説明

半導体装置の製造方法

【課題】MOS界面の界面準位とバルクのゲート酸化膜中の欠陥とを共に提言し良質なゲート絶縁膜を得る。
【解決手段】基板1上に半導体層2を形成した後、プラズマCVD法によって第1のゲート酸化膜3を薄く生成する。次に、第1のゲート酸化膜3を形成したときよりも基板温度をより高くした状態で、第1のゲート酸化膜3の上に第2のゲート酸化膜4を形成する。基板温度が比較的低い状態で生成した第1のゲート酸化膜は、MOS界面の界面準位がより低減されており、基板温度が比較的高い状態で生成した第2のゲート酸化膜は、その酸化膜中の欠陥が低減されているから、結果的に、第1及び第2のゲート酸化膜3及び4からなるゲート酸化膜は、MOS界面の界面準位が低減され、且つゲート酸化膜中の欠陥が低減されたゲート酸化膜となり、良質なゲート酸化膜を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体層、ゲート絶縁層及びゲート電極層がこの順に積層された半導体装置の製造方法に関し、特に、良好なゲート絶縁膜を得るようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、MOSトランジスタのゲート絶縁膜を形成する方法として、単結晶シリコンを用いたLSIでは熱酸化法、非晶質シリコンや多結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタでは熱酸化法のほかに、CVD法やスパッタ法などが用いられている。また、一般に、前記ゲート酸化膜形成工程では、シリコン表面が露出されている状態から、ゲート絶縁膜が所望の厚さになるまで単一の条件でゲート絶縁膜を形成するようにしている。
【0003】
しかしながら、このように、単一の条件でゲート絶縁膜を形成する場合、MOS界面の界面準位とバルクのゲート酸化膜中の欠陥とを同時に低減することは難しく、通常、界面準位密度は低いがバルク中の欠陥密度は高い、もしくは、逆に、バルク中の欠陥密度は低いが界面準位密度は高い、といった条件で処理されることが多い。このような傾向は、特に、薄膜トランジスタの製造工程などでしばしば用いられる、600℃以下のいわゆる低温プロセスにおいて顕著である。その原因はMOS界面形成とバルクのゲート酸化膜形成の最適条件が異なることにあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、単一の条件でゲート絶縁膜を形成する場合、MOS界面の界面準位とバルクのゲート酸化膜中の欠陥とを同時に低減することは難しく、通常は、界面かバルクかどちらかの欠陥密度が高くなってしまう条件でゲート絶縁膜が形成されている。このため、高性能なトランジスタを製造することができないという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、MOS界面形成及びバルクのゲート絶縁膜形成をそれぞれに最適な条件で行うことにより、ゲート絶縁膜全体として高品質な膜を形成し、高性能な半導体装置を得ることの可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体層と、当該半導体層上に配置されたゲート絶縁層と、当該ゲート絶縁層上に配置されたゲート電極層と、を有する半導体装置の製造方法であって、前記半導体層上に前記ゲート絶縁層となる絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を備え、当該絶縁膜形成工程では、前記絶縁膜の形成過程において、形成された絶縁膜の厚みに応じて前記絶縁膜の形成条件のうちの少なくとも一つのパラメータを変化させるようになっていることを特徴としている。
【0007】
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜を熱処理する熱処理工程をさらに備えることが好ましい。
また、上記半導体装置の製造方法において、前記熱処理工程は、水蒸気雰囲気下で行う熱処理であることが好ましい。
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜の形成過程において前記熱処理を行うことが好ましい。
【0008】
また、上記半導体装置の製造方法において、前記パラメータは温度であることが好ましい。
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが第1の厚みである期間は、前記絶縁膜の厚みが前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みである期間よりも低温で前記絶縁膜を形成することが好ましい。
【0009】
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが小さいほどより低温で前記絶縁膜を形成することが好ましい。
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜形成工程では、高周波を用いてプラズマを発生させるCVD法を用いて前記絶縁膜を形成することが好ましい。
【0010】
また、上記半導体装置の製造方法において、前記パラメータは、前記CVD法における高周波電源の出力電力であることが好ましい。
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが第1の厚みである期間は、前記絶縁膜の厚みが前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みである期間よりも前記高周波電源の出力電力をより低出力にして前記絶縁膜を形成することが好ましい。
【0011】
また、上記半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが小さいほど前記高周波電源の出力電力をより低出力にして前記絶縁膜を形成することが好ましい。
さらに、上記半導体装置の製造方法において、絶縁基板上に前記半導体層を形成する工程をさらに備えることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は本発明による半導体装置の製造方法を用いてMOS構造の薄膜トランジスタを製造する場合の製造工程を示す部分断面図である。
【0013】
なお、図1では、薄膜トランジスタを製造する場合について説明するが、単結晶シリコンを用いた場合でも絶縁膜形成工程に同様のプロセスを用いてMOSトランジスタを製造することができる。
まず、ガラス基板1上に半導体層2を形成し、フォトリソグラフィー及びエッチングによって素子分離を行う(図1(a))。この素子分離工程は単結晶シリコンを用いたトランジスタの製造工程では、いわゆる、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法、あるいは、STI(Shallow Trench Isolation)法などにより行うことができる。
【0014】
次に、クリーンルームなどの環境中からの汚染物質を除去するために前記基板1をよく洗浄して半導体層2上の不純物を完全に除去し、さらに、ふっ酸などを用いて半導体層2表面の自然酸化膜を除去した後、自然酸化膜が形成される前に、前記半導体層2上に、プラズマCVD装置を用いて、SiH4 ガス、O2 ガスなどを導入し、また、基板温度を低温に保った状態で、ゲート絶縁膜の一部となる第1のゲート絶縁膜3を薄く成膜する(図1(b))。
【0015】
また、ここでいう低温とは室温以下であることが望ましい。これは、プラズマCVD法を用いてゲート絶縁膜を形成し、さらに、この後に水蒸気雰囲気下で熱処理を行うようにした場合、基板温度がより低い方が、MOS界面の準位密度を低減することができ、特に、室温以下であれば、ゲート電極に電圧を印加したときに誘起されるキャリア密度に比較して十分に低い準位密度を得ることができるという実験結果が得られているからである。
【0016】
図2は、その実験結果であって、基板温度〔℃〕を変化させた場合の中間ギャップ位置における界面準位密度Dit〔cm-2・eV-1〕の測定結果を表したものである。図2(a)は、半導体層上にプラズマCVD装置を用いてゲート絶縁膜を形成し、さらに、この後に水蒸気雰囲気下で熱処理を3時間行った場合の界面準位密度であり、同様に、図2(b)は、水蒸気雰囲気下で熱処理を60分間行った場合の界面準位密度である。図2(a)及び(b)から基板温度が低いほど界面準位密度が小さく、特に、30℃程度の室温以下とすることにより、ゲート絶縁膜の品質を確保し得る界面準位密度を得ることができることが確認された。また、熱処理時間が長いほど、界面順位密度が向上するわけではなく、図2(b)に示すように、60分程度が望ましいことが確認できた。
【0017】
次に、基板1を昇温し、基板温度が高温になった状態で、プラズマCVD装置を用い、SiH4 ガス、O2 ガスなどを導入して、前記第1のゲート絶縁膜3上に第2のゲート絶縁膜4を成膜し、第1及び第2のゲート絶縁膜3及び4の膜厚の和が、所望のゲート絶縁膜厚となるように、第2のゲート絶縁膜4を成膜する(図1(c))。
【0018】
なお、前記第1のゲート絶縁膜3及び第2のゲート絶縁膜4の膜厚は、MOSトランジスタの所望とする性能に応じて決定すればよく、例えば、MOS界面の界面準位の低減を重視する場合には、第1のゲート絶縁膜3の膜厚を比較的厚くすればよく、逆に、バルク中の欠陥密度の低減を重視する場合には、第2のゲート絶縁膜4の膜厚を比較的厚くするようにすればよい。
【0019】
また、前述の高温とは具体的には基板温度が100℃以上であることが望ましく、さらには200℃以上であることが望ましい。これは、プラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜を形成する場合、基板温度をより高くする方がバルクのシリコン酸化膜中の欠陥を低減することができるという実験結果が得られているからである。
【0020】
図3は、その実験結果を示したものであって、ゲート絶縁膜としてCVD法を用いてシリコン酸化膜を形成したトランジスタのフラットバンド電圧Vfb〔V〕と、シリコン酸化膜の膜厚〔Å〕との対応を、前記シリコン酸化膜の基板温度〔℃〕が、室温である場合(記号◆で示す)と、200℃である場合(記号■で示す)とについて測定した結果を表したものである。図3から、基板温度が200℃である場合は、フラットバンド電圧Vfb〔V〕は零〔V〕付近に分布しており、シリコン酸化膜の膜厚に依存しないのに対し、基板温度が室温である場合には、シリコン酸化膜の膜厚が大きくなるほどフラットバンド電圧Vfb〔V〕のシフトが大きく、特に、基板温度を200℃程度以上とすることで、ゲート絶縁膜としての品質を確保することの可能なシリコン酸化膜を得ることができることが確認された。
【0021】
次に、前記第1のゲート絶縁膜3及び第2のゲート絶縁膜4に対し、飽和水蒸気雰囲気下で熱処理を行う。この時の圧力は大気圧、もしくは、大気圧よりも高い圧力で行うものとし、温度は200℃以上で行う。この水蒸気雰囲気下での熱処理工程の目的は、この水蒸気雰囲気下での熱処理と前記第1及び第2のゲート絶縁膜の成膜方法とを組み合わせることによって絶縁膜中、及び、界面での欠陥密度を大きく低減することである。
【0022】
そして、以後公知の手順にしたがって処理を行う。すなわち、前記第2のゲート絶縁膜4上にゲート電極5を形成し、次に半導体層2に不純物を導入して熱処理することにより、ソース、ドレイン領域を形成する(図示せず)。そして、層間絶縁膜6を形成した後に、コンタクト孔、引き出し配線7を形成し、これによってトランジスタが完成する(図1(d))。
【0023】
このように、トランジスタのゲート絶縁膜をプラズマCVDを用いて成膜するときにはMOS界面付近は基板温度を室温以下として成膜すると共に、ゲート絶縁膜の残りの部分は基板温度を100℃以上として成膜し、さらにその後水蒸気雰囲気下で熱処理することにより、MOS界面準位の密度、及びバルク中の欠陥密度ともに低減された良好なゲート絶縁膜(3及び4)を得ることができる。
【0024】
したがって、このようにして形成したゲート絶縁膜を用いてトランジスタを製造することによって、ゲート絶縁膜のバルク中、及び、MOS界面での欠陥が非常に少ないため、高性能なトランジスタを得ることができる。
なお、上記第1の実施の形態においては、素子分離工程の後に第1のゲート絶縁膜3を成膜し、その後第2のゲート絶縁膜4を成膜し、さらに水蒸気雰囲気下での熱処理を行うという工程順で説明したが、これに限るものではなく、素子分離工程は第1のゲート絶縁膜成膜後、あるいは、第2のゲート絶縁膜成膜後、あるいは、水蒸気雰囲気下での熱処理後のいずれの時点において行うようにしてもよい。また、水蒸気雰囲気下での熱処理工程は、第1のゲート絶縁膜形成後から第2のゲート絶縁膜形成前までの間に行うようにしてもよい。
【0025】
また、第1のゲート絶縁膜3及び第2のゲート絶縁膜4を形成するときのガラス基板1の基板温度条件は、これらゲート絶縁膜の製造方法、CVD装置等によって左右されるため、予め実験等によって、ゲート絶縁膜としての品質を確保することの可能な温度条件を検出し、これを用いるようにすればよい。
また、上記第1の実施の形態においては、プラズマCVD装置を用いてゲート絶縁膜3及び4を形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、減圧CVD装置、スパッタリング装置であっても適用することができる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態は、図1に示す上記第1の実施の形態における工程と同様であるが、ゲート絶縁膜を形成する際の条件が異なっている。
すなわち、この第2の実施の形態においては、図1(b)の工程において、プラズマCVD装置を用い、SiH4 ガス、O2 ガスなどを導入して、半導体層2の上にゲート絶縁膜3を薄く形成するが、このとき、プラズマCVD装置で用いる高周波電源の出力電力を、より低電力にした状態で行う。これは、プラズマCVD法を用いてゲート絶縁膜を形成し、その後、水蒸気雰囲気下で熱処理を行うようにした場合、高周波電源の出力電力がより低い方が、MOS界面の準位密度を低減することができるという実験結果が得られているからである。
【0027】
図4は、プラズマCVD法を用いてゲート絶縁膜を形成し、その後水蒸気雰囲気下で熱処理を行った場合の界面準位密度Dit〔cm-2・eV-1〕を、高周波電源の出力〔W〕を変化させて測定した結果である。図4から、高周波電源の出力電力が増加するほど、界面準位密度が高くなることがわかる。
このようにして、図1(b)の工程で第1のゲート絶縁膜3を形成した後、次に、プラズマCVD装置を用いてSiH4 ガス、O2 ガスなどを導入して前記第1のゲート絶縁膜3上に第2のゲート絶縁膜4を成膜するが、プラズマCVD装置における高周波電源の出力電力を、前記第1のゲート絶縁膜3の成膜時よりも高電力とした状態で行う。そして、ゲート絶縁膜3及び4の膜厚の和が、所望のゲート絶縁膜厚となるように、第2のゲート絶縁膜4を形成する(図1(c))。これは、プラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜を形成する場合には、高周波電源の出力電力を、より高くする方が、バルクのシリコン酸化膜中の欠陥を低減することができるという実験結果が得られているからである。
【0028】
なお、この場合も、前記ゲート絶縁膜3及び4の膜厚は、上記第1の実施の形態と同様に、MOSトランジスタの所望とする性能に応じて設定すればよい。
図5は、プラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜を形成しこれを用いてトランジスタを構成した場合の、フラットバンド電圧Vfbを、高周波電源の出力電力を変化させて5つの検査箇所について測定したものである。図5から、高周波電源の出力電力が高い方が、フラットバンド電圧Vfbはより零近傍の値となることが確認された。
【0029】
そして、以後上記第1の実施の形態と同様に処理を行い、第1のゲート絶縁膜3及び第2のゲート絶縁膜4に対し、飽和水蒸気雰囲気下で熱処理を行い、ゲート電極5及びソース、ドレイン領域を形成し、層間絶縁膜6及びコンタクト孔、引き出し配線7を形成してMOSトランジスタを製造する(図1(d))。
したがって、この第2の実施の形態においても、このような手順で製造されたMOSトランジスタは、そのゲート絶縁膜のバルク中、及び、MOS界面での欠陥が非常に少ないため、高性能なMOSトランジスタを得ることができる。
【0030】
なお、上記第2の実施の形態においては、プラズマCVD法を用いてゲート絶縁膜3及び4を形成するようにした場合について説明したが、高周波CVD法、マイクロ波CVD法、ECR−CVD法等、高周波を用いてプラズマを発生させるようにしたCVD法であれば適用することができることはいうまでもない。
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0031】
この第3の実施の形態は、上記第1及び第2の実施の形態を組み合わせてゲート絶縁膜を形成するようにしたものである。
すなわち、この第3の実施の形態においては、図1(b)の工程において、プラズマCVD装置を用い、SiH4 ガス、O2 ガスなどを導入して、半導体層2上に第1のゲート絶縁膜3を薄く成膜するが、このとき、基板温度を低温に保った状態で、かつ、反応ガスに対する高周波電源の出力電力を低電力にした状態で行う。
【0032】
次に、プラズマCVD装置を用い、SiH4 ガス、O2 ガスなどを導入して、第1のゲート絶縁膜3の上に第2のゲート絶縁膜4を成膜するが、基板1を昇温し、基板温度が前記第1のゲート絶縁膜3を成膜したときよりも高温になった状態で、かつ、プラズマCVD装置における高周波電源の出力電力を前記第1のゲート絶縁膜3を生成したときよりも高電力とした状態で、第2のゲート絶縁膜4を成膜する(図1(c))。なお、この場合も、上記第1及び第2の実施の形態と同様に、前記ゲート絶縁膜3及び4の膜厚は、所望とするMOSトランジスタの性能に応じて設定すればよい。
【0033】
なお、前記基板温度の低温及び高温の条件、反応ガスに対する高周波電源の出力電力の低電力及び高電力の条件は、上記第1及び第2の実施の形態と同様である。
そして、以後、上記第1及び第2の実施の形態と同様にして、第1のゲート絶縁膜3及び第2のゲート絶縁膜4に対し、飽和水蒸気雰囲気下で熱処理を行い、ゲート電極5、層間絶縁膜6、引き出し配線7等を生成し、MOSトランジスタを製造する。
【0034】
したがって、この第3の実施の形態においても、このような手順によって製造されたMOSトランジスタは、そのゲート絶縁膜のバルク中、及び、MOS界面での欠陥がさらに非常に少ないため、高性能なMOSトランジスタを得ることができる。
なお、上記第2及び第3の実施の形態においては、薄膜トランジスタを製造する場合について説明しているが、単結晶シリコンを用いた場合でもゲート絶縁膜形成工程に同様のプロセスを用いてMOSトランジスタを製造することができることはいうまでもない。同様に、素子分離工程は第1のゲート絶縁膜成膜後、あるいは、第2のゲート絶縁膜成膜後、あるいは、水蒸気雰囲気下での熱処理後のいずれであっても良く、また、水蒸気雰囲気下での熱処理工程は第1のゲート絶縁膜形成後から第2のゲート絶縁膜形成前までの間に行うようにしてもよい。
【0035】
また、第2及び第3の実施の形態において、基板温度条件、或いは、高周波電源の出力電力条件は、予め実験を行うことによって、所望の品質を有するゲート絶縁膜を形成し得る条件を検出し、これを設定するようにすれば、より確実に高品質なゲート絶縁膜を得ることができる。
また、上記各実施の形態においては、ゲート酸化膜を、基板温度或いは反応ガスに対する高周波印加電力の異なる条件で生成した第1のゲート酸化膜3と第2のゲート酸化膜4とから構成するようにした場合について説明したが、これに限るものではなく、前記条件の異なる3層以上のゲート酸化膜から構成するようにしてもよい。
【0036】
また、前記基板温度或いは高周波印加電力を段階的に変化させた場合について説明しているが、これに限るものではなく、ゲート絶縁膜の膜厚が増加するほど基板温度を上昇させるようにしてもよく、同様に、ゲート絶縁膜の膜厚が増加するほど高周波印加電力を増加させるようにしてもよい。
また、上記各実施の形態においては、MOSトランジスタを生成する場合について説明したが、これに限るものではなく、MIS構造を有する半導体装置であれば、適用することができる。
【0037】
また、上記各実施の形態においては、ゲート絶縁膜の成膜条件の一つのパラメータとして、温度環境、また、プラズマCVD法における高周波の出力電力を適用し、これらを変化させるようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、半導体層2の最上層を酸化或いは窒化させてゲート絶縁膜の一部を形成し、このゲート絶縁膜の一部の上に、CVD法等によって絶縁膜を堆積させ、これらからなるゲート絶縁膜を得るようにしてもよく、また、ゲート絶縁膜を、窒化膜と酸化膜、或いは濃度の異なる窒化膜の多層膜とするようにしてもよい。
【0038】
さらに、上記各実施の形態においては、半導体層の上にゲート絶縁膜を形成するようにした場合について説明したが、これに限らず、ゲート絶縁膜を形成した後この上に半導体層を形成するようにした場合であっても適用することができ、上記と同等の作用効果を得ることができる。この場合には、半導体層側に近づくほどより低温でゲート絶縁膜を形成するようにすればよく、同様に、半導体層側に近づくほどプラズマCVD法における高周波の出力電力をより低出力となるようにしてゲート絶縁膜を形成すればよい。
【0039】
以上説明したように、本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体層上にゲート絶縁層となる絶縁膜を形成する際に、その形成条件のうち、少なくとも一つのパラメータを変化させ、例えば、絶縁膜を形成するときの温度環境を、絶縁膜の膜厚が薄いほど低温にし、或いは、高周波CVD法を用いて絶縁膜を形成する際には、絶縁膜の膜厚が薄いほど、高周波の出力電力を低出力とすることによって、ゲート絶縁層と半導体層との界面欠陥を低減することができると共に、ゲート絶縁層のバルク部分の欠陥を低減することができ、高品質な絶縁層を得ることができるから、高性能な半導体装置を製造することができる。
【0040】
特に、少なくともゲート絶縁層となる絶縁膜を形成する過程で、例えば水蒸気雰囲気下で熱処理するようにしたから、界面欠陥をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法により、トランジスタを製造する場合の処理工程を示す部分断面図である。
【図2】基板温度と界面準位密度との関係を示す特性図である。
【図3】基板温度の変化に対するフラットバンド電圧と膜厚との関係を示す特性図である。
【図4】高周波電源出力と界面準位密度との関係を示す特性図である。
【図5】高周波電源出力とフラットバンド電圧との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ガラス基板,2…半導体層,3…第1のゲート絶縁膜,4…第2のゲート絶縁膜,5…ゲート電極,6…層間絶縁膜,7…配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、当該半導体層上に配置されたゲート絶縁層と、当該ゲート絶縁層上に配置されたゲート電極層と、を有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体層上に前記ゲート絶縁層となる絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を備え、
当該絶縁膜形成工程では、前記絶縁膜の形成過程において、形成された絶縁膜の厚みに応じて前記絶縁膜の形成条件のうちの少なくとも一つのパラメータを変化させるようになっていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁膜を熱処理する熱処理工程をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程は、水蒸気雰囲気下で行う熱処理であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁膜の形成過程において前記熱処理を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記パラメータは温度であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが第1の厚みである期間は、前記絶縁膜の厚みが前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みである期間よりも低温で前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが小さいほどより低温で前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁膜形成工程では、高周波を用いてプラズマを発生させるCVD法を用いて前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記パラメータは、前記CVD法における高周波電源の出力電力であることを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが第1の厚みである期間は、前記絶縁膜の厚みが前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みである期間よりも前記高周波電源の出力電力をより低出力にして前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜形成工程では、形成された絶縁膜の厚みが小さいほど前記高周波電源の出力電力をより低出力にして前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
絶縁基板上に前記半導体層を形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−81414(P2007−81414A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276090(P2006−276090)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【分割の表示】特願2001−69328(P2001−69328)の分割
【原出願日】平成13年3月12日(2001.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】