半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体成長用基板、半導体成長用基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器
【課題】結晶性の高い半導体層を有する半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体成長用基板、半導体成長用基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器を提供する。
【解決手段】芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層2と、当該グラファイト層2の表面上に設けられ、当該グラファイト層2の表面を成長面とする半導体層4とを備えた半導体基板1。前記グラファイト層は結晶性に優れているため、グラファイト層の表面を成長面とする半導体層についても、結晶性に優れたものが得られる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板1を得ることができる。
【解決手段】芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層2と、当該グラファイト層2の表面上に設けられ、当該グラファイト層2の表面を成長面とする半導体層4とを備えた半導体基板1。前記グラファイト層は結晶性に優れているため、グラファイト層の表面を成長面とする半導体層についても、結晶性に優れたものが得られる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板1を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体成長用基板、半導体成長用基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
13属窒化物であるAlN、GaN、InNおよびその混晶相のPN接合を利用した窒化物系半導体材料やシリコンなどの半導体材料を用いた素子が広く実用化されている。半導体素子はサファイアや炭化珪素などの高価な単結晶基板上に量産性の低い手法で製造されることが多かった。このため面光源として用いるには価格が高く、専ら点光源として利用されてきた。
【0003】
一方、面光源としては有機EL素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。有機EL素子は価格の安いプラスチック基板やガラス基板を出発材料として用いることができるため、素子の価格を安価にでき、面光源としての利用が可能である。また、曲げることのできる発光素子や照明としての利用も期待されている。
【0004】
これに対して、耐熱性を有すると共に外力に対する可撓性を有するグラファイト基板上に半導体層を形成する手法が提案されている。この手法によれば、ポリイミドやPODなどのポリマーを高温で加熱処理することによりc軸配向させたグラファイトフィルムを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日経ナノビジネス2006年No40 34−35頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリマーを出発材料として作成したグラファイトシートは結晶性が十分とは言えず、このグラファイトシート上に形成される半導体層においても結晶性が十分とはいえないという問題があった。
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明は、結晶性の高い半導体層を有する半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体成長用基板、半導体成長用基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体基板は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とする半導体層とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を用いているため、結晶性に優れたグラファイト層を実現できる。このため、グラファイト層の表面を成長面とする半導体層についても、結晶性に優れたものが得られることになる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0010】
本発明に係る半導体基板は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とするバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記バッファ層の表面を成長面とする半導体層とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を用いているため、結晶性に優れたグラファイト層を実現できる。このため、グラファイト層の表面を成長面とするバッファ層についても結晶性に優れたものが得られると共に、バッファ層の表面を成長面とする半導体層についても結晶性に優れたものが得られることになる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0012】
上記の半導体基板は、前記バッファ層は、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト基板と半導体層との間に、HfN及びZrNのうち少なくとも一方を含むバッファ層を用いた場合、当該バッファ層によって光を反射することができる。これにより、半導体層を例えば光吸収層等として用いる場合、当該光吸収層における光の吸収効率を高めることができる。また、半導体層を発光層として用いる場合、当該発光層からの光の利用効率を高めることができる。更に、AlNを含むバッファ層を用いた場合、半導体層のグレインサイズを増大させることができる。これにより、半導体層の電気的特性を高めることができ、半導体層を発光層として用いる場合には当該半導体層の光学特性についても高めることができる。
【0013】
上記の半導体基板は、前記バッファ層は、複数層に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、バッファ層が複数層に形成されていることとしたので、例えば光反射効果が得られるHfN及びZrNの層と、グレインサイズ増大効果が得られるAlNの層とを別層として形成することができる。
【0014】
上記の半導体基板は、前記半導体層は、シリコン又は13族窒化物を含む半導体からなることを特徴とする。
本発明によれば、シリコン又は13族窒化物を含む半導体を含む結晶性の高い半導体層を得ることができる。
【0015】
上記の半導体基板は、前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有し、前記半導体層は、前記(0001)面上に設けられることを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層が(0001)面を表面に有し、半導体層が(0001)面上に設けられることとしたので、半導体層の配向性が高められることになる。
【0016】
上記の半導体基板は、前記基板は、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物を含む基材と、前記基材上に設けられた前記グラファイト層とを有することを特徴とする。
結晶性の高い半導体層を得るためには、グラファイト層自体が基板である必要は無く、半導体層の結晶性を向上させるためのグラファイト層の表面が得られれば良いことになる。本発明においては、グラファイト層が、複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に設けられていることとしたので、低コストな半導体基板が得られる。
【0017】
本発明に係る半導体基板の製造方法は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上に半導体層を成長させることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層の表面上に半導体層を成長させることとしたので、グラファイト層の優れた結晶性が半導体層に伝達する形となり、結晶性に優れた半導体層が得られる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を製造することができる。
【0019】
本発明に係る半導体基板の製造方法は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上にバッファ層を成長させ、前記バッファ層の表面上に半導体層を成長させることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層の表面上にバッファ層を成長させ、当該バッファ層の表面上に半導体層を成長させることとしたので、グラファイト層の優れた結晶性がバッファ層に伝達し、当該バッファ層を介して半導体層に伝達する形となるため、結晶性に優れた半導体層を得ることができる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を製造することができる。
【0021】
上記の半導体基板の製造方法は、前記バッファ層として、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含む層を成長させることを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト基板と半導体層との間に、HfN及びZrNのうち少なくとも一方を含むバッファ層を用いた場合、当該バッファ層によって光を反射することができる。これにより、半導体層を例えば光吸収層等として用いる場合、当該光吸収層における光の吸収効率の高い半導体基板を得ることができる。また、半導体層を発光層として用いる場合、当該発光層からの光の利用効率の高い半導体基板を得ることができる。更に、AlNを含むバッファ層を用いた場合、半導体層のグレインサイズを増大させることができる。これにより、電気的特性の高い半導体基板を得ることができ、半導体層を発光層として用いる場合には光学特性の高い半導体基板を得ることができる。
【0022】
上記の半導体基板の製造方法は、前記バッファ層を、複数層に形成することを特徴とする。
本発明によれば、バッファ層を複数層に形成するため、例えば光反射効果が得られるHfN及びZrNの層と、グレインサイズ増大効果が得られるAlNの層とを別層として形成することができる。
【0023】
上記の半導体基板の製造方法は、前記半導体層として、シリコン又は13族窒化物を含む半導体層を成長させることを特徴とする。
本発明によれば、シリコン又は13族窒化物を含む半導体を含む結晶性の高い半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0024】
上記の半導体基板の製造方法は、前記グラファイト基板は、(0001)面を表面に有し、前記(0001)面に前記半導体層を成長させることを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層が(0001)面を表面に有し、(0001)面に前記半導体層を成長させることとしたので、配向性の高い半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0025】
上記の半導体基板の製造方法は、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層を形成することで前記基板を得ることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上にグラファイト層を形成することで基板を得ることとしたので、低コストで基板を製造することができる。
【0026】
上記の半導体基板の製造方法は、前記複素環状高分子を溶解し、前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで前記基板を得ることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子を溶解し、基材上に複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、薄膜及び基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで基板を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を有する基板を低コストで製造することができる。
【0027】
上記の半導体基板の製造方法は、所定の自立基材上に前記複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、前記グラファイト層を得ることを特徴とする。
本発明によれば、所定の自立基材上に複素環状高分子の層を形成し、形成された複素環状高分子の層を自立基材から分離することでグラファイト層を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を基板として得ることができる。
【0028】
上記の半導体基板の製造方法は、前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成することを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層の熱膨張係数と、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数とが近似するあるいは一致するため、以降の熱処理において熱膨張係数の差に起因する欠陥を回避することができる。
【0029】
本発明に係る半導体成長用基板は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層を表面に有するため、当該表面に結晶性の高い半導体層を成長させることができる。
【0031】
上記の半導体成長用基板は、前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有することを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層が(0001)面を表面に有することとしたので、当該(0001)面に半導体層を成長させることができる。これにより、配向性の高い半導体層を成長させることができる。
【0032】
上記の半導体成長用基板は、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上にグラファイト層を形成することで基板を得ることとしたので、低コストで半導体成長用基板を製造することができる。
【0033】
本発明に係る半導体成長用基板の製造方法は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に形成することを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層を基材上に形成することで当該グラファイト層を得ることができるため、半導体成長用基板を低コストに抑えることができる。
【0035】
上記の半導体成長用基板の製造方法は、前記複素環状高分子を溶解し、前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで前記基板を得ることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子を溶解し、基材上に複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、薄膜及び基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで半導体成長用基板を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を有する半導体成長用基板を低コストで製造することができる。
【0036】
本発明に係る半導体成長用基板の製造方法は、所定の自立基材上に芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、グラファイト層を得ることを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、所定の自立基材上に複素環状高分子の層を形成し、形成された複素環状高分子の層を自立基材から分離することでグラファイト層を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を半導体成長用基板として得ることができる。
【0038】
上記の半導体成長用基板の製造方法は、前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成することを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層の熱膨張係数と、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数とが近似するあるいは一致するため、以降の熱処理において熱膨張係数の差に起因する欠陥を回避することができる。
【0039】
本発明に係る半導体素子は、上記の半導体基板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を備えるため、良質な半導体素子を得ることができる。
【0040】
本発明に係る発光素子は、上記の半導体素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、良質な半導体素子を備えるため、発光特性の良い発光素子を得ることができる。
【0041】
本発明に係る表示パネルは、上記の発光素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、発光特性の良い発光素子を備えるため、表示特性の高い表示パネルを得ることができる。
【0042】
本発明に係る電子素子は、上記の半導体素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、良質な半導体素子を備えるため、電気的特性の高い電子素子を得ることができる。
【0043】
本発明に係る太陽電池素子は、上記の半導体基板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を備えるため、良質な太陽電池素子を得ることができる。
【0044】
本発明に係る電子機器は、上記の半導体素子、上記の発光素子、上記の表示パネル、上記に記載の電子素子及び上記の太陽電池素子のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする。
本発明によれば、上記の半導体素子、上記の発光素子、上記の表示パネル、上記に記載の電子素子及び上記の太陽電池素子のうち少なくとも1つを備えるため、良質な電子機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、結晶性の高い半導体層を有する半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体基板の構成を示す図。
【図2】本実施形態におけるPED装置の概略的な構成を示す図
【図3】本実施形態に係る半導体基板の製造過程を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る半導体基板の構成を示す図。
【図5】ジルコニウムナイトライドの光反射特性を示す図。
【図6】本実施形態におけるスパッタ装置の構成を示す図
【図7】本発明の第3実施形態に係る半導体基板の構成を示す図。
【図8】本実施形態におけるMBE装置の構成を示す図
【図9】本発明に係る半導体基板の他の構成を示す図。
【図10】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図11】本発明の実施例に係る半導体層の特性を示す図。
【図12】本発明の実施例に係る半導体層の特性を示す図。
【図13】本発明の実施例に係る半導体層の特性を示す図。
【図14】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図15】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図16】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図17】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体基板1の構成を示す図である。
同図に示すように、半導体基板1は、グラファイト基板2上に半導体層4が積層された構成になっている。この半導体基板1は、発光素子や電子素子などに搭載される。
【0048】
グラファイト基板2は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子を有するグラファイトフィルムからなる。このような複素環状高分子としては、例えばポリイミド重合体、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダー(BBL)重合体、ポリオキサジアゾール重合体、ポリパラフェニレンビニレン重合体、BNTCA−BPTA重合体などが挙げられる。また、具体的には、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1であることを特徴とする重合体が含まれる。
【0049】
上記重合体としては、固有粘度が1.0〜3.5 dlg-1である重合体がより好ましい。高分子の固有粘度(η)は分子量の指標となる物性値であり、分子量が大きくなるにつれてηは大きくなる。固有粘度の測定法はすでに知られており、本発明では重合体をメタンスルホン酸に溶解し、濃度0.15gdl−1と調整し、30℃雰囲気において測定した。
【0050】
【化1】
【0051】
一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体は、ビナフチルテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のビナフチルテトラカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ビナフチルテトラカルボン酸としては、4,4‘−ビナフチル−1,l‘,8,8‘−テトラカルボン酸を例示でき、ビフェニルテトラアミンとしては3,3‘,4,4 ‘−ビフェニルテトラアミンを例示できる。ビフェニルテトラアミンの塩としては3,3‘,4,4 ‘−ビフェニルテトラアミンの四塩酸塩を例示できる。
【0052】
前記ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを、溶媒を収めた反応容器内に添加し、100〜250℃で3〜48時間、攪拌させて、上記一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体を得ることができる。前記溶媒としては、前記出発材料及び生成する重合体を溶解し、重合を促進する触媒としての作用を有するものであれば特に制限されない。具体的には、ポリリン酸、ポリリン酸エステル、リン酸ジフェニルクレシル等や五酸化二リン等を溶解したメタンスルホン酸等を挙げることができる。
【0053】
また、複素環状高分子として、例えば下記一般式(2)で表される繰り返し単位からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1であることを特徴とする重合体が含まれる。
【0054】
【化2】
【0055】
上記重合体としては、固有粘度が1.0〜2.7 dlg-1である重合体がより好ましい。一般式2で表される繰り返し単位からなる重合体は、ビナフチルテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のビナフチルテトラカルボン酸誘導体とベンゼンテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ベンゼンテトラアミンとしては1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンを例示できる。ベンゼンテトラアミンの塩としては1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンの四塩酸塩を例示できる。ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体の具体例は上記のとおりである。
【0056】
前記ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とベンゼンテトラアミンまたはその塩とから、上記一般式2で表される繰り返し単位からなる重合体を得る反応条件は、上記一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体を得る条件と重複する。
【0057】
また、複素環状高分子として、例えば下記一般式(3)で表される繰り返し単位からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1であることを特徴とする重合体が含まれる。
【0058】
【化3】
【0059】
上記重合体としては、固有粘度が1.0〜2.2 dlg-1である重合体がより好ましい。
【0060】
一般式3で表される繰り返し単位からなる重合体は、ナフタレンテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のナフタレンテトラカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ナフタレンテトラカルボン酸としては、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸を例示でき、ビフェニルテトラアミンまたはその塩の具体例は上記のとおりである。
【0061】
前記ナフタレンテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とから、上記一般式3で表される繰り返し単位からなる重合体を得る反応条件は、上記上記一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体を得る条件と重複する。
【0062】
4,4‘−ビナフチル−1,l‘,8,8‘−テトラカルボン酸は、4−クロロ−1,8−ナフタル酸無水物から,エステル化,カップリングおよび加水分解の3ステップによって合成することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0063】
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸は、ピレンから過マンガン酸カリウムによる酸化、次亜塩素酸ナトリウム溶液による酸化の2ステップによって合成することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0064】
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンはm一クロロベンゼンから、ニトロ化、アミノ化およびニトロ基の還元の3ステップによって合成し、四塩酸塩として単離して使用することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0065】
3,3‘,4,4 ‘−フェニルテトラアミンは、o(オルト)-ニトロアニリンからヨウ素化,クロスカップリング,アミノ基の還元の3ステップによって合成することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0066】
かくして得られた上記一般式(1)、(2)及び(3)の重合体から選ばれた少なくとも一つの重合体を原料として、炭素フィルムを得ることができる。すなわち、本発明は、上記一般式(1)、(2)及び(3)のいずれか一つで表されることを特徴とする炭素フィルム製造用重合体の発明でもある。
【0067】
なお、本実施形態における複素環状高分子を次のように記載することもできる。
(1)下記一般式で表され、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1である重合体。
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
【化6】
【0071】
【化7】
【0072】
【化8】
(式中、Ar1は官能基1又は官能基2を示し、Ar2は官能基3又は官能基4を示し、nは重合度を示す自然数である。ただし、Ar1が官能基2のときはAr2は官能基4ではない。)。
【0073】
(3)下記一般式(4)、(5)及び(6)で表されるいずれかの重合体からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1である重合体。但し、式中、nは自然数である。
【0074】
【化9】
【0075】
【化10】
【0076】
【化11】
【0077】
図1に戻って、グラファイト基板2は、厚さが例えば10μm以上100μm以下の範囲に形成することができる。100μm以下とすることにより、外力に対する可撓性を有することとなる。このため、曲げることができるようになっている。また、グラファイト基板2の厚さを10μm以上とすることにより、外力に対して壊れにくい構成となる。グラファイト基板2の厚さとしてより好ましくは、より壊れにくい25μm以上100μm以下の範囲にすることができる。グラファイトシート2は、50cm2以上の大面積化が可能である。グラファイト基板2は、バッファ層3に接する面が、(0001)面となるように形成されている。
【0078】
図2は、本実施形態に係るPED装置5の概略的な構成を示す図である。
同図に示すように、PED装置5は、チャンバ10と、電子線源11と、ターゲット保持駆動部12と、基板保持部13と、ガス供給部14と、圧力調整部15とを主体として構成されており、ターゲットとなる物質に電子線を照射して蒸発させたものである。本実施形態では、一例として基板上に13族窒化物半導体を形成するものとする。13族窒化物半導体は、例えばGaN、AlN、InNなどが挙げられ、一般式InXGaYAl1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表される。
【0079】
電子線源11は、チャンバ10の外側に設けられており、放電管41と、ホローカソード42と、トリガー電極43と、対向電極44と、パルス発生器45とを主体として構成されている。放電管41は、例えばガラスなどからなり、長手方向の一端41aが開放された構成になっている。ホローカソード42は、放電管41の外面に取り付けられており、放電管41内に電場を印加可能になっている。トリガー電極43は放電管41内の長手方向の他端41bに設けられており、対向電極44は放電管41の一端41aに設けられている。パルス発生器45は、トリガー電極43に電気的に接続されており、トリガー電極43に所定の周波数でパルス信号を供給するようになっている。電子線源11は、このような機構により放電管41内でチャネルスパーク放電を起こし、発生したパルス電子線を一端41aから射出するようになっている。
【0080】
放電管41の一端41aには、パルス電子線を誘導するセラミックチューブ16が取り付けられている。チャンバ10には窓部17が設けられており、セラミックチューブ16は当該窓部17を介してチャンバ10の内部(ターゲット保持駆動部12)に到達するように設けられている。セラミックチューブ16の一端には開口部(射出部)16aが設けられており、放電管41内で発生し当該セラミックチューブ16内を誘導されたパルス電子線が当該開口部16aから射出されるようになっている。セラミックチューブ16の内径は2mm〜4mm程度である。セラミックチューブ16には図示しない移動機構が設けられており、当該セラミックチューブ16の開口部16aを移動させるができるようになっている。
【0081】
ターゲット保持駆動部12は、ターゲット保持部21と、ターゲット駆動部23と、ターゲット駆動軸24とを備えている。ターゲット保持部21は、ターゲット22を水平に保持可能に設置された坩堝である。ターゲット保持部21の内部には、例えば電熱線などの加熱機構(図示しない)が設けられており、ターゲット22を加熱可能になっている。
【0082】
ターゲット保持部21は、一定の導電性を有する材料からなる。このような材料としては、例えばチタン(Ti)などの金属を添加した窒化ホウ素(BN)や、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)などの13族金属の窒化物が挙げられる。
【0083】
ターゲット22としては例えば13族金属(例えばAl、Ga、In又はこれらの混合体)や13族窒化物(例えばAlN、GaN、InN)のなどが挙げられる。これらは、30℃で液体状になっている。
【0084】
ターゲット駆動部23は、ターゲット駆動軸24を介してターゲット保持部21を図中上下に移動させると共に、このターゲット駆動軸24を回転軸としてターゲット保持部21を回転させることが可能になっている。
【0085】
基板保持部13は、基板ホルダ31と、基板ホルダ駆動部33と、基板ホルダ駆動軸34とを備えている。基板ホルダ31は、基板2を水平に保持可能に設置されている。基板ホルダ31の内部には、例えば電熱線などの加熱機構(図示しない)が設けられており、基板2を加熱可能になっている。
【0086】
基板ホルダ駆動部33は、基板ホルダ駆動軸34を介して基板ホルダ31を図中左右方向に移動させると共に、この基板ホルダ駆動軸34を回転軸として基板ホルダ31を回転させることが可能になっている。ガス供給部14は、チャンバ10内にV族ガス、例えば窒素ガスを供給するガス供給源である。圧力調整部15は、例えばポンプなどからなり、チャンバ10内の圧力を調整可能になっている。
【0087】
次に、グラファイト基板2の形成工程を説明する。まず、上記一般式(1)、(2)及び(3)の重合体から選ばれた一つの重合体、あるいは前記重合体の複数を混合させ、例えば酸性の液体に溶解させ又は分散媒に分散させて、重合体の液状体を形成する。次に、当該液状体7を、図3(a)に示すように、自立基板6上に塗布する。この工程においては、例えばスピンコート法やディスペンス法などが用いられる。
【0088】
次に、図3(b)に示すように、液状体から液体あるいは分散板を蒸発させ、残留物8及び自立基板6を不活性雰囲気下で焼成する。焼成温度は、1000℃〜3000℃程度が好ましく、1200〜2800℃程度とすると更に好ましい。また、焼成時間は約1〜8時間とすることが好ましい。不活性雰囲気とは、酸素など酸化活性の気体がない雰囲気を意味し、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの雰囲気が好ましい。特にアルゴン雰囲気が好ましい。
【0089】
なお、焼成時には、例えば残留物8に張力を与えながら、あるいは表面に垂直に圧力を加えながら処理することが好ましく、それによって、炭化の際に起こる収縮を押さえ、炭化中の前駆体が配向しやすいために、強度の強い炭化物ができる。また、残留物8を焼成する際、フィルムの成型過程において重合体分子が自発的に高度な配向構造を形成するため,応力を付加しなくても高結晶性炭素フィルムを製造することができる。また、焼成時の焼成条件を調整することにより、作成されるグラファイトシート9の熱膨張係数を所望の値に近づけることができる。したがって、例えばグラファイト基板2上に形成される半導体層4の熱膨張係数とほぼ同一の熱膨張係数となるように焼成条件を調整することができる。
【0090】
次に、図3(c)に示すように、焼成によって形成されたグラファイトシート9を自立基板6から剥離させる。
グラファイトシート9を剥離後、図3(d)に示すようにグラファイトシート9の周縁部を切除して形状を調整する。以上の工程により、グラファイト基板2が形成される。
【0091】
本発明では、重合体あるいは重合体混合物を予めフィルム状に成形することが望ましく、当該フィルムを焼成することが望ましい。当該重合体あるいは重合体混合物をフィルム状に成形する手段は特に制限されない。
【0092】
かくして製造されたグラファイト基板2は密度が高く、高結晶性の炭素フィルムである。完全な炭素結晶の密度は結晶構造から求めることが可能であり、その値は2.26 g cm-3であると知られている。この値に近いほど結晶性が高いことになる。既存のBBLポリマー(比較例1)から得られた炭素フィルムの密度が2.19 g cm-3である。前記一般式(2)で表される繰り返し単位からなる重合体からはこれに匹敵する密度の炭素フィルムを得ることができた。結晶性を評価する手段としては,広角X線回折が一般的であるが、今回得られたような非常に結晶性の高い炭素フィルムに適用すると、結晶サイズや面間隔の決定に非常に大きな誤差を生じる可能性がある。これに対して、密度測定は非常に精度良く測定可能であり、その点でも有利である。
【0093】
また、本発明のグラファイト基板2は炭素結晶のc軸がフィルムの法線方向に,高度に配向していることも一つの特徴である。本発明により得られた炭素フィルムは配向の程度が従来のものに比べて高いという特徴を持つ。
【0094】
次に、上記PED装置5によってグラファイト基板2上に13窒化物の薄膜を形成する手法を説明する。
ガス供給部14によってチャンバ10内の窒素ガスの圧力を1mTorr〜20mTorr程度にしておく。また、基板ホルダ31にグラファイト基板2を保持させ、基板ホルダ31内の加熱機構によってグラファイト基板2の温度を200℃〜850℃程度にしておく。移動機構によって、セラミックチューブ16の開口部16aをターゲット22から2mm〜10mm程度離れた位置、より好ましくは2mm〜3mm程度離れた位置に配置しておく。
【0095】
この状態で、電子線源11の放電管41内でパルス電子線を発生させる。パルス電子線の加速電圧を10kV〜20kVとし、周波数を1Hz〜20Hz程度にすることが好ましい。このパルス電子線は、セラミックチューブ16内を誘導され、開口部16aから射出される。射出されたパルス電子線は、ターゲット22に照射される。セラミックチューブ16の開口部16aを例えば一筆書きの要領でターゲット22の全面に移動させて、パルス電子線をターゲット22の全面に照射する。
【0096】
ターゲット22にパルス電子線が照射されると、ターゲット22を構成する原子あるいは分子に運動エネルギーが供給され、当該原子あるいは分子がプルームとなって蒸発する。このプルームは窒素ガスと衝突反応等を繰り返しながら徐々に状態を変化させてグラファイト基板2に近接する。グラファイト基板2に到達したプルームは、格子整合性の最も安定な状態、すなわち13族窒化物の状態で基板2上に堆積する。
【0097】
グラファイト基板2上には、13族窒化物がまず島状(3次元島状)に成長する。その後、島状の13族窒化物が成長し、コアレッセンスが形成される。そして、膜厚方向に2次元的に成長し、13族窒化物の薄膜(半導体層)が形成される。このようにしてグラファイト基板2上に薄膜が形成される。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト基板2の表面上に半導体層4を成長させることとしたので、グラファイト基板2の優れた結晶性が半導体層4に伝達する形となり、結晶性に優れた半導体層4が得られる。これにより、結晶性に優れた半導体層4を有する半導体基板1を得ることができる。
【0099】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図4は、本実施形態に係る半導体基板101の構成を示す図である。
同図に示すように、半導体基板101は、グラファイト基板102上にバッファ層103が設けられ、当該バッファ層103上に半導体層104が積層された構成になっている。この半導体基板101は、発光素子や電子素子などに搭載される。グラファイト基板102は、第1実施形態と同様、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる基板である。
【0100】
バッファ層103は、ジルコニウムナイトライド(ZrN(111))からなる層であり、グラファイト基板102の(0001)面と半導体層4との間に介在する。図5(a)は、ジルコニウムナイトライドの光反射率を示すグラフである。グラフの横軸は波長、グラフの縦軸は光反射率を示している。図5(b)は、ジルコニウムナイトライドの光反射率と当該光の波長との対応関係を示す表である。
【0101】
図5(a)及び図5(b)に示すように、ジルコニウムナイトライドにおいて青色光の波長範囲である470nmでの光反射率は65.6%になっている。これをもとにすると、ジルコニウムナイトライドからなるバッファ層3においては、青色光を照射したときにはほぼ65%以上の光を反射することが可能であるといえる。
【0102】
図6は、バッファ層3の製造装置であるスパッタ装置の構成を示す図である。スパッタ装置110は、チャンバ111と、基板加熱機構112と、基板保持部113と、スパッタガン114と、パルス電源115と、制御部116とを有している。
【0103】
このスパッタ装置110においては、グラファイト基板102をチャンバ111内の基板保持部113上に保持させた状態で基板加熱機構112によって当該グラファイト基板102を加熱することができるようになっている。また、グラファイト基板102が基板保持部113上に保持された状態で、複数のスパッタガン114からスパッタビームがグラファイト基板102へ向けて射出されるようになっている。
【0104】
複数のスパッタガン114は、例えばGa及びGa合金のビームを射出するスパッタガン114a、Al及びAl合金のビームを射出するスパッタガン114b、In及びIn合金のビームを射出するスパッタガン114c、Si及びSi合金のビームを射出するスパッタガン114d、Hf及びHf合金のビームを射出するスパッタガン114eを有している。各スパッタガン114a〜114eからのビームを構成する金属の種類については、適宜交換することが可能になっている。したがって、例えばZrやMg及びこれらの金属からなるビームを射出できるように構成しても構わない。
【0105】
複数のスパッタガン114はそれぞれパルス電源115に接続されている。パルス電源115は、スパッタガン114へパルス電圧を印加する電源である。各スパッタガン114a〜114eに対応するパルス電源115a〜115eが設けられている。これらのパルス電源115a〜115eから出力されるパルス電圧の出力タイミングや出力期間、周波数、振幅などは、制御コンピュータなどの制御部116によって制御されるようになっている。
【0106】
次に、本実施形態に係る半導体基板101を製造する工程を説明する。
まず、第1実施形態に記載の手法と同一の手法を用いて、グラファイト基板102を形成する。なお、本実施形態においてグラファイト基板102を形成する際には、当該グラファイト基板102上に形成される半導体層104の熱膨張係数とほぼ同一の熱膨張係数となるように焼成条件を調整することが好ましい。
【0107】
次に、バッファ層103の形成工程を説明する。本実施形態では、基板−ターゲット間にパルス直流電圧を印加するPSD法(パルススパッタ堆積法)を例に挙げて説明する。特に本実施形態では、大面積化が可能なグラファイト基板102上に半導体薄膜を形成するため、PSD法を行う意義は大きいといえる。
【0108】
まず、チャンバ111内にアルゴンガス及び窒素ガスを供給する。アルゴンガス及び窒素ガスによってチャンバ111内が所定の圧力になった後、グラファイト基板2を基板保持部113に保持する。グラファイト基板102を基板保持部113に保持させた後、基板加熱機構112によって、グラファイト基板102の周囲温度を調節する。グラファイト基板102の周囲温度を調節したら、パルス電源115を駆動させ、スパッタガン114eからグラファイト基板102の(0001)面へ向けてHfのビームを射出する。
【0109】
パルス電圧が印加されている間、射出されたHf原子は高エネルギーを有した状態でグラファイト基板102上に供給される。グラファイト基板102の表面では、チャンバ内の窒素が窒素ラジカルになっている。グラファイト基板102の(0001)面上には高エネルギーを有するHf原子が大量に供給され、当該グラファイト基板102の表面は金属リッチの状態になる。
【0110】
金属リッチの状態では、Hf原子は安定な格子位置にマイグレーションする。安定な格子位置にマイグレーションしたHf原子は、チャンバ111内で活性化した窒素ラジカルと反応して金属窒化物(HfN)の結晶となる。パルス電圧が印加される毎に、結晶構造の安定したHfNが間欠的に堆積されることになる。このようにして、バッファ層103がグラファイト基板102の(0001)面上に形成される。このように形成されたバッファ層103上に、例えば第1実施形態と同様の手法を用いて半導体層104を形成する。
【0111】
以上のように、本実施形態によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト基板102の表面上にバッファ層103を成長させ、当該バッファ層103の表面上に半導体層104を成長させることとしたので、グラファイト基板102の優れた結晶性がバッファ層103に伝達し、当該バッファ層103を介して半導体層104に伝達する形となるため、結晶性に優れた半導体層104を得ることができる。これにより、結晶性に優れた半導体層104を有する半導体基板101を得ることができる。
【0112】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図7は、本実施形態に係る半導体基板201の構成を示す図である。
同図に示すように、半導体基板201は、グラファイト基板202上にバッファ層203が設けられ、当該バッファ層203上に半導体層204が積層された構成になっている。この半導体基板201は、発光素子や電子素子などに搭載される。グラファイト基板102は、第1実施形態と同様、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる基板である。
【0113】
図8は、上記の半導体層204の製造装置であるMBE(Molecular Beam Epitaxy)装置の構成を示す図である。
同図に示すように、MBE装置220は、チャンバ221と、基板加熱機構222と、基板保持部223と、電子銃24と、ターゲットホルダTHとを有している。
【0114】
このMBE装置220においては、グラファイト基板202をチャンバ221内の基板保持部223上に保持させた状態で基板加熱機構222によって当該グラファイト基板202を加熱することができるようになっている。また、グラファイト基板202が基板保持部223上に保持された状態で、電子銃224から電子線がターゲットホルダTH上のターゲットTへ向けて射出されるようになっている。チャンバ221は、外部に対して密閉可能に設けられている。チャンバ221内は図示しないターボ分子ポンプなどによって減圧できるようになっている。チャンバ221の真空はターボ分子ポンプにより維持されるようになっている。
【0115】
また、チャンバ221は、不図示の液体窒素シュラウドを内部壁面に有している。液体窒素シュラウドは、チャンバ221内の残留不純物ガスを壁面に吸着させる。チャンバ221のベースプレッシャーは、例えば1×10−10Torr程度に設定可能である。ターゲットホルダとしては、例えば耐高温用のTa製坩堝が用いられている。ターゲットホルダTH内の中に収められているターゲットTは、例えば固体Siソースである。MBE装置20では、この固体Siソースを高出力電子銃から放出された電子線で加熱することでSiを蒸発させ、蒸発させたSiをグラファイト基板2に付着させることで、グラファイト基板202上にSiの薄膜を成長させる構成となっている。チャンバ221には反射高エネルギー電子線回折(RHEED)装置が設置されており、基板や薄膜表面の結晶性が観察可能になっている。
【0116】
次に、本実施形態に係る半導体基板201の製造工程を説明する。
まず、上記各実施形態に記載の手法と同一の手法を用いて、グラファイト基板202を形成する。なお、本実施形態においてグラファイト基板202を形成する際には、当該グラファイト基板202上に形成される半導体層204の熱膨張係数とほぼ同一の熱膨張係数となるように焼成条件を調整することが好ましい。
【0117】
次に、グラファイト基板202上に、例えば第2実施形態に記載の手法と同一の手法を用いてバッファ層203を形成する。バッファ層203を形成した後、当該バッファ層203上にSi薄膜を成長させる。本実施形態では、MBE法によってSi薄膜を成長させる例に挙げて説明する。特に本実施形態では、大面積化が可能なグラファイト基板202上に半導体薄膜を形成するため、MBE法を行う意義は大きいといえる。
【0118】
まず、ターボ分子ポンプによってチャンバ221内をベースプレッシャーとし、バッファ層203を形成したグラファイト基板202を基板保持部223に保持させる。また、ターゲットTをターゲットホルダTH上に設置する。グラファイト基板202及びターゲットTを配置した後、加熱装置217によって、グラファイト基板202の周囲温度を調節する。グラファイト基板202の周囲温度を調節した後、電子銃224の電子電流を調整して、ターゲットホルダTH内のターゲットTに電子線を照射する。電子線の照射を受けたターゲットTは、蒸発してグラファイト基板202のバッファ層203上に付着する。本実施形態では、Si原子がバッファ層203上に付着し、Siの薄膜がバッファ層203上に成長する。この薄膜が半導体層204となる。
【0119】
以上のように、本実施形態によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト基板202の表面上にバッファ層203を成長させ、当該バッファ層203の表面上にシリコンからなる半導体層204を成長させることとしたので、グラファイト基板202の優れた結晶性がバッファ層203に伝達し、当該バッファ層203を介して半導体層204に伝達する形となるため、結晶性に優れた半導体層204を得ることができる。これにより、結晶性に優れた半導体層204を有する半導体基板201を得ることができる。
【0120】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、全体がグラファイトからなるグラファイト基板2、102、202をグラファイト層として用いる例を説明したが、これに限られることは無く、例えば図9に示すように、基材2Aの上面にグラファイト層2Bが形成された構成のグラファイト基板2を用いるようにしても構わない。
【0121】
この場合、基材2Aとしては、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子とは異なる材料であって、グラファイトの焼成時の温度によって溶解しない材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば耐熱性の有機化合物などが挙げられる。グラファイト基板2の作成時には、例えば基材2A上に第1実施形態で記載の液状体7を薄膜状に塗布し、液状体7及び基材2Aごと焼成すればよい。
【0122】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子は比較的高価な材料である。この構成によれば、当該複素環状高分子とは異なる材料を主として用いることになるため、上記複素環状高分子よりも低価格の材料を基材2Aとして用いるようにすれば、コストの削減を実現することができる。
【0123】
また、例えば、上記実施形態ではバッファ層をパルススパッタ法によって形成し、半導体層をPLD法やMBE法によって形成しているが、これに限られることは無く、例えばPED法(パルス電子線堆積法)を含むPXD法(Pulsed Excitation Deposition:パルス励起堆積法)有機金属成長法、分子線エピタキシー法、CVD法など、他の薄膜形成方法によって形成しても構わない。
【0124】
また、上記実施形態では、グラファイト基板上にHfN(111)からなるバッファ層を形成することとしたが、これに限られることは無く、例えばZrN(111)からなるバッファ層を形成する構成であっても構わない。また、バッファ層を積層する構成(例えば、GaN層/AlN層/グラファイト基板、など)であっても構わない。
【0125】
本発明の半導体基板1、101、201は適用範囲が広く、非晶質基板上への発光ダイオード、半導体レーザなどの半導体素子などに用いることができる。また、当該半導体素子を用いた非晶質基板上への透明回路としても用いることができる。
【0126】
このほかにも、例えばフラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極へ適用が考えられる。また、反射防止膜に用いられる電磁波の遮蔽、静電気により埃がつかないようにするフィルム、帯電防止膜、熱線反射ガラス、紫外線反射ガラスへ適用も考えられる。
【0127】
用途の例として、色素増感太陽電池の電極;ディスプレイパネル、有機ELパネル、発光素子、発光ダイオード(LED)、白色LEDやレーザの透明電極;面発光レーザの透明電極;照明装置;通信装置;特定の波長範囲だけ光を通すというアプリケーションも考えられる。
【0128】
さらに具体的な用途として次のものを挙げることができる。液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)における透明導電膜;カラーフィルタ部における透明導電性膜;EL(EL:Electro Luminescence)ディスプレイにおける透明導電性膜;プラズマディスプレイ(PDP)における透明導電膜;PDP光学フィルタ;電磁波遮蔽のための透明導電膜;近赤外線遮蔽のための透明導電膜;表面反射防止のための透明導電膜;色再現性の向上のための透明導電膜;破損対策のための透明導電膜;光学フィルタ;タッチパネル;抵抗膜式タッチパネル;電磁誘導式タッチパネル;超音波式タッチパネル;光学式タッチパネル;静電容量式タッチパネル;携帯情報端末向け抵抗膜式タッチパネル;ディスプレイと一体化したタッチパネル(インナータッチパネル);太陽電池;アモルファスシリコン(a−Si)系太陽電池;微結晶Si薄膜太陽電池;CIGS太陽電池;色素増感太陽電池(DSC);電子部品の静電気対策用透明導電材料;帯電防止用透明導電材;調光材料;調光ミラー;発熱体(面ヒーター、電熱ガラス);電磁波遮蔽ガラス。更に、これらを搭載した携帯電話や情報端末、電子計算機、OA機器など、種々の電子機器に対しても本発明の適用は可能である。
【実施例】
【0129】
次に、本発明の実施例を説明する。
(半導体基板の作製)
本実施例では、BBL重合体を熱分解することによって作製した炭素フィルムを、真空中アニールによっての表面清浄化した後、PXD法によってGaN薄膜の成長を行った。窒素源としてN2ガスを導入し、成長温度は700℃から800℃に設定した。成長した薄膜の評価として、成長した薄膜の評価として、X線回折(XRD)測定、室温フォトルミネッセンス(PL)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、電子線後方散乱回折(EBSD)測定を行った。
【0130】
真空中アニール処理後のBBLポリマー熱分解炭素フィルムをXRD測定やAFM観察によって調べたところ、その表面には(0001)面が露出し、図10に示すように原子レベルで平坦なテラスを持つ高品質結晶であることが明らかになった。このグラファイトシート上にGaN薄膜の成長を行ったところ、図11に示すようにXRD測定において、GaN薄膜の0002回折が明瞭に観察された。図12及び図13に示すようにEBSD測定の結果からも炭素フィルムに対してGaN薄膜がエピタキシャル成長していることが確認され、高い結晶性を有するGaN薄膜の成長が可能であることが明らかになった。
【0131】
(重合体の調製)
メカニカルスターラ,アルゴンガス導入管,排気管および温度計を装着した,200ml四つ首フラスコ中にポリリン酸(PPA)(オルトリン酸換算濃度115%)100gを収め,アルゴンガスをバブリングして溶存酸素を除去し,1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン四塩酸塩12mmolを加え溶解させた.次に,1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸12mmolを加え,200℃において24時間攪拌して,重合体のPPA溶液を得た。
【0132】
当該重合体のPPA溶液を大量の水に投入して重合体を凝固させ,ロ別,得られた重合体を水およびメタノール(MeOH)で順次洗浄した後、室温で減圧乾燥し,粗高分子を得た。粗高分子に残留するPPAを除去するために,粗高分子をメタンスルホン酸(MSA)に溶解し,この溶液を大量の水に投入して重合体を凝固させ,水,ジメチルアセトアミド(DMAc)およびMeOHで順次洗浄した後240℃において24時間減圧乾燥し,重合体精製物を得た。
【0133】
重合体の固有粘度(η)は濃度0.15gdl−1のMSA溶液について,30℃においてオストワルト粘度計(柴田科学株式会社製)を用いて測定した。固有粘度は2.5−3.0dlg−1であった。
(重合体フィルムの作製)
前記重合体0.3gをMSA7mlに溶解させて得られた粘稠な溶液を,内径70mmのガラス製フラットシャーレに展開した。このシャーレをマントルヒータ内に置いた500ml平底セパラブルフラスコ内に水平を保って静置した。セパラブルフラスコ内をロータリーポンプで減圧した後,段階的に200℃まで加熱して脱溶媒させ,重合体フィルムを作製した。
【0134】
前記重合体フィルムは容易にガラスシャーレから剥離することができた.フィルム中に残留するMSAを除去するために,トリエチルアミンのMeOH溶液に室温で12時間浸漬し,ついでMeOHで洗浄した後,減圧乾燥した.得られたフィルムの厚さはおよそ50μmであった。フィルムは柔軟で,所望の形状に切断することが可能であった。
【0135】
(炭素フィルムの作製)
前記重合体フィルムは以下に示す2段階の熱処理によって炭素化した。
【0136】
所定の形状に切断した重合体フィルムを,黒鉛板にはさみシリコンカーバイドをヒータとする電気炉内(自作)に置いた。電気炉内に窒素ガスを250mlmin−1の流量で流通させながら,2℃min−1の速度で加熱し,1500℃で1時間保持して熱処理し,炭素フィルムを得た。
【0137】
前記炭素フィルムを黒鉛板にはさみ黒鉛をヒータとする電気炉内(進成電炉製作所製)に置いた。電気炉内にアルゴンガスを2000mlmin−1の流量で流通させながら,5℃min−1の速度で加熱し,2800℃で1時間保持して熱処理し,炭素フィルムを得た。
【0138】
(BNTCA−BPTA重合体を出発材料としたグラファイト基板の特性)
図14〜図17は、BNTCA−BPTA重合体をスピンコート法によってグラファイト上に塗布してグラファイト層を形成したときの特性を示している。図14に示すように、表面SEM像からはグラファイト層の表面が平坦であることがわかる。図15に示すXRD測定結果や図16に示すEBSD測定結果から、グラファイト層を構成する結晶の0001回折が明瞭に観察された。また、図17に示すように、チルト分布角計測結果においてピークの半値幅が1.63°となっており、良好な値を示した。なお、このグラファイト層を構成する結晶のグレインサイズは、約10μmであった。
【符号の説明】
【0139】
1、101、201…半導体基板 2、102、202…グラファイト基板 103、203…バッファ層 4、104、204…半導体層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体成長用基板、半導体成長用基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
13属窒化物であるAlN、GaN、InNおよびその混晶相のPN接合を利用した窒化物系半導体材料やシリコンなどの半導体材料を用いた素子が広く実用化されている。半導体素子はサファイアや炭化珪素などの高価な単結晶基板上に量産性の低い手法で製造されることが多かった。このため面光源として用いるには価格が高く、専ら点光源として利用されてきた。
【0003】
一方、面光源としては有機EL素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。有機EL素子は価格の安いプラスチック基板やガラス基板を出発材料として用いることができるため、素子の価格を安価にでき、面光源としての利用が可能である。また、曲げることのできる発光素子や照明としての利用も期待されている。
【0004】
これに対して、耐熱性を有すると共に外力に対する可撓性を有するグラファイト基板上に半導体層を形成する手法が提案されている。この手法によれば、ポリイミドやPODなどのポリマーを高温で加熱処理することによりc軸配向させたグラファイトフィルムを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日経ナノビジネス2006年No40 34−35頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリマーを出発材料として作成したグラファイトシートは結晶性が十分とは言えず、このグラファイトシート上に形成される半導体層においても結晶性が十分とはいえないという問題があった。
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明は、結晶性の高い半導体層を有する半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体成長用基板、半導体成長用基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体基板は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とする半導体層とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を用いているため、結晶性に優れたグラファイト層を実現できる。このため、グラファイト層の表面を成長面とする半導体層についても、結晶性に優れたものが得られることになる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0010】
本発明に係る半導体基板は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とするバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記バッファ層の表面を成長面とする半導体層とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を用いているため、結晶性に優れたグラファイト層を実現できる。このため、グラファイト層の表面を成長面とするバッファ層についても結晶性に優れたものが得られると共に、バッファ層の表面を成長面とする半導体層についても結晶性に優れたものが得られることになる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0012】
上記の半導体基板は、前記バッファ層は、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト基板と半導体層との間に、HfN及びZrNのうち少なくとも一方を含むバッファ層を用いた場合、当該バッファ層によって光を反射することができる。これにより、半導体層を例えば光吸収層等として用いる場合、当該光吸収層における光の吸収効率を高めることができる。また、半導体層を発光層として用いる場合、当該発光層からの光の利用効率を高めることができる。更に、AlNを含むバッファ層を用いた場合、半導体層のグレインサイズを増大させることができる。これにより、半導体層の電気的特性を高めることができ、半導体層を発光層として用いる場合には当該半導体層の光学特性についても高めることができる。
【0013】
上記の半導体基板は、前記バッファ層は、複数層に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、バッファ層が複数層に形成されていることとしたので、例えば光反射効果が得られるHfN及びZrNの層と、グレインサイズ増大効果が得られるAlNの層とを別層として形成することができる。
【0014】
上記の半導体基板は、前記半導体層は、シリコン又は13族窒化物を含む半導体からなることを特徴とする。
本発明によれば、シリコン又は13族窒化物を含む半導体を含む結晶性の高い半導体層を得ることができる。
【0015】
上記の半導体基板は、前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有し、前記半導体層は、前記(0001)面上に設けられることを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層が(0001)面を表面に有し、半導体層が(0001)面上に設けられることとしたので、半導体層の配向性が高められることになる。
【0016】
上記の半導体基板は、前記基板は、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物を含む基材と、前記基材上に設けられた前記グラファイト層とを有することを特徴とする。
結晶性の高い半導体層を得るためには、グラファイト層自体が基板である必要は無く、半導体層の結晶性を向上させるためのグラファイト層の表面が得られれば良いことになる。本発明においては、グラファイト層が、複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に設けられていることとしたので、低コストな半導体基板が得られる。
【0017】
本発明に係る半導体基板の製造方法は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上に半導体層を成長させることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層の表面上に半導体層を成長させることとしたので、グラファイト層の優れた結晶性が半導体層に伝達する形となり、結晶性に優れた半導体層が得られる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を製造することができる。
【0019】
本発明に係る半導体基板の製造方法は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上にバッファ層を成長させ、前記バッファ層の表面上に半導体層を成長させることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層の表面上にバッファ層を成長させ、当該バッファ層の表面上に半導体層を成長させることとしたので、グラファイト層の優れた結晶性がバッファ層に伝達し、当該バッファ層を介して半導体層に伝達する形となるため、結晶性に優れた半導体層を得ることができる。これにより、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を製造することができる。
【0021】
上記の半導体基板の製造方法は、前記バッファ層として、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含む層を成長させることを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト基板と半導体層との間に、HfN及びZrNのうち少なくとも一方を含むバッファ層を用いた場合、当該バッファ層によって光を反射することができる。これにより、半導体層を例えば光吸収層等として用いる場合、当該光吸収層における光の吸収効率の高い半導体基板を得ることができる。また、半導体層を発光層として用いる場合、当該発光層からの光の利用効率の高い半導体基板を得ることができる。更に、AlNを含むバッファ層を用いた場合、半導体層のグレインサイズを増大させることができる。これにより、電気的特性の高い半導体基板を得ることができ、半導体層を発光層として用いる場合には光学特性の高い半導体基板を得ることができる。
【0022】
上記の半導体基板の製造方法は、前記バッファ層を、複数層に形成することを特徴とする。
本発明によれば、バッファ層を複数層に形成するため、例えば光反射効果が得られるHfN及びZrNの層と、グレインサイズ増大効果が得られるAlNの層とを別層として形成することができる。
【0023】
上記の半導体基板の製造方法は、前記半導体層として、シリコン又は13族窒化物を含む半導体層を成長させることを特徴とする。
本発明によれば、シリコン又は13族窒化物を含む半導体を含む結晶性の高い半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0024】
上記の半導体基板の製造方法は、前記グラファイト基板は、(0001)面を表面に有し、前記(0001)面に前記半導体層を成長させることを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層が(0001)面を表面に有し、(0001)面に前記半導体層を成長させることとしたので、配向性の高い半導体層を有する半導体基板を得ることができる。
【0025】
上記の半導体基板の製造方法は、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層を形成することで前記基板を得ることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上にグラファイト層を形成することで基板を得ることとしたので、低コストで基板を製造することができる。
【0026】
上記の半導体基板の製造方法は、前記複素環状高分子を溶解し、前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで前記基板を得ることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子を溶解し、基材上に複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、薄膜及び基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで基板を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を有する基板を低コストで製造することができる。
【0027】
上記の半導体基板の製造方法は、所定の自立基材上に前記複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、前記グラファイト層を得ることを特徴とする。
本発明によれば、所定の自立基材上に複素環状高分子の層を形成し、形成された複素環状高分子の層を自立基材から分離することでグラファイト層を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を基板として得ることができる。
【0028】
上記の半導体基板の製造方法は、前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成することを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層の熱膨張係数と、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数とが近似するあるいは一致するため、以降の熱処理において熱膨張係数の差に起因する欠陥を回避することができる。
【0029】
本発明に係る半導体成長用基板は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層を表面に有するため、当該表面に結晶性の高い半導体層を成長させることができる。
【0031】
上記の半導体成長用基板は、前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有することを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層が(0001)面を表面に有することとしたので、当該(0001)面に半導体層を成長させることができる。これにより、配向性の高い半導体層を成長させることができる。
【0032】
上記の半導体成長用基板は、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上にグラファイト層を形成することで基板を得ることとしたので、低コストで半導体成長用基板を製造することができる。
【0033】
本発明に係る半導体成長用基板の製造方法は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に形成することを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト層を基材上に形成することで当該グラファイト層を得ることができるため、半導体成長用基板を低コストに抑えることができる。
【0035】
上記の半導体成長用基板の製造方法は、前記複素環状高分子を溶解し、前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで前記基板を得ることを特徴とする。
本発明によれば、複素環状高分子を溶解し、基材上に複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、薄膜及び基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行うことで半導体成長用基板を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を有する半導体成長用基板を低コストで製造することができる。
【0036】
本発明に係る半導体成長用基板の製造方法は、所定の自立基材上に芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、グラファイト層を得ることを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、所定の自立基材上に複素環状高分子の層を形成し、形成された複素環状高分子の層を自立基材から分離することでグラファイト層を得ることとしたので、結晶性の高いグラファイト層を半導体成長用基板として得ることができる。
【0038】
上記の半導体成長用基板の製造方法は、前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成することを特徴とする。
本発明によれば、グラファイト層の熱膨張係数と、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数とが近似するあるいは一致するため、以降の熱処理において熱膨張係数の差に起因する欠陥を回避することができる。
【0039】
本発明に係る半導体素子は、上記の半導体基板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を備えるため、良質な半導体素子を得ることができる。
【0040】
本発明に係る発光素子は、上記の半導体素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、良質な半導体素子を備えるため、発光特性の良い発光素子を得ることができる。
【0041】
本発明に係る表示パネルは、上記の発光素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、発光特性の良い発光素子を備えるため、表示特性の高い表示パネルを得ることができる。
【0042】
本発明に係る電子素子は、上記の半導体素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、良質な半導体素子を備えるため、電気的特性の高い電子素子を得ることができる。
【0043】
本発明に係る太陽電池素子は、上記の半導体基板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、結晶性に優れた半導体層を有する半導体基板を備えるため、良質な太陽電池素子を得ることができる。
【0044】
本発明に係る電子機器は、上記の半導体素子、上記の発光素子、上記の表示パネル、上記に記載の電子素子及び上記の太陽電池素子のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする。
本発明によれば、上記の半導体素子、上記の発光素子、上記の表示パネル、上記に記載の電子素子及び上記の太陽電池素子のうち少なくとも1つを備えるため、良質な電子機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、結晶性の高い半導体層を有する半導体基板、半導体基板の製造方法、半導体素子、発光素子、表示パネル、電子素子、太陽電池素子及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体基板の構成を示す図。
【図2】本実施形態におけるPED装置の概略的な構成を示す図
【図3】本実施形態に係る半導体基板の製造過程を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る半導体基板の構成を示す図。
【図5】ジルコニウムナイトライドの光反射特性を示す図。
【図6】本実施形態におけるスパッタ装置の構成を示す図
【図7】本発明の第3実施形態に係る半導体基板の構成を示す図。
【図8】本実施形態におけるMBE装置の構成を示す図
【図9】本発明に係る半導体基板の他の構成を示す図。
【図10】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図11】本発明の実施例に係る半導体層の特性を示す図。
【図12】本発明の実施例に係る半導体層の特性を示す図。
【図13】本発明の実施例に係る半導体層の特性を示す図。
【図14】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図15】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図16】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【図17】本発明の実施例に係るグラファイト基板の特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体基板1の構成を示す図である。
同図に示すように、半導体基板1は、グラファイト基板2上に半導体層4が積層された構成になっている。この半導体基板1は、発光素子や電子素子などに搭載される。
【0048】
グラファイト基板2は、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子を有するグラファイトフィルムからなる。このような複素環状高分子としては、例えばポリイミド重合体、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダー(BBL)重合体、ポリオキサジアゾール重合体、ポリパラフェニレンビニレン重合体、BNTCA−BPTA重合体などが挙げられる。また、具体的には、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1であることを特徴とする重合体が含まれる。
【0049】
上記重合体としては、固有粘度が1.0〜3.5 dlg-1である重合体がより好ましい。高分子の固有粘度(η)は分子量の指標となる物性値であり、分子量が大きくなるにつれてηは大きくなる。固有粘度の測定法はすでに知られており、本発明では重合体をメタンスルホン酸に溶解し、濃度0.15gdl−1と調整し、30℃雰囲気において測定した。
【0050】
【化1】
【0051】
一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体は、ビナフチルテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のビナフチルテトラカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ビナフチルテトラカルボン酸としては、4,4‘−ビナフチル−1,l‘,8,8‘−テトラカルボン酸を例示でき、ビフェニルテトラアミンとしては3,3‘,4,4 ‘−ビフェニルテトラアミンを例示できる。ビフェニルテトラアミンの塩としては3,3‘,4,4 ‘−ビフェニルテトラアミンの四塩酸塩を例示できる。
【0052】
前記ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを、溶媒を収めた反応容器内に添加し、100〜250℃で3〜48時間、攪拌させて、上記一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体を得ることができる。前記溶媒としては、前記出発材料及び生成する重合体を溶解し、重合を促進する触媒としての作用を有するものであれば特に制限されない。具体的には、ポリリン酸、ポリリン酸エステル、リン酸ジフェニルクレシル等や五酸化二リン等を溶解したメタンスルホン酸等を挙げることができる。
【0053】
また、複素環状高分子として、例えば下記一般式(2)で表される繰り返し単位からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1であることを特徴とする重合体が含まれる。
【0054】
【化2】
【0055】
上記重合体としては、固有粘度が1.0〜2.7 dlg-1である重合体がより好ましい。一般式2で表される繰り返し単位からなる重合体は、ビナフチルテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のビナフチルテトラカルボン酸誘導体とベンゼンテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ベンゼンテトラアミンとしては1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンを例示できる。ベンゼンテトラアミンの塩としては1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンの四塩酸塩を例示できる。ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体の具体例は上記のとおりである。
【0056】
前記ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とベンゼンテトラアミンまたはその塩とから、上記一般式2で表される繰り返し単位からなる重合体を得る反応条件は、上記一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体を得る条件と重複する。
【0057】
また、複素環状高分子として、例えば下記一般式(3)で表される繰り返し単位からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1であることを特徴とする重合体が含まれる。
【0058】
【化3】
【0059】
上記重合体としては、固有粘度が1.0〜2.2 dlg-1である重合体がより好ましい。
【0060】
一般式3で表される繰り返し単位からなる重合体は、ナフタレンテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のナフタレンテトラカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ナフタレンテトラカルボン酸としては、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸を例示でき、ビフェニルテトラアミンまたはその塩の具体例は上記のとおりである。
【0061】
前記ナフタレンテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とから、上記一般式3で表される繰り返し単位からなる重合体を得る反応条件は、上記上記一般式1で表される繰り返し単位からなる重合体を得る条件と重複する。
【0062】
4,4‘−ビナフチル−1,l‘,8,8‘−テトラカルボン酸は、4−クロロ−1,8−ナフタル酸無水物から,エステル化,カップリングおよび加水分解の3ステップによって合成することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0063】
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸は、ピレンから過マンガン酸カリウムによる酸化、次亜塩素酸ナトリウム溶液による酸化の2ステップによって合成することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0064】
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンはm一クロロベンゼンから、ニトロ化、アミノ化およびニトロ基の還元の3ステップによって合成し、四塩酸塩として単離して使用することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0065】
3,3‘,4,4 ‘−フェニルテトラアミンは、o(オルト)-ニトロアニリンからヨウ素化,クロスカップリング,アミノ基の還元の3ステップによって合成することができる。あるいは、市販品を購入しても良い。
【0066】
かくして得られた上記一般式(1)、(2)及び(3)の重合体から選ばれた少なくとも一つの重合体を原料として、炭素フィルムを得ることができる。すなわち、本発明は、上記一般式(1)、(2)及び(3)のいずれか一つで表されることを特徴とする炭素フィルム製造用重合体の発明でもある。
【0067】
なお、本実施形態における複素環状高分子を次のように記載することもできる。
(1)下記一般式で表され、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1である重合体。
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
【化6】
【0071】
【化7】
【0072】
【化8】
(式中、Ar1は官能基1又は官能基2を示し、Ar2は官能基3又は官能基4を示し、nは重合度を示す自然数である。ただし、Ar1が官能基2のときはAr2は官能基4ではない。)。
【0073】
(3)下記一般式(4)、(5)及び(6)で表されるいずれかの重合体からなり、固有粘度が0.5〜3.5 dlg-1である重合体。但し、式中、nは自然数である。
【0074】
【化9】
【0075】
【化10】
【0076】
【化11】
【0077】
図1に戻って、グラファイト基板2は、厚さが例えば10μm以上100μm以下の範囲に形成することができる。100μm以下とすることにより、外力に対する可撓性を有することとなる。このため、曲げることができるようになっている。また、グラファイト基板2の厚さを10μm以上とすることにより、外力に対して壊れにくい構成となる。グラファイト基板2の厚さとしてより好ましくは、より壊れにくい25μm以上100μm以下の範囲にすることができる。グラファイトシート2は、50cm2以上の大面積化が可能である。グラファイト基板2は、バッファ層3に接する面が、(0001)面となるように形成されている。
【0078】
図2は、本実施形態に係るPED装置5の概略的な構成を示す図である。
同図に示すように、PED装置5は、チャンバ10と、電子線源11と、ターゲット保持駆動部12と、基板保持部13と、ガス供給部14と、圧力調整部15とを主体として構成されており、ターゲットとなる物質に電子線を照射して蒸発させたものである。本実施形態では、一例として基板上に13族窒化物半導体を形成するものとする。13族窒化物半導体は、例えばGaN、AlN、InNなどが挙げられ、一般式InXGaYAl1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表される。
【0079】
電子線源11は、チャンバ10の外側に設けられており、放電管41と、ホローカソード42と、トリガー電極43と、対向電極44と、パルス発生器45とを主体として構成されている。放電管41は、例えばガラスなどからなり、長手方向の一端41aが開放された構成になっている。ホローカソード42は、放電管41の外面に取り付けられており、放電管41内に電場を印加可能になっている。トリガー電極43は放電管41内の長手方向の他端41bに設けられており、対向電極44は放電管41の一端41aに設けられている。パルス発生器45は、トリガー電極43に電気的に接続されており、トリガー電極43に所定の周波数でパルス信号を供給するようになっている。電子線源11は、このような機構により放電管41内でチャネルスパーク放電を起こし、発生したパルス電子線を一端41aから射出するようになっている。
【0080】
放電管41の一端41aには、パルス電子線を誘導するセラミックチューブ16が取り付けられている。チャンバ10には窓部17が設けられており、セラミックチューブ16は当該窓部17を介してチャンバ10の内部(ターゲット保持駆動部12)に到達するように設けられている。セラミックチューブ16の一端には開口部(射出部)16aが設けられており、放電管41内で発生し当該セラミックチューブ16内を誘導されたパルス電子線が当該開口部16aから射出されるようになっている。セラミックチューブ16の内径は2mm〜4mm程度である。セラミックチューブ16には図示しない移動機構が設けられており、当該セラミックチューブ16の開口部16aを移動させるができるようになっている。
【0081】
ターゲット保持駆動部12は、ターゲット保持部21と、ターゲット駆動部23と、ターゲット駆動軸24とを備えている。ターゲット保持部21は、ターゲット22を水平に保持可能に設置された坩堝である。ターゲット保持部21の内部には、例えば電熱線などの加熱機構(図示しない)が設けられており、ターゲット22を加熱可能になっている。
【0082】
ターゲット保持部21は、一定の導電性を有する材料からなる。このような材料としては、例えばチタン(Ti)などの金属を添加した窒化ホウ素(BN)や、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)などの13族金属の窒化物が挙げられる。
【0083】
ターゲット22としては例えば13族金属(例えばAl、Ga、In又はこれらの混合体)や13族窒化物(例えばAlN、GaN、InN)のなどが挙げられる。これらは、30℃で液体状になっている。
【0084】
ターゲット駆動部23は、ターゲット駆動軸24を介してターゲット保持部21を図中上下に移動させると共に、このターゲット駆動軸24を回転軸としてターゲット保持部21を回転させることが可能になっている。
【0085】
基板保持部13は、基板ホルダ31と、基板ホルダ駆動部33と、基板ホルダ駆動軸34とを備えている。基板ホルダ31は、基板2を水平に保持可能に設置されている。基板ホルダ31の内部には、例えば電熱線などの加熱機構(図示しない)が設けられており、基板2を加熱可能になっている。
【0086】
基板ホルダ駆動部33は、基板ホルダ駆動軸34を介して基板ホルダ31を図中左右方向に移動させると共に、この基板ホルダ駆動軸34を回転軸として基板ホルダ31を回転させることが可能になっている。ガス供給部14は、チャンバ10内にV族ガス、例えば窒素ガスを供給するガス供給源である。圧力調整部15は、例えばポンプなどからなり、チャンバ10内の圧力を調整可能になっている。
【0087】
次に、グラファイト基板2の形成工程を説明する。まず、上記一般式(1)、(2)及び(3)の重合体から選ばれた一つの重合体、あるいは前記重合体の複数を混合させ、例えば酸性の液体に溶解させ又は分散媒に分散させて、重合体の液状体を形成する。次に、当該液状体7を、図3(a)に示すように、自立基板6上に塗布する。この工程においては、例えばスピンコート法やディスペンス法などが用いられる。
【0088】
次に、図3(b)に示すように、液状体から液体あるいは分散板を蒸発させ、残留物8及び自立基板6を不活性雰囲気下で焼成する。焼成温度は、1000℃〜3000℃程度が好ましく、1200〜2800℃程度とすると更に好ましい。また、焼成時間は約1〜8時間とすることが好ましい。不活性雰囲気とは、酸素など酸化活性の気体がない雰囲気を意味し、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの雰囲気が好ましい。特にアルゴン雰囲気が好ましい。
【0089】
なお、焼成時には、例えば残留物8に張力を与えながら、あるいは表面に垂直に圧力を加えながら処理することが好ましく、それによって、炭化の際に起こる収縮を押さえ、炭化中の前駆体が配向しやすいために、強度の強い炭化物ができる。また、残留物8を焼成する際、フィルムの成型過程において重合体分子が自発的に高度な配向構造を形成するため,応力を付加しなくても高結晶性炭素フィルムを製造することができる。また、焼成時の焼成条件を調整することにより、作成されるグラファイトシート9の熱膨張係数を所望の値に近づけることができる。したがって、例えばグラファイト基板2上に形成される半導体層4の熱膨張係数とほぼ同一の熱膨張係数となるように焼成条件を調整することができる。
【0090】
次に、図3(c)に示すように、焼成によって形成されたグラファイトシート9を自立基板6から剥離させる。
グラファイトシート9を剥離後、図3(d)に示すようにグラファイトシート9の周縁部を切除して形状を調整する。以上の工程により、グラファイト基板2が形成される。
【0091】
本発明では、重合体あるいは重合体混合物を予めフィルム状に成形することが望ましく、当該フィルムを焼成することが望ましい。当該重合体あるいは重合体混合物をフィルム状に成形する手段は特に制限されない。
【0092】
かくして製造されたグラファイト基板2は密度が高く、高結晶性の炭素フィルムである。完全な炭素結晶の密度は結晶構造から求めることが可能であり、その値は2.26 g cm-3であると知られている。この値に近いほど結晶性が高いことになる。既存のBBLポリマー(比較例1)から得られた炭素フィルムの密度が2.19 g cm-3である。前記一般式(2)で表される繰り返し単位からなる重合体からはこれに匹敵する密度の炭素フィルムを得ることができた。結晶性を評価する手段としては,広角X線回折が一般的であるが、今回得られたような非常に結晶性の高い炭素フィルムに適用すると、結晶サイズや面間隔の決定に非常に大きな誤差を生じる可能性がある。これに対して、密度測定は非常に精度良く測定可能であり、その点でも有利である。
【0093】
また、本発明のグラファイト基板2は炭素結晶のc軸がフィルムの法線方向に,高度に配向していることも一つの特徴である。本発明により得られた炭素フィルムは配向の程度が従来のものに比べて高いという特徴を持つ。
【0094】
次に、上記PED装置5によってグラファイト基板2上に13窒化物の薄膜を形成する手法を説明する。
ガス供給部14によってチャンバ10内の窒素ガスの圧力を1mTorr〜20mTorr程度にしておく。また、基板ホルダ31にグラファイト基板2を保持させ、基板ホルダ31内の加熱機構によってグラファイト基板2の温度を200℃〜850℃程度にしておく。移動機構によって、セラミックチューブ16の開口部16aをターゲット22から2mm〜10mm程度離れた位置、より好ましくは2mm〜3mm程度離れた位置に配置しておく。
【0095】
この状態で、電子線源11の放電管41内でパルス電子線を発生させる。パルス電子線の加速電圧を10kV〜20kVとし、周波数を1Hz〜20Hz程度にすることが好ましい。このパルス電子線は、セラミックチューブ16内を誘導され、開口部16aから射出される。射出されたパルス電子線は、ターゲット22に照射される。セラミックチューブ16の開口部16aを例えば一筆書きの要領でターゲット22の全面に移動させて、パルス電子線をターゲット22の全面に照射する。
【0096】
ターゲット22にパルス電子線が照射されると、ターゲット22を構成する原子あるいは分子に運動エネルギーが供給され、当該原子あるいは分子がプルームとなって蒸発する。このプルームは窒素ガスと衝突反応等を繰り返しながら徐々に状態を変化させてグラファイト基板2に近接する。グラファイト基板2に到達したプルームは、格子整合性の最も安定な状態、すなわち13族窒化物の状態で基板2上に堆積する。
【0097】
グラファイト基板2上には、13族窒化物がまず島状(3次元島状)に成長する。その後、島状の13族窒化物が成長し、コアレッセンスが形成される。そして、膜厚方向に2次元的に成長し、13族窒化物の薄膜(半導体層)が形成される。このようにしてグラファイト基板2上に薄膜が形成される。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト基板2の表面上に半導体層4を成長させることとしたので、グラファイト基板2の優れた結晶性が半導体層4に伝達する形となり、結晶性に優れた半導体層4が得られる。これにより、結晶性に優れた半導体層4を有する半導体基板1を得ることができる。
【0099】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図4は、本実施形態に係る半導体基板101の構成を示す図である。
同図に示すように、半導体基板101は、グラファイト基板102上にバッファ層103が設けられ、当該バッファ層103上に半導体層104が積層された構成になっている。この半導体基板101は、発光素子や電子素子などに搭載される。グラファイト基板102は、第1実施形態と同様、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる基板である。
【0100】
バッファ層103は、ジルコニウムナイトライド(ZrN(111))からなる層であり、グラファイト基板102の(0001)面と半導体層4との間に介在する。図5(a)は、ジルコニウムナイトライドの光反射率を示すグラフである。グラフの横軸は波長、グラフの縦軸は光反射率を示している。図5(b)は、ジルコニウムナイトライドの光反射率と当該光の波長との対応関係を示す表である。
【0101】
図5(a)及び図5(b)に示すように、ジルコニウムナイトライドにおいて青色光の波長範囲である470nmでの光反射率は65.6%になっている。これをもとにすると、ジルコニウムナイトライドからなるバッファ層3においては、青色光を照射したときにはほぼ65%以上の光を反射することが可能であるといえる。
【0102】
図6は、バッファ層3の製造装置であるスパッタ装置の構成を示す図である。スパッタ装置110は、チャンバ111と、基板加熱機構112と、基板保持部113と、スパッタガン114と、パルス電源115と、制御部116とを有している。
【0103】
このスパッタ装置110においては、グラファイト基板102をチャンバ111内の基板保持部113上に保持させた状態で基板加熱機構112によって当該グラファイト基板102を加熱することができるようになっている。また、グラファイト基板102が基板保持部113上に保持された状態で、複数のスパッタガン114からスパッタビームがグラファイト基板102へ向けて射出されるようになっている。
【0104】
複数のスパッタガン114は、例えばGa及びGa合金のビームを射出するスパッタガン114a、Al及びAl合金のビームを射出するスパッタガン114b、In及びIn合金のビームを射出するスパッタガン114c、Si及びSi合金のビームを射出するスパッタガン114d、Hf及びHf合金のビームを射出するスパッタガン114eを有している。各スパッタガン114a〜114eからのビームを構成する金属の種類については、適宜交換することが可能になっている。したがって、例えばZrやMg及びこれらの金属からなるビームを射出できるように構成しても構わない。
【0105】
複数のスパッタガン114はそれぞれパルス電源115に接続されている。パルス電源115は、スパッタガン114へパルス電圧を印加する電源である。各スパッタガン114a〜114eに対応するパルス電源115a〜115eが設けられている。これらのパルス電源115a〜115eから出力されるパルス電圧の出力タイミングや出力期間、周波数、振幅などは、制御コンピュータなどの制御部116によって制御されるようになっている。
【0106】
次に、本実施形態に係る半導体基板101を製造する工程を説明する。
まず、第1実施形態に記載の手法と同一の手法を用いて、グラファイト基板102を形成する。なお、本実施形態においてグラファイト基板102を形成する際には、当該グラファイト基板102上に形成される半導体層104の熱膨張係数とほぼ同一の熱膨張係数となるように焼成条件を調整することが好ましい。
【0107】
次に、バッファ層103の形成工程を説明する。本実施形態では、基板−ターゲット間にパルス直流電圧を印加するPSD法(パルススパッタ堆積法)を例に挙げて説明する。特に本実施形態では、大面積化が可能なグラファイト基板102上に半導体薄膜を形成するため、PSD法を行う意義は大きいといえる。
【0108】
まず、チャンバ111内にアルゴンガス及び窒素ガスを供給する。アルゴンガス及び窒素ガスによってチャンバ111内が所定の圧力になった後、グラファイト基板2を基板保持部113に保持する。グラファイト基板102を基板保持部113に保持させた後、基板加熱機構112によって、グラファイト基板102の周囲温度を調節する。グラファイト基板102の周囲温度を調節したら、パルス電源115を駆動させ、スパッタガン114eからグラファイト基板102の(0001)面へ向けてHfのビームを射出する。
【0109】
パルス電圧が印加されている間、射出されたHf原子は高エネルギーを有した状態でグラファイト基板102上に供給される。グラファイト基板102の表面では、チャンバ内の窒素が窒素ラジカルになっている。グラファイト基板102の(0001)面上には高エネルギーを有するHf原子が大量に供給され、当該グラファイト基板102の表面は金属リッチの状態になる。
【0110】
金属リッチの状態では、Hf原子は安定な格子位置にマイグレーションする。安定な格子位置にマイグレーションしたHf原子は、チャンバ111内で活性化した窒素ラジカルと反応して金属窒化物(HfN)の結晶となる。パルス電圧が印加される毎に、結晶構造の安定したHfNが間欠的に堆積されることになる。このようにして、バッファ層103がグラファイト基板102の(0001)面上に形成される。このように形成されたバッファ層103上に、例えば第1実施形態と同様の手法を用いて半導体層104を形成する。
【0111】
以上のように、本実施形態によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト基板102の表面上にバッファ層103を成長させ、当該バッファ層103の表面上に半導体層104を成長させることとしたので、グラファイト基板102の優れた結晶性がバッファ層103に伝達し、当該バッファ層103を介して半導体層104に伝達する形となるため、結晶性に優れた半導体層104を得ることができる。これにより、結晶性に優れた半導体層104を有する半導体基板101を得ることができる。
【0112】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図7は、本実施形態に係る半導体基板201の構成を示す図である。
同図に示すように、半導体基板201は、グラファイト基板202上にバッファ層203が設けられ、当該バッファ層203上に半導体層204が積層された構成になっている。この半導体基板201は、発光素子や電子素子などに搭載される。グラファイト基板102は、第1実施形態と同様、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる基板である。
【0113】
図8は、上記の半導体層204の製造装置であるMBE(Molecular Beam Epitaxy)装置の構成を示す図である。
同図に示すように、MBE装置220は、チャンバ221と、基板加熱機構222と、基板保持部223と、電子銃24と、ターゲットホルダTHとを有している。
【0114】
このMBE装置220においては、グラファイト基板202をチャンバ221内の基板保持部223上に保持させた状態で基板加熱機構222によって当該グラファイト基板202を加熱することができるようになっている。また、グラファイト基板202が基板保持部223上に保持された状態で、電子銃224から電子線がターゲットホルダTH上のターゲットTへ向けて射出されるようになっている。チャンバ221は、外部に対して密閉可能に設けられている。チャンバ221内は図示しないターボ分子ポンプなどによって減圧できるようになっている。チャンバ221の真空はターボ分子ポンプにより維持されるようになっている。
【0115】
また、チャンバ221は、不図示の液体窒素シュラウドを内部壁面に有している。液体窒素シュラウドは、チャンバ221内の残留不純物ガスを壁面に吸着させる。チャンバ221のベースプレッシャーは、例えば1×10−10Torr程度に設定可能である。ターゲットホルダとしては、例えば耐高温用のTa製坩堝が用いられている。ターゲットホルダTH内の中に収められているターゲットTは、例えば固体Siソースである。MBE装置20では、この固体Siソースを高出力電子銃から放出された電子線で加熱することでSiを蒸発させ、蒸発させたSiをグラファイト基板2に付着させることで、グラファイト基板202上にSiの薄膜を成長させる構成となっている。チャンバ221には反射高エネルギー電子線回折(RHEED)装置が設置されており、基板や薄膜表面の結晶性が観察可能になっている。
【0116】
次に、本実施形態に係る半導体基板201の製造工程を説明する。
まず、上記各実施形態に記載の手法と同一の手法を用いて、グラファイト基板202を形成する。なお、本実施形態においてグラファイト基板202を形成する際には、当該グラファイト基板202上に形成される半導体層204の熱膨張係数とほぼ同一の熱膨張係数となるように焼成条件を調整することが好ましい。
【0117】
次に、グラファイト基板202上に、例えば第2実施形態に記載の手法と同一の手法を用いてバッファ層203を形成する。バッファ層203を形成した後、当該バッファ層203上にSi薄膜を成長させる。本実施形態では、MBE法によってSi薄膜を成長させる例に挙げて説明する。特に本実施形態では、大面積化が可能なグラファイト基板202上に半導体薄膜を形成するため、MBE法を行う意義は大きいといえる。
【0118】
まず、ターボ分子ポンプによってチャンバ221内をベースプレッシャーとし、バッファ層203を形成したグラファイト基板202を基板保持部223に保持させる。また、ターゲットTをターゲットホルダTH上に設置する。グラファイト基板202及びターゲットTを配置した後、加熱装置217によって、グラファイト基板202の周囲温度を調節する。グラファイト基板202の周囲温度を調節した後、電子銃224の電子電流を調整して、ターゲットホルダTH内のターゲットTに電子線を照射する。電子線の照射を受けたターゲットTは、蒸発してグラファイト基板202のバッファ層203上に付着する。本実施形態では、Si原子がバッファ層203上に付着し、Siの薄膜がバッファ層203上に成長する。この薄膜が半導体層204となる。
【0119】
以上のように、本実施形態によれば、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなる結晶性に優れたグラファイト基板202の表面上にバッファ層203を成長させ、当該バッファ層203の表面上にシリコンからなる半導体層204を成長させることとしたので、グラファイト基板202の優れた結晶性がバッファ層203に伝達し、当該バッファ層203を介して半導体層204に伝達する形となるため、結晶性に優れた半導体層204を得ることができる。これにより、結晶性に優れた半導体層204を有する半導体基板201を得ることができる。
【0120】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、全体がグラファイトからなるグラファイト基板2、102、202をグラファイト層として用いる例を説明したが、これに限られることは無く、例えば図9に示すように、基材2Aの上面にグラファイト層2Bが形成された構成のグラファイト基板2を用いるようにしても構わない。
【0121】
この場合、基材2Aとしては、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子とは異なる材料であって、グラファイトの焼成時の温度によって溶解しない材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば耐熱性の有機化合物などが挙げられる。グラファイト基板2の作成時には、例えば基材2A上に第1実施形態で記載の液状体7を薄膜状に塗布し、液状体7及び基材2Aごと焼成すればよい。
【0122】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子は比較的高価な材料である。この構成によれば、当該複素環状高分子とは異なる材料を主として用いることになるため、上記複素環状高分子よりも低価格の材料を基材2Aとして用いるようにすれば、コストの削減を実現することができる。
【0123】
また、例えば、上記実施形態ではバッファ層をパルススパッタ法によって形成し、半導体層をPLD法やMBE法によって形成しているが、これに限られることは無く、例えばPED法(パルス電子線堆積法)を含むPXD法(Pulsed Excitation Deposition:パルス励起堆積法)有機金属成長法、分子線エピタキシー法、CVD法など、他の薄膜形成方法によって形成しても構わない。
【0124】
また、上記実施形態では、グラファイト基板上にHfN(111)からなるバッファ層を形成することとしたが、これに限られることは無く、例えばZrN(111)からなるバッファ層を形成する構成であっても構わない。また、バッファ層を積層する構成(例えば、GaN層/AlN層/グラファイト基板、など)であっても構わない。
【0125】
本発明の半導体基板1、101、201は適用範囲が広く、非晶質基板上への発光ダイオード、半導体レーザなどの半導体素子などに用いることができる。また、当該半導体素子を用いた非晶質基板上への透明回路としても用いることができる。
【0126】
このほかにも、例えばフラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極へ適用が考えられる。また、反射防止膜に用いられる電磁波の遮蔽、静電気により埃がつかないようにするフィルム、帯電防止膜、熱線反射ガラス、紫外線反射ガラスへ適用も考えられる。
【0127】
用途の例として、色素増感太陽電池の電極;ディスプレイパネル、有機ELパネル、発光素子、発光ダイオード(LED)、白色LEDやレーザの透明電極;面発光レーザの透明電極;照明装置;通信装置;特定の波長範囲だけ光を通すというアプリケーションも考えられる。
【0128】
さらに具体的な用途として次のものを挙げることができる。液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)における透明導電膜;カラーフィルタ部における透明導電性膜;EL(EL:Electro Luminescence)ディスプレイにおける透明導電性膜;プラズマディスプレイ(PDP)における透明導電膜;PDP光学フィルタ;電磁波遮蔽のための透明導電膜;近赤外線遮蔽のための透明導電膜;表面反射防止のための透明導電膜;色再現性の向上のための透明導電膜;破損対策のための透明導電膜;光学フィルタ;タッチパネル;抵抗膜式タッチパネル;電磁誘導式タッチパネル;超音波式タッチパネル;光学式タッチパネル;静電容量式タッチパネル;携帯情報端末向け抵抗膜式タッチパネル;ディスプレイと一体化したタッチパネル(インナータッチパネル);太陽電池;アモルファスシリコン(a−Si)系太陽電池;微結晶Si薄膜太陽電池;CIGS太陽電池;色素増感太陽電池(DSC);電子部品の静電気対策用透明導電材料;帯電防止用透明導電材;調光材料;調光ミラー;発熱体(面ヒーター、電熱ガラス);電磁波遮蔽ガラス。更に、これらを搭載した携帯電話や情報端末、電子計算機、OA機器など、種々の電子機器に対しても本発明の適用は可能である。
【実施例】
【0129】
次に、本発明の実施例を説明する。
(半導体基板の作製)
本実施例では、BBL重合体を熱分解することによって作製した炭素フィルムを、真空中アニールによっての表面清浄化した後、PXD法によってGaN薄膜の成長を行った。窒素源としてN2ガスを導入し、成長温度は700℃から800℃に設定した。成長した薄膜の評価として、成長した薄膜の評価として、X線回折(XRD)測定、室温フォトルミネッセンス(PL)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、電子線後方散乱回折(EBSD)測定を行った。
【0130】
真空中アニール処理後のBBLポリマー熱分解炭素フィルムをXRD測定やAFM観察によって調べたところ、その表面には(0001)面が露出し、図10に示すように原子レベルで平坦なテラスを持つ高品質結晶であることが明らかになった。このグラファイトシート上にGaN薄膜の成長を行ったところ、図11に示すようにXRD測定において、GaN薄膜の0002回折が明瞭に観察された。図12及び図13に示すようにEBSD測定の結果からも炭素フィルムに対してGaN薄膜がエピタキシャル成長していることが確認され、高い結晶性を有するGaN薄膜の成長が可能であることが明らかになった。
【0131】
(重合体の調製)
メカニカルスターラ,アルゴンガス導入管,排気管および温度計を装着した,200ml四つ首フラスコ中にポリリン酸(PPA)(オルトリン酸換算濃度115%)100gを収め,アルゴンガスをバブリングして溶存酸素を除去し,1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン四塩酸塩12mmolを加え溶解させた.次に,1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸12mmolを加え,200℃において24時間攪拌して,重合体のPPA溶液を得た。
【0132】
当該重合体のPPA溶液を大量の水に投入して重合体を凝固させ,ロ別,得られた重合体を水およびメタノール(MeOH)で順次洗浄した後、室温で減圧乾燥し,粗高分子を得た。粗高分子に残留するPPAを除去するために,粗高分子をメタンスルホン酸(MSA)に溶解し,この溶液を大量の水に投入して重合体を凝固させ,水,ジメチルアセトアミド(DMAc)およびMeOHで順次洗浄した後240℃において24時間減圧乾燥し,重合体精製物を得た。
【0133】
重合体の固有粘度(η)は濃度0.15gdl−1のMSA溶液について,30℃においてオストワルト粘度計(柴田科学株式会社製)を用いて測定した。固有粘度は2.5−3.0dlg−1であった。
(重合体フィルムの作製)
前記重合体0.3gをMSA7mlに溶解させて得られた粘稠な溶液を,内径70mmのガラス製フラットシャーレに展開した。このシャーレをマントルヒータ内に置いた500ml平底セパラブルフラスコ内に水平を保って静置した。セパラブルフラスコ内をロータリーポンプで減圧した後,段階的に200℃まで加熱して脱溶媒させ,重合体フィルムを作製した。
【0134】
前記重合体フィルムは容易にガラスシャーレから剥離することができた.フィルム中に残留するMSAを除去するために,トリエチルアミンのMeOH溶液に室温で12時間浸漬し,ついでMeOHで洗浄した後,減圧乾燥した.得られたフィルムの厚さはおよそ50μmであった。フィルムは柔軟で,所望の形状に切断することが可能であった。
【0135】
(炭素フィルムの作製)
前記重合体フィルムは以下に示す2段階の熱処理によって炭素化した。
【0136】
所定の形状に切断した重合体フィルムを,黒鉛板にはさみシリコンカーバイドをヒータとする電気炉内(自作)に置いた。電気炉内に窒素ガスを250mlmin−1の流量で流通させながら,2℃min−1の速度で加熱し,1500℃で1時間保持して熱処理し,炭素フィルムを得た。
【0137】
前記炭素フィルムを黒鉛板にはさみ黒鉛をヒータとする電気炉内(進成電炉製作所製)に置いた。電気炉内にアルゴンガスを2000mlmin−1の流量で流通させながら,5℃min−1の速度で加熱し,2800℃で1時間保持して熱処理し,炭素フィルムを得た。
【0138】
(BNTCA−BPTA重合体を出発材料としたグラファイト基板の特性)
図14〜図17は、BNTCA−BPTA重合体をスピンコート法によってグラファイト上に塗布してグラファイト層を形成したときの特性を示している。図14に示すように、表面SEM像からはグラファイト層の表面が平坦であることがわかる。図15に示すXRD測定結果や図16に示すEBSD測定結果から、グラファイト層を構成する結晶の0001回折が明瞭に観察された。また、図17に示すように、チルト分布角計測結果においてピークの半値幅が1.63°となっており、良好な値を示した。なお、このグラファイト層を構成する結晶のグレインサイズは、約10μmであった。
【符号の説明】
【0139】
1、101、201…半導体基板 2、102、202…グラファイト基板 103、203…バッファ層 4、104、204…半導体層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、
前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とする半導体層と
を備える半導体基板。
【請求項2】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、
前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とするバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられ、前記バッファ層の表面を成長面とする半導体層と
を備える半導体基板。
【請求項3】
前記バッファ層は、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含む
請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記バッファ層は、複数層に形成されている
請求項2又は請求項3に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記半導体層は、シリコン又は13族窒化物を含む半導体からなる
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有し、
前記半導体層は、前記(0001)面上に設けられる
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記基板は、
前記複素環状高分子とは異なる有機化合物を含む基材と、
前記基材上に設けられた前記グラファイト層と
を有する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の半導体基板。
【請求項8】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上に半導体層を成長させる
半導体基板の製造方法。
【請求項9】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上にバッファ層を成長させ、
前記バッファ層の表面上に半導体層を成長させる
半導体基板の製造方法。
【請求項10】
前記バッファ層として、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含む層を成長させる
請求項9に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記バッファ層を、複数層に形成する
請求項9又は請求項10に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記半導体層として、シリコン又は13族窒化物を含む半導体層を成長させる
請求項8から請求項11のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項13】
前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有し、
前記(0001)面に前記半導体層を成長させる
請求項8から請求項12のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項14】
前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層を形成することで前記基板を得る
請求項8から請求項13のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項15】
前記複素環状高分子を溶解し、
前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、
前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行う
ことで前記基板を得る
請求項14に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項16】
所定の自立基材上に前記複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、前記グラファイト層を得る
請求項8から請求項13のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成する
請求項8から請求項16のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する
半導体成長用基板。
【請求項19】
前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有する
請求項18に記載の半導体成長用基板。
【請求項20】
前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層が形成されている
請求項18又は請求項19に記載の半導体成長用基板。
【請求項21】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に形成する
半導体成長用基板の製造方法。
【請求項22】
前記複素環状高分子を溶解し、
前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、
前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行う
ことで前記基板を得る
請求項21に記載の半導体成長用基板の製造方法。
【請求項23】
所定の自立基材上に芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、グラファイト層を得る
半導体成長用基板の製造方法。
【請求項24】
前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成する
請求項21から請求項23のうちいずれか一項に記載の半導体成長用基板の製造方法。
【請求項25】
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の半導体基板を備えることを特徴とする半導体素子。
【請求項26】
請求項25に記載の半導体素子を備えることを特徴とする発光素子。
【請求項27】
請求項26に記載の発光素子を備えることを特徴とする表示パネル。
【請求項28】
請求項25に記載の半導体素子を備えることを特徴とする電子素子。
【請求項29】
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の半導体基板を備えることを特徴とする太陽電池素子。
【請求項30】
請求項25に記載の半導体素子、請求項26に記載の発光素子、請求項27に記載の表示パネル、請求項28に記載の電子素子及び請求項29に記載の太陽電池素子のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、
前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とする半導体層と
を備える半導体基板。
【請求項2】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板と、
前記グラファイト層の表面上に設けられ、前記グラファイト層の表面を成長面とするバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられ、前記バッファ層の表面を成長面とする半導体層と
を備える半導体基板。
【請求項3】
前記バッファ層は、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含む
請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記バッファ層は、複数層に形成されている
請求項2又は請求項3に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記半導体層は、シリコン又は13族窒化物を含む半導体からなる
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有し、
前記半導体層は、前記(0001)面上に設けられる
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記基板は、
前記複素環状高分子とは異なる有機化合物を含む基材と、
前記基材上に設けられた前記グラファイト層と
を有する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の半導体基板。
【請求項8】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上に半導体層を成長させる
半導体基板の製造方法。
【請求項9】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する基板のうち前記グラファイト層の表面上にバッファ層を成長させ、
前記バッファ層の表面上に半導体層を成長させる
半導体基板の製造方法。
【請求項10】
前記バッファ層として、HfN、ZrN及びAlNのうち少なくとも1つを含む層を成長させる
請求項9に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記バッファ層を、複数層に形成する
請求項9又は請求項10に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記半導体層として、シリコン又は13族窒化物を含む半導体層を成長させる
請求項8から請求項11のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項13】
前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有し、
前記(0001)面に前記半導体層を成長させる
請求項8から請求項12のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項14】
前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層を形成することで前記基板を得る
請求項8から請求項13のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項15】
前記複素環状高分子を溶解し、
前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、
前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行う
ことで前記基板を得る
請求項14に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項16】
所定の自立基材上に前記複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、前記グラファイト層を得る
請求項8から請求項13のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成する
請求項8から請求項16のうちいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を表面に有する
半導体成長用基板。
【請求項19】
前記グラファイト層は、(0001)面を表面に有する
請求項18に記載の半導体成長用基板。
【請求項20】
前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に前記グラファイト層が形成されている
請求項18又は請求項19に記載の半導体成長用基板。
【請求項21】
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子からなるグラファイト層を、前記複素環状高分子とは異なる有機化合物からなる基材上に形成する
半導体成長用基板の製造方法。
【請求項22】
前記複素環状高分子を溶解し、
前記基材上に前記複素環状高分子の溶解液を塗布して溶解液の薄膜を形成し、
前記薄膜及び前記基材に対して2000℃〜3000℃で加熱処理を行う
ことで前記基板を得る
請求項21に記載の半導体成長用基板の製造方法。
【請求項23】
所定の自立基材上に芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合して得られる複素環状高分子の層を形成し、形成された前記複素環状高分子の層を前記自立基材から分離することで、グラファイト層を得る
半導体成長用基板の製造方法。
【請求項24】
前記グラファイト層は、当該グラファイト層の表面上に成長させる成長物の熱膨張係数に対応する熱膨張係数を有するように形成する
請求項21から請求項23のうちいずれか一項に記載の半導体成長用基板の製造方法。
【請求項25】
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の半導体基板を備えることを特徴とする半導体素子。
【請求項26】
請求項25に記載の半導体素子を備えることを特徴とする発光素子。
【請求項27】
請求項26に記載の発光素子を備えることを特徴とする表示パネル。
【請求項28】
請求項25に記載の半導体素子を備えることを特徴とする電子素子。
【請求項29】
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の半導体基板を備えることを特徴とする太陽電池素子。
【請求項30】
請求項25に記載の半導体素子、請求項26に記載の発光素子、請求項27に記載の表示パネル、請求項28に記載の電子素子及び請求項29に記載の太陽電池素子のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図15】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図15】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−57474(P2011−57474A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206438(P2009−206438)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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