説明

薄膜トランジスタ、その製造方法および表示装置

【課題】大きなオン電流を維持したままオフ電流を低減するとともに、製造が容易なLDD領域を備える薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】平面視において、ドレイン電極171をゲート電極121から所定の距離だけ離して形成することによって、LDD領域165となるオーミックコンタクト層161を水平方向に形成する。この場合、LDD領域165は、ゲート電極121の電位に基づく電界の影響を受けにくくなり、実質的にドレイン電極171の電位に基づく電界による電界集中のみを緩和する。したがって、TFT100は、結晶性シリコン膜からなるチャネル領域141cを形成することにより、大きなオン電流を維持することができると同時に、オフ電流を十分低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ、その製造方法および表示装置に関し、より詳しくは、低濃度ドレイン領域(lightly doped drain、以下「LDD領域」という)が設けられた薄膜トランジスタ、その製造方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型液晶表示パネルでは、画素形成部のスイッチング素子として薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という)が用いられている。この画素形成部のTFTは、ゲートがオンしている時にデータ信号に応じた電圧を画素容量に書き込み、次のデータ信号に応じた電圧を書き込むまでゲートをオフして画素容量に書き込んだ電圧を保持する。このため、TFTは、ゲートをオフしている時に、保持している電圧が低下しないようにリーク電流をできるだけ低減する必要がある。そこで、TFTのチャネル領域と高濃度のドレイン領域との間にLDD領域を設け、ドレインの端部近傍に生じる電界集中を緩和することにより、リーク電流を低減している。
【0003】
TFTの活性層である半導体層が、多結晶シリコン層または微結晶シリコン層(以下、これらのシリコン層を「結晶性シリコン層」と総称する場合がある)からなるTFT(以下、それぞれ「p−Si_TFT」、「μc−Si_TFT」という)は、非晶質シリコン層からなるTFT(以下、「a−Si_TFT」という)に比べて、移動度が高い、信頼性が高い、および光耐性が高い等の優れた特徴を有する。特に、結晶性シリコン層の移動度は、非晶質シリコン層の移動度よりも大きいので、p−Si_TFTおよびμc−Si_TFTのオン電流をa−Si_TFTのオン電流よりも大きくすることができる。
【0004】
しかし、結晶性シリコン層には、非晶質シリコン層よりもバンドギャップが狭い、抵抗値が低い、および膜中に欠陥が多い等の問題があるので、オフ電流を低減することが難しいという問題がある。
【0005】
図19は、従来のNチャネル型μc−Si_TFTにおけるゲート電圧Vgと、ドレイン電流Idとの関係を示すグラフである。図19の点線で囲まれた領域では、ドレイン電極に正電圧が印加された状態で、TFTをオフ状態にするためにゲート電極に負電圧が印加されている。この場合、ゲート電極の電位に基づく電界とドレイン電極に印加されるドレイン電圧に基づく電界とがドレイン領域の端部近傍で重なり、オフ電流が大きくなるという問題があった。そこで、オフ電流を低減するため、TFTにLDD領域が設けられるようになった。
【0006】
図20は、LDD領域が設けられた従来のボトムゲート型TFT800の構成を示す断面図である。図20に示すように、TFT800は、絶縁性基板610上にゲート電極621が形成され、ゲート電極621上にゲート絶縁膜630を介して、活性層となる半導体層641が形成されている。半導体層641には、ゲート電極621の直上に位置し、不純物が拡散されていない真性領域からなるチャネル領域649と、チャネル領域649の両側に位置し、N型不純物が低濃度となるように拡散された低濃度不純物領域からなるLDD領域645、646と、LDD領域645、646の外側に位置し、N型不純物が高濃度となるように拡散された高濃度不純物領域からなるドレイン領域647およびソース領域648とが形成されている。
【0007】
図21(a)および図21(b)は、イオン注入により形成されたLDD領域645、646を有する従来のTFT800の製造方法を示す工程断面図である。このようなTFT800を製造する場合、まず図21(a)に示すようにチャネル領域649上にレジストパターン710を形成し、レジストパターン710をマスクとして、N型の不純物を低濃度となるようなドーズ量でイオン注入することにより、LDD領域645、646を形成する。次に、図21(b)に示すように、レジストパターン710よりも幅の広いレジストパターン720をチャネル領域649およびLDD領域645、646の一部を覆うように形成し、レジストパターン720をマスクとして、N型の不純物を高濃度となるようなドーズ量でイオン注入し、ドレイン領域647およびソース領域648を形成する。
【0008】
また、特許文献1には、イオン注入をすることなく形成されたLDD領域を有するボトムゲート型TFTが開示されている。図22は、特許文献1に開示されたボトムゲート型TFT900の構成を示す断面図である。図20に示すTFT800とは異なり、TFT900では、半導体層741は真性領域のみからなり、半導体層741の両端部の上面のそれぞれに、低濃度不純物層751、752および高濃度不純物層761、762が順に積層され、高濃度不純物層761、762の上面にドレイン電極771およびソース電極772がそれぞれ形成されている。このTFT900では、半導体層741と高濃度不純物層761に挟まれた低濃度不純物層751がLDD領域として機能し、オフ電流の増加を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−131030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図20に示すLDD領域645、646をイオン注入によって形成する場合、図21に示すように、低濃度不純物領域を形成する際に使用するレジストパターン710と、高濃度不純物領域を形成する際に使用するレジストパターン720とを形成しなければならない。この場合、レジストパターン710とレジストパターン720とのずれが大きくなると、LDD領域645はドレイン電圧に基づく電界を十分に緩和できなくなるという問題がある。また、レジストパターン710とレジストパターン720を形成するためのフォトリソグラフィ工程および注入された不純物イオンを活性化するための熱処理工程が必要になる等、a−Si_TFTの製造プロセスに追加しなければならない工程が多くなる。このため、a−Si_TFTの製造プロセスと整合性がなくなり、新たな設備投資が必要になるという問題がある。
【0011】
また、特許文献1に記載の低濃度不純物層751は、半導体層741と高濃度不純物層761との間に挟まれている。このため、図22に示す、点線で囲まれたドレイン領域の端部近傍では、ゲート電極621の電位に基づく電界とドレイン電極771に印加されるドレイン電圧に基づく電界を同時に受けるので、電界強度が大きくなり、オフ電流が増加するという問題がある。また、このような配置の低濃度不純物層751では、LDD領域の長さ(以下、「LDD長」という)は、垂直方向の低濃度不純物層751の長さ、すなわちその膜厚と等しくなる。そこで、低濃度不純物層751によって電界集中を緩和するために必要なLDD長0.1〜3μmを確保しようとすれば、低濃度不純物層651の膜厚を0.1〜3μmにする必要がある。しかし、0.1〜3μmのシリコン膜を成膜したり、エッチングしたりするのは時間がかかりすぎ、一方シリコン膜の膜厚を薄くすれば十分な電界緩和効果が得られないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、大きなオン電流を維持したままオフ電流を低減するとともに、製造が容易なLDD領域を備える薄膜トランジスタを提供することである。また、本発明の他の目的は、a−Si_TFTの製造プロセスと整合性を有する薄膜トランジスタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、絶縁性基板に形成されたボトムゲート型の薄膜トランジスタであって、
前記絶縁性基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と対向するチャネル領域と、前記チャネル領域を挟むように形成されたソース領域およびドレイン領域とを有する半導体層と、
前記半導体層上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ソース領域との間、および、前記ドレイン電極と前記ドレイン領域との間にそれぞれ形成されたオーミックコンタクト層とを備え、
前記半導体層は、微結晶半導体層および多結晶半導体層のいずれかを含み、
前記ドレイン電極は、前記ドレイン電極上に形成された前記オーミックコンタクト層の一部と重なるとともに、平面視において前記ゲート電極の端部から所定の距離を隔てて配置されていることを特徴とする。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記所定の距離は0.5〜3μmであり、
前記オーミックコンタクト層は、シート抵抗が50k〜5000kΩ/□の導電体層であることを特徴とする。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記オーミックコンタクト層は、不純物をドーピングした半導体層であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、
前記オーミックコンタクト層は、シート抵抗が50k〜500kΩ/□の微結晶半導体層を含むことを特徴とする。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、
前記オーミックコンタクト層は、さらに非晶質半導体層を含むことを特徴とする。
【0018】
第6の発明は、第3の発明において、
前記オーミックコンタクト層は、シート抵抗が500k〜5000kΩ/□の非晶質半導体層を含むことを特徴とする。
【0019】
第7の発明は、第1の発明において、
前記半導体層は、前記微結晶半導体層または前記多結晶半導体層の上面に非晶質半導体層が積層されていることを特徴とする。
【0020】
第8の発明は、第1の発明において、
前記半導体層の前記チャネル領域上にチャネルストッパ層が形成されていることを特徴とする。
【0021】
第9の発明は、第1〜第8のいずれかの発明に係る薄膜トランジスタを画素形成部のスイッチング素子として用いたことを特徴とする、表示装置である。
【0022】
第10の発明は、絶縁性基板上に形成されたボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記絶縁性基板上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記ゲート電極と対向するチャネル領域と、前記チャネル領域を挟むように形成されたソース領域およびドレイン領域とを有する半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
前記半導体膜上に、不純物がドーピングされた不純物膜を形成する不純物膜形成工程と、
前記不純物膜上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
光の強度を弱めて透過させる半透過部と、光を遮光する遮光部とを少なくとも有するハーフトーンマスクを用いて、前記チャネル領域に対応する前記金属膜上の少なくとも一部の領域に残された第1のレジスト膜の膜厚が、ソース電極およびドレイン電極が形成されるべき領域に残された第2のレジスト膜の膜厚よりも薄くなるとともに、平面視において前記第2のレジスト膜の端部が前記ゲート電極の端部と所定の距離を隔てて配置される第1のレジストパターンを形成する第1のパターニング工程と、
酸素によるプラズマを用いて前記第1のレジスト膜を除去するとともに、前記第2のレジスト膜を残す選択除去工程と、
前記選択除去工程によって残された前記第2のレジスト膜をマスクとして前記金属膜をエッチングすることによりドレイン電極とソース電極とを形成する電極形成工程と、
前記選択除去工程の前および前記電極形成工程の後のいずれかにおいて、前記不純物膜をエッチングすることにより、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面にそれぞれオーミックコンタクト層を形成するオーミックコンタクト層形成工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
第11の発明は、第10の発明において、
前記オーミックコンタクト層形成工程は、
前記ドレイン電極と前記ソース電極とを形成した後に、前記選択除去工程において残された前記第2のレジスト膜を除去するレジスト膜除去工程と、
前記金属膜の上面の前記ゲート電極に対応する位置に開口部を有する第2のレジストパターンを形成する第2のパターニング工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとして、前記不純物膜をエッチングする不純物膜エッチング工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
第12の発明は、第10の発明において、
前記ハーフトーンマスクは、前記半透過部の一部に透過部を有し、
前記第1のレジストパターンは、前記ハーフトーンマスクの前記透過部に対応する第1のレジスト膜の位置に開口部を有し、
前記オーミックコンタクト層形成工程は、前記選択除去工程の前に行われ、前記第1のレジストパターンをマスクとして前記開口部に露出された金属膜および前記不純物膜を順にエッチングする開口部エッチング工程を含むことを特徴とする。
【0025】
第13の発明は、絶縁性基板上に形成されたボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記絶縁性基板上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上に半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
前記半導体膜上に、不純物がドーピングされた不純物膜を形成する不純物膜形成工程と、
前記不純物膜上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の上面の前記ゲート電極に対応する領域に開口部を有するレジストパターンを形成するパターニング形成工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記金属膜および前記不純物膜をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記金属膜の端部が前記ゲート電極の端部から平面視において所定の距離だけ離れるまで、前記金属膜をウエットエッチングにより追加エッチングする追加エッチング工程とを備えることを特徴とする。
【0026】
第14の発明は、第13の発明において、
前記エッチング工程および追加エッチング工程は、リン酸、硝酸および酢酸を含むエッチャントによってウエットエッチングすることを特徴とする。
【0027】
第15の発明は、第10または第13の発明において、
前記不純物膜形成工程は、不純物を含むガスによるプラズマを用いてプラズマCVD法により不純物膜を形成することを特徴とする。
【0028】
第16の発明は、第10または第13の発明において、
前記半導体膜は微結晶半導体膜であり、
前記半導体膜形成工程は、プラズマCVD法または高密度プラズマCVD法によって前記微結晶半導体膜を形成する微結晶半導体膜形成工程を含むことを特徴とする。
【0029】
第17の発明は、第10または第13の発明において、
前記半導体膜は多結晶半導体膜であり、
前記半導体膜形成工程は、レーザ結晶化法によって非晶質半導体膜および微結晶半導体膜のいずれかから多結晶半導体膜を生成する多結晶半導体膜形成工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記第1の発明によれば、平面視において、ドレイン電極をゲート電極の端部から所定の距離だけ離して形成するので、LDD領域となる、ドレイン電極と重ならないオーミックコンタクト層を水平方向に形成することができる。このようなLDD領域は、ゲート電極の電位に基づく電界の影響を受けにくく、実質的にドレイン電圧に基づく電界のみの影響を受けるので、ドレイン電極の端部近傍での電界集中を緩和し、オフ電流を低減することができる。そこで、TFTは、結晶性シリコン膜からなるチャネル領域を形成することにより大きなオン電流を維持することができると同時に、水平方向に形成されたLDD領域によってオフ電流を十分低減することができる。
【0031】
上記第2の発明によれば、LDD領域の長さとなる、平面視におけるゲート電極の端部からドレイン電極までの距離を0.5〜3μmに調整し、オーミックコンタクト層としてシート抵抗が50k〜5000kΩ/□の導電体層を用いれば、オフ電流を十分低減することができる。
【0032】
上記第3の発明によれば、半導体層にドーピングされる不純物量を調整することにより、半導体層とドレイン電極およびソース電極とのオーミック接触を容易に確保することができる。
【0033】
上記第4の発明によれば、シート抵抗が50k〜500kΩ/□の微結晶半導体層からなるオーミックコンタクト層をLDD領域として使用することにより、オフ電流を十分低減することができる。
【0034】
上記第5の発明によれば、オーミックコンタクト層は、微結晶半導体層だけでなく、非晶質半導体層も含むので、オフ電流をより低減することができる。
【0035】
上記第6の発明によれば、シート抵抗が500k〜5000kΩ/□の非晶質半導体層からなるオーミックコンタクト層をLDD領域として使用することにより、オフ電流をより一層低減することができる。
【0036】
上記第7の発明によれば、結晶性シリコン層の上面に非晶質シリコン層を設けることによって、結晶性シリコン層の成膜時の膜厚がエッチング後もそのまま維持される。このため、半導体層の膜厚が薄くなって抵抗値が高くなることによりオン電流が小さくなることを防止することができる。
【0037】
上記第8の発明によれば、エッチングストッパ膜を設けることによって、結晶性シリコン層の成膜時の膜厚がその後の工程によって変化することなくそのまま維持される。また、結晶性シリコン層とエッチングストッパ膜との界面の状態もそのまま維持される。このため、オン電流が小さくなることを防止するとともに、オン電流を制御しやすくなる。
【0038】
上記第9の発明によれば、オフ電流を十分低減することができる薄膜トランジスタを画素のスイッチング素子として使用することにより、各画素形成部に与えられたデータ信号に応じた電圧を低下させることなく、次のデータ信号が与えられるまで保持することができる。
【0039】
上記第10の発明によれば、第1のレジストパターンは、膜厚の薄い第1のレジスト膜と、第1のレジスト膜よりも膜厚の厚い第2のレジスト膜とを含む。まず、第1のレジスト膜と第2のレジスト膜とをマスクとしてエッチングする。次に、酸素ガスによるプラズマを用いて第1のレジスト膜を除去した後、残った第2のレジスト膜をマスクとしてエッチングする。この場合、第1のレジスト膜と第2のレジスト膜とを1枚ハーフトーンマスクを使用することによって同時に形成することができるので、フォトマスクの枚数を減らして、製造コストを低減することができる。また、非晶質薄膜トランジスタの製造プロセスに追加すべき工程がほとんどないので、非晶質薄膜トランジスタの製造ラインを利用することにより、新たな設備投資が不要となる。このため、薄膜トランジスタの製造コストを低減することができる。
【0040】
上記第11の発明によれば、第1のレジストパターンを除去した後に、第2のレジストパターンを形成するので、工程は増加するが、安定した製造プロセスで不純物膜をエッチングしてオーミックコンタクト層を形成することができる。
【0041】
上記第12の発明によれば、第1のレジスト膜に形成された開口部に露出した金属膜および不純物膜をエッチングしてオーミックコンタクト層を形成する。次に、酸素ガスによるプラズマを用いて第1のレジスト膜を除去した後に、残った第2のレジスト膜をマスクとしてさらに金属膜をエッチングしてソース電極とドレイン電極とを形成する。この場合、ドレイン電極とオーミックコンタクト層との位置関係によってLDD領域のLDD長が決まる。しかし、オーミックコンタクト層とドレイン電極とをそれぞれ形成する第1のレジスト膜と第2のレジスト膜は同時に形成されるので、アライメント精度の影響を受けることなく、LDD長を制御することができる。
【0042】
上記第13の発明によれば、レジストパターン形成工程で形成されたレジストパターンを用いて、金属膜および高濃度不純物膜を分離するだけでなく、LDD領域の長さを調整することができるので、金属層の長さを調整するためのマスクを追加する必要がない。また、追加エッチングの時間を変えることにより金属層のシフト量を調整することができるので、TFTのLDD長を容易に調整することができる。
【0043】
上記第14の発明によれば、リン酸、硝酸および酢酸を含むエッチャントを用いて追加エッチングを行えば、追加エッチング中にレジストパターンが剥がれたり、下地の高濃度不純物膜までエッチングされたりすることはない。
【0044】
上記第15の発明によれば、高濃度不純物膜中の不純物濃度を、成膜時のガス流量を調整することにより調整することができるので、イオン注入を行う必要がない。このため、イオン注入のマスクとなるレジストパターンを形成する工程、イオン注入工程およびドーピングされた不純物イオンを活性化するためのアニール工程が不要になり、製造工程数の増加を抑えることができる。基板が大型化すれば難しくなるイオン注入工程が不要になることによって、大型化した基板にも高濃度不純物膜を容易に形成することができる。さらに、イオン注入によってドーピングされた不純物を活性化するための高温熱処理が不要になるので、TFTを低温プロセスで形成することができる。
【0045】
上記第16の発明によれば、プラズマCVD法または高密度プラズマCVD法によって微結晶半導体膜をゲート絶縁膜上に直接成膜することができるので、オン電流の大きな薄膜トランジスタの製造工程を短縮することができる。
【0046】
上記第17の発明によれば、非晶質半導体膜または微結晶半導体膜にレーザを照射することによって多結晶半導体膜を容易に形成することができるので、非晶質薄膜トランジスタの製造ラインを利用することにより、新たな設備投資が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタが形成された液晶表示装置の概略構成を示す断面図であり、(b)は液晶表示装置に含まれるアクティブマトリクス基板の一部を示す平面図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態に係るTFTの構成を示す平面図であり、(b)は(a)に示すA−A線に沿ったTFTの構成を示す断面図である。
【図3】図2に示す、LDD領域を設けたNチャネル型μc−Si_TFTにおけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。
【図4】図2に示すTFTの第1の変形例に係るTFTの構成を示す断面図である。
【図5】図2に示すTFTの第2の変形例に係るTFTの構成を示す断面図である。
【図6】図2に示すTFTの第3の変形例に係るTFTの構成を示す断面図である。
【図7】図2に示すTFTの製造方法を示す工程断面図である。
【図8】図2に示すTFTの製造方法を示す工程断面図である。
【図9】図2に示すTFTの製造方法を示す工程断面図である。
【図10】図7〜図9に示す製造方法に使用されるハーフトーンマスクの模式的平面図である。
【図11】図7〜図9に示す製造方法の第1の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図12】図7〜図9に示す製造方法の第1の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図13】図7〜図9に示す製造方法の第1の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図14】図11〜図13に示す製造方法に使用されるハーフトーンマスクの模式的平面図である。
【図15】図7〜図9に示す製造方法の第2の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図16】図7〜図9に示す製造方法の第2の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図17】図7〜図9に示す製造方法の第3の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図18】図7〜図9に示す製造方法の第3の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。
【図19】従来のNチャネル型μc−Si_TFTにおけるゲート電圧と、ドレイン電流との関係を示すグラフである。
【図20】LDD領域が設けられた従来のボトムゲート型TFTの構成を示す断面図である。
【図21】図19に示す従来のTFTの製造方法を示す工程断面図である。
【図22】従来の他のボトムゲート型TFTの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
<1.液晶表示装置の構成>
図1(a)は、本発明の実施形態に係るボトムゲート型TFTが形成された液晶表示装置10の概略構成を示す断面図であり、図1(b)は、液晶表示装置10に含まれるアクティブマトリクス基板11の一部を示す平面図である。図1(a)に示す液晶表示装置10は、データ信号線13、画素電極15等が形成されたアクティブマトリクス基板11と、アクティブマトリクス基板11に対向して配置され、カラーフィルター23、ブラックマトリクス24、共通電極25等が形成された対向基板21と、アクティブマトリクス基板11と対向基板21によって挟持された液晶層30を含む。
【0049】
図1(b)に示すアクティブマトリクス基板11には、データ信号線13と走査信号線14とが形成されている。データ信号線13と走査信号線14とは、互いに交差するように配置され、それらが交差する交差部毎に、スイッチング素子として機能するTFTと画素電極15とが設けられている。走査信号線14には、TFTのゲート電極121が接続され、データ信号線13には、TFTのソース電極172が接続されている。また、画素電極15は、コンタクトホール16を介してTFTのドレイン電極171に接続されている。TFTがオン状態になると、データ信号に応じた電圧がデータ信号線13からTFTを介して、画素電極15と共通電極25によって構成される画素容量に与えられる。画素容量に与えられた電圧は、TFTがオフ状態にある間、画素容量に保持される。
【0050】
<2. TFTの構成>
<2.1 TFTの構成の一実施形態>
図2(a)は、本発明の実施形態に係るボトムゲート型TFT100の構成を示す平面図であり、図2(b)は図2(a)に示すA−A線に沿ったTFT100の構成を示す断面図である。
【0051】
図2(a)および図2(b)に示すように、TFT100はボトムゲート型であり、絶縁性基板110上にゲート電極121が設けられ、ゲート電極121を覆うようにゲート絶縁膜130が形成されている。ゲート絶縁膜130の上面に、不純物を含まない微結晶シリコン膜または多結晶シリコン膜からなる半導体層141が積層されている。
【0052】
半導体層141の左側端部の上面には、半導体層141の左側端部と同じ大きさで、高濃度のN型不純物を含む微結晶シリコン膜からなるオーミックコンタクト層162が、左側端部と重なるように形成されている。オーミックコンタクト層162の上面には、オーミックコンタクト層162と部分的に重なり、左側に延在するソース電極172が形成されている。
【0053】
また、半導体層141の右側端部の上面には、半導体層141の右側端部と同じ大きさで、高濃度のN型不純物を含む微結晶シリコン膜からなるオーミックコンタクト層161が、右側端部と重なるように形成されている。オーミックコンタクト層161の上面には、オーミックコンタクト層161と部分的に重なり、右側に延在するドレイン電極171が形成されている。これらのソース電極172およびドレイン電極171は金属膜によって形成されている。そして、TFT100の全体を覆うように保護膜(パッシベーション膜)180が形成されている。
【0054】
なお、オーミックコンタクト層161、162は、高濃度のN型不純物を含む微結晶シリコン膜の代わりに、高濃度のN型不純物を含む非晶質シリコン膜によって形成されていてもよい。このように、オーミックコンタクト層161、162を半導体層で形成すれば、ドーピングする不純物量を調整することによってその抵抗値を調整できるので、半導体層141とドレイン電極171およびソース電極172とのオーミック接触を容易に形成することができる。また、オーミックコンタクト層161、162は、半導体層141とショットキー接合を形成しないような金属等の導電体層によって形成されていてもよい。
【0055】
半導体層141のうち、オーミックコンタクト層161、162によって覆われていない領域はチャネル領域141cとして機能し、チャネル領域141cの左右の領域はそれぞれソース領域141sおよびドレイン領域141dとして機能する。また、オーミックコンタクト層161、162は、ドレイン電極171とドレイン領域141d、および、ソース電極172とソース領域141sとをそれぞれオーミック接触させる役割を果たしている。
【0056】
Nチャネル型TFT100のゲート電極121に正電圧が印加されれば、チャネル領域141cのゲート電極121側の表面は、多数の電子が誘起されたN+層になる。このため、N型のソース電極172とドレイン電極171はチャネル領域141cのN+層によって電気的に接続され、TFT100はオン状態になる。一方、ゲート電極121に負電圧が印加されれば、チャネル領域141cの表面に、正孔が誘起されてP型になる。このため、N型のソース電極172とドレイン電極171はP型のチャネル領域141cによって分離され、TFT100はオフ状態になる。
【0057】
このようなTFT100において、図2(a)および図2(b)に示すように、ゲート電極121の右側端部とドレイン電極171の左側端部とが平面視において重ならないように、所定の距離だけ離して配置されている。このため、オーミックコンタクト層161のうち、平面視においてゲート電極121およびドレイン電極171が重ならない部分がLDD領域165として機能する。この場合、LDD領域165は水平方向に形成されるので、LDD領域165の長さ(LDD長)の調整に使用できる範囲が広くなり、LDD領域165の抵抗値の調整を容易に行うことができる。同様に、ゲート電極121の左側端部とソース電極172の右側端部とが互いに重ならないように、所定の距離だけ隔てて配置されている。
【0058】
水平方向に形成されたLDD領域165は、ゲート電極121の電位に基づく電界の影響を受けにくいので、実質的にドレイン電極171に与えられたドレイン電圧に基づく電界による電界集中を緩和できればよい。このようなLDD領域165は、LDD長とオーミックコンタクト層161の抵抗値とを調整することにより、電界集中を緩和してオフ電流を低減することができる。また、オーミックコンタクト層161の結晶性を変えて抵抗値を調整することにより、電界集中を緩和してオフ電流を低減してもよい。
【0059】
オーミックコンタクト層161の抵抗値が低すぎる場合、またはLDD長が短すぎる場合には、LDD領域165による電界緩和が不十分になるので、オフ電流を十分に低減することができないという問題が生じる。一方、オーミックコンタクト層161の抵抗値が高すぎる場合、またはLDD長が長すぎる場合には、LDD領域165の寄生抵抗値が大きくなるので、オン電流が低下するという問題が生じる。
【0060】
そこで、このような問題が生じないように、LDD長を0.5〜3μmの範囲とする。またオーミックコンタクト層161として、微結晶シリコン膜を用いる場合、シート抵抗を50k〜500kΩ/□の範囲とする。また、非晶質シリコン膜を用いる場合、シート抵抗を500k〜5000kΩ/□の範囲とする。なお、シート抵抗の調整は、ドーピングする不純物量を変えることによって行う。
【0061】
なお、ソース電極172側では、ドレイン電極171に印加されるドレイン電圧の影響を受けないので電界集中は生じない。したがって、LDD領域によって電界集中を緩和する必要がない。そこで、ソース電極172側のLDD長およびオーミックコンタクト層162のシート抵抗をそれぞれ上記と異なる値にしてもよい。
【0062】
図3は、このようなLDD領域165を設けたNチャネル型μc−Si_TFT100におけるゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係を示すグラフである。このグラフは、オーミックコンタクト層161、162のシート抵抗を200kΩ/□、LDD長を2μmとしたTFT100について測定したデータを示す。なお、図3には、比較のために、イオン注入によって形成されたLDD領域を有する、従来のTFT800のゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係も示されている。
【0063】
図3からわかるように、TFT100がオン状態の時、すなわちゲート電極121に正電圧が印加されている時、TFT100のドレイン電流Id、すなわちオン電流は、ゲート電圧Vgに対して従来のTFT800の場合と同様に変化する。
【0064】
しかし、TFT100がオフ状態の時、すなわちゲート電極121に負電圧が印加されている時、ゲート電圧Vgが負電圧側で大きくなっても、ゲート電極121の電位に基づく電界の影響を受けにくいので、オフ電流の増加は緩やかである。これに対して、従来のTFT800では、ゲート電圧Vgが負電圧側で大きくなるにつれて、ゲート電極121の電位に基づく電界の影響が強くなるので、ドレイン電流Idすなわちオフ電流も急激に増加する。このように、オーミックコンタクト層161の抵抗値とLDD長を調整したLDD領域165を設けることによって、大きなオン電流を維持したままオフ電流を低減することができることがわかる。
【0065】
<2.2 効果>
以上のように、本実施形態のTFT100では、平面視において、ドレイン電極171をゲート電極121から所定の距離だけ離して形成するので、水平方向に形成されたオーミックコンタクト層161のうち、平面視においてゲート電極121およびドレイン電極171のいずれとも重ならない領域がLDD領域165になる。このLDD領域165は、ゲート電極121の電位に基づく電界の影響を受けにくくなるので、実質的にドレイン電極171に印加されるドレイン電圧に基づく電界による電界集中を緩和すればよい。したがって、TFT100は、移動度の高い結晶性シリコン膜からなるチャネル領域によって大きなオン電流を維持すると同時に、水平方向に形成されたLDD領域165によってオフ電流を十分低減することができる。
【0066】
また、オーミックコンタクト層161の抵抗値とLDD長を調整するだけで、オフ電流を十分低減できるTFT100を形成することができる。オーミックコンタクト層161の抵抗値は、結晶性および不純物濃度の少なくともいずれかを変えることによって、50k〜5000kΩ/□の範囲で自由に選択することができる。また、LDD長は、0.5〜3μmの範囲で自由に選択することができる。
<2.3 TFTの構成の第1の変形例>
図4は、本発明の実施形態の第1の変形例に係るTFT300の構成を示す断面図である。図4に示すTFT300のうち、上述の実施形態に係るTFT100と同一または対応する構成要素については同一の参照符号を付し、TFT100との相違点を中心に説明する。
【0067】
図4に示すように、TFT300では、図2に示すTFT100と異なり、結晶性シリコンからなる半導体層141と、微結晶シリコンからなるオーミックコンタクト層161、162との間に、オーミックコンタクト層161、162と同じ大きさの非晶質シリコン層151、152が、平面視においてオーミックコンタクト層161、162とそれぞれ重なるように配置されている。このように、オーミックコンタクト層161、162に非晶質シリコン層151、152を追加することによって、オーミックコンタクト層161、162の抵抗値を高くすることができるので、オフ電流をより低減することができる。
【0068】
<2.4 TFTの構成の第2の変形例>
図5は、本発明の実施形態の第2の変形例に係るTFT400の構成を示す断面図である。図5に示すTFT400のうち、実施形態に係るTFT100と同一または対応する構成要素については同一の参照符号を付し、TFT100との相違点を中心に説明する。
【0069】
図5に示すように、TFT400では、半導体層141は、結晶性シリコン層143とその上面を形成された非晶質シリコン層145とからなる。この非晶質シリコン層145の膜厚は、ソース領域141sおよびドレイン領域141d上では厚く、チャネル領域141c上では薄くなっている。これは、チャネル領域141c上の高濃度不純物膜をエッチングしたときに、オーバーエッチングによって非晶質シリコン層145の一部が除去されるためである。
【0070】
TFT400のように、結晶性シリコン層143の上面に非晶質シリコン層145が形成されていれば、図2および図4に示すTFT100、300のように、高濃度不純物膜をエッチングしてオーミックコンタクト層161、162を形成するときに、オーバーエッチングによって除去されるのは非晶質シリコン層145の一部で、結晶性シリコン層143まで除去されることはない。このように結晶性シリコン層143の上面に非晶質シリコン層145を設けることによって、結晶性シリコン層143の成膜時の膜厚がエッチング後もそのまま維持されるので、結晶性シリコン層143の抵抗値が高くなってオン電流が小さくなることを防止することができる。
【0071】
<2.5 TFTの構成の第3の変形例>
図6は、エッチングストッパ層155を有するTFT500の構成を示す断面図である。図6に示すTFT500のうち、実施形態に係るTFT100と同一または対応する構成要素については同一の参照符号を付し、TFT100との相違点を中心に説明する。
【0072】
図2および図4にそれぞれ示すTFT100、300では、半導体層141のチャネル領域141cがエッチングストッパ層によって保護されていなかった。このため、高濃度不純物膜をエッチングしてオーミックコンタクト層161、162を形成するときに、チャネル領域141cの半導体層141の一部が、オーバーエッチングによって除去される。この除去される半導体層141の膜厚を制御することは難しく、またチャネル領域141cの半導体層141の膜厚が薄くなると、抵抗値が高くなってオン電流が減少するという問題が生じる。
【0073】
そこで、チャネル領域141cを覆うように、半導体層141の上面にエッチングストッパ層155を形成しておけば、高濃度不純物膜を除去するときに、チャネル領域141cの半導体層141がオーバーエッチングされることはない。なお、このエッチングストッパ層155として、例えばシリコン膜とのエッチング選択比が高いSiNx膜(窒化シリコン)等が用いられる。このように、エッチングストッパ層155を設けることによって、半導体層141の成膜時の膜厚がエッチング後もそのまま維持される。このため、オン電流の制御がしやすくなる。
【0074】
<3 TFTの製造方法>
<3.1 TFTの製造方法の一実施形態>
図7〜図9は、上記実施形態に係るTFT100の製造方法を示す工程断面図である。まず、図7(a)に示すように、ガラス、石英、プラスチック等の透明な絶縁体からなる絶縁性基板110の表面に、Ti(チタン)/Al(アルミニウム)/Tiからなる積層膜をスパッタ法により成膜する。次に、積層膜上にレジストを塗布し、露光および現像を行うことによってゲート電極121のエッチング時のマスクとなるレジストパターン(図示しない)を形成する。形成したレジストパターンをマスクとして、Ti、Al、Tiの順にドライエッチングを行った後、レジストパターンを剥離する。この結果、基板110上にゲート電極121が形成される。
【0075】
次に、ゲート電極121を覆うように、例えば膜厚が約410nmのSiNx膜からなるゲート絶縁膜130を形成する。SiNx膜は、SiH4(モノシラン)、NH3(アンモニア)およびN2(窒素)の混合ガスを用いて、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition)により成膜される。
【0076】
ゲート絶縁膜130の表面に、微結晶シリコン膜からなる半導体膜140を成膜する。この半導体膜140は、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて、例えば、チャンバ内の圧力を3Torr、SiH4とH2の流量比を1:300、RF電力を3kW/m2となるような条件下で成膜される。なお、平行平板型のプラズマ装置を用いたCVD法の代わりに、高密度プラズマCVD法(ICP(Inductively coupled Plasma)法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)法、表面波プラズマCVD法、ヘリコン波プラズマCVD法等の方式が含まれる)によって微結晶シリコン膜からなる半導体膜140を成膜してもよい。例えばICP法で成膜する場合、半導体膜140は、チャンバ内の圧力が10mTorr、SiH4とH2の流量比が1:1、RF電力が20kW/m2となるような条件下で成膜される。
【0077】
また、半導体膜140として、微結晶シリコン膜の代わりに多結晶シリコン膜を成膜してもよい。多結晶シリコン膜からなる半導体膜140は、非晶質シリコン膜を結晶化させることによって成膜される。非晶質シリコン膜は、平行平板型のプラズマ装置を用いて、例えば、チャンバ内の圧力を1Torr、SiH4とH2の流量比を1:1、RF電力を1kW/m2となるような条件下で成膜される。このようにして成膜された非晶質シリコン膜に、XeCl等のエキシマレーザを照射することにより結晶化させる。例えば、非晶質シリコンに照射するレーザ光のビーム幅を1mm程度、照射エネルギーを250mJ/cm2とした場合、大きさが0.1〜0.3μmの多結晶シリコン膜となる。なお、エキシマレーザの代わりに、他の固体レーザ(例えばYAGレーザ光をSHG(Second Harmonic Generation)活性物質に入射させることにより放出される第2高調波のレーザ光)等を照射することにより結晶化させてもよい。また、非晶質シリコン膜に照射するレーザ光のビーム幅を10μm程度、照射エネルギーを350mJ/cm2とし、非晶質シリコン膜の固液界面を横方向に移動させることによって生じる温度差を利用して、膜面に沿って横方向に多結晶シリコン膜を成長(ラテラル成長)させてもよい。この場合、ゲート電極121上において熱伝導度が高くなるので、ゲート電極121上で多結晶シリコン膜が成長しやすくなる。
【0078】
多結晶シリコン膜からなる半導体膜140は、非晶質シリコン膜を結晶化して成膜する代わりに、上述の方法で成膜された微結晶シリコン膜を結晶化することにより成膜してもよい。このようにして成膜された多結晶シリコン膜中のシリコンの結晶粒径はより大きくなるので、半導体膜140として使用すれば、TFT100のオン電流もより大きくすることができる。また、非晶質シリコン膜や微結晶シリコン膜をレーザ以外の加熱法で加熱することにより、固相成長させて結晶化してもよい。このような加熱法としては、RTA(Rapid Thermal Annealing)法、フラッシュランプアニール法、または焼成炉による加熱法等がある。
【0079】
さらに、プラズマCVD法または高密度プラズマCVD法を用いることにより、微結晶半導体膜をゲート絶縁膜130上に成膜し、成膜した微結晶半導体膜を結晶化することなく半導体膜140として使用することもできる。この場合、結晶化に必要な工程が不要になるので、TFT100の製造工程を短縮することができる。
【0080】
半導体膜140を積層した後、プラズマCVD法により、N型不純物として例えばP(リン)が高濃度にドーピングされた微結晶シリコン膜からなる高濃度不純物膜160を積層する。具体的には、平行平板型プラズマ装置に、SiH4(モノシラン)、H2(水素)およびPH3(ホスフィン)の混合ガスを供給し、SiH4に対するPH3のガス流量を0.01〜2%の範囲で調整して、シート抵抗が50k〜500kΩ/□である微結晶シリコン膜を成膜する。
【0081】
なお、高濃度不純物膜160として、微結晶シリコン膜の代わりに非晶質シリコン膜を積層してもよい。この場合、PH3とSiH4のガス流量を調整することにより、シート抵抗が500k〜5000kΩ/□である非晶質シリコン膜を成膜する。
【0082】
図7(b)に示すように、スパッタ法によって、高濃度不純物膜160の上面に、例えばMo(モリブデン)等からなる金属膜170を形成する。次に、図7(c)に示すように、金属膜170の上面にレジスト膜210を形成し、ハーフトーンマスク190を使用して露光(以下、「ハーフトーン露光」という)する。
【0083】
この明細書では、中間露光される領域に対応するマスク上の位置に複数のスリットを設け、スリットの幅に応じて光の強度を弱めるマスク(グレートーンマスクともいう)と、半透過膜で覆った半透過部によって光の強度を弱めるマスクをまとめてハーフトーンマスクという。図10は、この実施形態に係る製造方法に使用されるハーフトーンマスクの模式的平面図である。図10に示すハーフトーンマスク190には、光を遮光する遮光部191と、光を透過する透過部193と、複数のスリット194によって光の強度を弱める半透過部192が形成されている。
【0084】
図7(c)に示すように、チャネル領域141cとなるべき位置にハーフトーンマスク190の半透過部192を位置合わせし、ドレイン電極およびソース電極が形成されるべき位置に遮光部191を位置合わせして露光する。その結果、チャネル領域141cとなる領域のレジスト膜210は、透過部193を透過した光よりも強度が弱い光によって露光され、ドレイン電極およびソース電極が形成されるべき領域のレジスト膜210は露光されない。
【0085】
ハーフトーン露光後に現像を行うと、ハーフトーンマスク190の半透過部192に対応するチャネル領域141cとなるべき位置では、レジスト膜210の一部が現像液に溶解し、図8(d)に示すように、レジストパターン220の膜厚が薄くなる。遮光部191に対応するドレイン電極およびソース電極が形成されるべき位置では、レジスト膜210は現像液に溶解しないので、レジストパターン220の膜厚は厚いままである。一方、ハーフトーンマスク190の透過部193に対応する部分ではレジスト膜210が除去され、金属膜170の表面が露出している。このようなレジストパターン220をマスクとして、ドライエッチングにより、表面が露出された金属膜170、その下部の高濃度不純物膜160および半導体膜140を連続してエッチングする。
【0086】
続いて図8(e)に示すように、レジストパターン220のうち、半透過部192を透過した光によって露光された領域のみを除去するため、O2(酸素)ガスに高周波電力を印加して発生させたプラズマを発生させ、そのプラズマによりレジスト膜を灰化除去するアッシング(以下、「ハーフアッシング」という)を行う。ハーフアッシングによって、チャネル領域が形成されるべき領域では、レジストパターン220のうち膜厚の薄い部分が完全に除去され、金属膜170の表面が露出される。このとき、ハーフトーンマスクの遮光部191に対応するレジストパターン220の膜厚も若干薄くなるが、金属膜170をエッチングするときのマスクとして十分な膜厚のレジストパターン230が残されている。
【0087】
図8(f)に示すように、ハーフアッシングされて残ったレジストパターン230をマスクにして、金属膜170をドライエッチングし、ドレイン電極171およびソース電極172を形成する。その後、レジストパターン230を剥離する。次に、図9(g)に示すように、レジストを塗布し、露光および現像を行うことによって、チャネル領域141cとなるべき領域上に開口部を有するレジストパターン240を形成する。
【0088】
図9(h)に示すように、レジストパターン240をマスクとして開口部に露出した高濃度不純物膜160をドライエッチングし、ギャップエッチ部243を形成する。このようにして形成されたギャップエッチ部243により、チャネル領域141c上の高濃度不純物膜160が除去されて2つの高濃度不純物層に分離され、それぞれオーミックコンタクト層161、162になる。その後、レジストパターン240を剥離する。なお、高濃度不純物膜160を除去するときのオーバーエッチングによって、その下部の半導体層141もある程度エッチングされる。
【0089】
図9(i)に示すように、プラズマCVD法によって、TFT100の全体を覆うようにSiNxからなる保護膜180を形成する。その後、保護膜180に、ドレイン電極171の表面に達するコンタクトホール(図1(b)の16)を開口する。そして、保護膜180上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な金属膜をスパッタ法によって形成し、透明な金属膜をパターンニングして画素電極(図1(b)の15)を形成する。その結果、コンタクトホール16を介してドレイン電極171に接続された画素電極15が形成される。
【0090】
<3.2 効果>
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、チャネル領域141c上の金属膜170を除去するためのレジストパターンと、ドレイン電極171およびソース電極172をパターニングするためのレジストパターンとを、それぞれ異なるフォトマスクを使用して形成する代わりに、ハーフトーンマスク190を使用してレジストパターン220を形成するだけでよいので、フォトマスクの枚数を増やすことなくLDD領域165を形成することができる。
【0091】
また高濃度不純物膜160中の不純物濃度を、成膜時のガス流量を調整することにより調整するので、イオン注入を行う必要がない。このため、イオン注入時にマスクとなるレジストパターンを形成する工程、イオン注入工程およびドーピングされた不純物イオンを活性化するためのアニール工程が不要になり、製造工程数の増加を抑えることができる。また絶縁性基板110が大型化すれば難しくなるイオン注入工程が不要になることによって、大型化した絶縁性基板110にも高濃度不純物膜160を容易に形成することができる。さらに、イオン注入によってドーピングされた不純物を活性化するための熱処理(約600℃)が不要になるので、TFT100を低温プロセス(約350℃以下)で形成することができる。
【0092】
さらに、a−Si_TFTの製造プロセスに追加すべき工程がほとんどないので、a−Si_TFTの製造ラインを利用することにより、新たな製造ラインを設ける必要がない。このため、TFT100の製造コストを低減することができる。
【0093】
<3.3 TFTの製造方法の第1の変形例>
図11〜図13は、上述の実施形態のTFT100の第1の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。図11〜図13に示すTFTの製造工程のうち、図7〜図9に示す製造工程と同一または対応する製造工程については同一の参照符号を付し、図7〜図9に示す製造工程との相違点を中心に説明する。
【0094】
図11(a)に示す高濃度不純物膜160を形成するまでの製造工程は、図7(a)に示す製造工程と同一であるため、その説明を省略する。次に、図11(b)に示すように、高濃度不純物膜160上にレジストを塗布し、露光および現像を行うことによってレジストパターン(図示しない)を形成する。形成したレジストパターンをマスクとして、高濃度不純物膜160、半導体膜140およびゲート絶縁膜130の順にドライエッチングを行った後、レジストパターンを剥離する。この結果、TFTが形成されるべき領域にゲート絶縁膜130、半導体層141および高濃度不純物膜160が積層された積層膜が形成される。
【0095】
図11(c)に示すように、スパッタ法によって、高濃度不純物膜160の上面に、例えばMo(モリブデン)等からなる金属膜170を形成する。次に、図12(d)に示すように、金属膜170の上面にレジスト膜210を形成し、ハーフトーンマスク290を使用してハーフトーン露光をする。
【0096】
図14は、このハーフトーン露光に使用されるハーフトーンマスク290の模式的平面図である。図14に示すハーフトーンマスク290には、光を遮光する遮光部291と、光を透過する透過部293と、複数のスリットによって光の強度を弱める半透過部292が形成されている。
【0097】
図12(d)に示すように、チャネル領域141cとなるべき位置にハーフトーンマスク290の半透過部292および半透過部292によって挟まれた透過部293を位置合わせし、ドレイン電極およびソース電極が形成されるべき位置に遮光部291を位置合わせして露光する。この場合、チャネル領域141c上のレジスト膜210のうち、透過部293に対応するレジスト膜は強い強度の光によって露光され、半透過部292に対応するレジスト膜は強度が弱められた光によって露光され、ドレイン電極171およびソース電極172が形成されるべき領域のレジスト膜は露光されない。
【0098】
ハーフトーン露光後に現像を行うと、チャネル領域141cとなるべき位置のレジスト膜210のうち、強い強度の光によって露光されたレジスト膜は現像液に溶解し、強度が弱められた光によって露光されたレジスト膜はその一部が現像液に溶解するので、形成されるレジストパターン280は図12(e)に示すような形状になる。具体的には、レジストパターン280は、チャネル領域141cとなるべき位置に開口部を有する膜厚の薄いレジスト膜と、ドレイン電極171およびソース電極172が形成されるべき位置に膜厚の厚いレジスト膜を有するパターンとなる。ハーフトーンマスク290の透過部293に対応する部分ではレジスト膜210が除去され、金属膜170の表面が露出する。次に、図12(f)に示すように、レジストパターン280をマスクとして、ドライエッチングにより、表面が露出された金属膜170およびその下部の高濃度不純物膜160を連続してエッチングすることにより、ギャップエッチ部283を形成する。このようにして形成されたギャップエッチ部283により、高濃度不純物膜160は左右に分離され、オーミックコンタクト層161、162が形成される。なお、ドライエッチング時のオーバエッチングにより、半導体層141の表面もある程度エッチングされる。
【0099】
続いて図13(g)に示すように、ギャップエッチ部283の左右に位置するレジストパターン280のうち強度が弱められた光によって露光された部分を除去するため、ハーフアッシングを行う。ハーフアッシングによって、チャネル領域141cが形成されるべき領域では、レジストパターン220のうち膜厚の薄い部分が完全に除去され、金属膜170の表面が露出される。このとき、ハーフトーンマスクの遮光部291に対応するレジストパターン220の膜厚も少し薄くなるが、金属膜170をエッチングするときのマスクとして十分な膜厚のレジストパターン285が残されている。
【0100】
図13(h)に示すように、ハーフアッシングされて残ったレジストパターン285をマスクにして、金属膜170をドライエッチングし、ドレイン電極171およびソース電極172を形成する。その後、レジストパターン285を剥離する。次に、図13(i)に示すように、プラズマCVD法によって、TFT100の全体を覆うようにSiNxからなる保護膜180を形成する。その後のコンタクトホールを開口したり、画素電極を形成したりする製造工程は、上述の実施形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0101】
次に、本変形例に係る製造方法の効果について、図7〜図9に示す実施形態に係る製造方法と比較しながら説明する。図7〜図9に示す製造方法では、図8(d)に示すように、ハーフトーン露光によってレジストパターン220を形成し、レジストパターン220をハーフエッチングしたレジストパターン230をマスクとしてエッチングすることにより、ドレイン電極171およびソース電極172を形成する。さらに図9(g)に示すように、新たにレジストパターン240を形成し、レジストパターン240をマスクとしてエッチングすることによりギャップエッチ部243を形成する。この場合、レジストパターン220、240を形成するためのフォトマスクは、ゲート電極121形成時に絶縁性基板110上に同時に形成されたマークに合わせてそれぞれアライメントされる。しかし、同じマークを使用してアライメントを行っても、アライメント装置の機械精度や画像読込み精度等のため、レジストパターン220とレジストパターン240のずれが±1μm程度生じる可能性がある。この場合、LDD領域165のLDD長も1μm程度長くなったり、短くなったりする。一方、本発明によって形成されるLDD領域165のLDD長は0.5〜3μm程度であり、±1μm程度のずれは無視できない影響を与える。
【0102】
そこで、本変形例に係る製造方法においては、図12(e)に示すように、ハーフトーン露光によってレジストパターン280を形成し、レジストパターン280をマスクとしてエッチングすることによりギャップエッチ部283を形成する。さらに、レジストパターン280をハーフアッシングしてレジストパターン285とし、レジストパターン285をマスクとしてエッチングすることにより、ドレイン電極171およびソース電極172を形成する。この場合、図7〜図9に示す製造方法と異なり、ドレイン電極171とオーミックコンタクト層161との位置関係は、レジストパターン280のみによって決まるので、アライメント精度に基づくレジストパターンのずれを考慮する必要がない。なお、ハーフアッシングによりレジストパターン280のエッジ部が後退するので、ドレイン電極171およびソース電極172が若干細くなるが、その後退量を0.3μm以下に抑えることができるので、LDD領域165のLDD長に与える影響を大幅に少なくすることができる。また、見込まれる後退量だけマスクのパターンをあらかじめリサイズ処理しておけば、ドレイン電極171およびソース電極172の寸法をほぼ設計値どおりに形成することもできる。
【0103】
また、ギャップエッチ部283を形成するためのレジストパターンと、ドレイン電極171およびソース電極172を形成するためのレジストパターンとを、ハーフトーン露光を利用することによって1枚のフォトマスクで形成することができるので、より一層マスク枚数を低減することができる。本変形例のその他の効果は、図7〜図9に示す実施形態に係る製造方法の効果と同一であるため、その説明を省略する。
【0104】
<3.4 TFTの製造方法の第2の変形例>
図15〜図16は、上述の実施形態のTFT100の第2の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。図15〜図16に示す製造工程のうち、図7〜図9に示す製造工程と同一または対応する製造工程については同一の参照符号を付し、図7〜図9に示す製造工程との相違点を中心に説明する。
【0105】
図15(a)に示す工程から図15(b)に示す高濃度不純物膜160を積層するまでの工程は、図7(a)に示すTFT100の製造工程と同じであるので、その説明を省略する。高濃度不純物膜160上に形成されたレジストパターン(図示しない)をマスクとして、高濃度不純物膜160および半導体膜140を連続してドライエッチングする。この結果、TFTが形成されるべき領域の左右の領域では、高濃度不純物膜160および半導体膜140が除去されている。
【0106】
図15(c)に示すように、スパッタ法によって、基板110の全面に、例えばMo(モリブデン)等からなる金属膜170を形成する。そして、金属膜170上にレジストを塗布し、露光および現像を行うことによって、ドレイン電極171およびソース電極172となるべき領域上にレジストパターン250を形成する。このレジストパターン250は、ゲート電極121の上方のチャネル領域141cとなるべき部分に開口部を有する。
【0107】
図15(d)に示すように、レジストパターン250をマスクとして、基板110をエッチャントに浸漬し、金属膜170をウエットエッチングする。このウエットエッチングに使用されるエッチャントは、レジストパターンの剥がれがなく、また金属膜170の下部の高濃度不純物膜160に対して十分なエッチング選択比を有する必要がある。このため、金属エッチャントとしてよく知られているSLAエッチャント(組成;H3PO4(リン酸):H2O:HNO3(硝酸):CH3COOH(酢酸)=16:2:1:1)が使用される。続いて、高濃度不純物膜160をドライエッチングする。この結果、金属膜170はゲート電極121の左右に分離された金属層173、174になり、高濃度不純物膜160はオーミックコンタクト層161、162に分離される。なお、ドライエッチング時のオーバーエッチングによって、除去された高濃度不純物膜160の下部の半導体層141もある程度エッチングされる。
【0108】
図15(e)に示すように、金属層173、174を追加エッチングするため、基板110を再びSLAエッチャントに浸漬する。金属層173、174は、レジストパターン250とオーミックコンタクト層161、162によってそれぞれ挟まれている。金属層173、174の端部は露出しているので、SLAエッチャントに浸漬されれば、端部からレジストパターン250に沿ってそれぞれ右および左方向に所定のエッチングレートでエッチングされていく。このため、SLAのエッチングレートを予め求めておけば、追加エッチングのエッチング時間を調整するだけで、金属層173、174の長さすなわちLDD長を所望の長さにすることができる。そして、図12(F)に示すようにレジストパターン250を剥離する。
【0109】
その後のTFTの製造工程は、図9(h)および図9(i)と同じであるので、その説明を省略する。
【0110】
このように、図15(c)に示すレジストパターン250を用いて、金属膜170および高濃度不純物膜160を左右に分離するだけでなく、分離された金属層173、174の長さを調整することができるので、金属層173、174の長さを調整するためのマスクを追加する必要がない。また、追加エッチングの時間を変えることにより金属層173、174のシフト量を調整することができるので、TFTのLDD長を容易に調整することができる。
【0111】
また、a−Si_TFTの製造プロセスに追加すべき工程がほとんどないので、新たな製造ラインを設ける必要がない。このため、TFTの製造コストを低減することができる。
【0112】
<3.5 TFTの製造方法の第3の変形例>
図17〜図18は、上述の実施形態のTFT100の第3の変形例に係る製造方法を示す工程断面図である。図17〜図18に示すTFTの製造工程のうち、図15〜図16に示す製造工程と同一または対応する製造工程については同一の参照符号を付し、図15〜図16に示す製造工程との相違点を中心に説明する。
【0113】
図17(a)から、図17(d)に示す、高濃度不純物膜160をドライエッチングしてオーミックコンタクト層161、162を形成するまでの製造工程は、図15(a)〜図15(d)に示す製造工程と同一であるため、その説明を省略する。次に、図17(d)に示すように、金属膜170および高濃度不純物膜160をドライエッチングするときにマスクとして使用したレジストパターン260を剥離する。
【0114】
図18(e)に示すように、レジストを塗布し、露光および現像を行うことによって、分離された左右の金属層175、176の上面にそれぞれ島状のレジストパターン270を新たに形成する。そして、レジストパターン270をマスクにして金属層175、176をエッチングすることにより、ドレイン電極171およびソース電極172をそれぞれ形成する。その後の製造工程は、図12(g)に示す製造工程と同一なので、その説明を省略する。
【0115】
このように、a−Si_TFTの製造プロセスに追加すべき工程がほとんどないので、新たな製造ラインを設ける必要がない。このため、TFTの製造コストを低減することができる。
【0116】
<4. その他>
上記実施形態およびその変形例に係るTFT100、300、400、500では、半導体層141およびオーミックコンタクト層161、162はシリコン膜によって形成されているとしたが、SiGe(シリコンゲルマニウム)膜またはSiC(炭化シリコン)膜等の半導体膜によって形成されていてもよい。
【0117】
上記実施形態およびその変形例に係るTFT100、300、400、500は、Nチャネル型TFTとして説明したが、Pチャネル型TFTであってもよい。なお、Pチャネル型TFTの場合、オーミックコンタクト層161、162にはP型不純物がドーピングされている。
【0118】
また、上記実施形態およびその変形例に係るTFT100、300、400、500は、液晶表示装置10で使用される場合、画素用TFTとして使用される場合が多いが、ドライバモノリシック表示装置の駆動回路用TFTとして用いることもできる。さらに、TFT100、300、400、500は、液晶表示装置だけでなく、有機EL(Organic Electro Luminescence)表示装置にも使用される。
【符号の説明】
【0119】
10…液晶表示装置
100、300、400、500…TFT
110…絶縁性基板
121…ゲート電極
130…ゲート絶縁膜
141…半導体層
141d…ドレイン領域
141c…チャネル領域
141s…ソース領域
151、152、155…非晶質シリコン層
155…エッチングストッパ層
160…高濃度不純物膜
161、162…オーミックコンタクト層
165…LDD領域
170…金属膜
171…ドレイン電極
172…ソース電極
190、290…ハーフトーンマスク
220、250、280、285…レジストパターン
243、283…ギャップエッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板に形成されたボトムゲート型の薄膜トランジスタであって、
前記絶縁性基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と対向するチャネル領域と、前記チャネル領域を挟むように形成されたソース領域およびドレイン領域とを有する半導体層と、
前記半導体層上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ソース領域との間、および、前記ドレイン電極と前記ドレイン領域との間にそれぞれ形成されたオーミックコンタクト層とを備え、
前記半導体層は、微結晶半導体層および多結晶半導体層のいずれかを含み、
前記ドレイン電極は、前記ドレイン電極上に形成された前記オーミックコンタクト層の一部と重なるとともに、平面視において前記ゲート電極の端部から所定の距離を隔てて配置されていることを特徴とする、薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記所定の距離は0.5〜3μmであり、
前記オーミックコンタクト層は、シート抵抗が50k〜5000kΩ/□の導電体層であることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記オーミックコンタクト層は、不純物をドーピングした半導体層であることを特徴とする、請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記オーミックコンタクト層は、シート抵抗が50k〜500kΩ/□の微結晶半導体層を含むことを特徴とする、請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記オーミックコンタクト層は、さらに非晶質半導体層を含むことを特徴とする、請求項4に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記オーミックコンタクト層は、シート抵抗が500k〜5000kΩ/□の非晶質半導体層を含むことを特徴とする、請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記半導体層は、前記微結晶半導体層または前記多結晶半導体層の上面に非晶質半導体層が積層されていることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記半導体層の前記チャネル領域上にチャネルストッパ層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを画素形成部のスイッチング素子として用いたことを特徴とする、表示装置。
【請求項10】
絶縁性基板上に形成されたボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記絶縁性基板上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記ゲート電極と対向するチャネル領域と、前記チャネル領域を挟むように形成されたソース領域およびドレイン領域とを有する半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
前記半導体膜上に、不純物がドーピングされた不純物膜を形成する不純物膜形成工程と、
前記不純物膜上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
光の強度を弱めて透過させる半透過部と、光を遮光する遮光部とを少なくとも有するハーフトーンマスクを用いて、前記チャネル領域に対応する前記金属膜上の少なくとも一部の領域に残された第1のレジスト膜の膜厚が、ソース電極およびドレイン電極が形成されるべき領域に残された第2のレジスト膜の膜厚よりも薄くなるとともに、平面視において前記第2のレジスト膜の端部が前記ゲート電極の端部と所定の距離を隔てて配置される第1のレジストパターンを形成する第1のパターニング工程と、
酸素ガスによるプラズマを用いて前記第1のレジスト膜を除去するとともに、前記第2のレジスト膜を残す選択除去工程と、
前記選択除去工程によって残された前記第2のレジスト膜をマスクとして前記金属膜をエッチングすることによりドレイン電極とソース電極とを形成する電極形成工程と、
前記選択除去工程の前および前記電極形成工程の後のいずれかにおいて、前記不純物膜をエッチングすることにより、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面にそれぞれオーミックコンタクト層を形成するオーミックコンタクト層形成工程とを備えることを特徴とする、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記オーミックコンタクト層形成工程は、
前記ドレイン電極と前記ソース電極とを形成した後に、前記選択除去工程において残された前記第2のレジスト膜を除去するレジスト膜除去工程と、
前記金属膜の上面の前記ゲート電極に対応する位置に開口部を有する第2のレジストパターンを形成する第2のパターニング工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとして、前記不純物膜をエッチングする不純物膜エッチング工程とを含むことを特徴とする、請求項10に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記ハーフトーンマスクは、前記半透過部の一部に透過部を有し、
前記第1のレジストパターンは、前記ハーフトーンマスクの前記透過部に対応する第1のレジスト膜の位置に開口部を有し、
前記オーミックコンタクト層形成工程は、前記選択除去工程の前に行われ、前記第1のレジストパターンをマスクとして前記開口部に露出された金属膜および前記不純物膜を順にエッチングする開口部エッチング工程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
絶縁性基板上に形成されたボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記絶縁性基板上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上に半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
前記半導体膜上に、不純物がドーピングされた不純物膜を形成する不純物膜形成工程と、
前記不純物膜上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の上面の前記ゲート電極に対応する領域に開口部を有するレジストパターンを形成するパターニング形成工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記金属膜および前記不純物膜をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記金属膜の端部が前記ゲート電極の端部から平面視において所定の距離だけ離れるまで、前記金属膜をウエットエッチングにより追加エッチングする追加エッチング工程とを備えることを特徴とする、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記エッチング工程および追加エッチング工程は、リン酸、硝酸および酢酸を含むエッチャントによってウエットエッチングすることを特徴とする、請求項13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記不純物膜形成工程は、不純物を含むガスによるプラズマを用いたプラズマCVD法により不純物膜を形成することを特徴とする、請求項10または13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記半導体膜は微結晶半導体膜であり、
前記半導体膜形成工程は、プラズマCVD法または高密度プラズマCVD法によって前記微結晶半導体膜を形成する微結晶半導体膜形成工程を含むことを特徴とする、請求項10または13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記半導体膜は多結晶半導体膜であり、
前記半導体膜形成工程は、レーザ結晶化法によって非晶質半導体膜および微結晶半導体膜のいずれかから多結晶半導体膜を生成する多結晶半導体膜形成工程を含むことを特徴とする、請求項10または13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−182716(P2010−182716A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22391(P2009−22391)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】