説明

薄膜トランジスタおよびその製造方法、並びに表示装置

【課題】セルフアライン構造の薄膜トランジスタの特性を安定させることが可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法、並びに表示装置を提供する。
【解決手段】酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上にゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成する。酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の上に金属膜を形成し、この金属膜に対して熱処理を行うことにより、金属膜を酸化させて高抵抗膜50を形成すると共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に低抵抗領域21を形成する。低抵抗領域21は、アルミニウム(Al)等をドーパントとして含むか、またはチャネル領域20Aよりも酸素濃度が低いことにより低抵抗化されている。変動要素の多いプラズマ処理を用いずに高抵抗領域21を形成可能となり、安定した特性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)およびその製造方法、並びにこの薄膜トランジスタを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブ駆動方式の液晶表示装置または有機EL(Electroluminescence )表示装置では、薄膜トランジスタを駆動素子として用いると共に、映像を書き込むための信号電圧に対応する電荷を保持容量に保持させている。しかし、薄膜トランジスタのゲート電極とソース電極またはドレイン電極との交差領域に生じる寄生容量が大きくなると、信号電圧が変動してしまい、画質の悪化を引き起こすおそれがある。
【0003】
特に有機EL表示装置では、寄生容量が大きい場合には保持容量も大きくする必要があり、画素のレイアウトにおいて配線等の占める割合が大きくなる。その結果、配線間のショート等の確率が増加し、製造歩留まりが低下してしまうという問題が生じる。
【0004】
そこで、従来では、例えば酸化亜鉛(ZnO)または酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物半導体をチャネルに用いた薄膜トランジスタについて、ゲート電極とソース電極またはドレイン電極との交差領域に形成される寄生容量を低減する試みがなされている。
【0005】
例えば特許文献1および非特許文献1では、酸化物半導体薄膜層のチャネル領域上に、ゲート電極およびゲート絶縁膜を同一形状に形成したのち、酸化物半導体薄膜層のゲート電極およびゲート絶縁膜に覆われていない領域を低抵抗化してソース・ドレイン領域を形成するセルフアライン(自己整合)トップゲート薄膜トランジスタが記載されている。また、非特許文献2には、ゲート電極をマスクとした裏面露光により酸化物半導体膜にソース領域およびドレイン領域を形成するセルフアライン構造のボトムゲート薄膜トランジスタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−220817号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Park、外11名,“Self-aligned top-gate amorphous gallium indium zinc oxide thin film transistors ”,Applied Physics Letters ,American Institute of Physics ,2008年,第93巻,053501
【非特許文献2】R. Hayashi、外6名,“Improved Amorphous In-Ga-Zn-O TFTs”,SID 08 DIGEST,2008年,42.1,p.621−624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および非特許文献2では、低抵抗のソース・ドレイン領域を自己整合的に形成するために、層間絶縁膜としてプラズマCVD法によりシリコン窒化膜を形成し、このシリコン窒化膜に含まれる水素を酸化物半導体薄膜層に導入していた。更に特許文献1では、シリコン窒化膜からの水素導入に加えて、水素ガスのプラズマ処理を併用していた。また、非特許文献1ではアルゴンガスのプラズマ雰囲気に酸化物半導体膜を晒すことにより低抵抗のソース・ドレイン領域を形成していた。これらの従来方法では、素子特性が、変動要素の多いプラズマ工程に依存することになり、安定的に量産に適用することが難しいという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、セルフアライン構造の薄膜トランジスタの特性を安定させることが可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法、並びにこの薄膜トランジスタを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の薄膜トランジスタは、以下の(A)〜(C)の構成要素を備えたものである。
(A)ゲート電極
(B)ゲート電極に対向してチャネル領域を有すると共にチャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有し、ソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域を有する酸化物半導体膜
(C)低抵抗領域に接続されたソース電極およびドレイン電極
【0011】
本発明の第1の薄膜トランジスタでは、酸化物半導体膜のソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域が設けられているので、素子特性が安定したものとなる。
【0012】
本発明による第2の薄膜トランジスタは、以下の(A)〜(C)の構成要素を備えたものである。
(A)ゲート電極
(B)ゲート電極に対向してチャネル領域を有すると共にチャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有し、ソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、チャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を有する酸化物半導体膜
(C)低抵抗領域に接続されたソース電極およびドレイン電極
【0013】
本発明の第2の薄膜トランジスタでは、酸化物半導体膜のソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、チャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域が設けられているので、素子特性が安定したものとなる。
【0014】
本発明による第1の薄膜トランジスタの製造方法は、以下の(A)〜(E)の工程を含むものである。
(A)基板に、チャネル領域を有すると共にチャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程
(B)酸化物半導体膜のチャネル領域上にゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順に同一形状で形成する工程
(C)酸化物半導体膜,ゲート絶縁膜およびゲート電極の上に金属膜を形成する工程
(D)熱処理により前記金属膜を酸化させて高抵抗膜とすると共に、ソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域を形成する工程
(E)低抵抗領域にソース電極およびドレイン電極を接続する工程
【0015】
本発明による第2の薄膜トランジスタの製造方法は、以下の(A)〜(E)の工程を含むものである。
(A)基板に、チャネル領域を有すると共にチャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程
(B)酸化物半導体膜のチャネル領域上にゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順に同一形状で形成する工程
(C)酸化物半導体膜,ゲート絶縁膜およびゲート電極の上に金属膜を形成する工程
(D)熱処理により前記金属膜を酸化させて高抵抗膜とすると共に、ソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、チャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を形成する工程
(E)低抵抗領域にソース電極およびドレイン電極を接続する工程
【0016】
本発明による第1および第2の表示装置は、複数の画素および複数の画素を駆動するための薄膜トランジスタを備え、薄膜トランジスタは、上記本発明の第1および第2の薄膜トランジスタによりそれぞれ構成されたものである。
【0017】
本発明の第1および第2の表示装置では、それぞれ、上記本発明の第1および第2の薄膜トランジスタによって画素が駆動され、画像表示がなされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1および第2の薄膜トランジスタによれば、酸化物半導体膜のソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む、またはチャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を設けるようにしたので、セルフアライン構造の薄膜トランジスタの特性を安定させることが可能となる。よって、この薄膜トランジスタを用いて表示装置を構成すれば、寄生容量の小さいセルフアライン構造と共に安定した特性を有する本発明の薄膜トランジスタにより、高品質な表示が可能となる。
【0019】
本発明の第1および第2の薄膜トランジスタの製造方法によれば、酸化物半導体膜のチャネル領域上にゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順に同一形状で形成したのち、酸化物半導体膜,ゲート絶縁膜およびゲート電極の上に金属膜を形成し、熱処理により金属膜を酸化させて高抵抗膜とすると共に、ソース領域およびドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む、またはチャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を形成するようにしたので、低抵抗領域を、プラズマなどの変動要素の多い工程を使わずに形成することが可能となる。よって、従来のような素子特性のプラズマ工程への依存を解消し、安定した素子特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜トランジスタの構造を表す断面図である。
【図2】図1に示した薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図3】図2に続く工程を表す断面図である。
【図4】チャネル領域および低抵抗領域のEDX解析結果を表す図である。
【図5】図1に示した薄膜トランジスタの特性を従来と対比して表す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜トランジスタの低抵抗領域のアルミニウム濃度の測定結果を表す図である。
【図7】変形例1に係る薄膜トランジスタの構造を表す断面図である。
【図8】図7に示した薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図10】図9に示した薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図11】図10に続く工程を表す断面図である。
【図12】変形例2に係る薄膜トランジスタの構造を表す断面図である。
【図13】図12に示した薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜トランジスタの構造を表す断面図である。
【図15】島状高抵抗膜の一例を表す断面図である。
【図16】島状高抵抗膜の他の例を表す断面図である。
【図17】島状高抵抗膜の大きさを説明するための図である。
【図18】図14に示した薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図19】ソントンのモデルを表す図である。
【図20】図18に示した工程を詳しく説明するための断面図である。
【図21】図14に示した薄膜トランジスタの特性を従来と対比して表す図である。
【図22】高抵抗膜の厚みを異ならせた場合の薄膜トランジスタの特性を表す図である。
【図23】変形例3に係る薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図24】図23に続く工程を表す断面図である。
【図25】変形例4に係る薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図26】図25に続く工程を表す断面図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係る薄膜トランジスタの構造を表す断面図である。
【図28】図27に示した薄膜トランジスタの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図29】図28に続く工程を表す断面図である。
【図30】適用例1に係る表示装置の回路構成を表す図である。
【図31】図30に示した画素駆動回路の一例を表す等価回路図である。
【図32】適用例2の外観を表す斜視図である。
【図33】(A)は適用例3の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図34】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図35】適用例5の外観を表す斜視図である。
【図36】(A)は適用例6の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図37】図1に示した薄膜トランジスタの変形例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(トップゲート薄膜トランジスタ;金属の酸化を利用して低抵抗領域を形成した例)
2.第2の実施の形態(トップゲート薄膜トランジスタ;ドーパントを利用して低抵抗領域を形成した例)
3.変形例1(トップゲート薄膜トランジスタ;高抵抗膜を除去した例)
4.第3の実施の形態(ボトムゲート薄膜トランジスタ;高抵抗膜を残した例)
5.変形例2(ボトムゲート薄膜トランジスタ;高抵抗膜を除去した例)
6.第4の実施の形態(トップゲート薄膜トランジスタ;高抵抗膜を島状とする例)
7.変形例3(金属膜を島状にパターニングしたのちに酸化させて高抵抗膜とする製造方法の例)
8.変形例4(金属膜を酸化させて高抵抗膜としたのちに島状にパターニングする製造方法の例)
9.第5の実施の形態(ボトムゲート薄膜トランジスタ;高抵抗膜を島状とした例)
10.適用例
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の断面構造を表すものである。薄膜トランジスタ1は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの駆動素子として用いられるものであり、例えば、基板11に酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30,ゲート電極40,高抵抗膜50,層間絶縁膜60,ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dがこの順に積層されたトップゲート型(スタガ型)の構成を有している。
【0023】
基板11は、例えば、ガラス基板やプラスチックフィルムなどにより構成されている。プラスチック材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられる。後述のスパッタ法において、基板11を加熱することなく酸化物半導体膜20を成膜するため、安価なプラスチックフィルムを用いることができる。また、基板11は、目的に応じて、ステンレス鋼(SUS)などの金属基板であってもよい。
【0024】
酸化物半導体膜20は、基板11上に、ゲート電極40およびその近傍を含む島状に設けられ、薄膜トランジスタ1の活性層としての機能を有するものである。酸化物半導体膜20は、例えば厚みが50nm程度であり、ゲート電極40に対向してチャネル領域20Aを有している。チャネル領域20A上には、ゲート絶縁膜30およびゲート電極40がこの順に同一形状で設けられており、チャネル領域20Aの一方の側にはソース領域20S、他方の側にはドレイン領域20Dがそれぞれ設けられている。
【0025】
チャネル領域20Aは、酸化物半導体により構成されている。ここで酸化物半導体とは、インジウム,ガリウム,亜鉛,スズ等の元素と、酸素とを含む化合物である。具体的には、非晶質の酸化物半導体としては、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)が挙げられ、結晶性の酸化物半導体としては、酸化亜鉛(ZnO),酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標)),酸化インジウムガリウム(IGO),酸化インジウムスズ(ITO),酸化インジウム(InO)等が挙げられる。
【0026】
ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dは、それぞれ、上面から深さ方向における一部に低抵抗領域21を有している。低抵抗領域21は、例えば、チャネル領域20Aよりも酸素濃度が低いことにより低抵抗化されている。これにより、この薄膜トランジスタ1は、セルフアライン(自己整合)構造を有すると共に特性を安定させることが可能となっている。
【0027】
低抵抗領域21に含まれる酸素濃度は、30%以下であることが望ましい。低抵抗領域21中の酸素濃度が30%を超えると、抵抗が高くなってしまうからである。
【0028】
ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの低抵抗領域21以外の領域は、チャネル領域20Aと同様に酸化物半導体により構成されている。低抵抗領域21の深さについては後述する。
【0029】
ゲート絶縁膜30は、例えば、厚みが300nm程度であり、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜,シリコン窒化酸化膜または酸化アルミニウム膜などの単層膜または積層膜により構成されている。特に、シリコン酸化膜または酸化アルミニウム膜は、酸化物半導体膜20を還元させにくいので好ましい。
【0030】
ゲート電極40は、薄膜トランジスタ1にゲート電圧を印加し、このゲート電圧により酸化物半導体膜20中の電子密度を制御する役割を有するものである。ゲート電極40は、基板11上の選択的な領域に設けられ、例えば、厚みが10nm〜500nm、具体的には200nm程度であり、モリブデン(Mo)により構成されている。ゲート電極40は低抵抗であることが望ましいので、その構成材料としては、例えば、アルミニウム(Al)または銅(Cu)などの低抵抗金属が好ましい。また、アルミニウム(Al)または銅(Cu)よりなる低抵抗層と、チタン(Ti)またはモリブデン(Mo)よりなるバリア層とを組み合わせた積層膜も好ましい。ゲート電極40の低抵抗化が可能となるからである。
【0031】
高抵抗膜50は、層間絶縁膜60と、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40との間に設けられている。この高抵抗膜50は、後述する製造工程において低抵抗領域21に拡散される金属の供給源としての金属膜が酸化されたものであり、例えば、酸化チタン,酸化アルミニウムまたは酸化インジウムにより構成されている。酸化チタン,酸化アルミニウムまたは酸化インジウムよりなる高抵抗膜50は、外気に対して良好なバリア性を有し、酸化物半導体膜20の電気的特性を変化させる酸素や水分の影響を低減することが可能である。よって、高抵抗膜50を設けることにより、薄膜トランジスタ1の電気特性を安定化させることが可能となり、層間絶縁膜60の効果をより高めることが可能となる。高抵抗膜50の厚みは、例えば20nm以下である。
【0032】
層間絶縁膜60は、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、高抵抗膜50を間にして設けられている。層間絶縁膜60は、例えば、厚みが300nm程度であり、シリコン酸化膜,酸化アルミニウム膜などの単層膜または積層膜により構成されている。特に、シリコン酸化膜および酸化アルミニウム膜の積層膜とすれば、酸化物半導体膜20への水分の混入や拡散を抑え、薄膜トランジスタ1の電気的安定性や信頼性を更に高めることが可能となる。
【0033】
ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dは、層間絶縁膜60および高抵抗膜50に設けられた接続孔を介して低抵抗領域21に接続されている。ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dは、例えば、厚みが200nm程度であり、モリブデン(Mo)により構成されている。また、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dは、ゲート電極40と同様に、アルミニウム(Al)または銅(Cu)などの低抵抗金属配線により構成されていることが好ましい。更に、アルミニウム(Al)または銅(Cu)よりなる低抵抗層と、チタン(Ti)またはモリブデン(Mo)よりなるバリア層とを組み合わせた積層膜も好ましい。このような積層膜を用いることにより、配線遅延の少ない駆動が可能となる。
【0034】
また、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dは、ゲート電極40直上の領域を回避して設けられていることが望ましい。ゲート電極40とソース電極70Sおよびドレイン電極70Dとの交差領域に形成される寄生容量を低減することが可能となるからである。
【0035】
この薄膜トランジスタ1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0036】
図2および図3は、薄膜トランジスタ1の製造方法を工程順に表したものである。まず、基板11の全面に、例えばスパッタリング法により、上述した材料よりなる酸化物半導体膜20を、50nm程度の厚みで形成する。その際、ターゲットとしては、形成しようとする酸化物半導体膜20と同一組成のセラミックターゲットを用いる。また、酸化物半導体膜20中のキャリア濃度はスパッタリングの際の酸素分圧に大きく依存するので、所望のトランジスタ特性が得られるように酸素分圧を制御する。
【0037】
次いで、図2(A)に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより酸化物半導体膜20を、チャネル領域20Aおよびその一方の側にソース領域20S、他方の側にドレイン領域20Dを含む島状に成形する。その際、リン酸と硝酸と酢酸との混合液を用いたウェットエッチングにより加工することが好ましい。リン酸と硝酸と酢酸との混合液は、下地との選択比を十分に大きくすることが可能であり、比較的容易に加工が可能となる。
【0038】
続いて、図2(B)に示したように、基板11および酸化物半導体膜20の全面に、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法等により、シリコン酸化膜または酸化アルミニウム膜などのゲート絶縁材料膜30Aを、300nm程度の厚みで形成する。シリコン酸化膜はプラズマCVD法のほか、反応性スパッタリング法により形成することが可能である。また、酸化アルミニウム膜は、反応性スパッタリング法,CVD法または原子層成膜法により形成することが可能である。
【0039】
そののち、同じく図2(B)に示したように、ゲート絶縁材料膜30Aの全面に、例えばスパッタリング法により、モリブデン(Mo),チタン(Ti),アルミニウム(Al)等の単層膜または積層膜よりなるゲート電極材料膜40Aを、200nm程度の厚みで形成する。
【0040】
ゲート電極材料膜40Aを形成したのち、図2(C)に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより、ゲート電極材料膜40Aを所望の形状に成形して、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上にゲート電極40を形成する。
【0041】
引き続き、同じく図2(C)に示したように、ゲート電極20をマスクとしてゲート絶縁材料膜30をエッチングすることによりゲート絶縁膜30を形成する。このとき、酸化物半導体膜20をZnO,IZO,IGO等の結晶化材料により構成した場合には、ゲート絶縁材料膜30Aをエッチングする際に、フッ酸等の薬液を用いて非常に大きなエッチング選択比を維持して容易に加工することが可能となる。これにより、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上に、ゲート絶縁膜30およびゲート電極40がこの順に同一形状で形成される。
【0042】
ゲート絶縁膜30およびゲート電極40を形成したのち、図3(A)に示したように、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、例えばスパッタリング法により、チタン(Ti),アルミニウム(Al)またはインジウム(In)等の酸素と比較的低温で反応する金属よりなる金属膜50Aを、例えば5nm以上10nm以下の厚みで形成する。
【0043】
金属膜50Aを形成したのち、熱処理を行うことにより、図3(B)に示したように、金属膜50Aが酸化されて高抵抗膜50が形成される。この金属膜50Aの酸化反応には、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dに含まれる酸素の一部が利用される。そのため、金属膜50Aの酸化の進行に伴って、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの金属膜50Aと接する上面側から、ソース領域20Sおよびドレイン領域20中の酸素濃度が低下していく。これにより、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、チャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21が形成される。
【0044】
図4は、上述した製造方法と同様にして、金属膜50Aの熱処理を行ったのち、チャネル領域20A、並びにソース領域20Sおよびドレイン領域20D中の酸素濃度の深さ方向の依存性をEDX法(エネルギー分散形X線分光法)を用いて調べた結果を表したものである。その際、酸化物半導体薄膜20の材料はIGZOとし、金属膜50Aは厚み5nmのアルミニウム膜とし、熱処理は300℃のアニールにより行った。
【0045】
図4に示したように、ソース領域20Sおよびドレイン領域20D中の酸素濃度は、深さ方向の全体にわたって、チャネル領域20A中の酸素濃度よりも低くなっていることが分かる。中でも特に深さ10nm以内の領域では、チャネル領域20A中の酸素濃度と、ソース領域20Sおよびドレイン領域20D中の酸素濃度との差がきわめて明瞭になっている。すなわち、低抵抗領域21は、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向の一部、具体的には10nm以内の領域であることが分かる。
【0046】
金属膜50Aの熱処理としては、例えば、上述したように、300℃程度の温度でアニールすることが好ましい。その際、酸素等を含む酸化性のガス雰囲気でアニールを行うことで、低抵抗領域21の酸素濃度が低くなりすぎるのを抑え、酸化物半導体膜20に十分な酸素を供給することが可能となる。よって、後工程で行うアニール工程を削減することが可能となり、工程の簡略化が可能となる。
【0047】
また、例えば、図3(A)に示した金属膜50Aを形成する工程で基板11の温度を200℃程度に比較的高い温度とすることにより、図3(B)に示した熱処理を行わずに低抵抗領域21を形成することも可能である。この場合には、酸化物半導体膜20のキャリア濃度をトランジスタとして必要なレベルに低減することが可能である。
【0048】
金属膜50Aは、上述したように10nm以下の厚みで形成することが好ましい。金属膜50Aの厚みを10nm以下とすれば、熱処理により金属膜50Aを完全に酸化することが可能となるからである。金属膜50Aが完全に酸化されていない場合には、金属膜50Aをエッチングにより除去する工程が必要となる。金属膜50Aが完全に酸化されて高抵抗膜50となっている場合には、エッチングして除去する工程は不要となり、製造工程の簡略化が可能となる。金属膜50Aを10nm以下の厚みで形成した場合、高抵抗膜50の厚みは結果として20nm以下となる。
【0049】
その際、金属膜50Aを酸化させる方法としては、熱処理のほか、水蒸気雰囲気での酸化、またはプラズマ酸化などの方法により酸化を促進させることも可能である。特にプラズマ酸化は、後工程で層間絶縁膜60をプラズマCVD法により形成する直前に実施することが可能であり、特に工程を増やす必要がないという利点がある。プラズマ酸化では、例えば、基板11の温度を200℃〜400℃程度にして、酸素や二窒化酸素等の酸素を含むガス雰囲気中でプラズマを発生させて処理することが望ましい。これにより、上述したような外気に対して良好なバリア性を有する高抵抗膜50を形成することが可能となるからである。
【0050】
なお、高抵抗膜50は、酸化物半導体膜20のソース領域20Sおよびドレイン領域20D以外に、ゲート絶縁膜30またはゲート電極40上などにも形成される。しかし、高抵抗膜50をエッチングにより除去せずに残しておいてもリーク電流の原因になることはない。
【0051】
低抵抗領域21を形成したのち、図3(C)に示したように、高抵抗膜50上に、例えばシリコン酸化膜あるいは酸化アルミニウム膜、またはそれらの積層膜よりなる層間絶縁膜60を、上述した厚みで形成する。その際、シリコン酸化膜はプラズマCVD法により形成することが可能である。酸化アルミニウム膜は、アルミニウムをターゲットとしたDCまたはAC電源による反応性スパッタリング法により形成することが望ましい。高速に成膜することが可能となるからである。
【0052】
続いて、図1に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより、層間絶縁膜60および高抵抗膜50に接続孔を形成する。そののち、層間絶縁膜60の上に、例えばスパッタリング法により、例えばモリブデン(Mo)膜を200nmの厚みで形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。これにより、図1に示したように、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。以上により、図1に示した薄膜トランジスタ1が完成する。
【0053】
この薄膜トランジスタ1では、図示しない配線層を通じてゲート電極40に所定のしきい値電圧以上の電圧(ゲート電圧)が印加されると、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A中に電流(ドレイン電流)が生じる。ここでは、酸化物半導体膜20のソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に、チャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21が設けられているので、素子特性が安定したものとなる。
【0054】
図5(B)は、実際に上述した製造方法により低抵抗領域21を有する薄膜トランジスタ1を作製し、トランジスタ特性を調べた結果を表したものである。その際、金属膜50Aとしては厚み5nmのアルミニウム膜を用い、熱処理として酸素雰囲気中で300℃で1時間アニールを行うことにより低抵抗領域21を形成した。
【0055】
一方、金属膜の形成および熱処理を行わずに薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を調べた。その結果を図5(A)に示す。なお、その際、プラズマ処理は行っていない。
【0056】
図5(A)および図5(B)から分かるように、金属膜50Aの熱処理により低抵抗領域21を形成した薄膜トランジスタ1では、金属膜の形成および熱処理を行わなかったものに比べて、トランジスタのオン電流が二桁以上向上した。すなわち、酸化物半導体膜20のソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウムをドーパントとして含む、またはチャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21を設けることにより、セルフアライン構造により寄生容量を低減すると共に素子特性が安定した薄膜トランジスタ1を実現できることが分かった。
【0057】
このように本実施の形態の薄膜トランジスタ1では、酸化物半導体膜20のソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に、チャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21を設けるようにしたので、セルフアライン構造のトップゲート薄膜トランジスタの特性を安定させることが可能となる。よって、この薄膜トランジスタ1を用いてアクティブ駆動方式のディスプレイを構成すれば、寄生容量の小さいセルフアライン構造と共に安定した特性を有する薄膜トランジスタ1により、高品質な表示が可能となり、大画面化、高精細化、ハイフレームレート化に対応可能となる。また、保持容量の小さいレイアウトを適用することが可能となり、画素レイアウトにおける配線の占める割合を小さくすることが可能となる。よって、配線間ショートによる欠陥の発生確率を小さくし、製造歩留まりを高めることが可能となる。
【0058】
本実施の形態の薄膜トランジスタ1の製造方法では、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上にゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成したのち、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の上に、金属膜50Aを形成し、この金属膜50Aに対して熱処理を行うことにより、金属膜50Aを酸化により高抵抗膜50とすると共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向の一部に、チャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21を形成するようにしたので、低抵抗領域21を、プラズマなどの変動要素の多い工程を使わずに形成可能となる。よって、従来のような素子特性のプラズマ工程への依存を解消し、安定した素子特性を得ることが可能となる。
【0059】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、低抵抗領域21の構成および製造方法において上記第1の実施の形態と異なるものである。このことを除いては、本実施の形態の薄膜トランジスタは、図1に示した第1の実施の形態の薄膜トランジスタ1と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。また、第1の実施の形態と重複する工程については、図1ないし図3を参照して説明する。
【0060】
本実施の形態の薄膜トランジスタは、低抵抗領域21が、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含むことにより低抵抗化されている。これにより、この薄膜トランジスタ1は、セルフアライン(自己整合)構造を有すると共に特性を安定させることが可能となっている。
【0061】
ここでアルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb)等の元素は酸化物半導体中に存在する場合には、ドーパントとして働くために酸化物半導体中の電子濃度を増加させることが可能となり、酸化物半導体を低抵抗化することが可能となる。この場合に酸化物半導体を低抵抗化するために必要なドーパント濃度は1×1019cm−3以上含まれていることが望ましい。
【0062】
低抵抗領域21には、上記の元素の群のうち1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、低抵抗領域21に含まれる上記元素のドーパント濃度は、チャネル領域20Aよりも高いことが望ましい。
【0063】
この薄膜トランジスタ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0064】
まず、第1の実施の形態と同様にして、図2(A)に示した工程により、酸化物半導体膜20を形成する。次いで、第1の実施の形態と同様にして、図2(B)および図2(C)に示した工程により、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上に、ゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成する。
【0065】
続いて、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域21を形成する。
【0066】
具体的には、アルミニウム(Al),インジウム(In)またはチタン(Ti)の場合には、第1の実施の形態と同様にして、図3(A)および図3(B)に示した工程により低抵抗領域21を形成することが可能である。すなわち、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、ドーパント材料膜として、アルミニウム(Al),インジウム(In)またはチタン(Ti)よりなる金属膜50Aを形成し、この金属膜50Aの熱処理を行うことにより、金属膜50Aが酸化されて、酸化アルミニウム,酸化インジウムまたは酸化チタンよりなる高抵抗膜50が形成される。これと共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、アルミニウム(Al),インジウム(In)またはチタン(Ti)をドーパントとして含む低抵抗領域21が形成される。
【0067】
また、ホウ素(B),ガリウム(Ga),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb)の場合についても、上述したアルミニウム(Al)等と同じ工程により低抵抗領域21を形成することが可能である。すなわち、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、ドーパント材料膜として、ホウ素(B),ガリウム(Ga),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)または鉛(Pb)よりなる非金属膜50Aを形成する。この非金属膜50Aの熱処理を行うことにより、非金属膜50Aが酸化されて、酸化ホウ素,酸化ガリウム,シリコン酸化物,ゲルマニウム酸化物,酸化スズまたは酸化鉛よりなる高抵抗膜50が形成される。これと共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、ホウ素(B),ガリウム(Ga),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)または鉛(Pb)をドーパントとして含む低抵抗領域21が形成される。
【0068】
図6は、実際に上述した製造方法によりアルミニウム(Al)をドーパントとして含む低抵抗領域21を形成し、得られた低抵抗領域21のアルミニウム濃度をSIMS法(2次イオン質量分析法)により測定した結果を表したものである。図6から、酸化物半導体の表面付近に最も高濃度のアルミニウムが含まれており、表面から40nm深い領域においても酸化物半導体中に1×1019cm-3以上のアルミニウムが含まれていることがわかる。
【0069】
低抵抗領域21を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、図3(C)に示した工程により、高抵抗膜50上に層間絶縁膜60を形成する。続いて、図1に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜60に接続孔を形成する。
【0070】
そののち、層間絶縁膜60の上に、例えばスパッタリング法により、例えばモリブデン(Mo)膜を200nmの厚みで形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。これにより、同じく図1に示したように、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。以上により、図1に示した薄膜トランジスタ1が完成する。
【0071】
この薄膜トランジスタ1では、第1の実施の形態と同様に、ゲート電極40に所定のしきい値電圧以上の電圧(ゲート電圧)が印加されると、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A中に電流(ドレイン電流)が生じる。ここでは、酸化物半導体膜20のソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域21が設けられているので、素子特性が安定したものとなる。
【0072】
このように本実施の形態の薄膜トランジスタ1では、酸化物半導体膜20のソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域21を設けるようにしたので、セルフアライン構造のトップゲート薄膜トランジスタの特性を安定させることが可能となる。よって、この薄膜トランジスタ1を用いてアクティブ駆動方式のディスプレイを構成すれば、寄生容量の小さいセルフアライン構造と共に安定した特性を有する薄膜トランジスタ1により、高品質な表示が可能となり、大画面化、高精細化、ハイフレームレート化に対応可能となる。また、保持容量の小さいレイアウトを適用することが可能となり、画素レイアウトにおける配線の占める割合を小さくすることが可能となる。よって、配線間ショートによる欠陥の発生確率を小さくし、製造歩留まりを高めることが可能となる。
【0073】
本実施の形態の薄膜トランジスタ1の製造方法では、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上にゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成したのち、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の上に、ドーパント材料膜として金属膜または非金属膜50Aを形成し、この金属膜または非金属膜50Aに対して熱処理を行うことにより、金属膜または非金属膜50Aを酸化により高抵抗膜50とすると共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向の一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域21を形成するようにしたので、低抵抗領域21を、プラズマなどの変動要素の多い工程を使わずに形成可能となる。よって、従来のような素子特性のプラズマ工程への依存を解消し、安定した素子特性を得ることが可能となる。
【0074】
(変形例1)
図7は、本発明の変形例1に係る薄膜トランジスタ1Aの断面構成を表したものである。この薄膜トランジスタ1Aは、高抵抗膜50を設けないことによりリーク電流を低減するようにしたことを除いては、上記第1の実施の形態の薄膜トランジスタ1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0075】
この薄膜トランジスタ1Aは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、上記第1の実施の形態と同様にして、図2(A)ないし図3(B)に示した工程により、基板11に、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30,ゲート電極40および金属膜50Aを形成し、金属膜50Aの熱処理により低抵抗領域21および高抵抗膜50を形成する。次いで、図8(A)に示したように、エッチングにより高抵抗膜50を除去する。その際、塩素等を含むガスを用いたドライエッチング法により、高抵抗膜50および完全に酸化されなかった金属膜50Aを容易に除去することが可能である。続いて、図8(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、層間絶縁膜60を形成する。そののち、図8(C)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、層間絶縁膜60に接続孔を設けて、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。
【0076】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る薄膜トランジスタ1Bの断面構成を表したものである。この薄膜トランジスタ1Bは、基板11上にゲート電極40,ゲート絶縁膜30および酸化物半導体膜20,チャネル保護膜80,層間絶縁膜60,ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dをこの順に積層したボトムゲート薄膜トランジスタである。このことを除いては、この薄膜トランジスタ1Bは、上記第1の実施の形態の薄膜トランジスタ1と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0077】
チャネル保護膜80は、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上に設けられ、例えば、厚みが200nm程度であり、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜または酸化アルミニウム膜の単層膜または積層膜により構成されている。
【0078】
この薄膜トランジスタ1Bは、例えば次のようにして製造することができる。なお、第1の実施の形態と同一の工程については第1の実施の形態を参照して説明する。
【0079】
まず、基板11上の全面に例えばスパッタリング法や蒸着法を用いて、ゲート電極40の材料となるモリブデン(Mo)膜を、例えば200nm程度の厚みで形成する。このモリブデン膜を、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、図10(A)に示したように、ゲート電極40を形成する。
【0080】
次いで、同じく図10(A)に示したように、ゲート電極40を形成した基板11の全面に、例えばプラズマCVD法により、シリコン酸化膜または酸化アルミニウム膜などのゲート絶縁膜30を、300nm程度の厚みで形成する。
【0081】
次いで、図10(B)に示したように、ゲート絶縁膜30の上に、第1の実施の形態と同様にして、酸化物半導体膜20を形成する。
【0082】
続いて、酸化物半導体膜20およびゲート絶縁膜30上の全面に、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜または酸化アルミニウム膜の単層膜または積層膜よりなるチャネル保護材料膜を、200nm程度の厚みで形成する。そののち、ゲート電極40をマスクとした裏面露光により、図10(C)に示したように、自己整合的にゲート電極40と近い位置にチャネル保護膜80を形成する。
【0083】
チャネル保護膜80を形成したのち、図10(D)に示したように、酸化物半導体膜20およびチャネル保護膜80の上に、第1の実施の形態と同様にして、金属膜50Aを形成する。
【0084】
引き続き、図11(A)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、熱処理により、金属膜50Aを酸化させて高抵抗膜50を形成すると共に、ソース領域20Aおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向の一部に、チャネル領域20Aよりも酸素濃度の低い低抵抗領域21を形成する。
【0085】
低抵抗領域21および高抵抗膜50を形成したのち、図11(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、高抵抗膜50の上に層間絶縁膜60を形成する。
【0086】
層間絶縁膜60を形成したのち、図11(C)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、層間絶縁膜60に接続孔を設け、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。以上により、図9に示した薄膜トランジスタ1Bが完成する。
【0087】
この薄膜トランジスタ1Bの作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0088】
(変形例2)
図12は、変形例2に係る薄膜トランジスタ1Cの断面構成を表したものである。この薄膜トランジスタ1Cは、高抵抗膜50を設けないことによりリーク電流を低減するようにしたことを除いては、上記第3の実施の形態の薄膜トランジスタ1Bと同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0089】
この薄膜トランジスタ1Cは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、上記第3の実施の形態と同様にして、図10(A)ないし図10(D)に示した工程により、基板11に、ゲート電極40,ゲート絶縁膜30,酸化物半導体膜20,チャネル保護膜80および金属膜50Aを形成し、金属膜50Aの熱処理により低抵抗領域21および高抵抗膜50を形成する。次いで、図13(A)に示したように、エッチングにより高抵抗膜50を除去する。続いて、図13(B)に示したように、第3の実施の形態と同様にして、層間絶縁膜60を形成する。そののち、図13(C)に示したように、第3の実施の形態と同様にして、層間絶縁膜60に接続孔を設けて、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。
【0090】
(第4の実施の形態)
図14は、本発明の第4の実施の形態に係る薄膜トランジスタの構造を表したものである。この薄膜トランジスタ1Dは、高抵抗膜50が複数の不連続な島状高抵抗膜51よりなるものであることを除いては、上記第1の実施の形態の薄膜トランジスタ1と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0091】
島状高抵抗膜51は、例えば、酸化アルミニウムにより構成されている。なお、島状高抵抗膜51は、必ずしも厚み方向の全部が酸化アルミニウムにより構成されている必要はない。例えば、島状高抵抗膜51は、図15に示したように上面のみが酸化アルミニウムよりなる酸化部53Aとなっており、それ以外の部分(下部)は金属アルミニウムよりなる未酸化部53Bであってもよい。また、島状高抵抗膜51は、図16に示したように上面および側面が酸化アルミニウムよりなる酸化部53Aであり、それ以外の部分(中心部)は金属アルミニウムよりなる未酸化部53Bでもよい。
【0092】
隣接する島状高抵抗膜51の間には隙間52があり、この隙間52により隣接する島状高抵抗膜51は物理的に互いに分離され、2次元的につながらない島状の構造となっている。そのため、島状高抵抗膜51同士は面内方向にほとんど電気を流すことがなく、ゲート電極40からソース電極70Sまたはドレイン電極70Dへの電流リークを遮断することが可能となる。なお、島状高抵抗膜51や隙間52の平面形状は特に限定されず、不規則な平面形状であってもよい。
【0093】
複数の島状高抵抗膜51は、ゲート電極40と酸化物半導体膜20との間(ゲート絶縁膜30の側面)の少なくとも一か所で、隙間52により互いに分離されていることが好ましい。換言すれば、島状高抵抗膜51の最も長い辺は、ゲート絶縁膜30の厚みよりも短い(島状高抵抗膜51の最大寸法がゲート絶縁膜30の厚みよりも小さい)ことが好ましい。後述する製造工程において島状金属膜51Aが完全に酸化されず、島状高抵抗膜51の内部に金属よりなる未酸化部53Bが残存している場合には、例えば図17に示したように、島状高抵抗膜51の未酸化部53Bがゲート電極40の側面と低抵抗領域21の上面との両方に接触し、ゲート電極40とソース電極70Sまたはドレイン電極70Dとの間で短絡が生じてしまうおそれがあるからである。
【0094】
この薄膜トランジスタ1Dは、例えば次のようにして製造することができる。
【0095】
図18は、図14に示した薄膜トランジスタ1Dの製造方法を工程順に表したものである。なお、第1の実施の形態と同一の工程については図2を参照して説明する。
【0096】
まず、第1の実施の形態と同様にして、図2(A)に示した工程により、酸化物半導体膜20を形成する。次いで、第1の実施の形態と同様にして、図2(B)および図2(C)に示した工程により、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上に、ゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成する。
【0097】
続いて、図18(A)に示したように、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、アルミニウム(Al)よりなる複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aを形成する。図19(A)は、複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aを拡大して模式的に表したものである。複数の島状金属膜51Aの間には隙間52が生じている。
【0098】
金属膜50Aの形成手法としては真空蒸着またはスパッタリング法が適しているが、複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aを形成する手法として最も適しているのはスパッタリング法である。図20は、スパッタリング法におけるソントンのモデルを表したものである。図20において、Tは基板温度、Tmは材料の融点を表す。スパッタリング法では、基板の温度およびスパッタガスであるアルゴン(Ar)の圧力を変化させることで、形成される膜の結晶性・粒径分布に違いが生じる。T/Tmが大きく、アルゴンの圧力が低い場合、すなわちスパッタされる粒子のエネルギーが極めて大きく、かつ基板上で金属膜が動きやすい条件の場合には、ZONE3という状態になり、極めて緻密な膜が形成される。一方、T/Tmが小さく、アルゴンの圧力が高い条件の場合には、ZONE1という状態になる。このZONE1の状態では、膜を非常に厚くしても粗な状態である。すなわち、初期形成過程では島状の膜を形成することが可能となる。よって、金属膜50Aを成膜する際に、基板温度およびアルゴンの圧力を適切に調整することにより、複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aを形成することが可能である。
【0099】
そののち、図18(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして熱処理を行うことにより、金属膜50Aの複数の島状金属膜51Aが酸化されて、酸化アルミニウムよりなる複数の島状高抵抗膜51を有する高抵抗膜50が形成される。これと共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、アルミニウムをドーパントとして含む、またはチャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21が形成される。
【0100】
図19(B)は、金属膜50Aの酸化を拡大して模式的に表したものである。金属膜50Aの複数の島状金属膜51Aは、雰囲気中の酸素O2および下地である酸化物半導体膜20中の酸素Oを取り込んで酸化する。この際、各島状金属膜51Aは、取り込んだ酸素の量に応じて体積が増大する。また、複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aは、酸素と接触する表面積が大きくなるので、より酸化が進みやすくなり、この点からもリークを抑えることが可能となる。一方、酸化物半導体膜20では、各島状金属膜51Aの直下に低抵抗領域21が形成される。
【0101】
図19(C)は、金属膜50Aの酸化により、複数の島状高抵抗膜51よりなる高抵抗膜50が形成されると共に、酸化物半導体膜20に低抵抗領域21が形成された状態を拡大して模式的に表したものである。島状高抵抗膜51は酸化により膨張する一方、隙間52は縮小する。そのため、島状高抵抗膜51は、隙間52により隣接する島状高抵抗膜52と隔てられているものもあるし、隙間52が消失して隣接する島状高抵抗膜51とつながるものも存在する。
【0102】
低抵抗領域21を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、図18(C)に示したように、高抵抗膜50上に層間絶縁膜60を形成する。続いて、図14に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜60に接続孔を形成する。
【0103】
そののち、層間絶縁膜60の上に、例えばスパッタリング法により、例えばモリブデン(Mo)膜を200nmの厚みで形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。これにより、同じく図14に示したように、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。
【0104】
図19(D)は、複数の島状高抵抗膜51の上にソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを形成した状態を表したものである。複数の島状高抵抗膜51は隙間52により互いに分離されているので、この隙間52を介して、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dが低抵抗領域21と接続される。よって、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dと低抵抗領域21とのコンタクト抵抗が小さくなり、低抵抗領域21上の島状高抵抗膜51を除去する工程が不要となる。以上により、図14に示した薄膜トランジスタ1Dが完成する。
【0105】
この薄膜トランジスタ1Dでは、第1の実施の形態と同様に、ゲート電極40に所定のしきい値電圧以上の電圧(ゲート電圧)が印加されると、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A中に電流(ドレイン電流)が生じる。ここでは、高抵抗膜50が複数の不連続な島状高抵抗膜51により構成され、隣接する島状高抵抗膜51は隙間52により物理的に互いに分離されているので、島状高抵抗膜51同士の間にはほとんど電気が流れることがない。よって、ゲート電極40からソース電極70Sまたはドレイン電極70Dへの電流リークが遮断され、トランジスタ特性が向上する。
【0106】
図21(A)は、実際に上述した製造方法により、複数の島状高抵抗膜51よりなる高抵抗膜50を有する薄膜トランジスタ1Dを作製し、トランジスタ特性を調べた結果を表したものである。その際、まず、ガラス基板よりなる基板11上に、バッファ層としてPECVD法により厚み200nmの酸化シリコン(SiO2)膜を形成した。次いで、厚み40nmのInGaZnO膜よりなる酸化物半導体膜20を形成した。続いて、厚み5nmのアルミニウム膜よりなる金属膜50Aを形成した。金属膜50Aの成膜条件は、基板温度約100℃、アルゴン圧力約0.5Paとした。この場合、アルミニウムの融点は660℃程度であることから、T/Tm=0.15となる。アルゴン圧力が低いので、図20に示したソントンのモデルにおけるZONE T(transition)で成膜されている可能性が高い。しかしながら、成膜後の金属膜50Aの断面を調べたところ、複数の不連続な島状金属膜51Aが形成されていることが確認された。なお、アルゴン圧力をもう少し高くすることでZONE1での成膜が可能となり、金属膜50Aの厚みを厚くすることが可能となると考えられる。そののち、金属膜50Aに対する熱処理として、約30%の酸素雰囲気中、300℃で1時間アニールを行うことにより低抵抗領域21を形成した。
【0107】
一方、金属膜の形成および熱処理を行わずに薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を調べた。その結果を図21(B)に示す。
【0108】
図21(A)および図21(B)から分かるように、複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aの熱処理により低抵抗領域21を形成すると共に複数の島状高抵抗膜51よりなる高抵抗膜50を形成した薄膜トランジスタ1Dでは、金属膜の形成および熱処理を行わなかったものに比べて、トランジスタのオン電流が二桁以上向上した。すなわち、高抵抗膜51を複数の島状高抵抗膜51よりなるものとした場合にも、第1の実施の形態と同様に、セルフアライン構造により寄生容量を低減すると共に素子特性が安定した薄膜トランジスタ1Dを実現できることが分かった。
【0109】
図22は、金属膜50Aの厚みを5nmおよび10nmと異ならせることにより、高抵抗膜50の厚みの異なる薄膜トランジスタ1Dを作製し、得られた薄膜トランジスタ1Dについて、Id(ソース−ドレイン間の電流)およびIg(ゲート−ドレイン間の電流)を調べた結果を表したものである。図22から分かるように、金属膜50Aの厚みを10nmとした場合には、5nmとした場合に比べてトランジスタのオフ時の電流が大きく、ソース電極70Sとドレイン電極70Dとの間がつながっていることが示唆されている。また、Igで示すリーク電流が極めて大きく、高抵抗膜50がリークパスとなっていることが明らかである。すなわち、金属膜50Aを5nm以下の厚みで形成することにより、リークを低減し、トランジスタ特性を向上させることが可能となることが分かった。
【0110】
このように本実施の形態では、高抵抗膜50を複数の島状高抵抗膜51により構成するようにしたので、第1の実施の形態の効果に加えて、リーク電流を低減し、トランジスタ特性を向上させることが可能となる。また、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dと低抵抗領域21とのコンタクト抵抗を低減することが可能となり、低抵抗領域21上の島状高抵抗膜51を除去する工程が不要となるので製造工程が簡素化される。
【0111】
(変形例3)
図23および図24は、変形例3に係る薄膜トランジスタ1Dの製造方法を工程順に表したものである。この製造方法は、第4の実施の形態とは高抵抗膜50を形成する方法が異なるものである。また、第1の実施の形態と製造工程が重複する部分については、図2を参照して説明する。
【0112】
まず、第1の実施の形態と同様にして、図2(A)に示した工程により、酸化物半導体膜20を形成する。次いで、第1の実施の形態と同様にして、図2(B)および図2(C)に示した工程により、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上に、ゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成する。
【0113】
続いて、図23(A)に示したように、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、アルミニウム(Al)よりなる金属膜50Aを、一様な連続膜として形成する。
【0114】
そののち、図23(B)に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより金属膜50Aをパターニングすることにより、金属膜50Aを、複数の島状金属膜51Aに分割する。複数の島状金属膜51Aの間には隙間52を設け、この隙間52により複数の島状金属膜51Aを物理的に分離する。
【0115】
複数の島状金属膜51Aを形成したのち、図24(A)に示したように、第1の実施の形態と同様にして熱処理を行うことにより、金属膜50Aの複数の島状金属膜51Aが酸化されて、酸化アルミニウムよりなる複数の島状高抵抗膜51を有する高抵抗膜50が形成される。これと共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、アルミニウムをドーパントとして含む、またはチャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21が形成される。
【0116】
低抵抗領域21を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、図24(B)に示したように、高抵抗膜50上に層間絶縁膜60を形成する。続いて、図14に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜60に接続孔を形成する。
【0117】
そののち、層間絶縁膜60の上に、例えばスパッタリング法により、例えばモリブデン(Mo)膜を200nmの厚みで形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。これにより、同じく図14に示したように、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。複数の島状高抵抗膜51は隙間52により互いに分離されているので、この隙間52を介して、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dが低抵抗領域21と接続される。よって、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dと低抵抗領域21とのコンタクト抵抗が小さくなり、低抵抗領域21上の島状高抵抗膜51を除去する工程が不要となる。以上により、図14に示した薄膜トランジスタ1Dが完成する。
【0118】
(変形例4)
図25および図26は、変形例4に係る薄膜トランジスタ1Dの製造方法を工程順に表したものである。この製造方法は、第4の実施の形態とは高抵抗膜50を形成する方法が異なるものである。また、第1の実施の形態と製造工程が重複する部分については、図2を参照して説明する。
【0119】
まず、第1の実施の形態と同様にして、図2(A)に示した工程により、酸化物半導体膜20を形成する。次いで、第1の実施の形態と同様にして、図2(B)および図2(C)に示した工程により、酸化物半導体膜20のチャネル領域20A上に、ゲート絶縁膜30およびゲート電極40をこの順に同一形状で形成する。
【0120】
続いて、図25(A)に示したように、酸化物半導体膜20,ゲート絶縁膜30およびゲート電極40の表面に、アルミニウム(Al)よりなる金属膜50Aを、一様な連続膜として形成する。
【0121】
そののち、図25(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして熱処理を行うことにより、金属膜50Aが酸化されて高抵抗膜50が形成される。これと共に、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に、アルミニウムをドーパントとして含む、またはチャネル領域20Aよりも酸素濃度が低い低抵抗領域21が形成される。
【0122】
そののち、図26(A)に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより高抵抗膜50をパターニングすることにより、高抵抗膜50を、複数の島状高抵抗膜51に分割する。複数の島状高抵抗膜51の間には隙間52を設け、この隙間52により複数の島状高抵抗膜51を物理的に分離する。
【0123】
複数の島状高抵抗膜51を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、図26(B)に示したように、高抵抗膜50上に層間絶縁膜60を形成する。続いて、図14に示したように、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜60に接続孔を形成する。
【0124】
そののち、層間絶縁膜60の上に、例えばスパッタリング法により、例えばモリブデン(Mo)膜を200nmの厚みで形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。これにより、同じく図14に示したように、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。複数の島状高抵抗膜51は隙間52により互いに分離されているので、この隙間52を介して、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dが低抵抗領域21と接続される。よって、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dと低抵抗領域21とのコンタクト抵抗が小さくなり、低抵抗領域21上の島状高抵抗膜51を除去する工程が不要となる。以上により、図14に示した薄膜トランジスタ1Dが完成する。
【0125】
(第5の実施の形態)
図27は、本発明の第5の実施の形態に係る薄膜トランジスタ1Eの構造を表したものである。この薄膜トランジスタ1Eは、基板11上にゲート電極40,ゲート絶縁膜30および酸化物半導体膜20,チャネル保護膜80,層間絶縁膜60,ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dをこの順に積層したボトムゲート薄膜トランジスタである。このことを除いては、この薄膜トランジスタ1Bは、上記第3および第4の実施の形態の薄膜トランジスタ1B,1Dと同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0126】
この薄膜トランジスタ1Eは、例えば次のようにして製造することができる。なお、第1または第3の実施の形態と同一の工程については第1または第3の実施の形態を参照して説明する。
【0127】
まず、第3の実施の形態と同様にして、図10(A)に示した工程により、図28(A)に示したように、基板11上にゲート電極40およびゲート絶縁膜30を順に形成する。
【0128】
次いで、第3の実施の形態と同様にして、図10(B)に示した工程により、図28(B)に示したように、ゲート絶縁膜30の上に酸化物半導体膜20を形成する。
【0129】
続いて、第3の実施の形態と同様にして、図10(C)に示した工程により、図28(C)に示したように、酸化物半導体膜20上にチャネル保護膜80を形成する。
【0130】
そののち、第4の実施の形態と同様にして、図18(A)に示した工程により、図28(D)に示したように、酸化物半導体膜20,チャネル保護膜80およびゲート絶縁膜30の上に、複数の島状金属膜51Aよりなる金属膜50Aを形成する。
【0131】
引き続き、第4の実施の形態と同様にして、図18(B)に示した工程により、図29(A)に示したように、熱処理により、金属膜50Aの複数の島状金属膜51Aを酸化させて、複数の島状高抵抗膜51よりなる高抵抗膜50を形成する。これと同時に、ソース領域20Aおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向の一部または全部に、チャネル領域20Aよりも酸素濃度の低い低抵抗領域21を形成する。
【0132】
低抵抗領域21および高抵抗膜50を形成したのち、図29(B)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、高抵抗膜50の上に層間絶縁膜60を形成する。
【0133】
層間絶縁膜60を形成したのち、図29(C)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、層間絶縁膜60に接続孔を設け、ソース電極70Sおよびドレイン電極70Dを低抵抗領域21に接続する。以上により、図27に示した薄膜トランジスタ1Eが完成する。
【0134】
<適用例1>
図30は、この薄膜トランジスタ1を駆動素子として備えた表示装置の回路構成を表すものである。表示装置90は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどであり、駆動パネル91上に、マトリクス状に配設された複数の画素10R,10G,10Bと、これらの画素10R,10G,10Bを駆動するための各種駆動回路とが形成されたものである。画素10R,10G,10Bはそれぞれ、赤色(R:Red ),緑色(G:Green )および青色(B:Blue)の色光を発する液晶表示素子や有機EL素子などである。これら3つの画素10R,10G,10Bを一つのピクセルとして、複数のピクセルにより表示領域110が構成されている。駆動パネル91上には、駆動回路として、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130と、画素駆動回路150とが配設されている。この駆動パネル91には、図示しない封止パネルが貼り合わせられ、この封止パネルにより画素10R,10G,10Bおよび上記駆動回路が封止されている。
【0135】
図31は、画素駆動回路150の等価回路図である。画素駆動回路150は、上記薄膜トランジスタ1,1A〜1Eとして、トランジスタTr1,Tr2が配設されたアクティブ型の駆動回路である。トランジスタTr1,Tr2の間にはキャパシタCsが設けられ、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において、画素10R(または画素10G,10B)がトランジスタTr1に直列に接続されている。このような画素駆動回路150では、列方向に信号線120Aが複数配置され、行方向に走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介してトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介してトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。この表示装置では、トランジスタTr1,Tr2が、上記実施の形態の薄膜トランジスタ1,1A〜1Eにより構成されているので、セルフアライン構造により寄生容量が小さくなっていると共に特性の安定した薄膜トランジスタ1,1A〜1Eにより、高品質な表示が可能となる。このような表示装置90は、例えば次の適用例2〜6に示した電子機器に搭載することができる。
【0136】
<適用例2>
図32は、テレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有している。
【0137】
<適用例3>
図33は、デジタルスチルカメラの外観を表したものである。このデジタルスチルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有している。
【0138】
<適用例4>
図34は、ノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有している。
【0139】
<適用例5>
図35は、ビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有している。
【0140】
<適用例6>
図36は、携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。
【0141】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、低抵抗領域21がソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における一部に設けられている場合について説明したが、低抵抗領域21は、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における少なくとも一部に設けられていればよい。例えば、低抵抗領域21は、図37に示したように、ソース領域20Sおよびドレイン領域20Dの上面から深さ方向における全部に設けられていてもよい。
【0142】
また、例えば、上記実施の形態では、酸化物半導体膜20が基板11上に直接設けられている場合について説明したが、酸化物半導体20は、基板11上に、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜または酸化アルミニウム膜などの絶縁膜を間にして設けられていてもよい。これにより、基板11から酸化物半導体膜20に不純物や水分などが拡散することを抑えることが可能となる。
【0143】
更に、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0144】
加えて、本発明は、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイのほか、無機エレクトロルミネッセンス素子、またはエレクトロデポジション型もしくエレクトロクロミック型の表示素子などの他の表示素子を用いた表示装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0145】
1…薄膜トランジスタ、11…基板、20…酸化物半導体薄膜、20A…チャネル領域、20S…ソース領域、20D…ドレイン領域、21…低抵抗領域、30…ゲート絶縁膜、40…ゲート電極、50A…金属膜、50…高抵抗膜、50A…金属膜、51…島状高抵抗膜、51A…島状金属膜、60…層間絶縁膜、70S…ソース電極、70D…ドレイン電極、80…チャネル保護膜、90…表示装置、91…駆動パネル、10R,10G,10B…画素、110…表示領域、120…信号線駆動回路、130…走査線駆動回路、150…画素駆動回路、Tr1,Tr2…トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向してチャネル領域を有すると共に前記チャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有し、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域を有する酸化物半導体膜と、
前記低抵抗領域に接続されたソース電極およびドレイン電極と
を備えた薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記酸化物半導体膜の前記低抵抗領域側の表面に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種の酸化物よりなる高抵抗膜を有する
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記高抵抗膜は、複数の島状高抵抗膜よりなる
請求項2記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記複数の島状高抵抗膜は、前記ゲート電極と前記酸化物半導体膜との間の少なくとも一か所で互いに分離されている
請求項3記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記酸化物半導体膜は基板上に設けられ、
前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域上にゲート絶縁膜および前記ゲート電極がこの順に同一形状で設けられ、
前記酸化物半導体膜,前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極の表面に前記高抵抗膜および層間絶縁膜がこの順に設けられ、
前記層間絶縁膜または前記高抵抗膜に設けられた接続孔を介して前記ソース電極および前記ドレイン電極が前記低抵抗領域に接続されている
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向してチャネル領域を有すると共に前記チャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有し、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、前記チャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を有する酸化物半導体膜と、
前記低抵抗領域に接続されたソース電極およびドレイン電極と
を備えた薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記低抵抗領域は、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向に10nm以内の領域である
請求項6記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記酸化物半導体膜の前記低抵抗領域側の表面に、酸化チタン,酸化アルミニウムまたは酸化インジウムよりなる高抵抗膜を有する
請求項7記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記高抵抗膜は、複数の島状高抵抗膜よりなる
請求項8記載の薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記複数の島状高抵抗膜は、前記ゲート電極と前記酸化物半導体膜との間の少なくとも一か所で互いに分離されている
請求項9記載の薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記酸化物半導体膜は基板上に設けられ、
前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域上にゲート絶縁膜および前記ゲート電極がこの順に同一形状で設けられ、
前記酸化物半導体膜,前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極の表面に前記高抵抗膜および層間絶縁膜がこの順に設けられ、
前記層間絶縁膜または前記高抵抗膜に設けられた接続孔を介して前記ソース電極および前記ドレイン電極が前記低抵抗領域に接続されている
請求項6ないし10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
基板に、チャネル領域を有すると共に前記チャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域上にゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順に同一形状で形成する工程と、
前記酸化物半導体膜,前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極の上に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種よりなるドーパント材料膜を形成する工程と、
熱処理により前記ドーパント材料膜を酸化させて高抵抗膜とすると共に、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース電極およびドレイン電極を接続する工程と
を含む薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記熱処理を酸化性のガス雰囲気中で行う
請求項12記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記金属膜を形成する工程において、複数の島状金属膜よりなる金属膜を形成したのち、
前記低抵抗領域を形成する工程において、熱処理により前記金属膜を酸化させて、複数の島状高抵抗膜よりなる前記高抵抗膜とする
請求項13記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
基板に、チャネル領域を有すると共に前記チャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域上にゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順に同一形状で形成する工程と、
前記酸化物半導体膜,前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極の上に金属膜を形成する工程と、
熱処理により前記金属膜を酸化させて高抵抗膜とすると共に、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、前記チャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース電極およびドレイン電極を接続する工程と
を含む薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記金属膜を、チタン(Ti),アルミニウム(Al)またはインジウム(In)により構成する
請求項15記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記熱処理を酸化性のガス雰囲気中で行う
請求項16記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記金属膜を形成する工程において、複数の島状金属膜よりなる前記金属膜を形成したのち、
前記低抵抗領域を形成する工程において、熱処理により前記金属膜を酸化させて、複数の島状高抵抗膜よりなる前記高抵抗膜とする
請求項17記載の薄膜トランジスタ。
【請求項19】
複数の画素および前記複数の画素を駆動するための薄膜トランジスタを備え、
前記薄膜トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向してチャネル領域を有すると共に前記チャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有し、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、アルミニウム(Al),ホウ素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In),チタン(Ti),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域を有する酸化物半導体膜と、
前記低抵抗領域に接続されたソース電極およびドレイン電極と
を備えた表示装置。
【請求項20】
複数の画素および前記複数の画素を駆動するための薄膜トランジスタを備え、
前記薄膜トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向してチャネル領域を有すると共に前記チャネル領域の一方の側にソース領域、他方の側にドレイン領域を有し、前記ソース領域および前記ドレイン領域の上面から深さ方向における少なくとも一部に、前記チャネル領域よりも酸素濃度が低い低抵抗領域を有する酸化物半導体膜と、
前記低抵抗領域に接続されたソース電極およびドレイン電極と
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2011−228622(P2011−228622A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245035(P2010−245035)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】