説明

圧電発振器

【課題】 圧電発振器の周波数温度特性の劣化をなくしたより安定度の高い圧電発振器を提供する。
【解決手段】 回路基板2上に圧電振動子4と発振回路を構成してなる発振部3が実装され、これら圧電振動子と発振部を覆うように前記回路基板に一体的に取り付けられた金属蓋6とを備えた圧電発振器において、前記発振部の上面部と金属蓋の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤M2が介在し、当該熱伝導性樹脂剤によりお互いを接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器のパッケージに構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスとして、圧電振動子、圧電フィルタ、圧電発振器等があげられる。これらの圧電振動デバイスは、水晶振動板(圧電振動板)の表面に金属薄膜電極を形成し、この金属薄膜電極を外気から保護するため、パッケージ体により気密封止されている。
【0003】
例えば圧電発振器では、特許文献1に示すように、いわゆるディスクリートタイプと呼ばれるものがある。セラミックなどの回路基板上に、ICチップなどの半導体集積回路と水晶振動子とその他の電子部品を実装し、発振回路を構成したものである。このように高周波領域で動作する発振回路を含んだ複数の電子部品が実装された回路基板を採用する場合、外部からのノイズや内部からのノイズを遮断し、浮遊容量成分を低減することと、圧電振動子や他の電子部品に対する機械的衝撃を保護すること、および回路基板を吸着治具で安定して吸着ができる構成とし、自動部品供給機に対応できることが必要である。このため、前記回路基板を覆う金属ケースを取り付けられることが一般的なパッケージ形態となる。特許文献1では、回路基板に対して金属ケースを取り付ける際、金属ケースの位置決めを容易にした構成を提案している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−165177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の圧電発振器では高周波化が求められているものがあり、これらの要求に対応した圧電発振器に使用される各種回路部品では通常のものに比べて消費電流が大きくなることが多い。帰還増幅器や集積回路素子などの発振部または当該発振部に接続された出力バッファ部の発熱により圧電発振器全体の温度が高くなるために周波数温度特性が悪くなり、高精度仕様への対応が困難になっている。特に高温側の周波数温度特性の周波数安定性が維持できず顧客の規格に対応できないことがあった。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電発振器の周波数温度特性の劣化をなくしたより安定度の高い圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る圧電発振器は、回路基板上に圧電振動子と発振回路を構成してなる発振部が実装され、これら圧電振動子と発振部を覆うように前記回路基板に一体的に取り付けられた金属蓋とを備えた圧電発振器において、前記発振部、当該発振部に接続された出力バッファ部、または前記発振部と前記出力バッファ部のいずれかの上面部と金属蓋の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤が介在し、当該熱伝導性樹脂剤によりお互いを接合してなることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、前記発振部、当該発振部に接続された出力バッファ部、または前記発振部と前記出力バッファ部のいずれかの上面部と金属蓋の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤とが介在し、当該熱伝導性樹脂剤と熱伝導性固形部材によりお互いを接合しているので、発振部、出力バッファ部などで発生した熱を熱伝導性樹脂剤により金属蓋に伝えることができ放熱が促進される。このため発振部、出力バッファ部の発熱によって周波数温度特性が劣化するのを抑制することができる。特に高周波化されることで発振部や出力バッファ部の消費電力も大きくなる傾向があり発熱しやすい。このような圧電発振器では高温側の周波数安定性を維持することが困難な場合が多い。例えば圧電発振器では、発振器内部の温度が外部気温に対して10℃から20℃程度に高くなり、80℃の周波数温度特性に対する動作保証も60℃程度の動作保証までしか対応できないことがある。本発明の構成を採用することにより、発振部、出力バッファ部の放熱効果により80℃など高温側の周波数温度特性も安定し動作保証することができるようになるため、高周波化でかつより高精度仕様への対応が実現できる。また既存の金属蓋を放熱部材として活用することで、部品点数を増やすことなく小型化を妨げることもない。熱伝導性樹脂剤を用いることで接合可能な材質の選択範囲が広がり、設計の自由度が高められる。
【0009】
また、上記構成に加えて、前記回路基板と前記金属蓋にはお互いを係止一体するための取付部を設けることなく、前記熱伝導性樹脂剤のみにより発振部の実装された前記回路基板と前記金属蓋を接合してもよい。これにより圧電発振器のパッケージ構成の簡略化と小型化が行える。つまり取付部を回路基板と金属蓋に形成しない分だけ回路基板や金属蓋の平面の面積を増大させることができ、回路基板の収納スペースが縮小することもなく、回路基板の機械的強度を低下させることもない。
【0010】
さらに、前記回路基板の平面視中央部に前記発振部が配置され、前記金属蓋の平面視中央部で前記熱伝導性樹脂剤のみにより前記発振部と接合することがより好ましい。これにより発振部の放熱性を高め、かつ回路基板と金属蓋の接合する際の傾きや位置あわせが行いやすく、接合強度が低下することがない。
【0011】
また、前記回路基板の中央にキャビティが形成され、当該キャビティ内部に発振部が格納されるとともに、当該キャビティの上面の周囲に圧電振動子や他の電子部品が実装された圧電発振器に適用することが好ましい。これによりディスクリートタイプの圧電発振器の低背化が可能となる。
【0012】
また、上記構成に加えて、前記発振部、当該発振部に接続された出力バッファ部、または前記発振部と前記出力バッファ部のいずれかの上面部と金属蓋の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤と熱伝導性固形部材とが介在し、当該熱伝導性樹脂剤と熱伝導性固形部材によりお互いを接合してなることを特徴とする。特に熱伝導性固形部材として金属ブロックを用いることが好ましい。
【0013】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、熱伝導性固形部材を介在することで、回路基板と金属蓋の隙間を埋めるスペーサとして機能し、回路基板と金属蓋の接合する際の傾きや位置あわせが行いやすく、接合強度が低下することがない。加えて、熱伝導性固形部材として金属ブロックを用いることで放熱性をより一層高めることができる。特に熱伝導性樹脂剤よりも熱伝導率の高い熱伝導性固形部材が選択でき、熱伝導性樹脂剤の厚みを熱伝導性固形部材の厚みより薄く形成してお互いに接合することで、熱伝達がより効率的に行われ、放熱性が飛躍的に高められより望ましい形態となる。
【0014】
また、上記構成に加えて、前記熱伝導性樹脂剤の平面視形状、または前記熱伝導性樹脂剤と前記熱伝導性固形部材の平面視形状が、前記発振部の平面視形状と略同一かそれ以上の大きさで形成されかつ前記金属蓋の平面視形状より小さく形成されてなることを特徴とする。
【0015】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、回路基板の収納スペースを縮小させることがなく、放熱性を向上させ、しかも圧電発振器の小型化を妨げることもない。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、小型化を妨げることなく圧電発振器の周波数温度特性の劣化をなくしたより安定度の高い圧電発振器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本実施の形態に係る圧電発振器の分解斜視図であり、図2は図1の回路基板とケースを組み立てた状態の斜視図である。図3は図2のX−X線に沿った断面図である。図4は本実施形態の変形例を示す断面図である。
【0018】
本実施の形態に係るディスクリートタイプの圧電発振器1では、図1に示すように、回路基板2上に帰還増幅器からなる発振部3と圧電振動子4と他の電子部品5(周波数調整部材と電圧制御部材を構成するコイル、コンデンサ、抵抗、バリキャップダイオード等)とが実装されており、これら圧電振動子と電子部品を覆うように回路基板に一体的に組み込まれた金属ケース6とを具備している。上記した発振部3と、圧電振動子4と、他の電子部品5(周波数調整部材と電圧制御部材)により、圧電発振器の発振回路が構成される。また、図示していないが、必要に応じて回路基板に発振回路の出力部を増幅し、かつ外部出力を緩和する出力バッファ部(バッファ用IC等)を搭載してもよい。
【0019】
平面視略方形状の回路基板2は、セラミックやガラスエポキシ等の積層回路基板からなり、キャビティ21と、キャスタレーション221,241と、パターン222と、基準電位に接続されるパターン242(基準電位パターン)と、側面端子電極パターン231,232,233、あるいは側面端子電極パターン251,252,253(図示せず)とが形成されている。
【0020】
前記キャビティ21は、回路基板2の平面視中央部(上面の中央部)に形成されている。前記キャスタレーション221,241は、後述するケース6と回路基板2との相対位置を位置あわせしながらこの回路基板2に対して金属ケース6を係止する係止部であり、回路基板2の一側端部22と当該一側端部と対向する他側端部24に形成されている。また、このキャスタレーション221,241の下部には凹部2211,2411が形成されている。
【0021】
前記パターン222と基準電位パターン242は、回路基板の側端部22,24の片端部でお互いに対角する上部位置に形成されている。前記側面端子電極パターン231,232,233、あるいは側面端子電極パターン251,252,253は、回路基板2の一側端部22に隣接する側端部23,25に形成されており、かつ前記パターン222、およびは基準電位パターン242から離間する方向へ順に側面端子電極パターン231,232,233、あるいは側面端子電極パターン251,252,253が形成されている。これらの各側面端子電極パターンは前記発振部3と必要な接続がなされている。これら基準電位パターンや側面端子電極パターンは、メタライズやメッキ等により形成される。
【0022】
前記各側面端子電極パターンの具体的な配置として、例えば、前記基準電位パターン242に最も近接している側面端子電極パターン231が基準電位に接続され、前記基準電位パターン242と対向する側端部25の側面端子電極パターン253が外部出力端子に接続されている。この構成により、基準電位パターン242から外部出力端子に接続される側面端子電極パターン253の間では離間され近接配置されないので、浮遊容量の発生がなくなり、小型化された圧電発振器であっても発振回路特性に悪影響を与えることがなくなる。
【0023】
なお、前記外部出力端子に接続される側面端子電極パターンは、本形態に限らず、前記基準電位パターン242と側面端子電極部分231に近接しない位置に配置することで、同様に浮遊容量の発生を抑えることができる。
【0024】
また、本形態の基準電位に接続されるパターンは、回路基板の側端部24の片端部の角部の上部位置に242として形成しているが、対角するパターン222のみを基準電位に接続してもよく、回路基板の側端部22,24の片端部でお互いに対角するパターン222と242の両方を基準電位に接続してもよい。また、これら側端部の片端部のみに限らず、両端部、すなわち全ての角部分に形成してもよい。
【0025】
前記回路基板のキャビティ21には、バイポーラトランジスタやC−MOSインバータなどの帰還増幅器からなる発振部3が熱伝導性樹脂剤M1によりモールドされることにより実装される。熱伝導性樹脂剤M1として、エポキシ系樹脂等の絶縁性でかつ熱伝導性のものが用いられている。このキャビティ21への発振部3の実装において、キャビティ21に実装された発振部3の最上端は、キャビティ21の壁面の最上端以下に位置する。本実施の形態では、図1、図3に示すように、キャビティ21に実装された発振部3の最上端がキャビティ21の壁面の最上端とほぼ同一となり、圧電振動子4および他の構成部材5と同一平面上には発振部3が配されない状態となっている。このため、発振部3が実装されたキャビティ21上空が中空状態となり、発振部3が実装されたキャビティ21周囲の他の構成部材5のはんだ付けを不具合なく容易に行うことができる。また、発振部3と圧電振動子4および他の構成部材5との干渉などの不具合も同時に無くすことができる。さらに、発振部3が、樹脂などの絶縁物の熱伝導性樹脂剤によりモールドされているので、発振部3を回路基板2にワイヤボンディングなどで接続した場合であっても、圧電振動子4や他の構成部材5の回路基板2への接続の際のはんだ流れ出しによる不具合や、外部部品との接触によるワイヤボンディングの切断や発振部3の破壊を防ぐのに好ましい。圧電発振器の低背化が可能となる。
【0026】
圧電振動子4および他の電子部品5のそれぞれに設けられた電極(図示省略)と、これら電極と対応させた回路基板2の実装電極(図示省略)とは、はんだ付けが行われて接続される。これにより、圧電振動子4および他の構成部材5が、回路基板2に実装される。これら圧電振動子4および他の電子部品5の配置は、発振回路のループ距離が短く、かつ、他の電子部品5の間隔が広くなるよう設計されており、図1に示すように、発振部3周囲に沿って圧電振動子4と他の電子部品5とが実装される。このため、他の電子部品5や圧電振動子4が集中的に隣接することを避けて、他の電子部品5や圧電振動子4を回路基板2に実装するためのはんだ付けによる不具合を無くすこと、すなわち、はんだブリッジ部品ずれなどの不具合を無くすことができる。その結果、回路基板2の実装領域を有効利用するとともに実装密度を大きくすることができ、例えば、回路基板2の面積を縮小させて圧電発振器1の小型化を図ることができる。また、発振回路のループ距離が短く、他の構成部材5の間隔が広くなっているので、浮遊容量を無くすのに好ましい。
【0027】
金属製ケース6は、係止部としての位置決め片61,62と、基準電位接触部63,64と、開口部としての切り欠き65,66(66については図示省略)と、金属ケースの下端部66とが形成されている。
【0028】
位置決め片61,62は、金属ケース6の下端部分で、前記回路基板のキャスタレーション221と241の間隔と略等しい位置に対向する状態で形成されている。そして、各位置決め片の幅寸法は、前記回路基板のキャスタレーションの幅寸法に略等しく形成され、前記回路基板のキャスタレーションとお互いに嵌め合うように構成されている。このように構成することで、回路基板と金属ケースとの各側面方向の位置あわせと位置決めを確実かつ容易なものとしている。また、位置決め片61,62には、金属ケース6を前記回路基板に取り付けた際に、前記キャスタレーションの凹部2211,2441に対応する位置に爪部(凸部)611,621が形成されている。このため、回路基板と金属ケースとの上下方向の位置あわせと位置決めを確実かつ容易なものとしている。以上のように、位置決め片61,62とキャスタレーション221,241、および位置決め片の爪部611,621とキャスタレーションの凹部2211,2411によって、前記回路基板と金属ケースとにお互いの相対位置を位置合わせしながら係止し、固定できるように構成されている。なお、前記キャスタレーションの方に凸部を形成し、位置決め片の方に凹部を形成しても同様の位置決め機能が得られる。
【0029】
また、基準電位接触部63,64は、前記金属ケース6の下端部分のうち一対の対角部で、回路基板のパターン222、基準電位パターン242に対応する部分に、一部がケース内部側に折り曲げられることで形成されている。切り欠き65,66(66については図示省略)は、前記ケース6の下端部分のうち、回路基板の側端部23,25に対応する部分に形成されており、金属ケース6を前記回路基板に取り付けた際に、金属ケースの下端部分が前記回路基板の側端部23,25に接触しないように構成されている。このため、側面端子電極パターンとケースの間を離間させることができ、側面端子電極パターンの上部に導電性接合材がはい上がったとしても、当該側面端子電極パターンと金属ケースとがショートする危険性が一切なくなる。しかも、側面端子電極パターンのうち出力端子に相当する部分と、金属ケースの間で浮遊容量が発生することもないので、発振回路特性に悪影響を与えることも一切ない。
【0030】
以上のように構成された回路基板2と金属ケース6とを組み立てる。具体的には、前記回路基板のキャビティ21をモールドした熱伝導性樹脂剤M1の平面視中央部(上面中央部分)に対して、熱伝導性樹脂剤M2が塗布されるとともに、回路基板のキャスタレーション221,241に金属ケースの位置決め片61,62を上部から挿入し、金属ケースの基準電位接触部63,64をパターン222、基準電位パターン242、あるいは金属ケースの下端部66を回路基板のキャスタレーションに隣接する上面部に接触させて位置決め固定する。その結果、前記キャスタレーションの凹部2211,2411に位置決め片に形成された爪部(凸部)611,621が嵌め込まれ、回路基板に金属ケースが取り付けられるとともに、前記熱伝導性樹脂剤M1とこれに対向する前記金属ケース6の底面部とが当該熱伝導性樹脂剤M2により接合される。熱伝導性樹脂剤M2の塗布としては金属ケース6の上部に穴を設け、当該穴から前記熱伝導性樹脂剤M1に対して注入塗布するようにしてもよい。なお、前記熱伝導性樹脂剤M2の平面視形状は、前記発振部3の平面視形状と略同一かそれ以上の大きさで形成されかつ前記金属ケース6の平面視形状より小さく形成している。熱伝導性樹脂剤M2として、シリコーン系樹脂・エポキシ系樹脂等の絶縁性でかつ熱伝導性のものが用いられている。また、前記金属ケースの基準電位接触部63,64と回路基板の基準電位パターン222,242によって、側方に開放した断面略V字状の溝67,68が形成されており、この溝の内部にはんだ等の導電性接合材(図示省略)が流し込まれることにより、基準電位パターンとケースとが電気的に接続されている。以上により、本実施の形態による圧電発振器の完成となる。
【0031】
なお、上記実施形態では、前記回路基板と前記金属蓋にはお互いを係止一体するための取付部を設けている。つまり回路基板のキャスタレーションの凹部2211,2411と、金属ケースの位置決め片に形成された爪部611,621を設けているが、本実施形態の変形例では、図4に示すように、前記熱伝導性樹脂剤M2のみにより発振部の実装された前記回路基板2と前記金属ケース6とが接合している。つまり、前記回路基板2の平面視中央部に配置されたキャビティ21が形成され、このキャビティ21の中央部に前記発振部3が配置されるとともに、キャビティ21と発振部3をモールドした熱伝導性樹脂剤M1の平面視中央部(上面中央部分)に対して、熱伝導性樹脂剤M2が塗布され、この熱伝導性樹脂材M2のみにより前記金属ケース6の底面部の中央領域(金属蓋の平面視中央部分)が接合される。また、このような構成に加えて、本実施形態の変形例では、前記熱伝導性樹脂剤M2の上面部と金属ケース6の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤M2と熱伝導性固形部材Bと熱伝導性樹脂剤M2とが介在しており、前記熱伝導性樹脂剤M2と熱伝導性固形部材Bと熱伝導性樹脂剤M2により前記熱伝導性樹脂剤M1と金属ケース6とが接合されている。この熱伝導性固形部材Bは熱伝導性の高い固形部材であり、アルミ、銅、銀などの金属ブロックを用いることが放熱性と実用性の面で好ましいが、アルミナセラミック等の固形部材であってもよい。この時、シリコーン系樹脂剤、またはエポキシ系樹脂剤等の熱伝導性樹脂剤M2よりも熱伝導率の高い金属ブロック等の熱伝導性固形部材Bを選択し、前記熱伝導性樹脂剤M2の厚みを前記熱伝導性固形部材Bの厚みをより薄く形成している。以上により、本実施の形態による圧電発振器の変形例の完成となる。
【0032】
上記したように、本発明の実施形態の圧電発振器によれば、前記発振部3の上面部と金属ケース6の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤M1,M2が介在しており、当該熱伝導性樹脂剤M1,M2により発振部3と金属ケース6とが接合されているので、発振部3で発生した熱を熱伝導性樹脂剤M1,M2により金属ケース6に伝えることができ放熱が促進される。このため発振部3の発熱によって周波数温度特性が劣化することがなくなる。特に高周波化されることで発振部や注力バッファの消費電力も大きくなる傾向があり発熱しやすい。このような発振器では高温側の周波数安定性を維持することが困難な場合あったが、発振部3の放熱効果により高温側の周波数温度特性も安定し動作保証することができるようになるため、高周波化でかつより高精度仕様への対応が実現できる。既存の金属ケース6を放熱部材として活用することで、部品点数を増やすことなく小型化を妨げることもない。前記熱伝導性樹脂剤M1,M2の平面視形状が、前記発振部3の平面視形状と略同一かそれ以上の大きさで形成されかつ前記金属蓋の平面視形状より小さく形成されているので、回路基板2の収納スペースを縮小させることがなく、放熱性を向上させ、しかも圧電発振器の小型化を妨げることもない。
【0033】
また、本発明の実施形態の変形例の圧電発振器によれば、前記発振部3の上面部と金属ケース6の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤M1,M2と熱伝導性固形部材Bが介在しており、当該熱伝導性樹脂剤M1,M2と熱伝導性固形部材Bにより発振部3と金属ケース6とが接合されているので、発振部3で発生した熱を熱伝導性樹脂剤M1,M2と熱伝導性固形部材Bにより金属ケース6に伝えることができ放熱が促進される。このため上記実施形態と同様に発振部3の発熱によって周波数温度特性が劣化することがなくなる。加えて、熱伝導性固形部材Bを介在することで、回路基板2と金属ケース6の隙間を埋めるスペーサとして機能するので、回路基板2と金属ケース6の接合する際の傾きや位置あわせが行いやすく、接合強度が低下することがない。熱伝導性固形部材Bとして金属ブロックを用いていることで放熱性をより一層高めることができる。特に、シリコーン系樹脂、またはエポキシ系樹脂等の熱伝導性樹脂剤M2よりも熱伝導率の高い金属ブロック等の熱伝導性固形部材Bが選択し、前記熱伝導性樹脂剤M2の厚みを前記熱伝導性固形部材Bの厚みをより薄く形成しているので、金属ケース6への熱伝達がよりすばやく、かつより効率的に行われ、放熱性が飛躍的に高められる。
【0034】
また、本発明の実施形態の変形例の圧電発振器によれば、上記作用効果に加えて、前記回路基板2と前記金属ケース6にはお互いを係止一体するための取付部、例えば回路基板のキャスタレーションの凹部2211,2411と、金属ケースの位置決め片に形成された爪部611,621等を設けることなく、前記熱伝導性樹脂剤M1,M2と熱伝導性固形部材Bのみにより発振部3の実装された前記回路基板2と前記金属ケース6とが接合されているので、圧電発振器のパッケージ構成の簡略化と小型化が行える。つまり取付部を回路基板2と金属ケース6に形成しない分だけ回路基板2や金属ケース6の平面の面積を増大させることができ、回路基板2の収納スペースが縮小することもなく、キャスタレーションを形成しないことによる回路基板2の機械的強度を低下させることもない。加えて、前記回路基板2の平面視中央部に前記発振部3が配置され、前記金属ケース6の平面視中央部で前記発振部3と接合しているので、発振部3の放熱性を高め、かつ回路基板2と金属ケース6を接合する際の傾きや位置あわせが行いやすく、接合強度が低下することがない。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態について図面を参照して説明する。図5は本実施の他の形態に係る圧電発振器の断面図である。上記実施形態と同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を割愛する。
【0036】
本実施の他の形態に係るシングルパッケージタイプの圧電発振器1では、図5に示すように、基板7上に集積回路素子からなる発振部3(以下、発振部3とする)と圧電振動板8とが実装されており、これらを覆う金属リッド9とを具備している。上記した発振部3と圧電振動板8により、圧電発振器の回路が構成される。
【0037】
平面視略方形状の基板7は、アルミナ等のセラミックとタングステン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形のキャビティ71が形成されている。キャビティ71の周囲には堤部72が形成されており、堤部72の上面は平坦であり、当該堤部上に封止部材73が形成されている。基板7の側端部には図示しない上下方向に伸長する複数のキャスタレーションが形成されている。
【0038】
基板7のキャビティ71には、前記発振部3と後述する圧電振動板8とが収納される収納領域が設けられており、キャビティの底面に必要な配線パターンPが形成されている。これらの配線パターンPは基板の下面に形成された図示しない外部接続端子電極に導出されている。このような構成はセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成することができる。
【0039】
前記キャビティ71に搭載される発振部3は、圧電振動板8とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、例えばC−MOSインバータなどの帰還増幅器からなり、その下側の能動回路面31には図示しない接続端子が複数形成されている。前記基板の配線パターンPと発振部3の接続端子との接合は、例えばフェイスダウンボンディング技術により電気的機械的な接合が行われる。
【0040】
前記キャビティ71に搭載される圧電振動板8は、例えばATカットの水晶振動板であり、その表裏面には図示しないが対向して一対の励振電極と当該励振電極を引き出す引出電極が形成されており圧電振動子として構成される。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。前記基板の配線パターンPと圧電振動板8との接合は、例えば導電性樹脂接着剤や金属バンプなどの導電性接合材Sを介して電気的機械的な接合が行われる。
【0041】
基板7を気密封止する金属リッド9は、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材等の封止材が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層が基板7の封止部材73と接合される構成となる。金属リッド9の平面視外形は基板の当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。なお、銀ろうに限らず、ニッケルメッキや金錫を封止用ろう材とする構成であってもよい。
【0042】
以上のように構成された基板7と金属リッド9とを組み立てる。具体的には、基板7のキャビティ71に発振部3と圧電振動板8を格納し上述のような必要な接合が行われ、前記発振部3の上面部分に対して、熱伝導性樹脂剤M3が塗布されるとともに、基板7の上部を前記金属リッド9にて被覆し、金属リッド9の封止材と基板の封止部材を溶融硬化させ、気密封止を行う。この気密封止の手法としては、シームやビームによる溶接手法や雰囲気加熱による気密封止などを用いることができる。また気密封止の際、前記熱伝導性樹脂剤M3とこれに対向する前記金属リッド9の底面部とを当該熱伝導性樹脂剤M3により接合している。なお、前記熱伝導性樹脂剤M3の平面視形状は、前記発振部3の平面視形状より小さく形成されかつ前記金属ケース6の平面視形状より小さく形成している。熱伝導性樹脂剤M3として、シリコーン系樹脂・エポキシ系樹脂等の絶縁性でかつ熱伝導性のものが用いられている。以上により、本実施の他の形態による圧電発振器の完成となる。
【0043】
上記したように、本発明の他の実施形態の圧電発振器によれば、前記発振部3の上面部と金属リッド9の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤M3が介在しており、当該熱伝導性樹脂剤M3により発振部3と金属リッド9とが接合されているので、発振部3で発生した熱を熱伝導性樹脂剤M3により金属リッド9に伝えることができ放熱が促進される。このため発振部3の発熱によって周波数温度特性が劣化することがなくなる。既存の金属リッド9を放熱部材として活用することで、部品点数を増やすことなく小型化を妨げることもない。前記熱伝導性樹脂剤M3の平面視形状が、前記発振部3の平面視形状より小さく形成されかつ前記金属蓋の平面視形状より小さく形成されているので、基板7の収納スペースを縮小させることがなく、圧電発振器の小型化を妨げることもない。特に本発明の他の実施形態に開示しているようなシングルパッケージタイプの圧電発振器では小型化されたものが多く有効な構成となる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、バイポーラトランジスタやC−MOSインバータなどの帰還増幅器からなる発振部に対して熱伝導性樹脂剤や熱伝導性固形部材にて接合する例を示している。しかしながら、発振回路の出力部を増幅し、かつ外部出力を緩和する出力バッファ部(バッファ用IC等)を具備する構成では、発振部より当該出力バッファ部の方が発熱の影響が高い場合がある。このような場合、前記出力バッファ部に対してのみ熱伝導性樹脂剤、または熱伝導性樹脂剤と熱伝導性固形部材にて接合する構成であってもよい。加えて発振部とバッファ部の二つ同時に熱伝導性樹脂剤、または熱伝導性樹脂剤や熱伝導性固形部材にて接合する構成でもよい。また、熱伝導性樹脂剤として、絶縁性のものに限らず導電性のものでもよい。このような構成であれば発振部の一部を基準電位に接続することで電磁ノイズ対策が実現できる。
【0045】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電発振器の分解斜視図。
【図2】図1の回路基板とケースを組み立てた状態の斜視図。
【図3】図2のX−X線に沿った断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る変形例を示す断面図。
【図5】本実施の他形態に係る圧電発振器の断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 圧電発振器
2 回路基板(基板)
3 発振部
4 圧電振動子
5 他の電子部品
6 金属ケース(金属蓋)
7 基板
8 圧電振動板
9 金属リッド(金属蓋)
M1,M2,M3 熱伝導性樹脂剤
B 熱伝導性固形部材
S 導電性接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に圧電振動子と発振回路を構成してなる発振部が実装され、これら圧電振動子と発振部を覆うように前記回路基板に一体的に取り付けられた金属蓋とを備えた圧電発振器において、前記発振部、当該発振部に接続された出力バッファ部、または前記発振部と前記出力バッファ部のいずれかの上面部と金属蓋の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤が介在し、当該熱伝導性樹脂剤によりお互いを接合してなることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記発振部、当該発振部に接続された出力バッファ部、または前記発振部と前記出力バッファ部のいずれかの上面部と金属蓋の底面部の対向する領域に熱伝導性樹脂剤と熱伝導性固形部材とが介在し、当該熱伝導性樹脂剤と熱伝導性固形部材によりお互いを接合してなることを特徴とする特許請求項1記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記熱伝導性樹脂剤の平面視形状、または前記熱伝導性樹脂剤と前記熱伝導性固形部材の平面視形状が、前記発振部の平面視形状と略同一かそれ以上の大きさで形成されかつ前記金属蓋の平面視形状より小さく形成されてなることを特徴とする特許請求項1、または特許請求項2記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−141695(P2009−141695A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316247(P2007−316247)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】