説明

封止装置

【課題】装置の歩留り性を向上させると同時に、封止前の部品(被成形品)に樹脂バリ等の異物が付着することを防止して、封止精度を向上させる。
【解決手段】対向して開閉する第1、第2の金型21、22を用いて、被成形品90を樹脂2で封止する樹脂封止装置1において、前記被成形品90を第1の金型21へと供給し、樹脂封止された成形品を第2の金型22から取り出す構成とすることによって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向して開閉する金型を備える樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型を用いた電子部品等の樹脂封止が広く行なわれている。ここでは封止単位毎に金型を開閉させ、その都度、封止前の被成形品や封止後の成形品を専用の装置によって金型へ取付け及び取り外ししている。
【0003】
より具体的に説明すると、封止されて金型が開いた際に、成形品取出機構が封止済みの成形品を金型から取り出す。その後、成形品が取り出されたのと同じ金型側(上金型又は下金型)に対して、被成形品供給機構により封止前の被成形品が供給され、次の封止作業が開始される。
【0004】
特許文献1に記載されるように、従来のトランスファ装置では、上下に開閉する金型の下金型面に電子部品を搭載した基板又はリードフレーム(以下単に被成形品という場合がある。)を載置し、樹脂封止後、成形品を下金型に残して金型が開き、これを取り出す構造であった。連続動作では、金型が開いた後、下金型上の樹脂封止された成形品を取り出し、これを搬出後、被成形品を搬入する経路の途中で樹脂を保持して同時に搬送し、下金型にセットする。このように被成形品を取り扱う空間と、成形品を取り扱う空間を時間的に分離している。しかし、被成形品、樹脂、成形品の搬送経路は、空間的に共有する部分がある。
【0005】
又、特許文献2に記載されるように、従来の圧縮成形装置では、上下に開閉する金型の上金型面に電子部品を搭載した基板又はリードフレームを取り付け、樹脂封止後、製品を上金型に残して金型が開き、これを取り出す構造であった。これも被成形品と成形品の取り扱う場所を時間的に分離していたが、搬送経路は空間的に共有する部分があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−7129
【特許文献2】特開2003−133352
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被成形品を供給する金型と、成形品を取り出す金型が同一である場合には、封止済みの成形品を取出機構により取り出した後に次の被成形品を供給しなければならず、成形品のサイクルタイム短縮化への阻害要因ともなり得るものであった。
【0008】
又、同一の金型に対して、供給、取り出しを行なう場合には、必ずその供給経路及び取出経路、更には樹脂の搬入経路の一部が重複することとなってしまう。これは、封止後の成形品には多少なりとも樹脂バリや樹脂カス(主として、樹脂封止時に金型のクランプ面に染み出したもの)等が発生し、その樹脂カス等が取出機構による取出過程において飛散する可能性を考えれば、その後に供給される被成形品に付着し、封止異常を発生させる可能性を高める結果となってしまう。即ち、樹脂封止工程では数トンから数十トンの荷重が被成形品に掛かるため、樹脂カス等が被成形品に強固に付着したり、被成形品の一部を変形させるなどの悪影響を及ぼす。
【0009】
特に、被成形品の片面に樹脂封止をする製品の場合には、金型に接する面に電極を有するものが多く、この電極への樹脂カス等の付着は、その後に半田ボール等の外部端子を接合する際の接合不良の可能性を高めることにもなってしまう。
【0010】
又、成形材料となる樹脂は最大の発塵源でもあり、この樹脂を被成形品と同一又は多くの部分が重複する搬送経路で搬送することは樹脂カス等と同様の問題を引き起こす可能性が高い。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対向して開閉する第1、第2の金型を用いて、被成形品を樹脂で封止する樹脂封止装置において、前記被成形品を前記第1の金型へと供給し、樹脂封止された成形品を前記第2の金型から取り出す構成とすることにより、上記課題を解決するものである。
【0013】
これにより、成形品の取り出しと、被成形品の供給とを同時に行なうことが可能となる。又、被成形品及び成形品をそれぞれ独立した搬送空間を確保しつつ搬送することにより、浮遊する樹脂カス等の付着を回避できる。
【0014】
又、更に、前記第1、第2の金型が開いている時に前記第1、第2の金型間に進入可能な進入部材を備える構成としてもよい。
【0015】
これにより、被成形品の搬送経路と成形品の搬送経路との独立性をより明確にすることができる。
【0016】
又、前記進入部材には、前記被成形品を前記第1の金型へと供給可能な被成形品供給機構を備える構成としてもよい。
【0017】
これにより、進入部材が被成形品供給機構を兼ねることで、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0018】
又、前記進入部材には、前記成形品を前記第2の金型から取り出し可能な成形品取出機構を備える構成としてもよい。
【0019】
これにより、進入部材が成形品取出機構を兼ねることで、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0020】
又、前記進入部材には、前記被成形品を前記第1の金型へと供給可能な被成形品供給機構と、前記成形品を前記第2の金型から取り出し可能な成形品取出機構とを両方備える構成としてもよい。
【0021】
これにより、進入部材が被成形品供給機構及び成形品取出機構を両方兼ねることとなり、更なる装置全体のコンパクト化が期待できる。
【0022】
又、更に、前記被成形品を在庫しておく被成形品ストック部と、前記成形品を保管しておく成形品収納部と、前記被成形品ストック部から前記第1の金型へと前記被成形品が搬送される領域を第1の領域とし、前記第2金型から前記成形品収納部へと前記成形品が搬送される領域を第2の領域とした場合に、前記第1の領域から前記第2の領域へと空気を流動させる装置を備えた構成としてもよい。
【0023】
これにより、第1の領域から第2の領域へと一方向の空気の流れを作り、成形品が搬送される第2の領域から第1の領域への樹脂カス等の流入を積極的に防ぐと同時に、第2の領域からの樹脂カス等の排出を即すことが可能となる。
【0024】
又、更に、樹脂供給部を備え、該樹脂供給部は、前記第1、第2の金型を挟んで、前記第1の領域と対向する位置に配設してもよい。
【0025】
これにより、被成形品を扱う領域(第1の領域)と、最大の発塵源となり得る樹脂を扱う領域とを最大限に隔離した配置とし、被成形品へ封止に使用される前の樹脂が付着するのを防止することができる。又、このような配置によって金型内への搬送機構(被成形品の供給機構、成形品の取出機構、樹脂の供給機構)に用いられるガイドを共用でき、装置のコストを低減することができる。
【0026】
又、前記樹脂供給部内の圧力は、前記被成形品供給機構の周囲及び前記第1の領域の圧力よりも低く設定してもよい。
【0027】
これにより、樹脂供給部から被成形品供給機構の周囲及び第1の領域へと樹脂の粉塵が飛散するのを確実に防止することができる。
【0028】
又、前記第1、第2の金型はトランスファ成形金型で構成してもよい。
【0029】
これにより、被成形品の樹脂封止面側の金型に成形品を残してから取出すため、次の封止に用いられる被成形品に樹脂カス等が付着することを抑制できる。
【0030】
又、前記第2の金型は前記成形品に対応する底型と、該底型に摺動自在に嵌合する枠状金型とを備える圧縮成形金型で構成してもよい。
【0031】
これにより、ポットやランナ等を持たない圧縮成形に適用することで、樹脂カスの発生を抑えると共に、次の封止に用いられる被成形品に樹脂カス等が付着することを抑制できる。
【0032】
又、前記第2の金型の樹脂成形面側には離型性を向上させるためのリリースフィルムが供給され、且つ、封止後に前記第1の金型から前記成形品を離型させる時点で、前記枠状金型が前記底型に比べて前記第1の金型方向に突出するように構成してもよい。
【0033】
これにより、更に樹脂カス等の飛散を抑制できると共に、成形品を取出す際に成形品にかかる離型の負荷を小さくすることができる。
【0034】
又、前記侵入部材を、上下可動とし、前記金型を開閉する機構により、前記第1の金型への被成形品供給機構及び前記第2の金型からの成形品取出機構を、それぞれ、対向する金型面に当接退避させるように構成してもよい。
【0035】
これにより被成形品供給機構及び成形品取出機構が、それぞれ、対向する金型面に当接退避可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、装置全体の歩留り性向上が期待できる。又、封止異常を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置1の全体正面図であり、図2は平面図である。共に説明のため、透視図としている。
【0039】
樹脂封止装置1は、圧縮金型を用いて樹脂封止する、いわゆる圧縮型の樹脂封止装置である。
【0040】
樹脂封止装置1は、ケーシング82と、樹脂供給部70と、封止部84と、搬送部86とで構成される。なお、符号88は足部である。
【0041】
封止部84には上下に開閉するプレス10が備わっている。このプレス10の固定プラテン11には上金型(第1の金型)21が配置され、可動プラテン12側には下金型(第2の金型)22が配置されている。この上金型21と下金型22は、樹脂封止する被成形品の種類に応じて適宜取り換えることが可能である。又、固定プラテン11と可動プラテン12とは上下が逆として構成してもよい。
【0042】
下金型22の表面(クランプ面C)上にはリリースフィルム3が常に供給されており、フィルム供給機構30によってリリースフィルム3の供給・巻取りが可能となっている。
【0043】
搬送部86には、封止前の被成形品を封止面を下側に向けて複数在庫しておくことが可能な被成形品ストック用マガジン51aと、樹脂封止後の成形品を複数収納可能な成形品収納用マガジン51bとが上下に重なり配置されている。これらの両マガジン51a、51bは、マガジン昇降機50によって、必要に応じて昇降(上下動)可能な構成とされている。
【0044】
又、両マガジン51a、51bと、前述した封止部84との間には、封止部84へ被成形品を供給したり、封止部84から封止後の成形品を取り出すことが可能な被成形品供給機構と成形品取出機構とが一体化された供給取出機構40が配置されている。本実施形態においては、進入部材でもあるこの供給取出機構40は、プレス10の開閉方向と略直角方向に移動可能である。又、この供給取出機構40の移動方向の延長線上に前述した両マガジン51a、51bが位置している。又、供給機構と取出機構とが一体となって構成されており、装置全体のコンパクト化にも寄与している。勿論、それぞれ別体として構成されていてもよい。この供給取出機構40は、プレス10が稼動して上金型21と下金型22が開いた際に、両金型21、22の間に進入可能に構成されている。又、この実施形態では、進入することにより両金型21、22の間を遮蔽し、被成形品の搬送経路と成形品の搬送経路の独立性をより明確化する遮蔽部材としての機能を兼ねている。なお、ここでいう「遮蔽」とは、樹脂封止後の樹脂バリや樹脂カス等が直接相手金型方向へ到達できない程度に空間を遮ることを意味している。
【0045】
又、この供給取出機構40には、両金型21、22間に進入した状態で、上金型21側に被成形品ストック用マガジン51aから取り出した被成形品を位置決めし載置可能な載置部41(被成形品供給機構)が存在する。一方、下金型22側には、封止後の成形品を吸着保持可能な取出部42(成形品取出機構)が存在している。又、載置部41と取出部42は、図示しない一対の上下可動な移動機構に支持されており、金型21と22の間では、プレス10の動作により金型に当接退避する。なお、符号63は、レール状ガイドであり、このレール状ガイドに添って取出部42により取り出された成形品が成形品収納用マガジン51bへと収納される。なお、説明の便宜上、この供給取出機構40により、被成形品ストック用マガジン51aから載置部41を経て第1の金型である上金型21まで被成形品が搬送される領域を第1の領域E1とし、一方、第2の金型である下金型22から取出部42、レールガイド63を経由して成形品収納用マガジン51bまで成形品が搬送される領域を第2の領域E2とする。又、符号60は基板移動機構であり、被成形品ストック用マガジン51aに納まる被成形品を取り出し可能な基板チャック61と、供給取出機構40により封止部84から取り出された成形品をレール状ガイド63に添って成形品収納マガジン51bへと押し込み可能な押込部62とを備えている。
【0046】
なお、図示していないが、図1における搬送部86の下部に吸引機構を設けたり、搬送部86の上部に送風機構を設ける等により、第1の領域E1側から第2の領域E2側へと一方向へ空気を流動可能とされている。
【0047】
樹脂供給部70は、封止部84を挟んで前述した搬送部86、更には、第1の領域E1と対向して位置している。
【0048】
樹脂供給部70には、平板状に成形された樹脂(半硬化樹脂)2をストックしておく樹脂ストッカ71と、この樹脂ストッカ71を昇降可能な樹脂ストッカ昇降機72と、樹脂2を計量可能な計量部73と、計量後の樹脂2がセットされる樹脂セット部74が備わっており、樹脂搬送機構75により樹脂2を樹脂ストッカ71から樹脂セット部74まで搬送可能とされている。又、樹脂セット部74にセットされた樹脂2を封止部84へ投入可能として構成された樹脂投入部45を備えている。更に、樹脂封止装置1内において、樹脂供給部70は、仕切り板83によって仕切られた空間とされており、図示せぬ吸引機構により該空間内の空気を吸引可能とされている。
【0049】
なお、符号80は電装部である。
【0050】
又、図3は、樹脂封止装置1の左側面図であり、両マガジン51a、51b及びマガジン昇降機50のみを図示したものである。図4は、樹脂封止装置1の右側面図であり、樹脂供給部70を構成する各部を図示したものである。
【0051】
次に、図5を用いて上金型21及び下金型22についてより詳細に説明する。
【0052】
図5は、上金型21と下金型22とを模式的に表わした図である。上金型21のクランプ面Cには、吸着孔21aが設けられており、樹脂封止される前の被成形品90が配置されている。この被成形品90は、吸着孔21a及び図示せぬ吸引機構によって吸引され、上金型21に吸着固定されている。
【0053】
一方、下金型22は、キャビティの底部を構成する底型23と、この底型23の周囲を上下動可能に嵌合し、配置される枠状金型24とからなる。又、枠状金型24のクランプ面Cには図示せぬ吸引機構と繋がる吸着孔24aが設けられている。下金型22のクランプ面C上には、リリースフィルム3が供給されている。このリリースフィルム3は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリビニリデンフルオライド(PBDF)フィルム等が用いられる。
【0054】
続いて、樹脂封止装置1の作用について説明する。
【0055】
まず、搬送部86の作用から説明する。
【0056】
被成形品供給用マガジン51aに予めセットされている被成形品90の端部を基板チャック61が把持し引き出す。引き出された被成形品90は、供給取出機構40の載置部41に置かれるように解放され、その後、基板チャック61は退避する。被成形品90が載置部41に載置された供給取出機構40は、上金型21と下金型22とが開いている所定のタイミングで両金型21、22間に進入する。このとき、既に封止が終った下金型22上の成形品を取出部42に吸着保持し、載置部41の被成形品90を上金型21にセットした後、両金型21、22間から退避する(詳細後述)。このとき、両金型21、22間に進入する供給取出機構40が遮蔽部材として機能し、被成形品90と成形品の搬送経路(搬送空間)を仕切る働きをする。これにより、既に封止済みの成形品から生じる樹脂バリや樹脂カスが封止前の被成形品90に付着する可能性を大きく低減することができる。
【0057】
このような搬送部86の作用と連動して、樹脂供給部70は以下のように作用する。
【0058】
樹脂ストッカ71にストックされている樹脂2が樹脂搬送機構75により吸着保持されて計量部73まで搬送される。樹脂2が取り出された樹脂ストッカ71は、取り出された樹脂の高さ分だけ樹脂ストッカ昇降機72が上昇することで、次の取り出しに備える。
【0059】
計量部73での計量結果が所定の許容範囲内である場合は、再び樹脂搬送機構75により吸着保持され、樹脂セット部74へと搬送される。この樹脂セット部74には最大2組の樹脂2がセット可能であり、1つの樹脂2がセットされる毎に移動する。この樹脂セット部74にセットされた樹脂2は、樹脂投入部45に吸着保持されて上金型21と下金型22とが開いている所定のタイミングで両金型21、22間に進入し、下金型22のキャビティ部分に搬送投入される。なお、樹脂供給部70は、第1、第2の金型を挟んで第1の領域E1と対向する位置に設けられており、これにより、被成形品を扱う領域(第1の領域)と、最大の発塵源となり得る樹脂を扱う領域とを最大限に隔離した配置とし、被成形品へ封止に使用される前の樹脂が付着するのを防止することができる。又、このような配置によって金型内への搬送機構(被成形品の供給機構、成形品の取出機構、樹脂の供給機構)に用いられるガイドを共用でき、装置のコストを低減することができる。更に、樹脂供給部70は図示せぬ吸引機構により内部の空気が吸引されているため、封止部84や搬送部86の第1の領域E1、即ち、被成形品ストック用マガジン51aから載置部41を経て第1の金型である上金型21まで被成形品が搬送される領域と比べて負圧となっている。よって、樹脂供給部70において発生する樹脂の粉塵等が被成形品90が存在するこの第1領域E1側に飛散することはなく、付着を防止し、封止精度の向上が期待できる。
【0060】
又、搬送部86の下部に設けた吸引機構や、搬送部86の上部に設けた送風機構により、第1の領域E1側から第2の領域E2側、即ち、第2の金型である下金型22から取出部42、レールガイド63を経由して成形品収納用マガジン51bまで成形品が搬送される領域へと一方向に空気を流動させ、樹脂カス等が封止前の被成形品に付着することを積極的に防止すると同時に、第2の領域で発生した樹脂カス等を排出するようにしている。
【0061】
次に封止部84の作用について説明する。
【0062】
前述した搬送部86の作用によって、上金型21には被成形品が供給され、吸着孔21aにより吸引固定されている。一方、下金型22側は、封止済みの成形品が搬送部86の作用で取り出され、リリースフィルム3のみが下金型22のクランプ面C上に存在するのみである。成形品が取り出された後は、リリースフィルム3の吸引が一旦解除され、フィルム供給機構30によって新しいフィルムが供給される。その後、再度吸引がなされ、リリースフィルム3が下金型22のクランプ面に吸着される。更に、この状態で前述した樹脂供給部70の働きによって樹脂2が下金型22側へと供給される。
【0063】
ここで説明したように、リリースフィルム3を使用することにより、成形品が離型し易くなると同時に成形品に掛かる離型の負荷も小さくなるため、離型時の衝撃によって樹脂バリ等が飛散することを更に抑制することが可能となっている。
【0064】
下金型22は樹脂2が溶融可能な程度に十分に温められているため、プレス10が動いて上金型21と下金型22とがクランプするに従って、キャビティの形状に応じて流動し、被成形品90が樹脂封止される。封止後に両金型21、22を開く時点では、上金型21に備わる吸着孔21aの吸引は解除されているので、封止済みの成形品は下金型22側に残ることとなる。このとき、下金型22を構成する枠状金型24は、底型23に比べて成形品の厚み分だけ上金型21方向へと突出しているが、前述したリリースフィルム3の存在により離型はスムーズに行われる。その後は同じ動作を繰返すことになる。
【0065】
続いて封止部84における、両金型21、22と供給取出機構40との動きについて、図6を用いて説明する。
【0066】
図6は、上金型21と下金型22とが開いている際に、両金型21、22間に進入した供給取出機構40を模式的に表わした図である。(A)乃至(E)は各状態の図であり、経時的に(A)、(B)・・・(E)と進行する。
【0067】
最初に(A)に示すように、上金型21と下金型22とが開いた際に所定のタイミングで供給取出機構40が進入してくる。このとき載置部41には、これから樹脂封止される被成形品90が位置決めされ載置されている。又、下金型22側には既に封止済みの成形品が存在している。次に(B)に示すように、下金型22がプレス10の働きによって上昇する。これにより、既に封止済みの成形品が取出部42に保持される。プレス10の動きは更に続き、供給取出機構40共々さらに上昇させる(C)。これにより、載置部41に載置された被成形品90が上金型21のクランプ面に接触する。それに伴って上昇は止まり、上金型21に備わる吸着孔21aの働きによって被成形品90が上金型21に吸着される(C)。その後、プレス10が下降するに伴って下金型22も下降し(D)、(E)、成形品を保持した供給取出機構40は金型間から退避する。
【0068】
このように本発明では、被成形品を供給する側の金型と成形品を取り出す側の金型を異ならせた構成としているため、前の段階の成形品の取り出しを待たずに、次の被成形品を供給できるため、装置全体の歩留り性向上が期待できる。又、被成形品と成形品との搬送経路(空間)を分けることで、樹脂カス等が封止前の被成形品に付着する可能性を低減している。特に、本実施形態として説明した圧縮成形の場合には、その構造として溶融した樹脂を一時的に貯めておくポット部や、キャビティへ溶融樹脂を搬送するための通路となるランナ部が存在しないため、これらの部分に生じ得る樹脂バリ等の発生を抑えることが可能となっている。
【0069】
一方、実施形態としては説明していないが、本発明をトランスファ成形に適用することも可能であり、この場合には被成形品の樹脂封止面側の金型に成形品を残してから取り出すため、次の封止に用いられる被成形品に樹脂カス等が付着することを抑制可能である。
【0070】
なお、前述した樹脂封止装置1においては、図面上、プレート状の樹脂として説明しているが、これに限られることはなく、例えば、粉粒状の樹脂や打錠されたペレット状の樹脂、更には液状樹脂を用いることも勿論可能である。又、これらの樹脂を分離計量し、直接金型へ投入する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の実施形態として説明した圧縮型の樹脂封止装置のみならず、例えばトランスファ型の樹脂封止装置等にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置1の正面図
【図2】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置1の平面図
【図3】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置1の左側面図
【図4】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置1の右側面図
【図5】上金型と下金型の模式図
【図6】金型と供給取出機構との関係を模式的に表わした図
【符号の説明】
【0073】
1…樹脂封止装置
2…樹脂
3…リリースフィルム
10…プレス
11…固定プラテン
12…可動プラテン
21…上金型
21a…吸着孔
22…下金型
23…底型
24…枠状金型
24a…吸着孔
30…フィルム供給機構
40…供給取出機構
41…載置部
42…取出部
45…樹脂投入部
50…マガジン昇降機
51a…被成形品ストック用マガジン
51b…成形品収納用マガジン
60…基板移動機構
61…基板チャック
62…基板押込部
63…レール状ガイド
70…樹脂供給部
71…樹脂ストッカ
72…樹脂ストッカ昇降機
73…計量部
74…樹脂セット部
75…樹脂搬送機構
80…電装
82…ケーシング
83…仕切り板
84…封止部
86…搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して開閉する第1、第2の金型を用いて、被成形品を樹脂で封止する樹脂封止装置において、
前記被成形品を前記第1の金型へと供給し、樹脂封止された成形品を前記第2の金型から取り出す構成とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
更に、前記第1、第2の金型が開いている時に前記第1、第2の金型間に進入可能な進入部材を備える
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記進入部材には、前記被成形品を前記第1の金型へと供給可能な被成形品供給機構が備わっている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記進入部材には、前記成形品を前記第2の金型から取り出し可能な成形品取出機構が備わっている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記進入部材には、前記被成形品を前記第1の金型へと供給可能な被成形品供給機構と、前記成形品を前記第2の金型から取り出し可能な成形品取出機構とが両方備わっている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
更に、前記被成形品を在庫しておく被成形品ストック部と、
前記成形品を保管しておく成形品収納部と、
前記被成形品ストック部から前記第1の金型へと前記被成形品が搬送される領域を第1の領域とし、前記第2金型から前記成形品収納部へと前記成形品が搬送される領域を第2の領域とした場合に、前記第1の領域から前記第2の領域へと空気を流動させる装置が備わっている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項7】
請求項6において、
更に、樹脂供給部を備え、
該樹脂供給部は、前記第1、第2の金型を挟んで、前記第1の領域と対向する位置に配設されている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記樹脂供給部内の圧力は、前記被成形品供給機構の周囲及び前記第1の領域の圧力よりも低く設定されている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記第1、第2の金型はトランスファ成形金型である
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記第2の金型は前記成形品に対応する底型と、該底型に摺動自在に嵌合する枠状金型とを備える圧縮成形金型である
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2の金型の樹脂成形面側には離型性を向上させるためのリリースフィルムが供給され、且つ、封止後に前記第1の金型から前記成形品を離型させる時点で、前記枠状金型が前記底型に比べて前記第1の金型方向に突出している
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項12】
請求項5において、
前記侵入部材は、上下可動であり、
前記金型を開閉する機構により、前記第1の金型への被成形品供給機構及び前記第2の金型からの成形品取出機構を、それぞれ、対向する金型面に当接退避させる
ことを特徴とする樹脂封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−5496(P2007−5496A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182542(P2005−182542)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】