説明

建設機械

【課題】HSTモータおよび走行電動モータによって制駆動する建設機械においては、停止状態から急加速を行う場合に、エンジンをアシストするために、蓄電装置から発電電動機を介してエンジン軸に伝えられた出力が、HSTポンプへの動力として吸収されてしまい、エンジンの加速が遅れる可能性があった。また、蓄電装置からの出力は、発電機やHSTポンプ等を介した後に走行動力として得られるため、駆動効率が低下するという課題があった。
【解決手段】本発明の建設機械は、エンジンをアシストする発電電動機が電動機動作を行う場合に出力されるアシスト要求出力と、HSTモータおよび/または走行電動モータのモータ回転数とに基づいて、走行電動モータを駆動するために出力される電動走行トルク指令およびHSTモータを駆動するために出力されるHST走行トルク指令を算出する制御手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にホイールローダやホイール式油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用の駆動装置と電動モータを組み合わせて制駆動するハイブリッド建設機械においては、特許文献1に開示されているように、走行用の駆動装置として、油圧ポンプと油圧モータとを閉回路接続したHST(Hydraulic Static Transmission)駆動装置(以下HSTと称する。)を用い、電動モータと組み合わせたものが挙げられる。
【0003】
また、特許文献2には、トルクコンバータ式自動変速機と電動モータとを組み合わせたハイブリッド建設機械が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、エンジンに機械的に接続される発電機を備え、エンジンにかかる負荷に応じて発電機で発電または力行を行う建設機械が開示されている。
【0005】
特許文献1および2に記載のハイブリッド建設機械においては、特性の異なる2つの走行動力伝達経路を備えている。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、車両速度に応じてHST駆動装置と電動モータの動力配分割合を変化させることで、エンジン出力から効率良く走行動力を得ることができる。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、設定速度に向けて加速する過程において、発電機出力を制限するように構成することで、エンジンの加速を発電電動機の発電機作動によって妨げられることなく走行することができる。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の従来技術においては、高負荷時において蓄電装置の電力を使って発電機を力行動作させ、エンジンをアシストすることができる。そのため、標準機よりも小型のエンジンを搭載し、燃費を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−137524号公報
【特許文献2】特開2009−143478号公報
【特許文献3】特開2004−100621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
【0011】
従来技術では、建設機械が低速時に、HSTに分配する動力の割合が電動モータに分配する動力の割合よりも大きくなるように構成される。そして、車速の増加に伴い、HSTの動力の割合が小さく、一方、電動モータに分配する動力の割合が大きくなるように動力分配割合を制御することが記載されている。
【0012】
しかしながら、停止時から操作者がアクセルを大きく踏み込むとき、つまり停止時から急加速を行う場合においては、エンジンを発電電動機でアシストしながら加速させる必要がある。一方でこの場合、建設機械は低速なので、従来技術においてはHSTに分配する動力の割合が電動モータに分配する動力の割合よりも大きくなるように構成される。
【0013】
よって、エンジンをアシストするための発電電動機の出力はHSTへの動力として使用されるため、エンジンの加速のために必要な動力がエンジンに対しては供給されにくい。
【0014】
よって、アクセルの踏み込み量に応じて出力されるエンジンの加速指令に対して、実際のエンジンの加速が遅れる可能性が生じる。一般に、エンジンは回転数が高くなるほど出力が大きくなるという特性を有すため、エンジン加速が遅れると、エンジンが供給すべき出力を蓄電装置から供給する必要が生じ、この結果、蓄電装置の容量を大きくする必要がある。また、蓄電装置が供給した出力を、再び蓄電装置へ戻すために発電を行う必要があり、燃費悪化につながる。
【0015】
また、この場合、HSTは、蓄電装置から出力される電力によって駆動されている。蓄電装置から出力される電力は、発電電動機に接続されたインバータや発電電動機を介して、HSTのHSTポンプに与えられる。そして、HSTポンプが駆動することよりHSTモータが駆動し、走行動力を得ることができる。つまり、蓄電装置からの電力がHSTモータの動力として得られるまでには、インバータ、発電電動機等を介するため、エネルギーの損失があり、駆動効率が低下するという可能性があった。
【0016】
本発明の目的は、走行加速を行いながら発電電動機によってエンジンをアシストするシーンにおいて、エンジンの加速を遅らせることなく、駆動効率よく走行することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0018】
本願は上記目的を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、エンジンと、エンジンと同軸上に機械的に接続され、発電機動作と電動機動作とを行う発電電動機と、発電電動機と同軸上に機械的に接続されるHSTポンプと、HSTポンプの油圧によって制駆動するHSTモータと、HSTモータと同軸上に機械的に接続される走行電動モータとを有し、HSTモータの出力および走行電動モータの出力によって車軸を制駆動する建設機械において、エンジンのエンジン回転数指令とエンジンのエンジン回転数と発電出力指令を用いて演算され、発電電動機が電動機動作を行う場合に発電電動機に対して出力されるアシスト要求出力を算出し、アシスト要求出力と走行電動モータまたは/およびHSTモータの回転数とに基づいて、走行電動モータを駆動するために出力される電動走行トルク指令およびHSTモータを駆動するために出力されるHST走行トルク指令を算出し、アシスト要求出力の増加に伴い、電動走行トルク指令に応じて出力される電動走行モータの出力およびHST走行トルク指令に応じて出力されるHSTモータの出力の合計出力に対するHSTモータの出力は減少することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、走行用の駆動装置および電動モータを組み合わせたハイブリッド建設機械において、エンジンをアシストしながら走行加速を行う場合に、エンジン加速が遅れることなく、駆動効率の良い建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における走行駆動装置の構成図。
【図2】第1の実施形態にかかる走行駆動装置が適用されるホイールローダの側面図。
【図3】第1の実施形態におけるホイールローダのV字掘削の模式図。
【図4】本実施形態の走行駆動装置において、時間経過に対するエンジン回転数、発電電動機出力、走行電動モータ出力およびHSTモータ出力図。
【図5】HST配分割合を演算するためのマップ図の一例。
【図6】ハイブリッドコントローラ100の構成図。
【図7】ハイブリッドコントローラ100の各指令算出の処理フロー図。
【図8】ポンプ要求流量を演算するためのマップ図の一例。
【図9】走行要求出力を演算するためのマップ図の一例。
【図10】放電要求出力を演算するためのマップ図の一例。
【図11】最適エンジン回転数を演算するためのマップ図の一例。
【図12】本発明の効果を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態にかかる走行駆動装置の構成図である。
【0023】
図1に示すように、走行駆動装置は、エンジン1と、エンジン1の出力軸に直結する発電電動機4とを有している。発電電動機4は、エンジン出力に余裕のあるときには発電機としての動作を行い、電力を回生する。また、エンジン出力よりも大きな出力が必要なときには、電動機として動作を行い、エンジン1の出力のアシストを行う。
【0024】
そして、発電電動機4の同軸上には、HSTポンプ9およびメインポンプ8が接続されている。HSTポンプ9は、プロペラシャフト11に直結するHSTモータ10とから、HST駆動装置20と称される閉回路を構成し、HSTポンプ9により生じさせる油流や油圧を利用して、HSTモータ10に動力を伝え、HSTモータ10が制駆動する。また、メインポンプ8は、油の圧力エネルギーによりバケット等のフロント部を駆動させる。
【0025】
さらに、発電電動機4には、発電用インバータ5が接続されている。そして、発電用インバータ5には、同一の電力線を介して、コンバータ3および走行用インバータ7が接続されている。
【0026】
コンバータ3には、蓄電装置として、例えばキャパシタ2が接続されている。なお、本実施形態ではキャパシタ2を備えた構成としているが、キャパシタ2に替えて他の蓄電装置、例えばリチウムイオンバッテリを備えてもよい。そしてコンバータ3は、電力線の電圧が所定の値となるようにキャパシタ2からの充放電を制御している。
【0027】
発電電動機4が発電機として動作を行う時には、回生電力は発電用インバータ5およびコンバータ3を介してキャパシタ2に充電される。
【0028】
また、発電電動機4が電動機として動作を行う時には、キャパシタ2からの電力が、コンバータ3および発電用インバータ5を介して発電電動機4に供給され、発電電動機4が電動機として動作することによってエンジンの出力をアシストする。
【0029】
一方で、走行用インバータ7には、プロペラシャフト11に直結する走行電動モータ6が接続されている。走行電動モータ6は、発電用インバータ5や走行用インバータ7を介して供給される発電電動機4の発電機作動による電力や、コンバータ3や走行用インバータ7を介してキャパシタ2から供給される電力によって駆動される。
【0030】
走行電動モータ6およびHSTモータ10に連結されているプロペラシャフト11には、ディファレンシャルギア12f、12rを介してドライブシャフト13a、13b、13c、13dが接続されている。そして、ドライブシャフト13a、13b、13c、13dには車輪14a、14b、14c、14dが設けられており、走行電動モータ6およびHSTモータ10を駆動することにより、建設機械を走行させることができる。
【0031】
また、本実施形態にかかる走行駆動装置には、相互に通信を行うハイブリッドコントローラ100、メインコントローラ500、およびエンジン1の回転数を制御する図示しないエンジンコントローラが備えられている。
【0032】
メインコントローラ500は、図示しない前後進スイッチのシフト位置、アクセルペダルのアクセル踏量、リフトレバーやバケットレバーのレバー操作量およびメインポンプ8のポンプ吐出圧を検出し、ハイブリッドコントローラ100へ送信する。
【0033】
ハイブリッドコントローラ100は、メインコントローラ500から送信された前述の前後進スイッチのシフト位置、アクセル踏量、レバー操作量およびポンプ吐出圧を受信するとともに、図示しないエンジンコントローラから受信するエンジン回転数、コンバータ3から受信するキャパシタ電圧および走行用インバータ7から受信するモータ回転数を受信する。以上の値に基づいて、エンジン1に対して出力されるエンジン回転数指令、発電電動機4に対して出力される発電機トルク指令、走行電動モータ6に対して出力される電動走行トルク指令、およびメインコントローラ500に対して出力されるHST走行トルク指令を演算する。以上のようなハイブリッドコントローラ100で行う指令値の演算方法の詳細は後述する。
【0034】
メインコントローラ500は、レバー操作量に応じたポンプ吐出流量が得られるように、図示しないエンジンコントローラから受信するエンジン回転数に応じて、メインポンプ8の傾転角を制御する。また、メインコントローラ500は、ハイブリッドコントローラ100において算出されたHST走行トルク指令に応じて、HSTポンプ9とHSTモータ10のそれぞれの傾転角を調節し、HSTモータのトルクを制御する。これらのメインコントローラ500で行う制御は、公知の油圧制御手段であるため、その詳細説明を省略する。
【0035】
図2は、本実施形態にかかる走行駆動装置を備えたホイールローダの側面図である。オペレータは運転室15に搭乗し、図示しないアクセルペダル、ブレーキペダルおよび前後進スイッチを操作することで、車輪14a、14b、14c、14dを駆動して車両を走行させることができる。また、オペレータは、図示しないステアリングホイールを操作することで、ステアシリンダ16を伸縮させて車両の屈折角を調節し、車両を旋回させることができる。また、図示しないリフトレバー、バケットレバーなどを操作することで、リフトシリンダ17、バケットシリンダ18を伸縮させて、バケット19の位置と傾きを調節することができる。
【0036】
ここで、ホイールローダの主たる作業であるV字掘削の一例を、図3を使って説明する。図のA点において、オペレータは前後進スイッチを前進方向に入れ、アクセルを踏み込んで車両を加速させ、掘削対象のある図のB点に向かって前進する。図のB点において、オペレータはアクセルを踏み込むと同時にレバーを操作し、掘削対象をバケットですくい込む。次にオペレータは、前後進スイッチを後進方向に入れ、アクセルを踏み込み、図のA点まで後進し、図のA点付近まで後進した後、再び前後進スイッチを前進方向に切り替える。そして、レバーを操作してバケットをリフトアップしながら、アクセルを踏み込むと同時にステアリングホイールを操作し、トラックのある図のC点へ向かって前進する。
図のC点でブレーキを踏んで停止した後、レバーを操作してトラックに掘削対象を積み込む。そして、前後進スイッチを後進方向に切り替えて、車両を図のA点まで後進させながら、レバーを操作してバケットを元の位置へと下げる。図のA点まで後進すると、前後進スイッチを前進方向へと切り替えて、再び図のB点へ向かって前進する。ここで、作業を早く行うために、オペレータは前後進の開始および切り替え時にアクセルを大きく踏み込むことが多く、アクセルの踏み込み量に応じて車両が必要とする出力が頻繁に大きく変化する。
【0037】
このように、ホイールローダにおいては、車両が停止状態から急加速するシーンがあり、エンジンが必要とする出力が大きいために、発電電動機を電動機動作させてエンジンの出力アシストが行われる場合がある。
【0038】
従来技術においては、建設機械の車速に応じて、走行電動モータおよびHSTモータの出力の配分を決定していた。つまり、HSTは、低速時には特に大きな牽引力を発揮し、高速時には効率が低下する特性を持っているので、車速の増加に伴い、HSTに分配する動力の割合を小さくし、走行電動モータに分配する動力の割合を大きくなるような制御を行っていた。よって、従来技術では、上述のように建設機械が停止状態からの急加速を行うシーンにおいては、低速時における動力配分が行われることになる。
【0039】
しかしながら、上述のような動力配分を行った場合には、エンジンの加速遅れが生じていた。これは、発電電動機4が電動機動作を行うことによって発生する動力が、HST駆動装置20を駆動するための動力としてその多くを使用されてしまい、オペレータの急加速要求に応じたエンジン加速をするための動力が、エンジン1に伝達されず、エンジン回転数指令に対してエンジン1の加速が遅れるという問題点が生じてしまうものである。エンジン1の加速が遅れると、オペレータの加速要求に応じたエンジン出力が得られないため、エンジン加速に必要な動力を、さらに発電電動機4の電動機動作によって補うことが必要となる。よって、発電電動機4に大きな電力を供給するために蓄電手段2の容量を大きくしなければならなくなる。また、蓄電装置が供給した電力を、再び蓄電装置へ戻すために発電を行う必要があり、燃費が低下する恐れがある。また、蓄電手段2から出力される電力は、HSTモータ10に動力として伝達されるまでに、コンバータ3、発電電動機用インバータ5、HSTポンプ9等を介するために、電力・動力の損失が大きくなり、駆動効率が低下する。
【0040】
本発明では、停止状態から急加速を行うために発電電動機4が電動機動作を行う場合において生じる上記のような課題を解決するものであり、発電電動機4が電動機動作を行い、電動機出力が増加する場合には、走行電動モータ6に対するHSTモータ10の出力の割合が減少するように制御を行う。このような制御を行うことにより、発電電動機4の電動機出力がHSTポンプの動力としてその多くを使用されることにより生じるエンジン1の加速遅れや、燃費の低下を生じさせることなく、建設機械を駆動することができる。
【0041】
以下、上記のような効果を得るための一実施例である走行電動モータ6およびHSTモータ10の合計出力に対するHSTモータ10の出力割合を図4および図5を用いて説明する。
【0042】
図4は、車両停止状態から一定出力で加速走行する場合における、本実施形態の走行駆動装置の動作を示したものである。(a)は、時間経過に対するエンジン回転数、(b)は、発電機出力、(c)は、走行電動モータ出力、および(d)は、HSTモータ出力を示したものである。
【0043】
(a)に、時間経過に対するエンジン回転数指令を一点鎖線で、実際のエンジン回転数を実線で示す。時刻t1において、一定出力で走行加速を開始する際、時刻t1においてエンジン回転数指令はステップ状に立ち上がる。エンジンは、エンジン回転数指令に追従するように、実線のような変移を取りながら回転数を増加させ、時刻t2においてエンジン回転数指令と一致する。
【0044】
このように時刻t1からt2にかけて、エンジン回転数を増加させる過程において、発電電動機4は電動機として動作し、エンジン1をアシストする。(b)に、時刻経過に対する発電電動機4の発電電動機出力を示す。発電電動機出力が正の場合は、発電電動機4が電動機として動作しているときの出力を示し、負の場合は、発電電動機4が発電機として動作しているときの出力を示す。(b)では、時刻t1からt2にかけて、エンジン回転数を増加させる過程において、発電電動機4は電動機として動作し、エンジン1をアシストするので、時刻t1からt2にかけて電動機として出力していることがわかる。
【0045】
なお、アクセルを踏み込む量が大きく、速度が速いと、要求される時間に対するエンジン回転数の増加量の変化率が大きくなるので、発電電動機出力の出力量及び出力量変化率も大きくなる。例えば、車両が停止状態から急加速するような場面においては、エンジン回転数を増加させるために発電電動機が電動機として動作し、発電電動機出力の出力量や出力量変化率が大きくなる。また、アクセルを大きく踏み込んでいなくても、リフトレバーやバケットレバーのレバー操作量が大きくなると、エンジンに要求される出力が大きくなるため、電動機出力は正となる。
【0046】
時刻t2以降では、エンジン回転数指令値に基づくエンジン回転数までエンジン回転数が上昇するので、発電電動機4によるアシストが必要でなくなる。そして、エンジン1の出力に余裕が生じると、発電電動機の出力は負の値をとり発電を行うことがわかる。
【0047】
このように、発電電動機4が電動機動作を行う際、本発明における走行電動モータ出力およびHSTモータ出力は、それぞれ(c)および(d)における実線で示すような、時刻経過に対する出力となる。発電電動機4が電動機動作を行う時刻t1からt2にかけて、走行電動モータの出力は一時的に大きくなり、その分HSTモータ出力が小さくなる。
【0048】
一方、(c)および(d)において破線で示される出力は、従来において、車速に応じて決定される走行電動モータおよびHSTモータの出力を示したものである。エンジン回転数が小さい時刻t1からt2にかけては、走行電動モータに対するHSTモータの出力配分が大きい。
【0049】
つまり、本発明においては、発電電動機4が電動機動作を行う際には、従来の制御方法において決定された出力と比較して、HSTモータ出力が小さく、また走行電動モータ出力が大きく設定される。よって、従来であると、発電電動機4で生じた動力はHSTモータの動力として使用され、エンジン加速の遅れを引き起こしていたが、本発明においては走行電動モータの出力を一時的に増加させ、その分HSTモータの出力を小さくすることでエンジンの加速遅れを防ぐことができる。
【0050】
そして、本発明では、発電電動機4が電動機動作を行う場合に、発電電動機4に対して出力されるアシスト要求出力の大きさおよびモータ回転数の絶対値に応じてHSTモータの出力配分を決定する。
【0051】
図5は、モータ回転数の絶対値およびアシスト要求出力に基づいて決定される、HST配分割合を演算するためのマップの一例である。図5に示されるように、モータ回転数の絶対値が増加すると、HST出力配分割合が減少するように設定されている。ここで、車両の速度はモータ回転数に依存するので、言い換えれば、車速が増加するとともにHST出力配分が減少するように設定されている。なお、モータ回転数は、走行電動モータ6および/またはHSTモータ10の回転数である。このようにモータ回転数に応じてHST出力配分を決定したのは、HSTが低速走行時においては大きな牽引力を発揮できるが、高速走行時においては、動力伝達効率が低下し燃費が悪化するという特性を考慮したものであり、このような出力配分とすることで、HSTを効率よく作動させることができる。
【0052】
そして、エンジン1をアシストする発電電動機4のアシスト要求出力が増加すると、同一のモータ回転数におけるHST配分割合は、アシスト要求出力の増加に伴って減少するように設定する。
【0053】
このような出力配分とすることで、従来技術のようにHST出力配分が大きいことにより、エンジン加速遅れが生じることを防ぐことができる。
【0054】
以上のように、アシスト要求出力およびモータ回転数に基づいて、HSTモータ10および走行電動モータ6の出力配分を設定し、設定された出力配分を出力するように、HST走行トルク指令および電動走行トルク指令を算出することにより、エンジン加速の遅れを生じることなく、駆動効率の良い走行加速を行うことができる。特に、アシスト要求出力の大きさに応じたHST配分割合を設定されていることによって、アシスト要求出力が大きな値をとる急加速状態を考慮した出力配分となっており、車両が停止状態から急加速する際に生じるエンジンの加速遅れを解決するのに有効である。
【0055】
以下、図6を用いて、ハイブリッドコントローラ100において算出されるエンジン回転数指令、発電機トルク指令、HST走行トルク指令および電動走行トルク指令の算出方法を説明する。
【0056】
図6は、ハイブリッドコントローラ100の構成図である。ハイブリッドコントローラ100は、エネルギーマネジメント部110、油圧要求出力演算部120、走行要求出力演算部130、パワーフロー制御部140、エンジン制御部150、走行制御部160から構成される。
【0057】
図7は、ハイブリッドコントローラ100を構成する上記各制御部における処理フロー図である。ハイブリッドコントローラ100において、油圧要求出力演算部120において油圧要求出力演算、走行要求出力演算部130において走行要求出力演算、エネルギーマネジメント部110においてエネルギーマネジメント演算、パワーフロー制御部140においてパワーフロー制御演算、エンジン制御部150においてエンジン制御演算、および走行制御部160において走行制御演算の順に演算処理を行う。ハイブリッドコントローラ100におけるこれらの演算処理は、一定の周期でこれらの一連の計算を繰り返す。
【0058】
以下、図6に示される各制御部における演算方法の詳細を、図7のフロー図に基づいて順を追って説明する。
【0059】
まず、油圧要求出力演算部120では、メインポンプ8のポンプ要求流量およびポンプ吐出圧を用いて油圧要求出力を演算する。
【0060】
ここで、ポンプ要求流量は、予めレバー操作量に応じて設定された値を用いる。図8は、ポンプ要求流量を演算するためのマップの一例を示したものである。マップは、レバー操作量の絶対値に対してポンプ要求流量が略比例するように設定しておく。
【0061】
このように決定されたポンプ要求流量およびポンプ吐出圧から、数(1)に表される式を用いて油圧要求出力を演算する。ここで、レバー操作量が略0の場合や、リフトダウンなどメインポンプ8からの油圧を必要としない場合は、ポンプ要求流量は最小吐出流量とする。
【0062】
油圧要求出力Pwr_pmp_rは、数(1)を用いて、ポンプ要求流量qpmp_rとポンプ吐出圧ppmpから算出される。
【0063】
【数1】

【0064】
また、油圧要求出力演算部120では、ポンプ要求流量qpmp_rおよびメインポンプ8の単位角度当たりの最大容積Dp_pmp_maxに基づいてエンジン回転数下限値Neng_minを算出する。エンジン回転数下限値Neng_minは、メインポンプの容量Dpを最大とした場合に、要求流量を満足するエンジン回転数の下限値を表したものである。エンジン回転数下限値Neng_minは、数(2)を用いて、ポンプ要求流量qpmp_rおよびメインポンプ8の単位角度当たりの最大容積Dp_pmp_maxから算出される。
【0065】
【数2】

【0066】
このようにして、油圧要求出力演算部120では、レバー操作量およびポンプ吐出圧に基づいて、油圧要求出力Pwr_pmp_rおよびエンジン回転数下限値Neng_minが算出される。
【0067】
次に、走行要求出力演算部130では、操作レバーの前後シフト位置、車両速度およびアクセル踏量から、HSTモータ10および走行電動モータ6に要求される出力である走行要求出力Pwr_drv_rを決定する。
【0068】
走行要求出力Pwr_drv_rは、例えば図9に示すような一例のマップを用いて決定される。前後進スイッチのシフト位置に対応する方向と、現在の車両速度の方向とが同一の方向の場合は、アクセル踏量に略比例して走行要求出力Pwr_drv_rが増加する。一方シフト位置に対応する方向と、現在の車両速度の方向とが異なる方向であれば、アクセル踏量に略比例して走行要求出力Pwr_drv_rが減少する。このようなマップに基づいて、走行要求出力Pwr_drv_rは、操作レバーの前後シフト位置、車両速度およびアクセル踏量に応じて決定される。
【0069】
次に、エネルギーマネジメント部110では、キャパシタ電圧と車両速度に基づいて、蓄電装置の放電出力値である放電要求出力Pwr_cap_rを演算する。
【0070】
放電要求出力Pwr_cap_rは、例えば図10に示すようなマップを用いて演算される。図10に示すように、キャパシタ電圧の使用電圧範囲内において、キャパシタ電圧が高く、車両速度が高いほど放電要求出力が大きくなるように、キャパシタ電圧に対して放電要求出力が略比例するように設定されている。ここで、放電要求出力が正の場合は、キャパシタから放電を行い、放電要求出力が負の場合は、キャパシタに充電を行う。なお、車両速度は、車両の絶対速度で、光学式の絶対車速センサや車輪速センサなどを使って検出してもよいが、モータ回転数を基に車輪半径、ディファレンシャルギア比などから推定してもよい。
【0071】
次に、パワーフロー制御部140では、エネルギーマネジメント部110において算出された放電要求出力Pwr_cap_r、走行要求出力演算部において算出された走行要求出力Pwr_drv_r、および後述するエンジン制御部150において算出されたアシスト要求出力Pwr_ast_rに基づいて、発電電動機4に対して発電機作動または電動機作動として機能させるために出力される発電出力指令Pwr_gen_tが演算される。ここで、アシスト要求出力Pwr_ast_rは、現処理周期の一つ前の周期においてエンジン制御部150で演算された値を用いる。発電出力指令Pwr_gen_tは、以下のような数(3)を用いて演算される。
【0072】
【数3】

【0073】
また、パワーフロー制御部140では、油圧要求出力演算部120で算出された油圧要求出力Pwr_pmp_r、および数(3)にて算出された発電出力指令Pwr_gen_tに基づいて、エンジンに要求される出力を生じさせるためのエンジン出力指令Pwr_eng_tが数(4)を用いて演算される。
【0074】
【数4】

【0075】
次に、エンジン制御部150では、油圧要求出力演算部120で算出されたエンジン回転数下限値Neng_minおよびパワーフロー制御部140で算出されたエンジン出力指令Pwr_gen_tを用いて、エンジン回転数指令Nengを演算する。エンジン回転数指令Nengは、例えば図11に示されるようなエンジン出力指令Pwr_gen_tに基づいて最適エンジン回転数が設定されるマップを用いて、最適エンジン回転数を決定し、エンジン回転数下限値Neng_minと比較し、大きい方をエンジン回転数指令Nengとする。図11に示されるような最適エンジン回転数を演算するためのマップは、予め実験などで得たエンジンの等燃費マップを基に、同一のエンジン出力指令に対して最も燃料消費率が低くなる回転数を最適エンジン回転数としてマップを設定する。
【0076】
このように決定されたエンジン回転数指令Nengは、図示されないエンジンコントローラへ送信され、エンジンコントローラによってエンジン1の燃料噴射量が調節され、エンジン1の回転数が制御される。
【0077】
また、エンジン制御部150においては、このように決定されたエンジン回転数指令Neng、およびパワーフロー制御部140において算出された発電出力指令Pgen_tから、数(5)を用いて発電機トルク指令Tgen_tを演算する。
【0078】
【数5】

【0079】
ただし、右辺第2項のTgen_FBは速度フィードバックトルクで、エンジン回転数指令とエンジン回転数の偏差に応じて公知のPID制御などを用いて演算する。このように演算された発電機トルク指令Tgen_tは、発電用インバータ5に対して出力され、発電電動機4のトルク制御を行う。
さらに、エンジン制御部150では、算出された発電機トルク指令Tgen_tおよびエンジン回転数Nengから数(6)を用いてアシスト要求出力Pwr_ast_rを算出する。アシスト要求出力Pwr_ast_rは、エンジン1を加速させるために発電電動機4を電動機として作動させる場合に要求される発電機出力である。つまり、停止状態からの急発進を行う場合が想定される、エンジンに対する加速の要求が大きい場合には、アシスト要求出力の値が大きい。逆に、エンジンに対する加速の要求が小さい場合には、アシスト要求出力の値は小さい。
【0080】
【数6】

【0081】
また、走行制御部160では、走行要求出力演算部130において算出された走行要求出力Pwr_drv_r、エンジン制御部150において算出されたアシスト要求出力Pwr_ast_r、および走行電動モータ6またはHSTモータ10モータの回転数から、走行電動モータ6に対して出力される電動走行トルク指令Tem_t、およびHSTモータ10に対して出力されるHST走行トルク指令Thm_tを演算する。
走行要求出力演算部130において算出された走行要求出力Pwr_drv_rおよびモータ回転数Nmotから、走行電動モータ6およびHSTモータ10に求められる合計トルクを出力させるための指令値である駆動トルク指令Tdrv_tを、数(7)を用いて演算する。
【0082】
【数7】

【0083】
ここで、駆動トルク指令Tdrv_tの絶対値は、予め設定するHSTモータと走行電動モータの最大トルクの合計値である最大駆動トルク以下になるように、駆動トルク指令Tdrv_tに制限をかける。ただし、モータ回転数Nmotが略0の場合は、最大駆動トルクに走行要求出力Pwr_drv_rの符号をかけた値を駆動トルク指令Tdrv_tとする。
【0084】
以上のようにして算出された駆動トルク指令Tdrv_tを、予め設定したマップを用いて、走行電動モータ出力およびHSTモータ出力の合計出力に対するHSTモータ出力の出力配分割合を演算する。HST出力配分割合は、例えば図5のように、モータ回転数の絶対値およびアシスト要求出力Pwr_ast_rに基づいて設定したHST出力配分割合のマップを用いて決定する。つまり、アシスト要求出力が増加し、エンジンに対する加速要求が大きい場合には、電動走行トルク指令およびHST走行トルク指令の合計値に対するHST走行トルク指令は減少するようなHST出力配分割合にする。このような構成を有することにより、走行電動モータおよびHSTモータを組み合わせたハイブリッド建設機械において、走行加速を行う場合であって、特に停止状態から急加速を行う場合に、エンジンが加速遅れすることなく、駆動効率の良い建設機械を提供することができる。
【0085】
このようなマップを用いて、モータ回転数の絶対値およびアシスト要求出力Pwr_ast_rに基づいて決定されたHST配分割合rhstおよび前述の駆動トルク指令Tdrv_tから、数(8)を用いてHST走行トルク指令Thm_tを演算する。
【0086】
【数8】

【0087】
ただし、Tdrv_thは駆動トルク閾値であり、駆動トルクが極端に低いことによるHSTの効率の大幅な低下を防ぐために、駆動トルク閾値Tdrv_thを設定する。
【0088】
以上のようにして算出した駆動トルク指令Tdrv_tおよびHST走行トルク指令Thm_tから、数(9)を用いて電動走行トルク指令Tem_tを演算する。
【0089】
【数9】

【0090】
なお、HST走行トルク指令Thm_tおよび走行電動トルク指令Tem_tの符号は、それぞれHSTモータ、走行電動モータの回転方向に対するトルクの方向を示している。すなわち、任意の時刻での回転方向に対して、トルクが同じ方向ならば正、逆方向ならば負の値をとる。
【0091】
以上のように、HSTを用いた建設機械においては、モータの回転数の増加に伴い、HST配分割合が小さくなるようにHST走行トルク指令を決定し、HSTモータ出力を減少させた分だけ、走行電動モータ出力を増加させる。このような構成をとることによって、車両が高速時において生じるHSTの燃費の悪化を防ぎ、HSTを効率よく作動することができる。さらには、発電電動機4に対するアシスト要求出力Pwr_ast_rの増加に伴い、HST出力配分を減少させることで、エネルギー効率の良い走行をすることができる。
【0092】
次に、本実施例において決定される、走行電動モータ出力およびHST走行モータ出力とした場合の、走行駆動装置における電力のパワーフローを、図12を用いて説明する。
【0093】
図12は、上記の動作における本発明の効果を説明した本実施例の走行駆動装置の模式図である。2重線の丸四角は目的とする動作を示し、ここでは走行加速を行うためにエンジン加速が必要であるシーンを表している。矢印は出力の方向を、数値は必要な出力のノミナル値を表す。
【0094】
(a)は本実施形態の走行駆動装置のパワーフロー、(b)は本実施形態を用いない場合の走行駆動装置のパワーフローを表す。いずれも、走行加速のシーンにおいて、発電電動機を電動機として作動させ、走行加速に必要な出力を10、エンジン加速に必要な出力を2とした場合を考える。
【0095】
(a)に示されるように、本実施形態の走行駆動装置では、発電電動機が電動機として作動し、停止状態から急加速を行うような車両速度が小さい場合には、走行電動モータの出力割合が大きくなる。そのため、例えば走行加速に必要な出力10を、走行電動モータの出力を7、HSTモータの出力を3と配分する。ここで、簡単化のために各コンポーネントの効率をそれぞれ0.5とする。走行電動モータの出力7を得るためには、キャパシタからは14の出力が必要となる。また、HSTモータが必要とする出力が3であるため、HSTポンプが必要な出力12、エンジン加速に用いられる出力が2であることを考慮すると、キャパシタから発電電動機への出力は28となる。よって、キャパシタは、走行電動モータおよびHSTモータを駆動させるためには、42の出力を出せばよいことになる。
【0096】
一方、(b)に示されるように、本実施形態を用いない場合の走行駆動装置では、停止状態から急加速を行うような状況では、車両速度が小さいので、HSTモータの出力配分が大きくなるように制御されるために、走行加速に必要な出力10の配分は、HSTモータの出力が7、走行電動モータの出力は3となる。よって、上述のように各コンポーネントの効率を考慮すると、キャパシタは66の出力を出せばよいことになる。
【0097】
以上のように、建設機械が停止時からの急加速をする場合において、本実施形態では、本実施形態を用いない場合のHSTに必要な出力と比較して小さな動力配分とするので、電動機のアシストによって、エンジンを遅れることなく加速させることができる。一方、本実施形態を用いない場合には、HSTに必要な出力が大きいため、電動機でのアシスト出力も大きくなり、アシスト出力の多くはHSTに必要な出力を与えるために使用される。よって、その場合にはエンジンの加速に必要な出力がエンジンに十分に与えられなくなるため、エンジンの加速が遅れてしまう。加えて、本実施例に基づくHST出力配分を設定することにより、停止時から急加速を行う場合においては電動機でのアシスト出力が小さくなるため、HSTに出力が伝達する際に生じる駆動効率の低下を防ぐことができる。
【0098】
本実施形態では、走行電動モータとHSTモータで車輪を駆動する構成を示したが、本発明の実施形態はこれに限定するものではなく、走行用駆動装置、例えばトルクコンバータ式自動変速機や無段自動変速機で車輪を駆動する構成であってもよい。
【0099】
本実施形態では、図5に示すように、モータ回転数の絶対値が大きいほどHST配分割合を小さくしたが、これは、回転数が高くなるほど効率が低下するHSTの特性を考慮した結果である。そのため、他の変速装置を備える場合は、他の変速装置の効率分布を基に、配分割合を決定することが望ましい。なお、アシスト要求出力が大きいほど他の変速装置の配分割合を小さくする点は、他の変速装置を備える場合であっても同様でよい。
【0100】
また、本実施形態では、エンジンの出力軸に、発電機、メインポンプ、HSTポンプが直結されている構成を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、発電機、メインポンプ、HSTポンプはそれぞれギアなどを介してエンジンの出力軸に接続されていてもよい。
【0101】
本実施形態では、プロペラシャフトに、走行電動モータ、HSTモータが直結されている構成を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、走行電動モータ、HSTモータはそれぞれギアなどを介してプロペラシャフトに接続さていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 エンジン
2 キャパシタ
3 コンバータ
4 発電電動機
5 発電用インバータ
6 走行電動モータ
7 走行用インバータ
8 メインポンプ
9 HSTポンプ
10 HSTモータ
11 プロペラシャフト
12f、12r ディファレンシャルギア
13a、13b、13c、13d ドライブシャフト
14a、14b、14c、14d 車軸
15 運転室
16 ステアシリンダ
17 リフトシリンダ
18 バケットシリンダ
19 バケット
20 HST駆動装置
100 ハイブリッドコントローラ
500 メインコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンと同軸上に機械的に接続され、発電機動作と電動機動作とを行う発電電動機と、
前記発電電動機と同軸上に機械的に接続されるHSTポンプと、
前記HSTポンプの油圧によって制駆動するHSTモータと、
前記HSTモータと同軸上に機械的に接続される走行電動モータと、前記走行電動モータを駆動するために出力される電動走行トルク指令および前記HSTモータを駆動するために出力されるHST走行トルク指令を算出するハイブリッドコントローラと、を有し、
前記HSTモータの出力および前記走行電動モータの出力によって車軸を制駆動する建設機械において、
前記ハイブリッドコントローラは、
前記エンジンのエンジン回転数指令と前記エンジンのエンジン回転数と発電出力指令を用いて演算され、前記発電電動機が電動機動作を行う場合に前記発電電動機に対して出力されるアシスト要求出力を算出し、
前記電動走行トルク指令および前記HST走行トルク指令は、
前記アシスト要求出力と前記走行電動モータまたは/およびHSTモータの回転数とに基づいて、算出され、
前記アシスト要求出力の増加に伴い、前記電動走行トルク指令および前記HST走行トルク指令の合計値に対する前記HST走行トルク指令は減少することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記電動走行モータの出力および前記HSTモータの出力の合計出力に対する前記HSTモータの出力の割合は、前記HSTモータの回転数または/および前記走行用電動モータの回転数の増加に伴い減少することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
エンジンと、
前記エンジンと同軸上に機械的に接続され、発電機動作と電動機動作とを行う発電電動機と、
前記発電電動機と同軸上に機械的に接続され、前記エンジンまたは/および前記発電電動機の出力を車軸に伝える走行用変速装置と、
前記車軸に設けられた走行電動モータとを有し、
前記走行用変速装置の出力および前記走行電動モータの出力によって車軸を制駆動する建設機械において、
前記エンジンのエンジン回転数指令と前記エンジンのエンジン回転数と発電出力指令を用いて演算され、前記発電電動機が電動機動作を行う場合に前記発電電動機に対して出力されるアシスト要求出力を算出し、
前記アシスト要求出力と前記走行電動モータまたは/および前記走行用モータの回転数とに基づいて、前記走行電動モータを駆動するために出力される電動走行トルク指令および前記走行用モータを駆動するために出力される走行トルク指令を算出し、
前記アシスト要求出力の増加に伴い、前記電動走行トルク指令に応じて出力される前記電動走行モータの出力および前記走行トルク指令に応じて出力される前記走行用モータの出力の合計出力に対する前記走行用モータの出力は減少することを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−153174(P2012−153174A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11498(P2011−11498)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】