説明

半導体ウェハの表面検査システム及び表面検査方法

【課題】半導体ウェハ表面に存在するソーマークなどの線状の凹凸について、短時間かつ容易に検査が可能であり、検査に対する振動の影響を低減できる技術を提供する。
【解決手段】半導体ウェハWの表面の全域に光源装置2によって斜め方向から光を照射し、CCDカメラ4で半導体ウェハW全体を撮影する。これにより、半導体ウェハWの各ポイントからの前記照射光の反射光または散乱光の強度を検出する。取得された光の2次元的な強度分布に基づいて、半導体ウェハWの表面に生成されたソーマークなどの凹凸を検出し、またはその大きさを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの表面に光を照射し、半導体ウェハ表面からの反射光または散乱光を検出し、半導体ウェハ表面の、線状の溝等の微細な凹凸を検出しまたは、凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査システム及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や太陽電池の製造用の半導体ウェハは、インゴットの生成後、ワイヤーソーなどでインゴットをスライスすることによって製造されることが多い。インゴットを半導体ウェハにスライスする際のワイヤーソーなどの加工跡は、半導体ウェハ表面の直線状の凹凸となる。このような表面の凹凸の程度が大きいと、例えば太陽電池の場合には光エネルギーの電気エネルギーへの変換効率が低下したり寿命が短くなるなどの不都合の原因となることが知られている。
【0003】
従って、半導体ウェハの製造工程においては、半導体ウェハの表面の線状の凹凸(以下、ソーマークともいう。)を含めた凹凸について検査し、凹凸の大きさが許容範囲を超えたものについて除去する必要がある。従来、ソーマークなどの凹凸の大きさの評価方法としては、人が目視で評価する方法、接触式の表面粗さ計で計測する方法、レーザー変位計で計測する方法などがあった。
【0004】
しかしながら、人が目視で評価する方法の場合には、合否の判定基準が曖昧で評価の精度が低いという問題があった。また、接触式の表面粗さ計やレーザー変位計を用いてソーマークの凹凸の大きさを測定する場合には、必ず、接触式の表面粗さ計やレーザー変位計のプローブを半導体ウェハの表面上を走査させねばならず、表面全体を検査するには多くの時間が必要である不都合があった。また、検査時間の時間短縮のために走査領域を狭くすると半導体ウェハ全体を検査することが不可能となり検査自体の精度が低下する不都合があった。
【0005】
さらに、製造工程において、接触式の表面粗さ計やレーザー変位計を用いてソーマークなどの凹凸の大きさを測定する場合には、振動の影響を受けやすいので、工程を停止するなどして振動を抑制する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−365234号公報
【特許文献2】特開2002−340811号公報
【特許文献3】特開2002−340537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、半導体ウェハの表面に存在するソーマークなどの凹凸の大きさについて、短時間かつ容易に検査可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、半導体ウェハの表面の全域に斜め方向から、少なくとも入射面において平行な光を照射し、撮影装置で半導体ウェハ全体を撮影することで、半導体ウェハの各部分からの前記照射光の反射光または散乱光の2次元的な強度分布を検出し、この強度
分布に基づいて、前記半導体ウェハの表面における凹凸を検出またはその大きさを測定することを最大の特徴とする。
【0009】
より詳しくは、半導体ウェハの表面における凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査システムであって、
半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から、入射面において平行な光を照射する光源装置と、
前記半導体ウェハの表面全体を撮影する撮影装置と、を備え、
前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の散乱光または反射光の2次元的な強度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする。
【0010】
半導体ウェハの表面に対して斜めから光を照射した場合には、表面に凹凸があった場合に、照射光の大部分は入射角と同等の出射角で正反射する。一方、照射光の一部は凹凸によって散乱し、または凹凸表面において乱反射することで撮影装置の光学系に入射する。これにより、撮影装置(撮像装置を含む)によって撮影される半導体ウェハ表面の2次元的(平面的)な画像においては、半導体ウェハの表面において凹凸が存在する部分の光強度が高くなる。従って、当該画像における反射光または散乱光の2次元的な強度分布は、半導体ウェハの表面における凹凸の大きさの分布と高い相関を有する。
【0011】
本発明においてはこの原理を利用して、カメラで半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、散乱光または反射光の強度分布に基づいて、半導体ウェハの表面における凹凸を検出しまたはその大きさを測定することとした。
【0012】
これによれば、接触式の表面粗さ計のプローブや、非接触式のレーザー変位計のプローブを、半導体ウェハに対して走査させる工程を伴わずに容易に半導体ウェハの表面における凹凸を検出またはその大きさを測定することが可能となる。また、本発明に係るシステムにおいては、検査のために必要となる可動部がないため、システムの信頼性及び耐久性を高めることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明においては、撮影装置の光学系の被写界深度を適切に設定することで、半導体ウェハの振動の影響を除去することができ、従来技術のように、半導体ウェハ表面の検査の際に、半導体ウェハの移動を停止して振動の減少を待つなどの必要がなくなり、作業効率を向上させることが可能である。また、振動の抑制のための特別な部品を省略することが可能となるのでコストの低減が可能となる。
【0014】
また、本発明においては、光源装置は、半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から光を照射すればよく、照射位置の精密な調整などが不要である。従って、光源装置の構成が簡略化されコストを低減することが可能である。なお、光源装置は、半導体ウェハの表面の全域をできる限り均一に照射できるものが好ましい。
【0015】
なお、本発明においては、前記光源装置が照射する光は、前記半導体ウェハの表面への入射面において平行な光である。この理由は以下のとおりである。
【0016】
発明者らの研究により、撮影装置で半導体ウェハの表面の全域を撮影することで得られる散乱光または反射光の強度は、照射光の入射角に依存していることが分かった。従って、少なくとも半導体ウェハの表面への入射面において照射光を平行光とすることにより、半導体ウェハの表面に対する照射光の入射角を一様に揃えることができ、撮影装置で撮影することで得られた散乱光または反射光の2次元的な強度分布が、半導体ウェハの表面における凹凸により強い相関を持つようにすることができる。これにより、半導体ウェハの
表面凹凸の検出精度または、凹凸の大きさの測定精度をより高くすることができる。
【0017】
また、本発明においては、前記光源装置が照射する光の前記半導体ウェハの表面への入射角は74度以上85度以下であるようにするとよい。
【0018】
ここで、発明者らの研究により、撮影装置で半導体ウェハの表面の全域を撮影することで得られる散乱光または反射光の強度は、照射光の入射角が90度に近いほど、換言すると、照射光が半導体ウェハの表面に浅い角度で入射するほど、凹凸(の角度)に対する感度が高くなることが分かった。従って、本発明においては照射光の入射角は90度に近いほどよいことになる。
【0019】
しかしながら、入射角が大きすぎる(照射光と半導体ウェハの表面とのなす角度が小さすぎる)場合には、凹凸の頂点の後ろ側に影が生じてしまい、凹凸の正確な測定が困難になる場合がある。また、入射角が小さすぎる(照射光と半導体ウェハの表面とのなす角度が大きすぎる)場合には、感度の低下が著しくなり、やはり、凹凸の正確な測定が困難になる場合がある。そこで、本発明においては、照射光の半導体ウェハへの入射角を74度以上85度以下とした。これにより、半導体ウェハの表面における凹凸をより高精度で検出し、または凹凸の大きさを高精度で測定することが可能となる。また、上記のように、半導体ウェハの表面に照射光を浅い角度で入射することで、半導体ウェハが、入射面と半導体ウェハの交線のまわりに傾いたとしても、当該傾きの、凹凸の検出精度に対する影響を抑制することが可能となる。
【0020】
また、本発明が適用される、前記半導体ウェハの表面における凹凸は、前記半導体ウェハの切断時に表面に生じる線状の凹凸(ソーマーク)としてもよい。
【0021】
前述のように、半導体素子や太陽電池の製造用の半導体ウェハは、インゴットの生成後、ワイヤーソーなどでインゴットをスライスすることによって製造されることが多い。そして、インゴットを半導体ウェハにスライスする際に生じるワイヤーソーによる直線状の凹凸(ソーマーク)が大きいと、例えば太陽電池の場合には光エネルギーの電気エネルギーへの変換効率が低下したり寿命が短くなるなどの不都合の原因となる。
【0022】
従って、本発明を、半導体ウェハの表面に生じるソーマークに適用することで、半導体素子の性能をより顕著に向上させることが可能である。
【0023】
また、本発明においては、前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記線状の凹凸(ソーマーク)に平行方向に積算した平行積算値に基づいて、前記凹凸を検出しまたは該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0024】
ここで、前述のように、撮影装置によって撮影される画像においては、半導体ウェハの線状の凹凸(ソーマーク)が存在する部分が明るくなる。すなわち、撮影装置によって撮影される画像においては線状の凹凸(ソーマーク)が線状の模様として現れる。従って、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記線状の凹凸(ソーマーク)に平行方向に積算した平行積算値は、線状の凹凸(ソーマーク)による、散乱光または反射光の強度の変動を含んだ信号となる。一方、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記線状の凹凸(ソーマーク)に垂直方向に積算した垂直積算値は、線状の凹凸(ソーマーク)による、散乱光または反射光の強度の変動を含まない信号となる。
【0025】
本発明においては、この平行積算値に基づいて、前記線状の凹凸(ソーマーク)を検出またはその大きさを測定するようにしたので、前記線状の凹凸(ソーマーク)による、散乱光または反射光の強度の変動を積算して拡大することができ、より明確に、線状の凹凸(ソーマーク)を検出しまたは大きさを測定することが可能である。より具体的には、平行積算値の、線状の凹凸(ソーマーク)に垂直な方向についての変動の大きさや、変動の最大値から、線状の凹凸(ソーマーク)の大きさを導出してもよい。
【0026】
また、平行積算値の、線状の凹凸(ソーマーク)に垂直な方向についての変動の大きさや最大値から、垂直積算値の、線状の凹凸(ソーマーク)に平行な方向についての変動の大きさや最大値を差し引いた値により、線状の凹凸(ソーマーク)の大きさを測定してもよい。これによれば、線状の凹凸(ソーマーク)による影響と、線状の凹凸(ソーマーク)以外の表面凹凸の影響を含む平行積算値から、線状の凹凸(ソーマーク)以外の表面凹凸の影響を含む垂直積算値を差し引いた値を基礎にすることができるので、より確実に線状の凹凸(ソーマーク)の影響のみを抽出することが可能となる。
【0027】
また、本発明においては、前記光源装置は前記半導体ウェハの法線方向から見て互いに約90度異なる方向から前記半導体ウェハの表面に光を照射する第1光源装置及び第2光源装置からなり、
前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光は、前記第1光源装置および前記第2光源装置のうち、前記ソーマークに垂直方向から光を照射する方の光源装置から照射された光の、前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光とするようにしてもよい。
【0028】
上述のように、線状の凹凸(ソーマーク)と垂直方向から光を照射した場合には、撮影装置で撮影された画像に線状の凹凸(ソーマーク)の影響が現れる一方、線状の凹凸(ソーマーク)と平行方向から光を照射した場合には、撮影装置で撮影された画像に線状の凹凸(ソーマーク)の影響が現れない。従って、一方向から半導体ウェハに光を照射する場合には、光源装置からの光の照射方向に対して線状の凹凸(ソーマーク)が垂直となるように、半導体ウェハの姿勢を規制する必要がある。このことは、接触式のプローブや非接触式のレーザー変位系を用いた場合にも言えることであるが、作業効率の向上の妨げとなっている。
【0029】
そこで、本発明においては、半導体ウェハの法線方向から見て互いに90度角度の異なる2方向に第1光源装置と第2光源装置とを備え、各々の光源装置から照射される光の、線状の凹凸(ソーマーク)による散乱光または反射光を撮影装置で受光し、線状の凹凸(ソーマーク)に垂直方向から照射した光による画像から、線状の凹凸の検出または大きさの測定を行うこととした。これによれば、半導体ウェハの設置方向を、線状の凹凸(ソーマーク)の方向が一つの光源からの照射光に垂直になるように揃える作業が必要なくなるので、作業効率を向上させることが可能となる。
【0030】
また、これによれば、線状の凹凸(ソーマーク)の影響が現れる2次元的な画像と、線状の凹凸(ソーマーク)の影響が現れない2次元的な画像とを分離して取得することができるので、線状の凹凸(ソーマーク)と、それ以外の凹凸とを分離して検出または大きさの測定を行うことが可能である。
【0031】
また、本発明においては、前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記半導体ウェハの表面を分割して得られる複数の領域に相当するよう分割し、分割された各々の領域について前記線状の凹凸を
検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0032】
ここで、従来技術、例えば、接触式のプローブや非接触式のレーザー変位計のプローブに半導体ウェハの表面を走査させるシステムにおいては、半導体ウェハの一部についてのデータで代表して線状の凹凸(ソーマーク)の評価を行っているに過ぎない。従って、半導体ウェハの表面を複数の領域に分割して各々の領域について線状の凹凸(ソーマーク)の検出や大きさの測定を行うためには、各々の領域についてプローブを走査させる必要があり、多くの時間と作業を要する。
【0033】
これに対し、本発明においては、半導体ウェハの全面を撮影装置で撮影し、その画像から線状の凹凸(ソーマーク)の検出や大きさの測定を行う。従って、データ処理以外の作業の変更なしに、分割された各領域において線状の凹凸(ソーマーク)の検査を行うことが可能となる。従って、本発明によれば、より簡単且つ迅速に、半導体ウェハの表面を分割した各々の領域について線状の凹凸(ソーマーク)の検査を行うことが可能であり、より詳細な検査結果を得ることが可能となる。
【0034】
また、本発明においては、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線を積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0035】
ここで、発明者らの研究により、半導体ウェハの上方の撮影装置によって得られた半導体ウェハの表面における散乱光または反射光の強度分布は、半導体ウェハの表面形状の傾きの分布との間に特に強い相関があることが分かった。従って、散乱光または反射光の強度分布をそのまま用いて半導体ウェハの表面の凹凸を評価することで、充分に高精度な評価結果が得られる。さらに、本発明において、散乱光または反射光の強度分布を積分した曲線に基づいて半導体ウェハの表面の凹凸を評価すれば、凹凸の角度の積分値すなわち凹凸の大きさに基づいて評価できるので、半導体ウェハの表面の凹凸の大きさの分布を直接評価することができる。その結果、より直接的により精度よく、半導体ウェハの表面の凹凸を検出し、または凹凸の大きさを測定することができる。なお、この発明は、ソーマーク以外の半導体ウェハの表面の凹凸の検出や測定にも充分適用することができる。
【0036】
また、その際に、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記光源装置が照射する光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0037】
そうすれば、光源装置が照射する光の半導体ウェハの表面への入射面と半導体ウェハの表面との交線方向についての半導体ウェハの表面の凹凸の1次元的な分布をより精度よく得ることができる。また、この分布を前記交線方向に垂直方向に複数求めることで、より精度よく、半導体ウェハの表面の凹凸の2次元的な分布を得ることが可能となる。
【0038】
また、その際に、複数の前記1次元的な強度分布曲線より、前記交線方向についての平均の強度分布曲線を導出し、該平均の強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出することで、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することとしてもよい。
【0039】
すなわち、この場合には、複数の半導体ウェハの表面からの散乱光または反射光の1次元的な強度分布より、前記交線方向の平均的な強度分布を導出する。そして、この前記交線方向の平均的な強度分布を積分した曲線を導出することで、半導体ウェハの表面におけ
る前記交線方向の平均的な凹凸の大きさを導出する。これによれば、試料である半導体ウェハの前記交線方向の平均的な凹凸の大きさをより簡単に取得することができ、試料の評価をより簡単、迅速に行うことが可能となる。
【0040】
また、本発明においては、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、各周波数に対する振幅の密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0041】
この発明では、半導体ウェハの表面における散乱光または反射光の2次元的な強度分布またはそれを積分した曲線を周波数分析し、その密度分布を求める。これによれば、例えばソーマークが存在する場合には、ソーマークの分布に係る周波数にピークが立つ筈である。また、他の周波数において密度分布が特に高い場合には、その周波数帯に存在する凹凸が何らかの原因で増加していることになる。このように、本発明によれば、半導体ウェハの表面の凹凸についてより詳細な情報を得ることが可能となる。
【0042】
また、この場合には、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記光源装置が照射する光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された曲線を周波数分析するようにしてもよい。
【0043】
そうすれば、光源装置が照射する光の半導体ウェハの表面への入射面と半導体ウェハの表面との交線方向についての半導体ウェハの表面の凹凸の1次元的な分布に関する周波数の密度分布を得ることができ、交線方向についての半導体ウェハの表面の凹凸の1次元的な分布に関するより詳細な情報を得る事が可能となる。また、この密度分布を前記交線方向と垂直方向に複数求めることで、半導体ウェハの表面の凹凸の2次元的な分布に関するより詳細な情報を得ることができる。
【0044】
さらに、この場合には、複数の前記1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された複数の曲線を各々周波数分析して得られた複数の前記密度分布を平均して得られる平均密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。すなわち、複数の1次元的な強度分布に関し、前記交線方向について積分して得られる曲線を各々導出し、得られた複数の曲線を周波数分析して得られた複数の密度分布を、さらに平均する。これによれば、試料である半導体ウェハの前記交線方向の平均的な凹凸の大きさの詳細な情報をより簡単に取得することができ、試料の評価をより簡単、迅速に行うことができる。
【0045】
また、本発明においては、前記半導体ウェハが多結晶ウェハであり、
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、
その中で前記多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する第2の強度分布曲線または該第2の強度分布曲線を積分した曲線を導出し、
前記散乱光または反射光の強度分布曲線から前記第2の強度分布曲線に相当する成分を除去することで得られる第3の強度分布曲線または、前記強度分布曲線を積分した曲線から、前記第2の強度分布曲線を積分した曲線に相当する成分を除去することで得られる曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0046】
ここで、多結晶の半導体ウェハの表面においては、結晶粒による明るさのコントラストが観察されることが知られている。この結晶粒による明るさのコントラストはソーマーク
等の粗さの計測に影響を与えるため、これらを消し去ることで、結晶粒の影響を除いたより正確な半導体ウェハの表面の凹凸に関する情報が得られる。従って、本発明においては、前記散乱光または反射光の強度分布またはそれを積分した曲線を周波数分析し、その中で多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する強度分布またはそれを積分した曲線を導出する。そして、全体の周波数範囲に相当する散乱光または反射光の強度分布またはそれを積分した曲線から、多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する強度分布またはそれを積分した曲線を除去することとした。これにより、多結晶の結晶粒の影響を受けていない、半導体ウェハの表面からの散乱光または反射光の強度分布または当該分布を積分した曲線を得ることができる。その結果、半導体ウェハの表面の凹凸の検出または凹凸の大きさの測定をより精度よく行うことが可能となる。
【0047】
また、本発明においては、前記光源装置は、
直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向から見た断面図が放物線形状を示すとともに、前記直線と平行方向には該放物線形状を維持する反射鏡と、を有し、
前記直線と平行方向から見た場合に、前記光源は、前記放物線の焦点に配置されるようにしてもよい。
【0048】
ここで、本発明は、半導体ウェハからの散乱光または反射光の強度から、線状の凹凸(ソーマーク)を検出または大きさを測定するものであるので、半導体ウェハに照射される照射光の強度は均一であることが望ましい。一方、本発明に使用される光源装置は、半導体ウェハに対して斜めから光を照射するので、半導体ウェハにおいて光源装置により近い部分に対する照射強度がより遠い部分に比較して強くなる傾向がある。
【0049】
そこで、本発明においては、光源装置が、直線状に構成された光源と、その直線と平行方向から見た断面図が放物線形状を示すとともにその直線と平行方向には放物線形状を維持する反射鏡と、を有し、その直線と平行方向から見た場合に、光源が反射鏡の放物線の焦点に配置されるようにした。
【0050】
これによれば、光源は直線状に構成されているので、直線と平行方向には光源装置からの照射光は均一性を維持し易い。一方、光源が反射鏡の放物線の焦点に配置されているので、直線に垂直方向についても、反射鏡により反射される光は放物線の対称線に平行な平行光となる。従って、半導体ウェハに対して斜め方向から光を照射したとしても、半導体ウェハの表面における照射強度のバラツキを抑制することが可能となる。従って、より正確に線状の凹凸(ソーマーク)の検査を行うことが可能となる。
【0051】
また、本発明においては、前記光源装置は、
直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向の軸を有するシリンドリカルレンズまたはシリンダフレネルレンズと、を有し、
前記直線と平行方向から見た場合に、前記光源は、前記シリンドリカルレンズまたは前記シリンダフレネルレンズの焦点に配置されるようにしてもよい。
【0052】
このことによっても、直線と平行方向には光源装置からの照射光は均一性を維持し易くすることができ、直線に垂直方向についても、反射鏡により反射される光は放物線の対称線に平行な平行光とすることができる。従って、半導体ウェハに対して斜め方向から光を照射したとしても、半導体ウェハの表面における照射強度のバラツキを抑制することができ、より正確に線状の凹凸(ソーマーク)の検査を行うことが可能となる。
【0053】
また、本発明においては、前記光源装置は、
直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向の軸を有するとともに前記光源から照射される光を直線状に集光する第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、
前記第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズに対して前記光源と反対側に配置され前記直線と平行の開口部を有するスリットと、
前記直線と平行方向の軸を有するとともに前記スリットの開口部に焦点が位置するように配置され、前記スリットを通過した後に拡散した前記光源から照射された光を平行光にする第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、
を有するようにしてもよい。
【0054】
上述のように、光源から照射される照射光は、入射面において平行光であることが要求される。そして、この平行光の平行度は高いほどよい。一方、入射面に垂直な面内では平行度はそれほど要求されない。それは、入射面に垂直な面内ではむしろ多数の出射源からの光が半導体ウェハの表面を均一に照明することが重要となるからである。
【0055】
そこで、本発明においては、光源装置は、直線状に構成された光源と、光源によって構成された直線と平行方向の軸を有する第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、前述の直線(または、第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズの軸)と平行な開口部を有するスリットと、光源によって構成された直線と平行方向の軸を有しスリットの開口部に焦点がくるように配置され、スリットを通過した後に拡散した光源から照射された光を平行光にする第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、を有することとした。
【0056】
これによれば、簡単な構成でより確実に、入射面において平行度の高い平行光を得ることができるとともに、入射面に垂直な面内では拡散光の集合からなる照射光を得ることができる。これにより、半導体ウェハの、入射面と半導体ウェハの交線のまわりの傾きの影響を抑えることができ、半導体ウェハの表面の凹凸の検出精度および測定精度を高めることができる。
【0057】
また、本発明においては、前記光源装置は、
光の照射面が略長方形状になるように構成された光源と、
前記長方形の一辺と平行方向の軸を有するとともに前記光源から照射される光を直線状に集光する第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、
前記第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズの焦点部分に前記軸と平行の開口部を有するとともに前記光源から照射された光が直線状に集光した集光部分の幅を制限するスリットと、
前記長方形の一辺と平行方向の軸を有するとともに直線状に集光した後に拡散した前記光源から照射された光を平行光に戻す第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、
を有するようにしてもよい。
【0058】
この場合は、光の照射面が略長方形状となっている光源から照射された光は、第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズによって直線状に集光される。また、その際、焦点部分に開口部を有するスリットによって集光部分の幅が制限される。従って、光源から照射された平行光のみがスリットを通過することができる。さらに、一旦直線状に集光された後に拡散した光は、第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズによって平行光に戻される。
【0059】
これによれば、光源から照射された光のうちの平行光のみを、スリットで選別することができ、さらに、第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズによって
選別された光を平行光に戻すことで、より正確に平行光束を得ることが可能となる。また、光源は、光の照射面が長方形状となるように構成されるので、より強い光強度を得ることが可能となる。なお、上記の光の照射面の形状は、必ずしも正確な長方形である必要はない。略長方形状は平行四辺形状、菱形状、台形状、楕円状などを含んでいる。
【0060】
また、本発明においては、光源装置における前記光源はLED素子としてもよい。より具体的には、LED素子の点光源を直線状に並べることで光源装置の光源としてもよい。そうすれば、光源をより正確に放物線の焦点に配置することが可能となり、結果としてより確実に、半導体ウェハに対して光を均一に照射することが可能となる。また、光源装置における前記光源は、LEDからの光を複数の光ファイバの一端に入射し、該複数の光ファイバの他端を直線状に並列させることで構成されるようにしてもよい。そうすれば、光源の配置の自由度を高めることができ、装置全体の構造の簡略化、小型化を促進することができる。また、小径のファイバを用いることで、光源をさらに正確に放物線の焦点に配置することが可能となり、さらに確実に、半導体ウェハに対して光を均一に照射することが可能となる。また、本発明においては、LED素子の点光源を平面状に並べることで光源装置の光源としてもよい。そうすれば、より簡単に光の照射面を略長方形状になるように構成することが可能となる。
【0061】
また、本発明は、太陽電池用のウェハに対して使用してもよい。一般に太陽電池用のウェハは、電子素子用の半導体ウェハと比較してウェハに求められる精度が緩和されており、ソーマークなどの線状の凹凸がより生じ易い。従って、本発明を太陽電池用のウェハに対して使用することで、より効果的な評価を行うことができる。
【0062】
また、本発明においては、前記半導体ウェハが載置されるとともに、該半導体ウェハを、前記光源装置が該半導体ウェハの表面に対して斜め方向から光を照射することが可能で且つ前記撮影装置が該半導体ウェハの表面全体を撮影することが可能な位置に導く運搬装置をさらに備え、
インラインで、前記半導体ウェハにおける前記ソーマークを検出し、または該凹凸の大きさを測定することが可能に構成されるようにしてもよい。
【0063】
そうすれば、数多くの半導体ウェハに対して効率的に表面の線状の凹凸(ソーマーク)の検査を行うことが可能である。また、本発明においては、上述のように半導体ウェハの振動の影響が少ないので、半導体ウェハの検査時に運搬装置を停止させる必要性が少なく、工程の時間短縮をすることが可能となる。
【0064】
また、本発明は、直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向から見た断面図が放物線形状を示すとともに、前記直線と平行方向には該放物線形状を維持する反射鏡と、を有し、
前記直線と平行方向から見た場合に、前記光源は、前記放物線の焦点に配置されたことを特徴とする半導体ウェハの表面検査システム用の光源装置であってもよい。
【0065】
また、直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向の軸を有するシリンドリカルレンズまたはシリンダフレネルレンズと、を有し、
前記直線と平行方向から見た場合に、前記光源は、前記シリンドリカルレンズまたは前記シリンダフレネルレンズの焦点に配置されたことを特徴とする半導体ウェハの表面検査システム用の光源装置であってもよい。
【0066】
また、光の照射面が略長方形状になるように構成された光源と、
前記長方形の一辺と平行方向の軸を有するとともに前記光源から照射される光を直線状
に集光する第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、
前記第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズの焦点部分に前記軸と平行の開口部を有するとともに前記光源から照射された光が直線状に集光した集光部分の幅を制限するスリットと、
前記長方形の一辺と平行方向の軸を有するとともに直線状に集光した後に拡散した前記光源から照射された光を平行光に戻す第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、
を有することを特徴とする半導体ウェハの表面検査システム用の光源装置であってもよい。
【0067】
また、本発明は、直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向の軸を有するとともに前記光源から照射される光を直線状に集光する第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、
前記第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズに対して前記光源と反対側に配置され前記直線と平行の開口部を有するスリットと、
前記直線と平行方向の軸を有するとともに前記スリットの開口部に焦点が位置するように配置され、前記スリットを通過した後に拡散した前記光源から照射された光を平行光にする第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、
を有することを特徴とする半導体ウェハの表面検査システム用の光源装置であってもよい。
【0068】
また、本発明は、半導体ウェハの表面における凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査方法であって、
半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から入射面において平行な光を照射し、
前記半導体ウェハの表面全体を撮影し、
前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記照射された光の散乱光または反射光の2次元的な強度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする半導体ウェハの表面検査方法であってもよい。
【0069】
また、その際、前記半導体ウェハの表面の全域に対して照射する光の入射角は74度以上85度以下としてもよい。また、前記半導体ウェハの表面における凹凸は、前記半導体ウェハの表面に生じるソーマークであってもよい。
【0070】
また、本発明は、前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記ソーマークに平行方向に積算した平行積算値に基づいて、前記凹凸を検出しまたは該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査方法としてもよい。
【0071】
さらに、前記半導体ウェハの法線方向から見て複数の方向から前記半導体ウェハの表面に光を照射し、
前記法線方向から見て前記ソーマークに垂直方向から照射された光の、前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記ソーマークに平行方向に積算した平行積算値に基づいて、前記凹凸を検出しまたは該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査方法としてもよい。この場合は、前記半導体ウェハの表面に光を照射する方向は、2方向に限られず、3方向以上としてもよい。
【0072】
これによれば、線状の凹凸(ソーマーク)の影響が現れる2次元的な画像と、線状の凹凸(ソーマーク)の影響が現れない2次元的な画像とを分離して取得することができるので、線状の凹凸(ソーマーク)と、それ以外の凹凸とを分離して検出または大きさの測定を行うことが可能である。
【0073】
さらに、前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの・BR>U乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記半導体ウェハの表面を分割して得られる複数の領域に相当するよう分割し、分割された各々の領域について前記線状の凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査方法としてもよい。
【0074】
さらに、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線を積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする半導体ウェハの表面検査方法としてもよい。
【0075】
その際に、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記照射される光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0076】
さらに、複数の前記1次元的な強度分布曲線より、前記交線方向についての平均の強度分布曲線を導出し、該平均の強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出することで、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0077】
また、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、各周波数に対する振幅の密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0078】
その際には、前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記照射される光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された曲線を周波数分析するようにしてもよい。
【0079】
さらに、複数の前記1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された複数の曲線を各々周波数分析して得られた複数の前記密度分布を平均して得られる平均密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0080】
また、前記半導体ウェハが多結晶ウェハである場合には、
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、
その中で前記多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する第2の強度分布曲線または該第2の強度分布曲線を積分した積分曲線を導出し、
前記散乱光または反射光の強度分布曲線から前記第2の強度分布曲線に相当する成分を除去することで得られる第3の強度分布曲線または、前記強度分布曲線を積分した曲線から、前記第2の強度分布曲線を積分した積分曲線に相当する成分を除去することで得られる曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定するようにしてもよい。
【0081】
さらに、前記半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から、LEDによって光を照射する半導体ウェハの表面検査方法としてもよい。
【0082】
ここで、LEDは、レーザーほど強くないもののある程度の指向性を有している。また、照射光の光強度分布はレーザーのようにガウシアン分布とならず比較的均一である。従って、LEDを用いて光を照射することで、簡単な構成でより均一な強度分布を有する光で、半導体ウェハの表面の全域を照射することが可能である。本発明では複数のLEDを並べて用いてもよいことは当然である。
【0083】
なお、上記した本発明の課題を解決する手段については、可能なかぎり組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0084】
本発明にあっては、半導体ウェハ表面に存在するソーマークなどの直線状の凹凸の程度について、容易に短時間で、且つ高精度に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例1における半導体ウェハ表面検査システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1における半導体ウェハ表面検査システムにおいて取得される画像データの例と、画像における各ポイントの光強度の積算方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例2における半導体ウェハ表面検査システムを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例2における半導体ウェハ表面検査システムにおける光の照射方向と、取得された画像における各ポイントの光強度の積算方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例3における半導体ウェハ表面検査システムの表示ユニットで表示される、半導体ウェハ表面を9分割した画像の例である。
【図6】本発明の実施例4における光源装置を示す概略図である。
【図7】本発明の実施例4における光源装置の別の態様を示す概略図である。
【図8】本発明の実施例4における光源装置のさらに別の態様を示す概略図である。
【図9】本発明の実施例5における半導体ウェハ表面検査システムの概略構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例5における半導体ウェハ表面検査システムの別態様の概略構成を示す図である。
【図11】本発明の実施例6において半導体ウェハに光源から平行光が入射した場合に生じる現象について説明するための図である。
【図12】本発明の実施例6における半導体ウェハ表面検査システムの概略構成を示す図である。
【図13】本発明の実施例6における光源装置の概略構成を示す図である。
【図14】本発明の実施例6における光源装置の第2の態様の概略構成を示す図である。
【図15】本発明の実施例6における光源装置の第3の態様の概略構成を示す図である。
【図16】本発明の実施例7におけるCCDカメラで撮影した半導体ウェハの表面の画像の概略を示す図である。
【図17】本発明の実施例7における半導体ウェハの表面の凹凸のPSD及び、凹凸の画像を示す図である。
【図18】本発明の実施例8における多結晶シリコンウェハの表面全体をCCDカメラで撮影した画像である。
【図19】本発明の実施例8において、半導体ウェハの表面の凹凸の測定に対する結晶粒の影響を除去する方法を説明するための図である。
【図20】触針式粗さ測定器による半導体ウェハの表面の凹凸の測定結果である。
【図21】本発明の実施例9における半導体ウェハ表面検査システムによる半導体ウェハの表面凹凸の測定結果である。
【図22】本発明の実施例9における半導体ウェハ表面検査システムの較正曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、本発明に係る半導体ウェハ表面検査システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
〔実施例1〕
【0087】
図1には、本発明の実施例1に係る半導体ウェハ表面検査システム1のブロック図を示す。半導体ウェハ表面検査システム1においては、評価対象である半導体ウェハWに対し斜めに光を照射する光源装置2が備えられている。この光源装置2には本実施例で青色LED光源が用いられているが、波長は特に限定されない。また、撮影装置としてのCCDカメラ4が、半導体ウェハWを略垂直上方から撮影可能なように設置されている。CCDカメラ4には、CCDカメラ4によって撮影した半導体ウェハWの画像データを伝送し、半導体ウェハWの表面における線状の凹凸であるソーマークの凹凸の大きさを導出する演算ユニット6が電気的に接続されている。また、演算ユニット6には、演算ユニット6による検査結果を表示する表示ユニット8が電気的に接続されている。
【0088】
ここで、半導体ウェハ表面検査システム1におけるソーマークの検査原理について説明する。本実施例における光源装置2は、半導体ウェハWに対して約15度の角度から光を照射する。光源装置2から半導体ウェハWに照射された光の大部分は、半導体ウェハWにおいて正反射され、半導体ウェハWの表面から照射角と同等の反射角で出射する。また、照射光の一部分は、半導体ウェハWの表面におけるソーマークの凹凸に応じて正反射の方向とは異なる角度に乱反射あるいは散乱(以下、「乱反射あるいは散乱」を「散乱等」ともいう。)して、CCDカメラ4の撮像レンズ4aに入射される。CCDカメラ4においては、この光を利用して半導体ウェハWの表面を撮影し、撮影された画像データを演算ユニット6に伝送する。
【0089】
演算ユニット6においては、上記の画像データより、半導体ウェハWの外形寸法、外形の欠けの有無、結晶の欠陥、表面に発生しているクラックなどが検出される。また、半導体のインゴットをワイヤーソーで切断して半導体ウェハを製造する際に、半導体ウェハW表面に生じる加工跡としてのソーマークの凹凸の大きさが測定される。その検出結果は、演算ユニット6内のメモリに記憶されるとともに、表示ユニット8において表示される。なお、演算ユニット6及び表示ユニット8はパソコンのシステムにより構成してもよいし、独自に回路及びプログラムを形成することで作製してもよい。
【0090】
図2には、CCDカメラ4で撮影された半導体ウェハW表面の画像の例を示す。図2(a)に示すように、得られた画像においては一方向に向かって発生する輝線が観察される。この輝線は、半導体ウェハWの表面に存在するソーマークで乱反射または散乱された光に起因するものである。輝線が明るい部分は、照射光が乱反射または散乱される領域が広いこと、すなわち、例えばソーマークによる斜面が広いことを表しており、このことはソーマークの凹凸の大きさと高い相関を有する。なお、本実施例において、CCDカメラ4で撮影された半導体ウェハW表面の画像における輝線の分布は散乱光または反射光の強度分布に相当する。
【0091】
演算ユニット6においては、半導体ウェハWについて得られた画像の各ポイントにおけ
る光の強度を画像の上下(垂直)方向(V方向)と左右(水平)方向(H方向)について積算し、図2(b)に示すように、各々1次元データ列V(x)と、H(y)とする。そして、一次元のデータ列V(x)とH(y)におけるデータ変動の大きさにより、ソーマークの凹凸の大きさを検出する。
【0092】
より具体的には、図2(b)における、ソーマークの方向と平行方向に光強度を積算した一次元のデータ列V(x)における最大値と最小値の差、あるいは、各々最大値、最小値から所定の順位のデータ同士の差を基準にしてもよい。そして、予めV(x)におけるデータ変動の大きさとソーマークの凹凸の大きさとの関係をマップ化しておき、ソーマークの大きさを当該マップから読み出すことで導出するようにしてもよい。あるいは、V(x)におけるデータ変動の大きさと予め定められた閾値とを比較して、V(x)におけるデータ変動の大きさが閾値以上となった際にはNG、閾値以下であればOKとする検査結果を出力するようにしてもよい。
【0093】
また、図2(b)において、ソーマークの方向と垂直方向に光強度を積算したデータ列H(y)は、ソーマークの凹凸の影響を受けない半導体ウェハWの表面の粗さに対応したデータ列ということができる。従って、図2(b)におけるV(x)のデータ変動の大きさからH(y)のデータ変動の大きさを差し引いたものをソーマークの凹凸の大きさに対応するデータとしてもよい。なお、上記において一次元のデータ列V(x)は平行積算値に相当する。一方、H(y)は垂直積算値に相当する。
【0094】
次に、表示ユニット8においては、演算ユニット6で演算・導出された検査結果を表示する。表示項目としては、例えば、生の画像データ、ソーマークの凹凸の大きさあるいはOK、NGの判定を表示する。また、半導体ウェハの外形寸法、外形の欠けの場所、クラック、結晶構造の欠陥なども同時に表示してもよい。
【0095】
以上、説明したように、本実施例によれば、半導体ウェハWの表面に斜めから光を照射し、散乱等した光に基づいてCCDカメラ4で画像データを取得するという、簡単な手法で、ソーマークなどの線状の凹凸の大きさを検査、評価することが可能である。また、半導体ウェハWの表面全体に対して漏れの無い評価を行なうことが可能である。また、CCDカメラ4の撮像光学系4aにおける被写界深度を適当に設定することで、システムにおける振動の影響を受けずに検査・評価を遂行することが可能になる。
【0096】
なお、本実施例における半導体ウェハWは半導体デバイス用に生成されたものであってもよいし、太陽電池用に生成されたものでもよい。また、本実施例では外形寸法を検査しているので、光源装置2の他に、より広い範囲を強力に照射する補助光源を備えるようにし、この光源からの光を半導体ウェハWで反射させることで、外形をより鮮明に撮影可能としてもよい。また、本実施例においては撮影装置としてCCDカメラ4を採用したが、これに限るものではなく、分解能が充分であればCMOSカメラなど他の撮像装置を採用しても構わない。
〔実施例2〕
【0097】
次に、本発明における実施例2について説明する。本実施例においては、半導体ウェハ表面検査システムにおいて、光源を2台使用することにより、より容易にソーマークの凹凸の検査を可能とした例について説明する。
【0098】
図3には、本実施例に係る半導体ウェハ表面検査システム10のブロック図を示す。図3においては、図1とは異なり、半導体ウェハW、CCDカメラ4及び光源装置については半導体ウェハWの法線方向から描いている。本実施例のシステムの実施例1で示したシステムに対する実質的な相違点は、半導体ウェハWの法線方向から見て、光源装置2と垂
直の方向に、第2の光源装置12を備えており、光源装置2と垂直の方向から半導体ウェハWに対して光を照射する点である。
【0099】
ここで、ソーマークの方向と垂直の方向から光を照射した場合に、図2(b)のV(x)におけるデータ変動の大きさが最大になる。これは、この場合にソーマークの側面の斜面において最も確実に照射光が散乱等され、ソーマークの画像をより鮮明に取得することが可能になるからである。一方、ソーマークの方向と平行の方向から光を照射した場合には、照射光がソーマークの凹凸の斜面で乱反射されづらく、CCDカメラで撮影された画像にはソーマークの影響が出づらい。従って、この場合のV(x)におけるデータ変動の大きさは、H(y)と同じく半導体ウェハの表面におけるソーマーク以外の凹凸の大きさを示すこととなる。
【0100】
実施例1に示した表面評価システムにおいては、光源装置2が一つしか備えられていないため、半導体ウェハWの表面の検査を行うためには、半導体ウェハWを、ソーマークが光源装置2からの光の照射方向に対して、半導体ウェハWの法線方向から見て垂直方向となるように設置する必要があった。それに対し、本実施例においては、評価対象としての半導体ウェハWを、ソーマークの方向を気にせずに設置することができるので、半導体ウェハWの表面検査の作業性をより向上させることが可能である。
【0101】
本実施例においては、図3に示すように、光源装置2によって図中の水平方向から光を照射するとともに、光源装置12によって図中の垂直方向から光を照射している。そして、図4(a)に示すように、光源装置2によって光を照射した際に得られた光強度を、水平側に積算して得られた一次元データ列をHH(y)、光源装置2によって光を照射した際に得られた光強度を、垂直側に積算して得られた一次元データ列をHV(x)としている。図4においてはソーマークは、光源装置2からの光の照射方向に垂直に存在しているので、実施例1で説明したと同様に、HV(x)にはソーマークの凹凸の影響が及ぶので、データ変動の大きさが大きくなっている。
【0102】
一方、光源装置12によって図中垂直方向より光を照射した際に得られた光強度を、水平側に積算して得られた一次元データ列をVH(y)、光源装置12によって光を照射した際に得られた光強度の分布を、垂直側に積算して得られた一次元データ列をVV(x)としている。この場合には、ソーマークの方向に平行な方向から光を照射しているので、CCDカメラ4で撮影した画像にはソーマークの影響は出づらい。従って、得られた一次元データ列VH(y)においてもVV(x)においても、データ変動の大きさは小さくなる。
【0103】
このように、本実施例においては、ソーマークの方向と垂直方向から光を照射した場合については、半導体ウェハWで散乱等された光の強度を水平側に積算して得られた一次元データ列と、垂直側に積算して得られた一次元データ列との間で、データ変動の大きさに大きな差が生じる。一方、ソーマークの方向と平行方向から光を照射した場合については、半導体ウェハWで散乱等された光の強度を水平側に積算して得られた一次元データ列と、垂直側に積算して得られた一次元データ列との間で、データ変動の大きさに大きな差が生じない。
【0104】
従って、本実施例においては、HH(y)と、HV(x)におけるデータ変動の大きさを比較し、さらにVH(y)とVV(x)におけるデータ変動の大きさを比較した場合に、比較結果における差が大きくなった方の光源に係るデータ変動の大きさに基づいて、ソーマークの凹凸の大きさを検査するとよい。これによれば、半導体ウェハWをシステムに設置する際に、ソーマークの方向を揃えるという作業をしなくても、ソーマークの凹凸の大きさを検出することが可能となる。その結果、半導体ウェハの表面検査の作業効率を著
しく向上させることができる。なお、本実施例において光源装置2は第1光源装置に相当し、光源装置12は第2光源装置に相当する。
〔実施例3〕
【0105】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例においては、半導体ウェハにおいて散乱等した光をCCDカメラで撮影し、その画像データを複数の領域に分割して、各々の領域についてソーマークの凹凸の大きさを検査する例について説明する。
【0106】
本実施例における半導体ウェハ表面検査システムのブロック図は、図1に示したものと同様である。すなわち、半導体ウェハWを水平方向から照射する光源装置2のみが備えられている。但し、図3に示したように半導体ウェハWに2方向から光を照射するシステムに本実施例を適用しても構わない。
【0107】
本実施例においては、CCDカメラ4で取得した画像データを、演算ユニット6において9箇所の領域に分割する。そして、各々の領域について光強度を水平方向と垂直方向に積算し、HH(y)、HV(x)を導出する(本実施例においては、光源装置2が水平方向から半導体ウェハを照射していることから、一次元データ列をこのように命名している)。そして、各々の領域におけるソーマークの凹凸を検査する。図5には、本実施例において表示ユニット8に表示される検査結果の例を示す。
【0108】
これによれば、半導体ウェハWの9分割した領域のうち、いずれの領域においてソーマークの凹凸が大きくなっているかを即座に検出することが可能となり、より精度の高い検査を行なうことが可能となる。なお、接触式または非接触式のプローブに半導体ウェハの表面を走査させる検査システムにおいては、半導体ウェハの表面を分割した場合には、各々の領域にたいしてプローブを走査させなければならないが、本実施例におけるシステムでは、信号処理のみを分割した領域の各々に対して行なえばよいので、より効率的にソーマークの凹凸の検査を行うことが可能である。
〔実施例4〕
【0109】
次に、本発明における実施例4について説明する。本実施例においては、半導体ウェハの表面全体をより均一に照らすことが可能な光源の構成について説明する。
【0110】
上記の実施例で説明したとおり、本発明においては、半導体ウェハに光源から光を照射し、半導体ウェハの表面の画像をCCDカメラで取得することで、半導体ウェハの表面における各ポイントにおいて散乱等された光の強度を取得する。この場合、半導体ウェハの表面は光源からの照射光によって可能な限り均一に照射される必要がある。それは、照射光の強度にバラツキがある場合には、それが一次元データ列H(y)、V(x)の各信号強度に影響を及ぼすからである。従って、まず、光源装置から出射される光の強度分布自体が均一であることが要求される。
【0111】
また、図1に示したとおり、本発明においては、光源装置2は半導体ウェハWの斜め上方から光を照射するため、半導体ウェハWの表面のうち、より光源に近い領域と、より光源から遠い領域とにおける照射強度の差も小さいことが求められる。従って、光源装置から出射される光が限りなく平行光に近いことが要求される。
【0112】
これに対して本実施例においては、直線状に並べた点光源の列を、断面が放物線状の形状とされた反射鏡の放物線の焦点に配置させ、点光源の列からの照射光を放物線状の反射鏡で反射させることにより、平行かつ均一な照射光を生成することとした。
【0113】
図6には、本実施例における光源装置22について示す。図6(a)には光源装置22
の正面図を、図6(b)には光源装置22の横断面図を示す。図に示すように、光源装置22には、断面が放物線状である反射鏡22bが備えられている。また、反射鏡22bが形成する放物線の焦点に相当する位置に、白色LED22aが、図6(a)に示すように、幅方向に並べて配置されている。
【0114】
これによれば、点光源である白色LED22aの列から照射された光が反射鏡22bで反射され、放物線の対称軸方向の平行光となる。また、光源装置22の幅方向については、白色LED22aを直線状に幅一杯に並べているので、略均一な強度分布を得ることができる。従って、本実施例における光源装置22によって半導体ウェハWを照射することで、光源装置22が半導体ウェハWに対し斜め方向から照射する構成であっても、照射光の強度をより均一にすることができる。
【0115】
なお、本実施例においては点光源として白色LED22aを採用したが、点光源の波長分布は白色に限られない。また、必ずしもLEDを用いる必要もない。
【0116】
図7には、平行光を得ることができる光源装置の別の態様について示す。図7(a)には、シリンドリカルレンズを用いた光源装置32について示す。この光源装置32は、光源装置22と同様に、直線状に並べられた白色LED32aを有する。また、白色LED32aで構成される直線と平行な軸を有し、且つ軸方向から見た場合に、白色LED32aがその焦点に配置されるようにしたシリンドリカルレンズ32bを有する。従って、白色LED32aから出射された光は、シリンドリカルレンズ32bを通過して平行光となる。
【0117】
このことにより、光源装置32によって半導体ウェハWに斜め上方から光を照射する場合にも、光源装置32に対する距離の相違によって半導体ウェハWに照射される光が不均一になることを抑制できる。
【0118】
図7(b)には、シリンダフレネルレンズを用いた光源装置42について示す。この場合も、光源装置42は、直線状に並べられた白色LED42aを有する。また、白色LED42aで構成される直線と平行な軸を有し、且つ軸方向から見た場合に、白色LED42aがその焦点に配置されるようにしたシリンダフレネルレンズ42bを有する。従って、白色LED42aから出射された光は、シリンダフレネルレンズ42bを通過して平行光となる。
【0119】
次に、図8には、平行光を得ることができる光源装置のさらに別の態様について示す。図8(a)には、シリンドリカルレンズを用いた光源装置37について示す。この光源装置37は、長方形状に並べられた白色LED37aを有する。また、白色LED37aで構成される長方形の長辺と平行な軸を有し、円弧面が白色LED37aと対向するように配置された第1シリンドリカルレンズ37bを有する。ここで、白色LED37aは、図中上下方向に5段に並べられており、紙面に垂直方向には第1シリンドリカルレンズ37bの長さと同等の範囲に亘って並べられている。
【0120】
また、第1シリンドリカルレンズ37aの焦点において開口部を有するようにスリット37cが設けられている。このスリット37cの開口部は、紙面に垂直方向においては第1シリンドリカルレンズ37bの長さと同等の範囲に亘って設けられている。さらに、第1シリンドリカルレンズ37aと焦点を共有し、円弧面が第1シリンドリカルレンズ37aと反対側を向くように配置された第2シリンドリカルレンズ37dを有している。
【0121】
このような光源装置37において、個々の白色LED37aから照射された光のうち、図中水平方向に進む光は、第1シリンドリカルレンズ37bの円弧面で屈折して第1シリ
ンドリカルレンズ37bの焦点を通過する。そして、第2シリンドリカルレンズ37dに入射し、円弧面で屈折して水平方向に進む。すなわち、長方形状に並べられた白色LED37aから照射され水平方向に進む平行光は、第1シリンドリカルレンズ37bによって焦点に集光され、その後発散した後、第2シリンドリカルレンズ37dによって平行光に戻される。
【0122】
一方、個々の白色LED37aから出射し水平でない方向に進む光は、第1シリンドリカルレンズ37bで屈折した後、焦点は通過せず、スリット37cによって遮断される。このように、本態様における光源装置37では、長方形状に並べられた白色LED37aから照射された平行光のみをスリット37cで選択して、さらに第2シリンドリカルレンズ37dで平行光に戻すことができる。従って、より完全な平行光束を得ることが可能となる。また、光源としての白色LED37aを長方形状に並べてより多く用いることで、より強い平行光を得ることが可能となる。
【0123】
このことにより、光源装置37によって半導体ウェハWに斜め上方から光を照射する場合にも、光源装置37に対する距離の相違によって半導体ウェハWに照射される光が不均一になることをより確実に抑制できる。
【0124】
図8(b)には、シリンダフレネルレンズを用いた同様の光源装置47について示す。この場合も、光源装置47は、長方形状に並べられた白色LED47aを有する。また、白色LED47aで構成される長方形の長辺と平行な軸を有し、円弧面が白色LED47aと対向するように配置された第1シリンダフレネルレンズ47bを有する。ここで、白色LED47aは、図中上下方向に複数段(7段のみ図示)に並べられており、紙面に垂直方向には第1シリンダフレネルレンズ47bの長さと同等の範囲に亘って並べられている。
【0125】
また、第1シリンダフレネルレンズ47aの焦点において開口部を有するようにスリット47cが設けられている。このスリット47cの開口部は、紙面に垂直方向においては第1シリンダフレネルレンズ47bの長さと同等の範囲に亘って設けられている。さらに、第1シリンダフレネルレンズ47bと焦点を共有し、円弧面が第1シリンダフレネルレンズ47aと反対側を向くように配置された第2シリンダフレネルレンズ47dを有している。
【0126】
このような光源装置47においても、長方形状に並べられた白色LED47aから照射された平行光のみをスリット47cで選択して、さらに第2シリンダフレネルレンズ47dで平行光に戻すことができる。従って、より完全な平行光束を得ることが可能となる。また、光源としての白色LED47aを長方形状に並べてより多く用いることで、より強い平行光を得ることが可能となる。なお、これらの場合、スリットの開口部の幅を狭くするほど、より完全な平行光束が得られることとなるが、照射光の強度を得難くなる。従って、スリットの開口部の幅は、半導体ウェハWを照射する際の光強度の均一性と光強度との両方の観点から最適な幅にするとよい。また、光源としては白色LEDを用いる必要はない。青色LEDなど波長の異なるLEDを用いてもよいし、直線状または長方形状に形成された蛍光管などを用いてもよい。
【0127】
また、図8に示した態様では、白色LEDを長方形型に並べた態様について説明したが、白色LEDは、必ずしも長方形状に並べる必要はなく、平行四辺形状、台形状、楕円状などに並べてもよい。
〔実施例5〕
【0128】
次に、本発明の実施例5について説明する。本実施例においては、半導体ウェハの表面
検査をインラインで行なえるようにした例について説明する。
【0129】
本実施例における半導体ウェハ表面検査システム50の概略図を図9に示す。本実施例においては、図1に示したシステムに加えて、半導体ウェハWを光源装置2で照射するとともにCCDカメラ4で撮影可能な位置まで運搬する運搬装置としてのベルトコンベア7を備える。また、ベルトコンベア7に予め定められた間隔で、半導体ウェハWを自動的に設置するローダ3と、ベルトコンベア7に並べられた半導体ウェハWを自動的に回収するアンローダ5とを備えている。
【0130】
本実施例の半導体ウェハ表面検査システム50によれば、自動的に多数の半導体ウェハWに対してソーマークの凹凸の検査を行なうことが可能である。また、図示していないが、ローダ3とアンローダ5の間のラインに他の工程を組み込むことで、より効率的に半導体ウェハWの検査を行なうことが可能である。特に、本実施例では、半導体ウェハWの表面の画像を撮影するという動作のみで表面検査が可能であるので、検査時間を短縮化することができる。また、CCDカメラ4の撮像光学系4aの被写界深度を適切に設定することで、振動の影響を排除できるので、検査時にベルトコンベア7を停止する必要がなく、全体の工程をより効率的に進めることが可能である。
【0131】
図10には、本実施例における半導体ウェハ表面検査システムの別の態様について示す。本態様は、図3に示したシステムに加えて、半導体ウェハWを光源装置2と光源装置12とで照射して画像データを取得するとともにCCDカメラ4で撮影可能な位置まで運搬する運搬装置としてのベルトコンベア7を備える。また、ベルトコンベア7に予め定められた間隔で、半導体ウェハWを自動的に設置するローダ3と、ベルトコンベア7に並べられた半導体ウェハWを自動的に回収するアンローダ5とを備えている。
【0132】
この態様においては、実施例2で説明したとおり、半導体ウェハWの設置方向を揃える必要がない。従って、ローダ3に半導体ウェハWを設置する際にも、ソーマークの方向を揃える必要がない。その結果、さらに効率的に検査工程を実施することが可能である。
【0133】
なお、上記の実施例においては、半導体ウェハの表面に生じる線状の凹凸としてソーマークを例にとって説明を行ったが、本発明は、ソーマーク以外の線状の凹凸の検出や、その大きさの測定に対して適用してもよい。例えば、半導体ウェハの製造工程中において表面に生じるスクラッチ傷などにも適用可能である。
〔実施例6〕
【0134】
次に、本発明の実施例6について説明する。本実施例では、半導体ウェハの表面からの反射光または散乱光の強度の積分値の分布に基づいて、半導体ウェハの表面の凹凸の大きさを直接検出または測定する例について説明する。
【0135】
ここで、改めて、半導体ウェハに光源から平行光が入射した場合に生じる現象について考える。図11において、半導体ウェハの平均的表面をxz面とし、x軸から角度θだけ傾いた微小表面を強度Iの平行光で照射する場合を考える。照射光の入射方向はx軸に対して角度θだけ傾いている。図11において照射光の入射面はxy面である。照射光の大部分は半導体ウェハの表面において鏡面反射するが、実際にはこの微小表面もさらに微細な粗面により構成されており、各粗面において拡散反射(乱反射あるいは散乱)が生じている。この面が均等拡散面であると仮定すれば、半導体ウェハの表面に垂直なy軸方向に向かう光の強度Iは、(1)式により与えられる。
【数1】

【0136】
ここで、Kは反射率を表す定数である。(1)式によれば、光源に対して斜めに傾いた平面上における強度に反射率を乗じたものが観測される強度となるようであるが、実際には均等拡散面の性質を規定するランバートの余弦則を考慮し、測光学的な考察が行われた結果として得られたものである。このように、本発明で扱う散乱光または反射光は、半導体ウェハの表面に生じた凹凸の尖鋭なエッジによる散乱というよりは、半導体ウェハの微細な拡散面によって生じるものであり、その拡散面の形状と高い相関を有した情報を含むものである。
【0137】
一般に表面粗さによる傾斜角θは十分に小さいと考えられるので、この条件で上式を変形すると、(2)式が得られる。
【数2】


(2)式によれば、y軸方向で得られた光の強度Iは半導体ウェハの表面の傾きθの関数となる。(2)式においてθの前の係数にCOSθが含まれており、この値が大きいほど表面の傾きに対する感度が大きいことを示している。従ってθが小さくなるように、光源からの照射光は半導体ウェハの表面に平行に近い浅い角度で入射することが望ましい。
【0138】
さらに、(2)式を変形して以下の(3)式を得ることができる。
【数3】


(3)式より、半導体ウェハの垂直上方に例えばCCDカメラを設置して半導体ウェハの表面の画像を撮影した際に、その散乱光または反射光の強度分布は半導体ウェハの表面形状の傾きの分布を表していることが分かる。
【0139】
表面形状をy(x)、強度分布をI(x)とすれば、θ=dy/dxであるから、以下の(4)式を得ることができる。
【数4】

【0140】
これをx=0からx=tの間で積分すれば、x=tにおける半導体ウェハの表面の大きさを得る事が可能である。従って、半導体ウェハの表面の大きさを表す式として以下の(5)を得ることができる。
【数5】


(5)式において、右辺にはtに比例する項が現れるが、表面粗さを記述するには、形状の変動分だけを求めればよいので、この項は直線的に変化する分として補正により取り除くことができる。また、この式の中にはいくつかの定数が含まれているが、これらの値は、表面粗さの判っている試験片をこの方法で測定して較正することにより求めることが可能である。
【0141】
以上から明確なように、(3)式により、半導体ウェハの垂直上方に例えばCCDカメラを設置して半導体ウェハの表面の画像を撮影した際に、半導体ウェハの表面からの反射光または散乱光の強度分布I(x)により、半導体ウェハの表面形状の傾きの分布を取得することができる。また、(5)式により、I(x)を積分することによって、半導体ウェハの表面凹凸の大きさの分布を取得することができる。
【0142】
次に、本実施例における半導体ウェハ表面検査システム50の概略構成について図12を用いて説明する。図12においては図1とは異なり演算ユニット及び表示ユニットは省略している。上述のように、図12において、光源装置52は少なくとも紙面に平行な面内において平行光の出射が可能なLED光源である。
【0143】
ここで、半導体ウェハ表面検査システム50において測定感度を向上させるためには前述のとおり、半導体ウェハWの表面に対してできるだけ浅い角度で平行度が高く、照度の一様な照射光を入射させる必要がある。そのためには光源装置52と半導体ウェハWの距離を大きく取った方がよい。このこととシステム全体の大きさとを考慮し、半導体ウェハの検査装置50では、光源装置52からの照射光をミラー53を用いて折り返して半導体ウェハWに照射する構成とした。
【0144】
その際、入射光と半導体ウェハWの表面との間の角度は5°とした(入射角は85°)。また、半導体ウェハWの表面の画像を撮影するCCDカメラ54としては画像解析の際の横分解能を十分に確保するために画素数の大きなものがよい。本実施例においてはCCDカメラ54の画素数は、観察視野全体で960×960画素のものを用いた。カメラレンズ54aについては半導体ウェハWの全体を視野に入れる必要があるが、画像周辺での歪みを避けるため、作動距離が長くなることを犠牲にして焦点距離12mmのレンズを用いた。
【0145】
次に、光源装置52の詳細な構成について説明する。図13に光源装置52の構造を示す。光源装置52には半導体ウェハWへの入射面内における平行度は極めて高いことが要求されるが、入射面に垂直な面内では高い平行度は要求されない。それは、表面凹凸の大きさの分布曲線は表面上の所定の直線に沿った断面形状を与えるものであるので、本実施例においては光源装置53からの照射光の入射面を断面とする形状を重要視するためである。
【0146】
また、図11において半導体ウェハWの表面がx軸の周りにも傾いていた場合には、表面における照射光の照度はその傾きの影響を受けるので、真のz軸周りの傾きとは異なった測定結果が得られてしまうおそれがある。しかしながら、光源装置52からの照射光が、入射面と垂直方向に対して平行でなければ、多数の照射源からの光線が半導体ウェハWの表面上の1点を照射することになるので、半導体ウェハWの表面のx軸の周りの傾きが
照度に与える影響を抑制できる。本実施例においてはこれらの点を考慮し、光源装置52の光源52aとして、複数のLEDを入射面と垂直方向に一列に並べた線状LED光源52aを用いることにした。LEDの列から出射された光は第1の円筒レンズ52bによりその後ろに置いたスリット52c上に結像され、その一部はスリット52cを通過した後に再び拡散し、第2の円筒レンズ52dにより平行光とされる。
【0147】
第2の円筒レンズ52dを通過した光の、入射面における平行度はスリット52cの幅が狭いほど高くなる。一方、第1の円筒レンズ52b及び第2の円筒レンズ52dの長手方向(入射面と垂直方向)についてはレンズ効果はないから、個々のLEDからの光は発散する。このようにして入射面と平行方向については平行光、入射面と垂直方向については発散光となる照射光を形成することができる。ここで、発散光は距離とともにその強度は弱くなるが、LEDの列の長さが十分長ければ、その中央あたりでは一様な強度となる。また、前述のように光源装置52と半導体ウェハWとの距離を十分に大きくすることによって照射光強度の一様性の度合いをさらに向上させることができる。
【0148】
なお、本実施例の光源装置52において第1の円筒レンズ52bは第一シリンドリカルレンズに相当する。第2の円筒レンズ52dは第二シリンドリカルレンズに相当する。また、本実施例においては、光源装置52を構成する光学素子として、第一シリンドリカルレンズと第二シリンドリカルレンズとを採用しているが、これらに代えて、第一シリンダフレネルレンズと第二シリンダフレネルレンズとを採用してもよいことは当然である。
【0149】
次に、光源装置52の他の態様について説明する。上記した光源装置52においては、光源52aとして、複数のLEDを入射面と垂直方向に一列に並べた線状LED光源52aを用いることにした。しかしながら、光源52aはこれに限定されるものではなく、例えば図14に示すような光源52eでもよい。この場合は、光ファイバの束52gの一端に、別途設けた発光素子52hより発光された光を入射し、この光ファイバの束52gの出射側の端部を直線状に一列に並べて光出射部52fを形成している。これによれば、より精度のよい直線状の光源が得られるとともに、発光素子自体の配置に自由度を持たせることが可能となり、装置全体のレイアウトを容易にすることができる。
【0150】
また、光源52aまたは光源52eから出射した光を、入射面と平行方向については平行光、入射面と垂直方向については発散光となる照射光とするための光学系は、図13及び図14に記載したものに限られない。図15には、光源52eから出射した光を、シリンドリカルレンズ52kによって、入射面と平行方向については平行光、入射面と垂直方向については発散光とした例について示す。この構成によれば、より簡単に光源装置52を構成することができ、装置全体のレイアウトを容易にするとともにコストを低減することが可能となる。
〔実施例7〕
【0151】
次に、本発明の実施例7について説明する。本実施例においては、CCDカメラで撮影した半導体ウェハの画像から表面の凹凸の大きさを取得する際の具体的な信号処理の方法について説明する。本実施例において用いられる半導体ウェハの表面検査システムは、CCDカメラは画素数が960×1280画素である点で、図12に示すものとは異なる。また、本実施例における試料としての半導体ウェハの表面にはソーマークが存在しているものとする。その他の構成は図12及び図13に示すものと同等である。本実施例において表面の凹凸の大きさは、半導体ウェハWの表面と、光源装置52からの照射光の入射面との交線方向に沿って測定した凹凸の大きさの分布として与えられ、さらに、その分布の統計的特徴を表すパラメータの値をもって表現される。
【0152】
図16には、本実施例における960×1280画素のCCDカメラで撮影した半導体
ウェハの表面の画像の例を示す。図16ではソーマークにおいて散乱または反射された光を撮影することで得られた強度分布を模式的に帯で示している。前述の(3)式で示したとおり、この強度の違いがその部分における表面の傾きの違いを表している。なお、図16では照射光は図中上方から下方に向かって入射している。
【0153】
図16に示す散乱光または反射光の強度分布の画像から表面凹凸の曲線を算出するには、前述の(5)式に従ってCCD画像上の各画素の列に沿って測定された散乱光または反射光の強度の積分を行う。この結果画像の列数分の表面凹凸の曲線を瞬時に得ることができる。しかし、表面の凹凸は確率的な現象の結果得られるものであるから、本実施例においては、観察領域全体としての表面凹凸の大きさの平均値を数値として与える。以下、その際の2つの具体的方法について説明する。
【0154】
第1の方法は、得られた散乱光または反射光の強度のデータを各行ごとに平均化し、それらの値から積分計算を行い、列方向に対する表面凹凸の曲線を得る方法である。こうすることによってソーマーク以外のランダムな表面粗さが平均化され、ソーマークの特徴のみを抽出することができる。そして、得られた表面凹凸の曲線上でのPV値(最大値と最小値の差)としてソーマークの大きさを評価する。これにより、より簡単にソーマークを抽出し、その大きさを測定することが可能である。なお、この場合は、ソーマークの方向は画像の行に平行でなければならない。ソーマークの方向が画像の行の方向からずれている場合には、表面凹凸の曲線は小さく評価されてしまうので注意を要する。
【0155】
第2の方法は、Power Spectrum Density(PSD)を求める方法である。この場合は表面凹凸の曲線についてフーリエ変換を用いて周波数分析し、各周波数に対する振幅の密度分布を求める。具体的には、得られた散乱光または反射光の強度のデータについて、全列の中から適当な数の列をサンプリングし、それらの全てに対して列方向の積分を行い、各々について表面凹凸の曲線を導出する。そして、導出された曲線の各々についてPSDを計算し、さらに各列について得られたPSDを平均化する。
【0156】
PSD曲線は一つではバラツキが大きく、その特徴を知るのは難しいが、本実施例のように最大全列数分のPSD曲線の平均を取ることで、滑らかな曲線を得ることができる。また、この方法によれば、周波数領域での平均を取るのであるから、第1の方法のように実空間での平均を取る場合とは異なり、ソーマークが列の方向からずれている場合でも影響を受けない。また、ワイヤーソーを往復させてカッティングするような加工法では、しばしば周期的なソーマークが観察されるが、本実施例において得られるPSDではその周期のところでピークが立つので、ソーマークをより容易に検出することができる。
【0157】
図17には、ソーマークを含む半導体ウェハの表面から得られたPSD曲線の例を示す。図17(a)には得られたPSD曲線を、図17(b)には測定した半導体ウェハの表面写真を示す。図17(a)において、周波数3.7(1/mm)にソーマークに起因するピークを確認することができる。また、7.4(1/mm)、11.1(1/mm)のあたりに倍波のピークが表れている。また、図17(b)においては、10mmの長さの中に、37本程度のソーマークを観察することができる。この場合、ソーマークの間隔は0.27mm程度となる。なお、本実施例においては、半導体ウェハの表面からの散乱光または反射光の強度のデータをサンプリングし、それらに対して列方向の積分を行うことで導出された曲線の各々についてPSDを計算した。しかしながら、半導体ウェハの表面からの散乱光または反射光の強度のデータをサンプリングし、その曲線の各々について積分をすることなくPSDを計算することによっても、ソーマークの周期のところでピークが立つので、本実施例と同様ソーマークを容易に検出することができる。
〔実施例8〕
【0158】
次に、本発明の実施例8について説明する。本実施例においては、多結晶の半導体ウェハの表面凹凸の大きさの測定において、結晶粒の影響を除去して測定精度を向上させる方法について説明する。
【0159】
図18は多結晶シリコンウェハの表面全体のCCD画像である。図18において照射光は上方から下方に入射しており、また、ソーマークも上方から下方に流れているので、ソーマークの像は観察されていない。一方で、図においては多くの結晶粒がその方位を反映して明暗の差として観察されている。なお、図18には多結晶シリコンウェハの寸法が併記されている。本実施例における多結晶シリコンウェハは略正方形であり、一辺の長さは約156mmである。
【0160】
上記のような多結晶シリコンウェハにおいては、結晶粒による明るさのコントラストはソーマーク等による表面凹凸の測定に影響を与えるため、これらを除去する必要がある。図19は、この方法について説明するための図である。図19(a)に示す曲線は実施例7で説明した第1の方法によって導出した、多結晶シリコンウェハの表面における散乱光または反射光の列方向の強度分布曲線である。図19(b)に示す曲線は、19(a)に示す曲線をフーリエ変換し、その中で長周期を持つと考えられる結晶粒による成分のみを足し合わせた上で逆フーリエ変換することで得られた曲線である。ここで、図17と図18とを比較すれば明らかなように、ソーマークの間隔と結晶粒の大きさとの間には顕著な差がある。従って、結晶粒による成分を抽出する際のカットオフ周波数としては、結晶粒の空間周波数とソーマークの空間周波数の間の周波数を適宜選ぶことが可能である。なお、本実施例において19(b)に示す曲線が第2の強度分布曲線に相当する。
【0161】
次に、19(a)に示す曲線と19(b)に示す曲線との差をとり、図19(b)の曲線の値で除することで、図17(c)に示す曲線を導出する。具体的には、(6)式のような演算を行う。
【数6】


ここで、I0は、19(a)に示す各ポイントにおける散乱光または反射光の強度、IGは、19(b)に示す各ポイントにおける散乱光または反射光の強度である。図19(c)に示す曲線は、(6)式で算出されたIの分布、すなわち、結晶粒による明るさのコントラストを除去した表面凹凸のみによる強度分布を表している。この曲線は本実施例において第3の強度分布に相当する。これを前述の(5)式に従って積分することにより、図19(d)に示す表面凹凸の大きさを示す曲線が得られた。
【0162】
以上、説明したように、本実施例によれば、多結晶のシリコンウェハにおいて、結晶粒による明るさのコントラストの影響を除去し、より正確に、半導体ウェハの表面凹凸の曲線を得ることができる。
【0163】
なお、本実施例においては、図19(a)に示す多結晶シリコンウェハの表面における散乱光または反射光の列方向の強度分布曲線と、図19(b)に示す、結晶粒による成分を抽出した強度分布曲線とから、図19(c)に示す曲線を導出し、それを積分することで図19(d)に示す表面凹凸の大きさを示す曲線を得た。しかしながら、図19(a)に示す強度分布曲線を積分して得られる曲線と、図19(b)に示す強度分布曲線を積分して得られる曲線とから、(6)式による演算を行って、結晶粒による明るさのコントラストを除去した表面凹凸の大きさを示す曲線を導出しても構わない。
【0164】
なお、本実施例において、図19(c)または図19(d)に示す曲線は第3の強度分
布曲線に相当する。また、図19(a)に示す強度分布曲線と、図19(b)に示す強度分布曲線とから(6)式を用いて、図19(c)に示す曲線を導出する過程は、散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、その中で多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する第2の強度分布曲線または該第2の強度分布曲線を積分した曲線を導出し、散乱光または反射光の強度分布曲線から第2の強度分布曲線に相当する成分を除去することで第3の強度分布曲線を得ることに相当する。
【0165】
また、本実施例において、散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、その中で多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する第2の強度分布曲線または該第2の強度分布曲線を積分した曲線を導出し、散乱光または反射光の強度分布曲線から第2の強度分布曲線に相当する成分を除去することで第3の強度分布曲線を得る過程は、上記に示したものには限定されない。図19(a)に示す強度分布曲線から、図19(b)に示す結晶粒による成分の影響を除去できる演算であれば、(6)式以外の式によって演算しても構わない。
〔実施例9〕
【0166】
次に、実施例9について説明する。本実施例においては、前述の(5)式における定数を、較正曲線によって導出する方法について説明する。なお、本実施例において用いた半導体ウェハの表面検査システムは、図12に示したものと同等である。
【0167】
半導体ウェハの表面凹凸の大きさを導出するための(5)式にはいくつかの定数が含まれている。特に反射係数Kの値は反射面によって変化するので具体的な値は判っていない。しかし、特定の半導体ウェハ表面検査システムに対してその値が一定であるとすれば、他の方法で求めた半導体ウェハの表面凹凸の曲線と比較することによって装置関数としての反射係数Kを求めることができる。その際の較正方法について述べる。
【0168】
表面凹凸の曲線測定のための標準計測器として触針式粗さ測定器であるミツトヨ製の表面粗さ測定器SJ−210を用いた。このSJ−210によって、半導体ウェハの表面の長さ16mmの領域について表面粗さを測定した。図20(a)にその結果を示す。この測定器の横分解能は1.5μmであり、本実施例における半導体ウェハの表面検査システム50のCCDカメラ54の画素数から求まる分解能190μmを大きく上回っており、細かな周波数成分も計測されていることが分かる。
【0169】
本実施例においては、図20(a)で得られた表面凹凸の曲線を、図20(b)及び(c)に示すように、フーリエ変換を用いて短周期と長周期の成分に分離した。図20(b)は短周期の成分を示しており、図20(c)は長周期の成分を示している。このうち、長周期成分に相当する図20(c)に示す表面凹凸の曲線が、本実施例における半導体ウェハ表面検査システム50により得られる結果に対応している。次に、図21には、図20の測定がなされた場所と同じ場所を本実施例における半導体ウェハ表面検査システム50で測定した結果を示す。ただし、本システムは広さを持った面上での測定を特徴としているため、計測領域は長さ16mm、幅8mmの長方形である点で、図20に示した結果とは条件が異なる。また、図21における縦軸の単位はcount・μmとなっているが、これは光の強度はCCD出力のcountで、積分を行う長さの単位をμmで表したためである。
【0170】
図20(c)と図21の曲線とは完全に一致していないが、この差は前述のように図20(c)は唯一の直線上における測定値であり、図21は一定の幅を有する領域における平均値であることによると考えられる。
【0171】
以上、2つの計測器による半導体ウェハの表面凹凸の曲線の測定結果を示したが、同様
の測定を粗さの異なる種々の半導体ウェハに対して実施し、その結果から図22に示した較正曲線を得た。図の縦軸は触針式測定器SJ−210によるPV値であり、横軸は本実施例における半導体ウェハ表面検査システム50によるPV値を表している。これらの測定値の中で、比較的大きなものは顕著なソーマークが見られるサンプルについて、小さなものはソーマークが見られないか、ソーマークに平行に粗さを測定したものである。
【0172】
また、半導体ウェハとしては単結晶のウェハと多結晶のウェハとが混在しており、単結晶のウェハについては平均的に多結晶のウェハと比較してPV値が小さく出た。このように粗さの異なる試料であっても、2つの測定法によるPV値は高い相関を示した。最小二乗法で直線近似を行うとその傾きは平均値が0.232、標準偏差が0.009であり、この値を用いて反射係数Kなどの装置係数を求めることができた。以上の結果から、本実施例における半導体ウェハ表面検査システム50は信頼性が高く、十分に実用に耐える性能を有していることが立証された。
〔実施例10〕
【0173】
次に、本発明の実施例10について説明する。前述の(3)式において、照射光の傾き角θの大きさについて、その値が小さいほど、半導体ウェハの表面の傾きに対する測定感度が大きくなることを示したが、本実施例においては照射光の傾き角θの属するべき範囲について説明する。
【0174】
まず、θが属するべき範囲の最小値について考える。θが、半導体ウェハの表面の凹凸に対して小さすぎる場合には、凹凸の頂点の後側に照射光の影が生じ、計測できなくなるおそれがある。すなわち、θは半導体ウェハの表面凹凸の曲線の傾きの最大値以上である必要がある。現在用いているCCDカメラ54の横分解能は実施例9で示したように190μmであり、一方、半導体ウェハの表面凹凸の最大値は図22に示したとおり16μm程度であるから、傾きに換算すると4.8°となる。したがって、θが属するべき範囲の最小値は5°とするのが妥当である。
【0175】
次に、θが属するべき範囲の最大値について考える。図22の結果を見ると、データ点は平均値の周りにばらついているが、その大きさは傾きの平均値0.232に対して標準偏差で0.009となり、その比をとれば0.0387となる。いま、θの値を0から大きくしていった場合、角度の測定感度は1からCOSθの余弦曲線を描いて悪化す
るが、その値の限界として上で求めた値を用いることは妥当である。すなわち、θの限界値は、COSθ=1−0.0387=0.9613によって与えられる。これを解くことによってθが属するべき範囲の最大値θの値として16°を得ることができる。以上のように、本実施例における半導体ウェハ表件検査システム50においては、照射光の半導体ウェハの表面に対する傾きが属する範囲として、5°以上16°以下の範囲(入射角が74°以上85°以下)を得た。照射光の半導体ウェハの表面に対する傾きを上記範囲内とすることで、より精度よく充分な感度を有する測定が可能となる。
【0176】
上記においては、θが属するべき範囲として具体的な値を示したが、これらの値は対象とする半導体ウェハの種類や測定装置の性能などによって左右される場合がある。従って、次に、θが属するべき範囲をより一般的な表現として求める。
【0177】
測定された表面の凹凸の大きさ(PV値)RPVはその定義からも判るように統計的なバラツキを伴っている。さらに、そのバラツキの中にはシステムの測定誤差も含まれている。このことも考慮して全測定データから得られる平均値を(RPV)ave、最大値を(
PV)max、標準偏差を(RPV)devとする。また、CCDの1画素に対応する半導体ウェハ上の長さをdとして、上述と同様の考え方に沿えば、θの属するべき範囲は(7)式のように表わすことができる。
【数7】


すなわち、半導体ウェハ表件検査システム50において(7)式が成立する範囲にθが属するように、光源装置52からの照射光の角度を調整することで、より精度よく高感度な測定が可能となる。
【符号の説明】
【0178】
1、10、50、60・・・半導体ウェハ表面検査システム
2、12、22・・・光源装置
3・・・ローダ
4、54・・・CCDカメラ
4a、54a・・・撮像レンズ
5・・・アンローダ
6・・・演算ユニット
7・・・ベルトコンベア
8・・・表示ユニット
32、37、42、47、52・・・光源装置
53・・・ミラー
W・・・半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの表面における凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査システムであって、
半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から、入射面において平行な光を照射する光源装置と、
前記半導体ウェハの表面全体を撮影する撮影装置と、を備え、
前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の散乱光または反射光の2次元的な強度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項2】
前記光源装置が照射する光の前記半導体ウェハの表面への入射角は74度以上85度以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項3】
前記半導体ウェハの表面における凹凸は、前記半導体ウェハの表面に生じるソーマークであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項4】
前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記ソーマークに平行方向に積算した平行積算値に基づいて、前記凹凸を検出しまたは該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項3に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項5】
前記光源装置は前記半導体ウェハの法線方向から見て互いに約90度異なる方向から前記半導体ウェハの表面に光を照射する第1光源装置及び第2光源装置からなり、
前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光は、前記第1光源装置および前記第2光源装置のうち、前記法線方向から見て前記ソーマークに垂直方向から光を照射する方の光源装置から照射された光の、前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光としたことを特徴とする請求項4に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項6】
前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記半導体ウェハの表面を分割して得られる複数の領域に相当するよう分割し、分割された各々の領域について前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項7】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線を積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項8】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記光源装置が照射する光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項7に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項9】
複数の前記1次元的な強度分布曲線より、前記交線方向についての平均の強度分布曲線
を導出し、該平均の強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出することで、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項8に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項10】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、各周波数に対する振幅の密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項11】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記光源装置が照射する光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された曲線を周波数分析することを特徴とする請求項10に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項12】
複数の前記1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された複数の曲線を各々周波数分析して得られた複数の前記密度分布を平均して得られる平均密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項11に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項13】
前記半導体ウェハが多結晶ウェハであり、
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、
その中で前記多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する第2の強度分布曲線または該第2の強度分布曲線を積分した曲線を導出し、
前記散乱光または反射光の強度分布曲線から前記第2の強度分布曲線に相当する成分を除去することで得られる第3の強度分布曲線または、前記強度分布曲線を積分した曲線から、前記第2の強度分布曲線を積分した曲線に相当する成分を除去することで得られる曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項10に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項14】
前記光源装置は、
直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向から見た断面図が放物線形状を示すとともに、前記直線と平行方向には該放物線形状を維持する反射鏡と、を有し、
前記直線と平行方向から見た場合に、前記光源は、前記放物線の焦点に配置されたことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項15】
前記光源装置は、
直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向の軸を有するシリンドリカルレンズまたはシリンダフレネルレンズと、を有し、
前記直線と平行方向から見た場合に、前記光源は、前記シリンドリカルレンズまたは前記シリンダフレネルレンズの焦点に配置されたことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項16】
前記光源装置は、
直線状に構成された光源と、
前記直線と平行方向の軸を有するとともに前記光源から照射される光を直線状に集光す
る第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、
前記第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズに対して前記光源と反対側に配置され前記直線と平行の開口部を有するスリットと、
前記直線と平行方向の軸を有するとともに前記スリットの開口部に焦点が位置するように配置され、前記スリットを通過した後に拡散した前記光源から照射された光を平行光にする第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、
を有することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項17】
前記光源装置は、
光の照射面が略長方形状になるように構成された光源と、
前記長方形の一辺と平行方向の軸を有するとともに前記光源から照射される光を直線状に集光する第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズと、
前記第一シリンドリカルレンズまたは第一シリンダフレネルレンズの焦点部分に前記軸と平行の開口部を有するとともに前記光源から照射された光が直線状に集光した集光部分の幅を制限するスリットと、
前記長方形の一辺と平行方向の軸を有するとともに直線状に集光した後に拡散した前記光源から照射された光を平行光に戻す第二シリンドリカルレンズまたは第二シリンダフレネルレンズと、
を有することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項18】
前記光源は、LED素子を直線状に並列させることで構成されることを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項19】
前記光源は、LEDからの光を複数の光ファイバの一端に入射し、該複数の光ファイバの他端を直線状に並列させることで構成されることを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項20】
前記光源は、LED素子を平面状に並列させることで構成されることを特徴とする請求項17に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項21】
前記半導体ウェハは、太陽電池用のウェハであることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項22】
前記半導体ウェハが載置されるとともに、該半導体ウェハを、前記光源装置が該半導体ウェハの表面に対して斜め方向から光を照射することが可能で且つ前記撮影装置が該半導体ウェハの表面全体を撮影することが可能な位置に導く運搬装置をさらに備え、
インラインで、前記半導体ウェハにおける前記ソーマークを検出し、または該凹凸の大きさを測定することが可能に構成されたことを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査システム。
【請求項23】
半導体ウェハの表面における凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定する半導体ウェハの表面検査方法であって、
半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から入射面において平行な光を照射し、
前記半導体ウェハの表面全体を撮影し、
前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記照射された光の散乱光または反射光の2次元的な強度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項24】
前記半導体ウェハの表面の全域に対して照射する光の入射角は74度以上85度以下であることを特徴とする請求項23に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項25】
前記半導体ウェハの表面における凹凸は、前記半導体ウェハの表面に生じるソーマークであることを特徴とする請求項23または24に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項26】
前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記ソーマークに平行方向に積算した平行積算値に基づいて、前記凹凸を検出しまたは該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項25に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項27】
前記半導体ウェハの法線方向から見て複数の方向から前記半導体ウェハの表面に光を照射し、
前記法線方向から見て前記ソーマークに垂直方向から照射された光の、前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記ソーマークに平行方向に積算した平行積算値に基づいて、前記凹凸を検出しまたは該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項26に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項28】
前記撮影装置で前記半導体ウェハの表面の全体を撮影することで得られた、前記光源装置から照射された光の前記半導体ウェハの表面の各ポイントからの散乱光または反射光の強度に応じた信号を、前記半導体ウェハの表面を分割して得られる複数の領域に相当するよう分割し、分割された各々の領域について前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項25から27のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項29】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線を積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項23または24に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項30】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記照射される光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項29に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項31】
複数の前記1次元的な強度分布曲線より、前記交線方向についての平均の強度分布曲線を導出し、該平均の強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出することで、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項30に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項32】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、各周波数に対する振幅の密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項23または24に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項33】
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より、前記照射される光の前記半導体ウェハの表面への入射面と前記半導体ウェハの表面との交線方向についての前記散乱光または反射光の1次元的な強度分布曲線を取得し、該1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された曲線を周波数分析することを特徴とする請求項32に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項34】
複数の前記1次元的な強度分布曲線を前記交線方向について積分した曲線を導出し、導出された複数の曲線を各々周波数分析して得られた複数の前記密度分布を平均して得られる平均密度分布に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項33に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項35】
前記半導体ウェハが多結晶ウェハであり、
前記散乱光または反射光の2次元的な強度分布より得られた、前記散乱光または反射光の強度分布曲線または該強度分布曲線を積分した曲線を周波数分析し、
その中で前記多結晶の結晶粒の周波数成分に相当する第2の強度分布曲線または該第2の強度分布曲線を積分した積分曲線を導出し、
前記散乱光または反射光の強度分布曲線から前記第2の強度分布曲線に相当する成分を除去することで得られる第3の強度分布曲線または、前記強度分布曲線を積分した曲線から、前記第2の強度分布曲線を積分した積分曲線に相当する成分を除去することで得られる曲線に基づいて、前記凹凸を検出し、または該凹凸の大きさを測定することを特徴とする請求項32に記載の半導体ウェハの表面検査方法。
【請求項36】
前記半導体ウェハの表面の全域に対して斜め方向から、LEDによって光を照射することを特徴とする請求項23から35のいずれか一項に記載の半導体ウェハの表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−203245(P2011−203245A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44437(P2011−44437)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(510057866)有限会社ユナテック (1)
【Fターム(参考)】