説明

運転支援装置

【課題】運転者の意図に応じて適切な操舵制御を行うことが可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】ECU12は、車両が分岐点に存在するか否か、カーナビゲーション装置18による経路案内中であるか否か、経路案内における推奨経路が走行中の車線以外であるか否かを判定し、車両が分岐点に存在し、カーナビゲーション装置18による経路案内中であり、且つ、推奨経路が走行中の車線以外である場合には、運転者による車線変更の操舵の可能性が高いことに鑑み、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御を停止する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量の基準値(第1操舵判定基準値)を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が車線から逸脱することを防止する運転支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両が車線から逸脱することを防止する運転支援を行う運転支援装置が実用化されつつある。このような運転支援装置には、地図情報に基づいて、車線変更の可能性が高い分岐、合流、ジャンクション(JCT)等において、車両が車線から逸脱することを防止するための操舵制御を停止するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、車線変更の頻度が高い地点を予め地図データベースに登録しておき、その地点を車両が走行する際には、操舵制御における制御ゲインを下げたり、操舵制御を停止するものがある(例えば、特許文献2参照)。更には、運転者が所定値以上の操舵力で操舵操作を行った場合や、ウィンカの点滅操作を行った場合に、操舵制御を停止するものもある。
【特許文献1】特開2000−149188号公報
【特許文献2】特開2005−18211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車線変更の可能性が高い分岐等や車線変更の頻度が高い地点において一律に操舵制御を停止する手法は、運転者の操舵制御への期待感の観点からは、必ずしも望ましいことではない。特に、分岐等の区間が多い道路を走行中の場合には、操舵制御を停止する頻度が高くなり、その都度、操舵制御が停止している旨の告知がブザー音やディスプレイ表示によって行われるため、運転者が煩わしさを感じる場合もある。
【0004】
また、車線変更の頻度が高い地点を車両が走行する際に、操舵制御における制御ゲインを下げる手法では、操舵制御によるトルク変動に対して運転者が違和感を覚える場合がある。
【0005】
更に、運転者が所定値以上の操舵力で操舵操作を行った場合や、ウィンカの点滅操作を行った場合に、操舵制御を停止する手法では、操舵操作の操舵力やウィンカの点滅操作のタイミングは、個々の運転者によって異なるものであるため、運転者にとって、操舵制御が停止するタイミングが遅くなったり、操舵制御が復帰するタイミングが早くなったりする場合があり、運転者が車線変更の操作を行う際に、操舵制御が停止せずに作動してしまう場合がある。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決するものであり、運転者の意図に応じて適切な操舵制御を行うことが可能な運転支援装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転支援装置は、車両が車線から逸脱することを防止する操舵制御を行う逸脱防止制御手段と、前記運転者による車線変更の操舵の可能性を評価する評価手段と、前記運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上の場合に、所定レベル未満の場合よりも前記逸脱防止制御手段による操舵制御が停止しやすくなる設定を行う設定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、運転者による車線変更の操舵の可能性が高い場合であっても、運転者による車線変更の操舵がなされていない場合には、操舵制御を通常時と同様に行うことを可能としつつ、運転者による車線変更の操舵がなされた場合には、速やかに操舵制御を停止して、運転者による操舵に主導権を渡すことによって、操舵制御が運転者の操舵に干渉することを防止することができる。
【0009】
また、本発明の運転支援装置は、前記設定手段が、前記運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上の場合に、前記逸脱防止制御手段による操舵制御を停止する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量の停止基準値を、所定レベル未満の場合とは異なる値に設定し、前記逸脱防止制御手段が、前記第1の動作量が前記停止基準値に達した場合に操舵制御を停止するようにしてもよい。
【0010】
この構成によれば、運転者による車線変更の操舵の可能性が高い場合には、運転者による車線変更の操舵に対応する動作量の停止基準値を変更することによって、操舵制御を停止しやすくすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の運転支援装置は、前記第1の動作量が、操舵トルク、操舵角度、ウィンカ操作時間、ペダル踏力及びペダル踏量の少なくともいずれかであるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の運転支援装置は、前記設定手段が、前記運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上の場合に、前記逸脱防止制御手段による操舵制御を復帰する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第2の動作量の復帰基準値を、所定レベル未満の場合とは異なる値に設定し、前記逸脱防止制御手段が、操舵制御を停止した後に、前記第2の動作量が前記復帰基準値に達した場合に、前記操舵制御を復帰するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、操舵制御を停止した後は、運転者による車線変更の操舵に対応する動作量が復帰基準値に達した場合に、適切に操舵制御を復帰することが可能となる。
【0014】
また、本発明の運転支援装置は、前記第2の動作量は、操舵トルク、操舵角度、操舵操作後の操舵制御の復帰禁止時間及びウィンカ操作後の操舵制御の復帰禁止時間の少なくともいずれかであるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の運転支援装置は、前記逸脱防止制御手段が、車線に沿った車両走行を維持するための操舵トルクの印加、及び、車線に沿った車両走行を維持するための運転者に対する報知の少なくともいずれかであるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の運転支援装置は、車線の形状を検出する車線形状検出手段を備え、前記評価手段が、前記検出された車線の形状に基づいて、運転者による車線変更の操舵の可能性を評価するようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、車線の形状から運転者による車線変更の操舵の可能性を適切に評価することができる。
【0018】
また、本発明の運転支援装置は、車両の走行経路を設定する走行経路設定手段を備え、前記評価手段が、前記設定された走行経路に基づいて、運転者による車線変更の操舵の可能性を評価するようにしてもよい。
【0019】
この構成によれば、設定された走行経路から運転者による車線変更の操舵の可能性を適切に評価することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車線変更の可能性が高い地点において、操舵制御が運転者の操舵に干渉することを防止し、運転者の意図に応じて適切な操舵制御を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる運転支援装置の構成を示す図である。図1に示す運転支援装置10は、電子制御ユニット(ECU)12、白線認識カメラ14、車輪速センサ16、カーナビゲーション装置18、操舵検出部20、ウィンカスイッチ(SW)24、ブレーキペダル25、アクセルペダル26、操舵トルク印加部28、警報ブザー30及びメータ32により構成される。
【0023】
ECU12は、カーナビゲーション装置18、警報ブザー30及びメータ32の作動を制御する。また、ECU12は、白線認識カメラ14、車輪速センサ16、カーナビゲーション装置18及び操舵検出部20からの各情報や、ウィンカSW24、ブレーキペダル25及びアクセルペダル26の作動に基づいて、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30の作動を制御する。
【0024】
白線認識カメラ14は、例えばインナーミラーの裏側に取り付けられ、車両前方の路面を撮影し、その撮影により得られた画像に基づいて、路面の白線の形状を認識する。車輪速センサ16は、車輪の回転に基づいて車両の速度を検出する。カーナビゲーション装置18は、地図情報を保持するとともに、GPS衛星からの受信した情報等に基づいて車両位置を検出し、経路誘導等の各種の処理を行う。操舵検出部20は、車輪の角度に基づいて、操舵トルクや操舵角度を検出する。
【0025】
ウィンカSW24は、ウィンカの作動時にオンとなるスイッチである。ブレーキペダル25及びアクセルペダル26は、走行時及び停止時に運転者によって操作される。操舵トルク印加部28は、車両が車線から逸脱することを防止する操舵制御を行うものである。この操舵トルク印加部28は、例えば電動パワーステアリングであり、車両が車線の中央付近を走行するように、ECU12の制御によって車輪に操舵トルクを印加する。警報ブザー30は、操舵トルク印加部28と同様に操舵制御を行うものであり、車両が車線から逸脱した場合、あるいは、逸脱する可能性が高い場合に、その旨を運転者に報知するために鳴動する。
【0026】
以下、運転支援装置10の動作を説明する。
【0027】
図2は、運転支援装置10の操舵制御の停止及び復帰の基準値設定時の動作を示すフローチャートである。ECU12は、車両が分岐点に存在するか否かを判定する(S101)。具体的には、ECU12は、カーナビゲーション装置18からの車両位置情報及び地図情報に基づいて、あるいは、白線認識カメラ14からの路面の白線形状に基づいて、車両が分岐点に存在するか否かを判定することができる。例えば、車両が図3に示す位置に存在する場合には、ECU12は、車両が分岐点に存在すると判定する。あるいは、ECU12は、カーナビゲーション装置18が分岐点の手前で、当該分岐点における車線変更の案内を行い、その旨の通知を受けた場合に、車両が分岐点に存在すると判定してもよい。
【0028】
車両が分岐点に存在する場合、次に、ECU12は、カーナビゲーション装置18による経路案内中であるか否かを判定する(S102)。カーナビゲーション装置18は、経路案内を行う場合、経路情報をECU12へ出力する。ECU12は、この経路情報を入力した場合には、カーナビゲーション装置18が経路案内中であると判定する。
【0029】
カーナビゲーション装置18が経路案内中である場合、次に、ECU12は、経路案内における推奨経路が走行中の車線以外であるか否かを判定する(S103)。具体的には、ECU12は、推奨経路が道なりの方向に向かう場合には、当該推奨経路が走行中の車線であると判定し、推奨経路が分岐する方向に向かう場合には、当該推奨経路が走行中の車線以外であると判定する。
【0030】
車両が分岐点に存在し、且つ、推奨経路が走行中の車線以外である場合には、運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上、換言すれば、運転者による車線変更の操舵の可能性が高い。この場合、ECU12は、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御を停止する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量の基準値(第1操舵判定基準値)を変更する(S104)。
【0031】
ここで、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量は、運転者の操舵操作に伴う操舵トルク量、操舵角度、運転者によるブレーキペダル25又はアクセルペダル26の踏力、踏量、運転者によるウィンカSW24の操作時間のいずれかである。ECU12は、第1の動作量が操舵トルク量である場合には、その操舵トルク量に対応する第1操舵判定基準値を、例えば通常値の2.5[Nm]から2.0[Nm]に下げる。また、ECU12は、第1の動作量が操舵角度である場合には、その操舵角度に対応する第1操舵判定基準値を、例えば通常値の20[deg]から15[deg]に下げる。また、ECU12は、第1の動作量がブレーキペダル25又はアクセルペダル26の踏力や踏量である場合には、その踏力や踏量に対応する第1操舵判定基準値を、通常値よりも下げる。また、ECU12は、第1の動作量がウィンカSW24の操作時間である場合には、その操作時間に対応する第1操舵判定基準値を、例えば通常値の1[秒]から0.2[秒]に下げる。
【0032】
このように、第1操舵判定基準値を通常値とは異なる値に変更することによって、後述する操舵制御を通常時よりも停止しやすくすることができる。また、第2操舵判定基準値を通常値とは異なる値に変更することによって、後述する操舵制御を通常時よりも復帰しにくくする、換言すれば、停止しやすくすることができる。
【0033】
更に、ECU12は、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御が停止した後に復帰する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第2の動作量の基準値(第2操舵判定基準値)を変更する(S105)。
【0034】
ここで、運転者による車線変更の操舵に対応する第2の動作量は、運転者の操舵操作に伴う操舵トルク量、操舵角度、運転者による操舵操作後の操舵制御の復帰禁止時間、運転者によるウィンカ操作後の操舵制御の復帰禁止時間のいずれかである。ECU12は、第2の動作量が操舵トルク量である場合には、その操舵トルク量に対応する第2操舵判定基準値を、例えば通常値の2.3[Nm]から1.5[Nm]に下げる。また、ECU12は、第2の動作量が操舵角度である場合には、その操舵角度に対応する第2操舵判定基準値を、例えば通常値の15[deg]から5[deg]に下げる。また、ECU12は、第2の動作量が運転者による操舵操作後の操舵制御の復帰禁止時間である場合には、その復帰禁止時間に対応する第2操舵判定基準値を、例えば通常値の1[秒]から3[秒]に上げる。また、ECU12は、第2の動作量が運転者によるウィンカ操作後の操舵制御の復帰禁止時間である場合には、その復帰禁止時間に対応する第2操舵判定基準値を、例えば通常値の3[秒]から6[秒]に上げる。
【0035】
なお、車速が大きい場合には、分岐点を通過する時間が短くなることを考慮し、ECU12は、操舵操作後の操舵制御の復帰禁止時間に対応する第2操舵判定基準値や、ウィンカ操作後の操舵制御の復帰禁止時間に対応する第2操舵判定基準値を、車輪速センサ16からの速度に反比例するように設定してもよい。
【0036】
一方、車両が分岐点に存在しない場合(S101で否定判断の場合)や、推奨経路が走行中の車線である場合(S103で否定判断の場合)には、運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル未満、換言すれば、運転者による車線変更の操舵の可能性が低い。これらの場合には、ECU12は、第1操舵判定基準値及び第2操舵判定基準値を通常値のままとする(S106、S107)。また、車両が分岐点に存在するがカーナビゲーション装置18が経路案内中でない場合(S102で否定判断の場合)には、運転者による車線変更の操舵の可能性は不明である。この場合も、ECU12は、第1操舵判定基準値及び第2操舵判定基準値を通常値のままとする(S106、S107)。
【0037】
なお、ECU12は、運転者の操舵操作やウィンカ操作が車線変更の可能性が高い方向になされた場合(例えば、推奨経路に沿った車両走行のための操舵操作やウィンカ操作がなされた場合)にのみ、第1操舵判定基準値及び第2操舵判定基準値を変更し、それ以外の場合には、通常値のままとしてもよい。
【0038】
以上のようにして、第1操舵判定基準値及び第2操舵判定基準値が設定された後、運転支援装置10は、操舵制御を停止する動作を行う。図4は、運転支援装置10の操舵制御停止時の動作を示すフローチャートである。
【0039】
ECU12は、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量が第1操舵判定基準値に達したか否かを判定する(S201)。具体的には、ECU12は、第1の動作量が運転者の操舵操作に伴う操舵トルク量や操舵角度である場合、操舵検出部20からの操舵トルク量や操舵角度を入力し、当該操舵トルク量や操舵角度が第1操舵判定基準値に達したか否かを判定する。また、ECU12は、第1の動作量がブレーキペダル25又はアクセルペダル26の踏力や踏量である場合、ブレーキペダル25又はアクセルペダル26の踏力や踏量を検出し、当該踏力や踏量が第1操舵判定基準値に達したか否かを判定する。また、ECU12は、第1の動作量がウィンカSW24の操作時間である場合、ウィンカSW24がオンとなっている時間(操作時間)を検出し、当該操作時間が第1操舵判定基準値に達したか否かを判定する。
【0040】
第1の動作量が第1操舵判定基準値に達した場合、ECU12は、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御を停止させる制御を行う。操舵トルク印加部28は、ECU12の制御により、車両が車線の中央付近を走行するように、車輪に操舵トルクを印加する操舵制御を停止する。また、警報ブザー30は、ECU12の制御により、車両が車線から逸脱した場合、あるいは、逸脱する可能性が高い場合にも、その旨を運転者に報知するための鳴動を停止する(S202)。
【0041】
一方、第1の動作量が第1操舵判定基準値に達していない場合には、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御が継続される。すなわち、操舵トルク印加部28は、車両が車線の中央付近を走行するように、車輪に操舵トルクを印加する操舵制御を継続し、警報ブザー30は、車両が車線から逸脱した場合、あるいは、逸脱する可能性が高い場合に、その旨を運転者に報知するための鳴動を継続する(S203)。
【0042】
図4に示す動作によって、操舵制御が停止した後、運転支援装置10は、操舵制御を復旧する動作を行う。図5は、運転支援装置10の操舵制御復旧時の動作を示すフローチャートである。
【0043】
ECU12は、車両が分岐点を通過し終えたか否かを判定する(S301)。具体的には、ECU12は、カーナビゲーション装置18からの車両位置情報及び地図情報に基づいて、あるいは、白線認識カメラ14からの路面の白線形状に基づいて、車両が分岐点を通過し終えたか否かを判定することができる。
【0044】
車両が分岐点を通過し終えた場合、ECU12は、運転者による車線変更の操舵に対応する第2の動作量が第2操舵判定基準値に達したか否かを判定する(S302)。具体的には、ECU12は、第2の動作量が運転者の操舵操作に伴う操舵トルク量や操舵角度である場合、操舵検出部20からの操舵トルク量や操舵角度を入力し、当該操舵トルク量や操舵角度が第2操舵判定基準値に達したか否かを判定する。ECU12は、第2の動作量が運転者による操舵操作後の操舵制御の復帰禁止時間である場合には、操舵操作後の時間を計測し、その時間が第2操舵判定基準値に達したか否かを判定する。また、ECU12は、第2の動作量が運転者によるウィンカ操作後の操舵制御の復帰禁止時間である場合には、ウィンカ操作後の時間を計測し、その時間が第2操舵判定基準値に達したか否かを判定する。
【0045】
第2の動作量が第2操舵判定基準値に達した場合、ECU12は、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御を復帰させる制御を行う。操舵トルク印加部28は、ECU12の制御により、車輪に操舵トルクを印加する操舵制御を復帰する。また、警報ブザー30は、ECU12の制御により、車両が車線から逸脱した場合、あるいは、逸脱する可能性が高い場合に、その旨を運転者に報知するための鳴動を復帰する(S303)。
【0046】
一方、第2の動作量が第2操舵判定基準値に達していない場合には、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30による操舵制御の停止が継続される(S304)。
【0047】
このように、運転支援装置10は、運転者による車線変更の操舵の可能性を判定し、当該可能性が高い場合には、操舵制御を停止する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量の基準値(第1操舵判定基準値)や、操舵制御を復帰する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第2の動作量の基準値(第2操舵判定基準値)を通常値とは異なる値に変更することによって、操舵制御を通常時よりも停止しやすくすることができる。このため、操舵制御が運転者の操舵に干渉することを防止し、運転者の意図に応じて適切な操舵制御を行うことが可能となる。
【0048】
上述した実施形態において、図2のS101乃至S103におけるECU12の動作は、評価手段に対応し、S104及びS105におけるECU12の動作は、設定手段に対応する。また、図4及び図5におけるECU12、操舵トルク印加部28及び警報ブザー30の動作は、逸脱防止制御手段に対応する。また、白線認識カメラ14及びカーナビゲーション装置18は、車線形状検出手段に対応し、カーナビゲーション装置18は、走行経路設定手段に対応する。
【0049】
なお、上述した実施形態では、図2において、車両が分岐点に存在する場合に、第1操舵判定基準値及び第2操舵判定基準値を変更可能としたが、図6に示すように車両が合流点に存在する場合、図7に示すように車両がJCTに存在する場合、図8に示すように車両が車線減少の位置に存在する場合、図9に示すように車両が車線増加の位置に存在する場合のそれぞれのように、運転者による車線変更の操舵の可能性が高い位置に車両が存在する場合においても、同様に第1操舵判定基準値及び第2操舵判定基準値を変更可能としてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、車両が車線から逸脱することを防止するために、操舵トルク印加部28が車輪に操舵トルクを印加するようにしたが、逸脱回避のために左右の車輪の一方へ制動力を付加するようにしてもよい。また、上述した実施形態では、車両が車線から逸脱した場合、あるいは、逸脱する可能性が高い場合に、その旨を運転者に報知するために、警報ブザー30が鳴動するようにしたが、カーナビゲーション装置18による音声出力や画像表示によって報知したり、運転席シートやステアリングの振動によって報知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上、説明したように、本発明に係る運転支援装置は、運転者の意図に応じて適切な操舵制御を行うことが可能であり、運転支援装置として有用ある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置の構成を示す図である。
【図2】操舵制御の停止及び復帰の基準値設定時の動作を示すフローチャートである。
【図3】分岐点の一例を示す図である。
【図4】操舵制御停止時の動作を示すフローチャートである。
【図5】操舵制御復帰時の動作を示すフローチャートである。
【図6】合流点の一例を示す図である。
【図7】JCTの一例を示す図である。
【図8】車線減少の一例を示す図である。
【図9】車線増加の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 運転支援装置
12 ECU
14 白線認識カメラ
16 車輪速センサ
18 カーナビゲーション装置
20 操舵トルク検出部
24 ウィンカSW
25 ブレーキペダル
26 アクセルペダル
28 操舵トルク印加部
30 警報ブザー
32 メータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が車線から逸脱することを防止する操舵制御を行う逸脱防止制御手段と、
前記運転者による車線変更の操舵の可能性を評価する評価手段と、
前記運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上の場合に、所定レベル未満の場合よりも前記逸脱防止制御手段による操舵制御が停止しやすくなる設定を行う設定手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上の場合に、前記逸脱防止制御手段による操舵制御を停止する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第1の動作量の停止基準値を、所定レベル未満の場合とは異なる値に設定し、
前記逸脱防止制御手段は、前記第1の動作量が前記停止基準値に達した場合に操舵制御を停止することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1の動作量は、操舵トルク、操舵角度、ウィンカ操作時間、ペダル踏力及びペダル踏量の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記運転者による車線変更の操舵の可能性が所定レベル以上の場合に、前記逸脱防止制御手段による操舵制御を復帰する基準となる、運転者による車線変更の操舵に対応する第2の動作量の復帰基準値を、所定レベル未満の場合とは異なる値に設定し、
前記逸脱防止制御手段は、操舵制御を停止した後に、前記第2の動作量が前記復帰基準値に達した場合に、前記操舵制御を復帰することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記第2の動作量は、操舵トルク、操舵角度、操舵操作後の操舵制御の復帰禁止時間及びウィンカ操作後の操舵制御の復帰禁止時間の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記逸脱防止制御手段は、車線に沿った車両走行を維持するための操舵トルクの印加、及び、車線に沿った車両走行を維持するための運転者に対する報知の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
車線の形状を検出する車線形状検出手段を備え、
前記評価手段は、前記検出された車線の形状に基づいて、運転者による車線変更の操舵の可能性を評価することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項8】
車両の走行経路を設定する走行経路設定手段を備え、
前記評価手段は、前記設定された走行経路に基づいて、運転者による車線変更の操舵の可能性を評価することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−313978(P2007−313978A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144003(P2006−144003)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】