説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】高いアスペクト比で、狭い幅の溝に絶縁膜を埋め込むことの可能な、スループットの高い基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板を処理室内へ搬入する工程と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する工程と、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する工程と、処理された基板を処理室から搬出する工程と、処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する工程とを備える基板処理方法により、基板を処理する。これにより、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に処理室内壁等に付着した付着物を、励起された酸素含有ガスで処理することにより改質することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光を用いた基板処理技術に関し、例えば、半導体集積回路装置(半導体装置。以下、ICという。)の製造装置や製造方法において、半導体集積回路(半導体装置)が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウエハ)に、酸化膜等を堆積(デポジション)して成膜等するうえで有効な基板処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造においては、ICの高集積化に伴い、ICを構成する素子の微細化が求められている。特に、ICの素子分離形成方法として、現在では、寸法の制御性に優れ、かつ占有面積の小さいSTI(Shallow Trench Isolation)法が用いられている。STI法は、半導体基板に溝を形成した後、TEOS(テトラエトキシシラン)とO(オゾン)を用いた常圧CVD(Chemical Vaper Deposion)法や、TEOSを用いたプラズマCVD法等により、前記形成した溝中に絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離領域を形成するものである。
【0003】
しかし、最近ではますますICの高集積化が進み、素子分離溝の幅が0.1μm以下となり、さらに、素子分離溝の深さと幅との比であるアスペクト比(溝の深さ/溝の幅)が増大してきている。そのため、従来使用されてきた上記常圧CVD法等では、素子分離溝中に、後述するボイドやシームを作らずに、絶縁膜を埋め込むことが困難となってきている。
その理由の1つは、従来の常圧CVD法等では、溝内の開口部への絶縁膜の成膜速度が、溝内の奥部への成膜速度よりも速いためである。溝内の開口部への成膜速度が、奥部よりも速いため、奥部へ絶縁膜を十分埋め込む前に、開口部が絶縁膜で塞がれてしまう。このように、溝内の開口部が奥部よりも厚く成膜されることを、オーバーハングと呼ぶ。
【0004】
溝内の開口部における絶縁膜の成膜速度が、奥部よりも速い理由は、次のとおりである。従来使用されてきた常圧CVD法やプラズマCVD法では、熱等により材料ガスを分解し、化学反応が気相で起こり反応生成物が基板に付着することで絶縁膜が形成される。このため、成膜速度は、材料ガスの供給速度や気相での材料ガスの反応速度、反応生成物の基板への付着確率により律速される。
反応生成物の基板への付着確率が1に近い供給律速の条件では、溝内の開口部への絶縁膜の成膜速度が、溝内の奥部への成膜速度よりも速いため、溝内の奥部へ絶縁膜を十分埋め込む前に、溝内の開口部が絶縁膜で塞がれて、ボイドと呼ばれる空隙が形成される。反応生成物の基板への付着確率が0に近い反応律速の条件でも、成膜は溝の両側の側壁から成長するため、両側の成膜の継ぎ目でシームと呼ばれるスリット状の欠陥が発生する。このシームという現象は、原理的に100%の段差被覆性を有するALD(Atomic Layer Deposion)法の場合でも、不可避である。
微細化技術に対応するALD法に関する基板処理装置が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−80291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オーバーハングによる溝内の開口部の閉塞に対して、例えば、HDP(High Density Plasma)CVD法では、成膜後に、アルゴン等の不活性ガスによるイオンエッチングを行い、成膜時に形成されたオーバーハングを削り、溝内の開口部の修復を行う例がある。しかしながら、この方法も、溝の幅が65nm以下、かつアスペクト比が5以上の場合は、ボイドを形成することなく、溝内の奥部へ絶縁膜を埋め込むことは困難であった。
本発明の目的は、高いアスペクト比で、狭い幅の溝に絶縁膜を埋め込むことの可能な、光励起(Photo Induced)CVD法を用いた基板処理方法を提供し、さらにスループットを向上しつつ高品質な膜を形成することのできる基板処理方法及び基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る基板処理方法は、基板を処理室内へ搬入する工程と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する工程と、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する工程と、処理された基板を処理室から搬出する工程と、処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する工程とを備える。
【0008】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係る基板処理装置は、基板を処理する処理室と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、処理室の外に設けられ処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、制御部とを備え、
該制御部は、処理室内に基板が存在する状態において、前記第1のガス供給部から処理室内へ供給された前記シリコン化合物ガスに、前記紫外光発光部から紫外光を照射する第1の処理と、処理室内に基板が存在しない状態において、前記第2のガス供給部から処理室内へ供給された酸素含有ガスであって、励起された酸素含有ガスにより処理室内を処理する第2の処理とを行う制御部である基板処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
このように基板処理方法や基板処理装置を構成すると、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理することができ、さらに基板を処理する際に発生し処理室内壁等に付着した付着物(反応生成物)を、励起された酸素含有ガスで処理することにより改質することができる。したがって、付着物の除去が必要な場合において、上記改質処理を行うことにより、付着物除去の工程を行う回数を低減することができ、スループットが向上できると共に、高品質な膜を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の基板処理方法を実施可能な基板処理装置の構成例における垂直断面図である。
【図2】本発明の実施例における効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の基板処理工程を実施する基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の基板処理方法を実施可能な基板処理装置の構成例における垂直断面図である。図1において、1は、その内部で基板を処理する基板処理室。2は処理対象の基板であり、本実施例では、1度の処理において1枚の基板が処理される。3は、基板2を処理する際に、基板2を載置する基板載置部。4は、基板処理室1の外にあって、紫外光を発光する発光部。5は、前記発光部4から発光された紫外光を、処理室1内に透過させる透過窓であり、本実施例では石英から構成される。透過窓5は、処理室1の内と外とを隔てる隔壁の一部として構成されている。6は、基板2を加熱するためのヒータユニットで、本実施例では、抵抗ヒータで構成されている。7は、基板2の温度を検出するための温度検出器。8は、有機物(炭素、水素)の分圧を計測することにより、残留ガス中の有機物(炭素、水素)の残留量を計測する残留ガス計測計である。9は、処理室1内の圧力等を制御する制御部である。ヒータユニット6と温度検出器7は、制御部9に電気的に接続される。制御部9は、基板2の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度検出器7により検出された温度情報に基づいてヒータユニット6への通電量を制御する。
【0012】
本基板処理装置においては、発光部4の内部には、エキシマランプを備えるとともに、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスが封入されている。これらの希ガスを封入することにより、紫外光の波長を設定することができる、例えば、Arを封入した場合は波長126nmの紫外光、Krを封入した場合は波長146nmの紫外光、Xeを封入した場合は波長172nmの紫外光を発生することができる。本実施例では、Xeを封入して紫外光を発生させる。発生した紫外光は、石英製の透過窓5を通して、基板処理室1内に供給される。
基板処理室1と発光部4とは、石英製の透過窓5により、気密に分離されている。したがって、発光部4の内部の希ガスは、基板処理室1に流出せず、また、基板処理室1内のシリコン化合物ガス等が、発光部4内に流入することもない。
【0013】
次に、処理ガス等のガス供給系について説明する。図1に示すように、処理室1のガス導入管14には、シリコン化合物ガス供給管15、酸素含有ガス供給管25、クリーニングガス供給管35、不活性ガス供給管45が接続されている。シリコン化合物ガス供給管15には、ガス流れの上流から順に、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを供給するシリコン化合物ガス源13、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)12、及び開閉バルブ11がそれぞれ設けられている。酸素含有ガス供給管25には、ガス流れの上流から順に、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス源23、MFC22、及び開閉バルブ21がそれぞれ設けられている。クリーニングガス供給管35には、ガス流れの上流から順に、NF等のクリーニングガスを供給するクリーニングガス源33、MFC32、及び開閉バルブ31がそれぞれ設けられている。不活性ガス供給管45には、ガス流れの上流から順に、例えば、N2(窒素)等の不活性ガスを供給する不活性ガス源43、MFC42、及び開閉バルブ41がそれぞれ設けられている。
酸素含有ガス供給管25やクリーニングガス供給管35と、導入管14との間には、高周波印加部24が設けられている。高周波印加部24は、例えば、クリーニングガス供給管35から導入管14に流れるガスに高周波電力を印加し、該流れるガスをプラズマ状態にする等により、クリーニングガスを活性化する。あるいは、酸素含有ガス供給管25から導入管14に流れるガスに高周波電力を印加し、該流れるガスをプラズマ状態にする等により、酸素含有ガスを活性化する。
【0014】
MFC12、22、32、42及び開閉バルブ11、21、31、41は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、処理室1内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるよう、MFC12、22、32、42及び開閉バルブ11、21、31、41を制御する。
【0015】
炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスとしては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC)、TMCTS(テトラメチルシクロテトラシロキサン:[(CH)HSiO])、OMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン:[(CHSiO])、OMTS(オクタメチルトリシロキサン:Si(CH)、HNDSO(ヘキサメチルジシロキサン:[(CHSiOSi(CH])、TMOS(テトラメトキシシラン:Si(OCH)、HMCTSN(ヘキサメチルシクロトリシラザン:Si21)、HMCTS(ヘキサメチルシクロトリシロキサン:[SiO(CH]などのうち、1種類のガスを用いることができる。
また、シリコン化合物ガスを処理室1内に供給する際は、必要に応じキャリアガス又は希釈ガスとして、同時に不活性ガスを供給してもよい。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス等を用いることができる。
【0016】
次に、処理室1のガス排気系について説明する。図1に示すように、処理室1内の雰囲気を排気するガス排気管64には、ガス流れの上流から順に、残留ガス計測計8、圧力センサ61、圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ62、真空排気装置としての真空ポンプ63が設けられている。真空ポンプ63は、処理室1内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう、処理室1内を真空排気するように構成されている。APCバルブ62および圧力センサ61は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、処理室1内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ61により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ62の開度を制御するように構成されている。
前記制御部9は、図示しない操作部、表示部、入出力部等を備えていて、基板処理装置の各構成部に接続されており、各構成部を制御する。制御部9は、レシピ(成膜プロセスの制御シーケンス)に基づき、基板処理室1内の温度制御や圧力制御、処理ガス等の流量制御、および基板処理室1内への基板搬入等の機械駆動制御等を行う。また、制御部9は、ハードウェア構成として、CPU(中央演算ユニット)と、CPUの動作プログラムやレシピ等を格納するメモリとを備えるものである。
【0017】
次に、本発明に係る基板処理方法の実施例を説明する。
(A)トレンチ形成工程
まず、シリコン基板上に、例えばSTI法により素子分離領域に形成されるトレンチ(溝)のエッチングパターンを形成する。それから、ドライエッチングを行い、シリコン基板上に、所望の深さまで、溝を形成する。
(B)基板搬入工程
次に、前記トレンチ形成工程により溝が形成された1枚の基板2が、図1に示す基板処理装置の基板搬入口(図示しない)から、基板処理室1内のサセプタ3に載置される。続いて、排気管64を介して真空ポンプ63により、基板処理室1の内部が所定の真空度(例えば、20Pa)に減圧され、ヒータユニット6により、基板2が所定の温度(例えば、80℃)に昇温される。
【0018】
(C)成膜工程
次に、成膜工程において、有機シリコン系の所定の材料ガス(炭素及び水素を含むシリコン化合物ガス)が、シリコン化合物ガス供給源13からガス導入管14を介して基板処理室1に供給される。このとき、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源43から処理室1に供給されるようにしてもよい。材料ガスが、基板処理室1に供給されている状態において、真空ポンプ63により基板処理室1内を所定の圧力に調整し、材料ガスに向けて、発光部4から紫外光を照射する。材料ガスである有機シリコンは、Si−O−Si−R結合(Rは低級アルキル基)の状態にある。紫外光照射により、Si−O−Si−R結合が分解、すなわち、Rがとれてシロキサン(Si−O結合)になるとともに、シロキサンが励起されて高分子化し、ポリシロキサン(Si−O結合)を含むシリコン酸化膜が生成される。このとき、照射する紫外光の強度を、基板2の表面において3mW/cm以上とすることにより、成膜速度を向上し、また、成膜の表面が平坦となるように、成膜形成中における成膜の流動性を維持することができる。
ここで、成膜の流動性とは、基板に付着した反応生成物の移動し易さである。基板に付着した反応生成物は、基板上において、界面張力により、自身の密度の小さい所へ移動しようとし、また、平坦になろうとする。したがって、成膜の流動性が高いと、溝の奥部まで成膜されやすくなる。
【0019】
成膜工程においては、基板2の温度を0℃以上100℃以下とし、かつ、基板処理室1内の圧力を20Pa以上100Pa以下とすることが望ましい。本実施例では、基板2の温度を50℃とし、基板処理室1内の圧力を40Paとした。基板処理室1内が20Paより小さい圧力では、成膜速度が低く実用的でない。また、基板に付着した反応生成物の密度が小さいので、成膜の流動性が低い。一方、100Paより大きい圧力では、材料ガスの分子当たりのエネルギが小さく、ガスの分解が進みにくい。
この成膜工程においては、基板2表面上だけでなく、基板処理室1の内壁や透過窓5の内側(基板処理室1側)にも、シリコン酸化膜が生成される。生成された膜は、材料ガスに含まれていた炭化水素(Hydrocarbon)成分、例えば、メチル基(CH)や エチル基 (C)等を含有するため、紫外光を吸収する性質がある。したがって、透過窓5の内側に生成された膜は、発光部4から基板処理室1内に照射される紫外光を吸収するので、透過窓5に生成された膜の膜厚が増加するほど、基板に照射される紫外光の照度(強度)が低下し、基板2上に生成される膜の成膜速度が低下する。
なお、上記の例では、材料ガスを基板処理室1に供給しつつ紫外光を照射するようにしているが、材料ガスを基板処理室1に供給した後、材料ガス供給を停止した状態で、紫外光を照射するようにすることもできる。
【0020】
ところで、成膜の流動性が高い成膜条件(比較的、圧力が高い条件)では、生成された膜中の残留有機物濃度(炭素や水素の濃度)が高く、場合により、残留した有機物が後工程で抜け、ボイドの原因になることがある。このような、膜中の残留有機物濃度を低くするために、上記の(C)成膜工程において、制御部9は、次のような制御を行うことができる。
(C1)最初に、材料ガスの供給と紫外光の照射を行いながら、流動限界以下の圧力である10Pa以下の圧力で、つまり、成膜の流動性が低い圧力で、1〜2nm程度の膜厚の成膜を行う。このようにすると、材料ガスの分子当たりのエネルギが大きいので、基板2のシリコンと密着性がよく、残留有機物濃度の低い、耐熱性の優れた膜を生成できる。
(C2)次に、材料ガスの供給と紫外光の照射を行いながら、高い成膜速度が得られる所定の圧力(20Pa以上100Pa以下)、及び、所定の基板温度(0℃以上100℃以下)で、所定の膜厚、例えば、溝の幅の1/4程度まで成膜を行う。
(C3)材料ガスの供給と紫外光の照射を停止し、停止後、基板処理室1内の雰囲気を排気する。こうすることにより、膜中に含まれる残留有機物濃度を低くすることができる。このとき、排気中の有機物の分圧が、所定の分圧となるまで、残留ガス計測計8でモニタしながら排気するのが好ましい。この所定の分圧は、適切な値を予め実験等により求めておく。
(C4)基板処理室1内の雰囲気を排気した後、材料ガスを供給し、基板処理室1内が所定の圧力(20Pa以上100Pa以下)、及び、所定の基板温度(0℃以上100℃以下)になった後、材料ガスに向けて、発光部4から紫外光を照射する。こうして、所定の膜厚、例えば、溝の幅の3/4程度まで成膜を行う。
(C5)材料ガスの供給と紫外光の照射を停止し、停止後、基板処理室1内の雰囲気を排気する。このとき、排気中の有機物の分圧が、所定の分圧となると、排気を終了する。
(C6)基板処理室1内の雰囲気を排気した後、材料ガスを供給し、基板処理室1内が所定の圧力(20Pa以上100Pa以下)、及び、所定の基板温度(0℃以上100℃以下)になった後、材料ガスに向けて、発光部4から紫外光を照射する。こうして、所定の膜厚となるまで、つまり、溝の内部を完全に埋めるまで成膜を行う。
以上の(C2)から(C6)のように、成膜と排気を繰り返すことにより、残留有機物の少ない平坦な絶縁膜を溝の奥部に形成することができる。
なお、上記の(C2)(C4)(C6)における圧力、基板温度は、すべて同一の圧力、基板温度としてもよいし、必要に応じ、異なる圧力、基板温度としてもよい。例えば、(C2)よりも(C6)の方が、溝の幅が小さくなっているので、圧力を高くすることにより、成膜の流動性を高くすることが好ましい。
【0021】
(D)基板搬出工程
以上のようにして所望の絶縁膜が形成された後に、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源43から処理室1に供給され、不活性ガスにより、基板処理室1内が置換され、大気圧に復帰した後に、処理済みの基板2が処理室1の外部に搬出される。
【0022】
(E)改質処理工程
次に、上記の(B)基板搬入工程、(C)成膜工程、(D)基板搬出工程の一連の工程を、1回又は複数回実施し、1枚又は複数枚の基板2を成膜処理した後、次に説明する(E)改質処理工程を実施する。
処理済みの基板2が処理室1の外部に搬出された後、基板2が処理室1内に存在しない状態で、酸素含有ガスが、酸素含有ガス源23からガス導入管14を介して処理室1に供給され、処理室1内は、所定の圧力に調整される。本実施例では、処理室1内の圧力を 200Paとした。このとき、ヒータ6の加熱は必ずしも必要ではない。処理室1内が所定の圧力に調整された後、発光部4で紫外光が発光され、該紫外光は、透過窓5を通して処理室1内に照射される。処理室1内に照射された紫外光により、処理室1内の酸素含有ガス中の酸素(O)が励起され、活性酸素が生成される。生成された活性酸素は、処理室1内や透過窓5の内側に堆積した付着物(膜)中の炭化水素成分を酸化して除去する。ここでは、付着物中の炭化水素成分を酸化して除去する処理を改質処理という。その反応式は次の式(1)のとおりである。
CH+2O → CO+HO 式(1)
このようにして、堆積膜による紫外光の吸収を抑制し、処理室1内に照射される紫外光の照度低下を抑制することができる。したがって、透過窓5の透過性を一定範囲内に保つことができ、成膜速度を一定範囲内に保つことができる。(E)改質処理工程は、基板2に対する紫外光の照度(照射レベル)が、低下しないうちに行うのが好ましく、例えば、(B)、(C)、(D)の一連の基板処理を2回行う毎に行うのが好ましい。
【0023】
上記の、(E)改質処理工程の代わりに、次に説明する(F)クリーニング工程を実施することもできる。この場合、上記の(B)基板搬入工程、(C)成膜工程、(D)基板搬出工程の一連の工程を、1回又は複数回実施し、1枚又は複数枚の基板2を成膜処理した後、次に説明する(F)クリーニング工程を実施するのが好ましい。
上記(C)成膜工程においては、シリコン(Si)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)の各成分が、透過窓5の内側に付着する。そのうち、炭素(C)成分および水素(H)成分は、(E)改質処理工程により除去することができるが、シリコン(Si)成分および酸素(O)成分は、(E)改質処理工程により除去することができない。シリコン(Si)成分および酸素(O)成分の付着量が多くなると、つまり、透過窓5に付着するシリコン酸化膜の膜厚が厚くなると、そのシリコン酸化膜が剥離して発塵源となる。また、膜厚や紫外光の照射強度が不均一になる等の問題が生じる。したがって、透過窓5に付着するシリコン酸化膜を、(F)クリーニング工程により除去する必要がある。(F)クリーニング工程では、炭素(C)成分及び水素(H)成分を含むシリコン酸化膜を除去することができるので、(E)改質処理工程に代えて、(F)クリーニング工程を実施することもできる。
しかし、(F)クリーニング工程は、後述するように、(F2)プリコート処理を含む。(F2)プリコート処理は、(E)改質処理工程に比べて処理時間が非常に長い。従って、(E)改質処理工程を行わず、その代わりに(F)クリーニング工程を行うと、基板ロット単位(例えば基板25枚)の処理時間が長くなり、スループットが低下する。
したがって、高頻度で(E)改質処理工程を行い、かつ、低頻度で(F)クリーニング工程を行うのが好ましい。例えば、(B)、(C)、(D)の一連の基板処理を2回行う毎に(E)改質処理工程を行い、(B)、(C)、(D)の一連の基板処理を10回行う毎に(F)クリーニング工程を行うようにするのが好ましい。
【0024】
(F)クリーニング工程
(F1:クリーニング処理)
基板搬出工程において、処理済みの基板2が処理室1の外部に搬出された後、基板2が処理室1内に存在しない状態で、例えば、NF等のフッ素を含むクリーニングガスが、クリーニングガス源33からガス導入管14を介して処理室1に供給される。また、必要に応じ、クリーニングガスの供給と同時に、N2(窒素)等の不活性ガスが、不活性ガス源43からガス導入管14を介して処理室1に供給される。処理室1内は、所定の圧力に調整される。本実施例では、処理室1内の圧力を300Paとした。このようにして、クリーニングガスにより、処理室1内や透過窓5の内側に堆積した付着物を除去するクリーニング処理が行われる。この付着物は、シリコン(Si)や酸素(O)を含むシリコン酸化膜である。クリーニング処理により、上記の(E)改質処理工程では除去できなかった、透過窓5等に堆積した付着物を除去することができる。クリーニング処理は、付着物(シリコン酸化物)が剥離する前の段階で、例えば、シリコン酸化物の厚さが1μmに達する基板処理回数毎に行うのが好ましく、例えば、10回毎に行うのが好ましい。なお、クリーニングガスは、フッ素を含むクリーニングガスに限られるものではない。
クリーニング処理が終了すると、クリーニングガスを排気管64から排気するとともに、不活性ガスを、不活性ガス源43からガス導入管14を介して処理室1に供給し、処理室1内のクリーニングガスを不活性ガスに置換する。
【0025】
(F2:プリコート処理)
上記のフッ素含有ガスによるクリーニング処理を行った後、直ぐに上記の(C)成膜工程を行う際には、処理室1内に残留する残留フッ素低減のため、更には処理条件を再現するため、成膜工程に先立って、プリコート処理を行うことが有効である。プリコート処理とは、クリーニング処理により処理室1の内壁に吸着されたフッ素成分を、シリコン酸化膜により覆う処理である。プリコート処理を行わない場合は、次の(1)(2)(3)(4)の弊害がある。(1)クリーニング処理の次の成膜時、フッ素成分が処理室1内の雰囲気に混入し、成膜する膜質に悪影響を与える。(2)フッ素によって、処理室1内の熱輻射が変わり、処理室1内の温度が不安定になるため、成膜速度が不安定となる。(3)材料ガスが処理室1の内壁に吸着しやすくなるため、基板への材料ガス供給量が不安定となる。(4)内壁にシリコン酸化膜が形成されていないため、(F)クリーニング工程を実施する前の処理室の状態と異なってしまう。そのため、(C)成膜工程における膜処理の再現性を得られなくなってしまう。上記(1)(2)(3)(4)の弊害は、プリコート処理を行うことにより、回避することができる。
本実施例では、プリコート処理は、(F)クリーニング工程の一部として実施される。プリコート処理工程では、上記の(C)成膜工程と略同様なプロセス条件(ガス種、温度、圧力等)により、1枚又は複数枚の基板に対して、(C)成膜工程と同様な成膜処理を行う。あるいは、(C)成膜工程と異なるガス種であっても、成膜工程に影響の少ないガス種(つまり、シリコン酸化膜を形成するガス種)であれば、その材料ガスを用いて、成膜処理を行うようにしてもよい。プリコート処理において用いる基板は、安価な予備成膜専用基板を用いることもできる。
【0026】
なお、上記の(B)基板搬入工程、(C)成膜工程、(D)基板搬出工程の一連の工程を1回行う毎に、上記の(E)改質処理工程を行うことが好ましいが、(B)基板搬入工程、(C)成膜工程、(D)基板搬出工程の一連の工程を複数回行う毎に、(E)改質処理工程を行うようにしてもよい。
また、(B)基板搬入工程、(C)成膜工程、(D)基板搬出工程の一連の工程を所定の回数行う毎に、(E)改質処理工程を行うようにし、該(E)改質処理工程を複数回行った後、(E)改質処理工程に代えて、(F)クリーニング工程を行うことが好ましい。例えば、次の順で処理を行う。すなわち、BCD(E)BCD(E)BCD(E)BCD(F)BCD(E)BCD(E)BCD(E)BCD(F)。これは、BCDの一連の工程を1回行う毎に(E)改質処理工程を1回行い、(E)改質処理工程を計3回行った後、(E)改質処理工程に代えて、(F)クリーニング工程を行う例である。このようにすると、酸素含有ガス処理による改質処理では除去することができない処理室内の付着物を、フッ素含有ガス処理により除去することができる。また、フッ素含有ガス処理に酸素含有ガス処理を併用して、処理室内の付着物を改質することにより、酸素含有ガス処理よりも処理時間が長いフッ素含有ガス処理の処理回数を少なくすることができ、その結果、基板ロット単位(例えば基板25枚単位)の処理時間を短くすることができ、スループットが向上する。
【0027】
なお、上記の(E)改質処理工程において、酸素(O)ガスの励起は、紫外光を用いずに、高周波印加部24を用いて、酸素(O)ガスに高周波電力を印加することにより行うこともできる。あるいは、紫外光と高周波印加部24を併用して行ってもよい。紫外光と高周波印加部24を併用した場合は、改質処理の速度を向上させることができる。あるいは、酸素含有ガスとして、オゾン(O)ガスを用いてもよい。Oガスを用いた場合は、Oガスを用いた場合よりも、活性酸素の生成効率を高めることができ、改質処理の速度を向上させることができる。
【0028】
また、(F)クリーニング工程において、クリーニングガスを、クリーニングガス源33からガス導入管14を介して処理室1に供給する際に、高周波印加部24を用いて、クリーニングガスに高周波電力を印加し、クリーニングガスを活性化するようにしてもよい。このようにすると、クリーニングガスの洗浄力が高まり、クリーニング処理時間を短縮することができる。また、処理室1内に供給されたクリーニングガスに対して、紫外光発光部4から紫外光を照射することもできる。このようにすると、クリーニングガスが処理室1内で活性化されるので、活性化されたクリーニングガスが高エネルギの状態にあるため、高速でクリーニング処理を行うことができ、クリーニング処理時間を短縮できる。ただし、クリーニングガスに紫外光を照射する場合は、強く活性化されたクリーニングガスにより、透過窓5が損傷(ダメージ)を受け、基板処理装置のメンテナンス周期が短くなる。したがって、基板処理装置のメンテナンス周期を長くしたい場合は、クリーニングガスに紫外光を照射せず、リモートプラズマ装置によりクリーニングガスを活性化すればよい。
【0029】
また、リモートプラズマ装置と紫外光照射を併用すると、さらに高速でクリーニング処理を行うことができ、クリーニング処理時間を短縮できる。リモートプラズマ装置により活性化されたクリーニングガスは、処理室1内に供給されてクリーニング処理に使用されるときには、活性化状態の寿命が尽きる(活性化されたエネルギを失う)ものが増加する。したがって、リモートプラズマ装置により活性化されたクリーニングガスは、低エネルギであるため、透過窓5へ与える損傷は少ないが、クリーニング処理が低速となる。活性化の寿命が尽きたクリーニングガスに、紫外光照射することにより、クリーニングガスが処理室1内で活性化され、高エネルギの状態になる。
【0030】
本発明の改質処理を行った場合の効果を、図2に示す。図2は、本発明の実施例における効果を示す図である。図2において、横軸は処理基板の枚数(基板処理回数)であり、縦軸は、1枚目の処理基板の成膜速度を基準値(1、00)としたときの、各基板の相対的な成膜速度である。71は、基板2を1枚成膜処理する毎に、本発明の改質処理を行った場合の成膜速度を示す。72は、基板2を1枚成膜処理する毎に、クリーニング処理を行った場合の成膜速度を示す。73は、本発明の改質処理も、クリーニング処理も行わなかった、処理なしの場合の成膜速度を示す。処理なしの場合、5枚目の基板の成膜速度は、1枚目の基板の約30%程度にまで低下するが、本発明の改質処理を行った場合は、5枚目の基板の成膜速度は、1枚目の基板の90%以上を維持している。また、フッ素ガスによるクリーニング処理を行った場合は、5枚目の成膜速度は、1枚目の成膜速度と同等に回復している。
したがって、本発明の改質処理を行った場合は、成膜速度の低下を抑制することができる。また、本発明の改質処理と、より処理時間の長いクリーニング処理を併用した場合は、クリーニング処理だけを行う場合と比べ、装置全体の処理効率(スループット)を向上しつつ、成膜速度の低下を抑制することができる。
【0031】
以上の、本明細書の記載に基づき、少なくとも次の発明を把握することができる。すなわち、第1の発明は、基板を処理室内へ搬入する工程と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する工程と、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する工程と、処理された基板を処理室から搬出する工程と、処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する工程とを有する基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に発生し処理室内壁等に付着した付着物(反応生成物)を、励起された酸素含有ガスで処理することにより改質する、つまり、付着物中の炭素成分や水素成分を酸化して除去することができる。
【0032】
第2の発明は、前記第1の発明の基板処理方法において、前記シリコン化合物ガスは、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC)、もしくはTMCTS(テトラメチルシクロテトラシロキサン:[(CH)HSiO])、もしくはOMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン:[(CHSiO])である基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、前記シリコン化合物ガスに紫外光を照射することにより、基板上にSiO膜を形成し、該SiO膜中の炭素成分や水素成分を酸化して除去することができる。
【0033】
第3の発明は、前記第1の発明及び第2の発明の基板処理方法において、前記酸素含有ガスは、処理室内に供給された後、紫外光が照射されることにより励起される基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、酸素含有ガスが処理室内で励起されるので、酸素含有ガスを活性度が高い状態で用いることが容易となる。
【0034】
第4の発明は、前記第1の発明及び第2の発明の基板処理方法において、前記酸素含有ガスは、処理室内に供給される前に、高周波電力印加により励起される基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、酸素含有ガスが処理室外で励起された後、処理室内に供給されるので、酸素含有ガスの活性度を調節することが容易となる。
【0035】
第5の発明は、前記第1の発明ないし第4の発明の基板処理方法において、前記基板に素子分離領域が形成されている基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、基板上の素子分離領域に対して、ボイドの発生を抑制して層間絶縁膜を埋め込むことが容易となり、該層間絶縁膜中の炭素成分や水素成分を酸化して除去することができる。
【0036】
第6の発明は、前記第1の発明ないし第5の発明の基板処理方法において、前記酸素含有ガスはオゾンである基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、酸素含有ガスを励起することにより発生する活性化酸素の生成効率が高まる。これにより、処理室内壁等に付着した反応生成物に対する改質処理の処理速度を速めることができる。
【0037】
第7の発明は、基板を処理する処理室と、該処理室の外に設けられ、処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、前記処理室の隔壁に設けられ、紫外光を透過させるための透過窓とを備える基板処理装置における基板処理方法であって、
基板を処理室内へ搬入する工程と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する工程と、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する工程と、処理された基板を処理室から搬出する工程と、前記透過窓を励起された酸素含有ガスで処理する工程とを有する基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に発生し、透過窓に付着した付着物(反応生成物)を、励起された酸素含有ガスで処理することにより改質する、つまり、透過窓に付着した付着物の炭素成分や水素成分を酸化して除去することができる。これにより、付着物のために減衰していた基板上の紫外光照射量を、所望のレベル以上の一定範囲内に保つことができる。
【0038】
第8の発明は、基板を処理する処理室と、該処理室の外に設けられ、処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、前記処理室の隔壁に設けられ、紫外光を透過させるための透過窓とを備える基板処理装置における基板処理方法であって、
基板を処理室内へ搬入し、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給し、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理し、処理された基板を処理室から搬出する基板処理工程と、
前記透過窓を励起された酸素含有ガスで処理する酸素含有ガス処理工程とを有し、
前記基板処理工程を所定回数行った後、前記酸素含有ガス処理工程を行うようにする基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に発生し、透過窓に付着した付着物(反応生成物)を、定期的に、励起された酸素含有ガスで処理することにより、改質することができる。これにより、付着物のために減衰していた基板上の紫外光照射量を、所望のレベル以上の一定範囲内に保つことが容易となる。
【0039】
第9の発明は、基板を処理室内へ搬入し、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給し、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理し、処理された基板を処理室から搬出する基板処理工程と、
前記処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する酸素含有ガス処理工程と、
前記処理室内を励起されたフッ素含有ガスで処理し、その後、処理室内からフッ素含有ガスを排気するフッ素含有ガス処理工程とを有し、
前記基板処理工程を所定回数行った後、前記酸素含有ガス処理工程を行い、その後、前記基板処理工程を所定回数行った後、前記フッ素含有ガス処理工程を行うようにする基板処理方法。
このように基板処理方法を構成すると、酸素含有ガス処理による改質処理では除去することができない処理室内の付着物を、フッ素含有ガス処理により除去することができる。また、酸素含有ガス処理を併用して、処理室内の付着物を改質することにより、酸素含有ガス処理よりも処理時間が長いフッ素含有ガス処理の処理回数を少なくすることができ、その結果、基板ロット単位の処理時間を短くすることができ、スループットが向上する。
【0040】
第10の発明は、基板を処理する処理室と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、処理室の外に設けられ処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、制御部とを備え、
該制御部は、処理室内に基板が存在する状態において、前記第1のガス供給部から処理室内へ供給された前記シリコン化合物ガスに、前記紫外光発光部から紫外光を照射する第1の処理と、処理室内に基板が存在しない状態において、前記第2のガス供給部から処理室内へ供給された酸素含有ガスであって、励起された酸素含有ガスにより処理室内を処理する第2の処理とを行う制御部である基板処理装置。
このように基板処理装置を構成すると、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に発生し、処理室内壁等に付着した付着物を、励起された酸素含有ガスで処理することにより、改質することができる。
なお、前記第1のガス供給部は、前記シリコン化合物ガス源13、前記MFC12、前記開閉バルブ11等から構成される。前記第2のガス供給部は、前記酸素含有ガス源23、前記MFC22、前記開閉バルブ21等から構成される。
【0041】
第11の発明は、基板を処理する処理室と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、処理室の外に設けられ処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、制御部とを備え、
該制御部は、処理室内に基板が存在する状態において、前記第1のガス供給部から処理室内へ供給された前記シリコン化合物ガスに、前記紫外光発光部から紫外光を照射する第1の処理と、処理室内に基板が存在しない状態において、前記第2のガス供給部から処理室内へ供給された酸素含有ガスであって、励起された酸素含有ガスにより処理室内を処理する第2の処理とを行う制御部であって、前記第1の処理を所定回数行った後、前記第2の処理を行う制御部である基板処理装置。
このように基板処理装置を構成すると、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に発生し、透過窓に付着した付着物(反応生成物)を、定期的に、励起された酸素含有ガスで処理することにより、改質することができる。これにより、付着物のために減衰していた基板上の紫外光照射量を、所望のレベル以上の一定範囲内に保つことが容易となる。
【0042】
第12の発明は、基板を処理する処理室と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、フッ素含有ガスを処理室内へ供給する第3のガス供給部と、パージガスを処理室内へ供給する第4のガス供給部と、処理室の外に設けられ処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、制御部とを備え、
該制御部は、処理室内に基板が存在する状態において、前記第1のガス供給部から処理室内へ供給された前記シリコン化合物ガスに、前記紫外光発光部から紫外光を照射する第1の処理と、処理室内に基板が存在しない状態において、前記第2のガス供給部から処理室内へ供給された酸素含有ガスであって、励起された酸素含有ガスにより処理室内を処理する第2の処理と、処理室内に基板が存在しない状態において、前記第3のガス供給部から処理室内へ供給されたフッ素含有ガスにより処理室内を処理し、その後、処理室内のフッ素含有ガスを排気するとともに前記第4のガス供給部からパージガスを処理室内へ供給する第3の処理とを行う制御部であって、前記第1の処理を所定回数行った後、前記第2の処理を行い、該第2の処理を行った後、前記第1の処理を所定回数行い、その後、前記第3の処理を行う制御部である基板処理装置。
このように基板処理装置を構成すると、酸素含有ガス処理による改質処理では除去することができない処理室内の付着物を、フッ素含有ガス処理により除去することができる。また、酸素含有ガス処理を併用して、処理室内の付着物を改質することにより、酸素含有ガス処理よりも処理時間が長いフッ素含有ガス処理の処理回数を少なくすることができ、その結果、基板ロット単位の処理時間を短くすることができ、スループットが向上する。
【0043】
第13の発明は、半導体基板を処理室内へ搬入する工程と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する工程と、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する工程と、処理された基板を処理室から搬出する工程と、処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する工程とを有する半導体装置の製造方法。
このように半導体装置の製造方法を構成すると、シリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する際に発生し処理室内壁等に付着した付着物(反応生成物)を、励起された酸素含有ガスで処理することにより改質する、つまり、付着物中の炭素成分や水素成分を酸化して除去することができる。
【0044】
なお、前記第3のガス供給部は、前記クリーニングガス源33、前記MFC32、前記開閉バルブ31等から構成される。前記第4のガス供給部は、前記不活性ガス源43、前記MFC42、前記開閉バルブ41等から構成される。
また、本実施例においては半導体装置を例にして説明したが、それに限るものではなく、有機ELなどの基板に対しても有効である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板処理室、2 基板、3 サセプタ(基板載置部)、4 紫外光発光部、5 紫外光透過窓、6 ヒータユニット、7 温度検出器、8 残留ガス計測計、9 制御部、11 開閉バルブ、12 MFC、13 シリコン化合物ガス源、14 ガス導入管、15 シリコン化合物ガス供給管、21 開閉バルブ、22 MFC、23 酸素含有ガス源、25 酸素含有ガス供給管、24 高周波印加部、31 開閉バルブ、32 MFC、33 クリーニングガス源、35 クリーニングガス供給管、41 開閉バルブ、42 MFC、43 不活性ガス源、45 不活性ガス供給管、61 圧力センサ、62 APCバルブ、63 真空ポンプ、64 ガス排気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内へ搬入する工程と、
炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する工程と、
処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理する工程と、
処理された基板を処理室から搬出する工程と、
処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する工程とを有する基板処理方法。
【請求項2】
前記酸素含有ガスはオゾンである請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
基板を処理する処理室と、該処理室の外に設けられ、処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、前記処理室の隔壁に設けられ、紫外光を透過させるための透過窓とを備える基板処理装置における基板処理方法であって、
基板を処理室内へ搬入し、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給し、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理し、処理された基板を処理室から搬出する基板処理工程と、
前記透過窓を励起された酸素含有ガスで処理する酸素含有ガス処理工程とを有し、
前記基板処理工程を所定回数行った後、前記酸素含有ガス処理工程を行うようにする基板処理方法。
【請求項4】
基板を処理室内へ搬入し、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給し、処理室内へ供給されたシリコン化合物ガスに紫外光を照射して基板を処理し、処理された基板を処理室から搬出する基板処理工程と、
前記処理室内を励起された酸素含有ガスで処理する酸素含有ガス処理工程と、
前記処理室内を励起されたフッ素含有ガスで処理し、その後、処理室内からフッ素含有ガスを排気するフッ素含有ガス処理工程とを有し、
前記基板処理工程を所定回数行った後、前記酸素含有ガス処理工程を行い、その後、前記基板処理工程を所定回数行った後、前記フッ素含有ガス処理工程を行うようにする基板処理方法。
【請求項5】
基板を処理する処理室と、炭素及び水素を含むシリコン化合物ガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、酸素含有ガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、処理室の外に設けられ処理室内に紫外光を照射する紫外光発光部と、処理室の隔壁に設けられた紫外光を透過させるための透過窓と、制御部とを備え、
該制御部は、処理室内に基板が存在する状態において、前記第1のガス供給部から処理室内へ供給された前記シリコン化合物ガスに、前記紫外光発光部から紫外光を照射する第1の処理と、処理室内に基板が存在しない状態において、前記第2のガス供給部から処理室内へ供給された酸素含有ガスであって、励起された酸素含有ガスにより処理室内を処理する第2の処理とを行う制御部である基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−29598(P2011−29598A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102004(P2010−102004)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】