説明

膜パターン及びその製造方法

【課題】膜パターンの機能(導電膜の場合は導電性)を阻害させることなく、基体に対する密着力が高い膜パターンを、液滴吐出法により提供する。
【解決手段】基板上にインクジェットから液滴を吐出し、乾燥固化し、密着性機能を持つドットアレイ10を形成する。このときドット直径以上のピッチで形成する。密着性機能を持つドットアレイの周りに導電性機能を持つドットアレイ11をドット直径以上のピッチで液滴吐出し、乾燥固化する。この後、導電性機能を持つドットの間にドットが一部重ねて連結するように導電性機能を持つドットアレイ12,13,14を同様の方法で形成する。密着性機能を持つドットアレイは機能性ドットアレイは基体表面に選択的に形成できるので、表面に電極等が形成されている基板にも適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路配線に用いられる膜パターン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基体上への膜パターン形成方法としては、基体上に形成した膜をフォトリソグラフィ法により部分エッチングしてパターンを形成する方法があるが、環境負荷が大きいため、エッチングによらない形成方法が検討されている。
エッチングによらない形成方法としては、基体上にスクリーン印刷を施すことによりペーストをパターン状に供給し固化する方法等があるが、電子デバイス等では、高密度化に伴いパターンが微細になってきており、従来の方法では膜パターンを形成することが困難になってきている。
このため、基体上に膜パターンを微細に形成でき、しかも環境負荷の小さい方法として、インクジェットにより膜材料を含有する液滴をパターン状に供給し膜パターンを形成する方法が提案されている。
【0003】
ここで、一般的なインクジェットによる膜パターンの形成方法を説明する。
インクジェットにより吐出された液滴は基体表面で乾燥後にほぼドット(円)形状となり、膜パターンはこのドットの集合体で形成される。液滴の乾燥速度が吐出速度より速い場合には、液滴を基体上に連続して着弾させドットの集合体を形成しても良いが、乾燥速度が吐出速度より遅い場合には、液滴を基体上に連続して着弾させると、液滴同士が一体となって濡れ広がりが大きくなりパターン形状が崩れる。
【0004】
そこで、ドット直径(+着弾精度)以上のピッチで液滴を吐出し液滴を乾燥させてドットアレイを形成した後、ドット間に液滴を着弾させて液滴を乾燥させることにより、ドットを連結させ膜パターンを形成している(この方法は、インクジェットによる紙への画像形成方法として、既知の手法である。)。具体的な例として、4回に分けてドットアレイを形成し最終的にライン状の膜パターンを形成する例を図6(a)〜(d)に示す。
【0005】
図6(a)〜(d)は膜パターンの製造方法の従来例を示す工程図である。
ドット直径(+着弾精度)以上のピッチで液滴を吐出し、液滴を乾燥させて、ドットアレイ41を形成する(図6(a))。
ドットアレイ41のドット間に液滴を吐出し、液滴を乾燥させて、ドットアレイ42を形成する(図6(b))。
ドットアレイ41、42に一部重なるように液滴を吐出し、液滴を乾燥させて、ドットアレイ43を形成する(図6(c))。
ドットアレイ間に空白が無くなるように液滴を吐出し、液滴を乾燥させて、ドットアレイ44を形成する。この様に、全てドット直径(+着弾精度)以上のピッチで液滴を吐出し液滴を乾燥させてドットアレイ44を形成し、ドットを一部重ねて連結させることにより、膜パターンが得られる(図6(d))。
なお、ドットアレイの形成順序である図6(a)〜(d)に示す工程を入れ替えて膜パターンを形成してもよく、また、図6(a)〜図6(d)に示す工程を繰り返して厚膜化してもよい。導電膜パターンを形成する場合には、導電性粒子を含有した液滴を用いて、上記の膜パターンを形成した後、加熱して導電性粒子同士を融着、硬化させることにより導電機能を発現させている。
【0006】
しかし、インクジェットにより形成された膜パターンは基体との密着力が小さく、膜パターンの乾燥時や硬化時の体積収縮等の際に膜パターンが基体表面から剥がれ易く、また、膜に亀裂が生じることもある。さらに温度サイクル試験時に同様の不良が生じることもある。
【0007】
そこで、以下の技術が開示されている。
(1) 導電膜の機能材料である金属超微粒子以外に熱硬化性または光硬化性樹脂成分をインク(ペースト)内に含有させて導電膜パターンを形成し、樹脂により膜パターンと基体との密着性を持たせる技術。すなわち、インクジェット方式を利用して、配線基板の回路パターンの描画形成を行う際、用いる導電性金属ペーストは、樹脂組成物中に、平均粒子径が1〜100nmの金属超微粒子を均一に分散させ、その表面は、金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆されたものとし、樹脂組成物は、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分、加熱した際、窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、ならびに少なくとも一種以上の有機溶剤を含んだものとする、インクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
(2) 少なくとも導電性の無機粒子と、重合性化合物と光重合開始剤とを含む光重合性のインクジェットインクであって、インクの不揮発成分に対して導電性の無機粒子を50質量%以上含有するインクジェットインク(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
(3) 基板表面に親液性で膜材料と親和性の良い膜を形成し、膜パターンと基体との密着性を持たせる技術。すなわち、基板のパターン形成面に、パターン形成用材料として導電性材料や絶縁性材料等を含んだ流動体をインクジェット式記録ヘッドより吐出する。そしてパターン形成面に吐出された流動体を固化させて電気回路とする。材料を種々に変更しながら任意のパターンを作るために、コンデンサ、コイル、抵抗、能動素子等所望の回路素子を含んだ電気回路を製造できる、電気回路、その製造方法および電気回路製造装置(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
(4) 基板表面に撥液性だが膜材料との親和性の良い自己組織膜を形成し、膜パターンと基体との密着性を持たせる技術。すなわち、基板表面に膜パターンを形成する方法であって、撥液性化合物と、基板表面に撥液性化合物より高い表面自由エネルギーを与える撥液性調節化合物とを含む溶液中に基板を浸漬し、表面に自己組織化膜を形成させる工程と、自己組織化膜が形成された基板表面に、液体材料を供与する工程と、を含む膜パターン形成方法(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
(5) 材料層を基体上の非撥液性領域に形成する技術。すなわち、基板の表面にメタルマスクをのせて、フッ素系コーティング剤を蒸着することで、所定のネガパターンの撥液性層16を形成する。次に、基板の表面に、ポリ3ヘキシルチオフェンをクロロホルムに溶解した液体をスピンコートし、その後、乾燥することで材料層(有機半導体層)を形成する膜パターン形成方法、回路素子、電気光学装置、および電子機器(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2002−324966号公報
【特許文献2】特開2005−97345号公報
【特許文献3】特開平11−274671号公報
【特許文献4】特開2005−109184号公報
【特許文献5】特開2004−273851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来技術には以下のような問題点がある。
(a) 特許文献1、2に記載の技術では、導電膜の機能材料である金属超微粒子以外に熱硬化性または光硬化性樹脂成分をインク(ペースト)内に含有させているので、樹脂成分が金属超微粒子同士の導通を阻害し、導電膜パターンの抵抗率が高くなってしまう。
【0013】
(b) 特許文献3に記載の技術では、基体表面に膜パターンとの親和性層すなわち親液層を形成している。流動体(液滴)が有機材料であれば、樹脂やパラフィン、酸化アルミニウムやシリカ等の多孔質材料を吐出して親和性膜を形成すると記述されているが、流動体が無機材料(金属導電材料等)の場合については開示されていない。
【0014】
(c) 特許文献4に記載の技術では、基板表面に絶縁性の親和性膜(撥水かつ自己組織化膜)を浸漬により形成しているので、表面に電極等が形成されている基板の場合には、電極を避けて親和性膜を形成しなければならず、適用が困難である。
【0015】
(d) 特許文献5記載の技術では、非撥液性領域の特性や膜パターンと基体との密着性については開示されていない。
そこで、本発明は、膜パターンの機能(導電膜の場合は導電性)を阻害させることなく、基体に対する密着力が高い膜パターンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、基体上に機能性材料を含有した液滴を固化させたドットアレイの集合体からなる機能性膜パターンであって、複数種類の機能性ドットアレイが混在して形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、複数の機能性ドットアレイが混在して形成されるので、複数の機能を有することができる。また、機能性ドットアレイは基体表面に選択的に形成できるので、表面に電極等が形成されている基板にも適用できる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の膜パターンにおいて、密着機能を除く主機能を有する第一の機能性ドットアレイと、密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、機能性膜パターンの主機能を有する第一の機能性ドットアレイと、密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから膜パターンが形成されるので、主機能材料に密着性がない場合であっても、密着性を有することができる。すなわち、主機能材料を含有する液滴に密着機能材料を含有させると主機能が阻害される膜パターンに好適である。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の膜パターンにおいて、第二の機能性ドットアレイの機能性材料が樹脂またはカップリング剤であることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、第二の機能性ドットアレイの機能性材料として樹脂またはカップリング剤を用いているので、膜パターンの主機能材料と基体とが異種材料であっても、基体との密着力を高くできる。すなわち、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の膜パターンにおいて、第一の機能性ドットアレイが導電性ドットアレイであり、その機能性材料が導電粒子であることを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、第一の機能性ドットアレイを導電粒子からなる導電性ドットアレイとし、第二の機能性ドットアレイを密着性ドットアレイとしているので、導電性と密着性とを両立することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の膜パターンにおいて、第一の機能性ドットアレイが半導体性ドットアレイであり、その機能性材料が半導体粒子であることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、第一の機能性ドットアレイを半導体粒子からなる半導体性ドットアレイとし、第二の機能性ドットアレイを密着性ドットアレイとしているので、半導体性と密着性とを両立することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の膜パターンにおいて、機能性材料の粒径が100nm以下であることを特徴とする。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、機能性材料の粒径を100nm以下としているので、液滴中の粒子サイズが小さいため、インクジェットノズルの詰まりが少なく、生産性が低下することが少ない。また、粒子サイズが100nmより大きい場合と比べ、パターン形状精度がよく、パターン間隔が狭くても短絡しない。
すなわち、請求項6に記載の発明は、微細配線や素子に好適である。金属ナノ粒子は、バルクに比べ大幅な低温で溶融することが知られている。例えば、液滴が金属の粒子と溶媒等にて構成されている場合、溶媒等を乾燥等で除去し固化させた後、加熱することにより金属粒子を融着・固化させることで導電体を形成することができる。しかし、通常の金属粒子では、400℃程度で融着するのに対し、金属ナノ粒子の場合、表面活性力が大きく150℃程度の低温でも融着するため、基体として樹脂を用いることができる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明によれば、樹脂中に金属粒子を分散した金属ペーストと比べて低抵抗の導電膜パターンが得られる。半導体ナノ粒子も金属粒子と同様、バルクに比べ大幅な低温で溶融することが知られている。例えば2.5nmの硫化カドミウム(CdS)粒子は250℃程度で融着する。また、ナノ半導体粒子が蛍光体の場合は、発光寿命が希土類イオンを添加した酸化物や硫化物より10万倍短く、吸収、発光のサイクルを素早く繰り返すので、高輝度であり、また、有機色素よりもずっと劣化が少ないため、高機能の発光素子が得られる。このように、請求項6に記載の発明によれば、主機能の高機能化と密着性とを両立することができる。
【0029】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の膜パターンにおいて、基体表面に第一の機能性ドットアレイと、第二の機能性ドットアレイとが形成されていることを特徴とする。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、基体表面に第一の機能性ドットアレイと第二の機能性ドットアレイとを形成しているので、第二の機能性ドットアレイと基体とを一体と見なすと、擬似的に凹凸形状となるため、基体との密着性を高くすることができる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載の膜パターンにおいて、第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイが形成されていることを特徴とする。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイを形成しているので、第一の機能性ドットアレイを多層に形成し厚膜化しても、膜の乾燥や硬化時の体積収縮による応力を緩和でき、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項2に記載の膜パターンにおいて、表面の一部に第二の機能性ドットアレイが形成されていることを特徴とする。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、膜パターンの表面の一部に第二の機能性ドットアレイを形成しているので、膜パターン上に形成する膜との密着性を高くすることができる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の膜パターンにおいて、表面に保護層が形成されていることを特徴とする。
【0036】
請求項10に記載の発明によれば、第二の機能性ドットアレイと表面保護層とが密着するように形成しているので、膜パターンと保護層との密着力が高く、保護層の信頼性を高くすることができる。
【0037】
請求項11に記載の発明は、基体上に機能性材料を含有した液滴を吐出する吐出工程と、該液滴を固化させる固化工程と、所定のパターンを形成した後、加熱、融着、硬化等の処理を施すことにより膜の機能を発現させる発現工程と、を少なくとも備えた膜パターンの製造方法であって、複数種類の機能性ドットアレイを混在して形成することを特徴とする。
【0038】
請求項11に記載の発明によれば、機能性材料を含有した液滴を吐出する工程と、液滴を固化させる工程と、膜の機能を発現させる工程と、を備えているので、複数の機能性ドットアレイを任意の位置に形成でき、ドットアレイを組合せて形成することで、膜パターンを容易に製造できる。
【0039】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の膜パターンの製造方法において、密着機能を除く主機能を有する第一の機能性ドットアレイと、密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから形成することを特徴とする。
【0040】
請求項12に記載の発明によれば、機能性膜パターンの主機能を有する第一の機能性ドットアレイと、密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから膜パターンが形成されるので、主機能材料に密着性がない場合であっても、密着性を有することができる。すなわち、請求項12に記載の発明によれば、主機能材料を含有する液滴に密着機能材料を含有させると主機能が阻害される膜パターンに好適である。
【0041】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第二の機能性ドットアレイの機能性材料として樹脂またはカップリング剤を用いることを特徴とする。
【0042】
請求項13に記載の発明によれば、第二の機能性ドットアレイの機能性材料として樹脂またはカップリング剤を用いているので、膜パターンの主機能材料と基体とが異種材料であっても、基体との密着力を高くできる。すなわち、請求項13に記載の発明によれば、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0043】
請求項14に記載の発明は、請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第一の機能性ドットアレイを導電性ドットアレイとし、その機能性材料として導電粒子を用いることを特徴とする。
【0044】
請求項14に記載の発明によれば、第一の機能性ドットアレイを導電粒子からなる導電性ドットアレイとし、第二の機能性ドットアレイを密着性ドットアレイとしているので、導電性と密着性とを両立することができる。
【0045】
請求項15に記載の発明は、請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第一の機能性ドットアレイを半導体性ドットアレイとし、その機能性材料として半導体粒子を用いることを特徴とする。
【0046】
請求項15に記載の発明によれば、第一の機能性ドットアレイを導電粒子からなる導電性ドットアレイとし、第二の機能性ドットアレイを密着性ドットアレイとしているので、導電性と密着性とを両立することができる。
【0047】
請求項16に記載の発明は、請求項14または15に記載の膜パターンの製造方法において、機能性材料の粒径を100nm以下とすることを特徴とする。
【0048】
請求項16に記載の発明によれば、機能性材料の粒径を100nm以下としているので、液滴中の粒子サイズが小さいため、インクジェットノズルの詰まりが少なく、生産性が低下することが少ない。また、粒子サイズが100nmより大きい場合と比べ、パターン形状精度がよく、パターン間隔が狭くても短絡しない。
すなわち、請求項16に記載の発明は、微細配線や素子に好適である。金属ナノ粒子は、バルクに比べ大幅な低温で溶融することが知られている。例えば、液滴が金属の粒子と溶媒等にて構成されている場合、溶媒等を乾燥等で除去し固化させた後、加熱することにより金属粒子を融着・固化させることで導電体を形成することができる。しかし、通常の金属粒子では、400℃程度で融着するのに対し、金属ナノ粒子の場合、表面活性力が大きく150℃程度の低温でも融着するため、基体として樹脂を用いることができる。
【0049】
また、請求項16に記載の発明によれば、樹脂中に金属粒子を分散した金属ペーストと比べて低抵抗の導電膜パターンが得られる。半導体ナノ粒子も金属粒子と同様、バルクに比べ大幅な低温で溶融することが知られている。例えば2.5nmの硫化カドミウム(CdS)粒子は250℃程度で融着する。また、ナノ半導体粒子が蛍光体の場合は、発光寿命が希土類イオンを添加した酸化物や硫化物より10万倍短く、吸収、発光のサイクルを素早く繰り返すので、高輝度であり、また、有機色素よりもずっと劣化が少ないため、高機能の発光素子が得られる。このように、請求項16に記載の発明によれば、主機能の高機能化と密着性とを両立することができる。
【0050】
請求項17に記載の発明は、請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、基体表面に第一の機能性ドットアレイと、第二の機能性ドットアレイとを形成することを特徴とする。
【0051】
請求項17に記載の発明によれば、基体表面に第一の機能性ドットアレイと第二の機能性ドットアレイとを形成しているので、第二の機能性ドットアレイと基体とを一体と見なすと、擬似的に凹凸形状となるため、基体との密着性を高くすることができる。
【0052】
請求項18に記載の発明は、請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイを形成することを特徴とする。
【0053】
請求項18に記載の発明によれば、第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイを形成しているので、第一の機能性ドットアレイを多層に形成し厚膜化しても、膜の乾燥や硬化時の体積収縮による応力を緩和でき、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0054】
請求項19に記載の発明は、請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、膜パターンの表面の一部に第二の機能性ドットアレイを形成することを特徴とする。
【0055】
請求項19に記載の発明によれば、膜パターンの表面の一部に第二の機能性ドットアレイを形成しているので、膜パターン上に形成する膜との密着性を高くすることができる。
【0056】
請求項20に記載の発明は、請求項19に記載の膜パターンの製造方法において、膜パターンの表面に保護層を形成することを特徴とする。
【0057】
請求項20に記載の発明によれば、第二の機能性ドットアレイと表面保護層とが密着するように形成しているので、膜パターンと保護層との密着力が高く、保護層の信頼性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、複数の機能性ドットアレイが混在して形成されるので、複数の機能を有することができる。また、機能性ドットアレイは基体表面に選択的に形成できるので、表面に電極等が形成されている基板にも適用できる。すなわち、膜パターンの機能(導電膜の場合は導電性)を阻害させることなく、基体に対する密着力が高い膜パターンの提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明の膜パターンは、機能性材料を含有した液滴を固化させたドットアレイの集合体からなり、複数の機能性ドットアレイが混在して形成されている構成とするものであり、 少なくとも一つの機能性ドットアレイを密着性材料で形成すれば、膜パターンの材料が密着性のない材料(例えば、無機粒子)でも、膜パターンの機能(導電膜の場合は導電性)を阻害することなく、基体に対する密着力が高い機能性膜パターンを提供できることに着目して、発明したものである。
【0060】
以下、本発明の第1の実施形態について述べる。
〔第1の実施形態〕
図1(a)〜(e)は本発明に係る膜パターン及びその製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
本実施形態の膜パターンは、図1(e)の様に、機能性材料を含有した液滴を固化させたドットアレイの集合体からなり、二つの機能性ドットアレイが混在している構成としている。また、基体表面に第一の機能性ドットアレイと、第二の機能性ドットアレイとが形成されている構成としている。
【0061】
以下に、膜パターンの製造方法について説明する。
基体として、Siウエハー、石英ガラス、ガラス、プラスチックフィルム、樹脂板、金属板など各種のものを用いることができる。また、基体表面に導電膜、半導体膜、誘電体膜、絶縁膜などが下地層として形成されていてもよい。ここでは、エポキシ樹脂からなる基体の表面に金電極が形成されている基板(図示無し)を用いる。
【0062】
次に、図4(a)〜(d)と同様に、インクジェットノズル(図示せず)から基体の表面に液滴を吐出し液滴を乾燥させてドットアレイを形成し、ドットを一部重ねて連結させる。金電極上には、第一の機能性ドットアレイのみで形成する(図示無し)。
一方、基体としてのエポキシ基板上には、図1(a)〜(e)に示す様に、第一の機能性ドットアレイ11、12、13、14と第二の機能性ドットアレイ10とを形成することで膜パターンが得られる。
まず、エポキシ基板上に、ドット直径(+着弾精度)以上のピッチで第二の機能性材料を含有する液滴を吐出し、液滴を乾燥固化させて、第二の機能性ドットアレイ10を形成する(図1(a))。
第二の機能性ドットアレイ10の周りに第一の機能性材料を含有する液滴を吐出し、液滴を乾燥固化させて、第一の機能性ドットアレイ11を形成する(図1(b))。
第一の機能性ドットアレイ11のドット間に第一の機能性材料を含有する液滴を吐出し、液滴を乾燥固化させて、第一の機能性ドットアレイ12を形成する(図1(c))。
第一の機能性ドットアレイ11、12に一部重なるように第一の機能性材料を含有する液滴を吐出し、液滴を乾燥固化させて、第一の機能性ドットアレイ13を形成する(図1(d))。
ドットアレイ間に空白が無くなるように第一の機能性材料を含有する液滴を吐出し、液滴を乾燥固化させて、第一の機能性ドットアレイ14を形成する(図1(e))。
【0063】
この様に、ドット直径(+着弾精度)以上のピッチで液滴を吐出し乾燥させているので、基体に着弾した液滴同士が一体となって濡れ広がらない。すなわち、ドット形状が崩れることがなく、その結果、膜パターン形状も崩れない。しかも、第一の機能性材料と第二の機能性材料とが液滴状態で混ざり合わないので、それぞれの機能性材料がもう一方の機能を阻害することがない。
ここで、第一の機能性ドットアレイ11〜14は、図6(a)〜(d)と同様に一体となるように形成されており、全てが連結している。
【0064】
また、第二の機能性ドットアレイ10と第一の機能性ドットアレイ11〜14とは隣接するように形成したが、離れていても良い。また、本実施形態では二種類の機能性ドットアレイ11〜14、10の場合で説明したが、本発明はこれに限定されず三種類以上のドットアレイを組合せて形成してもよい。
【0065】
なお、第一の機能性ドットアレイ13,14は円状で図示しているが、先に形成したドットアレイ11、12(、13)に液滴が引っ張られてドット形状が円から崩れる場合があるが、ドットアレイ11〜14が全て連結し、全体としてほぼライン状になっていればよい。また、ドットアレイ11〜14上に第一の機能性材料を含有する液滴を吐出し、厚膜化してもよい。この厚膜化した場合のドット形状も円から崩れてもよく、が全て連結し、全体としてほぼライン状になっていればよい。
【0066】
ここで、導電性ドットアレイを形成するための機能性材料として、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム等やそれらの化合物からなる導電性微粒子を用いることができる。また、微粒子を液体中で分散状態とするための分散剤が表面にコーティングされていてもよい。
【0067】
本実施形態では、第一の機能性材料を含有する液体として、銀ナノ粒子を含有する銀ナノインク(住友電工製)を用いられる。このナノ粒子は粒径が100nm以下であり、インクジェットのノズル径やパターンサイズに対して十分小さいので、液滴の吐出時にノズルの詰まりがなく、また、パターン形状を良好に形成することができる。
【0068】
密着性ドットアレイを形成するための機能性材料として、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等やこれらを組合せて用いることができる。樹脂は接着機能を有しているので、被着材料を問わず密着力を向上できる。また、カップリング剤は、同一分子中に、有機材料と結合する置換基をもつ炭素官能性基と、無機材料と反応する官能基(シランカップリング剤の場合はケイ素、チタネート系カップリング剤の場合はチタン)との異なった反応基を有し、有機材料と無機材料の間に介在して両者の密着力を向上できる。これらの材料は、基体や下地層また第一の機能性ドットアレイに応じて選択することができる。例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂を主成分とする場合でも、基体がポリイミド基板の場合にはイミド結合を有する樹脂を加えてもよく、第一の機能性ドットアレイが導電粒子の場合は、導電粒子を加えてもよい。
【0069】
また、一つの液滴に混在させるだけでなく、複数の機能性ドットアレイとして用いることもできる。本実施形態では、第二の機能性材料を含有する液体として、一液性エポキシ樹脂をγ−ブチロラクトンとメチルエチルケトンで希釈したインクを用いた。
【0070】
次に、膜パターンの機能を発現させる。
まず、120℃で10分加熱して樹脂を硬化させ、第二の機能性ドットアレイ、すなわち、密着性ドットアレイの機能を発現させる。
次に、第一の機能性ドットアレイの機能、すなわち導電性を発現させる。
本実施形態では、200℃で1時間加熱してナノ粒子表面の分散剤を熱処理によって分解させてナノ粒子同士を融着させる。これにより、第一の機能性ドットアレイは全てのドットが連結しているので、ドット間のナノ粒子同士も融着し、配線パターンに好適な導電膜パターンが形成できる。
また、基体のエポキシ樹脂上および金電極上に第一の機能性ドットアレイ及び第二の機能性ドットアレイからなる膜パターンを形成した。さらに、比較のため、基体のエポキシ樹脂上および金電極上に第一の機能性ドットアレイのみからなる膜パターンを形成した。
【0071】
〔比較例〕
金電極上が第一機能性ドットアレイからなる膜パターンの抵抗率は約5μΩ・cmと良好であったが、金電極上が第一の機能性ドットアレイ及び第二の機能性ドットアレイからなる膜パターンの抵抗率は約10μΩ・cmであり抵抗率が高くなっていた。これは、金電極上には絶縁性樹脂からなる密着性ドットアレイを形成しているため、導電性膜パターンとの金電極との接触抵抗が大きくなったと考えられる。
【0072】
次に膜の密着力を確認するため、セロハンテープ(登録商標)を用い、剥離試験を行った。第一の機能性ドットアレイのみで形成した膜はエポキシ基板上で全て剥離し、金電極上も端部で一部剥離していた。これは、銀ナノ粒子と金電極とは親和性があるため密着力があるが、エポキシ基板上で剥離された膜に引っ張られ剥離したと考えられる。第一機能性ドットアレイ及び第二機能性ドットアレイで形成した膜は、エポキシ基板上、金電極上とも剥離せず、密着性が良好であった。
表1に第一の機能性ドットアレイと第二の機能性ドットアレイとを用いた実施形態と、第一の機能性ドットアレイと第二の機能性ドットアレイとを用い、金属電極上は第一の機能性ドットアレイのみの実施形態と、比較例とを示す。
【表1】

【0073】
以上の様に、本実施形態の膜パターンは、複数の機能性ドットアレイを混在して形成しているので、複数の機能(ここでは導電性及び密着性)を有することができる。また、機能性ドットアレイは基体表面に選択的に形成できるので、第一機能性材料に導電性材料、第二機能性材料に密着性を有する絶縁性樹脂を用いても、電極部は第一の機能性ドットアレイのみ、基板部は第一及び第二の機能性ドットアレイからなる構成とでき、第一の機能である導電性を阻害することがなく、第二の機能である密着性を向上することができる。
【0074】
〔第2の実施形態〕
次に図2、図3(a)〜(h)を参照して第2の実施形態について説明する。
本実施形態の膜パターンは複数の膜パターンを多層化し、トランジスタ素子(例えば電界効果トランジスタ)を形成しており、導電膜パターン(ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極)21〜27と、半導体膜パターン28、29とが2つの機能性ドットアレイからなる構成としている。
【0075】
図2に各種液滴を基体20上に吐出し乾燥、硬化して多層に形成した膜パターンすなわちトランジスタ素子の一例の断面図を示す。
なお、第一の機能性ドットアレイは、融着により一体化しているので、ドットの境界部は省略している。
【0076】
以下に、図3(a)〜(h)を参照して製造方法を説明する。図3(a)〜(h)は図2に示したトランジスタ素子の製造工程の一例である。
第1の実施形態と同様に、基体20を準備し(図3(a))、基体20上に導体膜パターン、すなわち、密着性ドットアレイ21と導電性ドットアレイとの融着体22を形成し、ゲート電極21、22とする(図3(b)、(c))。
次に、基体20上にゲート電極21、22を覆うように絶縁性材料を含有する液滴を吐出し、加熱硬化させて絶縁膜パターンを形成し、絶縁層27を形成する。絶縁性材料としては、シリカやアルミナなどの絶縁性ナノ粒子やポリビニルフェノール等の有機高分子を用いることができる。本実施形態では、シリカナノ粒子を含有するインクを用いた(図3(d))。
次に絶縁層27上に、密着性ドットアレイ28と半導体ドットアレイとの集合体29を形成し、半導体層28、29とする(図3(e)、(f))。第1の実施形態の導体膜と同様に形成したが、第二の機能性材料を含有する液滴として、シリカナノ粒子とエポキシ樹脂とを有機溶媒中に含有させたインクを用い、第一の機能性材料を含有する液滴として、半導体材料を含有する液滴を吐出した。半導体材料としては、シリコン(Si)、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)等の半導体粒子やペンタセン等の有機半導体を用いることができる。本実施形態では、硫化カドミウムナノ粒子を用いた。本実施形態においても、2段階に加熱硬化し、半導体性と密着性とを有する膜パターンを形成した。
次に第1の実施形態と同様に導体膜パターンを形成し、ソース電極23(密着性ドットアレイ)、24(導電性ドットアレイ)およびドレイン電極25、26を形成する(図3(g)、(h))。
以上により、密着性の良い膜パターンを有するトランジスタ素子が得られる。
【0077】
以上のように、主機能だけでなく密着性を兼ね備えた膜パターンを重ね合わせることにより、様々な材料で様々な組み合わせの膜パターンを形成できるので、様々な機能素子(ダイオード、発光素子等)が得られる。
【0078】
〔第3の実施形態〕
次に第3の実施形態について説明する。尚、図面については省略する。
本実施形態の膜パターンは、導電性ドットアレイと密着性ドットアレイとからなり、導電性ドットアレイは銀ナノ粒子が融着し一体化した構成としている。さらに、導電性ドットアレイの層間に密着性ドットアレイが形成されている構成としている。
【0079】
以下に、製造方法を説明する。
第1の実施形態と同様に膜パターンを形成する。この導電性ドットアレイを1層とし、これを5層重ねて形成し厚膜化する。この乾燥膜パターン上に、密着性ドットアレイを形成し、さらに5層の導電性ドットアレイ、密着性ドットアレイ、5層の導電性ドットアレイを形成し、厚膜化することで膜パターンが得られる。
【0080】
〔比較例〕
ここで、2段階に加熱し、膜の密着性と導電性を発現させた。比較のため、導電性ドットアレイのみを15層重ねて膜パターンを形成したが、銀ナノ粒子を融着した時にパターンに亀裂が生じた。
【0081】
以上の様に、本実施形態の膜パターンは、第一の機能性ドットアレイの層間に密着性ドットアレイを形成しているので、第一の機能性ドットアレイを多層に形成し厚膜化しても、膜の乾燥や硬化時の体積収縮による応力を緩和でき、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0082】
〔第4の実施形態〕
次に第4の実施形態について図4、図5(a)〜(d)を参照して説明する。
図4は本発明の膜パターンの一例の断面図を示す。
実施形態の膜パターンは、膜パターンの表面の一部に密着性ドットアレイが形成された構成としている。また、表面の密着性ドットアレイと表面保護層が密着する構成としている。以下に、図5(a)〜(d)を参照して製造方法を説明する。図5(a)〜(d)は図4に示した膜パターンの製造工程の一例である。
【0083】
まず、基体30を準備し(図5(a))、第1の実施形態と同様に、密着性ドットアレイ31aと機能性ドットアレイとを形成することで膜パターン32を形成する。
さらにドットアレイ11、13、14に相当する導電性ドットアレイ31bを膜パターン32上に形成し(図5(b))、密着性の導電性ドットアレイ31bが膜パターン32の表面に露出するように形成する(図5(c))。
ここで、2段階に加熱し、膜パターン32の密着性と導電性とを発現させる。この後、膜パターン32上及び基体30上に絶縁性の保護層33を塗布し、硬化させる(図5(d))。この保護層33は密着性ドットアレイと密着力のある材料がよく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化性樹脂、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等やこれらを組合せて用いることができる。
【0084】
以上の様に、本実施形態の膜パターン32は、膜パターン32の表面の一部に密着性ドットアレイ31、31bを形成しているので、密着性ドットアレイ31a、31bが膜パターン32に埋め込まれた形態となり、また、密着性ドットアレイ31a、31bと保護層33とが強固に密着するため、膜パターン32と保護層33との密着力が高くなり、保護層33の信頼性を高くすることができる。
【0085】
すなわち、本発明の実施形態1〜4によれば、以下のことが可能となる。
【0086】
膜パターンにおいては、複数の機能性ドットアレイを混在して形成しているので、複数の機能を有することができる。また、機能性ドットアレイは基体表面に選択的に形成できるので、表面に電極等が形成されている基板にも適用できる。
【0087】
膜パターンにおいては、機能性膜パターンの主機能を有する第一の機能性ドットアレイと密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから形成しているので、主機能材料に密着性がない場合であっても、密着性を有することができる。すなわち、主機能材料を含有する液滴に密着機能材料を含有させると主機能が阻害される膜パターンに好適である。
【0088】
膜パターンにおいては、第二の機能性ドットアレイの機能性材料として樹脂またはカップリング剤を用いているので、膜の主機能材料と基体とが異種材料であっても、基体との密着力を高くできる。すなわち、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0089】
膜パターンにおいては、第一の機能性ドットアレイを導電粒子からなる導電性ドットアレイとし、第二の機能性ドットアレイを密着性ドットアレイとしているので、導電性と密着性を両立できる。
【0090】
膜パターンにおいては、第一の機能性ドットアレイを半導体粒子からなる半導体性ドットアレイとし、第二の機能性ドットアレイを密着性ドットアレイとしているので、半導体性と密着性とを両立することができる。
【0091】
膜パターンにおいては、機能性材料の粒径を100nm以下としているので、液滴中の粒子サイズが小さいため、インクジェットノズルの詰まりが少なく、生産性が低下することが少ない。また、粒子サイズが大きい場合と比べ、パターン形状精度がよく、パターン間隔が狭くても短絡しない。すなわち、本実施形態の膜パターンは微細配線や素子に好適である。
【0092】
金属ナノ粒子は、バルクに比べ大幅な低温で溶融することが知られている。例えば、液滴が金属の粒子と溶媒等にて構成されている場合、溶媒等を乾燥等で除去し固化させた後、加熱することにより金属粒子を融着・固化させることで導電体を形成することができる。しかし、通常の金属粒子では、400℃程度で融着するのに対し、金属ナノ粒子の場合、表面活性力が大きく150℃程度の低温でも融着するため、基体として樹脂を用いることができる。
【0093】
また、樹脂中に金属粒子を分散した金属ペーストと比べて低抵抗の導電膜パターンが得られる。半導体ナノ粒子も金属粒子と同様、バルクに比べ大幅な低温で溶融することが知られている。例えば2.5nmの硫化カドミウム(CdS)粒子は250℃程度で融着する。また、ナノ半導体粒子が蛍光体の場合は、発光寿命が希土類イオンを添加した酸化物や硫化物より10万倍短く、吸収、発光のサイクルを素早く繰り返すので、高輝度であり、また、有機色素よりもずっと劣化が少ないため、高機能の発光素子が得られる。このように,主機能の高機能化と密着性とを両立することができる。
【0094】
膜パターンにおいては、基体表面に第一の機能性ドットアレイと第二の機能性ドットアレイとを形成しているので、第二の機能性ドットアレイと基体を一体と見なすと、擬似的に凹凸形状となるため、基体との密着性を高くすることができる。
【0095】
膜パターンにおいては第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイを形成しているので、第一の機能性ドットアレイを多層に形成し厚膜化しても、膜の乾燥や硬化時の体積収縮による応力を緩和でき、膜パターンの基体表面からの剥離や膜自体の亀裂を防止することができる。
【0096】
膜パターンにおいては、膜パターンの表面の一部に第二の機能性ドットアレイを形成しているので、膜パターン上に形成する膜との密着性を高くすることができる。
【0097】
膜パターンにおいては、第二の機能性ドットアレイと表面保護層が密着するように形成しているので、膜パターンと保護層との密着力を高くし、保護層の信頼性を高くすることができる。
【0098】
膜パターンの製造方法においては、機能性材料を含有した液滴を吐出する工程と、液滴を固化させる工程と、膜の機能を発現させる工程と、を備えているので、複数の機能性ドットアレイを任意の位置に形成でき、ドットアレイを組合せて形成することで、請求項1〜10に対応する膜パターンを容易に製造することができる。
【0099】
なお、上述する各実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、民生用電気機器や産業用の電気機器の電気回路配線や電子回路配線に用いられる膜パターン及びその製造方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】(a)〜(e)は本発明に係る膜パターン及びその製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
【図2】各種液滴を基体上に吐出し乾燥、硬化して多層に形成した膜パターンすなわちトランジスタ素子の一例の断面図である。
【図3】(a)〜(h)は図2に示したトランジスタ素子の製造工程の一例である。
【図4】本発明の膜パターンの一例の断面図を示す。
【図5】(a)〜(d)は図4に示した膜パターンの製造工程の一例である。
【図6】(a)〜(d)は膜パターンの製造方法の従来例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0102】
11、12、13、14 第一の機能性ドットアレイ
21 第二の機能性ドットアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に機能性材料を含有した液滴を固化させたドットアレイの集合体からなる機能性膜パターンであって、複数種類の機能性ドットアレイが混在して形成されていることを特徴とする膜パターン。
【請求項2】
請求項1に記載の膜パターンにおいて、密着機能を除く主機能を有する第一の機能性ドットアレイと、密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから形成されていることを特徴とする膜パターン。
【請求項3】
請求項2に記載の膜パターンにおいて、第二の機能性ドットアレイの機能性材料が樹脂またはカップリング剤であることを特徴とする膜パターン。
【請求項4】
請求項2に記載の膜パターンにおいて、第一の機能性ドットアレイが導電性ドットアレイであり、その機能性材料が導電粒子であることを特徴とする膜パターン。
【請求項5】
請求項2に記載の膜パターンにおいて、第一の機能性ドットアレイが半導体性ドットアレイであり、その機能性材料が半導体粒子であることを特徴とする膜パターン。
【請求項6】
請求項4または5に記載の膜パターンにおいて、機能性材料の粒径が100nm以下であることを特徴とする膜パターン。
【請求項7】
請求項2に記載の膜パターンにおいて、基体表面に第一の機能性ドットアレイと、第二の機能性ドットアレイとが形成されていることを特徴とする膜パターン。
【請求項8】
請求項2に記載の膜パターンにおいて、第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイが形成されていることを特徴とする膜パターン。
【請求項9】
請求項2に記載の膜パターンにおいて、表面の一部に第二の機能性ドットアレイが形成されていることを特徴とする膜パターン。
【請求項10】
請求項9に記載の膜パターンにおいて、表面に保護層が形成されていることを特徴とする膜パターン。
【請求項11】
基体上に機能性材料を含有した液滴を吐出する吐出工程と、該液滴を固化させる固化工程と、所定のパターンを形成した後、加熱、融着、硬化等の処理を施すことにより膜の機能を発現させる発現工程と、を少なくとも備えた膜パターンの製造方法であって、複数種類の機能性ドットアレイを混在して形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の膜パターンの製造方法において、密着機能を除く主機能を有する第一の機能性ドットアレイと、密着機能を有する第二の機能性ドットアレイとの少なくとも2種類のドットアレイから形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第二の機能性ドットアレイの機能性材料として樹脂またはカップリング剤を用いることを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第一の機能性ドットアレイを導電性ドットアレイとし、その機能性材料として導電粒子を用いることを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第一の機能性ドットアレイを半導体性ドットアレイとし、その機能性材料として半導体粒子を用いることを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の膜パターンの製造方法において、機能性材料の粒径を100nm以下とすることを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項17】
請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、基体表面に第一の機能性ドットアレイと、第二の機能性ドットアレイとを形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項18】
請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、第一の機能性ドットアレイの層間に第二の機能性ドットアレイを形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項19】
請求項12に記載の膜パターンの製造方法において、膜パターンの表面の一部に第二の機能性ドットアレイを形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の膜パターンの製造方法において、膜パターンの表面に保護層を形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−88382(P2007−88382A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278440(P2005−278440)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】