には複数枚の断熱板647が配置されている。断熱板647は処理室637からの熱の放射を抑制する。
【0193】
シールキャップ632下面の中央にはロータリーアクチュエータ648が設置されている。ロータリーアクチュエータ648の回転軸649はボート642を支持する。すなわち、ロータリーアクチュエータ648は回転軸649によってボート642を回転させる。シールド636の外部にはベース651が水平に配置されており、ベース651上にはケース652がシールド636と同心円状に設置されている。ケース652は上端が閉塞した円筒形状もしくは多角形筒状に形成されており、シールド636よりも大きい。ケース652はシールド636の外側を取り囲んで電磁波の漏洩を防止し、シールド636を保護するとともに、周囲の環境を保護する。なお、ケース652は省略してもよい。
【0194】
シールド636側壁には電磁波導入ポート653が穿設されている。電磁波導入ポート653には処理室637内に電磁波を供給するための導波管654の一端が接続されている。導波管654の他端には処理室637内に電磁波を供給して加熱する加熱源としてのマイクロ波発生部(電磁波源)655が接続されている。マイクロ波発生部655は電磁波であるマイクロ波(ミリ波を含む)を供給する。マイクロ波発生部655は0.5〜300GHzの電磁波を導波管654に供給する。
【0195】
マイクロ波発生部655にはコントローラ300が接続されている。コントローラ300には処理室637内上部の温度を測定する上部温度測定器としての上側熱電対657と、処理室637内下部の温度を測定する下部温度測定器としての下側熱電対658とが接続されている。上側熱電対657の検出子としての熱接点657aはボート642の最上段にセットされた上部温度モニタ用ウエハ(上側モニタウエハという。)2Aに配置されており、下側熱電対658の検出子としての熱接点658aはボート642の最下段にセットされた下部温度モニタ用ウエハ(下側モニタウエハという。)2Bに配置されている。したがって、上側熱電対657は上側モニタウエハ2Aの温度を測定してコントローラ300に送信し、下側熱電対658は下側モニタウエハ2Bの温度を測定してコントローラ300に送信する。
上側モニタウエハ2Aおよび下側モニタウエハ2Bは、熱特性、殊に温度特性が熱処理するウエハ(以下、プロダクトウエハという場合がある。)2と同一になるように、調製されている。上側モニタウエハ2Aおよび下側モニタウエハ2Bは、例えば、不用品となったプロダクトウエハ2を使用してもよい。
複数枚のプロダクトウエハ2が、ボート642の上側モニタウエハ2Aと下側モニタウエハ2Bとの間に配置される。
【0196】
プロダクトウエハ2の配置枚数は20〜30枚が好ましい。これは、マイクロ波を1つの電磁波導入ポート653から導入する場合のビームの広がりに相当するためであり、マイクロ波とプロダクトウエハ2のエッジとの距離は、大凡、150cm前後である。望ましくは、25枚である。これは、ポッド2の収納枚数に相当し、ウエハ移載機構627と整合するためである。
【0197】
シールド636内周の下部には処理室637内下部を加熱する補助ヒータ659が同心円に敷設されており、補助ヒータ659は下側モニタウエハ2B近傍に配置されている。補助ヒータ659は抵抗発熱体等によって構成されており、コントローラ300によって制御される電源660に接続されている。コントローラ300は上側熱電対657の測定温度に基づいてマイクロ波発生部655をフィードバック制御し、下側熱電対658の測定温度に基づいて補助ヒータ659をフィードバック制御することにより、上側熱電対657の温度と下側熱電対658の温度とが同一になるように、マイクロ波発生部655と電源660とをそれぞれ制御する。
【0198】
次に、本構成に係るバッチ式改質処理装置を用いる改質動作について説明する。図14は、バッチ式改質処理装置による改質動作(S30)のフローチャートである。
【0199】
(基板搬入工程)
(ステップ302)
図13および図15に示されているように、予めボート642の最上段および最下段には、これから熱処理しようとするプロダクトウエハ2と同等の熱特性を有する上側モニタウエハ2Aおよび下側モニタウエハ2Bがそれぞれ配置されている。所定枚数のウエハ2がボート642に移載されると、ボートエレベータ630はボート642を上昇させ、図14に示されているように、処理炉635の処理室637に搬入(ボートローディング)する(ウエハチャージ)。なお、各プロダクトウエハ2の間隔は、照射する電磁波(マイクロ波もしくはミリ波)の波長の半波長以上とする。すなわち、電磁波の周波数が10GHzであれば15cm以上、6GHzであれば2.5cm以上、3GHzであれば5cm以上とする。
【0200】
(ステップ304)
ボート642が上限に達すると、シールキャップ632が炉口639をシール状態に閉塞するので、処理室637は気密に閉じられた状態になる。気密に閉じられると、排気管640は処理室637を排気する(圧力調整)。
【0201】
(ステップ306)
ロータリーアクチュエータ648はボート642を回転させる。このとき、窒素ガス等の不活性ガスがガス供給管641から供給される。処理室637内の圧力は200Pa〜200,000Paの中の所定の値であって、例えば大気圧に調整される(圧力調整)。
【0202】
(改質工程)
(ステップ307)
マイクロ波発生部655はウエハ2を100〜450℃であって、例えば400℃に昇温させる。すなわち、マイクロ波発生部655はマイクロ波またはミリ波を導波管654を経由して処理室637内に供給する。処理室637内に供給されたマイクロ波はウエハ2に入射して効率的に吸収されるために、ウエハ2をきわめて効果的に昇温させる。また、マイクロ波の電力はウエハ1枚の場合に対してウエハ枚数を乗じた電力を供給してもよい。
【0203】
この際に、上側熱電対657および下側熱電対658は上側モニタウエハ2Aおよび下側モニタウエハ2Bの温度をそれぞれ計測し、計測温度をコントローラ300に送信する。コントローラ300は上側熱電対657の測定温度に基づいてマイクロ波発生部655をフィードバック制御し、下側熱電対658の測定温度に基づいて補助ヒータ659の電源660をフィードバック制御することにより、上側熱電対657の温度と下側熱電対658の温度とが同一になるように、マイクロ波発生部655と電源660とをそれぞれ制御する。予め設定された処理時間が経過すると、ボート642の回転、ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管640の排気が停止する(マイクロ波導入)。
【0204】
(搬出工程)
(ステップ212)
改質工程の終了後、処理室210内の圧力を大気圧に復帰する(大気圧復帰)。その後に、ボートエレベータ630はシールキャップ632を下降させることにより、炉口639を開口するとともに、ボート642を炉口639から処理室637の外部に搬出(ボートアンローディング)する(ウエハディスチャージ)。
以上の作動が繰り返されることにより、複数枚のウエハ2がバッチ処理される。
【0205】
上記では、電源が一つであって、分配器を設けない例について説明したが、図16のようにウエハ2ごとに固定分配器を設けてもよい。
【0206】
さらに、電源を複数設けてもよい。例えば、図17のように、ウエハごとに電源を設けてもよい。その場合は、各ウエハ間に導波路を設ける。
【0207】
本実施形態のように、複数枚のウエハを一括してバッチ処理することにより、ウエハを一枚ずつ枚葉処理する場合に比べて、スループットを大幅に向上させることができる。
【0208】
また、枚葉装置では、ウエハ面に対して垂直にマイクロ波を照射した場合、ウエハで反射する成分が存在する。一方、縦型装置のように横から照射することにより、垂直にマイクロ波を照射する際には導波管に隣接する最上位のウエハでの反射を抑制することができる。
【0209】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る基板処理装置システムについて、図18を用いて説明する。本発明は第1〜5の実施形態のいずれに対しても適用可能である。本実施形態では、基板処理装置システムは、処理後の基板を冷却する冷却機構として改質処理装置とは異なる別装置である冷却処理装置を有し、改質処理装置から搬出された基板を冷却処理装置へ搬入して冷却処理することにより基板を冷却する。成膜処理装置、改質処理装置については第1〜5の実施形態と同様である。
【0210】
図18のように、基板処理装置システムは、ロードロック室(ロードロックチャンバ)510、搬送室(搬送チャンバ)520、改質処理室(改質処理チャンバ、第1〜4の実施形態に係る改質処理装置の処理室に相当)530、冷却機構を有する冷却処理室(冷却処理チャンバ、クーリングチャンバ)540を有する。基板はロードロック室510から搬送ロボット522により搬送室520を通って改質処理室530へ搬入され、基板に改質処理が為される。改質処理後、基板は搬送ロボット522により改質処理室530から搬送室520を通って冷却処理室540へと搬入される。冷却処理室540内で基板は急冷される。急冷する理由は、膜の結晶性を制御するためである。基板温度を下げている間も結晶の成長は進んでいるため、できるだけ急速に冷却することにより、結晶成長を抑制して結晶状態をクエンチし、所望の結晶構造を得ることが可能となる。従って、例えば基板が100℃以下の温度となるまで冷却処理装置540内で基板を冷却するとよい。なお、搬送ロボット522による基板の搬送、基板の加熱、基板の冷却等は図示しないコントローラ300により制御される。
【0211】
また、冷却処理装置540内で基板を冷却している間に、改質処理室において別の基板の改質処理を行うことにより、スループットを向上させることが可能である。
【0212】
本発明によれば、高誘電率を有する絶縁性薄膜であって分極した薄膜が形成された形態の基板に対して、マイクロ波(ミリ波を含む)等の電磁波によってエネルギーを供給することにより、結晶粒成長や結晶配向性の改善等の、いわゆる改質処理を行うことができる。
【0213】
また、本発明によれば、基板に照射するマイクロ波の波長を、薄膜の分極双極子が感応し、振動や回転する帯域から選択することにより、効率的には薄膜の改質処理を行うことができる。
【0214】
また、本発明によれば、降温プロファイルを制御することにより、結晶性の制御を容易にすることができる。
【0215】
また、本発明によれば、基板と薄膜の相対膜厚あるいは相対堆積を規定することによって、温度上昇を抑制しつつ効果的に薄膜の改質処理を行うことができる。
【0216】
また、本発明によれば、マイクロ波の反射により発生する定在波が引き起こす局所的なマイクロ波電力の差に起因する薄膜の改質効果の面内分布の発生を抑制することができる。
【0217】
また、本発明によれば、改質対象となる薄膜にマイクロ波パワーを効率的に伝播することが可能である。
【0218】
また、本発明によれば、有極性分子から構成される薄膜にマイクロ波を照射することにより、有極性分子を励起し、薄膜の結晶性の向上、膜密度の改善、反応性ガスによる酸化・窒化といった、薄膜の改質を行うことができる。
【0219】
なお、本発明は上記第1〜6の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能である。
【0220】
例えば、改質工程においてマイクロ波を照射する際に処理室内にNガスを供給する例が上述されているが、NガスにOガスを所定量だけ添加してもよい。Oガスを添加することにより、High−k膜の酸化をサポートすることができる。
【0221】
また、上記実施形態においては、分極した薄膜である絶縁膜としてジルコニウム酸化膜を形成する場合について説明したがこれに限らず、その他シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、ストロンチウム(Sr)、Zr、Tiのいずれかを20atom%以上含む誘電率8以上の化合物であるか、それらを含む積層膜について適用することができる。
例えば、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、チタン酸化膜(TiO膜)、ジルコニウムアルミニウム酸化膜(ZrAlO膜)、ハフニウムアルミニウム酸化膜(HfAlO膜)、酸化チタンストロンチウム膜(SrTiO膜)等にも適用することができる。
【0222】
また、被処理基板はLSI、CMOS等に用いられる半導体ウエハに限らず、LED等に用いられる基板であってもよい。
【0223】
また、薄膜の改質処理を行う際は、マイクロ波の照射に加えて加熱を併用することにより、効率的に薄膜の改質処理を行うことができる。
【0224】
また、結晶中のイオン分極で加熱を積極的に利用する場合は、マイクロ波領域のうち約30〜300GHz帯のミリ波を利用するとよい。
【0225】
また、High−k膜の場合、主要な応用分野としてキャパシタがあるが、この場合下部金属電極、あるいはさらに上部金属電極との積層構造が想定される。数GHzのマイクロ波を金属に対して用いた場合、アーキングが発生し、キャパシタ構造にダメージを与える危険性があるが、数10GHzのマイクロ波はアーキング発生の懸念が低いため、上記のキャパシタ応用の場合、例えば10〜40GHz程度のマイクロ波を用いる事が望ましい。
【0226】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0227】
(付記1)
分極した材料に対して、マイクロ波によってエネルギーを供給することにより、材料を励起し、薄膜の結晶性の向上、膜密度の改善、反応性ガスによる酸化・窒化といった、薄膜の改質を実施することを特徴とする半導体装置の製造方法および、この半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置が提供される。
【0228】
(付記2)
好ましくは、分極した薄膜がSi、Al、Zr、Hf、Ti、Srのいずれかを20atom
%以上含む誘電率8以上の化合物であるか、それらを含む積層膜である。
【0229】
(付記3)
好ましくは、使用するマイクロ波の波長が、対象となる分極薄膜を形成する材料の双極子が感応する共振周波数帯に含まれるように設定されている。
【0230】
(付記4)
好ましくは、改質に際してマイクロ波と重畳して加熱または冷却の少なくとも一方を行う。
【0231】
(付記5)
好ましくは、対象物が誘電体以外の基板上に、少なくとも誘電体薄膜が全面または部分的に形成されており、かつ基板に対する誘電体薄膜の膜厚が1/100以下であるか、対象物に対する誘電体の体積が1/100以下であることの、少なくとも一方を満たす。
【0232】
(付記6)
本発明の他の態様によれば、(付記1)〜(付記5)に記載の半導体装置の製造方法に用いられる対象薄膜の励起に必要なマイクロ波発生機構を備えた基板処理装置が提供される。
【0233】
(付記7)
好ましくは、処理中に薄膜の形成された基板の温度を制御するために処理室内の加熱機構または冷却機構、あるいは処理後の降温プロファイルを制御するための処理室内の温度制御機構または別室での冷却機構の4種のうち、少なくとも何れか一つを備える。
【0234】
(付記8)
好ましくは、処理室内での定在波の発生によるマイクロ波による励起の基板内位置依存性を解消するため、処理中に基板の処理室との相対位置を少なくとも1/4波長分以上移動させるか、処理室内に可動反射・拡散板を設置し、マイクロ波を攪拌することを特徴とする薄膜改質用製造装置が提供される。
【0235】
(付記9)
好ましくは、複数の基板を平行にマイクロ波の半波長以上の距離を確保して処理室内に設置し、かつマイクロ波を基板の横方向に設置した導波管により、基板表面に平行に導入する。
【0236】
(付記10)
好ましくは、使用するマイクロ波の波長が0.5〜300GHz、好ましくは1GHz〜50GHzの少なくとも一つの周波数を用いる。
【0237】
(付記11)
本発明の他の態様によれば、高誘電体膜が形成された基板を処理室へ搬入する工程と、基板にマイクロ波を照射することにより、高誘電体膜を加熱して改質する工程と、基板を前記処理室から搬出する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0238】
(付記12)
好ましくは、高誘電体膜は、Si、Al、Zr、Hf、Ti、Srのいずれかを20atom%以上含み、かつ比誘電率が8以上の化合物、もしくは前記化合物を含む積層膜である。
【0239】
(付記13)
好ましくは、マイクロ波の周波数は、分子を構成する双極子が感応する周波数帯から選択される。
【0240】
(付記14)
好ましくは、マイクロ波の周波数は、高誘電体膜の誘電緩和の周波数特性に基づき、選択される。
【0241】
(付記15)
好ましくは、マイクロ波の周波数は、0.5GHz〜300GHzの周波数帯から選択される。
【0242】
(付記16)
好ましくは、高誘電体膜を改質する際は、基板にマイクロ波を照射しつつ前記基板を冷却もしくは加熱する。
【0243】
(付記17)
本発明の他の態様によれば、処理室と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波を前記処理室に供給する導波口と、高誘電体膜が形成された基板が収容された処理室へ導波口からマイクロ波を供給するマイクロ波発生装置を制御する基板処理装置が提供される。
【0244】
(付記18)
好ましくは、基板を支持し基板回転機構を有する基板支持部を有し、制御部は、処理室へマイクロ波を供給しつつ、導波口の中心位置と、処理室に収容された基板の中心位置との相対距離がマイクロ波の波長の1/4波長以上開くよう基板を移動させるようにマイクロ波発生装置および基板回転機構を制御する。
【0245】
(付記19)
好ましくは、処理室内に、マイクロ波を反射する反射板を有する反射機構および反射機構を回転させる反射板回転機構を備え、制御部は、処理室へマイクロ波を供給しつつ、反射板を回転させてマイクロ波を処理室内で拡散させるようマイクロ波発生装置および反射機構を制御する。
【0246】
(付記20)
本発明の他の態様によれば、分極した材料を含む薄膜が形成された基板を複数枚収容可能な反応管もしくは反応容器と、反応管もしくは反応容器内で前記基板を積層して支持する基板支持部材と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波を反応管もしくは反応容器内に供給する導波口と、を有し、基板は、基板の上面に反応管もしくは反応容器内に供給するマイクロ波の半波長以上の空間を設けるよう基板支持部材に載置され、導波口は反応管もしくは反応容器の側壁に設けられることを特徴とする基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0247】
2 ウエハ
10 成膜処理装置
40、218、635 成膜処理炉
80、210、637 処理室
90 排気管
200 改質処理装置
300 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高誘電体膜が形成された基板を処理室へ搬入する工程と、
前記基板にマイクロ波を照射することにより、高誘電体膜を加熱して改質する工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記高誘電体膜は、Si、Al、Zr、Hf、Ti、Srのいずれかを20atom%以上含み、かつ比誘電率が8以上の化合物、もしくは前記化合物を含む積層膜である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロ波の周波数は、前記高誘電体膜の誘電緩和の周波数特性に基づき選択される請求項1もしくは2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記マイクロ波の周波数は、0.5GHz〜300GHzの周波数帯から選択される請求項1から3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記高誘電体膜を改質する際は、前記基板にマイクロ波を照射しつつ前記基板を冷却もしくは加熱する請求項1から4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置。
【請求項7】
処理室と、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
前記マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波を前記処理室に供給する導波口と、
高誘電体膜が形成された基板が収容された処理室へ前記導波口から前記マイクロ波を供給する前記マイクロ波発生装置を制御する基板処理装置。
【請求項8】
前記処理室内に、マイクロ波を反射する反射板を有する反射機構および前記反射機構を回転させる反射板回転機構を備え、
前記制御部は、前記処理室へマイクロ波を供給しつつ、前記反射板を回転させて前記マイクロ波を前記処理室内で拡散させるよう前記マイクロ波発生装置および前記反射機構を制御する請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
高誘電体膜が形成された基板を複数枚収容可能な反応管もしくは反応容器と、
前記反応管内で前記基板を積層して支持する基板支持部材と、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
前記マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波を前記反応管もしくは反応容器内に供給する
導波口と、を有し、
前記基板は、前記基板の上面に前記反応管内に供給する前記マイクロ波の半波長以上の空間を設けるよう前記基板支持部材に載置され、
前記導波口は前記反応管の側壁に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項7から9に記載の基板処理装置を用いて製造された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−104703(P2012−104703A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252882(P2010−252882)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】