説明

ノズル

【課題】装置設計、コスト、メンテナンス等の負担を軽減し、洗浄工程に要する時間を軽減することが可能な、噴射蒸気により被洗浄物の洗浄を行なうスチームジェット用ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル本体10は、蒸気室12と、空気室14と、蒸気室12に通じる蒸気入力口15と蒸気噴射口16と蒸気排気口17と、空気室14に通じる空気入力口18とを有し、蒸気室内12には、噴射用バルブ20と排気用バルブ30を有し、空気入力口18から入力される圧縮空気により、噴射用バルブ20と排気用バルブ30を制御し、洗浄処理時には、蒸気入力口15から入力された蒸気を、蒸気噴射口16から噴出させ、待機時には、蒸気排気口17から排気させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置のノズルに係り、詳しくは、枚葉洗浄装置内で保持された被洗浄物に対して往復移動して蒸気を噴射するためのノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、既知技術の枚葉洗浄装置の処理チャンバー内に蒸気を噴射するノズルを備えた装置構成図である。図2において、洗浄処理中は、例えば被洗浄物である基板85が回転ホルダ80に真空吸引され、所定の速度で回転する。ノズル70は、基板85の上部で基板85の中心部と周辺部との間隔を、所定の時間連続して往復移動しながら、蒸気発生器90から供給される蒸気を基板85の表面に噴射する。これにより、基板85の表面に付着していた除去対象物(例えばレジストなどの有機物)が剥離されて除去される。
【0003】
待機期間中は、ノズル70は、基板85の上部から後退し、所定の待機場所で次の洗浄が開始されるまで待機する。この期間、回転ホルダ80の真空吸引は解除され、洗浄された基板85が取り出される。次に、洗浄される基板85が回転ホルダ80にセットされ、真空吸引されて再び所定の速度で回転し、ノズル70は基板85の上部へと移動する。
【0004】
この待機期間中、ノズル70は、蒸気発生器90から供給される蒸気を排気手段75に噴射し、排気手段75は噴射された蒸気を装置外に排気する。これによりノズル70と蒸気の温度は一定に保たれ、再び洗浄が開始される場合、噴射される蒸気温度の立上り時間を考慮する必要が無い。ところが独立した排気手段75を設ける必要があるため、処理チャンバーの大型化、排気量増加などにより、装置設計、コスト、メンテナンス等の負担増となる。
【0005】
この負担を無くすため、蒸気発生器90を停止すると、再び洗浄が開始された時、蒸気発生器90の立上り時間を考慮する必要が生じる。もしくは、蒸気の供給を途中でバイパスして蒸気を装置外に排気した配管構造においても、再び洗浄が開始された時、バイパスからノズルまでの配管が冷めていることから、蒸気の熱が奪われるため、噴射される蒸気温度の立上り時間を考慮する必要が生じる。また洗浄の再開において、いずれの場合も、ノズル70が待機場所から基板85へ蒸気を噴射しながら移動するため、余計な雰囲気の巻き上がりが起きる。また、これを防止するため槽全体を排気する必要がある。
【0006】
特許文献1には、ピストンバルブの開閉制御用圧力流体がピストンバルブへの供給を随時に遮断できるシャットオフニードルを内蔵したインレットを通じて供給され、該インレットには圧力流体供給路のエアー抜き用溝つきナットを具備し、インレットには、内蔵されたシャットオフニードルの抜け出し防止機構を具備しているピストンバルブ付きスプレーノズルの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−257620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、装置設計、コスト、メンテナンス等の負担と、洗浄工程に要する時間とを軽減することが可能な、噴射蒸気により被洗浄物の洗浄を行なうノズルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のノズルは、枚葉洗浄装置内で保持された被洗浄物に対して往復移動して蒸気を噴射するためのノズルにおいて、ノズル本体は、蒸気室と、空気室と、蒸気室に通じる蒸気入力口と蒸気噴射口と蒸気排気口と、空気室に通じる空気入力口とを有し、蒸気室内には、噴射用バルブと排気用バルブを有し、空気入力口から入力される圧縮空気により、噴射用バルブと排気用バルブを制御し、洗浄処理時には、蒸気入力口から入力された蒸気を、蒸気噴射口から噴出させ、待機時には、蒸気排気口から排気させることを特徴とする。
【0010】
本発明のノズルは、蒸気室と空気室とが対向する壁面を貫通するバルブシャフトと、空気室に配備されるスプリングと、スプリングを押えるスプリング押え板とを更に有し、蒸気室側のバルブシャフトの端部には噴射用バルブが配備され、且つ、噴射用バルブに対し所定の間隔をもって排気用バルブが配備され、空気室側のバルブシャフトの端部にはスプリング押え板が配備され、スプリングは蒸気室と対向する空気室の壁面とスプリング押え板とに挟まれて配備されることを特徴とする。
【0011】
本発明のノズルのノズル本体の蒸気入力口と蒸気排気口と空気入力口とには、それぞれフレキシブルチューブが接続され、ノズル本体はノズル駆動手段により往復移動を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置設計、コスト、メンテナンス等の負担と、洗浄工程に要する時間とを軽減することができる、噴射蒸気により被洗浄物の洗浄を行なうノズルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるノズルの構成を示すノズル構成図。
【図2】既知の蒸気噴射用ノズルを備えた洗浄装置の構成を示す装置構成図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明によるノズルの構成を示すノズル構成図である。図1において、ノズル100は、蒸気室12と、空気室14と、蒸気室12に通じる蒸気入力口15と蒸気噴射口16と蒸気排気口17と、空気室14に通じる空気入力口18とを有するノズル本体10と、蒸気室12と空気室14とが対向する壁面を貫通するバルブシャフト40と、蒸気室12に配備される噴射用バルブ20および排気用バルブ30と、空気室14に配備されるスプリング60およびスプリング60を押えるスプリング押え板50とから構成されている。
【0015】
噴射用バルブ20は、蒸気室10側のバルブシャフト40の端部に配備され、さらに、噴射用バルブ20に対し所定の間隔をもって排気用バルブ30が配備されている。空気室14側のバルブシャフト40の端部にはスプリング押え板50が配備され、スプリング60は蒸気室12と対向する空気室14の壁面とスプリング押え板50とに挟まれて配備されている。また図示ざれていないが、ノズル本体10の蒸気入力口15と蒸気排気口17と空気入力口18とには、それぞれフレキシブルチューブが接続され、これらを介して蒸気が供給、排気され、圧縮空気が供給される。これにより、ノズル100はノズル駆動手段により自由に可動することができる。
【0016】
図1aにおいて、洗浄が待機のときのノズル100の動作を説明する。待機時においては、圧縮空気が空気入力口18から供給され、スプリング押え板50を加圧する。これによりスプリング60は圧縮されて縮み、スプリング押え板50は下方に押し下げられる。この動きに連動してバルブシャフト40が降下すると、噴射用バルブ20と排気用バルブ30も同様に降下する。これにより、蒸気噴射口16が塞がれて、蒸気入力口15から供給された蒸気の噴射が停止する。同時に、蒸気排気口17への通路が開放されて、蒸気は矢印方向に進み、蒸気排気口17からフレキシブルチューブを介して装置外に排気される。
【0017】
このように待機時において、蒸気は所定の流量で供給、排気されているため、ノズル本体10と蒸気の温度は所定の温度に維持され、洗浄処理の再開と同時に、直ちに蒸気を噴射することができる。また、待機時において、図2における基板85及び回転ホルダ80に蒸気が噴射されることが無いため、排気手段75を有する待機場所を設ける必要が無い。このため、洗浄装置の設計、コスト、メンテナンス等の負担を軽減することができ、且つ、洗浄工程全体に要する時間を短縮することができる。
【0018】
図1bにおいて、洗浄処理のときのノズル100の動作を説明する。洗浄処理時においては、空気入力口18からの圧縮空気の供給が停止され、圧縮されていたスプリング60はスプリング押え板50を元の状態に押し上げる。この動きに連動してバルブシャフト40が上昇すると、噴射用バルブ20と排気用バルブ30も同様に上昇する。これにより、蒸気排気口17への通路が塞がれ、蒸気噴射口16が開放されて、蒸気入力口15から供給された蒸気は矢印方向に進み、基板85に向けて噴射される。ノズル100はノズル駆動手段(図示せず)により所定の時間往復移動し、基板85の洗浄が完了する。蒸気の噴射が停止し、排気されている待機期間中に、洗浄された基板85と次に洗浄される基板85とが置き換えられる。
【0019】
以上説明したように本発明によれば、図2における排気手段75を有する待機場所を設ける必要が無いため、洗浄装置の設計、コスト、メンテナンス等の負担を軽減することを可能とし、且つ、洗浄処理の再開と同時に直ちに安定した温度の蒸気を噴射することができるため、洗浄工程全体に要する時間を短縮することを可能とするノズルを提供することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 ノズル本体
12 蒸気室
14 空気室
15 蒸気入力口
16 蒸気噴射口
17 蒸気排気口
18 空気入力口
20 噴射用バルブ
30 排気用バルブ
40 バルブシャフト
50 バネ押え板
60 スプリング
70 ノズル
75 排気手段
80 回転ホルダ
90 蒸気発生器
100 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉洗浄装置内で保持された被洗浄物に対して往復移動して蒸気を噴射するためのノズルにおいて、
ノズル本体は、蒸気室と、空気室と、前記蒸気室に通じる蒸気入力口と蒸気噴射口と蒸気排気口と、前記空気室に通じる空気入力口とを有し、
前記蒸気室内には、噴射用バルブと排気用バルブを有し、
前記空気入力口から入力される圧縮空気により、前記噴射用バルブと前記排気用バルブを制御し、
洗浄処理時には、前記蒸気入力口から入力された蒸気を、前記蒸気噴射口から噴出させ、待機時には、前記蒸気排気口から排気させることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記蒸気室と前記空気室とが対向する壁面を貫通するバルブシャフトと、前記空気室に配備されるスプリングと、前記スプリングを押えるスプリング押え板とを更に有し、
前記蒸気室側の前記バルブシャフトの端部には前記噴射用バルブが配備され、且つ、前記噴射用バルブに対し所定の間隔をもって前記排気用バルブが配備され、
前記空気室側の前記バルブシャフトの端部には前記スプリング押え板が配備され、前記スプリングは前記蒸気室と対向する前記空気室の壁面と前記スプリング押え板とに挟まれて配備されることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体の前記蒸気入力口と蒸気排気口と空気入力口とには、それぞれフレキシブルチューブが接続され、前記ノズル本体はノズル駆動手段により前記往復移動を行うことを特徴とする請求項1に記載のノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−194417(P2010−194417A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39892(P2009−39892)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】