説明

記憶素子および信号処理回路

【課題】消費電力を抑えることができる記憶素子、当該記憶素子を用いた信号処理回路を提供する。
【解決手段】一対のインバータ(クロックドインバータを含む)を用いた記憶素子内に、データを保持するための容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御するスイッチング素子とを設ける。例えば、容量素子の一方の電極を一対のインバータのいずれかの入力あるいは出力である第1のノードに接続し、他方の電極をスイッチング素子の一方の電極に接続する。スイッチング素子の他方の電極は前記インバータの出力あるいは入力である第2のノードに接続する。ここで、第1のノードの電位と第2のノードの電位は互いに逆の位相である。このような接続により、データ回復時における第1のノードと第2のノードの電位差の絶対値を十分に大きくすることができ、データ回復時のエラーを減らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を用いた記憶素子および信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスシリコンやポリシリコン、微結晶シリコン等を用いたトランジスタは液晶ディスプレイ等の表示装置に使用されてきたが、これを半導体集積回路に利用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、酸化物半導体と呼ばれる、半導体特性を示す金属酸化物に注目が集まっている。金属酸化物は様々な用途に用いられており、例えば、よく知られた金属酸化物である酸化インジウムは、液晶表示装置などで透明電極材料として用いられている。半導体特性を示す金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、このような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域に用いるトランジスタが、既に知られている(特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタでオフ状態のリーク電流(オフ電流)が極めて小さいことを利用して、フリップフロップ回路に記憶されたデータを酸化物半導体を用いたトランジスタと容量素子とで構成された記憶素子に退避させることによりフリップフロップ回路の電源を遮断し、消費電力を節減する技術が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7772053号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0072439号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0193078号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0187410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の半導体記憶装置(以下、単に記憶装置とする)が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータを保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算装置とメインメモリの間に介在しメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として、CPUに設けられている。
【0007】
レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータの書き込みをおこなう必要がある。よって、いずれもインバータやその組み合わせであるフリップフロップ回路を有する記憶素子が用いられる。
【0008】
図2(A)に、特許文献4に記載の記憶素子の一つを例示する。図2(A)に示す記憶素子200は、インバータ201、インバータ202、スイッチング素子203、スイッチング素子204を有する。
【0009】
インバータ201の入力端子への信号INの入力は、スイッチング素子203により制御されている。インバータ201の出力端子の電位は、信号OUTとして、後段の回路に与えられる。また、インバータ201の出力端子はインバータ202の入力端子に接続されており、インバータ202の出力端子は、スイッチング素子204を介してインバータ201の入力端子に接続されている。
【0010】
スイッチング素子203を介して入力された信号INの電位は、スイッチング素子203がオフ、スイッチング素子204がオンになることで、記憶素子200内に保持される。
【0011】
図2(A)に示した記憶素子200の、より具体的な回路構成を、図2(B)に示す。図2(B)に示す記憶素子200は、インバータ201、インバータ202、スイッチング素子203、スイッチング素子204を有しており、これら回路素子の接続構成は図2(A)と同じである。
【0012】
インバータ201は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ207と、Nチャネル型トランジスタ208とを有している。そして、電位VDDが与えられているノードと、電位VSSが与えられているノード間において、Pチャネル型トランジスタ207と、Nチャネル型トランジスタ208とは、直列に接続されている。
【0013】
また、同様に、インバータ202は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ209と、Nチャネル型トランジスタ210とを有している。そして、電位VDDが与えられているノードと、電位VSSが与えられているノード間において、Pチャネル型トランジスタ209と、Nチャネル型トランジスタ210とは、直列に接続されている。
【0014】
図2(B)に示すインバータ201は、Pチャネル型トランジスタ207のゲート電極と、Nチャネル型トランジスタ208のゲート電極に与えられる電位の高さに従って、一方がオフ、他方がオンとなるように動作する。よって、電位VDDが与えられているノードと、電位VSSが与えられているノードとの間の電流は、理想的には0になるはずである。
【0015】
しかし、実際には、オフであってもソースとドレイン間あるいはゲートとソース間、ゲートとドレイン間に僅かな電流(オフ電流)が流れているため、上記ノード間の電流は、完全に0にはならない。インバータ202についても同様の現象が生じるため、記憶素子200には、データの書き込みがおこなわれていない状態でも、消費電力が発生する。
【0016】
例えば、バルクのシリコンを用いて作製されたインバータ(トランジスタのチャネル長160nm)の場合、室温下、ノード間の電圧が約1Vの状態にて、0.1pA程度のオフ電流が生じる。図2(A)および図2(B)に示す記憶素子には、インバータ201とインバータ202の、2つのインバータが設けられているので、0.2pA程度のオフ電流が生じる。そして、記憶素子数が約10個程度であるレジスタの場合、オフ電流はレジスタ全体で2μAとなる。
【0017】
さらに、微細化の進展と共に、ゲート絶縁物も薄膜化しているため、ゲート電流も無視できない大きさとなっている。これらも加わって、レジスタの消費電力はICチップの縮小化とともに増大している。そして、電力の消費による発熱がICチップの温度の上昇を招き、さらに消費電力が増加するという悪循環に陥りつつある。
【0018】
また、SRAMも上記レジスタと同様に、インバータを用いた構成を有しており、トランジスタのオフ電流により電力が消費される。よって、SRAMを用いたキャッシュメモリもレジスタの場合と同様に、データの書き込みがおこなわれていない状態でも、電力を消費する。
【0019】
そこで、消費電力を抑えるため、データの入出力がおこなわれない期間において、記憶装置への電源電位の供給を一時的に停止するという一つの方法が提案されている。上記の構造のレジスタ、キャッシュメモリは、電源電位の供給が途絶えるとデータを消失してしまうため、上記記憶装置の周辺に不揮発性の記憶装置を配置し、上記データをその不揮発性の記憶装置へ一時的に移している。しかし、これらの不揮発性の記憶装置は、主に磁気素子や強誘電体が用いられているため、作製工程が複雑である。
【0020】
また、CPUにおいて長時間の電源停止をおこなう際には、電源停止の前に、記憶装置内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。しかし、それらの外部記憶装置からデータをレジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリに戻すのには時間を要する。よって、ハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置によるデータのバックアップは、消費電力の低減を目的とした短時間(例えば、100μ秒乃至1分)の電源停止には適さない。
【0021】
そこで、特許文献4では、容量素子205と容量用スイッチング素子206とを設け、容量用スイッチング素子206をオンとすることでフリップフロップ回路に記憶されているデータをデータに応じた電荷として、容量素子205に移すこと、容量用スイッチング素子206をオフとした後、フリップフロップ回路の電源を停止すること、および、電源を復帰した後に、容量用スイッチング素子206をオンとすることで、容量素子205に蓄積されていた電荷をフリップフロップ回路の第1のノードN1に供給し、データを回復することが提案されている。
【0022】
容量用スイッチング素子206のチャネル形成領域に酸化物半導体を用いると、オフ電流をバルクシリコンを用いた場合の100万分の1未満に低減できるので、容量素子205に蓄積された電荷を十分な期間保持できる。
【0023】
ところで、近年は回路の微細化と共にトランジスタのしきい値のばらつきが大きくなることも問題となっている。特に、フリップフロップ回路を構成するトランジスタのしきい値のばらつきが大きくなると、フリップフロップ回路が状態を安定して保持できる電圧範囲のばらつきが大きくなり、複数のフリップフロップ回路を集積した場合における安定動作電圧域が狭まる。
【0024】
図2に示される記憶素子において、安定動作電圧域が十分に大きくない場合には、データを回復する際には、第1のノードN1と第2のノードN2の間の電位差の絶対値を十分に大きくすることが好ましい。第1のノードN1の電位と第2のノードN2の電位がともに安定動作電圧域に入らない場合には、データの回復に失敗することがあるからである。
【0025】
上述の課題に鑑み、本発明は、安定してデータを回復できる回路構成を有する記憶素子やそれを用いた信号処理回路の提供を目的の一つとする。特に、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる記憶素子やそれを用いた信号処理回路の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
2つ以上のインバータ(クロックドインバータを含む)を用いた記憶素子において、データを保持するための容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御する容量用スイッチング素子とを設ける。容量素子の一方の電極はインバータのいずれかのノード(第1のノード)に接続し、他方の電極は容量用スイッチング素子のソースあるいはドレインのいずれかに接続する。また、容量用スイッチング素子のドレインあるいはソースは、記憶素子内の第1のノードとは逆の位相を呈するノード(第2のノード)に接続する。
【0027】
上記記憶素子をレジスタ、キャッシュメモリなどを有する信号処理回路に用いる。その際、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いることでオフ電流が著しく小さいトランジスタを作製できる。上記容量用スイッチング素子として、このようなオフ電流が著しく小さいトランジスタを用いて記憶素子や信号処理回路を形成すると消費電力を減らすことができるとともに、データの回復の際のエラーを低減できる。
【0028】
上記容量用スイッチング素子のチャネル形成領域に酸化物半導体を用いる場合、チャネル長を最小加工線幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上とするとよい。あるいはチャネル長を0.2μm以上、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは1μm以上とするとよい。その際、ゲート絶縁物の実効的な厚さ(ゲート絶縁物の物理的な厚さ×酸化物半導体の誘電率/ゲート絶縁物の誘電率)がチャネル長の10%以下であることが好ましい。
【0029】
なお、容量用スイッチング素子に使用する半導体は酸化物半導体に限定されず、容量素子での電荷の保持が目的とする時間、おこなえるのであれば、シリコンやその他の材料であってもよい。例えば、容量素子にデータを保持する時間(容量1fFの容量素子を1Vに充電して、0.9Vまで低下する時間)が1秒であればよいのであれば、オフ電流は0.1fA以下であればよい。
【0030】
シリコンを用いたトランジスタであっても、極めて薄いシリコン膜を用いたトランジスタでは、それ以下のオフ電流のものも報告されているので、それを用いることもできる(特許文献1参照)。また、チャネル長がチャネル幅より十分に大きいトランジスタでもオフ電流を低減できる。
【0031】
一方、容量素子にデータを保持する時間が10年であるのであれば、オフ電流は0.1zA以下であることが求められるので酸化物半導体を用いることが好ましい。同様に、データを保持する温度が100℃以上の場合にも酸化物半導体を用いることが好ましい。
【0032】
容量用スイッチング素子は、インバータの上方に重ねて形成されることが好ましく、容量用スイッチング素子に用いられる酸化物半導体層は、曲がりくねった形状あるいは少なくとも1つの凹部を有する形状とすることで、限られた面積においても上記のチャネル長を実現できる。
【0033】
例えば、上記のレジスタあるいはSRAM等の記憶素子は2つ以上のインバータが組み合わされた回路(フリップフロップ回路等)を有するが、その回路の占有する面積は50F(Fは最小加工線幅)以上であり、通常は100F乃至150Fである。例えば、2つのインバータが組み合わされた回路の占有する面積を50Fとし、その半分の面積(25F)に酸化物半導体を用いた容量用スイッチング素子を設ける場合、チャネル幅をFとすると、チャネル長は25Fとできる。Fを40nmとすると、チャネル長は1μmとなる。
【0034】
また、容量素子もインバータの上方に重ねて形成されることが好ましく、容量用スイッチング素子と同じ層に形成されてもよいし、異なる層に形成してもよい。同じ層に形成すると容量用スイッチング素子のための領域と容量素子のための領域を設ける必要があるが、作製工程を簡略化できる。一方、異なる層に設けると、作製工程は余分に必要であるが、集積度を上げることや、容量素子の誘電体を容量用スイッチング素子のゲート絶縁物と異なるものとすることにより、より容量を高めることも可能である。
【0035】
スイッチング素子のオン抵抗と容量素子の容量は、必要とするスイッチング動作の速さに応じて決定すればよい。電源の停止と回復という目的であればスイッチングに要する時間は、100μ秒以上でもよい。また、スイッチング素子のオフ抵抗と容量素子の容量は、必要とするスイッチング動作の間隔に応じて決定すればよい。
【0036】
さらに、信号処理回路は、上記記憶装置に加え、記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路などの各種論理回路を有する。そして、記憶装置へ電源電圧の供給を停止すると共に、当該記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路への、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0037】
例えば、本発明の一態様の記憶素子は、一対のインバータと、容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御する容量用スイッチング素子とを少なくとも有する。記憶素子に入力されたデータを含む信号は、第1のインバータの入力端子に与えられる。第1のインバータの出力端子は、第2のインバータの入力端子に接続されている。第2のインバータの出力端子は、第1のインバータの入力端子に接続されている。第1のインバータの出力端子または第2のインバータの入力端子の電位が、信号として後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0038】
上記インバータは、ゲート電極が互いに接続された少なくとも1つのPチャネル型トランジスタと、少なくとも1つのNチャネル型トランジスタとが直列に接続された構成を有する。
【0039】
そして、容量素子の一方の電極は、記憶素子に入力された信号のデータを必要に応じて記憶できるように、いずれか1つのインバータの入力端子に接続され、他方の電極は上記容量用スイッチング素子に接続している。また、上記容量用スイッチング素子の他方の電極は、上記インバータの出力端子に接続している。
【0040】
第1のインバータおよび第2のインバータに電源電圧が与えられている状態において、第1のインバータの入力端子にデータを含む信号が入力されると、第1のインバータおよび第2のインバータによって、そのデータが保持される。
【0041】
第1のインバータおよび第2のインバータへの電源電圧の印加を停止する場合、電源電圧の印加を停止する前に、上記容量用スイッチング素子をオンにして、信号のデータを容量素子に記憶させる。上記構成により、第1のインバータおよび第2のインバータへの電源電圧の印加を停止しても、記憶素子にデータを保持させることが可能である。
【0042】
上記容量用スイッチング素子に用いられるトランジスタのチャネル形成領域は、高純度化された酸化物半導体を含んでおり、また、チャネル長が十分に長い場合には、オフ電流が著しく低いという特性を有している。
【0043】
なお、インバータに用いられるトランジスタには、酸化物半導体以外の、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、またはゲルマニウムなどの半導体を用いることができる。また、上記トランジスタには、薄膜の半導体を用いてもよいし、バルクの半導体を用いてもよい。
【0044】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0045】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0046】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0047】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。また、上記酸化物半導体は、シリコンを含んでいてもよい。
【0048】
或いは、酸化物半導体は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記することもできる。ここで、Mは、Sn、Ga、Al、HfおよびCoから選ばれた一又は複数の金属元素を示す。
【0049】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0050】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0051】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0052】
なお、本明細書では、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a―A)+(b―B)+(c―C)≦0.0025を満たすことをいう。他の酸化物でも同様である。
【0053】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0054】
なお、アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0055】
結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができるので、さらに表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0056】
酸化物半導体は比較的高い移動度(1cm/Vs以上、好ましくは10cm/Vs以上)の半導体特性を示す金属酸化物である。そして、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物および酸素欠損が低減されて高純度化された酸化物半導体は、I型(真性半導体、本明細書では、キャリア濃度が1×1012/cm以下の半導体をI型という)又はI型に限りなく近い(実質的にI型)半導体である。
【0057】
水素濃度に関して、具体的には、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した酸化物半導体に含まれる水素濃度の値が、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下、さらに好ましくは1×1016/cm以下となるように、酸化物半導体に含まれる水素を除去するとよい。また、酸素欠損の量も可能な限り低減するとよい。このように真性半導体とする上で好ましくないものを除去することを高純度化という。
【0058】
上記構成により、ホール効果測定により測定できる酸化物半導体膜のキャリア密度を、1×1014cm−3未満、好ましくは1×1012cm−3未満、さらに好ましくは1×1011cm−3未満とすることができる。即ち、酸化物半導体膜のキャリア密度を、限りなくゼロに近づけることができる。また、酸化物半導体膜のバンドギャップは2eV以上4eV以下、好ましくは2.5eV以上4eV以下、より好ましくは3eV以上4eV以下であるとよい。高純度化された酸化物半導体膜を用いることにより、トランジスタのオフ電流を下げることができる。
【0059】
ここで、酸化物半導体膜中および導電膜中の、水素濃度の分析について触れておく。酸化物半導体膜中および導電膜中の水素濃度測定は、SIMSでおこなう。SIMSは、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。
【0060】
そこで、膜中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、対象となる膜が存在する範囲において、値に極端な変動が無く、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。
【0061】
また、測定の対象となる膜の厚さが小さい場合、隣接する膜内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該膜が存在する領域における、水素濃度の極大値または極小値を、当該膜中の水素濃度として採用する。さらに、当該膜の存在する領域において、極大値を示す山型のピーク、極小値を示す谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【0062】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物である水分または水素が多量に含まれていることが判明している。水分または水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。
【0063】
そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分または水素などの不純物を低減するために、酸化物半導体膜に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で加熱処理をおこなう。
【0064】
上記加熱処理は、200℃以上850℃以下、好ましくは250℃以上450℃以下の温度範囲でおこなうのが望ましい。なお、この加熱処理は、用いる基板や、酸化物半導体が形成される前に基板上に形成されている構造物(配線や絶縁膜等)の耐熱温度を超えないものとする。水分または水素の加熱処理による脱離の効果については、TDS(Thermal Desorption Spectrometry;昇温脱離ガス分析法)により確認できる。
【0065】
加熱処理は、炉での熱処理またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を用いる。RTA法は、ランプ光源を用いる方法と、加熱されたガス中に基板を移動させて短時間の熱処理をおこなう方法がある。RTA法を用いると熱処理に要する時間を0.1時間よりも短くすることもできる。
【0066】
上述した加熱処理等により高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、非常に低いオフ電流を示す。具体的には、例えば、チャネル幅(W)が1×10μm(チャネル長(L)は1μm)の素子でソース電極とドレイン電極間の電圧が1Vのときのオフ電流を半導体パラメータアナライザの測定限界以下である1×10−13A以下とすることができる。この場合、チャネル幅1μmあたりのオフ電流は、100zA/μm以下である。このように、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタのオフ電流は結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタのものに比べて著しく低い。
【発明の効果】
【0067】
上記構成を有するトランジスタを、容量素子に蓄積された電荷を保持するための容量用スイッチング素子として用いることで、容量素子からの電荷のリークを長時間にわたって防ぐことができるため、電源電圧の印加がない場合でも、データを消失させずに保持することが可能となる。
【0068】
そして、容量素子においてデータを保持している期間は、インバータへの電源電圧の供給をおこなわなくてもよいので、インバータに用いられているトランジスタのオフ電流に起因する無駄な消費電力を削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0069】
上記構成を有する記憶素子を、信号処理回路が有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源停止による記憶装置内のデータの消失を防ぎ、また、電源回復後のエラーを防止できる。よって、信号処理回路全体、あるいは信号処理回路を構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止をおこなうことができるため、消費電力を抑えることができる信号処理回路、消費電力を抑えることができる当該信号処理回路の駆動方法を提供することができる。
【0070】
なお、電源の停止と回復という操作は、論理回路のクロックに比較すると極めて遅い動きでもよい。すなわち、スイッチング時間は100μ秒あれば十分であり、場合によっては、1m秒あるいはそれ以上でもよい。なぜなら、各記憶素子のフリップフロップ回路に保持されていたデータを容量素子に移す過程あるいはその逆の過程は全ての記憶素子で同時におこなうことができるからである。そのような低速動作であれば、長チャネルかつ狭チャネルなトランジスタでも十分である。また、半導体の移動度も1cm/Vs以上であればよい。
【0071】
また、容量素子に関しても、容量が大きい方が、データを回復する際のエラーの発生が起こりにくい。一方で、容量が大きいと、容量素子と容量用スイッチング素子とで構成される回路の応答速度が低下する。しかしながら、上述のように、電源の停止と回復という操作は、論理回路のクロック等に比較すると極めて遅い動きでもよいので、容量が1pF以下であれば何ら妨げとなるものではない。
【0072】
加えて、上記の構成により、容量素子からデータの回復をおこなう際に十分な大きさの電位変動が得られるため、データ回復時のエラーの確率が低下し、信号処理回路の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】記憶素子の回路の例。
【図2】従来の記憶素子の回路図。
【図3】記憶素子の回路の例。
【図4】記憶素子の動作の例。
【図5】記憶素子の動作の例。
【図6】記憶素子の回路の例。
【図7】記憶素子の構造を説明する上面図。
【図8】記憶素子の構造を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0075】
また、本明細書において、接続、とは、一時的であっても、実効的な直流電流が、供給可能な状態になる構造であることをいう。従って、接続している状態とは、直接、接続している状態のみを必ずしも指すわけではなく、直流電流が、供給可能であるように、配線、抵抗などの回路素子を介して間接的に接続している状態もその範疇に含む。なお、実際に回路に直流電流が供給されるように設計されているかどうかは問わない。
【0076】
一方、2つのノード間に、容量素子のみが設けられている場合には、容量素子を介しては、実効的な直流電流を供給することができないので、このノード間は接続されていない、という。ただし、2つのノード間にスイッチング素子が設けられている場合には、条件付ながら(すなわち、スイッチがオンであるときだけ)直流電流が供給可能となるので、接続する、という。
【0077】
同様に2つのノード間にダイオードのみが設けられている場合も、いずれかのノードの電位が高ければ直流電流を供給できるので、接続する,という。この際には、回路設計上、電流が供給されないような電位が2つのノードに与えられている場合(この場合には、現実には2つのノードにダイオードを介して電流が流れることがない)であっても、本明細書では、接続している、という。
【0078】
例えば、ノードAがトランジスタのソースに接続し、ノードBがドレインに接続する場合には、ノードAとノードBの間には、ゲートの電位によっては直流電流を流すことができるので、ノードAとノードBは接続している、という。
【0079】
一方、ノードAがトランジスタのソースに接続し、ノードCがゲートに接続する場合には、トランジスタのソース、ドレイン、ゲートの電位の如何にかかわらず、ノードAとノードCの間に実効的な直流電流を流すことができないので、ノードAとノードCは接続していない、という。
【0080】
また、実効的な直流電流とは、リーク電流等の意図しない電流を除いた電流という意味である。なお、実効的な電流の値は、その大きさ(絶対値)で定義されるものではなく、回路に応じて異なる。すなわち、ある回路では1pAという小電流であっても実効的な電流となりえるし、他の回路では、それより大きな1μAという電流であっても実効的な電流とみなされないこともある。
【0081】
なお、言うまでもないことであるが、入力と出力を有する1つの回路(例えば、インバータ)において、入力と出力が回路内で接続している必要はない。インバータを例に取れば、入力と出力はインバータ内部で接続していない。
【0082】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っているだけの場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0083】
また、トランジスタが有するソース(あるいはソース電極)とドレイン(あるいはドレイン電極)は、トランジスタの極性および各電極に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、Nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がソース(あるいはソース電極)と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がドレイン(あるいはドレイン電極)と呼ばれる。また、Pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がドレイン(あるいはドレイン電極)と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がソース(あるいはソース電極)と呼ばれる。
【0084】
本明細書では、便宜上、ソース(あるいはソース電極)とドレイン(あるいはドレイン電極)とが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソース(あるいはソース電極)とドレイン(あるいはドレイン電極)の呼び方が入れ替わることもある。
【0085】
なお、本明細書において、トランジスタが直列に接続されている状態とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方のみが、第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方のみに接続されている状態を意味する。また、トランジスタが並列に接続されている状態とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方が、第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方に接続され、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極の他方が第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極の他方に接続されている状態を意味する。
【0086】
なお、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコントローラを含むLSI(Large Scale Integrated Circuit)などの集積回路が、本発明の信号処理回路の範疇に含まれるがこれらに限られない。
【0087】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係る記憶装置は、1ビットのデータを記憶することができる記憶素子を、単数または複数有する。図1(A)に、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、回路図の一例を示す。図1(A)に示す記憶素子100は、入力された信号の位相を反転させて出力する第1のインバータ101および第2のインバータ102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、容量素子105と、容量用スイッチング素子106とを、少なくとも有する。
【0088】
記憶素子100に入力されたデータを含む信号INは、スイッチング素子103を介して第1のインバータ101の入力端子に与えられる。第1のインバータ101の出力端子は、第2のインバータ102の入力端子に接続されている。第2のインバータ102の出力端子は、スイッチング素子104を介して、第1のインバータ101の入力端子に接続されている。
【0089】
第1のインバータ101の出力端子または第2のインバータ102の入力端子の電位が、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。ここで、第1のインバータ101の入力端子のノードを第1のノードN1、第1のインバータ101の出力端子のノードを第2のノードN2とする。
【0090】
なお、図1(A)では、第1のインバータ101および第2のインバータ102としてインバータを用いる例を示しているが、第1のインバータ101または第2のインバータ102として、インバータの他に、クロックドインバータを用いることもできる。
【0091】
容量素子105は、記憶素子100に入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように、記憶素子100の入力端子、すなわち信号INの電位が与えられる第1のノードN1に接続されている。容量素子105は、一対の電極間に誘電体を有するコンデンサであり、その一方の電極は第1のノードN1に接続され、他方の電極は容量用スイッチング素子106の一方の電極(容量用スイッチング素子106が1つのトランジスタである場合は、ソース電極かドレイン電極のいずれか)に接続される。容量素子105と容量用スイッチング素子106の接続するノードを第3のノードN3とする。
【0092】
容量用スイッチング素子106の他方の電極は、第2のノードN2に接続されている。第1のノードN1と第2のノードN2は第1のインバータ101により位相が反転するため、それぞれの電位は逆の位相である。
【0093】
また、容量用スイッチング素子106には、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いている。
【0094】
なお、記憶素子100は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタ、容量素子などその他の回路素子を、さらに有していてもよい。
【0095】
次いで、図1(A)で示した記憶素子の、より具体的な回路図の一例を、図1(B)に示す。図1(B)に示す記憶素子100は、第1のインバータ101と、第2のインバータ102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、容量素子105と、容量用スイッチング素子106とを有しており、これら回路素子の接続構成は図1(A)と同じである。
【0096】
そして、図1(B)において第1のインバータ101は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ107と、Nチャネル型トランジスタ108とが直列に接続された構成を有する。具体的には、Pチャネル型トランジスタ107のソース電極は電位VDDが与えられるノードに接続され、Nチャネル型トランジスタ108のソース電極は電位VSSが与えられるノードに接続される。
【0097】
また、Pチャネル型トランジスタ107のドレイン電極と、Nチャネル型トランジスタ108のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第1のインバータ101の出力端子の電位とみなすことができる。また、Pチャネル型トランジスタ107のゲート電極、およびNチャネル型トランジスタ108のゲート電極の電位は、第1のインバータ101の入力端子の電位とみなすことができる。
【0098】
また、図1(B)において第2のインバータ102は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ109と、Nチャネル型トランジスタ110とが直列に接続された構成を有する。具体的には、Pチャネル型トランジスタ109のソース電極が、電位VDDが与えられるノードに接続され、Nチャネル型トランジスタ110のソース電極が、電位VSSが与えられるノードに接続される。
【0099】
また、Pチャネル型トランジスタ109のドレイン電極と、Nチャネル型トランジスタ110のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第2のインバータ102の出力端子の電位とみなすことができる。また、Pチャネル型トランジスタ109のゲート電極、およびNチャネル型トランジスタ110のゲート電極の電位は、第2のインバータ102の入力端子の電位とみなすことができる。
【0100】
また、図1(B)では、スイッチング素子103として1つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig1によりスイッチングが制御される。また、スイッチング素子104として1つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig2によりスイッチングが制御される。
【0101】
なお、図1(B)では、スイッチング素子103と、スイッチング素子104が、それぞれトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、スイッチング素子103またはスイッチング素子104が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0102】
スイッチング素子103またはスイッチング素子104が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0103】
また、複数のトランジスタを並列に接続する場合、それらの極性を異なるものとしてもよい。例えば、Nチャネル型トランジスタとPチャネル型トランジスタを並列に接続した、いわゆるトランスファーゲート構造としてもよい。
【0104】
また、図1(B)では、容量用スイッチング素子106として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いている。該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig3によりスイッチングが制御される。容量用スイッチング素子106に用いるトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有し、また、そのチャネル長は、最小加工線幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、あるいは0.2μm以上、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは1μm以上とすると、そのオフ電流は、上述したとおり著しく低くできる。
【0105】
図1(B)では、容量用スイッチング素子106がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、容量用スイッチング素子106が、トランジスタを複数有していてもよい。容量用スイッチング素子106が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0106】
第1のインバータ101、第2のインバータ102、スイッチング素子103、またはスイッチング素子104に用いられるトランジスタは、酸化物半導体以外の、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、またはゲルマニウム、砒化ガリウム、リン化ガリウム、リン化インジウムなどの半導体を用いることができる。また、これらのトランジスタは、薄膜の半導体膜を用いてもよいし、バルクの半導体基板を用いて形成してもよい。
【0107】
図7を用いて本実施の形態の記憶素子の回路配置例を説明する。図7(A)には通常のレジスタに用いられる1つの記憶素子300のレイアウトを示す。記憶素子300の主要部分であるインバータ等は公知の半導体技術を用いて形成すればよい。すなわち、半導体基板上に素子分離のための絶縁物(素子分離領域)、n型ウェル、p型ウェル、n型領域およびp型領域を形成し、その上にゲート層である第1層配線と、さらにその上に第2層配線を形成する。
【0108】
第1層配線の一部は、信号Sig1を供給するためのSig1配線302であり、また、一部は信号Sig2を供給するためのSig2配線303である。さらに、第2層配線の一部は電位VDDを供給するためのVDD配線301であり、また、一部は信号INを入力するためのIN配線304である。図7(A)には上方に接続するためのコンタクトホールの位置も示す。なお、単結晶半導体基板を用いた回路では、電位VSSは基板から供給するとよい。図7(A)に示される回路配置は公知のものであるので、ここでは詳述しない。
【0109】
本発明の一態様の記憶素子は、図7(A)に示される回路に容量素子と容量素子用スイッチング素子を付加するが、これらはいずれも、図7(A)に示される回路の上層に形成することができる。
【0110】
まず、図7(A)に示す回路の上に、図7(B)に示すように、第3層配線が設けられる。その一部はコンタクトホールを介して第2層配線の一部と接続し、OUTを出力するためのOUT配線305となる。また、第3層配線の一部はスイッチング素子である酸化物半導体を用いたトランジスタのゲート配線306および第1容量電極307となる。
【0111】
ゲート配線306は、その後形成する酸化物半導体領域308の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上と重なるように形成するとよい。ゲート配線306の一部は、図1の容量用スイッチング素子106のゲート電極となる。なお、ゲート配線306には信号Sig3が供給される。
【0112】
第1容量電極307は、コンタクトホールを介して第2層配線の一部(インバータのいずれかの入力あるいは出力)と接続する。また、第1容量電極307はその後、図1の容量素子105に相当する素子の電極の一部となる。
【0113】
第3層配線の上には、ゲート絶縁物(図7には図示せず)、酸化物半導体層(OS層)を形成する。ゲート絶縁物の一部をエッチングし、OUT配線305の一部に達する開口部を設ける。
【0114】
また、図7(C)に示すようにOS層の一部は、少なくとも1つの凹部を有し、例えば、J字型の形状の酸化物半導体領域308とすることが好ましい。酸化物半導体領域308はその他にも、U字型、L字型、V字型、あるいはC字型の形状としてもよい。また、2つ以上の凹部を有する形状(例えば、M字型、N字型、S字型、W字型、Z字型その他)、あるいはその他の折り曲がった形状であってもよい。
【0115】
より一般的に定義すると、1つの記憶素子の典型的な長さを記憶素子の占有面積の平方根と定義するとき、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さが上記典型的な長さ以上、好ましくは典型的な長さの2倍以上、より好ましくは5倍以上であるとよい。あるいは、酸化物半導体領域308の外周の長さが典型的な長さの2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上であるとよい。あるいは、酸化物半導体領域308の面積をその周囲の長さで除した数値が典型的な長さの0.1倍以下であるとよい。
【0116】
このような形状とすることで、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さを記憶素子300の長辺よりも長くできる。例えば、最小加工線幅を1Fとするとき、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さを10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とし、このような形状の酸化物半導体領域308を用いて形成されるトランジスタ(図1の容量用スイッチング素子106に相当する)のチャネル長は10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とできる。図7(C)の場合は、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さは約24Fである。
【0117】
酸化物半導体層の上には、図7(D)に示すように第4層配線が設けられる。第4層配線の一部は、ソース電極309、第2容量電極310となる。ソース電極309は酸化物半導体領域308の一端および上述の開口部を介してOUT配線305と接する。
【0118】
なお、酸化物半導体領域308に接して窒化インジウム等の仕事関数の高い材料を設けてもよい。仕事関数の高い材料が接した部分では、酸化物半導体領域308が空乏化し、オフ電流を低減する効果が得られる。特に、酸化物半導体領域308を厚くする場合には効果が顕著である。詳細は特許文献3を参照するとよい。
【0119】
第2容量電極310は第1容量電極307の一部と重なって図1の容量素子105の一部となる。図7(D)の場合、容量素子の電極面積(2つの電極が重なっている部分の面積)は約18Fである。また、第2容量電極310は酸化物半導体領域308の他端と接し、酸化物半導体領域で形成されるトランジスタのドレイン電極となる。
【0120】
図8には、図7の一点鎖線X−Yに沿った記憶素子300の断面構造を模式的に示す。なお、ハッチングが図7と同じ場合には、図8においても同じものを指し示すものとする。
【0121】
図8(A)は、図7(B)の段階での断面構造を示す。半導体基板表面に素子分離領域311、n型領域、p型領域が形成され、上層には、第1層配線、第2層配線で回路が形成される。n型領域、p型領域、第1層配線と第2層配線との間には、層間絶縁物312が設けられ、それらの間に電気的な接続が必要な場合にはコンタクトプラグ313が設けられる。さらに上層には、第3層配線によってゲート配線306と第1容量電極307が埋め込み絶縁物314に埋め込まれた状態で設けられる。
【0122】
図8(B)は、図7(D)の段階での断面構造を示す。図8(A)で説明した構造物の上に、さらにゲート絶縁物315と酸化物半導体層(酸化物半導体領域308等)および第4層配線によってソース電極309と第2容量電極310を形成する。ここで、酸化物半導体層の厚さは1nm乃至30nm、好ましくは1nm乃至10nm、ゲート絶縁物315の厚さは2nm乃至30nm、好ましくは5nm乃至20nmとするとよい。
【0123】
本実施の形態においては酸化物半導体層の品質が重視されるので、高純度化された酸化物半導体(膜)を用いるとよい。酸化物半導体(膜)の作製方法の詳細は特許文献4を参照すればよい。
【0124】
次いで、図1(A)に示す記憶素子の動作の一例について説明する。なお、以下の説明以外の方法で記憶素子を動作させることもできる。
【0125】
まず、データの書き込み時に際しては、スイッチング素子103はオン、スイッチング素子104はオフ、容量用スイッチング素子106はオフとする。そして、第1のインバータ101と第2のインバータ102に電源電圧を与える。すなわち、電位VDDと電位VSSを適切な電位とし、それらの間に十分に大きな電位差を生じさせる。
【0126】
この状態で記憶素子100に与えられる信号INの電位は、スイッチング素子103を介して第1のインバータ101の入力端子に与えられるので、第1のインバータ101の出力端子は、信号INの電位の位相が反転した電位になる。そして、スイッチング素子104をオンにし、第1のインバータ101の入力端子と第2のインバータ102の出力端子とを接続することで、第1のインバータ101および第2のインバータ102にデータが書き込まれる。
【0127】
入力されたデータは電位VDDと電位VSSをそれぞれ適切な値に保持することで保持される。ただし、この際には、先に説明したように、第1のインバータ101および第2のインバータ102においてリーク電流が生じるため、一定の電力を消費する。
【0128】
なお、第1のインバータ101の出力端子の電位には、第1のインバータ101および第2のインバータ102によって保持されているデータが反映されている。よって、上記電位を読み取ることで、データを記憶素子100から読み出すことができる。
【0129】
データの保持の際の消費電力を削減するために、入力されたデータの保持を、容量素子105においておこなう場合には、まず、スイッチング素子103はオフ、スイッチング素子104はオン、容量用スイッチング素子106はオンとする。その結果、第1のインバータ101および第2のインバータ102によって保持されているデータの値に見合った量の電荷が容量素子105に蓄積され、容量素子105へのデータの退避がおこなわれる。容量素子105にデータが記憶された後、容量用スイッチング素子106をオフにすることで、容量素子105に記憶されたデータは保持される。容量用スイッチング素子106をオフにした後は、電源電圧の印加を停止する。なお、容量素子105にデータが記憶された後は、スイッチング素子104をオフにしてもよい。
【0130】
以上の操作に伴う電位の変動を、図4を用いて説明する。ここでは、電位VDDは+1Vおよび電位VSSは0Vとする。また、以下では、説明を簡単にするため、容量用スイッチング素子106のオフ状態やオン状態での容量は無視できるものとする。
【0131】
最初、図4(A)に示されるように、第1のノードN1はデータに応じて、+1Vあるいは0Vである。一方、第2のノードN2の電位は第1のノードN1とは位相の反転した状態で、0Vあるいは+1Vである。また、容量用スイッチング素子106はオフであるため、第3のノードN3はフローティング状態である。
【0132】
次に、図4(B)に示されるように、容量用スイッチング素子106をオンとすると、第3のノードN3の電位は第2のノードN2の電位と等しくなり、0Vあるいは+1Vとなる。このとき、第1のノードN1と第3のノードN3の電位により、容量素子105の電極間にはそれらに応じた電荷が蓄積される。すなわち、データが容量素子105に退避される。ここで、第1のノードN1と第3のノードN3との電位差の絶対値は1Vである。
【0133】
次に、図4(C)に示されるように、容量用スイッチング素子106をオフとする。第3のノードN3の電位は0Vあるいは+1Vのままである。
【0134】
次に、図4(D)に示されるように、電位VDDと電位VSSを0Vとすると、第1のノードN1の電位、第2のノードN2の電位もしばらくして0Vとなる。第3のノードN3と第1のノードN1の電位差は保存されるので、第3のノードN3の電位は、退避されたデータに応じて−1Vあるいは+1Vである。退避時の第1のノードN1の電位が+1Vであれば、この段階で第3のノードN3の電位は−1Vとなり、退避時の第1のノードN1の電位が0Vであれば、この段階で第3のノードN3の電位は+1Vである。
【0135】
なお、図4(D)の段階における第1のノードN1と第2のノードN2の電位は0Vに限られず、例えば、+1Vとしてもよい。その場合には、退避時の第1のノードN1の電位が+1Vであれば、第3のノードN3の電位は0Vとなり、退避時の第1のノードN1の電位が0Vであれば、第3のノードN3の電位は+2Vである。+2Vとした場合は、それぞれ+1V、+3Vとなる。
【0136】
容量用スイッチング素子106がNチャネル型トランジスタで、しきい値がそれほど大きくない場合には、第3のノードN3の電位が負であると、第3のノードの電位を保持するために、容量用スイッチング素子106のゲートの電位もそれに応じて負とする必要がある。しかしながら、負電位を生成するためには一定の電力を消費するので、消費電力を低減する上では、好ましくない。
【0137】
そこで、上記のように、第1のノードN1と第2のノードN2の電位を十分な高い電位とすると、第3のノードN3の電位もそれに応じて高くなり、容量用スイッチング素子106のゲートの電位を負とすることなく、十分に第3のノードN3の電位を保持することができる。
【0138】
あるいは、第1のノードN1と第2のノードN2の電位を+0.5Vのように、インバータが活性であるときの電位VDDと電位VSSの中間の電位としてもよい。その場合には、退避時の第1のノードN1の電位が+1Vであれば、第3のノードN3の電位は−0.5Vとなり、退避時の第1のノードN1の電位が0Vであれば、第3のノードN3の電位は+1.5Vである。
【0139】
後述するデータの回復方法では、第1のノードN1と第2のノードN2の電位を+0.5Vとしてから回復するので、このように設定することは都合がよい。ただし、第3のノードN3の電位が負となるので、長時間この状態を保つことは避けることが望ましい。
【0140】
上記のように、入力されたデータの保持を容量素子105においておこなう場合は、第1のインバータ101および第2のインバータ102に電源電圧を印加する必要がないので、第1のインバータ101が有するPチャネル型トランジスタ107およびNチャネル型トランジスタ108、或いは、第2のインバータ102が有するPチャネル型トランジスタ109およびNチャネル型トランジスタ110を流れるオフ電流を限りなく0に近くすることができる。
【0141】
したがって、データの保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0142】
また、容量用スイッチング素子106に用いられているトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いているので、そのオフ電流を、100zA以下、好ましくは10zA以下、より好ましくは1zA以下にすることができる。その結果、上記トランジスタを用いた容量用スイッチング素子106がオフである時、容量素子105に蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データが保持される。
【0143】
なお、上記のように極めてオフ電流を小さくするためには容量用スイッチング素子106の電位を十分に低くすることが必要となることもあるが、そのために必要な電流は上記のオフ電流よりもはるかに小さいので、実質的には電力を消費しない。
【0144】
次に、容量素子105に記憶されているデータを回復する場合について、図5を用いて説明する。まず、スイッチング素子103をオフとする。また、第1のインバータ101および第2のインバータ102も不活性な状態とする。例えば、電位VDD、電位VSSを共に+0.5Vとする。
【0145】
そして、第1のノードN1と第2のノードN2も電位を+0.5Vにする。このときスイッチング素子104はオンでもオフでもよい。第1のノードN1の電位が+0.5Vであるので、第3のノードN3の電位は退避されたデータに応じて−0.5Vあるいは+1.5Vのいずれかとなる。(図5(A)参照)。
【0146】
次に、容量用スイッチング素子106をオンとすると、容量素子105から電荷が移動することにより第3のノードN3の電位および第1のノードN1の電位が変動する。例えば、当初、第3のノードN3の電位が−0.5Vであったのであれば、当初の第2のノードN2の電位(+0.5V)よりも低いため、容量用スイッチング素子106をオンとすることにより、第3のノードN3の電位は上昇し、第2のノードN2の電位は下降する。一方、第3のノードN3の電位が上昇することを受けて、容量素子105の他方の電極(すなわち、第1のノードN1)の電位は上昇する。
【0147】
逆に、当初、第3のノードN3の電位が+1.5Vであったのであれば、第3のノードN3の電位は下降するので、容量素子105の他方の電極の電位は下降する。
【0148】
電位の上昇や下降の程度は、容量素子105の容量と、第1のノードN1の容量111(寄生容量を含む)、第2のノードN2の容量112(寄生容量を含む)との比率で決定される。ここでは、容量111および容量112が、それぞれ容量素子105の容量の4倍とする。
【0149】
その場合、第1のノードN1の電位は+0.67Vか+0.33Vとなる。すなわち、退避時の第1のノードN1の電位が+1Vであれば、+0.67Vとなり、退避時の第1のノードN1の電位が0Vであれば、+0.33Vとなる。また、第2のノードN2の電位は+0.33Vか+0.67Vとなる。(図5(B)参照)。
【0150】
このように、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差の絶対値は0.33Vとなる。なお、図2に示される記憶素子では、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差の絶対値は0.1Vである。第2のノードN2にも、第1のノードN1と同様な容量用スイッチング素子と容量素子を設けると、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差の絶対値は0.2Vとなるが、それでも本実施の形態で得られる電位差より小さい。
【0151】
その後、電位VDD、電位VSSをそれぞれ所定の値にすることで、第1のインバータ101および第2のインバータ102に電源電圧を印加する。この過程では、スイッチング素子104をオンとすることが好ましい。この結果、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差が増幅される。
【0152】
すなわち、図5(B)で第1のノードN1の電位が+0.67V、第2のノードN2の電位が+0.33Vであれば、この過程で第1のノードN1の電位は+1Vとなり、第2のノードN2の電位は0Vとなる。また、図5(B)で第1のノードN1の電位が+0.33V、第2のノードN2の電位が+0.67Vであれば、この過程で第1のノードN1の電位は0Vとなり、第2のノードN2の電位は+1Vとなる。すなわち、データを書き込んだときの状態が回復される(図5(C)参照)。
【0153】
上記のように、電位差を増幅する前の第1のノードN1と第2のノードN2の電位差が大きいため、データ回復時のエラーを防止することができ、また、データ回復操作をより高速でおこなえる。なお、容量素子105の容量が、寄生容量を含む容量111と同程度あるいはそれ以上であれば、より確実にデータを回復できる。
【0154】
例えば、容量素子105の容量が、寄生容量を含む容量111の容量、および寄生容量を含む容量112の容量と同じであれば、図5(B)の段階で、第1のノードN1の電位は+0.83Vあるいは+0.17Vとなる。第2のノードN2の電位は、第1のノードN1の電位とは逆に、それぞれ、+0.17Vあるいは+0.83Vとなり、いずれにせよ、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差は0.66Vとなる。
【0155】
そのため、例えば、スイッチング素子104をオフとしたまま第1のインバータ101および第2のインバータ102に電源電圧を印加して、活性化することで、誤動作を起こすことなく、信号を増幅し、データを回復することもできる。
【0156】
上記の例では、データ回復操作の前に、電位VDD、電位VSS、第1のノードN1と第2のノードN2の電位をともに+0.5Vとしたが、これに限定されるものではなく、インバータが活性であるときの電位範囲内であればよい。上記の例では、インバータが活性であるときの電位は0V以上+1V以下であるので、これらの電位を0V以上+1V以下、好ましくは、0.2V以上0.8V以下の電位とすればよい。
【0157】
本実施の形態では、容量用スイッチング素子106として、酸化物半導体を用いたトランジスタを例示したが、これに限られず、容量素子105の容量やデータを保持する時間によっては、シリコンやその他の半導体を用いてもよい。
【0158】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の記憶装置が有する記憶素子の別の例について説明する。図1に示される記憶素子100は、容量素子105の一方の電極が第1のノードN1に接続しているが、その他の部分に接続していてもよい。
【0159】
例えば、図3(A)に示す記憶素子100aのように、容量素子105の一方の電極が第2のノードN2に接続していてもよいし、図3(B)に示す記憶素子100bのように、容量素子105の一方の電極がスイッチング素子104と第2のインバータ102の間に接続していてもよい。
【0160】
すなわち、容量素子105の一方の電極は第1のインバータ101と第2のインバータ102の入力あるいは出力のいずれかと接続していればよい。
【0161】
また、容量用スイッチング素子106の一方の電極は、容量素子105の他方の電極と接続する。容量用スイッチング素子106の他方の電極は、容量素子105の一方の電極とは逆の位相の電位となるノードに接続する。そのような構造におけるデータの退避や回復も実施の形態1で説明した方法と同様におこなえばよい。
【0162】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、別の一例について説明する。図6に、本実施の形態の記憶素子の回路図を、一例として示す。図6に示す記憶素子はSRAMに用いられる。
【0163】
図6に示す記憶素子120は、入力された信号の位相を反転させて出力する第1のインバータ121および第2のインバータ122と、スイッチング素子123と、スイッチング素子124と、容量素子125と、容量用スイッチング素子126とを有する。
【0164】
ここで、第1のインバータ121および第2のインバータ122は、それぞれ、Pチャネル型トランジスタ127とNチャネル型トランジスタ128、Pチャネル型トランジスタ129とNチャネル型トランジスタ130を有するインバータである。Pチャネル型トランジスタ127のソースとPチャネル型トランジスタ129のソースは電位VDDが与えられるノードに、Nチャネル型トランジスタ128のソースとNチャネル型トランジスタ130のソースを電位VSSが与えられるノードに接続する。
【0165】
また、Pチャネル型トランジスタ127とNチャネル型トランジスタ128のドレインはスイッチング素子123のソースに、Pチャネル型トランジスタ129とNチャネル型トランジスタ130のドレインはスイッチング素子124のソースに接続される。
【0166】
スイッチング素子123のドレインは入出力端子DATA+に、スイッチング素子124のドレインは入出力端子DATA−に接続される。データの書き込みの際には、入出力端子DATA+と入出力端子DATA−に互いに逆の位相の電位を与える。また、データの読み出しの際には入出力端子DATA+と入出力端子DATA−に互いに逆の位相の電位が現れる。
【0167】
スイッチング素子123のゲートとスイッチング素子124のゲートは共に信号Sig4により制御され、スイッチング素子123とスイッチング素子124は同時にオンオフする。
【0168】
以上の説明は、通常のSRAMの記憶素子と同じである。本実施の形態では、さらに、容量素子125と容量用スイッチング素子126を直列に接続し、その一端を第1のインバータ121の出力に、他端を第2のインバータ122の出力に接続する。容量用スイッチング素子126のゲートは信号Sig5により制御される。
【0169】
電位VDDと電位VSSの間に適切な電位差がある状態では、データは第1のインバータ121と第2のインバータ122で形成されるフリップフロップ回路で保持される。
【0170】
電力を削減するために電位VDDと電位VSSの間の電位差を0とするには、その前に記憶素子120に保持されているデータを容量素子125と容量用スイッチング素子126で形成される回路に移す。
【0171】
そのためには、スイッチング素子123とスイッチング素子124とをオフとした状態で、容量用スイッチング素子126をオンとする。その結果、容量素子125には第1のインバータ121の出力の電位と第2のインバータ122の出力の電位とに応じた電荷が蓄積される。その後、容量用スイッチング素子126をオフとし、電位VDDと電位VSSの電位差を0とする。
【0172】
容量素子125に保持されているデータを第1のインバータ121と第2のインバータ122で形成されるフリップフロップ回路に移すには、電位VDDと電位VSSの電位を等しい状態とし、その後、容量用スイッチング素子126をオンとする。その結果、第1のインバータ121の入力の電位と第2のインバータ122の入力の電位に差が生じる。
【0173】
ほぼ同時に、電位VDDと電位VSSの電位差を拡大し、所定の電位とする。その結果、第1のインバータ121の入力の電位と第2のインバータ122の入力の電位の差が増幅され、第1のインバータ121と第2のインバータ122で形成されるフリップフロップ回路に容量素子125に保持されているデータが移される。
【0174】
本実施の形態で開示された事項は、他の実施の形態で開示された事項と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0175】
100 記憶素子
100a 記憶素子
100b 記憶素子
101 第1のインバータ
102 第2のインバータ
103 スイッチング素子
104 スイッチング素子
105 容量素子
106 容量用スイッチング素子
107 Pチャネル型トランジスタ
108 Nチャネル型トランジスタ
109 Pチャネル型トランジスタ
110 Nチャネル型トランジスタ
111 容量
112 容量
120 記憶素子
121 第1のインバータ
122 第2のインバータ
123 スイッチング素子
124 スイッチング素子
125 容量素子
126 容量用スイッチング素子
127 Pチャネル型トランジスタ
128 Nチャネル型トランジスタ
129 Pチャネル型トランジスタ
130 Nチャネル型トランジスタ
200 記憶素子
201 インバータ
202 インバータ
203 スイッチング素子
204 スイッチング素子
205 容量素子
206 容量用スイッチング素子
207 Pチャネル型トランジスタ
208 Nチャネル型トランジスタ
209 Pチャネル型トランジスタ
210 Nチャネル型トランジスタ
300 記憶素子
301 VDD配線
302 Sig1配線
303 Sig2配線
304 IN配線
305 OUT配線
306 ゲート配線
307 第1容量電極
308 酸化物半導体領域
309 ソース電極
310 第2容量電極
311 素子分離領域
312 層間絶縁物
313 コンタクトプラグ
314 埋め込み絶縁物
315 ゲート絶縁物
N1 第1のノード
N2 第2のノード
N3 第3のノード
IN 信号
OUT 信号
Sig1 信号
Sig2 信号
Sig3 信号
Sig4 信号
Sig5 信号
VDD 電位
VSS 電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに、他の出力端子が自らの入力端子に接続されることで、データの保持をおこなう一対のインバータと、
容量素子と、
前記一対のインバータの少なくとも1つの上層に設けられ、チャネル形成領域に少なくとも1つの凹部を有する酸化物半導体領域を含み、前記容量素子への前記データの退避を制御するスイッチング素子と、を有し、
前記容量素子の一方の電極は前記一対のインバータのいずれかの出力あるいは入力のいずれかに接続し、
前記容量素子の他方の電極は前記スイッチング素子のソースあるいはドレインのいずれか一方に接続し、
前記スイッチング素子のソースあるいはドレインの他方は、前記一対のインバータのいずれかの出力あるいは入力に接続する記憶素子において、
前記容量素子の一方の電極が接続するノードの電位と、前記スイッチング素子のソースあるいはドレインの他方が接続するノードの電位が互いに逆の位相であることを特徴とする記憶素子。
【請求項2】
互いに、他の出力端子が自らの入力端子に接続されることで、データの保持をおこなう一対のインバータと、
容量素子と、
前記一対のインバータの少なくとも1つの上層に設けられ、チャネル形成領域に少なくとも1つの凹部を有する酸化物半導体領域を含み、前記容量素子への前記データの退避を制御するスイッチング素子と、を有し、
前記容量素子の一方の電極は前記一対のインバータの一方の出力に接続し、
前記容量素子の他方の電極は前記スイッチング素子のソースあるいはドレインのいずれか一方に接続し、
前記スイッチング素子のソースあるいはドレインの他方は、前記一対のインバータの他方の出力に接続する記憶素子。
【請求項3】
互いに、他の出力端子が自らの入力端子に接続されることで、データの保持をおこなう一対のインバータと、
容量素子と、
前記一対のインバータの少なくとも1つの上層に設けられ、チャネル形成領域に少なくとも1つの凹部を有する酸化物半導体領域を含み、前記容量素子への前記データの退避を制御するスイッチング素子と、を有し、
前記容量素子の一方の電極は前記一対のインバータの一方の出力に接続し、
前記容量素子の他方の電極は前記スイッチング素子のソースあるいはドレインのいずれか一方に接続し、
前記スイッチング素子のソースあるいはドレインの他方は、前記一対のインバータの一方の入力に接続する記憶素子。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、チャネル長が最小加工線幅の10倍以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記憶素子。
【請求項5】
前記スイッチング素子は、チャネル長が1μm以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記憶素子。
【請求項6】
前記容量素子は、前記スイッチング素子と同じ層に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記憶素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記一対のインバータのいずれか一方はクロックドインバータである記憶素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記酸化物半導体は、In−Ga−Zn系酸化物である記憶素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記チャネル形成領域の水素濃度は、5×1019/cm以下である記憶素子。
【請求項10】
演算回路と、前記演算回路からのデータを記憶する記憶素子とを有し、
前記記憶素子は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の記憶素子である信号処理回路。
【請求項11】
CPU、DSP、またはマイクロコントローラを含むLSIである請求項10記載の信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85238(P2013−85238A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216291(P2012−216291)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】