説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】加速運転と判定されたときに、バッテリ電力アシストを行わせる制御装置において、大きな駆動力アシストを付与できない場合にも加速性能を向上させる。
【解決手段】エンジン走行中に加速運転と判定されたときに、バッテリ電力アシストを行わせるハイブリッド車両1の制御装置である。PCM3は、エンジン5の駆動力による走行中に加速運転と判定され、且つ、検出されたバッテリ11のSOCが45%未満のときに、バッテリ電力アシストを制限するとともに、燃料噴射弁により気筒25の吸気行程から圧縮行程に亘って噴射される水素燃料の圧縮行程噴射割合を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの駆動力による走行中に加速運転と判定されたときに、バッテリの電力により、車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせるハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンを専らモータの電力供給源として用いるシリーズ式ハイブリッド車両でも、エンジンの出力軸とモータの出力軸とがともに駆動輪に機械的に接続されたパラレル式ハイブリッド車両でも、エンジン出力が不足であるときには、バッテリの電力により車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行うことが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、走行駆動源としてのエンジンと、エンジン出力による発電またはバッテリ電力によるエンジン出力のアシストを行うモータジェネレータと、バッテリ充電量SOCを検出する充電量検出手段とを備えたハイブリッド車両の制御装置において、検出された上記SOCが、所定の下限値よりも少ない場合には、変速アシスト運転領域をエンジンの高回転・高負荷側の運転領域に限定する一方、所定の下限値よりも多い場合には、変速アシスト運転領域を限定せず、当該SOCに応じて全運転領域に設定するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−341644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のものでは、残存するバッテリ電力を有効に活用するために、バッテリ充電量SOCが少ないほど、変速アシスト領域を、変速時のトルク中断による減速感が大きくなる高回転高負荷領域に限定するが、上記特許文献1には、大きな駆動力アシストを付与できない場合については示されていない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンの駆動力による走行中に加速運転と判定されたときに、バッテリの電力により、車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせるハイブリッド車両の制御装置において、バッテリ電力による大きな駆動力アシストを付与できない場合にも、加速性能を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、バッテリの電力により、車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせる第1加速制御手段とは別に、高いエンジン出力が得られるように圧縮行程噴射割合を変化させる第2加速制御手段を備えている。
【0008】
第1の発明は、エンジンと、少なくともバッテリの電力により駆動される走行用モータと、当該エンジンの加速運転を判定する加速判定手段と、当該エンジンの駆動力による走行中に当該加速判定手段により加速運転と判定されたときに、上記バッテリの電力により、車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせる第1加速制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、上記バッテリのSOCを検出するSOC検出手段と、燃料噴射弁により気体燃料を、気筒の吸気行程から圧縮行程に亘って噴射させる噴射時期制御手段と、上記エンジンの駆動力による走行中に上記加速判定手段により加速運転と判定され、且つ、上記SOC検出手段により検出されたSOCが所定の基準値未満のときに、上記バッテリの電力による駆動力アシストを制限するとともに圧縮行程噴射割合を増大させる第2加速制御手段と、をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明によれば、エンジンの駆動力による走行中に加速判定手段により加速運転と判定され、且つ、SOC検出手段により検出されたSOCが所定の基準値以上のときは、第1加速制御手段が、バッテリの電力により車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせる。これにより、要求されるエンジン出力がバッテリ電力で補われるので、出力確保にとらわれない燃費優先のエンジン制御が可能となる。
【0010】
一方、エンジンの駆動力による走行中に加速運転と判定され、且つ、SOCが所定の基準値未満のときは、第2加速制御手段が、バッテリ電力による駆動力アシストを制限するとともに圧縮行程噴射割合を増大させる。これにより、吸気行程における吸気量が増大し、この増えた吸気量の分多く気体燃料が噴射されることから、高いエンジン出力が得られる、出力優先のエンジン制御が可能となる。
【0011】
以上により、SOCが所定の基準値以上のときは、燃費を向上させつつ、SOCが所定の基準値未満のときは、加速性能を向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記車両の要求加速度合いを検出する加減速状態検出手段をさらに備え、上記車両は、上記エンジンの駆動力により発電する発電機を有し、当該発電機の電力により上記走行用モータを駆動可能なシリーズ式ハイブリット車両であり、上記第2加速制御手段は、加速前の上記エンジンの運転状態、及び、上記加減速状態検出手段により検出された車両の要求加速度合いが、上記第1加速制御手段による制御時と同一の場合、エンジン回転数の上昇の仕方を、当該第1加速制御手段による制御時におけるエンジン回転数の上昇の仕方と一致させるように圧縮行程噴射割合を制御することを特徴とするものである。
【0013】
ところで、第1加速制御手段による制御の場面と、第2加速制御手段による制御の場面を想定した場合、これら2つの場面で、加速前のエンジンの運転状態、及び、加減速状態検出手段により検出された車両の要求加速度合いが共に同一のときに、エンジン回転数の上昇の仕方が異なると乗員が違和感を覚えるおそれがある。
【0014】
ここで、第2の発明によれば、第2加速制御手段は、加速前のエンジンの運転状態及び要求加速度合いが、第1加速制御手段による制御時と同一の場合、エンジン回転数の上昇の仕方を、当該第1加速制御手段による制御時におけるエンジン回転数の上昇の仕方と一致させるように圧縮行程噴射割合を制御する。具体的には、第1加速制御手段による制御時と同じエンジン回転数の上昇の仕方を維持したまま、圧縮行程噴射割合を増大させて高いエンジン出力だけを得るようにする。これにより、加速時におけるエンジン回転数の上昇の仕方が、SOCの値によって異なるのを抑制して、乗員が違和感を覚えるのを抑えることができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記エンジンは、使用燃料として液体燃料と気体燃料とを選択的に用いることが可能で、且つ、気体燃料を用いる場合よりも液体燃料を用いる場合の方が高い出力が得られるデュアルフューエルエンジンであり、気体燃料を用いたエンジンの運転中に上記加速運転が判定され、上記SOCが所定の基準値未満であって、且つ、上記車両の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、使用燃料を液体燃料に切り換えるように制御する燃料切換制御手段と、を有していることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明によれば、気体燃料を用いた場合における第2加速制御手段の制御限界時、すなわち、エンジンの運転中に加速運転が判定され、SOCが所定の基準値未満であって、且つ、気体燃料では車両の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、燃料切換制御手段が、使用燃料を気体燃料を用いる場合よりも高い出力が得られる液体燃料に切り換えるように制御するので、加速性能の悪化を抑制できる。
【0017】
第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記エンジンは、使用燃料として液体燃料と気体燃料とを選択的に用いることが可能で、且つ、気体燃料を用いる場合と液体燃料を用いる場合とで略同じ出力が得られるデュアルフューエルエンジンであり、液体燃料を用いたエンジンの運転中に上記加速運転が判定され、且つ、上記SOCが所定の基準値未満の場合、使用燃料を気体燃料に切り換えるように制御する燃料切換制御手段と、を有していることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明によれば、気体燃料を用いる場合と液体燃料を用いる場合とで略同じ出力が得られる場合に、第2加速制御手段が圧縮行程噴射割合を増大させるので、吸気行程における吸気量が増大して高いエンジン出力が得られる。これにより、加速性能の悪化を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、エンジンの運転中に加速運転と判定され、且つ、SOCが所定の基準値以上のときは、第1加速制御手段が、バッテリ電力により駆動力アシストを行わせる一方、エンジンの運転中に加速運転と判定され、且つ、SOCが所定の基準値未満のときは、第2加速制御手段が、駆動力アシストを制限するとともに圧縮行程噴射割合を増大させるので、SOCが所定の基準値以上のときは燃費を向上させつつ、SOCが所定の基準値未満のときは加速性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係る水素エンジンの制御装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】エンジンの運転領域を設定したエンジン制御マップの一例を示す図である。
【図3】エンジンの制御装置の概略構成図である。
【図4】第1加速制御のタイムチャートであり、同図(a)はバッテリSOCの時間変化を、同図(b)はバッテリ電力アシスト量の時間変化を、同図(c)はエンジン回転数の時間変化を、同図(d)は要求駆動力の時間変化をそれぞれ示す図である。
【図5】第1及び第2加速制御のタイムチャートであり、同図(a)はバッテリSOCの時間変化を、同図(b)は燃料噴射割合の時間変化を、同図(c)はエンジン回転数の時間変化を、同図(d)は要求駆動力の時間変化をそれぞれ示す図である。
【図6】実施形態1に係るPCMの制御フローチャートである。
【図7】実施形態2に係るPCMの制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る水素エンジンの制御装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成図である。この車両1は、エンジン5並びに第1及び第2モータ7,9を動力源として備え、このエンジン5は発電にのみ使用して、車両1が動くための動力は全てモータ7,9に頼る所謂シリーズハイブリッド車両である。車両1は、エンジン5並びに第1及び第2モータ7,9の他に、パワートレインコントロールモジュール(PCM)3と、電流及び電圧センサ61が設けられ、第1モータ(発電機)7及び第2モータ9(走行用モータ)による発電電力を充放電可能なバッテリ11と、当該バッテリ11と第1モータ7とに接続されている第1インバータ17と、当該第1インバータ17とバッテリ11と第2モータ9とに接続されている第2インバータ19とを備えている。
【0023】
このエンジン5は、ロータリーエンジンであるとともに、使用燃料をガソリンと、ガソリンに比べて触媒未活性時における排気エミッションが少ない水素との間で選択的に切り替えて駆動可能なデュアルフューエルエンジンとされている。そうして、燃料切換スイッチ63(図3参照)の操作によって水素が選択されると、水素タンク13内の水素が水素噴射用のインジェクタ33(図3参照)に供給される一方、ガソリンが選択されると、ガソリンタンク15内のガソリンがガソリン噴射用のインジェクタ35に供給される。なお、排気エミッションとは、触媒通過後の排ガス中に含まれる有害成分(HC、CO、NOx等)のことをいう。また、当該エンジン5は、燃料として水素を用いる場合よりも、ガソリンを用いる場合の方が高い出力が得られるものである。
【0024】
エンジン5の出力軸は第1モータ7の出力軸と連結されており、第1モータ7は、エンジン5により回転駆動されて発電する。第1モータ7にて発電された交流発電電力は、第1インバータ17で直流電力に変換されてバッテリ11に充電されたり、第2インバータ19に供給されたりする。
【0025】
一方、第2インバータ19は、バッテリ11の放電により供給された直流電力や第1インバータ17から供給された直流電力を交流電力に変換して、第2モータ9へ供給するとともに、第2モータ9からの回生電力をバッテリ11に充電する。
【0026】
第2モータ9は、前後左右の4つの車輪21a,21a,21b,21bのうち左右の前輪(駆動輪)21a,21aにディファレンシャルギア23を介して連結されていて、図2に示す制御マップに従ってPCM3により制御される。すなわち、第2モータ9は、車両1の定速運転時等のように当該第2モータ9に要求される出力トルクが低い低トルク運転時や車両始動時にはバッテリ11から供給される電力により駆動され(図2の領域A)、中トルク運転時にはエンジン5により駆動される第1モータ7から供給される電力によって駆動され(図2の領域B)、急加速時等の出力トルクが高い高トルク運転時には当該第1モータ7及びバッテリ11の双方から供給される電力により駆動される(図2の領域C)。
【0027】
上記エンジン5は、図3に示すように、トロコイド内周面を有する繭状のロータハウジングとサイドハウジングとに囲まれたロータ収容室(気筒)25,25に概略三角形状のロータ27,27が収容されて構成されており、その外周側には3つの作動室が区画されている。このエンジン5は、図示は省略するが、2つのロータハウジングを3つのサイドハウジングの間に挟み込むようにして一体化し、その間に形成される2つの気筒25,25にそれぞれロータ27,27を収容した2ロータタイプのものであり、図3では、その2つの気筒25,25を展開した状態で図示している。
【0028】
ロータ27は、外周の3つの頂部にそれぞれ配設されたシール部が各々ロータハウジングのトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト29の周りを自転しながら、当該エキセントリックシャフト29の軸心の周りに公転する。そして、ロータ27が1回転する間に、当該ロータ27の各頂部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ27を介してエキセントリックシャフト29から出力される。
【0029】
エンジン5の各気筒25,25には、2つの点火プラグ31,31が設けられており、この2つの点火プラグ31,31はそれぞれ、ロータハウジングの短軸近傍に配設されている一方、各気筒25,25には、水素タンク13から供給された水素を筒内に直接噴射する、2つの水素噴射用のインジェクタ(直噴インジェクタ)33が設けられており(図3では各気筒に1つのみ示す)、2つの水素噴射用インジェクタ33はそれぞれ、ロータハウジングの長軸近傍に、エキセントリックシャフト29の軸方向に並んで配置されている。
【0030】
また、各気筒25,25には、吸気行程にある作動室に連通するように吸気通路37が連通しているとともに、排気行程にある作動室に連通するように排気通路39が連通している。これら吸気通路37と排気通路39とは、EGR通路41で接続されており、当該EGR通路41に設けられたEGR弁43の開度を制御するEGR弁アクチュエータ45の操作により、排気通路39の排気ガスの一部が吸気通路37に還流されるようになっている。
【0031】
吸気通路37の上流側には、吸気量を検出するエアフローセンサ65とステッピングモータ等のアクチュエータ49により駆動されて吸気通路37の断面積を調節するスロットル弁47とが配設されているとともに、吸気通路37の下流側には、ガソリンタンク15から供給されるガソリンを吸気通路37内に噴射するためのガソリン噴射用のインジェクタ35が配設されている。また、排気通路39には、排気を浄化するための排気浄化触媒としての三元触媒51が配設されている。
【0032】
この三元触媒51の上流側には排気ガス中の酸素濃度を検出するリニア空燃比センサ53が配設されている。このリニア空燃比センサ53にはヒータ53bが備えられており、このヒータ53bにより素子53aを加熱して所定温度に維持するように構成されている。
【0033】
これら点火プラグ31,31、EGR弁アクチュエータ45、スロットル弁47のアクチュエータ49、水素及びガソリン噴射用の各インジェクタ33,35、第1及び第2モータ7,9、第1及び第2インバータ17,19、リニア空燃比センサ53等は、制御手段としてのPCM3によって作動制御される。
【0034】
このPCM3には、本実施形態に係る制御に必要な信号として、少なくとも、車両1の速度を検出する車速センサ55、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ57、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ59、上記電流センサ61a及び電圧センサ61b、上記燃料切換スイッチ63、上記エアフローセンサ65、並びに、上記リニア空燃比センサ53の各出力信号が入力される。
【0035】
本実施形態における水素エンジンの制御装置においては、PCM3の制御により、水素使用時は水素噴射用インジェクタ33から水素が、ガソリン使用時はガソリン噴射用インジェクタ35からガソリンが、エンジン5に対し供給されて当該エンジン5が駆動される。そうして、PCM3は、水素を気筒25の吸気行程から圧縮行程に亘って噴射させるように水素噴射用インジェクタ33を制御する。このことで、PCM3は、水素噴射用インジェクタ33により水素(気体燃料)を、気筒の吸気行程から圧縮行程に亘って噴射させる噴射時期制御手段を構成することになる。
【0036】
さらに、水素使用時及びガソリン使用時のそれぞれにおいて、PCM3により空燃比制御が実行される。つまり、リニア空燃比センサ53からの出力信号に基づいて、三元触媒51の上流側の空燃比が目標空燃比となるように、スロットル開度及びエンジン回転数を制御するフィードバック制御が実行される。
【0037】
また、PCM3は、アクセル開度センサ57からの出力信号に基づいて、エンジン5の運転状態が定常運転状態から加速運転状態へ移行したことを判定するとともに、車速センサ55、アクセル開度センサ57及びエンジン回転数センサ59からの出力信号に基づいて、車両1の要求加速度合いを検出する。このことで、PCM3は、アクセル開度センサ57と共に、エンジン5の加速運転を判定する加速判定手段を構成し、また、車速センサ55、アクセル開度センサ57及びエンジン回転数センサ59と共に、車両1の要求加速度合いを検出する加減速状態検出手段をも構成することになる。
【0038】
さらに、PCM3は、エンジン5の駆動力(エンジン5により回転駆動される第1モータ7の発電電力)による走行中に加速運転と判定したときに、バッテリ11の電力により、車両1に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせる第1加速制御と、エンジン5の駆動力による走行中に加速運転と判定し、且つ、バッテリ11のSOCが所定の基準値未満のときに、バッテリ11の電力による駆動力アシストを制限するとともに圧縮行程噴射割合を増大させる第2加速制御とを行う。このことで、PCM3は、本発明の第1加速制御手段と、第2加速制御手段とを構成することになる。
【0039】
なお、SOCとはバッテリ11の充電状態を表す量であり、満充電状態をSOCが100%と表す一方、充電量がゼロの状態をSOCが0%とを表す。また、バッテリ11の開放電圧(無負荷時の電圧)とバッテリ11のSOCとは一対一の対応関係にあることから、バッテリ11の電圧及び電流を計測することによりSOCを求めることができる。そして、PCM3は、検出されたバッテリ11の電流及び電圧値に基づいて、バッテリ11のSOCを算出する。このことで、PCM3は、電流センサ61a及び電圧センサ61bと共に、バッテリのSOCを検出するSOC検出手段を構成することになる。
【0040】
以下、PCM3による第1及び第2加速制御について、図4及び図5に示すタイムチャートを用いて説明する。なお、図4及び図5共に、実線はSOCが所定の基準値(例えば45%)以上の場合を示し、破線又は二点鎖線はSOCが所定の基準値未満の場合を示す。
【0041】
PCM3は、エンジン5の駆動力による走行中に加速運転と判定したときに、第1加速制御を行って、エンジン回転数を要求加速度合いに応じた目標エンジン回転数にするが、図4(a)に示すように、SOCが45%以上の場合も、SOCが45%未満の場合も、第1加速制御のみを行うと以下のような問題がある。すなわち、SOCが45%未満の場合には、図4(b)に示すように、SOCが45%以上の場合に比べて、バッテリ11の電力により、車両1に駆動力を付与する駆動力アシスト量(バッテリ電力アシスト量)が低下する。
【0042】
このようなバッテリ電力アシスト量の低下を補うためには、図4(c)の仮想線(二点鎖線)で示すように、SOCが45%未満の場合のエンジン回転数の上昇速度をSOCが45%以上の場合のエンジン回転数の上昇速度に比べて早く、換言すると、SOCが45%未満の場合の目標エンジン回転数への到達までの時間をSOCが45%以上の場合の目標エンジン回転数への到達までの時間よりも短くする。そうして、増加したエンジン回転数の分だけ第1モータ7による発電電力が増加するので、この増加した発電電力により第2モータ9を駆動させて、バッテリ電力アシスト量の低下を補うことになる。
【0043】
しかしながら、このようなエンジン回転数の上昇によって、バッテリ電力アシスト量の低下を補おうとすると、ある走行状態からアクセルを踏み込んで加速するときに、SOCが大きいときと小さいときとで、エンジン回転数の上昇の仕方が変わってしまうため、乗員が違和感を感じるおそれがある。
【0044】
そして、乗員が違和感を感じないようにするために、エンジン回転数を上昇させずに、第1加速制御のみを行うと、図4(d)に示すように、SOCが45%未満の場合の要求駆動力をSOCが45%以上の場合の要求駆動力に比べて低下させざるを得なくなる(図4(d)の白抜き矢印参照)。
【0045】
そこで、本実施形態における水素エンジンの制御装置においては、エンジン5の駆動力による走行中に加速運転と判定し、且つ、バッテリ11のSOCが所定の45%未満のときに、上記第2加速制御を行うようにしている。そうして、PCM3は、この第2加速制御を行うときは、加速前のエンジン5の運転状態、及び、車両1の要求加速度合いが、第1加速制御による制御時と同一の場合、エンジン回転数の上昇の仕方を、当該第1加速制御によるエンジン回転数の上昇の仕方と一致させるように圧縮行程噴射割合を制御するように構成されている。
【0046】
具体的には、PCM3は、図5(a)に示すように、SOCが45%以上の場合は第1加速制御を、SOCが45%未満の場合は第2加速制御を行う。そうして、図5(b)に示すように、SOCが45%以上の場合には、燃費を優先して、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50に設定する。一方、SOCが45%未満の場合には、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を圧縮行程噴射:吸気行程噴射=90:10に設定する。これにより、吸気行程における吸気量が増大し、この増えた吸気量の分だけ水素燃料が上乗せして噴射され、高いエンジン出力が得られ、図5(d)に示すように、SOCが45%未満の場合にも、SOCが45%以上の場合の要求駆動力を満足させることが可能となる。
【0047】
さらに、PCM3は、噴射割合を圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50から圧縮行程噴射:吸気行程噴射=90:10に急激に変更するのではなく、図5(b)に示すように、なだらかに変更させる。これにより、図5(c)の仮想線(二点鎖線)で示す、バッテリ電力アシスト量の低下を補うために急激に上昇させる必要があるエンジン回転数の上昇速度を低下させて(図5(c)の白抜き矢印参照)、SOCが45%以上の場合のエンジン回転数の上昇の仕方とSOCが45%未満の場合のエンジン回転数の上昇の仕方とを一致させることができる。
【0048】
また、PCM3は、水素を用いたエンジン5の運転中に加速運転が判定され、SOCが所定の45%未満であって、且つ、車両1の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、使用燃料をガソリンに切り換えるように制御を行う。換言すると、PCM3は、使用燃料を、水素を用いる場合よりも高い出力が得られるガソリンに切り換えることで、加速性能の悪化を抑制するように構成されている。このことで、PCM3は、水素(気体燃料)を用いたエンジン5の運転中に加速運転が判定され、SOCが45%未満であって、且つ、車両1の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、使用燃料をガソリン(液体燃料)に切り換えるように制御する燃料切換制御手段をも構成することになる。
【0049】
−制御装置の処理動作−
ここで、制御装置の処理動作について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
先ず、最初のステップSA1では、燃料切換スイッチ63の操作によって選択された燃料と、車速センサ55により検出された車速と、アクセル開度センサ57により検出されたアクセル開度と、エンジン回転数センサ59により検出されたエンジン回転数Nと、電流センサ61aにより検出されたバッテリ11の電流及び電圧センサ61bにより検出されたバッテリ11の電圧値と、をPCM3が読み込み、しかる後にステップSA2に進む。
【0051】
次のステップSA2では、PCM3が、内燃機関への要求出力(車速、アクセル開度及びエンジン回転数N)に基づいて第1モータ7に要求される要求電力を算出し、しかる後にステップSA3に進む。次のステップSA3では、PCM3が、ステップSA1で読み込まれたバッテリ11の電流及び電圧値に基づいて、バッテリ11のSOCを算出し、しかる後にステップSA4に進む。
【0052】
次のステップSA4では、運転状態がエンジン運転領域か否かを判定する。より詳しくは、運転状態が、中トルク運転時などエンジン5により駆動される第1モータ7から供給される電力によって駆動される領域(図2の領域B)、又は、高トルク運転時などエンジン5により駆動される第1モータ7及びバッテリ11の双方から供給される電力により駆動される領域(図2の領域C)に属するか否かを判定する。このステップSA4の判定がNOであるとき、すなわち、運転状態が、低トルク運転時や車両始動時などバッテリ11から供給される電力により駆動される領域(図2の領域A)と判定されたときは、ステップSA5に進む。
【0053】
次のステップSA5では、バッテリ11から供給される電力により第2モータ9を駆動させて走行するモータ走行制御を行い、しかる後にリターンする。一方、ステップSA4の判定がYESであるときは、ステップSA6に進む。
【0054】
次のステップSA6では、燃料切換スイッチ63の操作によって水素が選択されたか否かを判定する。このステップSA6の判定がNOであるときは、ステップSA7に進み、燃料としてガソリンを選択し、そのままリターンする。一方、ステップSA6の判定がYESであるときは、ステップSA8に進む。
【0055】
次のステップSA8では、燃料として水素を選択し、ステップSA9に進み、ステップSA1で読み込んだ車速及びアクセル開度に基づいてスロットル開度及びエンジン回転数Nを決定し、しかる後にステップSA10に進む。
【0056】
次のステップSA10では、加速運転か否かを判定する。より詳しくは、運転状態が、エンジン5により駆動される第1モータ7及びバッテリ11の双方から供給される電力により駆動される領域(図2の領域C)に属するか否かを判定する。このステップSA3の判定がNOであるとき、すなわち、運転状態が、エンジン5により駆動される第1モータ7から供給される電力によって駆動される領域(図2の領域B)に属すると判定されたときは、ステップSA11に進む。
【0057】
次のステップSA11では、バッテリ11の電力による駆動力アシスト量(バッテリ電力アシスト量)を0とし、しかる後にステップSA12に進む。次のステップSA12では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50に設定し、しかる後にリターンする。
【0058】
一方、ステップSA10の判定がYESであるとき、すなわち、運転状態が図2の領域Cに属すると判定されたときは、ステップSA13に進む。そうして、次のステップSA13では、ステップSA3で算出されたバッテリ11のSOCが45%以上か否かを判定する。このステップSA10の判定がYESであるときは、ステップSA14に進む。
【0059】
次のステップSA14では、バッテリ電力アシスト量を大きく設定し、しかる後にステップSA12に進む。次のステップSA12では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50に設定し、しかる後にリターンする。
【0060】
これに対し、ステップSA13の判定がNOであるとき、すなわち、ステップSA3で算出されたバッテリ11のSOCが45%未満のときは、ステップSA15に進み、バッテリ電力アシスト量が小さくても、水素燃料の圧縮行程噴射割合を増大させることで、ステップSA2で算出された要求電力を満足させることができるか否かを判定する。このステップSA13の判定がYESであるときは、ステップSA16に進み、バッテリ電力アシスト量を制限(小さく設定)し、しかる後にステップSA17に進む。次のステップSA17では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=90:10に設定し、しかる後にリターンする。
【0061】
一方、ステップSA15の判定がNOであるとき、すなわち、バッテリ電力アシスト量が小さいときに、水素燃料の圧縮行程噴射割合を増大させることでは、要求電力を満足させることができないと判定されたときは、ステップSA18に進み、ガソリンを燃料とするガソリン運転制御に設定し、しかる後にリターンする。
【0062】
−効果−
本実施形態によれば、エンジン5の駆動力による走行中に加速運転と判定され、且つ、検出されたSOCが45%以上のときは、PCM3が、バッテリ11の電力により車両1に駆動力を付与する第1制御を行う。これにより、要求されるエンジン出力がバッテリ電力で補われるので、出力確保にとらわれない燃費優先のエンジン制御が可能となる。
【0063】
一方、エンジン5の駆動力による走行中に加速運転と判定され、且つ、SOCが45%未満のときは、PCM3が、バッテリ電力アシストを制限するとともに圧縮行程噴射割合を増大させる第2加速制御を行う。これにより、吸気行程における吸気量が増大し、この増えた吸気量の分多く気体燃料が噴射されることから、高いエンジン出力が得られる、出力優先のエンジン制御が可能となる。
【0064】
以上により、SOCが45%以上のときは、燃費を向上させつつ、SOCが45%未満のときは、加速性能を向上させることができる。
【0065】
また、PCM3は、加速前のエンジン5の運転状態及び要求加速度合いが、第1制御時と同一の場合、エンジン回転数の上昇の仕方を、当該第1制御時におけるエンジン回転数の上昇の仕方と一致させるように第2加速制御を行う。具体的には、PCM3は、第1制御時と同じエンジン回転数の上昇の仕方を維持したまま、圧縮行程噴射割合を増大させて高いエンジン出力だけを得るように第2加速制御を行う。これにより、加速時におけるエンジン回転数の上昇の仕方が、SOCの値によって異なるのを抑制して、乗員が違和感を覚えるのを抑えることができる。
【0066】
さらに、PCM3は、気体燃料を用いた場合における第2加速制御の制御限界時、すなわち、エンジン5の運転中に加速運転が判定され、SOCが45%未満であって、且つ、水素燃料では車両1の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、使用燃料を水素よりも高い出力が得られるガソリンに切り換えるように制御するので、加速性能の悪化を抑制できる。このことで、PCM3は、水素(気体燃料)を用いたエンジン5の運転中に加速運転が判定され、SOCが45%未満であって、且つ、車両1の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、使用燃料をガソリン(液体燃料)に切り換えるように制御する燃料切換制御手段をも構成することになる。
【0067】
(実施形態2)
本実施形態は、使用する燃料及び液体燃料を用いたエンジン5の運転中に加速運転が判定され、且つ、SOCが所定の基準値未満の場合の制御手順が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0068】
エンジン5は、使用燃料として液体燃料と気体燃料とを選択的に用いることが可能であり、気体燃料を用いる場合と液体燃料を用いる場合とで略同じ出力が得られるデュアルフューエルエンジンである。ここで、液体燃料としては例えばエタノール燃料、気体燃料としては例えば水素燃料が挙げられる。
【0069】
PCM3は、液体燃料を用いたエンジン5の運転中に加速運転が判定され、且つ、SOCが45%未満の場合、使用燃料を気体燃料に切り換える。このことで、PCM3は、液体燃料を用いたエンジン5の運転中に加速運転が判定され、且つ、SOCが45%未満の場合、使用燃料を気体燃料に切り換えるように制御する燃料切換制御手段をも構成することになる。
【0070】
−制御装置の処理動作−
ここで、制御装置の処理動作について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0071】
ステップSB1〜SB5の各ステップにおいては、上記実施形態1のステップSA1〜SA5の各ステップと同じ制御を実行する。そして、ステップSB4の判定がYESであるときは、ステップSB6に進み、ステップSB1で読み込んだ車速及びアクセル開度に基づいてスロットル開度及びエンジン回転数Nを決定し、しかる後にステップSB7に進む。
【0072】
次のステップSB7では、燃料切換スイッチ63の操作によって気体燃料が選択されたか否かを判定する。このステップSB7の判定がYESであるときは、ステップSB8に進む。次のステップSB8では、燃料として気体燃料を用いる気体燃料運転に設定し、しかる後にステップSB9に進む。
【0073】
次のステップSB9では、加速運転か否かを判定する。より詳しくは、運転状態が、エンジン5により駆動される第1モータ7及びバッテリ11の双方から供給される電力により駆動される領域(図2の領域C)に属するか否かを判定する。このステップSB9の判定がNOであるとき、すなわち、運転状態が、エンジン5により駆動される第1モータ7から供給される電力によって駆動される領域(図2の領域B)に属すると判定されたときは、ステップSB10に進む。
【0074】
次のステップSB10では、バッテリ電力アシスト量を0とし、しかる後にステップSB11に進む。次のステップSB11では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50に設定し、しかる後にリターンする。
【0075】
一方、ステップSB9の判定がYESであるとき、すなわち、運転状態が図2の領域Cに属すると判定されたときは、ステップSB12に進む。そうして、次のステップSB12では、ステップSB3で算出されたバッテリ11のSOCが45%以上か否かを判定する。このステップSB12の判定がYESであるときは、ステップSB13に進む。
【0076】
次のステップSB13では、バッテリ電力アシスト量を大きく設定し、しかる後にステップSB11に進む。次のステップSB11では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50に設定し、しかる後にリターンする。
【0077】
一方、ステップSB12の判定がNOであるとき、すなわち、ステップSB3で算出されたバッテリ11のSOCが45%未満のときは、ステップSB14に進み、バッテリ電力アシスト量を小さく設定し、しかる後にステップSB15に進む。次のステップSB15では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=90:10に設定し、しかる後にリターンする。
【0078】
これに対し、ステップSB7の判定がNOであるときは、ステップSB16に進み、燃料として液体燃料を用いる液体燃料運転を行い、しかる後にステップSB17に進む。次のステップSB17では、加速運転か否かを判定する。このステップSB17の判定がNOであるとき、すなわち、運転状態が図2の領域Bに属すると判定されたときは、ステップSB18に進み、バッテリ電力アシスト量を0とし、しかる後にリターンする。
【0079】
一方、ステップSB17の判定がYESであるとき、すなわち、運転状態が図2の領域Cに属すると判定されたときは、ステップSB19に進み、ステップSB3で算出されたバッテリ11のSOCが45%以上か否かを判定する。このステップSB19の判定がNOであるときは、ステップSB20に進む。次のステップSB20では、燃料を液体燃料から気体燃料に切り換えて気体燃料運転に設定し、しかる後にステップSB14に進む。
【0080】
次のステップSB14では、バッテリ電力アシスト量を小さく設定し、しかる後にステップSB15に進む。次のステップSB15では、圧縮行程と吸気行程の噴射割合を、圧縮行程噴射:吸気行程噴射=90:10に設定し、しかる後にリターンする。
【0081】
一方、ステップSB19の判定がYESであるときは、ステップSB21に進み、バッテリ電力アシスト量を大きく設定し、しかる後にリターンする。
【0082】
−効果−
本実施形態によれば、気体燃料を用いる場合と液体燃料を用いる場合とで略同じ出力が得られる場合に、PCM3が圧縮行程噴射割合を増大させるので、吸気行程における吸気量が増大して高いエンジン出力が得られる。これにより、加速性能の悪化を抑制できる。
【0083】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0084】
上記各実施形態では、車両1をシリーズ式ハイブリット車両としたが、これに限らず、第1加速制御による制御時と第2加速制御による制御時とで、加速前のエンジン5の運転状態、及び、車両1の要求加速度合いが同一の場合、エンジン回転数の上昇の仕方を一致させる制御を行わないのであれば、車両1をパラレル式ハイブリット車両としてもよい。
【0085】
また、上記各実施形態では、バッテリ電力アシストを制限するSOCの基準値を45%に設定したが、これに限らず、バッテリ11の容量等に合わせて適宜決定してもよい。
【0086】
さらに、上記各実施形態では、SOCが45%以上の場合には、噴射割合を圧縮行程噴射:吸気行程噴射=50:50に設定し、SOCが45%未満の場合には、噴射割合を圧縮行程噴射:吸気行程噴射=90:10に設定したが、これに限らず、要求される出力が得られるのであれば、他の噴射割合を採用してもよい。
【0087】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、エンジンの駆動力による走行中に加速運転と判定されたときに、バッテリの電力により、車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせるハイブリッド車両の制御装置等について有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 車両
3 PCM(第1加速制御手段)(第2加速制御手段)(加速判定手段)(噴射時期制御手段)(加減速状態検出手段)(燃料切換制御手段)(SOC検出手段)
5 エンジン
7 第1モータ(発電機)
9 第2モータ(走行用モータ)
11 バッテリ
33 水素噴射用インジェクタ(燃料噴射弁)
55 車速センサ(加減速状態検出手段)
57 アクセル開度センサ(加速判定手段)(加減速状態検出手段)
59 エンジン回転数センサ(加減速状態検出手段)
61a 電流センサ(SOC検出手段)
61b 電圧センサ(SOC検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、少なくともバッテリの電力により駆動される走行用モータと、当該エンジンの加速運転を判定する加速判定手段と、当該エンジンの駆動力による走行中に当該加速判定手段により加速運転と判定されたときに、上記バッテリの電力により、車両に駆動力を付与する駆動力アシストを行わせる第1加速制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
上記バッテリのSOCを検出するSOC検出手段と、
燃料噴射弁により気体燃料を、気筒の吸気行程から圧縮行程に亘って噴射させる噴射時期制御手段と、
上記エンジンの駆動力による走行中に上記加速判定手段により加速運転と判定され、且つ、上記SOC検出手段により検出されたSOCが所定の基準値未満のときに、上記バッテリの電力による駆動力アシストを制限するとともに圧縮行程噴射割合を増大させる第2加速制御手段と、をさらに備えていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項2記載のハイブリッド車両の制御装置において、
上記車両の要求加速度合いを検出する加減速状態検出手段をさらに備え、
上記車両は、上記エンジンの駆動力により発電する発電機を有し、当該発電機の電力により上記走行用モータを駆動可能なシリーズ式ハイブリット車両であり、
上記第2加速制御手段は、加速前の上記エンジンの運転状態、及び、上記加減速状態検出手段により検出された車両の要求加速度合いが、上記第1加速制御手段による制御時と同一の場合、エンジン回転数の上昇の仕方を、当該第1加速制御手段による制御時におけるエンジン回転数の上昇の仕方と一致させるように圧縮行程噴射割合を制御することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のハイブリッド車両の制御装置において、
上記エンジンは、使用燃料として液体燃料と気体燃料とを選択的に用いることが可能で、且つ、気体燃料を用いる場合よりも液体燃料を用いる場合の方が高い出力が得られるデュアルフューエルエンジンであり、
気体燃料を用いたエンジンの運転中に上記加速運転が判定され、上記SOCが所定の基準値未満であって、且つ、上記車両の要求加速度合いに見合う出力が得られないと判定したときに、使用燃料を液体燃料に切り換えるように制御する燃料切換制御手段と、を有していることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のハイブリッド車両の制御装置において、
上記エンジンは、使用燃料として液体燃料と気体燃料とを選択的に用いることが可能で、且つ、気体燃料を用いる場合と液体燃料を用いる場合とで略同じ出力が得られるデュアルフューエルエンジンであり、
液体燃料を用いたエンジンの運転中に上記加速運転が判定され、且つ、上記SOCが所定の基準値未満の場合、使用燃料を気体燃料に切り換えるように制御する燃料切換制御手段と、を有していることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−46216(P2011−46216A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193981(P2009−193981)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】