説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】
サイドウォール型メモリセルで構成されたメモリセルアレイを備え、且つ、フラッシュメモリと同等にブロック消去が可能な不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】
MOSFET構造を有し、ゲート電極の両側に電荷保持機能を有するメモリ機能体を備えたサイドウォール型メモリセルをマトリクス状に配列したメモリセルアレイ100を複数備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、メモリセルアレイ100が、複数のセクタ101に分割して構成され、メモリセルアレイ100の1つが一括消去される場合に、一括消去の対象となるメモリセルアレイを構成する複数のセクタの中から、複数回に分けて同時に所定数または前記所定数以下のセクタを順次選択するセクタ選択回路105と、一括消去の実行時に、セクタ選択手段105が同時に選択したセクタに対し、消去用の所定電圧を印加する消去電圧印加回路106,107を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極下に配置されたチャネル領域と、前記チャネル領域の両側に配置され、前記チャネル領域と逆導電型を有する拡散領域と、前記ゲート電極の両側または一方側に形成された電荷を保持する機能を有するメモリ機能体からなるサイドウォール型メモリセルを行方向及び列方向にマトリクス状に複数配列してなり、外部入力に応じて記憶データを一括して消去可能なメモリセルアレイを1または複数備えてなる不揮発性半導体記憶装置に関し、より詳細には、当該の不揮発性半導体記憶装置の消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電気的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)は、電気的に絶縁されたフローティングゲートを有する金属−酸化膜−半導体(MOS)構造のメモリセルを使用している。この場合、情報はフローティングゲート内に蓄積される電荷の多寡によってメモリセルに記憶される。従来のEPROMの1つに、フラッシュメモリがある。代表的なフラッシュメモリは、標準的なEPROMと同様のメモリセルアレイ構造を有しており、メモリセルアレイは列及び行で構成されている。各メモリセルは、ワード線とビット線の交点に配置されている。各ワード線は、1つの行における複数のメモリセルの制御ゲートに接続し、各ビット線は、1つの列における複数のメモリセルのドレインに接続している。全メモリセルのソースは共通ソース線に接続している。フラッシュメモリは、ユーザーによりプログラム可能で、一旦プログラムされると消去されるまでプログラムされたデータを保持する。また、フラッシュメモリにおけるメモリセルアレイ内の全メモリセルのソースに対して消去電圧を同時に印加して、メモリセルアレイ全体を消去することができる。フラッシュメモリは、消去後、新しいデータで再プログラムされる。
【0003】
従来のフラッシュメモリ構造の欠点の1つは、メモリセルアレイの消去特性にある。メモリセルアレイに記憶されたプログラムコードまたはデータの変更が求められた場合、たとえ僅かな変更の場合でも、メモリセルアレイ全体を消去して、全プログラムコードまたはデータを当該メモリセルアレイに書き換えなければならない点にある。
【0004】
かかる欠点を解決するため、従来のフラッシュメモリにおいて、メモリセルアレイを複数ブロックに再構成して、消去対象の1つのブロックにおける全メモリセルのソースのみに対して消去電圧を印加できるようして当該ブロックだけを消去する消去方法がある。このブロック消去法により、全メモリセルアレイを消去するのではなく、メモリセルアレイの1ブロックだけを消去することができる。例えば、下記の特許文献1において、上述のようにブロック分割され、各別にブロック消去可能な構成の不揮発性半導体記憶装置が開示されている。
【0005】
現在、不揮発性半導体記憶装置全体に占めるフラッシュメモリの市場規模が大きいため、フラッシュメモリと互換性のある不揮発性半導体記憶装置も多数開発されている。その中の1つにサイドウォールメモリがある。サイドウォールメモリは、1つのメモリセルに2ビットのデータを記憶できるマルチビットメモリであり、メモリセルのサイズもフラッシュメモリより小さいことから高集積化に都合がよい。また、ロジックプロセス(ロジック回路用の製造プロセス)を基本としているため、製造コストがフラッシュメモリに比較して低いことが特徴として挙げられる。このサイドウォールメモリで採用されるサイドウォール型メモリセルについて、図3を参照して説明する。
【0006】
サイドウォール型メモリセルは、P型半導体基板上211に形成されたゲート絶縁膜214を介してゲート電極217が形成されている。ゲート電極217の両側であって、P型半導体基板上211に、夫々ソース領域またはドレイン領域として機能するN型の拡散領域212、213が形成されている。拡散領域212、213は、オフセット構造を有している。即ち、拡散領域212、213はゲート電極下の領域には達しておらず、電荷保持膜下のオフセット領域271がチャネル領域の一部を構成している。ゲート電極217の側面には、電荷を保持するトラップ準位を有し電荷保持膜となるシリコン窒化膜242が、シリコン酸化膜241、243に挟まれてONO構造のサイドウォールとして配置されており、夫々実際に電荷を保持するメモリ機能部となっている。ここで、メモリ機能部とは、メモリ機能体または電荷保持膜のうちで書き換え動作により実際に電荷が蓄積される部分を指す。
【0007】
また、メモリ機能体261、262における電荷を保持する領域(シリコン窒化膜242)は、拡散領域212、213と夫々オーバーラップしている。ここで、オーバーラップするとは、拡散領域212、213の少なくとも一部の領域上に、電荷を保持する領域(シリコン窒化膜242)の少なくとも一部が存在することを意味する。
【0008】
ここで、構造上から言えることは、過剰消去が起きないということが特徴として挙げられる。過剰消去とは、本来制御したい閾値電圧の下限より更に閾値電圧が低くなる状態のことであり、例えばNOR型フラッシュメモリの場合は、過剰消去により0V以下の閾値電圧になることもある。閾値電圧が0V以下になった場合には、NOR型フラッシュメモリの制御ゲートに正電圧を印加しなくとも、ソース・ドレイン間に電位差を与えるだけで電流が流れるため、制御ゲートに正規の正電圧が印加され選択されたメモリセルの電流を読み取って読み出し動作を行っているのか、過剰消去された非選択メモリセルの電流を読み取って読み出し動作しているのかの区別が困難となり、出力されるデータの信頼性は低くなる。
【0009】
ここで、閾値電圧の制御について言及する。フラッシュメモリはフローティングゲートに注入された電荷(電子)の蓄積量に従って情報を記憶している。具体的にはフローティングゲートに電子が多く注入されている状態においては、チャネル領域には反転層が形成されにくく、このためメモリセルの閾値電圧は高くなる。一方、フローティングゲートから電子が放出されている状態では、チャネル領域には反転層が形成されやすく、このメモリセルの閾値電圧は低くなる。つまり、フラッシュメモリでは、蓄積されている電子の数によってチャネルの形成に直接影響を与える。しかしながら、サイドウォールメモリの場合では、上述したように、P型半導体基板上211に形成されたゲート絶縁膜214を介してゲート電極217が形成されており、これは通常のN型MOSFETと同じ構造を有している。このことは、仮に、サイドウォール型メモリセルのメモリ機能部に電子が過剰に注入されたとしても、N型MOSFETの閾値電圧分は最低限保障されることを意味するため、閾値電圧が0V以下になることはない。これがサイドウォールメモリで過剰消去が発生しない理由であり、NOR型フラッシュメモリにおいて過剰消去対策として導入されているプリコンディション処理やポストコンディション処理といった複雑な消去シーケンス処理をサイドウォールメモリでは必要としない。尚、プリコンディション処理とは、消去対象メモリセルの消去前の閾値電圧のバラツキを揃えるための消去前のプログラム処理のことで、消去前の閾値電圧の低いメモリセルが過剰消去されるのを防止するための処理である。また、ポストコンディション処理とは、消去後に閾値電圧が他のメモリセルより低目の過剰消去気味のメモリセルに対して弱いプログラム処理により、閾値電圧を上げる処理である。
【0010】
ところで、フラッシュメモリからの置き換えを可能とする不揮発性半導体記憶装置にとって、フラッシュメモリの仕様を継承することが望まれる。これは、当該置き換えにより、フラッシュメモリを搭載しているシステム側の設計に変更が伴わないようにするためである。例えば、一般的に普及しているフラッシュメモリでは、上述のブロック消去機能を基本的に具備しているため、サイドウォールメモリにおいても当該ブロック消去機能を有していることが望まれ、また、フラッシュメモリからの置き換えを狙う以上、フラッシュメモリ以上の性能、即ち高速に消去可能であることが要求される。
【0011】
しかしながら、サイドウォール型メモリセルでは、メモリ機能体261、262の何れに対して情報をプログラム、消去、或いは、読み出しを行うかの選択は、チャネル領域に印加される電界方向によって決定されるため、拡散領域212、213の何れがメモリセルのソース或いはドレインとなるかは可換である。従って、サイドウォールメモリでは、フラッシュメモリのように各メモリセルのソースを共通ソース線に接続してブロック単位で消去する必然性はなく、また、後述するように消費電力の観点からも現実的ではない。
【特許文献1】特開平6−215587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
サイドウォールメモリでは、バンド間トンネリングを利用したホットホール注入によりメモリセルの消去を行っている。バンド間トンネリングを誘発するために、基板とドレイン間のPN接合に高い逆方向電圧を印加し、更に、ゲートに負電圧を印加することによりPN接合の急峻さを更に大きくしている。つまり、サイドウォール型メモリセルの消去は、本質的にPN接合の降伏を利用している。このため、サイドウォール型メモリセルを消去する際にメモリセルから流れる電流(消去電流)が、フラッシュメモリに比べて大きくなる。具体的には、1つのメモリセル当たり100nA程度の電流が流れる。
【0013】
ここで、フラッシュメモリのようにブロック全体を一括で同時に消去する場合を考える。1ブロック内のメモリセル数が、例えば、512K(512×1024)の場合を想定する。尚、メモリセル当たり2ビットの記憶容量であるから、1ブロックでは1Mビットの記憶容量となる。512K個のメモリセルの夫々において、100nAの電流が流れたとすると、1ブロック全体では、約50mAの電流が消去のために要することを意味する。従って、消去用の電圧を供給する電圧供給回路(例えばチャージポンプ回路)の電流供給能力を増大させる、電流増による電圧降下を考慮して供給電圧を高くする、或いは、電圧降下の生じる選択トランジスタのトランジスタサイズを大きくする等の対処が必要である。これらは、消費電流の増加、チップ面積の増加の要因となり問題である。
【0014】
また、現実的には、一般的なフラッシュメモリでチャージポンプ回路の電流供給能力が最小時に1mA程度であることを考慮すると、50mAの消去電流を賄うことが如何に大きな課題となるかが分かる。つまり、サイドウォールメモリでは、フラッシュメモリのように高集積化を実現した場合、フラッシュメモリと同等のブロック消去動作が実用上できないという問題があった。そこで、フラッシュメモリ並みの高集積度を維持しつつ、サイドウォールメモリをブロック消去するための手法が必要となる。また、フラッシュメモリの置き換えである以上、フラッシュメモリ以上の高速消去である必要がある。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイドウォール型メモリセルで構成されたメモリセルアレイを備え、且つ、フラッシュメモリと同等にブロック消去が可能な不揮発性半導体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極下に配置されたチャネル領域と、前記チャネル領域の両側に配置され、前記チャネル領域と逆導電型を有する拡散領域と、前記ゲート電極の両側または一方側に形成された電荷を保持する機能を有するメモリ機能体からなるサイドウォール型メモリセルを行方向及び列方向にマトリクス状に複数配列してなるメモリセルアレイを複数備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、前記メモリセルアレイが、複数のセクタに分割して構成され、前記メモリセルアレイの1つが一括消去される場合に、一括消去の対象となる前記メモリセルアレイを構成する前記複数のセクタの中から、複数回に分けて同時に所定数または前記所定数以下の前記セクタを順次選択するセクタ選択回路と、前記一括消去の実行時に、前記セクタ選択手段が同時に選択した前記セクタに対し、消去用の所定電圧を印加する消去電圧印加回路を備えることを特徴とする。
【0017】
上記特徴により、メモリセルアレイを消去単位とする一括消去(ブロック消去)が、1または複数のセクタ毎に時分割で消去することで実現できるため、メモリセルアレイサイズが大きくても同時に消去するセクタサイズ(同時に消去する各セクタのメモリセル数の合計)を所定数に制限することで、同時に供給すべき消去電流を抑制でき、ブロック消去単位が大容量でも従来のフラッシュメモリと同等のブロック消去が実用上可能となる。また、サイドウォール型メモリセルは、メモリセル単位でフラッシュメモリより高速に消去可能であり、また、過剰消去が原理的に発生しないため消去シーケンス中に過剰消去対策用の処理が不要なことから、セクタの分割数を増やしても、ブロック消去時間をフラッシュメモリより高速にできる。この結果、従来のフラッシュメモリを用いたシステムに対して、システム側の使用を変更することなく、フラッシュメモリに代えて本発明に係る不揮発性半導体記憶装置を用いることができ、更に、高性能化を果たすことができるようになる。
【0018】
尚、本発明において、「一括消去」とは、消去単位となっている複数のメモリセルを一まとめに全て消去することであり、必ずしも、当該複数のメモリセルの全てを時間的に同時に消去する場合に限定されない。
【0019】
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、前記消去用の所定電圧を発生する消去電圧発生回路の電流供給能力を検出する電流供給能力検出回路を備え、前記セクタ選択回路は、前記電流供給能力検出回路が検出した前記電流供給能力に応じて、同時に選択される前記セクタの最大数が可変に構成されていることを特徴とする。ここで、前記電流供給能力検出回路は、前記消去電圧発生回路に供給される電源電圧に基づいて前記電流供給能力を検出するのが好ましい。
【0020】
上記特徴により、電流供給能力検出回路で検出した電流供給能力に応じて、当該電流供給能力内で供給可能な消去電流となる最大セクタサイズを使用できるようになるため、時分割で消去する回数を低減でき、消去時間の短縮が図れる。また、消去電圧発生回路がチャージポンプ回路等で構成されている場合、電流供給能力を電源電圧に基づいて簡易に検出するできるため、簡単な回路構成で、消去時間の短縮が図れる。
【0021】
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、前記セクタ選択回路が、アドレス信号または内部レジスタの出力信号に応じて同時に選択する前記セクタを決定することを特徴とする。
【0022】
上記特徴により、メモリセルアレイ全体を消去する場合は、各セクタに予め所定のアドレスを割り当てることで、アドレス信号の制御によって、メモリセルアレイ内の各セクタを選択して順次消去することが可能となり、また、メモリセルアレイ内の一部のセクタを選択的に消去する場合は、アドレス信号とは無関係に、内部レジスタからの制御によって、任意のセクタを消去可能に構成することができる。この結果、メモリセルアレイ全体の消去動作の結果、一部のセクタが完全に消去されなかった場合等において、当該未消去のセクタを任意に選択して再度消去することが可能となる。
【0023】
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、前記メモリセルアレイが、複数のセクタに均等に分割して構成されていることを特徴とする。
【0024】
上記特徴により、セクタ選択回路の構成が簡単化されるとともに、同時に複数のセクタを選択して消去する場合に、セクタ数が同じであれば、消去対象のメモリセル数が同じになり、ブロック消去期間を通して、消去電流を均等に抑制できる。
【0025】
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、前記消去電圧印加回路によって前記消去用の所定電圧を印加された前記セクタに対して各別に前記セクタ内の全ての前記メモリセルが消去されたか否かを検証するベリファイ処理を実行する消去ベリファイ回路を備え、前記ベリファイ処理で前記セクタ内の1以上の前記メモリセルが消去されていない未消去セクタが1以上検出された場合に、前記セクタ選択回路が、検出された前記未消去セクタを、同時に前記所定数を上限として順次選択し、前記消去電圧印加回路が、前記セクタ選択手段が同時に選択した前記セクタに対し、前記消去用の所定電圧を再度印加することを特徴とする。更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、前記消去ベリファイ回路が、前記消去電圧印加回路によって前記消去用の所定電圧を再度印加された前記セクタに対して各別に前記ベリファイ処理を実行することを特徴とする。
【0026】
上記特徴により、1回の消去動作(消去用の所定電圧の印加)で消去できなかったセクタをベリファイ処理により検出し、次に、未消去セクタだけを纏めて消去できるので、2回目の消去動作にかかる合計時間を短縮でき、消去対象のメモリセルアレイ内の全セクタを消去するまでのトータルの消去時間を短縮できる。更に、2回目の消去動作で消去できなかったセクタをベリファイ処理により検出し、次に、未消去セクタだけを纏めて消去できるので、2回目の消去動作にかかる時間を短縮でき、消去対象のメモリセルアレイ内の全セクタを消去するまでのトータルの消去時間を短縮できる。
【0027】
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、前記セクタ毎に前記ベリファイ処理の結果を記憶する内部レジスタを備え、前記消去ベリファイ回路は、前記セクタ毎の前記ベリファイ処理の結果を前記内部レジスタの対応個所に夫々記憶し、前記セクタ選択手段は、前記内部レジスタの出力に基づいて前記未消去セクタを順次選択することを特徴とする。
【0028】
上記特徴により、具体的に、ベリファイ処理後に未消去セクタだけを選択して2回目以降の消去動作が可能となり、消去時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置(以下、適宜「本発明装置」と称す。)の一実施の形態につき、図面を参照して説明する。
【0030】
図1に、本発明装置の概略のブロック構成を示す。尚、図1では、本発明装置における消去動作に係る回路ブロックを模式的に示している。本発明装置は、サイドウォール型メモリセル(以下、単に「メモリセル」と称する。)をマトリクス状に行及び列方向に複数配列してなるメモリセルアレイ100を複数備えてなる。但し、図1では、説明の便宜上、1つのメモリセルアレイ100のみを表示している。また、メモリセルアレイ100は、複数のセクタ101に分割されている。図1では、列方向に沿って均等に4分割されている場合を例示しているが、1つのモリセルアレイ101内のセクタ数、分割方向は、図1に示す分割例に限定されるものではない。本実施形態では、メモリセルアレイ100がユーザモード(ユーザが利用可能な動作モード)での消去単位で、ユーザによる本発明装置への消去動作入力に応答して、当該消去動作入力で指定されたメモリセルアレイ100の消去動作が実行される。
【0031】
図1に示すように、本発明装置は、更に、消去シーケンスを制御する制御回路102と、メモリセルアレイ100内の1または複数列のメモリセルを選択する列デコーダ103と、メモリセルアレイ100内の1または複数行のメモリセルを選択する行デコーダ104と、メモリセルアレイ100の中から所定数のセクタ101を順次選択するセクタ選択回路105と、消去用の2種類の印加電圧を発生する第1及び第2消去電圧印加回路106,107と、第1消去電圧印加回路106の電流供給能力を検出する電流供給能力検出回路108と、セクタ別にセクタ内の全てのメモリセルが消去されたか否かを検証するベリファイ処理を実行する消去ベリファイ回路109と、ベリファイ処理の検証結果をセクタ別に記憶する内部レジスタ110を備えている。
【0032】
図2に、メモリセルアレイ100を構成する各セクタ101内におけるメモリセル1の配列構成の一部を示す。メモリセル1は、図3(a)に示すように、P型半導体基板上211にゲート絶縁膜214を介して形成されたゲート電極217と、ゲート電極217下に配置されたチャネル領域270と、チャネル領域270の両側に配置され、チャネル領域270と逆導電型のN型の拡散領域212、213と、ゲート電極217の両側に各別に形成された電荷を保持する機能を有するメモリ機能体261、262からなる。N型の拡散領域212、213は、一方がドレイン電極、他方がソース電極に相当する。拡散領域212、213の何れが、ドレイン電極またはソース電極に相当するかは、2つのメモリ機能体261、262の何れを読み出しまたはプログラムの対象としているかによって変化する。図3(b)にメモリセル1の回路図上での表記用シンボルを示す。図2及び図3に示すように、行方向に隣接する2つのメモリセル1は、一方の拡散領域212と他方の拡散領域213が同じ拡散領域で共有して形成され、同一行の各メモリセル1のゲート電極217は夫々共通のワード線WLに接続し、同一列の各メモリセル1の2つの拡散領域212、213は、一方が共通の第1ビット線BL0に接続し、他方が共通の第2ビット線BL1に接続する。
【0033】
図1に示すように、メモリセルアレイ100の各ビット線は、セクタ101毎に、夫々のビット線群111、112、113、114に分割されている。列デコーダ103は、消去動作時は、セクタ選択回路105が選択した1または複数のセクタに対応するビット線群の第1及び第2ビット線を選択する。尚、以下の説明では適宜、ビット線群111、112、113、114に対応するセクタを夫々、第1セクタ101a、第2セクタ101b、第3セクタ101c、第4セクタ101dと称す。
【0034】
制御回路102は、列デコーダ103、行デコーダ104、セクタ選択回路105、第1及び第2消去電圧印加回路106,107、電流供給能力検出回路108、及び、消去ベリファイ回路109を各別に制御して、メモリセルアレイ100の消去動作及びベリファイ処理を含む一連の消去シーケンスを制御する回路である。図1中、制御回路102から各部への制御信号を破線で示す。
【0035】
第1消去電圧印加回路106は、セクタ選択回路105及び列デコーダ103によって選択されたビット線群に対して消去用の正電圧(例えば+5V)を印加する回路で、チャージポンプ回路で構成されている。第2消去電圧印加回路107は、行デコーダ104を介して、メモリセルアレイ100のワード線群120に繋がる全てのメモリセル1のゲート電極に消去用の負電圧(例えば−5V)を印加する負電圧発生回路である。尚、消去時には、行デコーダ104によって全てのワード線がワード線群120として選択される。
【0036】
電流供給能力検出回路108は、本実施形態では、第1消去電圧印加回路106の電流供給能力を、第1消去電圧印加回路106に供給される電源電圧レベルVddを検出して判定する方式を採用し、例えばカレントミラー型の差動増幅回路で構成されている。この場合、差動増幅回路の一方の差動入力に電源電圧レベルVddまたは一定の分圧比を乗じた電圧値を入力し、他方の差動入力に、検出すべき電源電圧レベルの参照電圧(固定電圧)または同じ分圧比を乗じた電圧値を入力することにより、電源電圧レベルVddと該参照電圧の大小比較ができ、電源電圧レベルVddが参照電圧より高い場合は、第1消去電圧印加回路106の電流供給能力が高いと判定し、逆に、電源電圧レベルVddが参照電圧より低い場合は、第1消去電圧印加回路106の電流供給能力が低いと判定できる。
【0037】
ここで、セクタ選択回路105によって同時に選択されるセクタ数は、選択されたセクタ内の各メモリセルの拡散領域に、選択されたビット線群を介して消去用の正電圧を印加する第1消去電圧印加回路106の電流供給能力により制限される。セクタ選択回路105は、電流供給能力検出回路108の検出出力に基づいて、同時に選択するセクタ数を調整する。従って、セクタ分割数が大きいほど、電流供給能力の変化に対するセクタ数の調整の自由度が増すので好ましい。本実施形態では、説明の簡単のため、当該分割数を4としているが、上記理由で5以上が望ましい。
【0038】
消去ベリファイ回路109は、セクタ101毎に列デコーダ103と行デコーダ104に読み出し用の内部アドレス信号を順次出力して、各セクタ101内のメモリセルのデータを順次読み出し、各メモリセルが所定の消去状態に達しているかを検証し、セクタ内の全てのメモリセルが所定の消去状態に達している場合に、当該セクタが消去されたと判定し、夫々以外の場合は、当該セクタを未消去セクタであると判定する。消去ベリファイ回路109は、ベリファイ処理の結果、未消去セクタを検出した場合は、内部レジスタ110の対応個所に未消去であることを示すフラグを設定する。消去ベリファイ回路109は、通常の不揮発性半導体記憶装置で使用される公知の読み出し回路を備えて構成される。内部レジスタ110は、消去/未消去の別を記憶するレジスタをセクタ数と同数備えて構成される。内部レジスタ110の各レジスタは上記フラグを記憶する。
【0039】
次に、メモリセルアレイ100の消去動作を実行する場合の、一連の消去シーケンスにおける本発明装置の各部の動作について説明する。以下、各部の動作は、制御回路102によって制御される。尚、以下の説明において、消去動作とは、各メモリセルに消去用の電圧を印加して記憶データを消去する操作を意味し、例えば、各メモリセルの消去が完了したか否かの検証のためのベリファイ処理等の付随処理は含まない。
【0040】
先ず、行デコーダ104は、第2消去電圧印加回路107から供給される負電圧をワード線群120に印加する。次に、ビット線群111〜114が、列デコーダ103によって順次選択され、セクタ101毎に全てのメモリセルのソース電極及びドレイン電極(N型の拡散領域)に、第1消去電圧印加回路106から供給される高電圧(正電圧)が所定期間継続して印加されるよう制御される。この結果、該所定期間をパルス幅とする消去電圧パルスが、各メモリセルのゲート電極とソース・ドレイン電極間に印加され、消去動作が実行される。尚、残りの非選択のセクタのビット線群には、高電圧は印加せず、例えば0V等の低電圧を印加するか、或いは、フローティング状態とし、消去動作は実行されない。具体的には、先ず、セクタ選択回路105が第1セクタ101aを選択すると、ビット線群111のみに高電圧が印加され、第1セクタ101a内の全てのメモリセルが選択的に消去される。ビット線群111を非選択にした後に、ビット線群112のみに高電圧が印加され、第2セクタ101b内の全てのメモリセルが選択的に消去される。同様に、第3セクタ101c、第4セクタ101dを消去した後に、ワード線群120に印加していた負電圧を0Vにする。図4に、以上の消去動作におけるビット線群111〜114とワード線群120の電圧波形とタイミング関係を示す。
【0041】
ところで、第1消去電圧印加回路106のチャージポンプ回路は、電源電圧Vddの変動によって、その出力電流が変化する。かかる現象を説明するために、図5に、代表的なチャージポンプ回路500の回路構成を示す。一般に、チャージポンプ回路は、キャパシタに蓄積された電荷をクロック回路501の周波数に同期して放出することによって電流を外部に供給している。容量Cのキャパシタに蓄積される電荷量ΔQは、キャパシタの電位差ΔVとすると、以下の数1で表される。
【0042】
(数1)
ΔQ=C×ΔV
【0043】
数1より明らかなように、キャパシタに蓄積される電荷量はキャパシタに掛かる電位差に正比例する。仮に、本発明装置の電源電圧範囲が、1.8V〜3.6Vであった場合に、電荷量は、最小で1.8C、最大で3.6Cとなり、電流供給能力に2倍の格差が生じる。また、チャージポンプ回路500内のクロック回路501も、電源電圧の上昇につれてクロック周波数が急上昇する。これらを総合すると、電源電圧の変動によって、チャージポンプ回路の電流供給能力に約3倍の格差が生じる。そこで、第1消去電圧印加回路106に供給される電源電圧Vddが高い時には、同時に複数のセクタ101に対して消去動作が可能となる。尚、電源電圧範囲が1.8V〜3.6Vの場合、参照電圧をその中間の2.7V付近に設定するのが好ましい。
【0044】
次に、電源電圧Vddが高い場合の消去動作について説明する。電源電圧Vddが、所定の参照電圧以上になった場合に、電流供給能力検出回路108が、高電源電圧検知信号115をセクタ選択回路105に対して出力する。セクタ選択回路105は、高電源電圧検知信号115が出力されると、消去動作時において同時に選択するセクタ数を4から2に切り替え、セクタ101は同時に2つずつ順次選択される。図6に、高電源電圧検知時の消去動作におけるビット線群111〜114とワード線群120の電圧波形とタイミング関係を示す。
【0045】
先ず、行デコーダ104は、第2消去電圧印加回路107から供給される負電圧をワード線群120に印加する。次に、セクタ選択回路105が第1及び第2セクタ101a,101bを選択し、それに対応したビット線群111と112が列デコーダ103によって選択され、第1消去電圧印加回路106から供給される高電圧(正電圧)がビット線群111と112に所定期間継続して印加され、第1及び第2セクタ101a,101bに対する消去動作が実行される。第1及び第2セクタ101a,101bに対する消去動作後に、セクタ選択回路105が第3及び第4セクタ101c,101dを選択し、それに対応したビット線群113と114が列デコーダ103によって選択され、第1消去電圧印加回路106から供給される高電圧(正電圧)がビット線群113と114に所定期間継続して印加され、第3及び第4セクタ101c,101dに対する消去動作が実行される。メモリセルアレイ100内の全てのセクタ101a〜101dに消去電圧パルスが印加されて消去動作が実行された後、ワード線群120の電圧は、負電圧から0Vの電圧に設定される。
【0046】
以上の説明より明らかなように、消去単位となるメモリセルアレイ100内を複数のセクタ101に分割して時分割で消去動作を実行することにより、メモリセル当たりの消去電流の多いサイドウォールメモリにおいても、メモリセルアレイ100を一括して消去可能となる。更に、第1消去電圧印加回路106の電流供給能力に応じて、同時に消去動作を実行するセクタ数、即ち、メモリセル数が可変な構成とすることで、電源電圧が高い場合は、より高速且つ効率的に消去が可能となる。
【0047】
更に、メモリセルアレイ100全体を消去する場合の消去時間に関して説明する。従来のNOR型フラッシュメモリのブロック消去時間は、一般的に500ms前後である。NOR型フラッシュメモリの場合、上述したように過剰消去を防止するための処理としてプリコンディション処理やポストコンディション処理といった複雑な処理を行っているのに対して、サイドウォールメモリでは、前述のように過剰消去が原理的に発生しないために、消去パルス印加(消去動作)とベリファイ処理だけの単純なシーケンスを構築できる。但し、上述したようにメモリセルアレイ100内のメモリセルを一括して同時に消去することができないために、第1消去電圧印加回路106の出力電流で1度に消去可能なセクタ数が異なる。消去電圧パルスを逐次印加していくために、セクタ数によって大きく消去時間が左右される。
【0048】
以下の説明において、図1に示すメモリセルアレイ100のセクタ分割が、4分割ではなく、200分割であり、第1消去電圧印加回路106が、セクタ分割数が200の場合の4つのセクタを同時に消去できる電流供給能力を有している場合を想定する。サイドウォールメモリの消去電圧パルスのパルス幅は1ms程度であることから、メモリセルアレイ100全体に対する消去動作に50msを要することになる。フラッシュメモリの場合では、消去動作に要する時間は数ms程度であることから、消去動作時間だけで比較するとフラッシュメモリの方が短時間で1回の消去動作を行える。しかし、1度の消去電圧パルス印加で各メモリセルが消去できるのであれば、プリコンディション処理やポストコンディション処理といった処理が不要なために、100ms程度でメモリセルアレイ100全体に対する一括消去処理を終了することができ、全体としての消去時間は、フラッシュメモリより短縮できる。
【0049】
しかしながら、1度の消去電圧パルス印加で消去しきれないメモリセルが存在する場合には、再度消去電圧パルスを印加して消去動作を再実行する必要があり、その再実行の回数が多い場合には、フラッシュメモリの消去時間を越えてしまう可能性がある。
【0050】
次に、消去動作を再実行する必要がある場合の本発明装置における消去シーケンスについて、図1、及び、図7(a)〜(c)を参照して説明する。但し、メモリセルアレイ100のセクタ分割数は200とする。
【0051】
説明の簡単のために、図7(a),(b)では、1つのメモリセルアレイ100内の200セクタのうち16セクタ分のみ示している。消去電圧パルスを1度に印加するセクタ群は、セクタ“0”〜“3”、セクタ“4”〜“7”、セクタ“8”〜“b”、セクタ“c”〜“f”である。つまり、図7(a)に示す16セクタ分に対しては、消去電圧パルスを4回印加する必要がある。各セクタ群に消去電圧パルスを夫々1回ずつ印加した後に、消去ベリファイ回路109によるベリファイ処理を実行し、セクタ“2”、セクタ“5”、セクタ“8”、セクタ“f”内に、消去未達成のメモリセルが検出された場合を想定し、図7(b)に、1回目の消去電圧パルス印加後の状態を示す。ここで、未消去セクタ“2”、“5”、“8”、“f”の情報は、内部レジスタ110の未消去セクタに対応する箇所にフラグ設定され記憶される。ところで、消去未達成のメモリセルが検出されたため、メモリセルアレイ100に対する一括消去を完了させるためには、消去動作を再実行する必要がある。仮に、上記4つのセクタ群の全てに消去電圧パルスを再度印加するとすれば、合計としては、8回の消去電圧パルス印加を必要とするため、消去動作に要する時間が2倍になってしまう。
【0052】
そこで、本発明装置では、2回目以降の消去動作の再実行時の時間短縮を図るために、図7(c)に示すように、消去未達成のセクタのみを、内部レジスタ110に設定された未消去セクタのフラグに基づいてグループ化して、消去電圧パルスを再印加する。つまり、消去動作を再実行するセクタは、セクタ“2”、セクタ“5”、セクタ“8”、セクタ“f”の4つのセクタを新たな1つのセクタ群として再構成して、消去電圧パルスを印加する。これにより、従来の方法では4回に分割した消去動作の再実行が必要であったのに対して、1回の消去動作で終了させることが可能となるため、合計の消去電圧パルスの印加回数としては、最初の実行時の4回と2回目の再実行時の1回の合計5回の印加回数に収めることが可能となる。つまり、消去動作時間を8分の5に短縮化できるため、消去処理の高速化を図ることができる。また、既に消去状態にある消去済セクタに対して消去電圧パルスを再印加することがないので、制約のある第1消去電圧印加回路106の電流供給能力を消去動作に有効に活用することができる。
【0053】
次に、本発明装置における消去動作の再実行を含む一連の消去シーケンスを実現するための処理手順を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0054】
最初に、第1消去電圧印加回路106の電流供給能力を調べるために、電流供給能力検出回路108が電源電圧Vddの検出を行い(S1)、セクタ選択回路105が、その検出結果に応じて同時に消去するセクタ数nを決定する(S2)。セクタ選択回路105が、該セクタ数のセクタ群を選択すると(S3)、選択されたセクタ群のメモリセルに、第1及び第2消去電圧印加回路106,107から消去電圧パルスを印加して消去動作を実行する(S4)。ここで、ステップS3におけるセクタ群の最初の選択では、セクタ群の先頭セクタ番号Nのデフォルト値を1としておき、先頭セクタ番号Nからn個のセクタが同時消去に係るセクタ群として選択される。
【0055】
引き続き、消去ベリファイ回路109が、消去したセクタに対してベリファイ処理を行い(S5)、未消去セクタが存在するか否かの判定を行う(S6)。ここで、未消去セクタが存在する場合は、内部レジスタ110の対応個所に未消去であることを示すフラグを設定する(S7)。次に、選択されたセクタ群に最終セクタが含まれているか否かの判定を行い(S8)、最終セクタが含まれていない場合は、先頭セクタ番号Nに同時消去セクタ数nを加算したN+nを新たな先頭セクタ番号Nとして(S9)、ステップS3〜S8の処理を、選択されたセクタ群に最終セクタが含まれるまで、即ち、全てのセクタが選択されるまで繰り返す。
【0056】
ステップS6及びS7の処理では、未消去セクタの検出とフラグ設定に止まり、該未消去セクタに対する消去動作の再実行は、1回目の消去動作とベリファイ処理の間には行わない。
【0057】
全てのセクタが選択され、1回目の消去動作が終了すると、ステップS8の判定からステップS10以降の2回目以降の消去動作に進む。
【0058】
次に、内部レジスタ110内に設定された未消去フラグの検出を行う(S10)。未消去フラグが検出されない場合は、全てのセクタの消去が完了していると判定して、一連の消去処理を終了する。ここで、未消去フラグが検出された場合は、セクタ選択回路105は、未消去フラグの設定された未消去セクタのみを合成して新たなセクタ群を再構成し(S11)、消去対象のセクタ群を選択すると(S12)、選択されたセクタ群のメモリセルに、第1及び第2消去電圧印加回路106,107から消去電圧パルスを印加して消去動作を実行する(S13)。2回目以降の消去動作においても、同時に消去できるセクタ数は1回目と同様に制限されているため、ステップS11では、ステップS2において決定したセクタ数nを越えない範囲で、セクタ群が再構成される。具体的には、例えば、内部レジスタ110に未消去フラグが設定された未消去セクタをセクタ番号の小さい方から順番に検索して、セクタ数n分だけ選択し、最後のセクタ番号をMとして記憶する。
【0059】
引き続き1回目と同様に、消去ベリファイ回路109が、2回目に消去したセクタに対してベリファイ処理を行い(S14)、未消去セクタが存在するか否かの判定を行う(S15)。ここで、未消去セクタが存在する場合は、内部レジスタ110の対応個所に未消去であることを示すフラグを設定する(S16)。具体的には、内部レジスタ110には、既に未消去フラグが設定されているので、未消去セクタの場合は、そのまま未消去フラグを設定しておき、消去が完了している場合に、設定された未消去フラグをリセットする。次に、選択されたセクタ群に最終の未消去セクタが含まれているか否かの判定を行い(S17)、最終の未消去セクタが含まれていない場合は、現在選択されているセクタ群の最後のセクタ番地Mより1だけ大きいセクタ番号(M+1)を未消去セクタ検索用の先頭セクタ番号として(S18)、ステップS11〜S17の処理を、選択されたセクタ群に最終の未消去セクタが含まれるまで、即ち、全ての未消去セクタが選択されるまで繰り返す。
【0060】
ステップS17の判定で、最終の未消去セクタが含まれていて、全ての未消去セクタに対する2回目の消去動作が終了すると、ステップS10に戻り、再度未消去フラグの検出を行う。未消去フラグが検出されない場合は、全てのセクタの消去が完了していると判定して、一連の消去処理を終了する。ここで、未消去フラグが検出された場合は、3回目以降の消去動作を実行すべく、ステップS11〜S18の処理を、2回目と同様に繰り返し、最終的に全てのセクタの消去が完了して一連のメモリセルアレイ全体の一括消去が完了する。
【0061】
次に、本発明装置の動作について、より具体的に、図9の回路図を参照して説明する。
【0062】
図9には、一括消去可能なメモリセルアレイのうち、複数のサイドウォール型メモリセルM00〜Mi3とそれらを選択するための列選択トランジスタT0〜T4からなるセクタを、セクタ“0”〜セクタ“k”まで示している。各セクタ“0”〜“k”は、セクタ選択トランジスタT9〜Tnによって選択される。また、選択トランジスタT5〜T8により、ノードGL0に選択トランジスタを介して接続する第1ビット線BL0と、ノードGL1に選択トランジスタを介して接続する第2ビット線BL1の一方をビット線として使用し、他方をソース線として使用するように制御する。メモリセルのプログラム動作時または読み出し動作時において選択されたメモリセルの内のビット線に接続する拡散領域がドレイン電極となり、ソース線に接続する拡散領域がソース電極となる。第1ビット線BL0と第2ビット線BL1の何れをビット線とし、何れをソース線とするかは、選択されたメモリセルの2つのメモリ機能体の何れを読み出しまたはプログラムの対象としているかによって変化する。
【0063】
また、選択トランジスタT7及びT8のソースは、センスアンプ302及び昇圧回路301に接続されている。また、これら列選択トランジスタT0〜T4、セクタ選択トランジスタT9〜Tn、及び、選択トランジスタT5〜T8の各制御は全てデコード回路303により制御されている。ここで、昇圧回路301は、図1の第1消去電圧印加回路106に相当し、センスアンプ302は、図1の消去ベリファイ回路109の一部として利用可能である。デコード回路303は、図1の列デコーダ103と行デコーダ104を含む。
【0064】
先ず、メモリセルに対するプログラム動作の制御について説明する。例えば、セクタ“0”のメモリセルM00の左側のメモリ記憶体m0に対してプログラムする場合を想定する。この場合、メモリ記憶体m0側の拡散領域がドレイン電極となり、第1ビット線BL0がビット線として機能し、メモリ記憶体m0と反対側の拡散領域がソース電極となり、第2ビット線BL1がソース線として機能する。
【0065】
先ず、ワード線WL0に所定のプログラム電圧(例えば+5V)を印加した後に、昇圧回路301を起動して5Vを出力する。次に、選択トランジスタT5、T8をオフにして選択トランジスタT6、T7をオンにする。この状態では、ノードGL0が5Vになっており、ノードGL1は0Vになっている。次に、セクタ選択トランジスタT9、T10、及び、列選択トランジスタT2、T0、T1を夫々オンにすると、第1ビット線BL0を介してメモリセルM00のドレイン電極に昇圧回路301からの電圧5Vが印加され、ソース電極は選択トランジスタT6により接地電位0Vに設定される。ワード線WL0に電圧5Vが印加された状態で、ソース・ドレイン間に電位差を印加することにより、チャネルホットエレクトロンが発生し、メモリセルM00の左側のメモリ記憶体m0のみ電子が注入され、メモリ記憶体m0側の拡散領域をドレイン電極、メモリ記憶体m0と反対側の拡散領域をソース電極とした場合の閾値電圧が上昇してメモリ記憶体m0がプログラムされる。尚、メモリセルM00の右側のメモリ記憶体m1をプログラムする場合は、メモリセルM00の各拡散領域のソース・ドレインの関係を反転させ、ノードGL0を0V、ノードGL1を5Vになるように、各トランジスタのオン・オフを制御する。
【0066】
一方、消去動作時には、各ワード線WL0〜WLiに負電圧を印加した後に、選択トランジスタT5、T6をオフにし、その他の列選択トランジスタT0〜T4、セクタ選択トランジスタT7〜10をオンにする。これにより昇圧回路301より出力される5Vがセクタ“0”内の全てのメモリセルM00〜Mi3のソース電極及びドレイン電極に印加され、メモリセルM00〜Mi3の左右両側のメモリ記憶体が全て消去される。
【0067】
ここで、読み出し、プログラム、消去の各動作における各セクタの選択は、セクタ制御信号SEL0〜SELkの信号レベルで制御する。セクタ制御信号SEL0〜SELkは、図9中のセクタ毎に2つずつ設けられているセクタ選択トランジスタT9〜Tnの対応するトランジスタのゲートに入力している。読み出し動作時やプログラム動作時には、セクタ制御信号SEL0〜SELkの信号レベルはアドレス信号のデコード出力によって決定されるが、消去動作時には、任意のセクタを自由に組み合わせて消去セクタ群として認識させる必要がある。特に、上述の未消去セクタが発生した場合の2回目以降の消去動作時に必要となる。このため、デコード回路303に内部レジスタ110(図1参照)の各レジスタの出力信号の内、セクタ選択回路105で選択されたセクタに対応する選択レジスタ信号が入力している。この選択レジスタ信号は、任意のセクタを選択するための制御信号となっており、図1のセクタ選択回路105より出力されている。つまり、セクタ選択回路105がどのセクタを組み合わせて同時に消去するか決定することによって、任意のセクタを選択できるために、上述の図8に示すフローチャートを参照して説明した一連の消去シーケンスを実現することが可能となる。
【0068】
以上、本発明装置、及び、本発明装置の消去動作と消去ベリファイ処理を含む一連の消去シーケンスについて詳細に説明したが、本発明装置のメモリセルアレイの構成は、上記実施形態で例示した構成に限定されるものではない。
【0069】
また、メモリセルとして、1つのメモリセル内に2つのメモリ機能体を備えるマルチビットのサイドウォール型メモリセルを示したが、サイドウォール型メモリセルは、1つのメモリセル内にメモリ機能体が1つの場合であっても構わない。
【0070】
更に、上記実施形態では、メモリセルアレイの各ビット線に消去用の正の高電圧を供給する第1消去電圧印加回路106の電流供給能力を、電源電圧を基に検出する回路構成例を説明したが、当該電流供給能力の検出は、上記実施形態のものに限定されるものではない。また、上記実施形態では、当該電流供給能力を2段階で検出する場合を例示的に説明したが、当該電流供給能力の検出レベルは、2段階に限らず、3段階以上でも構わない。
【0071】
更に、上記実施形態では、本発明装置における消去動作の再実行を含む一連の消去シーケンスを実現するための処理手順として、図8のフローチャートに示す処理手順を例に説明したが、当該処理手順は、図8のフローチャートに示す処理手順に限定されるものではない。例えば、図8のフローチャートに示す処理手順では、セクタ数nのセクタ群に対する1回の消去動作毎に、ベリファイ処理を行っていたが、1回目または2回目以降の消去動作において、各回の対象となる全てのセクタの消去動作が終了してから、纏めてベリファイ処理を行うようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置のメモリセルアレイを構成する各セクタ内におけるメモリセルの配列構成の一部を示す回路図
【図3】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置のサイドウォール型メモリセルの素子構造を示す素子断面図とその表記シンボル図
【図4】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の消去動作時におけるビット線群とワード線群に印加される電圧波形の一例を示すタイミング波形図
【図5】代表的なチャージポンプ回路の回路構成を示す回路図
【図6】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の消去動作時におけるビット線群とワード線群に印加される電圧波形の他の一例を示すタイミング波形図
【図7】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の一連の消去シーケンスにおけるセクタ選択手順を説明する図
【図8】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置における消去動作の再実行を含む一連の消去シーケンスを実現するための処理手順の一例を示すフローチャート
【図9】本発明に係る不揮発性半導体記憶装置のメモリセルアレイとその要部周辺回路を示す回路ブロック図
【符号の説明】
【0073】
1: メモリセル
100: メモリセルアレイ
101: セクタ
101a: 第1セクタ
101b: 第2セクタ
101c: 第3セクタ
101d: 第4セクタ
102: 制御回路
103: 列デコーダ
104: 行デコーダ
105: セクタ選択回路
106: 第1消去電圧印加回路
107: 第2消去電圧印加回路
108: 電流供給能力検出回路
109: 消去ベリファイ回路
110: 内部レジスタ
111、112、113、114: ビット線群
115: 高電源電圧検知信号
120: ワード線群
211: P型半導体基板上
212、213: 拡散領域
214: ゲート絶縁膜
217: ゲート電極
241、243: シリコン酸化膜
242: シリコン窒化膜
261、262: メモリ機能体
270: チャネル領域
271: オフセット領域
301: 昇圧回路
302: センスアンプ
303: デコード回路
500: チャージポンプ回路
501: クロック回路
BL0: 第1ビット線
BL1: 第2ビット線
GL0: ノード
GL1: ノード
m0、m1: メモリ記憶体
M00〜Mi3: サイドウォール型メモリセル
SEL0〜SELk: セクタ制御信号
T0〜T4: 選択トランジスタ
T9〜Tn: セクタ選択トランジスタ
T5〜T8: 選択トランジスタ
Vdd: 電源電圧レベル
WL: ワード線
WL0〜WLi: ワード線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極下に配置されたチャネル領域と、前記チャネル領域の両側に配置され、前記チャネル領域と逆導電型を有する拡散領域と、前記ゲート電極の両側または一方側に形成された電荷を保持する機能を有するメモリ機能体からなるサイドウォール型メモリセルを行方向及び列方向にマトリクス状に複数配列してなるメモリセルアレイを複数備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、
前記メモリセルアレイが、複数のセクタに分割して構成され、
前記メモリセルアレイの1つが一括消去される場合に、一括消去の対象となる前記メモリセルアレイを構成する前記複数のセクタの中から、複数回に分けて同時に所定数または前記所定数以下の前記セクタを順次選択するセクタ選択回路と、
前記一括消去の実行時に、前記セクタ選択手段が同時に選択した前記セクタに対し、消去用の所定電圧を印加する消去電圧印加回路を備えることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記消去用の所定電圧を発生する消去電圧発生回路の電流供給能力を検出する電流供給能力検出回路を備え、
前記セクタ選択回路は、前記電流供給能力検出回路が検出した前記電流供給能力に応じて、同時に選択される前記セクタの最大数が可変に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記電流供給能力検出回路は、前記消去電圧発生回路に供給される電源電圧に基づいて前記電流供給能力を検出することを特徴とする請求項2に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記セクタ選択回路は、アドレス信号または内部レジスタの出力信号に応じて同時に選択する前記セクタを決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記メモリセルアレイが、複数のセクタに均等に分割して構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記消去電圧印加回路によって前記消去用の所定電圧を印加された前記セクタに対して各別に前記セクタ内の全ての前記メモリセルが消去されたか否かを検証するベリファイ処理を実行する消去ベリファイ回路を備え、
前記ベリファイ処理で前記セクタ内の1以上の前記メモリセルが消去されていない未消去セクタが1以上検出された場合に、前記セクタ選択回路が、検出された前記未消去セクタを、同時に前記所定数を上限として順次選択し、前記消去電圧印加回路が、前記セクタ選択手段が同時に選択した前記セクタに対し、前記消去用の所定電圧を再度印加することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
前記消去ベリファイ回路は、前記消去電圧印加回路によって前記消去用の所定電圧を再度印加された前記セクタに対して各別に前記ベリファイ処理を実行することを特徴とする請求項6に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項8】
前記セクタ毎に前記ベリファイ処理の結果を記憶する内部レジスタを備え、
前記消去ベリファイ回路は、前記セクタ毎の前記ベリファイ処理の結果を前記内部レジスタの対応個所に夫々記憶し、
前記セクタ選択手段は、前記内部レジスタの出力に基づいて前記未消去セクタを順次選択することを特徴とする請求項6または7に記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−31821(P2006−31821A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209353(P2004−209353)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】