説明

ディーゼル機関の状態監視運転方法

【課題】シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態を機関運転中に正確に把握しつつ、機関の状態に応じた最も経済的となる運転のための推奨値を算出し得、該推奨値に基づいて経済的運転を行うことができ、運転コスト低減を図り得るディーゼル機関の状態監視運転方法を提供する。
【解決手段】ディーゼル機関10のピストンリングの摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態に関連する複数の計測値をコンピュータ20の記憶領域に保存し、各計測値毎に状態判定を行ってそれぞれの状態指数fを算出し、これに基づいて最適経済運転に必要となる、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値、燃料噴射時期の推奨値及びシリンダ投入空気温度の推奨値を算出し、該推奨値を操作員に提示しつつ、該推奨値に見合った制御信号を制御装置30からディーゼル機関10へ出力するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル機関の状態監視運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンテナ船、バルクキャリア、カーフェリー等の大型船舶や陸上発電プラント用として、環境に優しい2サイクル、4サイクルのディーゼル機関が用いられているが、この種のディーゼル機関においては、経済的運転の重要性が非常に高まっている。
【0003】
前記ディーゼル機関の場合、特に2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関においては、シリンダ内部に潤滑油を直接供給するようになっているが、該潤滑油はシリンダに供給された後、シリンダ下部へ落下し、ドレン油として廃棄されるため、該潤滑油の消費量を低減することは、ディーゼル機関の経済的運転を行う上で非常に有効な手段の一つであると言える。
【0004】
又、前記ディーゼル機関の運転コストに大きな影響を与えるのは燃料消費率であり、該ディーゼル機関の燃料噴射時期をピストンの上死点後の早い時期とすると、熱効率が向上し、燃料消費率を低減可能となるため、該燃料噴射時期を的確に制御することもディーゼル機関の経済的運転には非常に重要となる。
【0005】
更に又、前記ディーゼル機関のシリンダ投入空気温度が低いほど、燃料消費率を低減することが可能となるため、該シリンダ投入空気温度を低下させることもディーゼル機関の経済的運転には欠かせないものとなる。
【0006】
尚、前述の如きディーゼル機関と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1、2、3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−297639号公報
【特許文献2】特開2001−82291号公報
【特許文献3】特開平10−259732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記シリンダ内部に供給される潤滑油の注油率は、ディーゼル機関の負荷、吸入空気の湿度や温度、燃料性状、シリンダライナ及びピストンリングの摩耗量等の影響を受け、一意に設定することは困難となっており、下限と考えられる注油率よりも余裕を見て多めに設定しているのが現状であった。
【0009】
又、前記燃料噴射時期を早めることは、場合によってはディーゼル機関構造物の負荷を高めることになり、特に燃料の性状によってはディーゼル機関構造物に過負荷を与える虞もあるため、燃焼状態を見極めずにただ単純に燃料噴射時期を早めることは好ましいとは言えなかった。
【0010】
更に又、前記シリンダ投入空気温度を低下させるために過給空気を冷却すると、凝縮水が発生しやすくなり、凝縮水除去装置を装備していても、細かいミスト状の水滴を完全に除去することは困難であり、該凝縮水がシリンダ内に混入すると、シリンダライナ表面の油膜形成に影響を及ぼし、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態に異常を来たす虞もあった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態を機関運転中に正確に把握しつつ、機関の状態に応じた最も経済的となる運転のための推奨値を算出し得、該推奨値に基づいて経済的運転を行うことができ、運転コスト低減を図り得るディーゼル機関の状態監視運転方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ディーゼル機関の運転に関連する複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ディーゼル機関の運転に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値が前記ディーゼル機関の状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報をコンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目に関し、計測値及び/又は計測値に基づく計算値の予め設定された通常値からの離反割合に応じた判定指数e、計測値が設定時間内に設定値以上の変化を生じた回数に応じた判定指数e、計測値の変化率に応じた判定指数eを算出し、
前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
より算出して状態指数fとし、
該状態指数fに基づいて推奨値を求め、該推奨値となるよう運転を行うことを特徴とするディーゼル機関の状態監視運転方法にかかるものである。
【0013】
前記ディーゼル機関の状態監視運転方法においては、前記状態診断項目を、シリンダライナの摩耗予測値、ピストンリングのコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の変化率、各シリンダライナ温度、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の変化率、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力として、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を監視することにより、前記状態指数fに基づいてシリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるようにすることができる。
【0014】
又、前記ディーゼル機関の状態監視運転方法においては、前記状態診断項目を、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力、吸入空気温度、シリンダ投入空気温度として、燃焼状態を監視することにより、前記状態指数fに基づいて燃料噴射時期の推奨値を求めるようにすることができる。
【0015】
更に又、前記ディーゼル機関の状態監視運転方法においては、前記状態診断項目を、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、吸入空気温度、シリンダ投入空気温度として、シリンダ投入空気温度状態を監視することにより、前記状態指数fに基づいてシリンダ投入空気温度の推奨値を求めるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法によれば、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態を機関運転中に正確に把握しつつ、機関の状態に応じた最も経済的となる運転のための推奨値を算出し得、該推奨値に基づいて経済的運転を行うことができ、運転コスト低減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施するための装置の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の方法が適用される2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関の一例を示す概要構成図である。
【図3】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出ロジック図である。
【図4】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる状態診断項目毎に予め設定された確度係数と重み係数の一例を示す図である。
【図5】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる状態診断項目毎に算出された判定指数の一例を示す図である。
【図6】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出手順の一例を示す図である。
【図7】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる判定指数を算出するための状態判定パターン0の一例を示す線図である。
【図8】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる判定指数を算出するための状態判定パターン1の一例を示す線図である。
【図9】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる判定指数を算出するための状態判定パターン2の一例を示す線図である。
【図10】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる判定指数を算出するための状態判定パターン3の一例を示す線図である。
【図11】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる判定指数を算出するための状態判定パターン4の一例を示す線図である。
【図12】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる判定指数を算出するための状態判定パターン5の一例を示す線図である。
【図13】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるための手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出ロジック図である。
【図15】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるために用いられる状態診断項目毎に予め設定された確度係数と重み係数の一例を示す図である。
【図16】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるために用いられる状態診断項目毎に算出された判定指数の一例を示す図である。
【図17】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出手順の一例を示す図である。
【図18】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるための手順を示すフローチャートである。
【図19】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出ロジック図である。
【図20】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるために用いられる状態診断項目毎に予め設定された確度係数と重み係数の一例を示す図である。
【図21】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるために用いられる状態診断項目毎に算出された判定指数の一例を示す図である。
【図22】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出手順の一例を示す図である。
【図23】本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるための手順を示すフローチャートである。
【図24】本発明の方法が適用される4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関の一例を示す概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図13は本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法の実施例であって、図1には該方法を実施する装置のブロック図を示しており、ディーゼル機関10のピストンリングの摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態に関連する複数の計測値をオンライン入力或いはマニュアル入力にてコンピュータ20の記憶領域に保存し、該コンピュータ20の記憶領域に保存した各計測値毎にピストンリングの摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態に関する状態判定を行って、それぞれの総合的な状態指数fを算出し、該状態指数fに基づいて、最適経済運転に必要となる、シリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値、燃料噴射時期の推奨値及びシリンダ投入空気温度の推奨値を算出し、それらの推奨値を操作員に提示しつつ、該推奨値に見合った制御信号をディーゼル機関10の制御装置30からディーゼル機関10へ出力するよう構成したものである。
【0020】
図2には、本発明の方法が適用される2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10の一例を示しており、該2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10は、台板40及び架構41を固定配置してなる本体部42の上部に、シリンダジャケット43を載置し、該シリンダジャケット43に、内周面側にシリンダライナ44が装着されたシリンダ45を、該シリンダ45の下部がシリンダジャケット43内部に位置し且つシリンダ45の上部がシリンダジャケット43の上方へ突出するよう配設し、前記台板40にクランク軸46を回転自在に支持せしめ、前記シリンダ45内に、外周上部にピストンリング47が嵌着されたピストンヘッド48をその軸線方向へ摺動自在となるよう嵌挿し、該ピストンヘッド48の下面に、下端にクロスヘッドピン49が一体に形成されたピストンロッド50を、シリンダジャケット43底面を貫通して架構41側へ延びるよう取り付けると共に、該ピストンロッド50と前記クランク軸46とを連接棒51を介して連結し、前記ピストンヘッド48のシリンダ45内での往復運動をクランク軸46の回転運動に変換して伝達し得るようにしてある。尚、図2には多気筒のうち一つのシリンダ45のみを図示してある。
【0021】
前記シリンダジャケット43の側部には、吸入空気A1が導入される給気室52と、該吸入空気A1をシリンダジャケット43内へ送る掃気室53とを形成し、前記給気室52の入側の給気流路54途中には、吸入空気A1を過給するための過給機55のコンプレッサ55aを設けると共に、前記給気室52内部には、吸入空気A1を冷却する空気冷却器56と、該空気冷却器56で冷却した吸入空気A1中に含まれる水を分離して前記掃気室53へ導くウォータセパレータ57とを設けてある。
【0022】
前記シリンダ45の下部には、前記シリンダジャケット43内から吸入空気A1が流入するように掃気ポート58を穿設し、前記シリンダ45の上部には、燃料噴射ノズル(図示せず)から該シリンダ45内への燃料噴射により着火燃焼させた燃焼排ガスを排気流路59へ排出するための排気弁60を配設し、前記排気流路59の途中には、前記過給機55のタービン55bを設けてある。
【0023】
尚、前記空気冷却器56は、前記給気室52から吸入空気A1が流入する内部空間に複数の導管56aを備え、該導管56aに水等の冷媒を流して吸入空気A1を冷媒との熱交換により空気冷却するようにしている。
【0024】
一方、前記シリンダジャケット43の底部には、シリンダ45を潤滑した潤滑油をドレンタンクへ導くドレン管61を接続し、該ドレン管61途中には、潤滑油中に含まれる鉄粉等の金属粉濃度を計測する金属粉濃度センサ62と、必要に応じて潤滑油を採取するサンプリングコック63とを設けてある。尚、前記金属粉濃度センサ62としては、例えば、特開2008−8885号公報に開示されている磁性体濃度計測装置を用いることができる。
【0025】
又、前記ディーゼル機関10には、大気温度を検出する温度センサ64と、大気湿度を検出する湿度センサ65とを設けると共に、前記過給機55のコンプレッサ55aの出側には、過給後の空気温度を検出する温度センサ66を設け、前記掃気室53には、前記空気冷却器56通過後の過給吸入空気の温度を検出する温度センサ67と、前記空気冷却器56通過後の過給吸入空気の圧力を検出する圧力センサ68とを設け、前記シリンダ45には、シリンダライナ温度を検出する温度センサ69と、燃焼最高圧力並びに燃焼室最高圧縮圧力を検出するシリンダ内圧計測装置70とを設け、前記排気流路59には、前記排気弁60から排出される排ガスの温度を検出する温度センサ71と、前記過給機55のタービン55bの入側の排ガスの温度を検出する温度センサ72と、該タービン55bの出側の排ガスの温度を検出する温度センサ73とを設けてある。
【0026】
図3には、本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ45に対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるために用いられる状態指数fの算出ロジック図を示しており、ピストンリング47の摺動状態に関連する複数の状態診断項目を、シリンダライナ44の摩耗予測値、ピストンリング47のコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の変化率、各シリンダライナ温度、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の変化率、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力とし、これら複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ピストンリング47の摺動状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値がピストンリング摺動状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報を前記コンピュータ20の記憶領域にデータベース化するようにしてある。
【0027】
尚、前記ディーゼル機関10の運転時において、前記ピストンヘッド48が上昇し、シリンダ45内の圧力が上昇し、上死点(TDC)での圧縮圧力を燃焼室最高圧縮圧力と称し、通常、上死点後に燃焼が始まるように燃料をシリンダ45内に噴射し、この燃料の燃焼により発生する最高圧力を燃焼最高圧力と称しており、該燃焼最高圧力が最高圧力となるのが一般的であるが、排ガス抑制等を目的に燃料噴射時期を遅らせると、前記燃焼最高圧力があまり上がらず、前記燃焼室最高圧縮圧力の方が高い場合があるため、これら二つの圧力を分けている。
【0028】
又、吸入空気条件を
吸入空気量:Qair=420000[kg/hr]
吸入空気温度:Tair=(40+273)[K]
吸入空気相対湿度:φ=0.8
吸入空気圧力:Pair=0.1×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
s1=exp(18.7509−4075.16/(Tair+236.516−273))×φ×101300/760[Pa]
=5.9×103[Pa]
絶対湿度:x1=0.622×(Ps1/(Pair−Ps1))
とし、掃気条件を
掃気温度:Tsc=(41.5+273)[K]
掃気圧力:Psc=0.27×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
s2=exp(18.7509−4075.16/(Tsc+236.516−273))×101300/760[Pa]
=7.986×103[Pa]
絶対湿度:x2=0.622×(Ps2/(Psc−Ps2))
とすると、前記凝縮水発生率は、
x=(x1/(1+x1)−x2/(1+x2))
=0.019
より、計測値に基づく計算値として求めることができ、この値に吸入空気量Qairを掛けたものが、発生する凝縮水量となる。
【0029】
前記重み係数w1並びに確度係数rの具体的数値は、例えば、図4に示すようなものとなる。
【0030】
ここで、前記各状態診断項目にはそれぞれ、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン0〜パターン5までの計六種類の状態判定パターンのいずれかを割り振るようにしてある。
【0031】
前記パターン0は、例えば、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価を例に取ると、図7に示す如く、日付(又は運転時間)を横軸に取り、縦軸に全アルカリ価を取ったグラフにおいて、その状態診断項目における通常値(この例では35[mg])を登録しておくと共に、上限値(この例では70[mg])と下限値(この例では10[mg])とを登録しておき、このグラフに、計測値(この例では28[mg])をプロットし、続いて、前記通常値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換したものを縦軸に取り、日付(又は運転時間)を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値(この例では−28%)をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値が−28%であるため、判定指数eは「4」として算出される形となる。尚、この例においては、判定指数テーブルには、上位の値が5%である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられ、上位の値が10%である場合、判定指数eに「3」と「4」が割り当てられ、上位の値が20%である場合、判定指数eに「5」と「6」が割り当てられ、上位の値が30%である場合、判定指数eに「7」と「8」が割り当てられ、下位の値が−70%である場合、判定指数eに「8」と「9」と「10」が割り当てられているが、上位の値が5%である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択し、上位の値が10%である場合には、「3」ではなく条件として厳しくなる「4」を判定指数eとして選択し、上位の値が20%である場合には、「5」ではなく条件として厳しくなる「6」を判定指数eとして選択し、上位の値が30%である場合には、「7」ではなく条件として厳しくなる「8」を判定指数eとして選択し、下位の値が−70%である場合には、「8」や「9」ではなく条件として厳しくなる「10」を判定指数eとして選択するようにしてある。又、前記潤滑油中の全アルカリ価とは、1[g]の試料中に含まれる塩基性成分を中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウムの[mg]数のことである。
【0032】
前記パターン1は、例えば、各シリンダライナ温度を例に取ると、図8に示す如く、負荷を横軸に取り、縦軸に各シリンダライナ温度を取ったグラフにおいて、その状態診断項目における各負荷(この例では50%負荷、75%部分負荷、85%通常負荷、100%最大負荷)での通常値(この例では170[℃]、180[℃]、190[℃]、220[℃])を登録しておくと共に、各負荷での上限値(この例では200[℃]、210[℃]、230[℃]、250[℃])と下限値(この例では150[℃]、155[℃]、165[℃]、185[℃])とを登録しておき、判定負荷は50%以上で、通常値の間、上限値の間、下限値の間はそれぞれ二次曲線で補完し、このグラフに、計測値(この例では通常負荷において201[℃])をプロットし、続いて、前記通常値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換したものを縦軸に取り、負荷を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値(この例では28%)をプロットし、更に、日付を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値が28%であるため、判定指数eは「4」として算出される形となる。尚、前記プロットした点をつなぐ近似曲線(直線)を数式y=kx+Cより算出し、該近似曲線のON−OFF(表示又は非表示)は選択方式としてある。
【0033】
前記パターン2は、例えば、燃焼室最高圧縮圧力を例に取ると、図9に示す如く、過給機回転数を横軸に取り、縦軸に燃焼室最高圧縮圧力を取ったグラフにおいて、その状態診断項目における各負荷の過給機回転数(9000[rpm]、11500[rpm]、12500[rpm]、13500[rpm])に対する通常値(この例では8.0[MPa]、10.4[MPa]、11.7[MPa]、13.7[MPa])を登録しておくと共に、各負荷の過給機回転数に対する上限値(この例では9.0[MPa]、11.4[MPa]、12.7[MPa]、14.7[MPa])と下限値(この例では7.0[MPa]、9.4[MPa]、10.7[MPa]、12.7[MPa])とを登録しておき、判定過給機回転数は9000[rpm]以上で、通常値の間、上限値の間、下限値の間はそれぞれ二次曲線で補完し、このグラフに、計測値(この例では過給機回転数が12500[rpm]において11.2[MPa])をプロットし、続いて、前記通常値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換したものを縦軸に取り、過給機回転数を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値(この例では−50%)をプロットし、更に、日付を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値が−50%であるため、判定指数eは「5」として算出される形となる。尚、前記プロットした点をつなぐ近似曲線(直線)を数式y=kx+Cより算出し、該近似曲線のON−OFF(表示又は非表示)は選択方式としてある。
【0034】
前記パターン3は、例えば、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差を例に取ると、図10に示す如く、各シリンダについてシリンダライナ温度を計測し、該計測値(この例では、NO.1シリンダのシリンダライナ温度が315[℃]、NO.2シリンダのシリンダライナ温度が287[℃]、NO.3シリンダのシリンダライナ温度が293[℃]、NO.4シリンダのシリンダライナ温度が310[℃]、NO.5シリンダのシリンダライナ温度が285[℃]、NO.6シリンダのシリンダライナ温度が310[℃])に基づいてその平均値(この例では、300[℃]=(315+287+293+310+285+310)/6)を求め、縦軸にシリンダライナ温度を取ったグラフにおいて、前記計測値をプロットすると共に、各シリンダ毎に予め設定された製造時のバラツキを考慮した前記各シリンダ平均値からの通常偏差値(この例では、NO.1シリンダで10[℃]、NO.2シリンダで−15[℃]、NO.3シリンダで3[℃]、NO.4シリンダで12[℃]、NO.5シリンダで−20[℃]、NO.6シリンダで10[℃])を基準とした上限値(この例では、いずれのシリンダも20[℃]であるため、NO.1シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+10+20=330[℃]、NO.2シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300−15+20=305[℃]、NO.3シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+3+20=323[℃]、NO.4シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+12+20=332[℃]、NO.5シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300−20+20=300[℃]、NO.6シリンダのシリンダライナ温度の上限値が300+10+20=330[℃])及び下限値(この例では、いずれのシリンダも−20[℃]であるため、NO.1シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+10−20=290[℃]、NO.2シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300−15−20=265[℃]、NO.3シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+3−20=283[℃]、NO.4シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+12−20=292[℃]、NO.5シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300−20−20=260[℃]、NO.6シリンダのシリンダライナ温度の下限値が300+10−20=290[℃])を、棒グラフ的に表示し、続いて、前記通常偏差値を基準として上限値を100%、下限値を−100%に変換した場合の前記計測値を%に変換した値(この例では、NO.1シリンダで25%、NO.2シリンダで10%、NO.3シリンダで−50%、NO.4シリンダで−10%、NO.5シリンダで25%、NO.6シリンダで0%)を求め、更に、日付を横軸に取ったグラフに、前記計測値を%に変換した値をプロットし、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである(このグラフは各シリンダ毎に作成されるものであるが、図10にはNO.2シリンダの例のみを示してある)。因みに、この例の場合、前記計測値を%に変換した値がNO.2シリンダで10%であるため、該NO.2シリンダにおける判定指数eは「2」として算出される形となる。尚、前記プロットした点をつなぐ近似曲線(直線)を数式y=kx+Cより算出し、該近似曲線のON−OFF(表示又は非表示)は選択方式としてある。又、この例においては、判定指数テーブルには、上位の値が10%である場合、或いは下位の値が−10%である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられているが、このように上位の値が10%である場合、或いは下位の値が−10%である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択するようにしてある。
【0035】
前記パターン4は、例えば、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅を例に取ると、図11に示す如く、設定時間内における設定温度以上の変化の回数をカウントすることにより、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、設定時間(図の例では、1200[sec])内における設定温度(この例では、5[℃])以上の変化の回数が3回あったため、判定指数eは「6」として算出される形となる。尚、この例においては、判定指数テーブルには、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が1回である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が2回である場合、判定指数eに「3」と「4」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が3回である場合、判定指数eに「5」と「6」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が4回である場合、判定指数eに「7」と「8」が割り当てられ、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が5回である場合、判定指数eに「9」と「10」が割り当てられているが、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が1回である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が2回である場合には、「3」ではなく条件として厳しくなる「4」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が3回である場合には、「5」ではなく条件として厳しくなる「6」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が4回である場合には、「7」ではなく条件として厳しくなる「8」を判定指数eとして選択し、1200[sec]の間における温度変化が5[℃]以上で回数が5回である場合には、「9」ではなく条件として厳しくなる「10」を判定指数eとして選択するようにしてある。
【0036】
前記パターン5は、例えば、各シリンダライナ温度の変化率を例に取ると、図12に示す如く、設定時間当たりの変化量を連続的に計測することにより、予め設定された判定指数テーブルに従い、判定指数eを算出するようにしたものである。因みに、この例の場合、設定時間(図の例では、5[sec])当たりの変化量(この例では、5[℃])であるため、判定指数eは「2」として算出される形となる。尚、この例においては、判定指数テーブルには、5[sec]の間における温度変化が5[℃]である場合、判定指数eに「1」と「2」が割り当てられ、5[sec]の間における温度変化が7[℃]である場合、判定指数eに「4」と「5」が割り当てられ、5[sec]の間における温度変化が15[℃]である場合、判定指数eに「8」と「9」が割り当てられているが、5[sec]の間における温度変化が5[℃]である場合には、「1」ではなく条件として厳しくなる「2」を判定指数eとして選択し、5[sec]の間における温度変化が7[℃]である場合には、「4」ではなく条件として厳しくなる「5」を判定指数eとして選択し、5[sec]の間における温度変化が15[℃]である場合には、「8」ではなく条件として厳しくなる「9」を判定指数eとして選択するようにしてある。
【0037】
そして、例えば、一日に一回行われる状態診断時には、前記各状態診断項目にそれぞれ割り振られたパターン0〜パターン5のいずれかにより、その状態を見極める上での目安となる判定指数eがコンピュータ20の演算処理部において算出されるが、該判定指数eの具体的数値は、例えば、図5に示すようなものとなる。
【0038】
続いて、図6に示す如く、前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択(図6の例では、※印を付けた、ピストンリング47のコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差の五項目を選択)し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
=(36+72+56+48+42)/(7+7+9+6+6)
=254/35
=7.26
より算出してピストンリング摺動状態監視用の状態指数fとするようにしてある。尚、前記状態診断項目が仮に五項目以下の場合は、全ての状態診断項目を対象とし、又、最下位に同じ確度係数rとなる状態診断項目が複数ある場合は、該複数ある状態診断項目の[重み係数w1]×[判定指数e]の値の平均値を使うものとする。
【0039】
図13は本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ45に対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるための手順を示すフローチャートであって、先ず、ステップS1301において、機関負荷が設定負荷(例えば、50%)以上か否かの判断を行い、該機関負荷が設定負荷以上である場合、ステップS1302において、前記ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが
A:f<f1
B:f1≦f<f2
C:f2≦f
但し、f1:第一設定状態指数(例えば、3.5)
f2:第二設定状態指数(例えば、5.0)
のいずれに該当するかの判断を行い、前記Aに該当する場合、ステップS1303において、前回の注油率変更から運転時間が第一設定時間(例えば、48時間)以上経過しているか否かの判断を行い、前回の注油率変更から運転時間が第一設定時間以上経過している場合、ステップS1304において、現在の注油率が注油率下限設定値(例えば、0.8[g/kw−hr])以上か否かの判断を行い、現在の注油率が注油率下限設定値以上である場合、ステップS1305において、現在の注油率から注油率減算設定値(例えば、0.05[g/kw−hr])を引いた値を注油率の推奨値とし(但し、この値が注油率下限設定値以下となる場合は、注油率下限設定値を推奨値とする)、ステップS1306において、注油率の推奨値を表示し、ステップS1307において、注油率を推奨値に変更すると共に、設定変更確認のメッセージを表示するようにしてある。
【0040】
又、前記ステップS1302において、前記ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが前記Cに該当する場合、ステップS1308において、前回の注油率変更から運転時間が第二設定時間(例えば、24時間)以上経過しているか否かの判断を行い、前回の注油率変更から運転時間が第二設定時間以上経過している場合、ステップS1309において、現在の注油率が注油率上限設定値(例えば、2.0[g/kw−hr])以下か否かの判断を行い、現在の注油率が注油率上限設定値以下である場合、ステップS1310において、現在の注油率に注油率加算設定値(例えば、0.1[g/kw−hr])を足した値を注油率の推奨値とし(但し、この値が注油率上限設定値以上となる場合は、注油率上限設定値を推奨値とする)、ステップS1306において、注油率の推奨値を表示し、ステップS1307において、注油率を推奨値に変更すると共に、設定変更確認のメッセージを表示するようにしてある。
【0041】
尚、前記ステップS1301において機関負荷が設定負荷以上でない場合、前記ステップS1302において前記ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが前記Bに該当する場合、前記ステップS1303において前回の注油率変更から運転時間が第一設定時間以上経過していない場合、前記ステップS1304において現在の注油率が注油率下限設定値以上でない場合、前記ステップS1308において前回の注油率変更から運転時間が第二設定時間以上経過していない場合、或いは前記ステップS1309において現在の注油率が注油率上限設定値以下でない場合には、シリンダ45に対する潤滑油の注油率の変更は行わずに、現状設定をそのまま保持するようにしてある。
【0042】
これにより、従来、ディーゼル機関10の負荷、吸入空気の湿度や温度、燃料性状、シリンダライナ44及びピストンリング47の摩耗量等の影響を受け、一意に設定することが困難となっていた前記シリンダ45内部に供給される潤滑油の注油率を、下限と考えられる注油率よりも余裕を見て多めに設定することなく、必要最小限に抑えることが可能となる。
【0043】
一方、図14には、本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出ロジック図を示しており、燃焼状態に関連する複数の状態診断項目を、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力、吸入空気温度、空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)とし、これら複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記燃焼状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値が燃焼状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報を前記コンピュータ20の記憶領域にデータベース化するようにしてある。
【0044】
前記重み係数w1並びに確度係数rの具体的数値は、例えば、図15に示すようなものとなる。
【0045】
ここで、前記状態診断項目のうちの吸入空気温度には、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン0(図7参照)を割り振るようにしてあり、又、前記状態診断項目のうちの燃焼最高圧力と燃焼最高圧力のクランク角度と空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)にはそれぞれ、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン1(図8参照)を割り振るようにしてあり、更に又、前記状態診断項目のうちの燃焼室最高圧縮圧力には、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン2(図9参照)を割り振るようにしてある。
【0046】
そして、この場合、例えば、一日に一回行われる状態診断時には、前記各状態診断項目、即ち燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力、吸入空気温度、空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)にそれぞれ割り振られたパターン1、パターン1、パターン2、パターン0、パターン1により、その状態を見極める上での目安となる判定指数eがコンピュータ20の演算処理部において算出されるが、該判定指数eの具体的数値は、例えば、図16に示すようなものとなる。
【0047】
続いて、図17に示す如く、前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択(図17の例では、前記状態診断項目が五項目以下の場合に相当するため、※印を付けた、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力、吸入空気温度、空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)の五項目全てを選択)し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
=(16+16+30+12+35)/(8+8+5+4+5)
=109/30
=3.63
より算出して燃焼状態監視用の状態指数fとするようにしてある。
【0048】
図18は本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、燃料噴射時期の推奨値を求めるための手順を示すフローチャートであって、先ず、ステップS1801において、機関負荷が設定負荷(例えば、50%)以上か否かの判断を行い、該機関負荷が設定負荷以上である場合、ステップS1802において、計測された燃焼最高圧力Pmaxが計測負荷における燃焼最高圧力ベース値Pbaseより大きいか否かの判断を行い、該計測された燃焼最高圧力Pmaxが計測負荷における燃焼最高圧力ベース値Pbase以下の場合、ステップS1803において、前記燃焼状態監視用の状態指数fが
A:f<f1
B:f1≦f<f2
C:f2≦f
但し、f1:第一設定状態指数(例えば、3.5)
f2:第二設定状態指数(例えば、5.0)
のいずれに該当するかの判断を行い、前記A又はCに該当する場合、ステップS1804において、燃焼最高圧力Pmaxとして全シリンダ計測値のうち最も高い燃焼最高圧力の値を用いることにより、燃料噴射時期の推奨値(上死点(TDC)後の角度[deg]で表す)を、
燃料噴射時期の推奨値=現状の燃料噴射時期の設定値−((Pbase - Pmax)×2.5)
の式より求め(但し、推奨値の絶対値が3を超えないようにし、仮に超える場合は、±3のいずれかの値を推奨値とする。例えば、−3.2の場合は−3を最終的な推奨値とする。)、この後、ステップS1805において、上記計算で燃料噴射時期の推奨値が
A:噴射時期を早める場合
B:噴射時期を遅らせる場合
のいずれに該当するかの判断を行い、前記噴射時期を早めるというAに該当する場合、ステップS1806において、ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが第二設定状態指数f2以下か否かの判断を行い、該ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが第二設定状態指数f2以下である場合、ステップS1807において、燃料噴射時期の推奨値を表示し、ステップS1808において、燃料噴射時期の設定を変更した後、燃料噴射時期変更値、燃焼最高圧力Pmax/燃焼室最高圧縮圧力Pcomp、機関室温度、負荷条件、機関回転数、燃料投入量指数、燃料種類、燃料低発熱量、燃料密度といった項目を再度計測/インプットするメッセージを表示し、ステップS1809において、計測結果を再インプットしたら、前記ステップS1801に戻って制御を繰り返すようにしてある。
【0049】
又、前記ステップS1802において、前記計測された燃焼最高圧力Pmaxが計測負荷における燃焼最高圧力ベース値Pbaseより大きい場合、燃焼最高圧力Pmaxが燃焼最高圧力ベース値Pbaseに対し過大になっている警告メッセージを出した後、前記ステップ1804へ進むようにする一方、前記ステップS1805において、燃料噴射時期の推奨値が噴射時期を遅らせるというBに該当する場合、ステップS1807へ進むようにしてある。
【0050】
尚、前記ステップS1801において機関負荷が設定負荷以上でない場合、前記ステップS1803において前記燃焼状態監視用の状態指数fがf1≦f<f2となるBに該当する場合、或いは前記ステップS1806においてピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが第二設定状態指数f2以下でない場合には、燃料噴射時期の変更は行わずに、現状設定をそのまま保持するようにしてある。
【0051】
これにより、燃焼状態を見極めることができ、ただ単純に燃料噴射時期を早めるのではなく、燃料噴射時期を的確に制御することが可能となり、熱効率を向上させ、前記ディーゼル機関10の運転コストに大きな影響を与える燃料消費率を低減させることが可能となる。
【0052】
更に、図19には、本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるために用いられる状態指数の算出ロジック図を示しており、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、吸入空気温度、空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)とし、これら複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記シリンダ投入空気温度状態に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値がシリンダ投入空気温度状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報を前記コンピュータ20の記憶領域にデータベース化するようにしてある。
【0053】
前記重み係数w1並びに確度係数rの具体的数値は、例えば、図20に示すようなものとなる。
【0054】
ここで、前記状態診断項目のうちの各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価と各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量と吸入空気温度にはそれぞれ、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン0(図7参照)を割り振るようにしてあり、又、前記状態診断項目のうちの凝縮水発生率と空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)にはそれぞれ、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン1(図8参照)を割り振るようにしてあり、更に又、前記状態診断項目のうちの各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差と各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差にはそれぞれ、その状態を見極める上での目安となる判定指数eを算出するためのパターン3(図10参照)を割り振るようにしてある。
【0055】
そして、この場合、例えば、一日に一回行われる状態診断時には、前記各状態診断項目、即ち各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、吸入空気温度、空気冷却器通過後の空気温度(シリンダ投入空気温度)にそれぞれ割り振られたパターン0、パターン3、パターン0、パターン3、パターン1、パターン0、パターン1により、その状態を見極める上での目安となる判定指数eがコンピュータ20の演算処理部において算出されるが、該判定指数eの具体的数値は、例えば、図21に示すようなものとなる。
【0056】
続いて、図22に示す如く、前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択(図22の例では、※印を付けた、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率の五項目を選択)し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
=(12+12+35+21+32)/(5+5+5+5+8)
=112/28
=4.00
より算出してシリンダ投入空気温度状態監視用の状態指数fとするようにしてある。
【0057】
図23は本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法を実施する際に、シリンダ投入空気温度状態の推奨値を求めるための手順を示すフローチャートであって、先ず、ステップS2301において、機関負荷が設定負荷(例えば、50%)以上か否かの判断を行い、該機関負荷が設定負荷以上である場合、ステップS2302において、凝縮水発生率が凝縮水発生率設定値(例えば、0.01)になる掃気温度(シリンダ投入空気温度)を算出し、ステップS2303において、前記シリンダ投入空気温度状態監視用の状態指数fが
A:f<f1
B:f1≦f<f2
C:f2≦f
但し、f1:第一設定状態指数(例えば、3.5)
f2:第二設定状態指数(例えば、5.0)
のいずれに該当するかの判断を行い、前記Aに該当する場合、ステップS2304において、ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが第二設定状態指数f2以下か否かの判断を行い、該ピストンリング摺動状態監視用の状態指数fが第二設定状態指数f2以下である場合、ステップS2305において、シリンダ投入空気温度の推奨値を表示し、ステップS2306において、シリンダ投入空気温度を推奨値に変更すると共に、設定変更確認のメッセージを表示するようにしてある。
【0058】
因みに、吸入空気条件を
吸入空気量:Qair=420000[kg/hr]
吸入空気温度:Tair=(40+273)[K]
吸入空気相対湿度:φ=0.8
吸入空気圧力:Pair=0.1×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
s1=exp(18.7509−4075.16/(Tair+236.516−273))×φ×101300/760[Pa]
=5.9×103[Pa]
絶対湿度:x1=0.622×(Ps1/(Pair−Ps1))
とし、掃気条件を
掃気温度:Tsc=(41.5+273)[K]
掃気圧力:Psc=0.27×106[Pa]
水蒸気飽和圧力:
s2=exp(18.7509−4075.16/(Tsc+236.516−273))×101300/760[Pa]
=7.986×103[Pa]
絶対湿度:x2=0.622×(Ps2/(Psc−Ps2))
とすると、前記凝縮水発生率は、
x=(x1/(1+x1)−x2/(1+x2))
=0.019
より、計測値に基づく計算値として求めることができることは前述した通りであるが、この数式において、凝縮水発生率x=0.01になるように掃気温度(シリンダ投入空気温度)(上記の式ではTsc=(41.5+273)[K]と設定してある)を逆算することは可能である。
【0059】
又、前記ステップS2303において、前記シリンダ投入空気温度状態監視用の状態指数fがf2≦fとなるCに該当する場合、ステップS2305へ進むようにしてある。
【0060】
尚、前記ステップS2301において機関負荷が設定負荷以上でない場合、或いは前記ステップS2303において前記シリンダ投入空気温度状態監視用の状態指数fがf1≦f<f2となるBに該当する場合には、シリンダ投入空気温度の変更は行わずに、現状設定をそのまま保持するようにしてある。
【0061】
これにより、シリンダライナ44表面の油膜形成に影響を及ぼす凝縮水の発生を抑えてシリンダライナに対するピストンリング47の摺動状態を円滑に保持しつつ、シリンダ投入空気温度を低下させ、燃料消費率を低減することが可能となる。
【0062】
こうして、シリンダライナ44に対するピストンリング47の摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態を機関運転中に正確に把握しつつ、機関の状態に応じた最も経済的となる運転のための推奨値を算出し得、該推奨値に基づいて経済的運転を行うことができ、運転コスト低減を図り得る。
【0063】
図24には4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10の一例を示しており、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、該4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10では、2サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10における掃気ポート58の代わりに、吸入空気A1をシリンダ45内へ導入するための吸気弁74をシリンダヘッド75に設けている一方、シリンダ45を潤滑した潤滑油中に含まれる鉄粉等の金属粉濃度を計測する金属粉濃度センサ62と、必要に応じて潤滑油を採取するサンプリングコック63とが設けられたドレン管61の先端を、クランク軸46の下方に形成されるオイル溜まりに潤滑油が戻されるよう、クランクケース76に接続してある。
【0064】
そして、図24に示すような4サイクルクロスヘッド型のディーゼル機関10に対しても、本発明の方法を適用することにより、シリンダライナ44に対するピストンリング47の摺動状態、燃焼状態及びシリンダ投入空気温度状態を機関運転中に正確に把握しつつ、機関の状態に応じた最も経済的となる運転のための推奨値を算出し得、該推奨値に基づいて経済的運転を行うことができ、運転コスト低減を図り得る。
【0065】
但し、この場合、2サイクルの場合の「掃気温度」は、4サイクルの場合は「給気温度」と置き換えることは必要となる。
【0066】
尚、本発明のディーゼル機関の状態監視運転方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10 ディーゼル機関
20 コンピュータ
30 制御装置
44 シリンダライナ
45 シリンダ
47 ピストンリング
48 ピストンヘッド
55 過給機
55a コンプレッサ
55b タービン
56 空気冷却器
57 ウォータセパレータ
58 掃気ポート
61 ドレン管
62 金属粉濃度センサ
63 サンプリングコック
64 温度センサ
65 湿度センサ
66 温度センサ
67 温度センサ
68 圧力センサ
69 温度センサ
70 シリンダ内圧計測装置
71 温度センサ
72 温度センサ
73 温度センサ
A 吸入空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル機関の運転に関連する複数の状態診断項目毎に、過去の実験、実績、経験に基づき前記ディーゼル機関の運転に与える影響度合として求められた重み係数w1と、計測値及び/又は計測値に基づく計算値が前記ディーゼル機関の状態監視に対しどの程度の正確性を有しているかの尺度としての確度係数rとを予め設定し、この情報をコンピュータの記憶領域にデータベース化しておき、
該コンピュータの演算処理部において、
前記状態診断項目に関し、計測値及び/又は計測値に基づく計算値の予め設定された通常値からの離反割合に応じた判定指数e、計測値が設定時間内に設定値以上の変化を生じた回数に応じた判定指数e、計測値の変化率に応じた判定指数eを算出し、
前記複数の状態診断項目における確度係数rを相互に比較し、該確度係数rが相対的に大となる上位の状態診断項目を所定数選択し、該所定数選択した状態診断項目における判定指数eの重み付け平均を
Σ([重み係数w1]×[判定指数e])/Σ[確度係数r]
より算出して状態指数fとし、
該状態指数fに基づいて推奨値を求め、該推奨値となるよう運転を行うことを特徴とするディーゼル機関の状態監視運転方法。
【請求項2】
前記状態診断項目を、シリンダライナの摩耗予測値、ピストンリングのコーティング層残存厚さ予測値、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中金属粉濃度の変化率、各シリンダライナ温度、各シリンダライナ温度の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダライナ温度の変化率、各シリンダライナ温度の温度変動の周期と変動幅、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力として、シリンダライナに対するピストンリングの摺動状態を監視することにより、前記状態指数fに基づいてシリンダに対する潤滑油の注油率の推奨値を求めるようにした請求項1記載のディーゼル機関の状態監視運転方法。
【請求項3】
前記状態診断項目を、燃焼最高圧力、燃焼最高圧力のクランク角度、燃焼室最高圧縮圧力、吸入空気温度、シリンダ投入空気温度として、燃焼状態を監視することにより、前記状態指数fに基づいて燃料噴射時期の推奨値を求めるようにした請求項1記載のディーゼル機関の状態監視運転方法。
【請求項4】
前記状態診断項目を、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の全アルカリ価の各シリンダ平均値からの偏差、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量、各シリンダ下部から採取した潤滑油中の水分量の各シリンダ平均値からの偏差、凝縮水発生率、吸入空気温度、シリンダ投入空気温度として、シリンダ投入空気温度状態を監視することにより、前記状態指数fに基づいてシリンダ投入空気温度の推奨値を求めるようにした請求項1記載のディーゼル機関の状態監視運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−220204(P2011−220204A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89533(P2010−89533)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591083406)株式会社ディーゼルユナイテッド (30)
【Fターム(参考)】