説明

半導体用配線

【課題】500℃酸化処理でも導電性を失わず、仕事関数がTiN以上であって、しかも貴金属よりも安価な配線材料を提供する。
【解決手段】NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比である配線材料を用い、この配線材料を500℃以上の高温酸化プロセスによりNiとTiOとを含む混合膜に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に使用される配線材料に関し、特に高温酸化プロセスに曝されても導電性が失われない半導体用配線に関する。また、本発明は、当該配線を下部電極として用いたキャパシタ及び該キャパシタを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、配線は高温酸化プロセスによって酸化して絶縁体化してしまう。このようなプロセスを受ける配線としてはキャパシタの下部電極がある。
【0003】
従来から用いられている下部電極材料としてはTiNがあり、耐酸化性も比較的高い。図8は、このTiN膜を酸素(ファーネス10分)アニールした時のXRD測定結果である。(m)は成膜時のTiN、(n)は300℃アニール後のTiN、(o)〜(t)はさらに50℃ごとにアニール温度を上げた場合のTiNである。図に四角で囲っているようにTiNの結晶ピークは2θ=42.6°にあり、TiOは2θ=25.3°(アナターゼ結晶)と27.4°(ルチル結晶)にある。なお、2θ=32.8°付近の大きなピークは、基板Siのピークである。
【0004】
図8を見ると、400℃までの酸素アニール((m)、(n)、(o)、(p))はTiNピーク強度に変化がないが、450℃酸素アニール((q))になると少し小さくなり始め、500℃以上の酸素アニール((r)、(s)、(t))では完全に消えてしまい、代わりにTiOの結晶ピークが見えてくる。つまり、酸素アニール温度400℃あたりまでが限度である。従って、それ以上の温度で結晶化するような酸化絶縁膜に対しては使うことが出来ない。
【0005】
また、キャパシタ素子の電極としての使用であれば、仕事関数が高いほどフェルミ準位と絶縁体伝導帯とのオフセットが大きくなって電流リークが抑えられるメリットがある。この場合、TiN電極(仕事関数4.8eV)よりも高い仕事関数の電極材料であればなお望ましいことになる。
【0006】
Pt(仕事関数5.4eV)などの貴金属は仕事関数が高い。しかも、これら貴金属は耐酸化性が極めて高いか、高温酸化された酸化物(たとえば酸化ルテニウムや酸化イリジジウム)となっても導電性を失わないことから、これら貴金属をキャパシタ電極材料として使用することが多く提案されている。しかしながら、これら貴金属は他の金属材料と比較して極めて高価である。
【0007】
Niは価格が安く、仕事関数が5.05eVとTiN電極よりも高く有望である。そこでこの材料を調べてみると、NiはTiNよりかなり酸化し易く、酸化したNiO結晶はほぼ絶縁体であるということがわかった。
【0008】
ステンレスに代表されるように、酸化しやすい金属に他の金属元素を添加することにより耐酸化性を改良する方法が知られている。例えば、ステンレスの場合、主成分である鉄(Fe)の耐酸化性を改良するためにCrを添加し、表面にクロム酸化物の保護皮膜が形成されることで、内部の金属の腐食を防止している。
【0009】
Niについても、合金化することで耐酸化性が改良されることが知られている。例えば、特許文献1では、Ni系合金で形成された保護膜を最表層に備えた光学素子が開示されている。NiにCr,Ti,Cu、Al、Co、Fe等を含む合金は、水分や酸素により光学素子が浸食されることを確実に防止でき、光学素子の反射率が浸食に伴って徐々に低下することが防止できるとされている。具体例として、Ni50wt%とTi50wt%の合金などが示されている。
【0010】
しかしながら、これらは、合金の表面に酸素透過性の低い保護皮膜が形成されることで、内部の金属の腐食を防止するというもので、材料の導電性は考慮されていない。また、キャパシタの下部電極のように高温酸化プロセスに曝される場合は、保護皮膜がさらに厚くなることが予測され、このような保護皮膜は金属酸化物であることから一般的には絶縁体である。そして、半導体装置に使用される配線材料は、半導体装置の微細化によって極めて薄い膜(数十〜数百nm)であり、薄くなればなるほど、全膜厚が酸化されてしまう確率が高まる。さらに、下部電極上に形成される容量絶縁膜は、さらに薄い膜厚であり、高温酸化プロセスにおいては容易に酸素を透過してしまう。加えて、下部電極の表面が酸化されて容量値が所期の設計値からずれてしまう場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−173502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、500℃酸化処理でも導電性を失わず、仕事関数がTiN以上であって、しかも貴金属よりも安価な配線材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比である半導体用配線が提供される。
【0014】
また、本発明の別の実施形態によれば、
下部電極、該下部電極上の容量絶縁膜、該容量絶縁膜上の上部電極を備えるキャパシタであって、
前記下部電極が、NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比である材料で形成され、
前記容量絶縁膜が、500℃以上の酸化プロセスにより結晶化した膜であるキャパシタが提供される。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態によれば、
半導体基板上に形成されたスイッチング素子と
該スイッチング素子に電気的に接続される、下部電極、該下部電極上の容量絶縁膜、該容量絶縁膜上の上部電極を備えるキャパシタと、
を備える半導体装置であって、
前記キャパシタの下部電極が、NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量60−80at.%なる組成比である配線材料で形成され、
前記キャパシタの容量絶縁膜が、500℃以上の酸化プロセスにより結晶化した膜である半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
TiNが絶縁体化してしまう酸素アニール温度より高温でも導電性を維持し、仕事関数もTiNを上回る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るNiTi混合膜中のTi含有量による抵抗率変化(成膜時及び酸素アニール後)を示すグラフである。
【図2】本発明に係る酸素アニール後のNiTi混合膜のinplane XRD測定結果を示す図である。
【図3】従来例になるPtの仕事関数を測定した結果を示す図である。
【図4】従来例になるTiNの仕事関数を測定した結果を示す図である。
【図5】従来例になるNiの仕事関数を測定した結果を示す図である。
【図6】アモルファスNiOの仕事関数を測定した結果を示す図である。
【図7】本発明に係る酸素アニール後のNiTi混合膜の仕事関数を測定した結果を示す図である。
【図8】TiN膜を酸化(ファーネス10分)アニールした時のXRD測定結果である。
【図9】本発明に係るNiTi混合膜をキャパシタに適用した例を示す模式的断面図である。
【図10】本発明に係るNiTi混合膜をキャパシタの下部電極材料として適用するDRAMメモリセルの平面レイアウトの一例を示す図である。
【図11】DRAMメモリセルの断面構造を示す図であり、図10のA−A’線での垂直断面図である。
【図12】図11に示すキャパシタ部分の製造工程を示す工程断面図である。
【図13】図11に示すキャパシタ部分の製造工程を示す工程断面図である。
【図14】図11に示すキャパシタ部分の製造工程を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例について説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る半導体用配線は、主にキャパシタ素子の下部電極に用いられる電極配線であり、NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比であることを特徴とする。なお、本発明において「NiTi混合膜」とは、特にことわりがない限りは、成膜時のNiTi合金膜と酸素アニール後のNiとTiOとを含む混合膜の両方を意味し、「酸素アニール後」等のことわりがある場合は、後者のNiとTiOとを含む混合膜を意味する。
【0020】
(実験例)
本発明に係る半導体用配線について、以下の実験を行った。
サンプルとして、SiO上にNiTi合金膜を多元スパッタ法により成膜した。ターゲットのNiとTiを同時スパッタして合金化する。基板温度300℃、Arガス100sccmでトータル圧力5Paとした。NiとTi各ターゲットをRF放電しRFパワーを変えることで各付着量を制御して膜の組成比をTi(Ni)量0から100%まで変えた。
【0021】
図1は、このようにして作製したNiTi合金膜を4端子抵抗測定で抵抗値を測定し、それを抵抗率に変換したものである。図中(黒◇)が成膜時点での抵抗率である。その後500℃で10分間酸素アニールし、再度4端子抵抗測定した。図中(黒□)がアニール後の抵抗率である。結果を見ると、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%において膜の導電性が残り、それ以外では絶縁体化した。特に60−75at.%では抵抗率が、酸素アニール前の400μΩ・cm以上から100μΩ・cm前後まで低下しており、これは、酸素アニール前のTiN電極と同レベルである。
【0022】
図2は、酸素アニール後のサンプルをinplane XRD測定したもので、それぞれのTi含有量(Ti/(Ti+Ni)×100(at.%:以下、「%」と表示する))におけるXRD測定結果である。(a)はTi=0%、(b)はTi=10%、(c)はTi=20%、(d)はTi=40%、(e)はTi=70%である。
【0023】
Ti含有量40%以下((a)、(b)、(c)、(d))では、NiO(ピーク黒△印)が明確に生じており、それ故に絶縁体化した。これに対して導電体であったTi含有量70%サンプル((e))は全く違っており、結晶ピークはNi(黒□印)とルチルTiO(黒○印)結晶である。Niは酸化されずTiのみ優先的に酸化されている。この過程でNiとTiが分離して導電性の良いNiメタルと絶縁体であるTiOの混合膜として導電性が残ったものと考えられる。なお、わずかにNiOのブロードなピーク(黒△印位置)が見られ、アモルファスNiOが生じている。しかし、NiO結晶は絶縁体であるが、アモルファスNiOはやや抵抗の高い導電体であることを確認しており、これによって導電性が失われる事は無い。
【0024】
図3〜図7は、XPSにより本発明に関連する各種配線材料の光電子強度を測定した結果を示している。正確を期すために、これらは同一XPS装置により測定しており、装置が違うことによる差などは含まれない。縦軸はログスケールで、光電子が(ノイズ以上)カウントされ始める境目の運動エネルギー位置が概ね仕事関数値である。最終的には、光電子強度測定値をFowler関数によりカーブフィテッィングして求めることで正確な仕事関数値が得られる。図3はPt、図4はTiN、図5はNi、図6はアモルファスNiO、図7は本発明のNiTi混合膜(Ti含有量70%のNiTi合金膜を500℃で10分間酸素アニールした膜)についての結果である。本発明のNiTi混合膜は仕事関数5.17eVとなりTiN(4.8eV)よりも高い数値が得られた。なお、この数値はNiの5.05eVより高く、アモルファスNiOの5.24eVよりも低い。その理由としては、NiとアモルファスNiOの混じった表面となっているためと思われる。
【0025】
このように、本発明に係る半導体用配線は、高温酸化アニールしても導電性が失われず、TiNよりも高い仕事関数を有する材料である。
【0026】
次に、本発明の配線材料をキャパシタの下部電極に適用する例を示す。図9は、キャパシタの構造を模式的に示す縦断面図である。
【0027】
本発明に係るキャパシタは、下部電極1および上部電極3の間に、容量絶縁膜2を挟んだ構造を有する。上部電極3は金属膜によって形成され、Ru、Pt、Ir、Ti、W、Ta等の金属膜やその窒化物(TiN、WN、TaNなど)を用いることができる。また、本発明では、下部電極1として本発明のNiTi混合膜を使用する。すなわち、本発明に係るキャパシタは、MIM(Metal−Insulator−Metal)キャパシタである。
【0028】
容量絶縁膜2としては、公知の材料が使用できるが、中でも比誘電率の高い材料が好ましい。高い誘電率を備えたキャパシタ用絶縁材料として、TiO(酸化チタン)を挙げることができる。TiOには、良く知られた結晶構造としてアナターゼ型とルチル型の2種類が存在している。アナターゼ結晶は低温で形成されやすい低温相で、比誘電率が40弱程度と低い。一方、ルチル結晶は通常高温で形成される高温相で、比誘電率が80以上と高く、特にキャパシタ用絶縁材料として使用した場合、高容量のキャパシタが製造可能である。
【0029】
TiO膜はスパッタやCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相蒸着)、ALD(Atomic Layer Deposition;原子層堆積)法等、様々な方法で形成できる。半導体装置に用いる場合には、微細化の観点から現在ALD法が主流である。しかし、半導体装置に使用するTiO膜を形成する場合には、ALD法も含めて、どの方法でも、400℃以下の低温で高誘電率のルチル結晶を形成することは困難であった。
【0030】
このように、ルチル結晶構造を有するTiO膜の製造工程では、400℃以上、好ましくは、500℃以上の高温酸化プロセスが必要となる。また、TiO膜は比誘電率については優れているが、バンドギャップ幅が狭く、耐圧リークの点で他の材料に劣る。本発明に係る酸素アニール後のNiTi混合膜は、TiNよりも仕事関数に優れた材料であるため、TiNを下部電極とした場合よりも、耐圧リークの向上が図れる。
【0031】
次に、本発明を適用した具体例として、DRAM素子のメモリセルを構成するキャパシタ素子(容量素子)の下部電極に用いた場合について説明する。
【0032】
図10は、本発明を適用した半導体装置であるDRAMについて、メモリセル部の平面レイアウトを示す概念図である。図10の右手側は、後述する、ワード配線Wとなるゲート電極5とサイドウォール5bとを切断する面を基準とした透過断面図として示している。また、簡略化のために、キャパシタの記載は図10においては省略し、断面図にのみ記載した。
【0033】
図11は、メモリセル部(図10)のA−A’線に対応する断面模式図である。なお、これらの図は半導体装置の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや寸法等は、実際の半導体装置の寸法関係とは異なっている。
【0034】
メモリセル部は、図11に示すように、メモリセル用のMOSトランジスタTr1などのスイッチング素子と、MOSトランジスタTr1に複数のコンタクトプラグを介して接続されたキャパシタCapとから概略構成されている。
【0035】
図10、図11において、半導体基板101は、所定濃度のP型不純物を含有するシリコン(Si)によって形成されている。この半導体基板101には、素子分離領域103が形成されている。素子分離領域103は、半導体基板101の表面にSTI(Shallow Trench Isolation)法によりシリコン酸化膜(SiO)等の絶縁膜を埋設することで、活性領域K以外の部分に形成され、隣接する活性領域Kとの間を絶縁分離している。本実施形態では、1つの活性領域Kに2ビットのメモリセルが配置されるセル構造に本発明を適用した場合の例を示している。
【0036】
本実施形態では図10に示す平面構造の如く、細長い短冊状の活性領域Kが複数、個々に所定間隔をあけて右斜め下向きに整列して配置されており、一般に6F型メモリセルと呼ばれるレイアウトに沿って配列されている。
【0037】
各活性領域Kの両端部と中央部には個々に不純物拡散層が形成され、MOSトランジスタTr1のソース・ドレイン領域として機能する。ソース・ドレイン領域(不純物拡散層)の真上に配置されるように基板コンタクト部205a、205b、205cの位置が規定されている。
【0038】
図10の横(X)方向には、折れ線形状(湾曲形状)にビット配線106が延設され、このビット配線106が図10の縦(Y)方向に所定の間隔で複数配置されている。また、図10の縦(Y)方向に延在する直線形状のワード配線Wが配置されている。個々のワード配線Wは図10の横(X)方向に所定の間隔で複数配置され、ワード配線Wは各活性領域Kと交差する部分において、図11に示されるゲート電極105を含むように構成されている。本実施形態では、MOSトランジスタTr1は、溝型のゲート電極を備えている。
【0039】
図11の断面構造に示すように、半導体基板101において素子分離領域103に区画された活性領域Kにソース・ドレイン領域として機能する不純物拡散層108が離間して形成され、個々の不純物拡散層108の間に、溝型のゲート電極105が形成されている。
【0040】
ゲート電極105は、多結晶シリコン膜と金属膜との多層膜により半導体基板101の上部に突出するように形成されており、多結晶シリコン膜はCVD法での成膜時にリン等の不純物を含有させて形成することができる。ゲート電極用の金属膜には、タングステン(W)や窒化タングステン(WN)、タングステンシリサイド(WSi)等の高融点金属を用いることができる。
【0041】
また、図11に示すように、ゲート電極105と半導体基板101との間にはゲート絶縁膜105aが形成されている。また、ゲート電極105の側壁には窒化シリコン(Si)などの絶縁膜によるサイドウォール105bが形成されている。ゲート電極105上にも窒化シリコンなどの絶縁膜105cが形成されており、ゲート電極105の上面を保護している。
【0042】
不純物拡散層108は、半導体基板101にN型不純物として、例えばリンを導入することで形成されている。不純物拡散層108と接触するように基板コンタクトプラグ109が形成されている。この基板コンタクトプラグ109は、図10に示した基板コンタクト部205c、205a、205bの位置にそれぞれ配置され、例えば、リンを含有した多結晶シリコンから形成される。基板コンタクトプラグ109の横(X)方向の幅は、隣接するゲート配線Wに設けられたサイドウォール105bによって規定される、セルフアライン構造となっている。
【0043】
図11に示すように、ゲート電極上の絶縁膜105c及び基板コンタクトプラグ109を覆うように第1の層間絶縁膜104が形成され、第1の層間絶縁膜104を貫通するようにビット線コンタクトプラグ104Aが形成されている。ビット線コンタクトプラグ104Aは、基板コンタク部205aの位置に配置され、基板コンタクトプラグ109と導通している。ビット線コンタクトプラグ104Aは、チタン(Ti)及び窒化チタン(TiN)の積層膜からなるバリア膜(TiN/Ti)上にタングステン(W)等を積層して形成されている。ビット線コンタクトプラグ104Aに接続するようにビット配線106が形成されている。ビット配線106は窒化タングステン(WN)及びタングステン(W)からなる積層膜で構成されている。
【0044】
ビット配線106を覆うように、第2の層間絶縁膜107が形成されている。第1の層間絶縁膜104及び第2の層間絶縁膜107を貫通して、基板コンタクトプラグ109に接続するように容量コンタクトプラグ107Aが形成されている。容量コンタクトプラグ107Aは、基板コンタクト部205b、205cの位置に配置される。
【0045】
第2の層間絶縁膜107上には、窒化シリコンを用いた第3の層間絶縁膜111及びシリコン酸化膜を用いた第4の層間絶縁膜112が形成されている。
【0046】
第3の層間絶縁膜111及び第4の層間絶縁膜112を貫通して、容量コンタクトプラグ107Aと接続するようにキャパシタCapが形成されている。
【0047】
キャパシタCapは、本発明の配線材料を適用した下部電極113と上部電極115の間に容量絶縁膜114を挟んだ構造となっており、下部電極113が容量コンタクトプラグ107Aと導通している。
【0048】
上部電極115上には、酸化シリコン等で形成した第5の層間絶縁膜120、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等で形成した上層の配線層121、表面保護膜122が形成されている。
【0049】
キャパシタCapの上部電極115には、所定の電位が与えられており、キャパシタCapに保持された電荷の有無を判定することによって、情報の記憶動作を行うDRAM素子として機能する。
【0050】
次に、キャパシタCapの具体的な形成方法について説明する。
図12〜14に、第3の層間絶縁膜111から上の部分のみを断面図として記載した。
【0051】
まず、図12に示したように、第3の層間絶縁膜111及び第4の層間絶縁膜112を、所定の膜厚で堆積した後に、フォトリソグラフィ技術を用いて、キャパシタCapを形成するための開孔112Aを形成する。
【0052】
下部電極113として、NiTi合金膜を、上記実験例に示すように多元スパッタ法により成膜した。ドライエッチング技術またはCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いて、下部電極113を開孔112Aの内壁部分にのみ残すように形成する。
【0053】
ここでは、下部電極113としてTiを70%含有するNiTi合金膜を用いた。
【0054】
次に、図13に示したように容量絶縁膜114として、ALD法を用い、アナターゼ結晶構造のTiO膜を、6〜10nmの厚さに堆積する。この後に500℃に設定した酸素雰囲気中でアニール処理を行い、ルチル結晶構造のTiO膜とした。酸素雰囲気としては、100%酸素である必要はなく、ここでは、空気を用いた。また、第3の層間絶縁膜111を耐酸化性を有するシリコン窒化膜で形成したことによりキャパシタ下の配線材料や素子の酸化が防止される。
【0055】
本発明の配線材料を用いた下部電極は、容量絶縁膜形成時に高温酸化アニールを受けることによって、図1に示すように、成膜時のNiTi合金膜より抵抗率が低いNiTi混合膜に変換される。
【0056】
次に、図14に示したように、容量絶縁膜114の表面を覆い、開孔(112A)内を充填するように、金属膜を堆積して、上部電極115を形成する。ここでは、Ru膜を堆積して、パターニングを行い、上部電極115を形成した。また、耐酸化性の劣る材料を用いてもよい。上部電極115を形成するための他の材料としては、Pt、Ti、Ir、W、Ta等の金属膜やこれらの窒化物も例示できる。また複数の材料の積層膜として上部電極を形成してもよい。これにより、キャパシタ素子Capが完成する。
【0057】
本実施例ではキャパシタCapは、下部電極の内壁のみを電極として利用するシリンダー型としたが、下部電極の外壁と内壁の双方を電極として利用するクラウン型や、下部電極の外壁のみを電極として利用するペデスタル型のキャパシタを形成することも可能である。
【0058】
容量絶縁膜としては、他の元素、例えば、ランタノイド系元素などを添加したTiO膜を用いてもよい。その他、Al,Ta、LaO,HfO膜なども挙げられる。
【符号の説明】
【0059】
1 下部電極
2 容量絶縁膜
3 上部電極
101 半導体基板
103 素子分離領域
104 第1の層間絶縁膜
104A ビット線コンタクトプラグ
105 ゲート電極
106 ビット配線
107 第2の層間絶縁膜
107A 容量コンタクトプラグ
108 不純物拡散層
109 基板コンタクトプラグ
111 第3の層間絶縁膜
112 第4の層間絶縁膜
113 下部電極
114 容量絶縁膜
115 上部電極
120 第5の層間絶縁膜
121 金属配線層
122 表面保護層
Tr MOSトランジスタ
Cap キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比である半導体用配線。
【請求項2】
前記Ti含有量が60−75at.%なる組成比である請求項1に記載の半導体用配線。
【請求項3】
前記NiTi混合膜は、NiとTiOとを含む混合膜である請求項1又は2に記載の半導体用配線。
【請求項4】
前記NiとTiOとを含む混合膜は、前記Ti含有量のNiTi合金膜を500℃以上で酸化して得られる請求項3に記載の半導体用配線。
【請求項5】
アモルファスNiOをさらに含む請求項3又は4に記載の半導体用配線。
【請求項6】
Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比であるNiTi混合膜からなる半導体用配線の製造方法であって、
前記Ti含有量のNiTi合金膜を500℃以上で酸化する製造方法。
【請求項7】
前記Ti含有量が60−75at.%なる組成比である請求項6に記載の半導体用配線の製造方法。
【請求項8】
前記酸化は、前記NiTi合金膜上に500℃以上の酸化プロセスにより結晶化する酸化膜を形成することにより行われる請求項6又は7に記載の半導体用配線の製造方法。
【請求項9】
下部電極、該下部電極上の容量絶縁膜、該容量絶縁膜上の上部電極を備えるキャパシタであって、
前記下部電極が、NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量が60−80at.%なる組成比である材料で形成され、
前記容量絶縁膜が、500℃以上の酸化プロセスにより結晶化した膜であるキャパシタ。
【請求項10】
前記Ti含有量が60−75at.%なる組成比である請求項9に記載のキャパシタ。
【請求項11】
前記容量絶縁膜形成後の下部電極が、NiとTiOとを含む混合膜である請求項9又は10に記載のキャパシタ。
【請求項12】
前記混合膜は、アモルファスNiOをさらに含む請求項11に記載のキャパシタ。
【請求項13】
半導体基板上に形成されたスイッチング素子と
該スイッチング素子に電気的に接続される、下部電極、該下部電極上の容量絶縁膜、該容量絶縁膜上の上部電極を備えるキャパシタと、
を備える半導体装置であって、
前記キャパシタの下部電極が、NiTi混合膜であって、Ti/(Ni+Ti)で表されるTi含有量60−80at.%なる組成比である配線材料で形成され、
前記キャパシタの容量絶縁膜が、500℃以上の酸化プロセスにより結晶化した膜である半導体装置。
【請求項14】
前記Ti含有量が60−75at.%なる組成比である請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記容量絶縁膜形成後の下部電極が、NiとTiOとを含む混合膜である請求項13又は14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記混合膜は、アモルファスNiOをさらに含む請求項15に記載の半導体装置。

【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−222699(P2011−222699A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89473(P2010−89473)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】