説明

車両の走行制御装置

【課題】予め設定した車間時間に基づいて自車両とその前方の先行車両との目標車間距離を設定する場合に、追従走行時に自車両の乗員に対し安心感を与えるとともに、安全性を出来る限り向上させる。
【解決手段】先行車両の車速と、予め設定された第1の車間時間とに基づいて第1の目標車間距離候補を設定する(ステップS3)とともに、自車両の車速と、予め設定された第2の車間時間とに基づいて第2の目標車間距離候補を設定し(ステップS4)、これら第1及び第2の目標車間距離候補のうち長い方の値を、自車両と先行車両との目標車間距離に設定する(ステップS5〜S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両とその前方の先行車両との目標車間距離を設定して、その設定された目標車間距離を維持するよう自車両を先行車両に対して追従走行させるようにした車両の走行制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両とその前方の先行車両との車間距離をレーダ等によって検知し、この車間距離を、予め設定した目標車間距離になるようにスロットル弁の開度やブレーキ等を制御することで、自車両を先行車両に対して追従走行させるようにした走行制御装置はよく知られている。
【0003】
このような走行制御装置においては、先行車両が停止した場合に該停止時から自車両が現在の速度で先行車両に到達するまでの時間である車間時間を予め設定しておき、目標車間距離を先行車両の速度とその設定した車間時間との積により設定するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。また、上記目標車間距離としては、特許文献1や特許文献2に示されているように、遠距離、中距離及び近距離の3つの選択肢の中から1つを乗員が選択できるようになっており、その各選択肢の距離にそれぞれ対応して上記車間時間が設定されている。すなわち、遠距離に対応する車間時間は、近距離に対応する車間時間よりも長い値に設定され、中距離に対応する車間時間は、遠距離及び近距離にそれぞれ対応する車間時間の間の値に設定されており、乗員が遠距離を選択している場合には、車間距離が比較的長くなり、近距離に設定している場合には、車間距離が比較的短くなる。
【特許文献1】特開2001−328455号公報
【特許文献2】特開平11−42957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記走行制御装置の如く目標車間距離を先行車両の速度と予め設定した車間時間との積により設定するようにすると、以下のような問題がある。すなわち、自車両が、略一定の速度で走行中の先行車両に対して追従走行しているときに、先行車両が、前方に渋滞や料金所がある等の理由で減速した場合、先行車両の車速が遅くなるために目標車間距離は短くなるが、先行車両の減速直後の実際の車間距離は、通常、その短くされた目標車間距離よりも長く、このため、自車両は減速されることなく、先行車両に接近し、実際の車間距離が、上記短くされた目標車間距離よりも短くなったときに漸くブレーキがかかることになる。例えば、車間時間を2sとして、先行車両が72km/hで走行していたとすると、そのときの目標車間距離は40m(72000/3600×2)となり、実際の車間距離も約40mとなっている。そして、先行車両が36km/hに急減速したとすると、そのときの目標車間距離は20mとなるが、先行車両の減速直後の実際の車間距離は、40mに近い距離であって、20mよりも長く、この結果、自車両は直ぐには減速されず、実際の車間距離が20mよりも短くなったときにブレーキがかかることになる。このような場合、自車両の乗員に対し、自車両が先行車両に急速に接近する感じを与え、このため、自車両の乗員は自らブレーキペダルを踏み込むことになってしまう。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のように予め設定した車間時間に基づいて自車両とその前方の先行車両との目標車間距離を設定する場合において、追従走行時に自車両の乗員に対し安心感を与えるとともに、安全性を出来る限り向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、先行車両の車速と、予め設定された第1の車間時間とに基づいて第1の目標車間距離候補を設定するとともに、自車両の車速と、予め設定された第2の車間時間とに基づいて第2の目標車間距離候補を設定し、これら第1及び第2の目標車間距離候補のうち長い方の値を、自車両と先行車両との目標車間距離に設定するようにした。
【0007】
具体的には、請求項1の発明では、自車両前方の先行車両を認識する先行車両認識手段と、該先行車両認識手段が認識した先行車両と自車両との車間距離を検知する車間距離検知手段と、上記先行車両と自車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、上記車間距離検知手段により検知される車間距離が、上記目標車間距離設定手段により設定された目標車間距離を維持するよう自車両を先行車両に対して追従走行させる追従走行制御手段とを備えた車両の走行制御装置を対象とする。
【0008】
そして、上記先行車両の車速を検知する先行車両車速検知手段と、自車両の車速を検知する自車両車速検知手段とを備え、上記目標車間距離設定手段は、上記先行車両車速検知手段により検知された先行車両の車速と、予め設定された第1の車間時間とに基づいて第1の目標車間距離候補を設定する第1の目標車間距離候補設定手段と、上記自車両車速検知手段により検知された自車両の車速と、予め設定された第2の車間時間とに基づいて第2の目標車間距離候補を設定する第2の目標車間距離候補設定手段とを有していて、上記第1及び第2の目標車間距離候補のうち長い方の値を上記目標車間距離に設定するように構成されているものとする。
【0009】
上記の構成により、先行車両の車速と、予め設定された第1の車間時間とに基づいて第1の目標車間距離候補が設定されるとともに、自車両の車速と、予め設定された第2の車間時間とに基づいて第2の目標車間距離候補が設定され、これら第1及び第2の目標車間距離候補のうち距離が長い方が目標車間距離として設定される。したがって、自車両が、略一定の速度で走行中の先行車両に対して追従走行しているときには、自車両及び先行車両の車速は略同じであるため、第1及び第2の車間時間のうち長い方の車間時間に対応する目標車間距離候補が目標車間距離となる。ここで、第2の車間時間の方が長い場合には、基本的に自車両の車速に基づく第2の目標車間距離候補が目標車間距離とされ、先行車両が減速しても、目標車間距離は第2の目標車間距離候補のままであるため、先行車両が減速して自車両が先行車両へ接近すると直ぐに自車両が減速することになる。一方、第1の車間時間の方が長い場合には、基本的に先行車両の車速に基づく第1の目標車間距離候補が目標車間距離とされるが、先行車両が減速すると、第2の車間時間にもよるが、或るタイミングで第2の目標車間距離候補が目標車間距離となり、これ以降、先行車両が減速し続けても、第2の目標車間距離候補が目標車間距離となった時点の目標車間距離が維持されることになる。この結果、自車両の乗員に対し不安感や違和感を与えることがないようなタイミングで、第2の目標車間距離候補が目標車間距離となるように第2の車間時間を設定しておけば、自車両を適切に減速させるようにすることができる。よって、追従走行時に自車両の乗員に対し安心感を与えるとともに、安全性を向上させることができる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記第2の車間時間は、上記第1の車間時間よりも短く設定されているものとする。
【0011】
このことにより、上述の如く、基本的には先行車両の車速に基づいて目標車間距離を設定しつつ、先行車両が減速したときには、自車両の乗員に対し不安感や違和感を与えることがないような適切なタイミングで自車両を減速させるようにすることができる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記第2の車間時間は、上記第1の車間時間の0.7倍以上に設定されているものとする。
【0013】
こうすることで、先行車両が減速したときに、自車両の減速開始タイミングが遅くなりすぎるようなことはなく、より適切なタイミングで自車両を確実に減速させるようにすることができる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、自車両の乗員が、上記目標車間距離として遠距離、中距離及び近距離の3つの選択肢の中から1つを選択するための操作スイッチを備え、上記第1及び第2の車間時間は、上記各選択肢にそれぞれ対応して設定されており、上記目標車間距離設定手段の第1及び第2の目標車間距離候補設定手段は、上記操作スイッチにより選択された選択肢に対応する第1及び第2の車間時間を用いて第1及び第2の目標車間距離候補をそれぞれ設定するように構成されているものとする。
【0015】
このことにより、自車両の乗員がいずれの距離を選択しても、先行車両が減速したときには、自車両の乗員に対し不安感や違和感を与えることがないような適切なタイミングで自車両を減速させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の車両の走行制御装置によると、先行車両の車速と、予め設定された第1の車間時間とに基づいて第1の目標車間距離候補を設定するとともに、自車両の車速と、予め設定された第2の車間時間とに基づいて第2の目標車間距離候補を設定し、これら第1及び第2の目標車間距離候補のうち長い方の値を、自車両と先行車両との目標車間距離に設定するようにしたことにより、先行車両が減速したときに、自車両を早めに減速させることができて、追従走行時に自車両の乗員に対し安心感を与えるとともに、安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る走行制御装置を搭載した車両W(自車両に相当)を示し、この車両Wの車室内前端部に設けたインストルメントパネル31における運転席前方部分には、メータユニット1が設けられている。このメータユニット1の車両後側(運転席側)には、ステアリングホイール32が設けられ、このステアリングホイール32には、乗員が操作する操作部3が設けられている。
【0019】
また、上記車両Wには、当該車両Wの前方の先行車両を認識しかつ該認識した先行車両と当該車両Wとの車間距離を検知するミリ波レーダ5と、車両Wの車速を検知する自車両車速検知手段としての車速センサ6と、車両Wの乗員(運転者)がブレーキペダルを踏み込んだことを検知するブレーキセンサ8と、車両Wの車速を調節するための、スロットルやブレーキ等からなるオートアクチュエータ9とが設けられている。上記ミリ波レーダ5は、上記先行車両と車両Wとの相対速度を検知することも可能であり、この相対速度と、上記車速センサ6により検知された車両Wの車速とから、上記先行車両の車速が検知されることになる。このことで、ミリ波レーダ5が、自車両前方の先行車両を認識する先行車両認識手段と、該認識した先行車両と自車両との車間距離を検知する車間距離検知手段とを構成し、ミリ波レーダ5及び車速センサ6が、上記先行車両の車速を検知する先行車両車速検知手段を構成する。
【0020】
上記メータユニット1には、図2に示すように、上記車速センサ6により検知された車両Wの車速を示す速度計11やエンジン回転数を示す回転計12等の計器が設けられているとともに、メータユニット1の上側中央部には、本走行制御装置による制御の状態を表示するための制御状態表示部13が設けられている。
【0021】
上記操作部3は、図3に示すように、上記ステアリングホイール32において中心部に対して車両左側及び右側並びに下側にある3つのスポーク部32aのうちの車両右側のスポーク部32aに設けられていて、上下左右に並ぶ4つの操作スイッチで構成されている。すなわち、操作部3の左上側の部分には、本走行制御装置を作動状態又は非作動状態にするメインスイッチ3aが設けられ、このメインスイッチ3aの右側には、本走行制御装置による制御をキャンセルするキャンセルスイッチ3bが設けられ、このキャンセルスイッチ3bの下側には、車両Wの乗員が、車両Wと先行車両との間の目標車間距離として、遠距離、中距離及び近距離の3つの選択肢の中から1つを選択するための操作スイッチとしての目標車間距離選択スイッチ3cが設けられ、この目標車間距離選択スイッチ3cの左側でかつメインスイッチ3aの下側には、車両Wの目標車速を設定するための目標車速設定スイッチ3dが設けられている。
【0022】
上記目標車間距離選択スイッチ3cは、1回操作(押操作)する毎に、遠距離、中距離及び近距離の順にサイクル的に変わり、この目標車間距離選択スイッチ3cの操作回数によって、いずれか1つの選択肢を選択することが可能になっている。
【0023】
上記目標車速設定スイッチ3dは、乗員側に突出するレバーを上側(「RES/+」と記載されている側)又は下側(「SET/−」と記載されている側)に倒すことで操作を行うようになっている。そして、上記メインスイッチ3aにより本走行制御装置が作動状態とされた後において、乗員が最初に目標車速設定スイッチ3dのレバーを下側に倒す操作を行うと、定速走行モード(オートクルーズモード)に設定されるとともに、該操作時に上記車速センサ6により検知された車速が目標車速に設定される。この設定後に、目標車速設定スイッチ3dのレバーを上側に倒す操作(スイッチONの継続時間(操作継続時間)が所定時間以内である操作)を1回行うと、目標車速が所定速度だけアップする一方、下側に倒す操作(スイッチONの継続時間が所定時間以内である操作)を1回行うと、目標車速が所定速度だけダウンするようになっている。その後に再度、目標車速設定スイッチ3dのレバーを上側又は下側に倒す操作(所定時間以内の操作)を1回行うと、目標車速が所定速度だけアップ又はダウンするようになっている。
【0024】
また、目標車速設定スイッチ3dのレバーを上側又は下側に倒す操作を継続して所定時間を超えるように行った場合(スイッチONの継続時間が所定時間を超える長押し操作を行った場合)には、その所定時間が超えたときから該操作が終了するまで、上記目標車速を一定の割合(例えば1秒間に2km/hの割合)で変化させて更新していく。
【0025】
さらに、上記メインスイッチ3aにより本走行制御装置が作動状態とされた後において、最初に目標車速設定スイッチ3dのレバーを上側に倒す操作を行うと、下側に倒す操作を行ったときと同様に定速走行モードに設定されるが、このときには、乗員が前回に設定していた車速が目標車速に設定される。
【0026】
すなわち、本実施形態では、目標車速設定スイッチ3dは、車両Wの目標車速を設定するためのスイッチだけでなく、定速走行モードにモード変更するためのセットスイッチ3eと、リジュームスイッチ3fを兼用している。
【0027】
尚、車両Wの前方に先行車両が存在するときには、定速走行モードに設定することはできず、後述の如く先行車両に追従する追従走行モードに設定される。すなわち、本走行制御装置は、ACC(Adaptive Cruise Control)機能を有している。
【0028】
上記制御状態表示部13には、図4に詳細に示すように、各種インジケータが設けられている。すなわち、制御状態表示部13の左上部には、車両Wの先行車両への衝突可能性を知らせるためのプリクラッシュインジケータ14が設けられ、このプリクラッシュインジケータ14の下側には、本走行制御装置が作動状態にあることを示す「ON」表示と、本走行制御装置が非作動状態にあることを示す「OFF」表示とからなる作動状態インジケータ15が設けられている。この作動状態インジケータ15の下側には、乗員がブレーキペダルを踏み込んだときにブレーキが作動状態であることを示すブレーキインジケータ16が設けられている。
【0029】
上記制御状態表示部13の右上部には、本走行制御装置が待機状態にあることを示す待機状態インジケータ17が設けられ、この待機状態インジケータ17の下側には、乗員が上記目標車間距離選択スイッチ3cにより選択した距離(遠距離(LONG)、中距離(MIDDLE)及び近距離(SHORT)のいずれか1つ)を表示する車間距離選択インジケータ18が設けられている。
【0030】
上記制御状態表示部13の左右方向中央部の上部には、乗員が上記目標車間距離選択スイッチ3cにより選択した距離に応じて点灯表示する白線形状をなす車間距離インジケータ19(19a〜19c)が左右両側に3つずつ設けられている。上記目標車間距離選択スイッチ3cにより選択された距離が遠距離である場合には、車間距離インジケータ19a〜19cが全て点灯し、中距離である場合には、車間距離インジケータ19b,19cが点灯し、近距離である場合には、車間距離インジケータ19cのみが点灯するようになっている。
【0031】
上記左右両側の車間距離インジケータ19に挟まれた部分には、車両Wの前方に位置する先行車両を示す3つの先行車両インジケータ20(20a〜20c)が設けられている。上記ミリ波レーダ5により検知された、先行車両と車両Wとの車間距離が、予め設定された、上記遠距離に対応する距離の範囲内にあれば、先行車両インジケータ20aが点灯し、上記中距離に対応する距離の範囲内にあれば、先行車両インジケータ20bが点灯し、上記近距離に対応する距離の範囲内にあれば、先行車両インジケータ20cが点灯するようになっている。
【0032】
上記制御状態表示部13における車間距離インジケータ19及び先行車両インジケータ20の下側には、乗員が上記目標車速設定スイッチ3dにより設定した目標車速を表示する設定車速インジケータ21が設けられている。
【0033】
図5に示すように、本走行制御装置は制御ユニット40を備えており、この制御ユニット40に対し、上記操作部3におけるメインスイッチ3a、キャンセルスイッチ3b、目標車間距離選択スイッチ3c、目標車速設定スイッチ3d、セットスイッチ3e及びリジュームスイッチ3f、並びに、ミリ波レーダ5、車速センサ6及びブレーキセンサ8からの各信号が入力されるようになっている。
【0034】
上記制御ユニット40は、上記入力された信号に基づいて、上記オートアクチュエータ9を、減速又は加速指示からなる制御信号の出力により制御するとともに、制御状態表示部13の各インジケータ14〜21を、それぞれ必要な制御信号の出力により制御する。
【0035】
具体的には、制御ユニット40は、メインスイッチ3aからのON操作信号が入力されると、本走行制御装置を作動状態にして、作動状態インジケータ15の「ON」表示を行わせる。一方、メインスイッチ3aからのOFF操作信号が入力されると、本走行制御装置を非作動状態にして、作動状態インジケータ15の「OFF」表示を行わせる。
【0036】
また、制御ユニット40は、本走行制御装置を作動状態にした後、キャンセルスイッチ3bからの操作信号が入力されたときも、作動状態インジケータ15の「OFF」表示を行わせる。
【0037】
さらに、制御ユニット40は、車間距離選択スイッチ3cからの操作信号が入力されると、車間距離選択インジケータ18及び車間距離インジケータ19に対して制御信号を出力して、車間距離選択スイッチ3cの操作に対応した表示を行わせるとともに、オートアクチュエータ9に対して制御信号を出力して、ミリ波レーダ5により検知される車間距離が、後述の如く設定される目標車間距離を維持するよう車両Wを先行車両に対して追従走行させる(追従走行モード)。したがって、制御ユニット40は、追従走行制御手段を構成する。この追従走行モード時に、ミリ波レーダ5により検知された車間距離に応じて、先行車両インジケータ20a〜20bのいずれかに対して制御信号を出力して点灯させる。
【0038】
また、制御ユニット40は、目標車速設定スイッチ3d、セットスイッチ3e及びリジュームスイッチ3fからの操作信号が入力されると、設定車速インジケータ21に対して制御信号を出力して、目標車速設定スイッチ3dにより設定された車速等を表示させるとともに、オートアクチュエータ9に対して制御信号を出力して、車速センサ6により検知される車速が、上記表示された車速を維持するようにする(定速走行モード)。
【0039】
さらにまた、制御ユニット40は、ブレーキセンサ8からの信号が入力されると、ブレーキインジケータ16を点灯させ、ミリ波レーダ5により検知される車間距離により車両Wの先行車両への衝突可能性があると判断したときには、プリクラッシュインジケータ14を点灯させる。
【0040】
上記制御ユニット40には、予め設定された第1及び第2の車間時間t1,t2が記憶されている。これら第1及び第2の車間時間t1,t2は、上記遠距離、中距離及び近距離の3つの選択肢にそれぞれ対応して設定されている。具体的には、遠距離に対応する第1の車間時間t1は2s以上に設定され、中距離に対応する第1の車間時間t1は1.8sに設定され、近距離に対応する第1の車間時間t1は1.5s以下に設定されており、遠距離、中距離及び近距離の順に第1の車間時間t1が短く設定されている。
【0041】
一方、第2の車間時間t2は、同じ選択肢に対応する第1の車間時間t2よりも短く設定されている。具体的には、遠距離に対応する第2の車間時間t2は1.8sに設定され、中距離に対応する第2の車間時間t2は1.5sに設定され、近距離に対応する第2の車間時間t2は1.2sに設定されており、第1の車間時間t1と同様に、遠距離、中距離及び近距離の順に第2の車間時間t2が短く設定されている。この第2の車間時間t2は、同じ選択肢に対応する第1の車間時間t1の0.7倍以上に設定されていることが好ましい。
【0042】
尚、車間時間とは、先行車両が停止した場合に該停止時から車両Wが現在の速度で先行車両に到達するまでの時間のことをいう。
【0043】
上記制御ユニット40は、追従走行モード時には、先行車両の車速(ミリ波レーダ5により検知された相対速度と車速センサ6により検知された車両Wの車速とから求める)と、乗員が目標車間距離選択スイッチ3cにより選択した選択肢に対応する第1の車間時間t1とに基づいて第1の目標車間距離候補を設定するとともに、車速センサ6により検知された自車速と上記選択された選択肢に対応する第2の車間時間t2とに基づいて第2の目標車間距離候補を設定し、これら第1及び第2の目標車間距離候補のうち長い方の値を目標車間距離に設定する。したがって、制御ユニット40は、追従走行制御手段に加えて、第1及び第2の目標車間距離候補設定手段並びに目標車間距離設定手段を構成することになる。
【0044】
そして、制御ユニット40は、上記設定した目標車間距離と現在の車間距離との差と、先行車両と車両Wとの相対速度とに基づいて目標加減速度を算出し(目標車間距離と現在の車間距離との差及び相対速度に応じて目標加減速度が決まるようなマップを予め作成してあり、このマップから目標加減速度を算出する)、この算出した目標加減速度に基づいて制御加速度又は制御減速度を演算し、この制御加速度又は制御減速度に基づく加速指令又は減速指令をオートアクチュエータ9に出力する。
【0045】
ここで、上記制御ユニット40による追従走行モード時の処理動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
先ず、最初のステップS1で、車速センサ6より車両Wの速度(自車速)を入力するとともに、ミリ波レーダ5より先行車両と車両Wとの車間距離及び先行車両と車両Wとの相対速度を入力する。
【0047】
次のステップS2では、上記入力した自車速及び相対速度から先行車両の車速を演算し、次のステップS3で、第1の目標車間距離候補TgL1を設定する。すなわち、ステップS2の演算結果である先行車両の車速と、目標車間距離選択スイッチ3cにより選択された距離に対応する第1の車間時間t1との積により第1の目標車間距離候補TgL1を設定する。
【0048】
次のステップS4では、第2の目標車間距離候補TgL2を設定する。すなわち、ステップS1で入力した自車速と、目標車間距離選択スイッチ3cにより選択された距離に対応する第2の車間時間t2との積により第1の目標車間距離候補TgL2を設定する。
【0049】
次のステップS5では、第1の目標車間距離候補TgL1が第2の目標車間距離候補TgL2よりも大きいか否かを判定し、このステップS5の判定がYESであるときには、ステップS6に進んで、第1の目標車間距離候補TgL1を目標車間距離TgLに設定する一方、ステップS5の判定がNOであるときには、ステップS7に進んで、第2の目標車間距離候補TgL2を目標車間距離TgLに設定する。
【0050】
上記ステップS6及びS7の後に進むステップS8では、上記目標車間距離TgLと現在の車間距離との差と、先行車両と車両Wとの相対速度とに基づいて上記マップより目標加減速度を算出する。
【0051】
次のステップS9では、上記ステップS8で算出した目標加減速度に基づいて制御加速度又は制御減速度を演算し、次のステップS10で、この制御加速度又は制御減速度に基づく加速指令又は減速指令をオートアクチュエータ9に出力する。
【0052】
上記制御ユニット40の処理動作により、先行車両の車速及び第1の車間時間t1に基づく第1の目標車間距離候補TgL1と、車両Wの車速及び第2の車間時間t2に基づく第2の目標車間距離候補TgL2とが設定され、これら両候補のうち距離が長い方が目標車間距離TgLとして設定される。これにより、車両Wが、略一定の速度で走行中の先行車両に対して追従走行しているときには、車両W及び先行車両の車速は略同じであるため、目標車間距離TgLは、第1及び第2の車間時間t1,t2のうち長い方の車間時間(本実施形態では、第1の車間時間t1)に対応する目標車間距離候補となる。本実施形態では、第1の車間時間t1の方が長いので、第1の目標車間距離候補TgL1が目標車間距離TgLに設定される。例えば、目標車間距離選択スイッチ3cにより選択された距離が中距離である場合、先行車両が72km/hで走行していたとすると、目標車間距離TgLは、36m(72000/3600×1.8)となる。
【0053】
ここで、先行車両が減速した場合を考える。先行車両が例えば72km/hから36km/hに急減速したとすると、先行車両が例えば72km/hから60km/hに減速するまでは、第1の目標車間距離候補TgL1の方が大きいが、先行車両の車速が60km/hよりも遅くなると、第2の目標車間距離候補TgL2の方が大きくなる(先行車両の車速が60km/hの時点でTgL1=TgL2=30m)。そして、先行車両の車速が36km/hになった時点では、第1の目標車間距離候補TgL1は18mとなり、第2の目標車間距離候補TgL2は30mとなる。したがって、仮に先行車両の車速に基づく第1の目標車間距離候補TgL1だけで目標車間距離TgLを設定したとすると、先行車両が例えば72km/hから36km/hに急減速した場合には、先行車両と車両Wとの車間距離が18mよりも短くなって初めて、車両Wのオートアクチュエータ9に対し減速指令が出力されることになるが、先行車両の減速直後の実際の車間距離は、36mに近い距離であって、18mよりも長く、この結果、車両Wは直ぐには減速されない。この場合、車両Wの乗員に対し、車両Wが先行車両に急速に接近する感じを与えてしまう。
【0054】
しかし、本実施形態では、第1の目標車間距離候補TgL1と車両Wの車速に基づく第2の目標車間距離候補TgL2とのうち距離が長い方を目標車間距離TgLに設定するので、上記の例の場合、先行車両と車両Wとの車間距離が30mよりも短くなった時点で車両Wのオートアクチュエータ9に対し減速指令が出力され、目標車間距離TgLが30mに維持される。よって、追従走行時に車両Wの乗員に対し安心感を与えるとともに、安全性を向上させることができる。
【0055】
尚、上記実施形態では、第2の車間時間t2を第1の車間時間t1よりも短く設定したが、第2の車間時間t2を第1の車間時間t1と同じか又は第1の車間時間t1よりも長く設定するようにしてもよい。このようにしても、先行車両の減速時に車両Wのオートアクチュエータ9に対し素早く減速指令を出力するようにすることができ、追従走行時に車両Wの乗員に対し安心感を与えることができる。但し、より適切なタイミングで減速指令を出力する観点からは、上記実施形態の如く第2の車間時間t2を第1の車間時間t1よりも短く設定するのがよい。特にt2/t1の値が0.7以上であれば、先行車両が減速したときに、車両Wの減速開始タイミングが遅くなりすぎるようなことはなく、より適切なタイミングで自車両を確実に減速させるようにすることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、車両Wの乗員が、目標車間距離として遠距離、中距離及び近距離の3つの選択肢の中から1つを選択する目標車間距離選択スイッチ3cを設けたが、このような目標車間距離選択スイッチ3cはなくてもよい。この場合、第1及び第2の車間時間を予め1つずつ設定しておけばよい。また、この場合も、第2の車間時間を第1の車間時間よりも短く設定することが好ましく、特にt2/t1の値を0.7以上に設定するのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自車両とその前方の先行車両との目標車間距離を設定して、その設定された目標車間距離を維持するよう自車両を先行車両に対して追従走行させるようにした車両の走行制御装置に有用であり、特に車間時間に基づいて目標車間距離を設定する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る走行制御装置を搭載した車両の構成図である。
【図2】上記車両のインストルメントパネルに設けられたメータユニットの拡大図である。
【図3】上記車両のステアリングホイールの構成図である。
【図4】図2のメータユニットにおける制御状態表示部の詳細を示す拡大図である。
【図5】上記走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】制御ユニットにおける追従走行モード時の処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
W 車両(自車両)
3c 目標車間距離選択スイッチ(操作スイッチ)
5 ミリ波レーダ(先行車両認識手段)(車間距離検知手段)
(先行車両車速検知手段)
6 車速センサ(自車両車速検知手段)(先行車両車速検知手段)
9 オートアクチュエータ
40 制御ユニット(目標車間距離設定手段)(追従走行制御手段)
(第1の目標車間距離候補設定手段)(第2の目標車間距離候補設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の先行車両を認識する先行車両認識手段と、該先行車両認識手段が認識した先行車両と自車両との車間距離を検知する車間距離検知手段と、上記先行車両と自車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、上記車間距離検知手段により検知される車間距離が、上記目標車間距離設定手段により設定された目標車間距離を維持するよう自車両を先行車両に対して追従走行させる追従走行制御手段とを備えた車両の走行制御装置であって、
上記先行車両の車速を検知する先行車両車速検知手段と、
自車両の車速を検知する自車両車速検知手段とを備え、
上記目標車間距離設定手段は、上記先行車両車速検知手段により検知された先行車両の車速と、予め設定された第1の車間時間とに基づいて第1の目標車間距離候補を設定する第1の目標車間距離候補設定手段と、上記自車両車速検知手段により検知された自車両の車速と、予め設定された第2の車間時間とに基づいて第2の目標車間距離候補を設定する第2の目標車間距離候補設定手段とを有していて、上記第1及び第2の目標車間距離候補のうち長い方の値を上記目標車間距離に設定するように構成されていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の走行制御装置において、
上記第2の車間時間は、上記第1の車間時間よりも短く設定されていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の走行制御装置において、
上記第2の車間時間は、上記第1の車間時間の0.7倍以上に設定されていることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置において、
自車両の乗員が、上記目標車間距離として遠距離、中距離及び近距離の3つの選択肢の中から1つを選択するための操作スイッチを備え、
上記第1及び第2の車間時間は、上記各選択肢にそれぞれ対応して設定されており、
上記目標車間距離設定手段の第1及び第2の目標車間距離候補設定手段は、上記操作スイッチにより選択された選択肢に対応する第1及び第2の車間時間を用いて第1及び第2の目標車間距離候補をそれぞれ設定するように構成されていることを特徴とする車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−223489(P2007−223489A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47820(P2006−47820)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】