説明

表示パネルの検査方法および検査装置

【課題】 ラビングスジ欠陥を高精度に検出できる表示パネルの検査方法および検査装置の提供。
【解決手段】 表示パネルの検査装置は、スジ欠陥強調手段300と、前記スジ欠陥強調手段300において強調された画像に基づいて、スジ欠陥とラビジングスジ欠陥とを分別する欠陥分別手段400と、前記欠陥分別手段400においてラビングスジ欠陥と分別された欠陥を評価するラビングスジ欠陥評価手段500とを備える。欠陥分別手段400は、スジ欠陥強調手段300で強調された各スジ欠陥が、ほぼ直線状の欠陥であり、かつ、スジ欠陥の形成方向がそのパネルに対してラビング処理された方向にほぼ一致する場合にはラビングスジ欠陥と判別し、それ以外の場合にはスジ欠陥と判別する。このため、欠陥幅や長さ、間隔などが変動していても、それらの影響を受けることなくラビングスジ欠陥を確実に判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の表示パネルの検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造工程では、ガラス板の上に形成された配向膜の表面を、布で一つの向きに擦るラビング処理が行われている。
このラビング処理では、ローラーの回転・強さ・速さ・圧力等の微妙な条件変動により、配向膜に引っかき傷のようなものを付けてしまう。このようなスジ状の欠陥はラビングスジ欠陥と呼ばれている。
【0003】
このようなラビングスジ欠陥を検出する検査方法として、CCDカメラで撮像した画像に対して、一定方向に対して選択性を強めたアンシャープマスキング(線強調フィルタ)を用いたもの(例えば特許文献1参照)と、CCDカメラで撮像した画像に対してウェーブレット変換を行ない、その画像エネルギー量で良否(欠陥の有無)を判断しているもの(例えば特許文献2参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−326026号公報
【特許文献2】特開平10−160632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、通常のスジ欠陥とラビングスジ欠陥とを見分けることができないという問題があった。
また、ラビングスジ欠陥は、出現する本数・個々の欠陥幅や長さ・欠陥間隔が変動するため、特許文献2のウェーブレット変換を用いた方法ではラビングスジ欠陥を精度よく検出できないという問題があった。
【0006】
本発明は、ラビングスジ欠陥を高精度に検出することができる表示パネルの検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表示パネルによって表示される画像内に存在するラビングスジ欠陥を検出する表示パネルの検査方法であって、前記表示パネルによる表示画像を撮像した撮像画像に対してスジ状の欠陥成分を強調するスジ欠陥強調処理工程と、前記スジ欠陥強調処理工程において強調された画像に基づいて、スジ欠陥とラビングスジ欠陥とを分別する欠陥分別処理工程と、前記欠陥分別処理工程においてラビングスジ欠陥と分別された欠陥を評価するラビングスジ欠陥評価処理工程と、を備え、前記欠陥分別処理工程は、スジ欠陥強調処理工程で強調された各スジ欠陥が、ほぼ直線状の欠陥であり、かつ、スジ欠陥の形成方向がそのパネルに対してラビング処理された方向にほぼ一致する場合にはラビングスジ欠陥と判別し、それ以外の場合にはスジ欠陥と判別することを特徴とする。
【0008】
本発明では、ラビングスジ欠陥は、ラビング処理が行われた方向にほぼ一致すると共に、直線的に形成される点に着目し、各スジ欠陥がこのような特徴に合致するか否かを判定することで、各スジ欠陥の中からラビングスジ欠陥を判別している。
すなわち、本発明では、スジ欠陥強調処理工程により、撮像画像内のスジ欠陥を強調し、欠陥分別処理工程により、強調されたスジ欠陥のうち、ほぼ直線状の欠陥であり、かつ、スジ欠陥の形成方向がそのパネルに対してラビング処理された方向にほぼ一致する場合にはラビングスジ欠陥と判別している。このため、スジ欠陥とラビングスジ欠陥とを確実に見分けることができ、かつ、欠陥幅や長さ、間隔などが変動していても、それらの影響を受けることなくラビングスジ欠陥を判別できるため、ラビングスジ欠陥を精度よく検出することができる。
【0009】
本発明において、前記欠陥分別処理工程は、前記スジ欠陥強調処理工程においてスジ状の欠陥が強調された画像の各画素の値を所定の閾値と比較し、欠陥部分とそれ以外の部分とに分けた2値化画像データを作成する2値化工程と、前記2値化画像データに対して、連続する欠陥部分毎に識別番号を設定する識別番号付与工程と、前記2値化画像データに対して細線化処理を行う細線化工程と、前記細線化されたスジ欠陥毎に近似直線を設定し、前記近似直線の方向と、各スジ欠陥の直線度とを算出する近似直線設定工程と、近似直線設定工程において各スジ欠陥毎に設定された近似直線の方向がラビング処理方向に対して所定範囲内にあり、かつ、各スジ欠陥毎に算出された直線度が所定の閾値以上であるスジ欠陥をラビングスジ欠陥と判定する欠陥種別判定工程と、を備えていることが好ましい。
【0010】
本発明では、2値化工程において、例えば各画素の輝度値を所定の閾値と比較し、閾値を超えている画素を「1」、閾値以下の画素を「0」とすることで2値化すれば、「1」とされた欠陥候補の画素部分と、「0」とされた非欠陥候補の画素部分とを明確に分離できる。従って、次の識別番号付与工程(ラベリング工程)において、「1」とされた画素の8近傍に同じ「1」の画素が存在していれば同じ識別番号を付与し、この欠陥部分と離れたスジ欠陥の画素には他の識別番号を付与していけば、連続するスジ欠陥毎、つまりひとまとまりのスジ欠陥毎に同じ識別番号が付与されるため、識別番号によって各スジ欠陥を容易に区別できる。
さらに、細線化工程により、欠陥画素を欠陥幅が1画素となるまで細線化することができるので、近似直線設定工程において、最小二乗法などを用いて容易に近似直線を設定することができる。また、近似直線の方向とラビング処理の方向とを、例えば基準方向に対する角度でそれぞれ表し、ラビング処理の方向(角度)に対して近似直線の方向(角度)が所定範囲内であるか否かでスジ欠陥がラビング処理方向に沿って形成されているかを容易に判定できる。さらに、近似直線の回帰係数からスジ欠陥の直線度を算出でき、その直線度が所定の閾値以上であればそのスジ欠陥がほぼ直線の欠陥であるかを容易に判定できる。従って、欠陥種別判定手段において、通常のスジ欠陥とラビングスジ欠陥とを容易に判別できる。
これらの各工程を有する欠陥分別処理工程を用いれば、撮像画像に対して所定の画像処理を行うことでラビングスジ欠陥を容易にかつ自動的に判別でき、欠陥検査の自動化を促進できる。
【0011】
本発明では、前記ラビングスジ欠陥評価処理工程は、前記撮像画像において、前記欠陥分別処理工程でラビングスジ欠陥と判定された欠陥の輝度の平均値を求める欠陥輝度算出工程と、前記撮像画像において、前記欠陥分別処理工程でラビングスジ欠陥と判定された欠陥の面積を求める欠陥面積算出工程と、前記撮像画像において、前記欠陥分別処理工程でラビングスジ欠陥と判定された欠陥の発生領域面積を求める発生領域面積算出工程と、前記発生領域面積、欠陥輝度平均値、発生領域面積に対する欠陥面積によって求められる発生領域内密度の3種類の特徴値に基づいて欠陥ランクを評価する欠陥ランク評価工程と、を備えていることが好ましい。
【0012】
ここで、発生領域面積とは、ラビングスジ欠陥が発生している部分の面積を意味し、具体的には、各ラビングスジ欠陥の端点を結ぶエリアの面積で表すことができる。
本発明では、欠陥輝度算出工程および欠陥面積算出工程により、表示パネル内でラビングスジ欠陥と判定された画素の輝度平均値および欠陥面積を求め、発生領域面積算出工程でラビングスジ欠陥の発生領域面積を求め、欠陥ランク評価工程では、発生領域面積、欠陥輝度平均値、発生領域内密度の3種類の特徴値に基づいて欠陥ランクを評価しているので、検査員の感性に合わせた欠陥評価を行うことができる。
すなわち、ラビングスジ欠陥は、表示パネルにおいてラビングスジ欠陥が広いエリアで発生しているのか否か、つまり発生領域面積と、その発生エリア内でどの程度の密度で発生しているのか否か、つまり発生領域内密度と、ラビングスジ欠陥の輝度値がどの程度であるかによって、目視検査を行う検査員に対する印象が左右され、欠陥判定に影響する。従って、これらの3つの特徴値に関して適宜閾値を設定すれば、検査員の感性に合わせた定量的な欠陥評価を自動的に行うことができ、欠陥検査の自動化をより促進できる。
【0013】
本発明において、スジ欠陥強調処理工程は、撮像した画像に対してスジ状の欠陥成分を強調するスジ欠陥強調フィルタをかけるスジ欠陥強調フィルタ処理工程を有し、前記スジ欠陥強調フィルタは、欠陥検出領域に対して所定の係数が設定された欠陥検出領域用フィルタと、前記欠陥検出領域の外周部の2つの特定領域に対して所定の係数がそれぞれ設定された2つの特定領域用フィルタとを有するベースフィルタを、スジ欠陥の強調方向に複数並べて構成され、前記スジ欠陥強調フィルタ処理工程は、前記画像に対して各ベースフィルタの前記欠陥検出領域用フィルタおよび前記特定領域用フィルタをかけて畳み込み演算をそれぞれ行い、各演算結果に基づいて各ベースフィルタ毎の検出結果を算出する工程と、ベースフィルタ毎の検出結果のメディアン値をスジ欠陥の検出値とする工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、ベースフィルタをスジ状欠陥の強調方向に複数個並べたスジ欠陥強調フィルタを用い、各ベースフィルタの検出値のメディアン値を検出値としているので、スジ欠陥強調フィルタの検出方向の長さの約半分以上の長さを有するスジ欠陥のみを検出でき、それ以下の長さの短い欠陥、例えば、輝点や黒点等の点状の欠陥の検出を確実に排除できる。従って、スジ欠陥(線状欠陥)のみを高精度に検出できる。
また、特許文献1のように、強調係数の周囲にマイナスの係数を有する線強調フィルタを使用すると、特許文献1の図4にも示すように、強調される対象の周辺部分に出力が反転した部分が現れてしまい、欠陥ではない部分を欠陥として判断してしまうなどの問題がある。これに対し、本発明では、マイナスの係数が無いスジ欠陥強調フィルタを用いているので、出力が反転した部分が発生することを防止でき、欠陥でない部分が検出されてしまうことを確実に防止できる。
【0015】
本発明は、表示パネルによって表示される画像内に存在するラビングスジ欠陥を検出する表示パネルの検査装置であって、前記表示パネルによる表示画像を撮像した撮像画像に対してスジ状の欠陥成分を強調するスジ欠陥強調手段と、前記スジ欠陥強調手段において強調された画像に基づいて、スジ欠陥とラビングスジ欠陥とを分別する欠陥分別手段と、前記欠陥分別手段においてラビングスジ欠陥と分別された欠陥を評価するラビングスジ欠陥評価手段と、を備え、前記欠陥分別手段は、スジ欠陥強調手段で強調された各スジ欠陥が、ほぼ直線状の欠陥であり、かつ、スジ欠陥の形成方向がそのパネルに対してラビング処理された方向にほぼ一致する場合にはラビングスジ欠陥と判別し、それ以外の場合にはスジ欠陥と判別することを特徴とする。
本発明においても、前記検査方法と同じ作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の表示パネル検査装置に係る第1実施形態について説明する。
図1は、表示パネル検査装置100の全体構成図である。なお、以下の説明において、検査対象を液晶ライトバルブ112とする例について説明する。
表示パネル検査装置100は、検査対象となる液晶ライトバルブ112を内蔵して画像を投影する画像投影手段110と、液晶ライトバルブ112を駆動するパターンジェネレータ120と、画像投影手段110から投射される画像を映写するスクリーン134を有する映写部130と、スクリーン134に映写された画像を撮像するCCDカメラ(撮像手段)140と、CCDカメラ140で撮像された画像データを画像処理するとともに液晶ライトバルブ112のランク判定を行う演算処理部200と、を備えている。
【0017】
画像投影手段110は、光源111と、パターンジェネレータ120により駆動され光源111からの光を変調する液晶ライトバルブ(表示パネル)112と、液晶ライトバルブ112からの光を集光して投射する投射レンズ113と、投射レンズ113からの光を
スクリーン134に向けて反射するミラー114と、を備えている。
液晶ライトバルブ112は、画素ごとに液晶セルを備える液晶パネルであり、液晶ライトバルブ112に不良があった場合、映写された画像にスジ状欠陥等の表示不良が生じることになる。
なお、この画像投影手段110は、例えば、プロジェクタ等の投射型画像表示デバイスを模したものである。
【0018】
パターンジェネレータ120は、液晶ライトバルブ112の各液晶セルを駆動する各スイッチング素子に駆動信号を印加して液晶ライトバルブ112を所定パターンで駆動する。
ここで、画像表示検査を行うにあたっては、総ての表示画素が同じ入力レベルで同じ輝度を示すかを検査するところ、パターンジェネレータ120は、総ての液晶セルを同じ入力レベルで駆動する。また、スジ状欠陥は一定輝度から明るい又は暗い状態で現れるため、輝度レベルを表現できるおよそ中間値(8ビットであれば128くらい)になるよう駆動する。
【0019】
映写部130は、暗ボックス131と、この暗ボックス131内に設けられたスクリーン134と、を備える。そして、暗ボックス131は、画像投影手段110からの光が入射される開口部132と、CCDカメラ140でスクリーン134上の画像を撮像するための開口部133と、を有する。
【0020】
CCDカメラ140は、スクリーン134上の投射された画像を撮像して、撮像した画像データを演算処理部200に出力する。
ここで、CCDカメラ140にて撮像された画像データに基づいてスジ状欠陥を検出するので、CCDカメラ140は液晶ライトバルブ112の階調数を超える階調数で画像を撮像する機能を有する必要がある。
例えば、液晶ライトバルブ112で256階調が表現されるとき、CCDカメラ140の画像データは、黒を“0”、白を“4095”とする12ビットデータの階調数を有する。
【0021】
図2は、演算処理部の構成を示すブロック図である。
演算処理部200は、CPU(中央処理装置)と所定のメモリ(記憶装置)とで構成され、表示パネル検査プログラムが組み込まれることにより、図2に示されるように、スジ欠陥強調手段300と、欠陥分別手段400と、ラビングスジ欠陥評価手段500と、しての各機能を実現する。
ここで、欠陥分別手段400は、2値化処理手段410と、識別番号付与手段420と、細線化手段430と、近似直線設定手段440と、欠陥種別判定手段450と、を備える。
また、ラビングスジ欠陥評価手段500は、輝度算出手段510、欠陥面積算出手段520、端点検出手段530、発生領域面積算出手段540、発生領域内密度算出手段550、欠陥ランク評価手段560と、を備える。
なお、これら各手段の動作については、図3、図6、図15のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
次に、第1実施形態に係る表示パネル検査方法について、図3、図6、図15のフローチャートを参照して説明する。
図3は、表示パネル検査方法の手順を示すフローチャートである。
表示パネル検査方法は、液晶ライトバルブ112による表示画像に存在するスジ欠陥を強調するスジ欠陥強調処理工程(ST100)と、スジ欠陥強調処理工程(ST100)にて強調されたスジ欠陥のうち、ラビングスジ欠陥を分別する欠陥分別処理工程(ST200)と、欠陥分別処理工程(ST200)で分別されたラビングスジ欠陥を評価してランク判定を行うラビングスジ欠陥評価処理工程(ST300)と、を備えている。
【0023】
まず、スジ状欠陥検出工程(ST100)について簡単に説明する。
ここで、スジ状欠陥とは、表示画面上に現れる細長いスジ状の欠陥701,702であり(図4参照)、周囲よりもスジの部分の輝度が低い黒スジ欠陥と、周囲よりもスジの部分の輝度が高い白スジ欠陥と、がある。本第1実施形態の表示パネル検査方法では、黒スジ欠陥に対しても白スジ欠陥に対しても同様に適用できるので、以下の説明においては特に必要がある場合を除いて区別しない。
【0024】
スジ状欠陥検出工程(ST100)を行うにあたって、まず、図4に示すように、スジ状欠陥の検出を行う対象となる検査画像(画像データ)700を取得する。この際、検査対象となる液晶ライトバルブ112を画像投影手段110にセットして光源111により液晶ライトバルブ112を照明する。そして、パターンジェネレータ120から所定の駆動電圧を液晶ライトバルブ112に印加する。すると、液晶ライトバルブ112の各液晶セルが駆動されて照明の透過率が制御される。液晶ライトバルブ112からの光が投射レンズ113およびミラー114を介してスクリーン134に投影されると、スクリーン134に画像が映写される。このスクリーン134に映写された画像がCCDカメラ140で撮像され、検査対象の画像データ700が取得される。CCDカメラ140からの画像は演算処理部200に送られる。取得された画像データ700に対し、演算処理部200のスジ欠陥強調手段300においてスジ欠陥の強調処理が行われる。
【0025】
取得された画像データ700に対して、まず、前処理として、CCDカメラ140の出力値から各画素の輝度値が求められ、さらに、背景差分やエリア抽出などが行われる。続いて、スジ状欠陥検出フィルタ600によるスジ欠陥の検出が行われる。
【0026】
図5にスジ状欠陥検出フィルタ600の一例を示す。
なお、ここでは、画面内で縦方向に延びるスジ状欠陥を検出する例について説明する。
スジ状欠陥検出フィルタ600は、着目画素の周囲において数画素×数画素(例えば7×7)の領域を有し、さらに、左側、中央部、右側で3分割されたうえで、左側の2列だけに重み付けされた左側強調フィルタ610と、中央部の3列だけに重みづけされた中央強調フィルタ620と、右側の2列だけに重み付けされた右側強調フィルタ630と、を備えて構成される。そして、中央強調フィルタ620は、左側強調フィルタ610および右側強調フィルタ630に対して2倍の重み付けがされている。
【0027】
このようなスジ状欠陥検出フィルタ600(左側強調フィルタ610、中央強調フィルタ620、右側強調フィルタ630)を画像データの7×7画素サイズにかけて、それぞれのフィルタ610、620、630において畳み込み演算を行う。すると、スジ状の欠陥成分が強調される。
【0028】
さらに、このスジ状欠陥検出フィルタを上段、中段、下段に分割してそれぞれ重み付けしたフィルタを用いれば、横方向に延びるスジ状欠陥が強調され、また、中央強調フィルタ、左側強調フィルタおよび右側強調フィルタをそれぞれ45度回転させたフィルタを用意すれば、斜め方向に伸びるスジ状欠陥が強調される。
このようなスジ状欠陥検出フィルタ処理を画像全体に行うことによって、スジ状の欠陥成分が強調された画像が得られる。
【0029】
次に、演算処理部200の欠陥分別手段400により、スジ欠陥が強調された画像を処理して欠陥を分別する欠陥分別処理工程(ST200)が実行される。
欠陥分別処理工程(ST200)は、スジ状欠陥が強調された画像に対して、スジ欠陥とラビングスジ欠陥を分離する処理を行う。この2種類の欠陥は、ほぼ同条件の欠陥であっても、検査員による良否判断が異なる為、分けて考える必要がある。例えば、輝度・長さ・幅がほぼ同様である欠陥があった場合でも、ラビングスジ欠陥は限りなく直線で現れるためスジ欠陥と比べると視認しやすい。従って、スジ欠陥とは良否判断が異なり、ラビングスジ欠陥をスジ欠陥と分別する必要がある。
【0030】
この欠陥分別処理工程ST200について、図6のフローチャートを参照して説明する。欠陥分別処理工程ST200が開始されると、まず、欠陥分別手段400の2値化処理手段410により、スジ欠陥が強調された画像を2値化する2値化処理工程が行われる(ST210)。
すなわち、2値化処理手段410は、スジ欠陥が強調された画像から、欠陥部分とそれ以外の部分の二つに分ける。例えば、画素の値(輝度値)が、あらかじめ設定した2値化処理閾値よりも大きい場合は「1」、小さい場合は「0」に値を変更する。その処理を画像全体に対して行なう。
この2値化処理工程ST210により、図7に示すような2値化された画像710が得られる。なお、この2値化画像710においては、スジ欠陥720部分を黒塗りで示している。
【0031】
次に、それぞれのスジ欠陥720に識別番号を付与する識別番号付与工程(ラベリング処理:ST220)が識別番号付与手段420により行われる。この識別番号付与工程ST220では、スジ欠陥720毎にまとめて認識するために識別番号(ラベル番号、欠陥番号)を付ける処理を行う。
すなわち、画面サイズと同じサイズの2次元配列を用意し、これをラベリング空間とする。この空間は、連結欠陥毎に異なった識別番号を振ってゆくために使用する。2値化画像に対して走査してゆき、8近傍内に同じラベル付けを行った画素があるか検索してゆき、該当した場合は連結し、連続する欠陥毎に同じ識別番号を付与する。
【0032】
この識別番号付与工程ST220での処理例を図8,9に基づいて説明する。なお、図8,9には、スジ欠陥720の例示として、第1のスジ欠陥721と、第2のスジ欠陥722とが発生しているものとする。
図8は、スジ状欠陥に識別番号を付与していく過程を説明するための図である。
識別番号付与工程(ST220)にあたって、まず、画像データ(2値化画像)710に直接に識別番号を記録できないので、画像サイズと同等サイズの配列空間を識別番号付与用に用意する(図9参照)。このように用意された配列空間を識別番号付与空間730と称する。
【0033】
2値化画像710(図8)に対して着目画素を中心とする3×3のフィルタ800を左上から順にかけていく(図8参照)。
フィルタ800を左上から順に走査していくと、着目画素がスジ欠陥721の画素にあたる(図8中のA)。
ここで、着目画素を囲む8つの画素をみて、識別番号が付与された画素がないときは未だ識別番号がないスジ状欠陥にあたったということになる。
この場合、現在着目画素が位置している画素に対して新しい番号の付与が行われる。すなわち、識別番号付与空間730(図9)において、着目画素がある画素に対応する配列座標に識別番号“1”を付与する。
【0034】
続いてフィルタ800による走査を継続して行うと、スジ状欠陥のなかで先ほどとは別の画素に着目画素がスジ欠陥721の画素にあたる(図8中のB)。
ここで、着目画素を含む8つの画素をみて、すでに識別番号が付与された画素があるかを確認する。すなわち、識別番号付与空間730の対応座標を調べる。
識別番号が付与された画素が周囲にあるとき、すでに識別番号が付与されたスジ状欠陥であるので、現在着目画素が位置している画素にも同じ番号を付与する。すなわち、識別番号付与空間730(図9)において対応する配列座標に同じ識別番号として“1”を付与する。
【0035】
このようにフィルタ800を順にかけるとともに着目画素の周囲の画素を参照し、一つのスジ状欠陥に含まれる画素については同じ番号を付与していく。
フィルタ800の走査を継続して、着目画素がスジ状欠陥の画素にあたったときに、周囲の画素に識別番号が無ければ、新しいスジ欠陥722にあたったことになる(図8中のC)。そこで、現在着目画素が位置している画素に新たな識別番号を付与することになるが、このとき、先に識別番号“1”を別のスジ欠陥721に付与しているので、区別するために別の番号として例えば識別番号“2”を付与する。
このようにして順にフィルタ走査を行ってスジ欠陥720の画素に識別番号を付与していく。
すると、図9に示されるように、識別番号付与空間730内でスジ状欠陥に対応する座標に識別番号が付与される。
【0036】
次に、2値化画像データ710において、欠陥部分を細線化する細線化工程ST230が細線化手段430により行われる。
細線化工程ST230としては、図形上で近傍に背景を持つ点について端点を削除しないようにしながら、その図形の連結性を損なわない点を削除することによって実現される。その削除条件は図10の8パターンのマッチングフィルタを用いて行っている。
【0037】
すなわち、画像データはすでに2値化されており、スジ欠陥の部分の画素に対して「1」の値が付与されているので、図10に示される各参照パターンを順次画像データ(2値化画像)710にかけることによってスジ欠陥720の輪郭線上の点が検出される。すなわち、2値化画像710の3×3局所領域で、図10のマッチングフィルタに該当する部分は、少なくとも中心画素に対して隣接する2点以上の画素に欠陥部分(値「1」の部分)が存在し、その部分の欠陥幅は1画素以上になっていることになる。従って、図10のマッチングフィルタのパターンに当てはまった場合に、その中心画素の値を「1」から「0」に変更することで、つまり欠陥画素である情報を削除することで、スジ欠陥部分の輪郭線の点が順次削除され、各スジ欠陥は線幅が一画素になるまで細線化される。
【0038】
この細線化されたスジ欠陥の例を図11に示す。なお、図10中の各参照パターンにおいて、「*」は1でも0でもよいという意味である。
【0039】
次に、スジ欠陥の近似直線設定工程ST240が、近似直線設定手段440により行われる。
近似直線設定手段440は、細線化された画像と、前記ラベリング空間730の情報から、図12に示すように、各欠陥候補毎に最小二乗法を用いて直線近似線を描画する。図12においては、網掛け部分が欠陥部750であり、この欠陥部750に沿って引かれた直線が求められた近似直線751となる。
【0040】
そして、近似直線設定手段440は、図13に示すように、近似直線751の式から求められるa、bの値を使い、角度θを算出する。角度θを算出するのは、本実施形態では、近似直線751の方向(延長方向)を、予め設定された基準方向(図13において、上下方向)に対する角度θで表すようにしたためである。角度θは、具体的には次の式1を用いて算出する。
【0041】
【数1】

【0042】
また、近似直線設定手段440は、近似直線751から回帰係数(R乗値)を求める。ラビング処理は、ローラーの回転とウェハの移動によって一定方向にのみ摩擦される。それにより、出現するラビングスジ欠陥は直線状に現れる事になる。そこで、先程算出した近似直線751と欠陥候補座標との回帰係数を求めることで、直線か否かを判断できる。回帰係数の算出式は式2にて求められる。
【0043】
【数2】

【0044】
次に、欠陥種別判定工程ST250が欠陥種別判定手段450により行われる。
ラビング処理は、ウェハ(液晶パネルの配向膜)に対して決められた方向(この方向は液晶パネルの製品等によって違いがある)で行なわれているため、ラビングスジ欠陥は、その方向に沿った直線状の欠陥となって現れることになる。なお、ラビング処理の方向も、前記近似直線751の方向と同じく、基準方向に対する角度で表している。
【0045】
そこで、欠陥種別判定手段450は、図14に示すように、ラビング処理の方向(角度:例えば5°)を基準として所定の角度範囲(例えば5°±2°)を判定閾値として設定し、スジ欠陥候補の方向(近似直線751の角度θ)がラビング処理の方向とほぼ同一になるか判断している。また、回帰係数(直線度)Rは各欠陥候補が直線上に配置されていれば高い値になるため、この係数が所定の閾値(例えば0.94)以上であるか否かで直線状の欠陥であるか否かを判断している。
すなわち、ラベリングされた各欠陥毎に算出された角度θと直線度Rを、予め作成してある判断閾値と比較することにより、スジ欠陥かラビングスジ欠陥かを判定する。
本実施形態では、ラビング処理方向が角度5度であるため、5度±2度の角度であり、かつ、直線度Rが閾値0.94以上である場合には、ラビングスジ欠陥であると判定し、それ以外の場合にはスジ欠陥と判定している。
【0046】
以上により、図3に示す欠陥分別処理工程ST200が終了する。これにより、例えば、図4に示す撮像画像を処理した場合、左側の5つのスジ欠陥はラビングスジ欠陥701と判定され、右側の2つのスジ欠陥は通常のスジ欠陥702と判定されることになる。
【0047】
次に、演算処理部200は、ラビングスジ欠陥評価手段500を用いてラビングスジ欠陥評価処理工程ST300を実行する。
従来、ラビングスジ欠陥は検査員が目視検査を行ってランク付けして評価していた。本実施形態では、前記欠陥分別処理工程ST200によってラビングスジ欠陥を自動的に検出できるが、検査を完全に自動化するためには、検出したラビングスジ欠陥を検査員の感性に合わせて自動的にランク付け評価できるようにすることが望ましい。
そこで、本実施形態では、ラビングスジ欠陥評価処理工程ST300によって、検査員の感性に合わせた欠陥ランク評価を自動的に行うようにしている。
【0048】
このため、ラビングスジ欠陥評価手段500は、図15の処理フローに従って欠陥ランク評価を行っている。
まず、ラビングスジ欠陥評価手段500の輝度算出手段510により、ラビングスジ欠陥部分の輝度データを選択し、その輝度データを平均して検査対象の表示パネルにおけるラビングスジ欠陥の輝度データとする輝度算出工程が行われる(ST310)。
なお、ラビングスジ欠陥部分の輝度データは、識別番号付与手段420により形成されたラベリング空間730のうち、欠陥種別判定手段450でラビングスジ欠陥と判定された識別番号部分の座標を、元の撮像画像にマスクし、そのマスク部分の各座標の輝度値を平均して算出すればよい。
【0049】
次に、欠陥面積算出手段520により、ラビングスジ欠陥部分の面積を算出する欠陥面積算出工程が行われる(ST320)。
具体的には、欠陥面積算出手段520は、識別番号付与手段420により形成されたラベリング空間のうち、欠陥種別判定手段450でラビングスジ欠陥と判定された識別番号部分の座標数を数え、その合計値をラビングスジ欠陥の欠陥面積としている。
【0050】
次に、端点検出手段530により、ラビングスジ欠陥の端点を検出する端点検出工程が行われる(ST330)。
具体的には、端点検出手段530は、細線化手段430で細線化された画像に対して、図16に示す8パターンのマッチングフィルタを適用し、ラビングスジ欠陥の端点を探し出す。細線化された画像では、ラビングスジ欠陥の幅は1画素となっているので、その端点は、図16の縦横斜めのパターンに対して必ず合致することになる。従って、このパターンに合致する座標がラビングスジ欠陥の端点であることが検出される。
このため、端点検出手段530は、図16のパターンの何れかに合致した場合、前記ラベリング空間の同じ座標を確認し、ラベル番号とX,Y座標を保存して検出した端点の情報を記憶しておく。
【0051】
次に、発生領域面積算出手段540により、ラビングスジ欠陥が発生している領域の面積を算出する発生領域面積算出工程が行われる(ST340)。
具体的には、発生領域面積算出手段540は、図17に示すように、端点検出手段530で検出されたラビングスジ欠陥の端点座標情報(図17の○で示された部分)に基づき、ラビングスジ欠陥がどのくらいの領域に渡って発生されているのかを表す発生領域面積(図17の網掛け部分であり、ラビングスジ欠陥の各端点を結んだ領域の面積)を算出する。面積Sの算出方法は、適宜な方法を利用すればよいが、例えば、式3のように、多角形の頂点の各座標を用いた公式などを利用すればよい。なお、式3において、多角形はn個の頂点を有し、n個の頂点の各座標を(X,Y)とする。但し、Xn+1=X,Yn+1=Yとする。
【0052】
【数3】

【0053】
次に、発生領域内密度算出手段550により、ラビングスジ欠陥の発生領域内密度を算出する発生領域内密度算出工程が行われる(ST350)。
具体的には、発生領域内密度算出手段550は、欠陥面積算出手段520で算出されたラビングスジ欠陥の面積を、発生領域面積算出手段540で算出された発生領域面積Sで割って発生領域内密度を算出している。
すなわち、発生領域内密度=ラビングスジ欠陥面積/発生領域面積である。
【0054】
次に、欠陥ランク評価手段560により、ラビングスジ欠陥を評価する欠陥ランク評価工程が行われる(ST360)。
欠陥ランク評価手段560は、輝度算出手段510で算出された輝度値、発生領域面積算出手段540で算出された発生領域面積、発生領域内密度算出手段550で算出された発生領域内密度の3つの特徴値を、図18に示すように、それぞれの特徴値毎に設定された閾値と比較してそのパネルの良否判定を行っている。すなわち、3つの特徴値から作成された閾値をグラフに表すと図18のようになり、検査対象のパネルの3つの特徴値が閾値を超えていれば良品と判定され、閾値以下であれば不良品と判定されている。
なお、欠陥ランク評価手段560としては、良否のみを判定するものに限らず、各特徴値に対して複数の閾値を設定し、例えば、良品の場合でもAランクからDランクまでの複数のランクで評価するようにしてもよい。
【0055】
ラビングスジ欠陥評価処理工程ST300の終了により液晶ライトバルブ112の検査は終了し、良品判定された液晶ライトバルブ112は製品として出荷される。また、不良品と判定された場合には、必要に応じてラビング処理の見直しを行い、不良品発生率を低減するように対応すればよい。
【0056】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)演算処理部200に設けた欠陥分別手段400により、各スジ欠陥の方向(角度)および直線度を求め、その方向がラビング処理の方向にほぼ沿っており、かつ、直線度が設定閾値以上であってほぼ直線状である場合に、ラビングスジ欠陥であると判定しているので、通常のスジ欠陥とラビングスジ欠陥とを確実に判別することができ、かつ、ウェーブレット変換を利用した場合のように、本数、欠陥幅、長さ、間隔がばらついているラビングスジ欠陥であっても確実に検出することができる。
従って、液晶パネル等の表示デバイス(表示パネル)の画面に存在するラビングスジ欠陥を、高精度にかつ自動的に検出することができる。
【0057】
(2)また、ラビングスジ欠陥評価手段500を設けて欠陥ランクを評価しているので、ラビングスジ欠陥を定量的に評価することができ、不良品を確実にかつ自動的に判定できる。
【0058】
(3)さらに、ラビングスジ欠陥評価手段500では、ラビングスジ欠陥の輝度値、欠陥の発生領域面積、発生領域内密度の3つの特徴値に基づいて欠陥ランク評価を行っているので、検査員の感性に合わせた欠陥評価を行うことができる。すなわち、ラビングスジ欠陥を検査員が目視検査する場合、欠陥部分の輝度値のほか、欠陥が形成されている領域の面積や、その領域内の欠陥密度が、欠陥評価に影響する。これに対し、本実施形態では、前記3つの特徴値に基づいて欠陥ランクを評価しているので、検査員が目視検査したとすれば不良品と判断するものを不良品と判定でき、検査員の感性と同様の評価を行うことができる。
【0059】
(4)欠陥分別処理工程ST200において、識別番号付与手段420による識別番号付与工程ST220を行っているので、連続するひとまとまりのスジ欠陥を容易に判別することができる。このため、ラビングスジ欠陥評価手段500によるラビングスジ欠陥評価処理工程ST300を行う際に、ラビングスジ欠陥部分を前記ラベリング空間730における識別番号に基づいて容易に参照できるので、輝度算出手段510による輝度算出処理や、欠陥面積算出手段520による欠陥面積算出処理を容易に行うことができる。
【0060】
(5)欠陥分別処理工程ST200において、細線化手段430による細線化工程ST230を行ってスジ欠陥を細線化しているので、近似直線設定手段440による近似直線の設定(描画)や、端点検出手段530による端点検出を簡単に行うことができる。
【0061】
(6)スジ欠陥強調処理工程ST100では、図5に示す3種類のフィルタ610、620、630を用いてスジ欠陥を強調しているので、マイナスの係数を有するアンシャープマスキングを使用した場合のように、出力反転部が生じることがない。このため、スジ欠陥部分を精度よく強調でき、ラビングスジ欠陥も高精度に検出できる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、前記第1実施形態とは、スジ欠陥強調手段300によるスジ欠陥強調処理工程ST100が異なり、他の欠陥分別手段400による欠陥分別処理工程ST200や、ラビングスジ欠陥評価手段500によるラビングスジ欠陥評価処理工程ST300は同一であるため、説明を省略する。
【0063】
本実施形態ではスジ欠陥を強調するために用いるフィルタとして、ラビング処理の方向に合わせたフィルタを利用できるようにしたものである。すなわち、第1実施形態では、縦、横、斜め45°、斜め−45°の各方向のスジ状欠陥検出フィルタ600を用いてスジ欠陥を強調していたが、本実施形態では、ラビング処理方向に合わせたスジ欠陥強調フィルタを用意して適用するものである。
【0064】
まず、本実施形態におけるスジ欠陥強調フィルタの作成方法に関し、説明する。
本実施形態では、図19に示すように、基準となる3種類のフィルタが用意されている。各フィルタは、縦9個×横9個(9×9)の領域を備え、図19(A)に示す特定領域用基準フィルタFAは、左から1〜3列で上から4〜6行の9個の領域に係数「1」が設定され、他の領域は係数「0」が設定されている。同様に、図19(B)に示す欠陥検出領域用基準フィルタFBは、左から4〜6列、上から4〜6行の9個の領域のみ係数「2」が設定され、他の領域は係数「0」が設定されている。また、図19(C)に示す特定領域用基準フィルタFCは、左から7〜9列、上から4〜6行の9個の領域のみ係数「1」が設定され、他の領域は係数「0」が設定されている。
なお、本実施形態ではフィルタを構成する各成分(係数)の値は整数であったが、実数(浮動小数点数)を用いてもよい。
【0065】
本実施形態では、この3つの基準フィルタを組み合わせてベースフィルタを構成し、このベースフィルタを筋状欠陥検出方向に並べて筋状欠陥検出フィルタ(スジ欠陥強調フィルタ)Fを構成する。そして、図19の各基準フィルタFA〜FCは、係数が「2」とされた欠陥検出領域用基準フィルタFBの左右に特定領域用基準フィルタFA,FCが配置されるため、0°つまり縦方向の筋状欠陥を検出する際のベースフィルタとなる。
【0066】
0°以外の角度の筋状欠陥を検出するフィルタは、前記基準フィルタFA〜FCに基づいて作成している。なお、本実施形態では、図20に示すように、縦(垂直)方向の線成分を協調するフィルタ、つまり縦方向の筋状欠陥を検出するフィルタを0°の角度の線を強調するフィルタ(縦方向の筋状欠陥検出フィルタ)と定義する。そして、この線を右回りさせる方向(図20の矢印方向)をプラス方向と設定する。本実施形態ではこのように設定するが、同一の処理系で固定しておけば、例えば横(水平)方向を0°としても、他の任意の角度を0°としても特に問題はない。また、回転の方向のプラスマイナスについても限定するものではなく、左回りをプラス方向に設定してもよい。
【0067】
次に、本実施形態において、各角度毎のフィルタの作成方法について説明する。基準フィルタは、前述したように、図19に示す基準フィルタFA〜FCである。基準フィルタFA〜FCは、基準フィルタFBの係数「2」の部分に白スジや黒スジ等の欠陥があり、かつ基準フィルタFA,FCの係数「1」の部分に欠陥がない場合、つまり基準フィルタFBの係数「2」部分の2〜3画素幅の欠陥を主に検出できるように設定されている。
なお、これらの基準フィルタFA〜FCでは、縦方向には2〜3画素分の長さがあれば検出されるため、筋状欠陥の他、輝点や黒点のように局所的な欠陥も検出されるが、後述するように、基準フィルタFA〜FCからなるベースフィルタを複数並べて筋状欠陥検出フィルタFを構成することで、一定長さ以上の筋状欠陥のみを検出できるようにしている。
【0068】
図21は基準フィルタを検出しようとする角度に回転した場合を表す概念図である。図21に基づいてフィルタ作成の演算手順について説明する。
ここで、一般的にコンピュータ等の処理装置で行う画像処理は、離散的なデータを扱っている。例えば画像処理で用いる画像データを構成する数値は撮像素子の各ポイント(点)に対応する値であり、通常、エリア(領域)的な情報は含まれない。これはフィルタも同様である。これを本実施形態では、フィルタの各成分が有効となるエリアを有するものと概念的にみなす。本実施形態で用いる基準フィルタでは、9×9の正方形のエリアで構成されているものとし、各エリア内で、各成分の値を持っているものとみなす。各エリアについては2次元の座標値で表す(水平方向をX方向、垂直方向をY方向とする)。
【0069】
まず、新たに作成する角度フィルタで検出しようとする線成分(筋状欠陥)の角度を決定する。通常、ラビング処理の方向(角度)に決定すればよい。ここでは約10゜の線成分を検出するものとしている。そして、図21のように基準フィルタをその角度で回転させる。図21においては、回転後の基準フィルタ(以下、回転フィルタという)は点線で表している。実線は、新たな角度フィルタを構成するエリア情報で、本実施の形態では回転前の基準フィルタの座標系と同じものを使用している。
【0070】
ここで、新たな角度フィルタのサイズは、回転前の基準フィルタのサイズより大きいものとなっているが、これはフィルタを回転させることにより、新しく作成されるフィルタは、基準フィルタに比べ、最大約1.4倍の大きさになる(本実施の形態のように9×9のサイズの基準フィルタでは最大13×13のサイズのフィルタになる)ためで、新たな角度フィルタを構成するサイズについては、その分を考慮して用意しておく。実際には、メモリ等、ハードウェア資源の節約等の関係から、用意する新たなフィルタの座標系(座標)は有限となるが、なるべく余裕をもって設けておく方がよい。
なお、本実施形態では、各基準フィルタFA,FCは、4〜6列のみに係数「1」が設定され、他は係数0である。従って、新たな角度フィルタは、基準フィルタFA〜FCを回転させた際に、前記係数「1」部分が影響するサイズであればよく、図21に示すように、11×11のサイズのフィルタとすればよい。
【0071】
図22は図21の一部を拡大した図である。図22では、図21において丸で囲った部分(回転した基準フィルタのエリア(座標)(4行1列、以下4,1と記載する)付近の位置)について拡大している。図22に示すように、基準フィルタの(4,1)成分の数値(係数)は「1」である。次に、回転した基準フィルタのエリアを新たな角度フィルタの座標系(以下、新たな座標系という)へ概念的に投影すると、回転した基準フィルタの各成分は、新たな座標系に構成されたそれぞれのエリアによって分割される。その分割されたエリアの面積の割合(以下、面積割合という)を計算する(図23)。回転した基準フィルタの(4,1)成分は、それぞれ新たな角度フィルタのエリアにより52%、25%、16%及び7%の面積割合で4分割される。さらに、計算した面積割合で基準フィルタの成分の値を分割する(図24)。ここでは、基準フィルタの成分の値は「1」であるため、面積割合を掛けると分割エリアの面積の大きい順から「0.52,0.25,0.16,0.07」となる。
【0072】
図25は新たな角度フィルタの成分の数値算出方法を表す概念図である。上記のような基準フィルタの各成分の分割を基準フィルタの全てのエリアに対して行い、新たな座標系で構成されるそれぞれのエリアにおいて、そのエリア内に含まれる分割エリアの算出された数値をそれぞれ加算する(図25(A))。このようにして算出された数値が、検出対象となる所望の角度を成す線成分を適切に検出する新たな角度フィルタの成分の値となる(図25(B))。例えば、図25の例では、新たな角度フィルタの領域に含まれる分割エリアの数値は、0.52と、0であるため、新たな角度フィルタの成分はこれらの数値を加算した「0.52」となる。
【0073】
図26は、特定領域用基準フィルタFAを10゜回転して作成した特定領域用角度フィルタFA10を表す図である。ここで、図26のフィルタの各成分の値は、一般的なアルゴリズムであるモンテカルロ法を利用して算出しており、回転した基準フィルタと新たな座標系に作られたそれぞれのエリアによってできる分割エリアの面積割合を乱数を用いて算出した上で、各成分の値を計算したものである。本実施の形態ではモンテカルロ法を利用しているが、分割エリアの面積割合の算出方法はこれに限定するものではなく、例えば全てのエリアについて座表計算に基づいて面積を計算して求めても良い。
【0074】
基準フィルタFB,FCについても、同様の計算を行い、欠陥検出領域用角度フィルタFB10、特定領域用基準フィルタFC10を作成する。
【0075】
次に、本実施形態における各画像に対するフィルタ処理に関し、0°フィルタを例に説明する。つまり、ラビング処理が0度方向(図21におけるY軸方向)であった場合のフィルタ処理である。
0°フィルタは、図27〜29にも示すように、ベースフィルタを構成する3種類の基準フィルタ(縦線検出フィルタ)FA〜FCを備えている。この3つの縦線検出フィルタは、画像の着目する画素周辺を含む数画素×数画素(例えば9×9画素)サイズと同じ大きさの領域にそれぞれ形成されているが、その領域を図27(B)、図28(B)、図29(B)に示すように、3×3画素毎に9分割し、所定の分割領域のみに重み付けして構成されている。すなわち、縦線検出フィルタは、上下方向中間部分の左側の分割領域だけを重み付けした左側強調フィルタ(特定領域用フィルタ)FA、中央の分割領域だけを重み付けした中央強調フィルタ(欠陥検出領域用フィルタ)FB、右側の分割領域だけを重み付けした右側強調フィルタ(特定領域用フィルタ)FCの3つからなる。中央強調フィルタFBは左側強調フィルタFA及び右側強調フィルタFCに対して2倍の重み付けがされている。
【0076】
そして、この3つの縦線検出フィルタFA、FB、FCを画像の9×9画素サイズに対してそれぞれかけて畳み込み演算を行うことで、これらの3つの縦線検出フィルタによって構成されるベースフィルタの検出結果を算出するようにされている。
ベースフィルタを用いたフィルタ処理では、画像の9×9画素サイズに対して行った3つの縦線検出フィルタFA、FB、FCによる畳み込み演算の結果が後述する条件1の式を満足するかどうかでスジ欠陥の検出を行う。なお、条件1の式を満足するかどうかでスジ欠陥が検出できる理由は次のとおりである。
【0077】
一般に、例えば9×9画素サイズに対して1つの縦線検出フィルタをかけて畳み込み演算を行い、畳み込み演算によりスジ欠陥が強調されるようにしたものでは、その縦線検出フィルタは左側、中央及び右側と3つの領域に分けたときに、中央を左側及び右側よりも重み付けを強くして、且つ左側及び右側の重み付けをマイナス側に設定して中央にスジ欠陥を検出するようにしている。
【0078】
ところが、左側及び右側の重み付けをマイナス側に設定すると、中央にスジ欠陥を検出するが、スジ欠陥の左側及び右側に本来はないはずのスジ欠陥の成分とは逆方向成分が現れてしまい(白スジ欠陥の場合、黒スジ欠陥の成分)、これを検出してしまうために誤検出が生じてしまい、精度を向上させることができないという欠点があるものであった。
そこで、このような欠点を解消するものが、上述した3つの縦線検出フィルタである左側強調フィルタFA、中央強調フィルタFB及び右側強調フィルタFCを用いて畳み込み演算を行う方法である。
【0079】
この3つの縦線検出フィルタである左側強調フィルタFA、中央強調フィルタFB及び右側強調フィルタFCを用いて畳み込み演算を行う方法では、例えば9×9画素サイズに対して3つの縦線検出フィルタである左側強調フィルタFA、中央強調フィルタFB及び右側強調フィルタFCをそれぞれかけた畳み込み演算の結果FVA、FVB、FVCを比較するものである。
この場合、左側強調フィルタFAは左側の分割領域だけを重み付けし、中央強調フィルタFBは中央の分割領域だけを重み付けし、右側強調フィルタFCは右側の分割領域だけを重み付けしており、いずれの強調フィルタも強調領域以外は重み付けをしておらず、数値としては0である。
【0080】
従って、左側強調フィルタFAと中央強調フィルタFBの畳み込み演算の結果FVA、FVBや、右側強調フィルタFCと中央強調フィルタFBの畳み込み演算の結果FVC、FVBを比較して線欠陥の成分が存在するときにのみ演算結果を算出するため、それらの演算結果に本来はないはずのスジ欠陥の成分とは逆方向成分が現れてしまうことはない。
つまり、畳み込み演算の結果FVA、FVB、FVCをそれぞれ比較すると、9×9画素サイズの中央に白のスジ欠陥があったときには、中央強調フィルタFBの畳み込み演算の結果FVBの数値が高く、左側・右側強調フィルタFA、FCの畳み込み演算の結果FVA、FVCの数値が低いものとして現れる。
【0081】
また、9×9画素サイズの中央に黒スジ欠陥があったときには、中央強調フィルタFBの畳み込み演算の結果FVBの数値が低く、左側・右側強調フィルタFA、FCの畳み込み演算の結果FVA、FVCの数値が高いものとして現れることとなる。
従って、これをスジ欠陥の検出のための条件1とすると、条件1は次の数式で表すことができる。
条件1
白の線状欠陥の検出の場合((FVA×2<FVB)and(FVC×2<FVB))
若しくは
黒の線状欠陥の検出の場合((FVA×2>FVB)and(FVC×2>FVB))
上記条件1で、FVA×2及びFVC×2としたのは、左側強調フィルタFA及び右側強調
FCに対して中央強調フィルタFBの重み付けを2倍にしたからである。
【0082】
そして、上記条件1を満たすときは、次式により検出されたスジ欠陥の平均輝度値を求めることができる。
V=(FVB−(FVA+FVC))/18×α
上記式で、18は中央強調フィルタFBの重み付けをした数値の合計であり、平均輝度値を導き出すために除算する数であり、αは輝度値を検出するための係数である。
また、条件1を満たさない状態のときはFV=0として扱う。
ここで、条件1を満たさない状態のときに、FV=0として扱うのは、白と黒のスジ欠陥だけを検出するためである。
【0083】
そして、算出された平均輝度値FVにオフセット値を加算して、黒スジ欠陥も処理できるようにしている。
すなわち、フィルタをかけた画像は、図30(A)に示すように白スジ欠陥はプラスの値の階調として現れ、黒スジ欠陥はマイナスの値の階調として現れるが、画像処理のフォーマットでは画像データは通常、正の値しかとれないため、そのままでは黒スジ欠陥の成分は0となり、処理した画像データには黒スジ欠陥のデータは存在しないため検出することができない。
そこで、同じ画像から黒スジ欠陥も検出できるように、画面が12bitの4096階調で表されるときにはその半分の2048の値を、フィルタ処理の結果にオフセット値として加える処理を行う。これにより、図30(B)に示すように黒スジのデータもプラスの階調として現れるので、1回のフィルタ処理で白スジと黒スジの欠陥を検出することが可能となる。なお、画像フォーマットが、8bitのグレイスケールの場合、256階調となり、その半分の128の値をフィルタ処理の結果にオフセット値として加える。
【0084】
本実施形態では、図31,32に示すように、このようなベースフィルタを筋状欠陥の検出方向に複数個並べて処理している。
図31において、A1、B1、C1は、各フィルタFA,FB,FCの強調領域部分に対応している。そして、この3つのフィルタFA,FB,FCでベースフィルタF1〜F5が構成され、このベースフィルタを筋状欠陥の検出方向、図31の例では、縦方向に5つ並べて筋状欠陥検出フィルタFが構成されている。
【0085】
この筋状欠陥検出フィルタFは、図32に示すように、画像の9×15の領域の画素に対して適用される。すなわち、筋状欠陥検出フィルタFは、各ベースフィルタF1〜F5毎、つまり(A1,B1,C1)、(A2,B2,C2)、(A3,B3,C3)、(A4,B4,C4)、(A5,B5,C5)を各1セットとして検出処理を行い、5つの検出結果のメディアン値を、筋状欠陥検出フィルタFが適用された画像領域の中心位置つまりB3領域の中央位置の画素の値として画像に格納する。
これを通常のフィルタと同様に、画面内をスキャンしながら全面処理を行うことで、縦方向の筋状欠陥の検出処理を行う。
【0086】
なお、各ベースフィルタの検出結果のメディアン値を筋状欠陥検出フィルタFの検出値としているのは、次の理由からである。
すなわち、筋状欠陥検出フィルタFは、B領域の幅内に納まる筋状欠陥を検出するものであるが、図33に示すように欠陥10がB2,B3の2つの領域内の場合、他の3つの領域B1,B4,B5では欠陥10は検出されない。このため、各ベースフィルタF1〜F5の検出結果のメディアン値は、欠陥10を検出しなかったベースフィルタの結果となる。
一方、図34に示すように、欠陥10が3つのベースフィルタF2〜F4に跨っていれば、メディアン値は欠陥10を検出したベースフィルタの結果となる。
すなわち、メディアン値を検出値とすれば、複数個のベースフィルタF1〜F5のうちの約半分の長さ以上の筋状欠陥10のみが検出されるため、輝点や黒点のように点状の欠陥検出を排除できる。従って、ベースフィルタの数は、検出したい欠陥の長さに応じて設定すればよく、5個に限らず、3個以上であればその数は限定されない。
【0087】
以上は、縦線検出フィルタについての説明であるが、横線検出フィルタ、±10°の斜め線検出フィルタ、±45°の斜め線検出フィルタ等についても、基準フィルタを回転させて各角度用に作成したベースフィルタを、その角度方向に複数個並べ、各ベースフィルタの結果のメディアン値を筋状欠陥検出フィルタFの検出値とすればよい。
例えば、横線検出フィルタは、図35に示すように上側A、中央B及び下側Cと3分割された各横線検出用ベースフィルタを、横方向に複数並べて筋状欠陥検出フィルタF90を構成すればよい。
【0088】
また、+45°斜め線検出フィルタの場合には、図36(A)に示すように、左上側の分割領域だけを重み付けした左上側強調フィルタFA+45、斜め中央の分割領域だけを重み付けした斜め中央強調フィルタFB+45、右下側の分割領域だけを重み付けした右下側強調フィルタFC+45の3つからなるベースフィルタを作成する。そして、図36(B)に示すように、このベースフィルタを+45°方向に複数並べて筋状欠陥検出フィルタF+45を構成すればよい。
なお、図36に示すフィルタは、前述したように、基準フィルタFA〜FCを回転させて構成しており、各成分を分割領域の割合で算出しているため、図36(A)に示すように、各強調フィルタの一部が重なっている。但し、各フィルタは画像に対して個々に独立して適用されるので、フィルタの一部が重なっていても問題無く処理できる。同様に、図36(B)に示す筋状欠陥検出フィルタF+45においても、各フィルタ間に隙間が生じないように、各ベースフィルタ同士が一部重なっているが、各ベースフィルタ毎に処理されているので、問題なく処理できる。
【0089】
−45°斜め線検出フィルタは、図示を略すが、図36の+45°斜め線検出フィルタF+45を左右反転したものと同一である。
さらに、その他の角度方向の筋状欠陥を検出したい場合には、その検出したい角度に対応したフィルタを基準フィルタを元に作成し、そのフィルタを用いて処理すればよい。
この際、検出フィルタの角度は、ラビング工程の処理方向に合わせて設定すればよい。
【0090】
このような本実施形態では、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる上、スジ欠陥強調処理工程ST100において、ラビング工程の処理方向に合わせたフィルタを適用することで、その方向のスジ欠陥を効率的に強調することができ、ラビングスジ欠陥を効率よくかつ高精度に検出することができる。
【0091】
さらに、ベースフィルタを筋状欠陥の検出方向に複数個並べた筋状欠陥検出フィルタFを用い、各ベースフィルタの検出値のメディアン値を検出値としているので、筋状欠陥検出フィルタFの検出方向の長さの約半分以上の長さを有する欠陥のみを検出でき、それ以下の点状の欠陥の検出を確実に排除できる。従って、筋状欠陥(線状欠陥)のみを高精度に検出できる。
【0092】
また、検出方向に並べるベースフィルタの数によって検出可能な筋状欠陥の長さを設定できるので、検出したい筋状欠陥を容易に検出できる。
特に、ベースフィルタの数を奇数個にすれば、半分以上のベースフィルタに跨る欠陥のみが検出されるので、筋状欠陥の検出対象長さを容易に設定できる。
【0093】
さらに、各角度方向のフィルタは、基準フィルタを検出角度に応じて回転させて作成しているので、様々な角度方向の筋状欠陥を検出するためのフィルタを容易に作成でき、様々な角度の筋状欠陥を容易に検出することができる。
特に、本実施形態では、作成される新たなフィルタの各成分について概念的に領域を設定した上で、基準フィルタを所望の角度回転させて新たな座標系に投影し、新たな座標系のエリアにより、回転後の基準フィルタの各エリアがどのような面積割合で分割され、新たな座標系のエリアに含まれるかを判断して、その面積割合に応じて基準フィルタの成分の値を分割し、新たな座標系の各エリア内に含まれる分割エリアの値を加算することで新たなフィルタの成分の値としたフィルタを作成するようにしたので、所望の角度を成している形状が強調されるようなフィルタを容易に作成することができ、且つどの角度を検出するフィルタについても、同じ基準フィルタを基にして、その構成数値のみを使用して作成しているため、角度による検出感度の差を小さくすることができる。しかも、新たなフィルタを構成する各成分の値が、実数値であるので、角度による処理感度(検出感度)の差をさらに小さくすることができ、角度検出精度を向上することができる。そして、このようなフィルタを用いて検出を行った検査装置については、角度に応じて線成分を選択的に強調することができるので、角度成分に応じて閾値の設定等を変更しなければならない処理にも対応することができる。
【0094】
また、筋状欠陥検出フィルタFの各ベースフィルタは、中央領域と2つの周辺領域に対して、特定の係数をかけて求めた輝度の差を求めるものであって、中央領域の輝度と、2つの周辺領域の輝度とを求め、中央領域の輝度が2つの周辺領域の輝度よりも大きいか、小さい場合に、中央領域の輝度と2つの周辺領域の輝度の和との差を求めてスジ欠陥の輝度値として検出し、同時にその画像の階調の半分の値をオフセット値として加算することとしているので、白スジ欠陥の成分とは逆方向成分を誤検出することなく、白スジ欠陥だけでなくコントラストの低い黒スジ欠陥も高精度に検出することができる。
【0095】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
スジ欠陥強調手段300によるスジ欠陥強調処理工程ST100の具体的な方法は、前記各実施形態のものに限らず、スジ欠陥を強調できるものであればよい。
また、前記第2実施形態では、各角度方向のフィルタを基準フィルタを回転させて作成していたが、通常、ラビング工程の方向は各製品毎に決められているので、その方向の角度フィルタを予め直接作成しておいて対応する製品毎に適用してもよい。
【0096】
また、筋状欠陥の検出対象としては、前記のようなTFT素子を用いた液晶ライトバルブに限られるものではなく、液晶を用いたパネルや、それらを使った表示装置、製品の検査にも応用できる。要するに、ラビング工程を行い、ラビングスジ欠陥が発生する可能性がある各種の製品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態における検査装置の構成を示すブロック図。
【図2】演算処理部の構成を示すブロック図。
【図3】欠陥検査手順を説明するフローチャート。
【図4】撮像された画像を示す図。
【図5】スジ状欠陥検出フィルタの一例を示す図。
【図6】欠陥分別処理工程の手順を示すフローチャート。
【図7】撮像画像を2値化した画像データを示す図。
【図8】スジ状欠陥に識別番号を付与していく過程を説明するための図。
【図9】識別番号付与空間においてスジ状欠陥に識別番号を付与した状態を示す図。
【図10】スジ状欠陥の輪郭線上の点を検出するための参照パターン。
【図11】細線化されたスジ状欠陥の例を示す図。
【図12】細線化されたスジ状欠陥の近似直線の例を示す図。
【図13】近似直線の角度を示す図。
【図14】欠陥分別条件および判定欠陥の例を示す図。
【図15】ラビングスジ欠陥評価処理工程の手順を示すフローチャート。
【図16】端点を検出するための参照パターンを示す図。
【図17】ラビングスジ欠陥の発生領域を示す図。
【図18】ラビングスジ欠陥の評価用閾値を示す図。
【図19】本発明の第2実施形態における基準フィルタの例を示す図。
【図20】任意の角度の線の一例を示す図。
【図21】基準フィルタを回転させて角度フィルタを作成する原理を示す説明図。
【図22】図21の一部を拡大した図
【図23】図22において面積割合を示す図。
【図24】面積割合に応じた成分の数値を示す図。
【図25】角度フィルタにおける成分の数値算出を示す図。
【図26】10°回転して作成したフィルタの例を示す図。
【図27】縦線検出フィルタの例を示す図。
【図28】縦線検出フィルタの例を示す図。
【図29】縦線検出フィルタの例を示す図。
【図30】オフセットの有無により階調変化を示すグラフ。
【図31】縦線検出用の筋状欠陥検出フィルタの例を示す図。
【図32】縦線検出用の筋状欠陥検出フィルタを画像に適用した概念図。
【図33】縦線検出用の筋状欠陥検出フィルタでの検出例を示す図。
【図34】縦線検出用の筋状欠陥検出フィルタでの検出例を示す図。
【図35】横線検出用の筋状欠陥検出フィルタの例を示す図。
【図36】+45°検出用の筋状欠陥検出フィルタの例を示す図。
【符号の説明】
【0098】
100…表示パネル検査装置、140…撮像手段であるCCDカメラ、200…演算処理部、300…スジ欠陥強調手段、400…欠陥分別手段、410…2値化処理手段、420…識別番号付与手段、430…細線化手段、440…近似直線設定手段、450…欠陥種別判定手段、500…ラビングスジ欠陥評価手段、510…輝度算出手段、520…欠陥面積算出手段、530…端点検出手段、540…発生領域面積算出手段、550…発生領域内密度算出手段、560…欠陥ランク評価手段、600…スジ状欠陥検出フィルタ、730…識別番号付与空間(ラベリング空間)、751…近似直線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルによって表示される画像内に存在するラビングスジ欠陥を検出する表示パネルの検査方法であって、
前記表示パネルによる表示画像を撮像した撮像画像に対してスジ状の欠陥成分を強調するスジ欠陥強調処理工程と、
前記スジ欠陥強調処理工程において強調された画像に基づいて、スジ欠陥とラビングスジ欠陥とを分別する欠陥分別処理工程と、
前記欠陥分別処理工程においてラビングスジ欠陥と分別された欠陥を評価するラビングスジ欠陥評価処理工程と、を備え、
前記欠陥分別処理工程は、スジ欠陥強調処理工程で強調された各スジ欠陥が、ほぼ直線状の欠陥であり、かつ、スジ欠陥の形成方向がそのパネルに対してラビング処理された方向にほぼ一致する場合にはラビングスジ欠陥と判別し、それ以外の場合にはスジ欠陥と判別する
ことを特徴とする表示パネルの検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表示パネルの検査方法において、
前記欠陥分別処理工程は、
前記スジ欠陥強調処理工程においてスジ状の欠陥が強調された画像の各画素の値を所定の閾値と比較し、欠陥部分とそれ以外の部分とに分けた2値化画像データを作成する2値化工程と、
前記2値化画像データに対して、連続する欠陥部分毎に識別番号を設定する識別番号付与工程と、
前記2値化画像データに対して細線化処理を行う細線化工程と、
前記細線化されたスジ欠陥毎に近似直線を設定し、前記近似直線の方向と、各スジ欠陥の直線度とを算出する近似直線設定工程と、
近似直線設定工程において各スジ欠陥毎に設定された近似直線の方向がラビング処理方向に対して所定範囲内にあり、かつ、各スジ欠陥毎に算出された直線度が所定の閾値以上であるスジ欠陥をラビングスジ欠陥と判定する欠陥種別判定工程と、
を備えていることを特徴とする表示パネルの検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示パネルの検査方法において、
前記ラビングスジ欠陥評価処理工程は、
前記撮像画像において、前記欠陥分別処理工程でラビングスジ欠陥と判定された欠陥の輝度の平均値を求める欠陥輝度算出工程と、
前記撮像画像において、前記欠陥分別処理工程でラビングスジ欠陥と判定された欠陥の面積を求める欠陥面積算出工程と、
前記撮像画像において、前記欠陥分別処理工程でラビングスジ欠陥と判定された欠陥の発生領域面積を求める発生領域面積算出工程と、
前記発生領域面積、欠陥輝度平均値、発生領域面積に対する欠陥面積によって求められる発生領域内密度の3種類の特徴値に基づいて欠陥ランクを評価する欠陥ランク評価工程と、
を備えていることを特徴とする表示パネルの検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の表示パネルの検査方法において、
スジ欠陥強調処理工程は、
撮像した画像に対してスジ状の欠陥成分を強調するスジ欠陥強調フィルタをかけるスジ欠陥強調フィルタ処理工程を有し、
前記スジ欠陥強調フィルタは、欠陥検出領域に対して所定の係数が設定された欠陥検出領域用フィルタと、前記欠陥検出領域の外周部の2つの特定領域に対して所定の係数がそれぞれ設定された2つの特定領域用フィルタとを有するベースフィルタを、スジ欠陥の強調方向に複数並べて構成され、
前記スジ欠陥強調フィルタ処理工程は、前記画像に対して各ベースフィルタの前記欠陥検出領域用フィルタおよび前記特定領域用フィルタをかけて畳み込み演算をそれぞれ行い、各演算結果に基づいて各ベースフィルタ毎の検出結果を算出する工程と、ベースフィルタ毎の検出結果のメディアン値をスジ欠陥の検出値とする工程とを備えることを特徴とする表示パネルの検査方法。
【請求項5】
表示パネルによって表示される画像内に存在するラビングスジ欠陥を検出する表示パネルの検査装置であって、
前記表示パネルによる表示画像を撮像した撮像画像に対してスジ状の欠陥成分を強調するスジ欠陥強調手段と、
前記スジ欠陥強調手段において強調された画像に基づいて、スジ欠陥とラビングスジ欠陥とを分別する欠陥分別手段と、
前記欠陥分別手段においてラビングスジ欠陥と分別された欠陥を評価するラビングスジ欠陥評価手段と、を備え、
前記欠陥分別手段は、スジ欠陥強調手段で強調された各スジ欠陥が、ほぼ直線状の欠陥であり、かつ、スジ欠陥の形成方向がそのパネルに対してラビング処理された方向にほぼ一致する場合にはラビングスジ欠陥と判別し、それ以外の場合にはスジ欠陥と判別する
ことを特徴とする表示パネルの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2007−57705(P2007−57705A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241593(P2005−241593)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】