説明

配線形成用基板、配線の形成方法、及びプラズマディスプレイの製造方法

【課題】種々の形状からなる配線を精度良く形成できる汎用性の高い、配線形成用基板を提供する。また、前記配線基板を用いて信頼性の高いものを得る、配線の形成方法、プラズマディスプレイの製造方法を提供する。
【解決手段】基板10A上に、撥液領域11に囲まれる多数のドット状の親液領域12が、規則的に配設されてなる配線形成用基板10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線形成用基板、配線の形成方法、及びプラズマディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線を形成する方法の一例として、インクジェット法(液滴吐出法)を用い、基板上に塗布した導電性インクを焼成させることで配線を形成することが知られている。このようにインクジェット法による工程は、基板上でインクが濡れ拡がってしまうと微細な配線を形成することが困難となってしまう。そこで、基板全面に導電性インクに対して撥液性を示す撥液処理を施した後、基板上に導電性インクを吐出するようにしている。しかしながら、撥液性を持つ基板上に導電性インクを吐出すると、液滴の液だまり(バルジ)が基板上に生じ、所望の形状に配線を形成することが難しくなってしまう。
【0003】
そこで、基板表面に有機分子膜を用いて親液部と撥液部とを所定のパターンに形成し、前記親液部のみに選択的に導電性インクを塗布することで、配線を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−164635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法では、前記親液部及び撥液部は、前記基板上に形成された有機分子膜にマスクを介して紫外線を照射することで所定のパターンに形成される。そのため、前記基板上には、所定のパターンに対応した配線しか形成することができず、別のパターンの配線を形成するには、各パターンに対応する親液部及び撥液部が形成された基板を用意する必要がある。このように、上記方法で用いられる基板(配線形成用基板)は、非常に汎用性に乏しいものであった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、種々の形状からなる配線を精度良く形成できる汎用性の高い、配線形成用基板を提供することを目的としている。また、前記配線基板を用いて信頼性の高いものを得る、配線の形成方法、プラズマディスプレイの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配線形成用基板は、基板上に、撥液領域に囲まれる多数のドット状の親液領域が、規則的に配設されてなることを特徴とする。
【0007】
本発明の配線形成用基板によれば、例えば液滴吐出法により基板上に吐出した導電性機能液が親液領域からはみ出た場合でも、該導電性機能液は、親液領域を囲む撥液領域によってはじかれ、ドット状の親液領域に良好に保持される。また、隣接する親液領域間に亘って導電性機能液を吐出された場合、導電性機能液は、各親液領域に確実に保持され、前記隣接する親液領域間に存在する撥液領域も覆った状態となる。
【0008】
したがって、導電性機能液を吐出する領域を変更することで、種々の形状からなる配線を精度良く形成できる汎用性の高い基板となる。
【0009】
また、前記配線形成用基板においては、前記撥液領域は、前記基板上に格子状に設けられているのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、格子状からなる撥液領域を有しているので、該撥液領域によって囲まれる親液領域は矩形状のものが規則的に配設されることとなり、上述したような汎用性の高い基板を良好に構成できる。
【0011】
あるいは、前記配線形成用基板においては、前記親液領域は、前記基板上に千鳥状に配設されてなるのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、親液領域が規則的に配設されたものとなり、上述したような汎用性の高い基板を良好に構成できる。
【0013】
本発明の配線の形成方法は、基板上に、撥液領域に囲まれる多数のドット状の親液領域を、規則的に配設する工程と、前記基板上に、液滴吐出法を用いて導電性機能液を配線パターン状に吐出する工程と、該導電性機能液を焼成して配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の配線の形成方法によれば、液滴吐出法により基板上に吐出した導電性機能液が親液領域からはみ出た場合でも、該導電性機能液は、親液領域を囲む撥液領域ではじかれ、ドット状の親液領域に良好に保持される。また、隣接する親液領域間に亘って吐出された導電性機能液は、各親液領域に確実に保持され、前記隣接する親液領域間に存在する撥液領域も覆った状態となる。このように基板上に保持された導電性機能液を焼成することで、配線を精度良く形成することができる。また、種々の配線形状に対応した汎用性の高い配線形成用基板を用いているので、配線形成時における自由度が高いものとなる。
【0015】
また、上記配線の形成方法においては、前記液滴吐出法により吐出される前記導電性機能液の着弾径が、前記撥液領域の幅よりも大きいのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、吐出された導電性機能液の一部が親液領域に着弾して良好に濡れ拡がるので、撥液領域上に導電性機能液の液だまり(バルジ)が生じることを防止することができる。
【0017】
本発明のプラズマディスプレイの製造方法は、互いに対向して配置される一対の基板と、一方の基板に設けられたアドレス電極と、他方の基板に設けられたバス電極とを備えたプラズマディスプレイの製造方法において、基板上に、撥液領域に囲まれる多数のドット状の親液領域を、規則的に配設する工程と、前記配線形成用基板上に、液滴吐出法を用いて導電性機能液を配線パターン状に吐出する工程と、該導電性機能液を焼成することで、前記アドレス電極及びバス電極の少なくとも一方を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明のプラズマディスプレイの製造方法は、汎用性が高く、しかも精度の良く配線を形成できる配線形成用基板を用いて、アドレス電極及びバス電極の少なくとも一方を製造しているので、該アドレス電極及びバス電極を備えたプラズマディスプレイ自体も信頼性が高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
【0020】
はじめに、配線形成用基板の一実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る配線形成用基板は、後述する配線の形成方法、及びプラズマディスプレイの製造方法に係る実施形態にて用いられるものである。
【0021】
図1は、本実施形態の配線形成用基板の概略構成を示す平面図であり、同図中符号10は配線形成用基板である。配線形成用基板10は、ガラス基板(基板)10Aを主体として構成されるもので、図1に示すように、該ガラス基板10A上に撥液領域11に囲まれてなる多数のドット状の親液領域12が規則的に配設されることで構成されたものである。
【0022】
なお、配線形成用基板を構成する基材としては、上記ガラス基板10Aに限定されることなく、例えば、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含まれる。
【0023】
ここで、撥液領域11及び親液領域12とは、後述するようにインクジェット法(液滴吐出法)を用いて、吐出される配線形成用のインク(導電性機能液)に対して撥液性あるいは親液性を示す領域を意味している。
【0024】
ここで、インクについて説明する。インクは導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0025】
上記分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。本実施形態では、分散媒として、炭化水素系化合物のものを用いた。
【0026】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法により機能液を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、機能液のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、機能液の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0027】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて機能液を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部が機能液の流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0028】
前記親液領域12は、インクに対する静的接触角が40°未満となることが好ましい。これにより、親液領域12に吐出されたインクは、濡れ拡がり良好に保持される。一方、前記撥液領域11は、インクに対する静的接触角が40°以上となることが好ましい。これにより、前記親液領域12に吐出されたインクの基板上での濡れ拡がりを抑えることができる。例えば、親液領域12における静的接触角を10°〜20°、撥液領域11の静的接触角を40°〜50°のように設定すれば、前記各領域11,12の濡れ性の差が明確になる。
【0029】
本実施形態では、前記撥液領域11がガラス基板10A上に格子状に設けられている。よって、親液領域12は、前記撥液領域11に囲まれた正方形状(ドッド状)から構成され、ガラス基板10A上に規則的に配置される。
【0030】
前記親液領域12の大きさ(正方形の一辺の長さ)は、0.5μm〜1.0mmが好ましい。また、撥液領域11と親液領域12の大きさの比は特に限定されることはないが、前記撥液領域11の幅(隣接する親液領域12間の間隔)は後述するインクジェット法により吐出されるインクの着弾径(一般的には35μm程度)よりも小さくなっているのが好ましい。このように、撥液領域11の幅がインクの着弾径よりも大きいため、撥液領域11上に着弾したインク滴は、親液領域12に濡れ拡がり、前記撥液領域11上に液だまり(バルジ)が生じさせることがない。
【0031】
上記配線形成用基板10は、以下の方法により形成することができる。
【0032】
本実施形態では、フッ素またはフッ素化合物を含有する材料として、例えばフッ素樹脂をスピンコート法によってガラス基板10A上に成膜する。フッ素樹脂は、前記炭化水素系の分散媒を含むインクに対して撥液性を示すようになっている。
【0033】
続いて、図1に示したようなドット状の親液領域12に対応する開口部が形成されたフォトマスクを介して、前記ガラス基板10A上に短波長のUV(紫外線)を照射する。すると、前記フッ素樹脂における、短波長のUVが照射された領域は、インクに対して親液性を示す前記親液領域12となる。また、マスクにより上記UV照射が行われなかった領域は、フッ素樹脂により撥液性を維持することで前記撥液領域11となる。
【0034】
以上の工程により、前記ガラス基板10A上に、撥液領域11に囲まれた、ドット状の親液領域12が規則的に配設されてなる配線形成用基板10を形成できる。
【0035】
また、上記配線形成用基板10を製造する方法は、上記方法に限定されることはない。例えば、前記ガラス基板10A上に、ポジ型の感光性レジストとフッ素樹脂とを順に積層し、親液領域12に対応する開口部が形成されたフォトマスクを介して、感光性レジストを露光する。これにより、露光された部分(親液領域12に対応する領域)の感光性レジスト及び該感光性レジスト上に設けられたフッ素樹脂が除去されて、ガラス基板10Aの一部が露出する。なお、ガラス基板10Aの表面はインクに対し親液性となるため、ガラス基板10Aの露出面が前記親液領域12として機能する。また、前記フッ素樹脂が設けられている部分が、前記撥液領域11として機能する。以上の方法により、配線形成用基板10を形成できる。
【0036】
前記撥液領域11、及び親液領域12とは、基板上に吐出されるインクに対する濡れ性の差により相対的に規定されるもので、したがって使用されるインクに応じて撥液領域11、及び親液領域12を構成する材料が適宜選択される。
【0037】
本実施形態のように、インクとして炭化水素化合物系の分散媒を含むものを用いた場合、前記撥液領域11として、フッ素樹脂の他に、自己組織化膜(SAM)等を形成してもよい。自己組織化膜(自己組織化単分子膜:SAM(Self Assembled Monolayer))は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0038】
また、前記インクとして水系の分散媒を含むものを用いた場合には、HMDS処理によって撥液領域11を形成してもよい。HMDS処理は、ヘキサメチルジシラサン((CH)SiNHSi(CH))を蒸気状にして(例えば120sec)物体の表面に接触させた後、乾燥(例えば95℃で60sec)する方法である。このようにして形成されたHMDS処理面は、インクに対して撥液性を示すため、撥液領域として機能するようになる。
【0039】
また、上記方法以外にも、ガラス基板10A上の全面に撥液処理を施した後、レーザーや電子線を用い、スポット状の光を前記撥液処理面に照射することで、ドット状の親液領域を形成するようにしてもよい。このようにレーザーや電子線を用いることで、マスクを用いることなく配線形成用基板10を形成することができる。
【0040】
また、スリットコートやオフセット印刷等の印刷法を用いて、ガラス基板10A上に撥液層と親液層とを積層することで配線形成用基板10を形成してもよい。
【0041】
なお、形成する親液領域12が大きい場合には、ガラス基板10Aの全面に撥液層を形成した後、インクジェット法を用いてドット状の親液領域12を形成する材料を塗布し、配線形成用基板10を形成するようにしてもよい。
【0042】
なお、前記ドッド状の親液領域12は、ガラス基板10A上に規則的に配置されていれば、上述した略矩形状のものに限られることはなく、例えば円形、三角等の多角形であってもよい。また、ドット状の親液領域12は規則的に配置されていれば良く、例えば各親液領域12を図2に示すように千鳥状に配置するようにしてもよい。
【0043】
このような構成の配線形成用基板10にあっては、後述するようにインクジェット法により基板上に吐出したインクが親液領域12からはみ出た場合でも、このインクは、親液領域12を囲む撥液領域11ではじかれることで親液領域12内に良好に保持される。また、隣接する親液領域12間に亘り吐出されたインクは、これら隣接する親液領域間の撥液領域11も覆った状態となる。また、前記親液領域12は規則的に配置されていることから、該親液領域12上に保持されることで描画される配線パターンは精度の高いものとなる。
【0044】
したがって、インクを吐出する領域を変更することで、異なる配線パターンを精度良く形成できる、汎用性の高い基板となる。
【0045】
(配線の形成方法)
次に、本発明の配線の形成方法に係る実施形態について説明する。本実施形態では、上記配線形成用基板10を用い、該配線形成用基板10上に配線を形成する場合について説明する。本実施形態では、インクジェット法を用いて、前記配線形成用基板10上にインクを吐出している。
【0046】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0047】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。本実施形態では、特にピエゾ素子を用いた方式が好適に用いられる。
【0048】
ここで、配線の形成工程を説明するに先んじて、配線形成用基板10上にインクを吐出する場合について説明する。図3は配線形成用基板10上にインク13を吐出した状態を示す図であり、同図中、二点鎖線は、インク13の着弾領域を示している。
【0049】
配線形成用基板10上に着弾したインク13は、原則、撥液領域11ではじかれ、該撥液領域11に囲まれたドット状の親液領域12に濡れ拡がるようになる。また、インク13が隣接する親液領域12間に亘って(図3に示すようにインクの着弾領域内に親液領域12が複数含まれる場合)着弾されたインク13は、各親液領域12に確実に保持され、隣接する親液領域12の間に存在する撥液領域11も覆った状態となる。すなわち、図3中点状ハッチングで示される領域にインク13が保持されることとなる。本実施形態に係る配線形成用基板10によれば、インク13の着弾領域に含まれる撥液領域11及び親液領域12上にインク13を良好に保持することができる。したがって、インクを吐出する位置を変更することで、基板上に種々のパターンを描画できる。
【0050】
続いて、前記配線形成用基板10上にインク13を吐出し、配線パターンを描画する場合について説明する。なお、配線パターンとは、前記配線形成用基板10上にインク13をパターン状に吐出したものを意味し、該配線パターンを乾燥、焼成させることで配線が形成される。
【0051】
図4、5は、配線形成用基板10上に配線パターンを描画した状態を示す概略図である。以下の説明では、図4、5に示されるように、インクジェットヘッドから吐出されたインク(インク滴)13の着弾径が、およそ親液領域12の2列分の幅に一致するものとし、インクジェットヘッドの移動方向に沿って配線パターンが形成される。
【0052】
また、図4(a)は、配線形成用基板10上に配線パターンを描画した状態を示す図であり、図4(b),(c)は、図4(a)におけるA−A´線矢視による配線形成用基板10の断面図に対応するものである。
【0053】
まず、配線形成用基板10上に、インクジェットヘッド(図示しない)からインク13を吐出し、基板上に配線パターンを描画する。このとき、図4(a)に示すように、インク13が吐出された領域に含まれる、親液領域12及び撥液領域11上にインク13が確実に保持されて、基板上に配線パターンP1,P2が形成される。
【0054】
また、配線パターンP1,P2の端部が親液領域12からはみ出た場合でも、周囲を囲む撥液領域11にインク13がはじかれて、図4(b)に示すように親液領域12内に保持される。
【0055】
よって、インクジェット法により配線形成用基板10上に描画された配線パターンP1,P2は、必要以上に基板上に濡れ拡がることがなく、しかも液だまり(バルジ)を生じさせることがない。
【0056】
配線パターンP1,P2を描画した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理を行う。乾燥処理は、例えば配線形成用基板10を加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる加熱処理を行うことができる。本実施形態では、例えば180℃加熱を60分間程度行う。この加熱は窒素雰囲気化等、必ずしも大気中で行う必要はない。
【0057】
また、この乾燥処理は、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0058】
続いて、配線パターンP1,P2における微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤がコーティングされている場合には、このコーティング剤も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0059】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基板の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するために、約250℃で焼成することが必要である。以上の工程により配線パターンP1,P2の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。以上のようにして、図4(c)に示すように配線形成用基板10上に配線21,22が形成される。
【0060】
このような配線21,22の形成方法によれば、配線形成用基板10上に配線パターンP1,P2を描画し、該配線パターンP1,P2を焼成させることで、精度の良い配線21,22を形成することができる。また、上記配線形成用基板10は、上記配線21,22の形状に限定されることなく、インク13を吐出する位置を変更することで種々の形状からなる配線を良好に形成できる、汎用性の高いものである。よって、本発明に係る配線の形成方法は、汎用性の高い配線形成用基板10上に配線を形成するので、配線形成時の設計の自由度が非常に高いものとなる。
【0061】
なお、前記配線形成用基板10の撥液領域11の格子パターンをより微細なものとすれば、図5に示すように、インク13を斜め方向に吐出し、斜め配線も精度良く形成できる。
【0062】
続いて、本発明の配線の形成方法は、図6に示すような液晶装置等のスイッチング素子として用いられる薄膜トランジスタ(TFT)の一部及びそれに接続する配線を形成する際に適用可能である。図6において、TFTを有するTFT基板P上には、ゲート配線40と、このゲート配線40に電気的に接続するゲート電極41と、ソース配線42と、このソース配線42に電気的に接続するソース電極43と、ドレイン電極44と、ドレイン電極44に電気的に接続する画素電極45とを備えている。ゲート配線40はX軸方向に延びるように形成され、ゲート電極41はY軸方向に延びるように形成されている。また、ゲート電極41の幅H2はゲート配線40の幅H1よりも狭くなっている。これらゲート配線40及びゲート電極41を、本発明に係る配線パターンの形成方法で形成することができる。
【0063】
以下、TFTを製造する方法について図7、8を参照しながら説明する。
【0064】
まず、TFTを形成するための基板として、上記配線形成用基板10を形成する。この配線形成用基板10には、上述したように撥液領域11に囲まれた、ドット状の親液領域12が規則的に配置されている。
【0065】
ゲート走査電極形成工程では、前記配線形成用基板10上に導電性材料を含む液滴をインクジェット法を用いて吐出することでゲート配線40及びゲート電極41を形成する。
【0066】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−Si,Ti,Mo,Ta、導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。前記配線形成用基板10上に形成されたゲート配線40及びゲート電極41を構成する導電性インク(インク13)は、前記親液領域12に良好に保持されるとともに、隣接する親液領域12の間の撥液領域11上も覆うことで、微細なパターンとなる。
【0067】
また、図6に示したように、ゲート電極41の幅H2はゲート配線40の幅H1よりも狭く形成する必要がある。そこで、図7に示すように、ゲート電極41を構成する領域には、親液領域12が例えば2列含まれるようにインク13を吐出することでパターンを描画しする。そして、ゲート配線40を構成する領域には、親液領域12が3列以上(図7中では3列)含まれるようにインク13を吐出する。これにより、幅の異なるパターン(ゲート配線40及びゲート電極41)P3,P4を基板上に精度良く形成できる。そして、このパターンP3,P4を乾燥し焼成することで、前記パターンP3からゲート配線40が形成され、前記パターンP4からゲート電極41が形成される。以上の工程により、配線形成用基板10上にゲート配線40及びゲート電極41が良好に形成できる。
【0068】
次に、図8(a)に示すように前記ゲート電極41及び図示されないゲート配線40を覆って、例えばCVD法等を用いてゲート絶縁膜31を形成する。なお、図8中では、ゲート電極41周辺部を形成する工程を図示している。前記ゲート絶縁膜31として窒化シリコンを形成した。なお、本実施形態では、ゲート絶縁膜31を成膜した後、平坦化処理を施しており、これにより前記ゲート絶縁膜31の上面は平坦面となる。
【0069】
次に、図8(b)に示すように、前記ゲート絶縁膜31上に、プラズマCVD法により、活性層30、及びコンタクト層29の連続成膜を行う。活性層30としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層29としてn型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。
【0070】
次に、図8(c)に示すように、ゲート絶縁膜31の上面に、フォトリソグラフィ法を用いてバンク34を形成する。このバンク34を構成する材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が好適に用いられる。
【0071】
このバンク34に撥液性を持たせるためにCFプラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク34の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)が充填されたものを採用してもよい。この場合には、CFプラズマ処理等を省略することができる。
【0072】
次に、図8(c)に示すように、前記バンク34で区画された領域に、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することで、図8(d)に示すように、前記ゲート電極41に対して交差するソース電極43及びドレイン電極44を形成する。
【0073】
ソース電極43及びドレイン電極44を形成する際には、最初にNiからなる金属保護層が形成され、次に銀からなる導電膜層が形成され、最後にNiからなる金属保護層が形成される。最初に金属保護層が形成されるのは、銀が窒化シリコン活性層、アモルファスシリコン膜、n型シリコン膜に拡散することを防ぐためである。
【0074】
この時の導電性材料としては、Ag、Al、Au、Cu等の導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたソース電極43及びドレイン電極44は、バンク34に十分な撥液性が予め与えられているので、バンク34内からのはみ出しを抑制することができる。
【0075】
また、ソース電極43及びドレイン電極44を配置した溝34aを埋めるように絶縁材料37が配置される。以上の工程により、配線形成用基板10上に設けられたゲート絶縁膜31上には、バンク34と絶縁材料37からなる平坦な上面32が形成される。
【0076】
さらに、前記上面32上に、コンタクトホール39を介してドレイン電極44に接続される画素電極(ITO)45が形成される。なお、前記ソース配線42を形成する際に、本発明に係る配線の形成方法を用いてもよい。
【0077】
(プラズマディスプレイの製造方法)
続いて、プラズマディスプレイの製造方法の一実施形態によって得られたプラズマディスプレイについて図面を参照しながら説明する。
【0078】
図9は、プラズマディスプレイ100を示す分解斜視図である。このプラズマディスプレイ100は、互いに対向して配置されたガラス基板(一方の基板)101とガラス基板(他方の基板)102と、これらの間に形成された放電表示部110とから概略構成されている。
【0079】
放電表示部110は、複数の放電室116が集合されてなり、複数の放電室116のうち、赤色放電室116(R)、緑色放電室116(G)、青色放電室116(B)の3つの放電室116が対になって1画素を構成するように配置されている。前記(ガラス)基板101の上面には所定の間隔でストライプ状にアドレス電極111が形成され、それらアドレス電極111と基板101の上面とを覆うように誘電体層119が形成され、さらに誘電体層119上においてアドレス電極111、111間に位置して各アドレス電極111に沿うように隔壁115が形成されている。なお、隔壁115においてはその長手方向の所定位置においてアドレス電極111と直交する方向にも所定の間隔で仕切られており(図示略)、基本的にはアドレス電極111の幅方向左右両側に隣接する隔壁と、アドレス電極111と直交する方向に延設された隔壁により仕切られる長方形状の領域が形成され、これら長方形状の領域に対応するように放電室116が形成され、これら長方形状の領域が3つ対になって1画素が構成される。また、隔壁115で区画される長方形状の領域の内側には蛍光体117が配置されている。蛍光体117は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するもので、赤色放電室116(R)の底部には赤色蛍光体117(R)が、緑色放電室116(G)の底部には緑色蛍光体117(G)が、青色放電室116(B)の底部には青色蛍光体117(B)が各々配置されている。
【0080】
次に、前記ガラス基板102側には、先のアドレス電極111と直交する方向に複数のITOからなる透明表示電極112がストライプ状に所定の間隔で形成されるとともに、高抵抗のITOを補うために金属からなるバス電極112aが形成されている。また、これらを覆って誘電体層113が形成され、さらにMgOなどからなる保護膜114が形成されている。そして、前記基板101とガラス基板102とが、前記アドレス電極111…と表示電極112…を互いに直交させるように対向させて相互に貼り合わされ、基板101と隔壁115とガラス基板102側に形成されている保護膜114とで囲まれる空間部分を排気して希ガスを封入することで放電室116が形成されている。なお、ガラス基板102側に形成される表示電極112は各放電室116に対して2本ずつ配置されるように形成されている。 前記アドレス電極111と表示電極112は図示略の交流電源に接続され、各電極に通電することで必要な位置の放電表示部110において蛍光体117を励起発光させて、カラー表示ができるようになっている。
【0081】
本実施形態に係るプラズマディスプレイの製造方法では、前記ガラス基板101側に設けられた前記アドレス電極111と、前記ガラス基板102側に設けられた前記バス電極112aとを上述した配線の形成方法によって形成している。
【0082】
すなわち、これらアドレス電極111やバス電極112aは、上述した撥液領域11に囲まれた多数のドット状の親液領域12が規則的に配置されてなる配線形成用基板10上に導電性インク(インク13)を吐出して、焼成することで形成されている。
【0083】
したがって、前記プラズマディスプレイ100の製造方法は、精度の良い形成されたアドレス電極111やバス電極112aを形成できるので、高性能、かつ信頼性の高いプラズマディスプレイ100を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】配線形成用基板の概略構成を示す平面図である。
【図2】配線形成用基板の変形例を示す図である。
【図3】配線形成用基板上にインクを吐出した状態を示す図である。
【図4】配線形成用基板上に配線パターンを描画する工程を説明する図である。
【図5】配線形成用基板上に斜め描画を行う工程を説明する図である。
【図6】薄膜トランジスタの構成を示す図である。
【図7】ゲート配線及びゲート電極を形成する工程を説明する図である。
【図8】図7に続くTFTを製造する工程を説明する図である。
【図9】プラズマディスプレイを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
10A…ガラス基板(基板)、10…配線形成用基板、11…撥液領域、12…親液領域、13…インク(導電性機能液)、100…プラズマディスプレイ、111…アドレス電極、112a…バス電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、撥液領域に囲まれる多数のドット状の親液領域が、規則的に配設されてなることを特徴とする配線形成用基板。
【請求項2】
前記撥液領域は、前記基板上に格子状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配線形成用基板。
【請求項3】
前記親液領域は、前記基板上に千鳥状に配設されてなることを特徴とする請求項1に記載の配線形成用基板。
【請求項4】
基板上に、撥液領域に囲まれる多数のドット状の親液領域を、規則的に配設する工程と、
前記基板上に、液滴吐出法を用いて導電性機能液を配線パターン状に吐出する工程と、該導電性機能液を焼成して配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とする配線の形成方法。
【請求項5】
前記液滴吐出法により吐出される前記導電性機能液の着弾径が、前記撥液領域の幅よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の配線の形成方法。
【請求項6】
互いに対向して配置される一対の基板と、一方の基板に設けられたアドレス電極と、他方の基板に設けられたバス電極とを備えたプラズマディスプレイの製造方法において、
基板上に、撥液領域に囲まれる多数のドット状の親液領域を、規則的に配設する工程と、
前記配線形成用基板上に、液滴吐出法を用いて導電性機能液を配線パターン状に吐出する工程と、該導電性機能液を焼成することで、前記アドレス電極及びバス電極の少なくとも一方を形成する工程と、を備えたことを特徴とするプラズマディスプレイの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−28292(P2008−28292A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201664(P2006−201664)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】