説明

雨量検知式制御装置

【課題】雨量に応じて車間距離制御や車間距離警報などの制御を実行する場合に、トンネル等により一時的に雨が遮断されることがあってもドライバに違和感を与えることのない制御を行うことができる雨量検知式制御装置を提供すること。
【解決手段】雨量に応じて車両の制御を行う装置において、雨量が所定雨量を超えているか否かを判断する雨量判断手段と、雨量が所定雨量を超えているときには雨量に応じた車両の制御を解除する制御解除手段と、トンネル等により雨が遮断される距離を取得する雨滴遮断距離取得手段と、この距離が所定距離より短いときには、雨量が所定雨量を超えていなくても、解除した車両の制御が復帰するのを禁止する制御復帰禁止手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨量検知式制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、先行車に自動追従させるための車間距離制御装置において、ワイパの複数の動作モードの切り替えにより相対的に降雨量が多い場合に使用する動作モード状態が選択されたと判断されると、車間距離制御を解除して、視界不良に起因したドライバのブレーキ操作遅れやすべり易い路面に対応できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−34693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術にあっては、ワイパの動作モードのみで車間距離制御の解除を判断しているので、雨滴検知式オートワイパを備えた車両においては、トンネル等の雨を遮断する構造物に入ると雨滴が検知されなくなってそれまで作動させていたワイパが停止してしまい、車間距離制御を再開するようになる。この場合、構造物が雨を遮断する距離が短いと、車間距離制御は再開されてもすぐにワイパが動作して解除されてしまうので、ドライバに違和感を与えてしまうことがあるという問題があった。このような問題は、車間距離制御に限らずその他の雨滴検知による車両制御するもの、特に車両の走行制御にも同様に生じる。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、検知した雨滴などによる雨量に応じて車間距離制御や車間距離警報などの制御を実行する場合に、地上の構造物等により一時的に雨量検知が遮断されることがあってもドライバに違和感を与えることのない制御を行うことができる雨量検知式制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、雨量検知手段で検知した雨量に応じて車両の制御を解除及び復帰させる雨量検知式制御装置において、雨量検知手段により検知した雨量が所定雨量を超えているか否かを判断する雨量判断手段と、雨量判断手段にて雨量が所定雨量を超えていると判断したときは雨量検知式制御装置での雨量に応じた車両の制御を解除する制御解除手段と、自車の走行路にある構造物に起因して前記自車に対する降雨が遮断される雨滴遮断距離を取得する雨滴遮断距離取得手段と、雨滴遮断距離取得手段にて取得した雨滴遮断距離が所定距離より短いときには、雨量検知手段により検知した雨量が所定雨量を超えていなくても、解除した車両の制御が雨量検知遮断により復帰するのを禁止する制御復帰禁止手段とを備えた。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、検知した雨量に応じて制御を実行する場合に、地上の構造物等により一時的に雨量検知が遮断されることがあってもドライバに違和感を与えることのない制御を行うことのできる雨量検知式制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の雨量検式制御装置を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0008】
本実施例1は、本発明の雨量検知式制御装置を車間距離制御装置に適用したものである。
【0009】
まず、構成を説明する。
【0010】
図1は本実施例1の車間距離制御装置を搭載した車両の全体システム図であり、図2は車間距離制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0011】
車間距離制御装置搭載車は、エンジン1と、エンジン出力を走行状態に応じて変速する自動変速機2と、燃料噴射制御装置5による燃料噴射制御、及び変速機制御装置6による変速制御を利用した駆動力制御(場合によりエンジンブレーキ制御)と、制動流体圧制御装置8を利用した制動力制御と、後述の車間距離の制御を行う制御装置12と、車間距離制御を行うために自車前方の物体との距離や相対速度を検出する前方状態検出装置13と、を備えている。
【0012】
エンジン1はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等からなり、エンジン1からの出力は自動変速機2に入力される。なお、エンジン1は内燃機関にかかわらず、電気モータなど駆動力を発生するものであれば良く、特に限定しない。
【0013】
自動変速機2は、制御装置12からの変速信号に応じて変速機制御装置6内の電磁ソレノイド弁を切り替えてクラッチ、ブレーキを締結、解放することにより、入出力間で変速を行い、自動変速機2からの出力された駆動力を減速機3を介して、駆動輪4a、4bへ伝達する。
【0014】
制動流体圧制御装置8はブレーキペダル10により操作されるマスタシリンダ11からの制動流体圧を、制御装置12から制御信号により調圧して、各車輪のホイールシリンダ7a〜7dへ供給する。
【0015】
制御装置12は、制動流体圧センサ9、前方状態検出装置13、車輪速センサ14、アクセル開度センサ15、手動スイッチ16等の各種検出装置から検出信号が入力され、これらの検出信号を基に演算を行って、燃料噴射制御装置5、変速機制御装置6、制動流体圧制御装置8等に制御信号を出力する。
【0016】
図2に示すように、車間距離制御装置100は、自車の車速に応じ自車と先行車との車間距離から目標車速を算出決定する車間制御部101と、設定車速と車間制御部101で決定された目標走行速度との一方を選択して速度指令値とする車速指令値選択部102と、速度指令値によりエンジン等の駆動力やブレーキ等の制動力を制御する車速制御部103と、を備えている。
【0017】
車速指令値選択部102には、手動スイッチ16からの操作信号が入力される。手動スイッチ16は、たとえばボタンスイッチで構成され、ドライバがボタンスイッチを操作することにより希望の設定車速や設定車間距離を設定できる。設定車速は、例えば50km/hから100km/hの間でボタンスイッチの操作により5km/hごとに入力設定できる。また設定車間距離は、例えば「長」、「中」、「短」といった3段階の車間距離をボタンスイッチを押すごとに切り替え設定ができる。
【0018】
前方状態検出装置13は、車両の前部車体に設けられ、自車の進行方向に向けて照射波等を照射する発信器と、自車の前方にある物体で反射されてきた反射波を受信する受信器とを備える。なお照射波としてはレーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線レーダ、ソナー等が用いられる。この前方状態検出装置13は、反射波から自車の前方に先行車がいるか否かの判定や、自車と先行車との車間距離及び相対速度を演算処理により求め、ここで生成した車両有無の判定情報、車間距離情報や相対速度情報を車間制御部101と車速制御部103とに出力する。また、後述する処理により自車走行路上を覆う構造物(トンネルなど)を検出し、構造物が走行路を覆う距離を算出し、車間制御部101に出力する。
【0019】
車輪速センサ14は、車輪速度Vwjを検出する。車輪速度Vwjにより自車の車速を算出し、この車速情報を車間制御部101及び車速制御部103に出力する。
【0020】
車間制御部101は、車間距離情報、相対速度情報、設定車速情報、設定車間距離情報等が入力されて、これらの情報から車速に応じた車間距離を設定し、併せて目標車速を算出する。
【0021】
車速指令値選択部102は、設定車速と目標車速とを比べて小さい方の車速を車速指令値として車速制御部103へ出力する。
【0022】
車速制御部103は、設定車速情報、設定車間距離情報、先行車車間距離情報、相対速度情報、及び車速情報等が入力されて、車間距離制御に応じて決定したエンジントルク指令値Tengを燃料噴射制御装置5に、また車間距離制御に応じて決定したブレーキトルク指令値Tbkを制動流体圧制御装置8にそれぞれ出力する。
【0023】
燃料噴射制御装置5は、車速制御部103から入力されたエンジントルク指令値Tengに応じ、燃料噴射量FIを制御する。
【0024】
制動流体圧制御装置8は、車速制御部103から入力されたブレーキトルク指令値Tbkに応じ、例えば、ABSアクチュエータを用い、車輪に制動力を付与するブレーキ液圧Pbkを作り出す。
【0025】
エンジン1及びホイールシリンダ7は、燃料噴射制御装置5による燃料噴射量FIと、制動流体圧制御装置8によるブレーキ液圧Pbkとに応じ、車両を定速走行させたり加速したり減速したりして車両が設定車間距離や設定車速となるように制御される。
【0026】
次に、作用を説明する。
【0027】
[定速走行]
車両の車間距離制御装置100は、前方状態検出装置13により先行車が検出されなかった場合には、手動スイッチ16でドライバが設定した設定車速を保つようにエンジン1の駆動力及びホイールシリンダ7a〜7dによる制動力を制御する。例えば、ドライバが手動スイッチ16にて設定車速を100km/hに設定したとすると、車間制御部101では、先行車Sが検出されていないので目標車速は出力されず、この結果、車速指令値選択部102では、手動スイッチ16から入力された設定車速情報の100km/hを選択して、100km/hを車速指令値として車速制御部103に出力する。その後、車速制御部103はドライバの設定車速100km/hを保つように車速情報等を監視しながら燃料噴射制御装置5を介して、エンジン1を制御する。
【0028】
[減速走行]
自車の進行方向に自車の現在車速より遅い先行車がいるときは、車間距離を保つように減速する。したがって、ドライバの設定車速(例えば100km/h)より遅い先行車(例えば80km/h)を検出したときは、車間制御部101ではドライバの設定車間情報を基に速度に応じた車間距離と、自車と先行車との相対速度とから算出した目標車速を車速指令値選択部102に出力する。車速指令値選択部102では、手動スイッチ16からの設定車速情報(ここでは100km/h)と、車間制御部101からの目標車速情報(ここでは80km/h)とが入力されるが、車速の小さい方の目標車速を車速指令値(ここでは80km/h)として車速制御部103へ出力する。車速制御部103では入力された車速指令値に基づき、設定車間距離を達成するように燃料噴射制御装置5及び制動流体圧制御装置8を制御して、エンジン1の駆動力及びホイールシリンダ7a〜7dによる制動力を制御する。
【0029】
[追従走行]
ドライバが設定した設定車間距離を基に速度に応じて算出した車間距離保って、先行車に追従して走行するように車両を制御する。車間制御部101では、入力された車速情報、車間距離情報、相対車速情報、設定車間距離情報基づいて、車速に応じた車間距離を設定し、目標車速を算出する。車速指令値選択部102では、ドライバの設定車速情報と車間制御部101からの目標車速とから、車速の小さいものを選択し指令車速値として車速制御部103に出力する。車速制御部103では、車速指令値等により燃料噴射制御装置5及び制動流体圧制御装置8を介して、自車の加減速制御を行う。
【0030】
なお、このときの車速はドライバが設定した設定車速を上限とし、車速が設定車速を超えると追従走行をやめて、定速走行を行う。
【0031】
[加速走行]
自車の進行方向にいる先行車が走行レーンを変更するなどしてそれまでの走行レーンからいなくなったときには、ドライバの設定車速を上限に加速をする。このとき、車速指令値選択部102では、車間制御部101では目標車速が設定されないのでドライバの設定車速を車速指令値として車速制御部103へ入力する。車速制御部103では、燃料噴射制御装置5よる燃料噴射量を増やして、自車を車速指令値まで加速させる。
【0032】
[車間距離制御解除]
車間距離制御は以下の状態になったときには、制御を解除する。
【0033】
(1)降雨量が多いとき
(2)ブレーキペダル10を踏んだとき
(3)セレクトレバー(図示しない)をD(ドライブ)位置以外にしたとき
(4)車速が40km/hを下回ったとき
上記以外にもシステムに異常が発生する等が生じた場合には車間距離制御を解除する。
【0034】
[雨天時制御解除]
降雨量が多いときにはドライバにとって視界が悪く、このような状態で車間距離制御を行っていると、ドライバは車両制御をシステムに頼っているために、例えば急な割り込み車両等にもブレーキ操作等が間に合わない可能性がある。そのため、降雨量が多いときには車間距離制御を解除するようにする。そして、降雨量が少なくなったときには車間距離制御を復帰するようにする。
【0035】
また、ここでは降雨量のみについて論じたが、もちろん降雪量の場合も同様にしても良い。
【0036】
[車間距離制御再開禁止処理]
本実施例1では、降雨量が多く車間距離制御を解除した状態でトンネル等の路上構造物の中に入りドライバやオートワイパシステムがワイパを一時的に止めてしまうことで、距離が短い路上構造物であるにもかかわらず車間距離制御の復帰が行われることの不具合を解消するため、雨を遮断する構造物の距離を計測し、所定距離より短い場合は車間距離制御復帰を禁止するようにしている。
【0037】
図3は車間距離制御処理を降雨量又はドライバのブレーキ操作により解除する場合と、構造物が雨を遮断する距離より構造物内での車間距離制御の再開又は解除する場合とを制御する流れを示したフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0038】
ステップS1では、車輪速センサ14から車輪速度Vwjを、アクセル開度センサ15からアクセル開度Accを、制動流体圧センサ9から制動流体圧Pwを、手動スイッチ16から設定車速Vcと設定車間距離dcとを、燃料噴射制御装置5から駆動トルクTwを、前方状態検出装置13から先行車との車間距離dと構造物が雨を遮断する雨滴遮断距離Lと、をそれぞれ読み込む。雨滴遮断距離Lは前方状態検出装置13を用いて以下に示す処理を用いて算出される。
【0039】
図4は、雨滴遮断距離Lの算出処理の方法を説明した図である。前方状態検出装置13は雨滴遮断距離Lの算出のために、降雨量が多いと判断され車間距離制御が解除されている場合には、先行車検出のための横方向左右の走査に加え、上下にも照射波を走査する。すなわち、この場合には、例えば照射波を左右に10往復走査すると、上下に1往復走査するといったように、点線が示すような範囲で上下にも走査させる。このとき、路上にトンネルのような構造物が検出されると、この構造物の入口側上部端と自車との距離L1と水平位置からの角度θ1と、出口側上部端と自車との距離L2と水平位置からの角度θ2とを検出し、下記式(1)から雨滴遮断距離Lを算出する。
【0040】
L=L2×cosθ2−L1×cosθ1 ・・・ (1)
なお、このステップS1の雨滴遮断距離Lの算出は、本発明の雨滴遮断距離取得手段にあたる。
【0041】
ステップS2では、ブレーキペダル10が操作されたか否かを判断し、YESであればステップS19へ移行して、NOであればステップS3へ移行する。
【0042】
ステップS3では、車輪速センサ14からの信号を処理して、自車の車速Vを算出する。
【0043】
ステップS4では、ワイパの作動モードが高速モード又は低速モードであるか否かを判定し、YESであれば降雨量が多いとしてステップS10へ、NOであれば降雨量が少ないとしてステップS5へ移行する。なお、このステップS4は本発明の雨量検知手段と雨量判断手段を構成する。
【0044】
ステップS5では、車間制御部101において車速Vに応じた目標車間距離drを算出し、ステップS6へ移行する。目標車間距離drは、車速Vに制御ゲインを乗じた値と、制御定数との和である。なお、この制御ゲイン及び制御定数は手動スイッチ16で設定された設定車間距離に応じて設定される。
【0045】
ステップS6では、降雨フラグfRAINが"1"であるか否かを判定し、YESであればステップS7へ移行し、NOであればステップS8へ移行する。降雨フラグfRAINはワイパの作動モード等から降雨量が多いと判定すると"1"が立てられ、降雨量が少ないと判定されると"0"が立てられる。つまりステップS6では、自車は雨の中を走行してきた後に、トンネル等の構造物の中に入り雨が遮断された状態で走行しているのか、又は晴れている若しくは雨が遮断された状態を走行してきたのか、を判断している。
【0046】
ステップS7では、雨滴遮断距離Lが目標車間距離drより長いか否かを判定し、YESの場合はステップS8へ移行し、NOの場合はステップS13へ移行する。なお、ステップS7は本発明の制御復帰禁止手段を構成する。
【0047】
ステップS8では、降雨量が少ないとして降雨フラグfRAINに"0"を立ててステップS9へ移行する。
【0048】
ステップS9では、自車と先行車との相対速度Vrを算出し、ステップS14へ移行する。
【0049】
速度指令値選択部102において指令車速値Vsを算出し(ステップS14)、車速制御部103において自車の車速Vと指令車速値Vsとの偏差に基づいて指令加速度aを算出し(ステップS15)、この指令加速度aに基づいて、ブレーキトルク指令値Tbk(ステップS16)、エンジントルク指令値Teng(ステップS17)を算出する。ブレーキトルク指令値Tbk及びエンジントルク指令値Tengにより、制動流体圧制御装置8及び燃料噴射制御装置5へ制駆動信号を出力する(ステップS18)。
【0050】
ステップS4でワイパの作動モードが高速モード又は低速モードであると、降雨量が多いと判断され降雨フラグfRAINに"1"を立て、ステップS11へ移行する。
【0051】
ステップS11では、fRAINの前回値が"0"であったか否かを判断し、YESであればステップS12へ移行し、NOであればステップS13へ移行する。つまりステップS11では、すでに車間距離制御が解除され、定速走行を行っているか否かを判断している。
【0052】
ステップS12では、現在の車速で定速走行を行うために設定車速Vcを現在の車速Vに設定し、ステップS13では定速走行制御に設定し、ステップS14へ移行する。
【0053】
ステップS2においてブレーキが操作されたと判断されると、ブレーキトルク指令値Tbkとエンジントルク指令値Tengに"0"を入力し(ステップS19、ステップS20)、制動流体圧制御装置8及び燃料噴射制御装置5へ制駆動信号を出力する(ステップS21)。
【0054】
なお、上記制御はエンジン1とホイールシリンダ7とによる制駆動力制御を説明したが、併せて自動変速機2の変速制御も行われ、適切な制駆動力を得られるように制御される。
【0055】
次に、本実施例1の物体検出装置の効果を説明する。
【0056】
(1)自車走行路上の構造物により降雨が遮断された場合に、降雨が遮断される距離Lが所定距離より短い場合には車間距離制御の復帰を禁止するので、車間距離制御の解除と復帰とを短時間で繰り返すことを防止できる。したがって、制御の解除と復帰が短時間で繰り返すことによるドライバの違和感を軽減することができる。
【0057】
(2)所定距離が目標遮断距離となるように設定したので、雨滴遮断距離Lが目標遮断距離よりも短い場合は、車間距離制御の再開復帰を禁止することができ、構造物内で目標車間距離を維持できない不必要な車間距離制御を行わず、ドライバの違和感を軽減することができる。
【0058】
(3)先行車との車間距離を検出する前方状態検出装置13を、走行路上の構造物による雨滴遮断距離の検出にも用いるので、コストの抑制をできる。
【0059】
以上、本発明の車両の発進摩擦要素制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。
【0060】
たとえば、雨滴遮断距離を取得するのに、自車からの照射波を用いる代わりに、自車の現在位置を検出する現在位置検出装置と、地図上に路上構造物に関する情報を記憶する地図情報記憶装置とを有するナビゲーションシステムを用い、現在位置検出装置にて検出した自車の現在位置に基づき、地図情報記憶装置から得た路上構造物に関する情報から雨滴遮断距離を取得するようにしてもよい。この場合、自車周辺の路上構造物の情報から雨滴遮断距離を正確に取得することができるので、車間距離制御の解除と復帰と正確に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、検知した雨量に応じて、先行車との車間距離を保って追従を行う車間距離制御の解除や復帰を行う場合だけでなく、車間距離警報制御など雨量に応じて行われる他の車両制御にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1に係る、車間距離制御装置搭載車の全体システム図である。
【図2】実施例1に係る、車間距離制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図3】実施例1に係る、車間距離制御装置において行われる制御の流れを示したフローチャートである。
【図4】実施例1に係る、雨滴遮断距離Lの算出処理の方法を説明した図である。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン
2 自動変速機
3 減速機
4a、4b、4c、4d 駆動輪
5 燃料噴射制御装置
6 変速機制御装置
7a、7b、7c、7d ホイールシリンダ
8 制動流体圧制御装置
9 制動流体圧センサ
10 ブレーキペダル
11 マスタシリンダ
12 制御装置
13 前方状態検出装置
14 車輪速センサ
15 アクセル開度センサ
16 手動スイッチ
100 車間距離制御装置
101 車間制御部
102 車速指令値選択部
102 速度指令値選択部
103 車速制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨量検知手段で検知した雨量に応じて車両の制御を解除及び復帰させる雨量検知式制御装置において、
前記雨量検知手段により検知した雨量が所定雨量を超えているか否かを判断する雨量判断手段と、
前記雨量判断手段にて雨量が前記所定雨量を超えていると判断したときは前記雨量検知式制御装置での雨量に応じた車両の制御を解除する制御解除手段と、
前記自車の走行路にある構造物に起因して前記自車に対する降雨が遮断される雨滴遮断距離を取得する雨滴遮断距離取得手段と、
前記雨滴遮断距離取得手段にて取得した前記雨滴遮断距離が所定距離より短いときには、前記雨量検知手段により検知した雨量が前記所定雨量を超えていなくても、解除した車両の制御が雨量検知遮断により復帰するのを禁止する制御復帰禁止手段と、
を備えることを特徴とする雨量検知式制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の雨量検知式制御装置において、
前記所定距離が前記目標車間距離となるように設定したことを特徴とする雨量検知式制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の雨量検知式制御装置において、
前記雨滴遮断距離取得手段は、自車から発した照射波が前記路上構造物により反射された反射波に基づき、前記雨滴遮断距離を取得することを特徴とする雨量検知式制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の雨量検知式制御装置において、
前記雨滴遮断距離取得手段は、自車の現在位置を検出する現在位置検出装置と、地図上に路上構造物に関する情報を記憶する地図情報記憶装置とを備え、前記現在位置検出装置にて検出した自車の現在位置に基づき、前記地図情報記憶装置から得た前記路上構造物に関する情報から前記雨滴遮断距離を取得することを特徴とする雨量検知式制御装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の雨量検知式制御装置において、
前記雨滴遮断距離取得手段は、路上に設置され路上構造物に関する情報を送信可能な路上通信機から、前記路上構造物に関する情報を受信する受信機を備え、前記受信機で受信した前記路上構造物に関する情報に基づき前記雨滴遮断距離を取得することを特徴とする雨量検知式制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の雨量検知式制御装置において、
前記車両の制御は、車間距離制御又は車間距離警報制御であることを特徴とする雨量検知式制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−36075(P2006−36075A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220427(P2004−220427)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】