説明

磁気抵抗効果素子、薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリ、磁気ディスク装置、磁気センサおよび磁気メモリ

【課題】自由層と固定層が微小な幅の導通部分を介して導通される磁気抵抗効果素子であって、導通部分の幅の制御が容易な磁気抵抗効果素子を実現する。
【解決手段】MR素子5は、積層体30を備えている。積層体30は、互いに反対側を向く第1の面および第2の面を有するスペーサ層24と、スペーサ層24の第1の面に隣接するように配置され、信号磁界に応じて磁化の方向が変化する自由層25と、スペーサ層24の第2の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定された固定層23とを有している。スペーサ層24は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限する。MR素子5は、更に、積層体30の外周面に配置されて、自由層25と固定層23とを導通させる導電膜40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子、ならびに、この磁気抵抗効果素子を有する薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリ、磁気ディスク装置、磁気センサおよび磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。
【0003】
MR素子としては、異方性磁気抵抗(Anisotropic Magnetoresistive)効果を用いたAMR素子や、巨大磁気抵抗(Giant Magnetoresistive)効果を用いたGMR素子や、トンネル磁気抵抗(Tunneling Magnetoresistive)効果を用いたTMR素子等がある。
【0004】
再生ヘッドの特性としては、高感度および高出力であることが要求される。この要求を満たす再生ヘッドとして、既に、スピンバルブ型GMR素子を用いたGMRヘッドが量産されている。最近では、面記録密度の更なる向上に対応するために、TMR素子を用いた再生ヘッドの開発が進められている。
【0005】
スピンバルブ型GMR素子は、一般的には、互いに反対側を向く2つの面を有する非磁性導電層と、この非磁性導電層の一方の面に隣接するように配置された自由層と、非磁性導電層の他方の面に隣接するように配置された固定層と、この固定層における非磁性導電層とは反対側の面に隣接するように配置された反強磁性層とを有している。自由層は信号磁界に応じて磁化の方向が変化する強磁性層である。固定層は、磁化の方向が固定された強磁性層である。反強磁性層は、固定層との交換結合により、固定層における磁化の方向を固定する層である。
【0006】
ところで、従来のGMRヘッドでは、磁気的信号検出用の電流(以下、センス電流という。)を、GMR素子を構成する各層の面に対して平行な方向に流す構造になっていた。このような構造は、CIP(Current In Plane)構造と呼ばれる。これに対し、センス電流を、GMR素子を構成する各層の面と交差する方向、例えばGMR素子を構成する各層の面に対して垂直な方向に流す構造のGMRヘッドの開発も進められている。このような構造は、CPP(Current Perpendicular to Plane)構造と呼ばれる。以下、CPP構造の再生ヘッドに用いられるGMR素子をCPP−GMR素子と呼び、CIP構造の再生ヘッドに用いられるGMR素子をCIP−GMR素子と呼ぶ。
【0007】
前述のTMR素子を用いた再生ヘッドもCPP構造となる。TMR素子は、一般的には、互いに反対側を向く2つの面を有するトンネルバリア層と、このトンネルバリア層の一方の面に隣接するように配置された自由層と、トンネルバリア層の他方の面に隣接するように配置された固定層と、この固定層におけるトンネルバリア層とは反対側の面に隣接するように配置された反強磁性層とを有している。トンネルバリア層は、トンネル効果によりスピンを保存した状態で電子が通過できる非磁性絶縁層である。自由層、固定層および反強磁性層については、スピンバルブ型GMR素子と同様である。
【0008】
ところで、最近、2つの強磁性体を接続する微小接点が大きな磁気抵抗効果を示すことが報告されている。この磁気抵抗効果は、量子的な効果によって発生すると考えられている。以下、この磁気抵抗効果を用いたMR素子を量子的MR素子と呼ぶ。
【0009】
特許文献1には、2つの強磁性体層と、その間のナノ接合部(微小接点)とが同一平面内に形成された構造のMR素子が記載されている。また、特許文献1には、MR素子の形成方法として、強磁性材料よりなる層の上に、パターニングされたレジスト膜を形成した後、強磁性材料よりなる層をイオンミリングによってパターニングする方法が記載されている。
【0010】
また、最近、例えば特許文献2,3に示されるように、大きな出力信号を得ることができるMR素子として、電流狭窄層を含むCPP−GMR素子も提案されている。一般的に、電流狭窄層は、厚み方向に貫く複数の微細な導電部分と、これらの導電部分を互いに分離する絶縁部分とを有している。特許文献2に示されるCPP−GMR素子では、電流狭窄層は、導電部分と絶縁部分のモザイク構造を含んでいる。特許文献3に示されるCPP−GMR素子では、電流狭窄層は、導電性の磁性体および誘電体を含むグラニュラー膜によって構成されている。このグラニュラー膜において、導電性の磁性体は導電部分に対応し、誘電体は絶縁部分に対応する。
【0011】
【特許文献1】特開2005−109241号公報
【特許文献2】特開2005−26699号公報
【特許文献3】特開2004−103769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
量子的MR素子では、大きな磁気抵抗効果を得るためには、微小接点の断面において最も狭い部分の幅を小さくすることが必要であると考えられている。特許文献1に示されるような構造のMR素子では、微小接点は、例えばフォトリソグラフィを用いて形成される。この場合、微小接点の断面において最も狭い部分の幅はフォトリソグラフィによって決められる。そのため、特許文献1に示されるような構造のMR素子では、フォトリソグラフィの精度による限界によって、微小接点の断面において最も狭い部分の幅を小さくすることが難しいという問題点がある。
【0013】
一方、特許文献2,3に示されるような電流狭窄層を含むCPP−GMR素子では、磁気抵抗効果は、電流狭窄層における導電部分の大きさや数に依存する。しかしながら、電流狭窄層における導電部分の大きさや数を精度よく制御することは難しい。そのため、このCPP−GMR素子では、所望の磁気抵抗効果を有する素子を安定して製造することが難しいという問題点がある。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、自由層と固定層が微小な幅の導通部分を介して導通される磁気抵抗効果素子であって、導通部分の微小な幅の制御が容易な磁気抵抗効果素子およびその製造方法、ならびに、この磁気抵抗効果素子を有する薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリ、磁気ディスク装置および磁気センサを提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、2つの強磁性層が微小な幅の導通部分を介して導通される磁気抵抗効果素子であって、導通部分の微小な幅の制御が容易な磁気抵抗効果素子およびその製造方法、ならびに、この磁気抵抗効果素子を有する磁気メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の磁気抵抗効果素子は、互いに反対側を向く第1および第2の面を有するスペーサ層と、スペーサ層の第1の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化する自由層と、スペーサ層の第2の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定された固定層とを含む積層体を備えている。スペーサ層は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものである。積層体は、各層の外周面によって構成された外周面を有している。磁気抵抗効果素子は、更に、積層体の外周面に配置されて、自由層と固定層とを導通させる導電膜を備えている。本発明の第1の磁気抵抗効果素子では、電流が、その少なくとも一部が導電膜を経由するように、自由層と固定層との間に流される。
【0017】
本発明の第1の磁気抵抗効果素子において、導電膜は、磁性材料よりなるものであってもよい。この場合、導電膜の厚みは、2nm以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第1の磁気抵抗効果素子において、導電膜は、非磁性材料よりなるものであってもよい。この場合、導電膜の厚みは、20nm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の磁気抵抗効果素子の製造方法は、積層体を形成する工程と、積層体の外周面に導電膜を形成する工程とを備えている。
【0020】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、外部磁界としての記録媒体からの信号磁界を検出するために媒体対向面の近傍に配置された本発明の第1の磁気抵抗効果素子と、外部磁界を検出するための電流を、自由層と固定層との間に流すための一対の電極とを備えたものである。
【0021】
本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、積層体の外周面は、媒体対向面に向いた部分を有し、導電膜は、外周面の前記部分と媒体対向面との間に配置されていてもよい。
【0022】
本発明のヘッドジンバルアセンブリは、本発明の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、スライダを弾性的に支持するサスペンションとを備えたものである。
【0023】
本発明のヘッドアームアセンブリは、本発明の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、スライダを弾性的に支持するサスペンションと、スライダを記録媒体のトラック横断方向に移動させるためのアームとを備え、サスペンションがアームに取り付けられているものである。
【0024】
本発明の磁気ディスク装置は、本発明の薄膜磁気ヘッドを含み、回転駆動される記録媒体に対向するように配置されるスライダと、スライダを支持すると共に記録媒体に対して位置決めする位置決め装置とを備えたものである。
【0025】
本発明の磁気センサは、本発明の第1の磁気抵抗効果素子と、外部磁界を検出するための電流を、自由層と固定層との間に流すための一対の電極とを備えたものである。
【0026】
本発明の第2の磁気抵抗効果素子は、互いに反対側を向く第1および第2の面を有するスペーサ層と、スペーサ層の第1の面に隣接するように配置された第1の強磁性層と、スペーサ層の第2の面に隣接するように配置された第2の強磁性層とを含む積層体を備えている。第2の強磁性層の保磁力は、第1の強磁性層の保磁力よりも大きい。スペーサ層は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものである。積層体は、各層の外周面によって構成された外周面を有している。本発明の第2の磁気抵抗効果素子は、更に、積層体の外周面に配置されて、第1の強磁性層と第2の強磁性層とを導通させる導電膜を備えている。本発明の第2の磁気抵抗効果素子では、電流が、その少なくとも一部が導電膜を経由するように、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に流される。
【0027】
本発明の第2の磁気抵抗効果素子において、導電膜は、磁性材料よりなるものであってもよい。この場合、導電膜の厚みは、2nm以下であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の第2の磁気抵抗効果素子において、導電膜は、非磁性材料よりなるものであってもよい。この場合、導電膜の厚みは、20nm以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の第2の磁気抵抗効果素子の製造方法は、積層体を形成する工程と、積層体の外周面に導電膜を形成する工程とを備えている。
【0030】
本発明の磁気メモリは、マトリックス状に配列された複数のメモリ素子を備え、メモリ素子が本発明の第2の磁気抵抗効果素子よりなるものである。本発明の磁気メモリは、更に、各メモリ素子に対して情報を書き込むための複数の書き込み線と、各メモリ素子から情報を読み出すための電流を、メモリ素子である磁気抵抗効果素子における第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に流すための複数の読み出し線とを備えている。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1の磁気抵抗効果素子では、積層体の外周面に配置された導電膜によって、自由層と固定層とを導通させる導通部分が形成される。この導通部分では、電流の通過方向に対して直交する断面において最も狭い部分の幅を、導電膜の厚みと一致させることができる。導電膜の微小な厚みを制御することは、フォトリソグラフィによって膜の微小な幅を制御することに比べると容易である。従って、本発明の第1の磁気抵抗効果素子またはその製造方法、もしくは、本発明の第1の磁気抵抗効果素子を有する薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリ、磁気ディスク装置または磁気センサによれば、自由層と固定層とを導通させる導通部分の微小な幅の制御が容易になるという効果を奏する。
【0032】
本発明の第2の磁気抵抗効果素子では、積層体の外周面に配置された導電膜によって、第1の強磁性層と第2の強磁性層とを導通させる導通部分が形成される。この導通部分では、電流の通過方向に対して直交する断面において最も狭い部分の幅を、導電膜の厚みと一致させることができる。導電膜の微小な厚みを制御することは、フォトリソグラフィによって膜の微小な幅を制御することに比べると容易である。従って、本発明の第2の磁気抵抗効果素子またはその製造方法、もしくは本発明の第2の磁気抵抗効果素子を有する磁気メモリによれば、第1の強磁性層と第2の強磁性層とを導通させる導通部分の微小な幅の制御が容易になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図4および図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成の概略について説明する。図4は薄膜磁気ヘッドの媒体対向面および基板に垂直な断面を示す断面図、図5は薄膜磁気ヘッドの磁極部分の媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。
【0034】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面20を備えている。また、薄膜磁気ヘッドは、アルティック(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1と、この基板1の上に配置されたアルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1のシールド層3と、この第1のシールド層3の上に配置されたMR素子5と、このMR素子5の2つの側部に隣接するように配置された2つのバイアス磁界印加層6と、MR素子5およびバイアス磁界印加層6の周囲に配置された絶縁層7とを備えている。MR素子5は、媒体対向面20の近傍に配置されている。絶縁層7は、アルミナ等の絶縁材料によって形成されている。
【0035】
薄膜磁気ヘッドは、更に、MR素子5、バイアス磁界印加層6および絶縁層7の上に配置された磁性材料よりなる第2のシールド層8と、この第2のシールド層8の上に配置されたアルミナ等の非磁性材料よりなる分離層18と、この分離層18の上に配置された磁性材料よりなる下部磁極層19とを備えている。第2のシールド層8および下部磁極層19に用いる磁性材料は、NiFe、CoFe、CoFeNi、FeN等の軟磁性材料である。なお、第2のシールド層8、分離層18および下部磁極層19の代わりに、下部磁極層を兼ねた第2のシールド層を設けてもよい。
【0036】
薄膜磁気ヘッドは、更に、下部磁極層19の上に配置されたアルミナ等の非磁性材料よりなる記録ギャップ層9を備えている。記録ギャップ層9には、媒体対向面20から離れた位置においてコンタクトホール9aが形成されている。
【0037】
薄膜磁気ヘッドは、更に、記録ギャップ層9の上に配置された薄膜コイルの第1層部分10を備えている。第1層部分10は、銅(Cu)等の導電材料によって形成されている。なお、図4において、符号10aは、第1層部分10のうち、後述する薄膜コイルの第2層部分15に接続される接続部を表している。第1層部分10は、コンタクトホール9aの周囲に巻回されている。
【0038】
薄膜磁気ヘッドは、更に、薄膜コイルの第1層部分10およびその周辺の記録ギャップ層9を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層11と、磁性材料よりなる上部磁極層12と、接続部10aの上に配置された導電材料よりなる接続層13とを備えている。接続層13は、磁性材料によって形成されていてもよい。絶縁層11の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となっている。
【0039】
上部磁極層12は、トラック幅規定層12aと連結部分層12bとヨーク部分層12cとを有している。トラック幅規定層12aは、絶縁層11のうちの媒体対向面20側の斜面部分から媒体対向面20側にかけての領域において、記録ギャップ層9および絶縁層11の上に配置されている。トラック幅規定層12aは、記録ギャップ層9の上に形成され、上部磁極層12の磁極部分となる先端部と、絶縁層11の媒体対向面20側の斜面部分の上に形成され、ヨーク部分層12cに接続される接続部とを有している。先端部の幅は記録トラック幅と等しくなっている。接続部の幅は、先端部の幅よりも大きくなっている。
【0040】
連結部分層12bは、コンタクトホール9aが形成された位置において、下部磁極層19の上に配置されている。ヨーク部分層12cは、トラック幅規定層12aと連結部分層12bとを連結している。ヨーク部分層12cの媒体対向面20側の端部は、媒体対向面20から離れた位置に配置されている。また、ヨーク部分層12cは、連結部分層12bを介して下部磁極層19に接続されている。
【0041】
薄膜磁気ヘッドは、更に、連結部分層12bおよび連結部分層12bの周囲に配置されたアルミナ等の無機絶縁材料よりなる絶縁層14を備えている。トラック幅規定層12a、連結部分層12b、接続層13および絶縁層14の上面は平坦化されている。
【0042】
薄膜磁気ヘッドは、更に、絶縁層14の上に配置された薄膜コイルの第2層部分15を備えている。第2層部分15は、銅(Cu)等の導電材料によって形成されている。なお、図4において、符号15aは、第2層部分15のうち、接続層13を介して薄膜コイルの第1層部分10の接続部10aに接続される接続部を表している。第2層部分15は、連結部分層12bの周囲に巻回されている。
【0043】
薄膜磁気ヘッドは、更に、薄膜コイルの第2層部分15およびその周辺の絶縁層14を覆うように配置された絶縁層16を備えている。絶縁層16の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となっている。ヨーク部分層12cの一部は、絶縁層16の上に配置されている。
【0044】
薄膜磁気ヘッドは、更に、上部磁極層12を覆うように配置されたオーバーコート層17を備えている。オーバーコート層17は、例えばアルミナによって構成されている。
【0045】
次に、本実施の形態における薄膜磁気ヘッドの製造方法の概略について説明する。本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、1枚の基板に対して、複数の磁気ヘッドの構成要素を形成して、それぞれ後に磁気ヘッドとなるヘッド予定部が複数列に配列された磁気ヘッド用基礎構造物を作製する。以下、1つのヘッド予定部に着目して、磁気ヘッド用基礎構造物を作製する工程について説明する。
【0046】
磁気ヘッド用基礎構造物を作製する工程では、まず、基板1の上に、スパッタ法等によって絶縁層2を、例えば0.2〜5μmの厚みに形成する。次に、絶縁層2の上に、めっき法等によって第1のシールド層3を、所定のパターンに形成する。次に、図示しないが、全体に、例えばアルミナよりなる絶縁層を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPという。)によって、第1のシールド層3が露出するまで絶縁層を研磨して、第1のシールド層3および絶縁層の上面を平坦化する。
【0047】
次に、第1のシールド層3の上に、MR素子5の一部である積層体30と、2つのバイアス磁界印加層6と、絶縁層7とを形成する。積層体30については、後で詳しく説明する。
【0048】
次に、積層体30、バイアス磁界印加層6および絶縁層7の上に、第2のシールド層8を形成する。第2のシールド層8は、例えばめっき法またはスパッタ法によって形成される。次に、第2のシールド層8の上に、スパッタ法等によって、分離層18を形成する。次に、この分離層18の上に、例えばめっき法またはスパッタ法によって、下部磁極層19を形成する。
【0049】
次に、下部磁極層19の上に、スパッタ法等によって、記録ギャップ層9を、例えば50〜300nmの厚みに形成する。次に、磁路形成のために、後に形成される薄膜コイルの中心部分において、記録ギャップ層9を部分的にエッチングしてコンタクトホール9aを形成する。
【0050】
次に、記録ギャップ層9の上に、薄膜コイルの第1層部分10を、例えば2〜3μmの厚みに形成する。第1層部分10は、コンタクトホール9aの周囲に巻回される。
【0051】
次に、薄膜コイルの第1層部分10およびその周辺の記録ギャップ層9を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機絶縁材料よりなる絶縁層11を所定のパターンに形成する。次に、絶縁層11の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層11の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。
【0052】
次に、絶縁層11のうちの後述する媒体対向面20側の斜面部分から媒体対向面20側にかけての領域において、記録ギャップ層9および絶縁層11の上に、上部磁極層12のトラック幅規定層12aを形成する。
【0053】
トラック幅規定層12aを形成する際には、同時に、コンタクトホール9aが形成された位置において下部磁極層19の上に連結部分層12bを形成すると共に、接続部10aの上に接続層13を形成する。
【0054】
次に、磁極トリミングを行う。すなわち、トラック幅規定層12aの周辺領域において、トラック幅規定層12aをマスクとして、記録ギャップ層9および下部磁極層19の磁極部分における記録ギャップ層9側の少なくとも一部をエッチングする。これにより、図5に示したように、上部磁極層12の磁極部分、記録ギャップ層9および下部磁極層19の磁極部分の少なくとも一部の各幅が揃えられたトリム(Trim)構造が形成される。このトリム構造によれば、記録ギャップ層9の近傍における磁束の広がりによる実効的なトラック幅の増加を防止することができる。
【0055】
次に、ここまでの工程によって形成された積層体の上面全体の上に絶縁層14を、例えば3〜4μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層14を、例えばCMPによって、トラック幅規定層12a、連結部分層12bおよび接続層13の表面に至るまで研磨して平坦化する。
【0056】
次に、平坦化された絶縁層14の上に、薄膜コイルの第2層部分15を、例えば2〜3μmの厚みに形成する。第2層部分15は、連結部分層12bの周囲に巻回される。
【0057】
次に、薄膜コイルの第2層部分15およびその周辺の絶縁層14を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機絶縁材料よりなる絶縁層16を所定のパターンに形成する。次に、絶縁層16の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層16の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。次に、トラック幅規定層12a、絶縁層14,16および連結部分層12bの上に、ヨーク部分層12cを形成する。
【0058】
次に、ここまでの工程によって形成された積層体の上面全体を覆うように、オーバーコート層17を形成する。次に、オーバーコート層17の上に配線や端子等を形成して、磁気ヘッド用基礎構造物が完成する。
【0059】
本実施の形態における薄膜磁気ヘッドの製造方法では、次に、磁気ヘッド用基礎構造物を切断して、1列に配列された複数のヘッド予定部を含むヘッド集合体を作製する。次に、磁気ヘッド用基礎構造物を切断することによってヘッド集合体に形成された1つの面を研磨して、ヘッド集合体に含まれる各ヘッド予定部に対して研磨面を形成する。次に、この研磨面の一部に、MR素子5の一部となる導電膜を形成する。これにより、MR素子5が完成する。導電膜については、後で詳しく説明する。次に、研磨面および導電膜を覆うように、保護膜を形成してもよい。保護膜を形成した場合には、この保護膜の表面が媒体対向面20となる。保護膜を形成しない場合には、研磨面のうち導電膜によって覆われていない部分と導電膜の表面が媒体対向面20となる。次に、媒体対向面20に浮上用レールを形成する。次に、複数のヘッド予定部が互いに分離されるようにヘッド集合体を切断して、複数の薄膜磁気ヘッドを形成する。
【0060】
このようにして製造される薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面20と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドの構成については、後で詳しく説明する。
【0061】
記録ヘッドは、媒体対向面20側において互いに対向する磁極部分を含むと共に、互いに磁気的に連結された下部磁極層19および上部磁極層12と、この下部磁極層19の磁極部分と上部磁極層12の磁極部分との間に設けられた記録ギャップ層9と、少なくとも一部が下部磁極層19および上部磁極層12の間に、これらに対して絶縁された状態で配設された薄膜コイル10,15とを有している。この薄膜磁気ヘッドでは、図4に示したように、媒体対向面20から、絶縁層11の媒体対向面20側の端部までの長さが、スロートハイトTHとなる。なお、スロートハイトとは、媒体対向面20から、2つの磁極層の間隔が大きくなり始める位置までの長さ(高さ)をいう。なお、図4および図5には、長手磁気記録方式用の記録ヘッドを示したが、本実施の形態における記録ヘッドは、垂直磁気記録方式用の記録ヘッドであってもよい。
【0062】
次に、図1ないし図3を参照して、本実施の形態における再生ヘッドの構成について詳しく説明する。図1は再生ヘッドの媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示す断面図である。図2は再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図3は再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。
【0063】
図1ないし図3に示したように、再生ヘッドは、所定の間隔を開けて配置された第1のシールド層3および第2のシールド層8と、第1のシールド層3と第2のシールド層8との間に配置された積層体30とを備えている。積層体30は、MR素子5の一部を構成する。積層体30および第2のシールド層8は第1のシールド層3に積層されている。
【0064】
再生ヘッドは、更に、積層体30の2つの側部に隣接するように配置され、積層体30に対してバイアス磁界を印加する2つのバイアス磁界印加層6と、積層体30およびバイアス磁界印加層6の周囲に配置された絶縁層7とを備えている。バイアス磁界印加層6は、硬磁性層(ハードマグネット)や、強磁性層と反強磁性層との積層体等を用いて構成される。具体的には、バイアス磁界印加層6は、例えばCoPtやCoCrPtによって形成される。絶縁層7は、絶縁膜7a,7bを有している。絶縁膜7aは、第1のシールド層3および積層体30と、バイアス磁界印加層6との間に介在して、これらの間を絶縁する。絶縁膜7bは、バイアス磁界印加層6と第2のシールド層8との間に介在して、これらの間を絶縁する。絶縁膜7a,7bは、例えばアルミナによって形成される。なお、絶縁膜7bは設けられていなくてもよい。
【0065】
図1ないし図3には、MR素子5の構成の一例を示している。前述のように、MR素子5は積層体30を備えている。この積層体30は、互いに反対側を向く第1の面(上面)および第2の面(下面)を有するスペーサ層24と、スペーサ層24の第1の面に隣接するように配置され、信号磁界に応じて磁化の方向が変化する強磁性層である自由層25と、スペーサ層24の第2の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定された強磁性層である固定層23とを有している。図1ないし図3に示した例では、固定層23と自由層25のうち、固定層23の方が第1のシールド層3に近い位置に配置されている。しかし、逆に、自由層25の方が第1のシールド層3に近い位置に配置されていてもよい。
【0066】
積層体30は、更に、固定層23におけるスペーサ層24とは反対側に配置された反強磁性層22と、第1のシールド層3と反強磁性層22との間に配置された下地層21と、自由層25と第2のシールド層8との間に配置された保護層26とを備えている。図1ないし図3に示したMR素子5では、第1のシールド層3の上に、下地層21、反強磁性層22、固定層23、スペーサ層24、自由層25および保護層26が順に積層されている。
【0067】
積層体30は、各層21〜26の外周面によって構成された外周面を有している。各層21〜26の平面形状は、いずれも矩形である。積層体30の外周面は、媒体対向面20に向いた第1の側面30aと、その反対側の第2の側面30bと、第1の側面30aと第2の側面30bとを連結する第3の側面30cおよび第4の側面30dとを含んでいる。第1の側面30aは、ヘッド集合体の1つの面を研磨したときにヘッド予定部に形成された研磨面の一部である。
【0068】
反強磁性層22は、固定層23との交換結合により、固定層23における磁化の方向を固定する層である。下地層21は、その上に形成される各層の結晶性や配向性を向上させ、特に、反強磁性層22と固定層23との交換結合を良好にするために設けられる。保護層26は、その下の各層を保護するための層である。
【0069】
下地層21の厚みは、例えば2〜6nmである。下地層21としては、例えばTa層とRu層との積層体が用いられる。
【0070】
反強磁性層22の厚みは、例えば5〜30nmである。反強磁性層22は、例えば、Pt、Ru、Rh、Pd、Ni、Cu、Ir、CrおよびFeからなる群のうちの少なくとも1種MIIと、Mnとを含む反強磁性材料により構成されている。このうちMnの含有量は35原子%以上95原子%以下、その他の元素MIIの含有量は5原子%以上65原子%以下であることが好ましい。この反強磁性材料には、熱処理しなくても反強磁性を示し、強磁性材料との間に交換結合磁界を誘起する非熱処理系反強磁性材料と、熱処理により反強磁性を示すようになる熱処理系反強磁性材料とがある。この反強磁性層22は、そのどちらにより構成されていてもよい。非熱処理系反強磁性材料にはγ相を有するMn合金等があり、具体的には、RuRhMn、FeMnあるいはIrMn等がある。熱処理系反強磁性材料には規則結晶構造を有するMn合金等があり、具体的には、PtMn、NiMnおよびPtRhMn等がある。
【0071】
なお、固定層23における磁化の方向を固定する層として、上記のような反強磁性層22の代わりに、CoPt等の硬磁性材料よりなる硬磁性層を設けてもよい。この場合には、下地層21の材料としては、Cr、CrTi、TiW等が用いられる。
【0072】
固定層23では、反強磁性層22との界面における交換結合により、磁化の向きが固定されている。本実施の形態における固定層23は、反強磁性層22の上に順に積層されたアウター層31、非磁性中間層32およびインナー層33を有し、いわゆるシンセティック固定層になっている。アウター層31およびインナー層33は、例えば、CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoを含む強磁性材料により構成された強磁性層を含んでいる。アウター層31とインナー層33は、反強磁性的に結合し、磁化の方向が互いに逆方向に固定されている。アウター層31の厚みは、例えば3〜7nmである。インナー層33の厚みは、例えば3〜10nmである。
【0073】
非磁性中間層32の厚みは、例えば0.35〜1.0nmである。非磁性中間層32は、例えば、Ru、Rh、Ir、Re、Cr、ZrおよびCuからなる群のうち少なくとも1種を含む非磁性材料により構成されている。この非磁性中間層32は、インナー層33とアウター層31の間に反強磁性交換結合を生じさせ、インナー層33の磁化とアウター層31の磁化とを互いに逆方向に固定するためのものである。なお、インナー層33の磁化とアウター層31の磁化が互いに逆方向というのは、これら2つの磁化の方向が互いに180°異なる場合のみならず、2つの磁化の方向が180°±20°異なる場合を含む。
【0074】
スペーサ層24は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものである。例えば、スペーサ層24は、全体が絶縁材料よりなる層であってもよい。この場合、スペーサ層24は、電流の通過を完全に阻止する層であってもよいし、トンネル効果によりスピンを保存した状態で電子が通過できるトンネルバリア層であってもよい。スペーサ層24がトンネルバリア層である場合であっても、スペーサ層24は、全体が導体よりなる層に比べると電流の通過を制限する。スペーサ層24がトンネルバリア層である場合には、スペーサ層24の厚みは、例えば0.5〜2nmである。また、スペーサ層24がトンネルバリア層である場合には、スペーサ層24の材料としては、例えばAl、Ni、Gd、Mg、Ta、Mo、Ti、W、HfまたはZrの酸化物または窒化物が用いられる。
【0075】
また、スペーサ層24は、厚み方向に貫く複数の微細な導電部分と、これらの導電部分を互いに分離する絶縁部分とを有する電流狭窄層であってもよい。また、スペーサ層24は、半導体を含む材料によって形成されていてもよい。
【0076】
自由層25の厚みは、例えば2〜10nmである。自由層25は、保磁力が小さい強磁性層によって構成されている。自由層25は、積層された複数の強磁性層を含んでいてもよい。
【0077】
保護層26の厚みは、例えば0.5〜10nmである。保護層26としては、例えばTa層やRu層が用いられる。また、保護層26は、Ta層、Ru層等の組み合わせの2積層構造や、Ta層、Ru層、Ta層の組み合わせや、Ru層、Ta層、Ru層の組み合わせ等の3積層構造としてもよい。
【0078】
MR素子5は、更に、積層体30の外周面に配置されて、自由層25と固定層23とを導通させる導電膜40を備えている。本実施の形態では、導電膜40は、積層体30の外周面のうち、媒体対向面20に向いた部分である第1の側面30aに配置されている。従って、導電膜40は、積層体30の外周面のうちの媒体対向面20に向いた部分と媒体対向面20との間に配置されている。
【0079】
導電膜40は、自由層25と固定層23とを導通させることができるものであれば、その形状や大きさは任意である。図1および図2に示した例では、導電膜40は、積層体30の第1の側面30aの全体と、その周囲のシールド層3,8、絶縁層7およびバイアス磁界印加層6とに接する範囲に配置されている。
【0080】
また、導電膜40の材料は、導電材料であればよい。また、導電膜40の材料は、磁性材料であってもよく、非磁性材料であってもよい。導電膜40を構成する磁性材料としては、例えば、Fe、Co、Niのうちの少なくとも1種を含む磁性金属材料を用いることができる。導電膜40を構成する非磁性材料としては、例えば、Ru、Rh、Ir、Re、Cr、Zr、Cu、Ag、Al、Au、Mg、Mn、Nb、Pd、Pt、Ta、Ti、Vのうちの少なくとも1種を含む非磁性金属材料を用いることができる。
【0081】
MR素子5は、外部磁界、すなわち記録媒体からの信号磁界に応じて抵抗値が変化する。第1および第2のシールド層3,8は、MR素子5に、記録媒体からの信号磁界を検出するための電流であるセンス電流を流すために用いられる。MR素子5の抵抗値はセンス電流より求めることができる。このようにして、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生することができる。シールド層3,8は、本発明における一対の電極に対応する。また、再生ヘッドは、MR素子5と、一対の電極としてのシールド層3,8を備えていることから、本実施の形態に係る磁気センサでもある。
【0082】
本実施の形態におけるMR素子5において、センス電流は、シールド層3,8の間で、積層体30の積層方向に流される。これにより、センス電流は、その少なくとも一部が導電膜40を経由するように、自由層25と固定層23との間に流される。
【0083】
次に、図1ないし図3に示したMR素子5の製造方法について説明する。このMR素子5の製造方法は、積層体30を形成する工程と、この積層体30の外周面に導電膜40を形成する工程とを備えている。
【0084】
積層体30を形成する工程では、まず、第1のシールド層3の上に、例えばスパッタ法を用いて、MR素子5の積層体30を構成する各層となる膜を順に形成する。次に、これらの膜をエッチングによってパターニングして、積層体30を形成する。
【0085】
導電膜40を形成する工程は、前述のように、ヘッド集合体に含まれる各ヘッド予定部に対して研磨面を形成する工程の後に行われる。導電膜40は、例えば、以下のような第1の方法または第2の方法によって形成することができる。
【0086】
第1の方法では、まず、例えばスパッタ法によって、研磨面の前面に導電膜40となる膜を形成する。次に、この膜の上に、フォトリソグラフィによってパターニングされたマスクを形成する。このマスクの形状は、形成すべき導電膜40の形状に対応している。次に、エッチングによって、導電膜40となる膜のうち、マスクによって覆われている部分以外の部分を除去する。次に、マスクを除去する。これにより、残った膜が導電膜40となる。
【0087】
第2の方法では、まず、研磨面の上に、フォトリソグラフィによってパターニングされたマスクを形成する。このマスクは、導電膜40を形成すべき位置に開口部を有している。次に、例えばスパッタ法によって、マスクの開口部内およびマスク上に、導電膜40となる膜を形成する。次に、マスクをリフトオフする。これにより、研磨面の上に残った膜が導電膜40となる。
【0088】
次に、本実施の形態における薄膜磁気ヘッドの作用について説明する。薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。
【0089】
再生ヘッドにおいて、バイアス磁界印加層6によるバイアス磁界の方向は、媒体対向面20に垂直な方向と直交している。MR素子5において、信号磁界がない状態では、自由層25の磁化の方向は、バイアス磁界の方向に揃えられている。一方、固定層23の磁化の方向は、媒体対向面20に垂直な方向に固定されている。
【0090】
MR素子5には、第1および第2のシールド層3,8によってセンス電流が流される。このセンス電流は、シールド層3,8の間で、積層体30の積層方向に流される。これにより、センス電流は、その少なくとも一部が導電膜40を経由するように、自由層25と固定層23との間に流される。スペーサ層24が、電流の通過を完全に阻止する層である場合には、自由層25と固定層23との間に流れるセンス電流の全体が導電膜40を経由する。スペーサ層24が、電流の通過を完全に阻止する層ではない場合には、自由層25と固定層23との間に流れるセンス電流の一部が導電膜40を経由し、自由層25と固定層23との間に流れるセンス電流の残りはスペーサ層24を通過する。
【0091】
本実施の形態に係るMR素子5では、積層体30の第1の側面30aに配置された導電膜40によって、自由層25と固定層23とを導通させる導通部分が形成される。この導通部分では、電流の通過方向に対して直交する断面において最も狭い部分の幅は、導電膜40の厚みと一致している。本実施の形態に係るMR素子5では、少なくとも、自由層25と固定層23とが導電膜40を介して導通する構造に起因して磁気抵抗効果が生じる。
【0092】
導電膜40が磁性材料よりなる場合には、上記の磁気抵抗効果は、量子的MR素子と同様の原理によって生じると考えられる。この場合、大きな磁気抵抗効果を得るためには、導電膜40によって形成される導通部分の断面において最も狭い部分の幅、すなわち導電膜40の厚みは、小さいほど好ましいと考えられる。具体的には、導電膜40の厚みは、0より大きく、2nm以下であることが好ましい。なお、導電膜40の厚みが0より大きいというのは、導電膜40が存在していればよいという趣旨である。従って、導電膜40の厚みは導電膜40を構成する原子の大きさ以上であればよい。
【0093】
導電膜40が非磁性材料よりなる場合には、上記の磁気抵抗効果は、電流狭窄層による磁気抵抗効果と同様の原理によって生じると考えられる。この場合には、大きな磁気抵抗効果を得るためには、導電膜40によって形成される導通部分を集中的に電流が流れることが好ましい。この場合には、導電膜40によって形成される導通部分の断面において最も狭い部分の幅、すなわち導電膜40の厚みは、0より大きく、20nm以下であることが好ましい。
【0094】
なお、本実施の形態に係るMR素子5では、自由層25と固定層23とが導電膜40を介して導通する構造に起因する磁気抵抗効果に加えて、自由層25と固定層23の間にスペーサ層24が配置された構造に起因する磁気抵抗効果が生じていてもよい。例えば、スペーサ層24は、トンネルバリア層や電流狭窄層である場合には、自由層25と固定層23の間にスペーサ層24が配置された構造に起因して磁気抵抗効果が生じる。このように、MR素子5において2種類の磁気抵抗効果が生じる場合には、MR素子5の全体の磁気抵抗効果は、2種類の磁気抵抗効果が複合したものとなる。
【0095】
MR素子5では、記録媒体からの信号磁界に応じて自由層25の磁化の方向が変化し、これにより、自由層25の磁化の方向と固定層23の磁化の方向との間の相対角度が変化し、その結果、前述の磁気抵抗効果により、MR素子5の抵抗値が変化する。MR素子5の抵抗値は、第1および第2のシールド層3,8によってMR素子5にセンス電流を流したときのシールド層3,8間の電位差より求めることができる。このようにして、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
【0096】
次に、本実施の形態に係るMR素子5において、自由層25と固定層23とが導電膜40を介して導通する構造に起因して磁気抵抗効果が生じることを確認した実験について説明する。
【0097】
この実験では、比較例のMR素子と第1ないし第4の実施例のMR素子とを作成し、それらの抵抗値とMR比とを測定した。なお、MR比は、抵抗値に対する磁気抵抗変化の比率である。
【0098】
比較例および第1ないし第4の実施例の各MR素子は、同じ構成の積層体30を備えている。この積層体30の構成を下記の表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
なお、表1に示した構成の積層体30において、スペーサ層24は、厚み0.5nmのAl層を酸化処理して形成された酸化アルミニウム層である。
【0101】
比較例のMR素子は、導電膜40を備えていない。これに対し、第1ないし第4の実施例の各MR素子は、積層体30の第1の側面30aに配置された導電膜40を備えている。第1および第2の実施例の各MR素子における導電膜40は、磁性材料であるNiFeによって形成されている。第1の実施例のMR素子における導電膜40の厚みは0.2nmであり、第2の実施例のMR素子における導電膜40の厚みは0.4nmである。第3および第4の実施例の各MR素子における導電膜40は、非磁性材料であるCuによって形成されている。第3の実施例のMR素子における導電膜40の厚みは0.2nmであり、第4の実施例のMR素子における導電膜40の厚みは0.4nmである。
【0102】
この実験において、比較例および第1ないし第4の実施例の各MR素子は、以下のようにして作製した。まず、表1に示した構成の積層体を含む磁気ヘッド用基礎構造物を作製し、次に、この磁気ヘッド用基礎構造物を切断してヘッド集合体を作製した。この時点では、ヘッド集合体に含まれる各ヘッド予定部に、研磨面は形成されていないので、積層体には、媒体対向面20に向いた第1の側面30aは形成されていない。ただし、この時点の積層体には、他の側面30b,30c,30dは形成されている。この時点の積層体において、スペーサ層24の平面形状は、トラック幅方向の長さが0.06μm、媒体対向面20に垂直な方向の長さが0.5μmの矩形である。また、この時点の積層体の抵抗値とMR比を測定したところ、抵抗値は約100kΩであり、MR比は0であった。
【0103】
この実験では、次に、磁気ヘッド用基礎構造物を切断することによってヘッド集合体に形成された1つの面を研磨して、ヘッド集合体に含まれる各ヘッド予定部に対して研磨面を形成した。これにより、表1に示した構成の積層体30が完成した。この積層体30において、第1の側面30aは、上記研磨面の一部である。この積層体30において、スペーサ層24の平面形状は、トラック幅方向の長さが0.06μm、媒体対向面20に垂直な方向の長さが0.1μmの矩形である。
【0104】
比較例のMR素子を作製する際には、積層体30の第1の側面30aに導電膜40を形成せずに、この第1の側面30aを覆うように保護膜を形成した。保護膜は、第1の側面30aの上にSi膜とダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)膜を順に積層して形成した。
【0105】
第1ないし第4の実施例のMR素子を作製する際には、積層体30の第1の側面30aに、前述の材料および厚みの導電膜40を形成した後、この導電膜40を覆うように保護膜を形成した。この保護膜は、酸化アルミニウム膜とした。
【0106】
下記の表2に、比較例のMR素子の抵抗値およびMR比と、第1ないし第4の実施例の各MR素子における導電膜40の材料、導電膜40の厚み、抵抗値およびMR比とを示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2に示したように、比較例のMR素子ではMR比が0であったのに対し、第1ないし第4の実施例の各MR素子では、いずれも、ある程度の大きさのMR比が得られた。このことから、本実施の形態に係るMR素子5において、自由層25と固定層23とが導電膜40を介して導通する構造に起因して磁気抵抗効果が生じることが分かる。
【0109】
なお、本実施の形態に係るMR素子5では、第1の側面30aと導電膜40との界面の状態を改善したり、導電膜40の材料や厚みの最適化を図ったりすることにより、表2に示した各実施例におけるMR比よりも大きなMR比を実現できると考えられる。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態に係るMR素子5では、積層体30の外周面に配置された導電膜40によって、自由層25と固定層23とを導通させる導通部分が形成される。この導通部分では、電流の通過方向に対して直交する断面において最も狭い部分の幅を、導電膜40の厚みと一致させることができる。導電膜40の微小な厚みを制御することは、フォトリソグラフィによって膜の微小な幅を制御することに比べると容易である。従って、本実施の形態に係るMR素子5またはその製造方法、もしくは、本実施の形態に係るMR素子5を有する薄膜磁気ヘッドまたは磁気センサ(再生ヘッド)によれば、自由層25と固定層23とを導通させる導通部分の微小な幅の制御が容易になる。また、これにより、本実施の形態によれば、所望の磁気抵抗効果を有するMR素子5、もしくは、このMR素子5を有する薄膜磁気ヘッドまたは磁気センサを安定して製造することができる。
【0111】
以下、本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリおよび磁気ディスク装置について説明する。まず、図6を参照して、ヘッドジンバルアセンブリに含まれるスライダ210について説明する。磁気ディスク装置において、スライダ210は、回転駆動される円盤状の記録媒体である磁気ディスクに対向するように配置される。このスライダ210は、主に図4における基板1およびオーバーコート層17からなる基体211を備えている。基体211は、ほぼ六面体形状をなしている。基体211の六面のうちの一面は、磁気ディスクに対向するようになっている。この一面には、媒体対向面20が形成されている。磁気ディスクが図6におけるz方向に回転すると、磁気ディスクとスライダ210との間を通過する空気流によって、スライダ210に、図6におけるy方向の下方に揚力が生じる。スライダ210は、この揚力によって磁気ディスクの表面から浮上するようになっている。なお、図6におけるx方向は、磁気ディスクのトラック横断方向である。スライダ210の空気流出側の端部(図6における左下の端部)の近傍には、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド100が形成されている。
【0112】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリ220について説明する。ヘッドジンバルアセンブリ220は、スライダ210と、このスライダ210を弾性的に支持するサスペンション221とを備えている。サスペンション221は、例えばステンレス鋼によって形成された板ばね状のロードビーム222、このロードビーム222の一端部に設けられると共にスライダ210が接合され、スライダ210に適度な自由度を与えるフレクシャ223と、ロードビーム222の他端部に設けられたベースプレート224とを有している。ベースプレート224は、スライダ210を磁気ディスク262のトラック横断方向xに移動させるためのアクチュエータのアーム230に取り付けられるようになっている。アクチュエータは、アーム230と、このアーム230を駆動するボイスコイルモータとを有している。フレクシャ223において、スライダ210が取り付けられる部分には、スライダ210の姿勢を一定に保つためのジンバル部が設けられている。
【0113】
ヘッドジンバルアセンブリ220は、アクチュエータのアーム230に取り付けられる。1つのアーム230にヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドアームアセンブリと呼ばれる。また、複数のアームを有するキャリッジの各アームにヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドスタックアセンブリと呼ばれる。
【0114】
図7は、本実施の形態に係るヘッドアームアセンブリを示している。このヘッドアームアセンブリでは、アーム230の一端部にヘッドジンバルアセンブリ220が取り付けられている。アーム230の他端部には、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。アーム230の中間部には、アーム230を回動自在に支持するための軸234に取り付けられる軸受け部233が設けられている。
【0115】
次に、図8および図9を参照して、ヘッドスタックアセンブリの一例と本実施の形態に係る磁気ディスク装置について説明する。図8は磁気ディスク装置の要部を示す説明図、図9は磁気ディスク装置の平面図である。ヘッドスタックアセンブリ250は、複数のアーム252を有するキャリッジ251を有している。複数のアーム252には、複数のヘッドジンバルアセンブリ220が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ251においてアーム252とは反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル253が取り付けられている。ヘッドスタックアセンブリ250は、磁気ディスク装置に組み込まれる。磁気ディスク装置は、スピンドルモータ261に取り付けられた複数枚の磁気ディスク262を有している。各磁気ディスク262毎に、磁気ディスク262を挟んで対向するように2つのスライダ210が配置される。また、ボイスコイルモータは、ヘッドスタックアセンブリ250のコイル253を挟んで対向する位置に配置された永久磁石263を有している。
【0116】
スライダ210を除くヘッドスタックアセンブリ250およびアクチュエータは、本発明における位置決め装置に対応し、スライダ210を支持すると共に磁気ディスク262に対して位置決めする。
【0117】
本実施の形態に係る磁気ディスク装置では、アクチュエータによって、スライダ210を磁気ディスク262のトラック横断方向に移動させて、スライダ210を磁気ディスク262に対して位置決めする。スライダ210に含まれる薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって、磁気ディスク262に情報を記録し、再生ヘッドによって、磁気ディスク262に記録されている情報を再生する。
【0118】
本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリおよび磁気ディスク装置は、前述の本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドと同様の効果を奏する。
【0119】
[変形例]
以下、本実施の形態における第1ないし第5の変形例について説明する。図1および図2に示した例では、導電膜40は、積層体30の第1の側面30aの全体と、その周囲のシールド層3,8、絶縁層7およびバイアス磁界印加層6とに接する範囲に配置されている。この場合、導電膜40を通過するセンス電流には、磁気抵抗効果の発現に寄与しない成分も含まれる。この成分がセンス電流全体に占める割合が大きいほど、磁気抵抗効果は低下すると考えられる。第1ないし第5の変形例は、この成分がセンス電流全体に占める割合を小さくなるように改善した例である。
【0120】
まず、図10および図11を参照して、センス電流のうちの磁気抵抗効果の発現に寄与しない成分について説明する。図10は、再生ヘッドの媒体対向面を示している。図11は、再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示している。図10および図11では、便宜上、導電膜40を図示していない。導電膜40が図1および図2に示した例のように形成されている場合、導電膜40を通過するセンス電流には、図11において符号50を付した矢印で示すように、導電膜40を経由して自由層25と固定層23との間に流れる成分が含まれる。この成分は、磁気抵抗効果の発現に寄与する成分である。この他に、導電膜40を通過するセンス電流には、図10において符号51を付した矢印で示すように、積層体30におけるトラック幅方向の外側の領域を通過する成分が存在する。この成分は、磁気抵抗効果の発現に寄与しない成分である。以下、この成分を第1の不要成分という。導電膜40を通過するセンス電流には、更に、図11において符号52を付した矢印で示すように、導電膜40のうちの積層体30の第1の側面30aと媒体対向面20との間に配置された部分を通過するものの、自由層25および固定層23を通過しない成分が存在する。この成分も、磁気抵抗効果の発現に寄与しない成分である。以下、この成分を第2の不要成分という。
【0121】
[第1の変形例]
図12は、第1の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。第1の変形例では、図1および図2に示した例に比べて導電膜40の幅(トラック幅方向の長さ)が狭められており、導電膜40は、積層体30の第1の側面30aとシールド層3,8には接触しているが、絶縁層7およびバイアス磁界印加層6には接触していない。第1の変形例における導電膜40の幅は、積層体30の第1の側面30aにおける幅の最小値よりもわずかに小さい。この第1の変形例によれば、センス電流における第1の不要成分がなくなるため、図1および図2に示した例よりも、MR素子5のMR比を大きくすることが可能になる。
【0122】
[第2の変形例]
図13は、第2の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。第2の変形例では、第1の変形例よりも導電膜40の幅(トラック幅方向の長さ)が狭められている。第2の変形例によれば、第1の変形例に比べて導電膜40を通過する電流の直進性が向上するため、第1の変形例よりもMR素子5のMR比を大きくすることが可能になる。
【0123】
[第3の変形例]
図14は、第3の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図15は、第3の変形例における再生ヘッドの媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示す断面図である。第3の変形例では、導電膜40は、積層体30の第1の側面30aのうちのインナー層33、スペーサ層24および自由層25の各外周面にのみ接触している。第3の変形例における導電膜40の幅(トラック幅方向の長さ)は、第1の変形例と同程度である。この第3の変形例によれば、センス電流における第1の不要成分および第2の不要成分がなくなるため、第1の変形例よりもMR素子5のMR比を大きくすることが可能になる。
【0124】
[第4の変形例]
図16は、第4の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。第4の変形例では、第3の変形例よりも導電膜40の幅(トラック幅方向の長さ)が狭められている。第4の変形例によれば、第3の変形例に比べて導電膜40を通過する電流の直進性が向上するため、第3の変形例よりもMR素子5のMR比を大きくすることが可能になる。
【0125】
[第5の変形例]
図17は、第5の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図18は、第5の変形例における再生ヘッドの媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示す断面図である。第5の変形例では、導電膜40は、積層体30の第1の側面30aのうちのインナー層33、スペーサ層24および自由層25の各外周面にのみ接触している。また、第5の変形例における導電膜40は、島状に成長した膜になっている。第5の変形例における導電膜40は、以下のようにして形成される。すなわち、例えばスパッタ法によって、ヘッド予定部に形成された研磨面の上に、導電膜40の材料よりなり、互いに分離された複数の膜を島状に成長させる。これにより、ある確率で、積層体30の第1の側面30aのうちのインナー層33、スペーサ層24および自由層25の各外周面にのみ接触する膜が形成される。この膜が導電膜40となる。島状に成長した複数の膜には、インナー層33、スペーサ層24および自由層25の各外周面に接触しない複数の膜41も含まれる。これらの膜41は、導電膜40とはならない。これらの膜41は、磁気抵抗効果の発現には寄与しない。また、これらの膜41は、それぞれ小さいものであるため、センス電流における第1の不要成分や第2の不要成分を生じさせるような電流経路を形成することはほとんどない。従って、これらの膜41によるMR素子5の特性に対する悪影響はほとんどない。
【0126】
ヘッド予定部に形成された研磨面の上に、導電膜40の材料よりなる複数の膜が島状に成長するか否かは、膜の厚みや、膜を構成する分子のエネルギーや、研磨面の表面エネルギー等の条件によって決定される。従って、複数の膜が島状に成長する条件を選択することによって、第5の変形例における導電膜40は形成可能である。具体的には、導電膜40の厚みの目標値や、成膜時の温度や、成膜時に使用するガス等の条件を制御することによって、第5の変形例における導電膜40を形成することが可能である。第5の変形例によれば、フォトリソグラフィを利用してパターニングされた導電膜40を形成する場合に比べて、比較的容易に導電膜40を形成することが可能になる。
【0127】
[第2の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図19は、本実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。本実施の形態では、導電膜40は、積層体30の外周面のうち、第1の側面30aではなく、第3の側面30cおよび第4の側面30dに配置されている。導電膜40は、側面30c,30dのそれぞれの全面を覆うように配置されていてもよいし、第1の実施の形態における第1ないし第5の変形例と同様に、側面30c,30dのそれぞれの一部のみを覆うように配置されていてもよい。
【0128】
本実施の形態に係るMR素子5の製造方法における導電膜40を形成する工程では、積層体30を形成した後、絶縁膜7aを形成する前に、例えばスパッタ法によって、側面30c,30dに導電膜40を形成する。従って、導電膜40は、側面30c,30dと絶縁膜7aとの間に配置される。
【0129】
なお、本実施の形態において、導電膜40は、第3の側面30cと第4の側面30dの一方にのみ配置されていてもよい。また、本実施の形態において、導電膜40は、第1の側面30aにも配置されていてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0130】
[第3の実施の形態]
次に、図20を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図20は、本実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示す断面図である。本実施の形態では、導電膜40は、積層体30の外周面のうち、第1の側面30aではなく、第2の側面30bに配置されている。導電膜40は、側面30bの全面を覆うように配置されていてもよいし、第1の実施の形態における第1ないし第5の変形例と同様に、側面30bの一部のみを覆うように配置されていてもよい。
【0131】
本実施の形態に係るMR素子5の製造方法における導電膜40を形成する工程では、積層体30を形成した後、絶縁膜7aを形成する前に、例えばスパッタ法によって、側面30bに導電膜40を形成する。従って、導電膜40は、側面30bと絶縁膜7aとの間に配置される。
【0132】
なお、本実施の形態において、導電膜40は、第2の側面30bの他に、第1の側面30a、第3の側面30cおよび第4の側面30dのうちの少なくとも1つにも配置されていてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0133】
[第4の実施の形態]
次に、図21および図22を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図21は、本実施の形態に係る磁気メモリの主要部を示す斜視図である。図22は、本実施の形態に係るMR素子の断面図である。
【0134】
図21に示したように、本実施の形態に係る磁気メモリは、マトリックス状に配列された複数のメモリ素子60Mと、互いに平行に配置された複数のワード線61と、互いに平行に配置された複数のビット線62と、互いに平行に配置された複数のセンス線63とを備えている。ワード線61とビット線62とセンス線63は、上下に間隔を開けて配置され、互いに絶縁されている。
【0135】
ワード線61とビット線62は、互いに直交する方向に延びている。図21において上から見たときに、メモリ素子60Mが配置された位置において、ワード線61とビット線62とが交差している。ワード線61とビット線62は、各メモリ素子60Mに対して情報を書き込むためのものであり、本発明における書き込み線に対応する。
【0136】
センス線63は、ビット線62に平行に配置されている。各センス線63は、各ビット線62が延びる方向に配置された1列のメモリ素子60Mを直列に接続している。センス線63は、各メモリ素子60Mから情報を読み出すための電流を、各メモリ素子60Mに流すためのものであり、本発明における読み出し線に対応する。
【0137】
図22は、メモリ素子60Mの断面図である。メモリ素子60Mは、本実施の形態に係るMR素子60によって構成されている。このMR素子60は、互いに反対側を向く第1の面(下面)および第2の面(上面)を有するスペーサ層73と、このスペーサ層73の第1の面に隣接するように配置された第1の強磁性層71と、スペーサ層73の第2の面に隣接するように配置された第2の強磁性層73とを含む積層体70を備えている。第2の強磁性層72の保磁力は、第1の強磁性層71の保磁力よりも大きい。第1の強磁性層71の材料としては、例えば、Fe、NiFe、NiFeCoのいずれかを用いることができる。第2の強磁性層72の材料としては、例えば、Co、CoFe、CoPt、MnSbのいずれかを用いることができる。スペーサ層73は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものである。
【0138】
積層体70は、各層71,72,73の外周面によって構成された外周面を有している。MR素子60は、更に、積層体70の外周面に配置されて、第1の強磁性層71と第2の強磁性層72とを導通させる導電膜80を備えている。導電膜80は、第1の強磁性層71と第2の強磁性層72とを導通させることができればよく、積層体70の外周面の全面に配置されていてもよいし、積層体70の外周面の一部にのみ配置されていてもよい。センス線63によって供給される電流は、その少なくとも一部が導電膜80を経由するように、第1の強磁性層71と第2の強磁性層72との間に流される。
【0139】
スペーサ層73は、第1の実施の形態におけるスペーサ層24と同様の特徴を有している。また、導電膜80は、第1の実施の形態における導電膜40と同様の特徴を有している。本実施の形態に係るMR素子60では、第1の実施の形態に係るMR素子5と同様の原理によって磁気抵抗効果を発現する。従って、MR素子60では、第1の強磁性層71の磁化の方向と第2の強磁性層72の磁化の方向との間の相対角度に応じて、MR素子60の抵抗値が変化する。
【0140】
本実施の形態に係るMR素子60の製造方法は、積層体70を形成する工程と、積層体70の外周面に導電膜80を形成する工程とを備えている。積層体70を形成する工程では、例えばスパッタ法を用いて、積層体70を構成する各層となる膜を順に形成する。次に、これらの膜をエッチングによってパターニングして、積層体70を形成する。導電膜80を形成する工程では、例えばスパッタ法によって、積層体70の外周面に導電膜80を形成する。
【0141】
次に、本実施の形態に係る磁気メモリの動作の一例について説明する。まず、任意のメモリ素子60Mに対して情報を書き込む際には、図21において上から見たときに対象となるメモリ素子60Mが配置された位置で交差するワード線61とビット線62にそれぞれ書き込み用の電流を流す。ワード線61を流れる電流の方向は、メモリ素子60Mに書き込む情報が“0”か“1”かによって異なる。対象となるメモリ素子60Mにおける強磁性層71,72の磁化の方向は、ワード線61を流れる電流による磁界とビット線62を流れる電流による磁界との合成磁界によって変えられる。このメモリ素子60Mにおける強磁性層71,72の磁化の方向は、ワード線61を流れる電流の方向によって決まる。
【0142】
任意のメモリ素子60Mから情報を読み出す際には、対象となるメモリ素子60Mに接続されたセンス線63に読み出し用の電流を流すと共に、図21において上から見たときに対象となるメモリ素子60Mが配置された位置を通過するワード線61に、電流の方向が切り替わる再生パルス電流を流す。ワード線61に再生パルス電流を流すと、メモリ素子60Mにおける第1の強磁性層71の磁化の方向は切り替わるが、第2の強磁性層72の磁化の方向は変化しない。そのため、ワード線61に再生パルス電流を流したときのメモリ素子60Mの抵抗値の変化の態様は、第2の強磁性層72の磁化の方向、すなわちメモリ素子60Mに書き込まれている情報に応じて異なる。そのため、ワード線61に再生パルス電流を流したときの、センス線63の電圧変動を検出することにより、メモリ素子60Mに書き込まれている情報を判別することができる。
【0143】
なお、以上の説明では、強磁性層71,72の両方の磁化の方向を変化させてメモリ素子60Mに情報を書き込むようにしたが、第2の強磁性層72の磁化の方向は変化させずに、第1の強磁性層71の磁化の方向のみを変化させて、メモリ素子60Mに情報を書き込むようにしてもよい。
【0144】
本実施の形態に係るMR素子60は、第1の実施の形態に係るMR素子5と同様の効果を奏する。すなわち、本実施の形態に係るMR素子60は、積層体70の外周面に配置された導電膜80によって、第1の強磁性層71と第2の強磁性層72とを導通させる導通部分が形成される。この導通部分では、電流の通過方向に対して直交する断面において最も狭い部分の幅を、導電膜80の厚みと一致させることができる。導電膜80の微小な厚みを制御することは、フォトリソグラフィによって膜の微小な幅を制御することに比べると容易である。従って、本実施の形態に係るMR素子60またはその製造方法、もしくは、本実施の形態に係るMR素子60を有する磁気メモリによれば、第1の強磁性層71と第2の強磁性層72とを導通させる導通部分の微小な幅の制御が容易になる。また、これにより、本実施の形態によれば、所望の磁気抵抗効果を有するMR素子60、もしくは、このMR素子60を有する磁気メモリを安定して製造することができる。
【0145】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1ないし第3の実施の形態において、固定層23はシンセティック固定層に限らない。また、第1の実施の形態では、基体側に再生ヘッドを形成し、その上に、記録ヘッドを積層した構造の薄膜磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。また、薄膜磁気ヘッドを読み取り専用として用いる場合には、薄膜磁気ヘッドを、再生ヘッドだけを備えた構成としてもよい。
【0146】
また、第4の実施の形態に係るMR素子60は、図21に示した構成の磁気メモリに限らず、MR素子を有する磁気メモリ全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の第1の実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面および基板に垂直な断面を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの媒体対向面および基板に垂直な断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの磁極部分の媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリに含まれるスライダを示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドアームアセンブリを示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ディスク装置の要部を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ディスク装置の平面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態におけるセンス電流のうちの磁気抵抗効果の発現に寄与しない成分について説明するための説明図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態におけるセンス電流のうちの磁気抵抗効果の発現に寄与しない成分について説明するための説明図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例における再生ヘッドの媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示す断面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態の第5の変形例における再生ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態の第5の変形例における再生ヘッドの媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示す断面図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面に平行な断面を示す断面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態における再生ヘッドの媒体対向面および基板に垂直な断面を示す断面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係る磁気メモリの主要部を示す斜視図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態に係るMR素子の断面図である。
【符号の説明】
【0148】
1…基板、2…絶縁層、3…第1のシールド層、5…MR素子、6…バイアス磁界印加層、7…絶縁層、8…第2のシールド層、20…媒体対向面、22…反強磁性層、23…固定層、24…スペーサ層、25…自由層、30…積層体、30a…第1の側面、30b…第2の側面、30c…第3の側面、30d…第4の側面、40…導電膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側を向く第1および第2の面を有するスペーサ層と、前記スペーサ層の前記第1の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化する自由層と、前記スペーサ層の前記第2の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定された固定層とを含む積層体を備えた磁気抵抗効果素子であって、
前記スペーサ層は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものであり、
前記積層体は、前記各層の外周面によって構成された外周面を有し、
磁気抵抗効果素子は、更に、前記積層体の前記外周面に配置されて、前記自由層と固定層とを導通させる導電膜を備え、
電流が、その少なくとも一部が前記導電膜を経由するように、前記自由層と固定層との間に流されることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記導電膜は、磁性材料よりなることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記導電膜の厚みは、2nm以下であることを特徴とする請求項2記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記導電膜は、非磁性材料よりなることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記導電膜の厚みは、20nm以下であることを特徴とする請求項4記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
互いに反対側を向く第1および第2の面を有するスペーサ層と、前記スペーサ層の前記第1の面に隣接するように配置され、外部磁界に応じて磁化の方向が変化する自由層と、前記スペーサ層の前記第2の面に隣接するように配置され、磁化の方向が固定された固定層とを含む積層体を備え、
前記スペーサ層は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものであり、
前記積層体は、前記各層の外周面によって構成された外周面を有し、
更に、前記積層体の前記外周面に配置されて、前記自由層と固定層とを導通させる導電膜を備え、
電流が、その少なくとも一部が前記導電膜を経由するように、前記自由層と固定層との間に流される磁気抵抗効果素子を製造する方法であって、
前記積層体を形成する工程と、
前記積層体の前記外周面に前記導電膜を形成する工程と
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項7】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記外部磁界としての前記記録媒体からの信号磁界を検出するために前記媒体対向面の近傍に配置された請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子と、
前記外部磁界を検出するための電流を、前記自由層と固定層との間に流すための一対の電極とを備えたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【請求項8】
前記積層体の前記外周面は、前記媒体対向面に向いた部分を有し、前記導電膜は、前記外周面の前記部分と媒体対向面との間に配置されていることを特徴とする請求項7記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項9】
請求項7または8記載の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
前記スライダを弾性的に支持するサスペンションと
を備えたことを特徴とするヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項10】
請求項7または8記載の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
前記スライダを弾性的に支持するサスペンションと、
前記スライダを記録媒体のトラック横断方向に移動させるためのアームと
を備え、前記サスペンションが前記アームに取り付けられていることを特徴とするヘッドアームアセンブリ。
【請求項11】
請求項7または8記載の薄膜磁気ヘッドを含み、回転駆動される記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
前記スライダを支持すると共に前記記録媒体に対して位置決めする位置決め装置と
を備えたことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子と、
前記外部磁界を検出するための電流を、前記自由層と固定層との間に流すための一対の電極とを備えたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項13】
互いに反対側を向く第1および第2の面を有するスペーサ層と、前記スペーサ層の前記第1の面に隣接するように配置された第1の強磁性層と、前記スペーサ層の前記第2の面に隣接するように配置された第2の強磁性層とを含む積層体を備えた磁気抵抗効果素子であって、
前記第2の強磁性層の保磁力は、前記第1の強磁性層の保磁力よりも大きく、
前記スペーサ層は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものであり、
前記積層体は、前記各層の外周面によって構成された外周面を有し、
磁気抵抗効果素子は、更に、前記積層体の前記外周面に配置されて、前記第1の強磁性層と第2の強磁性層とを導通させる導電膜を備え、
電流が、その少なくとも一部が前記導電膜を経由するように、前記第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に流されることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項14】
前記導電膜は、磁性材料よりなることを特徴とする請求項13記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項15】
前記導電膜の厚みは、2nm以下であることを特徴とする請求項14記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項16】
前記導電膜は、非磁性材料よりなることを特徴とする請求項13記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項17】
前記導電膜の厚みは、20nm以下であることを特徴とする請求項16記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項18】
互いに反対側を向く第1および第2の面を有するスペーサ層と、前記スペーサ層の前記第1の面に隣接するように配置された第1の強磁性層と、前記スペーサ層の前記第2の面に隣接するように配置された第2の強磁性層とを含む積層体を備え、
前記第2の強磁性層の保磁力は、前記第1の強磁性層の保磁力よりも大きく、
前記スペーサ層は、少なくとも一部が導体以外の材料よりなり、電流の通過を阻止または全体が導体よりなる層に比べて電流の通過を制限するものであり、
前記積層体は、前記各層の外周面によって構成された外周面を有し、
更に、前記積層体の前記外周面に配置されて、前記第1の強磁性層と第2の強磁性層とを導通させる導電膜を備え、
電流が、その少なくとも一部が前記導電膜を経由するように、前記第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に流される磁気抵抗効果素子を製造する方法であって、
前記積層体を形成する工程と、
前記積層体の前記外周面に前記導電膜を形成する工程と
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項19】
マトリックス状に配列された複数のメモリ素子を備えた磁気メモリであって、
前記メモリ素子は、請求項18記載の磁気抵抗効果素子よりなり、
磁気メモリは、更に、
各メモリ素子に対して情報を書き込むための複数の書き込み線と、
各メモリ素子から情報を読み出すための電流を、前記メモリ素子である前記磁気抵抗効果素子における前記第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に流すための複数の読み出し線とを備えたことを特徴とする磁気メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−34689(P2008−34689A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207808(P2006−207808)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】