説明

ハイブリッド車

【課題】内燃機関の浄化触媒を暖機する際に、運転者の加速要求により適正に対応する。
【解決手段】浄化触媒の暖機要求がなされたときにおいて、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには(ステップS170)、要求パワーPr*と冷却水温Twと差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときに用いられる第1補正係数設定用マップより補正係数Tarpeを大きくなる傾向に設定する第2補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し(ステップS190)、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定し(ステップS200)、エンジンのスロットルバルブの開度を目標スロットル開度にした状態でエンジンを運転しながら要求パワーPr*に基づくパワーにより走行するようエンジンと2つのモータとを制御する(ステップS210〜S250)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車に関し、詳しくは、走行用のパワーを出力可能であると共に排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、走行用のパワーを出力可能な電動機と、電動機と電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、排気管に三元触媒が設置されたエンジンと、エンジンの動力をアシストする電動機としてのモータジェネレータと、モータジェネレータの電力供給源としてのバッテリと、を備え、三元触媒の暖機のためにエンジンを所定の低回転域で稼働させる触媒暖機期間にあるときには、エンジンを所定の低回転域で稼働させながらバッテリからの放電電力が放電電力の上限値として規定された放電電力制限値以下となるようモータジェネレータを駆動して走行するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、触媒暖機期間に加速要求が生じた場合には、バッテリからの放電電力が拡大するよう放電電力制限値を補正することにより、触媒暖機を行ないながら運転者の加速要求に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車では、バッテリからの放電電力が拡大するよう放電電力制限値を補正することにより運転者の加速要求に対応しているが、バッテリが低温のときにはバッテリ保護の観点からバッテリの放電電力を拡大する余地が少なくなり、運転者の加速要求に対応することができない場合がある。
【0005】
本発明のハイブリッド車は、内燃機関の浄化触媒を暖機する際に、運転者の加速要求により適正に対応することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車は、
走行用のパワーを出力可能であると共に排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、走行用のパワーを出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド車であって、
走行に要求される要求走行パワーを設定する要求走行パワー設定手段と、
前記バッテリの状態に応じて該バッテリから出力可能な最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、
前記浄化触媒の暖機が要求されているときにおいて、前記設定された要求走行パワーから前記設定された出力制限に相当するパワーを減じて得られる差分パワーが予め定められた所定パワー以下であるときには前記内燃機関からパワーを出力しながら前記浄化触媒の暖機を促進させる第1の触媒暖機運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求走行パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記差分パワーが前記所定パワーを超えているときには前記第1の触媒暖機運転状態より前記内燃機関から出力されるパワーが大きくなる傾向の第2の触媒暖機運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求走行パワーに基づくパワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド車では、浄化触媒の暖機が要求されているときにおいて、設定された要求走行パワーから設定された出力制限に相当するパワーを減じて得られる差分パワーが予め定められた所定パワー以下であるときには内燃機関からパワーを出力しながら浄化触媒の暖機を促進させる第1の触媒暖機運転状態で内燃機関が運転されると共に設定された要求走行パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、浄化触媒の暖機を促進させてエミッション(炭化水素(HC)等の排気ガス中成分)の悪化を抑制すると共に要求走行パワーにより走行することができる。そして、差分パワーが所定パワーを超えているときには第1の触媒暖機運転状態より内燃機関から出力されるパワーが大きくなる傾向の第2の触媒暖機運転状態で内燃機関が運転されると共に設定された要求走行パワーに基づくパワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、第1の触媒暖機運転状態より内燃機関から大きなパワーを出力しながら走行することができ、運転者の加速要求により適正に対応することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記第1の触媒暖機運転状態は、予め定められたスロットル開度で前記内燃機関を運転する状態であり、前記第2の触媒暖機運転状態は、前記第1の触媒暖機運転状態で前記内燃機関を運転する際のスロットル開度より大きいスロットル開度で前記内燃機関を運転する状態であるものとすることもできる。こうすれば、スロットル開度を調整することにより、運転者の加速要求により適正に対応することができる。なお、「予め定められたスロットル開度」には、浄化触媒の暖機を促進させるスロットル開度などが含まれる。
【0010】
第1の触媒暖機運転状態を浄化触媒の暖機を促進させるスロットル開度で内燃機関を運転する状態とし、第2の触媒暖機運転状態を第1の触媒暖機運転状態で前記内燃機関を運転する際のスロットル開度より大きいスロットル開度で内燃機関を運転する状態とする態様の本発明のハイブリッド車において、前記第1の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーとスロットル開度の基本値として予め定められた基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係である第1のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第1の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第1の補正係数を乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態であり、前記第2の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーと前記基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係であって前記第1のパワー補正係数関係より前記補正係数が大きくなる傾向の第2のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第2の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第2の補正係数を乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態であるものとすることもできる。こうすれば、より適正なスロットル開度で内燃機関を運転することができる。なお、「スロットル開度の基本値として予め定められた基本スロットル開度」には、第1の触媒暖機運転状態で内燃機関を運転する際のスロットル開度の基本値として予め定められた開度などが含まれる。
【0011】
また、第1の触媒暖機運転状態を浄化触媒の暖機を促進させるスロットル開度で内燃機関を運転する状態とし、第2の触媒暖機運転状態を第1の触媒暖機運転状態で前記内燃機関を運転する際のスロットル開度より大きいスロットル開度で内燃機関を運転する状態とする態様の本発明のハイブリッド車において、前記第1の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーとスロットル開度の基本値として予め定められた基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係である第1のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第1の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第1の補正係数と前記差分パワーとを乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態であり、前記第2の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーと前記基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係であって前記第1のパワー補正係数関係より前記補正係数が大きくなる傾向の第2のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第2の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第2の補正係数と前記差分パワーとを乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態であるものとすることもできる。基本スロットル開度に設定した第1の補正係数と差分パワーとを乗じたものを目標スロットル開度として設定したり、前記基本スロットル開度に前記設定した第2の補正係数と前記差分パワーとを乗じたものを目標スロットル開度として設定することにより、差分パワーが大きいほど目標スロットル開度が大きく設定されるから、運転者の加速要求をより適正に反映するよう目標スロットル開度を設定することができ、運転者の加速要求により適正に対応することができる。なお、「スロットル開度の基本値として予め定められた基本スロットル開度」には、第1の触媒暖機運転状態で内燃機関を運転する際のスロットル開度の基本値として予め定められた開度などが含まれる。
【0012】
第1のパワー補正係数関係を用いて第1の補正係数を設定すると共に第2のパワー補正係数関係を用いて第2の補正係数を設定する態様の本発明のハイブリッド車において、前記第1のパワー補正係数関係は、前記設定された要求走行パワーが大きくなるほど前記第1の補正係数が大きくなる関係であり、前記第2のパワー補正係数関係は、前記設定された要求走行パワーが大きくなるほど前記第2の補正係数が大きくなる関係であるものとすることもできる。
【0013】
また、第1のパワー補正係数関係を用いて第1の補正係数を設定すると共に第2のパワー補正係数関係を用いて第2の補正係数を設定する態様の本発明のハイブリッド車において、前記内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出手段を備え、前記第1のパワー補正係数関係は、前記検出された冷却水の温度が低くなるほど前記第1の補正係数が大きくなる関係であり、前記第2のパワー補正係数関係は、前記検出された冷却水の温度が低くなるほど前記第2の補正係数が大きくなる関係であるものとすることもできる。内燃機関の冷却水の温度が低いほど内燃機関の燃焼状態が不安定であるが、第1のパワー補正係数関係や第2の補正係数関係を前記検出された冷却水の温度が低くなるほど補正係数が大きくなる関係にすることにより、冷却水の温度が低いほど目標スロットル開度を大きく設定してより大きなスロットル開度で内燃機関を運転することができるから、内燃機関をより安定して運転することができる。
【0014】
そして、本発明のハイブリッド車において、動力を入出力する発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備え、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機が要求されているとき、前記浄化触媒を暖機する際の前記内燃機関の回転数として予め定められた所定回転数で前記内燃機関が運転されるよう前記内燃機関と前記発電機とを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、所定回転数で内燃機関を運転しながら浄化触媒を暖機することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される触媒暖機時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22を自立運転しながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図8】第1補正係数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図9】エンジン22からパワーを出力して浄化触媒134aを暖機しながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図10】第2補正係数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図11】浄化触媒134aの暖機制御から通常制御の状態に移行する際のエンジン22から実際に出力されるパワーPeおよびリングギヤ軸32aに作用するトルクTrの時間変化の一例を示している。
【図12】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図13】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図14】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0018】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される。
【0019】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、浄化触媒134aの温度を検出する温度センサ134bからの触媒温度Tcやクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジション,エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。
【0020】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0021】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0022】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。こうして設定される入力制限Winは、電池温度Tbが所定温度Tbref(例えば、0℃やマイナス10℃など)以下の領域で電池温度Tbが低いほど大きく制限される(絶対値が小さい値となる)と共に残容量(SOC)が所定値Shi(例えば、60%など)以上の領域で残容量(SOC)が大きいほど大きく制限され、出力制限Woutは、電池温度Tbが所定温度Tbref以下の領域で電池温度Tbが低いほど大きく制限されると共に残容量(SOC)が所定値Slo(例えば、40%など)以下の領域で残容量(SOC)が小さいほど大きく制限される。
【0023】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0024】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0025】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、浄化装置134の浄化触媒134aを暖機する際の動作について説明する。図5は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される触媒暖機時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、浄化触媒134aを暖機する触媒暖機要求がなされているときに所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。ここで、触媒暖機要求は、温度センサ134bからの触媒温度Tcが浄化触媒134aの全体が活性化していると想定される活性化温度Tcact(例えば、400℃や420℃,450℃など)未満であるときになされるものとした。
【0026】
触媒暖機時駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,冷却水温Twなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。さらに、冷却水温Twは、水温センサ142により検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。
【0027】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*と走行に要求される要求パワーPr*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPr*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。
【0028】
続いて、要求パワーPr*とバッテリ50の出力制限Woutに換算係数kを乗じてパワーに換算したバッテリ出力可能パワーPbmax(=k・Wout)とを比較する(ステップS120)。バッテリ出力可能パワーPbmaxは、エンジン22からパワーを出力しない場合の走行用に出力可能なパワーの上限であるから、ステップS120の処理は、エンジン22からパワーを出力せずにバッテリ50からのパワーで要求パワーPr*により走行することが可能であるか否かを判定していることになる。
【0029】
要求パワーPr*がバッテリ出力可能パワーPbmax以下であるときには(ステップS120)、エンジン22からパワーを出力する必要がないと判断して、浄化触媒134aを暖機する際のエンジン22の回転数として予め定められた触媒暖機時回転数N1をエンジン22の目標回転数Ne*に設定すると共に値0を目標トルクTe*に設定する(ステップS160)。ここで、触媒暖機時回転数N1としては、エンジン22を自立運転する際の回転数(例えば、800rpmや900rpm、1000rpm)やそれよりも若干大きな値などを用いるものとした。このようにエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*を設定することにより、目標回転数Ne*,目標トルクTe*を、浄化触媒134aの暖機を促進する回転数として設定することができる。
【0030】
続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS140)、要求トルクTr*を減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(1)により計算し(ステップS150)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(2)および式(3)により計算し(ステップS230)、設定した仮トルクTm2tmpを式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS240)。エンジン22を自立運転しながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図7に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の太線矢印は、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。
【0031】
Tm2tmp=Tr*/Gr (1)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (2)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (4)
【0032】
続いて、設定したエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS250)、触媒暖機時駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*,目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火時期などの制御を行なう。このとき、浄化触媒134aを暖機をより促進させるために、エンジン22の点火時期については、エンジン22を効率よく運転するための点火時期に比して遅く且つ触媒暖機に適した点火時期を用いるものとした。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、要求パワーPr*がバッテリ出力可能パワーPbmax以下であるときには、エンジン22からパワーを出力せずに浄化触媒134aを暖機しながらモータMG2から要求パワーPr*に基づくパワーを出力して走行することができる。
【0033】
要求パワーPr*がバッテリ出力可能パワーPbmaxを超えているときには(ステップS120)、バッテリ50からのパワーだけでは要求パワーPr*で走行することができないためエンジン22からパワーを出力する必要があると判断して、浄化触媒134aを暖機する際のエンジン22の回転数,トルクとして予め定められた触媒暖機時回転数N2,触媒暖機時トルクTcdをエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*にそれぞれ設定する(ステップS160)。ここで、触媒暖機時回転数N2としては、エンジン22を運転する際の下限値(例えば、1000rpmや1200rpm、1300rpm)やそれよりも若干大きな値などを用いるものとし、触媒暖機時トルクTcdとしては、値0よりも若干大きな値などを用いるものとした。このようにエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*を設定することにより、目標回転数Ne*,目標トルクTe*を、浄化触媒134aの暖機を促進する回転数,トルクとして設定することができる。
【0034】
続いて、要求パワーPr*からバッテリ出力可能パワーPbmaxを減じた差分パワーΔPrと判定用パワーC1とを比較する(ステップS170)。バッテリ出力可能パワーPbmaxはエンジン22からパワーを出力しない場合に走行用に出力可能なパワーの上限であるから、差分パワーΔPrは要求パワーPr*により走行するためにバッテリ50からのパワーでは不足するパワーとなる。したがって、差分パワーΔPrが大きくなるほど、運転者の加速要求に対応できず、運転者はもたつき感をより強く感じる。判定用パワーC1は、運転者がもたつき感を強く感じるパワー差の下限として予め定めた値を用いるものとした。つまり、ステップS170の処理は、運転者が強くもたつき感を感じるか否かを判定していることになる。
【0035】
差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときには(ステップS170)、要求パワーPr*で走行できない場合でも運転者がさほどもたつき感を感じないと判断して、要求パワーPr*と冷却水温TwとROM74に予め記憶している第1補正係数設定用マップ(第1マップ)とを用いてエンジン22のスロットルバルブ124の開度の目標値である目標スロットル開度TH*を設定する際に用いる補正係数Tarpeを設定し(ステップS180)、エンジン22を目標回転数Ne*,目標トルクTe*(ここでは、触媒暖機時回転数N2,触媒暖機時トルクTcd)で運転する際のスロットルバルブ124の開度として予め定められた基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定する(ステップS200)。図8に第1補正係数設定用マップの一例を示す。第1補正係数設定用マップは、図示するように、要求パワーPr*と冷却水温Twと補正係数Tarpeとの関係を示すマップであり、第1補正係数設定用マップにおいて、補正係数Tarpeは、要求パワーPr*が高くなるほど大きくなり、冷却水温Twが低くなるほど大きくなるように設定するものとした。こうして補正係数Tarpeを設定することにより、目標スロットル開度TH*を、要求パワーPr*が高くなるほど大きく且つ冷却水温Twが低くなるほど大きくなるよう設定することができる。目標スロットル開度TH*を大きくするほどエンジン22からのパワーが大きくなるから、目標スロットル開度TH*を要求パワーPr*が高くなるほど大きくなるよう設定することにより、目標スロットル開度TH*を運転者の加速要求により対応可能な開度に設定することができる。また、冷却水温Twが低いほどエンジン22の燃焼状態が安定しないことから、目標スロットル開度TH*を冷却水温Twが低くなるほど大きくなるよう設定することにより、目標スロットル開度TH*を、エンジン22をより安定して運転できる開度に設定することができる。
【0036】
続いて、設定したエンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(5)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(6)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS210)。エンジン22からパワーを出力して浄化触媒134aを暖機しながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図9に示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(5)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(6)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(6)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0037】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (5)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (6)
【0038】
そして、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(7)により計算すると共に(ステップS220)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*と現在のモータMG1の回転数Nm1とモータMG2の回転数Nm2とを用いてトルク制限Tm2min,Tm2maxを上述した式(2)および式(3)により計算し(ステップS230)、設定した仮トルクTm2tmpを上述した式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS240)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。
【0039】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (7)
【0040】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、設定したエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU24,モータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、触媒暖機時駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*を受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。このとき、エンジン22のスロットルバルブ124については、スロットルバルブ124の開度が目標スロットル開度TH*となるようスロットルモータ136を制御する。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、エンジン22を目標回転数Ne*,目標トルクTe*(ここでは、触媒暖機時回転数N2,触媒暖機時トルクTcd)で運転することができ、エンジン22の浄化触媒134aの暖機を促進すると共に、エンジン22から若干のパワーを出力することができるから運転者の加速要求にある程度対応することができる。このとき、エンジン22のスロットルバルブ124の開度を要求パワーPr*が大きくなるほど大きくなるよう調整するから、運転者の加速要求により適正に対応することができる。また、エンジン22のスロットルバルブ124の開度を冷却水温Twが低くなるほど大きくなるよう調整するから、エンジン22をより安定して運転することができる。
【0041】
差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには(ステップS170)、運転者がもたつき感を感じることがあると判断して、要求パワーPr*と冷却水温Twとに基づいてROM74に予め記憶している第2補正係数設定用マップを用いてエンジン22のスロットルバルブ124の開度の目標値である目標スロットル開度TH*を設定する際に用いる補正係数Tarpeを設定し(ステップS190)、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定する(ステップS200)。図10に第2補正係数設定用マップ(第2マップ)の一例を示す。図中、括弧内の数値は、第1補正係数設定用マップにおける補正係数Tarpeを示している。第2補正係数設定用マップは、図示するように、要求パワーPr*と冷却水温Twと補正係数Tarpeとの関係を示すマップであり、第2補正係数設定用マップでは、補正係数Tarpeは、要求パワーPr*が高くなるほど大きくなり冷却水温Twが低くなるほど大きくなるよう設定するものとした。また、第2補正係数設定用マップでは、要求パワーPr*,冷却水温Twが同じであれば、第2補正係数設定用マップを用いて設定された補正係数Tarpeが第1補正係数設定用マップを用いて設定される補正係数Tarpe以上の値になるよう設定するものとした。
【0042】
続いて、設定したエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いてモータMG1の目標回転数Nm1*,トルク指令Tm1*を計算し(ステップS210)、要求トルクTr*と設定したトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて仮トルクTm2tmpを計算すると共に(ステップS220)、仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限したトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定し(ステップS230,2400)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU24,モータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、触媒暖機時駆動制御ルーチンを終了する。このように、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには、目標スロットル開度TH*を差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときより大きくなる傾向に設定しているから、差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときよりエンジン22からより大きなパワーを出力する状態でエンジン22を運転することができる。これにより、浄化触媒134aの暖機している最中に運転者がもたつき感を感じるのを抑制することができ、より適正に加速要求に対応することができる。
【0043】
ここで、浄化触媒134aの暖機を終了したときを考える。浄化触媒134aの暖機を終了したときには、上述した触媒暖機時制御からエンジン22から要求パワーPr*を出力して走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御する通常制御に移行する。図11は、触媒暖機時制御から通常制御へ移行する際にエンジン22から実際に出力されるパワーPeおよびリングギヤ軸32aに実際に作用するトルクTrの時間変化の一例を示している。図中、破線は、要求パワーPr*がバッテリ出力可能パワーPbmaxを超えているときに、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているか否かに拘わらず、第1補正係数設定用マップを用いて補正係数Tarpeを設定する比較例の触媒暖機時制御を実行した場合を示している。図示するように、触媒暖機時制御から通常制御に移行する際には、エンジン22から出力するパワーの急増に伴ってエンジン22からのトルクが急増してショックが生じる場合があるが、実施例の触媒暖機時制御においてエンジン22からより大きなパワーが出力されるようエンジン22を運転することにより、比較例に比してエンジン22から出力するパワーの急増が抑制されるから、エンジン22からのパワーの急増によるショックを抑制することができる。
【0044】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、浄化触媒134aの暖機要求がなされたときにおいて、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには要求パワーPr*と冷却水温Twと第1補正係数設定用マップより補正係数Tarpeを大きくなる傾向に設定する第2補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定し、スロットルバルブ124の開度を目標スロットル開度にした状態でエンジン22を運転しながら要求パワーPr*に基づくパワーにより走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御する。これにより、差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときより、エンジン22からのパワーを大きくすることができ、浄化触媒134aの暖機している最中に運転者がもたつき感を感じるのを抑制することができ、運転者の加速要求により適正に対応することができる。
【0045】
また、第1補正係数設定用マップ,第2補正係数設定用マップを、要求パワーPr*が大きくなるほど補正係数Tarpeが大きくなるマップであるものとしたから、要求パワーPr*が大きくなるほど目標スロットル開度TH*を大きくなるよう設定してエンジン22から出力するパワーを大きくすることができ、運転者の加速要求により適正に対応することができる。さらに、第1補正係数設定用マップ,第2補正係数設定用マップを冷却水温Twが大きくなるほど補正係数Tarpeが大きくなるマップであるものとしたから、冷却水温Twが大きくなるほど目標スロットル開度TH*を大きくなるよう設定することができ、エンジン22をより安定して運転することができる。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、第1補正係数設定用マップや第2補正係数設定用マップを要求パワーPr*と冷却水温Twと補正係数Tarpeとの関係を示すマップとし、補正係数Tarpeを要求パワーPr*が高くなるほど大きくなり冷却水温Twが低くなるほど大きくなるよう設定するものとしたが、第1補正係数設定用マップや第2補正係数設定用マップを要求パワーPr*と補正係数Tarpeとの関係を示すマップとし、補正係数Tarpeを要求パワーPr*が高くなるほど大きくなるよう設定するものとしてもよい。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS200の処理で、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定するものとしたが、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeと差分パワーΔPrとを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定するものとしてもよい。こうすれば、目標スロットル開度TH*に差分パワーΔPrを反映させることができ、より適正に目標スロットル開度TH*を設定して、より適正にエンジン22を運転することができる。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20では、差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときには、要求パワーPr*と冷却水温Twと第1補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定するものとしたが、目標スロットル開度TH*をエンジン22からパワーを出力して浄化触媒134aの暖機を促進させるスロットル開度に設定すれば良いから、例えば、要求パワーPr*や冷却水温Twに拘わらず、目標スロットル開度TH*をエンジン22からパワーを出力して浄化触媒134aの暖機を促進させるスロットル開度として予め定めた触媒暖機運転時開度TH1に設定するものとしてもよい。また、こうした目標スロットル開度TH*の設定を行なうことなく、スロットルバルブ124の開度を触媒暖機運転時開度TH1にしてエンジン22を運転するものとしてもよい。また、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには、第1補正係数設定用マップより補正係数Tarpeが大きくなる傾向の第2補正係数設定用マップを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定するものとしたが、目標スロットル開度TH*を差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときのスロットル開度より大きく設定すれば良いから、例えば、要求パワーPr*や冷却水温Twに拘わらず、目標スロットル開度TH*を触媒暖機運転時開度TH1より大きい所定開度TH2に設定するものとしてもよい。また、こうした目標スロットル開度TH*の設定を行なうことなく、スロットルバルブ124の開度を所定開度TH2にしてエンジン22を運転するものとしてもよい。
【0049】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS160の処理で、触媒暖機時回転数N2,触媒暖機時トルクTcdをエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*にそれぞれ設定するものとしたが、浄化触媒134aを暖機するための触媒暖機時エンジンパワーPsetを予め定めておき、エンジン22を効率よく運転しながらエンジン22から触媒暖機時エンジンパワーPsetを出力するエンジン22の回転数,トルクをそれぞれエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*として設定するものとしてもよい。
【0050】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS120の処理で要求パワーPr*とバッテリ出力可能パワーPbmaxとを比較して、要求パワーPr*がバッテリ出力可能パワーPbmax以下であるときにはステップS130〜S150の処理を実行するものとしたが、ステップS120〜S150,S230〜S250の処理を行なわずに、ステップS160〜S250の処理を実行するものとしてもよい。
【0051】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化触媒134aの暖機要求は、温度センサ134bからの触媒温度Tcが活性化温度Tcact未満のときになされるものとしたが、水温センサ142からの冷却水温Twやエアフローメータ148からの吸入空気量Qaの積算値,温度センサ149からの吸気温Tinなどに基づいて浄化触媒134aの温度を推定し、推定した浄化触媒134aの温度が活性化温度Tcact未満のときに浄化触媒134aの暖機要求がなされるものとしてもよい。また、こうした浄化触媒134aの温度の推定を行なわずに水温センサ142からの冷却水温Twやエアフローメータ148からの吸入空気量Qaの積算値,温度センサ149からの吸気温Tinなどと予め定めた閾値とを比較することにより、浄化触媒134aの暖機要求がなされた否かを判定するものとしてもよい。
【0052】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図12の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図12における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0053】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すると共にモータMG2からの動力を減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に変速機230を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。また、図14の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22からの動力を変速機330を介して駆動輪63a,63bに接続された車軸に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪63a,63bが接続された車軸とは異なる車軸(図14における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。即ち、走行用の動力を出力する内燃機関と走行用の動力を出力する電動機とを備えるものであれば如何なるタイプのハイブリッド自動車としてもよいのである。
【0054】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、浄化触媒134aを有する浄化装置134が排気系に取り付けられたエンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものに損失としてのロスLossを加えた値として要求パワーPr*を設定する図5の触媒暖機時駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求走行パワー設定手段」に相当し、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を放電してもよい最大許容電力である出力制限Woutを演算するバッテリECU52が「出力制限設定手段」に相当し、浄化触媒134aの暖機要求がなされているときにおいて、浄化触媒134aを暖機する際のエンジン22の回転数,トルクとして予め定められた触媒暖機時回転数N2,触媒暖機時トルクTcdをエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*にそれぞれ設定する図5の触媒暖機時駆動制御ルーチンのステップS160の処理や、要求パワーPr*からバッテリ出力可能パワーPbmaxを減じて得られる差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときには、要求パワーPr*と冷却水温Twと第1補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定し、要求パワーPr*に基づくパワーにより走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して、目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,トルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU24やモータECU40にそれぞれ送信し、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには、要求パワーPr*と冷却水温Twと第2補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定し、要求パワーPr*に基づくパワーにより走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して、目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,トルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU24やモータECU40にそれぞれ送信するステップS170以降の処理を実行するに送信するハイブリッド用電子制御ユニット70と、目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*を受信してエンジン22を制御するエンジンECU24と、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信してモータMG1,MG2を駆動制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0055】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど、走行用の動力を出力可能で排気浄化用の浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられたものであれば如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「バッテリ」としては、バッテリに限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプのバッテリであっても構わない。「要求走行パワー設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものに損失としてのロスLossを加えた値として要求パワーPr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定すると共にこの要求トルクに基づいて走行用パワーを設定するものや走行経路が予め設定されているものにあっては走行経路における走行位置に基づいて要求トルクを設定すると共にこの要求トルクに基づいて走行要求パワーを設定するものなど、走行に要求される要求走行パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「出力制限設定手段」としては、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を放電してもよい最大許容電力である出力制限Woutを演算するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)のみに基づいて設定するものなど、バッテリの状態に応じてバッテリから出力可能な最大電力である出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、浄化触媒134aの暖機要求がなされているときにおいて、触媒暖機時回転数N2,触媒暖機時トルクTcdをエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*にそれぞれ設定し、要求パワーPr*からバッテリ出力可能パワーPbmaxを減じて得られる差分パワーΔPrが判定用パワーC1以下であるときには、要求パワーPr*と冷却水温Twと第1補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定し、要求パワーPr*に基づくパワーにより走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22やモータMG1,MG2を制御し、差分パワーΔPrが判定用パワーC1を超えているときには、要求パワーPr*と冷却水温Twと第2補正係数設定用マップとを用いて補正係数Tarpeを設定し、基本開度Tatrqに補正係数Tarpeを乗じたものを目標スロットル開度TH*に設定し、要求パワーPr*に基づくパワーにより走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して、エンジン22やモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、浄化触媒の暖機が要求されているときにおいて、設定された要求走行パワーから設定された出力制限に相当するパワーを減じて得られる差分パワーが予め定められた所定パワー以下であるときには内燃機関からパワーを出力しながら浄化触媒の暖機を促進させる第1の触媒暖機運転状態で内燃機関が運転されると共に設定された要求走行パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御し、差分パワーが所定パワーを超えているときには第1の触媒暖機運転状態より内燃機関から出力されるパワーが大きくなる傾向の第2の触媒暖機運転状態で内燃機関が運転されると共に設定された要求走行パワーに基づくパワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0056】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化触媒、134b 温度センサ、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、229 クラッチ、230,330 変速機、MG,MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のパワーを出力可能であると共に排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、走行用のパワーを出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド車であって、
走行に要求される要求走行パワーを設定する要求走行パワー設定手段と、
前記バッテリの状態に応じて該バッテリから出力可能な最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、
前記浄化触媒の暖機が要求されているときにおいて、前記設定された要求走行パワーから前記設定された出力制限に相当するパワーを減じて得られる差分パワーが予め定められた所定パワー以下であるときには前記内燃機関からパワーを出力しながら前記浄化触媒の暖機を促進させる第1の触媒暖機運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求走行パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記差分パワーが前記所定パワーを超えているときには前記第1の触媒暖機運転状態より前記内燃機関から出力されるパワーが大きくなる傾向の第2の触媒暖機運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求走行パワーに基づくパワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記第1の触媒暖機運転状態は、予め定められたスロットル開度で前記内燃機関を運転する状態であり、
前記第2の触媒暖機運転状態は、前記第1の触媒暖機運転状態で前記内燃機関を運転する際のスロットル開度より大きいスロットル開度で前記内燃機関を運転する状態である
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド車であって、
前記第1の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーとスロットル開度の基本値として予め定められた基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係である第1のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第1の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第1の補正係数を乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態であり、
前記第2の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーと前記基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係であって前記第1のパワー補正係数関係より前記補正係数が大きくなる傾向の第2のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第2の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第2の補正係数を乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態である
ハイブリッド車。
【請求項4】
請求項2記載のハイブリッド車であって、
前記第1の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーとスロットル開度の基本値として予め定められた基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係である第1のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第1の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第1の補正係数と前記差分パワーとを乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態であり、
前記第2の触媒暖機運転状態は、前記設定された要求走行パワーと前記基本スロットル開度を補正するための補正係数との関係であって前記第1のパワー補正係数関係より前記補正係数が大きくなる傾向の第2のパワー補正係数関係と前記設定された要求走行パワーとを用いて第2の補正係数を設定し、前記基本スロットル開度に前記設定した第2の補正係数と前記差分パワーとを乗じたものを目標スロットル開度として設定し、前記内燃機関のスロットル開度を前記設定した目標スロットル開度にする状態である
ハイブリッド車。
【請求項5】
請求項3または4記載のハイブリッド車であって、
前記第1のパワー補正係数関係は、前記設定された要求走行パワーが大きくなるほど前記第1の補正係数が大きくなる関係であり、
前記第2のパワー補正係数関係は、前記設定された要求走行パワーが大きくなるほど前記第2の補正係数が大きくなる関係である、
ハイブリッド車。
【請求項6】
請求項3ないし5いずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出手段を備え、
前記第1のパワー補正係数関係は、前記検出された冷却水の温度が低くなるほど前記第1の補正係数が大きくなる関係であり、
前記第2のパワー補正係数関係は、前記検出された冷却水の温度が低くなるほど前記第2の補正係数が大きくなる関係である、
ハイブリッド車。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
動力を入出力する発電機と、
車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機が要求されているとき、前記浄化触媒を暖機する際の前記内燃機関の回転数として予め定められた所定回転数で前記内燃機関が運転されるよう前記内燃機関と前記発電機とを制御する手段である、
ハイブリッド車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−56484(P2012−56484A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202485(P2010−202485)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】