説明

成膜方法、成膜装置及び記憶媒体

【課題】エッチング処理を組み合わせることにより、半球状の結晶粒のサイズを小さく制御することが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】被処理体Wの表面に薄膜を形成する成膜方法において、成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核92を形成して該結晶核92を成長させることにより半球状の結晶粒6が表面に形成された結晶粒薄膜94を形成する結晶粒薄膜形成工程と、前記結晶粒薄膜94の表面を酸化することにより酸化膜96を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜96をエッチングにより除去するエッチング工程と、を有する。このように、エッチング処理を組み合わせることにより、HSGシリコン結晶粒における半球状の結晶粒6のサイズを小さく制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等に薄膜を形成する成膜方法、成膜装置及び記憶媒体に係り、特にキャパシタの電極の形成時に用いるのに適する成膜方法、成膜装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、IC等の半導体集積回路を形成するためには、半導体ウエハやガラス基板等の表面に、成膜処理、エッチング処理、熱拡散処理、酸化処理等を多数回繰り返し行なうことによって所望のトランジスタ素子、抵抗素子、キャパシタ等を高密度に集積形成するようになっている。
近年、特に、半導体装置の高集積化にともなって、各素子自体の微細化も一層進む傾向にある。例えばDRAM等の記憶装置にあっては各セルの占有面積は微細化傾向によって益々小さくなるが、十分な容量値を確保するためには、占有面積が小さくなってもキャパシタ電極間の絶縁層の厚さを薄くしたり、もしくはこの誘電体の比誘電率を大きくすればよいが、この絶縁層の厚さを薄くすると絶縁性が劣化し、また、材質を高誘電体とするにも種々の技術的な問題があるのが現状である。
【0003】
そこで、キャパシタの電極表面に、表面が微細に凹凸形状になされたポリシリコン膜を形成して微細な占有面積でも容量値に寄与する実質的な表面積を2〜3倍に増加させることが行なわれている。この表面凹凸形状のポリシリコン膜を形成するためには、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3等に開示されているように、シリコン膜の表面に凹凸形状のHSG(Hemispherical Grained)ポリシリコン膜を形成する方法が知られている。
【0004】
この点について、図7を参照して具体的に説明する。図7はキャパシタの電極表面に半球状の結晶粒を形成する方法の一例を示す図である。図7(A)に示すように、被処理体としての半導体ウエハWは例えばシリコン基板よりなり、この半導体ウエハWの表面に層間絶縁膜2を貫通させてキャパシタの例えば下部電極4が形成されている。この下部電極4は、例えばリンがドープされたポリシリコンよりなり、円筒リング状に成形されて、いわゆるスタックキャパシタを製造できるようになっている。この下部電極4は、図示されないがウエハWに形成されているソース等に電気的に接続されている。
【0005】
そして、表面構造が図7(A)に示すようになっている半導体ウエハWの表面に、モノシラン等のシラン系ガスを作用させることによってシリコンのアモルファス膜を形成すると共に、この表面にシリコン結晶核を形成し、このシリコン結晶核をマイグレーションによって成長させることにより、図7(B)に示すように、半球状の結晶粒6、いわゆるHSG(Hemispherical Grained)結晶粒が形成される。このように下部電極4の表面に、上記したような半球状の結晶粒6を高密度で、多数形成させることによって、微少な専有空間であっても表面積が著しく増大し、結果的にキャパシタの容量を大きくすることができる。尚、キャパシタを形成するには、この下部電極4上にキャパシタ絶縁膜を形成し、更に上部電極を形成するが、図7中ではその記載を省略している。
【0006】
【特許文献1】特開平5−304273号公報
【特許文献2】特開平7−221034号公報
【特許文献3】特開2002−222871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにキャパシタの電極にHSGによる結晶粒6を用いることにより、一定の専有空間に対するキャパシタの容量を従来のキャパシタに対して2〜3倍程度に拡大することができる。
ところで、この時に形成される半球状の結晶粒6の直径D1は核密度とシリコン膜の堆積量とで決まり、一般的な直径D1の大きさは50nm程度である。この場合、後述のように微細化の要請によるデザインルールのスケールがそれ程厳しくない場合には、特に問題はなかったが、更なる微細化の要請によりデザインルールのスケールがより微細化されてくると、上記結晶粒6の直径D1が50nm程度では、大き過ぎてしまう。例えば更なる微細化の要請により、上記下部電極4のリング状部分の直径H1を例えば100nm程度に設定した場合、或いは結晶粒6の配置密度を高くした場合には、結晶粒6の直径D1が大き過ぎてしまい、この結果、後工程における容量絶縁膜のステップカバレジ不良や下部電極間同士のショート等が発生し、適正なキャパシタを作成できなくなってしまう、という問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、エッチング処理を組み合わせることにより、半球状の結晶粒のサイズを小さく制御することが可能な成膜方法、成膜装置及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核を形成して該結晶核を成長させることにより半球状の結晶粒が表面に形成された結晶粒薄膜を形成する結晶粒薄膜形成工程と、前記結晶粒薄膜の表面を酸化することにより酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜をエッチングにより除去するエッチング工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
このように、被処理体の表面に形成された半球状の結晶粒の表面を酸化して酸化膜を形成し、この酸化膜をエッチングにより除去することにより、半球状の結晶粒のサイズを小さく制御することができる。従って、半導体回路素子のデザインルールのスケールが更に厳しくなって小さくなっても、例えば容量絶縁膜のステップカバレジを向上させることができるのみならず、下部電極同士のショート等の発生も抑制することができる。
【0010】
この場合、例えば請求項2に規定するように、前記結晶粒薄膜形成工程、酸化膜形成工程及びエッチング工程は、全て同一の処理容器内で行われる。
或いは例えば請求項3に規定するように、前記結晶粒薄膜形成工程、酸化膜形成工程及びエッチング工程の内、少なくとも2つの工程は、異なる処理容器内で行われる。
また例えば請求項4に規定するように、前記エッチング工程は、フッ化水素(HF)ガスを用いたドライエッチングを行う。
また例えば請求項5に規定するように、前記エッチング工程は、フッ化水素水(DHF)を用いたウェットエッチングを行う。
また例えば請求項6に規定するように、前記結晶粒薄膜には、不純物がドープされている。
【0011】
また例えば請求項7に規定するように、前記不純物は、前記結晶粒薄膜形成工程と前記酸化膜形成工程との間でドープされる。
また例えば請求項8に規定するように、前記不純物は、前記結晶粒薄膜形成工程の時にドープされる。
また例えば請求項9に規定するように、前記結晶粒薄膜は、薄膜本体がアモルファスのシリコン膜よりなり、結晶粒が多結晶シリコンよりなる。
【0012】
請求項10に係る発明は、真空引き可能になされて被処理体を収容することができる処理容器と、前記被処理体を支持する保持手段と、成膜ガスを供給する成膜ガス供給手段と、酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、エッチングガスを供給するエッチングガス供給手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、装置全体を制御する制御手段と、を有する成膜装置において、前記制御手段は、前記成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核を形成して該結晶核を成長させることにより半球状の結晶粒が表面に形成された結晶粒薄膜を形成し、次に、前記結晶粒薄膜の表面を酸化することにより酸化膜を形成し、その後、前記酸化膜をエッチングにより除去するように制御することを特徴とする成膜装置である。
【0013】
請求項11に係る発明は、真空引き可能になされて被処理体を収容することができる処理容器と、前記被処理体を支持する保持手段と、成膜ガスを供給する成膜ガス供給手段と、酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、エッチングガスを供給するエッチングガス供給手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、装置全体を制御する制御手段と、を有する成膜装置を用いて被処理体の表面に成膜処理を施すに際して、前記成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核を形成して該結晶核を成長させることにより半球状の結晶粒が表面に形成された結晶粒薄膜を形成し、次に、前記結晶粒薄膜の表面を酸化することにより酸化膜を形成し、その後、前記酸化膜をエッチングにより除去するように前記成膜装置を制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る成膜方法、成膜装置及び記憶媒体によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
被処理体の表面に形成された半球状の結晶粒の表面を酸化して酸化膜を形成し、この酸化膜をエッチングにより除去することにより、半球状の結晶粒のサイズを小さく制御することができる。従って、半導体回路素子のデザインルールのスケールが更に厳しくなって小さくなっても、例えば容量絶縁膜のステップカバレジを向上させることができるのみならず、下部電極同士のショート等の発生も抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る成膜方法、成膜装置及び記憶媒体の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明方法を実施するための成膜装置を示す構成図、図2は本発明方法の第1実施例の流れを示すタイムチャート、図3は本発明方法で形成される半球状の結晶粒の形成と形状変化を示す模式図である。
【0016】
この成膜装置では、結晶粒薄膜形成工程、酸化膜形成工程及びエッチング工程の全ての工程を連続的に実施できる装置例について説明する。図示するように、この成膜装置20は下端が開放されて上下方向に所定の長さを有して円筒体状になされた縦型の処理容器22を有している。この処理容器22は、例えば耐熱性の高い石英を用いることができる。この処理容器22の下方より複数枚の被処理体としての半導体ウエハWを複数段に亘って所定のピッチで載置した保持手段としてのウエハボート24が昇降可能に挿脱自在になされている。このウエハボート24は例えば石英よりなり、これには、例えば50〜100枚程度の直径が300mmのウエハWを略等ピッチで多段に支持できるようになっている。
【0017】
またウエハボート24の挿入時には、上記処理容器22の下端の開口部は、例えば石英やステンレス板よりなる蓋部26により塞がれて密閉される。この際、処理容器22の下端部と蓋部26との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材28が介在される。このウエハボート24は、石英製の保温筒30を介してテーブル32上に載置されており、このテーブル32は、処理容器22の下端開口部を開閉する蓋部26を貫通する回転軸34の上端部に支持される。そして、この回転軸34の貫通部には、例えば磁性流体シール36が介設され、この回転軸34を気密にシールしつつ回転可能に支持している。上記した回転軸34は、例えばボートエレベータ等の昇降機構38に支持されたアーム40の先端に取り付けられており、ウエハボート24及び蓋部26等を一体的に昇降できるようになされている。尚、上記テーブル32を上記蓋部26側へ固定して設け、ウエハボート24を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0018】
上記処理容器22の側部には、これを取り囲むようにしてた例えばカーボンワイヤ製のヒータよりなる加熱手段42が設けられており、この内側に位置する処理容器22及びこの中の上記半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。またこの加熱手段42の外周には、断熱材44が設けられており、この熱的安定性を確保するようになっている。また上記処理容器22の下部には、この側壁を気密に貫通させて例えば石英よりなる第1、第2、第3及び第4のガスノズル46、48、50、52がそれぞれ設けられている。また、上記処理容器22の天井部には、横方向へL字状に屈曲させた排気口54が設けられる。
【0019】
そして、上記第1のガスノズル46に成膜ガスを供給する成膜ガス供給手段60が接続され、上記第2のガスノズル48には酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段62が接続される。また上記第3のガスノズル50にはエッチングガスを供給するエッチングガス供給手段64が接続され、上記第4のガスノズル52には不活性ガスとして例えばN ガスを供給する不活性ガス供給手段66が接続される。
【0020】
尚、上記不活性ガスとしてArやHe等を用いてもよい。具体的には、上記成膜ガス供給手段60、酸化性ガス供給手段62、エッチングガス供給手段64及び不活性ガス供給手段66の各ガス通路60A、62A、64A、66Aは、それぞれ上記第1、第2、第3及び第4のガスノズル46、48、50、52へ接続されると共に、各ガス通路60A、62A、64A、66Aには、マスフローコントローラのような流量制御器60B、62B、64B、66B及び開閉弁60C、62C、64C、66Cがそれぞれ順次介設されており、必要に応じて上記各ガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。ここでは上記成膜ガスとしてSi含有ガス、例えばSiH (モノシラン)が用いられ、酸化性ガスとしてはO が用いられ、エッチングガスとしてはSiO 膜を選択的に削ることができるHFガスが用いられている。
【0021】
また上記排気口54には、処理容器22内を真空引きする真空排気系70が接続されている。具体的には、上記真空排気系70のガス通路70Aには、開閉弁70B、バタフライ弁のような圧力制御弁70C及び真空ポンプ70Dがそれぞれ順次介設されている。そして、この装置全体の動作は、例えばマイクロコンピュータ等よりなる制御手段80により制御される。そして、この制御手段80は、この装置全体の動作を制御するためのプログラムを記憶するための例えばフロッピディスクやフラッシュメモリ等よりなる記憶媒体98を有している。
【0022】
次に、以上のように構成された成膜装置20を用いて連続的に行なわれる本発明方法の第1実施例について図2及び図3も参照して説明する。上述したように、以下に説明する各実施例の動作は、上記記憶媒体98に記憶されたプログラムに基づいて行われる。
まず、全体の流れについて説明すると、ウエハWの表面は、既に前工程で図7(A)に示すような形状になされている。例えばシリコン基板よりなる半導体ウエハWの表面には、円筒リング状に形成されて、いわゆるスタックキャパシタを製造できるようになっている下部電極4(リンドープアモルファスシリコン)が多数配列されている。
【0023】
このようなウエハWがアンロード状態で成膜装置20が待機状態の時には、処理容器22はプロセス温度より低い温度に維持されており、常温の多数枚、例えば50枚のウエハWが載置された状態のウエハボート24をホットウォール状態になされた処理容器22内にその下方より上昇させてロードし、蓋部26で処理容器22の下端開口部を閉じることにより処理容器22内を密閉する。
【0024】
そして、処理容器22内を真空引きして所定のプロセス圧力に維持すると共に、加熱手段42への供給電力を増大させることにより、ウエハ温度を上昇させて成膜処理用のプロセス温度まで昇温して安定させ、その後、図2に示すように、結晶粒薄膜形成工程、酸化膜形成工程及びエッチング工程を順次連続的に実行する。図2では温度及び圧力の変化の状態が示されている。この場合、上記各工程では、必要に応じて次のように各ガスが供給される。すなわち成膜ガス供給手段60の接続される第1のガスノズル46からはSiH ガスが供給され、酸化性ガス供給手段62の接続される第2のガスノズル48からはO ガスが供給され、エッチングガス供給手段64の接続される第3のガスノズル50からはHFガスが供給される。尚、必要に応じて不活性ガス供給手段66の接続される第4のガスノズル52からはN ガスが供給される。
【0025】
<結晶粒薄膜形成工程>
まず結晶粒薄膜形成工程について説明する。
この結晶粒薄膜形成工程は、アモルファスSi形成ステップ、核付けステップ及びHSG成長ステップの3ステップよりなり、先の2つのステップ、すなわちアモルファスSi形成ステップ及び核付けステップにおいてSiH ガスを用いる。尚、前述のように必要に応じてN ガスも流す。
【0026】
すなわち、ウエハWを所定の温度に維持したならば、SiH ガスの供給を開示し、ウエハWの表面にアモルファスのシリコン膜を形成する。これにより、図3(A)に示すように、例えばポリシリコン膜よりなる下部電極4の表面にアモルファスのシリコン膜90が少しずつ形成されることになる。この時のSiH ガスの流量は、例えば50〜4000sccmの範囲内である。またこの時のプロセス温度は、例えば500〜550℃の範囲内、プロセス圧力は0.1Torr(13Pa)〜5Torr(665Pa)の範囲内である。
【0027】
このようにして所定の時間に亘ってアモルファスのシリコン膜90を形成したならば、SiH ガスの供給は継続して行ってプロセス温度を僅かに上げると共に、プロセス圧力を僅かに下げることによって核付けステップへ移行する。この核付けステップにより、図3(B)に示すように、アモルファスのシリコン膜90の上に多数のシリコンの結晶核92が形成されることになる。この時のプロセス温度は560〜680℃の範囲内、プロセス圧力は0.001〜1Torrの範囲内である。
【0028】
このようにして所定の時間に亘って核付けステップを行ったならば、次にプロセス温度を維持したまま、SiH ガスの供給を停止し(N ガスを供給している場合にはN ガスの供給も停止)、すなわち全てのガスの供給を停止したまま真空引きを継続して行うことで(この状態をバキュームと称す)、HSG成長ステップへ移行する。このように、バキュームを行うことにより、処理容器内の圧力が大幅に低下してシリコン原子のマイグレーションが発生し、上記結晶核92の部分にアモルファスのシリコンが凝集してくる。これにより、図3(C)に示すように、各結晶核92を中心として半球状の結晶粒6が大きく成長して全体として結晶粒薄膜94が形成される。この場合、結晶粒6は多結晶シリコンよりなり、薄膜本体90は先に説明したようにアモルファスのシリコン膜よりなっている。
【0029】
そして、この時の結晶粒6の直径D1は、先に説明したように平均的には50nm程度になっており、厳しいデザインルールのもとでは、かなり大き過ぎる値となっている。尚、この結晶粒薄膜形成工程における各プロセス条件は単に一例を示したに過ぎず、これに限定されない。このようにして所定の時間に亘ってHSG成長ステップを行ったならば、この結晶粒薄膜形成工程を終えて、次に酸化膜形成工程へ移行する。
【0030】
<酸化膜形成工程>
次に酸化膜形成工程について説明する。
上記のように結晶粒薄膜形成工程が終了したならば、SiH ガスの供給を停止して、バキューム処理を行ったり、真空引きを継続しつつN ガスの供給と供給の停止とを繰り返すサイクルパージを行ったりして、処理容器22内の残留ガスを排除する。そして、プロセス温度を800〜1000℃程度まで上げて、且つN ガスを供給するなどしてプロセス圧力も大気圧程度まで上げる。そして、プロセス温度やプロセス圧力が安定したならば、酸化性ガスとしてO ガスの供給を開始する。これにより、先に形成された結晶粒6の表面や薄膜本体(シリコン膜)90の表面が酸化されて、図3(D)に示すように、表面全体に薄い酸化膜(SiO )96を形成する。この時のO ガスの流量は100〜10000sccmの範囲内である。またプロセス時間は、形成すべき酸化膜96の膜厚にもよるが、例えば1〜120分程度の範囲内である。このようにして所定の時間に亘って酸化膜形成工程を行ったならば、次にエッチング工程へ移行する。
【0031】
<エッチング工程>
次にエッチング工程について説明する。
上記のように、酸化膜形成工程が終了したならば、O ガスの供給を停止して、バキューム処理を行ったり、真空引きを継続しつつN ガスの供給と供給停止とを繰り返すサイクルパージを行ったりして、処理容器22内の残留ガスを排除する。そして、プロセス温度を50〜150℃程度の範囲内まで低下させると共に、プロセス圧力を1〜500Torr程度まで低下させる。そして、プロセス温度及びプロセス圧力が安定したならば、ここでは酸化膜96であるSiO を選択的に削ることができるエッチングガスとしてHFガスの供給を開始する。これにより、先に形成されたSiO 膜よりなる酸化膜96が、ドライエッチングにより図3(E)に示すように全体的に削り取られることになり、結晶粒6の直径D1が小さくなる。
【0032】
この時のHFガスの流量は、100〜10000sccmの範囲内であり、必要に応じてN ガスも流して希釈化する。このように、HSG成長ステップによって形成した半球状の結晶粒6の表面全体を酸化して酸化膜96を形成し、この酸化膜96のみを選択的にエッチング処理により削り取ることにより、結晶粒6の直径D1を大幅に小さくすることができる。従って、半導体回路素子のデザインルールのスケールがより厳しくなって小さくなっても、例えば容量絶縁膜のステップカバレジを向上させることができるのみならず、下部電極同士のショート等の発生も抑制することができる。また、1つの成膜装置20内で上記各工程の全てを行うことができるので、その分、スループットを向上でき、また設備コストも少なくて済む。
【0033】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
先に説明した第1実施例では、薄膜本体と結晶粒6とによりなる結晶粒薄膜94(図3(C)参照)は、ノンドープのシリコンにより形成したが、これに限定されず、この結晶粒薄膜94に不純物をドープ(注入)するようにしてもよい。図4は、このような本発明方法の第2実施例の流れを示すタイムチャートである。
【0034】
図4に示すように、ここでは結晶粒薄膜形成工程と酸化膜形成工程との間で不純物を注入するためのドープ工程を行っている。このドープ工程では、不純物として例えばリン(P)を注入するためにPH ガスを用いている。この時のプロセス温度は、例えば600〜1000℃の範囲内、プロセス圧力は、例えば10〜500Torrの範囲内であるが、特に、このプロセス条件に限定されないのは勿論である。
またこのドープ工程に代えて、図2に示す第2実施例において、結晶粒薄膜形成工程(HSG成長ステップは除く)の時に、SiH ガスと共にPH ガスを同時に供給するようにしてリンをドープさせるようにしてもよい。
【0035】
また上記各実施例においては、1つの成膜装置20内において、各工程を全て行うようにしたが、これに限定されず、各工程をそれぞれ異なる処理装置で行うようにしてもよいし、または結晶粒薄膜形成工程の他に、酸化膜形成工程とエッチング工程の内のいずれか一方を、この成膜装置20で行うようにしてもよい。
また上記エッチング工程ではドライエッチング処理を行ったが、これに限定されず、ウェットエッチング処理を行うようにしてもよい。この場合には、例えばエッチング液としては、フッ化水素水(DHF)を用いることができる。
【0036】
ここで実際に、本発明方法を用いてシリコン膜の結晶粒を形成したので、その時の評価結果について説明する。ここでは、エッチング工程として、フッ化水素水(DHF)を用いたウェットエッチング処理を行うことにより酸化膜を削り取った。図5はHSG結晶粒の形成直後の電子顕微鏡写真を示し、図6はHSG結晶粒の酸化及びエッチング後の電子顕微鏡写真を示す。図5及び図6に示す写真から明らかなように、図6に示す酸化及びエッチング後の結晶粒の大きさは明らかに小さくなっている。測定の結果、図5に示すHSG結晶粒の形成直後の場合には、結晶粒の大きさの平均は50nm程度であったが、図6に示す本発明方法のエッチング処理を行った後の場合には、結晶粒の大きさの平均は30nm程度であり、結晶粒の大きさを大幅に小さくできることが確認できた。
【0037】
尚、ここではSi含有ガスとしてSiH ガスを用いたが、これに限定されず、ジクロロシラン(DCS)、モノシラン[SiH ]、ジシラン[Si ]、ヘキサクロロジシラン[Si Cl ](HCD)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラクロロシラン[SiHCl ](TCS)、ジシリルアミン(DSA)、トリシリルアミン(TSA)、ビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)、[(CH SiH](Trimethyl silane)、[(CH SiN ](Trimethyl silylazide)、[SiF ]、[SiCl F]、[SiI ]、[Si ]よりなる群より選択される1以上のガスを用いることができる。
【0038】
また、ここでは酸化性ガスとしてO ガスを用いたが、これに限定されず、N O、H O、O 、O 、O*(活性種)、NO、NO 、CO 、COよりなる群から選択される1以上のガスを用いることができる。
また、酸化膜をエッチングするためにHFガス、或いはフッ化水素水を用いたが、SiO 膜を選択的にエッチングできるのであれば、上記HFガス、或いはフッ化水素水に限定されない。
また、バッチ式の処理容器に関しては、図1に示した単管構造に限定されず、いわゆる内筒と外筒とよりなる2重管構造の処理容器を有する成膜装置でも本発明を適用し得る。更には、一度に複数枚の半導体ウエハを処理できるバッチ式の成膜装置に限定されず、半導体ウエハを1枚ずつ処理する、いわゆる枚葉式の成膜装置にも本発明を適用することができる。
【0039】
また更に、ここではシリコンの結晶粒を形成する場合を例にとって説明したが、アモルファス膜が結晶核を中心としてマイグレーションによって結晶粒を形成するような薄膜材料であるならば、全ての成膜材料に本発明を適用することができ、例えば成膜材料としてSiGe(シリコンゲルマニウム)を用いる場合にも本発明を適用することができる。
また被処理体としては、半導体ウエハに限定されず、ガラス基板、LCD基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明方法を実施するための成膜装置を示す構成図である。
【図2】本発明方法の第1実施例の流れを示すタイムチャートである。
【図3】本発明方法で形成される半球状の結晶粒の形成と形状変化を示す模式図である。
【図4】本発明方法の第2実施例の流れを示すタイムチャートである。
【図5】HSG結晶粒の形成直後の電子顕微鏡写真である。
【図6】HSG結晶粒の酸化及びエッチング後の電子顕微鏡写真である。
【図7】キャパシタの電極表面に半球状の結晶粒を形成する方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
2 層間絶縁膜
4 下部電極
6 半球状の結晶粒
20 成膜装置
22 処理容器
24 ウエハボート(保持手段)
42 加熱手段
46,48,50,52 ガスノズル
60 成膜ガス供給手段
62 酸化性ガス供給手段
64 エッチングガス供給手段
66 不活性ガス供給手段
80 制御手段
90 アモルファスのシリコン膜
92 結晶核
94 結晶粒薄膜
96 酸化膜
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、
成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核を形成して該結晶核を成長させることにより半球状の結晶粒が表面に形成された結晶粒薄膜を形成する結晶粒薄膜形成工程と、
前記結晶粒薄膜の表面を酸化することにより酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜をエッチングにより除去するエッチング工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記結晶粒薄膜形成工程、酸化膜形成工程及びエッチング工程は、全て同一の処理容器内で行われることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記結晶粒薄膜形成工程、酸化膜形成工程及びエッチング工程の内、少なくとも2つの工程は、異なる処理容器内で行われることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項4】
前記エッチング工程は、フッ化水素(HF)ガスを用いたドライエッチングを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記エッチング工程は、フッ化水素水(DHF)を用いたウェットエッチングを行うことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項6】
前記結晶粒薄膜には、不純物がドープされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記不純物は、前記結晶粒薄膜形成工程と前記酸化膜形成工程との間でドープされることを特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【請求項8】
前記不純物は、前記結晶粒薄膜形成工程の時にドープされることを特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【請求項9】
前記結晶粒薄膜は、薄膜本体がアモルファスのシリコン膜よりなり、結晶粒が多結晶シリコンよりなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項10】
真空引き可能になされて被処理体を収容することができる処理容器と、
前記被処理体を支持する保持手段と、
成膜ガスを供給する成膜ガス供給手段と、
酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、
エッチングガスを供給するエッチングガス供給手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
装置全体を制御する制御手段と、
を有する成膜装置において、
前記制御手段は、前記成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核を形成して該結晶核を成長させることにより半球状の結晶粒が表面に形成された結晶粒薄膜を形成し、次に、前記結晶粒薄膜の表面を酸化することにより酸化膜を形成し、その後、前記酸化膜をエッチングにより除去するように制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
真空引き可能になされて被処理体を収容することができる処理容器と、
前記被処理体を支持する保持手段と、
成膜ガスを供給する成膜ガス供給手段と、
酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、
エッチングガスを供給するエッチングガス供給手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
装置全体を制御する制御手段と、
を有する成膜装置を用いて被処理体の表面に成膜処理を施すに際して、
前記成膜ガスにより前記被処理体の表面に結晶核を形成して該結晶核を成長させることにより半球状の結晶粒が表面に形成された結晶粒薄膜を形成し、次に、前記結晶粒薄膜の表面を酸化することにより酸化膜を形成し、その後、前記酸化膜をエッチングにより除去するように前記成膜装置を制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−73997(P2006−73997A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173035(P2005−173035)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】