説明

第1絶縁ゲート電界効果トランジスタが第2電界効果トランジスタと直列に接続された半導体デバイス

第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)が第2電界効果トランジスタFET(2)と直列に接続された半導体デバイスであって、前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタの厚くドープされたドレイン接点領域(191)へ電気的に接続されている厚くドープされたソース領域(19A)を前記第2電界効果トランジスタ(2)が有し、更に第2電界効果トランジスタ(2)のピンチ電圧Vpよりも前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)のブレークスルー電圧の方が高い前記半導体デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1絶縁ゲート電界効果トランジスタが第2電界効果トランジスタと直列に接続されている新規な半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧で高電流のLDMOSトランジスタは、スマート・パワー・アプリケーションで使用されるごく普通な装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,396,085号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ドリフト領域パラメータのパワーLDMOSの静的特性に及ぼす影響」電子デバイスに関するIEEE会報、ED28巻12号1455ページから1466ページ(1981年12月)
【0005】
そうした装置について、高電流と低いオン抵抗(on−resistance)のためにドリフト領域上でゲートをオーバーラップさせることの重要さが、Sel Colakにより「ドリフト領域パラメータのパワーLDMOSの静的特性に及ぼす影響」、電子デバイスに関するIEEE会報、ED 28巻、12号、1455ページから1466ページまで(1981年12月)に提唱されている。ゲートのオーバーラップは、高電流と低オン抵抗を有するために非常に有効ではあるが、それはゲート電圧と共に大きく変動する非常に高い入力キャパシタンスを引き起こし、これが高周波性能を限定する。
【0006】
Baligaによる米国特許第5,396,085号は、シリコンMOSFETとJFETを直列に結合することを提唱し、詳しくはこのJFETは2つの離散デバイスが互いに接着されていて、珪素と炭化珪素の複合基板を形成するようにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の米国特許についての1つの問題は、それが高電圧を必要とし従って充分な冷却が必要とするので、他の構成要素と共に1つの基板上に構成要素を結合することが困難なことである。それは使用不可能であり、低い電圧制御機能に結びついている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って本発明の1つの目的は、第1絶縁ゲート電界効果トランジスタが第2電界効果トランジスタと直列に接続されて、上記の公知の構成要素の欠点を防止して、より高い電流とより低いオン抵抗を可能にし、また所与の領域内で機能するためにより低い電力を必要とする、新規な半導体デバイスを提供することである。
【0009】
本発明によるこの目的は、上記のタイプのトランジスタにより得られ、本発明によれば、第2電界効果トランジスタは厚くドープされたソース領域を有し、これが第1絶縁ゲート電界効果トランジスタの厚くドープされたドレイン接点領域に電気的に結合されており、そして更に第1絶縁ゲート電界効果トランジスタのブレークスルー(breakthrough)電圧が第2電界効果トランジスタのピンチ(pinch)電圧Vpよりも高いことにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
さて本発明を同封の図面の助けを借りて一層詳細に説明する。
【図1】高電圧LDMOSトランジスタの基本的な実施の略図である。
【図2】本発明により直列に結合されたMOSトランジスタとJFETトランジスタの接続の原理を示す。
【図3】本発明の非限定的な実施例を示す。
【図4a】本発明の2つの代替実施例であって図3に示したものの変形である。
【図4b】本発明の2つの代替実施例であって図3に示したものの変形である。
【図5a】図2の右側に示したJFETトランジスタに対応する2つの代わりのJFETトランジスタを示す。
【図5b】図2の右側に示したJFETトランジスタに対応する2つの代わりのJFETトランジスタを示す。
【図6】JFETをMESFETで置換えた代わりの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本出願と同一発明者の米国特許5,146,298号による高電圧LDMOSトランジスタの典型的基本的な実施例を示す。この構成要素は、MOSトランジスタとJFETの直列の内部結合として見ることができる。JFETソースSjは、また内部MOSトランジスタのドレインDmでもある。このゲート物質は、チャネル領域に重なる形に従って、ポリシリコンで作られている。JFETは最大電流を決定する。高電流を得るためにはソースSj抵抗が小さいことが重要である。重なりゲートにおいて、ゲート上の正電圧はソースSj内の電荷キャリアの集中を増加させ、それにより領域内の抵抗を減少させ、その結果として電流が増加する。最大電流は重なりがどれだけ大きいかに深く依存している。1.0μmの重なりについて200mAが得られ、もし重なりが0.1μmならば約140mAへ減少する。
【0012】
図2は、MOSをJFETと直列に結合する原理を示す。JFETソース抵抗は、n+ソース拡散により非常に低くされ、またMOSトランジスタについて、ドレインn+拡散が同様にする。複合構成要素が高い電圧に抵抗することができる場合は、JFETのピンチ電圧VpがMOS構成要素のブレークスルー電圧Vbrよりも低い必要がある。JFETは、MOSトランジスタのブレークスルー電圧よりも低い電圧においてピンチされる、すなわちカットダウン(cut down)される。構成要素の同一幅Wについて、電流は250mAまで増加される。一方MOSトランジスタの幅Wが3倍ないし4倍大きくされれば、電流は350mA以上まで増加される。MOSトランジスタを幅広くすればトランジスタを駆動するためにゲートに必要な電圧は2ないし3Vであるのに対し、同一幅のトランジスタであれば10ないし15Vが必要である。これの意味することは、追加の電圧源の必要なしに制御ロジックとして同一電圧において構成要素を駆動できることであり、これは大きな長所であり、また構成要素を駆動するのに必要な電力を4分の1ないし5分の1に減少できることである。
【0013】
たとえば絶縁ゲート電界効果トランジスタの幅がJFETの幅よりも4倍広くされた場合は、複合デバイスの入力キャパシタンスは4倍大きくなり、またゲート電圧は12Vから3Vへ減少する。入力キャパシタ内に蓄積されるエネルギーはCV2に比例し、従ってスイッチングのための入力電圧は4分の1へ減少する。
【0014】
更に、JFETのドレインと絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲートの間の距離が増加するにつれて、これらドレインとゲートの間のキャパシタンスが減少するが、これは高周波性能のために非常に重要な事である。
【0015】
絶縁ゲート電界効果トランジスタ内にブレークスルー電圧が起り得るよりも充分に以前にJFETがピンチされてしまうので、絶縁ゲート電界効果トランジスタはより高い電圧からシールドされる。
【0016】
これは絶縁ゲート電界効果トランジスタのゲートに近接した電界を劇的に減少させて、信頼性を改善する。ゲートに近接した高い電界は、現在のLDMOSデバイスにおける信頼性の重要な問題である。
【0017】
図3には本発明によるトランジスタ配置の好ましい実施例が示され、第1絶縁ゲート電界効果トランジスタとしてのMOSトランジスタ1が、第2電界効果トランジスタとしての接合型電界効果トランジスタ2と直列に、本発明の好ましい実施例により、同一のダイ(die)上にあるものの略図を示す。
【0018】
図3は、右側で横方向のJFET2の断面図を示し、これは同一半導体ダイ上に形成された左側のMOSトランジスタ1と直列になっている。
【0019】
第1導電性タイプの物質の基板10は、約12μmの厚さwを有するエピタキシャル層、および約500μmの厚さを有するよくドープされた基盤の上部で10ないし15オーム・センチメートルの抵抗からなる。第2導電性タイプの物質のJFETのためのポケット11は、たとえば1平方センチメートル当たり5*1012個の原子でドープされたnタイプ物質である。ポケット11はダイ8の表面9よりもほぼ4μm下の深さへ延伸している。上記および下記のドーピングのレベルと寸法は、約200Vのブレークダウン電圧を有するデバイスのためのものである。類似のポケット111が、図3の左側にMOSトランジスタのために形成されている。
【0020】
ポケット11およびポケット111の中または部分的に中に、第1導電性タイプ(たとえばpタイプ)の物質が、一立方センチメートル当たり1017と1020の間の原子数でドープされる。ボディ領域12は、ダイ8の表面9よりも下に1μmまたは未満の深さに典型的に延伸している。MOSトランジスタ121のためのボディ領域内に、第2導電性タイプ(たとえばn+タイプ)の物質が、1立方センチ当たり1018と1020の間の原子数でドープされている。ソース領域131は、ダイ8の表面9よりもたとえば0.4μmまたは未満低く延伸している。ポケット領域11および111の外側にボディ領域12および121を延伸することにより、ボディ領域12と121は基板10へ電気的に接続されている。
【0021】
第2導電性タイプ(たとえばn+タイプの物質)のドレイン接点領域16および161は、1立方センチメートル当たり1018と1020の間の原子数でドープされる。ドレイン接点領域16と161は、ダイ8の表面9よりも0.4μmまたは未満だけ下に延伸している。ドレイン接点領域16と同様にJFET16Aのためのソース接点領域が、ボディ領域12とドレイン接点領域16の間に配置されている。
【0022】
図3の左側、MOSトランジスタのソース接点171は、ボディ領域121とソース領域131のソース接点領域部分との電気的接触において配置されている。MOSトランジスタのドレイン接点191が、ドレイン接点領域161との電気的接触において表面9上に配置されている。絶縁層7がダイ8の表面9上に配置されている。
【0023】
図示のように、ボディ領域121のチャネル領域部分の上方に、絶縁層7上にゲート接点181が配置されている。ボディ領域12との接触において表面9上にボディ接点17が配置されている。ドレイン接点領域16との接触において表面9上にドレイン接点19が配置されている。
【0024】
ソース接点拡散16Aとの接触において、表面9上にソース接点19Aが配置されている。図3の右側のJFETのソース接点領域16Aとドレイン接点領域16との間に、第2導電性タイプの領域14がある。領域14はたとえばn−タイプの物質であって、1平方センチメートル当たり2ないし4*1012の原子数でドープされている。領域14は表面9から下向きに、たとえば0.4μmの深さまで延伸している。領域14の下に配置されているのは、第1導電性タイプの領域15である。領域15はたとえばp−タイプの物質であって、1平方センチメートルあたり5*1012の原子数でドープされている。領域15は表面9から下向きに、たとえば1μmの深さまで延伸している。領域15は、図3に図示されていない平面において、表面9で接地に接続している。ソース接点領域16Aのエッジと、ドレイン接点領域16のエッジの間の距離は、たとえば6μmである。対称線20は、図3に示す第1の半分に対する鏡像として、トランジスタの第2の半分を配置するために使用されている。
【0025】
図3の左側のMOSトランジスタのドレイン接点191は、図3右側のJFETのソース接点19Aへ電気的に接続されており、こうしてJFETと直列になったMOSトランジスタを構成する。
【0026】
ソース接点171があり、ゲート接点181およびドレイン接点19があって、これで3端子スイッチング・デバイスが得られる。
【0027】
もう1つの実施例において、図3のJFETのドレインn+接点領域16が、n+領域へ電気的に接続されているp+領域に取り巻かれているか、または図4aおよび図4bにそれぞれ示すように、n+領域が単にp+領域で置き換えられているならば、2つの異なったIGPTトランジスタを容易に実施できる。
【0028】
より高い電流能力の他に、これらのデバイスは前記した複合的な利点と同じ性能上の利点を有する。
【0029】
更にこれらのIGBTデバイスは、全てのIGBTデバイスにおける重大な問題であるラッチアップ(latch up)から完全に免れている。
【0030】
図3に示すように、デバイス2においてバイポーラ動作が実現する。デバイス2においてpnpn構造が1つもない。131(n)の下のキリング(killing)構造121(p)は、デバイス1へ移動されている。
【0031】
図3のJFET2は、実際は片側JFET、チャネル層14およびゲート層15と、両側JFET、チャネル層11およびゲート層15と、ゲート層10との並列接続である。
【0032】
図5aにおいて、複数のNトップ層およびPトップ層を垂直に配置して、共通のソース領域を有する並列のジャンクション・フィールド・トランジスタのチャネルおよびゲートを作ることにより、第2電界効果トランジスタをどのように構成するかを示す。図5bは、複数のNトップ層およびPトップ層を水平に配置して、共通のソース領域を有する並列接合型電界(junction field)トランジスタのチャネルとゲートを作ることにより第2電界効果トランジスタを、どのように構成するかを図式的に示す。
【0033】
図2に示すように、JFETはまたSOI解決手段により実施することができ、その場合、層10は酸化物層により置き換え済みである。この解決手段において、JFETは2つの片側JFETの並列接続であり、チャネル領域11はまた底部酸化物層から影響をされるが、それは底部酸化物層が、2つのJFETに並列した追加の絶縁ゲート・トランジスタを形成するからである。
【0034】
図2のJFETは、図6に示すMESFETに置き換えることもできる。この金属は接地され、従ってn−層が空乏になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)が第2電界効果トランジスタ、FET、(2)と直列に接続された半導体デバイスであって、第1絶縁ゲート電界効果トランジスタの厚くドープされたドレイン接点領域(191)と電気的に接続されている厚くドープされたソース領域(19A)を前記第2電界効果トランジスタが有することと、そして更に前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)の前記ブレークスルー電圧は前記第2電界効果トランジスタ(2)のピンチ電圧Vpよりも高いことを特徴とする前記半導体デバイス。
【請求項2】
前記第2電界効果トランジスタが、共通の厚くドープされたソース接点領域19aと並列にされているいくつかの電界効果トランジスタを含む請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)の前記幅Wは、前記第2電界効果トランジスタ(2)の前記幅よりも少なくとも2倍大きいことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2電界効果トランジスタ(2)が接合型電界効果トランジスタJFETであることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2電界効果トランジスタ(2)が絶縁ゲート電界トランジスタである請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)と直列に接続された修正されたドレイン接点領域を有する前記第2電界効果トランジスタ(2)が、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタIGBTである請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)および前記第2電界効果トランジスタ(2)が、別々の基板上に配置されていることを特徴とする前項までのいずれかの請求項記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)および前記第2電界効果トランジスタ(2)が、共通の基盤上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)および前記第2電界効果トランジスタ(2)が互いに併合され、また前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)の前記ドレイン接点領域(191)が前記第2トランスデータデバイス(2)のソース接点領域(19A)と同一であることを特徴とする請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタ(1)および前記第2電界効果トランジスタ(2)の両方が、基板(10)の前記表面領域内に組み込まれていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2電界効果トランジスタが垂直に配置された複数のNトップ層とPトップ層を有し、それにより共通のソース領域を有する並列の接合型電界効果トランジスタのチャネルおよびゲートを形成するようにされたことを特徴とする請求項4記載のデバイス。
【請求項12】
前記第2電界効果トランジスタが水平に配置された複数のNトップ層およびPトップ層を含み、それにより共通のソース領域を有する並列の接合型電界効果トランジスタのチャネルおよびゲートを形成するようにされたことを特徴とする請求項4記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2電界効果トランジスタ(2)は1つまたはそれ以上の接合型電界トランジスタおよび1つまたはそれ以上の絶縁ゲート電界トランジスタの組合せであって、それら全てが共通のソース接点拡散を有することを特徴とする請求項1記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−517511(P2011−517511A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502901(P2011−502901)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050350
【国際公開番号】WO2009/123559
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(501083137)
【Fターム(参考)】