説明

平面モータ

【課題】誤差の少ない高精度な位置検出が可能な平面モータを実現する。
【解決手段】プラテン上に配置されたスライダをX軸方向及びY軸方向に位置制御する平面モータにおいて、
前記スライダにレーザ光源、レンズおよびイメージセンサを搭載し、前記レーザ光源から出射したレーザ光を前記プラテンで反射させ前記レンズを介して前記イメージセンサで受光するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダをX軸方向及びY軸方向に位置制御する平面モータに関する。
【背景技術】
【0002】
格子プラテンと、その上面をX軸方向及びY軸方向にスライドして位置制御されるスライダを有する平面モータの技術については、図3に示すものが知られている。図3は特許文献1に開示されている従来構造の平面モータの基本構成を示す斜視図である。
【0003】
図3において、10は水平に固定配置された格子プラテンであり、X方向及びY方向に沿って一定ピッチで歯が形成されている。図では簡略のため一部の歯だけを示している。格子プラテンは磁性体の平坦面に格子状に溝を切ることによって形成される。
【0004】
20は、格子プラテン上面をX方向及びY方向にスライドして位置決め制御されるスライダであり、この上部にワーク及び位置決めの対象となるターゲット(図示せず)が搭載される。浮揚手段21は、格子プラテン10に対向する裏面にノズルが設けられていて圧縮空気を噴射させることでスライダ20を格子プラテン10上に浮揚させる。
【0005】
31及び32はスライダ20の上部にX方向に所定距離を持って固定配置された第1のX軸センサ及び第2のX軸センサである。33は同様にスライダ20の上部に固定配置されたY軸センサである。
【0006】
11は、格子プラテン10のX軸の一端部にX軸に直交して固定配置された所定高さを有するX軸ミラーであり、第1のX軸センサ31及び第2のX軸センサ32と対向する。12は、格子プラテン10のY軸の一端部にY軸に直交して固定配置された所定高さを有するY軸ミラーであり、Y軸センサ33と対向して配置されている。
【0007】
第1のX軸センサ31、第2のX軸センサ32及びY軸センサ33は光学的な距離測定装置であり、レーザ光をX軸ミラー11及びY軸ミラー12に照射し反射光を受光し干渉を利用して移動距離を測定することでスライダ20のX方向及びY方向の位置を測定する。PX1及びPX2は第1のX軸センサ31及び第2のX軸センサ32によるX軸方向距離測定値、PYはY軸センサ33によるY軸方向距離測定値である。
【0008】
ブロック4はXYサーボドライバであり、座標変換手段41,第1X軸ドライバ42,第2X軸ドライバ43,Y軸ドライバ44により構成されている。座標変換手段41は、測定値PX1,PX2及びPYを入力し第1X軸ドライバ42に測定座標Xを、第2X軸ドライバ43にヨーイング回転角(Z軸の回転角)θを、Y軸ドライバ44に測定座標Yを出力する。
【0009】
第1X軸ドライバ42は、測定座標Xと上位装置(図示省略)から与えられる目標位置信号SXの偏差を演算してスライダ20に搭載された平面モータで実現されるX1モータに駆動電流MX1を出力する。
【0010】
第2X軸ドライバ43は、ヨーイング回転角θと設定値0°との偏差を演算してスライダ20に搭載されたX2モータに駆動電流MX2を出力する。Y軸ドライバ44は、測定座標Y上位装置から与えられる目標位置信号SYの偏差を演算してスライダ20に搭載されたY1モータ及びY2モータに共通の駆動電流MYを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−84251号公報
【特許文献2】特開2003−121128号公報
【非特許文献1】横河技報 Vol.45 No2(2001)83 平面サーボモータPLANSERVとその要素技術
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述のような平面モータにおいて、格子プラテン10に対するスライダ20の相対移動量を検出して位置制御する平面モータの構成は図4に示すようなものとなっている。また、プラテン10とスライダ20の要部詳細は図5に示すようなものとなっている。図5の断面図において、スライダ20のプラテン10と対向する面にはフォーサー(コイル装置)50が配置され、同じくプラテン10に対向するようにセンサ51が配置されている。
【0013】
上述の構成において、スライダ20はプラテン10上にエアにより浮上し、フォーサー50内部の磁石と電磁石の極性切替えによって、プラテン10上の磁性体の凹凸に対する磁力を制御することで推力を生み、プラテン上を走行するように構成されている。センサ51はプラテン10に対するスライダ20の相対移動量を検出して、スライダの位置制御を行う。
【0014】
ところで、図5に示すセンサ51においては、プラテン10上の磁性体の凹凸による磁束変化を捉えて相対移動量の検出を行っている。そのため、プラテン10上の磁性体の凹凸の間隔や精度がセンサ51の検出精度に大きく影響していた。また、プラテン10上の磁束バラツキや変化も検出してしまうため位置検出誤差が生じる。という課題があった。
従って本発明は、誤差の少ない高精度な位置検出が可能な平面モータを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課点を解決するためになされたもので、請求項1に記載の平面モータの発明においては、
プラテン上に配置されたスライダをX軸方向及びY軸方向に位置制御する平面モータにおいて、
前記センサにレーザ光源、レンズおよびイメージセンサを搭載し、前記レーザ光源から出射したレーザ光を前記プラテンで反射させ前記レンズを介して前記イメージセンサで受光するように構成したことを特徴とする。
請求項2においては、請求項1に記載の平面モータにおいて、
前記レーザ光源は波長可変レーザ光源、前記レンズは倍率可変レンズとしたことを特徴とする。
請求項3においては、請求項1又は2に記載の平面モータにおいて、前記イメージセンサは前記プラテンに対して上下方向に変位可能に取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、スライダにレーザ光源、レンズおよびイメージセンサを搭載し、レーザ光源から出射したコヒーレントなレーザ光をプラテンで反射させレンズを介してイメージセンサで受光するように構成したので、誤差の少ない高精度な位置検出が可能となった。
【0017】
本発明の請求項2,3によれば、レーザ光源を波長可変レーザ光源としてよりコヒーレントなレーザ光とし、レンズを倍率可変レンズとし、イメージセンサをプラテンに対して上下方向に変位可能に取付けたので、より高精度な位置検出が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の平面モータの実施形態の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の平面モータの他の実施例を示す構成図である。
【図3】一般的な平面モータの一例を示す構成図である。
【図4】従来の格子プラテンに対するスライダの相対移動量を検出して位置制御する平面モータの構成図である。
【図5】従来のプラテンとスライダの構成を示す要部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の平面モータのプラテンとスライダの構成を示す断面図であり、図5に示す従来例とはセンサの構成のみが異なっている。
図1において、センサ51a内にはレーザ光源、レンズ55、イメージセンサ56が配置されている(図ではスライダに取付けたセンサの一方のみを示している)。
【0020】
上述の構成において、レーザ光源52から出射した光はプラテン10上で反射し、レンズ53で集光されてイメージセンサ54上で結像する。スライダ20がプラテン10上を走行すると、イメージセンサ54に取り込まれるプラテン表面の画像が変化し、位置変化の信号が得られる。なお、画像を読み取り、その読み取った信号によりスライダ20の位置を制御する手段については、ここでは省略する。
【0021】
イメージセンサ54に取り込まれる光はプラテンの表面を識別しているので、プラテン上の磁性体の凹凸間隔や精度には影響されない。また、面の変化を捉えているので1個のセンサでスライダの3軸(X−Y−θ)方向位置検出が出来る。
【0022】
なお、プラテン10上に絶対位置検出用のパターンを印刷しておけば、そのパターン印刷を判別することで絶対位置の検出が可能となる。パターン印刷はプラテン上の磁性体の凹凸間隔や精度とは関係なく、必要な間隔や精度、パターンを決めることが出来る。その結果、図3の従来例に示すXY軸のセンサを省略することも可能である。
【0023】
図2は他の実施例を示す断面図である。この実施例ではレーザ光源として波長可変レーザ52bを使用し、レンズは倍率可変レンズ53bを用いている。また、イメージセンサ54bと倍率可変レンズ53bの位置を調整するWD(WORK DISTANCE)調整機構55を備えている。
【0024】
上述の構成によれば、波長可変レーザ光源52bを構成することで、プラテン10の反射像コントラストを調整し、位置検出感度を調整できる。また、外乱光の影響を受けない波長やよりコヒーレントな光を選択することで解像度の高い結像が得られ、位置検出の精度や信頼性を向上できる。
【0025】
即ち、倍率可変レンズ53bとWD調整機構55を構成することで、反射像の倍率を調整し、位置検出精度(分解能)を調整できる。また、スライダ20の走行速度に合わせて必要な分解能が選択できる。
この場合においても、選択する波長のレーザ光に反応する特殊インキでプラテン10の表面にパターン印刷をしておけば、外乱の影響を低減した信頼性の高い位置検出が出来る。また、スライダ10に複数のセンサ(少なくとも3個)を形成し3軸(X−Y−θ)方向位置検出の平均化を行い、検出誤差を少なくすることが出来る。
【0026】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0027】
10 格子プラテン
11 X軸ミラー
12 Y軸ミラー
20 スライダ
21 浮揚手段
31 第1X軸センサ
32 第2X軸センサ
33 Y軸センサ
41 座標変換手段
42 第1X軸ドライバ
43 第2X軸ドライバ
44 Y軸ドライバ
50 フォーサー
51 センサ
52 レーザ光源
53 レンズ
54 イメージセンサ
55 調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテン上に配置されたスライダをX軸方向及びY軸方向に位置制御する平面モータにおいて、
前記スライダにレーザ光源、レンズおよびイメージセンサを搭載し、前記レーザ光源から出射したレーザ光を前記プラテンで反射させ前記レンズを介して前記イメージセンサで受光するように構成したことを特徴とする平面モータ。
【請求項2】
前記レーザ光源は波長可変レーザ光源、前記レンズは倍率可変レンズとしたことを特徴とする請求項1に記載の平面モータ。
【請求項3】
前記イメージセンサは前記プラテンに対して変位可能に取付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の平面モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−266330(P2010−266330A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117722(P2009−117722)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】