説明

電子デバイス及びその製造方法

【課題】 電子デバイス及びその製造方法に関し、カーボンナノチューブの特性を生かすとともに、よりに良好な電気伝導特性をもつ配線構造を提供する。
【解決手段】 カーボンナノチューブ束3の間隙を重合フラーレン6で埋め込んだカーボンベース配線を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子デバイス及びその製造方法に関するものであり、特に、半導体集積回路装置等の電子デバイスにおけるカーボンナノチューブ束を用いたビア配線や埋込配線の欠点を補うための構成に特徴のある電子デバイス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、埋込配線構造やビア構造を形成する場合には銅などが用いられていたが、微細化にともない電気伝導特性の向上が望まれていた。そこで、単体での電気伝導特性に優れるカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)を用いて特性向上を図ろうと開発が進められている。
【0003】
このカーボンナノチューブは、直径がおおよそサブナノ乃至数10nmのサイズであり、長さは数100μm程度まで成長が可能である。
【0004】
カーボンナノチューブは形状異方性に起因する一次元電子的性質からバリスティク伝導によって電子が流れ、最大電流密度は106 A/cm2 とCuよりも単位面積当たり100倍以上の電流を流すことができるほどエレクトロマイグレーション耐性が大きいという特徴がある。
【0005】
したがって、デバイス構造及び配線の微細化にともなって、配線を流れる電流密度は大きくなるが、この様なカーボンナノチューブを配線として用いることによって、従来のCu配線における限界を大きく超えることが可能になる。
【0006】
具体的には、カーボンナノチューブでビア配線を形成したり、或いは、成長方向を制御するために成長時に電界を印加して電界の方向にカーボンナノチューブを成長させて横方向配線層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−329723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンナノチューブを用いて配線ビア構造を形成しようとする場合、できるだけ沢山のカーボンナノチューブを束ねて密度を増やし電気伝導特性を向上させることがキーポイントとなる。
【0008】
しかしながら、カーボンナノチューブの密度を向上させることが難しく、その性能を十分に活かすことができないのが現状である。
【0009】
したがって、本発明は、カーボンナノチューブの特性を生かすとともに、より良好な電気伝導特性をもつ配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、電子デバイスにおいて、カーボンナノチューブ束3の間隙を重合フラーレン6で埋め込んだカーボンベース配線を有することを特徴とする。
【0011】
このように、カーボンナノチューブ束3の間隙を重合フラーレン6で埋め込むことにより、カーボンナノチューブ束3の低密度性に起因する電気伝導性の低さを重合によって電気伝導性を発現した重合フラーレン6の断面積によって補うことができる。
また、このようなカーボンベース配線は、炭素原子のみで構成されるため、製造プロセスがシンプルになるとともに、化学的安定性が向上する。
【0012】
この場合、カーボンベース配線は、ビア配線或いは埋込配線の少なくとも一方を構成するものであり、カーボンベース配線が埋込配線を構成する場合には、カーボンナノチューブ束3を埋込配線の延在方向と略直交するように構成しても良いし、或いは、カーボンナノチューブ束3の成長方向が埋込配線の延在方向に沿うようにしても良い。
【0013】
カーボンナノチューブ束3を埋込配線の延在方向と略直交するように構成した場合には、製造工程が簡素化され、一方、カーボンナノチューブ束3の成長方向が埋込配線の延在方向に沿うように構成した場合には、電気伝導性がより良好になる。
【0014】
また、本発明は、電子デバイスの製造方法において、層間絶縁膜1に凹部2を形成したのち、凹部2にカーボンナノチューブ束3を成長させ、次いで、カーボンナノチューブ束3の空間間隙にフラーレン4を充填した後に電子線5を照射することによってフラーレン4を重合させて重合フラーレン6に変換する工程を有することを特徴とする。
【0015】
このように、カーボンナノチューブ束3の空間間隙に充填したフラーレン4を重合させる工程において、電子線5の照射を用いることによって、既に成長しているカーボンナノチューブ束3を破壊することなく、重合反応を行うことができる。
【0016】
この場合、フラーレン4をカーボンナノチューブ束3の空間間隙に充填した後、イオン衝撃を行って、カーボンナノチューブ束3の空隙におけるフラーレン4の充填密度を高めることが望ましく、それによって、重合フラーレン6の断面積の増加により電気伝導性をより高めることができる。
【0017】
また、上述の一連の工程を複数回繰り返すことによって凹部2にカーボンナノチューブ束3の間隙を重合フラーレン6で埋め込んだカーボンベース配線を設けるようにしても良く、それによって、カーボンナノチューブ束3が成長途中でファンデルワース力によって結合することがないので、カーボンナノチューブ束3が凹部2全体に超高密度に成長させることができる。
【0018】
また、本発明は、電子デバイスの製造方法において、層間絶縁膜1に凹部2を形成したのち、凹部2にカーボンナノチューブ束3を成長させる工程とカーボンナノチューブ束3の空間間隙にフラーレン4を充填する工程を複数回繰り返す工程を有することを特徴とする。
【0019】
このように構成することによって、カーボンナノチューブ束3が途中でチューブ間引力、即ち、ファンデルワース力によって結合してしまうことがないので、凹部2の底部から開放端に渡ってカーボンナノチューブ束3を超高密度に成長させることができる。
【0020】
この場合の層間絶縁膜1に設けた凹部2は、ビアホール或いは埋込配線用溝の少なくとも一方を構成するものであり、凹部2が埋込配線用溝を構成する場合には、埋込配線用溝内に、埋込配線用溝の延在方向と略直交方向にカーボンナノチューブ束3を成長させても良いし、或いは、埋込配線用溝に沿って横方向成長させても良い。
【0021】
埋込配線用溝の延在方向と略直交方向にカーボンナノチューブ束3を成長させる場合には、ビア配線の形成工程と同じであるので製造工程が簡素化され、一方、埋込配線用溝に沿って横方向成長させる場合には、触媒ブロックを形成するとともに埋込配線用溝の一側端部に触媒ブロックを露出させる工程が必要になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ビア配線或いは埋込配線をカーボンナノチューブの特長を生かしつつ、炭素原子のみから構成しているので化学的な安定性を高めるとともに、良好な電気伝導特性を有する配線を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、半導体集積回路装置等の電子デバイスを構成する層間絶縁膜にビアホール或いは埋込配線用溝の少なくとも一方を構成する凹部を形成したのち、凹部にカーボンナノチューブ束を成長させ、次いで、カーボンナノチューブ束の空間間隙にC60等のフラーレンを充填した後にイオン衝撃によってフラーレンの充填密度を高め、次いで、電子線を照射することによってフラーレンを重合させて重合フラーレンに変換して、カーボンナノチューブ束と重合フラーレンからなるカーボンベース配線を構成するものである。
【実施例1】
【0024】
ここで、図2乃至図6を参照して、本発明の実施例1のカーボンベース配線の形成方法を説明するが、半導体基板内の素子構造は本発明の技術内容とは直接関連しないので、最上層の構成のみを説明する。
図2参照
まず、下層配線11上を覆う下層層間絶縁膜12にレジストパターン13をマスクとして下層配線11に達するビアホール14を形成したのち、全面にCo微粒子15を撒布する。
【0025】
次いで、レジストパターン13を除去したのち、原料ガスとしてアセチレン(C2 2 )、キャリアガスとしてH2 を用いたホットフィラメントCVD法を用いて、基板温度を例えば600℃とした状態でCo微粒子15の触媒作用を利用してカーボンナノチューブ束16を、ビアホール14から若干突出する長さまで成長させてビア配線ベースとする。
【0026】
次いで、再び、レジストを塗布したのち、カーボンナノチューブ束16を成長させたビアホール14が露出するように露光・現像して開口部18を有するレジストパターン17を形成したのち、慣用の形成方法、例えば、真空蒸着法或いはスパッタリング法を用いてC60に代表されるフラーレン19を撒布し、カーボンナノチューブ束16の隙間をフラーレン19で埋め込む。
【0027】
図3参照
次いで、Arイオン20を照射することによって埋め込んだフラーレン19をビアホール14の底部まで十分に充填する。
【0028】
次いで、レジストパターン17を除去したのち、数keV、例えば、3keVの加速エネルギーで、例えば、20nAの電子線21を1分照射することによって、フラーレン19を重合させて重合フラーレン22に変換してカーボンベースビア配線23を形成する。 なお、この時、フラーレン19の反応性は高いので、この電子線照射工程でカーボンナノチューブが破壊されることはない。
【0029】
図4参照
図4は、重合フラーレンの概略的分子構造の説明図であり、鎖状に結合したり、格子状に結合したり、或いは、六方最密構造状に結合したりして、フラーレン単体では中性の絶縁体であったものが電気伝導性を有するようになる。
【0030】
したがって、このカーボンベースビア配線23においては、密度が疎なカーボンナノチューブ束16では不足する電気伝導性と機械的強度を、重合によって電気伝導性を持つとともに強固に結合した重合フラーレン22で補って電流の流れる方向の断面積を増加する。
【0031】
図5参照
次いで、全面を上層層間絶縁膜24で覆ったのち、レジストパターン25をマスクとして露出部にカーボンベースビア配線23を含むように埋込配線用溝26を形成する。
【0032】
次いで、再び、全面にCo微粒子27を撒布したのちレジストパターン25を除去し、次いで、原料ガスとしてアセチレン(C2 2 )、キャリアガスとしてH2 を用いたホットフィラメントCVD法を用いて、基板温度を例えば600℃とした状態でCo微粒子27の触媒作用を利用してカーボンナノチューブ束28を、例えば、埋込配線用溝26の深さに相当する長さまで成長させて埋込配線ベースとする。
【0033】
次いで、再び、レジストを塗布したのち、カーボンナノチューブ束28を成長させた埋込配線用溝26が露出するように露光・現像して開口部30を有するレジストパターン29を形成したのち、再び、セルを用いてC60に代表されるフラーレン31を撒布し、カーボンナノチューブ束28の隙間をフラーレン31で埋め込む。
【0034】
図6参照
次いで、Arイオン32を照射することによって埋め込んだフラーレン31を埋込配線用溝26の底部まで十分に充填したのち、レジストパターン29を除去し、次いで、数keV、例えば、3keVの加速エネルギーで、例えば、20nAの電子線33を1分照射することによって、フラーレン31を重合させて重合フラーレン34に変換してカーボンベース埋込配線35を形成する。
【0035】
以降は、多層配線構造において必要とする層数の数だけ上記のビア配線の形成工程及び埋込配線の形成工程を繰り返すことによって半導体集積回路装置が完成する。
【0036】
このように、本発明の実施例1においては、電気的特性は優れているが、密度を十分に上げることが困難であったカーボンナノチューブビア或いはカーボンナノチューブ配線の欠点を重合フラーレンで補っているので、カーボンのみでビア或いは配線を構成することができ、それによって、電気的特性が優れるとともに化学的に安定なビア或いは配線を実現することができる。
【実施例2】
【0037】
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の実施例2のカーボンベース配線の形成方法を説明するが、この場合も半導体基板内の素子構造は本発明の技術内容とは直接関連しないので、最上層の構成のみを説明する。
図7参照
まず、上記の実施例1と全く同様にカーボンベースビア配線23を形成したのち、全面にスパッタリング法を用いて厚さが、例えば、100nmのTi膜を堆積させ、次いで、レジストパターン36をマスクとしてイオンミリングを施すことによって配線を形成する方向の幅が20nm以下、例えば、10nmで、配線を形成しない方向の幅が50nm以上、例えば、50nmのTiブロック37をカーボンベースビア配線23と重なるように形成する。
【0038】
次いで、レジストパターン36を除去したのち、スパッタリング法を用いて全面に触媒となる厚さが、例えば、2.5nmのCo膜38を全面に蒸着し、次いで、Tiブロック37の近傍のみを被覆するようにエッチングする。
【0039】
次いで、全面に上層層間絶縁膜39を堆積させたのち、レジストパターン40をマスクとしてCo膜38で覆われたTiブロック37の配線を形成する方向の側端面が露出するように埋込配線用溝41を形成する。
【0040】
図8参照
次いで、レジストパターン40を除去したのち、内部を1×10-3Pa程度の高真空にしたチャンバー内で、ホットフィラメントCVD法を用いてカーボンナノチューブの成長を行う。
【0041】
この時、アセチレン:Ar=1:9の流量比の混合ガスを流し、総圧1kPaとした状態で、基板温度を540℃として成長を行うと、Co膜38で覆われたTiブロック37の露出側端面からカーボンナノチューブ束42が埋込配線用溝41に沿って横方向に成長する。
【0042】
この場合のカーボンナノチューブ束42の長さは成長時間によって決まり、また、触媒の状態にもよるが、カーボンナノチューブ束42を構成するカーボンナノチューブは概ね5〜30nmの直径を有する多層カーボンナノチューブとなる。
【0043】
また、この場合、カーボンナノチューブの成長方向は下地依存性があり、本発明のように下地をTi膜とし、その上に2.5nmのCo膜を設けて540℃の成長温度で成長させた場合、カーボンナノチューブの長さはTi膜の膜厚が厚くなるにしたがって短くなり、20nmを超えると成長しなくなる(必要ならば、特開2006−202942号公報参照)。
したがって、100nmの厚さのあるTiブロック37の露出頂面上にはカーボンナノチューブは成長しない。
【0044】
次いで、再び、レジストを塗布したのち、カーボンナノチューブ束42を成長させた埋込配線用溝41が露出するように露光・現像して開口部44を有するレジストパターン43を形成したのち、再び、セルを用いてC60に代表されるフラーレン45を撒布し、カーボンナノチューブ束42の隙間をフラーレン45で埋め込んだのち、Arイオン46を照射することによって埋め込んだフラーレン45を埋込配線用溝41の底部まで十分に充填する。
【0045】
図9参照
次いで、レジストパターン43を除去したのち、数keV、例えば、3keVの加速エネルギーで、例えば、20nAの電子線47を1分照射することによって、フラーレン45を重合させて重合フラーレン48に変換してカーボンベース埋込配線49を形成する。
【0046】
以降は、多層配線構造において必要とする層数の数だけ上記のビア配線の形成工程及び埋込配線の形成工程を繰り返すことによって半導体集積回路装置が完成する。
【0047】
このように、本発明の実施例2においては、カーボンベース埋込配線49を構成するカーボンナノチューブを埋込配線方向に沿って横方向成長したカーボンナノチューブを用いているので、埋込配線をより低抵抗にすることができる。
【0048】
即ち、カーボンナノチューブを長軸方向の電気伝導率は高いものの、単軸方向の電気伝導率は低いため、上記の実施例1の場合には、電気伝導性に優れるカーボンナノチューブを用いているにも拘わらず必ずしも充分な特性はえられないが、実施例2においては、ビア配線においても埋込配線においても、電流の流れる方向にカーボンナノチューブを成長させているので、電気伝導性に優れるカーボンナノチューブの特性を有効に発揮することができる。
【実施例3】
【0049】
次に、図10乃至図12を参照して、本発明の実施例3のカーボンベースビア配線の形成方法を説明するが、この場合も半導体基板内の素子構造は本発明の技術内容とは直接関連しないので、最上層の構成のみを説明する。
図10参照
まず、上記の実施例1と同様に、下層配線11上を覆う下層層間絶縁膜12にレジストパターン13をマスクとして下層配線11に達するビアホール14を形成したのち、全面にCo微粒子15を撒布する。
【0050】
次いで、レジストパターン13を除去したのち、原料ガスとしてアセチレン(C2 2 )、キャリアガスとしてH2 を用いたホットフィラメントCVD法を用いて、基板温度を例えば600℃とした状態でCo微粒子15の触媒作用を利用してカーボンナノチューブ束51を、例えば、ビアホール14の深さの1/□程度の長さに成長させる。
【0051】
次いで、再び、レジストを塗布したのち、カーボンナノチューブ束51を成長させたビアホール14が露出するように露光・現像して開口部18を有するレジストパターン17を形成したのち、慣用の形成方法、例えば、真空蒸着法或いはスパッタリング法を用いてC60に代表されるフラーレン19を撒布し、カーボンナノチューブ束51の隙間をフラーレン19で埋め込む。
【0052】
次いで、Arイオン20を照射することによって埋め込んだフラーレン19をビアホール14の底部まで十分に充填する。
【0053】
図11参照
次いで、レジストパターン17を除去したのち、再び、原料ガスとしてアセチレン(C2 2 )、キャリアガスとしてH2 を用いたホットフィラメントCVD法を用いて、基板温度を例えば600℃とした状態で露出するカーボンナノチューブ束51の端部を成長起点としてカーボンナノチューブ束51を、ビアホール14の深さの1/□程度の長さに成長させる。
【0054】
次いで、再び、レジストを塗布したのち、カーボンナノチューブ束51を成長させたビアホール14が露出するように露光・現像して開口部53を有するレジストパターン52を形成したのち、慣用の形成方法、例えば、真空蒸着法或いはスパッタリング法を用いてC60に代表されるフラーレン19を撒布し、カーボンナノチューブ束51の隙間をフラーレン19で埋め込む。
【0055】
次いで、Arイオン20を照射することによって埋め込んだフラーレン19をビアホール14の底部まで十分に充填する。
【0056】
図12参照
次いで、このような一連の工程を、カーボンナノチューブ束51がビアホール14の上端部に達するまで全体で□回繰り返すことによって、ビアホール14内をカーボンナノチューブ束51とフラーレン19で埋め込む。
【0057】
次いで、レジストパターン52を除去したのち、数keV、例えば、3keVの加速エネルギーで、例えば、20nAの電子線21を1分照射することによって、フラーレン19を重合させて重合フラーレン22に変換してカーボンベースビア配線54を形成する。
【0058】
このように、本発明の実施例3においては、カーボンナノチューブ束の成長とフラーレンの重点を複数回の工程に分けて行っているので、カーボンナノチューブ束が途中でファンデルワース力によって結合することなく、それによって、ビアホール内に超高密度のカーボンナノチューブ束を成長させることができ、電気抵抗をより低抵抗化することができる。
【0059】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、各実施例においては触媒層としてNiを用いているが、Niに限られるものではなく、CoやFe或いはNiを含めたこれらの合金を用いても良いものである。
【0060】
また、上記の各実施例においては、フラーレンとしてC60を用いているがC60に限られるものではなく、他の構造のフラーレンを用いても良いものであり、さらには、C60を含めた各種のフラーレンを混合して用いても良いものである。
【0061】
また、上記の各実施例においては、フラーレンを重合する際に、電子線を照射しているが、電子線照射に限られるものではなく、例えば、紫外線を照射してフラーレンの炭素結合の一部を開環して重合反応させるようにしても良いものである。
【0062】
また、上記の各実施例においては、フラーレンの充填密度を高めるためにArイオンを照射しているが、Arイオン照射は必須ではなく、フラーレン撒布後にレジストを除去して、直ちに電子線を照射して重合させても良いものである。
【0063】
また、上記の各実施例においては、ビア配線と埋込配線の両方をカーボンナノチューブを重合フラーレンで埋め込んだカーボンベース配線で構成しているが、ビア配線のみカーボンベース配線で構成し、埋込配線は通常のCu埋込配線で構成しても良いものである。
【0064】
或いは、ビア配線を通常のTiN膜を介した埋込Wビアで構成し、埋込配線を上記の実施例1或いは実施例2に示したカーボンベース配線で構成しても良いものである。
【0065】
また、上記の実施例3においては、フラーレンの撒布工程毎にArイオンを照射して充填密度を高めているが、Arイオン工程はフラーレンの撒布工程毎に行う必要は必ずしもなく、最後の撒布工程の後に1回行うようにしても良いものである。
【0066】
また、上記の実施例3においては、フラーレンの重合工程を最後に1回行っているが、フラーレンの撒布工程毎にArイオンを照射して充填密度を高めたのちに逐次行っても良いものである。
【0067】
また、上記の実施例3においては、ビア配線の形成工程として説明しているが、この場合も、このビア配線に接続する埋込配線を上記の実施例1或いは実施例2の同様に形成しても良いものである。
【0068】
なお、上記の実施例1のように埋込配線を形成する場合に、ビア配線と同様に、カーボンナノチューブ束の成長工程及びフラーレンの充填工程を複数回繰り返してカーボンベース埋込配線を形成しても良いものである。
【0069】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) カーボンナノチューブ束3の間隙を重合フラーレン6で埋め込んだカーボンベース配線を有することを特徴とする電子デバイス。
(付記2) 上記カーボンベース配線が、ビア配線或いは埋込配線の少なくとも一方を構成することを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記3) 上記カーボンベース配線が少なくとも埋込配線を構成しており、且つ、前記埋込配線の延在方向と上記カーボンナノチューブ束3の成長方向が略直交していることを特徴とする付記2記載の電子デバイス。
(付記4) 上記カーボンベース配線が少なくとも埋込配線を構成しており、且つ、上記カーボンナノチューブ束3の成長方向が前記埋込配線の延在方向に沿っていることを特徴とする付記2記載の電子デバイス。
(付記5) 層間絶縁膜1に凹部2を形成したのち、前記凹部2にカーボンナノチューブ束3を成長させ、次いで、前記カーボンナノチューブ束3の空間間隙にフラーレン4を充填した後に電子線5を照射することによって、前記フラーレン4を重合させて重合フラーレン6に変換する工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
(付記6) 上記フラーレン4をカーボンナノチューブ束3の空間間隙に充填した後、イオン衝撃を行って、前記カーボンナノチューブ束3の空間におけるフラーレン4に充填密度を高める工程を有することを特徴とする付記6記載の電子デバイスの製造方法。
(付記7) 付記5記載の一連の工程を複数回繰り返すことによって上記凹部2にカーボンナノチューブ束3の間隙を重合フラーレン6で埋め込んだカーボンベース配線を設けることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
(付記8) 層間絶縁膜1に凹部2を形成したのち、前記凹部2にカーボンナノチューブ束3を成長させる工程と前記カーボンナノチューブ束3の空間間隙にフラーレン4を充填する工程を複数回繰り返す工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
(付記9) 上記層間絶縁膜1に設けた凹部2が、ビアホール或いは埋込配線用溝の少なくとも一方を構成することを特徴とする付記5乃至8のいずれか1に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記10) 上記凹部2が少なくとも埋込配線用溝を構成しており、且つ、前記埋込配線用溝内に、埋込配線用溝の延在方向と略直交方向に上記カーボンナノチューブ束3を成長させることを特徴とする付記9記載の電子デバイスの製造方法。
(付記11) 上記凹部2が埋込配線用溝であり、且つ、前記埋込配線用溝の一側端部に触媒ブロックが露出させ、前記触媒ブロックを起点として前記埋込用配線溝に沿って上記カーボンナノチューブ束3を横方向成長させることを特徴とする付記5または6に記載の電子デバイスの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の活用例としては、半導体装置のカーボンベース配線が典型的なものであるが、半導体装置の配線に限られるものではなく、液晶表示装置や、光偏向装置等の強誘電体デバイス等の各種の電子デバイスに適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1のカーボンベース配線の途中までの形成工程の説明図である。
【図3】本発明の実施例1のカーボンベース配線の図2以降の途中までの形成工程の説明図である。
【図4】重合フラーレンの概略的分子構造の説明図である。
【図5】本発明の実施例1のカーボンベース配線の図3以降の途中までの形成工程の説明図である。
【図6】本発明の実施例1のカーボンベース配線の図5以降の形成工程の説明図である。
【図7】本発明の実施例2のカーボンベース配線の途中までの形成工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例2のカーボンベース配線の図7以降の途中までの形成工程の説明図である。
【図9】本発明の実施例2のカーボンベース配線の図8以降の形成工程の説明図である。
【図10】本発明の実施例3のカーボンベースビア配線の途中までの形成工程の説明図である。
【図11】本発明の実施例3のカーボンベースビア配線の図10以降の途中までの形成工程の説明図である。
【図12】本発明の実施例3のカーボンベースビア配線の図11以降の形成工程の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 層間絶縁膜
2 凹部
3 カーボンナノチューブ束
4 フラーレン
5 電子線
6 重合フラーレン
11 下層配線
12 下層層間絶縁膜
13 レジストパターン
14 ビアホール
15 Co微粒子
16 カーボンナノチューブ束
17 レジストパターン
18 開口部
19 フラーレン
20 Arイオン
21 電子線
22 重合フラーレン
23 カーボンベースビア配線
24 上層層間絶縁膜
25 レジストパターン
26 埋込配線用溝
27 Co微粒子
28 カーボンナノチューブ束
29 レジストパターン
30 開口部
31 フラーレン
32 Arイオン
33 電子線
34 重合フラーレン
35 カーボンベース埋込配線
36 レジストパターン
37 Tiブロック
38 Co膜
39 上層層間絶縁膜
40 レジストパターン
41 埋込配線用溝
42 カーボンナノチューブ束
43 レジストパターン
44 開口部
45 フラーレン
46 Arイオン
47 電子線
48 重合フラーレン
49 カーボンベース埋込配線
51 カーボンナノチューブ束
52 レジストパターン
53 開口部
54 カーボンベースビア配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ束の間隙を重合フラーレンで埋め込んだカーボンベース配線を有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
上記カーボンベース配線が少なくとも埋込配線を構成しており、且つ、前記埋込配線の延在方向と上記カーボンナノチューブ束の成長方向が略直交していることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項3】
上記カーボンベース配線が少なくとも埋込配線を構成しており、且つ、上記カーボンナノチューブ束の成長方向が前記埋込配線の延在方向に沿っていることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項4】
層間絶縁膜に凹部を形成したのち、前記凹部にカーボンナノチューブ束を成長させ、次いで、前記カーボンナノチューブ束の空間間隙にフラーレンを充填した後に電子線を照射することによってフラーレンを重合させて重合フラーレンに変換する工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
上記フラーレンをカーボンナノチューブ束の空間間隙に充填した後、イオン衝撃を行って、前記カーボンナノチューブ束の空間におけるフラーレンに充填密度を高める工程を有することを特徴とする請求項4記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の一連の工程を複数回繰り返すことによって上記凹部にカーボンナノチューブ束の間隙を重合フラーレンで埋め込んだカーボンベース配線を設けることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
層間絶縁膜に凹部を形成したのち、前記凹部にカーボンナノチューブ束を成長させる工程と前記カーボンナノチューブ束の空間間隙にフラーレンを充填する工程を複数回繰り返す工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−91517(P2008−91517A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269057(P2006−269057)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】