凹部充填方法
【課題】凹部を隙間無く充填する。
【解決手段】本発明は基板11の表面の凹部12が形成された面に、金属膜15を形成する成膜工程と、金属膜にエッチングガスのイオンを入射させるエッチング工程とを交互に繰り返す。成膜工程で凹部12に突き出すように形成されるオーバーハング部19はエッチング工程で除去されるので、次の成膜工程の時に凹部12の開口は塞がれておらず、凹部12内部の金属膜15を成長させることができる。
【解決手段】本発明は基板11の表面の凹部12が形成された面に、金属膜15を形成する成膜工程と、金属膜にエッチングガスのイオンを入射させるエッチング工程とを交互に繰り返す。成膜工程で凹部12に突き出すように形成されるオーバーハング部19はエッチング工程で除去されるので、次の成膜工程の時に凹部12の開口は塞がれておらず、凹部12内部の金属膜15を成長させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜方法に関し、特に、ビアホールやトレンチホール等の凹部を充填する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビアホールやトレンチホール等の凹部を充填し、配線膜を形成する方法としては、基板にRF又はDC電圧(バイアス電圧)を印加して、ターゲットをスパッタリングする方法が用いられている。
【0003】
基板にバイアス電圧を印加すると、スパッタリングに生成されるプラズマ中のイオンが基板に引き込まれる。凹部の開口部に形成される張り出し部分(オーバーハング部)が該イオンでスパッタリング、除去されるため、凹部の内部まで金属を充填することができる。
【0004】
しかし、基板に印加するバイアス電圧は150V程度が限界なため、このような小さいバイアス電圧では、十分にオーバーハング部を除去されない。
【0005】
近年、半導体構造の微細化に伴い、凹部の開口も小径になっているため、オーバーハング部が十分に除去されないと、凹部が金属で充填される前に開口が塞がってしまう。
【0006】
現状では、スパッタリングのようなドライプロセスで凹部を充填することは不可能なため、スパッタリングで凹部内部に下地の金属膜を形成した後、メッキ(ウェットプロセス)で凹部を金属で充填している。
工程の簡素化及び環境の配慮から、凹部の充填を一貫してドライプロセスで行うことが求められていた。
【0007】
先行技術の一例として、ターゲットをスパッタリングして基板表面に薄膜を形成する際に、基板表面に横方向から(基板面に対して0°〜30°の角度、即ち60°〜90°の入射角の範囲で)イオンビームを照射し、基板に形成された微細構造溝即ちトレンチの開目録部に堆積したスパッタリング粒子を除去し、配線薄膜を形成できるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0008】
また、別の先行技術としては、半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、配線溝を形成し、かかる配線溝内にCuを堆積して埋め込み、CMP(化学機械研磨chemical mechanical polishing)法などにより層間絶縁膜上のCu導電膜を除去して配線溝内にCu配線を形成する方法、及び半導体基板上に形成した層間絶縁膜上に有機化合物膜を形成し、該有機化合物膜に貫通する配線溝を形成し、配線溝にCu配線材料を埋め込んで配線層を形成し、有機化合物膜上のCu配線材料をCMP法やRIE法によって除去し、そして有機化合物膜を除去してCu配線を形成する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0009】
さらにまた、基板表面に形成したCu層上に、形成すべきCu配線に相応したマスクを形成し、マスクで覆われていないCu層を、プラズマでヨウ素を含む反応性ガスを分解してヨウ素とCuとを反応させて、Culxを生成し、こうして生成されたCulxを洗浄処理することでCu配線を形成する方法も知られている(特許文献3及び特許文献4参照)。
【0010】
しかし、上記で挙げた各特許文献に提案されている先行技術による方法及び装置では、現状で要求されている配線の微細化より更に高い微細構造には必ずしも対処できないだけでなく、処理工程の数が多く、装置の構造が複雑であるため、配線形成に手間がかかり、コストが高くなるという問題がある。
【0011】
特に、微細化の進む半導体集積回路における配線の形成において、スパッタリング、ALD法(原子層蒸着法、 Atomic Layer Deposition)、CVD法(化学気相蒸着法、Chemical Vapor Deposition)等従来の成膜方法により被覆膜を形成する場合にビアホールやトレンチの開口部におけるオーバーハングや非対称性を簡単かつ低コストで如何に改善できるようにするかが重要である。
【特許文献1】特開平 11−140640公開特許公報
【特許文献2】特開2000−124218公開特許公報
【特許文献3】特開2004−6441公開特許公報
【特許文献4】特開2004−6443公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、半導体構造の微細化に対応でき、しかも基板上に形成した被覆膜におけるビアホールやトレンチの開口部におけるオーバーハングや非対称性を改善できる成膜方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
基板にバイアス電圧を印加することによって、イオンを基板に引き込み、被覆膜の形状を所望の形状に改善する公知の技術においては、基板のバイアス電位はたかだか150V程度までである。
【0014】
基板上に下層としてTi膜を厚さ10nmに形成し、その上にCu層を厚さ45nmに形成し、55〜60nmの微細溝(トレンチ)を備えた試料と、基板上にTi膜を厚さ30nmに形成し、55〜60nmの微細溝(トレンチ)を備えた試料とを用意し、この試料に対してイオンミリング法を用いてTi層及びCu層の形状変化を観察した。この場合、加速電圧は200eVにし、照射イオンとしてはアルゴンイオンを使用し、イオン電流密度は0.4mA/cm2である。
【0015】
前者の試料では、トレンチにおけるオーバーハングの形状も開口幅も変化なかった。一方後者の試料ではTi層に対してトレンチの開目録部のエッチングは進んだが鋭角的な開ロエッチング形状は得られなかった。
【0016】
このことから、加速電圧200eV程度の低エネルギーのアルゴン粒子では、Cu被覆膜に対してトレンチの開口部のオーバーハングの形状及び開口幅を変えることができず、またTi被覆膜ではトレンチの開口部の鋭角的な開ロエッチング形状が得られないことがわかった。
【0017】
上記課題を解決するために本発明は、表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させる成膜工程と、前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させ、前記薄膜の前記凹部上に突き出されたオーバーハング部を除去するエッチング工程とを2回以上交互に繰り返す凹部充填方法である。
本発明は、表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させながら、前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させる凹部充填方法である。
本発明は凹部充填方法であって、イオン化した前記エッチングガスを、200eV以上7000eV以下のイオンエネルギーになるように加速して入射させる凹部充填方法である。
本発明は凹部充填方法であって、前記エッチングガスとして、Arと、Neと、Krとからなる希ガス群より選択されるいずれか1種類以上の希ガスを用いる凹部充填方法である。
本発明は凹部充填方法であって、Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる金属元素群より選択されるいずれか1種の金属元素を含有する前記薄膜を成長させる凹部充填方法である。
【発明の効果】
【0018】
成膜工程と、エッチング工程とを同時、又は交互に繰り返すことで、ドライプロセスだけで凹部を隙間無く充填することができる。凹部に充填された金属膜には空隙が無いから、金属膜の凹部に充填された部分を分離して形成された配線膜は低抵抗であり、かつ、基板に対する密着性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1の符号1は本発明に用いる成膜装置の一例を示している。
成膜装置1は搬送室5を有しており、搬送室5には、1又は複数の成膜室2a〜2cと、1又は複数のエッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7bとが、真空バルブ8を介してそれぞれ接続されている。
【0020】
搬送室5と、各成膜室2a〜2cと、各エッチング室4a〜4cと、各搬出入室7a、7bには、それぞれ真空排気系9が接続されており、真空排気系9によって搬送室5と、各成膜室2a〜2cと、各エッチング室4a〜4cと、各搬出入室7a、7bの内部を真空排気し、真空雰囲気を形成することができる。
【0021】
搬送室5の内部には不図示の搬送ロボットが配置されている。真空バルブ8を開け、成膜室2a〜2cと、エッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7bを搬送室5に接続すると、基板11を大気に曝すことなく、搬送ロボットによって、成膜室2a〜2cと、エッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7bの間との間で搬送することができる。
【0022】
図2は成膜室2a〜2cの内部を示す断面図である。ここでは、各成膜室2a〜2cの内部に配置された部材は同じであり、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
成膜室2a〜2cの内部にはステージ22が配置され、成膜室2a〜2c内部のステージ22と対面する位置にターゲット25とが配置されている。
【0023】
ステージ22はバイアス電源23に接続されており、ステージ22上に成膜対象物を配置すると、成膜対象物はステージ22を介してバイアス電源23に電気的に接続され、バイアス電源23から直流(DC)又は交流(RF)のバイアス電圧が印加される。
【0024】
ターゲット25はスパッタ電源26に接続されている。成膜室2a〜2cにはガス供給系29が接続されており、成膜室2a〜2c内部を真空排気しながら、ガス供給系29からスパッタリングガスを供給するとターゲット25がスパッタリングされ、スパッタ粒子が放出される。
このとき、成膜対象物にバイアス電圧を印加しておくと、スパッタ粒子は成膜対象物表面に略垂直に入射し、薄膜が成長する。
【0025】
ここでは、成膜室2a〜2c外部のターゲット25裏面位置には磁界形成手段28が配置され、スパッタリング時には、磁界形成手段28が形成する磁界によってターゲット25表面にプラズマが補足され、スパッタリング速度が速い。
【0026】
図3はエッチング室4a〜4cの内部を示す断面図であり、各エッチング室4a〜4cの内部に配置された部材は同じであり、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
エッチング室4a〜4cの内部には、イオン照射装置50が配置されている。ここでは、イオン照射装置50は、放電容器51と、放電電極53と、引き出し電極61〜63とを有している。
【0027】
放電容器51は筒状であって、筒の一端の開口(放出口)55をステージ42に向けて配置されている。放電電極53はコイル状であって、放電容器51の外周に巻き回されている。放電電極53はRF電源54に接続されている。
【0028】
放電容器51の内部空間にはエッチングガス供給系59が接続されており、エッチング室4a〜4cの内部に真空雰囲気を形成した状態で、放電容器51の内部にエッチングガスを供給し、放電電極53に高周波電圧を印加すると、エッチングガスがイオン化する。
【0029】
各引き出し電極61〜63は、放電電極53と放出口55との間の位置で、放電容器51の中心軸線に沿って並べられている。
ここでは、各引き出し電極61〜63は多孔板(マルチアパーチャー)で構成され、イオン化したエッチングガスは、各引き出し電極61〜63の孔を通ってから、放出口55から放出されるようになっている。
【0030】
各引き出し電極61〜63は加速電源65に接続されている。加速電源65は互いに隣接する引き出し電極61〜63に対して極性又は大きさの異なる電圧を印加するように構成されている。
【0031】
ここでは、引き出し電極61〜63の数は3つであり、加速電源65は、放電電極53側の引き出し電極61に正電圧を印加し、放出口55側の引き出し電極63をエッチング室4a〜4cと同じ接地電位に接続し、それらの引き出し電極61、63の間の引き出し電極に負電圧を印加するように設定されている。
【0032】
イオン化したエッチングガスは引き出し電極61〜63のリング内側を通過する時に、電位差によって加速される。従って、放出口55からは加速されたイオンが放出される。
エッチング室4a〜4cの内部には、放出口55と対面するステージ42が配置されており、放出口55から放出されたイオンは、ステージ42上に配置された成膜対象物に入射する。
【0033】
次に、この成膜装置1を用いて凹部を充填する工程について説明する。
図4(a)の符号11は本発明に用いる基板の一例を示しており、基板11の表面には、溝又は有底の孔(凹部12)が形成されている。ここでは、基板11の表面にはTa,Ti等のバリア膜13が形成されているが、その膜厚は凹部12を充填しない程を薄く、凹部12の開口は露出している。
【0034】
この状態の基板11を複数枚カセットに配置し、基板11が配置されたカセットを一方又は両方の搬出入室7a、7b内部に配置する。
搬送室5と、各成膜室2a〜2cと、各エッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7b内部を真空排気し、所定圧力の真空雰囲気を形成してから、搬出入室7aから基板11を取り出し、成膜室2a〜2cに搬入する。
【0035】
ここでは、ターゲット25として、Cuを主成分とするターゲット25が配置されている。
真空排気しながらスパッタリングガスを供給し、成膜室2a〜2c内部に所定圧力の成膜雰囲気を形成する。基板11にバイアス電圧を印加し、ターゲット25をスパッタリングすると、スパッタ粒子は基板11表面に略垂直に入射するため、スパッタ粒子は、凹部12周囲の基板11表面上だけでなく、凹部12の内部にも入射し、金属膜が成長する(成膜工程)
図4(b)は基板11表面に金属膜15が形成された状態を示しており、金属膜15は、基板11の表面上と、凹部12の底面と、凹部12の側壁に形成されている。
【0036】
スパッタリングを続けると、基板11表面上に成長する金属膜15が、凹部12上で側方にも成長して、凹部12上に張り出すオーバーハング部19が形成される。
【0037】
本発明では、凹部12の開口がオーバーハング部19で塞がれる前に、スパッタリングを停止し、金属膜15の成長を停止させる。
成膜室2a〜2cを真空排気した後、金属膜15が形成された基板11をエッチング室4a〜4cに搬入し、金属膜15が形成された面を放出口55に向けた状態でステージ42に乗せる。
【0038】
図4(b)の符号cは放出口55から放出されたイオンの飛行方向を示しており、ここでは飛行方向cは放電容器51の中心軸線と平行である場合を示している。
【0039】
イオン照射装置50と、ステージ42との位置関係は、ステージ42上の基板11表面に対して垂直な垂線Aと、飛行方向cとが成す入射角度θが0°以上30°以下になるように設定されている。図4(b)は、垂線Aと、飛行方向cが一致し、入射角度θがゼロの状態を示している。
【0040】
放電容器51にAr、Ne、Kr等の希ガスからなるエッチングガスを供給し、該エッチングガスをイオン化し、イオンエネルギーが、200eV以上10000eV以下、より好ましくは200eV以上7000eV以下になるように、加速電源65から引き出し電極61〜63に電圧を印加する。
【0041】
金属膜15には、200eV以上10000eV以下の高エネルギーのエッチングガスイオンが、0°以上30°以下の入射角度θで入射し、オーバーハング部19がエッチング除去される(エッチング工程)。
このとき、基板11表面と凹部12の側面及び底面は金属膜15で覆われているから、基板11はイオンによってダメージを受けない。
【0042】
イオンは凹部12の内部にも入射するため、凹部12底面上に形成された金属膜15もエッチングされる。しかし、凹部12の側壁及び底面上の金属膜15がエッチングされるときには、エッチングによって放出される金属粒子が、凹部12の壁面上及び底面上の金属膜15に再付着するため、膜厚減少量が小さく、しかも、エッチング後は、凹部12内の金属膜15の非対称性が改善される。
【0043】
オーバーハング部19が除去され、基板11表面上の金属膜15が完全に除去される前に、基板11表面上へのイオンの入射を停止させ、エッチング工程を終了する。
【0044】
図4(c)はエッチング工程終了後の状態を示しており、この基板11を再び成膜室2a〜2cに搬入してターゲット25をスパッタリングする。オーバーハング部19は除去されているから、スパッタ粒子が凹部12内に到達し、凹部12底面上の金属膜15が成長する(図4(d))。
【0045】
凹部12がオーバーハング部19で塞がれる前に、成膜工程を終了し、成膜室2a〜2cからエッチング室4a〜4cに戻し、上述したエッチング工程でオーバーハング部19を除去する。
成膜工程とエッチング工程とを、凹部12底面上の金属膜15が成長し、凹部12が該金属膜15で充填されるまで交互に繰り返す。図4(e)は凹部12が金属膜15で充填された状態を示している。この状態では、各凹部12に充填された金属膜15と、基板11表面上に形成された金属膜15は一体になっている。
【0046】
凹部12が金属膜15で充填された状態の基板11を成膜装置1から取り出し、CMP(化学的機械研磨)法や物理的研磨法で、バリア膜13が露出するまで金属膜15を削り、基板11表面上の金属膜15を除去すると、各凹部12に充填された金属膜15が互いに分離され、配線膜となる(図5)。
【実施例】
【0047】
図4(a)、(b)の工程で金属膜15として純銅膜を成膜した後、イオンエネルギーとイオン照射時間を変えてエッチングを行った後、凹部12の開口と断面を電子顕微鏡で観察した。
図6(a)〜(d)はイオンエネルギーが300eVであり、照射時間がそれぞれゼロ、15秒、30秒、45秒の時の電子顕微鏡写真である。
【0048】
図7(a)〜(d)と図8(a)〜(d)はイオンエネルギーが1000eV、照射時間がそれぞれゼロ、8秒、15秒、30秒の時の凹部12の開口及び断面の電子顕微鏡写真である。
図9(a)〜(d)と図10(a)〜(d)は、イオンエネルギーが2000eV、照射時間がそれぞれゼロ、15秒、30秒、60秒の時の凹部12の開口及び断面の電子顕微鏡写真である。
【0049】
図11(a)〜(d)、図12(a)〜(d)はイオンエネルギーが3000eV、照射時間がそれぞれ20秒、40秒、60秒、90秒の時の凹部12の開口及び断面の電子顕微鏡写真である。
【0050】
図6を見ると、イオンエネルギー300eVでは、エッチングによるオーバーハング部19の減少量は少ないものの、凹部12底部分の金属膜15の非対称性が改善され、底部分に金属膜15が均一に充填されることが分かる。
【0051】
図7〜図12を見ると、凹部12底部の金属膜15の非対称性が改善された上に、エッチングによってオーバーハング部19が減少しており、その減少量はイオンエネルギーが大きい程大きいことが変わる。
特に、イオンエネルギーが3000eVと高エネルギーの場合、ボトムカバレッジも保持され、凹部12底部のエッチング量が少ないことが分かる。
【0052】
以上は、成膜工程とエッチング工程とを別々の真空槽で行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図13の符号70は本発明に用いる成膜室の他の例を示している。この成膜室70の内部には、ターゲット25と、イオン照射装置50の両方が配置されている。
【0053】
イオン照射装置50は、ステージ42上の基板11への入射角度θが0°以上30°以下になるように配置され、ターゲット25はステージ42上の基板11にスパッタ粒子が到達するように、表面がステージ42に向けられている。
【0054】
ここでは、イオン照射装置50は放出口55がステージ42真上に位置するように配置され、ターゲット25はステージ42の真上から離れた位置で、スパッタリングされる面が基板11表面に対して傾けられているが、ターゲット25をステージ42真上に配置し、放出口55をステージ42の真上から離れた位置に配置してもよい。
【0055】
この成膜室70では、同じステージ42上の基板11に、ターゲット25からのスパッタ粒子と、イオン照射装置50からのイオンの両方が到達する。従って、基板11を搬送しなくても、成膜工程とエッチング工程を交互に行うことが可能である。
【0056】
また、ターゲット25をスパッタリングしながら、放出口55からイオン化されたエッチングガスを放出して、成膜工程とエッチング工程とを同時に行えば、オーバーハング部19は成長する前に、エッチングガスのイオンでエッチングされるので、凹部12の開口は塞がれず、凹部12を金属膜15で充填することができる。
【0057】
更に、イオン照射装置50と、ターゲット25とを、エッチングガスのイオンと、スパッタリング粒子を成膜室70内部の異なる位置に到達するように配置し、基板11をエッチングガスのイオンが到達する位置と、スパッタリング粒子が到達する場所に交互に搬送(例えば回転)することで、成膜工程とエッチング工程とを交互に行うこともできる。
【0058】
以上は、金属膜15として純銅膜を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる群より選択される1種以上の金属材料を含有するターゲット25をスパッタリングし、Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる群より選択される1種以上の金属材料を含有する金属膜15を形成することもできる。
【0059】
更に、成膜工程でターゲット25をスパッタリングする際に、N2、NH3等窒化ガス、O2、O3、H2O等の酸化ガスのいずれか一方又は両方を成膜室2a〜2c内部に供給し、金属の窒化物と、金属の酸化物のいずれか一方又は両方を含む金属膜15を成膜してもよい。
【0060】
また、成膜方法はスパッタリング法に限定されない。基板11を、金属膜材料(例えば上述した金属材料)の蒸気と、金属膜材料と反応する反応ガス(例えば上述した窒化ガスや酸化ガス)に交互に曝して、金属膜材料と反応ガスの反応生成物の膜を形成するALD法、基板を金属膜材料の蒸気と、反応ガスに同時に曝して反応生成物の膜を生成するCVD法等で金属膜15を成膜することもできる。
【0061】
金属膜15はバリア膜13に密着形成する場合に限定されず、バリア膜13が形成されず、基板11が露出するものを成膜対象物として用い、金属膜15を基板11に密着形成してもよい。
【0062】
エッチング工程の入射角度θも特に限定されないが、入射角度θが30°を超えると、イオンの凹部12入射量が小さくなり、オーバーハング部19の除去量と、凹部12底部の非対称性の改善が劣るので、入射角度θは0°以上30°以下が望ましい。
更に、エッチング工程で、基板11に直流又は交流のバイアス電圧を印加しながら、エッチングガスのイオンを入射させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に用いる成膜装置の一例を示す平面図
【図2】成膜室の一例を示す断面図
【図3】エッチング室の一例を示す断面図
【図4】(a)〜(e):凹部を充填する工程を説明するための断面図
【図5】配線膜が形成された状態の基板を示す断面図
【図6】(a)〜(d):イオンエネルギーが300eV、照射時間がゼロ、15秒、30秒、45秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図7】(a)〜(d):イオンエネルギーが1000eV、照射時間がゼロ、8秒、15秒、30秒の時の凹部の開口を撮影した電子顕微鏡写真
【図8】(a)〜(d):イオンエネルギーが1000eV、照射時間がゼロ、8秒、15秒、30秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図9】(a)〜(d):イオンエネルギーが2000eV、照射時間がゼロ、15秒、30秒、60秒の時の凹部の開口を撮影した電子顕微鏡写真
【図10】(a)〜(d):イオンエネルギーが2000eV、照射時間がゼロ、15秒、30秒、60秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図11】(a)〜(d):イオンエネルギーが3000eV、照射時間が20秒、40秒、60秒、90秒の時の凹部の開口を撮影した電子顕微鏡写真
【図12】(a)〜(d):イオンエネルギーが3000eV、照射時間が20秒、40秒、60秒、90秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図13】成膜室の他の例を示す断面図
【符号の説明】
【0064】
11……基板 12……凹部 15……金属膜
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜方法に関し、特に、ビアホールやトレンチホール等の凹部を充填する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビアホールやトレンチホール等の凹部を充填し、配線膜を形成する方法としては、基板にRF又はDC電圧(バイアス電圧)を印加して、ターゲットをスパッタリングする方法が用いられている。
【0003】
基板にバイアス電圧を印加すると、スパッタリングに生成されるプラズマ中のイオンが基板に引き込まれる。凹部の開口部に形成される張り出し部分(オーバーハング部)が該イオンでスパッタリング、除去されるため、凹部の内部まで金属を充填することができる。
【0004】
しかし、基板に印加するバイアス電圧は150V程度が限界なため、このような小さいバイアス電圧では、十分にオーバーハング部を除去されない。
【0005】
近年、半導体構造の微細化に伴い、凹部の開口も小径になっているため、オーバーハング部が十分に除去されないと、凹部が金属で充填される前に開口が塞がってしまう。
【0006】
現状では、スパッタリングのようなドライプロセスで凹部を充填することは不可能なため、スパッタリングで凹部内部に下地の金属膜を形成した後、メッキ(ウェットプロセス)で凹部を金属で充填している。
工程の簡素化及び環境の配慮から、凹部の充填を一貫してドライプロセスで行うことが求められていた。
【0007】
先行技術の一例として、ターゲットをスパッタリングして基板表面に薄膜を形成する際に、基板表面に横方向から(基板面に対して0°〜30°の角度、即ち60°〜90°の入射角の範囲で)イオンビームを照射し、基板に形成された微細構造溝即ちトレンチの開目録部に堆積したスパッタリング粒子を除去し、配線薄膜を形成できるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0008】
また、別の先行技術としては、半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、配線溝を形成し、かかる配線溝内にCuを堆積して埋め込み、CMP(化学機械研磨chemical mechanical polishing)法などにより層間絶縁膜上のCu導電膜を除去して配線溝内にCu配線を形成する方法、及び半導体基板上に形成した層間絶縁膜上に有機化合物膜を形成し、該有機化合物膜に貫通する配線溝を形成し、配線溝にCu配線材料を埋め込んで配線層を形成し、有機化合物膜上のCu配線材料をCMP法やRIE法によって除去し、そして有機化合物膜を除去してCu配線を形成する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0009】
さらにまた、基板表面に形成したCu層上に、形成すべきCu配線に相応したマスクを形成し、マスクで覆われていないCu層を、プラズマでヨウ素を含む反応性ガスを分解してヨウ素とCuとを反応させて、Culxを生成し、こうして生成されたCulxを洗浄処理することでCu配線を形成する方法も知られている(特許文献3及び特許文献4参照)。
【0010】
しかし、上記で挙げた各特許文献に提案されている先行技術による方法及び装置では、現状で要求されている配線の微細化より更に高い微細構造には必ずしも対処できないだけでなく、処理工程の数が多く、装置の構造が複雑であるため、配線形成に手間がかかり、コストが高くなるという問題がある。
【0011】
特に、微細化の進む半導体集積回路における配線の形成において、スパッタリング、ALD法(原子層蒸着法、 Atomic Layer Deposition)、CVD法(化学気相蒸着法、Chemical Vapor Deposition)等従来の成膜方法により被覆膜を形成する場合にビアホールやトレンチの開口部におけるオーバーハングや非対称性を簡単かつ低コストで如何に改善できるようにするかが重要である。
【特許文献1】特開平 11−140640公開特許公報
【特許文献2】特開2000−124218公開特許公報
【特許文献3】特開2004−6441公開特許公報
【特許文献4】特開2004−6443公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、半導体構造の微細化に対応でき、しかも基板上に形成した被覆膜におけるビアホールやトレンチの開口部におけるオーバーハングや非対称性を改善できる成膜方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
基板にバイアス電圧を印加することによって、イオンを基板に引き込み、被覆膜の形状を所望の形状に改善する公知の技術においては、基板のバイアス電位はたかだか150V程度までである。
【0014】
基板上に下層としてTi膜を厚さ10nmに形成し、その上にCu層を厚さ45nmに形成し、55〜60nmの微細溝(トレンチ)を備えた試料と、基板上にTi膜を厚さ30nmに形成し、55〜60nmの微細溝(トレンチ)を備えた試料とを用意し、この試料に対してイオンミリング法を用いてTi層及びCu層の形状変化を観察した。この場合、加速電圧は200eVにし、照射イオンとしてはアルゴンイオンを使用し、イオン電流密度は0.4mA/cm2である。
【0015】
前者の試料では、トレンチにおけるオーバーハングの形状も開口幅も変化なかった。一方後者の試料ではTi層に対してトレンチの開目録部のエッチングは進んだが鋭角的な開ロエッチング形状は得られなかった。
【0016】
このことから、加速電圧200eV程度の低エネルギーのアルゴン粒子では、Cu被覆膜に対してトレンチの開口部のオーバーハングの形状及び開口幅を変えることができず、またTi被覆膜ではトレンチの開口部の鋭角的な開ロエッチング形状が得られないことがわかった。
【0017】
上記課題を解決するために本発明は、表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させる成膜工程と、前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させ、前記薄膜の前記凹部上に突き出されたオーバーハング部を除去するエッチング工程とを2回以上交互に繰り返す凹部充填方法である。
本発明は、表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させながら、前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させる凹部充填方法である。
本発明は凹部充填方法であって、イオン化した前記エッチングガスを、200eV以上7000eV以下のイオンエネルギーになるように加速して入射させる凹部充填方法である。
本発明は凹部充填方法であって、前記エッチングガスとして、Arと、Neと、Krとからなる希ガス群より選択されるいずれか1種類以上の希ガスを用いる凹部充填方法である。
本発明は凹部充填方法であって、Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる金属元素群より選択されるいずれか1種の金属元素を含有する前記薄膜を成長させる凹部充填方法である。
【発明の効果】
【0018】
成膜工程と、エッチング工程とを同時、又は交互に繰り返すことで、ドライプロセスだけで凹部を隙間無く充填することができる。凹部に充填された金属膜には空隙が無いから、金属膜の凹部に充填された部分を分離して形成された配線膜は低抵抗であり、かつ、基板に対する密着性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1の符号1は本発明に用いる成膜装置の一例を示している。
成膜装置1は搬送室5を有しており、搬送室5には、1又は複数の成膜室2a〜2cと、1又は複数のエッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7bとが、真空バルブ8を介してそれぞれ接続されている。
【0020】
搬送室5と、各成膜室2a〜2cと、各エッチング室4a〜4cと、各搬出入室7a、7bには、それぞれ真空排気系9が接続されており、真空排気系9によって搬送室5と、各成膜室2a〜2cと、各エッチング室4a〜4cと、各搬出入室7a、7bの内部を真空排気し、真空雰囲気を形成することができる。
【0021】
搬送室5の内部には不図示の搬送ロボットが配置されている。真空バルブ8を開け、成膜室2a〜2cと、エッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7bを搬送室5に接続すると、基板11を大気に曝すことなく、搬送ロボットによって、成膜室2a〜2cと、エッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7bの間との間で搬送することができる。
【0022】
図2は成膜室2a〜2cの内部を示す断面図である。ここでは、各成膜室2a〜2cの内部に配置された部材は同じであり、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
成膜室2a〜2cの内部にはステージ22が配置され、成膜室2a〜2c内部のステージ22と対面する位置にターゲット25とが配置されている。
【0023】
ステージ22はバイアス電源23に接続されており、ステージ22上に成膜対象物を配置すると、成膜対象物はステージ22を介してバイアス電源23に電気的に接続され、バイアス電源23から直流(DC)又は交流(RF)のバイアス電圧が印加される。
【0024】
ターゲット25はスパッタ電源26に接続されている。成膜室2a〜2cにはガス供給系29が接続されており、成膜室2a〜2c内部を真空排気しながら、ガス供給系29からスパッタリングガスを供給するとターゲット25がスパッタリングされ、スパッタ粒子が放出される。
このとき、成膜対象物にバイアス電圧を印加しておくと、スパッタ粒子は成膜対象物表面に略垂直に入射し、薄膜が成長する。
【0025】
ここでは、成膜室2a〜2c外部のターゲット25裏面位置には磁界形成手段28が配置され、スパッタリング時には、磁界形成手段28が形成する磁界によってターゲット25表面にプラズマが補足され、スパッタリング速度が速い。
【0026】
図3はエッチング室4a〜4cの内部を示す断面図であり、各エッチング室4a〜4cの内部に配置された部材は同じであり、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
エッチング室4a〜4cの内部には、イオン照射装置50が配置されている。ここでは、イオン照射装置50は、放電容器51と、放電電極53と、引き出し電極61〜63とを有している。
【0027】
放電容器51は筒状であって、筒の一端の開口(放出口)55をステージ42に向けて配置されている。放電電極53はコイル状であって、放電容器51の外周に巻き回されている。放電電極53はRF電源54に接続されている。
【0028】
放電容器51の内部空間にはエッチングガス供給系59が接続されており、エッチング室4a〜4cの内部に真空雰囲気を形成した状態で、放電容器51の内部にエッチングガスを供給し、放電電極53に高周波電圧を印加すると、エッチングガスがイオン化する。
【0029】
各引き出し電極61〜63は、放電電極53と放出口55との間の位置で、放電容器51の中心軸線に沿って並べられている。
ここでは、各引き出し電極61〜63は多孔板(マルチアパーチャー)で構成され、イオン化したエッチングガスは、各引き出し電極61〜63の孔を通ってから、放出口55から放出されるようになっている。
【0030】
各引き出し電極61〜63は加速電源65に接続されている。加速電源65は互いに隣接する引き出し電極61〜63に対して極性又は大きさの異なる電圧を印加するように構成されている。
【0031】
ここでは、引き出し電極61〜63の数は3つであり、加速電源65は、放電電極53側の引き出し電極61に正電圧を印加し、放出口55側の引き出し電極63をエッチング室4a〜4cと同じ接地電位に接続し、それらの引き出し電極61、63の間の引き出し電極に負電圧を印加するように設定されている。
【0032】
イオン化したエッチングガスは引き出し電極61〜63のリング内側を通過する時に、電位差によって加速される。従って、放出口55からは加速されたイオンが放出される。
エッチング室4a〜4cの内部には、放出口55と対面するステージ42が配置されており、放出口55から放出されたイオンは、ステージ42上に配置された成膜対象物に入射する。
【0033】
次に、この成膜装置1を用いて凹部を充填する工程について説明する。
図4(a)の符号11は本発明に用いる基板の一例を示しており、基板11の表面には、溝又は有底の孔(凹部12)が形成されている。ここでは、基板11の表面にはTa,Ti等のバリア膜13が形成されているが、その膜厚は凹部12を充填しない程を薄く、凹部12の開口は露出している。
【0034】
この状態の基板11を複数枚カセットに配置し、基板11が配置されたカセットを一方又は両方の搬出入室7a、7b内部に配置する。
搬送室5と、各成膜室2a〜2cと、各エッチング室4a〜4cと、搬出入室7a、7b内部を真空排気し、所定圧力の真空雰囲気を形成してから、搬出入室7aから基板11を取り出し、成膜室2a〜2cに搬入する。
【0035】
ここでは、ターゲット25として、Cuを主成分とするターゲット25が配置されている。
真空排気しながらスパッタリングガスを供給し、成膜室2a〜2c内部に所定圧力の成膜雰囲気を形成する。基板11にバイアス電圧を印加し、ターゲット25をスパッタリングすると、スパッタ粒子は基板11表面に略垂直に入射するため、スパッタ粒子は、凹部12周囲の基板11表面上だけでなく、凹部12の内部にも入射し、金属膜が成長する(成膜工程)
図4(b)は基板11表面に金属膜15が形成された状態を示しており、金属膜15は、基板11の表面上と、凹部12の底面と、凹部12の側壁に形成されている。
【0036】
スパッタリングを続けると、基板11表面上に成長する金属膜15が、凹部12上で側方にも成長して、凹部12上に張り出すオーバーハング部19が形成される。
【0037】
本発明では、凹部12の開口がオーバーハング部19で塞がれる前に、スパッタリングを停止し、金属膜15の成長を停止させる。
成膜室2a〜2cを真空排気した後、金属膜15が形成された基板11をエッチング室4a〜4cに搬入し、金属膜15が形成された面を放出口55に向けた状態でステージ42に乗せる。
【0038】
図4(b)の符号cは放出口55から放出されたイオンの飛行方向を示しており、ここでは飛行方向cは放電容器51の中心軸線と平行である場合を示している。
【0039】
イオン照射装置50と、ステージ42との位置関係は、ステージ42上の基板11表面に対して垂直な垂線Aと、飛行方向cとが成す入射角度θが0°以上30°以下になるように設定されている。図4(b)は、垂線Aと、飛行方向cが一致し、入射角度θがゼロの状態を示している。
【0040】
放電容器51にAr、Ne、Kr等の希ガスからなるエッチングガスを供給し、該エッチングガスをイオン化し、イオンエネルギーが、200eV以上10000eV以下、より好ましくは200eV以上7000eV以下になるように、加速電源65から引き出し電極61〜63に電圧を印加する。
【0041】
金属膜15には、200eV以上10000eV以下の高エネルギーのエッチングガスイオンが、0°以上30°以下の入射角度θで入射し、オーバーハング部19がエッチング除去される(エッチング工程)。
このとき、基板11表面と凹部12の側面及び底面は金属膜15で覆われているから、基板11はイオンによってダメージを受けない。
【0042】
イオンは凹部12の内部にも入射するため、凹部12底面上に形成された金属膜15もエッチングされる。しかし、凹部12の側壁及び底面上の金属膜15がエッチングされるときには、エッチングによって放出される金属粒子が、凹部12の壁面上及び底面上の金属膜15に再付着するため、膜厚減少量が小さく、しかも、エッチング後は、凹部12内の金属膜15の非対称性が改善される。
【0043】
オーバーハング部19が除去され、基板11表面上の金属膜15が完全に除去される前に、基板11表面上へのイオンの入射を停止させ、エッチング工程を終了する。
【0044】
図4(c)はエッチング工程終了後の状態を示しており、この基板11を再び成膜室2a〜2cに搬入してターゲット25をスパッタリングする。オーバーハング部19は除去されているから、スパッタ粒子が凹部12内に到達し、凹部12底面上の金属膜15が成長する(図4(d))。
【0045】
凹部12がオーバーハング部19で塞がれる前に、成膜工程を終了し、成膜室2a〜2cからエッチング室4a〜4cに戻し、上述したエッチング工程でオーバーハング部19を除去する。
成膜工程とエッチング工程とを、凹部12底面上の金属膜15が成長し、凹部12が該金属膜15で充填されるまで交互に繰り返す。図4(e)は凹部12が金属膜15で充填された状態を示している。この状態では、各凹部12に充填された金属膜15と、基板11表面上に形成された金属膜15は一体になっている。
【0046】
凹部12が金属膜15で充填された状態の基板11を成膜装置1から取り出し、CMP(化学的機械研磨)法や物理的研磨法で、バリア膜13が露出するまで金属膜15を削り、基板11表面上の金属膜15を除去すると、各凹部12に充填された金属膜15が互いに分離され、配線膜となる(図5)。
【実施例】
【0047】
図4(a)、(b)の工程で金属膜15として純銅膜を成膜した後、イオンエネルギーとイオン照射時間を変えてエッチングを行った後、凹部12の開口と断面を電子顕微鏡で観察した。
図6(a)〜(d)はイオンエネルギーが300eVであり、照射時間がそれぞれゼロ、15秒、30秒、45秒の時の電子顕微鏡写真である。
【0048】
図7(a)〜(d)と図8(a)〜(d)はイオンエネルギーが1000eV、照射時間がそれぞれゼロ、8秒、15秒、30秒の時の凹部12の開口及び断面の電子顕微鏡写真である。
図9(a)〜(d)と図10(a)〜(d)は、イオンエネルギーが2000eV、照射時間がそれぞれゼロ、15秒、30秒、60秒の時の凹部12の開口及び断面の電子顕微鏡写真である。
【0049】
図11(a)〜(d)、図12(a)〜(d)はイオンエネルギーが3000eV、照射時間がそれぞれ20秒、40秒、60秒、90秒の時の凹部12の開口及び断面の電子顕微鏡写真である。
【0050】
図6を見ると、イオンエネルギー300eVでは、エッチングによるオーバーハング部19の減少量は少ないものの、凹部12底部分の金属膜15の非対称性が改善され、底部分に金属膜15が均一に充填されることが分かる。
【0051】
図7〜図12を見ると、凹部12底部の金属膜15の非対称性が改善された上に、エッチングによってオーバーハング部19が減少しており、その減少量はイオンエネルギーが大きい程大きいことが変わる。
特に、イオンエネルギーが3000eVと高エネルギーの場合、ボトムカバレッジも保持され、凹部12底部のエッチング量が少ないことが分かる。
【0052】
以上は、成膜工程とエッチング工程とを別々の真空槽で行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図13の符号70は本発明に用いる成膜室の他の例を示している。この成膜室70の内部には、ターゲット25と、イオン照射装置50の両方が配置されている。
【0053】
イオン照射装置50は、ステージ42上の基板11への入射角度θが0°以上30°以下になるように配置され、ターゲット25はステージ42上の基板11にスパッタ粒子が到達するように、表面がステージ42に向けられている。
【0054】
ここでは、イオン照射装置50は放出口55がステージ42真上に位置するように配置され、ターゲット25はステージ42の真上から離れた位置で、スパッタリングされる面が基板11表面に対して傾けられているが、ターゲット25をステージ42真上に配置し、放出口55をステージ42の真上から離れた位置に配置してもよい。
【0055】
この成膜室70では、同じステージ42上の基板11に、ターゲット25からのスパッタ粒子と、イオン照射装置50からのイオンの両方が到達する。従って、基板11を搬送しなくても、成膜工程とエッチング工程を交互に行うことが可能である。
【0056】
また、ターゲット25をスパッタリングしながら、放出口55からイオン化されたエッチングガスを放出して、成膜工程とエッチング工程とを同時に行えば、オーバーハング部19は成長する前に、エッチングガスのイオンでエッチングされるので、凹部12の開口は塞がれず、凹部12を金属膜15で充填することができる。
【0057】
更に、イオン照射装置50と、ターゲット25とを、エッチングガスのイオンと、スパッタリング粒子を成膜室70内部の異なる位置に到達するように配置し、基板11をエッチングガスのイオンが到達する位置と、スパッタリング粒子が到達する場所に交互に搬送(例えば回転)することで、成膜工程とエッチング工程とを交互に行うこともできる。
【0058】
以上は、金属膜15として純銅膜を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる群より選択される1種以上の金属材料を含有するターゲット25をスパッタリングし、Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる群より選択される1種以上の金属材料を含有する金属膜15を形成することもできる。
【0059】
更に、成膜工程でターゲット25をスパッタリングする際に、N2、NH3等窒化ガス、O2、O3、H2O等の酸化ガスのいずれか一方又は両方を成膜室2a〜2c内部に供給し、金属の窒化物と、金属の酸化物のいずれか一方又は両方を含む金属膜15を成膜してもよい。
【0060】
また、成膜方法はスパッタリング法に限定されない。基板11を、金属膜材料(例えば上述した金属材料)の蒸気と、金属膜材料と反応する反応ガス(例えば上述した窒化ガスや酸化ガス)に交互に曝して、金属膜材料と反応ガスの反応生成物の膜を形成するALD法、基板を金属膜材料の蒸気と、反応ガスに同時に曝して反応生成物の膜を生成するCVD法等で金属膜15を成膜することもできる。
【0061】
金属膜15はバリア膜13に密着形成する場合に限定されず、バリア膜13が形成されず、基板11が露出するものを成膜対象物として用い、金属膜15を基板11に密着形成してもよい。
【0062】
エッチング工程の入射角度θも特に限定されないが、入射角度θが30°を超えると、イオンの凹部12入射量が小さくなり、オーバーハング部19の除去量と、凹部12底部の非対称性の改善が劣るので、入射角度θは0°以上30°以下が望ましい。
更に、エッチング工程で、基板11に直流又は交流のバイアス電圧を印加しながら、エッチングガスのイオンを入射させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に用いる成膜装置の一例を示す平面図
【図2】成膜室の一例を示す断面図
【図3】エッチング室の一例を示す断面図
【図4】(a)〜(e):凹部を充填する工程を説明するための断面図
【図5】配線膜が形成された状態の基板を示す断面図
【図6】(a)〜(d):イオンエネルギーが300eV、照射時間がゼロ、15秒、30秒、45秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図7】(a)〜(d):イオンエネルギーが1000eV、照射時間がゼロ、8秒、15秒、30秒の時の凹部の開口を撮影した電子顕微鏡写真
【図8】(a)〜(d):イオンエネルギーが1000eV、照射時間がゼロ、8秒、15秒、30秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図9】(a)〜(d):イオンエネルギーが2000eV、照射時間がゼロ、15秒、30秒、60秒の時の凹部の開口を撮影した電子顕微鏡写真
【図10】(a)〜(d):イオンエネルギーが2000eV、照射時間がゼロ、15秒、30秒、60秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図11】(a)〜(d):イオンエネルギーが3000eV、照射時間が20秒、40秒、60秒、90秒の時の凹部の開口を撮影した電子顕微鏡写真
【図12】(a)〜(d):イオンエネルギーが3000eV、照射時間が20秒、40秒、60秒、90秒の時の凹部の断面を撮影した電子顕微鏡写真
【図13】成膜室の他の例を示す断面図
【符号の説明】
【0064】
11……基板 12……凹部 15……金属膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させる成膜工程と、
前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させ、前記薄膜の前記凹部上に突き出されたオーバーハング部を除去するエッチング工程とを2回以上交互に繰り返す凹部充填方法。
【請求項2】
表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させながら、
前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させる凹部充填方法。
【請求項3】
イオン化した前記エッチングガスを、200eV以上7000eV以下のイオンエネルギーになるように加速して入射させる請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の凹部充填方法。
【請求項4】
前記エッチングガスとして、Arと、Neと、Krとからなる希ガス群より選択されるいずれか1種類以上の希ガスを用いる請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の凹部充填方法。
【請求項5】
Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる金属元素群より選択されるいずれか1種の金属元素を含有する前記薄膜を成長させる請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の凹部充填方法。
【請求項1】
表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させる成膜工程と、
前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させ、前記薄膜の前記凹部上に突き出されたオーバーハング部を除去するエッチング工程とを2回以上交互に繰り返す凹部充填方法。
【請求項2】
表面に凹部が形成された基板の、前記凹部底面と前記凹部周囲の表面に薄膜を成長させながら、
前記基板の表面上にイオン化したエッチングガスを入射させる凹部充填方法。
【請求項3】
イオン化した前記エッチングガスを、200eV以上7000eV以下のイオンエネルギーになるように加速して入射させる請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の凹部充填方法。
【請求項4】
前記エッチングガスとして、Arと、Neと、Krとからなる希ガス群より選択されるいずれか1種類以上の希ガスを用いる請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の凹部充填方法。
【請求項5】
Cuと、Alと、Tiと、Taと、Wと、Mnと、Zrと、Hfと、Vと、Agと、Pdと、Ptと、Auと、Mgと、Coと、Niとからなる金属元素群より選択されるいずれか1種の金属元素を含有する前記薄膜を成長させる請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の凹部充填方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図13】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図13】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−283144(P2008−283144A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128493(P2007−128493)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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