説明

排気浄化システム

【課題】排気浄化装置の再生中等において排気浄化装置の排気下流側の排気温度が上昇する場合に、還流流路に設置された装置が損傷することなく排気浄化装置の排気下流側から吸気側に還流流路を通って排ガスを還流できる排気浄化システムを提供する。
【解決手段】ECU80は、DPF50の再生のためにポスト噴射が実行されている場合には、高圧EGR弁42を閉弁して高圧還流流路220にEGRガスが流れることを禁止し、高圧EGR弁42に代えて低圧EGR弁62を開弁し、低圧還流流路230を通って排気側から吸気側にEGRガスを還流させる。ECU80は、低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62のEGRガスの熱による損傷を防止するために、DPF50の排気下流側の排気温度と、低圧還流流路230を流れるEGRガス量とに基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気流路に設置されて排ガス中の有害成分を除去する排気浄化装置の排気下流側から吸気側に排ガスを還流し、排ガスの還流量を還流量調整弁で調整する排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気側から吸気側に排ガスを還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)により、内燃機関の気筒内において燃焼を抑制し、NOxの排出量を低減することが知られている。排気側と吸気側とを接続する還流流路を通って排気側から吸気側に還流される排ガス(EGRガスとも言う。)はEGRクーラで冷却されるとともに、EGR弁により流量を調整される(例えば、特許文献1参照)。EGRクーラでEGRガスの温度を低下することにより、気筒内における燃焼温度が低下して燃焼がさらに抑制されるとともに、同じEGRガス量であれば、より多くの質量の排ガスを還流させることができる。
【0003】
ところで、特許文献1では、排気浄化装置が除去している有害成分を浄化するためにポスト噴射等により排気流路に未燃成分を添加し、未燃成分が酸化触媒等で酸化反応するときの熱を有害成分の浄化に利用している。
【0004】
この場合、排気浄化装置の排気上流側から吸気側にEGRガスを還流させる構成では、EGR弁またはEGRクーラ等の還流流路に設置される装置が排気流路に添加された未燃成分により濡れ、EGRガス中のパティキュレートが付着しやすくなる。例えばパティキュレートがEGR弁の弁部に付着すると、弁部が固着したり、弁部に付着したパティキュレートにより全閉時に隙間ができEGRガスが弁部から漏れる恐れがある。また、EGRクーラ内にパティキュレートが付着すると、EGRクーラの冷却効率が低下する。
【0005】
この問題に対し特許文献1では、排気流路に未燃成分を添加して排気浄化装置を再生する場合には、EGR弁を閉弁し還流流路にEGRガスが流れないようにしている。
しかしながら、EGR弁を閉弁するとEGRガスを吸気側に還流できないので、排気浄化装置の再生中にNOx排出量を低減できないという問題が生じる。
【0006】
そこで、排気浄化装置の排気上流側ではなく排気下流側から吸気側にEGRガスを還流させることが考えられる。この構成では、排気浄化装置の再生のために未燃成分が添加されても、排気浄化装置の排気上流側または排気浄化装置自体に担持されている酸化触媒により未燃成分が酸化反応するので、排気浄化装置の排気下流側には未燃成分が流出しない。
【0007】
これにより、排気浄化装置の再生中に排気浄化装置の排気下流側から還流流路を通って吸気側にEGRガスを還流させても、EGR弁およびEGRクーラが未燃成分に濡れることを防止できる。そして、排気浄化装置の再生中に吸気側にEGRガスを還流できるので、NOxの排出量を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−299480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、排気浄化装置の排気下流側から吸気側にEGRガスを還流させる構成では、排気浄化装置の再生中に添加された未燃成分が酸化反応することにより、排気浄化装置の排気下流側の排気温度が上昇し、温度が上昇したEGRガスが還流流路を通過することになる。すると、EGR弁およびEGRクーラのように、還流流路に設置された装置が熱により損傷する恐れがある。
【0010】
排気浄化装置の排気下流側での排気温度の上昇は、未燃成分の酸化反応により生じる以外にも、排気浄化装置に捕集されたパティキュレートが燃焼する場合にも生じる。
還流流路に設置された装置が熱によって損傷することを防止するために、排気浄化装置の再生中にEGR弁を閉弁すると、前述したたように、排気浄化装置の再生中に発生するNOxを低減できないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、排気浄化装置の再生中等において排気浄化装置の排気下流側の排気温度が上昇する場合に、還流流路に設置された装置が損傷することなく排気浄化装置の排気下流側から吸気側に還流流路を通って排ガスを還流できる排気浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1から18に記載の発明によると、還流流路は排気浄化装置の排気下流側の排ガスを吸気側に還流し、還流量調整弁は還流流路に設置され排気側から吸気側に還流される排ガスの還流量を調整する。
【0013】
これにより、排気浄化装置を再生するために未燃成分を排気流路に添加しても、未燃成分が酸化反応等により消費されるので、排気浄化装置の排気下流側に未燃成分は排出されない。その結果、排気浄化装置の再生中に還流量調整弁を開弁して還流流路を排ガスが流れても、還流量調整弁を含み還流流路に設置された装置が未燃成分に濡れることを防止できる。
【0014】
さらに、請求項1から18に記載の発明によると、還流温度検出手段は、還流流路を通り排気側から吸気側に還流される排ガスの還流温度を検出し、還流量制御手段は、還流温度検出手段が検出する還流温度に基づいて還流量調整弁を制御し還流量を調整する。
【0015】
これにより、例えば排気浄化装置の再生のために添加された未燃成分が酸化反応することにより排気温度が上昇する場合に、還流流路を流れる排ガスの還流温度に基づいて排ガスの還流量を調整するので、還流量調整弁を含み還流流路に設置された装置が高温で多量の排ガスに晒されることを防止できる。
【0016】
その結果、排気浄化装置の再生中等において排気浄化装置の排気下流側の排気温度が上昇する場合にも、還流流路に設置された装置がEGRガスの熱により損傷することを防止しつつ、排気浄化装置の排気下流側から吸気側に排ガスを極力還流できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によると、還流量検出手段は還流流路を通り排気側から吸気側に還流される排ガスの還流量を検出し、還流量制御手段は、還流温度検出手段が検出する還流温度と還流量検出手段が検出する還流量とに基づいて還流量調整弁を制御し還流量を調整する。
【0018】
このように、EGRガスの温度に加え流量に基づいてEGRガスの還流量を調整するので、還流流路に設置された装置がEGRガスの熱エネルギーにより損傷することをより高精度に防止できる。
【0019】
ところで、内燃機関の気筒容積と内燃機関の回転数との積により気筒に吸入されるガスの体積は算出できる。そして、気筒に吸入されるガスの体積とインテークマニホールドにおける吸気圧および吸気温度とに基づいて、気筒内に吸入されるガスの総モル数を気体の状態方程式から算出できる。気筒内に吸入されるガスの総モル数は、吸気量センサから検出された吸気量から算出されるモル数と、排気側から吸気側に還流されるEGRガスのモル数との和である。
【0020】
そこで、請求項3に記載の発明によると、還流量検出手段は、インテークマニホールドの吸気圧および吸気温度と、内燃機関の回転数と、吸気量とに基づいて還流量を推定し還流量として検出する。
【0021】
これにより、インテークマニホールドの吸気圧および吸気温度と内燃機関の回転数とに基づいて気筒内に吸入されるガスの総モル数を算出し、この総モル数に対して吸気量から算出されるモル数を減算すると、排ガスの還流量を推定できる。
【0022】
請求項4に記載の発明によると、還流量制御手段は、還流量検出手段が検出する還流量が多くなるにしたがい還流量調整弁を制御して還流量を低減する。
還流温度が同じであれば、還流量が多いほどEGRガスの熱エネルギーは大きくなるので、還流量検出手段が検出する還流量が多くなるにしたがい還流量を低減することにより、還流流路に設置された装置がEGRガスから受ける熱エネルギーは小さくなる。これにより、還流流路に設置された装置がEGRガスの熱エネルギーにより損傷することを防止できる。
【0023】
請求項5に記載の発明によると、還流温度検出手段は、排気浄化装置の排気下流側の排気温度に基づいて還流温度を検出する。
排気浄化装置の排気下流側にはEGRガスの温である還流温度が上昇する要因は通常存在しないので、排気浄化装置の排気下流側の排気温度に基づいて、還流温度を高精度に検出できる。
【0024】
請求項6に記載の発明によると、排気浄化装置として排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタを備え、還流温度検出手段は、排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、排気浄化装置の排気上流側の未燃成分濃度と、排気浄化装置の排気上流側の酸素濃度と、排気浄化装置に流入する排ガス量と、排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量とのうち、少なくとも排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、排気浄化装置の排気上流側の未燃成分濃度と、排気浄化装置に流入する排ガス量とに基づいて、排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定し、推定した排気温度に基づいて還流温度を検出する。
【0025】
これにより、未燃成分濃度に基づいて未燃成分が酸化反応するときに生じる熱量を算出できる。そして、この熱量と、排気浄化装置に流入する排ガスの排気温度と、排気浄化装置に流入する排ガス量とに基づいて、排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定できる。そして、未燃成分の濃度が高いほど、排気浄化装置に流入する排ガスの排気温度が高いほど、排気浄化装置に流入する排ガス量が少ないほど、排気浄化装置の排気下流側の排気温度は高くなる。
【0026】
尚、酸素濃度が低い場合には、未燃成分の一部が酸化反応しないこともあるので、未燃成分が酸化反応する場合に生じる熱量を、酸素濃度を考慮して推定してもよい。また、フィルタに捕集されているパティキュレートの量によっては、未燃成分の酸化反応により生じる熱量に加え、パティキュレートが燃焼するときに生じる熱量を考慮して排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定してもよい。
【0027】
ところで、排気浄化装置に捕集されているパティキュレートは、例えば気筒への燃料噴射量が増えて排気浄化装置に流入する排ガスの排気温度が上昇すると、未燃成分を添加しない場合にも燃焼することがある。パティキュレートが燃焼するときに生じる熱量は排気浄化装置に捕集されているパティキュレートの量に基づいて算出できる。
【0028】
そして、パティキュレートが燃焼するときに生じる熱量と、排気浄化装置に流入する排ガスの排気温度と、排気浄化装置に流入する排ガス量とに基づいて、排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定できる。また、パティキュレート量が多いほど、排気浄化装置に流入する排ガスの排気温度が高いほど、排気浄化装置に流入する排ガス量が少ないほど、排気浄化装置の排気下流側の排気温度は高くなる。
【0029】
そこで、請求項7に記載の発明によると、排気浄化装置として排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタを備え、還流温度検出手段は、排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、排気浄化装置の排気上流側の未燃成分濃度と、排気浄化装置の排気上流側の酸素濃度と、排気浄化装置に流入する排ガス量と、排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量とのうち、少なくとも排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、排気浄化装置に流入する排ガス量と、排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量とに基づいて、排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定し、推定した排気温度に基づいて還流温度を検出する。
【0030】
尚、酸素濃度が低い場合には、排気浄化装置に捕集されているパティキュレートの一部が燃焼しないこともあるので、パティキュレートが燃焼する場合に生じる熱量を、酸素濃度をパラメータとして推定してもよい。また、未燃成分が添加される場合には、未燃成分の濃度をパラメータとして、未燃成分が酸化反応することにより生じる熱量を推定してもよい。
【0031】
請求項8に記載の発明によると、還流温度検出手段は、下流温度センサが検出する排気浄化装置の排気下流側の排気温度に基づいて還流温度を検出する。
これにより、排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定することなく、直接かつ高精度に排気浄化装置の排気下流側の排気温度を検出できる。
【0032】
請求項9に記載の発明によると、還流量制御手段は、還流温度検出手段が検出する還流温度が高くなるにしたがい還流量調整弁を制御して還流量を低減する。
このように、還流温度が高くなるにしたがい還流量を低減するので、還流流路に設置された装置が熱による損傷を受けることを防止できる。
【0033】
請求項10に記載の発明によると、還流流路に設置される排気冷却装置により、排気側から吸気側に還流される排ガスを冷却する。
これにより、気筒内における燃焼温度が低下して燃焼が抑制されるとともに、同じEGRガス量であれば、より多くの質量の排ガスを還流させることができる。その結果、気筒から排出されるNOx量を低減できる。
【0034】
また、排気冷却装置は、EGRガスを冷却するために冷却フィン等を有しているので、熱による損傷を受け易い構造である。したがって、還流流路を流れる排ガスの還流温度に基づいて排ガスの還流量を調整して排気冷却装置が高温で多量の排ガスに晒されることを防止することが、排気冷却装置の損傷を防止する上で効果的である。
【0035】
請求項11に記載の発明によると、還流温度検出手段は、排気冷却装置の排気上流側の排気温度を還流温度として検出する。
これにより、排気冷却装置の排気上流側の排気温度に基づいて、排気冷却装置が熱により損傷しないように排ガスの還流量を調整できる。
【0036】
ところで、排気浄化装置の排気下流側から排気冷却装置の排気上流側に排ガスが到達するまでに低下する排気温度の温度低下量は、排気浄化装置の排気下流側の排気温度と還流量とに応じて変化する。
【0037】
そこで、請求項12に記載の発明によると、還流温度検出手段は、排気浄化装置の排気下流側の排気温度と、還流量検出手段が検出する還流量とに基づいて排気冷却装置の排気上流側の排気温度を推定し還流温度として検出する。
【0038】
これにより、排気浄化装置の排気下流側から排気冷却装置の排気上流側に排ガスが到達するまでに低下する排気温度の温度低下量を、排気浄化装置の排気下流側の排気温度と還流量とに基づいて推定できる。
【0039】
ところで、排気浄化装置の排気下流側から排気冷却装置の排気上流側に排ガスが到達するまでに低下する排気温度の温度低下量は、排気浄化装置の排気下流側の排気温度が高いほど大きく、還流量が多いほど小さくなる。
【0040】
そこで、請求項13に記載の発明によると、排気浄化装置の排気下流側から排気冷却装置の排気上流側までの排気温度の温度低下量を推定する温度低下量推定手段は、還流量検出手段が検出する還流量が多くなるにしたがい温度低下量が小さくなるように推定し、排気浄化装置の排気下流側の排気温度が高くなるにしたがい温度低下量が大きくなるように推定する。そして、還流温度検出手段は、排気浄化装置の排気下流側の排気温度から温度低下量推定手段が推定する温度低下量を減算して排気冷却装置の排気上流側の排気温度を算出し還流温度として検出する。
【0041】
これにより、排気浄化装置の排気下流側の排気温度と還流量とに基づいて、排気冷却装置の排気上流側の排気温度を高精度に推定して検出できる。
請求項14に記載の発明によると、還流温度検出手段は、さらに排気浄化装置の排気下流側から排気冷却装置の排気上流側までの排気温度の時間遅れ特性に基づいて排気冷却装置の排気上流側の排気温度を還流温度として検出する。
【0042】
これにより、排気浄化装置から排気冷却装置までの還流流路の流路長または流路抵抗等を考慮して、排気浄化装置の排気下流側の排気温度から遅れて変化する排気冷却装置の排気上流側の温度を高精度に推定できる。
【0043】
請求項15に記載の発明によると、還流温度検出手段は、排気冷却装置の排気上流側に設置されている上流温度センサが検出する排気冷却装置の排気上流側の排気温度を還流温度として検出する。
【0044】
これにより、排気冷却装置の排気上流側の排気温度を推定することなく、直接かつ高精度に排気冷却装置の排気上流側の排気温度を検出できる。
請求項16に記載の発明によると、還流量制御手段は、還流温度検出手段が検出する還流温度が所定値以上の場合、還流量調整弁を制御して還流量を調整する。
【0045】
これにより、還流温度が所定値以上の場合には還流量を調整し、還流温度が所定値より低い場合には、例えば還流量調整弁を全開にすることができる。その結果、還流量制御手段が還流量調整弁を制御する制御負荷を低減できる。
【0046】
請求項17に記載の発明によると、排気浄化装置として排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタを備え、フィルタ自体に酸化触媒が担持されているか、あるいはフィルタの排気上流側に設置された酸化触媒を備える。
【0047】
このように、排気浄化装置としてパティキュレートを捕集するフィルタ自体に酸化触媒が担持されているか、あるいはフィルタの排気上流側に酸化触媒が設置されている構成では、排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量が増加し排気浄化装置の圧損が大きくなると、排気流路に未燃成分を添加する。
【0048】
添加された未燃成分が酸化触媒により酸化反応して排気温度が上昇することにより、排気浄化装置が捕集しているパティキュレートが燃焼し、排気浄化装置が再生される。このように、排気浄化装置を再生するときに、排気浄化装置の排気下流側の温度が上昇する。
【0049】
したがって、未燃成分を添加して排気浄化装置が捕集しているパティキュレートを燃焼させる構成では、未燃成分が添加されるタイミングが分かるので、未燃成分が添加され排気温度が上昇するタイミングに合わせて還流流量を適切に調整できる。
【0050】
請求項18に記載の発明によると、排気浄化装置として排ガス中のNOx成分を除去するNOx触媒を備える。
NOx触媒は、通常、白金等の酸化触媒が担持されているので、未燃成分が添加されると、未燃成分が酸化触媒により酸化反応して排気温度が上昇する。そして、未燃成分が添加されるタイミングが分かるので、未燃成分が添加され排気温度が上昇するタイミングに合わせて還流流量を適切に調整できる。
【0051】
尚、本発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態による排気浄化システムを示すブロック図。
【図2】DPF再生時のDPF下流側の温度変化を示すタイムチャート。
【図3】還流量検出値とDPF下流側温度と還流量上限値との関係を示す特性図。
【図4】(A)はDPF下流側からEGRクーラ上流側までの排気温度の遅れ特性を示すタイムチャート、(B)は還流量とDPF下流側温度と還流温度の温度低下量との関係を示す特性図。
【図5】EGRガス量制御ルーチン1を示すフローチャート。
【図6】EGRガス量制御ルーチン2を示すフローチャート。
【図7】第2実施形態による排気浄化システムを示すブロック図。
【図8】第3実施形態による排気浄化システムを示すブロック図。
【図9】第4実施形態による排気浄化システムを示すブロック図。
【図10】第5実施形態による排気浄化システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による排気浄化システムを図1に示す。
【0054】
(排気浄化システム10)
第1実施形態の排気浄化システム10は、燃料噴射弁4から噴射された燃料がディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」とも言う。)2で燃焼し、エンジン2から排出される排ガスを浄化するシステムである。エンジン2は、例えば4気筒の内燃機関である。本実施形態では、高圧還流流路220および低圧還流流路230の2系統で排気側から吸気側に排ガスが還流する。
【0055】
吸気流路200に吸入された吸気はエアクリーナ12で異物を除去され、吸気量センサ14により吸気量を検出される。吸気量センサ14は、高圧還流流路220および低圧還流流路230が吸気流路200に接続する位置よりも吸気上流側に設置されている。つまり、吸気量センサ14が検出する吸気量は、EGRガスが排気側から吸気側に還流される前の吸気量である。
【0056】
そして、ターボチャージャ30のコンプレッサ32で圧縮された吸気は、インタークーラ16で冷却される。コンプレッサ32は、排気流路210に設置されたタービン34によりシャフトを介して回転駆動される。
【0057】
インタークーラ16で冷却された吸気は、スロットル弁18で流量を調整される。スロットル弁18は、軽負荷領域ではEGRガスをより多く入れるために絞られるが、高負荷領域では吸気量増大やポンピングロスの低減等のために、ほぼ全開状態に保持される。
【0058】
スロットル弁18を通過した吸気は、インテークマニホールド20で分岐されてエンジン2の各気筒に吸入される。インテークマニホールド20には、吸気圧センサ22、吸気温センサ24がそれぞれ設置されている。
【0059】
吸気流路200と排気流路210とは高圧還流流路220および低圧還流流路230でそれぞれ接続されており、高圧還流流路220および低圧還流流路230を通り排気側から吸気側に排ガスが還流される。高圧還流流路220は、エンジン2とターボチャージャ30のタービン34との間の排気流路210と、インテークマニホールド20とを接続している。低圧還流流路230は、DPF(Diesel Particulate filter)50の排気下流側の排気流路210と、吸気量センサ14とターボチャージャ30のコンプレッサ32との間の吸気流路200とを接続している。
【0060】
高圧還流流路220がインテークマニホールド20で吸気流路200に接続する位置はターボチャージャ30のコンプレッサ32の吸気下流側であるから、高圧還流流路220が吸気流路200に接続する位置の吸気圧は、低圧還流流路230がターボチャージャ30のコンプレッサ32の吸気上流側で吸気流路200に接続する位置よりも高い。
【0061】
高圧還流流路220には、高圧EGRクーラ40、高圧EGR弁42が排気側からこの順番で設置されている。高圧EGRクーラ40は、例えば、排気上流側から下流側に向けて延びる薄板が所定の間隔をおいて積層されている積層構造で形成されている。薄板と薄板との間には、冷却水が流れる層と、波状のフィンが設置されている層とが交互に形成されている。フィンが設置されている層は冷却流路を形成している。
【0062】
高圧EGR弁42は、デューティ比または供給電力量により開度を制御される電磁弁である。高圧EGR弁42の開度が制御されることにより、高圧還流流路220を通り排気側から吸気側に還流される排ガスの還流量であるEGRガス量が調整される。
【0063】
DPF50は、ターボチャージャ30のタービン34の排気下流側に設置されている。DPF50は、多孔質のセラミックに白金等の酸化触媒が担持されたハニカム構造体で形成されている。DPF50のハニカム構造体の排気流れ方向に形成された流路の入口側および出口側は、互い違いに封止されている。排ガス中の有害成分であるパティキュレートは、入口側が封止されておらず出口側が封止されている流路から流入し、流路を形成するハニカム構造体の隔壁を通過する際に隔壁の細孔に捕集される。そして、排ガスは、入口側が封止されており出口側が封止されていない流路から流出する。
【0064】
DPF50の排気上流側および下流側には、排気温センサ52、54がそれぞれ設置されている。また、差圧センサ56は、DPF50の排気入口と排気出口との間の差圧を検出する。DPF50が捕集しているパティキュレート量が増加すると、差圧センサ56が検出する差圧は大きくなる。したがって、差圧センサ56が検出する差圧に基づいて、DPF50が捕集しているパティキュレート量を推定できる。
【0065】
低圧還流流路230には、低圧EGRクーラ60、低圧EGR弁62が排気側からこの順番で設置されている。低圧EGRクーラ60、低圧EGR弁62は、体格の違いはあるものの、それぞれ前述した高圧EGRクーラ40、高圧EGR弁42とほぼ同一の構成である。
【0066】
低圧EGRクーラ60により、低圧還流流路230を通って排気側から吸気側に還流されるEGRガスが冷却される。また、低圧EGR弁62の開度が制御されることにより、低圧還流流路230を通り排気側から吸気側に還流される排ガスの還流量であるEGRガス量が調整される。
【0067】
ECU80は、図示しないCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ、通信インタフェース等を有するマイクロコンピュータにより主に構成されている。ECU80は、ECU80のROM、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されている制御プログラムをCPUが実行することにより、エンジン運転状態を制御する。
【0068】
ECU80は、吸気量センサ14、吸気圧センサ22、吸気温センサ24、排気温センサ52、54、差圧センサ56、エンジン回転数センサ70、アクセル開度センサ72、ならびにその他の各種センサの出力信号からエンジン運転状態を取得する。そして、ECU80は、取得したエンジン運転状態に基づき、燃料噴射弁4の噴射時期および噴射量を制御する。また、ECU80は、エンジン運転状態に基づいて、エンジンの主なトルクを発生するメイン噴射を含み、メイン噴射の前のパイロット噴射、メイン噴射の後のポスト噴射等の多段噴射を実施する。
【0069】
パイロット噴射は、メイン噴射による着火の前に空気と微少量の燃料とを予め混合させておくために実施される。ポスト噴射は、微少量の燃料を噴射してDPF50が捕集しているパティキュレートを燃焼するために実施される。
【0070】
また、ECU80は、高圧EGR弁42、低圧EGR弁62の開度を制御することにより、排気側から吸気側に還流するEGRガス量を調整する。
(EGR制御の切り替え)
次に、高圧還流流路220と低圧還流流路230との使用の切り替えについて説明する。前述したように、高圧還流流路220は、ターボチャージャ30のコンプレッサ32の下流側の吸気流路200であるインテークマニホールド20内に排気側からEGRガスを還流する。EGRガスは、排気側と吸気側との差圧により吸気側に吸入されるので、エンジン運転状態が高負荷状態であり、ターボチャージャ30の過給圧が高圧になっている場合には、高圧還流流路220を通って排気側から吸気側にEGRガスを還流することが困難なときがある。
【0071】
これに対し、低圧還流流路230は、ターボチャージャ30のコンプレッサ32の下流側よりも吸気圧の低いコンプレッサ32の上流側の吸気流路200に排気側からEGRガスを還流する。したがって、エンジン運転状態が高負荷状態であっても、低圧還流流路230を通って排気側から吸気側にEGRガスを還流できる。
【0072】
そこで、高負荷運転状態の場合には、低圧EGR弁62を開弁し、低圧還流流路230を通って排気側から吸気側にEGRガスを還流させる。この場合、排気側から吸気側に還流するEGRガス量を高精度に調整するために、高圧EGR弁42は閉弁しておく。
【0073】
ただし、エンジン運転状態が高負荷状態以外の場合には、高圧EGR弁42を開弁し、高圧還流流路220を通って排気側から吸気側にEGRガスを還流させる。この場合、排気側から吸気側に還流するEGRガス量を高精度に調整するために、低圧EGR弁62は閉弁しておく。
【0074】
また、DPF50が捕集しているパティキュレートを燃焼させてDPF50を再生するためにポスト噴射を実行する場合、高圧EGR弁42が開弁しEGRガスが高圧還流流路220を流れると、ポスト噴射により排気流路210に添加された未燃成分が高圧EGRクーラ40および高圧EGR弁42に付着し、高圧EGRクーラ40および高圧EGR弁42が未燃成分により濡れる。
【0075】
すると、EGRガス中のパティキュレートが高圧EGRクーラ40の冷却フィンに付着して、高圧EGRクーラ40の冷却効率が低下する。また、EGRガス中のパティキュレートが高圧EGR弁42の弁部に付着すると、弁部が固着したり、パティキュレートが弁部に噛み込むことにより全閉時にEGRガスが弁部から漏れる恐れがある。
【0076】
そこで、DPF50の再生のためにポスト噴射が実行されている場合には、高圧EGR弁42を閉弁して高圧還流流路220にEGRガスが流れることを禁止する。そして、高圧EGR弁42に代えて低圧EGR弁62を開弁し、低圧還流流路230を通って排気側から吸気側にEGRガスを還流させる。
【0077】
ポスト噴射により排気流路210に添加された未燃成分は、DPF50に担持されている酸化触媒により酸化反応しDPF50の排気下流側には排出されない。そして、低圧還流流路230は、DPF50の排気下流側から吸気側にEGRガスを還流させるので、DPF50の再生中に低圧EGR弁62を開弁しても、低圧還流流路230を流れるEGRガスには未燃成分が含まれていない。したがって、DPF50の再生のために排気流路210に未燃成分が添加されても、低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62は未燃成分に濡れない。
【0078】
ところで、ポスト噴射により排気流路210に未燃成分が添加され、DPF50で未燃成分が酸化反応すると、反応熱によりDPF50の排気下流側の排気温度が上昇する。この場合、ポスト噴射量が適量であるか、DPF50に捕集されているパティキュレートが通常状態で燃焼する場合には、DPF50の排気下流側の排気温度は、図2の実線300に示すように許容範囲内に適正に昇温される。
【0079】
これに対し、例えば、ポスト噴射量が多量の場合か、あるいはポスト噴射が実施されない場合にも排気温度の上昇によりDPF50に捕集されている多量のパティキュレートが急激に燃焼すると、DPF50の排気下流側の排気温度が、図2の点線310に示すように排気温度の上限値を超えて過度に上昇することがある。
【0080】
DPF50の排気下流側の排気温度が過度に上昇している場合に低圧EGR弁62を開弁していると、DPF50の排気下流側から低圧還流流路230に高温のEGRガスが流れる。これにより、低圧還流流路230に設置されている低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62等の装置が熱により損傷する恐れがある
(DPF50の排気下流側の排気温度検出)
そこで、本実施形態では、DPF50の排気下流側の排気温度をDPF50の排気下流側に設置された排気温センサ54で検出し、検出した排気温度を還流温度として低圧EGR弁62の開度を制御することにより低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整する。排気温センサ54でDPF50の排気下流側の排気温度を直接検出することにより、DPF50の排気下流側の排気温度を高精度に検出できる。
【0081】
例えば、図3に示すように、DPF50の排気下流側の排気温度が高くなるほど、低圧EGR弁62の開度を小さくして低圧還流流路230を流れるEGRガス量の上限値を小さくし、EGRガス量を減少させる。一方、DPF50の排気下流側の排気温度が低くなるほど、低圧還流流路230を流れるEGRガス量の上限値を大きくし低圧EGR弁62の開度を大きくしてEGRガス量を増加させる。これにより、低圧還流流路230に設置されている低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62が熱により損傷することを防止できる。
【0082】
尚、排気温センサ54を使用せず、エンジン運転状態に基づいてDPF50の排気下流側の排気温度を推定して検出してもよい。例えば、DPF50の排気上流側の排気温度と、DPF50の排気上流側の未燃成分濃度と、DPF50に流入する排ガス量とに基づいて、DPF50で未燃成分が酸化反応することにより上昇する排気温度を推定できる。この推定温度をDPF50の排気下流側の排気温度として検出してもよい。
【0083】
DPF50の排気上流側の排気温度は、DPF50の排気上流側に設置された排気温センサ52の出力信号から検出される。DPF50の排気上流側の未燃成分濃度は、エンジン回転数とアクセル開度とに基づいてマップ等から算出される。DPF50に流入する排ガス量は、インテークマニホールド20における吸気圧と吸気温度とエンジン回転数とに基づいてエンジン2に吸入される吸気量を算出することにより求めることができる。
【0084】
このように、DPF50の排気上流側の排気温度と、DPF50の排気上流側の未燃成分濃度と、DPF50に流入する排ガス量とに基づいて、DPF50で未燃成分が酸化反応することにより上昇する排気温度を推定する場合に、DPF50の排気上流側の酸素濃度と、DPF50に捕集されているパティキュレート量を考慮すると、より高精度にDPF50の排気下流側の排気温度を推定できる。
【0085】
DPF50の排気上流側の酸素濃度は、DPF50の排気上流側の未燃成分濃度と同様に、エンジン回転数とアクセル開度とに基づいてマップ等から算出できる。DPF50に捕集されているパティキュレート量は差圧センサ56の出力信号から検出できる。
【0086】
また、排気流路210に未燃成分が添加されずDPF50の再生中ではない場合にも、DPF50に捕集されているパティキュレートが排気温度の上昇により燃焼し、DPF50の排気下流側の温度が上昇することがある。この場合、DPF50の排気上流側の排気温度と、DPF50に捕集されているパティキュレー量と、DPF50に流入する排ガス量とに基づいて、DPF50で捕集されているパティキュレートが燃焼することにより上昇する排気温度を推定できる。この推定温度をDPF50の排気下流側の排気温度として検出してもよい。
【0087】
このように、DPF50の排気上流側の排気温度と、DPF50に捕集されているパティキュレー量と、DPF50に流入する排ガス量とに基づいて、DPF50で捕集されているパティキュレートが燃焼することにより上昇する排気温度を推定する場合に、DPF50の排気上流側の酸素濃度と、DPF50の排気上流側の未燃成分濃度とを考慮すると、より高精度にDPF50の排気下流側の排気温度を推定できる。
【0088】
(EGRガス量検出)
ところで、低圧還流流路230を流れる排ガスの還流量であるEGRガス量が多い場合には、低圧還流流路230を流れるEGRガスの熱エネルギーが大きくなる。したがって、DPF50の排気下流側の排気温度に加え、低圧還流流路230を流れるEGRガス量に基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整することが望ましい。低圧EGR弁62の開度の制御には、低圧EGR弁62の開度を全閉することも含まれる。
【0089】
例えば、図3に示すように、低圧還流流路230を流れるEGRガス量(還流量検出値)が多くなるほど、低圧EGR弁62の開度を小さくして低圧還流流路230を流れるEGRガス量の上限値を小さくし、EGRガス量を減少させる。一方、低圧還流流路230を流れるEGRガス量が少なくなるほど、低圧EGR弁62の開度を大きくして低圧還流流路230を流れるEGRガス量の上限値を大きくし、EGRガス量を増加させる。
【0090】
ここで、エンジン2に吸入される吸気量は、吸気量センサ14で検出される吸気量と、吸気量センサ14の下流側に還流されるEGRガス量との和である。したがって、低圧還流流路230を流れる排ガスの還流量であるEGRガス量は、エンジン2に吸入される吸気量から、吸気量センサ14で検出される吸気量を減算して求めることができる。
【0091】
エンジン2に吸入される吸気量は、インテークマニホールド20における吸気圧と吸気温度とエンジン回転数とに基づいて算出できる。インテークマニホールド20における圧力および温度は、インテークマニホールド20に設置された吸気圧センサ22、吸気温センサ24の出力信号からそれぞれ検出できる。
【0092】
(低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度検出)
尚、低圧還流流路230に設置されている低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62が熱により損傷することを防止する場合、DPF50の排気下流側ではなく、低圧EGRクーラ60に近い低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度に基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整することが望ましい。
【0093】
低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度は、DPF50の排気下流側に設置された排気温センサ54の出力信号から検出するDPF50の排気下流側の排気温度、あるいは前述したようにエンジン運転状態から推定したDPF50の排気下流側の排気温度に基づいて推定できる。
【0094】
ただし、図4の(A)に示すように、DPF50から低圧EGRクーラ60にEGRガスが到達するまでに、配管長、流路抵抗等により排気温度に時間遅れがある。
さらに、DPF50から低圧EGRクーラ60にEGRガスが到達するまでに熱伝導等により排気温度は低下する。図4の(B)に示すように、排気温度の温度低下量は、DPF50の排気下流側の排気温度が高いほど大きく、還流量であるEGRガス量が多いほど小さい。
【0095】
そこで、このような時間遅れと排気温度の温度低下量とを考慮し、DPF50の排気下流側の排気温度と低圧還流流路230を流れるEGRガス量とから低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度を検出することが望ましい。低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度は、DPF50の排気下流側の排気温度と低圧還流流路230を流れるEGRガス量とから推定した温度低下量をDPF50の排気下流側の排気温度から減算することにより検出できる。
【0096】
ECU80は、ROMまたはフラッシュメモリ等に記憶された制御プログラムを実行することにより、前述したように高圧EGR弁42および低圧EGR弁62の開閉を切り替え、高圧還流流路220と低圧還流流路230との使用を切り替える。そして、低圧還流流路230を使用する場合には、DPF50の排気下流側の排気温度とEGRガス量とに基づいて、低圧EGR弁62の開度を制御して低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整する。
【0097】
(EGRガス量制御)
次に、低圧還流流路230を流れるEGRガス量の制御について、図5および図6に示すフローチャートに基づいて説明する。図5のEGRガス量制御ルーチン1、図6に示すEGRガス量制御ルーチン2は常時実行される。図5および図6において「S」はステップを表している。ECU80は、EGRガス量制御ルーチンとして、図5または図6のいずれのルーチンを実行してもよい。
【0098】
(EGRガス量制御ルーチン1)
図5のS400においてECU80は、前述したように、エンジン2に吸入される吸気量から吸気量センサ14により検出されるEGRガスが吸気側に還流される前の吸気量を減算することにより、低圧還流流路230から吸気流路200に還流されるEGRガス量を還流量として検出する。
【0099】
S402においてECU80は、前述したように、EGRガスの温度に関する時間遅れおよび温度低下量に基づいて、DPF50の排気下流側の排気温度と低圧還流流路230を流れるEGRガス量とから、低圧EGRクーラ60の排気上流側の温度を還流温度として検出する。
【0100】
そして、S404においてECU80は、図3の特性図に基づき、S400において検出した還流量とS402で検出した還流温度とから低圧EGR弁62の開度を制御し、還流量の上限値を調整する。これにより、低圧還流流路230に設置された装置として、低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62が、EGRガスの熱エネルギーにより損傷することを防止する。
【0101】
(EGRガス量制御ルーチン2)
図6のS410、S412、S416は図5のS400、S402、S404と実質的に同一処理を実行するので、説明を省略する。
【0102】
S414においてECU80は、S412において検出した還流温度が所定値以上であるか否かを判定する。還流温度が所定値以上であれば(S414:Yes)、S416においてECU80は、還流量および還流温度から低圧EGR弁62の開度を制御し、還流量の上限値を調整する。
【0103】
還流温度が所定値より低い場合(S414:No)、ECU80は、現在の還流温度では低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62の熱による損傷は生じないと判断し、低圧EGR弁62の開度を制御せず、低圧EGR弁62の開度を現在のままか、全開にしてS410に処理を戻す。
【0104】
EGRガス量制御ルーチン2では、還流温度が所定値より低い場合に低圧EGR弁62の開度を制御しないので、ECU80の処理負荷を低減できる。
第1実施形態において、エンジン2は本発明の内燃機関に相当し、DPF50は本発明の排気浄化装置およびフィルタに相当し、低圧EGRクーラ60は本発明の排気冷却装置に相当し、低圧EGR弁62は本発明の還流量調整弁に相当し、吸気圧センサ22と吸気温センサ24とエンジン回転数センサ70と吸気量センサ14とは本発明の還流量検出手段に相当し、排気温センサ54は本発明の還流温度検出手段および下流温度センサに相当し、低圧還流流路230は本発明の還流流路に相当する。
【0105】
また、排気温センサ54を使用せずにエンジン運転状態に基づいてDPF50の排気下流側の排気温度を推定して検出する場合には、DPF50の排気上流側の排気温度と未燃成分濃度と酸素濃度と、DPF50に流入する排ガス量と、DPF50に捕集されているパティキュレート量とを検出するための、排気温センサ52、エンジン回転数センサ70、アクセル開度センサ72、吸気圧センサ22、吸気温センサ24および差圧センサ56が還流温度検出手段に相当する。
【0106】
そして、ECU80は、上記各種センサの出力信号に基づいて、還流温度検出手段、還流量検出手段、還流量制御手段および温度低下量推定手段として機能する。
また、図5のS400および図6のS410は還流量検出手段が実行する機能に相当し、図5のS402および図6のS412は還流温度検出手段および温度低下量推定手段が実行する機能に相当し、図5のS404および図6のS414、S416は還流量制御手段が実行する機能に相当する。
【0107】
[第2、第3、第4、第5実施形態]
本発明の第2、第3、第4、第5実施形態を図7〜図10にそれぞれ示す。第1実施形態と実質的に同一構成部分に同一符号を付す。
【0108】
図7に示す第2実施形態の排気浄化システム100では、低圧EGR弁62が低圧EGRクーラ60の排気上流側に設置されている。この構成では、低圧EGRクーラ60に冷却される前のEGRガスに低圧EGR弁62が直接晒されるので、低圧EGR弁62の熱による損傷を防止するために、低圧EGR弁62の肉厚を増加する等により低圧EGR弁62の耐熱性を高める必要がある。すると、低圧EGR弁62が大型化し、結果として低圧EGR弁62の流路面積を大きくすることができるので、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を増加できる。
【0109】
図8に示す第3実施形態の排気浄化システム110では、高圧還流流路220を設けず、低圧還流流路230だけを設けている。つまり、排気側から吸気側には、低圧還流流路230だけからEGRガスが還流される。
【0110】
また、第3実施形態では、低圧EGRクーラ60の排気上流側に排気温センサ64を設置している。これにより、DPF50の排気下流側の排気温度と低圧還流流路230を流れるEGRガス量とから低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度を推定するのではなく、低圧EGRクーラ60の排気上流側の排気温度を排気温センサ64の出力信号に基づいて直接かつ高精度に検出できる。
【0111】
第3実施形態において、排気温センサ64は本発明の上流温度センサおよび還流温度検出手段に相当する。
図9に示す第4実施形態の排気浄化システム120では、DPF50に代えて、吸蔵還元型のNOx触媒90が設置されている。NOx触媒90は、燃料リーン状態で排ガス中の有害成分としてNOxを吸蔵し、燃料リッチ状態で吸蔵したNOxを還元する装置である。
【0112】
この構成においても、NOx触媒90が吸蔵しているNOxを還元しNOx触媒を再生するために、ポスト噴射が実行される。ポスト噴射が実行され、排気流路210に未燃成分が添加されることにより、NOx触媒90に担持されている酸化触媒により未燃成分が酸化反応して熱が発生しNOx触媒90が活性化する。そして、吸蔵されているNOxが還元されるときにも熱が発生する。
【0113】
これにより、第1実施形態から第3実施形態と同様に、未燃成分を添加してNOx触媒90を再生するときに、NOx触媒90の下流側の排気温度が上昇する。したがって、ECU80は、NOx触媒90の下流側の排気温度と、低圧還流流路230を流れるEGRガス量とに基づいて、低圧EGR弁62の開度を制御しEGRガス量を調整する。
【0114】
第4実施形態において、NOx触媒90は本発明の排気浄化装置に相当する。
図10に示す第5実施形態の排気浄化システム130では、第1実施形態の構成において、低圧還流流路230に低圧EGRクーラ60を設置せず、低圧EGR弁62だけを設置している。この構成においても、低圧EGR弁62が低圧還流流路230を流れるEGRガスの熱により損傷することを防止するために、DPF50の下流側の排気温度と低圧還流流路230を流れるEGRガス量とに基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、EGRガス量を調整する。
【0115】
以上説明した上記複数の実施形態では、DPF50またはNOx触媒90等の排気浄化装置の排気下流側の排ガスを、低圧還流流路230を通って吸気側に還流する排気浄化システムにおいて、低圧還流流路230を流れるEGRガス温度およびEGRガス量に基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整している。
【0116】
これにより、排気浄化装置を再生するために添加した未燃成分が酸化反応するときに生じる反応熱、あるいは未燃成分を添加していない状態で排気温度が上昇することによりDPF50に捕集されているパティキュレートが燃焼することにより生じる燃焼熱等によりEGRガス温度が上昇しても、低圧EGRクーラ60および低圧EGR弁62が熱により損傷することを防止できる。
【0117】
[他の実施形態]
上記実施形態では、低圧還流流路230を流れるEGRガス温度およびEGRガス量の両方に基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整した。これに対し、低圧還流流路230を流れるEGRガス温度だけに基づいて低圧EGR弁62の開度を制御し、低圧還流流路230を流れるEGRガス量を調整してもよい。
【0118】
上記実施形態では、DPF50またはNOx触媒90の一方を排気浄化装置として排気流路210に設置した。これに対し、DPF50およびNOx触媒90の両方を排気流路210に設置してもよい。また、未燃成分を添加したときに排気温度を上昇させるために、DPF50またはNOx触媒90の排気上流側に酸化触媒を設置してもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、エンジン2に流入する吸気量からEGRガスが還流する前の吸気量を減算してEGRガス量を検出した。これに対し、EGRガス量を検出するために低圧還流流路230に流量センサを設置してもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、ディーゼルエンジンの排気浄化システムに本発明を適用した例について説明した。これに対し、排気浄化装置の排気下流側から吸気側に排ガスを還流し、排気浄化装置の再生等により排気浄化装置の排気下流側の温度が上昇するのであれば、ディーゼルエンジンに限らず、直噴式のガソリンエンジン等、どのような内燃機関用の排気浄化システムにも本発明を適用できる。
【0121】
また、ターボチャージャ30を搭載しない吸気システムに本発明の排気浄化システムを適用してもよい。
上記実施形態では、還流温度検出手段、還流量検出手段、還流量制御手段および温度低下量推定手段の機能の少なくとも一部を、制御プログラムにより機能が特定されるECU80により実現している。これに対し、ECU80が実行している機能の少なくとも一部を、回路構成自体で機能が特定されるハードウェアで実現してもよい。
【0122】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
10、100、110、120、130:排気浄化システム、14:吸気量センサ(還流量検出手段)、22:吸気圧センサ(還流温度検出手段、還流量検出手段)、24:吸気温センサ(還流温度検出手段、還流量検出手段)、50:DPF(排気浄化装置)、52:排気温センサ(還流温度検出手段)、54:排気温センサ(下流温度センサ、還流温度検出手段)、60:低圧EGRクーラ(排気冷却装置)、62:低圧EGR弁(還流量調整弁)、64:排気温センサ(上流温度センサ、還流温度検出手段)、70:エンジン回転数センサ(還流温度検出手段、還流量検出手段)、72:アクセル開度センサ(還流温度検出手段)、80:ECU(還流温度検出手段、還流量検出手段、還流量制御手段、温度低下量推定手段)、90:NOx触媒(排気浄化装置)、200:吸気流路、210:排気流路、230:低圧還流流路(還流流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流路に設置されて排ガス中の有害成分を除去する排気浄化装置と、
前記排気浄化装置の排気下流側の排ガスを吸気側に還流する還流流路に設置され排気側から吸気側に還流される排ガスの還流量を調整する還流量調整弁と、
前記還流流路を通り排気側から吸気側に還流される排ガスの還流温度を検出する還流温度検出手段と、
前記還流温度検出手段が検出する前記還流温度に基づいて前記還流量調整弁を制御し前記還流量を調整する還流量制御手段と、
を備えることを特徴とする排気浄化システム。
【請求項2】
前記還流流路を通り排気側から吸気側に還流される排ガスの還流量を検出する還流量検出手段を備え、
前記還流量制御手段は、前記還流温度検出手段が検出する前記還流温度と前記還流量検出手段が検出する前記還流量とに基づいて前記還流量調整弁を制御し前記還流量を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項3】
前記還流量検出手段は、インテークマニホールドにおける吸気圧および吸気温度と、前記内燃機関の回転数と、吸気量とに基づいて前記還流量を推定し前記還流量として検出することを特徴とする請求項2に記載の排気浄化システム。
【請求項4】
前記還流量制御手段は、前記還流量検出手段が検出する前記還流量が多くなるにしたがい前記還流量調整弁を制御して前記還流量を低減することを特徴とする請求項2または3に記載の排気浄化システム。
【請求項5】
前記還流温度検出手段は、前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度に基づいて前記還流温度を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項6】
前記排気浄化装置として排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタを備え、
前記還流温度検出手段は、前記排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、前記排気浄化装置の排気上流側の未燃成分濃度と、前記排気浄化装置の排気上流側の酸素濃度と、前記排気浄化装置に流入する排ガス量と、前記排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量とのうち、少なくとも前記排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、前記排気浄化装置の排気上流側の未燃成分濃度と、前記排気浄化装置に流入する排ガス量とに基づいて、前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定し、推定した排気温度に基づいて前記還流温度を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の排気浄化システム。
【請求項7】
前記排気浄化装置として排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタを備え、
前記還流温度検出手段は、前記排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、前記排気浄化装置の排気上流側の未燃成分濃度と、前記排気浄化装置の排気上流側の酸素濃度と、前記排気浄化装置に流入する排ガス量と、前記排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量とのうち、少なくとも前記排気浄化装置の排気上流側の排気温度と、前記排気浄化装置に流入する排ガス量と、前記排気浄化装置が捕集しているパティキュレート量とに基づいて、前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度を推定し、推定した排気温度に基づいて前記還流温度を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の排気浄化システム。
【請求項8】
前記排気浄化装置の排気下流側に設置された下流温度センサを備え、
前記還流温度検出手段は、前記下流温度センサが検出する前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度に基づいて前記還流温度を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の排気浄化システム。
【請求項9】
前記還流量制御手段は、前記還流温度検出手段が検出する前記還流温度が高くなるにしたがい前記還流量調整弁を制御して前記還流量を低減することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項10】
前記還流流路に設置され、排気側から吸気側に還流される排ガスを冷却する排気冷却装置を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項11】
前記還流温度検出手段は、前記排気冷却装置の排気上流側の排気温度を前記還流温度として検出することを特徴とする請求項10に記載の排気浄化システム。
【請求項12】
前記還流流路に設置され、排気側から吸気側に還流される排ガスを冷却する排気冷却装置を備え、
前記還流温度検出手段は、前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度と、前記還流量検出手段が検出する前記還流量とに基づいて前記排気冷却装置の排気上流側の排気温度を推定し前記還流温度として検出する、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項13】
前記排気浄化装置の排気下流側から前記排気冷却装置の排気上流側までの排気温度の温度低下量を推定する温度低下量推定手段を備え、
前記温度低下量推定手段は、前記還流量検出手段が検出する前記還流量が多くなるにしたがい前記温度低下量が小さくなるように推定し、前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度が高くなるにしたがい前記温度低下量が大きくなるように推定し、
前記還流温度検出手段は、前記排気浄化装置の排気下流側の排気温度から前記温度低下量を減算して前記排気冷却装置の排気上流側の排気温度を算出し前記還流温度として検出する、
ことを特徴とする請求項12に記載の排気浄化システム。
【請求項14】
前記還流温度検出手段は、さらに前記排気浄化装置の排気下流側から前記排気冷却装置の排気上流側までの排気温度の時間遅れ特性に基づいて前記排気冷却装置の排気上流側の排気温度を算出し前記還流温度として検出することを特徴とする請求項13に記載の排気浄化システム。
【請求項15】
前記還流流路に設置され、排気側から吸気側に還流される排ガスを冷却する排気冷却装置と、
前記排気冷却装置の排気上流側に設置され、前記排気冷却装置の排気上流側の排気温度を検出する上流温度センサと、
を備え、
前記還流温度検出手段は、前記上流温度センサが検出する前記排気冷却装置の排気上流側の排気温度を前記還流温度として検出する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項16】
前記還流量制御手段は、前記還流温度検出手段が検出する前記還流温度が所定値以上の場合、前記還流量調整弁を制御して前記還流量を調整することを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項17】
前記排気浄化装置として排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタを備え、前記フィルタ自体に酸化触媒が担持されているか、あるいは前記フィルタの排気上流側に設置された酸化触媒を備えることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項18】
前記排気浄化装置として排ガス中のNOxを除去する吸蔵還元型のNOx触媒を備えることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の排気浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−1893(P2011−1893A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146152(P2009−146152)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】