説明

半導体装置

【課題】本発明は、簡易な方法で半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を高めることができる半導体装置を提供する事を目的とする。
【解決手段】本発明にかかる半導体装置は、放熱フィン13、14と、放熱フィン13、14上面の一部を露呈して当該上面に接合された絶縁シート4と、絶縁シート4上に配置されたヒートスプレッダ2と、ヒートスプレッダ2上に配置されたパワー素子1と、放熱フィン13、14上面の一部を含む所定の面と、絶縁シート4と、ヒートスプレッダ2と、パワー素子1とを覆って形成されたトランスファーモールド樹脂8とを備え、放熱フィン13、14上面は、絶縁シート4の端部を拘束すべく形成された凸形状および/又は凹形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール型の半導体装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーモジュール型の半導体装置は、パワー素子が備えられる半導体パッケージ部と、パワー素子から発生する熱を放熱する為に備えられる放熱フィンとが別々に備えられていた。
【0003】
この半導体パッケージ部、放熱フィンのそれぞれを密着・接合する為に、例えば特許文献1では、両者間にグリス等を塗布していた。また、半導体パッケージ部に締付け用の穴を設け、放熱フィンと密着・接合していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−42039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成の半導体装置であっても、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を十分に高いものとすることはできず、結果として放熱性を十分に得ることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を十分に高め、放熱性を高めることができる半導体装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる半導体装置は、放熱フィンと、前記放熱フィン上面の一部を露呈して当該上面に接合された絶縁シートと、前記絶縁シート上に配置されたヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダ上に配置されたパワー素子と、前記放熱フィン上面の前記一部を含む所定の面と、前記絶縁シートと、前記ヒートスプレッダと、前記パワー素子とを覆って形成されたトランスファーモールド樹脂とを備え、前記放熱フィン上面は、前記絶縁シートの端部を拘束すべく形成された凸形状および/又は凹形状を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる半導体装置によれば、放熱フィンと、前記放熱フィン上面の一部を露呈して当該上面に接合された絶縁シートと、前記絶縁シート上に配置されたヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダ上に配置されたパワー素子と、前記放熱フィン上面の前記一部を含む所定の面と、前記絶縁シートと、前記ヒートスプレッダと、前記パワー素子とを覆って形成されたトランスファーモールド樹脂とを備え、前記放熱フィン上面は、前記絶縁シートの端部を拘束すべく形成された凸形状および/又は凹形状を有することにより、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1にかかる半導体装置の断面図である。
【図2】実施の形態1にかかる半導体装置の断面図である。
【図3】実施の形態1にかかる半導体装置の部分断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる半導体装置の断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる半導体装置の部分断面図である。
【図6】実施の形態2にかかる半導体装置の部分形状を示す図である。
【図7】前提技術にかかる半導体装置の断面図である。
【図8】前提技術にかかる半導体装置の断面図である。
【図9】前提技術にかかる半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の前提技術としての第1の半導体装置の断面図を、図7に示す。
【0011】
この半導体装置では、パワー素子1がヒートスプレッダ2上に複数備えられ、それぞれアルミワイヤ3を介して信号端子7、主端子12に接続されている。ヒートスプレッダ2は、絶縁シート4上に配置され、さらに絶縁シート4は、グリス5を介して放熱フィン6と接合されている。
【0012】
パワー素子1、ヒートスプレッダ2、アルミワイヤ3、絶縁シート4、グリス5は、トランスファーモールド樹脂8(エポキシ樹脂)に覆われる。さらに、トランスファーモールド樹脂8に設けられたネジ穴、板バネ11を介して、ネジ9がトランスファーモールド樹脂8を貫通して放熱フィン6に達し、トランスファーモールド樹脂8で覆われた半導体パッケージ部と、放熱フィン6とを密着させている。
【0013】
上記の構造に示されるように、半導体パッケージ部と放熱フィン6との接合には、グリス5およびネジ9が使用される。また、接合面には高い平面度が要求される。
【0014】
また、本発明の前提技術としての第2の半導体装置の断面図を、図8に示す。
【0015】
図7に示す半導体装置の構造と異なるのは、絶縁シート4と放熱フィン6との接続面にグリス5を備えていないこと、また、トランスファーモールド樹脂8と放熱フィン6とが直接接合される領域が存在することである。なお、放熱フィン6としては、図7に示す場合と同様に、比較的安価な空冷式の放熱フィンを用いている。
【0016】
グリス5を用いず接合することで部材を削減し、グリスにおけるボイド発生のリスクをなくし、またグリス5を塗布する工程を省略でき、装置の小型化、コストダウンが可能となる。また、トランスファーモールド樹脂8と放熱フィン6とを圧接等によって、一体的に形成することができる。さらに、熱抵抗の低い、高温動作可能な半導体装置を得ることができる。
【0017】
また、本発明の前提技術としての第3の半導体装置の断面図を、図9に示す。
【0018】
図8に示す半導体装置の構造と異なるのは、放熱フィン10が水冷式の放熱フィンとなっていることである。
【0019】
水冷式の放熱フィン10を用いることで、装置の小型化が可能となる。なお、空冷式か水冷式かは、半導体装置の用途等によって適宜変更可能である。
【0020】
上記のような構成の半導体装置であっても、半導体パッケージ部(パワー素子1と、パワー素子1に接合等されたヒートスプレッダ2、絶縁シート4等)と放熱フィンとの間の密着性を十分に高いものとすることはできず、結果として放熱性を十分に得ることが困難であった。
【0021】
以下の実施の形態は、簡易な方法で半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を十分に高めることができる半導体装置を示すものである。
【0022】
<A.実施の形態1>
<A−1.構成>
図1に示すのは、本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の断面図である。図1に示すように半導体装置は、パワー素子1がヒートスプレッダ2上に備えられ、それぞれアルミワイヤ3を介して信号端子7、主端子12に接続されている。パワー素子1は、以下の実施の形態でも同様に、例えばワイドバンドギャップ半導体であるSiCを用いることが可能である。ヒートスプレッダ2は、絶縁シート4上に配置され、さらに絶縁シート4は、放熱フィン13と直接接合されている。絶縁シート4は、放熱フィン13上面の一部を露呈してその上面に接合される。
【0023】
放熱フィン13上面の一部を含む所定の面、パワー素子1、ヒートスプレッダ2、アルミワイヤ3、絶縁シート4は、トランスファーモールド樹脂8(エポキシ樹脂)に覆われる。
【0024】
放熱フィン13上面は、絶縁シート4端部を拘束すべく、囲むように形成された凸形状を有している。
【0025】
このように、放熱フィン13上面に凸形状を有することで、絶縁シート4を仮固定することが可能となり、放熱フィン13とトランスファーモールド樹脂8との位置決めの精度を向上させることができる。従って、絶縁シート4周囲で正確に放熱フィン13とトランスファーモールド樹脂8を接合・固定させることができる。よって、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を高めることができる。
【0026】
図2に示すのは、本発明にかかる半導体装置の断面図である。図1に示す場合と異なるのは、放熱フィン14の絶縁シート4と直接接合する表面が凹形状となっており、絶縁シート4がその凹形状内に埋まった状態となっていることである。
【0027】
このように絶縁シート4を埋める凹形状を有することで、絶縁シート4を仮固定することが可能となり、放熱フィン13とトランスファーモールド樹脂8との位置決めの精度を向上させることができる。従って、絶縁シート4周囲で正確に放熱フィン13とトランスファーモールド樹脂8を接合・固定させることができる。よって、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を高めることができる。
【0028】
なお、図2に示す放熱フィン14に、図1に示す凸形状がさらに備えられる場合であってもよい。
【0029】
図3に示すのは、本発明にかかる半導体装置の部分断面図である。図2に示す場合と異なるのは、放熱フィン15の絶縁シート4と直接接合する表面(上面)が凹形状となっており、さらに、トランスファーモールド樹脂8と接合する内側面が凹凸形状となっていることである。ここで当該構造が、放熱フィン15上面において凸形状が形成されている場合であってもよい。
【0030】
このようにトランスファーモールド樹脂8と接合する放熱フィン15の内側面が凹凸形状となっていることで、放熱フィン15とトランスファーモールド樹脂8との密着性を高め、放熱性を高めることができる。
【0031】
図4に示すのは、本発明にかかる半導体装置の断面図である。図2に示す場合と異なるのは、放熱フィン16のトランスファーモールド樹脂8と接合する外側面が凸形状となっており、さらに、放熱フィン16の側面をトランスファーモールド樹脂8で覆っていることである。すなわち、トランスファーモールド樹脂8の幅が放熱フィン16の幅より大きく、放熱フィン16の両側面を覆うような構造となっている。ここで当該構造が、放熱フィン15上面において凸形状が形成されている場合、または凹凸形状が形成されている場合であってもよい。
【0032】
このようにトランスファーモールド樹脂8の幅が放熱フィン16の幅より大きくすることで、沿面距離・空間距離(絶縁距離)の確保が容易となると共に、トランスファーモールド樹脂8と放熱フィン16との接合を確実なものとし、高信頼性・高寿命の半導体装置を得る事が可能となる。
【0033】
なお、図4に示す構造において、さらに図3に示す放熱フィン15のように内側面に凹凸形状等が形成される場合であってもよい。
【0034】
図5に示すのは、本発明にかかる半導体装置の部分断面図である。図1に示す場合と異なるのは、放熱フィン17のトランスファーモールド樹脂8と接合する表面に穴が形成され、この穴にトランスファーモールド樹脂8を注入して両者が接合されることである。
【0035】
このようにトランスファーモールド樹脂8と接合する表面に穴を形成し、両者を接合させることで、放熱フィン17とトランスファーモールド樹脂8との密着性を高め、放熱性を高めることができる。なお、放熱フィンの側面に凹凸形状を形成するか、上面に凹凸形状を形成するかは、適宜選択可能である。
【0036】
また、図5においては、放熱フィン17は水冷式のものが示されているが、空冷式であってもよい。
【0037】
<A−2.効果>
本発明にかかる実施の形態1によれば、半導体装置において、放熱フィン13、放熱フィン14と、放熱フィン13、放熱フィン14上面の一部を露呈して当該上面に接合された絶縁シート4と、絶縁シート4上に配置されたヒートスプレッダ2と、ヒートスプレッダ2上に配置されたパワー素子1と、放熱フィン13、放熱フィン14上面の一部を含む所定の面と、絶縁シート4と、ヒートスプレッダ2と、パワー素子1とを覆って形成されたトランスファーモールド樹脂8とを備え、放熱フィン13、放熱フィン14上面は、絶縁シート4の端部を拘束すべく形成された凸形状および/又は凹形状を有することで、絶縁シート4を仮固定することが可能となり、放熱フィン13とトランスファーモールド樹脂8との位置決め、固定の精度を向上させることができる。よって、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を高めることができる。
【0038】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、半導体装置において、放熱フィン15、放熱フィン16は、トランスファーモールド樹脂8に覆われる内および/又は外側面を有し、当該側面において、凸形状および/又は凹形状を有することで、放熱フィンとトランスファーモールド樹脂8との位置決め、固定の精度をアンカー効果で向上させることができる。よって、半導体パッケージ部と放熱フィンとの間の密着性を高め、放熱性を高めることができる。また、信頼性を向上させ、装置寿命を向上させることができる。
【0039】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、半導体装置において、放熱フィン17は、水冷式の放熱フィンであることで、装置の小型化、薄型化が可能となる。
【0040】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、半導体装置において、トランスファーモールド樹脂8は、放熱フィン16よりも大きい幅を有することにより放熱フィン16の両側面を覆うことで、主端子12から放熱フィン16までの沿面距離・空間距離(絶縁距離)の確保が容易となると共に、トランスファーモールド樹脂8と放熱フィン16との接合を確実なものとし、高信頼性・高寿命の半導体装置を得る事が可能となる。
【0041】
<B.実施の形態2>
<B−1.構成>
図6に示すのは、本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の部分断面図である。図6に部分的に示すように半導体装置は、第1フィンとしての放熱フィン18を備え、さらに放熱フィン18にかしめ形状により固定され追加された、第2フィンとしての放熱フィン19を備えた構造となっている。他の構成については実施の形態1に示すものと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0042】
ここで、放熱フィン18は例えば空冷式であって、図6に示すような、かしめ形状のフィンを有している。よって、放熱機能を増大させるためにさらに放熱フィンを追加する必要が生じた場合にも、かしめ形状に嵌め込むことで容易に放熱フィン19を接合し、放熱機能の実現が可能である。
【0043】
<B−2.効果>
本発明にかかる実施の形態2によれば、半導体装置において、放熱フィンは、第1フィンとしての放熱フィン18と、放熱フィン18にかしめ形状により固定された第2フィンとしての放熱フィン19とを備えることで、放熱機能を増大させるためにさらに放熱フィンを追加する必要が生じた場合にも、かしめ形状に嵌め込むことで容易に放熱フィン19を接合し、放熱機能の実現が可能である。
【0044】
本半導体装置はモールド装置の金型で装置外形が制約されるものである。よって、さらなる高放熱化の市場要求があっても、市場要求を満足する熱特性のよい半導体装置を得るためには装置外形を変更することは困難である。そのような場合、本発明のような構造であれば、さらなる高放熱化も容易に実現しうる。
【0045】
本発明の実施の形態では、各構成要素の材質、材料、実施の条件等についても記載しているが、これらは例示であって記載したものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 パワー素子、2 ヒートスプレッダ、3 アルミワイヤ、4 絶縁シート、5 グリス、6,10,13〜19 放熱フィン、7 信号端子、8 トランスファーモールド樹脂、9 ネジ、11 板バネ、12 主端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱フィンと、
前記放熱フィン上面の一部を露呈して当該上面に接合された絶縁シートと、
前記絶縁シート上に配置されたヒートスプレッダと、
前記ヒートスプレッダ上に配置されたパワー素子と、
前記放熱フィン上面の前記一部を含む所定の面と、前記絶縁シートと、前記ヒートスプレッダと、前記パワー素子とを覆って形成されたトランスファーモールド樹脂とを備え、
前記放熱フィン上面は、前記絶縁シートの端部を拘束すべく形成された凸形状および/又は凹形状を有する、
半導体装置。
【請求項2】
前記放熱フィンは、前記トランスファーモールド樹脂に覆われる内および/又は外側面を有し、当該側面において、凸形状および/又は凹形状を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記放熱フィンは、水冷式の放熱フィンである、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記パワー素子は、ワイドバンドギャップ半導体を用いた素子である、
請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記放熱フィンは、第1フィンと、前記第1フィンにかしめ形状により固定された第2フィンとを備える、
請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トランスファーモールド樹脂は、前記放熱フィンよりも大きい幅を有することにより前記放熱フィンの両側面を覆う、
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−84708(P2012−84708A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230190(P2010−230190)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】