説明

基板検査方法および基板検査装置

【課題】基板に生じた欠陥や異物などを正確に検出することのできる基板検査方法および基板検査装置を提供する。
【解決手段】マスク1に光源2からの光が照射され、検出器10、13で光学画像が得られる。また、マスク1の周辺における屈折率の変化量が検出器203で検出され、位置情報部17において、測長部16からのデータと、検出器203からの屈折率変化に関するデータとから位置補正データが作成される。この位置補正データを基に、比較部18において、検出器10、13からの光学画像と、参照部19からの参照画像とが比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検査方法および基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造における歩留まり低下の原因の1つに、フォトリソグラフィ工程で用いられるフォトマスクに生じた欠陥や異物がある。また、半導体ウェハ上に異物が存在しても配線の短絡などになるため、歩留まり低下の原因となる。そこで、こうした欠陥や異物を検出する装置の開発が従来より盛んに行われている。
【0003】
特許文献1には、チップ内の非繰り返しパターンに生じた欠陥からの散乱光を受光して欠陥の位置座標を求める欠陥検査装置および欠陥検査方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−248086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、気圧および温度の変化によって光学系に変化が生じることに鑑み、気圧と温度の変化量を測定し、その値から被検査基板高さの補正量を求めて検査時に補正することを特徴としている。
【0006】
しかしながら、光学系に変化を与える因子は、気圧と温度に限られるものではない。例えば、湿度などに変化が生じても光学系にずれが生じる。このため、特許文献1に記載の欠陥検査装置および欠陥検査方法では、気圧や温度以外の他の因子に変化が生じたときに対応できないという問題があった。
【0007】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、光学系に影響を及ぼす変化を検出し、変化に応じた補正を行うことによって、基板に生じた欠陥や異物などを正確に検出することのできる基板検査方法および基板検査装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、基板に光を照射して得られた前記基板の光学画像と、前記基板の設計データから作成した参照画像とを比較することにより、前記基板の検査を行う基板検査方法において、
前記基板の周辺における屈折率の変化量に応じて、前記基板に結像した光の結像位置を補正することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第1の態様においては、前記結像位置の補正データに基づいて前記光学画像と前記参照画像とを比較することができる。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記基板は、移動手段により前記光の照射方向に対し相対的に移動可能とすることができ、前記結像位置の補正データを前記移動手段にフィードバックすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、基板に光を照射して光学画像を得る手段と、
前記基板の設計データから参照画像を作成する手段と、
前記基板の周辺における屈折率の変化量を求める手段と、
前記屈折率の変化量を基に前記基板に結像した光の結像位置を補正して位置補正データを作成する手段と、
前記位置補正データに基づいて、前記光学画像と前記参照画像とを比較する手段とを有することを特徴とする基板検査装置に関する。
【0013】
本発明の第3の態様は、ステージ上に載置された基板に光を照射して光学画像を得る手段と、
前記ステージの移動を制御する手段と、
前記基板の設計データから参照画像を作成する手段と、
前記光学画像と前記参照画像とを比較する手段と、
前記基板の周辺における屈折率の変化量を求める手段とを有し、
前記屈折率の変化量を基に前記基板に結像した光の結像位置を補正して前記ステージの移動を制御する手段にフィードバックすることを特徴とする基板検査装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、基板の周辺における屈折率の変化量に応じて、基板に結像した光の結像位置を補正するので、基板に生じた欠陥や異物などを正確に検出することができる。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、基板に生じた欠陥や異物などを正確に検出することのできる基板検査装置が提供される。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、基板に生じた欠陥や異物などを正確に検出することのできる基板検査装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本実施の形態における基板検査装置のシステム構成図である。尚、本実施の形態においては、検査対象物である基板としてマスクを挙げるが、ウェハを検査対象物とすることも可能である。
【0018】
本実施の形態の基板検査装置は、マスクに光を照射して光学画像を得る手段(光学画像取得手段)と、マスクの設計データから参照画像を作成する手段(参照画像作成手段)と、マスクの周辺における屈折率の変化量を求める手段(屈折率変化測定手段)と、屈折率の変化量を基にマスクに結像した光の結像位置を補正して位置補正データを作成する手段(位置補正データ作成手段)と、位置補正データに基づいて、光学画像と参照画像とを比較する手段(画像比較手段)とを有する。以下では、基板検査装置を構成する各手段とその特徴について説明する。
【0019】
<光学画像取得手段>
図1に示すように、基板検査装置は、マスク1にレーザ光を照射する光源2と、光源2から出射されたレーザ光を透過照明光としてマスク1に照射する透過照明光学系Aと、光源2から出射されたレーザ光を反射照明光としてマスク1に照射する反射照明光学系Bとを有する。欠陥の種類、位置または大きさなどによっては、透過照明での検出に適する場合と、反射照明での検出に適する場合とがある。2つの光学系を備えることで、透過照明と反射照明による各像を検出できるので、検査精度の向上が図れる。
【0020】
図1において、光源2から出射されてビームスプリッタ3を透過した光は、ミラー4で反射された後、対物レンズ5によってマスク1に照射される。その後、マスク1を透過した光は、対物レンズ6、ビームスプリッタ7およびビームスプリッタ8を透過した後、レンズ9によって検出器10に結像される。一方、光源2から出射されてビームスプリッタ3で反射された光は、ミラー11とビームスプリッタ7で反射された後にマスク1に照射される。その後、マスク1で反射された光は、対物レンズ6とビームスプリッタ7を透過し、ビームスプリッタ8で反射された後、レンズ12によって検出器13に結像されて光学画像となる。検出器10および検出器13には、例えば、CCDセンサ、CMOSセンサまたはTDIセンサなどを用いることができる。
【0021】
マスク1は、ステージ14の上に載置される。ステージ14は、ステージ位置制御部15からの指令によって、水平方向(X方向、Y方向)と回転方向(θ方向)に移動する。尚、図1では、紙面に垂直な方向をX方向とし、紙面に平行な方向をY方向としている。ステージ位置制御部15を通じてステージ14を動かし、対物レンズ6の光軸に直交する面内でマスク1を移動させることにより、レーザ光を相対的に走査することができる。ステージ14の位置は測長部16で測定され、得られたデータは位置情報部17に送られる。
【0022】
本実施の形態では、一例として、マスク1の被検査領域に、図2(a)に示すように、Y方向に向かって複数のライン101があると仮定する。ステージ位置制御部15によってステージ14をX方向に移動させると、各ライン101が連続的に走査される。これにより取得された各ライン101の光学画像は、検出器10、13で光電変換された後、ステージ位置制御部15に送られる。ステージ位置制御部15は、検出器10、13から光学画像を取得すると、これと同期してステージ14を移動させる。また、検出器10、13からの光学画像は、ステージ位置制御部15からさらに比較部18に送られる。
【0023】
<参照画像作成手段>
図1において、展開部20では、マスク1の設計データを磁気ディスク21から制御部22を通じて読み出し、イメージデータに変換する作業が行われる。そして、参照部19では、このイメージデータを用いて参照画像が作成される。ここで、参照画像は、マスクの設計データから光学画像に類似するように作成される画像である。参照部19は、展開部20からのイメージデータを受け取り、図形の角を丸めるなどの光学画像に似せる処理を行って参照画像を作成する。
【0024】
<屈折率変化測定手段>
上述したように、基板検査装置が置かれている環境(温度、圧力または湿度など)には変化が生じ得る。例えば、各種ドライバが発熱すると、基板検査装置周辺の温度が上昇する。また、低気圧や高気圧が通過すると、クリーンルーム内の圧力が変動する。さらに、クリーンルーム内にチャンバを設け、この中に基板検査装置を設置した場合であっても、チャンバ内の温度調整を行うためのダウンフローによって圧力変化が生じることがある。こうした変化は、基板検査装置の光学系に変化をもたらす。具体的には、マスクに結像した光の結像位置が変動し、図2(b)に示すように、ライン101の形状に歪みが生じる。すると、本来の欠陥と上記原因により生じた形状の歪みとを区別できなくなり、検査精度の低下を招くことになる。
【0025】
特許文献1では、環境を変化させる因子として温度および圧力を挙げ、これらを直接測定し、その変化量に応じた補正を行っている。しかしながら、マスク周辺の環境を変化させる因子は、温度および圧力に限られるものではない。したがって、温度と圧力だけを測定対象としていたのでは、環境の変化を正確に把握することはできない。そこで、本発明者は、マスク周辺の環境に変化が生じた場合、直ちにこれを検知して検査精度の低下を防ぐ方法が必要であると考え、本発明に至った。
【0026】
本実施の形態では、マスク周辺の環境の変化を屈折率の変化量を測定することによって検知し、変化量に応じた補正パラメータをステージ14の位置情報に反映させることを特徴としている。屈折率は、温度や圧力の変化だけでなく、湿度などの変化の影響も受けるので、屈折率の変動を調べることにより、環境の変化を正確に把握することが可能となる。
【0027】
屈折率の変化量の測定は、シャドウグラフ法によって行うことができる。具体的には、図1の屈折率変化測定系Cに示すように、光源201から出射されたレーザ光をレンズ202によって集光し、レーザ光がマスク1の周辺部を通過するようにする。このレーザ光を検出器203に結像して光電変換し、得られた屈折率の変化量に関するデータを位置情報部17に送る。マスク1の周辺部の温度、圧力または湿度などに変化がないと、検出器203は一様な明るさの光を受光する。一方、温度、圧力または湿度などが変化すると、マスク1の周辺部に屈折率の勾配が生じる。このとき、検出器203で受光される光の明るさBの変化量ΔBは、ΔB∝{(∂/∂x+∂/∂z)μ}で表される。ここで、μは屈折率であり、(x、z)は検出器203の受光面と平行な座標である。
【0028】
尚、本実施の形態による屈折率の変化量の測定は、シャドウグラフ法に限られるものではなく、シュリーレン法などの他の方法を用いることも可能である。また、測定は、マスク1の周辺部で行えばよく、図1の例に限られるものではない。すなわち、図1では、ステージ14に対してマスク1のある側に屈折率変化測定系Cを設けたが、ステージ14に対してマスク1のない側に屈折率変化測定系Cを設けてもよい。
【0029】
屈折率変化量の測定は、光源2から出射されたマスク検査のためのレーザ光が走査される付近で行うことが好ましい。この場合、光源2から出射されたレーザ光と、光源201から出射されたレーザ光とは、通常は、波長が異なり、また、互いに直交する関係にあることから、交差しても差し支えない。また、測定を複数の箇所(例えば、10箇所)で行い、これらの平均値を屈折率の変化量としてもよい。
【0030】
<位置補正データ作成手段>
図1の例では、位置情報部17において、測長部16からのデータと、検出器203からの屈折率変化に関するデータとから位置補正データが作成される。具体的には、マスク1の周辺における屈折率の変化量に応じて、マスク1に結像した光の結像位置が補正される。この際、結像位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方に補正することができる。例えば、屈折率の変化量とステージの位置座標との関係を予め把握しておき、測定した屈折率の変化量に応じて位置座標を補正することができる。また、屈折率の変化量とマスクの高さとの関係を把握しておき、屈折率の変化量に応じてマスクの高さを補正してもよい。尚、補正は、把握した関係から求めた補正パラメータを用いて行ってもよく、あるいは、把握した関係を基に作成したマップを用いて行ってもよい。また、補正は、屈折率に変化が生じるのに呼応して行うことができるが、初期値に対して所定量の変化をしたときに行うようにしてもよい。
【0031】
<画像比較手段>
得られた参照画像と位置補正データは、比較部18に送られる。そして、比較部18において、検出器10、13からの光学画像と、参照部19からの参照画像とが比較される。この際、位置情報部17から送られた位置補正データによって、図2のライン101の形状歪みが補正されるので、歪みが欠陥と誤認される事態は排除される。比較は、適当なアルゴリズムにしたがって行われ、光学画像と参照画像の一致しない所が欠陥または異物と判断される。尚、比較アルゴリズムには、データを直接比較する方法や、パターンデータの微分値を求めて比較する方法などがある。
【0032】
上記操作によって得られた検査情報は、制御部22に送られた後、CRTなどで構成された表示部23に表示される。尚、検査情報は、必要に応じて、制御部22で磁気ディスク21に記録されるようにしておくことが好ましい。
【0033】
以上述べたように、本発明によれば、マスク周辺の環境の変化を屈折率を測定することによって検知し、変化量に応じてステージの位置情報を補正するので、ライン形状の歪みを是正して検査精度の低下を抑制することが可能となる。
【0034】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施の形態では、屈折率の変化量を基にマスクに結像した光の結像位置を補正して位置補正データを作成し、この位置補正データに基づいて、光学画像と参照画像とが比較される。すなわち、図1に示すように、位置情報部17において、測長部16からのデータと、検出器203からの屈折率変化に関するデータとから位置補正データが作成され、比較部18において、位置補正データを基に、検出器10、13からの光学画像と、参照部19からの参照画像とが比較される。これに対して、屈折率の変化量を基にマスクに結像した光の結像位置を補正し、その結果をステージ位置制御部にフィードバックするようにしてもよい。すなわち、図1において、位置情報部17で作成された位置補正データを、比較部18ではなくステージ位置制御部15に送り、このデータにしたがってステージ14を移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態における基板検査装置のシステム構成図である。
【図2】(a)および(b)は、マスクの被検査領域の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 マスク
2、201 光源
3、7、8 ビームスプリッタ
4、11 ミラー
5、6、9、12、202 レンズ
10、13、203 検出器
14 ステージ






【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射して得られた前記基板の光学画像と、前記基板の設計データから作成した参照画像とを比較することにより、前記基板の検査を行う基板検査方法において、
前記基板の周辺における屈折率の変化量に応じて、前記基板に結像した光の結像位置を補正することを特徴とする基板検査方法。
【請求項2】
前記結像位置の補正データに基づいて前記光学画像と前記参照画像とを比較することを特徴とする請求項1に記載の基板検査方法。
【請求項3】
前記基板は、移動手段により前記光の照射方向に対し相対的に移動可能であって、
前記結像位置の補正データを前記移動手段にフィードバックすることを特徴とする請求項1に記載の基板検査方法。
【請求項4】
基板に光を照射して光学画像を得る手段と、
前記基板の設計データから参照画像を作成する手段と、
前記基板の周辺における屈折率の変化量を求める手段と、
前記屈折率の変化量を基に前記基板に結像した光の結像位置を補正して位置補正データを作成する手段と、
前記位置補正データに基づいて、前記光学画像と前記参照画像とを比較する手段とを有することを特徴とする基板検査装置。
【請求項5】
ステージ上に載置された基板に光を照射して光学画像を得る手段と、
前記ステージの移動を制御する手段と、
前記基板の設計データから参照画像を作成する手段と、
前記光学画像と前記参照画像とを比較する手段と、
前記基板の周辺における屈折率の変化量を求める手段とを有し、
前記屈折率の変化量を基に前記基板に結像した光の結像位置を補正して前記ステージの移動を制御する手段にフィードバックすることを特徴とする基板検査装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−222525(P2009−222525A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66640(P2008−66640)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】