説明

半導体装置の製造方法

【目的】 ポーラス状に形成される多孔質低誘電率(p−lowk)膜内へのバリアメタルに用いたメタルの拡散を抑制することを目的とする。
【構成】 p−lowk膜を基体上に形成するp−lowk膜形成工程(S102)と、前記p−lowk膜表面側に形成される空孔が前記p−lowk膜内部側の空孔へ連結する連結位置における開口サイズより大きい分子(Ta−R1)を前記p−lowk膜表面に吸着させるTa[N(C供給工程(S106)と、前記分子(Ta−R1)と反応するNHを供給し、TaN膜を形成するNH供給工程(110)と、前記開口サイズより小さい分子(Ta−R2)を吸着させるTaCl供給工程(S114)と、前記分子(Ta−R2)と反応するNHを供給し、TaN膜をさらに形成するNH供給工程(120)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、Cu配線を有するULSI(Ultra large scale
integrated circuit)デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低抵抗で高いエレクトロマイグレーション(EM)耐性を有するCu配線は、高集積化し微細化されたLSI配線用の高信頼性材料として期待されている。
【0003】
特に、最近はLSIの高速性能化を達成するために、配線技術を従来のアルミ(Al)合金から低抵抗のCu或いはCu合金(以下、まとめてCuと称する。)に代える動きが進んでいる。Cuは、Al合金配線の形成において頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難であるので、溝加工が施された絶縁膜上にCu膜を堆積し、溝内に埋め込まれた部分以外のCu膜を化学機械研磨(CMP)により除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン(damascene)法が主に採用されている。Cu膜はスパッタ法などで薄いシード層を形成した後に電解めっき法により数100nm程度の厚さの積層膜を形成することが一般的である。
【0004】
さらに、最近は層間絶縁膜として比誘電率の低い低誘電率(low−k)膜を用いることが検討されている。すなわち、比誘電率kが、約4.2のシリコン酸化膜(SiO)膜から比誘電率kが例えば3.5以下のlow−k膜を用いることにより、配線間の寄生容量を低減することが試みられている。このようなlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法は次のようなものである。
【0005】
図20は、従来のlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図20では、デバイス部分等の形成方法は省略している。
図20(a)において、シリコン基板による基体200上にCVD(化学気層成長)等の方法により第1の絶縁膜221を成膜する。
図20(b)において、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、Cu金属配線或いはCuコンタクトプラグを形成するための溝構造(開口部H)を第1の絶縁膜221に形成する。
図20(c)において、第1の絶縁膜221上にバリアメタル膜240、Cuシード膜及びCu膜260をかかる順序で形成して、150℃から400℃の温度で約30分間アニール処理する。
図20(d)において、Cu膜260とバリアメタル膜240をCMPにより除去し、平坦化を行なうことにより、溝である開口部HにCu配線を形成する。
図20(e)において、前記Cu膜260表面に還元性プラズマ処理を施した後に第2の絶縁膜281を成膜する。
さらに、多層Cu配線を形成する場合は、これらの工程を繰り返して積層していくのが一般的である。ここで、第1の絶縁膜221と第2の絶縁膜281の大半がlow−k膜となる。
【0006】
次世代デバイスにおいては層間絶縁膜として低誘電率膜、特に誘電率を下げるために、空孔を有する低誘電率膜の使用が検討されている。言い換えれば、比誘電率kが2.5以下のlow−k膜材料の開発も進められており、これらは材料中に空孔が入ったポーラス材料となっているものが多い。今後さらにCu配線の微細化が進むにつれて、Cuに比べて高抵抗であるバリアメタルの薄膜化は必須となってくる。極薄膜のバリアメタルを成膜するために、検討されている手法として、原子層気相成長(ALD:Atomic Layer
Deposition)法がある(例えば、非特許文献1,2参照)。この手法は原料ガスを交互に供給し、原子層レベルでの成膜を行う手法である。
【0007】
図21は、ALD法によるバリアメタルの成膜例を示すガスの供給フロー図である。
まず、タンタル(Ta)原料の供給を行う。例えば、塩化タンタル(TaCl)を用いて説明する。この時、セルフリミッティング効果により、ある一定量以上は吸着しない。次にアルゴン(Ar)によりパージを行う。つづいて、アンモニア(NH)の供給を行うことにより、バリアメタルとしての窒化タンタル(TaN)を形成する。最後にArによりパージを行う。この一連の作業を1サイクルとして、必要な膜厚分サイクルを繰り返すことで成膜を行う。
図22は、ALD法において、TaN膜が形成される様子を説明するための概念図である。
図22(a)において、TaR20(Ta化合物)を供給することにより、基体10にTaR20(Ta化合物)が吸着する。また、基体10の周辺には、吸着していないTaR20が浮遊する。
図22(b)において、Arを供給することにより、浮遊するTaR20が置換(パージ)される。
図22(c)において、NHを供給することにより基体10に吸着されたTaR20を還元してTaN膜22が形成される。
【0008】
その他、ALD法に関連する技術として、複数枚の基板を同時にALD反応器内にローディングするとする技術(特許文献1参照)、ALD成膜時に同一原料をパージ等を挟んで繰り返し供給する技術(特許文献2参照)、金属酸化膜を成膜する場合に水酸化基を含まない反応物を供給後、水酸化基を含む反応物を供給することにより水酸化基の副産物の生成を抑止するとする技術(特許文献3参照)、基板を回転させながらALD成膜を行なう技術(特許文献4参照)、バリアメタル膜を金属窒化膜と銅膜との積層膜とする技術(特許文献5参照)、ALD成膜時にラジカル供給を行なう技術(特許文献6参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2002−367992号公報
【特許文献2】特開2000−54134号公報
【特許文献3】特開2001−152339号公報
【特許文献4】特開2001−254181号公報
【特許文献5】特開2002−329680号公報
【特許文献6】特表2002−539326号公報
【非特許文献1】“Atomic layerdeposition of metal and nitride thin films: Current research efforts andapplications for semiconductor device processing" ,J. Vac. Sci. Technol.B21(6), 2003, p2231-2261
【非特許文献2】“Atomiclayer deposition for nanoscale Cu metallization" ,AdvancedMetallization Conference 2003 Conference Proceedings AMC XIX 2004 MaterialsResearch Society p713-722
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多孔質低誘電率(p−lowk)膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合、下地膜内へバリアメタルに用いたメタルの拡散が発生する。たとえば、上述したTaClおよびNHを原料に使用して、TaNのALD成膜を行う際、下地にp−lowk材料として多孔質のポーラスメチルシルセスキオキサン(p−MSQ)を使用した場合は、p−MSQ内へのTaメタルの拡散が起こる。このため、出来上がったバリメタルとしてのTaNのバリア性が減少してしまう。
【0010】
本発明は、上述した問題点を克服し、ポーラス状に形成される多孔質低誘電率(p−lowk)膜内へのバリアメタルに用いたメタルの拡散を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、
複数の空孔が形成され、表面側に形成される空孔が内部の空孔へ連結し内部へと開口する多孔質膜を基体上に形成する多孔質膜形成工程と、
前記多孔質膜表面側に形成される空孔が前記多孔質膜内部側の空孔へ連結する連結位置における開口サイズより大きい第1の分子を前記多孔質膜表面に吸着させる第1の吸着工程と、
前記第1の分子と反応する第1の反応種を供給し、前記多孔質膜表面に第1の反応生成膜を形成する第1の反応生成膜形成工程と、
前記第1の反応生成膜表面に前記開口サイズより小さい第2の分子を吸着させる第2の吸着工程と、
前記第2の分子と反応する第2の反応種を供給し、前記第1の反応生成膜表面に第2の反応生成膜を形成する第2の反応生成膜形成工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
後述するように、p−lowk膜内へのバリアメタルに用いたメタルの拡散は、メタル原料が所定の大きさの分子となってp−lowk膜表面に吸着する際、かかる分子の大きさが、前記p−lowk膜表面側に形成される空孔が前記p−lowk膜内部側の空孔へと連結する連結位置における開口サイズより小さいためにp−lowk膜内部へと拡散してしまう。そこで、前記開口サイズより小さい第2の分子を用いて第2の反応生成膜を形成する場合に、まず、前記開口サイズより大きい第1の分子を前記多孔質膜表面に吸着させることにより、第1の分子で連結位置での開口面を塞いだ状態を形成し、第1の反応生成膜を形成する。その後に、前記開口サイズより小さい第2の分子を前記第1の反応生成膜表面に吸着させることで、所望する膜厚に第2の反応生成膜を形成することができる。
【0013】
ここで、前記第1の吸着工程において、金属有機化合物を前記第1の分子の原料として供給し、
前記第2の吸着工程において、金属無機化合物を前記第2の分子の原料として供給することを特徴とする。
【0014】
分子サイズが小さく拡散し易い金属無機化合物を原料として第2の反応生成膜を形成する場合でも、まず、分子サイズが大きい金属有機化合物を原料として供給し、前記第1の分子を前記多孔質膜表面に吸着させることにより、多孔質膜における前記開口面を塞いだ状態を形成することができる。
【0015】
或いは、前記第1の吸着工程において、前記第2の吸着工程に用いる原料と同種の原料を前記第1の分子の原料として供給し、前記第2の吸着工程における基体温度よりも低い基体温度で前記第1の分子を吸着させることも有効である。
【0016】
同種の原料を用いる場合でも、まず、前記第2の吸着工程における基体温度よりも低い基体温度で前記第1の分子を吸着させることで、前記第1の分子サイズが、第2の分子サイズより大きい状態で前記多孔質膜表面に吸着させることができる。
【0017】
ここで、前記多孔質膜として、比誘電率2.5以下の低誘電率膜を用いる場合に特に有効である。
【0018】
前記開口サイズが、0.6nm以下の多孔質膜に対して、前記第1の吸着工程において、ペンタジメチルタンタル(Ta[N(CH)を前記第1の分子の原料として用いることを特徴とする。
【0019】
Ta[N(CHを前記第1の分子の原料として用いることにより、多孔質膜表面に吸着する分子サイズが、0.6nm以上とすることができ、0.6nm以下の開口サイズの多孔質膜に対してTaの内部拡散を抑制することができる。
【0020】
前記開口サイズが、0.7nm以下の多孔質膜に対して、前記第1の吸着工程において、ペンタジエチルタンタル(Ta[N(C)を前記第1の分子の原料として用いることを特徴とする。
【0021】
Ta[N(Cを前記第1の分子の原料として用いることにより、多孔質膜表面に吸着する分子サイズが、0.7nm以上とすることができ、0.7nm以下の開口サイズの多孔質膜に対してTaの内部拡散を抑制することができる。
【0022】
前記開口サイズが、0.3nm以下の多孔質膜に対して、前記第1と第2の吸着工程において、塩化タンタル(TaCl)を前記第1と第2の分子の原料として用いることを特徴とする。
【0023】
TaClを前記第1と第2の分子の原料として用いる場合に、前記第1の吸着工程において、第2の吸着工程より低い基体温度で前記第1の分子を吸着させることで、多孔質膜表面に吸着する分子サイズを0.3nm以上とすることができ、0.3nm以下の開口サイズの多孔質膜に対してTaの内部拡散を抑制することができる。
【0024】
本発明の半導体装置の製造方法は、
基体上に、多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
基体温度を250℃より低い温度に制御し、前記多孔質膜が形成された基体上に、ペンタジメチルタンタル(Ta[N(CH)を供給するペンタジメチルタンタル供給工程と、
Ta[N(CH供給後に、Ta[N(CHと反応する反応種を供給する反応種供給工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0025】
通常の成膜温度よりも低い温度である250℃より低い温度でTa[N(CHを供給することにより、多孔質膜に吸着する分子サイズをさらに大きくすることができ、多孔質膜に対してTaの内部拡散を抑制することができる。その上で、反応種と反応させてTa系の膜を多孔質膜上に成膜することができる。
【0026】
本発明の半導体装置の製造方法は、
基体上に、多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
基体温度を250℃より低い温度に制御し、前記多孔質膜が形成された基体上に、ペンタジエチルタンタル(Ta[N(C)を供給するペンタジエチルタンタル供給工程と、
Ta[N(C供給後に、Ta[N(Cと反応する反応種を供給する反応種供給工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0027】
通常の成膜温度よりも低い温度である250℃より低い温度でTa[N(Cを供給することにより、多孔質膜に吸着する分子サイズをさらに大きくすることができ、多孔質膜に対してTaの内部拡散を抑制することができる。その上で、反応種と反応させてTa系の膜を多孔質膜上に成膜することができる。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法は、
基体上に、多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
基体温度を300℃より低い温度に制御し、前記多孔質膜が形成された基体上に、塩化タンタル(TaCl)を供給する塩化タンタル供給工程と、
TaCl供給後に、TaClと反応する反応種を供給する反応種供給工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0029】
通常の成膜温度よりも低い温度である300℃より低い温度でTaClを供給することにより、多孔質膜に吸着する分子サイズをさらに大きくすることができ、多孔質膜に対してTaの内部拡散を抑制することができる。その上で、反応種と反応させてTa系の膜を多孔質膜上に成膜することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、当初の吸着分子で連結位置での開口面を塞いだ状態を形成するため、多孔質膜に対しての内部拡散を抑制することができる。また、前記開口サイズに合わせて原料を選択することで、多孔質膜の性質に合わせて幅広く対応することができる。また、前記開口サイズに合わせて、多孔質膜に吸着する分子サイズを制御することができる。多孔質膜に吸着する分子サイズを制御することができるので、さらに、多孔質膜の性質に合わせて幅広く対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
実施の形態1.
実施の形態1では、Ta[N(Cをメタル原料に用いて、多孔質低誘電率膜としてのp−MSQ上にバリアメタル膜としてTaN膜をALD成膜する場合を説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図1において、本実施の形態では、基体上に多孔質の低誘電率絶縁性材料を用いた多孔質低誘電率(p−lowk)膜を形成するp−lowk膜形成工程(S102)と、開口部を形成する開口部形成工程(S104)と、第1のバリアメタル膜形成工程として、Ta[N(Cを供給するTa[N(C供給工程(S106)、水素(H)供給工程(S108)、NH供給工程(S110)、H供給工程(S112)と、第2のバリアメタル膜形成工程として、TaClを供給するTaCl供給工程(S114)、H供給工程(S116)、NH供給工程(S118)、H供給工程(S120)という一連の工程を実施する。
第1のバリアメタル膜形成工程は、Ta[N(C供給工程(S106)、水素(H)供給工程(S108)、NH供給工程(S110)、H供給工程(S112)を1サイクルとして繰り返す。第2のバリアメタル膜形成工程は、TaCl供給工程(S114)、H供給工程(S116)、NH供給工程(S118)、H供給工程(S120)を1サイクルとして繰り返す。そして、所望するTaN膜を形成した後、導電性材料である銅(Cu)を物理的気相成長(PVD)法及びめっき法により堆積させ、Cu配線を形成する。
【0032】
図2は、多孔質低誘電率膜上に吸着する分子の様子を説明するための図である。
多孔質低誘電率(p−lowk)膜には、多くの空孔が形成されている。そして、これら複数の空孔が連結し合い、内部から表面まで延びるポーラスを形成する。これら複数の空孔が連結する連結位置(空孔連結部分)では、一般に空孔サイズよりも小さな開口面が形成されるが、図2(a)に示すように、後述するALD法によるバリアメタル膜形成の際、供給されるメタル原料ガスが分子(Ta−R2)となってp−lowk膜に吸着する。この時、かかる分子のサイズが、連結位置での開口面の開口サイズ(空孔連結部分サイズ)より小さいと、p−lowk膜内部へと拡散してしまう。かかる分子には、Taが結合されているためTaの拡散が生じる。一方、図2(b)に示すように、後述するALD法によるバリアメタル膜形成の際、供給されるメタル原料ガスが分子(Ta−R1)となってp−lowk膜に吸着する。この時、かかる分子のサイズが、連結位置での開口面の開口サイズより大きいと、開口面を塞ぎ、これ以上p−lowk膜内部へと拡散しない。本実施の形態では、開口サイズより大きい分子(Ta−R1)を用いて、ALD成膜すればよいことがわかる。
【0033】
図3は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
図3では、図1において図示していないSiC膜形成工程(S102)から図1の開口部形成工程(S104)までを示している。それ以降の工程は後述する。
【0034】
まず、基体上に、図1においてポーラスlow−k膜形成工程(S102)以外について図示していない層間絶縁膜を形成する工程と図1の開口部形成工程(S104)とについて説明する。
図3(a)において、SiC膜形成工程として、基体200の上に、CVD法によって、SiCを用いた膜厚50nmの下地炭化シリコン(SiC)膜を堆積し、SiC膜212を形成する。ここでは、化学気相成長(CVD法)によって成膜しているが、その他の方法を用いても構わない。SiC膜212は、拡散防止膜としての機能を有する。また、SiC膜212は、エッチングストッパとしての機能も有する。SiC膜を生成するのは難しいためSiC膜の代わりに炭酸化シリコン(SiOC)膜を用いても構わない。或いは、炭窒化シリコン(SiCN)膜、窒化シリコン(SiN)膜を用いることができる。基体200として、例えば、直径300ミリのシリコンウェハ等の基板を用いる。基体200には、金属配線またはコンタクトプラグ等、デバイス部分が形成されていても構わない。或いは、その他の層が形成されていても構わない。
【0035】
図3(b)において、p−lowk膜形成工程として、基体200の上に形成された前記SiC絶縁膜形成工程により形成されたSiC膜212の上に多孔質の絶縁性材料を用いた低誘電率絶縁膜となるp−lowk膜220を300nmの厚さで形成する。半導体装置として用いるには、150nm〜300nm程度がより望ましいが、これに限るものではなく、100nm〜1000nm程度であってもよい。ここで、p−lowk膜220を形成することで、比誘電率の低い層間絶縁膜を得ることができる。p−lowk膜220の材料としては、例えば、多孔質のポーラスメチルシルセスキオキサン(methyl silsequioxane:MSQ)を用いることができる。また、その形成方法としては、例えば、溶液をスピンコートし熱処理して薄膜を形成するSOD(spin on dielectic coating)法を用いることができる。ここでは、スピナーの回転数は900min−1(900rpm)で成膜した。このウェハをホットプレート上で窒素雰囲気中250℃の温度でベークを行い、最終的にホットプレート上で窒素雰囲気中450℃の温度で10分間のキュアを行った。ポーラスMSQ(p−MSQ)の材料や形成条件などを適宜調節することにより、所定の物性値を有する多孔質の絶縁膜が得られる。空孔連結部分における空孔連結部分サイズ(開口サイズ)も、同種の原料及び製法により再現性良く形成することができる。例えば、ここでは、空孔連結部分サイズが0.6nmのp−MSQを形成する。
前述のp−MSQ膜の組成としては、珪素の濃度は20%から40%、炭素の濃度は10%から30%、酸素の濃度は40%から60%が望ましい。また、低誘電率絶縁膜は、比誘電率kが2.6以下のp−lowk膜が望ましい。例えば、p−MSQの他、ポーラスHSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、多孔質の芳香族ポリマー膜等、その他の多孔質低誘電率膜であっても構わない。これらは、半導体装置の微細化にとって望ましい。また、p−lowk膜は、CVD法により形成してもよい。
【0036】
そして、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜220表面をCVD装置内でヘリウム(He)プラズマ照射によって表面改質する。Heプラズマ照射によって表面が改質されることで、p−lowk膜220とp−lowk膜220上に形成する後述するキャップ絶縁膜としてのCVD−SiO膜222との接着性を改善することができる。ガス流量は1.7Pa・m/s(1000sccm)、ガス圧力は1000Pa、高周波パワーは500W、低周波パワーは400W、温度は400℃とした。キャップCVD膜をp−lowk膜上に成膜する際は、p−lowk膜表面にプラズマ処理を施すことがキャップCVD膜との接着性を改善する上で有効である。プラズマガスの種類としてはアンモニア(NH)、亜酸化窒素(NO)、水素(H)、He、酸素(O)、シラン(SiH)、アルゴン(Ar)、窒素(N)などがあり、これらの中でもHeプラズマはp−lowk膜へのダメージが少ないために特に有効である。また、プラズマガスはこれらのガスを混合したものでも良い。例えば、Heガスは他のガスと混合して用いると効果的である。
【0037】
図3(c)において、キャップ絶縁膜形成工程の一例であるSiO膜形成工程として、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ絶縁膜として、CVD法によってp−lowk膜220上にSiOを膜厚50nm堆積することで、前記p−lowk膜220上にp−lowk膜220を覆うSiO膜222を形成する。SiO膜222を形成することで、直接リソグラフィを行うことができないp−lowk膜220を保護し、p−lowk膜220にパターンを形成することができる。かかるCVD法によるキャップ絶縁膜であるキャップCVD膜は、SiO膜、SiC膜、SiOC膜、SiCN膜などがあるが、ダメージ低減の観点からはSiO膜が優れ、低誘電率化の観点からはSiOC膜が、耐圧向上の観点からはSiC膜やSiCN膜が優れている。さらに、SiO膜とSiC膜の積層膜、もしくはSiO膜とSiCO膜の積層膜、もしくはSiO膜とSiCN膜の積層膜を用いることができる。さらにキャップCVD膜の一部、もしくは全てが後述する導電性材料研磨工程においてCMPにより除去されても良い。キャップ膜を除去することで誘電率をさらに低減することができる。キャップ絶縁膜の厚さとしては10nmから150nmが良く、10nmから50nmが実効的な比誘電率を低減する上で効果的である。なお、ここでは、キャップ絶縁膜としてCVD法によるCVD膜を用いているが、SOD膜であっても構わない。
【0038】
図3(d)において、開口部形成工程として、リソグラフィ工程とドライエッチング工程でダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部150をSiO膜222とp−lowk膜220と下地SiC膜212内に形成する。図示していないレジスト塗布工程、露光工程等のリソグラフィ工程を経てSiO膜222の上にレジスト膜が形成された基体200に対し、露出したSiO膜222とその下層に位置するp−lowk膜220を、下地SiC膜212をエッチングストッパとして異方性エッチング法により除去し、その後、下地SiC膜212をエッチングして開口部150を形成すればよい。異方性エッチング法を用いることで、基体200の表面に対し、略垂直に開口部150を形成することができる。例えば、一例として、反応性イオンエッチング法により開口部150を形成すればよい。
【0039】
図4は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
図4では、図1のTa[N(C供給工程(S106)から図1において図示していない平坦化工程までを示している。
【0040】
図4(a)において、バリアメタル膜形成工程として、開口部内の表面とSiO膜222表面とにALD法によりバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜240を形成する。
【0041】
ここでは、バリアメタル膜として、窒化タンタル(TaN)膜を成膜する。まず、第1のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、ペンタジエチルタンタル(Ta[N(C)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。パージガスとして、Hを用いることで、次の反応性を高めることができる。さらに、Hは純度を高めることができるので、高純度な成膜に適している。
図5は、TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
Ta[N(C供給工程として、Ta[N(Cを1s供給する。その後、H供給工程として、Hを1s供給してパージする。そして、NH供給工程として、NHを1s供給する。そしてH供給工程として、Hを1s供給してパージする。かかる工程を1サイクルとして、成膜温度300℃にて、10サイクルの供給を行なう。
【0042】
成膜温度300℃にて、金属有機化合物であるTa[N(Cを用いたことで、開口部内側面に露わになったp−lowk膜220表面に吸着する分子(図2におけるTa−R1)サイズを0.6nm以上とすることができる。
【0043】
図6は、ALD装置の概要構成を示す図である。
図6において、チャンバ600の内部にて基体200上、さらに言えば、基板上に前工程までの処理が施された基体10を所定の温度に制御された基板ホルダ(ウェハステージ)610の上に設置する。そして、チャンバ600の内部に上部からガスを供給する。また、真空ポンプ630によりチャンバ600の内部が所定の圧力になるように真空引きされる。容器650に入った固体のTa[N((Cを50〜70℃に加熱して暖める。暖められ溶融したTa[N(C内にキャリアガスとしてHガスを供給することで、Hと共にガス化したTa[N(Cを一種のバブリング法によりチャンバ600に供給することができる。
【0044】
ここでは、Ta[N(C、H、NHの各ガス量は、1.68Pa・m/s(1000sccm)、チャンバ600の内部の圧力を339Pa(3Torr)とした。ここで、ガス量は、Ta[N(Cについて、0.5Pa・m/s(300sccm)〜1.68Pa・m/s(1000sccm)が望ましい。NHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。パージガスであるHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。成膜圧力は、665Pa(5Torr)以下が望ましい。成膜温度は、250〜300℃が望ましい。
【0045】
また、メタル原料の還元ガスとして、ヒドラジン(HNNH)或いは、1−1ジメチルヒドラジンや1−2ジメチルヒドラジン等のヒドラジン化合物を用いても構わない。ヒドラジン或いはヒドラジン化合物を用いることによりNHより還元作用を強くすることができる。
【0046】
さらに、パージガスとして、アルゴン(Ar)や窒素(N)やHeを用いても構わない。Arを用いることで、安価でかつ扱い易くすることができる。
【0047】
次に、TaN膜形成工程における第2のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、塩化タンタル(TaCl)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。メタル原料として、TaClを用いることで、セルフリミッティング性能を向上させることができる。また、TaClを用いることで、有機原料と異なり炭素(C)等をTaN膜内部に残留させず、TaN膜を高純度化させることができる。装置は、図6と同様の構成を有する装置を用いればよい。同様に、容器650に入った固体のTaClを50〜100℃に加熱して暖める。暖められ溶融したTaCl内にキャリアガスとしてHガスを供給することで、Hと共にガス化したTaClを一種のバブリング法によりチャンバ600に供給することができる。
第2のバリアメタル膜成膜における各ガスの供給フローは、以下のようにした。
TaCl供給工程として、TaClを1s供給する。その後、H供給工程として、Hを1s供給してパージする。そして、NH供給工程として、NHを2s供給する。そしてH供給工程として、Hを1s供給してパージする。かかる工程を1サイクルとして、成膜温度350℃にて、30サイクルの供給を行なう。
【0048】
成膜温度350℃にて、金属無機化合物であるTaClを用いても分子(図2におけるTa−R2)サイズは0.6nmより小さいが、既に、第1のTaN膜で空孔が塞がっているため、Taがp−lowk膜220内部に拡散しにくくなっている。かかる状態で、さらに、第1のTaN膜上にTaN膜(第2のTaN膜)を形成し、所望する膜厚のTaN膜を形成することができる。ここでは、2nmの膜厚のTaN膜を形成した。
【0049】
ここでは、TaCl、H、NHの各ガス量は、1.68Pa・m/s(1000sccm)、チャンバ600の内部の圧力を339Pa(3Torr)とした。ここで、ガス量は、TaClについて、0.5Pa・m/s(300sccm)〜1.68Pa・m/s(1000sccm)が望ましい。NHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。パージガスであるHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。成膜圧力は、665Pa(5Torr)以下が望ましい。成膜温度は、300〜350℃が望ましい。
【0050】
また、メタル原料の還元ガスとして、HNNH或いは、1−1ジメチルヒドラジンや1−2ジメチルヒドラジン等のヒドラジン化合物を用いても構わない点は同様である。さらに、パージガスとして、ArやNやHeを用いても構わない点も同様である。
【0051】
図7は、複数のチャンバを備えた装置の概要を説明するための概念図である。
図7において、装置500は、複数のチャンバ510,520,530を有している。カセット室550にウェハをセットし、搬送室540において、搬送ロボットが、各チャンバにウェハを搬送或いは搬出する。前記第1のバリアメタル膜成膜と前記第2のバリアメタル膜成膜とを真空搬送可能な同一装置内において行なうことでプロセスを安定化させることができる。また、外気にウェハを晒すことなく処理するため、パーティクルの付着を防止することができる。例えば、第1のバリアメタル膜成膜をチャンバ510にて行ない、第2のバリアメタル膜成膜をチャンバ520にて行なう。
【0052】
図8は、ALD装置の他の概要構成例を示す図である。
図6における装置では、チャンバ600上部から基体10の大きさに関わらず、また、ガスの進行方向に関わらずガスを供給しているが、図8に示すように、基体10と平行する平板となるシャワーヘッド620から基体10全面に向けて均一にガスを供給するように構成するとなお良い。その他の構成は、図6と同様であるので省略する。
【0053】
図4(b)において、シード膜形成工程として、スパッタ等のPVD法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜250としてバリアメタル膜240が形成された開口部150内壁及び基体200表面に堆積(形成)させる。ここでは、シード膜250を膜厚100nm堆積させた。
【0054】
図4(c)において、めっき工程として、シード膜250をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長によりCu膜260を開口部150及び基体200表面に堆積させる。ここでは、膜厚500nmのCu膜260を堆積させ、堆積させた後にアニール処理を250℃の温度で30分間行なう。
【0055】
図4(d)において、平坦化工程として、CMP法によってSiO膜222の表面に堆積された導電部としての配線層となるCu膜260、シード膜250、及びバリアメタル膜240を研磨除去することにより、平坦化し、図4(d)に表したような下層配線となる埋め込み構造を形成する。
【0056】
以上のように、減圧CVD装置(ここでは、ALD装置)を用いて、p−MSQ(空孔連結部分サイズ:0.6nm)上に、Ta[N(CおよびNHを用い、成膜温度300℃にて、Ta[N(C(1s)→H(1s)→NH(1s)→H(1s)を1サイクルとして、10サイクルの供給を行い、その後、成膜温度を350℃にして、TaCl(1s)→H(1s)→NH(2s)→H(1s)を1サイクルとして、30サイクルの供給を行った結果、TEM(透過電子顕微鏡)観察の結果、2nmのTaNが形成されており、下地のポーラスMSQ内への拡散は観察されなかった。下地p−MSQの空孔連結部分サイズより大きいTa[N(Cを用いたALD−TaNの成膜を行うことでp−MSQ内への拡散を抑制することができる。さらに、セルフリミッティング効果が大きく高純度化が容易なTaClを使用することで、膜厚制御性が高く、高純度なALD−TaN膜を成膜することが可能となる。
【0057】
さらに言えば、複数の空孔が形成され、表面側に形成される空孔が内部の空孔へ連結し内部へと開口する多孔質膜に対し、第1の吸着工程の一例として、Ta[N(C供給工程において、前記多孔質膜表面側に形成される空孔が前記多孔質膜内部側の空孔へ連結する連結位置における開口サイズより大きい第1の分子(Ta−R1:R1は、[N(C)を前記多孔質膜表面に吸着させることにより、第1の分子により連結位置での開口面を塞いだ状態を形成する。そして、第1の反応生成膜形成工程の一例として、NH供給工程において、前記第1の分子と反応する第1の反応種の一例であるNHを供給し、前記多孔質膜表面に第1の反応生成膜である第1のTaN膜を形成する。第1の分子で連結位置での開口面を塞いだ状態を形成し、第1の反応生成膜である第1のTaN膜を形成することにより、Taメタルの多孔質膜への拡散を抑制することができる。さらに、第2の吸着工程として、TaCl供給工程において、前記第1のTaN膜表面に前記開口サイズより小さい第2の分子(Ta−R2:R2は、Cl)を吸着させ、第2の反応生成膜形成工程として、NH供給工程において、前記第2の分子と反応する第2の反応種の一例であるNHを供給し、前記第1のTaN膜表面に第2の反応生成膜である第2のTaN膜を形成する、すなわち、TaN膜の膜厚を厚くしていくことにより、セルフリミッティング効果を高め、高純度化したTaN膜を形成することができる。言い換えれば、分子サイズが小さく拡散し易い金属無機化合物を原料として第2の反応生成膜を形成する場合でも、まず、分子サイズが大きい金属有機化合物を原料として供給し、前記第1の分子を前記多孔質膜表面に吸着させることにより、多孔質膜における前記開口面を塞いだ状態を形成することができる。
【0058】
実施の形態1では、第1のバリアメタル膜成膜として、Ta[N(Cを用いて300℃の成膜温度で10サイクル成膜しているが、これに限るものではない。p−lowk膜表面の空孔連結部分の開口面が塞がれればサイクル数は何回でも構わない。1サイクルのみ成膜し、開口面を塞ぐようにしても構わない。その後、TaClを用いて通常レートの例えば350℃にして複数サイクル繰り返し、所望する膜厚まで成膜しても構わない。
【0059】
図9は、成膜レートと成膜温度との関係を示す図である。
図9に示すように、ALD成膜において、所定の温度以上で成膜が可能となり、ある範囲(B−C間)で成膜レートが安定する。通常、制御のし易さ等の観点から、かかる成膜レートが安定する範囲を成膜温度とするのが望ましい。Ta[N(Cでは、250〜300℃が望ましい。TaClでは、300〜350℃が望ましい。また、400℃以上となるとp−lowk膜に悪影響を与えてしまうため好ましくない。
【0060】
図10は、Ta[N(Cの分子サイズを説明するための図である。
Ta[N(C分子は、Ta元素に5つのペンタジエチル(N(C)基が結合している。かかる状態で、分子サイズは、1nm以上となる。成膜温度を高くするとかかるN(C基が分離していく。通常、250〜300℃では、2〜3個のN(C基が分離して、p−lowk膜に結合すると考えられる。かかる場合、0.6nm以下の空孔連結部分サイズ(開口サイズ)に対してTaの拡散抑制効果がある。ここで、成膜温度を低くすると逆に分離するN(C基が少なくなる。分離するN(C基が少なくなると分子サイズも大きくなる。図9におけるA点における温度、言い換えれば、250℃より低い温度では、図10の下図のように、通常の成膜温度下での分離数より少ない、例えば、1個のN(C基が分離して、p−lowk膜に結合することがある。かかる場合の分子サイズが、0.7nm以上となる。よって、成膜可能な限界温度に近づけることにより、通常の成膜温度での分子サイズより大きな分子サイズでp−lowk膜に結合させることができる。Ta[N(Cでは、150℃以下では、成膜が難しいと考えられる。よって、150〜250℃の範囲でp−lowk膜に結合させれば、より大きな空孔連結部分サイズ(開口サイズ)、すなわち、0.7nm以下の空孔連結部分サイズに対して拡散抑制効果を挙げることができる。
【0061】
以上のように、p−lowk膜に吸着する分子サイズを制御することができるので、さらに、p−lowk膜の開口サイズに合わせて幅広く対応することができる。
【0062】
実施の形態1では、まず、Ta[N(Cを用いて空孔連結部分を塞ぎ、その後に、TaClを用いてセルフリミッティング効果を高め、高純度化したTaN膜を形成しているが、Ta[N(Cを用いて最終的に所望する膜厚まで成膜しても構わない。例えば、空孔連結部分サイズ0.7nmのp−lowk膜上にTaN膜を形成する場合は、当初、250℃以下の成膜温度(例えば150℃)で成膜し、その後、通常レートの例えば300℃にして所望する膜厚まで成膜しても構わない。
或いは、第1のバリアメタル膜成膜として、250℃以下の成膜温度(例えば150℃)で1サイクルのみ成膜し、その後、通常レートの例えば300℃にして複数サイクル繰り返し、所望する膜厚まで成膜しても構わない。成膜レートは遅くなるが、最初から250℃以下の成膜温度(例えば150℃)で所望する膜厚まで成膜しても構わない。
【0063】
多層配線化する場合には、さらに、以下の工程を行なう。
図11は、実施の形態1における多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
図11では、さらに、絶縁膜形成工程として、SiC膜形成工程、p−lowk膜形成工程、Heプラズマ処理工程、SiC膜形成工程、p−lowk膜形成工程、Heプラズマ処理工程、SiO膜形成工程を示している。それ以降の工程は後述する。
【0064】
図11(a)において、次の層における絶縁膜形成工程の一部であるSiC膜形成工程として、還元性プラズマ処理した同じCVD装置内で400℃の温度で50nmの膜厚のSiC膜275を形成する。SiC膜275は拡散防止膜の働きがあり、このSiC膜275を形成することで、Cuの拡散を防止することができる。かかるCVD法で形成されるSiC膜275の他に、SiCN膜、SiCO膜、SiN膜、SiO膜を用いることができる。
【0065】
図11(b)において、p−lowk膜形成工程として、図3(b)で説明した工程と同様に、SiC膜275の上にSiC膜275よりも比誘電率の低い低誘電率膜である、多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜280を形成する。そして、同様に、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜280表面をHeプラズマ照射によって表面改質する。
【0066】
図11(c)において、SiC膜形成工程として、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜280上にSiC膜282を形成する。SiC膜282は、後述するデュアルダマシン法によるCu埋め込みのための溝及び孔をエッチングにより形成するためのエッチングストッパとすることができる。そして、p−lowk膜形成工程として、SiC膜282上にp−lowk膜285を形成する。そして、同様に、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜285表面をCVD装置内でHeプラズマ照射によって表面改質する。そして、SiO膜形成工程として、図2(c)で説明した工程と同様、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜285上にSiO290を形成する。
【0067】
図12は、図11に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
図12では、開口部を形成する開口部形成工程と、バリアメタル膜形成工程と、ヴィアと上層配線とを形成するヴィア、上層配線形成工程となる導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程として、シード膜形成工程とを示している。それ以降の工程は後述する。
【0068】
図12(a)において、開口部形成工程として、図3(d)で説明した工程と同様、リソグラフィ工程とドライエッチング工程でデュアルダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部152,154を、SiO膜290とp−lowk膜285とSiC膜282とp−lowk膜280とSiC膜275とに形成する。孔形成工程として開口部150に堆積した下層Cu膜260へと貫通する、ヴィア孔となる開口部152を形成し、溝形成工程として上層配線用の溝となる開口部154を形成する。その後、ドライエッチング洗浄液(例えば、EKC5920による5分間の室温洗浄)でヴィア底残渣を除去する。
【0069】
図12(b)において、バリアメタル膜形成工程として、図4(a)で説明した工程と同様、前記開口部形成工程により形成された開口部152,154及びSiO膜290表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜242をALD法により5nm形成する。その他は、図4(a)での説明と同様で構わないため省略する。
【0070】
図12(c)において、シード膜形成工程として、図4(b)で説明した工程と同様、スパッタ等の物理気相成長(PVD)法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜252としてバリアメタル膜242が形成された開口部152,154内壁、堀込部156及び基体200表面に堆積(形成)させる。ここでは、シードCu膜を膜厚100nm堆積させた。
【0071】
図13は、図12に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
図13では、さらに、めっき工程と、平坦化工程を示している。
【0072】
図13(a)において、めっき工程として、図4(c)で説明した工程と同様、シード膜252をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長によりCu膜264を開口部152,154及び基体200表面に堆積させる。これによりCu膜264の一部に前記下層配線と前記上層配線と接続するヴィア262が形成される。ここでは、膜厚300nmのCu膜を堆積させた後にアニール処理を250℃の温度で30分間行なう。
【0073】
図13(b)において、平坦化工程として、図4(d)で説明した工程と同様、CMP法によってSiO膜290の表面に堆積された導電部としての配線層となるCu膜264、シード膜252、及びバリアメタル膜242を研磨除去することにより、平坦化し、図13(b)に表したような埋め込み構造を形成する。溝外部のCu膜とバリアメタル膜を除去して2層目のデュアルダマシンCu配線を形成する。
【0074】
実施の形態2.
実施の形態2では、Ta[N(CHをメタル原料に用いて、多孔質低誘電率膜としてのp−MSQ上にバリアメタル膜としてTaN膜をALD成膜する場合を説明する。ここでは、空孔連結部分サイズが0.3nmのp−MSQ上に形成する。
図14は、実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図14において、図1のTa[N(C供給工程(S106)が、Ta[N(CH供給工程(S1406)に代わった以外は、図1と同様である。
【0075】
バリアメタル膜形成工程として、開口部内の表面とSiO膜222表面とにALD法によりバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜240を形成する。
【0076】
ここでは、実施の形態1と同様、バリアメタル膜として、窒化タンタル(TaN)膜を成膜する。まず、第1のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、ペンタジメチルタンタル(Ta[N(CH)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。パージガスとして、Hを用いることで、次の反応性を高めることができる。さらに、Hは純度を高めることができるので、クリーニングに適している点は、上述した通りである。
図15は、TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
Ta[N(CH供給工程として、Ta[N(CHを1s供給する。その後、H供給工程として、Hを1s供給してパージする。そして、NH供給工程として、NHを1s供給する。そしてH供給工程として、Hを1s供給してパージする。かかる工程を1サイクルとして、成膜温度270℃にて、10サイクルの供給を行なう。
【0077】
成膜温度270℃にて、金属有機化合物であるTa[N(CHを用いたことで、開口部内側面に露わになったp−lowk膜220表面に吸着する分子(図2におけるTa−R1)サイズを0.3nm以上とすることができる。ALD装置は、図6と同様の装置を用いればよい。
【0078】
ここでは、Ta[N(CH、H、NHの各ガス量は、1.68Pa・m/s(1000sccm)、チャンバ600の内部の圧力を339Pa(3Torr)とした。ここで、ガス量は、Ta[N(CHについて、0.5Pa・m/s(300sccm)〜1.68Pa・m/s(1000sccm)が望ましい。NHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。パージガスであるHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。成膜圧力は、665Pa(5Torr)以下が望ましい。成膜温度は、250〜300℃が望ましい。
【0079】
また、実施の形態1と同様、メタル原料の還元ガスとして、ヒドラジン(HNNH)或いは、1−1ジメチルヒドラジンや1−2ジメチルヒドラジン等のヒドラジン化合物を用いても構わない。
【0080】
さらに、実施の形態1と同様、パージガスとして、アルゴン(Ar)や窒素(N)やHeを用いても構わない。
【0081】
次に、実施の形態1と同様、TaN膜形成工程における第2のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、塩化タンタル(TaCl)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。メタル原料として、TaClを用いることで、セルフリミッティング性能を向上させることができる。また、TaClを用いることで、TaN膜を高純度化させることができる。
【0082】
実施の形態2では、第1のバリアメタル膜成膜として、Ta[N(CHを用いて270℃の成膜温度で10サイクル成膜しているが、これに限るものではない。p−lowk膜表面の空孔連結部分の開口面が塞がれればサイクル数は何回でも構わない。1サイクルのみ成膜し、開口面を塞ぐようにしても構わない。その後、TaClを用いて通常レートの例えば350℃にして複数サイクル繰り返し、所望する膜厚まで成膜しても構わない。
【0083】
図16は、Ta[N(CHの分子サイズを説明するための図である。
Ta[N(CH分子は、Ta元素に5つのペンタジメチル(N(CH)基が結合している。かかる状態で、分子サイズは、0.9nm程度となる。成膜温度を高くするとかかるN(CH基が分離していく。通常、250〜300℃では、2〜3個のN(CH基が分離して、p−lowk膜に結合すると考えられる。空孔連結部分サイズが0.3nm、比誘電率kが2.4、空孔率30%のp−MSQ上に形成した実験の結果、0.3nmの空孔連結部分サイズ(開口サイズ)に対してTaの拡散抑制効果があることがわかっている。よって、0.3nm以下の空孔連結部分サイズ(開口サイズ)に対しては、Taの拡散抑制効果があることになる。ここで、成膜温度を低くすると逆に分離するN(CH基が少なくなる。分離するN(CH基が少なくなると分子サイズも大きくなる。図9におけるA点における温度、言い換えれば、250℃より低い温度では、図16の下図のように、通常の成膜温度下での分離数より少ない、例えば、1個のN(CH基が分離して、p−lowk膜に結合することがある。かかる場合の分子サイズが、0.6nm以上となる。よって、成膜可能な限界温度に近づけることにより、通常の成膜温度での分子サイズより大きな分子サイズでp−lowk膜に結合させることができる。Ta[N(CHでは、200℃以下では、成膜が難しいと考えられる。よって、200〜250℃の範囲でp−lowk膜に結合させれば、より大きな空孔連結部分サイズ(開口サイズ)、すなわち、0.6nm以下の空孔連結部分サイズに対してTaの拡散抑制効果を挙げることができる。
【0084】
以上のように、p−lowk膜に吸着する分子サイズを制御することができるので、さらに、p−lowk膜の開口サイズに合わせて幅広く対応することができる。
【0085】
実施の形態2では、まず、Ta[N(CHを用いて空孔連結部分を塞ぎ、その後に、TaClを用いてセルフリミッティング効果を高め、高純度化したTaN膜を形成しているが、Ta[N(CHを用いて最終的に所望する膜厚まで成膜しても構わない。例えば、空孔連結部分サイズ0.6nmのp−lowk膜上にTaN膜を形成する場合は、当初、250℃以下の成膜温度(例えば200℃)で成膜し、その後、通常レートの例えば300℃にして所望する膜厚まで成膜しても構わない。
或いは、第1のバリアメタル膜成膜として、250℃以下の成膜温度(例えば200℃)で1サイクルのみ成膜し、その後、通常レートの例えば270℃にして複数サイクル繰り返し、所望する膜厚まで成膜しても構わない。成膜レートは遅くなるが、最初から250℃以下の成膜温度(例えば200℃)で所望する膜厚まで成膜しても構わない。
【0086】
実施の形態3.
実施の形態3では、TaClをメタル原料に用いて、多孔質低誘電率膜としてのp−MSQ上にバリアメタル膜としてTaN膜をALD成膜する場合を説明する。ここでは、空孔連結部分サイズが0.3nmのp−MSQ上に形成する。
図17は、実施の形態3における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図17において、図1のTa[N(C供給工程(S106)が、TaCl供給工程(S1706)に代わった以外は、図1と同様である。
【0087】
バリアメタル膜形成工程として、開口部内の表面とSiO膜222表面とにALD法によりバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜240を形成する。
【0088】
ここでは、実施の形態1と同様、バリアメタル膜として、窒化タンタル(TaN)膜を成膜する。まず、第1のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、塩化タンタル(TaCl)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。パージガスとして、Hを用いることで、次の反応性を高めることができる。さらに、Hは純度を高めることができるので、クリーニングに適している点は、上述した通りである。
図18は、TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
TaCl供給工程として、TaClを3s供給する。その後、H供給工程として、Hを1s供給してパージする。そして、NH供給工程として、NHを3s供給する。そしてH供給工程として、Hを1s供給してパージする。かかる工程を1サイクルとして、成膜温度250℃にて、10サイクルの供給を行なう。
【0089】
成膜温度250℃にて、金属無機化合物であるTaClを用いたことで、開口部内側面に露わになったp−lowk膜220表面に吸着する分子(図2におけるTa−R1)サイズを0.3nm以上とすることができる。ALD装置は、図6と同様の装置を用いればよい。
【0090】
ここでは、Ta[N(CH、H、NHの各ガス量は、1.68Pa・m/s(1000sccm)、チャンバ600の内部の圧力を339Pa(3Torr)とした。ここで、ガス量は、Ta[N(CHについて、0.5Pa・m/s(300sccm)〜1.68Pa・m/s(1000sccm)が望ましい。NHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。パージガスであるHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)〜3.36Pa・m/s(2000sccm)が望ましい。成膜圧力は、665Pa(5Torr)以下が望ましい。成膜温度は、250℃以上、300℃未満が望ましい。
【0091】
また、実施の形態1と同様、メタル原料の還元ガスとして、ヒドラジン(HNNH)或いは、1−1ジメチルヒドラジンや1−2ジメチルヒドラジン等のヒドラジン化合物を用いても構わない。
【0092】
さらに、実施の形態1と同様、パージガスとして、アルゴン(Ar)や窒素(N)やHeを用いても構わない。
【0093】
次に、実施の形態1と同様、TaN膜形成工程における第2のバリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、同種原料である塩化タンタル(TaCl)を用い、メタル原料と反応する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。成膜温度は、300〜350℃が望ましい。メタル原料として、TaClを用いることで、セルフリミッティング性能を向上させることができる。また、TaClを用いることで、TaN膜を高純度化させることができる。ALD装置は、図6と同様の装置を用いればよい。本実施の形態3では、同種のメタル原料を、成膜温度を変えて、第1と第2のバリアメタル膜成膜を行なうため、図7に示すように、第1と第2のバリアメタル膜成膜において、チャンバを分けて処理した方が、温度管理のし易さから望ましい。
【0094】
以上のように、減圧CVD装置(ここでは、ALD装置)を用いて、ポーラスMSQ(空孔連結部分サイズ:0.3nm)上に、TaClおよびNHを用いて、まず、成膜温度250℃にて、TaCl(3s)→H(1s)→NH(3s)→H(1s)を1サイクルとして、10サイクルの供給を行ない、その後、成膜温度350℃にて、TaCl(1s)→H(1s)→NH(2s)→H(1s)を1サイクルとして成膜後、TEM(透過電子顕微鏡)観察を行った結果、2nmのTaNが形成されており、下地のp−MSQ内への拡散は観察されなかった。初期成膜の温度を低温化することで、分解抑制し表面分子サイズを空孔連結部分サイズより大きくすることができる。これによりp−MSQ内への拡散が抑制できる。
【0095】
実施の形態3では、第1のバリアメタル膜成膜として、TaClを用いて250℃の成膜温度で10サイクル成膜しているが、これに限るものではない。p−lowk膜表面の空孔連結部分の開口面が塞がればサイクル数は何回でも構わない。1サイクルのみ成膜し、開口面を塞ぐようにしても構わない。その後、第2のバリアメタル膜成膜として、通常レートの例えば350℃にして複数サイクル繰り返し、さらに、TaN膜を所望する膜厚まで成膜しても構わない。第1のバリアメタル膜成膜として、TaClを用いて250℃の成膜温度で1サイクルのみ成膜し、開口面を塞ぐようにする場合、TaCl供給を10s以上供給するのが望ましい。10〜15sがスループットの観点からも好ましい。
【0096】
図19は、TaClの分子サイズを説明するための図である。
TaCl分子は、Ta元素に5つのハロゲン(Cl)基が結合している。成膜温度を高くするとかかるCl基が分離していく。通常、300〜350℃では、2〜3個のN(CH基が分離して、p−lowk膜に結合すると考えられる。実験の結果、0.3nmの空孔連結部分サイズ(開口サイズ)に対してTaの拡散抑制効果はなかったことがわかっている。ここで、成膜温度を低くすると逆に分離するCl基が少なくなる。分離するCl基が少なくなると分子サイズも大きくなる。図9におけるA点における温度、言い換えれば、300℃より低い温度では、図18の下図のように、通常の成膜温度下での分離数より少ない、例えば、1個のN(CH基が分離して、p−lowk膜に結合することがある。かかる場合の分子サイズが、0.3nm以上となる。よって、成膜可能な限界温度に近づけることにより、通常の成膜温度での分子サイズより大きな分子サイズでp−lowk膜に結合させることができる。TaClでは、250℃以下では、成膜が難しいと考えられる。よって、250〜300℃の範囲でp−lowk膜に結合させれば、より大きな空孔連結部分サイズ(開口サイズ)、すなわち、0.3nm以下の空孔連結部分サイズに対してTaの拡散抑制効果を挙げることができる。
【0097】
以上のように、p−lowk膜に吸着する分子サイズを制御することができるので、さらに、p−lowk膜の開口サイズに合わせて幅広く対応することができる。
【0098】
実施の形態3では、まず、250℃下でTaClを用いて空孔連結部分を塞ぎ、その後に、通常成膜温度(300〜350℃)下でTaClを用いて成膜レートを高めたTaN膜を形成しているが、300℃より低い温度(例えば250℃)で最終的に所望する膜厚まで成膜しても構わない。
【0099】
以上のように、前記第1の吸着工程において、前記第2の吸着工程に用いる原料と同種の原料を前記第1の分子の原料として供給し、前記第2の吸着工程における基体温度よりも低い基体温度で前記第1の分子を吸着させることも有効である。同種の原料を用いる場合でも、まず、前記第2の吸着工程における基体温度よりも低い基体温度で前記第1の分子を吸着させることで、前記第1の分子サイズが、第2の分子サイズより大きい状態でp−lowk膜表面に吸着させることができる。
【0100】
前記各実施の形態のいずれか、或いは、組み合わせて、前記開口サイズに合わせて原料を選択すれば、多孔質膜の性質に合わせて幅広く対応することができる。また、前記開口サイズに合わせて、成膜温度を制御することで、多孔質膜に吸着する分子サイズを制御することができる。多孔質膜に吸着する分子サイズを制御することができるので、さらに、多孔質膜の性質に合わせて幅広く対応することができる。
【0101】
ここで、ALD法により形成されるバリアメタルとして、TaNの他、炭化窒化タンタル(TaCN)、窒化タングステン(WN)、炭化窒化タングステン(WCN)、窒化チタン(TiN)等の高融点金属の窒化膜或いは窒化炭素膜、或いは、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)単体であっても構わない。或いは、WSiN等であっても構わない。或いはジルコニウム(Zr)系のバリアメタル膜であっても構わない。或いは、これらの複数の材料による積層膜であっても構わない。例えば、Ti系のバリアメタル膜のメタル原料として、テトラジエチルチタン(Ti[N(C)やテトラジメチルチタン(Ti[N(CH)や塩化チタン(TiCl)を用いても構わない。W系のバリアメタル膜のメタル原料として、WFを用いても構わない。
【0102】
ここで、上記各実施の形態における配線層の材料として、Cu以外に、Cu−Sn合金、Cu−Ti合金、Cu−Al合金等の、半導体産業で用いられるCuを主成分とする材料を用いて同様の効果が得られる。
【0103】
なお、多層配線構造などを形成する場合には、各図において基体200は、下層の配線層と絶縁膜とが形成されたものである。
【0104】
以上、具体例を参照しつつ各実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0105】
例えば、各実施の形態で層間絶縁膜が形成された基体200は、図示しない各種の半導体素子あるいは構造を有するものとすることができる。また、半導体基板ではなく、層間絶縁膜と配線層とを有する配線構造の上に、さらに層間絶縁膜を形成してもよい。開口部も半導体基板が露出するように形成してもよいし、配線構造の上に形成してもよい。
【0106】
さらに、層間絶縁膜の膜厚や、開口部のサイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
【0107】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0108】
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、フォトリソグラフィプロセス、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図2】多孔質低誘電率膜上に吸着する分子の様子を説明するための図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
【図4】実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
【図5】TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
【図6】ALD装置の概要構成を示す図である。
【図7】複数のチャンバを備えた装置の概要を説明するための概念図である。
【図8】ALD装置の他の概要構成例を示す図である。
【図9】成膜レートと成膜温度との関係を示す図である。
【図10】Ta[N(Cの分子サイズを説明するための図である。
【図11】実施の形態1における多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
【図12】図11に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
【図13】図12に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
【図14】実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図15】TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
【図16】Ta[N(CHの分子サイズを説明するための図である。
【図17】実施の形態3における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図18】TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
【図19】TaClの分子サイズを説明するための図である。
【図20】従来のlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図21】ALD法によるバリアメタルの成膜例を示すガスの供給フロー図である。
【図22】ALD法において、TaN膜が形成される様子を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0110】
10,200 基体
20 TaR膜
22 TaN膜
150,152,154 開口部
156 堀込部
212,275,282 SiC膜
220,280,285 p−lowk膜
221,281 絶縁膜
222,290 SiO
240,242 バリアメタル膜
250,252 シード膜
260,264 Cu膜
262 ヴィア
500 装置
510,520,530,600 チャンバ
540 搬送室
550 カセット室
610 基板ホルダ
620 シャワーヘッド
630 真空ポンプ
650 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空孔が形成され、表面側に形成される空孔が内部の空孔へ連結し内部へと開口する多孔質膜を基体上に形成する多孔質膜形成工程と、
前記多孔質膜表面側に形成される空孔が前記多孔質膜内部側の空孔へ連結する連結位置における開口サイズより大きい第1の分子を前記多孔質膜表面に吸着させる第1の吸着工程と、
前記第1の分子と反応する第1の反応種を供給し、前記多孔質膜表面に第1の反応生成膜を形成する第1の反応生成膜形成工程と、
前記第1の反応生成膜表面に前記開口サイズより小さい第2の分子を吸着させる第2の吸着工程と、
前記第2の分子と反応する第2の反応種を供給し、前記第1の反応生成膜表面に第2の反応生成膜を形成する第2の反応生成膜形成工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の吸着工程において、金属有機化合物を前記第1の分子の原料として供給し、
前記第2の吸着工程において、金属無機化合物を前記第2の分子の原料として供給することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の吸着工程において、前記第2の吸着工程に用いる原料と同種の原料を前記第1の分子の原料として供給し、前記第2の吸着工程における基体温度よりも低い基体温度で前記第1の分子を吸着させることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質膜として、比誘電率2.5以下の低誘電率膜を用いることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記開口サイズが、0.6nm以下の多孔質膜に対して、前記第1の吸着工程において、ペンタジメチルタンタル(Ta[N(CH)を前記第1の分子の原料として用いることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記開口サイズが、0.7nm以下の多孔質膜に対して、前記第1の吸着工程において、ペンタジエチルタンタル(Ta[N(C)を前記第1の分子の原料として用いることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記開口サイズが、0.3nm以下の多孔質膜に対して、前記第1と第2の吸着工程において、塩化タンタル(TaCl)を前記第1と第2の分子の原料として用いることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
基体上に、多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
基体温度を250℃より低い温度に制御し、前記多孔質膜が形成された基体上に、ペンタジメチルタンタル(Ta[N(CH)を供給するペンタジメチルタンタル供給工程と、
Ta[N(CH供給後に、Ta[N(CHと反応する反応種を供給する反応種供給工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基体上に、多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
基体温度を250℃より低い温度に制御し、前記多孔質膜が形成された基体上に、ペンタジエチルタンタル(Ta[N(C)を供給するペンタジエチルタンタル供給工程と、
Ta[N(C供給後に、Ta[N(Cと反応する反応種を供給する反応種供給工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基体上に、多孔質膜を形成する多孔質膜形成工程と、
基体温度を300℃より低い温度に制御し、前記多孔質膜が形成された基体上に、塩化タンタル(TaCl)を供給する塩化タンタル供給工程と、
TaCl供給後に、TaClと反応する反応種を供給する反応種供給工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−24667(P2006−24667A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200083(P2004−200083)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】