説明

内燃機関の制御装置

【課題】内燃機関の制御装置において、液体がコンプレッサに流入することに起因するコンプレッサの損傷を抑制する技術を提供する。
【解決手段】ターボチャージャと、低圧EGR装置と、液量検出センサと、を備え、液量検出センサが検出する液量が所定量以上(S103−Yes)となりキャビテーション発生するおそれのある場合に、低圧EGR装置を用いて低圧EGRガスを還流しているときには低圧EGR装置を用いて還流させる低圧EGRガスを減量する(S105)と共に、低圧EGR装置を用いて低圧EGRガスを還流しているか否かに応じて異なる制御でターボチャージャの過給圧を低減する(S106,S108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧EGR装置及びインタークーラを備え、インタークーラの下部と触媒下流の排気通路とを凝縮水排出通路で接続し、凝縮水排出通路を用いてインタークーラ内に生じる凝縮水を排気通路へ排出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。EGR装置に凝縮水捕集器を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。吸気がコンプレッサの上流側に戻されるとき、気液分離器によって吸気中の水滴分を分離することで、吸気中の水滴分がコンプレッサの上流側に戻ってコンプレッサに付着することを防止し、コンプレッサを腐食、損傷させることを防止する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−303146号公報
【特許文献2】特表2004−519578号公報
【特許文献3】特開2007−162667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで内燃機関ではコンプレッサより上流の吸気通路に液体が溜まる場合がある。この場合に、溜まった液体がコンプレッサに流入すると、液体内の気泡の発生や消滅によって衝撃が発生し、コンプレッサを損傷させるおそれがある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関の制御装置において、液体がコンプレッサに流入することに起因するコンプレッサの損傷を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関の排気通路に配置されたタービン及び前記内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサを有するターボチャージャと、
前記タービンより下流の前記排気通路から排気の一部を低圧EGRガスとして取り込み、前記コンプレッサより上流の前記吸気通路へ当該低圧EGRガスを還流させる低圧EGR装置と、
前記低圧EGR装置が低圧EGRガスを還流する部位より下流且つ前記コンプレッサより上流の前記吸気通路に配置され当該吸気通路内の液量を検出する液量検出装置と、
前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記ターボチャージャの過給圧を低減する過給圧低減制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置である。
【0006】
内燃機関ではコンプレッサより上流の吸気通路に液体が溜まる場合がある。この場合に、溜まった液体がコンプレッサに流入すると、液体内の気泡の発生や消滅によって衝撃が発生し、コンプレッサを損傷させるおそれがある。
【0007】
そこで本発明では、液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、ターボチャージャの過給圧を低減するようにした。
【0008】
ここで所定量とは、これ以上の液量の液体がコンプレッサに流入すると、液体内の気泡
の発生や消滅によって衝撃が発生し、コンプレッサを損傷させるおそれが生じる閾値の液量である。
【0009】
本発明によると、液量が所定量以上の場合にターボチャージャの過給圧を低減するので、コンプレッサの高圧場が低圧化され、高圧場で液体内の気泡が消滅することに伴う衝撃の発生を防止できる。したがって液体がコンプレッサに流入しても、液体内の気泡の消滅による衝撃の発生を防止し、コンプレッサの損傷を抑制できる。
【0010】
前記ターボチャージャ内に設けられ前記タービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構を備え、前記過給圧低減制御手段は、前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記低圧EGR装置を用いて低圧EGRガスを還流しているときには、前記可変ノズル機構のノズル通路断面積を大きくして前記ターボチャージャの過給圧を低減するとよい。
【0011】
本発明によると、可変ノズル機構のノズル通路断面積を大きくすることで、可変ノズル機構を通過する排気の流速が低減されてタービン回転数が低減し、ターボチャージャの過給圧を低減できる。
【0012】
前記過給圧低減制御手段は、前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記低圧EGR装置を用いて低圧EGRガスを還流していないときには、前記内燃機関への燃料噴射量を低減して前記ターボチャージャの過給圧を低減するとよい。
【0013】
本発明によると、内燃機関への燃料噴射量を低減することで、内燃機関から排出される排気エネルギが低減されてタービン回転数が低減し、ターボチャージャの過給圧を低減できる。
【0014】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関の排気通路に配置されたタービン及び前記内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサを有するターボチャージャと、
前記タービンより下流の前記排気通路から排気の一部を低圧EGRガスとして取り込み、前記コンプレッサより上流の前記吸気通路へ当該低圧EGRガスを還流させる低圧EGR装置と、
前記低圧EGR装置が低圧EGRガスを還流する部位より下流且つ前記コンプレッサより上流の前記吸気通路に配置され当該吸気通路内の液量を検出する液量検出装置と、
前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記低圧EGR装置を用いて還流させる低圧EGRガスを減量する低圧EGRガス減量制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置である。
【0015】
内燃機関ではコンプレッサより上流の吸気通路に液体が溜まる場合がある。この場合に、溜まった液体がコンプレッサに流入すると、液体内の気泡の発生や消滅によって衝撃が発生し、コンプレッサを損傷させるおそれがある。
【0016】
そこで本発明では、液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、低圧EGR装置を用いて還流させる低圧EGRガスを減量するようにした。
【0017】
本発明によると、液量が所定量以上の場合に低圧EGR装置を用いて還流させる低圧EGRガスを減量するので、低圧EGRガスから凝縮される液体としての凝縮水が減量され、凝縮水がコンプレッサに流入することを低減できる。したがって少ない凝縮水内では気泡の発生や消滅が低減できるので、凝縮水内の気泡の発生や消滅による衝撃の発生を抑制し、コンプレッサの損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、内燃機関の制御装置において、液体がコンプレッサに流入することに起因するコンプレッサの損傷を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0020】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る内燃機関の制御装置を適用する内燃機関及びその吸気系・排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4ストロークサイクル・ディーゼル内燃機関である。各気筒2内には、燃料を噴射する燃料噴射弁3が配置されている。内燃機関1は、車両に搭載されている。内燃機関1には、吸気通路4及び排気通路5が接続されている。
【0021】
内燃機関1に接続された吸気通路4の途中には、排気のエネルギを駆動源として作動するターボチャージャ6のコンプレッサ6aが配置されている。コンプレッサ6aよりも下流の吸気通路4には、吸気と外気とで熱交換を行うインタークーラ7が配置されている。これら吸気通路4及びそれに配置された機器が内燃機関1に吸気を取り入れるための吸気系を構成している。
【0022】
一方、内燃機関1に接続された排気通路5の途中には、ターボチャージャ6のタービン6bが配置されている。タービン6bは排気通路5を流れる排気によって駆動され、コンプレッサ6aは駆動されたタービン6bと共に回転して吸気通路4を流れる吸気を過給する。タービン6bを収容するタービン室にタービン6bの全周を囲むように複数の可変ノズル8が設けられ、これらの可変ノズル8をそれぞれ回動させることで、可変ノズル8間に形成されるノズル通路断面積を変化させている。可変ノズル8を回動することによって、ノズル通路断面積を小さくすると、排気流量の少ない内燃機関1の低機関回転数域での過給圧を高めることができる。一方、可変ノズル8を回動することによって、ノズル通路断面積を大きくすると、排気流量の多い内燃機関1の高機関回転数域での過給圧を高めることができる。このようにノズル通路断面積を変化させる可変ノズル8及びこれを駆動するアクチュエータが可変ノズル機構を構成している。
【0023】
タービン6bよりも下流の排気通路5には、排気浄化装置9が配置されている。排気浄化装置9は、酸化触媒と当該酸化触媒の後段に配置されたディーゼルパティキュレートフィルタ(以下単にフィルタという)とを有して構成される。フィルタには吸蔵還元型NOx触媒(以下単にNOx触媒という)が担持されている。これら排気通路5及びそれに配置された機器が内燃機関1から排気を排出させるための排気系を構成している。
【0024】
そして、内燃機関1には、排気通路5内を流通する排気の一部を低圧で吸気通路4へ還流(再循環)させる低圧EGR装置30が備えられている。本実施例では、低圧EGR装置30によって還流される排気を低圧EGRガスと称している。
【0025】
低圧EGR装置30は、低圧EGRガスが流通する低圧EGR通路31と、低圧EGR通路31を流通する低圧EGRガスの流量を調節する低圧EGR弁32と、低圧EGRガスを冷却する低圧EGRクーラ33と、を有する。
【0026】
低圧EGR通路31は、排気浄化装置9よりも下流側の排気通路5と、コンプレッサ6aよりも上流側の吸気通路4とを接続している。この低圧EGR通路31を通って、排気が低圧EGRガスとして低圧で内燃機関1へ送り込まれる。
【0027】
低圧EGR弁32は、低圧EGRクーラ33よりも下流の低圧EGR通路31に配置され、低圧EGR通路31の通路断面積を調整することにより、該低圧EGR通路31を流れる低圧EGRガスの流量を調節する。この低圧EGR弁32は、電動アクチュエータにより開閉される。なお、低圧EGRガス流量の調節は、低圧EGR弁32の開度の調整以外の方法によって行うこともできる。例えば、コンプレッサ6aよりも上流の吸気通路4に配置される不図示のスロットル弁の開度を調整することにより、或いは排気浄化装置9よりも下流の排気通路5に配置される不図示の排気絞り弁の開度を調節することにより、低圧EGR通路31の上流と下流との差圧を変化させ、これにより低圧EGRガスの流量を調節することができる。
【0028】
低圧EGRクーラ33は、低圧EGR通路31の途中に配置される。低圧EGRクーラ33は、低圧EGRクーラ33内を通過する低圧EGRガスと機関冷却水とで熱交換をして、低圧EGRガスの温度を低下させる。
【0029】
低圧EGR装置30が低圧EGRガスを還流する部位、すなわち低圧EGR通路31が吸気通路4に接続された部位より下流、且つコンプレッサ6aより上流側の吸気通路4には、吸気通路4内の液量、すなわち吸気通路4内に存在する液体の量を検出する液量検出センサ10が配置されている。本実施例の液量検出センサ10が本発明の液量検出装置に相当する。
【0030】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU11が併設されている。ECU11は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。
【0031】
ECU11には、液量検出センサ10、クランクポジションセンサ12、及びアクセルポジションセンサ13が電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU11に入力されるようになっている。一方、ECU11には、燃料噴射弁3、並びに可変ノズル8及び低圧EGR弁32のアクチュエータが電気配線を介して接続されており、該ECU11によりこれらの機器が制御される。
【0032】
ECU11は、クランクポジションセンサ12やアクセルポジションセンサ13等の出力信号を受けて内燃機関1の運転状態を判別し、判別された機関運転状態に基づいて内燃機関1や上記機器を電気的に制御する。
【0033】
ところで内燃機関1に低圧EGR装置30を備える場合には、低圧EGRガス中の水分が低圧EGR装置30内の低圧EGRクーラ33や吸気通路4やインタークーラ7で冷却されて凝縮し凝縮水となる。このように発生した凝縮水によって低圧EGR装置30や吸気通路4等に腐食等が発生するおそれがある。
【0034】
このため従来では、インタークーラ7内や低圧EGRクーラ33内で凝縮水を捕集する対策を施している。しかしこれらの対策では、吸気や低圧EGRガスの水分を完全に除去することはできないものであり、また対策のために部品点数が増加してしまう。
【0035】
しかも低圧EGR装置30を備える場合には、コンプレッサ6aより上流の吸気通路4で凝縮水が溜まる。この溜まった凝縮水がコンプレッサ6aに流入すると、凝縮水内の気泡の発生や消滅によって衝撃が発生し、コンプレッサ6aを損傷させるおそれがある。
【0036】
さらに低圧EGRガス中の水分が凝縮する凝縮水以外にも、新気中の水分が凝縮する凝縮水、外部からの浸水、過多なブローバイオイル等の液体がコンプレッサ6aに流入する
場合もある。これらの場合の液体もコンプレッサ6aに流入すると、液体内の気泡の発生や消滅によって衝撃が発生し、コンプレッサ6aを損傷させるおそれがある。
【0037】
上記した液体内の気泡の発生や消滅の現象をキャビテーションという。以下にキャビテーション発生及びそれに伴う衝撃の原理を説明する。
【0038】
図2(a)は、コンプレッサ6aのコンプレッサインペラ6a1の翼の一部が液体中に浸かる場合である。図2(a)の場合には、コンプレッサインペラ6a1の翼周辺で液体の圧力低下が起こり、液体の圧力が飽和蒸気圧よりも低下した時点で気泡が発生する。この気泡が発生するときに衝撃を伴う。
【0039】
図2(b)は、コンプレッサ6aのコンプレッサインペラ6a1の翼の一部が液体中に浸かり、上記図2(a)のようにして発生した気泡や、コンプレッサインペラ6a1の翼によって気相と液相とを攪拌することによって発生する衝撃を伴わない気泡が存在する場合である。図2(b)の場合には、気泡が下流のコンプレッサインペラ背面に移動すると、コンプレッサ6aの高圧場、すなわちコンプレッサインペラ背面での液体の圧力上昇領域で、破線で示すように気泡が消滅する。この気泡が消滅するときに衝撃を伴う。
【0040】
以上のようにキャビテーション発生に伴い衝撃が発生し、コンプレッサ6a、特にはコンプレッサインペラ6a1を損傷させるおそれがある。
【0041】
そこで本実施例では、液量検出センサ10が検出する液量が所定量以上の場合に、低圧EGR装置30を用いて低圧EGRガスを還流しているときには、低圧EGR弁32を閉じ側へ制御して低圧EGR装置30を用いて還流させる低圧EGRガスを減量すると共に、可変ノズル8を回動してノズル通路断面積を大きくしてターボチャージャ6の過給圧を低減するようにした。
【0042】
ここで本実施例では、可変ノズル8を回動してノズル通路断面積を大きくすること(VN開)で、図3に示すように斜線領域であるキャビテーション発生領域のA状態から非キャビテーション発生領域のB状態へ遷移し、ノズル通路断面積を通過する排気の流速が低減されてタービン回転数が低減し、ターボチャージャ6の過給圧を低減する。
【0043】
一方、液量検出センサ10が検出する液量が所定量以上の場合に、低圧EGR装置30を用いて低圧EGRガスを還流していないときには、燃料噴射弁3から内燃機関1への燃料噴射量を低減してターボチャージャ6の過給圧を低減するようにした。
【0044】
ここで本実施例では、内燃機関1の気筒2への燃料噴射弁3からの燃料噴射量を低減することで、図4に示すようにC状態から機関回転数は維持したまま燃料噴射量が減るD状態へ遷移し、内燃機関1から排出される排気エネルギが低減されてタービン回転数が低減し、ターボチャージャ6の過給圧を低減する。
【0045】
ここで所定量とは、これ以上の液量の液体がコンプレッサ6aに流入すると、キャビテーション発生に伴う衝撃が発生し、コンプレッサ6a(コンプレッサインペラ6a1)を損傷させるおそれが生じる閾値の液量である。
【0046】
本実施例によると、液量検出センサ10が検出する液量が所定量以上の場合にターボチャージャ6の過給圧を低減するので、コンプレッサ6aの高圧場(コンプレッサインペラ背面での液体の圧力上昇領域)が低圧化され、図2(b)のようなキャビテーションを回避して高圧場で液体内の気泡が消滅することに伴う衝撃の発生を防止できる。したがって液体がコンプレッサ6aに流入しても、液体内の気泡の消滅による衝撃の発生を防止し、
コンプレッサ6a(コンプレッサインペラ6a1)の損傷を抑制でき、コンプレッサ6aの耐久性及び信頼性を向上できる。
【0047】
しかも本実施例によると、液量検出センサ10が検出する液量が所定量以上の場合に低圧EGR装置30を用いて低圧EGRガスを還流しているときには、低圧EGR装置30を用いて還流させる低圧EGRガスを減量するので、低圧EGRガスから凝縮される液体としての凝縮水が減量され、凝縮水がコンプレッサ6aに流入することを低減できる。したがって少ない凝縮水内では図2(a)及び(b)のようなキャビテーション発生が低減できるので、凝縮水内のキャビテーション発生に伴う衝撃の発生を抑制し、コンプレッサ6a(コンプレッサインペラ6a1)の損傷を抑制できる。またこのとき、コンプレッサ6aを含む吸気系の部品に凝縮水が過度に接触することを抑制でき、吸気系部品の信頼性を向上できる。
【0048】
次に、本実施例によるキャビテーション回避制御ルーチンについて説明する。図5は、本実施例によるキャビテーション回避制御ルーチンを示したフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返し実行される。本ルーチンを実行するECU11が本発明の過給圧低減制御手段及び低圧EGRガス減量制御手段に相当する。
【0049】
ステップS101では、ECU11は、各種センサの出力値から運転状態を検出する。具体的には、運転状態として、機関回転数、燃料噴射量、吸気温度、低圧EGRガス量、及び低圧EGR温度等を検出する。
【0050】
ステップS102では、ECU11は、液量検出センサ10を用いてコンプレッサ6aの上流側の吸気通路4内の液量を検出する。
【0051】
ステップS103では、ECU11は、ステップS102で液量検出センサ10が検出した液量が所定量以上か否かを判別する。なおステップS103の判別には、例えば排気温度、液温、大気温度等の液量以外のものも判断材料にして総合判断してもよい。ここで所定量は、予め実験や検証等によって定められる。
【0052】
ステップS103において液量が所定量よりも少ないと否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。ステップS103において液量が所定量以上であると肯定判定された場合には、ステップS104へ移行する。
【0053】
ステップS104では、ECU11は、低圧EGR装置30を用いて低圧EGRガスを還流しているか否かを判別する。具体的には、ステップS101で検出した運転状態のうちの低圧EGRガス量で判断する。
【0054】
ステップS104において低圧EGRガスを還流していると肯定判定された場合には、ステップS105へ移行する。ステップS104において低圧EGRガスを還流していないと否定判定された場合には、ステップS107へ移行する。
【0055】
ステップS105では、ECU11は、低圧EGR弁32を閉じ側に制御する。具体的な低圧EGR弁32の閉じ側への制御は、ステップS101で検出した運転状態に基づき算出される低圧EGRガスの減量量に応じる。本ステップにより、低圧EGR装置30を用いて還流させる低圧EGRガスを減量する。
【0056】
ステップS106では、ECU11は、可変ノズル8を回動してノズル通路断面積を大きくする(VN開)。ここではノズル通路断面積を最大とするように制御する。本ステップにより、ターボチャージャ6の過給圧を低減する。
【0057】
ここで液量検出センサ10が検出する液量が所定量以上の場合に、低圧EGR装置30を用いて低圧EGRガスを還流しているときに本ステップの処理を行うのは、液量が所定量以上となったのが低圧EGRガスに起因していると判断できるためである。よって低圧EGRガスを減量する他は内燃機関1の運転に支障が無いので、可変ノズル8の回動制御を行っている。
【0058】
一方ステップS107では、ECU11は、例えば警告灯を点灯させる等して、新気中の水分が凝縮する凝縮水、外部からの浸水、過多なブローバイオイル等の液体が多量に存在することを報知する。
【0059】
ステップS108では、ECU11は、燃料噴射弁3から噴射させる燃料噴射量を低減し、アクセル開度や機関負荷を制限する退避走行を行う。ここで低減される燃料噴射量は、例えば内燃機関1が運転可能な必要最低限の量に制限される。
【0060】
ここで液量検出センサ10が検出する液量が所定量以上の場合に、低圧EGR装置30を用いて低圧EGRガスを還流していないときに本ステップの処理を行うのは、液量が所定量以上となったのが低圧EGRガスに起因していないと判断できるためである。よって新気中の水分が凝縮して凝縮水が発生していたり、外部から浸水していたり、過多なブローバイオイルが発生していたりする等、内燃機関1の運転に支障が生じるので、燃料噴射弁3からの燃料噴射量を低減している。
【0061】
以上説明した本ルーチンによれば、コンプレッサ6aの上流の吸気通路4の液量を検出することにより、キャビテーション発生するおそれの有無が分かる。キャビテーション発生するおそれがある場合もそれが低圧EGRガスに起因するものかどうか分かる。このためキャビテーション発生するおそれが低圧EGRガスに起因するものかどうかで、夫々に合わせて制御を変更できる。したがってキャビテーション発生を可及的に回避できる。
【0062】
本発明に係る内燃機関の制御装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1に係る内燃機関及びその吸気系・排気系の概略構成を示す図。
【図2】キャビテーション発生状態を示す図であり、(a)が気泡発生時、(b)が気泡消滅時である。
【図3】実施例1に係る可変ノズルを回動してノズル通路断面積を大きくしターボチャージャの過給圧を低減する様子を示す図。
【図4】実施例1に係る燃料噴射弁からの燃料噴射量を低減しターボチャージャの過給圧を低減する様子を示す図。
【図5】実施例1に係るキャビテーション回避制御ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
1 内燃機関
2 気筒
3 燃料噴射弁
4 吸気通路
5 排気通路
6 ターボチャージャ
6a コンプレッサ
6a1 コンプレッサインペラ
6b タービン
7 インタークーラ
8 可変ノズル
9 排気浄化装置
10 液量検出センサ
11 ECU
12 クランクポジションセンサ
13 アクセルポジションセンサ
30 低圧EGR装置
31 低圧EGR通路
32 低圧EGR弁
33 低圧EGRクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されたタービン及び前記内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサを有するターボチャージャと、
前記タービンより下流の前記排気通路から排気の一部を低圧EGRガスとして取り込み、前記コンプレッサより上流の前記吸気通路へ当該低圧EGRガスを還流させる低圧EGR装置と、
前記低圧EGR装置が低圧EGRガスを還流する部位より下流且つ前記コンプレッサより上流の前記吸気通路に配置され当該吸気通路内の液量を検出する液量検出装置と、
前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記ターボチャージャの過給圧を低減する過給圧低減制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記ターボチャージャ内に設けられ前記タービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構を備え、
前記過給圧低減制御手段は、前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記低圧EGR装置を用いて低圧EGRガスを還流しているときには、前記可変ノズル機構のノズル通路断面積を大きくして前記ターボチャージャの過給圧を低減することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記過給圧低減制御手段は、前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記低圧EGR装置を用いて低圧EGRガスを還流していないときには、前記内燃機関への燃料噴射量を低減して前記ターボチャージャの過給圧を低減することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
内燃機関の排気通路に配置されたタービン及び前記内燃機関の吸気通路に配置されたコンプレッサを有するターボチャージャと、
前記タービンより下流の前記排気通路から排気の一部を低圧EGRガスとして取り込み、前記コンプレッサより上流の前記吸気通路へ当該低圧EGRガスを還流させる低圧EGR装置と、
前記低圧EGR装置が低圧EGRガスを還流する部位より下流且つ前記コンプレッサより上流の前記吸気通路に配置され当該吸気通路内の液量を検出する液量検出装置と、
前記液量検出装置が検出する液量が所定量以上の場合に、前記低圧EGR装置を用いて還流させる低圧EGRガスを減量する低圧EGRガス減量制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−209816(P2009−209816A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54666(P2008−54666)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】