説明

薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法

【課題】信頼性が高く、高性能なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の第1の態様にかかる薄膜トランジスタは、基板1上に形成されたゲート電極2と、SiN膜からなる第1ゲート絶縁膜31及び第1ゲート絶縁膜31上に形成されたSiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜33を含み、ゲート電極2を覆うゲート絶縁膜3と、ゲート絶縁膜3を介してゲート電極2の対面に配置され、少なくとも第2ゲート絶縁膜33と接する界面部に微結晶半導体膜(第1半導体層41)が形成された半導体層4と、半導体層4上に、オーミックコンタクト膜6を介して形成された、ソース電極7及びドレイン電極8と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法に関し、特に詳しくはレーザアニールにより結晶化された微結晶半導体膜を備える薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型パネルのひとつである液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)は、低消費電力や小型軽量といったメリットを活かしてパーソナルコンピュータや携帯情報端末機器のモニタ、カーナビゲーション等の車載用のモニタなどに広く用いられている。近年では、LCDはブラウン管に代わってTV用途としても広く用いられるようになっている。また、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置も、次世代の薄型パネル用デバイスとして用いられるようになってきている。有機EL表示装置では、自発光型で広視野角、高コントラスト、高速応答といったLCDにはない特徴を活かすことで、LCDで問題となる視野角やコントラストの制限、動画対応の高速応答への追従が困難といった問題点がクリアされている。
【0003】
このような表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(以下TFT:Thin Film Transistor)には、半導体膜を用いたMOS構造が多く採用されている。TFTの構造は逆スタガ型(ボトムゲート型)やトップゲート型、TFTに用いられる半導体膜は非晶質半導体膜であるアモルファスシリコンが主に知られている。
【0004】
半導体層にアモルファスシリコンを使用したTFTは、閾値電圧の経時変化が発生するという欠点をもっている。これは、アモルファスシリコンからゲート絶縁膜への電子の注入とトラッピング、及びアモルファスシリコン膜中の局在準位密度が増加することが原因である。そこで、この欠点を補うため、あらかじめ閾値電圧の経時変化量を見積もった回路設計を行なっている。また、アモルファスシリコンを使用したTFTは、画素部スイッチング用としてのみ使用でき、ゲートドライバ回路などの周辺回路用には使用できない。そのため、ゲートドライバ回路にはゲートドライバICを外付けしている。したがって、必然的に表示装置の額縁が大きくなってしまうという問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決するために、微結晶半導体膜や多結晶半導体膜などの結晶性半導体膜を半導体層として使用したTFTによって、ゲートドライバ回路を形成するようになってきている。結晶性半導体膜は、非晶質半導体膜に比べて欠陥準位密度が小さいため、閾値電圧の経時変化が発生しない。もしくは、発生しても経時変化量が小さい。
【0006】
例えば、特許文献1には、画素領域に非晶質半導体膜を用いたTFT、周辺回路領域に多結晶半導体膜を用いたTFTをそれぞれ形成することによって、用途ごとにTFTを使い分ける技術が開示されている。また、特許文献1では、ゲート絶縁膜としてSiN膜を形成した後、周辺回路のTFTに対してのみ、この上にSiO膜又はSiON膜をレーザ照射により選択的に形成している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の構造では、非晶質半導体膜を用いた画素領域のTFTは、閾値電圧の経時変化が発生してしまう。また、レーザ照射により選択的にSiO膜あるいはSiON膜を形成するため、基板面内にある周辺回路領域のTFTの部分をレーザの照射位置に合わせる作業を繰り返し行わなければならず、処理に時間を要する。そのため、生産性の低下を招く恐れがある。
【0008】
そこで、画素領域と周辺回路領域の両方に結晶性半導体膜を用いたTFTを形成すれば、上記のような問題を回避できる。最近では特に、ゲート絶縁膜と接する半導体膜に微結晶半導体膜を形成し、その上に非晶質半導体膜を形成した積層構造の微結晶シリコンTFTが用いられるようになってきている。以下に、従来の微結晶シリコンTFTの製造方法を、図7及び図8に示す断面構造を参照しながら説明する。図7及び図8は、従来の微結晶シリコンTFTの構成を示す断面図である。
【0009】
図7及び図8において、ガラスなどにより形成された基板1上にゲート電極2を形成した後、ゲート絶縁膜3を形成する。このゲート絶縁膜3には、図7に示すように、SiN膜の単層を適用することが多い。また、ゲート絶縁膜3は、図8に示すように、第1ゲート絶縁膜31としてSiN膜を形成した後に、第2ゲート絶縁膜34としてSiO膜を形成した積層構造とすることもできる。ただし、SiN膜とSiO膜の積層構造とする場合、通常、100nm以上の厚い膜厚で第2ゲート絶縁膜34のSiO膜が成膜される。
【0010】
このように形成したゲート絶縁膜3上に、非晶質半導体膜であるアモルファスシリコン(a−Si)膜を成膜し、レーザアニール法によりa−Si膜を結晶化させ、微結晶シリコン膜に変換する。これにより、微結晶半導体膜である第1半導体層41が形成される。次に、第2半導体層42と、オーミックコンタクト膜6とをこの順に成膜する。第2半導体層42として、非晶質半導体膜であるa−Si膜を成膜する。オーミックコンタクト膜6として、n型非晶質半導体膜であるn型アモルファスシリコン(n−a−Si)膜を成膜する。その後、オーミックコンタクト膜6、第2半導体層42、及び第1半導体層41を所望の形状にパターニングする。
【0011】
そして、オーミックコンタクト膜6上にソース電極7とドレイン電極8を形成し、これらをマスクとして、オーミックコンタクト膜6の全部とその下の第2半導体層42の一部をエッチング除去する。これにより、ソース電極7とドレイン電極8との間の第2半導体層42が露出し、第1半導体層41の上に第2半導体層42が積層された積層構造の半導体層4にチャネル領域9が形成される。
【0012】
続いて、ソース電極7とドレイン電極8を覆う保護膜10を形成した後、この保護膜10に、ドレイン電極8まで達するコンタクトホール11を開口する。そして、コンタクトホール11を介してドレイン電極8に接続する画素電極12を、保護膜10上に形成する。上記製造方法により、微結晶半導体膜上に非晶質半導体膜が積層された積層構造の、逆スタガ型の微結晶半導体シリコンTFTが完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−107560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来の微結晶シリコンTFTでは、ゲート絶縁膜3にSiN膜の単層を適用することが多い。この場合、レーザアニールで非晶質半導体膜を結晶化して微結晶半導体膜を形成すると、図7に示すように、ゲート絶縁膜3と第1半導体層41との間に、非晶質と微結晶の混在した半導体層である混在層14が形成されてしまう。
【0015】
図9は、TFT特性の一つであるI−V曲線を示すグラフである。ゲート絶縁膜3にSiN膜の単層を適用した従来の微結晶シリコンTFTは、この混在層14の欠陥により、図9の点線で示すように、I−V曲線がマイナス側に移動した曲線となる。I−V曲線がマイナス側に移動すると電圧が0Vでもかなりの電流が流れるため、画素部の表示を正常に動作することができないなどの問題があった。
【0016】
また、従来の微結晶シリコンTFTでは、ゲート絶縁膜3にSiN膜とSiO膜の積層膜を適用する場合、通常、100nm以上の厚い膜厚で上層のSiO膜を成膜している。この場合、レーザアニールで非晶質半導体膜を結晶化して微結晶半導体膜を形成しても、ゲート絶縁膜3と第1半導体層41との間に混在層14は形成されない。そのため、ゲート絶縁膜3にSiN膜とSiO膜の積層膜を適用した従来の微結晶シリコンTFTは、図9の実線で示すように、I−V曲線がマイナス側に移動しない。
【0017】
しかし、レーザアニールの熱により上層のSiO膜が一度溶けて固まるため、図8に示すようにSiO膜の表面に凹凸部15が形成されてしまう。そのため、SiO膜と第1半導体層41との界面の表面粗さ(表面の凹凸)が大きくなる。特に、SiO膜の膜厚が100nm以上と厚い場合は、表面粗さが20nm以上と大きくなる。このようにSiO膜と第1半導体層41との界面の表面粗さが大きいと、電界集中などが起こりゲート絶縁耐圧が低下し、TFT特性を低下させるなどの問題があった。
【0018】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、信頼性が高く、高性能なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様にかかる薄膜トランジスタは、基板上に形成されたゲート電極と、SiN膜及び前記SiN膜上に形成されたSiN酸化層を含み、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の対面に配置され、少なくとも前記SiN酸化層と接する界面部に微結晶半導体膜が形成された半導体層と、前記半導体層上に、オーミックコンタクト膜を介して形成された、ソース電極及びドレイン電極と、を備えるものである。
【0020】
本発明の第2の態様にかかる薄膜トランジスタは、基板上に形成されたゲート電極と、SiN膜及び前記SiN膜上に形成された膜厚20nm以下のSiO膜を含み、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の対面に配置され、少なくとも前記SiN膜と接する界面部に微結晶半導体膜が形成された半導体層と、前記半導体層上に、オーミックコンタクト膜を介して形成された、ソース電極及びドレイン電極と、を備えるものである。
【0021】
また、本発明の第3の態様にかかる薄膜トランジスタの製造方法は、基板上に形成されたゲート電極を覆うゲート絶縁膜上に、少なくとも前記ゲート絶縁膜と接する界面部に微結晶半導体膜を有する半導体層が設けられた薄膜トランジスタの製造方法であって、前記ゲート電極上にSiN膜を形成し、前記SiN膜の表面にSiN酸化層を形成して、前記SiN膜と前記SiN酸化層とを含む前記ゲート絶縁膜を形成する工程と、前記SiN酸化層の表面上に直接、非晶質半導体膜を成膜し、前記非晶質半導体膜をレーザアニールで結晶化することによって、前記微結晶半導体膜を形成する工程と、を備えるものである。
【0022】
また、本発明の第4の態様にかかる薄膜トランジスタの製造方法は、基板上に形成されたゲート電極を覆うゲート絶縁膜上に、少なくとも前記ゲート絶縁膜と接する界面部に微結晶半導体膜を有する半導体層が設けられた薄膜トランジスタの製造方法であって、前記ゲート電極上にSiN膜を形成し、前記SiN膜上に膜厚20nm以下のSiO膜を形成して、前記SiN膜と前記SiO膜とを含む前記ゲート絶縁膜を形成する工程と、前記SiO膜の表面上に直接、非晶質半導体膜を成膜し、前記非晶質半導体膜をレーザアニールで結晶化することによって、前記微結晶半導体膜を形成する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、信頼性が高く、高性能なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係る液晶表示装置に用いられるTFTアレイ基板の構成を示す正面図である。
【図2】実施の形態1に係るTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図である。
【図3】実施の形態1に係るTFTの構成を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に係る表示装置に用いられるTFTアレイ基板の一製造工程を示した断面図である。
【図5】実施の形態1に係る表示装置に用いられるTFTアレイ基板の一製造工程を示した断面図である。
【図6】実施の形態2に係るTFTの構成を示す断面図である。
【図7】従来の微結晶シリコンTFTの構成を示す断面図である。
【図8】従来の微結晶シリコンTFTの構成を示す断面図である。
【図9】TFT特性の一つであるI−V曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略されている。
【0026】
実施の形態1.
始めに、図1を用いて、本実施の形態1に係る液晶表示装置について説明する。図1は、実施の形態1に係る液晶表示装置に用いられるTFTアレイ基板の構成を示す正面図である。本実施の形態1係る表示装置は、液晶表示装置を例として説明するが、あくまでも例示的なものであり、有機EL表示装置等の平面型表示装置(フラットパネルディスプレイ)等を用いることも可能である。この液晶表示装置の全体構成については、以下に述べる実施の形態1、2で共通である。
【0027】
本実施の形態1に係る液晶表示装置は、基板1を有している。基板1は、例えば、TFTアレイ基板等のアレイ基板である。基板1には、表示領域101と表示領域101を囲むように設けられた額縁領域102とが設けられている。この表示領域101には、複数のゲート配線(走査信号線)103と複数のソース配線(表示信号線)104とが形成されている。複数のゲート配線103は平行に設けられている。同様に、複数のソース配線104は平行に設けられている。ゲート配線103とソース配線104とは、互いに交差するように形成されている。隣接するゲート配線103とソース配線104とで囲まれた領域が画素107となる。従って、表示領域101では、画素107がマトリクス状に配列される。
【0028】
基板1の額縁領域102には、走査信号駆動回路105と表示信号駆動回路106とが設けられている。ゲート配線103は、表示領域101から額縁領域102まで延設され、基板1の端部で、走査信号駆動回路105に接続される。ソース配線104も同様に、表示領域101から額縁領域102まで延設され、基板1の端部で、表示信号駆動回路106と接続される。走査信号駆動回路105の近傍には、外部配線108が接続されている。また、表示信号駆動回路106の近傍には、外部配線109が接続されている。外部配線108、109は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)等の配線基板である。
【0029】
外部配線108、109を介して走査信号駆動回路105、及び表示信号駆動回路106に外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路105は外部からの制御信号に基づいて、ゲート信号(走査信号)をゲート配線103に供給する。このゲート信号によって、ゲート配線103が順次選択されていく。表示信号駆動回路106は外部からの制御信号や、表示データに基づいて表示信号をソース配線104に供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素107に供給することができる。
【0030】
画素107内には、少なくとも1つのTFT50が形成されている。ここで、実施の形態1に係るTFTアレイ基板の画素構成を示した平面図を、図2に示す。図2はTFTアレイ基板の画素107の1つを示している。TFT50は、図2に示すように、ソース配線104とゲート配線103の交差点近傍に配置される。TFT50の詳細な構成については、後述するが、例えば、このTFT50が画素電極12に表示電圧を供給する。即ち、ゲート配線103からゲート電極2に供給されるゲート信号によって、スイッチング素子であるTFT50がオンする。これにより、ソース配線104と接続されたソース電極7から、TFT50の半導体層4を経由して、ドレイン電極8に接続された画素電極12に表示電圧が印加される。そして、画素電極12と対向電極との間に、表示電圧に応じた電界が生じる。
【0031】
また、画素107内には、少なくとも1つの保持容量が形成されている。この保持容量により、画素電極12に表示電圧が印加されない場合でも、画素電極12の電荷を保持し続けることができる。例えば、保持容量は、画素電極12と、隣接するゲート配線103間に配置された保持容量配線103aと、これらの間に挟まれた絶縁膜とによって構成される。なお、基板1の表面には、配向膜(図示せず)が形成されている。
【0032】
更に、基板1には、対向基板が対向して配置されている。対向基板は、例えば、カラーフィルタ基板であり、視認側に配置される。対向基板には、カラーフィルタ、ブラックマトリクス(BM)、及び配向膜等が形成されている。なお、対向電極は、基板1側に配置される場合もある。そして、基板1と対向基板との間に液晶層が狭持される。即ち、基板1と対向基板との間には液晶が導入されている。更に、基板1と対向基板との外側の面には、偏光板、及び位相差板等が設けられる。また、液晶表示パネルの反視認側には、バックライトユニット等が配設される。
【0033】
画素電極12と対向電極との間の電界によって、液晶が駆動される。即ち、基板間の液晶の配向方向が変化する。これにより、液晶層を通過する光の偏光状態が変化する。即ち、偏光板を通過して直線偏光となった光は液晶層によって、偏光状態が変化する。具体的には、バックライトユニットからの光は、アレイ基板側の偏光板によって直線偏光になる。この直線偏光が液晶層を通過することによって、偏光状態が変化する。
【0034】
偏光状態によって、対向基板側の偏光板を通過する光量は変化する。即ち、バックライトユニットから液晶表示パネルを透過する透過光のうち、視認側の偏光板を通過する光の光量が変化する。液晶の配向方向は、印加される表示電圧によって変化する。従って、表示電圧を制御することによって、視認側の偏光板を通過する光量を変化させることができる。即ち、画素ごとに表示電圧を変えることによって、所望の画像を表示することができる。
【0035】
続いて、本実施の形態1に係るTFT50の構成について、図3を用いて説明する。図3は、実施の形態1に係るTFT50の構成を示す断面図である。図3は、図2のIII−III断面を示している。ここでは、TFTアレイ基板に設けられた画素スイッチング素子用のTFT50を例にとって、本実施の形態1のTFT50の構成を説明する。
【0036】
図3において、ガラスや石英等の透明な絶縁性の基板1上に、ゲート電極2が設けられている。例えば、ゲート電極2は、図2に示すように、ゲート配線103の一部の領域がゲート電極2として機能するよう、ゲート配線103と一体的に形成されている。ゲート電極2は、例えば、Al、Cr、Mo、Ti、W等の金属材料または合金材料によって形成されている。ここでは、Crによって、膜厚約200nmのゲート電極2が形成されている。
【0037】
ゲート電極2を覆うように、ゲート絶縁膜3が設けられている。このゲート絶縁膜3は、SiN膜からなる第1ゲート絶縁膜31の上に、SiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜32が積層された積層構造を有している。ここでは、膜厚約400nmの第1ゲート絶縁膜31の上に、この第1ゲート絶縁膜31の酸化層が形成されている。このように、本実施の形態1のゲート絶縁膜3は、第1ゲート絶縁膜31であるSiN膜と、第1ゲート絶縁膜31上に設けられた第2ゲート絶縁膜32であるSiN酸化層を含む構成となっている。ゲート絶縁膜3をこのような構成とすることによって、後述する半導体層4との界面に、図7で示した非晶質と微結晶の混在層14や、図8で示した凹凸部15が形成されるのを防止することができる。
【0038】
ゲート絶縁膜3の上には、半導体層4が形成されている。この半導体層4は、ゲート絶縁膜3を介してゲート電極2の対面に設けられている。また、半導体層4は、第2ゲート絶縁膜32と接する側の界面部に、微結晶半導体膜が形成されている。具体的には、半導体層4は、微結晶半導体膜からなる第1半導体層41の上に、非晶質半導体膜からなる第2半導体層42が積層された積層構造を有している。第1半導体層41は、半導体層4のゲート絶縁膜3側に配設されている。すなわち、第2半導体層42と第2ゲート絶縁膜32との間に第1半導体層41が配設されている。ここでは、例えば、第1半導体層41として膜厚約60nmの微結晶シリコン、第2半導体層42として膜厚約100nmのアモルファスシリコン(a−Si)がそれぞれ形成されている。このように、本実施の形態1では、少なくとも第2ゲート絶縁膜32であるSiN酸化層と接する界面部に微結晶半導体膜が形成された半導体層4が設けられている。
【0039】
そして、半導体層4の上に、オーミックコンタクト膜6が設けられている。オーミックコンタクト膜6は、TFT50のチャネル領域9を除く半導体層4上の略全面に配設されている。オーミックコンタクト膜6は、導電性不純物が導入された非晶質半導体層によって形成されている。ここでは、オーミックコンタクト膜6は、例えばリン(P)等のn型不純物が高濃度にドーピングされた非晶質シリコン(n−a−Si)などによって、約50nmの膜厚で形成されている。
【0040】
半導体層4のうち、オーミックコンタクト膜6に対応する半導体層4の領域は、ソース・ドレイン領域となる。具体的には、図3中の左側のオーミックコンタクト膜6に対応する半導体層4の領域がソース領域となる。そして、図3中の右側のオーミックコンタクト膜6に対応する半導体層4の領域がドレイン領域となる。このように、TFT50を構成する半導体層4の両端にはソース・ドレイン領域が形成されている。そして、半導体層4のソース・ドレイン領域に挟まれた領域がチャネル領域9となる。半導体層4のチャネル領域9上には、オーミックコンタクト膜6は形成されていない。
【0041】
オーミックコンタクト膜6の上に、ソース電極7とドレイン電極8とが形成されている。具体的には、半導体層4のソース領域側のオーミックコンタクト膜6上に、ソース電極7が形成されている。そして、ドレイン領域側のオーミックコンタクト膜6の上に、ドレイン電極8が形成されている。このように、逆スタガ型のTFT50が構成されている。そして、ソース電極7及びドレイン電極8は、半導体層4のチャネル領域の外側へ延在するように形成されている。すなわち、ソース電極7及びドレイン電極8は、オーミックコンタクト膜6と同様、半導体層4のチャネル領域上には形成されない。ソース電極7及びドレイン電極8は、例えば、Al、Cr、Mo、Ti、W等の金属材料または合金材料によって形成されている。ここでは、Crによって、膜厚約200nmのゲート電極2が形成されている。なお、ソース電極7は、図2に示すように、ソース配線104から分岐した領域がソース電極7として機能するよう、ソース配線104と一体的に形成されていてもよい。
【0042】
ソース電極7、ドレイン電極8、及び半導体層4を覆うように、保護膜10が設けられている。この保護膜10には、ドレイン電極8に到達するコンタクトホール11が開口されている。ここでは、保護膜10は、例えば、膜厚約200nmのSiN膜によって形成されている。
【0043】
そして、保護膜10の上には、コンタクトホール11を介してドレイン電極8と接続する画素電極12が設けられている。画素電極12は、ITOなどの透明性導電膜によって形成されている。ここでは、例えば膜厚約100nmのITOによって、画素電極12が形成されている。
【0044】
このように、本実施の形態1のTFT50は、基板1上に形成されたゲート電極2と、SiN膜からなる第1ゲート絶縁膜31及び第1ゲート絶縁膜31上に形成されたSiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜33を含むゲート絶縁膜3と、少なくとも第2ゲート絶縁膜33と接する界面部に微結晶半導体膜(第1半導体層41)が形成された半導体層4と、半導体層4上に、オーミックコンタクト膜6を介して形成された、ソース電極7及びドレイン電極8と、を備えて構成されている。
【0045】
続いて、本実施の形態1におけるTFT50の製造方法について、図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は、実施の形態1に係る表示装置に用いられるTFTアレイ基板の一製造工程を示した断面図である。
【0046】
まず初めに、ガラスや石英などの透明な絶縁性の基板1上に、ゲート電極2となる導電膜を成膜する。ゲート電極2となる導電膜には、Al、Cr、Mo、Ti、W等の金属材料または合金材料を用いることができる。ここでは、スパッタリング法などにより、ゲート電極2となる導電膜としてCrを約200nmの厚さで基板1全面に成膜する。次に、公知の写真製版法により、成膜した導電膜の上にレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとしてエッチングを行い、ゲート電極2となる導電膜を所望の形状にパターニングする。その後、レジストパターンを除去する。これにより、ゲート電極2が形成される。
【0047】
次に、ゲート電極2を覆うように、ゲート絶縁膜3を形成する。本実施の形態1では、第1ゲート絶縁膜31の上に、第2ゲート絶縁膜32が積層された積層構造のゲート絶縁膜3を形成する。具体的には、SiH、NH、Nガスの混合ガスを用いたプラズマCVD法などにより、ゲート電極2上に、第1ゲート絶縁膜31としてSiN膜を約400nmの厚さで基板1全面に成膜する。その後、第1ゲート絶縁膜31表面に、少なくともO又はNOを含むガス用いたプラズマ処理を行って、第1ゲート絶縁膜31の表面にSiN酸化層を形成する。すなわち、第1ゲート絶縁膜31であるSiN膜の表面上に、第2ゲート絶縁膜32としてSiN酸化層を形成する。ここでは、Oガスを用いて、Oプラズマ処理を行う。このようにして、SiN膜からなる第1ゲート絶縁膜31の上に、SiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜32が積層された積層膜がゲート絶縁膜3として形成される。
【0048】
続いて、ゲート絶縁膜3の上に、第1半導体層41を形成する。本実施の形態1では、まず、第1半導体層41を形成するための非晶質半導体膜41aを成膜する。例えば、プラズマCVD法を用いて、非晶質半導体膜41aとしてアモルファスシリコンを30〜100nm、好ましくは50〜70nmの膜厚で基板1全面に成膜する。ここでは、膜厚約60nmのアモルファスシリコンを成膜する。これら第1ゲート絶縁膜31と第2ゲート絶縁膜32と非晶質半導体膜41aの形成は、同一装置あるいは同一チャンバ内にて連続的に行うことが好ましい。これにより、大気雰囲気中に存在するボロンなどの汚染物質が各膜の界面に取り込まれることを防止することができる。これにより、図4(a)に示す構成となる。
【0049】
なお、非晶質半導体膜41aの成膜後に、高温中でアニールを行うことが好ましい。これは、プラズマCVD法によって成膜した非晶質半導体膜41aは膜中に水素が多量に含有されるため、水素量を低減するために行う。ここでは、窒素雰囲気の低真空状態で保持したチャンバ内を480℃程度に加熱し、その中で非晶質半導体膜41aを成膜した基板1を45分間保持する。このような処理を行っておくと、後述する非晶質半導体膜41aの結晶化の工程において、温度上昇に伴う水素の急激な脱離が起こらず、非晶質半導体膜41aの表面荒れが発生することを抑制することができる。
【0050】
次に、非晶質半導体膜41a表面に形成された自然酸化膜をフッ酸でエッチング除去した後、非晶質半導体膜41aを結晶化する。具体的には、窒素などのガスを吹き付けながら、非晶質半導体膜41aの上からレーザ光を照射する。非晶質半導体膜41aに照射するレーザ光は、所定の光学系を通して線状のビームに変換したものを用いる。ここでは、レーザ光として、YAGレーザの第2高調波(発振波長:532nm)を用いるが、YAGレーザの第2高調波の代わりにエキシマレーザをレーザ光として用いてもよい。レーザ光が照射されると、非晶質半導体膜41aは一旦溶融した後に結晶化され、微結晶半導体膜へと変換される。例えば、非晶質半導体膜41aとして成膜されたアモルファスシリコンは、レーザ光が照射されると、結晶化されて、微結晶シリコンへと変換される。上述したように、窒素を吹きつけながら非晶質半導体膜41aにレーザ光を照射すると、微結晶半導体膜の結晶粒界部分に発生する隆起高さを抑制することができる。そのため、第1半導体層41の表面粗さを3nm以下程度まで小さくすることができる。これにより、図4(b)に示すように、非晶質半導体膜41aが結晶化され、微結晶半導体膜からなる第1半導体層41が形成される。
【0051】
このとき、本実施の形態1では、レーザ光の照射される非晶質半導体膜41aが、SiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜32の表面上に直接形成されているため、ゲート絶縁膜3との界面に非晶質と微結晶の混在層14が形成されることを防止できる。すなわち、非晶質半導体膜41a中へN取り込み等が発生することなく、非晶質半導体膜41aを結晶化するために充分なエネルギー密度でレーザ照射することができる。したがって、ゲート絶縁膜3との界面まで非晶質半導体膜41aを結晶化することができ、混在層14が形成されることを防止できる。さらに、本実施の形態1では、ゲート絶縁膜3が第1ゲート絶縁膜31の上に、第1ゲート絶縁膜31の酸化層よりなる第2ゲート絶縁膜32が積層された積層構造を有し、ゲート絶縁膜3表面にレーザアニールの熱により溶融し凹凸部15を形成するSiO膜を有しないことから、ゲート絶縁膜3と第1半導体層41との界面に、凹凸部15が形成されることを防止できる。すなわち、ゲート絶縁膜3と第1半導体層41との界面の表面粗さを図8に示した従来の微結晶半導体TFTよりも低減でき、界面状態を向上させることができる。このように、第2ゲート絶縁膜32は、ゲート絶縁膜3と半導体層4との界面に、図7で示した非晶質と微結晶の混在層14や、図8で示した凹凸部15が形成されるのを抑止する抑止膜として機能する。
【0052】
次に、基板1をフッ酸でエッチングして、結晶化した第1半導体層41表面に形成された自然酸化膜の除去と、大気雰囲気中に存在するボロンなどに汚染された第1半導体層41表面の清浄化を行う。その後、第1半導体層41の上に、非晶質半導体膜からなる第2半導体層42と、n型不純物を含む非晶質半導体膜からなるオーミックコンタクト膜6を、この順に成膜する。ここでは、例えばプラズマCVD法を用いて、第2半導体層42として膜厚約100nmのアモルファスシリコン(a−Si)と、オーミックコンタクト膜6として膜厚約50nmのn型アモルファスシリコン(n−a−Si)とを、順次、基板1全面に成膜する。
【0053】
次に、公知の写真製版法を用いて、オーミックコンタクト膜6の上に所望の形状のレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして、オーミックコンタクト膜6、第2半導体層42、及び第1半導体層41をパターニングする。ここでは、例えばCFガスを用いたドライエッチング法により、パターニングを行う。その後、レジストパターンを除去する。これにより、図4(c)に示すように、オーミックコンタクト膜6、第2半導体層42、及び第1半導体層41からなる積層膜が島状にパターニングされる。
【0054】
そして、オーミックコンタクト膜6、第2半導体層42、及び第1半導体層41からなる積層膜のパターンを覆うように、ソース電極7及びドレイン電極8となる導電膜を成膜する。ソース電極7及びドレイン電極8となる導電膜には、Al、Cr、Mo、Ti、W等の金属材料または合金材料を用いることができる。ここでは、スパッタリング法などにより、ソース電極7及びドレイン電極8となる導電膜としてCrを約200nmの厚さで基板1全面に成膜する。次に、公知の写真製版法により、成膜した導電膜の上にレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとしてエッチングを行い、この導電膜を所望の形状にパターニングする。その後、レジストパターンを除去する。これにより、図4(d)に示すように、ソース電極7及びドレイン電極8が形成される。
【0055】
次に、形成したソース電極7及びドレイン電極8をマスクとして、エッチングを行い、オーミックコンタクト膜6を除去する。例えば、CFガスを用いたドライエッチング法により、オーミックコンタクト膜6を深さ方向に全部除去し、さらに第2半導体層42を深さ方向に一部除去する。すなわち、オーミックコンタクト膜6、第2半導体層42、及び第1半導体層41からなる積層膜に対して、ソース電極7及びドレイン電極8をマスクとして用いて、所定のエッチング量だけエッチングを行う。これにより、図5(e)に示すようにソース電極7とドレイン電極8の間の第2半導体層42が露出し、オーミックコンタクト膜6が、半導体層4のチャネル領域9を挟んでソース領域とドレイン領域とに分離される。このようにして、本実施の形態1のTFT50が完成する。
【0056】
その後、これらの上に、保護膜10を成膜する。例えば、プラズマCVD法を用いて、保護膜10として約200nmのSiN膜を基板1全面に成膜する。これにより、ソース電極7、ドレイン電極8、及びTFT50のチャネル領域9が保護膜10に覆われる。次に、公知の写真製版法を用いて、保護膜10上にレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして保護膜10のエッチングを行い、ドレイン電極8に到達するコンタクトホール11を形成する。例えば、CFガスを用いたドライエッチング法により、保護膜10にコンタクトホール11を開口する。その後、レジストパターンを除去すると、図5(f)に示す構成となる。
【0057】
次に、このTFT50を画素スイッチング素子として用いる場合には、保護膜10の上に、画素電極12となる透明性導電膜を成膜する。画素電極12となる透明性導電膜には、例えばITOを用いることができる。例えば、スパッタリング法により、膜厚100nmのITOを基板1全面に成膜する。そして、成膜した透明性導電膜上に、公知の写真製版法によりレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとしてエッチングを行い、この透明性導電膜を所望の形状にパターニングする。その後、レジストパターンを除去する。これにより、図5(g)に示すように、コンタクトホール11を介してドレイン電極8に接続する画素電極12が形成される。以上の工程を経て、本実施の形態にかかる表示装置に用いられるTFTアレイ基板が完成する。
【0058】
以上のように、本実施の形態1では、ゲート絶縁膜3の半導体層4と接する側に、SiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜32を形成し、その上に直接形成した非晶質半導体膜41aにレーザ光を照射して結晶化して、微結晶半導体膜へと変換している。このような方法で結晶化を行うと、ゲート絶縁膜3との界面に非晶質と微結晶の混在層14が形成されることなく、第1半導体層41をゲート絶縁膜3との界面まで完全に結晶化しされた微結晶半導体膜とすることができる。そのため、TFT特性のI−V曲線は、図9の実線で示したような、マイナス側に移動しない曲線となる。従って、性能の高いTFT50を得ることができる。また、SiN膜及びSiN膜上に形成されたSiN酸化層からなるゲート絶縁膜3と第1半導体層41との界面における第1半導体層41の表面粗さを小さくして、界面状態を向上させることができる。従って、ゲート絶縁耐圧の低下を抑止でき、TFT50の信頼性を向上できる。よって、信頼性が高く、高性能なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法を提供できる。
【0059】
なお、本実施の形態1では、TFTアレイ基板の画素領域に設けられた画素スイッチング素子用のTFT50を例にとって説明したが、このTFT50は走査信号駆動回路105や表示信号駆動回路106などの周辺回路領域に形成されていてもよい。本実施の形態のTFT50は、微結晶半導体膜上に非晶質半導体膜が積層された積層構造の微結晶半導体TFTであるため、素子駆動能力や信頼性が必要となる駆動回路を同一基板上に構成することができる。すなわち、画素スイッチング素子と周辺回路との両方に、本実施の形態1のTFT50を形成してもよい。これにより、ドライバICを外付けする必要がないので、狭額縁の表示装置を実現できる。
【0060】
実施の形態2.
本実施の形態2に係るTFTの構成について、図6を用いて説明する。図6は、実施の形態2に係るTFT50の構成を示す断面図である。図6は、図3と同様、図2のIII−III断面に相当する断面を示している。本実施の形態2では、ゲート絶縁膜3の構成が実施の形態1と異なっているのみであり、それ以外の構成については実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0061】
図6において、本実施の形態2では、ゲート絶縁膜3が、SiN膜からなる第1ゲート絶縁膜31の上に、膜厚20nm以下のSiO膜からなる第2ゲート絶縁膜33が積層された積層構造を有している。すなわち、第1ゲート絶縁膜31上には、実施の形態1ではSiN酸化層からなる第2ゲート絶縁膜32が設けられていたが、これに代えて本実施の形態2では膜厚20nm以下のSiO膜からなる第2ゲート絶縁膜33が設けられている。第2ゲート絶縁膜33の膜厚は、表面粗さをより小さくするため、10nm以下であることが好ましい。ここでは、膜厚約350nmの第1ゲート絶縁膜31の上に、膜厚約10nmの第2ゲート絶縁膜33が形成されている。
【0062】
このように、本実施の形態2のゲート絶縁膜3は、第1ゲート絶縁膜31であるSiN膜と、第1ゲート絶縁膜31上に設けられた第2ゲート絶縁膜33である膜厚20nm以下のSiO膜を含む構成となっている。実施の形態1では、レーザアニールの熱により溶融し凹凸部15を形成するSiO膜を含まない構成としたが、本実施の形態2のゲート絶縁膜3では、レーザアニールの熱により溶融するSiO膜が膜厚20nm以下と比較的薄く形成されることから、SiO膜の表面に形成される凹凸部15は薄いSiO膜の更に極表面のみに微細に形成されることとなる。SiO膜を膜厚20nm以下とすることによって、少なくとも電界集中によるゲート絶縁耐圧の低下やTFT特性の低下を引き起こさないレベルまで凹凸部15を微細化することができる。以上の様に、ゲート絶縁膜3を、膜厚20nm以下のSiO膜からなる第2ゲート絶縁膜33を第1ゲート絶縁膜31の上に設けた構成としたことで、実施の形態1と同様、半導体層4との界面に、図7で示した非晶質と微結晶の混在層14や、図8で示した様な大きな凹凸部15が形成されるのを防止し、信頼性が高く、高性能なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタを得ることができる。すなわち、第2ゲート絶縁膜33は、実施の形態1の第2ゲート絶縁膜32と同様、ゲート絶縁膜3と半導体層4との界面に、混在層14や大きな凹凸部15が形成されるのを抑止する抑止膜として機能する。
【0063】
このような構成のTFT50の製造方法は、ゲート絶縁膜3の形成工程が実施の形態1と異なるのみであり、それ以外の工程については実施の形態1と同様であるため説明を省略する。ゲート絶縁膜3の形成工程では、第1ゲート絶縁膜31であるSiN膜を形成し、続いてこのSiN膜上に膜厚20nm以下のSiO膜を第2ゲート絶縁膜33として形成する。このようにして、SiN膜とSiO膜とを含むゲート絶縁膜3を形成する。ここでは、SiH、NH、Nガスの混合ガスを用いたプラズマCVD法などにより、第1ゲート絶縁膜31としてSiN膜を約350nmの厚さで基板1全面に成膜する。その後、SiH、NO、Arガスの混合ガスを用いたプラズマCVD法などにより、第2ゲート絶縁膜31としてSiO膜を約10nmの厚さで基板1全面に成膜する。これにより、SiN膜からなる第1ゲート絶縁膜31の上に、膜厚20nm以下のSiO膜からなる第2ゲート絶縁膜33が積層された積層膜がゲート絶縁膜3として形成される。
【0064】
その後、ゲート絶縁膜3の上に、実施の形態1と同様にして、第1半導体層41を形成する。このとき、本実施の形態2では、レーザ光の照射される非晶質半導体膜41aが、膜厚20nm以下のSiO膜からなる第2ゲート絶縁膜33の上に形成されているため、実施の形態1と同様、ゲート絶縁膜3との界面に非晶質と微結晶の混在層14が形成されることを防止できる。したがって、ゲート絶縁膜3との界面まで非晶質半導体膜41aを結晶化することができ、混在層14が形成されることを防止できる。また、実施の形態1と同様、ゲート絶縁膜3と第1半導体層41との界面に、大きな凹凸部15が形成されることを防止できる。すなわち、ゲート絶縁膜3と第1半導体層41との界面の表面粗さを図8に示した従来の微結晶TFTよりも低減でき、界面状態を向上させることができる。このように、第2ゲート絶縁膜33は、ゲート絶縁膜3と半導体層4との界面に、図7で示した非晶質と微結晶の混在層14や、図8で示した凹凸部15が形成されるのを抑止する抑止膜として機能する。以降の工程については、実施の形態1と同様である。
【0065】
以上のように、本実施の形態2では、ゲート絶縁膜3の半導体層4と接する側に、膜厚20nm以下のSiO膜からなる第2ゲート絶縁膜33を形成し、その上に直接形成した非晶質半導体膜41aにレーザ光を照射して結晶化して、微結晶半導体膜へと変換している。このような方法で結晶化を行うと、ゲート絶縁膜3との界面に非晶質と微結晶の混在層14が形成されることなく、第1半導体層41をゲート絶縁膜3との界面まで完全に結晶化された微結晶半導体膜とすることができる。そのため、TFT特性のI−V曲線は、実施の形態1と同様、図9の実線で示したような、マイナス側に移動しない曲線となる。従って、性能の高いTFT50を得ることができる。また、SiN膜及びSiN膜上に形成された膜厚20nm以下のSiO膜からなるゲート絶縁膜3と第1半導体層41との界面における第1半導体層41の表面粗さを十分に小さくして、界面状態を向上させることができる。従って、ゲート絶縁耐圧の低下を抑止でき、TFT50の信頼性を向上できる。よって、信頼性が高く、高性能なトランジスタ特性を有する薄膜トランジスタ、表示装置、及びそれらの製造方法を提供できる。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、本発明にかかるTFT50を液晶表示装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、有機ELや電子ペーパーなどの、液晶以外の表示材料を用いた表示装置であってもよい。さらに、本発明にかかるTFT50は、表示装置に限らず、半導体装置など他のデバイスにおいても好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 基板、2 ゲート電極、3 ゲート絶縁膜、
4 半導体層、6 オーミックコンタクト膜、
7 ソース電極、8 ドレイン電極、
9 チャネル領域、10 保護膜、
11 コンタクトホール、12 画素電極、
14 混在層、15 凹凸部、
31 第1ゲート絶縁膜、
32、33、34 第2ゲート絶縁膜、
41 第1半導体層、41a 非晶質半導体膜
42 第2半導体層、50 TFT、
101 表示領域、102 額縁領域、
103 ゲート配線、103a 保持容量配線、
104 ソース配線、105 走査信号駆動回路、
106 表示信号駆動回路、107画素、
108、109 外部配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたゲート電極と、
SiN膜及び前記SiN膜上に形成されたSiN酸化層を含み、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の対面に配置され、少なくとも前記SiN酸化層と接する界面部に微結晶半導体膜が形成された半導体層と、
前記半導体層上に、オーミックコンタクト膜を介して形成された、ソース電極及びドレイン電極と、を備える薄膜トランジスタ。
【請求項2】
基板上に形成されたゲート電極と、
SiN膜及び前記SiN膜上に形成された膜厚20nm以下のSiO膜を含み、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の対面に配置され、少なくとも前記SiN膜と接する界面部に微結晶半導体膜が形成された半導体層と、
前記半導体層上に、オーミックコンタクト膜を介して形成された、ソース電極及びドレイン電極と、を備える薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記SiO膜の膜厚が、10nm以下である請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを用いた表示装置。
【請求項5】
前記薄膜トランジスタが、画素スイッチング素子と周辺回路とに形成されている請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
基板上に形成されたゲート電極を覆うゲート絶縁膜上に、少なくとも前記ゲート絶縁膜と接する界面部に微結晶半導体膜を有する半導体層が設けられた薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極上にSiN膜を形成し、前記SiN膜の表面にSiN酸化層を形成して、前記SiN膜と前記SiN酸化層とを含む前記ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記SiN酸化層の表面上に直接、非晶質半導体膜を成膜し、前記非晶質半導体膜をレーザアニールで結晶化することによって、前記微結晶半導体膜を形成する工程と、を備える薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記ゲート絶縁膜を形成する工程では、前記SiN膜表面に少なくともO又はNOを用いたプラズマ処理を行うことにより、前記SiN酸化層を形成する請求項6に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
基板上に形成されたゲート電極を覆うゲート絶縁膜上に、少なくとも前記ゲート絶縁膜と接する界面部に微結晶半導体膜を有する半導体層が設けられた薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極上にSiN膜を形成し、前記SiN膜上に膜厚20nm以下のSiO膜を形成して、前記SiN膜と前記SiO膜とを含む前記ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記SiO膜の表面上に直接、非晶質半導体膜を成膜し、前記非晶質半導体膜をレーザアニールで結晶化することによって、前記微結晶半導体膜を形成する工程と、を備える薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜を形成する工程では、前記SiN膜上に膜厚10nm以下の前記SiO膜を形成する請求項8に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の製造方法を用いて画素スイッチング素子と周辺回路とに薄膜トランジスタを形成する表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−245438(P2010−245438A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94987(P2009−94987)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】