説明

ハイブリッド車両およびその制御方法

【課題】登降坂路におけるドライバビリティのより一層の向上を図る。
【解決手段】アクセルオフ状態でハイブリッド自動車が比較的急な降坂路を走行しているときに、回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していないと判断された場合、実加速度と推定加速度とに基づく路面勾配θに対応した勾配起因シフトレンジSRgが制御用シフトレンジSR*として設定され(S230)、当該エイリアシングが発生していると判断された場合には、制御用シフトレンジSR*が前回値に保持される(S240)。これにより、上記エイリアシングが発生していると判断されたときには、エイリアシングが発生していると判断される直前に求められた路面勾配θに対応した勾配起因シフトレンジSRgに基づいてエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動変速機のギヤ段がエンジンブレーキ作用状態とエンジンブレーキ非作用状態とを有すると共に、車両加速度に基づいて道路勾配を判定する車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、自動変速機のギヤ段がエンジンブレーキ非作用状態であると判定されたときに車両加速度に基づく道路勾配判定を禁止し、精度の低い道路勾配判定に基づく登降坂制御により運転性が損なわれることを抑制している。また、従来から、エンジンと複数の動力伝達部材とが複数の動力伝達用クラッチを介して連結され、複数の動力伝達部材と出力軸間で変速比の異なる複数の歯車対によってトルクが伝達可能なように構成され、複数の歯車対の何れかを選択して噛合させる複数の変速用クラッチによって変速制御を行うと共に動力伝達用クラッチの係合具合を変化させることが可能な車両変速機が知られている(例えば、特許文献2参照)。この変速機では、道路勾配に応じた最適なエンジンブレーキが得られるように、加速度検出手段により検出された加速度に応じて動力伝達用クラッチの係合具合が変化させられる。更に、従来から、エンジンと、エンジンのクランクシャフトに接続されたプラネタリギヤと、プラネタリギヤに接続された発電可能なモータと、プラネタリギヤに接続されると共にデファレンシャルギヤを介して駆動輪に接続された無段変速機とを備えた車両が知られている(例えば、特許文献3参照)。この車両では、車両の走行状態がクリープトルク出力許可領域内のときに、車速とブレーキ油圧とに基づいてクリープ補正係数を算出すると共に車両の加速度と無段変速機の変速比とに基づいてクリープ補正係数下限値を算出し、算出したクリープ補正係数下限値でクリープ補正係数Kcrの下限を制限した上で、ドライバ要求トルクにクリープ補正係数を乗じた値であるクリープトルクが出力されるようモータを駆動制御している。これにより、車両の加速度に基づいて判断される登り勾配の大きさと無段変速機の変速比に応じたクリープトルクを出力することができる。
【特許文献1】特開平10−238615号公報
【特許文献2】特開2006−308061号公報
【特許文献3】特開2003−189420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、車両の実加速度を用いて路面勾配を把握すれば、路面勾配に応じた車両制御を実行可能となり、それにより登降坂路におけるドライバビリティを良好なものとすることができる。ただし、車両の走行中に実加速度を常に精度よく取得(検出)し得るとは限らず、車両の実加速度を精度よく取得し得ないときに当該実加速度から求められる路面勾配を用いて車両を制御したのでは、却ってドライバビリティの改善を図ることができなくなるおそれもある。
【0004】
そこで、本発明によるハイブリッド車両およびその制御方法は、登降坂路におけるドライバビリティのより一層の向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるハイブリッド車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0006】
本発明によるハイブリッド車両は、
内燃機関と、
動力を入出力可能な第1電動機と、
前記内燃機関の機関軸と前記第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、
前記第1および第2電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
前記駆動軸または該駆動軸に接続された所定の軸の回転速度を取得する回転速度取得手段と、
前記回転速度取得手段により取得された回転速度を用いて車両進行方向の実加速度を取得する実加速度取得手段と、
前記駆動軸に出力すべきトルクから車両進行方向の推定加速度を取得する推定加速度取得手段と、
前記実加速度取得手段により取得された実加速度と前記推定加速度取得手段により取得された推定加速度との差に基づいて路面勾配を算出する路面勾配算出手段と、
複数の仮想シフトレンジの中から前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配に対応した仮想シフトレンジを勾配起因シフトレンジとして設定する勾配起因シフトレンジ設定手段と、
前記駆動軸または前記所定の軸の回転数と前記回転速度取得手段のサンプリング間隔とに基づくエイリアシングが発生しているか否かを判定する判定手段と、
前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が所定範囲内にあると共に前記判定手段により前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が前記所定範囲内にあると共に前記判定手段により前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持する制御用シフトレンジ設定手段と、
前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が前記所定範囲内にあるときに、前記制御用シフトレンジ設定手段により設定された制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御する登降坂路走行制御手段と、
を備えるものである。
【0007】
このハイブリッド車両では、駆動軸または当該駆動軸に接続された所定の軸の回転速度を取得する回転速度取得手段により取得された回転速度を用いて車両進行方向の実加速度が取得されると共に、駆動軸に出力すべきトルクから車両進行方向の推定加速度が取得され、実加速度と推定加速度との差に基づいて路面勾配が算出される。更に、このハイブリッド車両では、複数の仮想シフトレンジが予め定められており、実加速度と推定加速度との差から算出された路面勾配に対応する仮想シフトレンジが勾配起因シフトレンジとして設定される。そして、算出された路面勾配が所定範囲内にあるときには、基本的に勾配起因シフトレンジが制御用シフトレンジとされ、当該制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように内燃機関と第1および第2電動機とが制御される。このように、実加速度と推定加速度との差から算出される路面勾配に対応した勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとし、当該制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて内燃機関と第1および第2電動機とを制御すれば、路面勾配に応じた車両制御により登降坂路におけるドライバビリティを向上させることができる。ただし、駆動軸または所定の軸の回転数と回転速度取得手段のサンプリング間隔との関係によっては、エイリアシングにより回転速度取得手段により取得された回転速度から車両進行方向の実加速度を精度よく取得し得なくなることがある。これを踏まえて、このハイブリッド車両では、路面勾配算出手段により算出された路面勾配が所定範囲内にあると共に判定手段によりエイリアシングが発生していないと判断されたときには、勾配起因シフトレンジが制御用シフトレンジとして設定され、路面勾配算出手段により算出された路面勾配が所定範囲内にあると共に判定手段によりエイリアシングが発生していると判断されたときには、制御用シフトレンジが保持される。これにより、判定手段によりエイリアシングが発生していると判断されたときには、エイリアシングに起因して精度よく取得されていない可能性がある実加速度から求められる路面勾配ではなく、エイリアシングが発生していると判断される直前に求められた路面勾配に対応した勾配起因シフトレンジに基づいて内燃機関と第1および第2電動機とが制御されることになる。従って、このハイブリッド車両では、不正確な路面勾配に基づく車両制御の実行を抑制することができるので、登降坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることが可能となる。
【0008】
また、前記ハイブリッド車両は、運転者によるアクセル操作量に基づいて前記駆動軸に出力すべきトルクである要求トルクを設定する要求トルク設定手段を更に備えてもよく、前記制御用シフトレンジ設定手段は、前記路面勾配が第1閾値以下の下り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、前記路面勾配が前記第1閾値以下の下り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持するものであってもよく、前記要求トルク設定手段は、前記アクセル操作状態がアクセルオフ状態にあると共に前記路面勾配が前記第1閾値以下の下り勾配であるときに、前記複数の仮想シフトレンジおよび車速と前記要求トルクとの関係を規定する要求トルク設定制約を用いて前記制御用シフトレンジと車速とに対応した要求トルクを設定するものであってもよく、前記登降坂路走行制御手段は、前記アクセル操作状態がアクセルオフ状態にあると共に前記路面勾配が前記第1閾値以下の下り勾配であるときに、前記複数の仮想シフトレンジおよび車速と前記内燃機関の目標回転数との関係を規定する目標回転数設定制約を用いて前記制御用シフトレンジと車速とに対応した目標回転数を設定し、燃料カット状態にある前記内燃機関の機関軸が前記目標回転数で回転すると共に前記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するものであってもよい。これにより、アクセルオフ状態でハイブリッド車両が比較的急な降坂路を走行している最中に上記エイリアシングが発生していないと判断された場合には、制御用シフトレンジ(勾配起因シフトレンジ)と車速とに基づいて路面勾配に対応した要求トルクや内燃機関の目標回転数が設定されると共に、内燃機関から駆動軸に路面勾配に応じたより適正なフリクショントルク(エンジンブレーキによる制動トルク)が出力されることになる。また、アクセルオフ状態でハイブリッド車両が比較的急な降坂路を走行している最中に上記エイリアシングが発生していると判断された場合には、制御用シフトレンジが保持されることから、不正確な路面勾配に基づく要求トルクおよび内燃機関の目標回転数の設定や内燃機関からのフリクショントルクの出力が抑制され、より実態に近い路面勾配に対応したより適正なトルクを駆動軸に出力することが可能となる。従って、このハイブリッド車両では、降坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることができる。
【0009】
この場合、前記要求トルク設定制約は、前記複数の仮想シフトレンジごとに車速と前記要求トルクとの関係を規定するものであって、当該車速と前記要求トルクとの関係は、車速が高いほど前記要求トルクが制動トルクとして大きくなる傾向を有してもよく、前記目標回転数設定制約は、前記複数の仮想シフトレンジごとに車速と前記目標回転数との関係を規定するものであって、当該車速と前記目標回転数との関係は、車速が高いほど前記目標回転数が高くなる傾向を有してもよい。
【0010】
また、前記ハイブリッド車両は、運転者によるアクセル操作量に基づいて前記駆動軸に出力すべきトルクである要求トルクを設定する要求トルク設定手段を更に備えてもよく、前記制御用シフトレンジ設定手段は、前記路面勾配が第2閾値以上の上り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、前記路面勾配が前記第2閾値以上の上り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持するものであってもよく、前記登降坂路走行制御手段は、前記アクセル操作状態がアクセルオン状態にあると共に前記路面勾配が前記第2閾値以上の上り勾配であるときに、前記複数の仮想シフトレンジおよび車速と前記内燃機関の下限回転数との関係を規定する下限回転数設定制約を用いて前記制御用シフトレンジと車速とに対応した下限回転数を設定し、前記内燃機関の回転数が前記下限回転数以上に保たれると共に前記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するものであってもよい。このように、アクセルオン状態でハイブリッド車両が比較的急な登坂路を走行している最中に上記エイリアシングが発生していないと判断された場合には、勾配起因シフトレンジが制御用シフトレンジとして設定されると共に、制御用シフトレンジ(勾配起因シフトレンジ)に基づいて内燃機関の下限回転数が設定されるので、内燃機関の回転数を路面勾配に応じた下限回転数以上に保つことで内燃機関からの動力を取り出し易くし、それにより加速性能を向上させることが可能となる。また、アクセルオン状態でハイブリッド車両が比較的急な登坂路を走行している最中に上記エイリアシングが発生していると判断された場合には、制御用シフトレンジが保持され、不正確な路面勾配ではなく、より実態に近い路面勾配に応じた内燃機関の下限回転数が設定されるので、それにより加速性能を良好に保つことが可能となる。従って、このハイブリッド車両では、登坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることが可能となる。
【0011】
この場合、前記下限回転数設定制約は、前記複数の仮想シフトレンジごとに車速と前記下限回転数との関係を規定するものであって、当該車速と前記下限回転数との関係は、車速が高いほど前記下限回転数が高くなる傾向を有するものであってもよい。
【0012】
更に、前記ハイブリッド車両は、通常走行用のドライブレンジおよび複数の仮想シフトレンジの何れかの選択を運転者に許容するシフトレンジ選択手段を更に備えてもよく、前記複数の仮想シフトレンジのそれぞれには、アクセルオフ状態における車速と前記駆動軸に出力すべきトルクである要求トルクとの関係と、アクセルオフ状態における車速と前記内燃機関の目標回転数との関係と、アクセルオン状態における車速と前記内燃機関の下限回転数との関係とが対応付けられており、前記登降坂路走行制御手段は、前記ドライブレンジが選択されると共に前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が前記所定範囲内にあるときに、前記制御用シフトレンジと前記所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するものであってもよい。このようなシフトレンジ選択手段を備えたハイブリッド車両では、シフトレンジ選択手段を操作して仮想シフトレンジを選択することにより、アクセルオフ状態でのトルク特性を複数段階に設定したり、アクセルオン状態でのエンジンの出力応答性を良好に確保したりすることが可能となる。そして、ドライブレンジが選択されているときに、路面勾配に対応した何れかの仮想シフトレンジを制御用シフトレンジとして車両制御を実行することにより登降坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることが可能となる。
【0013】
そして、前記動力分配手段は、前記内燃機関の機関軸に接続される第1要素と、前記第1電動機の回転軸に接続される第2要素と、前記駆動軸に接続される第3要素とを有すると共にこれら3つの要素が互いに差動回転できるように構成された遊星歯車機構であってもよい。
【0014】
本発明によるハイブリッド車両の制御方法は、
内燃機関と、動力を入出力可能な第1電動機と、前記内燃機関の機関軸と前記第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、前記第1および第2電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、前記駆動軸または該駆動軸に接続された所定の軸の回転速度を取得する回転速度取得手段とを備えたハイブリッド車両の制御方法であって、
(a)前記回転速度取得手段により取得された回転速度を用いて導出される車両進行方向の実加速度と、前記駆動軸に出力すべきトルクから推定される車両進行方向の推定加速度との差に基づいて路面勾配を算出するステップと、
(b)複数の仮想シフトレンジの中からステップ(a)にて算出された路面勾配に対応した仮想シフトレンジを勾配起因シフトレンジとして設定するステップと、
(c)前記駆動軸または前記所定の軸の回転数と前記回転速度取得手段のサンプリング間隔とに基づくエイリアシングが発生しているか否かを判定するステップと、
(d)ステップ(a)にて算出された路面勾配が所定範囲内にあると共にステップ(c)にて前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、ステップ(a)にて算出された路面勾配が前記所定範囲内にあると共にステップ(c)にて前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持するステップと、
(e)ステップ(a)にて算出された路面勾配が前記所定範囲内にあるときに、ステップ(d)にて設定された制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するステップと、
を含むものである。
【0015】
この方法のように、実加速度と推定加速度との差から算出される路面勾配が所定範囲内にあると共にエイリアシングが発生していないと判断されたときに、当該路面勾配に対応した勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして内燃機関と第1および第2電動機とを制御すれば、路面勾配に応じた車両制御により登降坂路におけるドライバビリティを向上させることができる。また、実加速度と推定加速度との差から算出される路面勾配が所定範囲内にあると共に上記エイリアシングが発生していると判断されたときに、制御用シフトレンジを保持すれば、エイリアシングに起因して精度よく取得されていない可能性がある実加速度から求められる路面勾配ではなく、エイリアシングが発生していると判断される直前に求められた路面勾配に対応した勾配起因シフトレンジに基づいて内燃機関と第1および第2電動機とを制御することができる。これにより、不正確な路面勾配に基づく車両制御の実行を抑制することができるので、登降坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車20は、エンジン22と、エンジン22のクランクシャフト(機関軸)26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに連結された減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、ハイブリッド自動車20の全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70等とを備えるものである。
【0018】
エンジン22は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料の供給を受けて動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24による燃料噴射量や点火時期、吸入空気量等の制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22に対して設けられて当該エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力される。そして、エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号や上記センサからの信号等に基づいてエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に送信する。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31と噛合すると共にリングギヤ32と噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構として構成されている。キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されている。動力分配統合機構30は、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側とにそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して最終的に駆動輪である車輪39a,39bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、何れも発電機として作動すると共に電動機として作動可能な周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介して二次電池であるバッテリ50と電力のやり取りを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2の何れか一方により発電される電力を他方のモータで消費できるようになっている。従って、バッテリ50は、モータMG1,MG2の何れかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになり、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されないことになる。モータMG1,MG2は、何れもモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40により駆動制御されている。また、モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や、図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流等が入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号等が出力される。実施例において、回転位置検出センサ43,44としては、1相励磁2相出力方式のレゾルバが採用されており、モータECU40は、所定時間(所定のサンプリング間隔)おきに図示しない回転数算出ルーチンを実行し、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転子の回転数Nm1,Nm2を算出している。また、モータECU40は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号等に基づいてモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に送信する。
【0021】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からのバッテリ温度Tb等が入力されている。また、バッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70やエンジンECU24に送信する。実施例のバッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCを算出したり、当該残容量SOCに基づいてバッテリ50の充放電要求パワーPb*を算出したり、残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である充電許容電力としての入力制限Winとバッテリ50の放電に許容される電力である放電許容電力としての出力制限Woutとを算出したりする。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定すると共に、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定可能である。
【0022】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラム等を記憶するROM74、データを一時的に記憶するRAM76、図示しない入出力ポートおよび通信ポート等を備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置(シフトポジション)に対応したシフトレンジSRを検出するシフトレンジセンサ82からのシフトレンジSR、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ86からのブレーキペダルストロークBS、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力される。また、ハイブリッドECU70は、上述したようにエンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と各種制御信号やデータのやり取りを行っている。
【0023】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動輪である車輪39a,39bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が計算され、この要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される。エンジン22とモータMG1およびMG2の運転制御モードとしては、要求トルクTr*に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力されるパワーのすべてが動力分配統合機構30とモータMG1およびMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求トルクTr*とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力されるパワーの全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1およびMG2とによるトルク変換を伴って要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止して要求トルクTr*に基づくトルクをリングギヤ軸32aに出力するようにモータMG2を駆動制御するモータ運転モード等がある。
【0024】
ここで、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81のシフトポジションとして、駐車時に選択される駐車レンジに対応したPポジション、後進走行用のリバースレンジに対応したRポジション、中立のニュートラルレンジに対応したNポジション、通常の前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)に対応したDポジションに加えて、複数の仮想シフトレンジSR1,SR2,SR3,SR4,SR5およびSR6からの任意の仮想シフトレンジの選択を可能とするシーケンシャルシフトポジション(Sポジション)、アップシフト指示ポジションおよびダウンシフト指示ポジションが用意されている。運転者によりシフトレバー81がSポジションにセットされると、その際の車速V等に応じて仮想シフトレンジSR1〜SR6の中の何れかが初期レンジとして設定され、以後、シフトレバー81がアップシフト指示ポジションにセットされると仮想シフトレンジが1段階ずつ上げられる(アップシフトされる)一方、シフトレバー81がダウンシフト指示ポジションにセットされると仮想シフトレンジが1段階ずつ下げられる(ダウンシフトされる)。また、シフトレンジセンサ82は、シフトレバー81の操作に応じて現在の仮想シフトレンジ(SR1〜SR6の何れか)をシフトレンジSRとして出力する。
【0025】
そして、実施例のハイブリッド自動車20では、複数の仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとにアクセルオフ状態(Acc=0%)における車速Vとリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*との関係を規定するアクセルオフ時要求トルク設定用マップ(要求トルク設定制約)が用意されている。図2にアクセルオフ時要求トルク設定用マップの一例を示す。同図からわかるように、各仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れが選択されても、車速Vが高いほど要求トルクTr*が小さくすなわち制動トルクとして大きく設定される。また、実施例のアクセルオフ時要求トルク設定用マップは、仮想シフトレンジSR6からSR1へと段階が小さくなるほど同一の車速Vに対する要求トルクを小さく(制動力として大きく)設定するものとして作成されている。なお、実施例では、Dレンジに仮想シフトレンジSR6と同一の車速Vと要求トルクTr*との関係が対応付けられている。更に、実施例のハイブリッド自動車20では、複数の仮想シフトレンジSR1〜R6ごとにアクセルオフ状態における車速Vとエンジン22の目標回転数Ne*との関係を規定するエンジン目標回転数設定用マップ(目標回転数設定制約)が用意されている。図3にエンジン目標回転数設定用マップの一例を示す。同図からわかるように、各仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れが選択されても、車速Vが高いほどエンジン22の目標回転数Ne*が高く設定される。また、実施例のエンジン目標回転数設定用マップは、仮想シフトレンジSR6からSR1へと段階が小さくなるほど同一の車速Vに対する目標回転数Ne*高く設定するものとして作成されている。なお、実施例では、Dレンジに仮想シフトレンジSR6と同一の車速Vと目標回転数Ne*との関係が対応付けられている。加えて、実施例のハイブリッド自動車20では、アクセルオン状態での走行中に仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかが選択されていると、図3のエンジン目標回転数設定用マップから選択されている仮想シフトレンジに対応した回転数が導出され、当該回転数がエンジン22の下限回転数Neminとして設定される。すなわち、エンジン目標回転数設定用マップは下限回転数設定制約としても用いられ、複数の仮想シフトレンジSR1〜R6のそれぞれには、アクセルオン状態における車速Vとエンジン22の下限回転数Neminとの関係が対応付けられることになる。なお、下限回転数設定制約として、図3のエンジン目標回転数設定用マップとは異なる専用のものを用意してもよいことはいうまでもない。
【0026】
これにより、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81を操作して仮想シフトレンジSR1〜R6の何れか選択することにより、アクセルオフ状態でのトルク特性(制動トルク特性)を複数段階(実施例では6段階)に設定したり、アクセルオン状態でのエンジンの出力応答性を良好に確保したりすることが可能となる。なお、実施例において、シフトレバー81がDポジションがセットされているときには、エンジン22が停止されていなければ当該エンジン22が効率よく運転されるように制御される。そして、シフトレバー81がDポジションがセットされているときに、シフトレンジセンサ82はシフトレンジSRがDレンジである旨の信号を出力する。
【0027】
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。ここでは、まず図4等を参照しながら運転者によるアクセル操作状態がアクセルオフ状態にあるときの動作について説明する。
【0028】
図4は、エンジン22が運転された状態で運転者によるアクセル操作状態がアクセルオフ状態(Acc=0)になったときに、ハイブリッドECU70により所定時間(例えば数msec)ごとに繰り返し実行されるアクセルオフ時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、運転者によりアクセルペダル83の踏み込みが解除されてアクセルオン状態からアクセルオフ状態へと移行すると、ハイブリッドECU70は、エンジン22における燃料噴射制御(燃料供給)や点火時期制御を停止させるための指令信号(燃料カット指令)をエンジンECU24に送信し、エンジンECU24は、ハイブリッドECU70からの指令信号に応じて燃料噴射制御等を停止させる。
【0029】
図4のアクセルオフ時制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、シフトレンジセンサ82からのシフトレンジSR、車速センサ87からの車速V、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の入出力制限Win,Wout、路面勾配θ、勾配起因シフトレンジSPg、登降坂制御許否フラグFadの値といった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。ただし、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、モータECU40により回転数算出ルーチンを経て算出されるものであってモータECU40から通信により入力される。また、入出力制限Win,Woutは、バッテリECU52から通信により入力される。路面勾配θと勾配起因シフトレンジSRgとは、それぞれハイブリッドECU70により別途実行される図5の登降坂制御ルーチンを経て算出・設定されるものである。更に、登降坂制御許否フラグFadは、ハイブリッドECU70により、エンジン22の冷却水温度が所定温度(例えば60〜70℃)以上であること、車速Vが所定範囲内(例えば10〜140km/hの範囲)にあること、ハイブリッド自動車20において何らかの異常が発生している診断されていないこと等の条件(勾配起因シフトレンジSRgの使用の前提条件)が成立しているときに値1に設定されると共に、それ以外のときに値0に設定され、所定の記憶領域に保持されているものである。
【0030】
ここで、図4のアクセルオフ時制御ルーチンの説明を中断して、図5の登降坂制御ルーチンについて説明する。かかる登降坂制御ルーチンは、登降坂路におけるドライバビリティの向上を図るべく、ハイブリッド自動車20の走行中にハイブリッドECU70により所定時間ごとに繰り返し実行されるものである。図5の登降坂制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、車速センサ87からの車速Vや、モータMG2の回転数Nm2、当該回転数Nm2の算出直前に設定された要求トルク(前回要求トルク)Tr*といった必要なデータの入力処理を実行する(ステップS300)。ステップS300のデータ入力処理の後、入力した回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除して得られるリングギヤ軸32aの回転数Nrに基づいてハイブリッド自動車20の進行方向における実加速度αを算出する(ステップS310)。ステップS310では、リングギヤ軸32aの回転数Nrの単位時間あたりの変化量を求めることにより容易に実加速度αを算出することができる。更に、前回要求トルクTr*を用いて次式(1)に従い車両進行方向の推定加速度αestを算出する(ステップS320)。ただし、式(1)において、“k”は、リングギヤ軸32aに出力されたトルクを走行用の駆動力に換算するための換算係数であり、“Rd”は、車速V等に応じて定まる走行抵抗であり、“m”は車重(例えば1名または乗車時や2名乗車時等の車重)である。そして、実加速度α、推定加速度αestおよび重力加速度gとを用いて次式(2)に従い路面勾配θを算出する(ステップS330)。こうして路面勾配θを算出したならば、予め用意された勾配起因シフトレンジ設定用マップから当該路面勾配θに対応した勾配起因シフトレンジSRgを導出・設定し(ステップS340)、本ルーチンを一旦終了させる。図6に勾配起因シフトレンジ設定用マップの一例(下り勾配の前進時用の領域のみ)を例示する。同図に示す勾配起因シフトレンジ設定用マップは、上述の仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応したアクセルオフ状態での要求トルクTr*やアクセルオン状態での下限回転数Nemin等を踏まえて、車速Vおよび路面勾配θと仮想シフトレンジとの関係、すなわち、ある路面勾配θの走行路をある車速Vで走行しているときに選択されると好適な仮想シフトレンジを規定するものであり、予め実験・解析を経て作成される。
【0031】
αest=(k・前回Tr*-Rd)/m …(1)
θ=arcsin([α−αest]/g) …(2)
【0032】
さて、再度図4のアクセルオフ時制御ルーチンの説明に戻ると、ステップS100のデータ入力処理の後、入力したシフトレンジSRがDレンジと仮想シフトレンジSR1〜SR6との何れであるかを調べる(ステップS110)。シフトレンジSRが仮想シフトレンジSR1〜SR6である場合、すなわち運転者によりシフトレバー81がSポジションやアップまたはダウンシフト指示ポジションにセットされている場合には、ステップS100にて入力したシフトレンジSRを以後の制御に供される制御用シフトレジンSR*として設定する(ステップS120)。次いで、上述の図2のアクセルオフ時要求トルク設定用マップから制御用シフトレンジSR*とステップS100にて入力した車速Vとに対応した要求トルクTr*を導出・設定すると共に(ステップS130)、上述の図3のエンジン目標回転数設定用マップから制御用シフトレンジSR*とステップS100にて入力した車速Vとに対応したエンジン22の目標回転数Ne*を設定する(ステップS140)。
【0033】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*を設定したならば、目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とを用いて次式(3)に従いモータMG1の目標回転数Nm1*を計算した上で、計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づく次式(4)に従ってモータMG1に対するトルク指令Tm1*を設定する(ステップS150)。ここで、式(3)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。図7にエンジン22に対する燃料供給が停止されているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を例示する。図中、左側のS軸はモータMG1の回転数Nm1に一致するサンギヤ31の回転数を示し、中央のC軸はエンジン22の回転数Neに一致するキャリア34の回転数を示し、右側のR軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。また、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1にトルクTm1を出力させたときにこのトルク出力によりリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2にトルクTm2を出力させたときに減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。モータMG1の目標回転数Nm1*を求めるための式(3)は、この共線図における回転数の関係を用いれば容易に導出することができる。そして、式(3)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(3)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0034】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) …(3)
Tm1*=k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt …(4)
【0035】
続いて、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮モータトルクTm2tmpを次式(5)に従い計算する(ステップS160)。更に、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとモータMG1に対するトルク指令Tm1*とモータMG1,MG2の現在の回転数Nm1,Nm2とを用いてモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(6)および式(7)に従い計算する(ステップS170)。そして、モータMG2に対するトルク指令Tm2*をトルク制限Tm2min,Tm2maxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値として設定する(ステップS180)。このようにしてモータMG2に対するトルク指令Tm2*を設定することにより、リングギヤ軸32aに出力するトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内に制限したトルクとして設定することができる。なお、式(5)は、図7の共線図から容易に導出することができる。こうしてモータMG1,MG2に対するトルク指令Tm1*,Tm2*を設定したならば、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS190)、再度ステップS100以降の処理を実行する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*に従ってモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*に従ってモータMG2が駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。これにより、燃料カットされた状態のエンジン22のクランクシャフト26がモータMG1のモータリングによって選択されている仮想シフトレンジに対応した目標回転数Ne*で回転すると共に要求トルクTr*に基づくトルク(制動トルク)がリングギヤ軸32aに出力されるようにモータMG1およびMG2とが制御される。そして、この際には、モータMG1によりモータリングされるエンジン22からフリクショントルク(いわゆるエンジンブレーキによる制動トルク、図7の−1/ρ・Tm1)がリングギヤ軸32aに出力されることになる。従って、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81をSポジションやアップまたはダウンシフト指示ポジションにセットして仮想シフトレンジSR1〜SR6を選択することにより、アクセルオフ状態での制動トルク特性を複数段階に設定することが可能となる。
【0036】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(5)
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(6)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(7)
【0037】
一方、ステップS110にてシフトレンジSRがDレンジである判断された場合、すなわち運転者によりシフトレバー81がDポジションにセットされている場合には、登降坂制御許否フラグFadが値1であるか否かを判定する(ステップS200)。登降坂制御許否フラグFadが値0であるときには、仮想シフトレンジSR1〜SR6のうちのDレンジに対応した仮想シフトレンジSR6を制御用シフトレジンSR*として設定し(ステップS120)、上述のステップS130〜S190の処理を実行する。このように、運転者によりDレンジが選択されているときに、エンジン22の暖機が完了していなかったり、ハイブリッド自動車20の走行状態が極低速走行状態または高速走行状態にあったりするような場合には、選択されているDレンジ(SR6)をそのまま制御用シフトレンジSR*として用いてモータMG1およびMG2が制御される。また、ステップS200にて登降坂制御許否フラグFadが値1であると判断された場合には、更にステップS100にて入力した路面勾配θが予め定められた閾値(第1閾値)−θref(ただし、θrefは正の所定値である。)以下であるか否か(閾値−θref以下の下り勾配であるか否か)を判定する(ステップS210)。路面勾配θが閾値−θrefを上回っている場合には、仮想シフトレンジSR1〜SR6のうちのDレンジに対応した仮想シフトレンジSR6を制御用シフトレジンSR*として設定し(ステップS120)、上述のステップS130〜S190の処理を実行する。このように、運転者によりDレンジが選択されているときに、走行路の下り勾配が緩やかであったり、走行路が平坦路あるいは登坂路であったりする場合には、選択されているDレンジ(SR6)をそのまま制御用シフトレンジSR*として用いてモータMG1およびMG2が制御される。
【0038】
これに対して、ステップS210にて路面勾配θが閾値−θref以下であってハイブリッド自動車20が比較的急な降坂路を走行していると判断された場合には、更に、ステップS100にて入力したモータMG2の回転数Nm2に基づいてモータECU40によるモータMG2の回転数Nm2の算出に際してエイリアシングが発生しているか否かを判定する(ステップS220)。ここで、リングギヤ軸32aに接続されたモータMG2の実際の回転数と、回転位置検出センサ(レゾルバ)44からの信号を用いた回転数Nm2の算出間隔(サンプリング間隔)との関係によっては、回転位置検出センサ44により出力される信号から回転数Nm2を正確に再現できなくなるエイリアシングが発生することがある。このようなエイリアシングが発生すると、図5の登降坂制御ルーチンの実行に際して回転数Nm2から車両進行方向の実加速度αひいては路面勾配θを精度よく取得し得なくなることがあり、路面勾配θが不正確なものであると、図5の登降坂制御ルーチンにより設定される勾配起因シフトレンジSRgが実態にそぐわないものとなってしまうおそれがある。これを踏まえて、実施例のハイブリッド自動車20では、エイリアシングが発生するモータMG2の回転数域を計算と実験とから予め特定することにより、モータMG2の回転数Nm2からエイリアシングの有無を判定可能とする図示しないエイリアシング発生判定用マップが予め用意されている。そして、ステップS220では、モータMG2の回転数Nm2とエイリアシング発生判定用マップとを用いて上記エイリアシングが発生しているか否かを判定する。
【0039】
ステップS220にてエイリアシングが発生していないと判断された場合には、ステップS100にて入力した勾配起因シフトレンジSRgを制御用シフトレンジSR*として設定した上で(ステップS230)、上述のステップS130〜S190の処理を実行する。これにより、Dレンジが選択されると共にアクセルオフ状態でハイブリッド自動車20が比較的急な降坂路を走行している最中に回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していないと判断された場合には、制御用シフトレンジSR*(勾配起因シフトレンジSRg)と車速Vとに基づいて路面勾配θに対応した要求トルクTr*やエンジン22の目標回転数Ne*が設定されると共に(ステップS130,S140)、エンジン22からリングギヤ軸32aに路面勾配θに応じたより適正なフリクショントルク(エンジンブレーキによる制動トルク)が出力されることになる。また、ステップS220にてエイリアシングが発生していると判断された場合には、本ルーチンの前回実行時に設定された制御用シフトレンジSR*を今回の制御用シフトレンジSR*として設定(保持)した上で(ステップS240)、上述のステップS130〜S190の処理を実行する。これにより、Dレンジが選択されると共にアクセルオフ状態でハイブリッド自動車20が比較的急な降坂路を走行している最中に回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していると判断された場合には、エイリアシングに起因して精度よく取得されていない可能性がある実加速度αから求められる路面勾配θではなく、エイリアシングが発生していると判断される直前に求められた路面勾配θに対応した勾配起因シフトレンジSRgに基づいて要求トルクTr*やエンジン22の目標回転数Ne*が設定されることになる(ステップS130,S140)。この結果、回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していると判断された場合には、不正確な路面勾配θに基づく要求トルクTr*および目標回転数Ne*の設定やエンジン22からのフリクショントルクの出力を抑制し、より実態に近い路面勾配に対応したより適正なトルク(制動トルク)をリングギヤ軸32aに出力することが可能となる。
【0040】
引き続き、図8等を参照しながら運転者によるアクセル操作状態がアクセルオン状態であるときのハイブリッド自動車20の動作について説明する。図8は、エンジン22が運転されると共に運転者によるアクセル操作状態がアクセルオン状態(Acc>0)にあるときに、ハイブリッドECU70により所定時間(例えば数msec)ごとに繰り返し実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである
【0041】
図8の駆動制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、シフトレンジセンサ82からのシフトレンジSR、車速センサ87からの車速V、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の充放電要求パワーPb*や入出力制限Win,Wout、路面勾配θ、勾配起因シフトレンジSPg、登降坂制御許否フラグFadの値といった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS500)。なお、バッテリ50の充放電要求パワーPb*は、バッテリECU52から通信により入力される。ステップS500のデータ入力処理の後、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいてリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定した上で、エンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS510)。実施例では、アクセルオン状態でのアクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係が図9に例示する要求トルク設定用マップとして予め定められており、このマップからアクセル開度Accと車速Vとに対応した要求トルクTr*が導出・設定される。また、実施例において、要求パワーPe*は、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものと充放電要求パワーPb*とロスLossとの総和として計算される。次いで、要求パワーPe*に基づいてエンジン22の仮の目標運転ポイントである仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとを設定する(ステップS520)。実施例では、エンジン22を効率よく動作させるために予め定められた動作ラインと要求パワーPe*とに基づいてエンジン22の仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとが設定される。図10に、エンジン22の動作ラインと回転数NeとトルクTeとの相関曲線とを例示する。同図に示すように、仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとは、上記動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定となることを示す相関曲線との交点として求めることができる。
【0042】
エンジン22の仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとを設定したならば、ステップS500にて入力したシフトレンジSRがDレンジと仮想シフトレンジSR1〜SR6との何れであるかを調べ(ステップS530)、シフトレンジSRが仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかである場合には、ステップS100にて入力したシフトレンジSRを制御用シフトレジンSR*として設定する(ステップS570)。また、ステップS530にてシフトレンジSRがDレンジである判断された場合には、登降坂制御許否フラグFadが値1であるか否かを判定し(ステップS540)。登降坂制御許否フラグFadが値0であるときには、ステップS500にて入力したシフトレンジSRであるDレンジを制御用シフトレジンSR*として設定する(ステップS570)。更に、ステップS540にて登降坂制御許否フラグFadが値1であると判断された場合には、ステップS500にて入力した路面勾配θが予め定められた閾値(第2閾値)θref以上であるか否か(閾値θref以上の上り勾配であるか否か)を判定し(ステップS550)。路面勾配θが閾値θrefを下回っている場合には、ステップS500にて入力したシフトレンジSRであるDレンジを制御用シフトレジンSR*として設定する(ステップS570)。ステップS550にて路面勾配θが閾値θref以上であってハイブリッド自動車20が比較的急な登坂路を走行していると判断された場合には、ステップS500にて入力したモータMG2の回転数Nm2に基づいてモータECU40による回転数Nm2の算出に際してエイリアシングが発生しているか否かを判定する(ステップS560)。そして、ステップS560にてエイリアシングが発生していないと判断された場合には、ステップS100にて入力した勾配起因シフトレンジSRgを制御用シフトレンジSR*として設定し(ステップS580)、ステップS550にてエイリアシングが発生していると判断された場合には、本ルーチンの前回実行時に設定された制御用シフトレンジSR*を今回の制御用シフトレンジSR*として設定(保持)する(ステップS590)。
【0043】
ステップS570,S580またはS590の処理の後、制御用シフトレンジSR*がDレンジと仮想シフトレンジSR1〜SR6との何れかであるかを調べ(ステップS600)、制御用シフトレンジSR*がDレンジである場合には、仮目標回転数Netmpをエンジン22の目標回転数Ne*として設定すると共に仮目標トルクTetmpをエンジン22の目標トルクTe*として設定する(ステップS610)。また、ステップS600にて制御用シフトレンジSR*が仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかであると判断された場合には、図3のエンジン目標回転数設定用マップから制御用シフトレンジSR*とステップS500にて入力した車速Vとに対応した回転数を導出してエンジン22の下限回転数Neminとして設定する(ステップS620)。更に、仮目標回転数Netmpと下限回転数Neminとの大きい方をエンジン22の目標回転数Ne*として設定すると共に、ステップS520にて設定した要求パワーPe*を目標回転数Ne*で除することによりエンジン22の目標トルクTe*を設定する(ステップS630)。
【0044】
ステップS610またはS630の処理の後、上記式(3)に従いモータMG1の目標回転数Nm1*を計算した上で、計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づく次式(8)に従ってモータMG1に対するトルク指令Tm1*を設定する(ステップS640)。更に、仮モータトルクTm2tmpを上記式(5)に従い計算すると共に(ステップS650)、上記式(6)および(7)に従いトルク制限Tmin,Tmaxを計算する(ステップS660)。そして、仮モータトルクTm2tmpとトルク制限Tm2min,Tm2maxとからモータMG2に対するトルク指令Tm2*を設定し(ステップS670)、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS680)、再度ステップS100以降の処理を実行する。
【0045】
Tm1*=-ρ/(1+ρ)・Te*+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt …(8)
【0046】
これにより、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81の操作により仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかが選択されると、選択された仮想シフトレンジに基づいてエンジン22の下限回転数Neminが設定され(ステップS620)、アクセル操作状態がアクセルオン状態にあるときにエンジン22の回転数Neをある程度高く保ってエンジン22の出力応答性を良好に確保し、それにより加速性能を向上させることが可能となる。また、Dレンジが選択されると共にアクセルオン状態でハイブリッド自動車20が比較的急な登坂路を走行している最中に回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していないと判断された場合には、勾配起因シフトレンジSRgが制御用シフトレンジSR*として設定され(ステップS580)、制御用シフトレンジSR*(勾配起因シフトレンジSRg)に基づいてエンジン22の下限回転数Neminが設定される(ステップS620)。これにより、エンジン22の回転数Neを路面勾配θに応じた下限回転数Nemin以上に保ってエンジン22からの動力を取り出し易くし、それにより加速性能を向上させることが可能となる。更に、Dレンジが選択されると共にアクセルオン状態でハイブリッド自動車20が比較的急な登坂路を走行している最中に上記エイリアシングが発生していると判断された場合には、制御用シフトレンジSR*が前回値に保持されるので(ステップS590)、不正確な路面勾配θではなく、より実態に近い路面勾配に応じたエンジン22の下限回転数Neminが設定されるので(ステップS620)、それにより加速性能を良好に保つことが可能となる。
【0047】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、図5の登降坂制御ルーチンを経て算出された路面勾配θが閾値−θref以下であるか、あるいは閾値θref以上であると共に回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していないと判断されたときには、図5の登降坂制御ルーチンを経て設定された勾配起因シフトレンジSRgが制御用シフトレンジSR*として設定される(ステップS230またはS580)。これに対して、路面勾配θが閾値−θref以下であるか、あるいは閾値θref以上であると共に上記エイリアシングが発生していると判断されたときには、制御用シフトレンジSR*が前回値に保持される(ステップS240またはS590)。これにより、回転数Nm2の算出に関連したエイリアシングが発生していると判断されたときには、エイリアシングに起因して精度よく取得されていない可能性がある実加速度αから求められる路面勾配θではなく、エイリアシングが発生していると判断される直前に求められた路面勾配θに対応した勾配起因シフトレンジSRgに基づいてエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御されることになる。従って、ハイブリッド自動車20では、不正確な路面勾配θに基づく車両制御の実行を抑制することができるので、登降坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることが可能となる。
【0048】
すなわち、アクセルオフ状態でハイブリッド自動車20が比較的急な降坂路(θ≦−θref)を走行している最中に上記エイリアシングが発生していないと判断された場合には、制御用シフトレンジSR*(勾配起因シフトレンジSRg)と車速Vとに基づいて路面勾配θに対応した要求トルクTr*やエンジン22の目標回転数Ne*が設定されると共に、エンジン22からリングギヤ軸32aに路面勾配θに応じたより適正なフリクショントルク(エンジンブレーキによる制動トルク)が出力されることになる。また、アクセルオフ状態でハイブリッド自動車20が比較的急な降坂路(θ≦−θref)を走行している最中に上記エイリアシングが発生していると判断された場合には、制御シフトレンジSR*が前回値に保持されることから、不正確な路面勾配θに基づく要求トルクTr*およびエンジン22の目標回転数Ne*の設定やエンジン22からのフリクショントルクの出力が抑制され、より実態に近い路面勾配に対応したより適正なトルクをリングギヤ軸32aに出力することが可能となる。従って、このハイブリッド自動車20では、降坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることができる。
【0049】
更に、アクセルオン状態でハイブリッド自動車20が比較的急な登坂路(θ≧θref)を走行している最中に上記エイリアシングが発生していないと判断された場合には、勾配起因シフトレンジSRGが制御用シフトレンジSr*として設定されると共に、制御用シフトレンジSR*(勾配起因シフトレンジSRg)に基づいてエンジン22の下限回転数Neminが設定されるので、エンジン22の回転数Neを路面勾配θに応じた下限回転数Nemin以上に保つことでエンジン22からの動力を取り出し易くし、それにより加速性能を向上させることが可能となる。また、アクセルオン状態でハイブリッド自動車20が比較的急な登坂路(θ≧θref)を走行している最中に上記エイリアシングが発生していると判断された場合には、制御用シフトレンジSR*が前回値に保持され、不正確な路面勾配θではなく、より実態に近い路面勾配に応じたエンジン22の下限回転数Neminが設定されるので、それにより加速性能を良好に保つことが可能となる。従って、このハイブリッド自動車20では、登坂路におけるドライバビリティをより一層向上させることが可能となる。
【0050】
そして、実施例のハイブリッド自動車20には、通常走行用のDレンジおよび複数の仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかの選択を運転者に許容するシフトレバー81が設けられているので、シフトレバー81をSポジションやアップまたはダウンシフト指示ポジションにセットして仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかを選択することにより、アクセルオフ状態でのトルク特性を複数段階に設定したり、アクセルオン状態でのエンジンの出力応答性を良好に確保したりすることが可能となる。このように、シフトレバー81のシフトポジションとしてシーケンシャルシフトポジション(Sポジション)が用意されている車両では、Sポジション用の仮想シフトレンジSR1〜SR6をそのまま登降坂路のドライバビリティの改善に利用することができる。ただし、本発明によるハイブリッド自動車は、上述のような仮想シフトレンジが予め定められたものであれば、当該仮想シフトレンジの任意の選択を運転者に許容しない形式のものであってもよいことはいうまでもない。
【0051】
なお、実施例のハイブリッド自動車20では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aとモータMG2とが減速ギヤ35を介して連結されているが、減速ギヤ35の代わりに、例えばHi,Loの2段の変速段あるいは3段以上の変速段を有したモータMG2の回転数を変速してリングギヤ軸32aに伝達する変速機を採用してもよい。更に、実施例のハイブリッド自動車20は、モータMG2の動力を減速ギヤ35により減速してリングギヤ軸32aに出力するものであるが、本発明の適用対象は、これに限られるものではない。すなわち、本発明は、図11に示す変形例としてのハイブリッド自動車120のように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aに接続された車軸(車輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図11における車輪39c,39dに接続された車軸)に出力するものに適用されてもよい。
【0052】
ここで、上記実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明しておく。すなわち、上記実施例および変形例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「第1電動機」に相当し、動力分配統合機構30が「動力分配手段」に相当し、モータMG2が「第2電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、回転位置検出センサ44とハイブリッドECU70との組み合わせが「回転速度取得手段」に相当し、図5のステップS310の処理を実行するハイブリッドECU70が「実加速度取得手段」に相当し、図5のステップS320の処理を実行するハイブリッドECU70が「推定加速度取得手段」に相当し、図5のステップS330の処理を実行するハイブリッドECU70が「路面勾配算出手段」に相当し、図5のステップS340の処理を実行するハイブリッドECU70が「勾配起因シフトレンジ設定手段」に相当し、図4のステップS220および図8のステップS560の処理を実行するハイブリッドECU70が「判定手段」に相当し、図4のステップS230およびS240ならびに図8のステップS580およびS590の処理を実行するハイブリッドECU70が「制御用シフトレンジ設定手段」に相当し、図4のステップS130〜S190および図8のステップS600〜S680の処理を実行するハイブリッドECU70とエンジンECU24とモータECU40との組み合わせが「登降坂路走行制御手段」に相当する。また、図4のステップS130や図8のステップS510の処理を実行するハイブリッドECU70が「要求トルク設定手段」に相当し、シフトレバー81が「シフトレンジ選択手段」に相当する。
【0053】
ただし、「内燃機関」は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料の供給を受けて動力を出力するエンジン22に限られず、水素エンジンといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「第1電動機」や「第2電動機」は、モータMG1,MG2のような同期発電電動機に限られず、誘導電動機といったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「動力分配手段」は、内燃機関の機関軸と第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力するものであれば、動力分配統合機構30以外のダブルピニオン式遊星歯車機構やデファレンシャルギヤといった他の如何なる形式のものであっても構わない。「蓄電手段」は、バッテリ50のような二次電池に限られず、キャパシタといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「回転速度取得手段」は、モータMG2の回転数Nm2を取得する回転位置検出センサ(レゾルバ)44とハイブリッドECU70との組み合わせに限られるものではなく、リングギヤ軸32aの回転速度Nrを直接取得するもののような他の如何なる形式のものであっても構わない。「実加速度取得手段」、「推定加速度取得手段」、「路面勾配算出手段」および「勾配起因シフトレンジ設定手段」は、図5の登降坂制御ルーチンに類した処理を実行可能なものであれば、ハイブリッドECU70以外の独立の電子制御ユニットといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「判定手段」は、駆動軸または所定の軸の回転数と回転速度取得手段のサンプリング間隔とに基づくエイリアシングが発生しているか否かを判定可能なものであれば、如何なる形式のものであっても構わない。「制御用シフトレンジ設定手段」は、算出された路面勾配が所定範囲内にあると共にエイリアシングが発生していないと判断されたときに勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、算出された路面勾配が所定範囲内にあると共にエイリアシングが発生していると判断されたときに制御用シフトレンジを保持するものであれば、如何なる形式のものであっても構わない。「登降坂路走行制御手段」は、算出された路面勾配が所定範囲内にあるときに、制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように内燃機関と第1および第2電動機とを制御するものであれば、単一の電子制御ユニットといったようなハイブリッドECU70とエンジンECU24とモータECU40との組み合わせ以外の他の如何なる形式のものであっても構わない。「要求トルク設定手段」は、運転者によるアクセル操作量に基づいて要求トルクを設定可能なものであれば、車速Vを用いることなく要求トルクを設定するもののような他の如何なる形式のものであっても構わない。「シフトレンジ選択手段」は、ボタン操作によりシフトポジションの選択を可能とするもののようなシフトレバー81以外の如何なる形式のものであっても構わない。何れにしても、これら実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0054】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】アクセルオフ時要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図3】エンジン目標回転数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】実施例のハイブリッドECU70により実行されるアクセルオフ時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】実施例のハイブリッドECU70により実行される登降坂制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】勾配起因シフトレンジ設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22に対する燃料供給が停止されているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図8】実施例のハイブリッドECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図9】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図10】エンジン22の動作ラインと回転数NeとトルクTeとの相関曲線とを例示する説明図である。
【図11】変形例に係るハイブリッド自動車120の概略構成図である。
【符号の説明】
【0057】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a〜39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトレンジセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルストロークセンサ、87 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
動力を入出力可能な第1電動機と、
前記内燃機関の機関軸と前記第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、
前記第1および第2電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
前記駆動軸または該駆動軸に接続された所定の軸の回転速度を取得する回転速度取得手段と、
前記回転速度取得手段により取得された回転速度を用いて車両進行方向の実加速度を取得する実加速度取得手段と、
前記駆動軸に出力すべきトルクから車両進行方向の推定加速度を取得する推定加速度取得手段と、
前記実加速度取得手段により取得された実加速度と前記推定加速度取得手段により取得された推定加速度との差に基づいて路面勾配を算出する路面勾配算出手段と、
複数の仮想シフトレンジの中から前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配に対応した仮想シフトレンジを勾配起因シフトレンジとして設定する勾配起因シフトレンジ設定手段と、
前記駆動軸または前記所定の軸の回転数と前記回転速度取得手段のサンプリング間隔とに基づくエイリアシングが発生しているか否かを判定する判定手段と、
前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が所定範囲内にあると共に前記判定手段により前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が前記所定範囲内にあると共に前記判定手段により前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持する制御用シフトレンジ設定手段と、
前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が前記所定範囲内にあるときに、前記制御用シフトレンジ設定手段により設定された制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御する登降坂路走行制御手段と、
を備えるハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
運転者によるアクセル操作量に基づいて前記駆動軸に出力すべきトルクである要求トルクを設定する要求トルク設定手段を更に備え、
前記制御用シフトレンジ設定手段は、前記路面勾配が第1閾値以下の下り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、前記路面勾配が前記第1閾値以下の下り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持するものであり、
前記要求トルク設定手段は、前記アクセル操作状態がアクセルオフ状態にあると共に前記路面勾配が前記第1閾値以下の下り勾配であるときに、前記複数の仮想シフトレンジおよび車速と前記要求トルクとの関係を規定する要求トルク設定制約を用いて前記制御用シフトレンジと車速とに対応した要求トルクを設定するものであり、
前記登降坂路走行制御手段は、前記アクセル操作状態がアクセルオフ状態にあると共に前記路面勾配が前記第1閾値以下の下り勾配であるときに、前記複数の仮想シフトレンジおよび車速と前記内燃機関の目標回転数との関係を規定する目標回転数設定制約を用いて前記制御用シフトレンジと車速とに対応した目標回転数を設定し、燃料カット状態にある前記内燃機関の機関軸が前記目標回転数で回転すると共に前記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記要求トルク設定制約は、前記複数の仮想シフトレンジごとに車速と前記要求トルクとの関係を規定するものであり、当該車速と前記要求トルクとの関係は、車速が高いほど前記要求トルクが制動トルクとして大きくなる傾向を有し、
前記目標回転数設定制約は、前記複数の仮想シフトレンジごとに車速と前記目標回転数との関係を規定するものであり、当該車速と前記目標回転数との関係は、車速が高いほど前記目標回転数が高くなる傾向を有するハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
運転者によるアクセル操作量に基づいて前記駆動軸に出力すべきトルクである要求トルクを設定する要求トルク設定手段を更に備え、
前記制御用シフトレンジ設定手段は、前記路面勾配が第2閾値以上の上り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、前記路面勾配が前記第2閾値以上の上り勾配であると共に前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持するものであり、
前記登降坂路走行制御手段は、前記アクセル操作状態がアクセルオン状態にあると共に前記路面勾配が前記第2閾値以上の上り勾配であるときに、前記複数の仮想シフトレンジおよび車速と前記内燃機関の下限回転数との関係を規定する下限回転数設定制約を用いて前記制御用シフトレンジと車速とに対応した下限回転数を設定し、前記内燃機関の回転数が前記下限回転数以上に保たれると共に前記要求トルク設定手段により設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両において、
前記下限回転数設定制約は、前記複数の仮想シフトレンジごとに車速と前記下限回転数との関係を規定するものであり、当該車速と前記下限回転数との関係は、車速が高いほど前記下限回転数が高くなる傾向を有するハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
通常走行用のドライブレンジおよび複数の仮想シフトレンジの何れかの選択を運転者に許容するシフトレンジ選択手段を更に備え、
前記複数の仮想シフトレンジのそれぞれには、アクセルオフ状態における車速と前記駆動軸に出力すべきトルクである要求トルクとの関係と、アクセルオフ状態における車速と前記内燃機関の目標回転数との関係と、アクセルオン状態における車速と前記内燃機関の下限回転数との関係とが対応付けられており、
前記登降坂路走行制御手段は、前記ドライブレンジが選択されると共に前記路面勾配算出手段により算出された路面勾配が前記所定範囲内にあるときに、前記制御用シフトレンジと前記所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
前記動力分配手段は、前記内燃機関の機関軸に接続される第1要素と、前記第1電動機の回転軸に接続される第2要素と、前記駆動軸に接続される第3要素とを有すると共にこれら3つの要素が互いに差動回転できるように構成された遊星歯車機構であるハイブリッド車両。
【請求項8】
内燃機関と、動力を入出力可能な第1電動機と、前記内燃機関の機関軸と前記第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、前記第1および第2電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、前記駆動軸または該駆動軸に接続された所定の軸の回転速度を取得する回転速度取得手段とを備えたハイブリッド車両の制御方法であって、
(a)前記回転速度取得手段により取得された回転速度を用いて導出される車両進行方向の実加速度と、前記駆動軸に出力すべきトルクから推定される車両進行方向の推定加速度との差に基づいて路面勾配を算出するステップと、
(b)複数の仮想シフトレンジの中からステップ(a)にて算出された路面勾配に対応した仮想シフトレンジを勾配起因シフトレンジとして設定するステップと、
(c)前記駆動軸または前記所定の軸の回転数と前記回転速度取得手段のサンプリング間隔とに基づくエイリアシングが発生しているか否かを判定するステップと、
(d)ステップ(a)にて算出された路面勾配が所定範囲内にあると共にステップ(c)にて前記エイリアシングが発生していないと判断されたときには、前記勾配起因シフトレンジを制御用シフトレンジとして設定し、ステップ(a)にて算出された路面勾配が前記所定範囲内にあると共にステップ(c)にて前記エイリアシングが発生していると判断されたときには、前記制御用シフトレンジを保持するステップと、
(e)ステップ(a)にて算出された路面勾配が前記所定範囲内にあるときに、ステップ(d)にて設定された制御用シフトレンジと所定の制約とを用いて運転者によるアクセル操作状態に応じた走行が実現されるように前記内燃機関と前記第1および第2電動機とを制御するステップと、
を含むハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−100256(P2010−100256A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275845(P2008−275845)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】