説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板上面の周縁部における処理幅を精密に制御することができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】ウエハWはスピンチャックにより水平姿勢で保持されている。スピンチャックに保持されたウエハWの下面の中央部には、下ノズル6からの処理液が供給される。下下ノズル6は、ウエハWの下面から間隔G1を隔てて対向する上面52を有している。上面52には、処理液吐出口6aが形成されている。ウエハWを回転させつつ、処理液吐出口6aから処理液を吐出すると、その吐出された処理液によって、ウエハWの下面と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態にされる。ウエハWの下面に接液する処理液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて回転半径外方側へと広がり、ウエハWの周端面102から上面に回り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部に対する洗浄処理のための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、ほぼ円形の基板である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)のデバイス形成面などに金属薄膜を形成した後、この金属薄膜の不要部分をエッチング除去する処理が行われる場合がある。たとえば、ウエハの周縁部に金属薄膜が形成されていると、搬送ロボットによるハンドリングの際に、ハンドの金属汚染を起こし、この金属汚染がさらに他のウエハに転移するという不具合を生じるおそれがある。そのため、ウエハの周縁部に形成された不要な金属薄膜は除去される。
【0003】
ウエハの周縁部から金属薄膜を除去するための基板処理装置は、たとえば、ウエハを水平に保持して回転するスピンチャックと、ウエハの下面にエッチング液を供給するエッチング液ノズルとを備えている。ウエハは、その表面(デバイス形成領域が形成される面)を上方に向けてスピンチャックに保持される。エッチング液ノズルとして、たとえば、スピンチャックの回転軸内に挿通された中心軸ノズルが用いられる。この中心軸ノズルの上端の吐出口は、スピンチャックに保持されたウエハの下面中央に対向している。吐出口から吐出されたエッチング液がウエハの下面に達すると、そのエッチング液は遠心力を受けて回転半径外方側へと広がり、ウエハの周端から上面に回り込み、このウエハの上面の周縁部の不要物をエッチングする。エッチング液ノズルからのエッチング液の吐出流量やスピンチャックの回転数を調節することによって、ウエハの上面の周縁部の所定幅(たとえば0.5〜1.5mm)の領域にエッチング処理を施すことができる(いわゆるベベルエッチング処理)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−6672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが上述のような構成では、ウエハの上面の金属薄膜が除去される領域の幅(処理幅)の精密な制御が困難であるという問題がある。
すなわち、ウエハの下面(または、ウエハの下面に形成された薄膜の表面)の面内で親水度がばらつく場合は、エッチング液はウエハの下面における親水度の高い部分に沿って周縁部に向けて移動する。そのため、エッチング液が必ずしも均等に広がらず、放射状の筋状をなしながら広がるので、ウエハ周縁部の各部に供給されるエッチング液の流量が均一にならない。したがって、エッチング液の回り込み量がウエハ周縁部の各部で不均一になる。
【0006】
また、たとえばエッチング液の吐出開始時はエッチング液ノズルからのエッチング液の吐出流量が安定しない場合があり、エッチング液の吐出後ある程度の時間が経過した後も、ポンプの脈動などによりエッチング液ノズルのエッチング液の吐出流量が瞬間的に変動することがある。エッチング液ノズルからのエッチング液の吐出流量がエッチング処理中に変化すると、ウエハの周縁部へのエッチング液の供給流量も変化する。そのため、ウエハの上面におけるエッチング液の回り込み量が、所期の回り込み量とは異なるおそれがある。
【0007】
同様の問題は、ベベルエッチング処理だけでなく、ウエハの上面の周縁部を洗浄用薬液などの薬液を用いてウエハの周縁部を処理(洗浄)する場合にも生じる。
そこで、この発明の目的は、基板上面の周縁部における処理幅を精密に制御することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)の周縁部(101,102)に処理液を用いた処理を施す基板処理装置(1;110)であって、基板を水平姿勢で保持するための基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板を、鉛直軸線まわりに回転させる回転手段(10)と、前記回転手段により回転される基板の下面における前記周縁部よりも内側の領域(A1)に当該基板の下面から間隔(G1)を隔てて対向する第1対向面(52;115,116)と、前記第1対向面に形成された処理液吐出口(6a;117;130;131)とを有し、前記処理液吐出口から吐出された処理液によって、基板の下面と前記第1対向面との間の空間(53)を液密状態にする第1ノズル(6;111)とを含む、基板処理装置である。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、処理液吐出口から吐出された処理液によって、基板の下面と第1ノズルの第1対向面との間の空間が液密状態にされ、基板の下面における第1対向面と対向する領域の全域に処理液が接液される。基板の下面に接液する処理液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板下面における第1対向面と対向しない領域(A2)を伝って回転半径外方側へと広がり、基板の周端から上面に回り込む。
【0010】
基板の下面に供給された処理液は、基板の下面を周縁部に向けて移動する際に、基板の下面における第1対向面と対向する領域と第1ノズルの第1対向面との間の空間が液密状態となるため、基板の下面における第1対向面と対向する領域の全域に処理液が供給される。そのため、基板の下面における当該領域の表面状態(親水性のばらつきなど)の影響を受けない。したがって、基板の下面に供給された処理液が回転半径方向外方に均等に広がり易くなるから、基板の周縁部の各部に供給される処理液流量が均等になる。これにより、基板の周端からの処理液の回り込み量を、基板周縁部の各部で均一にすることができる。
【0011】
また、第1ノズルからの処理液の吐出状態では、基板の下面と第1ノズルの第1対向面との間に処理液の液溜まりが形成される。そのため、基板の下面に供給される処理液の流量に変化があっても、基板の下面に形成された処理液の液溜まりによって、その供給流量の変化が吸収される。したがって、第1ノズルの処理液の吐出流量に変化があった場合であっても、基板の周縁部における処理液の供給流量の急激な変化を抑制することができ、これにより、基板の周端からの処理液の回り込み量を所期の値に維持することができる。
【0012】
以上により、基板上面の周縁部における処理幅を精密に制御することができる。
請求項2に記載のように、前記第1対向面が、前記基板保持手段によって保持された基板の下面に対向する平坦面(52)を含むものであってよい。
また、請求項3に記載のように、前記第1対向面が、前記処理液吐出口(117)が形成された内側対向面(115)と、前記内側対向面の周囲を取り囲む環状に形成され、前記基板保持手段に保持された基板の下面に対して、前記内側対向面よりも接近した位置で対向する外側対向面(116)とを含むものであってもよい。
【0013】
請求項4に記載のように、前記第1ノズルにおける前記第1対向面を含む領域が、親水性材料を用いて形成されていてもよい。
請求項5記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板の上面の周縁部の一部に向けて処理液を吐出する第2ノズル(5)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、第2ノズルから処理液が吐出されると、第2ノズルからの処理液は、基板の上面の周縁部に供給される。また、基板の下面に第1ノズルから処理液が供給される。この場合、基板の上面の周縁部には、第1ノズルから吐出され、基板の周端から回り込んだ処理液と、第2ノズルから吐出された処理液とが供給される。
この構成の場合、処理液の回り込み量が多いと、基板の周端から回り込んだ処理液と、第2のノズルから吐出された処理液とが激しく衝突し、処理液が周囲に飛散して基板上面の中央領域(たとえば周縁部の内側の領域)に付着するおそれがある。
【0015】
これに対し、請求項5の発明によれば、基板の周端から回り込む処理液による基板上面の回り込み幅を、精密に制御することができる。これにより、第1ノズルからの処理液と、第2ノズルからの処理液との干渉を抑制することができ、処理液の周囲への飛散を防止することができる。ゆえに、基板の表面(上面)の中央領域に悪影響を与えることがない。
【0016】
前記の目的を達成するための請求項6記載の発明は、基板(W)の下面に間隔(G1)を隔てて対向する対向面(52;115,116)を有する第1ノズル(6)から処理液を吐出して、基板の周縁部(101,102)に処理液を用いた処理を施す基板処理方法であって、基板を鉛直軸線まわりに回転させる回転工程(S5)と、前記回転工程と並行して実行され、処理液を前記対向面に形成された処理液吐出口(6a,117)を通じて、基板の下面と前記対向面との間に供給し、基板の下面と前記対向面との間の空間(53)を液密状態にして、基板の下面に当該処理液を接液させる下面接液工程(S8)とを含む、基板処理方法である。
【0017】
この発明の方法によれば、請求項1に関連して説明した作用効果と同様の作用効果を奏する。
請求項7記載の発明は、前記回転工程および前記下面接液工程と並行して実行され、第2ノズルから、基板の上面の周縁部の一部に向けて処理液を吐出する上面処理液供給工程(S8,S9)をさらに含む、請求項6記載の基板処理方法である。
【0018】
この発明の方法によれば、請求項5に関連して説明した作用効果と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すスピンチャックおよびこれに関連する構成の平面図である。
【図3】図1に示す下ノズルの斜視図である。
【図4】図1に示す下ノズルから吐出された処理液による処理の様子を示す図である。
【図5】図1に示す遮断板の底面図である。
【図6】図1に示す当接ピンおよびこれに関連する構成の側面図である。
【図7】図1に示す当接ピンおよびこれに関連する構成の側面図である。
【図8】図1に示す基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図1に示す基板処理装置による基板の処理例を説明するための工程図である。
【図10】同時エッチング処理または同時リンス処理の様子を示す図である。
【図11】第1のエッチング試験におけるエッチング液の回り込み量の円周方向分布を示すグラフである(その1)。
【図12】第1のエッチング試験におけるエッチング液の回り込み量の円周方向分布を示すグラフである(その2)。
【図13】第2のエッチング試験におけるウエハの表面の周縁部を示す光学顕微鏡写真である(その1)。
【図14】第2のエッチング試験におけるウエハの表面の周縁部を示す光学顕微鏡写真である(その2)。
【図15】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の下ノズルの斜視図である。
【図16】下ノズルの変形例を示す平面図である。
【図17】下ノズルの他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の概略構成を示す断面図である。この基板処理装置1は、ウエハWの表面(デバイス形成領域が形成された面)の周縁部(たとえば、ウエハWの周端縁から幅1.0〜3.0mmの環状領域をいう。以下、「表面周縁部」という)101およびウエハWの周端面102に形成されている薄膜を除去することができるものである。表面周縁部101の内側の中央領域とは、トランジスタその他の素子(デバイス)が形成されるデバイス形成領域を含む。
【0021】
基板処理装置1は、隔壁(図示せず)によって区画された処理室(図示せず)内に、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック(基板保持手段)3と、スピンチャック3の上方に配置された遮断板(対向部材)4と、ウエハWの上面の周縁部(表面周縁部101)に向けて処理液を吐出する2つの上ノズル(第2ノズル)5と、ウエハWの下面中央部に向けて処理液を吐出する下ノズル(第1ノズル)6とを備えている。
【0022】
スピンチャック3は、ほぼ鉛直に延びる回転軸7と、回転軸7の上端にほぼ水平な姿勢で取り付けられた円板状のスピンベース8と、スピンベース8の上面の周縁部に配置された複数の当接ピン9とを備えている。複数の当接ピン9は、スピンベース8の上面における回転軸7の中心軸線を中心とする円周上に等角度間隔で配置されている。各当接ピン9をウエハWの下面周縁部に当接させることにより、ウエハWがスピンベース8の上方で水平姿勢で載置される。そして、遮断板4の気体吐出口27(後述する)から吹き付けられる不活性ガスによって複数の当接ピン9に押し付けられる。各当接ピン9の上部とウエハWの下面との間に生じる摩擦力によって、ウエハWは当接ピン9に支持される。なお、薄膜の除去処理では、ウエハWは、その表面を上方に向けて当接ピン9に支持される。
【0023】
回転軸7には、モータ(図示せず)などを含むチャック回転機構(回転手段)10から回転力が入力されるようになっている。ウエハWを複数の当接ピン9に支持させた状態で、回転軸7にチャック回転機構10から回転力を入力することにより、ウエハWを、スピンベース8とともに回転軸7の中心軸線まわりに回転させることができる。
図2は、スピンチャック3およびこれに関連する構成の平面図である。図1および図2を参照して、当接ピン9およびこれに関連する構成について説明する。
【0024】
各当接ピン9は、鉛直に延びるロッド11と、ロッド11の上端部に連結された第1支持部12と、ロッド11を取り囲む筒状のベローズ13と、ロッド11および第1支持部12を一体的に昇降させるピン昇降機構14とを含む。各第1支持部12は、ウエハWの下面の周縁部に点接触するように構成されている。各第1支持部12は、対応するピン昇降機構14によって、支持位置と、支持位置の真下の位置である退避位置との間で鉛直方向に昇降される。複数の第1支持部12の支持位置は同じ高さであり、複数の第1支持部12の退避位置は、同じ高さである。複数の当接ピン9により支持されたウエハWは、複数の当接ピン9が同期して昇降されることにより、スピンベース8の上方で鉛直方向に昇降される。複数の当接ピン9は、それぞれ3つ以上の当接ピン9により構成される第1当接ピン群9aおよび第2当接ピン群9bに二分される。第1当接ピン群9aを構成する複数の当接ピン9は、同期して昇降される。同様に、第2当接ピン群9bを構成する複数の当接ピン9は、同期して昇降される。第1当接ピン群9aを構成する複数の当接ピン9と、第2当接ピン群9bを構成する複数の当接ピン9とは、スピンベース8の周方向に交互に配置されている。
【0025】
再び図1を参照して説明する。回転軸7は中空に形成されている。回転軸7内には、下側処理液供給管15が挿通している。下側処理液供給管15の上端には、下ノズル6が固定されている。
下側処理液供給管15には、下側エッチング液供給管19および下側純水供給管20が接続されている。下側エッチング液供給管19には、エッチング液供給源からのエッチング液が供給されている。下側エッチング液供給管19の途中部には、下側エッチング液供給管19を開閉するための下側エッチング液バルブ21が介装されている。下側純水供給管20には、純水供給源からの純水が供給されている。下側純水供給管20の途中部には、下側純水供給管20を開閉するための下側純水バルブ22が介装されている。エッチング液および純水は、下側エッチング液バルブ21および下側純水バルブ22の開閉が制御されることにより選択的に下側処理液供給管15に供給される。
【0026】
下側処理液供給管15に供給されるエッチング液としては、ウエハWの周縁部から除去しようとする薄膜の種類に応じた種類のものが適用される。たとえば、ウエハWの周縁部から銅薄膜等の金属膜を除去するときには、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)、フッ酸と過酸化水素水との混合液、または硝酸がエッチング液として用いられる。また、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜またはシリコン酸化膜をウエハWから除去するときには、たとえば、フッ酸硝酸混合液がエッチング液として用いられる。さらに、ウエハW上の酸化膜または窒化膜を除去するときには、たとえば、DHF(希フッ酸)や50%フッ酸などのフッ酸類がエッチング液として用いられる。
【0027】
図3は、下ノズル6の斜視図である。図4は、下ノズル6から吐出された処理液による処理の様子を示す図である。
図1、図3および図4を参照して、下ノズル6について説明する。下ノズル6は、下側処理液供給管15の上端に固定された円筒部50と、円筒部50の上端に固定された円板部51とを備えている。円板部51は、回転軸7の中心軸線を中心とする円板状をなしている。円板部51の直径D1は、スピンチャック3に保持されるウエハWの直径より小径(たとえばウエハWの直径の1/3程度)に設定されている。円板部51の上面(第1対向面、対向面、平坦面)52は、平坦な水平面をなしており、スピンチャック3に保持されたウエハWの下面に対向している。下ノズル6の鉛直方向の高さ位置は、スピンチャック3に保持されるウエハWの下面と、円板部51の上面52との間に所定の間隔G1が形成されるように設定されている。
【0028】
円板部51の上面52の中央部には、処理液(エッチング液または純水)を吐出するための円形の処理液吐出口6aが形成されている。処理液吐出口6aは、回転軸7の中心軸線上に位置している。処理液吐出口6aと下側処理液供給管15とは、円板部51および円筒部50に形成される接続路54によって接続されている。そのため、下側処理液供給管15から接続路54に供給された処理液が、処理液吐出口6aから上方に向けて吐出される。円板部51および円筒部50は、PCTFE(ポリクロロトリフルエチレン)などの耐薬液性を有する材料を用いて一体的に形成されている。
【0029】
ウエハWの回転状態で、処理液吐出口6aから上方に向けて処理液(エッチング液または純水)が吐出されると、処理液吐出口6aからの処理液はウエハWの下面に当たり、ウエハWの下面と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態にされる。そして、ウエハWの下面における上面52と対向する領域(周縁部よりも内側の領域。以下、「対向領域」という)A1の全域に処理液が接液される。これにより、ウエハWの下面には、下ノズル6の上面52との間に処理液の液溜まりが形成される。
【0030】
ウエハWの下面に接液する処理液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハW下面における上ノズルの上面52と対向しない領域(以下、「非対向領域」という)A2を伝って回転半径外方側へと広がり、ウエハWの周端面102に至る。そして、処理液は、この周端面102を回り込んでウエハWの上面の周縁部(表面周縁部101)に至る。
図5は、遮断板4の底面図である。
【0031】
図1および図5を参照して、遮断板4について説明する。遮断板4は、中空に形成された円板状の部材である。遮断板4は、中空に形成された支軸25の下端に水平な姿勢で連結されている。遮断板4の内部空間は、支軸25の内部空間に連通している。遮断板4の中心軸線は、スピンチャック3の回転中心L1上に配置されている。遮断板4は、円形で平坦な下面(第2対向面)26と、遮断板4の下面26に形成された複数の気体吐出口27と、遮断板4の内部に設けられた流通空間28と、遮断板4の周縁部に形成された2つの挿入孔29とを含む。遮断板4の下面26は、ウエハWとほぼ同じ直径、あるいはウエハWよりも少し大きい直径を有している。遮断板4は、遮断板4の下面26が水平になるように配置されている。遮断板4は、遮断板4の下面26がスピンチャック3に保持されたウエハWの上面に対向するように構成されている。
【0032】
また、複数の気体吐出口27は、遮断板4の中心軸線上に中心を有する所定の円周上で間隔を空けて配置されている。各気体吐出口27は、遮断板4の径方向に関して中央部よりも外側に配置されている。各気体吐出口27は、それぞれ、流通空間28に連通している。また、流通空間28は、対応する連通路30を介して各挿入孔29に連通している。各挿入孔29は、遮断板4の周縁部を遮断板4の厚み方向(図1では上下方向)に貫通している。後述するように、2つの上ノズル5は、それぞれ、2つの挿入孔29に挿入される。2つの挿入孔29は、遮断板4の中心軸線に関して対称に配置されている。
【0033】
また、上側気体供給管31は、支軸25の上端部に接続されている。上側気体バルブ32は、上側気体供給管31に介装されている。気体の一例である窒素ガスは、上側気体供給管31を介して支軸25に供給される。そして、支軸25に供給された窒素ガスは、遮断板4の流通空間28を介して複数の気体吐出口27から下方に吐出される。また、遮断板4の流通空間28に供給された窒素ガスは、各連通路30を介して各挿入孔29に供給される。各挿入孔29に供給された窒素ガスは、各挿入孔29の上端および下端からそれぞれ上方および下方に吐出される。複数の当接ピン9によってウエハWが支持されており、かつ遮断板4が近接位置(図1に示す位置)にある状態で、複数の気体吐出口27から窒素ガスが吐出されると、当該ウエハWは、遮断板4から吹き付けられる窒素ガスによって各当接ピン9に押し付けられる。
【0034】
また、遮断板昇降機構33および遮断板回転機構34は、支軸25に結合されている。支軸25および遮断板4は、遮断板昇降機構33の駆動力が支軸25に入力されることにより、遮断板4の下面26がスピンチャック3に保持されたウエハWの上面に近接する近接位置と、遮断板4がスピンチャック3の上方に大きく退避した退避位置との間で一体的に昇降される。また、支軸25および遮断板4は、遮断板回転機構34の駆動力が支軸25に入力されることにより、スピンチャック3の回転中心L1まわりに一体的に回転される。遮断板回転機構34は、たとえば、遮断板4の回転がウエハWの回転と同期するように、またはウエハWの回転速度とは異なる速度で遮断板4が回転するように制御されてもよい。また、遮断板回転機構34は省略されてもよく、遮断板4は、非回転状態で固定されていてもよい。
【0035】
各上ノズル5は、たとえば、円柱状に形成されている。各上ノズル5は、鉛直姿勢に配置されている。上ノズル5には、上側エッチング液供給管56および上側純水供給管57が接続されている。上側エッチング液供給管56には、エッチング液供給源からのエッチング液が供給されている。上側エッチング液供給管56の途中部には、上側エッチング液供給管56を開閉するための上側エッチング液バルブ58が介装されている。上側純水供給管57には、純水供給源からの純水が供給されている。上側純水供給管57の途中部には、上側純水供給管57を開閉するための上側純水バルブ59が介装されている。エッチング液および純水は、上側エッチング液バルブ58および上側純水バルブ59の開閉が制御されることにより選択的に上ノズルに5に供給される。
【0036】
上ノズル5に供給されるエッチング液としては、ウエハWの表面周縁部101から除去しようとする薄膜の種類に応じた種類のものが適用される。たとえば、ウエハWの表面周縁部101から銅薄膜等の金属膜を除去するときには、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)、フッ酸と過酸化水素水との混合液、または硝酸がエッチング液として用いられる。また、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜またはシリコン酸化膜をウエハWから除去するときには、たとえば、フッ酸硝酸混合液がエッチング液として用いられる。さらに、ウエハW上の酸化膜または窒化膜を除去するときには、たとえば、DHF(希フッ酸)や50%フッ酸などのフッ酸類がエッチング液として用いられる。
【0037】
各上ノズル5の上端部は、対応するノズル回転機構35に連結されている。また、各ノズル回転機構35は、対応するノズルアーム36(図1には一方のみ図示)に連結されている。各上ノズル5は、対応するノズルアーム36によって支持されている。各上ノズル5は、対応するノズル回転機構35によって、上ノズル5の中心軸線L2(回転軸線)まわりに回転される。各中心軸線L2は、スピンチャック3に保持されたウエハWの上面を通る鉛直な軸線である。各ノズル回転機構35は、モータなどのアクチュエータを含む。
【0038】
また、各ノズルアーム36は、対応するアーム回転機構37(図1には一方のみ図示)に連結されている。各アーム回転機構37は、対応するアーム昇降機構38(図1には一方のみ図示)に連結されている。各アーム回転機構37は、スピンチャック3の周囲に設けられた鉛直な回動軸線L3まわりに対応するノズルアーム36を回動させるように構成されている。また、各アーム昇降機構38は、対応するノズルアーム36を鉛直方向に昇降させるように構成されている。各ノズルアーム36が回動軸線L3まわりに回動されることにより、各上ノズル5が水平移動される。また、各ノズルアーム36が鉛直方向に昇降されることにより、各上ノズル5が鉛直方向に移動される。
【0039】
各上ノズル5は、対応するアーム回転機構37によって、退避位置と中間位置との間で水平移動される。また、各上ノズル5は、対応するアーム昇降機構38によって、中間位置と処理位置(図1において実線で示す位置)との間で鉛直方向に移動される。退避位置は、スピンチャック3および遮断板4から大きく離れた位置である。また、中間位置は、遮断板4の真上の位置である。また、処理位置は、各上ノズル5が挿入孔29内に配置され、かつ、各上ノズル5の下面5aが遮断板4の下面26と同一平面上に配置される位置である。各上ノズル5が処理位置に配置されるとき、遮断板4は、遮断板回転機構34によって回転されて、ノズル挿入姿勢(図1に示す位置)に姿勢変更される。ノズル挿入姿勢は、2つの挿入孔29がそれぞれ2つの上ノズル5の中間位置の真下にくる位置である。各上ノズル5は、遮断板4がノズル挿入姿勢にある状態で降下される。これにより、各上ノズル5が対応する挿入孔29に入り込んで、各上ノズル5が処理位置に配置される。
【0040】
各上ノズル5が処理位置にある状態で吐出口から処理液を吐出させながら、スピンチャック3によってウエハWを回転させると、ウエハWの表面周縁部101の全周に処理液が供給される。また、このときウエハWに供給された処理液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。これにより、ウエハWの表面周縁部101が処理される。
【0041】
図6および図7は、それぞれ、当接ピン9およびこれに関連する構成の側面図である。図6は、当接ピン9が支持位置にある状態を示しており、図7は、当接ピン9が退避位置にある状態を示している。
図2、図6および図7を参照しながら説明する。基板処理装置1は、ウエハWを所定位置に位置決めするように構成された位置決め機構40をさらに備えている。位置決め機構40は、スピンベース8上に配置された2つの固定ピン41および2つのストッパ42と、押圧ブロック43と、ブロック移動機構44とを含む(図2参照)。2つの固定ピン41および2つのストッパ42は、それぞれ、スピンベース8の上面の周縁部において隣接する当接ピン9の間に配置されている。一方の固定ピン41は、一方のストッパ42に対して、回転軸線まわりの位相が概ね180度異なる位置に配置されている。同様に、他方の固定ピン41は、他方のストッパ42に対して、回転軸線まわりの位相が概ね180度異なる位置に配置されている。
【0042】
各固定ピン41は、当該固定ピン41の上端部に設けられた第2支持部45を有している。各ストッパ42は、当該ストッパ42の上端部に設けられた第3支持部46と、ウエハWの周端面102に当接されるストッパ面47とを有している。各第2支持部45および各第3支持部46は、同じ高さでウエハWの下面の周縁部に点接触するように構成されている。2つの第2支持部45および2つの第3支持部46は、ウエハWの下面周縁部に当接することにより協働してウエハWを支持するように構成されている。また、各ストッパ面47は、2つの固定ピン41および2つのストッパ42に支持されたウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置されているときに、当該ウエハWの周端面102に当接する位置に設けられている。したがって、2つの固定ピン41および2つのストッパ42に支持されたウエハWの周端面102が2つのストッパ面47に当接されることにより、当該ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置される。
【0043】
各第2支持部45の上端位置は、支持位置に配置された各第1支持部12の上端位置より低い(図6参照)。また、各第2支持部45の上端位置は、退避位置に配置された各第1支持部12の上端位置より高い(図7参照)。図示はしないが、各第3支持部46の上端位置も、各第2支持部45と同様に、支持位置に配置された各第1支持部12の上端位置より低く、かつ退避位置に配置された各第1支持部12の上端位置より高い。したがって、複数の当接ピン9が同期して昇降されることにより、複数の当接ピン9と2つの固定ピン41および2つのストッパ42との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0044】
また、押圧ブロック43は、たとえば、円柱状に形成されている。押圧ブロック43は、スピンベース8よりも高い位置で鉛直に配置されている。押圧ブロック43は、ブロック移動機構44によって、当接位置(図2において二点鎖線で示す位置)と非当接位置(図2において実線で示す位置)との間で水平移動される。当接位置は、2つの固定ピン41および2つのストッパ42に支持されたウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置されているときに、押圧ブロック43の外周面がウエハWの周端面102に当接する位置である。また、非当接位置は、当接位置よりもスピンチャック3の回転中心L1から離れた位置である。2つの固定ピン41および2つのストッパ42に支持されたウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1に対してずれている状態で、押圧ブロック43が非当接位置から当接位置に移動されると、ウエハWが押圧ブロック43によって2つのストッパ面47の方へ水平に押される。
【0045】
搬送ロボット(図示せず)からスピンチャック3にウエハWが渡されるとき、たとえば、全ての当接ピン9が予め退避位置に配置される。そして、この状態で、スピンチャック3にウエハWが渡される。すなわち、2つの固定ピン41および2つのストッパ42にウエハWが載置される。ウエハWが載置された後は、押圧ブロック43がブロック移動機構44によって当接位置に向けて水平移動させられる。このとき、ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1に対してずれていれば、押圧ブロック43がウエハWの周端面102に当接して、ウエハWが水平に押される。そして、ウエハWの周端面102が2つのストッパ面47に当接するまでウエハWが水平に移動される。これにより、ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置される。そして、押圧ブロック43が非当接位置まで戻された後、複数の当接ピン9が支持位置まで上昇される。2つの固定ピン41および2つのストッパ42に支持されたウエハWは、複数の当接ピン9が支持位置まで上昇される過程で、当該複数の当接ピン9に支持される。これにより、ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置された状態で、当該ウエハWが複数の当接ピン9により支持される。
【0046】
図8は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置66を備えている。制御装置66は、チャック回転機構10、ピン昇降機構14、遮断板昇降機構33、遮断板回転機構34、アーム回転機構37、アーム昇降機構38、ブロック移動機構44などの動作を制御する。また、基板処理装置1に備えられた各バルブ21,22,32,58,59の開閉は、制御装置66によって制御される。
【0047】
図9は、基板処理装置1によるウエハWの処理の一例を説明するための工程図である。図10は、エッチング処理またはリンス処理の様子を示す図である。
薄膜の除去に際しては、遮断板4などの処理室内の構成がそれぞれの退避位置に配置された状態で、搬送ロボット(図示せず)によって、薄膜形成後のウエハWが処理室に搬入されてくる。このウエハWの表面および端面には薄膜が形成されている。ウエハWは、処理室に搬入され(ステップS1)、その表面を上方に向けて2つの固定ピン41および2つのストッパ42の上に載置される(ステップS2)。そして、制御装置66はブロック移動機構44を制御して、押圧ブロック43を当接位置に向けて水平移動させる。このとき、ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1に対してずれていれば、押圧ブロック43が当接位置に移動する過程でウエハWが水平に押されて、ウエハWの周端面102が2つのストッパ面47に当接される。これにより、ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置される。
【0048】
次いで、制御装置66はブロック移動機構44を制御して、押圧ブロック43を非当接位置に向けて水平移動させる。これにより、押圧ブロック43が当接位置から退避される。その後、制御装置66は、ピン昇降機構14を制御して、複数の当接ピン9を支持位置まで上昇させる。2つの固定ピン41および2つのストッパ42に支持されたウエハWは、複数の当接ピン9が支持位置まで上昇される過程で、当該複数の当接ピン9に支持される。これにより、ウエハWの中心がスピンチャック3の回転中心L1上に配置された状態で、当該ウエハWが複数の当接ピン9により支持される。
【0049】
次いで、制御装置66が上側気体バルブ32を開くと、遮断板4の下面26に形成された複数の気体吐出口27から下方に向けて窒素ガスが吐出される(ステップS3)。また、制御装置66は遮断板昇降機構33を制御して、遮断板4を退避位置から近接位置まで下降させる(ステップS4)。これにより、複数の気体吐出口27から吐出された窒素ガスがスピンチャック3に保持されたウエハWの上面に吹き付けられ、当該ウエハWが複数の当接ピン9に押し付けられる。
【0050】
この状態で、制御装置66はチャック回転機構10を制御して、スピンベース8を鉛直軸線まわりに回転させる。これにより、複数の当接ピン9に支持されたウエハWが、複数の当接ピン9との間に生じる摩擦力によって複数の当接ピン9と一体回転する(ステップS5)。スピンチャック3は、ウエハWを当接ピン9との間に生じる摩擦力によって支持しているので、エッチング処理およびリンス処理の際にウエハWを高速で回転させることはできない。スピンチャック3により、ウエハWは500〜1000rpmの回転速度で回転される。
【0051】
次いで、制御装置66は遮断板回転機構34を制御して、遮断板4をノズル挿入姿勢になるように回転させる(ステップS6)。そして、制御装置66により2つのアーム回転機構37および2つのアーム昇降機構38が制御されて、各上ノズル5が、退避位置から処理位置に移動される(ステップS7)。これにより、2つの上ノズル5がそれぞれ2つの挿入孔29に挿入される。遮断板4は、この処理例のように近接位置に配置された後にノズル挿入姿勢に配置されてもよいし、近接位置に配置される前にノズル挿入姿勢に配置されてもよい。
【0052】
次いで、ウエハWの表面周縁部101およびウエハWの周端面102にエッチング処理が施される(ステップS8)。この実施形態では、ウエハWの表面周縁部101をエッチングするための上ノズル5からのエッチング液の供給と、主としてウエハWの下面とウエハWの周端面102とをエッチングするための下ノズル6からのエッチング液の供給とが同時に行われる(同時エッチング処理)。
【0053】
具体的には、制御装置66は、上側エッチング液バルブ58を開いて、回転状態のウエハWの表面周縁部101に向けて上ノズル5の吐出口からエッチング液を吐出する(ステップS8)。これにより、ウエハWの表面周縁部101にエッチング液が供給される。なお、上ノズル5からのエッチング液の吐出に先立って、制御装置66による各ノズル回転機構35の制御により、各上ノズル5の回転角が予め定める処理角に設定されている。
【0054】
また、制御装置66は、下側エッチング液バルブ21を開いて、回転状態のウエハWの下面中央部に向けて下ノズル6の処理液吐出口6aからエッチング液を吐出する(ステップS8)。処理液吐出口6aから吐出されたエッチング液によって、ウエハWの下面と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態にされ、ウエハWの下面の対向領域A1(図1および図3参照)の全域にエッチング液が接液される。
【0055】
ウエハWの下面に接液するエッチング液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの下面の非対向領域A2(図1および図3参照)を伝って回転半径外方側へと広がり、ウエハWの周端面102に至る。そして、エッチング液は、この周端面102を回り込んでウエハWの表面周縁部101に至る。これにより、ウエハWの表面周縁部101およびウエハWの周端面102にエッチング処理を施すことができ、各部に形成された薄膜を除去することができる。
【0056】
ウエハWの下面の中央部に供給されたエッチング液は、ウエハWの下面を周縁部に向けて移動する際に、ウエハWの下面における対向領域A1と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態となるため、対向領域A1の全域にエッチング液が供給される。そのため、ウエハWの下面における当該領域A1の表面状態(親水性のばらつきなど)の影響を受けない。したがって、ウエハWの下面に供給されたエッチング液が回転半径方向外方に均等に広がり、ウエハWの周縁部の各部に供給されるエッチング液の流量が均等になる。これにより、ウエハWの周端面102からのエッチング液の回り込み量を、ウエハW周縁部の各部で均一にすることができる。
【0057】
かかる処理では、上ノズル5からのエッチング液が表面周縁部101に供給された後、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの径方向外方側へ促されるのに対し、ウエハWの周端面102から上面(表面)に回り込んだエッチング液は、その表面張力によりウエハWの回転半径方向内方へ移動しようとする。そのため、ウエハWの周端面102からのエッチング液の回り込み量が多いと、ウエハWの周端面102から回り込んだエッチング液と、上ノズル5から吐出されたエッチング液とが激しく衝突し、エッチング液が周囲に飛散して、ウエハWのデバイス形成領域に付着するおそれがある。
【0058】
しかしながら、この実施形態では、図10に示すように、ウエハWの周端から回り込むエッチング液による回り込み幅が非常に小幅(たとえば1.0mm未満)に制御されており、そのため、下ノズル6から供給されたエッチング液と、上ノズル5から供給されたエッチング液との干渉を抑制することができ、これにより、エッチング液の周囲への飛散を防止することができる。したがって、ウエハWの表面のデバイス形成領域に悪影響を与えることなく、ウエハWの表面周縁部101、裏面(A1およびA2)および周端面102に同時にエッチング処理を施すことができる。
【0059】
また、下ノズル6からのエッチング液の供給中は、制御装置66は、ピン昇降機構14を制御して、第1当接ピン群9aおよび第2当接ピン群9bを交互に昇降させる。これにより、ウエハWの支持状態が、第1当接ピン群9aだけに支持された状態と、第2当接ピン群9bだけに支持された状態とに交互に切り替えられる。ウエハWの下面の周縁部に達したエッチング液は、ウエハWの下面周縁部において各当接ピン9が当接される部分にもエッチング液が供給される。
【0060】
そして、エッチング液の吐出開始から所定時間が経過すると、制御装置66は、上側エッチング液バルブ58および下側エッチング液バルブ21を閉じて、エッチング液の吐出が停止される。
次いで、ウエハWの表面周縁部101、ウエハWの周端面102およびウエハWの裏面にリンス処理が施される(ステップS9)。この実施形態では、ウエハWの表面周縁部101をリンスするための上ノズル5からの純水の供給と、主としてウエハWの下面とウエハWの周端面102とをリンスするための下ノズル6からの純水の供給とが同時に行われる(同時リンス処理)。
【0061】
具体的には、制御装置66は、上側純水バルブ59を開いて、回転状態のウエハWの表面周縁部101に向けて上ノズル5の吐出口から純水を吐出する(ステップS9)。これにより、ウエハWの表面周縁部101に純水が供給される。なお、上ノズル5からの純水の吐出に先立って、制御装置66による各ノズル回転機構35の制御により、各上ノズル5の回転角が予め定める処理角に設定されている。
【0062】
また、制御装置66は、下側純水バルブ22を開いて、回転状態のウエハWの下面中央部に向けて下ノズル6の処理液吐出口6aから純水を吐出する(ステップS9)。処理液吐出口6aから吐出された純水によって、ウエハWの下面と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態にされ、ウエハWの下面の対向領域A1の全域に純水が接液される。ウエハWの下面に接液する純水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハW下面の非対向領域A2を伝って回転半径外方側へと広がり、ウエハWの周端面102に至る。そして、純水は、この周端面102を回り込んでウエハWの表面周縁部101に至る。これにより、ウエハWの表面周縁部101、ウエハWの周端面102およびウエハWの裏面に付着したエッチング液を洗い流すことができる。
【0063】
ウエハWの下面中央部に供給された純水は、ウエハWの下面を周縁部に向けて移動する際に、ウエハWの下面の対向領域A1と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態となるため、対向領域A1の全域にエッチング液が供給される。そのため、ウエハWの下面における当該領域A1の表面状態(親水性のばらつきなど)の影響を受けない。したがって、ウエハWの下面に供給された純水が回転半径方向外方に均等に広がり、ウエハWの周縁部の各部に供給される純水の流量が均等になる。これにより、ウエハWの周端面102からの純水の回り込み量を、ウエハW周縁部の各部で均一にすることができる。
【0064】
この処理では、上ノズル5からの純水が表面周縁部101に供給された後、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの径方向外方側へ促されるのに対し、ウエハWの周端面102から上面に回り込んだ純水は、その表面張力によりウエハWの回転半径方向内方へ移動しようとする。そのため、ウエハWの周端面102からの純水の回り込み量が多いと、ウエハWの周端面102から回り込んだ純水と、上ノズル5から吐出された純水とが激しく衝突し、純水が周囲に飛散して、ウエハWのデバイス形成領域に付着するおそれがある。
【0065】
しかしながら、この実施形態では、図10に示すように、ウエハWの周端から回り込む純水による回り込み幅が非常に小幅(たとえば1.0mm未満)に制御されており、そのため、下ノズル6から供給された純水と、上ノズル5から供給された純水との干渉を抑制することができ、これにより、純水の周囲への飛散を防止することができる。したがって、ウエハWの表面のデバイス形成領域に悪影響を与えることなく、ウエハWの表面周縁部101、裏面(A1およびA2)および周端面102に同時にリンス処理を施すことができる。
【0066】
また、下ノズル6からの純水の供給中は、制御装置66は、ピン昇降機構14を制御して、第1当接ピン群9aおよび第2当接ピン群9bを交互に昇降させる。これにより、ウエハWの支持状態が、第1当接ピン群9aだけに支持された状態と、第2当接ピン群9bだけに支持された状態とに交互に切り替えられる。ウエハWの下面周縁部に達した純水は、ウエハWの下面周縁部において各当接ピン9が当接される部分にも純水が供給されて、その部分に付着したエッチング液が洗い流される。
【0067】
そして、純水の吐出開始から所定時間が経過すると、制御装置66は、上側純水バルブ59および下側純水バルブ22を閉じて、純水の吐出が停止される。
その後、制御装置66は、2つのアーム回転機構37および2つのアーム昇降機構38を制御して、各上ノズル5を退避位置に移動する(ステップS10)。これにより、各上ノズル5が挿入孔29から抜け出る。そして、各上ノズル5が退避位置に移動した後、ウエハWを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。
【0068】
具体的には、制御装置66は、複数の気体吐出口27から窒素ガスを吐出させた状態で、チャック回転機構10および遮断板回転機構34を制御して、ウエハWおよび遮断板4を高回転速度(たとえば1000〜1500rpm)で回転させる(ステップS11)。これにより、ウエハWに付着している処理液に大きな遠心力が作用して、処理液がウエハWの周囲に振り切られる。このようにして、ウエハWから処理液が除去され、ウエハWが乾燥する。そして、乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御装置66はチャック回転機構10および遮断板回転機構34を制御して、ウエハWおよび遮断板4の回転を停止する(ステップS12)。また、制御装置66は遮断板昇降機構33を制御して、遮断板4を退避位置まで上昇させる(ステップS13)。さらに、制御装置66は上側気体バルブ32を閉じて、複数の気体吐出口27からの窒素ガスの吐出が停止される(ステップS14)。その後、処理済みのウエハWが搬送ロボットによって処理室から搬出される(ステップS15)。
【0069】
以上により、この実施形態によれば、処理液吐出口6aから吐出された処理液(エッチング液または純水)によって、ウエハWの下面と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態にされ、ウエハWの下面における対向領域A1の全域に処理液が接液される。ウエハWの下面に接液する処理液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハW下面における非対向領域A2を伝って回転半径外方側へと広がり、ウエハWの周端面102から上面に回り込む。
【0070】
ウエハWの下面中央部に供給された処理液(エッチング液または純水)は、ウエハWの下面を周縁部に向けて移動する際に、ウエハWの下面における対向領域A1と下ノズル6の上面52との間の空間53が液密状態となるため、対向領域A1の全域にエッチング液が供給される。そのため、ウエハWの下面における当該領域A1の表面状態の影響を受けない。したがって、ウエハWの下面に供給された処理液が回転半径方向外方に均等に広がり、ウエハWの周縁部の各部に供給される処理液流量が均等になる。これにより、ウエハWの周端からの処理液の回り込み量を、ウエハW周縁部の各部で均一にすることができる。
【0071】
また、下ノズル6からの処理液(エッチング液または純水)の吐出状態では、ウエハWの下面と下ノズル6の上面52との間に処理液の液溜まりが形成される。そのため、ウエハWの下面に供給される処理液の流量に変化があっても、ウエハWの下面に形成された処理液の液溜まりによって、その供給流量の変化が吸収される。したがって、処理液吐出口6aからの処理液の吐出流量に変化があった場合であっても、ウエハWの周縁部における処理液の供給流量の急激な変化を抑制することができ、これにより、ウエハWの周端からの処理液の回り込み量を所期の大きさに維持することができる。
【0072】
また、前述のように、スピンチャック3は、ウエハWを当接ピン9との間に生じる摩擦力によって支持しているので、エッチング処理およびリンス処理の際にウエハWを高速で回転させることはできない。しかしながら、この実施形態では、ウエハWを高速回転させることなく、処理液の回り込み量をウエハW周縁部の各部で均一にすることができるので、かかる押し付け方式のスピンチャック3を用いる場合であっても、ウエハWの表面周縁部101の処理幅を精密に制御することができる。
【0073】
次いで、第1のエッチング試験について説明する。
表面および周端面に銅薄膜が形成されたシリコンウエハWを試料として用い、スピンチャック3に保持されて回転状態にあるこの試料に対し、図4に示す下ノズル6からエッチング液としてのフッ酸を供給して銅薄膜を除去する試験を行った。ウエハWを600rpmの回転速度で回転させるとともに、下ノズル6からウエハWの下面に対し0.5L/minの流量のエッチング液を吐出させ、以下の各試験において、下ノズル6として、円板部51の直径D1(以下、「下ノズル径D1」という。)が異なる2種類のものを使用し、また、エッチング処理時におけるウエハWの裏面と円板部51の上面52との間の間隔G1(以下、「間隔G1」という。)を変化させた。
【0074】
そして、ウエハWの表面周縁部101を周方向に12等分した各点におけるエッチング液の回り込み量を計測し、その周方向分布(前記各点の周方向位置(Position(°))と、ウエハWの周端面102からのエッチング液の回り込み量(mm)との関係)を求めた。
<試験1>
下ノズル径D1を72mmとし、間隔G1を4.5mmとした。
<試験2>
下ノズル径D1を72mmとし、間隔G1を3.5mmとした。
<試験3>
下ノズル径D1を72mmとし、間隔G1を3.0mmとした。
<試験4>
下ノズル径D1を72mmとし、間隔G1を2.5mmとした。
<試験5>
下ノズル径D1を100mmとし、間隔G1を4.5mmとした。
【0075】
図11は、試験1〜4におけるエッチング液の回り込み量の円周方向分布を示すグラフである。図12は、試験1および5によって計測された回り込み量を示している。
試験1では、前記各点における回り込み量の平均値(Ave.)は0.90mmであり、最大の回り込み量と最小の回り込み量との差(Range.)は0.51mmであった。
【0076】
試験2では、前記各点における回り込み量の平均値(Ave.)は0.74mmであり、最大の回り込み量と最小の回り込み量との差(Range.)は0.51mmであった。
試験3では、前記各点における回り込み量の平均値(Ave.)は0.60mmであり、最大の回り込み量と最小の回り込み量との差(Range.)は0.48mmであった。
【0077】
試験4では、前記各点における回り込み量の平均値(Ave.)は0.60mmであり、最大の回り込み量と最小の回り込み量との差(Range.)は0.26mmであった。
試験5では、前記各点における回り込み量の平均値(Ave.)は0.59mmであり、最大の回り込み量と最小の回り込み量との差(Range.)は0.34mmであった。
【0078】
図11に示す結果から、間隔G1が2.5mm〜4.5mmの範囲内にあれば、エッチング液の回り込み量がウエハWの周縁部の各部で均一であるが、とくに間隔G1が3.0mm以下で、回り込み量の均一性が優れ、かつ回り込み量も少ないことが理解される。
次いで、第2のエッチング試験について説明する。
表面および周端面に銅薄膜が形成されたシリコンウエハWを試料として用い、スピンチャック3に保持されて回転状態にあるこの試料に対し、エッチング液としてのフッ酸を供給して銅薄膜を除去する試験を行った。この第2のエッチング試験では、図1に示す遮断板4および上ノズル5を、スピンチャック3に保持されたウエハWの上面に対向させた。ウエハWを600rpmの回転速度で回転させるとともに、上ノズル5および下ノズル6からエッチング液を吐出させた。このとき、上ノズル5からのエッチング液の吐出流量は15〜20cc/minであり、下ノズル6からのエッチング液の吐出流量は0.5L/minであった。
<実施例>
図2に示す下ノズル6を用いて、ウエハWの下面の中央部に向けて処理液を吐出した。下ノズル径D1を72mmとし、間隔G1を2.5mmとした。
<比較例>
ウエハWの下面の回転中心に向けて処理液を吐出する中心軸ノズルを用いて、ウエハWの下面の回転中心に向けて処理液を吐出した。このときのウエハWの裏面と中心軸ノズルの上端との間の間隔を2.5〜4.5mmとした。
【0079】
図13は、実施例におけるウエハWの表面周縁部101を示す光学顕微鏡写真である。図14は、比較例におけるウエハWの表面周縁部101を示す光学顕微鏡写真である。図13および図14に表れている白い帯状部分は、上ノズル5からのエッチング液と下ノズル6からのエッチング液が衝突する処理液の境界部分である。
図14に示す比較例では、エッチング液の回り込み量が多いだけでなく、処理液の境界部分の幅が比較的太いことから、エッチング液同士が激しく衝突していることがわかる。さらに、エッチング液が飛散してデバイス形成領域に付着している。
【0080】
これに対し、図13に示す実施例では、このときのウエハWの周端面102からのエッチング液の回り込み量は小量に保たれており、そのため、ウエハWの表面周縁部101における環状の回り込み幅は、非常に小さい幅である。そして、処理液の境界部分の幅が比較的細いことから、エッチング液同士の干渉がほとんどないことが理解される。また、エッチング液のデバイス形成領域内への付着もない。
【0081】
図15は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置110の下ノズル(第1ノズル)111の斜視図である。この第2実施形態において、図1〜図14に示す実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。基板処理装置110では、第1実施形態に示す下ノズル6に代えて下ノズル111が用いられる。
【0082】
下ノズル111は、下側処理液供給管15(図1参照)の上端に固定された円筒部112と、円筒部112の上端に固定された本体部113とを備えている。本体部113は、回転軸7の中心軸線を中心とするやや厚肉の略円板状をなしている(厚みは、たとえば10〜15mm程度)。なお、本体部113および円筒部112は、PCTFE(ポリクロロトリフルエチレン)などの耐薬液性を有する材料を用いて一体的に形成されている。
【0083】
本体部113の上面の中央部には、回転軸線を中心とする円筒状の凹部114が形成されている。凹部114の深さは、たとえば5〜10mm程度に設定されている。凹部114の底部には、水平平坦面からなる底面(内側対向面)115が形成されている。凹部114の内径は、スピンチャック3に保持されるウエハWの直径より小径(たとえば、ウエハWの直径の1/3程度)に設定されている。本体部113の上面には、凹部114の周囲を取り囲む水平平坦面からなる円環状の上端面(外側対向面)116が形成されている。凹部114の底面115には、円形の処理液吐出口117が形成されている。処理液吐出口117は、回転軸7の中心軸線上に位置している。下ノズル111の高さ位置は、スピンチャック3に保持されたウエハWの下面と、本体部113の上端面116との間に所定の間隔が形成されるように設定されている。
【0084】
処理液吐出口117と下側処理液供給管15とは、本体部113および円筒部112に形成される接続路118によって接続されている。そのため、下側処理液供給管15から接続路118に供給されたエッチング液または純水が、処理液吐出口117から上方に向けて吐出される。
スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、ウエハWを回転させつつ、処理液吐出口117から上方に向けて処理液(エッチング液または純水)が吐出されると、ウエハWの下面と下ノズル111の底面115および上端面116との間の空間が液密状態にされる。そして、ウエハWの下面における底面115および上端面116と対向する領域の全域に処理液が接液される。ウエハWの下面に接液する処理液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハW下面における底面115および上端面116と対向しない領域を伝って回転半径外方側へと広がり、ウエハWの周端面102に至る。
【0085】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態でも実施することができる。
また、前述の各実施形態では、処理液吐出口6a,117が1つ形成されている場合について説明した。しかし、処理液吐出口の数は、2つ以上であってもよい。この場合、図16に示すように、下ノズル6の上面52に、複数(たとえば、5つの)処理液吐出口130が、ウエハWの回転半径方向に沿って配列して形成されていてもよい。また、図17に示すように、下ノズル6の上面52に、多数の処理液吐出口131が、ウエハWの回転中心から放射状に配列して形成されていてもよい。これら図16および図17の場合、複数の処理液吐出口130,131のうち少なくとも1つの処理液吐出口130,131がウエハWの回転軸線上に形成されていることが必要である。
【0086】
また、下ノズル111の底面115に、複数の処理液吐出口がウエハWの回転半径方向に沿って配列して形成されていてもよいし、また、複数の処理液吐出口がウエハWの回転中心から放射状に配列して形成されていてもよい。これらの場合においても、複数の処理液吐出口のうち少なくとも1つの処理液吐出口がウエハWの回転軸線上に形成されていることが必要である。
【0087】
また、下ノズル6,111が、PVC(塩化ビニル)などの親水性材料を用いて形成されていてもよい。この場合、処理液吐出口6aおよび処理液吐出口117から吐出された処理液が、下ノズル6の上面52ならびに下ノズル6の底面115および上端面116と、それぞれなじみ易い。そのため、ウエハWの下面と上面52との間の空間53またはウエハWの下面と底面115および上端面116との間の空間を、容易に液密状態とすることができる。
【0088】
また、第2実施形態において、凹部114の底面115に吸引口が形成されていてもよい。この場合、吸引口には吸引装置から延びる吸引路の一端が接続されており、ウエハWの処理時において吸引口の内部が吸引されることにより、凹部114の底面115とウエハWとの間の処理液の一部が吸引口から吸引路に吸引される。そのため、凹部114に溜められる処理液の量を調節することができ、これにより、ウエハWの下面に処理液を良好に供給することができる。
【0089】
また、前述の実施形態では、上ノズル5と下ノズル6とから同時に処理液を吐出する処理を例に挙げて説明したが、上ノズル5から吐出された処理液によるウエハWの表面周縁部101の洗浄と、下ノズル6から吐出された処理液によるウエハWの表面周縁部101の洗浄とは、別の工程(別のユニット)で行われていてもよい。
また、前述の実施形態では、ウエハWの表面周縁部101の処理は、上ノズル5から吐出される処理液によって行われているが、下ノズル6から吐出された処理液をウエハWの表面周縁部101まで回り込ませることによってウエハWの表面周縁部101の処理が行われてもよい。
【0090】
また、前述の実施形態では、遮断板4がウエハWの上面に対向し、上ノズル5が遮断板4の挿入孔29に挿入される構成としているが、遮断板4を備えず、ウエハWの表面周縁部101に向けて処理液を吐出する上ノズル5のみを備える構成であってもよい。
また、下ノズル6,111の処理液吐出口6a,117から吐出される処理液としては、エッチング液や純水のほか、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)などの洗浄用薬液を用いることができる。
【0091】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 基板処理装置
3 スピンチャック(基板保持手段)
4 遮断板(対向部材)
5 上ノズル(第2ノズル)
6 下ノズル(第1ノズル)
6a 処理液吐出口
10 チャック回転機構(回転手段)
29 挿入孔
52 上面(第1対向面、対向面、平坦面)
53 空間
101 表面周縁部(周縁部)
102 周端面(周縁部)
110 基板処理装置
111 下ノズル(第1ノズル)
115 底面(内側対向面)
116 上端面(外側対向面)
117 処理液吐出口
130 処理液吐出口
131 処理液吐出口
A1 対向領域(周縁部よりも内側の領域)
A2 非対向領域(第1対向面と対向しない領域)
G1 間隔
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部に処理液を用いた処理を施す基板処理装置であって、
基板を水平姿勢で保持するための基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を、鉛直軸線まわりに回転させる回転手段と、
前記回転手段により回転される基板の下面における前記周縁部よりも内側の領域に当該基板の下面から間隔を隔てて対向する第1対向面と、前記第1対向面に形成された処理液吐出口とを有し、前記処理液吐出口から吐出された処理液によって、基板の下面と前記第1対向面との間の空間を液密状態にする第1ノズルとを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記第1対向面が、前記基板保持手段によって保持された基板の下面に対向する平坦面を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1対向面が、
前記処理液吐出口が形成された内側対向面と、
前記内側対向面の周囲を取り囲む環状に形成され、前記基板保持手段に保持された基板の下面に対して、前記内側対向面よりも接近した位置で対向する外側対向面とを含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1ノズルにおける前記第1対向面を含む領域が、親水性材料を用いて形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板保持手段に保持された基板の上面の周縁部の一部に向けて処理液を吐出する第2ノズルをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板の下面に間隔を隔てて対向する対向面を有する第1ノズルから処理液を吐出して、基板の周縁部に処理液を用いた処理を施す基板処理方法であって、
基板を鉛直軸線まわりに回転させる回転工程と、
前記回転工程と並行して実行され、処理液を前記対向面に形成された処理液吐出口を通じて、基板の下面と前記対向面との間に供給し、基板の下面と前記対向面との間の空間を液密状態にして、基板の下面に当該処理液を接液させる下面接液工程とを含む、基板処理方法。
【請求項7】
前記回転工程および前記下面接液工程と並行して実行され、第2ノズルから、基板の上面の周縁部の一部に向けて処理液を吐出する上面処理液供給工程をさらに含む、請求項6記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−211094(P2011−211094A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79527(P2010−79527)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】