説明

内燃機関の制御装置

【課題】内燃機関の制御装置において、始動直後の触媒早期暖機制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制可能とする。
【解決手段】エンジン11の冷間始動時に、ISC18を開放すると共に、点火プラグ31の点火時期を遅角することで、三元触媒21の暖機制御を実行し、この暖機制御が完了し、ISC18の開度を徐々に閉止すると共に、点火時期を進角して通常のアイドル制御に戻すとき、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて燃料噴射量を補正、つまり、燃料補正量を増加している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に直接燃料を噴射可能な燃料噴射弁を有すると共に、排気ガスのエネルギにより吸気を加圧して過給可能な過給機を有する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、冷間始動時に、排気系に設けられた触媒を早期に暖機して活性させるために、一般に、触媒早期暖機制御を実施している。この触媒早期暖機制御では、内燃機関の冷間始動時に、点火時期を遅角して排気ガス温度を上昇させると共に、吸気系に設けられたアイドルスピードコントロールバルブの開度を通常のアイドル制御時より大きくし、吸入空気量を増量させてアイドル回転速度を上昇させることで、冷間始動時の点火時期遅角によりアイドル回転が不安定になるのを防止しながら、排気熱量を増加させて触媒の暖機を促進するようにしている。
【0003】
そして、触媒の暖機(活性化)が完了した時点で、点火時期とアイドルスピードコントロールバルブの開度を通常のアイドル制御時の目標値に速やかに切り換えている。しかし、触媒早期暖機制御時に点火時期の遅角量を大きくすると、触媒早期暖機制御から通常アイドル制御に切り換えるときの点火時期の進角量が大きくなるため、トルク上昇によりエンジン回転数が急激に上昇してショックが発生してしまう。また、触媒早期暖機制御が実施される冷間始動時には、吸気管内や筒内に燃料が付着しているため、触媒早期暖機制御から通常アイドル制御に切り換えたときに、エンジン回転数が上昇して吸気流速が速くなると、付着燃料が吸気と共に筒内に流れ込み、空燃比がリッチとなったり、燃料の一部が未燃のまま排出されて排気エミッションが悪化してしまう。
【0004】
そこで、例えば、下記特許文献1に記載された内燃機関の制御装置では、内燃機関の冷間始動時に、触媒早期暖機制御を実施して点火時期を遅角させると共に、アイドルスピードコントロールバルブの開度を通常よりも大きくし、この触媒早期暖機制御中に、触媒の暖機が完了したときには、アイドルスピードコントロールバルブの開度を徐々に小さくして吸入空気量をゆっくりと減少させながら、その吸入空気の減少スピードに合わせて点火時期を徐々に進角させている。従って、点火時期の進角によるエンジン回転数の上昇を吸入空気量の減少によって抑え込みながら、アイドルスピードコントロールバルブの開度と点火時期を通常制御時の目標値に向かって徐々に変化させ、触媒早期暖機制御から通常制御に切り換えることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−266688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料を吸気ポートに噴射する内燃機関では、上述したように、触媒の暖機が完了したときに、アイドルスピードコントロールバルブの開度を徐々に小さくして吸入空気量をゆっくりと減少させながら、その吸入空気の減少スピードに合わせて点火時期を徐々に進角させることで、点火時期の進角によるエンジン回転数の上昇を吸入空気量の減少によって抑制することができる。ところが、燃料を直接筒内に噴射する内燃機関では、吸気管内には燃料が付着していないため、筒内は一時的にリーン状態となり、燃焼が不安定となってしまう。また、ターボ過給機及びインタークーラが搭載された内燃機関では、吸気系の容量が大きくなり、筒内のリーン化傾向が大きくなる。そして、ターボ回転数が上昇すると、筒内に入る空気量が増加し、筒内のリーン度合が更に大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、始動直後の触媒早期暖機制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制可能とする内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の内燃機関の制御装置は、燃焼室と、該燃焼室に連通する吸気通路及び排気通路と、前記吸気通路及び前記排気通路に設けられる吸気弁及び排気弁と、前記排気通路の排気ガスにより前記吸気通路の空気を加圧する過給機と、該過給機の回転数を検出する過給機回転数検出手段と、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射可能な第1燃料噴射弁と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記第1燃料噴射弁からの燃料噴射量を設定する燃料噴射量設定手段と、前記燃焼室の混合気に着火可能な点火プラグと、前記内燃機関の運転状態に応じて前記点火プラグによる点火時期を設定する点火時期設定手段とを備える内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記過給機の回転数に基づいて燃料噴射量を補正することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の内燃機関の制御装置では、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記過給機の回転数の増加に伴って燃料噴射量を増加することを特徴としている。
【0010】
本発明の内燃機関の制御装置では、前記内燃機関の回転数を検出する内燃機関回転数検出手段と、前記内燃機関の温度を検出する内燃機関温度検出手段とを設け、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記過給機の回転数と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関の温度に基づいて燃料噴射量を補正することを特徴としている。
【0011】
本発明の内燃機関の制御装置では、前記排気通路に前記過給機のタービンを迂回する排気バイパス通路が設けられると共に、該排気バイパス通路を開閉する排気制御弁が設けられ、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記排気制御弁により前記排気バイパス通路を閉止すると共に、前記燃料噴射量設定手段は、燃料噴射量を減少することを特徴としている。
【0012】
本発明の内燃機関の制御装置では、前記排気通路に前記過給機のタービンを迂回する排気バイパス通路が設けられると共に、該排気バイパス通路を開閉すると共に開度を調整可能な排気制御弁が設けられ、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記排気バイパス通路を通過する排気ガスの流量比に応じて前記排気制御弁の閉止速度を設定し、この閉止速度により前記排気制御弁を作動して前記排気バイパス通路を閉止することを特徴としている。
【0013】
本発明の内燃機関の制御装置では、前記内燃機関の吸気ポートに燃料を噴射可能な第2燃料噴射弁と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記第1燃料噴射弁と前記第2燃料噴射弁との燃料噴射割合を設定する燃料噴射割合設定手段とを設け、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記燃料噴射割合に応じて燃料噴射量を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の始動後、点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、燃料噴射量設定手段は、内燃機関の運転状態に加えて過給機の回転数に基づいて燃料噴射量を補正している。従って、内燃機関の始動直後の触媒早期暖機制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る内燃機関の制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の制御装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャート、図3は、実施例1の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。
【0017】
実施例1の内燃機関の制御装置において、図1に示すように、エンジン(内燃機関)11は、図示しないが、シリンダブロック上にシリンダヘッドが締結され、内部に形成された複数のシリンダボアにピストンがそれぞれ上下移動自在に嵌合し、この各ピストンがクランクケースに回転自在に支持されたクランクシャフトとコネクティングロッドを介してそれぞれ連結されて構成されている。
【0018】
複数の燃焼室は、シリンダブロックにおけるシリンダボアの壁面とシリンダヘッドの下面とピストンの頂面により構成されており、各燃焼室の上部、つまり、シリンダヘッドの下面に吸気ポート及び排気ポートが対向して形成されており、吸気弁及び排気弁により開閉自在となっている。
【0019】
吸気ポートには、吸気マニホールド12を介して吸気管13が連結されており、この吸気管13の空気取入口にはエアクリーナ14が取付けられている。そして、この吸気管13には、エアクリーナ14より下流側にスロットル弁15を有する電子スロットル装置16が設けられている。また、吸気管13には、スロットル弁15を迂回する吸気バイパス通路17が設けられ、この吸気バイパス通路17にアイドルスピードコントロール(ISC)バルブ(アイドル制御弁)18が設けられている。
【0020】
排気ポートには、排気マニホールド19を介して排気管20が連結されており、この排気管20には排気ガス中に含まれる有害物質を浄化処理する三元触媒21が装着されている。この三元触媒21は、空燃比(排気空燃比)がストイキのときに排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxを酸化還元反応により同時に浄化処理するものである。
【0021】
そして、このエンジン11には、排気ガスのエネルギによりタービンを回し、これに直結されたコンプレッサにより空気を燃焼室に押し込むターボ過給機22が設けられている。このターボ過給機22は、吸気管13に設けられたコンプレッサ23と排気管20に設けられたタービン24とが連結軸25により一体に連結されて構成されている。そして、このターボ過給機22におけるコンプレッサ23の下流側における吸気管13には、このコンプレッサ23により圧縮して温度上昇した吸入空気を冷却するインタークーラ26が設けられている。一方、排気管20には、ターボ過給機22におけるタービン24を迂回する排気バイパス通路27が設けられると共に、この排気バイパス通路27にウエストゲート弁(WGV)28を有するウエストゲート装置29が設けられている。
【0022】
シリンダヘッドには、燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタ(第1燃料噴射弁)30が装着されており、このインジェクタ30は、各気筒に対応して装着され、図示しないデリバリパイプに連結され、このデリバリパイプには、高圧燃料ポンプ及び低圧燃料ポンプを介して燃料タンクに連結されている。また、シリンダヘッドには、各燃焼室の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ31が装着されている。
【0023】
車両には、電子制御ユニット(ECU)41が搭載されており、このECU41は、インジェクタ30の燃料噴射タイミングや点火プラグ31の点火時期などを制御可能となっており、検出した吸入空気量、過給圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
【0024】
即ち、吸気管13の上流側にはエアフローセンサ42が装着され、計測した吸入空気量をECU41に出力している。また、吸気管13にて、スロットル弁15より上流側に過給圧センサ43が装着され、計測した過給圧をECU41に出力している。電子スロットル装置16にはスロットルポジションセンサ44が設けられ、アクセルペダルにはアクセルポジションセンサ45が設けられ、現在のスロットル開度とアクセル開度をECU41に出力している。また、クランクシャフトにはクランク角センサ46が設けられ、検出したクランク角度をECU41に出力し、ECU41はクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出する。また、シリンダブロックには水温センサ47が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU41に出力している。また、ターボ過給機22におけるタービン24の回転数を検出するターボ回転数センサ48が設けられており、検出したターボ回転数ECU41に出力している。
【0025】
また、排気管20における三元触媒21より上流側に、空燃比(A/F)センサ49が設けられている。このA/Fセンサ49は、燃焼室から排気管20に排気された排気ガスの排気空燃比(酸素量)を検出し、検出した排気空燃比をECU41に出力している。ECU41は、A/Fセンサ49が検出した排気空燃比をフィードバックし、エンジン運転状態に応じて設定された目標空燃比と比較することで、燃料噴射量を補正している。
【0026】
ところで、エンジンの冷間始動時には、三元触媒21を早期に暖機して活性させるために触媒早期暖機制御を実施している。この触媒早期暖機制御では、エンジンの冷間始動時に、点火プラグ31による点火時期を遅角して排気ガス温度を上昇させると共に、ISCバルブ18の開度を通常のアイドル制御時より大きくし、吸入空気量を増量させてアイドル回転速度を上昇させることで、点火時期遅角によりアイドル回転が不安定になるのを防止しながら、排気ガスの熱量を増加させて三元触媒21の暖機を促進している。
【0027】
そして、三元触媒21の暖機(活性化)が完了すると、点火時期とISCバルブ18の開度を通常のアイドル制御時の目標値に速やかに切り換えている。このとき、ISCバルブ18の開度を徐々に小さくして吸入空気量をゆっくりと減少させながら、その吸入空気の減少スピードに合わせて点火時期を徐々に進角させている。
【0028】
ところが、燃料を直接燃焼室に噴射するインジェクタ30を有すると共に、ターボ過給機22及びインタークーラ26が搭載されたエンジン11では、触媒早期暖機制御から通常のアイドル制御に切り換えるとき、吸気系の容量が大きいことから、燃焼室での空燃比が一時的にリーンとなってしまい、ターボ回転数が上昇すると、燃焼室に入る空気量が増加し、リーン度合が大きくなってしまう。
【0029】
そこで、実施例1の内燃機関の制御装置では、エンジン11の冷間始動後、ECU(点火時期設定手段)41が遅角した点火時期を戻すとき、ECU(燃料噴射量設定手段)41は、ターボ過給機22の回転数に基づいて燃料噴射量を補正する。つまり、ECU41は、ターボ過給機22の回転数の増加に伴って燃料噴射量を増加している。
【0030】
具体的には、内燃機関回転数検出手段としてのクランク角センサ46と、内燃機関温度検出手段としての水温センサ47とを設け、エンジン11の冷間始動後、遅角した点火時期を通常のアイドル制御における点火時期まで進角する場合、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を閉止制御中であれば、ECU41は、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて燃料噴射量を補正している。
【0031】
以下、実施例1の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
実施例1の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図2に示すように、ステップS11にて、触媒暖機遅角制御(触媒早期暖機制御)が終了したかどうかを判定する。ここで、触媒暖機遅角制御が終了していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、触媒暖機遅角制御が終了したと判定されたら、ステップS12にて、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であるかどうかを判定する。
【0033】
ここで、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中でないと判定されたら、ステップS15にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を補正せずにこのルーチンを抜ける。一方、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であると判定されたら、ステップS13,S14にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を補正する。
【0034】
即ち、ステップS13にて、ECU41は、エンジン回転数とエンジン冷却水温に基づいて燃料補正量を算出する。この場合、エンジン回転数の増加に伴って燃料補正量が増加する傾向を有するマップを用いて算出する。また、エンジン冷却水温の増加に伴って燃料補正量が減少する傾向を有するマップを用いて算出する。続いて、ステップS14にて、ECU41は、ターボ回転数に基づいて燃料補正量を算出する。この場合、ターボ回転数の増加に伴って燃料補正量が増加する傾向を有するマップを用いて算出する。
【0035】
そして、ステップS13,S14にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量が補正された後、ISCバルブ18の開度が通常のアイドル制御における開度まで閉止されると、ステップS12にて、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中でないと判定され、ステップS15にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を通常のアイドル制御における燃料噴射量に戻す。
【0036】
ここで、実施例1の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御における各種動作ついて、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
【0037】
実施例1の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図3に示すように、時間tにて、エンジン11のクランキングが開始され、インジェクタ30による燃料噴射が開始されると、時間tまで、燃料補正量が増量される。すると、空燃比がリッチ側に変動し、エンジン回転数及びターボ回転数が上昇する。そして、時間tにて、ISCバルブ18が一度閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が一度進角側に制御され、時間tにて、ISCバルブ18が開放側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が遅角側に制御され、時間tにて、触媒暖機遅角制御において設定されたISCバルブ18の開度、点火プラグ31の点火時期に設定される。すると、エンジン11及び三元触媒21が暖機され、燃料補正量が徐々に減少し、空燃比とエンジン回転数とターボ回転数が安定する。
【0038】
その後、時間tにて、三元触媒21の暖機が完了すると、触媒暖機遅角制御を終了して通常のアイドル制御に戻す。即ち、ISCバルブ18が閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が進角側に制御され、このとき、燃料補正量がエンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて増量される。触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻るとき、従来は、燃料補正量がエンジン回転数とエンジン冷却水温に基づいて増量されるため、その燃料増量が十分ではなく、図3に点線で示すように、空燃比が一時的にリーンとなってしまう。一方、触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻るとき、実施例1では、燃料補正量がエンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて増量されるため、その燃料増量が十分となり、図3に実線で示すように、空燃比が安定した状態、つまり、理論空燃比で維持される。
【0039】
その後、時間tにて、ISCバルブ18の開度が通常のアイドル制御に応じた開度まで閉止され、時間tにて、点火プラグ31の点火時期が通常のアイドル制御に応じた点火時期まで進角されると、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に応じた燃料補正量が徐々に減少する。
【0040】
このように実施例1の内燃機関の制御装置にあっては、エンジン11の冷間始動時に、点火プラグ31の点火時期を遅角して三元触媒21の暖機制御を実行し、暖機制御が完了して遅角した点火時期を進角して戻すとき、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて燃料噴射量を補正、つまり、燃料補正量を増加している。
【0041】
従って、エンジン11の冷間始動時に、燃料噴射量がエンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に応じて適正に補正されることから、触媒暖機遅角制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制することができ、その結果、エンジン11の始動性を向上することができると共に、排気浄化効率を向上することができる。
【0042】
また、実施例1の内燃機関の制御装置では、エンジン11の冷間始動後、遅角した点火時期を通常のアイドル制御における点火時期まで進角する場合、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を閉止制御中であれば、ECU41は、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて燃料噴射量を補正している。従って、ISCバルブ18を徐々に閉止したときの空燃比のリーン化を抑制することができる。
【実施例2】
【0043】
図4は、本発明の実施例2に係る内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャート、図5は、実施例2の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。なお、本実施例の内燃機関の制御装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0044】
実施例2の内燃機関の制御装置では、図1に示すように、エンジン11の冷間始動後、ECU41が遅角した点火時期を戻すとき、ECU41は、ウエストゲート装置29のWGV28により排気バイパス通路27を閉止すると共に、燃料噴射量が減量するように補正している。
【0045】
以下、実施例2の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
実施例2の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図4に示すように、ステップS21にて、触媒暖機遅角制御が終了したかどうかを判定する。ここで、触媒暖機遅角制御が終了していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、触媒暖機遅角制御が終了したと判定されたら、ステップS22にて、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であるかどうかを判定する。
【0047】
ここで、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であると判定されたら、ステップS25にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を補正せずにこのルーチンを抜ける。一方、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中でないと判定されたら、ステップS23にて、WGV28が開放状態から閉止状態に作動したかどうかを判定する。ここで、WGV28が開放状態のまま維持されていると判定されたら、ステップS25にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を補正せずにこのルーチンを抜ける。一方、WGV28が開放状態から閉止状態に作動したと判定されたら、ステップS24にて、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を補正する。
【0048】
即ち、ステップS24にて、ECU41は、WGV28が開放状態から閉止状態に作動したときの燃料補正量を設定する。この場合、予め実験により、WGV28が開放状態から閉止状態に作動したときの背圧の上昇量を求め、この背圧の上昇量に応じた吸気効率の低下量を算出し、この吸気効率の低下量に応じた空燃比のリッチ度合いを求め、このリッチ度合いに応じた燃料噴射量の減量量を求めておく。
【0049】
この場合、燃料噴射量の減量量は予め設定されたマップに応じて設定されており、ECU41は、インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を通常のアイドル制御における燃料噴射量に戻していく。
【0050】
ここで、実施例2の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御における各種動作ついて、図5のタイムチャートに基づいて説明する。
【0051】
実施例2の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図5に示すように、時間tにて、エンジン11のクランキングが開始され、インジェクタ30による燃料噴射が開始されると、時間tまで、燃料補正量が増量される。すると、空燃比がリッチ側に変動し、エンジン回転数及びターボ回転数が上昇する。そして、時間tにて、ISCバルブ18が一度閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が一度進角側に制御され、時間tにて、ISCバルブ18が開放側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が遅角側に制御され、時間tにて、触媒暖機遅角制御において設定されたISCバルブ18の開度、点火プラグ31の点火時期に設定される。この間、ウエストゲート装置29によりWGV28が排気バイパス通路27を開放している。すると、エンジン11及び三元触媒21が暖機され、燃料補正量が徐々に減少し、空燃比とエンジン回転数とターボ回転数が安定する。
【0052】
その後、時間tにて、三元触媒21の暖機が完了すると、触媒暖機遅角制御を終了して通常のアイドル制御に戻す。即ち、ISCバルブ18が閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が進角側に制御され、時間tにて、ISCバルブ18の開度が通常のアイドル制御に応じた開度まで閉止され、時間tにて、点火プラグ31の点火時期が通常のアイドル制御に応じた点火時期まで進角される。
【0053】
そして、時間tにて、ウエストゲート装置29によりWGV28が排気バイパス通路27を閉止し、このとき、燃料補正量が減量される。即ち、WGV28が排気バイパス通路27を閉止すると、排気管20の背圧が一時的に上昇するため、この背圧の上昇により排気効率が低下し、これにより燃焼室に排気ガスが滞在しやすくなることから、吸気効率が低下し、燃焼室の空燃比が一時的にリッチとなる。触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻り、WGV28が閉止するとき、従来は、燃料補正量が減量されないため、図5に点線で示すように、燃焼室がリッチ空燃比となってしまう。一方、触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻り、WGV28が閉止するとき、実施例2では、燃料補正量が減量されるため、その燃料減量により、図5に実線で示すように、空燃比が安定した状態、つまり、理論空燃比で維持される。
【0054】
このように実施例2の内燃機関の制御装置にあっては、エンジン11の冷間始動時に、点火プラグ31の点火時期を遅角して三元触媒21の暖機制御を実行し、暖機制御が完了して遅角した点火時期を進角して戻すとき、WGV28が閉止すると、燃料噴射量を補正、つまり、燃料補正量を減量している。
【0055】
従って、エンジン11の冷間始動時に、燃料噴射量がWGV28の閉止動作に応じて適正に補正されることから、触媒暖機遅角制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制することができ、その結果、エンジン11の始動性を向上することができると共に、排気浄化効率を向上することができる。
【実施例3】
【0056】
図6は、本発明の実施例3に係る内燃機関の制御装置を表す概略構成図、図7は、実施例3の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャート、図8は、実施例3の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0057】
実施例3の内燃機関の制御装置では、図6に示すように、エンジン11には、排気ガスのエネルギによりタービンを回し、これに直結されたコンプレッサにより空気を燃焼室に押し込むターボ過給機22が設けられている。また、排気管20には、ターボ過給機22におけるタービン24を迂回する排気バイパス通路27が設けられると共に、この排気バイパス通路27にウエストゲート弁(WGV)28を有するウエストゲート装置51が設けられている。このウエストゲート装置51は、WGV28の開度を調整可能な電動式となっている。そして、実施例3の内燃機関の制御装置では、エンジン11の冷間始動後、ECU41が遅角した点火時期を戻すとき、ECU41は、排気バイパス通路27を通過する排気ガスの流量比に応じてWGV28の閉止速度を設定し、この閉止速度によりWGV28を作動して排気バイパス通路27を閉止している。
【0058】
以下、実施例3の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0059】
実施例3の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図7に示すように、ステップS31にて、触媒暖機遅角制御が終了したかどうかを判定する。ここで、触媒暖機遅角制御が終了していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、触媒暖機遅角制御が終了したと判定されたら、ステップS32にて、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であるかどうかを判定する。
【0060】
ここで、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であると判定されたら、ステップS36にて、WGV28の開度を補正せずにこのルーチンを抜ける。一方、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中でないと判定されたら、ステップS33にて、WGV28が開放状態から閉止状態に作動したかどうかを判定する。ここで、WGV28が開放状態のまま維持されていると判定されたら、ステップS36にて、WGV28の開度を補正せずにこのルーチンを抜ける。一方、WGV28が開放状態から閉止状態に作動したと判定されたら、ステップS34にて、排気バイパス通路27を通過する排気ガスの流量比に応じてWGV28の閉止速度を設定する。
【0061】
即ち、排気ガスの流量は吸入空気量とほぼ同量であり、エアフローセンサ42により検出し、この排気ガスの流量を排気バイパス通路27の断面積で除算した値と、排気ガスの流量を排気管20の断面積で除算した値との比が排気ガスの流量比である。そして、予め実験により、この排気ガスの流量比の変化により、背圧が上昇して燃焼室の空燃比が一時的にリッチにならないWGV28の閉止速度を設定しておく。そして、ステップS35にて、ECU41は、ウエストゲート装置51を作動制御し、設定された閉止速度によりWGV28を作動し、排気バイパス通路27を閉止する。
【0062】
ここで、実施例3の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御における各種動作ついて、図8のタイムチャートに基づいて説明する。
【0063】
実施例3の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図8に示すように、時間tにて、エンジン11のクランキングが開始され、インジェクタ30による燃料噴射が開始されると、時間tまで、燃料補正量が増量される。すると、空燃比がリッチ側に変動し、エンジン回転数及びターボ回転数が上昇する。そして、時間tにて、ISCバルブ18が一度閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が一度進角側に制御され、時間tにて、ISCバルブ18が開放側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が遅角側に制御され、時間tにて、触媒暖機遅角制御において設定されたISCバルブ18の開度、点火プラグ31の点火時期に設定される。この間、ウエストゲート装置51によりWGV28が排気バイパス通路27を開放している。すると、エンジン11及び三元触媒21が暖機され、燃料補正量が徐々に減少し、空燃比とエンジン回転数とターボ回転数が安定する。
【0064】
その後、時間tにて、三元触媒21の暖機が完了すると、触媒暖機遅角制御を終了して通常のアイドル制御に戻す。即ち、ISCバルブ18が閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が進角側に制御され、時間tにて、ISCバルブ18の開度が通常のアイドル制御に応じた開度まで閉止され、時間tにて、点火プラグ31の点火時期が通常のアイドル制御に応じた点火時期まで進角される。
【0065】
このとき、時間tにて、ウエストゲート装置51によりWGV28が所定の速度で排気バイパス通路27を閉止する。即ち、WGV28が排気バイパス通路27を閉止すると、排気管20の背圧が一時的に上昇するため、この背圧の上昇により排気効率が低下し、これにより燃焼室に排気ガスが滞在しやすくなることから、吸気効率が低下し、燃焼室の空燃比が一時的にリッチとなる。触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻り、WGV28が閉止するとき、従来は、WGV28の閉止速度が速いため、図8に点線で示すように、燃焼室がリッチ空燃比となってしまう。一方、触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻り、WGV28が閉止するとき、実施例2では、WGV28の閉止速度を排気ガスの流量比に応じて遅くしているため、図8に実線で示すように、空燃比が安定した状態、つまり、理論空燃比で維持される。
【0066】
このように実施例3の内燃機関の制御装置にあっては、エンジン11の冷間始動時に、点火プラグ31の点火時期を遅角して三元触媒21の暖機制御を実行し、暖機制御が完了して遅角した点火時期を進角して戻すとき、WGV28が排気バイパス通路27を通過する排気ガスの流量比に応じて設定される閉止速度で閉止している。
【0067】
従って、エンジン11の冷間始動時に、WGV28が排気ガスの流量費に応じて設定された閉止速度によりゆっくりと閉止されることから、触媒暖機遅角制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制することができ、その結果、エンジン11の始動性を向上することができると共に、排気浄化効率を向上することができる。
【実施例4】
【0068】
図9は、本発明の実施例4に係る内燃機関の制御装置を表す概略構成図、図10は、実施例4の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャート、図11は、実施例4の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0069】
実施例4の内燃機関の制御装置にて、図9に示すように、エンジン11のシリンダヘッドには、燃焼室に直接燃料を噴射する第1インジェクタ(第1燃料噴射弁)30が装着されると共に、吸気マニホールド12には、吸気ポートに燃料を噴射する第2インジェクタ(第2燃料噴射弁)61が装着されている。そして、燃料噴射割合設定手段としてのECU41は、エンジン11の運転状態に応じて第1インジェクタ30と第2インジェクタ61との燃料噴射割合を設定している。
【0070】
実施例4の内燃機関の制御装置では、エンジン11の冷間始動後、ECU41が遅角した点火時期を戻すとき、ECU41は、第1インジェクタ30の燃料噴射割合に応じて燃料噴射量を補正している。具体的には、第1インジェクタ30の燃料噴射割合が大きくなるに伴って燃料噴射量を増量している。即ち、燃料を吸気ポートに噴射するエンジンでは、吸気ポートに付着した燃料が空気と共に燃焼室に吸入されることからリーン空燃比となりにくい。一方、燃料を燃焼室に直接噴射するエンジンでは、空気のみが燃焼室に吸入されることからリーン空燃比となりやすい。そのため、本実施例では、第2インジェクタ61の燃料噴射割合に応じて燃料噴射量を補正している。
【0071】
以下、実施例4の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
実施例4の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図10に示すように、ステップS41にて、触媒暖機遅角制御が終了したかどうかを判定する。ここで、触媒暖機遅角制御が終了していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、触媒暖機遅角制御が終了したと判定されたら、ステップS42にて、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であるかどうかを判定する。
【0073】
ここで、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中でないと判定されたら、ステップS46にて、第1インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を補正せずにこのルーチンを抜ける。一方、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中であると判定されたら、ステップS43にて、第1インジェクタ30による燃焼室への燃料噴射割合が100%であるかどうかを判定する。ここで、第1インジェクタ30による燃焼室への燃料噴射割合が100%であると判定されたら、ステップS45に移行する。一方、第1インジェクタ30による燃焼室への燃料噴射割合が100%でないと判定されたら、ステップS44にて、エンジン11の運転状態に応じて第1インジェクタ30と第2インジェクタ61との燃料噴射割合を算出する。そして、ステップS45にて、第2インジェクタ61の燃料噴射割合に応じて第1インジェクタ30及び第2インジェクタ61の燃料の噴射量を補正する。
【0074】
即ち、ステップS45にて、ECU41は、第1インジェクタ30の燃料噴射割合が100%のときには、例えば、前述した実施例のように、第1インジェクタ30の燃料補正量を算出する。つまり、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に応じて燃料補正量を算出する。また、例えば、第1インジェクタ30の燃料噴射割合が70%で、第2インジェクタ61の燃料噴射割合が30%であるきには、第1インジェクタ30の燃料噴射割合が100%であるときに算出した燃料補正量の70%をこのときの燃料補正量として算出する。更に、第2インジェクタ61の燃料噴射割合が100%であるきには、燃料補正量は0となる。
【0075】
そして、ステップS45にて、第1インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量が補正された後、ISCバルブ18の開度が通常のアイドル制御における開度まで閉止されると、ステップS42にて、ISCバルブ18により吸気バイパス通路17を徐々に閉止する制御を実行中でないと判定され、ステップS46にて、第1インジェクタ30が噴射する燃料の噴射量を通常のアイドル制御における燃料噴射量に戻す。
【0076】
ここで、実施例4の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御における各種動作ついて、図11のタイムチャートに基づいて説明する。
【0077】
実施例4の内燃機関の制御装置による冷間始動時の空燃比制御において、図11に示すように、時間tにて、エンジン11のクランキングが開始され、各インジェクタ30,61による燃料噴射が開始されると、時間tまで、燃料補正量が増量される。すると、空燃比がリッチ側に変動し、エンジン回転数及びターボ回転数が上昇する。そして、時間tにて、ISCバルブ18が一度閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が一度進角側に制御され、時間tにて、ISCバルブ18が開放側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が遅角側に制御され、時間tにて、触媒暖機遅角制御において設定されたISCバルブ18の開度、点火プラグ31の点火時期に設定される。この間、ウエストゲート装置29によりWGV28が排気バイパス通路27を開放している。すると、エンジン11及び三元触媒21が暖機され、燃料補正量が徐々に減少し、空燃比とエンジン回転数とターボ回転数が安定する。
【0078】
その後、時間tにて、三元触媒21の暖機が完了すると、触媒暖機遅角制御を終了して通常のアイドル制御に戻す。即ち、ISCバルブ18が閉止側に制御されると共に、点火プラグ31の点火時期が進角側に制御され、このとき、第1インジェクタ30の燃料補正量がエンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数と燃料噴射割合に基づいて増量される。触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻るとき、従来は、燃料補正量がエンジン回転数とエンジン冷却水温に基づいて増量されるため、その燃料増量が十分ではなく、図11に点線で示すように、空燃比が一時的にリーンとなってしまう。一方、触媒暖機遅角制御から通常のアイドル制御に戻るとき、実施例4では、燃料補正量がエンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数と燃料噴射割合に基づいて増量されるため、その燃料増量が十分となり、図11に実線で示すように、空燃比が安定した状態、つまり、理論空燃比で維持される。
【0079】
その後、時間tにて、ISCバルブ18の開度が通常のアイドル制御に応じた開度まで閉止され、時間tにて、点火プラグ31の点火時期が通常のアイドル制御に応じた点火時期まで進角されると、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数と燃料噴射割合に応じた燃料補正量が徐々に減少する。
【0080】
このように実施例4の内燃機関の制御装置にあっては、エンジン11の冷間始動時に、点火プラグ31の点火時期を遅角して三元触媒21の暖機制御を実行し、暖機制御が完了して遅角した点火時期を進角して戻すとき、燃焼室に燃料を噴射する第1インジェクタ30の燃料噴射割合に応じてこの第1インジェクタ30の燃料噴射量を補正している。
【0081】
従って、エンジン11の冷間始動時に、第1インジェクタ30の燃料噴射量が全体の燃料噴射量に対する割合に応じて適正に補正されることから、触媒暖機遅角制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制することができ、その結果、エンジン11の始動性を向上することができると共に、排気浄化効率を向上することができる。
【0082】
なお、この実施例4では、第1インジェクタ30と第2インジェクタ61の燃料噴射割合に応じて燃料噴射総量を補正すると共に、実施例1のように、エンジン回転数とエンジン冷却水温とターボ回転数に基づいて補正したが、燃料噴射総量をその燃料噴射割合に応じて補正するとき、実施例2のように、WGVの閉止時に補正するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係る内燃機関の制御装置は、触媒早期暖機制御からアイドル制御に移行するときにターボ回転数に基づいて燃料噴射量を補正することで、始動直後の触媒早期暖機制御からの復帰時における空燃比のばらつきを抑制可能とするものであり、いずれの種類の内燃機関に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1に係る内燃機関の制御装置を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャートである。
【図3】実施例1の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。
【図4】本発明の実施例2に係る内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャートである。
【図5】実施例2の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。
【図6】本発明の実施例3に係る内燃機関の制御装置を表す概略構成図である。
【図7】実施例3の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャートである。
【図8】実施例3の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。
【図9】本発明の実施例4に係る内燃機関の制御装置を表す概略構成図である。
【図10】実施例4の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すフローチャートである。
【図11】実施例4の内燃機関の制御装置による空燃比制御を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0085】
11 エンジン
13 吸気管(吸気通路)
15 スロットル弁
16 電子スロットル装置
17 吸気バイパス通路
18 アイドルスピードコントロールバルブ、ISCバルブ(アイドル制御弁)
20 排気管(排気通路)
21 三元触媒
22 ターボ過給機
26 インタークーラ
27 排気バイパス通路
28 ウエストゲート弁、WGV(排気制御弁)
29,51 ウエストゲート装置
30 インジェクタ、第1インジェクタ(第1燃料噴射弁)
31 点火プラグ
41 電子制御装置、ECU(燃料噴射量設定手段、点火時期設定手段、燃料噴射割合設定手段)
42 エアフローセンサ
43 過給圧センサ
46 クランク角センサ(内燃機関回転数検出手段)
47 水温センサ(内燃機関温度検出手段)
48 ターボ回転数センサ(過給機回転数検出手段)
61 第2インジェクタ(第2燃料噴射弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
該燃焼室に連通する吸気通路及び排気通路と、
前記吸気通路及び前記排気通路に設けられる吸気弁及び排気弁と、
前記排気通路の排気ガスにより前記吸気通路の空気を加圧する過給機と、
該過給機の回転数を検出する過給機回転数検出手段と、
内燃機関の燃焼室に燃料を噴射可能な第1燃料噴射弁と、
前記内燃機関の運転状態に応じて前記第1燃料噴射弁からの燃料噴射量を設定する燃料噴射量設定手段と、
前記燃焼室の混合気に着火可能な点火プラグと、
前記内燃機関の運転状態に応じて前記点火プラグによる点火時期を設定する点火時期設定手段とを備える内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記過給機の回転数に基づいて燃料噴射量を補正することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記過給機の回転数の増加に伴って燃料噴射量を増加することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関の回転数を検出する内燃機関回転数検出手段と、前記内燃機関の温度を検出する内燃機関温度検出手段とを設け、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記過給機の回転数と前記内燃機関の回転数と前記内燃機関の温度に基づいて燃料噴射量を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記排気通路に前記過給機のタービンを迂回する排気バイパス通路が設けられると共に、該排気バイパス通路を開閉する排気制御弁が設けられ、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記排気制御弁により前記排気バイパス通路を閉止すると共に、前記燃料噴射量設定手段は、燃料噴射量を減少することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記排気通路に前記過給機のタービンを迂回する排気バイパス通路が設けられると共に、該排気バイパス通路を開閉すると共に開度を調整可能な排気制御弁が設けられ、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記排気バイパス通路を通過する排気ガスの流量比に応じて前記排気制御弁の閉止速度を設定し、この閉止速度により前記排気制御弁を作動して前記排気バイパス通路を閉止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関の吸気ポートに燃料を噴射可能な第2燃料噴射弁と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記第1燃料噴射弁と前記第2燃料噴射弁との燃料噴射割合を設定する燃料噴射割合設定手段とを設け、前記内燃機関の始動後、前記点火時期設定手段が遅角した点火時期を戻すとき、前記燃料噴射量設定手段は、前記燃料噴射割合に応じて燃料噴射量を補正することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−31682(P2010−31682A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192459(P2008−192459)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】